図面を参照して説明する。コーティング付きカッティングインサート(コーティング付きカッティングインサートは、図1に全体的に示される)のいくつかの特定の実施形態が図示されている。これらの特定の実施形態のそれぞれについて、これ以降で詳細に説明する。より特定的には、図2〜3は、実際のコーティングの実施例すなわち実施例番号1である第1の特定の実施形態に関する。図4〜5は、実際のコーティングの実施例すなわち実施例番号2である第2の特定の実施形態に関する。図6は、コーティングスキームの提案された第3の特定の実施形態に関する。図7は、コーティングスキームの提案された第4の特定の実施形態に関する。図8は、コーティングスキームの提案された第5の特定の実施形態に関する。
特定の実施形態のそれぞれの間の主要な差は、コーティングスキームに基づく。特定の実施形態のそれぞれで用いられる基材は、同一グループの材料から選択可能である。これに関連して、基材に好適な材料としては、超硬合金(たとえば、タングステンカーバイド−コバルト材料)、セラミックス(たとえば、シリコンナイトライド系セラミックス、SiAlON系セラミックス、チタンカーボナイトライド系セラミックス、チタンジボライド系セラミックス、およびアルミナ系セラミックス)、サーメット(たとえば、ニッケル−コバルトバインダーと高レベルのチタンとを有し、タングステンカーバイドおよびチタンカーバイドをさらに含みうるサーメット)、および鋼が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
出願人らはまた、基材が、特定的には、バインダー濃度、カーボナイトライド濃度、およびカーバイド濃度に関して、傾斜組成を呈しうると考えている。代表的な基材としては、バインダーの富化された表面ゾーンが設けられた超硬合金基材または固溶体カーバイドの富化されたバインダー枯渇表面ゾーンが設けられた超硬合金基材が挙げられうる。
他の代表的な基材材料は、多結晶性立方晶ボロンナイトライド(PCBN)(代表的なPCBN材料としては、セラミックバインダーまたは金属バインダーを有するものが挙げられる)および他の超硬質材料である。PCBN材料は、2つの基本的な方法でカッティングインサートと組み合わせて使用可能である。一方法では、PCBNインサートをカッティングインサートボディーに鑞付けすることが可能である。第2の方法では、PCBNカッティングインサートは、フルトップインサートでありうる。
特定の実施形態のそれぞれでは、好ましい一基材は、多結晶性立方晶ボロンナイトライド(PcBN)である。他の好ましい基材材料は、約0.1重量パーセント〜約20重量パーセントのコバルトと残部のタングステンカーバイドとを含むコバルト−タングステンカーバイド超硬合金に基づく。そのようなコバルト−タングステンカーバイド超硬合金は、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、およびクロムのような添加剤を単独でまたは任意の組合せで(ただし、これらの添加剤は、カーバイドおよび/またはナイトライドおよび/またはカーボナイトライドの形態をとりうる)、さらには超硬合金に典型的に添加される他の添加剤を含むことも可能である。
特定の実施形態のそれぞれでは、当然のことながら、コーティングスキームの堆積前、基材へのコーティングスキームの固着性を改良するように基材の表面を処理することが可能である。代表的な前処理としては、基材の表面のバインダーを除去するかまたはそのレベルを低下させるプロセスが挙げられる。コバルト−タングステンカーバイド超硬合金基材の場合、そのような前処理を行えば、基材の表面からコバルトが除去されるか、またはコーティングの固着性を改良するように表面が処理されるであろう。他の代表的な前処理は、基材の表面を粗面化して良好なコーティングの固着性が容易に得られるように、基材の表面を機械的に処理するプロセスであろう。
当然のことながら、場合によっては、性能および/または平滑性および/または固着性を改良するために、コーティングスキームの表面を堆積後の処理に付すことが可能である。代表的な処理の1つは、いずれの応力集中部位をも減少させるかまたは最小化させるようにコーティングスキームの表面の凹凸を除去することである。他の代表的な処理は、カッティングインサートの選択された領域からコーティング(またはコーティング層の一部)を優先的に除去することである。表面処理により、典型的には、コーティング層内の引張り応力が低減されるかまたは圧縮応力が増大される。たとえば、ウィディア社(Widia GmbH)に付与されたPCT特許公開国際公開第02/077312号パンフレットには、外側コーティング層内の内圧応力を増大させるかまたは内部引張り応力を低減させるようにコーティング(PVDまたはPCVDまたはCVD)をショットブラストすることが開示されている。
さらに、当然のことながら、コーティング層の固着性を改良するために、微視的に粗い境界部を各コーティング層間に設けることが可能である。コーティング層に対して速い成長速度が確保されるようにCVD(または中温化学気相堆積[MT−CVD])パラメーターを制御することにより、微視的に粗い境界部を作製することが可能である。比較的高い堆積温度および/または比較的高い圧力を用いることにより、CVDプロセス(MT−CVDプロセスを包含する)で速い成長速度を引き起こすことが可能である。固着性を改良するためのこのほかの選択肢として、隣接コーティング層間にシャープな組成境界が存在することのないように、堆積プロセスにおいて隣接層間でコーティング層間の組成を徐々に変化させることが可能である。
特定の実施形態のそれぞれを作製するプロセスに関して、当然のことながら、プロセス工程のそれぞれで、所望のコーティング厚さが達成されるように圧力およびプロセス工程の持続時間を変化させることが可能である。一般的にいえば、本プロセスでは、コーティング工程を中断し、次に、この中断に続いて、コーティング組成またはコーティングパラメーターの変化(ときには顕著な変化)を有する他の工程を行うという考え方が採用される。こうした中断を行うと、各層内で粒子が再び核を生成するので、微細化粒径(すなわち1マイクロメートル以下の平均粒子)を呈するコーティング層が得られる。
実際の実施例すなわち実施例番号1および2のいずれの場合にも、各コーティング層内の材料は、微細化粒径(すなわち1マイクロメートル以下の粒径)を呈した。コーティング層のそれぞれを適用する際に中断を行い、この中断の結果として微細化粒子状構造体を得た。
