JP4771566B2 - 摺動性と難燃性に優れる樹脂組成物および樹脂成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、摺動性、難燃性に優れる樹脂組成物およびこれらの樹脂組成物を溶融成形して得られる樹脂成形体に関する。本発明は、とりわけOA機器や家電製品等の機構部品やケースに好適な材料を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
OA機器や家電製品などの摺動部分には、耐熱性、耐衝撃性、電気特性に優れ、寸法安定性も良好なことから、ポリカーボネート樹脂(以下、PC樹脂とも記す)が広く採用されている。OA機器や家電製品などに使用されるには、燃え難いことも必要であり、PC樹脂の難燃化が検討されている。
PC樹脂を難燃化する技術として、臭素化ビフェニルやテトラブロモビスフェノールA等の臭素系難燃化剤を添加する方法(例えば、西沢仁著、高分子難燃化の技術と応用、242頁等参照)や、特開平4−300968号公報に開示されるリン酸エステル化合物を添加する方法等が知られている。
しかし、臭素系難燃化剤を添加したものは、難燃性は向上するが、焼却廃棄時にダイオキシン類が発生するために、環境汚染を引き起こすという問題があった。
また、リン酸エステル化合物を添加したものは、難燃性は向上するが、摺動性、衝撃強度が低下するという問題があった。
一方、PC樹脂、ポリオレフィン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、および、アミノカルボン酸からなるPC/ポリオレフィン系樹脂組成物が、特開平8−157664号公報に提案されている。この組成物は、元来、PC樹脂とポリオレフィン樹脂との相溶性が低いために、射出成形等の成形法によっては成形品にした場合に、起こりうる層状剥離を有効に阻止したもので、摺動性にも優れた組成物であるが、難燃性は兼ね備えていないものであった。また、特公平1−17501号公報には、PC樹脂とアクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体からなる樹脂組成物が開示されており、この組成物も摺動性には優れるものの、難燃性には劣るものであった。
このように、摺動性と難燃性のバランスのとれたPC系樹脂組成物は、工業的に未だ得られていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、摺動性、難燃性に優れる樹脂組成物およびこれらの樹脂組成物を溶融成形して得られる樹脂成形体を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
発明者等は、ポリカーボネート樹脂に、変性されたポリオレフィン樹脂とアミノカルボン酸からなる相溶化剤と、特定のリン酸エステル系の難燃化剤とを添加すると、リン酸エステル系の難燃化剤が、難燃化剤として作用するばかりでなく、摺動初期の摩耗量を低減する摺動剤としても作用することを見出し、これにより、ポリカーボネート樹脂と、変性されたポリオレフィン樹脂とアミノカルボン酸からなる相溶化剤と、リン酸エステル系の難燃化剤とを含有する樹脂組成物が、摺動性と難燃性に優れることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0005】
すなわち、本願第1の発明は、
(A)ポリカーボネート樹脂
(B)変性されたポリオレフィン系樹脂
(C)HOOC−R−NH2で表される化合物(ただし、式中Rは、炭素数5以上のアルキレン基、アルキリデン基、オリゴメチレン基、または、置換基を有してもよいフェニレン基、もしくは、ナフチレン基を示す。)、および、
(D)トリフェニルホスフェートまたは下記式(1)で表される化合物
【化2】
(ただし、式中、Arはフェニル基を、Ar’基はフェニレン基、ビフェニレン基、および2,2−プロピリデンジフェニレン基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を示し、ArとAr’はいずれも置換基を有してもよい。nは1以上の整数を示す。)を含有する摺動性と難燃性に優れる樹脂組成物である。本願第1の発明の樹脂組成物において、各成分の配合割合が、(A)70〜97重量%、(B)1〜20重量%、(C)0.01〜5重量%、(D)1〜10重量%であるのが好ましい。(B)成分は、変性されて極性基を有するポリオレフィン樹脂が好ましい。さらに好ましくは、極性基はカルボキシル基のような酸基、酸無水物基のような酸誘導体、エポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0006】
本願第2の発明は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、および、(D)成分に、さらに、(E)ポリオレフィン樹脂を含有する摺動性と難燃性に優れる樹脂組成物である。
本願第2の発明の樹脂組成物において、各成分の配合割合が、(A)70〜96重量%、(B)1〜20重量%、(C)0.01〜5重量%、(D)1〜10重量%、(E)1〜20重量%であるのが好ましい。
【0007】
本願第3の発明は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、および、(E)成分に、さらに、(F)フッ素樹脂を含有する摺動性と難燃性に優れる樹脂組成物である。
