JP4314848B2 - 酸素吸収性樹脂組成物およびその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は酸素吸収性の樹脂組成物およびその製造法に関する。
本発明の酸素吸収性の樹脂組成物は、脱酸素剤、または、酸素吸収性容器の全体もしくは一部に使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
食品、飲料、医薬品、医療品、化粧品、金属製品、電子製品に代表される、酸素の影響を受けて変質あるいは劣化し易い各種物品の酸素酸化を防止し長期に保存する目的で、これらを収納した包装容器や包装袋内の酸素除去を行う脱酸素剤が従来より使用されている。この脱酸素剤として初期に開発され現在も多く使用されている形態は、粉状または粒状の鉄粉やアスコルビン酸などの酸素吸収物を通気性の小袋に詰めたものである。
【0003】
近年は、より取扱いが容易で適用範囲が広く誤食の可能性が極めて小さいフィルム状の脱酸素体も利用されるようになってきた。
フィルム状の脱酸素体に関して、その酸素吸収性組成物およびフィルム構成について多くの提案がなされている。まず、樹脂に鉄粉やアスコルビン酸などの脱酸素剤を配合してフィルムやシート等に成形した脱酸素性多層体が知られている。(例えば、特許文献1参照。)炭素−炭素不飽和結合を有する有機化合物に適度に架橋した粒状の脱酸素成分を熱可塑性樹脂に分散させることも知られている。(例えば、特許文献2参照。)ポリアミドと金属触媒からなる層とポリエステルまたはポリオレフィンからなる層を積層した包装用障壁も知られている。(例えば、特許文献3参照。)エチレン性不飽和炭化水素と金属触媒からなる層を含む包装用フィルムも知られている。(例えば、特許文献4参照。)
【0004】
【特許文献1】
特開昭55−90535号公報
【特許文献2】
特開平11−347399号公報
【特許文献3】
特表平2−500846号公報
【特許文献4】
特開平5−115776号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、樹脂自体を被酸化成分とする酸素吸収性樹脂組成物は、しばしば、酸素吸収を開始するまでの誘導期が長いという実用上の問題点を有している。
本発明の目的は、酸素吸収を開始するまでの誘導期が短い、改良された酸素吸収性樹脂組成物およびその製造法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記従来技術の問題点に鑑み鋭意研究を行った結果、熱可塑性樹脂及び遷移金属触媒からなる樹脂組成物を酸素の存在下に混練して得た樹脂組成物が、乾燥状態を含めた広い湿度範囲において酸素吸収を開始するまでの誘導期が短く、酸素吸収速度が大きく、均一で透明なフィルムに成形することができる脱酸素剤を提供すること等を見出して、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、(A)飽和熱可塑性樹脂及び(B)遷移金属触媒からなる樹脂組成物であって、含酸素有機ラジカルを含有する酸素吸収性樹脂組成物に関する。
本発明は、(A)飽和熱可塑性樹脂及び(B)遷移金属触媒からなる組成物を酸素の存在下に混練する、酸素吸収性樹脂組成物の製造方法に関する。
また、使用する組成物が、(A)飽和熱可塑性樹脂、(B)遷移金属触媒及び(C)他の熱可塑性樹脂からなる組成物である、前記の酸素吸収性樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【0008】
本発明においては、(A)飽和熱可塑性樹脂が酸素吸収性樹脂組成物の被酸化成分となる。飽和熱可塑性樹脂たは、エチレン性不飽和結合を実質的に含有しない熱可塑性樹脂である。エチレン性不飽和結合とは、ジエンポリマーに代表される脂肪族炭素−炭素二重結合である。本発明の飽和熱可塑性樹脂の分子内には、芳香族環が含有されていてもよい。
【0009】
本発明で使用される飽和熱可塑性樹脂成分として、例えば、水添スチレンブタジエンゴム等の第3級炭素原子に結合した水素原子を有する有機高分子化合物を用いることができる。酸素吸収性樹脂組成物の遷移金属触媒として、マンガン塩等の遷移金属塩を担体に担持したものを使用することができる。