図1は、20として全体が表されるコーティング付きカッティングインサート(これはコーティング付きボディーの一形態である)の実施形態を示している。コーティング付きカッティングインサート20は、基材22を含む。コーティング付きカッティングインサート20のコーティングの一部は、図1では基材22を示すために除去されている。基材22は、いくつかの許容しうる基材材料のいずれか1つから作製可能である。コーティング付きカッティングインサート20は、逃げ面24およびすくい面26を有する。逃げ面24およびすくい面26は、交差してそれらの連結部にカッティングエッジ28を形成する。当然のことながら、コーティング付きカッティングインサートは、図1に示される幾何形状とは異なる幾何形状を呈しうる。たとえば、図示されていないが、特定のカッティングインサート幾何形状では、コーティング付きカッティングインサートは、コーティング付きカッティングインサートをツールホルダーなどに装着するために使用される中央アパーチャーを含みうる。
図2について説明する。この図には、コーティング付きカッティングインサートのコーナーのコーティングスキームの第1の特定の実施形態(実施例番号1)の断面が示されている。実際の実施例番号1のコーティングスキームは、図2に模式的に示されており、36として括弧により全体が表されている。後述されるように、図3は、図2に模式的に示される実際のコーティングスキームの断面を示す顕微鏡写真である。
コーティングスキーム36、特定的には図2について説明する。この場合、ベースまたは第1のコーティング層(すなわちベースコーティング層)38は、化学気相堆積(CVD)により基材22の表面に適用されたチタンナイトライドを含む。この工程は、表1の工程1である。図2のコーティング層のいずれに対しても、特定のプロセス工程中のいずれかの時点で存在したガスおよび特定のプロセス工程の温度は、以下の表1に示される。ベースコーティング層38の厚さは、ゼロマイクロメートル超の下限と約5マイクロメートルに等しい上限とを有する範囲内にある。
第2のコーティング層40は、ベースコーティング層38に適用され、880℃〜900℃の温度で中温化学気相堆積(MT−CVD)により適用されたチタンカーボナイトライド粒子を含有するチタンカーボナイトライドコーティング層を含む。この工程は、表1の工程2である。当然のことながら、MT−CVDプロセス工程では、堆積温度は、摂氏約700度〜摂氏約920度の範囲内でありうる。他の選択肢の範囲として、MT−CVD堆積温度は、摂氏約850度〜摂氏約920度の範囲内でありうる。さらに他の選択肢の範囲として、MT−CVD堆積温度は、摂氏約870度〜摂氏約910度の範囲内でありうる。第2のコーティング層40は、所定の粒径でチタンカーボナイトライド粒子の成長を終了するように選択された持続時間で適用される。第2のコーティング層40の厚さは、約0.5マイクロメートルに等しい下限と約25マイクロメートルに等しい上限とを有する範囲内にある。他の選択肢として、第2のコーティング層40の厚さは、約1マイクロメートルに等しい下限と約20マイクロメートルに等しい上限とを有する範囲内にある。当然のことながら、チタンカーボナイトライドの組成は、コーティング層40の厚さ全体にわたり異なりうる。これに関連して、炭素:窒素比(C:N)は、コーティング層40内の位置によって変化しうる。他の一選択肢として、チタンカーボナイトライドは、コーティング層の下端またはその近傍で炭素リッチでありうる。また、コーティング層の上端またはその近傍で窒素リッチでありうる。当然のことながら、MT−CVDにより適用されたチタンカーボナイトライドコーティング層は、その代わりに、高温CVDにより適用されたチタンカーボナイトライドコーティング層で置き換えることが可能である。
第3のコーティング層41は、第2のコーティング層40に適用される。第3のコーティング層41は、摂氏約1000度に等しい温度で高温化学気相堆積(HT−CVD)により適用されたチタンカーボナイトライドコーティング層を含む。この工程は、表1の工程3である。HT−CVDチタンカーボナイトライドのこのコーティング層は、チタンカーボナイトライド粒子を含み、所定の粒径で粒子を完成させるように選択された持続時間で適用される。コーティングの厚さ層41は、ゼロマイクロメートル超に等しい下限と約5マイクロメートルに等しい上限との範囲内にある。
次の6層のコーティング層は、実際には、1対のコーティング層の3つの反復を含む。括弧42、44、および46のそれぞれは、この3つの反復のコーティング層を表している。
各反復中の第1のコーティング層(48、52、56)は、表1の工程4Aを介して形成され、CVDにより適用されたチタンアルミニウムオキシカーボナイトライド粒子を含むチタンアルミニウムオキシカーボナイトライドコーティング層を含んでなる。この第1のコーティング層(48、52、56)は、コーティング層を構成する粒子を所定の平均粒径で完成させるように選択された持続時間で適用される。これらの第1のコーティング層(48、52、56)は、チタン/アルミニウム含有粒子を含むチタン/アルミニウム含有コーティング層とみなされうる。これらの第1のコーティング層(48、52、56)のそれぞれの厚さは、ゼロマイクロメートル超の下限と約5マイクロメートルに等しい上限とを有する範囲内にある。他の選択肢として、各コーティング層(48、52、56)の厚さは、約0.1マイクロメートルに等しい下限と約4マイクロメートルに等しい上限とを有する。
各反復中の第2のコーティング層(50、54、58)は、表1の工程4Bを介して形成され、CVDにより適用され、アルミナ粒子を含むアルミナコーティング層を含んでなる。アルミナコーティング層は、所定の平均粒径でアルミナ粒子を完成させるように選択された持続時間で適用される。各アルミナコーティング層(50、54、58)の厚さは、約0.5マイクロメートルに等しい下限と約25マイクロメートルに等しい上限とを有する範囲内にある。他の選択肢として、各コーティング層(50、54、58)の厚さは、約1マイクロメートルに等しい下限と約20マイクロメートルに等しい上限とを有する。
次のコーティング層60は、CVDによりアルミナ層58に適用され、所定の平均粒径でチタンアルミニウムカーボナイトライド粒子の成長を終了するように選択された持続時間でCVDにより適用されたチタンアルミナカーボナイトライド粒子を含むチタンアルミニウムカーボナイトライドコーティング層(すなわち、チタン含有コーティング層)を含む。この工程は、表1の工程5である。コーティング層60の厚さは、ゼロマイクロメートル超に等しい下限と約5マイクロメートルに等しい上限とを有する範囲内にある。他の選択肢として、コーティング層60の厚さは、約0.1マイクロメートルに等しい下限と約4マイクロメートルに等しい上限とを有する。
