JP2010006937A - 難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

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貴之 石川
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Abstract

【課題】成形性と難燃性と靱性・ウエルド特性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)固有粘度(IV)が0.8dL/g以上であるポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、(B)特定の臭素化エポキシ化合物と、(C)特定の臭素化ポリアクリレートとを、(B)成分と(C)成分との合計量として15〜50重量部、(D)酸化アンチモン3〜20重量部、(E)不飽和カルボン酸及びその誘導体から選ばれた少なくとも1種で変性した変性オレフィン系重合体1〜7重量部および(F)フッ素含有樹脂0〜0.5重量部を配合してなり、かつ(B)成分と(C)成分の重量割合が(B)/(C)=97/3〜50/50の範囲にある難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、優れた成形性、難燃性、靱性・ウエルド特性を有する難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及び成形品に関するものである。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、その優れた耐熱性、機械特性、耐薬品性等を活かして、電気・電子部品、自動車部品、機構部品等に用途を伸ばしている。電気・電子部品、産業機器、建築用途においては、電気部品からの発火、産業機器では溶接、スパッタ等による延焼の危険性から難燃性が強く求められており、難燃剤を配合した組成物が適用されている。
ポリブチレンテレフタレート樹脂の難燃剤としては、臭素化ポリカーボネートオリゴマや臭素化エポキシオリゴマ、臭素化ポリアクリレート等が検討されてきたが、一方、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂を使用するこれら成形部品については、生産性向上の観点から、圧入、スナップフィット等の易組立性が求められるようになってきた。靱性やウエルド強度が十分でないと、これらの組み立て時に成形品が破損するという問題が発生する。
臭素化ポリカーボネートオリゴマは、ポリブチレンテレフタレート樹脂の難燃剤として広く一般的に用いられているが、靱性・ウエルド強度の低下という難点があるのみならず、ポリブチレンテレフタレートとのエステル交換反応を引き起こすために滞留に対する安定性が不良という問題点を有している。
また臭素化エポキシオリゴマは、成形時の滞留により粘度が著しく増大するという欠点を有しており、臭素化エポキシ化合物の末端のエポキシ基をトリブロモフェノール等の化合物で封鎖して滞留時の粘度上昇を抑えた臭素化エポキシ化合物の使用も試みられている。しかしながら、何れも十分な難燃性を得るには所定量の添加が必要であり、これによる靱性・ウエルド特性の低下は無視できない。
臭素化ポリアクリレートは、比較的、靱性低下は抑えられるものの、ウエルド特性が低下し、また機械特性、特に強度、弾性率が低下するという欠点を有している。
靱性・ウエルド特性を改良する方法としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂の分子量を上げる方法があるが、成形時の流動性を悪化させ、著しく生産性をを悪化させる。また、熱可塑性エラストマーを添加し靱性を改良することが考えられるが、ウエルド特性については改善効果は少なく、成形時の剥離や添加量が多い場合には難燃性の低下、弾性率の低下等の問題がある。
特許文献1には、芳香族ポリエステルに、臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリアクリレート及び三酸化アンチモンを配合した難燃性ポリエステル樹脂組成物が記載され、難燃性は確保されるもののウエルドの伸びは十分でない。
一方、特許文献2には、合成樹脂製内筒/外側に補強部材/さらに外側に合成樹脂成型の本体部を一体にして、補強部材が露出しないように被覆している合成樹脂製管継手の記載があるものの、近年では管継手等の産業機器に対する難燃性も重要視されており、難燃性と圧入特性を両立する樹脂材料が求められていた。
特開2000−256545号公報 特開平2−11990号公報
このように従来の技術では、良好な成形性と難燃性と靱性・ウエルド特性を満足する組成物は得られていなかった。
本発明は上述の事情を背景としてなされたものであり、成形性と難燃性と靱性・ウエルド特性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を得ることを目的とする。