さらに他の熱可塑性樹脂を配合して、水添スチレンブタジエンゴムと、金属塩または金属酸化物からなる遷移金属触媒が、他の熱可塑性樹脂中に分散されてなる酸素吸収性樹脂組成物もまた、本発明の好ましい態様である。
【0010】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物の樹脂成分として、1種の熱可塑性樹脂または2種以上の熱可塑性樹脂の混合物を使用する。特に、第3級炭素原子に結合した水素原子を有する有機高分子化合物を好ましく用いることができ、ポリスチレン、ポリブテン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンアクリル酸メチル共重合体、アクリルゴム、ポリメチルペンテン、エチレンプロピレンゴム、エチレン1−ブテンゴム、ブチルゴム、水添スチレンブタジエンゴムが例示される。中でも水添スチレンブタジエンゴムが好ましい。
【0011】
本発明で使用する水添スチレンブタジエンゴムは、構成単位としてスチレン単位(−CH2−CH(C6H5)−)と水素化されたブタジエン単位(−CH2−CH2−CH2−CH2−または−CH2−CH(C2H5)−)を含有する共重合体である。スチレン単位と水素化されたブタジエン単位の配列は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。この水添スチレンブタジエンゴムは、スチレンブタジエンゴムの水素化反応により、ブタジエン単位の脂肪族炭素−炭素二重結合が実質的に存在しなくなる程度にまで水素添加して得られる。本発明で使用する実質的に脂肪族炭素−炭素不飽和結合を有しない水添スチレンブタジエンゴムは、ポリエチレン系およびポリプロピレン系などの他の熱可塑性樹脂と混練した際に100nm程度以下の寸法で超微分散し得る性質を有する。
【0012】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物の遷移金属触媒は、本発明で使用する遷移金属触媒は、遷移元素金属の塩や酸化物等の金属化合物である。遷移金属触媒の元素種としては、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅が好適であり、マンガン、鉄、コバルトが優れた触媒作用を示すので特に好適で、マンガンが最も特に好適である。遷移元素金属の金属塩としては、遷移元素金属の鉱酸塩及び脂肪酸塩が含まれ、例えば、遷移元素金属の塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩又は高級脂肪酸塩である。
【0013】
扱い易さの点から好ましい遷移金属触媒は、遷移元素金属の塩を担体に担持した担持触媒である。担体の種類は、特に限定されないが、ゼオライト、珪藻土、ケイ酸カルシウム類などを用いることができる。特に、触媒調製時および調製後の大きさが100μm程度の凝集体で、樹脂中に分散した際には380nm以下になる担体が、取扱い性が良く、樹脂に配合した際に透明な樹脂組成物を与えるので好ましい。このような担体として、合成ケイ酸カルシウム系化合物が例示される。遷移金属触媒の割合は、酸素吸収性能と物理強度と経済性から、酸素吸収性樹脂組成物中の金属原子重量として0.001〜10wt%が好ましく、0.01〜1wt%が特に好ましい。
【0014】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂及び遷移金属触媒からなる組成物を酸素の存在下に溶融混練することによって得られる。溶融混練する組成物は、一体化されていない単なる配合物であっても、予め一体化された樹脂組成物であってもよい。樹脂組成物の混練を行う装置は、酸素の供給を受けつつ、組成物を溶融状態にて混合することができる装置であればよく、一軸押出機、二軸押出機、ラボプラストミルが例示される。混練する際の酸素の供給は、酸素含有ガスの存在下にラボプラストミルを運転する方法、あるいは、押出機に排気ポンプを取り付けて減圧させて酸素含有ガスを吸引する方法が例示される。工業的には、真空ポンプを取り付けた一軸または二軸の押出機を用いて、真空ポンプにより外気を引き込みながら熱可塑性樹脂及び遷移金属触媒を溶融混練することによって製造することができる。利用される酸素含有ガスとしては、純酸素、空気、酸素と不活性ガスとの混合ガスが例示され、空気が好ましい。