次のコーティング層62は、化学気相堆積によりコーティング層60に適用されたチタンカーボナイトライドを含む。この工程は、表1の工程6である。このコーティング層62の厚さは、約0.5マイクロメートル〜約2マイクロメートルの範囲内である。
外側コーティング層64は、化学気相堆積によりコーティング層62に適用されたチタンナイトライドを含む。この工程は、表1の工程7である。この外側コーティング層64の厚さは、約0.1マイクロメートルに等しい下限と約5マイクロメートルに等しい上限との範囲内である。
上述のように、図3は、実施例番号1のマイクロ構造体の断面を示す顕微鏡写真である。より特定的には、ベース層は、金色を帯びた薄肉のチタンナイトライドコーティング層である。次の層は、中温化学気相堆積(MT−CVD)により適用されたチタンカーボナイトライドであり、青色/灰色を有する。次の層は、高温化学気相堆積(HT−CVD)プロセスを介して堆積されたチタンカーボナイトライドであり、色は青色/灰色である。
チタンカーボナイトライドのHT−CVD層の適用終了後、3つのコーティングシーケンスが存在し、各コーティングシーケンスは、(a)チタン/アルミニウム含有コーティング層(すなわち、チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドコーティング層)と、(b)アルミナコーティング層と、を含む。HT−CVDチタンカーボナイトライドコーティング層は、青色〜灰色であり、薄肉である。チタンアルミニウムオキシカーボナイトライド層は、金色を帯びて薄肉である。アルミナコーティング層は黒色であり(少なくともこの実施形態では)、他のコーティング層よりも厚肉である。コーティングシーケンスからチタンナイトライドの外層に移行するチタンアルミニウムカーボナイトライドコーティング層とチタンカーボナイトライド層とが存在する。これらの移行コーティング層は、桃色を帯びる。外側チタンナイトライド層は、黄色を帯びる(または金色を帯びる)。
実施例番号1のコーティングスキームを作製するプロセスに関して、表1には、これらのプロセス工程が開示されている。表1について説明する。この表には、表1の左側から始めて第1の列にプロセス工程が列挙されている。当然のことながら、工程4A〜4Bは、各コーティングシーケンスを含むコーティング層を適用する工程を含む。第2の列は、対応するプロセス工程に対する温度範囲を摂氏度単位で示している。第3の列は、対応するプロセス工程に対する圧力範囲をミリバール単位で示している。第4の列は、対応するプロセス工程の全持続時間を分単位で示している。第5の列は、対応するプロセス工程中(全体的または部分的)に存在したガスを示している。
理解を容易にするために、表1中の工程4Aは、単一の工程として列挙されているが、実際には、工程4Aは、1000℃かつ75〜500mbの圧力範囲内でそれぞれ行われる次の3つの逐次的工程を含む。工程4A−1は、30分間に等しい持続時間にわたり継続され、次のガスH
2、CH
4、N
2、TiCl
4、COを使用し、これに続く工程4A−2は、5分間にわたり継続され、次のガスH
2、CH
4、N
2、TiCl
4、CO、およびAlCl
3を使用し、最後に、これに続く工程4A−3は、6分間にわたり継続され、次のガス:H
2、CH
4、N
2、TiCl
4、CO、CO
2、およびHClを含む。出願人らの考えによれば、工程4A−1では、チタンオキシカーボナイトライドの層が堆積され、工程4A−2では、チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドの層が堆積され、工程4A−3では、α−アルミナ核生成コーティング層として機能するチタンオキサイドの層が堆積される。当然のことながら、出願人らの考えによれば、工程4Aを介して堆積されたコーティング層は、ウィスカーモルフォロジーを呈し、工程4A−2および4A−3のコーティング層は、ウィスカーをコーティングする。出願人らは、チタンオキシカーボナイトライドまたはチタンアルミニウムオキシカーボナイトライドまたはチタンオキサイドのこれらのコーティング層の存在に本発明を限定しようとするものではない。
理解を容易にするために、表1中の工程4Bは、単一の工程として列挙されているが、実際には、1000℃に等しい温度かつ75mbに等しい圧力でそれぞれ行われる次の3つの逐次的工程を含む。工程4B−1は、30分間に等しい持続時間を有し、次のガス:H2+N2+AlCl3+HCl+CO+CO2を使用し、次に、この工程に続く工程4B−2は、100分間にわたり継続され、次のガス:H2+AlCl3+HCl+CO2+H2Sを使用し、最後に、この工程に続く工程4B−3は、10分間にわたり継続され、次のガス:H2+N2+AlCl3+HCl+CO2を使用する。工程4B−1〜4B−3のそれぞれで、アルミナの層が堆積される。
理解を容易にするために、表1中の工程5は、単一の工程として列挙されているが、実際には、摂氏1000度で行われる次の2つの逐次的工程を含む。工程5−1は、80mbに等しい圧力で10分間にわたり継続され、次のガス:H2+CH4+N2+TiCl4+AlCl3を使用する。工程5−2は、500mbに等しい圧力で20分間にわたり継続され、次のガス:H2+CH4+N2+TiCl4+AlCl3を使用する。工程5−1および工程5−2のそれぞれで、チタンアルミニウムカーボナイトライドの層が堆積される。
図4について説明する。この図には、70として全体が表されるコーティング付きカッティングインサート(これはコーティング付きボディーの一形態である)の第2の実施形態のコーナーの断面が示されている。コーティング付きカッティングインサート70は、基材72を含む。コーティング付きカッティングインサート70は、括弧74により示されるコーティングスキームを有する。コーティングスキーム74は、以下に記載されるCVDまたはMT−CVDにより適用されたコーティング層を含む。各層に対する温度範囲および(堆積工程の全部または一部で)存在するガスは、以下の表2に示される。
第1のコーティング層すなわちベースコーティング層76は、チタンナイトライド粒子を含有するチタンナイトライドコーティング層を含み、CVDにより基材72の表面上に堆積される。これは、表2中の工程1である。第1のコーティング層76の厚さは、ゼロマイクロメートル超の下限と約5マイクロメートルに等しい上限とを有する。チタンナイトライド粒子は、約1マイクロメートル以下の平均粒径を有する。
