JP2009161701A - セルロースアセテート及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】連続流延製膜時の金属支持体における汚れの付着が少ないセルロースアシレートを提供する
【解決手段】セルロースエステル中に残留する硫酸エステル基を減少させ、硫酸に換算したセルロースエステルに対する量として10ppm以上で160ppm以下、とすることによりカルシウムを総硫酸に対するカルシウムの化学当量比として0.3未満としても、湿熱耐熱性が確保され、なおかつカルシウム量を10ppm以下とすることで連続流延製膜時の金属支持体における汚れの付着を減少させる。
【選択図】なし

Description

本発明は、液晶表示装置の偏光板保護膜として用いるのに好適であるセルローストリアセテートフィルムを形成するのに有用なセルロースアセテートに関する。
セルロースアセテート特にセルローストリアセテートは、光学的等方性が高く、しかも強靭性および難燃性に優れるため、各種の写真材料や光学フィルムとして用いられてきた。
これらの用途の中でも近年特に液晶表示装置関係の光学材料、例えば、位相差フィルム、偏光板保護フィルム、光学補償フィルム、反射防止フィルムなどの光学フィルムとして用いられておりその重要性が高まっている。液晶表示装置用の光学フィルムの材料として用いられるセルローストリアセテートは、従来の写真フィルム用の光学フィルム材料として用いられるセルローストリアセテートと比較してより高度な光学的性能や品質を要求されている。
すなわち、液晶表示装置は薄型テレビやパソコンなどの電子機器の液晶画像表示装置として用いられているが、近年、これらの液晶画像表示装置が発展し、より大画面化、より高細密化が求められ、それに伴い光学素子の一部として用いられるセルロースエステルフィルム(偏光板用保護フィルム、視野角拡大フィルム、位相差フィルム)などにはより高度の品質が求められるようになって来た。しかしながら、セルロースアセテートフイルムには一つの品質上の問題点があった。
すなわち、セルロースアセテートフイルムは、セルロースアセテートを溶媒に溶解し、この溶液をダイ吐出する流延法で製膜されるのが一般的である。この流延時において、ダイからから無限移行する無端の金属支持体上(金属バンドあるいは金属ロール)に流延し、流延後金属支持体から剥離する際、ウェブ(流延膜が金属支持体上で乾燥し始めた膜をいう)は非常に柔らかいため製膜中の外力に左右され易く、筋や横段(フィルムの長手方向に発生する波状のムラ)等の欠陥が発生し易い。このような欠陥が生じると、出来上がりのフィルムの品質は低下し光学上の欠点となって、液晶表示装置に悪影響を及ぼす虞があるばかりでなく、歩留まりが低下しコストを押し上げる原因となり易い。この問題を解決するために様々な提案がされている。
例えば、特開2002−28943号公報(特許文献1)にはダイからドープを無限移行する無端の金属支持体上に流延した流延膜に対して上流及び/または下流側から当たる風をその最大風速の水平方向成分が4m/sec以下となるようにして、且つ流延膜の幅手全体に当たる風の風速の偏差が±20%以内となるようにすることで横断を防止する技術が開示されている。(要約、解決手段)
前記特許文献1によればダイから金属支持体上に流延する際の、流延膜(ドープそのものが溶液状態のため柔らかい)[「ウェブ」と同義語と思われる]とは、周囲の風の強さ、金属支持体の移行速度と流延量との関係、金属支持体の走行性の正確さ、流延膜の金属支持体に接する角度等が横段に関係していることが記載されている。またウェブを金属支持体から剥離する際においても、剥離張力、剥離する時の残留溶媒量、金属支持体表面の汚れ具合によっても横段が発生することが記載されている。([発明が解決しようとする課題]欄)
前記特許文献1によれば、横断を発生する原因となるのは、金属支持体の汚れでありことが記載されている。そして金属支持体を清掃する方法が記載されている。更には、不用意に汚れた金属支持体を使用し、製膜を続けている間にウェブの剥離残りや微細なカスなどによる汚れが蓄積して、汚れのところの剥離が悪くなり不規則な横段を生じ易く、このような場合、生産を中止して清掃し直す必要があることが記載されている。(段落番号[0055])
上記の通り横断の原因となる金属支持体の汚れは、清掃することでしか除去できず、清掃するためには製造を中断して行う必要があり生産性が良好ではない。