【0015】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、電子スピン共鳴測定(ESR)のg値が2.000〜2.010の範囲にあるラジカルを1×10−7モル/g以上、好ましくは5×10−7モル/g以上含有する。ラジカル含有量の上限は無いが、通常は、1×10−4モル/g以下である。ここで、1×10−7モル/gとは、酸素吸収性樹脂組成物1g中に、1×10−7×6×1023個(spins)のラジカルが含有されていることを示す。本発明の酸素吸収性樹脂組成物の含有するラジカルは、ESRのg値から、含酸素有機ラジカル、すなわち、アルコキシラジカル(RO・)、アルキルペルオキシラジカル(ROO・)またはその混合物と推定される。
【0016】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物の含有する含酸素有機ラジカルが室温において安定に存在する事実は、電子スピン共鳴測定(ESR)により確認される。これは、含酸素有機ラジカルが、酸素吸収性樹脂組成物中でその移動が制限されているために安定化されていて、これにより、酸素吸収反応を開始するまでの誘導期を短縮する効果が奏されているものと推定される。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、それ自体が酸素吸収開始までの誘導期が短いという特徴を有するが、紫外線光を照射することにより、さらに誘導期を短縮することができる。
【0017】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、単独でベレットやフィルムなどの形態に成形して脱酸素剤や酸素吸収性フィルムの酸素吸収成分として用いることができる。
本発明のもう一つの使用形態は、酸素吸収性樹脂組成物を、(C)他の熱可塑性樹脂中に分散してなる樹脂組成物である。この樹脂組成物もまた、ベレットやフィルムなどの形態に成形して脱酸素剤や酸素吸収性フィルムの酸素吸収成分として用いることができる。
【0018】
該樹脂組成物は、例えば、(A)飽和熱可塑性樹脂及び(B)遷移金属触媒からなり含酸素有機ラジカルを含有する酸素吸収性樹脂組成物をさらに(C)他の熱可塑性樹脂と酸素の存在下または不存在下に溶融混練することにより得られる。あるいは、(A)飽和熱可塑性樹脂、(B)遷移金属触媒及び(C)他の熱可塑性樹脂からなる組成物を酸素の存在下に溶融混練することにより得られる。さらに、(A)飽和熱可塑性樹脂及び(B)遷移金属触媒からなる組成物を酸素の存在下に(C)他の熱可塑性樹脂と共に溶融混練することによっても得られる。溶融混練する組成物は、一体化されていない単なる配合物であっても、予め一体化された樹脂組成物であってもよい。
【0019】
本発明における(C)他の熱可塑性樹脂は、加熱により軟化して塑性を示し成形できる樹脂であり、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのポリ塩化樹脂、ポリスチレンなどの芳香族炭化水素樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロンMXD6などのポリアミドが例示される。これらの組合せまたは一種以上を含む樹脂組成物も使用できる。
【0020】
酸素吸収性樹脂組成物中の(A)飽和熱可塑性樹脂の割合は、10wt%以上100wt%未満から選ばれるが、酸素吸収性能と物理強度と経済性から該樹脂組成物中10wt%以上60wt%以下が好ましい。酸素吸収性樹脂組成物中の(B)遷移金属触媒の割合は、酸素吸収性能と物理強度と経済性から、組成物中の金属原子重量として0.001wt%以上10wt%以下が好ましく、0.01wt%以上1wt%以下が特に好ましい。
【0021】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、乾燥剤、吸着剤、抗菌剤、着色剤等の一種以上の添加剤と加熱混合することにより、酸素吸収機能と他の機能を併せ持つ組成物にすることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物の使用形態は、ペレット状あるいはフィルム状その他の小片状に加工した脱酸素剤、または、これを通気性小袋に入れた形態の脱酸素剤包装体として用いることができる。また、前記小片をラベル、カード、パッキングなどの形態に成形して、脱酸素体として用いることができる。