本発明者らは、ポリブチレンテレフタレート樹脂の成形加工性、靱性・ウエルド特性等を改良すべく鋭意研究した結果、特定のポリブチレンテレフタレート樹脂に臭素化エポキシ化合物と臭素化ポリアクリレートとを特定の比率で併用して難燃化し、更に特定の変性オレフィン系重合体を配合した組成物が上述の目的に合致することを見いだし本発明に到達した。
すなわち、本発明は、
(A)固有粘度(IV)が0.8dL/g以上であるポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、
(B)下記一般式(I)又は(II)で表される臭素化エポキシ化合物と、
(C)下記一般式(III)で表される臭素化ポリアクリレートとを、
臭素化エポキシ化合物(B)と臭素化ポリアクリレート(C)との合計量として15〜50重量部、
(D)酸化アンチモン3〜20重量部
(E)不飽和カルボン酸及びその誘導体から選ばれた少なくとも1種で変性した変性オレフィン系重合体1〜7重量部および
(F)フッ素含有樹脂0〜0.5重量部を配合してなり、
かつ臭素化エポキシ化合物(B)と臭素化ポリアクリレート(C)の重量割合が(B)/(C)=97/3〜50/50の範囲にある難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物である。
Figure 2010006937
Figure 2010006937
Figure 2010006937
本発明によれば、良好な成形性と難燃性を備えながらも、靱性・ウエルド特性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。まず本発明の樹脂組成物の基礎樹脂である(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂とは、少なくともテレフタル酸またはそのエステル形成誘導体(低級アルコールエステルなど)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素数4のアルキレングリコール(1,4 −ブタンジオール)又はそのエステル形成誘導体を含むグリコール成分とを重縮合して得られるポリブチレンテレフタレート系樹脂である。ポリブチレンテレフタレート樹脂はホモポリブチレンテレフタレート樹脂に限らず、ブチレンテレフタレート単位を60モル%以上(特に75〜95モル%程度)含有する共重合体であってもよい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂において、テレフタル酸及びそのエステル形成誘導体以外のジカルボン酸成分(コモノマー成分)としては、例えば、芳香族ジカルボン酸成分(イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などの、C6〜C12 アリールジカルボン酸など)、脂肪族ジカルボン酸成分(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC4〜C16 アルキルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などのC5〜C10 シクロアルキルジカルボン酸など)、またはそれらのエステル形成誘導体などが例示できる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
好ましいジカルボン酸成分(コモノマー成分)には、芳香族ジカルボン酸成分(特にイソフタル酸などのC6〜C10 アリールジカルボン酸)、脂肪族ジカルボン酸成分(特にアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC6〜C12 アルキルジカルボン酸)が含まれる。
1,4 −ブタンジオール以外のグリコール成分(コモノマー成分)としては、例えば、脂肪族ジオール成分〔例えば、アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3 −ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3 −オクタンジオールなどのC2〜C10 アルキレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのポリオキシC2〜C4アルキレングリコールなど)、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAなどの脂環式ジオールなど〕、芳香族ジオール成分〔ビスフェノールA、4,4 −ジヒドロキシビフェニルなどの芳香族アルコール、ビスフェノールAのC2〜C4アルキレンオキサイド付加体(例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体など)など〕、またはそれらのエステル形成誘導体などが挙げられる。これらのグリコール成分も単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
好ましいグリコール成分(コモノマー成分)には、脂肪族ジオール成分(特に、C2〜C6アルキレングリコール、ジエチレングリコールなどのポリオキシC2〜C3アルキレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオール)が含まれる。
