JP6832714B2 - 包装袋及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、包装袋及びその製造方法に関する。
従来、食品、医薬品、電子部品、精密機械、記録材料等の分野において水分に起因する品質劣化を防ぐ目的で、乾燥剤を同梱する方法がとられている。また、包装内に別体の乾燥剤を入れずに、包装材自体に吸湿機能を持たせるため、乾燥剤を包装材自体に含有させることが行われている。
例えば、特許文献1では、モレキュラーシーブとMFR10以上の樹脂を含む乾燥剤含有樹脂を用いた乾燥剤フィルムが開示されている。
また、内容物によっては、アウトガスと呼ばれる揮発性の有機ガスや無機ガスを放出するものがある。このアウトガスがにおいを有する場合には、開封するとにおいが拡散し、これが使用者に不快感を与えることがある。そこで、包装内のアウトガスを低減するため、ガス吸収剤を包装材自体に含有させることが行われている。
例えば、特許文献2では、吸臭剤として疎水性ゼオライトを含有している吸着層を有する、PTP(プレススルーパッケージ)ブリスター用フィルムが開示されている。
特開2005−280188号公報 特開2006−334819号公報
包装内の水分が多いと、におい成分であるアウトガスが分散せずに滞留して、その結果、においを強く感じやすくなることがある。また、水分によって包装されている内容物が加水分解され、アウトガスを発生することで、においを強く感じやすくなることもある。したがって、包装内のにおいを効果的に除去するためには、アウトガスを除去することのみならず、包装内の水分を除去することが望ましい。
また、包装すべき内容物によっては、多量のアウトガスを発生するものも存在するため、アウトガスの吸着量を多くすることも必要となり得る。この場合、ガス吸着剤の含有量を多くすれば、アウトガスの吸着量を多くすることもできるが、包装材の成形性やコスト等を考慮すると、ガス吸着剤の含有量を多くすることが好ましくないことがある。
したがって、吸湿機能を有しつつ、少量のガス吸着剤でもより多量のアウトガスを吸収できる、包装袋を提供する必要性が存在する。
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈1〉 化学吸収剤を含有している化学吸収層、及び第1の基材層を有する、第1の積層フィルム、並びに
疎水性物理吸着剤を含有している物理吸着層、及び第2の基材層を有する第2の積層フィルム、
を有し、
上記化学吸収層と上記物理吸着層とが対向するようにして、上記第1の積層フィルム及び上記第2の積層フィルムが配置されており、かつ対向している上記化学吸収層及び上記物理吸着層の周縁が互いにヒートシールされており、かつ
上記疎水性物理吸着剤の平衡湿度が、35%RH以上である、
包装袋。
〈2〉 上記化学吸収剤の平衡湿度が、35%RH以下である、上記〈1〉項に記載の包装袋。
〈3〉 上記第1の基材層及び/又は第2の基材層がバリア層及び樹脂層を含む、上記〈1〉又は〈2〉項に記載の包装袋。
〈4〉 上記化学吸収層又は上記物理吸着層が、スキン層を更に含む、上記〈1〉〜〈3〉項のいずれか一項に記載の包装袋。
〈5〉 上記化学吸収剤が、酸化カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される、上記〈1〉〜〈4〉項のいずれか一項に記載の包装袋。
〈6〉 上記物理吸着剤が、疎水性ゼオライト、活性炭、メソポーラス物質、植物殻粉体及びこれらの混合物からなる群より選択される、上記〈1〉〜〈5〉項のいずれか一項に記載の包装袋。
〈7〉 内容物、及び
上記内容物を収納している上記〈1〉〜〈6〉項のいずれか一項に記載の包装袋
を含む、内容物入り包装袋。
〈8〉 熱可塑性樹脂及び化学吸収剤を溶融混練して化学吸収層用マスターバッチを作製する工程、
熱可塑性樹脂及び平衡湿度が35%RH以上である疎水性物理吸着剤を溶融混練して物理吸着層用マスターバッチを作製する工程、
上記化学吸収層用マスターバッチ及び上記物理吸着層用マスターバッチを各々製膜して化学吸収層及び物理吸着層を作製する工程、
上記化学吸収層及び上記物理吸着層に第1の基材層及び第2の基材層をそれぞれ積層させて、第1の積層フィルム及び第2の積層フィルムを作製する工程、並びに