【0023】
さらに、本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、そのまま又は適当な包装材料と積層することにより、脱酸素性の包装材料として包装袋や包装容器の一部または全部に用いることができる。例えば、本発明の酸素吸収性樹脂組成物を脱酸素層とし、一方の側に酸素透過性が高く、かつ熱融着性を兼ね備えた熱可塑性樹脂を、包装される内容物との隔離層として積層し、他方の側に酸素透過性が低い樹脂、金属又は金属酸化物をガスバリヤー層として積層して、フィルム状もしくはシート状の脱酸素性多層体とすることができる。脱酸素性多層体に含まれる脱酸素層の厚みは、300μm以下が好ましく、10〜200μmがより好ましい。
【0024】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、透明にすることができる。したがって、透視性を有する包装材料として、好適である。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、脱酸素性能を有するフィルムにすることができ、この脱酸素性能を有するフィルムからなる層を含む脱酸素性多層体にすることができる。例えば、保存物品側にポリオレフィン等からなるヒートシール層を、外気側にガスバリヤー層を積層することにより、酸素吸収性容器用材料とすることができる。
【0025】
特に、ポリオレフィン層/本発明の酸素吸収性樹脂組成物層/透明ガスバリヤー性樹脂層を基本構成とする脱酸素性多層体は、透明な脱酸素性包装材料として使用できる。透明ガスバリヤー性樹脂層としては、シリカもしくはアルミナを蒸着したポリエステルもしくはポリアミド、ナイロンMXD6、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニリデンからなる層を例示することができる。
【0026】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、フィルム状その他の形状の脱酸素剤、または、酸素吸収性の単層体もしくは多層体として酸素吸収性容器の本体材料もしくは蓋材に好適に使用することができる。その用途に制限はなく、食品、飲料、医薬品、医療品、化粧品、金属製品、電子製品などの保存および品質保持の分野において実用性の高い脱酸素性能を発揮する。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、湿度によらず脱酸素するが、特に、50%RH以下の低湿度条件では酸素吸収開始までの誘導期が短いので、好ましい乾燥系用脱酸素剤である。
【0027】
【実施例】
以下に実施例と比較例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0028】
実施例1
トール油脂肪酸マンガン(東栄化工(株)製)16重量部を合成ケイ酸カルシウム(商品名「マイクロセルE」、セライト(株)製)8重量部に含浸させた遷移金属触媒24重量部と、水添スチレンブタジエンゴム(商品名「DYNARON1320P」、日本合成ゴム(株)製、以下「HSBR」と略す)1575重量部とポリプロピレン(商品名「ノバテックPP・FG3DF」、日本ポリケム(株)製)3675重量部をドライブレンドし、37mm2軸押出機を用いて210℃で混練、ストランドダイより押し出し、冷却ペレタイザーで切断して樹脂組成物のペレットを得た。押出機で混練する際、ホッパーからのフィード量を抑え、シリンダー内を樹脂が閉塞しないようにしながら真空ベント口から真空ポンプで吸引することにより、シリンダー内部に空気が流れるようにした。
【0029】
作製した酸素吸収性樹脂組成物ペレット中のラジカルを電子スピン共鳴装置(日本電子(株)製JES-FA200、以下ESR)を用いて室温で測定した。試料ペレット0.16gを直径4mmの試料管に入れ、ラジカル濃度が既知の二酸化マンガンを標準物質に用い、観測磁場中心を336mTとして室温で測定した。g値が2.004〜2.005のスペクトルが検出され、その強度から、酸素吸収性樹脂組成物1g中に、1.6×10−6モル、すなわち1.6×10−6×6×1023個(spins)の含酸素有機ラジカルが存在していることが確認された。また、脱酸素下25℃で4ヶ月間保存した試料も同様の電子スピン共鳴スペクトルを示し、これらのラジカルが長期間安定に存在することを確認した。