前記化合物をモノマー成分とする重縮合により生成するポリブチレンテレフタレート系重合体は、いずれも本発明の(A)成分として使用できる。ホモポリブチレンテレフタレート重合体とポリブチレンテレフタレート共重合体との併用も有用である。
また、使用する(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)は0.8dL/g以上、好ましくは0.8〜1.05dL/g程度である。固有粘度が0.8dL/g未満では、樹脂組成物の機械的特性、特に靱性が低下し、1.05dL/gを超えると樹脂組成物の流動性が低下する。また、異なる固有粘度を有するポリブチレンテレフタレート樹脂をブレンドすることによって、例えば固有粘度0.70dL/gと1.20dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂をブレンドすることによって、0.8dL/g以上の固有粘度を実現してもよい。尚、固有粘度は、例えば、o−クロロフェノール中、温度35℃の条件で測定できる。
本発明に用いられる(B)成分の臭素化エポキシ化合物は、下記一般式(I)又は(II)で表されるポリ(テトラブロム)ビスフェノールA型エポキシ化合物である。
Figure 2010006937
Figure 2010006937
これは、例えばテトラブロムビスフェノールAとエピクロルヒドリンを反応させて得られるテトラブロムビスフェノールAジグリシジルエーテルに、更にそのエポキシ基1当量に対して、テトラブロムビスフェノールAをその水酸基が0〜0.96当量になるように混合し、塩基性触媒、例えば水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、トリブチルアミン等の存在下に100〜250℃で加熱反応させることにより得ることができる。
この臭素化エポキシ化合物の平均重合度nは11〜50、好ましくは11〜20である。この平均重合度が11より小さい場合には、臭素化エポキシ化合物のエポキシ当量が大きくなり、ポリブチレンテレフタレート樹脂との反応による成形加工性の低下を抑制することが困難になり、また50より大きい場合にはポリブチレンテレフタレート樹脂の流動性が低下してしまう。
本発明に用いられる(C)成分の臭素化ポリアクリレートは、下記一般式(III)で表されるポリマーであり、臭素化ベンジルアクリレートまたは臭素化ベンジルメタクリレートを重合させたものである。
Figure 2010006937
この臭素化ポリアクリレートの具体的な例としては、ポリペンタブロムベンジルアクリレート、ポリテトラブロムベンジルアクリレート、ポリトリブロムベンジルアクリレート、ポリペンタブロムベンジルメタクリレート等があげられるが、ポリペンタブロムベンジルアクリレートが特に好ましい。
この臭素化ポリアクリレートは少量の割合で他のビニル系モノマーと共重合されていても構わないが、それらの共重合割合は10モル%以下が好ましい。
臭素化ポリアクリレートの平均重合度mは20〜160、好ましくは50〜120である。この平均重合度が20未満の場合にはポリブチレンテレフタレート樹脂の耐熱性低下等をもたらし、また160より大きい場合にはポリブチレンテレフタレート樹脂の流動性が低下してしまう。
(B)臭素化エポキシ化合物と(C)臭素化ポリアクリレートの配合量は、両者の合計量として(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部当り、15〜50重量部である。この配合量が15重量部より小さい場合にはポリブチレンテレフタレート樹脂の難燃化効果が十分でなく、また50重量部より大きい場合には組成物の機械特性が低下する等の欠点が現れてくる。また、(B)成分と(C)成分の配合割合は(B)/(C)=97/3〜50/50、好ましくは95/5〜70/30である。この配合割合がこの範囲から外れると本発明の靱性、ウエルド特性改良効果が十分発揮されない。
本発明に用いる(D)成分である酸化アンチモンの配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部当り3〜20重量部である。この配合量が3重量部より小さい場合には難燃助剤としての効果が十分発揮されず、また20重量部より大きい場合には機械特的性が低下する等の欠点が現れてくる。また(D)成分の酸化アンチモンとしては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンのような金属酸化物が使用できる。三酸化アンチモンとしては、純度98%以上、粒径0.1〜5μmのものが好ましく用いられるが、純度99%以上、粒径0.3〜4μmのものが特に好ましい。
本発明で(E)成分として用いられる変性オレフィン系重合体は、オレフィン系重合体(e-1)が、不飽和カルボン酸及びその誘導体(e-2)から選ばれた少なくとも1種で変性されている。