特開2002−254451号公報(特許文献2)には溶液製膜方法(流延製膜)において、流延支持体からある程度乾燥したフィルムを剥ぎ取る際、横断などの平面性のムラを防止する方法が記載されている。(要約の[課題]欄)前記特許文献2によれば、流延支持体から剥ぎ取られるフィルムの流延支持体の剥離点における接線方向を0度、法線方向を90度としたとき、フィルムの剥ぎ取り角度を30〜80度の範囲にする溶液製膜方法により横断の発生の抑制が図られることが記載されている。
この剥ぎ取り角度は、流延支持体から剥ぎ取りロールまでのフィルムの張力と関係しており、フィルムの張力を上げればフィルムは下に移動し、その結果剥ぎ取り角度が小さくなり、また逆にフィルムの張力を下げればフィルムは上に移動し、その結果剥ぎ取り角度が大きくなることが記載されている。また、フィルムと流延支持体との剥離性も関係し、剥離性がよければ剥ぎ取り角度が小さくなり、剥離性が悪ければ剥ぎ取り角度が大きくなるものであることが記載されている。したがって、フィルムの張力を所定範囲に制御したり、フィルムの剥離性を調整したりすることにより、フィルムの剥ぎ取り角度を30〜80度の範囲に調整することができることが記載されている。(段落番号[0013])
上記特許文献2の方法を用いれば剥離性を向上させることができ、ある程度の連続製造時間の延長を図ることができる。しかしながら、金属支持体が汚れてくることにより、前記特許文献2に記載の剥ぎ取り角度を満たしていても横段が発生することを防げなかった。
特開平10−316701号公報(特許文献3)には、上記のようなセルローストリアセテートにおいては、カルシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属が金属支持体との剥離性に影響を与えることが記載されている。また、前記特許文献3においては、セルローストリアセテートに結合したカルボキシル基の一部が酸型であるセルロースアセテートが開示されている。前記特許文献3には、このようなセルロースアセテートとするために、二種類の実施様態を開示しており、第1の方法として酸解離指数が特定の範囲の酸、例えばクエン酸などを含有させることが記載されている。
また、第2の方法としてカルシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の量を特定の範囲とすることで、セルロースアセテートに結合した結合硫酸については塩型とし、カルボキシル基については酸型とすることができることが記載されている。そして、特許文献3の比較例3においては、カルシウムが0ppm、マグネシウムが7.3ppm、ナトリウムが0ppmのセルローストリアセテートが開示されている。しかしながら、この比較例に記載されているような極端にアルカリ土類金属が少ないようなセルロースアセテートは耐熱性に劣るため、セルロースアセテートの製造過程や使用後の加水分解を抑制できず、変色などを生じるため実用的ではないことが記載されている。
前記特許文献3では、上記の通りセルロースアセテートの耐熱性を確保するためにアルカリ金属及びアルカリ土類金属の総量として、有効量以上と記載されており、具体的にはその実施例で1×10−6当量程度のアルカリ金属及び又はアルカリ土類金属の含有量が開示されている。前記特許文献3では汚れが付着していない金属支持体と流延膜との剥離性が検討されており、金属支持体の汚れ防止については何ら記載も開示もされていない。
前記特許文献3はセルロースアセテートの流延時の剥離性改善について顕著な効果を示したため、前記特許文献3の公開以降多くのアルカリ土類金属やアルカリ金属を限定したセルローストリアセテートが提案されている。また、特定の酸解離指数を持つ物質を剥離促進剤としてセルロースアセテートの溶液に添加することが提案されている。
例えば、特開2002-40244号公報(特許文献4)には数平均分子量(Mn)が50000≦Mn≦130000、重量平均分子量(Mw)が130000≦Mw≦290000であるセルロースエステルを含有する事を特徴とする光学フィルム。及び数平均分子量(Mn)が50000≦Mn≦130000、重量平均分子量(Mw)が130000≦Mw≦290000、Z平均分子量(Mz)が190000≦Mz≦490000であるセルロースエステルを含有する事を特徴とする光学フィルムが記載されている。(請求項1及び2)