上記化学吸収層と上記物理吸着層とが対向するようにして上記第1の積層フィルムと上記第2の積層フィルムとを配置し、そして対向している上記化学吸収層及び上記物理吸着層の周縁を互いにヒートシールして袋状にする工程
を含む、包装袋の製造方法。
本発明によれば、吸湿機能を有しつつ、多量のアウトガスを吸収できる、包装袋を提供することができる。
図1は、本発明の包装袋の層構成例である。 図2は、湿度挙動の評価結果を示す図である。 図3は、湿度挙動の評価結果を示す図である。 図4は、湿度挙動の評価結果を示す図である。
《包装袋》
本発明の包装袋(100)は、1つの態様において、図1に示すように、化学吸収剤を含有している化学吸収層(12)、及び第1の基材層(14)を有する、第1の積層フィルム(10)、並びに疎水性物理吸着剤を含有している物理吸着層(22)、及び第2の基材層(24)を有する第2の積層フィルム(20)を有する。
この本発明の包装袋では、化学吸収層(12)と物理吸着層(22)とが対向するようにして、第1の積層フィルム及び第2の積層フィルムが配置されており、かつ対向している化学吸収層(12)及び物理吸着層(22)の周縁がシール部(12a、22a)において互いにヒートシールされている。また、疎水性物理吸着剤の平衡湿度は、35%以上である。
ここで、化学吸収剤又は疎水性物理吸着剤の「平衡湿度」は、化学吸収剤又は疎水性物理吸着剤を含有しているフィルムを、密閉容器中の水分に対して化学吸収剤又は疎水性物理吸着剤が過剰になるようにして、すなわち単純な量的には化学吸収剤又は疎水性物理吸着剤が密閉容器中の湿度を0%RH(相対湿度)にできる量になるようにして、23℃55%RHの環境にある密閉空間内に放置したときの、平衡状態での密閉空間内の相対湿度である。この平衡湿度は、例えば化学吸収剤又は疎水性物理吸着剤を低密度ポリエチレンに20質量%含有させて厚さ100μmのフィルムとし、次いでこのフィルムを5cm×5cmの大きさに切断し、そして切断したフィルム1枚又は2枚を23℃55%RHの環境にある140mLの密閉空間内に24時間放置することにより測定することができる。
以下の実施例において言及するように、図2を参照すれば、本発明でいう化学吸収剤である酸化カルシウムを用いたフィルムでは平衡湿度が35%を下回っていること、それに対して本発明でいう疎水性物理吸着剤である疎水性ゼオライト、メソポーラスシリカ、活性炭、及び落花生殻を用いたフィルムでは平衡湿度が35%を上回っていることが理解できよう。
本発明者らは、上記の構成を有する包装袋により、吸湿機能を有しつつ、多量のアウトガスを吸収できることを見出した。
理論に拘束されることを望まないが、これは、上記の疎水性物理吸着剤による急速なアウトガスの吸着により、化学吸収剤の早い失活が抑制され、それによって化学吸収剤が有するガス吸収能力を最大限に発揮できること、すなわち密閉空間内におけるアウトガスの分圧とガス吸収速度との関係であるガス吸収挙動が互いに相違する化学吸収剤と疎水性物理吸着剤との相互作用によるものと考えられる。
また、本発明者らは、上記の構成を有する包装袋により、袋内湿度を非常に低い湿度まで低減できることを見出した。理論に拘束されることを望まないが、化学吸収剤と、疎水性物理吸着剤とは、吸湿挙動、すなわち密閉空間内における水蒸気の分圧と吸湿速度との関係が互いに相違しており、それによって、相互補完された吸湿挙動が生じ、非常に低い湿度まで吸湿できると考えられる。
以下では、本発明の包装袋の各構成要素について説明する。
〈第1の積層フィルム〉
第1の積層フィルムは、化学吸収層、及び第1の基材層を有することができる。
{化学吸収層}
化学吸収層は、熱可塑性樹脂、及び化学吸収剤を含有している化学吸収層である。
また、化学吸収層は、随意のスキン層を更に具備していてもよい。スキン層は、化学吸収層の一方又は両方の面に存在していてよい。
化学吸収層中の化学吸収剤の含有量は、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であることができ、また70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、又は30質量%以下であることができる。
化学吸収層の厚さは、5μm以上、10μm以上、20μm以上、又は30μm以上であることができ、また200μm以下、180μm以下、160μm以下、140μm以下、120μm以下、又は100μm以下であることができる。