第2のコーティング層78は、MT−CVDによりベースコーティング層76に適用されたチタンカーボナイトライド粒子を含有するチタンカーボナイトライドコーティング層を含む。これは、表2中の工程2である。第2のコーティング層78は、所定の粒径でチタンカーボナイトライド粒子の成長を終了するように選択された持続時間で適用される。チタンカーボナイトライド粒子は、約1マイクロメートル以下の平均粒径を有する。第2のコーティング層78の厚さは、約0.5マイクロメートルに等しい下限と約25マイクロメートルに等しい上限とを有する。第3のコーティング層79は、HT−CVDを介して適用されたチタンカーボナイトライドを含む。これは、表2中の工程3である。第3のコーティング層79の厚さは、0マイクロメートル超〜約5マイクロメートルの範囲内、より好ましくは約0.1マイクロメートル〜約4マイクロメートルの範囲内である。
コーティングスキーム74は、括弧80により示される18個のコーティングシーケンスをさらに含み、各コーティングシーケンス80は、1対のコーティング層を含む。この対の一方のコーティング層は、CVDにより堆積されたチタンアルミニウムオキシカーボナイトライドのコーティング層であり、これは表2中の工程4Aである。他方のコーティング層は、CVDにより堆積されたアルミナのコーティング層であり、これは表2中の工程4Bである。各チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドコーティング層は、チタンカーボナイトライド粒子を含む。各チタンアルミニウムオキシカーボナイトライド層は、所定の粒径でチタンアルミニウムオキシカーボナイトライド粒子の成長を終了するように選択された持続時間でCVDにより適用される。チタンアルミニウムオキシカーボナイトライド粒子は、1マイクロメートル以下の平均粒径を有する。各アルミナコーティング層は、アルミナ粒子を含む。各アルミナ層は、所定の粒径でアルミナ粒子の成長を終了するように選択された持続時間でCVDにより適用される。アルミナ粒子は、1マイクロメートル以下の平均粒径を有する。
より特定的には、ボトムコーティングシーケンスは、括弧84により示され、チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドのコーティング層86とアルミナのコーティング層88とを含む。括弧90は、中間の16個のコーティングシーケンスを表し、各コーティングシーケンスは、コーティングシーケンス84と同様である。トップコーティングシーケンスは、括弧94により示され、チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドのコーティング層96とアルミナのコーティング層98とを含む。
コーティングシーケンス(84、94)のそれぞれの全厚さは、約0.1マイクロメートルに等しい下限と約10マイクロメートルに等しい上限との範囲内である。他の選択肢として、これらのコーティングシーケンス(84、94)のそれぞれの全厚さは、約1マイクロメートルに等しい下限と約8マイクロメートルに等しい上限との範囲内である。これらのコーティングシーケンス(84、94)のそれぞれの一部であるチタンアルミニウムオキシカーボナイトライドコーティング層(86、96)の厚さは、ゼロマイクロメートル超の下限と約5マイクロメートルに等しい上限との範囲内である。他の選択肢として、このチタンアルミニウムオキシカーボナイトライドコーティング層(86、96)の厚さは、約0.1マイクロメートルに等しい下限と約4マイクロメートルに等しい上限との範囲内である。これらのコーティングシーケンス(84、94)のそれぞれの一部であるアルミナコーティング層(88、98)の厚さは、約0.1マイクロメートルに等しい下限と約25マイクロメートルに等しい上限との範囲内である。他の選択肢として、このアルミナコーティング層(88、98)の厚さは、約1マイクロメートルに等しい下限と約20マイクロメートルに等しい上限との範囲内である。
この特定のコーティングスキーム74では、次のコーティング層は、チタンアルミニウムカーボナイトライドの層100であり、表2中の工程5である。コーティング層100に続くのは、チタンカーボナイトライドの層102であり、表2中の工程6である。コーティング層102に続くのは、チタンナイトライドの外層104であり、表2中の工程7である。チタンアルミニウムカーボナイトライドコーティング層100の厚さは、ゼロマイクロメートル超に等しい下限と約5マイクロメートルに等しい上限との範囲内である。他の選択肢として、このコーティング層100の厚さは、約0.1マイクロメートルに等しい下限と約4マイクロメートルに等しい上限との範囲内である。チタンカーボナイトライドコーティング層102の厚さは、約0.1マイクロメートルに等しい下限と約5マイクロメートルに等しい上限との範囲内である。外側チタンナイトライドコーティング層104の厚さは、約0.1マイクロメートルに等しい下限と約5マイクロメートルに等しい上限との範囲内である。
チタンアルミニウムカーボナイトライドコーティング層は、約1マイクロメートル以下の平均粒径を有するチタンアルミニウムカーボナイトライド粒子を含む。チタンアルミニウムカーボナイトライドコーティング層は、所定の粒径でチタンアルミニウムカーボナイトライド粒子の成長を終了するように選択された持続時間で適用される。
チタンカーボナイトライドコーティング層は、約1マイクロメートル以下の平均粒径を有するチタンカーボナイトライド粒子を含む。チタンカーボナイトライドコーティング層は、所定の粒径でチタンカーボナイトライド粒子の成長を終了するように選択された持続時間で適用される。
チタンナイトライドコーティング層は、約1マイクロメートル以下の平均粒径を有するチタンナイトライド粒子を含む。チタンナイトライドコーティング層は、所定の粒径でチタンナイトライド粒子の成長を終了するように選択された持続時間で適用される。
本発明の第2の特定の実施形態を作製するプロセスに関して、表2には、コーティングカッティングインサート(coating cutting insert)の第2の特定の実施形態(実際の実施例番号2)のコーティングスキームの作製に使用したプロセス工程が開示されている。表2について説明する。この表には、表2の左側から始めて第1の列にプロセス工程が示されている。当然のことながら、工程4A〜4Bは、各コーティングシーケンスを含むコーティング層を適用する工程を含む。