オレフィン系重合体(e-1)には、オレフィン系単量体の単独重合体又は共重合体、又はオレフィン系単量体とα,β−不飽和カルボン酸又はそのエステルとの共重合体が含まれる。上記オレフィン系単量体の単独重合体又は共重合体は、オレフィン系単量体から選択された少なくとも1種の単量体から構成され、上記オレフィン系単量体とα,β−不飽和カルボン酸またはそのエステルとの共重合体は、オレフィン系単量体から選択された少なくとも1種の単量体とα,β−不飽和カルボン酸又はそのエステルから選択された少なくとも1種の単量体とから構成され、このようなオレフィン系重合体はいずれも好ましく使用できる。共重合体は、ランダム、ブロック又はグラフト共重合体などである。
オレフィン系単量体として、α−オレフィン(エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン)などの不飽和炭化水素単量体が挙げられる。これらの単量体は、単独又は二種以上組合せて使用できる。好ましいオレフィン系単量体は、少なくともエチレンまたはプロピレン(特に、エチレン)を含む。
前記α,β−不飽和カルボン酸及びそのエステルとしては、α,β−不飽和カルボン酸(例えば、(メタ)アクリル酸など)、(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C1-10アルキルエステル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシC2-4 アルキルエステル)などが例示できる。好ましいα,β−不飽和カルボン酸エステルは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸C1-4 アルキルエステルであり、特に、アクリル酸C1-4 アルキルエステル(アクリル酸エチルなど)が好ましい。これらのα,β−不飽和カルボン酸又はそのエステルは、単独または二種以上組合せて使用できる。α,β−不飽和カルボン酸又はそのエステルの使用量は、例えば、単量体全体の0〜30モル%、好ましくは1〜20モル%程度の範囲から選択できる。
なお、オレフィン系単量体は、前記成分以外に、非共役ジエン化合物(1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、2,5−ノルボナジエンなどの炭素数6〜10の非共役ジエン)、共役ジエン(ブタジエン、イソプレン、ピペリレンなどの炭素数4〜6の共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン)、ビニルエーテル(例えば、ビニルメチルエーテル)、及びビニル基を有するポリジオルガノシロキサン(ビニル含有シリコーン)などを本発明の効果を阻害しない範囲で併用してもよい。
具体的なオレフィン系重合体(e-1)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体が挙げられる。
不飽和カルボン酸又はその誘導体(e-2)としては、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ナジック酸、メチルナジック酸、アリルコハク酸、(メタ)アクリル酸などが挙げられる。これらの変性成分は単独で又は二種以上組合せて使用できる。通常、無水マレイン酸及び/又は(メタ)アクリル酸が用いられる。
変性オレフィン系重合体(E)において、不飽和カルボン酸又はその誘導体(e-2)による変性量(導入量)は、0.1〜5重量%(例えば、0.1〜4重量%)程度、好ましくは0.5〜3重量%程度である。不飽和カルボン酸又はその誘導体(e-2)による変性量が少なすぎる場合、変性オレフィン系重合体(E)がポリブチレンテレフタレート樹脂成分(A)から著しく分離し、成形時に剥離及びモールドデポジットなどの問題が生じる可能性がある。一方、不飽和カルボン酸又はその誘導体(e-2)による変性量が多すぎる場合、残留する未反応の(e-2)成分により異臭が発生したりするなどの不具合が生じる。
変性オレフィン系重合体(E)を得る方法としては、例えば、不飽和カルボン酸又はその誘導体(e-2)を、溶融状態で適切な有機過酸化物などのラジカル開始剤と加熱して、オレフィン系重合体(e-1)にグラフト変性させる方法(グラフト共重合体を生成させる方法)、少なくともオレフィン系単量体を含む単量体(オレフィン単量体単独か、又はオレフィン単量体と(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリル酸との混合単量体)と、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体(e-2)とを重合する方法などが挙げられる。特に、オレフィン系重合体(e-1)に、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体(e-2)をグラフト共重合させる方法は、各成分の組成比をコントロールすることが容易である。
変性オレフィン系重合体(E)としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性(エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体)、無水マレイン酸変性(エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体)、これらの重合体に対応する(メタ)アクリル酸変性オレフィン系重合体などが例示できる。