作製した酸素吸収性樹脂組成物のペレットをプレス機を用いて180℃でプレスすることにより、平均厚み149μmの透明な酸素吸収性樹脂フィルムを得た。
【0030】
酸素吸収性樹脂フィルムの酸素吸収性能を以下のようにして測定した。5cm×6cmに切り取った前記酸素吸収性樹脂フィルムを、通気性小袋内に包装した乾燥剤と共に酸素非透過性袋に入れ、200mLの空気を充填して密封し、25℃で保管した。袋内の酸素濃度変化をガスクロマトグラフで測定することにより、酸素吸収性樹脂フィルムの酸素吸収速度を求め、結果を表1に示した。この酸素吸収性樹脂フィルムは、酸素をほとんど吸収しない誘導期が5日間あり、その後、酸素吸収性樹脂フィルム重量当たり一定の酸素吸収速度1.0mL g-1 d-1(O2容量、以下同様)で酸素を吸収した。
【0031】
また、同様に作成した平均厚み100μmの透明な酸素吸収性樹脂フィルムの脱酸素能力を以下のようにして測定した。16.7mW/cm2の400W高圧水銀灯による紫外線光を30分照射した前記酸素吸収性樹脂フィルム1.0gを、通気性小袋内に包装した乾燥剤と共に酸素非透過性袋に入れ、酸素濃度が2vol%の酸素と窒素の混合気体50mLを充填して密封し、25℃で保管し、袋内の酸素濃度変化をガスクロマトグラフで測定した。24時間後の包装内の酸素濃度は0.59vol%、48時間後の包装内の酸素濃度は0.03vol%になった。
【0032】
実施例2
実施例1で得た酸素吸収性樹脂組成物のペレットをTダイ幅150mmの押出機を用いて210℃でフィルムに成形した。得られたフィルムの酸素吸収量を実施例1と同様に求め、結果を表1に示した。この酸素吸収性樹脂フィルムは、酸素をほとんど吸収しない誘導期が3日間あり、その後、酸素吸収性樹脂フィルム重量当たり一定の酸素吸収速度1.0mL g-1 d-1で酸素を吸収した。
また、酸素非透過性袋に入れて25℃で保存したこの酸素吸収性樹脂フィルムは、70日経過後も保存前と同等の酸素吸収性能を示した。
【0033】
実施例3
塩化マンガン四水和物14重量部を水70重量部に溶解させ、合成ケイ酸カルシウム(マイクロセルE)35重量部に含浸させた後、乾燥して遷移金属触媒を得た。得られた遷移金属触媒と水添スチレンブタジエンゴム(DYNARON1320P)とポリプロピレン(ノバテックPP FG3DF)を重量比49対1470対3430でドライブレンドし、実施例1と同様の方法で酸素吸収性樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットのESR測定によれば、g値が2.004〜2.005のスペクトルが検出され、その強度から、酸素吸収性樹脂組成物1g中に、1.6×10−6モル、すなわち1.6×10−6×6×1023個(spins)の含酸素有機ラジカルが存在していることが確認された。
このペレットをプレス機を用いて180℃でプレスすることにより、平均厚み147μmの透明な酸素吸収性樹脂フィルムを得た。この酸素吸収性樹脂フィルムの酸素吸収性能を実施例1と同様に求め、結果を表1に示した。この酸素吸収性樹脂フィルムは、誘導期が14日間あり、その後、酸素吸収性樹脂フィルム重量当たり一定の酸素吸収速度0.7mL g-1 d-1で酸素を吸収した。
【0034】
実施例4
実施例3の酸素吸収性樹脂フィルムの酸素吸収性能を、保管温度を60℃に変えた以外は実施例1と同様に求め、結果を表1に示した。この酸素吸収性樹脂フィルムは、60℃において、誘導期がなく(0日)、酸素吸収性樹脂フィルム重量当たり一定の酸素吸収速度25mL g-1 d-1で酸素を吸収した。
【0035】
実施例5
実施例3で得た酸素吸収性樹脂組成物のペレットをTダイ幅150mmの押出機を用いて210℃でフィルムに成形した。得られたフィルムの酸素吸収量を実施例1と同様に求め、結果を表1に示した。この酸素吸収性樹脂フィルムは、酸素をほとんど吸収しない誘導期が4日間あり、その後、酸素吸収性樹脂フィルム重量当たり一定の酸素吸収速度0.8mL g-1 d-1で酸素を吸収した。