化学吸収層は、例えば化学吸収剤及び熱可塑性樹脂を混練させて得た混練物を製膜機でフィルム状に加工することにより得られる。
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、水分及びアウトガスの透過性が高く、混練性に優れた熱可塑性樹脂を用いることができる。このような熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン、ビニル系ポリマー、ポリエステル、アイオノマー、ポリカーボネート、ポリアミド、熱可塑性エラストマー等から選択される少なくとも1種、又はこれらの組合せを用いることができる。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。
なお、本明細書において、ポリエチレン系樹脂とは、ポリマーの主鎖にエチレン基の繰返し単位を、30mol%以上、40mol%以上、50mol%以上、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレンビニルアセテート共重合体(EVA)、カルボン酸変性ポリエチレン、カルボン酸変性エチレンビニルアセテート共重合体、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される。
本明細書において、ポリプロピレン系樹脂とは、ポリマーの主鎖にプロピレン基の繰返し単位を、30mol%以上、40mol%以上、50mol%以上、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、ポリプロピレン(PP)ホモポリマー、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)、塩素化ポリプロピレン、カルボン酸変性ポリプロピレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
ビニル系ポリマーとしては、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)、ポリスチレン等が挙げられる。
ポリエステルとしては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
アイオノマーとしては、例えばエチレンとメタクリル酸との共重合体を亜鉛等の金属で架橋させた樹脂が挙げられる。
ポリカーボネートとしては、例えばビスフェノールAと塩化カルボニルとを縮合重合させた樹脂が挙げられる。
ポリアミドとしては、例えばナイロン(登録商標)6、ナイロンMXD6等のナイロン等が挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム等が挙げられる。
(化学吸収剤)
化学吸収剤は、熱可塑性樹脂に分散している化学吸収剤である。
特に、化学吸収剤の平衡湿度は、35%RH以下、33%RH以下、又は30%RH以下であることができ、また5%RH以上、13%RH以上、又は15%RH以上であることができる。化学吸収剤の平衡湿度が上記の範囲内にあることにより、化学吸収剤が、水分を優先的に吸収できる吸湿剤としての役割を有することができる。
化学吸収剤としては、酸化カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの化学吸収剤は、単独で用いてもよく、又は混合物として用いてもよい。
化学吸収剤の平均粒子径(レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径)は、1μm以上、3μm以上、又は5μm以上であることができ、また50μm以下、40μm以下、又は30μm以下であることができる。
(スキン層)
スキン層は、化学吸収層に含有される化学吸収剤の脱落を防止し、かつ袋としての強度、例えばシール強度及び積層強度を持たせるため、化学吸収層の一方又は両方の面に積層されている随意の層である。
スキン層は、熱可塑性樹脂で構成することができ、製膜安定性を向上させ、かつ/又は化学吸収剤の脱落や外部への直接の接触を防ぐこと、並びに/又は第1の基材層と積層する表面平滑性を付与することができる。