前記特許文献4では、更にセルロースエステル中のアルカリ土類金属含有量が30ppm以下である該セルロースエステルを含有する事を特徴とする光学フィルムが記載されている。(請求項5)前記特許文献4によれば光学特性に優れ、かつ平面性がよくカールの少ない、取り扱い性に優れた光学フィルムを提供することができるというものである。(要約)
そしてセルロースエステル中のアルカリ土類金属の含有量は30ppm以下である事が光学特性に優れることから好ましいことが記載されている。そして、この範囲を上回ると、該セルロースエステルを溶解したドープ液の粘度が大幅に増大するだけでなく、ドープ液の白濁化や異物によるフィルム表面の品質劣化等が生じることが記載されており、より好ましい範囲は15ppm以下であり、全く含まない事が最も好ましいことが記載されている。(段落番号[0015])
そして実施例においては、カルシウムとマグネシウムの合計量としてのアルカリ土類金属量として、15、17、20、30ppmのものが開示されている。しかしながら、この文献では如何にしてセルロースエステル中のアルカリ土類金属を減少させるかについては何ら記載されていない。そして、アルカリ土類金属の金属支持体の汚染については何ら記載も開示もない。そして、セルロースエステルに含有される硫酸量については何ら記載されていない。
また、特開2000−313766号公報(特許文献5)においてはセルロースエステル中に含まれるFe成分の量が1ppm以下であり、Ca成分の量が60ppm以下でありかつMg成分の量が15から70ppmであるセルロースエステルフィルムが提案されている。[特許請求の範囲]具体的なCa成分の量としては、実施例でCa成分の量として14.7ppmから60ppmのものが開示されており、Mg成分の量としては17.3ppmから50ppmのものが開示されている。
特開2000−314811号公報(特許文献6)にはカルシウム量として14.7、14.8、48.7、58.7ppmのセルローストリアセテートが開示されている。そしてこれらのセルローストリアセテートに含まれるマグネシウム量として5.3、17.3、50.0、17.2、48.8ppmのものが開示されている。しかしながら、カルシウム量が少なくマグネシウム量がある程度存在するセルローストリアセテートについては何ら記載がなく、またセルローストリアセテートの含有するアルカリ土類金属類と流延時の金属支持体の汚染については何ら記載がない。 国際公開公報WO2004/076490号公報(特許文献7)にはセルロースアセテートに特定量のアルカリ土類金属特には、カルシウムを添加することにより湿熱安定性と金属への剥離性を同時に満足するセルロースエステルが開示されている。
前記特許文献7においてはセルロースエステル中においてセルロースエステル中の硫酸量を低減する方法が記載されており、(段落番号[0031])しかしながら、また、セルロースエステルのエステル化の工程で硫酸触媒を用いる限りにおいては、前記特許文献7でのセルロースエステルの態様に最も適している製造方法を用いてセルロースエステルを製造したとしても残存する硫酸基を皆無にすることはできないことも記載されている。(段落番号[0032]そして、硫酸基としては最低でもセルロースエステル1g当たり10×10-7mol程度は残留するものであることが記載されている。
そのためセルロースエステル1g当たり5×10-7mol程度の量のカルシウムを含有させることあき差異されており、またカルシウム含有量が20×10-7mol程度の量を超えた場合には溶液流延製膜法での金属支持体からの剥離性及び紡糸性に問題が生じる場合もあり、好ましい範囲としてはカルシウム含有量がセルロースエステル1g当たり5×10-7以上、20×10-7以下(単位はmol)であり、特に好ましい範囲としては8×10-7以上、15×10-7以下であることが記載されている。
そして、この特許においてカルシウムと硫酸との比が0.5以上でかる1.2以下である場合に湿熱安定性と金属への剥離性に特に優れたセルロースエステルが得られることが記載されている。(特許請求の範囲)前記特許文献7ではカルシウムを含有することが必要であることが記載されており、カルシウムが少ない場合に金属支持体の汚れが減少することについては何ら記載されていない。また、硫酸量が少ない場合には、マグネシウムを安定剤として使用しても良好な湿熱安定性が得られることについては開示も示唆もない。