本願第3の発明の樹脂組成物において、各成分の配合割合が、(A)70〜96重量%、(B)1〜20重量%、(C)0.01〜5重量%、(D)1〜10重量%、(E)1〜20重量%、(F)0.01〜2重量%であるのが好ましい。
【0008】
本願第4の発明は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、および、(D)成分に、さらに、(G)ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂およびABS−PVC樹脂からなる群より選ばれる樹脂を含有する摺動性と難燃性に優れる樹脂組成物である。本願第4の発明の樹脂組成物において、各成分の配合割合が、(A)50〜95重量%、(B)1〜20重量%、(C)0.01〜5重量%、(D)1〜10重量%、(G)4〜40重量%であるのが好ましい。
【0009】
本願第5の発明は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、および、(D)成分に、さらに、(F)成分、および、(G)成分を含有する摺動性と難燃性に優れる樹脂組成物である。
本願第5の発明の樹脂組成物において、各成分の配合割合が、(A)50〜95重量%、(B)1〜20重量%、(C)0.01〜5重量%、(D)1〜10重量%、(F)0.01〜2重量%、(G)4〜40重量%であるのが好ましい。
【0010】
本願第6の発明は、上記本願第1〜5の発明に係る樹脂組成物を溶融成形して得られる摺動性と難燃性に優れる樹脂成形体である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の樹脂組成物と樹脂成形体について、詳細に説明する。
【0012】
(本願第1の発明)
本願第1の発明は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、および、(D)成分を含有する樹脂組成物である。
(A)PC樹脂
本願第1の発明の(A)成分として用いられるPC樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物、または、これと少量のポリヒドロキシ化合物と、ホスゲン、炭酸、もしくはそのジエステルとを反応させることによって得られる熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体である。該ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート等が挙げられる。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。
これらのなかでも耐熱性、機械的特性、成形性等に優れる樹脂組成物を得ることができる点で、ビスフェノールAが好ましい。
これらは、1種単独でも2種以上の混合物としても用いられる。2種以上の混合物としては、ビスフェノールAとテトラメチルビスフェノールA、ビスフェノールAとテトラブロモビスフェノールAの組み合わせが好ましい。
【0013】
なお、本発明で(A)成分として用いられるPC樹脂は、メルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、280℃、荷重:2.16kg)が、1〜30g/10分であるものが好ましく、さらに4〜20g/10分であるものがより好ましい。MFRが1g/10分未満では、得られる樹脂組成物の成形加工性が劣り、また、30g/10分を超えると、樹脂組成物から得られる樹脂成形体の衝撃強度が低下する。
(A)成分として用いられるPC樹脂の分子量は、特に限定されないが、好ましくは数平均分子量1000〜100000(ポリスチレン換算)、さらに好ましくは、5000〜40000である。分子量が1000未満では、得られる樹脂組成物の衝撃強度等の特性値が低下し、100000超であると、成形加工性が低下する。
【0014】
(A)成分として用いられるPC樹脂の含有量は、好ましくは70〜97重量%、さらに好ましくは、80〜97重量%、より好ましくは、85〜95重量%である。含有量が70重量%未満であると、得られる樹脂組成物の耐熱性、耐衝撃性、寸法精度が低下し、97重量%を超えると、得られる樹脂組成物の摺動性が劣る。
【0015】
(B)変性されたポリオレフィン樹脂
(B)成分は、ポリオレフィン樹脂の変性されたものであって、ポリオレフィン樹脂が変性されたものであれば特に限定されない。好ましくは、(B)成分は、変性されて極性基を有するポリオレフィン樹脂である。
変性を受けるポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン系やポリエチレン系の樹脂、例えば、結晶性ポリプロピレンホモポリマー、結晶性ポリエチレン−ポリプロピレンブロック共重合体、結晶性ポリエチレン−ポリプロピレンランダム共重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、流動性超高分子量ポリエチレン、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム等が挙げられる。これらの中でも、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、および、流動性超高分子量ポリエチレンが、得られる組成物の摺動性向上の観点から好ましい。