スキン層を構成する熱可塑性樹脂としては、上記の熱可塑性樹脂を用いることができる。化学吸収層の両側にスキン層を積層させた場合、それぞれのスキン層を構成する熱可塑性樹脂は、同一であっても異なっていてもよい。
スキン層の厚さは、1μm以上、3μm以上、5μm以上、又は7μm以上であることができ、また50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、又は15μm以下であることができる。化学吸収層の両側にスキン層を積層させた場合、これらのスキン層の厚さは同一であっても異なっていてもよい。
{第1の基材層}
第1の積層フィルムに含まれている第1の基材層は、例えば樹脂層、バリア層、又はこれらの積層体であってよい。
{樹脂層}
樹脂層としては、耐衝撃性、耐摩耗性等に優れた熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン、ビニル系ポリマー、ポリエステル、ポリアミド等を単独で、又は2種類以上組み合わせて複層で使用することができる。この樹脂層は、延伸フィルムであっても、無延伸フィルムであってもよい。
ポリオレフィンとしては、吸収層に関して挙げたポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂に加え、エチレンと酸素含有エチレン性不飽和単量体との共重合体等を用いることができる。エチレンと酸素含有エチレン性不飽和単量体との共重合体としては、例えばEVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)等が挙げられる。
ビニル系ポリマーとしては、吸収層に関して挙げたビニル系ポリマーに加え、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、ポリクロロトリフルオロエチレン、PAN(ポリアクリロニトリル)等を用いることができる。
ポリエステル及びポリアミドとしては、化学吸収層に関して挙げたポリエステル及びポリアミドを用いることができる。
樹脂層の厚さは、3μm以上、5μm以上、7μm以上、10μm以上、又は12μm以上であることができ、また120μm以下、100μm以下、80μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、又は20μm以下であることができる。
{バリア層}
バリア層としては、外部からの水分が化学吸収層へと透過することを抑制することができる材料を用いることができる。樹脂層が十分な水蒸気バリア性及びガスバリア性を有する場合には、バリア層は必要ないが、樹脂層が十分なバリア性を有しない場合には、バリア層を設ける方が好ましい。例えば、これに限られないが、アルミニウム箔、若しくはアルミニウム合金等の金属箔、アルミニウム蒸着膜、シリカ蒸着膜、アルミナ蒸着膜、若しくはシリカ・アルミナ二元蒸着膜等の無機物蒸着膜、又はポリ塩化ビニリデンコーティング膜、若しくはポリフッ化ビニリデンコーティング膜等の有機物コーティング膜を使用することができる。
バリア層の厚さは、1μm以上、3μm以上、5μm以上、又は7μm以上であることができ、また70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、又は10μm以下であることができる。
〈第2の積層フィルム〉
第2の積層フィルムは、物理吸着層、及び第2の基材層を有する。
{物理吸着層}
物理吸着層は、熱可塑性樹脂、及び疎水性物理吸着剤を含有している物理吸着層である。
また、物理吸着層は、随意のスキン層を更に具備していてもよい。スキン層は、物理吸着層の一方又は両方の面に存在していてよい。
物理吸着層中の疎水性物理吸着剤の含有量は、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であることができ、また70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、又は30質量%以下であることができる。
物理吸着層の厚さは、5μm以上、10μm以上、20μm以上、又は30μm以上であることができ、また200μm以下、180μm以下、160μm以下、140μm以下、120μm以下、又は100μm以下であることができる。
物理吸着層は、疎水性物理吸着剤及び熱可塑性樹脂を混練させて得た混練物を製膜機でフィルム状に加工することにより得られる。