複数の変性オレフィン系重合体(E)を組合せて使用してもよい。例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレンと無水マレイン酸(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)との組合せ、無水マレイン酸変性ポリプロピレンと無水マレイン酸変性(エチレン−メタクリル酸メチル共重合体)との組合せなどを使用できる。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物において、変性オレフィン系重合体(E)の添加量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100重量部に対して、1〜7重量部である。(E)成分が1重量部未満では、靱性・ウエルド特性等の特性が大きく改善されず、7重量部を超えると、難燃性及び成形性が低下する。
本発明では、更に燃焼性を向上させるため、燃焼時の溶融粒の滴下を抑制する化合物として、(F)フッ素含有樹脂を配合するのが好ましい。(F)フッ素含有樹脂としては、フッ素含有単量体の単独又は共重合体、例えば、フッ素含有単量体(テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルなどの)単独又は共重合体;前記フッ素含有単量体と他の共重合性単量体(エチレン、プロピレンなどのオレフィン系単量体、(メタ)アクリレートなどのアクリル系単量体など)との共重合体などが含まれる。
このようなフッ素含有樹脂としては、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライドなどの単独重合体;テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体などの共重合体が例示される。フッ素含有樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいフッ素含有樹脂としては、テトラフルオロエチレンの単独又は共重合体、テトラフルオロエチレンと(メタ)アクリレートとの共重合体などが挙げられる。
フッ素含有樹脂(F)の添加量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して0.5重量部以下であることが好ましい。0.5重量部を超えると靱性が不足し、成形品が割れやすくなるおそれがある。特に好ましい配合量は0.1〜0.5重量部である。
本発明の樹脂組成物には、慣用の添加剤、例えば、公知の安定剤(紫外線吸収剤、光安定剤など)、帯電防止剤、滑剤、離型剤、上記以外の難燃剤や難燃助剤、結晶化核剤、着色剤(染料や顔料など)、潤滑、可塑剤、上記以外のドリッピング防止剤等を添加してもよい。
更に、耐熱性向上を目的として、ヒンダードフェノール化合物、芳香族アミン化合物、有機リン化合物、硫黄化合物等の酸化防止剤あるいは熱安定剤を添加することもできる。また、溶融粘度安定性、耐加水分解性の改良等の目的には、各種エポキシ化合物、オキサゾリン化合物等を添加してもよい。エポキシ化合物としては、ビスフェノール−Aとエピクロルヒドリンを反応させて得られるビスフェノール−A型エポキシ化合物、各種グリコールやグリセロールとエピクロルヒドリンとの反応から得られる脂肪族グリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ化合物、芳香族または脂肪族カルボン酸型エポキシ化合物、脂環化合物型エポキシ化合物等が好ましく、オキサゾリン化合物としては、芳香族または脂肪族ビスオキサゾリン、特に2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)が好ましい。
本発明の樹脂組成物には、更に他の樹脂成分、例えば、アクリル系樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、スチレン系樹脂(ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂など)などの熱可塑性樹脂;エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの軟質熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂(不飽和ポリエステルなど)、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂などを添加してもよい。これらの他の樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で充填剤(又は補強剤)を添加することができる。