(B)成分は、上述のように、これらのポリオレフィン樹脂が変性されて極性基を有するものが好ましい。さらに好ましくは、極性基は、エポキシ基、カルボキシル基のような酸基、および、酸無水物基のような酸の誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の官能基である。
具体的には、上述したポリオレフィン樹脂に、エポキシ基、カルボキシル基、および、酸無水物基等の極性基を含むモノマーを共重合させたものを好ましく用いることができ、さらには、グラフト共重合させたものをより好ましく用いることができる。
【0016】
エポキシ基を含むモノマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレート、ブチルグリシジルマレート、ブチルグリシジルフマレート、プロピルグリシジルフマレート、グリシジルアクリレート、N−(4−(2,3−エポキシ)−3,5−ジメチル)アクリルアミド等が好ましく挙げられる。
カルボキシル基を含むモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等が挙げられる。
また、酸無水物を含むモノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。
上述の極性基を有するモノマーの中でも、反応性及び入手の容易さから、アクリル酸、無水マレイン酸が好適である。
【0017】
変性されたポリオレフィン樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、特に限定されないが、好ましくは、ポリプロピレン系樹脂の場合、0.1〜60g/10分(230℃で、荷重:2.16kg)であり、ポリエチレン系樹脂の場合、0.1〜60g/10分(190℃、荷重2.16kg)である。この値よりMFRが小さい場合は、得られる樹脂組成物の成形加工性が低下し、この値よりMFRが大きい場合は、機械的強度が低下する。
【0018】
(B)成分は、後述する(C)成分と反応し、PC樹脂とポリオレフィン樹脂との両方に相溶性を有する相溶化剤を発生すると考えられる。このため、前記(A)成分であるPC樹脂と(B)成分の分散性が良好となり、得られる樹脂組成物の摺動性が向上し、さらに、PC樹脂とポリオレフィン樹脂との低相溶性により起こりうる、樹脂組成物から得られる樹脂成形品の層状剥離の改善効果が向上する。
【0019】
変性されたポリオレフィン樹脂を製造する方法は、いかなる方法を用いても良い。例えば、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー型混練機などを用いて、ラジカル開始剤の存在下もしくは不存在下で、ポリオレフィン系樹脂と極性基を有するモノマーとを溶融混練する方法、ポリオレフィン系樹脂を構成するモノマーと、極性基を有するモノマーとを共重合させる方法等が挙げられる。
変性されたポリオレフィン樹脂における極性基を有するモノマーの含有量は、0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。極性基を有するモノマーの含有量がこの範囲よりも少ないと、得られる樹脂組成物におけるPC樹脂とポリオレフィン系樹脂との相溶性が低下して樹脂組成物から得られる樹脂成形体に層状剥離が生じたり、得られる樹脂組成物の摺動性が低下する。一方、この範囲より多いと耐熱性等が低下する。
【0020】
本願第1の発明に係る樹脂組成物における(B)成分の含有量は、好ましくは1〜20重量%であり、さらに好ましくは1〜15重量%である。(B)成分の含有量が上記範囲よりも大きい場合は、得られる樹脂組成物の機械的強度、耐熱性が低下し、上記範囲よりも少ない場合は、(A)成分であるPC樹脂とポリオレフィン樹脂との相溶性が低下し、層状剥離を生じるとともに、摺動性も低下する。
【0021】
(C)HOOC−R−NH2 で表される化合物
(C)成分は、HOOC−R−NH2 で表されるアミノカルボン酸化合物である。式中Rは、炭素数5以上のアルキレン基、アルキリデン基、オリゴメチレン基、フェニレン基またはナフチレン基を示し、フェニレン基、ナフチレン基は置換基を有してもよい。
Rの炭素数の上限は、特に限定されないが、好ましくは、20以下、より好ましくは、12以下がよい。炭素数が非常に大きい化合物は、工業的に入手が困難になるばかりでなく、得られた組成物の耐熱性が低下する。Rの炭素数が、5未満の場合は、組成物の製造中に蒸発、昇華し易い。
アルキレン基としては、例えば、ペンチレン基(−C5 H10−)、ヘキシレン基(−C6 H12−)等が挙げられる。アルキリデン基としては、直鎖型、分岐型、脂環型の基の何れでも良い。オリゴメチレン基としては、例えば、エチレン基が直鎖状に5〜20個結合した構造のものが挙げられ、フェニレン基としては、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、4,4−ジフェニレン基等が挙げられる。ナフチレン基としては、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基等が挙げられる。また、フェニレン基、ナフチレン基は、置換基を有しても良く、例えば、アルキル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アミノ基、アルコキシル基等の置換基を有していても良い。
(C)成分の具体例としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、11−アミノウンデカン酸、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、2−アミノ−6−ナフタレンカルボン酸、2−アミノ−7−ナフタレンカルボン酸等が挙げられる。