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、化学吸収層に関して挙げた熱可塑性樹脂を用いることができる。
(疎水性物理吸着剤)
疎水性物理吸着剤は、熱可塑性樹脂に分散しており、平衡湿度が35%RH以上である、物理吸着剤である。
この平衡湿度は、35%RH以上、38%RH以上、又は40%RH以上であることができ、また50%RH以下、48%RH以下、又は45%RH以下であることができる。疎水性物理吸着剤の平衡湿度が上記の範囲内にあることにより、疎水性物理吸着剤が、アウトガスを優先的に吸着できるガス吸着剤としての役割を有することができる。
ここで、アウトガスとは、包装袋に収納した内容物等から放出される揮発性の有機ガスや無機ガス(水蒸気は除く)である。具体的には、アウトガスとしては、例えばベンゼン、トルエン等の芳香族化合物、酢酸エチル等のエステル、メタン、エタン等の脂肪族炭化水素、エタノール等のアルコール、及びアセトアルデヒド等のアルデヒド、イソブチルアミン等のアミン等が挙げられる。このようなアウトガスは、においに関して好ましくない場合があるだけでなく、内容物に悪影響を与えることもある。
このような疎水性物理吸着剤としては、疎水性ゼオライト、シリカゲル、疎水処理したシリカゲル、メソポーラス物質、活性炭、植物殻粉体などが挙げられる。メソポーラス物質は、細孔径がミクロ孔(2nm以下)とマクロ孔(50nm以上)の中間の細孔径を有する物質であり、たとえばメソポーラスシリカなどが挙げられる。植物殻粉体としては、多孔質な落花生殻を細かく粉砕したものを用いることができる。これらの疎水性物理吸着剤は、単独で用いてもよく、又は混合物として用いてもよい。
なお、本明細書において、疎水性ゼオライトは、Si/Alモル比が、1.5よりも大きいゼオライトである。このSi/Alモル比は、1.5超、2.0以上、5.0以上、10.0以上、30.0以上、50.0以上、又は100.0以上であることができる。Si/Alモル比が上記の範囲内にあるゼオライトは、平衡湿度が35%RH以上であることができ、それによってアウトガスを優先的に吸着できるガス吸着剤としての役割を有することができる。
このような疎水性ゼオライトとしては、例えばベータ型、ZSM−5型、フェリエナイト型、モルデナイト型、L型、又はY型のゼオライトを使用することができる。また、ZSM−5型ゼオライトの類縁体であるZSM−11、シリカライト、シリカライト−2、ペンタシル型メタロケイ酸塩を使用することもできる。これらは単独で用いてもよく、又は組み合わせて用いてもよい。
疎水性物理吸着剤の平均粒子径(レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径)は、1μm以上、3μm以上、又は5μm以上であることができ、また50μm以下、40μm以下、又は30μm以下であることができる。
(スキン層)
物理吸着層のスキン層は、化学吸収層に関して挙げたスキン層を用いることができ、化学吸収層のスキン層とは同一であっても異なっていてもよい。
{第2の基材層}
第2の積層フィルムに含まれている第2の基材層としては、第1の基材層として挙げた基材層を用いることができ、第1の基材層とは同一であっても異なっていてもよい。
〈他の層〉
本発明の包装袋は、各々の層の間に他の層、例えば接着層を具備していてもよい。接着層としては、例えば、ドライラミネート接着剤、ホットメルト接着剤、水溶性接着剤、エマルション接着剤、及び押出ラミネート用の熱可塑性樹脂等を使用することができる。
本発明の包装袋は、内容物を収納している内容物入り包装袋であることができる。
〈内容物〉
内容物としては、外気との接触によって劣化しうる物であれば限定されるものではなく、薬剤の他、食品、化粧品、医療器具、医療機器、電子部品、精密機械、記録材料等を挙げることができる。また、薬剤としては、医薬品製剤の他、洗浄剤、農薬等を含む。
《包装袋の製造方法》
本発明の包装袋の製造方法は、以下の工程を含む:
熱可塑性樹脂及び化学吸収剤を溶融混練して化学吸収層用マスターバッチを作製する工程、
熱可塑性樹脂及び疎水性物理吸着剤を溶融混練して物理吸着層用マスターバッチを作製する工程、
化学吸収層用マスターバッチ及び物理吸着層用マスターバッチを各々製膜して化学吸収層及び物理吸着層を作製する工程、