第2の列は、対応する工程に対する温度範囲を摂氏度単位で示している。第3の列は、対応する工程に対する圧力範囲をミリバール単位で示している。第4の列は、対応する工程の全持続時間を分単位で示している。第5の列は、対応する工程中(全体的または部分的)に存在したガスを示している。
理解を容易にするために、表2中の工程4Aは、単一の工程として列挙されているが、実際には、工程4Aは、1000℃かつ75〜500mbの圧力範囲内でそれぞれ行われる次の3つの逐次的工程を含む。工程4A−1は、30分間に等しい持続時間にわたり継続され、次のガス:H
2、CH
4、N
2、TiCl
4、COを使用し、これに続く工程4A−2は、5分間にわたり継続され、次のガス:H
2、CH
4、N
2、TiCl
4、CO、およびAlCl
3を使用し、最後に、これに続く工程4A−3は、6分間にわたり継続され、次のガス:H
2、CH
4、N
2、TiCl
4、CO、CO
2、およびHClを含む。出願人らの考えによれば、工程4A−1では、チタンオキシカーボナイトライドの層が堆積され、工程4A−2では、チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドの層が堆積され、工程4A−3では、α−アルミナ核生成コーティング層として機能するチタンオキサイドの層が堆積される。当然のことながら、出願人らの考えによれば、工程4Aを介して堆積されたコーティング層は、ウィスカーモルフォロジーを呈し、ここで、工程4A−1のコーティング層は、ウィスカーモルフォロジーを有し、工程4A−2および4A−3のコーティング層は、ウィスカーをコーティングする。出願人らは、チタンオキシカーボナイトライドまたはチタンアルミニウムオキシカーボナイトライドまたはチタンオキサイドのこれらのコーティング層の存在に本発明を限定しようとするものではない。
理解を容易にするために、表1中の工程4Bは、単一の工程として列挙されているが、実際には、1000℃に等しい温度かつ75mbに等しい圧力でそれぞれ行われる次の3つの逐次的工程を含む。工程4B−1は、5分間に等しい持続時間を有し、次のガス:H2+N2+AlCl3+HCl+CO+CO2を使用し、次に、この工程に続く工程4B−2は、20分間にわたり継続され、次のガス:H2+AlCl3+HCl+CO2+H2Sを使用し、最後に、この工程に続く工程4B−3は、5分間にわたり継続され、次のガス:H2+N2+AlCl3+HCl+CO2を使用する。工程4B−1〜4B−3のそれぞれで、アルミナの層が堆積される。
理解を容易にするために、表2中の工程5は、単一の工程として列挙されているが、実際には、摂氏1000度で行われる次の2つの逐次的工程を含む。工程5−1は、80mbに等しい圧力で10分間にわたり継続され、次のガス:H2+CH4+N2+TiCl4+AlCl3を使用する。工程5−2は、500mbに等しい圧力で20分間にわたり継続され、次のガス:H2+CH4+N2+TiCl4+AlCl3を使用する。工程5−1および工程5−2のそれぞれで、チタンアルミニウムカーボナイトライドの層が堆積される。
図5は、コーティングスキーム74として図4に模式的に示される実際のコーティングスキームのマイクロ構造体を示す顕微鏡写真(カラー)である。図5に示される特定の基材は、タングステンカーバイド−コバルト超硬合金である。
図5に示されるコーティングスキームについて説明する。この場合、ベース層は、金色を帯びた薄肉のチタンナイトライドコーティング層である。次の層は、中温化学気相堆積(MT−CVD)により適用されたチタンカーボナイトライドであり、青色/灰色を有する。次の層は、高温化学気相堆積(HT−CVD)により適用されたチタンカーボナイトライドであり、同様に青色/灰色を有する。
チタンカーボナイトライドのHT−CVD層の適用終了後、18個のコーティングシーケンスが存在し、コーティングシーケンスのそれぞれは、(a)チタン/アルミニウム含有コーティング層(すなわち、チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドコーティング層)と、(b)アルミナコーティング層と、を含む。チタンアルミニウムオキシカーボナイトライド層は、金色を帯びて薄肉である。アルミナコーティング層は、黒色であり、より厚肉である。コーティングシーケンスからチタンナイトライドの外層に移行するチタンアルミニウムカーボナイトライド層とチタンカーボナイトライド層とが存在する。これらの移行層は、桃色を帯びる。外側チタンナイトライド層は、黄色を帯びる(または金色を帯びる)。
図6について説明する。この表には、90として全体が表されるコーティング付きカッティングインサート(これはコーティング付きボディーの例である)の提案された第3の実施形態のコーナーの断面が示されている。コーティング付きカッティングインサート90は、基材92を含む。コーティング付きカッティングインサート90は、括弧94により示されるコーティングスキームを有する。コーティングスキーム94は、以下に記載される複数のコーティング層を含む。
ベース(すなわち第1の)コーティング層96は、基材92の表面上にCVDにより堆積されたチタンナイトライド(チタンナイトライド粒子を含む)である。ベース層96の適用のためのプロセスパラメーターは、層38の適用のための表1に示されるものに準ずる。CVDプロセスは、所定の粒径でチタンナイトライド粒子の成長を終了するように選択された持続時間で行われる。チタンナイトライド粒子は、約1マイクロメートル以下の平均粒径を有する。第1のコーティング層96、ゼロマイクロメートル超に等しい下限と約5マイクロメートルに等しい上限との範囲内でありうる厚さを有する。
コーティングスキーム94は、括弧98、100、102、104、106により示される一連の5個のコーティングシーケンスをさらに含む。これらのコーティングシーケンス(98、100、102、104、106)のそれぞれの厚さは、約0.1マイクロメートルに等しい下限と約25マイクロメートルに等しい上限との範囲内である。他の選択肢として、各コーティングシーケンス(98、100、102、104、106)の厚さは、約1マイクロメートルに等しい下限と約20マイクロメートルに等しい上限との範囲内である。