【0022】
前述したように(B)成分と(C)成分は、混練過程において化学反応を起こし、PC樹脂成分とポリオレフィン樹脂成分からなる、PC樹脂とポリオレフィン樹脂との両方に相溶性を有する相溶化剤を発生すると考えられる。例えば、(B)成分として、無水マレイン酸により変性されたポリエチレン樹脂を例にとると、(C)成分であるアミノカルボン酸と下記式に示すような化学反応を起こし、相溶化剤を発生すると考えられる。このため、(A)成分と(B)成分の分散性が改善され、得られる樹脂組成物の摺動性が向上し層状剥離が改善される。
【0023】
【化3】
【0024】
本願第1の樹脂組成物における(C)成分の含有量は、好ましくは、0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.03〜1重量%である。(C)成分の含有量が上記範囲よりも大きい場合は、得られる樹脂組成物の機械的強度、耐熱性が低下し、上記範囲よりも少ない場合は(A)成分であるPC樹脂とポリオレフィン樹脂との相溶性が低下し、層状剥離を生じるとともに、摺動性も低下する。
【0025】
(D)芳香族系のリン酸エステル
(D)成分は、トリフェニルホスフェートまたは下記式(2)で表される芳香族系のリン酸エステルである。
【化4】
式中、Arはフェニル基を、Ar’基はフェニレン基、ビフェニレン基、および2,2−プロピリデンジフェニレン基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を示し、ArとAr’はいずれも置換基を有してもよい。nは1以上の整数を示す。
【0026】
本願第1の発明に係る樹脂組成物は、(D)成分として上記式(1)により表される芳香族系のリン酸エステルを樹脂組成物中に含有することにより、優れた難燃性を得ることができる。かつ、上記式(1)により表される芳香族系のリン酸エステルは、沸点も高いため熱安定性に優れ、溶融混練時、成形時に揮発し難く、また、芳香族系の化合物なので、樹脂組成物の主成分である前記(A)成分のPC樹脂中に分散しやすく、有効に樹脂組成物に難燃性を付与できる。同時に、上記式(1)により表される芳香族系のリン酸エステルを樹脂組成物中に含有することにより、得られる樹脂組成物の摺動初期の摩耗量を低減することができる。そのため、得られる樹脂組成物の摺動性を向上する効果を有する。このため、本願第1の発明に係る樹脂組成物は、上記式(1)により表される芳香族系のリン酸エステルを樹脂組成物中に含有することにより、優れた難燃性と摺動性を同時に得ることが出来る。
【0027】
(D)成分は、単一の化合物であってもよく、nの異なる混合物であってもよい。nの異なる混合物の場合、n=1である単量体の含有量は、(D)成分の40重量%以下が好ましい。
【0028】
このようなリン酸エステルとしては、トリフェニルフォスフェート、レゾルシノールビス−(ジフェニルフォスフェート)、レゾルシノールビス−(ジエチルフェニルフォスフェート)、レゾルシノールビス−(ジメチルフェニルフォスフェート)、ビスフェノールA−ビス(ジクレジルフォスフェート)などが挙げられる。これらの中でもトリフェニルフォスフェートとレゾルシノールビス−(ジフェニルフォスフェート)、トリフェニルフォスフェートとビスフェノールA−ビス(ジクレジルフォスフェート)の混合物が、入手の容易さや得られる組成物の難燃性の点で好ましい。
【0029】
本願第1の発明に係る樹脂組成物における(D)成分の含有量は、好ましくは1〜10重量%であり、さらに好ましくは1〜5重量%である。(D)成分の含有量が上記範囲よりも大きい場合は、得られる樹脂組成物の機械的強度、特に衝撃強度が低下し、小さいと難燃性が低下する。
【0030】
(本願第2の発明)
本願第2の発明は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分に、さらに(E)成分を含有する樹脂組成物である。
さらに、(E)成分を含有することにより、得られる樹脂組成物の摺動性がより優れたものとなる。
本願第2の発明において、(A)〜(D)成分は、本願第1の発明で述べたものと同様のものを使用することができる。
【0031】
(E)ポリオレフィン樹脂
本願第2の発明に係る樹脂組成物に含有される(E)ポリオレフィン樹脂は、上述の(B)で述べたポリオレフィン樹脂と同様の種類、MFRを有するポリオレフィン樹脂を使用することができる。なお、(E)ポリオレフィン樹脂は、未変性のものである。
【0032】
本願第2の発明において、(A)〜(E)成分の含有量が、(A)好ましくは70〜96重量%、さらに好ましくは、80〜96重量%、より好ましくは、85〜95重量%、(B)好ましくは1〜20重量%であり、さらに好ましくは1〜15重量%、(C)好ましくは、0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.03〜1重量%、(D)好ましくは1〜10重量%であり、さらに好ましくは1〜5重量%、(E)好ましくは、1〜20重量%、さらに好ましくは1〜15重量%であると、摺動性、耐衝撃性、機械的強度、寸法安定性、耐熱性、難燃性のバランスに優れており好ましい。また、層状剥離の改善効果も大きい。
【0033】
(本願第3の発明)
本願第3の発明は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分に、さらに(F)成分を含有する樹脂組成物である。