化学吸収層及び物理吸着層に第1の基材層及び第2の基材層をそれぞれ積層させて、第1の積層フィルム及び第2の積層フィルムを作製する工程、並びに
化学吸収層と物理吸着層とが対向するようにして第1の積層フィルムと第2の積層フィルムとを配置し、そして対向している化学吸収層及び物理吸着層の周縁を互いにヒートシールして袋状にする工程。
(マスターバッチを作製する工程)
マスターバッチの作製は、熱可塑性樹脂及び化学吸収剤又は疎水性物理吸着剤を溶融混練することにより行うことができる。熱可塑性樹脂としては、化学吸収層に関して挙げた樹脂を使用することができる。溶融混練は、例えばニーダー、ヘンシェルミキサー、ミキシングロールなどのバッチ式混練機、二軸混練機などの連続混練機などを用いて行うことができる。
(化学吸収層及び物理吸着層を作製する工程)
化学吸収層及び物理吸着層の作製は、化学吸収層用マスターバッチ及び物理吸着層用マスターバッチを各々製膜することにより行うことができる。製膜方法としては、これに限られないが、インフレーション法、Tダイ法、カレンダー法、キャスティング法、プレス成形、押出成形又は射出成形等を挙げることができる。化学吸収層及び物理吸着層がスキン層を有する場合は、共押出インフレーション法及び共押出Tダイ法等で製膜することができる。
(第1の積層フィルム及び第2の積層フィルムを作製する工程)
第1の積層フィルム及び第2の積層フィルムを作製する工程は、化学吸収層及び物理吸着層に第1の基材層及び第2の基材層をそれぞれ積層させることにより行うことができる。積層方法としては、これに限られないが、サンドラミネート法等の押出ラミネート法、ドライラミネート法等が挙げられる。好ましくは、押出しラミネート法を使用する。
(袋状にする工程)
袋状にする工程は、化学吸収層と物理吸着層とが対向するようにして第1の積層フィルムと第2の積層フィルムとを配置し、そして対向している化学吸収層及び物理吸着層の周縁を互いにヒートシールすることにより行うことができる。
包装袋の形態としては、例えば四方シール袋、ガゼット袋、四面体袋等が挙げられる。
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
《評価用フィルムの作製》
〈化学吸収層のサンプルフィルム〉
化学吸収剤としての酸化カルシウム(CaO、和光純薬工業株式会社)20質量%と、熱可塑性樹脂ペレット(低密度ポリエチレン、ペトロセン202、株式会社東ソー)80質量%とをドライブレンドし、ニーダーにより、150℃で加熱混練した後、得られた樹脂組成物を粉砕し、熱プレス機により150℃で加熱製膜することで、膜厚100μmの化学吸収層を有する化学吸収層のサンプルフィルムA(以下「化学吸収フィルムA」)を得た。
〈物理吸着層のサンプルフィルム〉
酸化カルシウムの代わりに、表1に示す疎水性物理吸着剤を用いたことを除き、化学吸収フィルムAと同様にして、膜厚100μmの物理吸着層を有する物理吸着層のサンプルフィルムA〜D(以下「物理吸着フィルムA〜D」)を得た。疎水性物理吸着剤としては、疎水性ゼオライト(ABSCENTS3000、ユニオン昭和株式会社)、メソポーラスシリカ(シグマアルドリッチジャパン合同会社)、活性炭(FP−3、大阪ガスケミカル株式会社)、落花生殻(粉体)を用いた。
〈ポリエチレンフィルム〉
酸化カルシウムを含有させなかったことを除き、化学吸収フィルムAと同様にして、膜厚100μmのポリエチレンフィルムを得た。
《単独フィルムの評価:比較例》
〈吸湿挙動の評価〉
作製した上記のフィルムを、5×5cm角に切り出し、切り出したフィルム1枚と、温湿度ロガー(ハイグロクロン、株式会社KNラボラトリーズ)とを、23℃55%RHの空気と共に140mLのガラス瓶に入れ、23℃55%RHの環境で1日間保管し、瓶内の湿度を経時的に測定した。結果を図2に示す。
次いで、ガラス瓶に入れたフィルムを同種のフィルム2枚とし、かつ温湿度ロガーをDICKSON TK500(DICKSON社)に変更したことを除き、上記と同様の測定を行った。結果を図3に示す。
図2から、酸化カルシウムを用いたフィルムでは平衡湿度が35%RHを下回っていること、並びに疎水性物理吸着剤を用いたフィルムでは平衡湿度が35%RHを上回っていることが理解できよう。また、図3から、瓶内に封入したフィルムの枚数、すなわち瓶内に存在する化学吸収剤又は疎水性物理吸着剤の含有量を増加させても、この平衡湿度は変化しないことが理解できよう。