これらのコーティングシーケンス(98、100、102、104、106)のそれぞれは、4層のコーティング層を含む。各コーティングシーケンス中の第1のコーティング層は、CVDにより適用されたチタンカーボナイトライド粒子を含むチタンカーボナイトライドのコーティング層を含む。CVDプロセスは、所定の粒径でチタンカーボナイトライド粒子の成長を終了するように選択された持続時間で適用される。チタンカーボナイトライド粒子は、約1マイクロメートル以下の平均粒径を有する。チタンカーボナイトライドのこのコーティング層の一部は、MT−CVDにより適用され、MT−CVDプロセスの堆積温度は、摂氏約700度〜摂氏約900度の範囲内である。シーケンス中のチタンカーボナイトライドコーティング層の残部の堆積物は、摂氏約1000度の温度で堆積される。チタンカーボナイトライドのこのコーティング層(MT−CVDおよびHT−CVD)に対する代表的プロセスパラメーターは、工程2Aおよび2Bとして表1に示されている。
各コーティングシーケンス中の第2のコーティング層は、CVDにより堆積されたチタンアルミニウムオキシカーボナイトライド粒子を含むチタンアルミニウムオキシカーボナイトライドのコーティング層を含み、このコーティング層は、ゼロマイクロメートル超の下限と約5マイクロメートルに等しい上限との範囲内にある厚さを有する。他の選択肢として、チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドのこのコーティング層の厚さは、約0.1マイクロメートルに等しい下限と約4マイクロメートルに等しい上限との範囲内にある。チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドのこのコーティング層に対する代表的プロセスパラメーターは、表1の工程4Aに示される。CVDプロセスは、所定の粒径でチタンアルミニウムオキシカーボナイトライド粒子の成長を終了するように選択された持続時間で適用される。チタンアルミニウムオキシカーボナイトライド粒子は、約1マイクロメートル以下の平均粒径を有する。
各コーティングシーケンス中の第3のコーティング層は、CVDにより堆積されたアルミナのコーティング層を含み、このコーティング層は、約0.1マイクロメートルに等しい下限と約25マイクロメートルに等しい上限との範囲内にある厚さを有する。他の選択肢として、微細化粒子状アルミナのこのコーティング層の厚さは、約1マイクロメートルに等しい下限と約20マイクロメートルに等しい上限との範囲内である。アルミナのこのコーティング層に対する代表的プロセスパラメーターは、表1の工程4Bに示される。CVDプロセスは、所定の粒径でアルミナ粒子の成長を終了するように選択された持続時間で適用される。アルミナ粒子は、約1マイクロメートル以下の平均粒径を有する。このアルミナコーティング層の結晶相は、α相である。
各コーティングシーケンス中の第4のコーティング層は、CVDにより堆積されたチタンアルミニウムオキシカーボナイトライドのコーティング層を含み、このコーティング層は、ゼロマイクロメートル超に等しい下限と約5マイクロメートルに等しい上限との範囲内にある厚さを有する。他の選択肢として、チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドのこのコーティング層の厚さは、約0.1マイクロメートルに等しい下限と約4マイクロメートルに等しい上限との範囲内にある。チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドのこのコーティング層に対する代表的プロセスパラメーターは、表1の工程4Aに示される。CVDプロセスは、所定の粒径でチタンアルミニウムオキシカーボナイトライド粒子の成長を終了するように選択された持続時間で適用される。チタンアルミニウムオキシカーボナイトライド粒子は、約1マイクロメートル以下の平均粒径を有する。
これらの5個のコーティングシーケンス(98、100、102、104、106)についてさらに詳細に説明する。これらのコーティングシーケンスの第1のシーケンス98は、チタンカーボナイトライドの第2のコーティング層108と、チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドの第3のコーティング層110と、アルミナの第4のコーティング層112と、チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドの第5のコーティング層114と、を含む。これらのコーティングシーケンスの第2のシーケンス100は、チタンカーボナイトライドの第6のコーティング層116と、チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドの第7のコーティング層118と、アルミナの第8のコーティング層120と、微細化粒子状チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドの第9のコーティング層122と、を含む。
コーティングシーケンスの第3のシーケンス102は、チタンカーボナイトライドの第10のコーティング層124と、チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドの第11のコーティング層126と、アルミナの第12のコーティング層128と、チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドの第13のコーティング層130と、を含む。コーティングシーケンスの第4のシーケンス104は、チタンカーボナイトライドの第14のコーティング層132と、チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドの第15のコーティング層134と、アルミナの第16のコーティング層136と、チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドの第17のコーティング層138と、を含む。
第5のコーティングシーケンス106は、チタンカーボナイトライドの第18のコーティング層140と、チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドの第19のコーティング層142と、アルミナの第20のコーティング層144と、チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドのコーティング層146と、を含む。
コーティングスキームは、最後に、外側チタンナイトライドコーティング層148を有し、このコーティング層148は、約0.1マイクロメートルに等しい下限と約5マイクロメートルに等しい上限との範囲内にある厚さを有する。チタンナイトライドコーティング層148は、チタンナイトライド粒子を含む。このコーティング層は、所定の粒径でチタンナイトライド粒子の成長を終了するように選択された持続時間で適用される。チタンナイトライド粒子は、約1マイクロメートル以下の平均粒径を有する。