(F)成分を含有することにより、摺動性がより優れた樹脂組成物を得ることができる。さらに、(F)成分は、燃焼時のドリップを防止する効果を有し、その結果、得られる樹脂組成物の延焼の拡大が抑制され、難燃性が向上する。
本願第3の発明において、(A)〜(E)成分は、本願第1および第2の発明で述べたものと同様のものを使用することができる。
【0034】
(F)フッ素樹脂
(F)成分であるフッ素樹脂は、フッ素元素含有樹脂であれば特に限定はなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等を用いることができる。これらの中でも、融点がPC樹脂の成形温度(約300℃)よりも高い、PTFE、PFAが好ましい。融点が高いことにより、これらのフッ素樹脂は、混練、成形時に溶融せずに分散すると考えられ、これにより、摺動性、難燃性が向上すると考えられる。これに対し、混練、成形時に溶融すると、分散することなく大きな塊になり、得られる樹脂組成物から得られる樹脂成形体が層状剥離し易くなると考えられる。
【0035】
本願第3の発明において、(A)〜(F)成分の含有量が、(A)好ましくは70〜96重量%、さらに好ましくは、80〜96重量%、より好ましくは、85〜95重量%、(B)好ましくは1〜20重量%であり、さらに好ましくは1〜15重量%、(C)好ましくは、0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.03〜1重量%、(D)好ましくは1〜10重量%であり、さらに好ましくは1〜5重量%、(E)好ましくは、1〜20重量%、さらに好ましくは1〜15重量%、(F)好ましくは、0.01〜2重量%であり、より好ましくは、0.03〜0.5重量%であると、摺動性、耐衝撃性、機械的強度、寸法安定性、耐熱性、難燃性のバランスに優れており、層状剥離の改善効果も大きく好ましい。また、(F)成分が上記範囲であると、ドリップ防止効果が大きく、廃棄焼却時に弗化水素ガスの発生が少ない。
【0036】
(本願第4の発明)
本願第4の発明は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分に、さらに(G)成分を含有する樹脂組成物である。
(G)成分を含有することにより、得られる樹脂組成物の摺動性がより優れたものとなる。
本願第4の発明において、(A)〜(D)成分は、本願第1の発明で述べたものと同様のものを使用することができる。
【0037】
(G)ジエン系ゴム、芳香族系ビニル化合物とシアン化ビニル化合物との共重合体、および、ジエン系ゴムと該共重合体とのグラフト重合体を含有する樹脂
(G)成分は、ジエン系のゴム成分と、芳香族系ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物の共重合体と、該ゴム成分にグラフト結合した芳香族系ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物の共重合体とを少なくとも含有するものである。
ジエン系ゴム成分としては、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレン共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、ポリイソプレン、エチレン/プロピレンゴム、EPDM等が好ましい。
ジエン系ゴム成分の含有量は、(G)成分全量に対して、少なくとも10〜80重量%が好ましくは、40〜80重量%がより好ましい。これより少ないと衝撃強度が低下するからである。
(G)成分中の、芳香族系ビニル化合物由来の芳香族系成分としては、スチレン、置換スチレン、またはこれらの混合物が好ましい。ここで、置換スチレンとは、1〜5個の炭素原子をもつアルキル基、および、塩素、臭素などのハロゲン原子からなる群から選ばれる置換基により置換されたスチレンを表す。具体的には、好ましい芳香族系成分として、スチレン(非置換)、α−メチルスチレン、ジブロムスチレンおよびそれらの混合物が挙げられる。
シアン化ビニル化合物由来のシアン化ビニル成分としては、アクリロニトリル、および、メタクリロニトリルからなる群から選択されるのが好ましい。
好ましい芳香族系化合物およびシアン化ビニル化合物の共重合体としては、スチレン、および、アクリロニトリルから形成され、好ましくは、スチレン/アクリロニトリルを重量比で1/1以上、より好ましくは、3/1以上含有するものが挙げられる。
ジエン系ゴム、芳香族系ビニル化合物とシアン化ビニル化合物との共重合体、および、ジエン系ゴムと該共重合体とのグラフト重合体を含有する樹脂の具体例としては、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、ABS−PVC樹脂等が挙げられる。
【0038】
本願第4の発明において、(A)〜(D)、(G)成分の含有量が、(A)好ましくは50〜95重量%であり、さらに好ましくは、54〜93重量%、(B)好ましくは1〜20重量%であり、さらに好ましくは1〜15重量%、(C)好ましくは、0.01〜5重量%であり、さらに好ましくは0.03〜1重量%、(D)好ましくは1〜10重量%であり、さらに好ましくは1〜5重量%、(G)好ましくは、4〜40重量%であり、さらに好ましくは、10重量%〜30重量%であると、摺動性、耐衝撃性、機械的強度、寸法安定性、耐熱性、難燃性のバランスに優れており、層状剥離の改善効果も大きく好ましい。また、(G)成分が上記範囲であると、成形性に優れるので好ましい。