〈ガス吸収量の評価〉
作製した上記のフィルムを、5×5cm角に切り出し、フィルムの質量を測定した。次いで、切り出したフィルムと、イソブチルアミン2mLを充填したガラス瓶とを、140mLのガラス瓶に入れて23℃55%RHの環境で7日間密閉保管し、そして保管後のフィルムの質量を測定した。保管前後の質量変化から、ガス吸収量を算出した。
《対向フィルムの評価:実施例》
また、作製した上記のフィルムを、表2に示すように組み合わせて互いに対向させて配置し、比較例と同様にして、実施例の吸湿挙動及びガス吸収量を算出した。
結果を表1及び2、並びに図4に示す。なお、表2の実施例において言及している「増加倍率」は、対向させたそれぞれのフィルムを単独で封入した場合における数値と比較したときの増加倍率を言うものであり、「理論値」は、対向させたそれぞれのフィルムを単独で封入した場合における数値である。
Figure 0006832714
Figure 0006832714
表2から、化学吸収剤を含有しているフィルム、及び平衡湿度が35%RH以上である疎水性物理吸着剤を含有しているフィルムを対向させて封入した場合には、それぞれのフィルムを単独で封入した場合と比較して、向上したガス吸着能力を有していることが理解できよう。
更に、図4から、上記の二種のフィルムを対向させて封入した場合には、それぞれのフィルムを単独で封入した場合と比較して、瓶内の湿度が有意に低減できていることが理解できよう。
10 第1の積層フィルム
12 化学吸収層
12a シール部
14 第1の基材層
20 第2の積層フィルム
22 物理吸着層
22a シール部
24 第2の基材層
100 包装袋

Claims (8)

  1. 化学吸収剤を含有している化学吸収層、及び第1の基材層を有する、第1の積層フィルム、並びに
    疎水性物理吸着剤を含有している物理吸着層、及び第2の基材層を有する第2の積層フィルム、
    を有し、
    前記化学吸収層と前記物理吸着層とが対向するようにして、前記第1の積層フィルム及び前記第2の積層フィルムが配置されており、かつ対向している前記化学吸収層及び前記物理吸着層の周縁が互いにヒートシールされており、かつ
    前記物理吸着剤の平衡湿度が、35%RH以上である、
    包装袋。
  2. 前記化学吸収剤の平衡湿度が、35%RH以下である、請求項1に記載の包装袋。
  3. 前記第1の基材層及び/又は第2の基材層がバリア層及び樹脂層を含む、請求項1又は2に記載の包装袋。
  4. 前記化学吸収層又は前記物理吸着層が、スキン層を更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の包装袋。
  5. 前記化学吸収剤が、酸化カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の包装袋。
  6. 前記物理吸着剤が、疎水性ゼオライト、活性炭、メソポーラス物質、植物殻粉体及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の包装袋。
  7. 内容物、及び
    前記内容物を収納している請求項1〜6のいずれか一項に記載の包装袋
    を含む、内容物入り包装袋。
  8. 熱可塑性樹脂及び化学吸収剤を溶融混練して化学吸収層用マスターバッチを作製する工程、
    熱可塑性樹脂及び平衡湿度が35%RH以上である疎水性物理吸着剤を溶融混練して物理吸着層用マスターバッチを作製する工程、
    前記化学吸収層用マスターバッチ及び前記物理吸着層用マスターバッチを各々製膜して化学吸収層及び物理吸着層を作製する工程、
    前記化学吸収層及び前記物理吸着層に第1の基材層及び第2の基材層をそれぞれ積層させて、第1の積層フィルム及び第2の積層フィルムを作製する工程、並びに
    前記化学吸収層と前記物理吸着層とが対向するようにして前記第1の積層フィルムと前記第2の積層フィルムとを配置し、そして対向している前記化学吸収層及び前記物理吸着層の周縁を互いにヒートシールして袋状にする工程
    を含む、包装袋の製造方法。
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