図7について説明する。この図には、160として全体が表されるコーティング付きカッティングインサートの第4の特定の実施形態のコーナーの断面が示されている。コーティング付きカッティングインサート160は、基材162を含む。コーティングスキーム164を堆積する工程のプロセスパラメーターは、以下の表3に示される。
括弧164により示されたコーティングスキームは、CVDにより適用されたチタンナイトライドを含むベースコーティング層166を含んでなる。これは、表3中の工程1である。コーティング層166が堆積される温度範囲は、第1の特定の実施形態のベースコーティング層38に対するものと同一の範囲にすることが可能であり、存在するガスは、それに対するものと同一である。ベースコーティング層166は、約0.1マイクロメートルに等しい下限と約5マイクロメートルに等しい上限との範囲内にある厚さを有する。
表3中の工程2は、880〜900℃に等しい温度、70〜90mbに等しい圧力、かつ182分間に等しい持続時間で行われる。存在するガスは、表3に工程2に関連して示される。表3の工程2では、チタンカーボナイトライドの層167(図7参照)が堆積される。
コーティングスキーム164は、CVDにより適用された括弧168により示される中間コーティング領域をさらに含む。これは、表3中の工程3である。中間コーティング領域168は、2種の基本成分混合物を含む変調組成を含んでなる。成分混合物の一方は、アルミニウムと酸素とを含む。成分混合物の他方は、チタンと炭素と窒素とを含む。
コーティングスキーム164は、CVDにより中間コーティング領域168に適用された微細化粒子状チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドのコーティング層170をさらに含む。これは、表3中の工程4である。コーティング層170が堆積される温度範囲および存在するガスは、第1の特定の実施形態のコーティング層40に対するものと同一である。微細化粒子状チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドの層170は、約0.1マイクロメートルに等しい下限と約5マイクロメートルに等しい上限との範囲内にある厚さを有する。
コーティングスキーム164は、最後に、コーティング層170にCVDにより堆積された微細化チタンナイトライドの外側コーティング層172を含む。コーティング層172が堆積される温度範囲および存在するガスは、第1の特定の実施形態の外側コーティング層64に対するものと同一である。外側コーティング層172は、約0.1マイクロメートルに等しい下限と約4マイクロメートルに等しい上限との範囲内にある厚さを有する。
中間コーティング領域168に戻って説明する。ここで、正弦曲線の一方は、実線であり、アルミニウムと酸素との混合物を表す。正弦曲線の他方は、破線(すなわち断続線)であり、チタンと炭素と窒素との混合物を表す。これらの2つの成分に対する正弦曲線により示されるように、中間コーティング領域168の組成は、チタンナイトライドのベースコーティング層166との境界部(174で表される)から始めて中間コーティング領域168の厚さ全体にわたり周期的な点(176、178、180)で、チタンと炭素と窒素とだけを含む。これらの2つの成分に対する正弦曲線により同様に示されるように、中間コーティング領域168の組成は、コーティング層170(チタンアルミニウムオキシカーボナイトライド)との境界部(186で表される)および中間コーティング領域168の厚さ全体にわたり周期的な点(188、190、192)で、アルミニウムと酸素と(すなわちアルミナ)だけを含む。
これらの2つの成分に対する正弦曲線により同様に示されるように、中間コーティング領域168の組成は、組成がアルミニウムと酸素とだけまたはチタンと窒素と炭素とだけである点を除いて、チタン、アルミニウム、酸素、炭素、および窒素を含有し、さまざまな組成を有するチタンアルミニウムオキシカーボナイトライドを形成する。元素のそれぞれの濃度は、2つの成分に対する正弦曲線から明らかなように、この正弦曲線に従って中間コーティング領域168の厚さ全体にわたり変化する。
当然のことながら、元素の変動は、正弦曲線のものとは異なる形状をとりうる。実際上、出願人らは、いかなる周期的曲線(すなわち反復可能な形状)も好適であろうと考えている。出願人らは、元素の変動を表すいかなる特定の幾何学的な形状によっても本発明の範囲を限定しようとするものではない。
本発明の第4の特定の実施形態を作製するために使用可能なプロセスに関して、表3には、コーティングカッティングインサート(coating cutting insert)の第4の特定の実施形態のコーティングスキームを作製するために使用可能なプロセス工程が開示されている。表3について説明する。この表には、表3の左側から始めて第1の列にプロセス工程が示されている。第2の列は、対応する工程に対する温度範囲を摂氏度単位で示している。第3の列は、対応する工程に対する圧力範囲をミリバール単位で示している。第4の列は、対応する工程の全持続時間を分単位で示している。第5の列は、対応する工程中(全体的または部分的)に存在したガスを示している。
工程3のコーティングシーケンスは、以下の表3Aに示されている。工程のいずれにおいても、圧力は75mbに等しく、温度は880℃に等しかった。
他の選択肢として、コーティングスキームは、変調コーティング領域が1000℃に等しい温度で行われかつ以下の表3Bに示されるシーケンスに従うことを除いて、表3に示されるものと同様でありうる。
表3Aおよび3Bに示される選択肢の両方について説明する。この場合、工程3−1と3−2との組合せは、第1の逐次的コーティングスキームであるとみなしうる。この第1の逐次的コーティングスキームは、第1のチタン含有コーティング層(工程3−1により適用されたコーティング層に対応する)と第2のアルミニウム含有コーティング層(工程3−2により適用されたコーティング層に対応する)とを含む。工程3−3と3−4との組合せは、第2の逐次的コーティングスキームであるとみなしうる。この第2の逐次的コーティングスキームは、第3のアルミニウム含有コーティング層(工程3−3により適用されたコーティング層に対応する)と第4のチタン含有コーティング層(工程3−4により適用されたコーティング層に対応する)とを含む。