【0039】
(本願第5の発明)
本願第5の発明は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(G)成分に、さらに(F)成分を含有する樹脂組成物である。
(A)〜(D)、(G)成分にさらに(F)成分を含有することにより、得られる樹脂組成物の摺動性、難燃性がより優れたものとなる。
本願第5の発明において、(A)〜(D)、(G)成分は、本願第4の発明で述べたものと同様のものを使用することができ、(F)成分は、本願第3の発明で述べたものと同様のものを使用することができる。
【0040】
本願第5の発明において、(A)〜(D)、(F)、(G)成分の含有量が、(A)好ましくは50〜95重量%であり、さらに好ましくは、54〜93重量%、(B)好ましくは1〜20重量%であり、さらに好ましくは1〜15重量%、(C)好ましくは、0.01〜5重量%であり、さらに好ましくは0.03〜1重量%、(D)好ましくは1〜10重量%であり、さらに好ましくは1〜5重量%、(F)好ましくは0.01〜2重量%であり、さらに好ましくは0.03〜0.5重量%、(G)好ましくは、4〜40重量%であり、さらに好ましくは、10重量%〜30重量%であると、摺動性、耐衝撃性、機械的強度、寸法安定性、耐熱性、難燃性のバランスに優れており、層状剥離の改善効果も大きく、成形性に優れ、さらにドリップ防止効果が大きく、廃棄焼却時の弗化水素ガスの発生が少なくなるので好ましい。
【0041】
(樹脂組成物の製造方法)
上述の本発明の第1〜5の発明に係る樹脂組成物(以下、本発明の樹脂組成物とも記す)の製造方法は、特には限定されないが、好ましくは(B)成分と(C)成分を予め、溶融混練等により反応させ、PC樹脂とポリオレフィン樹脂との両方に相溶性を有する相溶化剤を製造した後、他の成分を加え、溶融混練する方法が例示される。
すなわち、第1の発明に係る樹脂組成物の好ましい製造方法は、(B)成分と(C)成分を予め溶融混練し、次に、この溶融混練物に、(A)成分、(D)成分を任意の順序、または、同時に加えて溶融混練することである。(B)成分と(C)成分との反応により製造された相溶化剤が溶融した状態に、(A)成分、(D)成分を添加してもよいし、固体状態の相溶化剤と(A)成分、(D)成分を混合した後、溶融混練してもよい。
第2の発明に係る樹脂組成物の好ましい製造方法は、(B)成分と(C)成分を予め溶融混練し、次に、この溶融混練物に、(A)成分、(D)成分、(E)成分を任意の順序、または、同時に加えて溶融混練することである。(B)成分と(C)成分との反応により製造された相溶化剤が溶融した状態に、(A)成分、(D)成分、(E)成分を添加してもよいし、固体状態の相溶化剤と(A)成分、(D)成分、(E)成分を混合した後、溶融混練してもよい。
第3の発明に係る樹脂組成物の好ましい製造方法は、(B)成分と(C)成分を予め溶融混練し、次に、この溶融混練物に、(A)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分を任意の順序、または、同時に加えて溶融混練することである。(B)成分と(C)成分との反応により製造された相溶化剤が溶融した状態に、(A)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分を添加してもよいし、固体状態の相溶化剤と(A)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分を混合した後、溶融混練してもよい。
第4の発明に係る樹脂組成物の好ましい製造方法は、(B)成分と(C)成分を予め溶融混練し、次に、この溶融混練物に、(A)成分、(D)成分、(G)成分を任意の順序、または、同時に加えて溶融混練することである。(B)成分と(C)成分との反応により製造された相溶化剤が溶融した状態に、(A)成分、(D)成分、(G)成分を添加してもよいし、固体状態の相溶化剤と(A)成分、(D)成分、(G)成分を混合した後、溶融混練してもよい。
第5の発明に係る樹脂組成物の好ましい製造方法は、(B)成分と(C)成分を予め溶融混練し、次に、この溶融混練物に、(A)成分、(D)成分、(F)成分、(G)成分を任意の順序、または、同時に加えて溶融混練することである。(B)成分と(C)成分との反応により製造された相溶化剤が溶融した状態に、(A)成分、(D)成分、(F)成分、(G)成分を添加してもよいし、固体状態の相溶化剤と(A)成分、(D)成分、(F)成分、(G)成分を混合した後、溶融混練してもよい。
溶融混練するための装置としては、例えば単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、ブラベンダー等を用いることができる。溶融混練温度は、好ましくは、230℃〜320℃、より好ましくは、250℃〜300℃である。上記温度よりも低い場合は、反応の進行が遅いため、十分な反応が進行できず、高い場合は、特に樹脂の劣化が著しく、特性値の低下が著しい。
【0042】
このようにして得られる本発明の樹脂組成物は、以上の構成をとることにより以下に示す効果を有する。
本願第1〜5の発明に係る樹脂組成物は、いずれも、摺動性と難燃性に優れる。また、耐衝撃性、機械的強度、寸法安定性、耐熱性、層状剥離の改善効果に優れる。
(A)〜(D)成分に加え、さらに(E)成分を含有する本願第2の発明にかかる樹脂組成物は、摺動性がさらに優れる。