また、酸素非透過性袋に入れて25℃で保存したこの酸素吸収性樹脂フィルムは、70日経過後も保存前と同等の酸素吸収性能を示した。
【0036】
比較例1
ペレット作製の際、真空ベント口から真空ポンプで空気を吸引せず、シリンダー内に空気が流れないようにした以外は実施例1と同様にして、酸素吸収性樹脂組成物のペレットを作製した。得られたペレットのESR測定によれば、g値が2.004〜2.005のスペクトルは検出されず、含酸素有機ラジカルの存在は認められなかった。作製したペレットをプレス機を用いて180℃でプレスすることにより、平均厚み168μmの透明な酸素吸収性樹脂フィルムを得た。このフィルムの酸素吸収性能を実施例1と同様に求め、結果を表1に示した。この酸素吸収性樹脂フィルムは、誘導期が42日間あり、その後、酸素吸収性樹脂フィルム重量当たり一定の酸素吸収速度0.6mL g-1 d-1で酸素を吸収した。
【0037】
比較例2
ペレット作製の際、真空ポンプで空気を吸引せず、シリンダー内に空気が流れないようにした以外は実施例3と同様にして、樹脂組成物のペレットを作製した。得られたペレットのESR測定によれば、g値が2.004〜2.005のスペクトルは検出されず、含酸素有機ラジカルの存在は認められなかった。作製したペレットをプレス機を用いて180℃でプレスすることにより、平均厚み163μmの透明な樹脂フィルムを得た。このフィルムの酸素吸収性能を実施例1と同様に求め、結果を表1に示した。この樹脂フィルムは、80日以上経ってもほとんど酸素を吸収しなかった。
【0038】
比較例3
比較例2の樹脂フィルムの酸素吸収性能を、保管温度を60℃に変えた以外は実施例1と同様に求め、結果を表1に示した。この樹脂フィルムは、60℃において、21日間以上経過後もほとんど酸素を吸収しなかった。
【0039】
【表1】
【0040】
【発明の効果】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、乾燥状態を含めた広い湿度範囲において包装容器内を脱酸素状態にすることが可能であり、酸素吸収を開始するまでの誘導期が短いという効果を奏する。特に、50%RH以下の低湿度条件において酸素吸収開始までの誘導期が短いので、好ましい乾燥系用脱酸素剤である。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、他の熱可塑性樹脂中に分散させることもでき、脱酸素フィルムあるいは酸素バリアフィルムになる。
【0041】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、使用する熱可塑性樹脂及び遷移金属触媒の選択により、均一で透明なフィルムに成形することができる。
本発明によれば、乾燥状態を含めた広い湿度範囲において脱酸素が可能であり、酸素吸収を開始するまでの誘導期が短い酸素吸収性樹脂組成物の工業的に実施の容易な製造方法が提供される。
Claims (9)
- (A)水添スチレンブタジエンゴム及び(B)遷移金属触媒からなる樹脂組成物であって、含酸素有機ラジカルを含有することを特徴とする酸素吸収性樹脂組成物。
- (B)遷移金属触媒が遷移金属塩を担体に担持したものであることを特徴とする請求項1記載の酸素吸収性樹脂組成物。
- 請求項1記載の酸素吸収性樹脂組成物が(C)他の熱可塑性樹脂中に分散されてなる樹脂組成物。
- 透明であることを特徴とする請求項1又は3記載の樹脂組成物。
- 請求項1又は3記載の樹脂組成物からなる脱酸素性のフィルム。
- 請求項1又は3記載の樹脂組成物からなる脱酸素層を含む脱酸素性多層体。
- (A)水添スチレンブタジエンゴム及び(B)遷移金属触媒からなる組成物を酸素の存在下に混練する、請求項1記載の酸素吸収性樹脂組成物の製造方法。
- 真空ポンプにより外気を引き込みながら、(A)水添スチレンブタジエンゴム及び(B)遷移金属触媒からなる組成物を押出機を用いて混練することを特徴とする請求項7記載の製造方法。
- 混練する組成物が、(A)水添スチレンブタジエンゴム及び(B)遷移金属触媒の他(C)他の熱可塑性樹脂を含有する組成物である、請求項7または8記載の製造方法。
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