表3Aおよび3Bに示される選択肢の両方についてさらに説明する。この場合、工程3−5と3−6との組合せは、第3の逐次的コーティングスキームであるとみなしうる。この第3の逐次的コーティングスキームは、第5のチタン含有コーティング層(工程3−5により適用されたコーティング層に対応する)と第6のアルミニウム含有コーティング層(工程3−6により適用されたコーティング層に対応する)とを含む。工程3−7と3−8との組合せは、第4の逐次的コーティングスキームであるとみなしうる。この第4の逐次的コーティングスキームは、第7のアルミニウム含有コーティング層(工程3−7により適用されたコーティング層に対応する)と第8のチタン含有コーティング層(工程3−8により適用されたコーティング層に対応する)とを含む。
表3Aおよび3Bに示される選択肢の両方についてさらに説明する。この場合、工程3−9と3−10との組合せは、第5の逐次的コーティングスキームであるとみなしうる。この第5の逐次的コーティングスキームは、第9のチタン含有コーティング層(工程3−9により適用されたコーティング層に対応する)と第10のアルミニウム含有コーティング層(工程3−10により適用されたコーティング層に対応する)とを含む。当然のことながら、出願人らは、5個超の逐次的コーティングスキームを基材に適用しうると考えている。
当然のことながら、本発明者らは、他の硬質コーティング材料が本発明の範囲内にありうると考えている。これに関連して、硬質材料としては、第IVB族金属の微細化粒子状カーバイド、ナイトライド、カーボナイトライド、およびオキシカーボナイトライド、さらにはアルミナ(αアルミナ、γアルミナ、およびκアルミナを包含する)、ジルコニウムオキサイド、およびハフニウムオキサイド、ならびにそれらの組合せが挙げられうる。
図8について説明する。この図には、200として全体が表されるコーティング付きカッティングインサートの第4の特定の実施形態のコーナーの断面が示されている。コーティング付きカッティングインサート200は、基材202を含む。コーティングスキーム204を堆積する工程のプロセスパラメーターは、以下の表3に示される。
括弧204により示されたコーティングスキームは、CVDにより適用された微細化粒子状チタンナイトライドを含むベースコーティング層206を含んでなる。コーティング層206が堆積される温度範囲は、第1の特定の実施形態のベースコーティング層38に対するものと同一の範囲にすることが可能であり、存在するガスは、それに対するものと同一である。ベースコーティング層206は、0マイクロメートル超〜約5マイクロメートルの範囲内にある厚さを有する。
コーティングスキーム204は、CVDにより適用された括弧210により示される中間コーティング領域をさらに含む。中間コーティング領域210は、2種の基本成分混合物を含む変調組成を含んでなる。成分混合物の一方は、アルミニウムと酸素とを含む。成分混合物の他方は、チタンと炭素と窒素とを含む。
コーティングスキーム204は、CVDにより中間コーティング領域210に適用された微細化粒子状チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドのコーティング層212をさらに含む。コーティング層212が堆積される温度範囲および存在するガスは、第1の特定の実施形態のコーティング層42に対するものと同一である。微細化粒子状チタンアルミニウムオキシカーボナイトライドの層212は、約0.5マイクロメートル〜約2マイクロメートルの範囲内にある厚さを有する。
コーティングスキーム204は、最後に、コーティング層212にCVDにより堆積された微細化チタンナイトライドの外側コーティング層214を含む。コーティング層214が堆積される温度範囲および存在するガスは、第1の特定の実施形態の外側コーティング層48に対するものと同一である。外側コーティング層214は、約0.1マイクロメートル〜約5マイクロメートルの範囲内にある厚さを有する。
中間コーティング領域210に戻って説明する。ここで、曲線の一方は、実線であり、アルミニウムと酸素との混合物を表す。曲線の他方は、破線(すなわち断続線)であり、チタンと炭素と窒素との混合物を表す。これらの2つの成分に対する曲線により示されるように、中間コーティング領域210の組成は、チタンナイトライドのベースコーティング層206との境界部(216で表される)から始めて、主に、チタンと炭素と窒素とを含む(少量のアルミニウムおよび酸素を有する)。中間コーティング領域210の組成は、コーティング領域210が境界部216から組成がチタンと炭素と窒素とだけである点218まで移動するにつれて、徐々に変化する。
中間コーティング領域210の組成は、コーティング領域210が境界部216からさらに離れて移動するにつれて(すなわち、点218から点220まで移動)、再び変化する。点220でアルミニウムと酸素との量がチタンと窒素と炭素との量にほぼ等しくなるようにアルミニウム−酸素の含有率が増大しチタン−炭素−窒素の含有率が減少するように、性質が変化する。
コーティング領域210の組成は、点220からコーティング層212との境界部まで正弦曲線に従って変化する。より特定的には、コーティングが点222および点226でアルミニウムと酸素とからなる主要成分とチタンと炭素と窒素とからなる副次成分とを有する組成を有するように組成が変化する。点224では、コーティングは、チタンと炭素と窒素とからなる主要成分とアルミニウムと酸素とからなる副次成分と有する組成を有してなる。点226は、コーティング領域210とコーティング層212との境界部である。
組成がチタンと窒素と炭素とだけである点218以外では、コーティングは、チタンとアルミニウムと酸素と炭素と窒素とを含有し、さまざまな組成のチタンアルミニウムオキシカーボナイトライドを形成する。それぞれの元素の濃度は、中間コーティング領域の厚さ全体にわたり変化する。
当然のことながら、本発明者らは、他の硬質コーティング材料が本発明の範囲内にありうると考えている。これに関連して、硬質材料としては、第IVB族金属の微細化粒子状カーバイド、ナイトライド、カーボナイトライド、およびオキシカーボナイトライド、さらにはアルミナ(αアルミナ、γアルミナ、およびκアルミナを包含する)、ジルコニウムオキサイド、およびハフニウムオキサイドが挙げられうる。
本明細書中に明記された特許および他の文献は、本明細書中で参照することにより本明細書に援用されるものとする。本明細書を考慮すればまたは本明細書に開示されている本発明を実施すれば、本発明の他の実施形態が当業者に自明なものとなろう。本明細書および本実施例は、単なる例示を意図したものにすぎず、本発明の範囲を限定しようとするものではない。本発明の真の範囲および趣旨は、特許請求の範囲により示される。