(A)〜(E)成分に加え、さらに(F)成分を含有する本願第3の発明にかかる樹脂組成物は、燃焼時のドリップが防止され、そのため延焼の拡大が抑制できるため難燃性により優れる。また、フッ素樹脂を含有しているが、樹脂組成物を燃焼しても弗化水素の発生が少なく、環境安全性に優れる。
(A)〜(D)成分に加え、さらに(G)成分を含有する本願第4の発明にかかる樹脂組成物は、摺動性がさらに優れる。
(A)〜(D)、(E)成分、および、(G)成分を含有する本願第5の発明にかかる樹脂組成物は、摺動性、難燃性がさらに向上した組成物である。
【0043】
(樹脂成形体およびその製造方法)
本願第6の発明である樹脂成形体(以下、本発明の樹脂成形体と記す)は、上述の本発明の樹脂組成物を、熱可塑性樹脂に一般的に使用される溶融成形方法により成形することによって製造することができ、任意の形状をとることができる。溶融成形方法としては、例えば、射出成形、押出成形等が挙げられる。成形温度は、230℃〜320℃が好ましく、250℃〜300℃がより好ましい。
本発明の樹脂成形体は、上述のように任意の形状をとることができるが、これらの中には、フイルム、あるいは、シート状の成形体や、積層状の成形体も含まれる。
本発明の成形体は、原料として、本願第1〜5の発明に係る樹脂組成物をそれぞれ用いており、優れた摺動性、難燃性、機械的強度、耐熱性、および表面外観(層状剥離を示さない)を有するが、さらに、それぞれ、用いる樹脂組成物の特性を有する樹脂成形体である。従って、本発明の樹脂成形体は、OA機器、家電製品、医療機器等の部品とすることができ、特に、自動車部品などのギヤ、カム、軸受け等の部品に最適である。
【0044】
本発明の樹脂組成物および樹脂成形体には、本発明の目的を損なわない範囲において、ガラス繊維、カーボン繊維、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、カーボンブラック等の添加物やシリコーン樹脂、ポリアルキレンテレフタレート、ナイロン、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂を配合してもよい。
【0045】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明を更に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。実施例において使用された原料、機器および評価法は下記のとおりである。
【0046】
原料
(1)A成分
・ポリカーボネート樹脂(PC):カリバー351−6、住友ダウ製(MFR=6g/10分)
(2)B成分
・無水マレイン酸変性ポリエチレン(MUPE):FusabondMB226D、三井・デュポンポリケミカル製
・エポキシ変性ポリプロピレン(EPP):C-900X改、東燃化学製
・無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MUPP):アドマーQF550 、三井石油化学製
(3)C成分
・アミノカプロン酸 (AC):和光純薬製
・アミノウンデカン酸 (AU):和光純薬製
・p−アミノ安息香酸 (PAB):和光純薬製
(4)D成分
・レゾルシノールビス−ジフェニルホスフェートとトリフェニルホスフェートの混合物(RDP):レオフォスRDP 、味の素(株)製
・トリフェニルホスフェート(TPP):レオフォスTPP 、味の素(株)製
・トリフェニルフォスフェートとビスフェノールA−ビス(ジクレジルフォスフェート)の混合物(CR):CR741C、大八化学(株)製
(5)E成分
・直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE):AM1720、日本石油化学(株)製
・PP−PEブロック共重合体(PP−PE):AW541 、住友化学工業(株)製
・流動性超高分子量ポリエチレン(UHWPE):Lubmer、三井化学(株)製
(6)F成分
・ポリテトラフルオロエチレン(PTFE):ポリフロンTFE、ダイキン工業製
・テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA):ネオフロンDFA、ダイキン工業製
(7)G成分
・ABS樹脂(ABS):GA701 、住友ダウ製
・AES樹脂(AES):UB500A、住友ダウ製
【0047】
溶融混練
日本製鋼所製 二軸押出機(TEX30)、シリンダ温度300℃
【0048】
射出成形
山城精機製 射出成形機 SANJECT3601、シリンダ温度295℃、金型温度90〜110℃で行なった。
【0049】
特性測定
(1)難燃性 1/16”ASTM曲げ試験片を用いて、UL−94規格に準拠して測定した。燃焼性の評価基準は、V−0、V−1、V−2、NGの4段階あり、V−0が最も燃え難いことを示す。
(2)比摩耗性 ASTM−D3702に準拠して測定した。
(3)Izod衝撃強度 ASTM−D256に準拠してノッチ付で測定した。
【0050】
(実施例1)
無水マレイン酸変性ポリエチレン((B)成分、MUPE、三井・デュポンポリケミカル製、FusabondMB226D)3kg、アミノカプロン酸((C)成分、AC)0.03kgをミキサーで十分に混合した後、日本製鋼所製2軸押出機、TEX30を用いて、シリンダ温度300℃で混練し、ペレットAを得た。
次に、このペレットA0.303kg((B)0.3kg、(C)成分0.03kg含有)とポリカーボネート樹脂((A)成分、PC)9.497kg、リン酸エステル((D)成分、RDP、味の素製、レオフォスRDP)0.2kgをミキサーで十分に混合した後、日本製鋼所製2軸押出機、TEX30を用いて、シリンダ温度300℃で混練し、ペレットBを得た。