充填剤(又は補強剤)としては、無機充填剤[例えば、繊維状充填剤(ガラス繊維、ミルドガラスファイバー、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、カーボン繊維等の無機質繊維)、板状又は粉粒状充填剤(ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスバルーン、カーボンブラック、黒鉛、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー等の珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、アルミナ等の金属酸化物、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等の金属の炭酸塩や硫酸塩、更には炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素等)等]、有機充填剤(例えば、高融点の芳香族ポリエステル繊維、液晶性ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維、フッ素樹脂繊維、ポリイミド繊維等)等が例示される。
本発明の樹脂組成物は、これらの配合成分が均一に分散されていることが好ましく、その配合方法は任意の方法を用いることができる。例えば配合成分の全部または一部を加熱した単軸、二軸等の押出機に一括または分割して供給し、溶融混練により均質化された後に針金状に押出された溶融樹脂を冷却固化させ、次いで所望の長さに切断して粒状化する方法があるが、ブレンダー、ニーダー、ロール等他の混合機を用いた方法でもよい。また、これらを組合わせて用いたり、複数回繰り返すことにより配合成分を順次加える方法等もとることができる。 このようにして造られた成形用樹脂組成物から樹脂成形品を得るには、通常十分乾燥された状態に保ったまま射出成形機等の成形機に供して成形する。
本発明の樹脂組成物は、ISO11443に準拠した温度260℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度を300Pa・s以下とすることが可能である。さらには250Pa・s以下とすることも可能である。溶融粘度が300Pa・s以下でないと流動性が不足し、金型に樹脂が充填されない場合がある。
更にまた、組成物の構成原料をドライブレンドして直接成形機ホッパー内に投入し成形機中で溶融混練することも可能である。
本発明の樹脂組成物を溶融混練し、押出成形、射出成形、圧縮成形等の慣用の方法で成形することにより、成形体を得ることができる。本発明の樹脂組成物は特に射出成形に好適である。
本発明の樹脂組成物は、自動車部品用途、電気・電子部品用途において難燃性が必要とされ、靱性、耐衝撃性が求められる用途に有用であり、特に管継手に好適に用いられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の各種特性の測定は以下の方法によった。
(1)機械的特性:引張試験はISO527−1,2に、曲げ試験はISO178に、衝撃試験はISO179/1eA(シャルピー、ノッチ付)にそれぞれ準拠して測定した。
(2)燃焼性:米国アンダーライターラボラトリー社の定める方法(UL94)により評価した(試験片厚さ0.75mm)。
(3)溶融粘度:ISO11443に準拠し、キャピログラフ1B((株)TOYOSEIKI製)により、キャピラリーD=1.0m/m、L=20.0m/m、FLAT、剪断速度1000sec-1、温度260℃にて測定した。
(4)ウエルド特性:ISO527に準拠して測定した(試験片厚さ2mm、テストスピード5mm/min)。
(5)管継手特性1(圧入割れ試験):図1(a)に示す形状のポリブチレンテレフタレート樹脂製管継手(ボディ)1を射出成形により得た。次いで、このボディ1に、図1(b)、(c)に示す形状のSUS303製打ち込みハーフ4、5を圧入し、ボディ1が割れなかったかを評価した。圧入歪みはチューブ6側が0.05%、機器ネジ側は0.09%に設定した。
(6)管継手特性2(空転試験):上記圧入割れ試験で割れずに合格したサンプルを用いて、図2に示すように、樹脂製管継手(ボディ)1を万力にて固定し、トルクレンチにて打ち込みハーフ5を15.5kgf・cmのトルクで打ち込み、ハーフが空転しないかを確認した。
実施例1〜8、比較例1〜8
140℃で3時間熱風乾燥したポリブチレンテレフタレート樹脂及び、表1、2に示す各成分を表1、2に示す割合にて、予めタンブラーで均一に混合した後、スクリュー径各44mmのベント付き2軸押出機を用いて、真空に引きながらシリンダー温度260℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量50kg/hにて溶融混練し、ダイスから吐出するスレッドを冷却切断して成形用ペレットを得た。次いで、このペレットを用いて、射出容量49cm3の東芝機械(株)製IS40型射出成形機にて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃、射出圧力60MPa、冷却時間12秒、および全成形サイクル35秒の条件で各特性測定用の成形品を成形した。これらのペレット及び成形品を用いて各特性を測定した。結果をあわせて表1、2に示す。
また、使用した成分の詳細は以下の通りである。
(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂
・(A-1) ウインテックポリマー(株)製、固有粘度1.05dL/g
・(A-2) ウインテックポリマー(株)製、固有粘度0.83dL/g
・(A-3) ウインテックポリマー(株)製、固有粘度0.73dL/g
(B) 臭素化エポキシ化合物
・(B-1) 臭素化エポキシ化合物;デッド・シー・ブロミン社製、F3100
・(B-2) 臭素化エポキシ化合物;阪本薬品工業(株)製、SRT5000S
(C) 臭素化ポリアクリレート
・(C-1) ポリペンタブロムベンジルアクリレート;デッド・シー・ブロミン社製、FR1025
(D) 酸化アンチモン
・(D-1) 三酸化アンチモン;日本精鉱(株)製、PATOX-M
・(D-2) 五酸化アンチモン;日産化学工業(株)製、サンエポックNA1030
(E) 変性オレフィン系重合体
・(E-1) 無水マレイン酸変性オレフィン樹脂;三井化学(株)製、N-タフマーMP0620
・(E-2) 無水マレイン酸変性オレフィン樹脂;三井化学(株)製、N-タフマーMM6850
(F) フッ素含有樹脂
・(F-1) ポリテトラフルオロエチレン;旭硝子(株)製、フルオンCD-076
Figure 2010006937
Figure 2010006937
臭素化エポキシ化合物と臭素化ポリアクリレートと三酸化アンチモンを配合するだけでは、燃焼性はV-0を得られるもののウエルドの伸びが足りないため、圧入割れ試験で割れてしまう(比較例1)。これに対し、変性オレフィン系重合体を併用して適正量配合するとウエルドの伸びが向上し圧入割れ試験でも合格となり申し分ないレベルとなる(実施例1、8)。ここで、変性オレフィン系重合体の量が多すぎる場合、燃焼性が低下してしまう(比較例2)。
また、臭素化エポキシ化合物と臭素化ポリアクリレートの配合比率が適正な場合は、ウエルドの伸びが同様に良好な物性が得られる(実施例2〜5)のに対し、上記比率が本発明規定外の場合(比較例5、6)では性能が劣るものとなる。
また、燃焼性向上のためにポリテトラフルオロエチレンを配合する場合、0.4重量部の配合ならば良好な特性が保たれるが(実施例6)、配合量が0.7重量部となるとウエルドの伸びが低下し、圧入割れ試験で割れてしまう(比較例8)。
更に、臭素化エポキシ化合物と臭素化ポリアクリレートの量が少なすぎたり多すぎたりした場合(比較例3、4)、燃焼性が悪くなったり、ウエルドの伸びが低下し、圧入割れ試験で割れてしまう。
また、ポリブチレンテレフタレート樹脂として固有粘度が低いものを使用した場合、燃焼性が悪くなる(比較例7)。
また、三酸化アンチモンに代えて五酸化アンチモンを用いても同様の効果が得られる(実施例7)。
管継手の圧入割れ試験の状況を示す図であり、図1(a)はポリブチレンテレフタレート樹脂製管継手(ボディ)、図1(b)及び(c)はボディに圧入される打ち込みハーフを示す。 管継手の空転試験の状況を示す図である。
符号の説明
1 ポリブチレンテレフタレート樹脂製管継手(ボディ)
2 o−リング
3 o−リング
4 打ち込みハーフ
5 打ち込みハーフ
6 チューブ

Claims (5)

  1. (A)固有粘度(IV)が0.8dL/g以上であるポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、
    (B)下記一般式(I)又は(II)で表される臭素化エポキシ化合物と、
    (C)下記一般式(III)で表される臭素化ポリアクリレートとを、
    臭素化エポキシ化合物(B)と臭素化ポリアクリレート(C)との合計量として15〜50重量部、
    (D)酸化アンチモン3〜20重量部
    (E)不飽和カルボン酸及びその誘導体から選ばれた少なくとも1種で変性した変性オレフィン系重合体1〜7重量部および
    (F)フッ素含有樹脂0〜0.5重量部を配合してなり、
    かつ臭素化エポキシ化合物(B)と臭素化ポリアクリレート(C)の重量割合が(B)/(C)=97/3〜50/50の範囲にある難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
    Figure 2010006937
    Figure 2010006937
    Figure 2010006937
  2. 臭素化エポキシ化合物(B)と臭素化ポリアクリレート(C)の重量割合が(B)/(C)=95/5〜70/30の範囲にある請求項1記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  3. 変性オレフィン系重合体(E)が、オレフィン系重合体を無水マレイン酸で変性した重合体である請求項1又は2記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3の何れか1項記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形してなる成形品。
  5. 請求項1〜3の何れか1項記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形してなる管継手。
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