得られたペレットBを120℃で5時間乾燥した後、山城精機製射出成形基SANJECT3601を用いて、シリンダ温度295℃、金型温度90〜110℃で所定の樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の難燃性、比摩耗量、衝撃強度を測定した。結果を表2に示す。
【0051】
(実施例2〜28、比較例1〜7)
実施例1と同様に、表1、3に示す組成の(B)成分と(C)成分を溶融混練しペレットAを試作した。
次に、表1、3の組成となるようにペレットAと他の成分を混合後、実施例1と同様にして、溶融混練し、ペレットBを試作した。
実施例1と同様にして、ペレットBを射出成形し、試験片を得、試験片の難燃性、比摩耗量、衝撃強度を測定した。結果を表2、4に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】
【表7】
【0059】
【0060】
表1〜4から明らかなように、実施例で代表される本発明の樹脂組成物は、いずれも、摺動性、難燃性に優れ、衝撃強度の低下も少ないことがわかる。特に(D)成分であるリン酸エステルを添加することにより、難燃性が向上するのみでなく、摺動性も向上する(すなわち、比摩耗量が少なくなる)。このことは、例えば、実施例1と比較例1、実施例14と比較例2、実施例19と比較例3、実施例23と比較例4、実施例27と比較例5を比較すると明らかである。また、成形体の表面にセロハン粘着テープ(ニチバン(株)製セロテープR CT−12S)を貼り、それを剥離して、セロハン粘着テープ上に樹脂が付着しているかを観察することにより、樹脂成形体が層状剥離するかを試験したところ、実施例11〜28、比較例1〜6は層状剥離はなかった。しかし、比較例7はわずかに層状剥離した。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、摺動性、難燃性ともに優れた高性能の難燃化摺動性樹脂組成物を得ることが出来る。また、この本発明の樹脂組成物はブロム系の難燃化剤を含有していないため、廃棄・焼却した際の毒性物質の発生が極めて少ない。このため、今後、予想される環境規制の強化にも対応できる。従って、本発明の樹脂組成物は、OA機器や家電製品等の機構部品(ギヤ、カム等)やケースの材料として有用である。また、本発明の樹脂組成物を成形して得られる本発明の樹脂成形体は、本発明の樹脂組成物の特性をいかして、OA機器や家電製品等の機構部品(ギヤ、カム等)やケース等として有用である。
Claims (11)
- (A)ポリカーボネート樹脂
(B)変性されたポリオレフィン系樹脂
(C)HOOC−R−NH2で表される化合物(ただし、式中Rは、炭素数5以上のアルキレン基、アルキリデン基、オリゴメチレン基、または、置換基を有してもよいフェニレン基、もしくは、ナフチレン基を示す。)、および、
(D)トリフェニルホスフェートまたはレゾルシノールビス−ジフェニルホスフェート
を含有することを特徴とする摺動性と難燃性に優れる樹脂組成物。 - 請求項1に記載の樹脂組成物において、各成分の配合割合が、
(A)70〜97重量%
(B)1〜20重量%
(C)0.01〜5重量%
(D)1〜10重量%
である摺動性と難燃性に優れる樹脂組成物。 - さらに、(E)ポリオレフィン樹脂を含有する請求項1に記載の樹脂組成物。
- 請求項3に記載の樹脂組成物において、各成分の配合割合が、
(A)70〜96重量%
(B)1〜20重量%
(C)0.01〜5重量%
(D)1〜10重量%
(E)1〜20重量%
である摺動性と難燃性に優れる樹脂組成物。 - さらに、(E)ポリオレフィン樹脂、および、(F)フッ素樹脂を含有する請求項1に記載の樹脂組成物。
- 請求項5に記載の樹脂組成物において、各成分の配合割合が、
(A)70〜96重量%
(B)1〜20重量%
(C)0.01〜5重量%
(D)1〜10重量%
(E)1〜20重量%
(F)0.01〜2重量%
である摺動性と難燃性に優れる樹脂組成物。 - さらに、(G)ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂およびABS−PVC樹脂からなる群より選ばれる樹脂を含有する請求項1に記載の樹脂組成物。
- 請求項7に記載の樹脂組成物において、各成分の配合割合が、(A)50〜95重量%(B)1〜20重量%(C)0.01〜5重量%(D)1〜10重量%(G)4〜40重量%である摺動性と難燃性に優れる樹脂組成物。
- さらに、(F)フッ素樹脂、および、(G)ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂およびABS−PVC樹脂からなる群より選ばれる樹脂を含有する請求項1に記載の樹脂組成物。
- 請求項7に記載の樹脂組成物において、各成分の配合割合が、
(A)50〜95重量%
(B)1〜20重量%
(C)0.01〜5重量%
(D)1〜10重量%
(F)0.01〜2重量%
(G)4〜40重量%
である摺動性と難燃性に優れる樹脂組成物。 - 請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物を溶融成形して得られる摺動性と難燃性に優れる樹脂成形体。
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