同様な技術の開示として特開2005−82744号公報(特許文献8)があげることができる。前記特許文献8には、構成糖成分全体に対するマンノース含量が0.4モル%以上、カルシウム含量が10〜70ppmであり、総硫酸に対するカルシウムの化学当量比が0.3〜1.0であるセルロースエステルが記載されている。([特許請求の範囲]の欄)この文献では耐熱処理としてカルシウムのみが論じられておりマグネシウムの含有量については記載がない。
特許文献3でも開示されている通り、アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、セルロースアセテートの耐熱性を確保し、加水分解を抑制し、着色などを防ぐ作用がある。そして、特許文献5にて開示されている通り、アルカリ土類金属及びアルカリ金属の中でも特にカルシウムにこの安定性の効果が高い。したがって、アルカリ土類金属として、特にはカルシウムの含有量を少なくするのではなく、前記特許文献3で記載されている有効量以上のアルカリ土類金属を添加し、金属支持体と流延膜との剥離性改善する試みが主に行われてきた。すなわち、前記特許文献3に記載されている第1の様態である酸解離指数が特定の範囲の酸、例えばクエン酸などを含有させる技術を発展させたものである。
このような技術のひとつとして、例えば特開2003−276038号公報(特許文献9)をあげることができる。前記特許文献9では、セルロースアセテートを有機溶媒に溶解したセルロースアセテート溶液を流延してフィルムを製造する方法において、アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物に対し反応性を有し、かつ反応によって生成するアルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩が該溶液から析出しない溶解度を有する有機化合物を含有せしめることを特徴とするセルロースアセテートフイルムの溶液製膜方法であり、実施例において具体的にはクエン酸エチルハーフエステルを用いている。
前記特許文献9では、溶解度がある程度以上あることにより、ダイ内部や配管内部では、アルカリ土類金属塩が析出することを抑制することを特徴としている。この技術によれは配管内部での金属塩の析出は防止できるが、金属支持体では流延膜は乾燥させられるため、金属支持体上のウェブ残渣においては溶液濃度が高くなり、溶解度が高いものであって、金属支持体上では析出を防ぎ得ない。
特開2007−72390号公報(特許文献10)には前記特許文献3を引用した上で、前記特許文献3の欠点として、セルロースアシレート溶液でセルロースアシレートが含有しているアルカリ土類金属と微小な塩を作成し、長時間の流延工程において系に付着する問題を引き起こすことが解ってきたことが記載されている。前記特許文献8では特殊なレターデーション低下剤を含有させることにより剥離性の不良による光学的な歪みを回避していたが、金属支持体上に析出した汚れに起因する横断については何ら記載されていない。
このように、従来開示されている技術では、前記特許文献3の技術及びその応答技術を用いても、前記特許文献1及び2で問題となっている金属支持体の汚れを防止することはできず返って、金属支持体の汚れを助長する結果となっていた。
特開2006−89574号公報(特許文献11)は興味深い。この文献では、触媒硫酸量を低減することなく、分子量の低下を抑制しつつ、結合硫酸の量を低減できるセルロースエステルの製造方法が開示されている。(要約)
前記特許文献11に記載されている方法によれば、硫酸触媒の存在下、セルロースをアシル化剤でアシル化した後、熟成工程において、連続的又は複数回(例えば、3回以上)に分けて間欠的に塩基(カルシウム成分など)を添加して熟成し、結合硫酸量の少ないセルロースエステルを製造することが開示されている。そしてこの方法により、結合硫酸量を10〜150ppm程度に低減できるので、カルシウム含量も10〜110ppm程度に低減できることが開示されている。
しかしながら、前記特許文献11においては、あくまでも従来の硫酸量にみあった塩基を添加することが記載されており、残存硫酸とカルシウムの比率は前記特許文献7に記載された範疇に含まれるものでしかなかった。また流延時の金属支持体の汚れとアルカリ土類金属及び硫酸量の関係については何ら記載されていなかった。そして、金属指示体の汚れに対するアルカリ土類金属の種類の及ぼす影響については何も開示されていなかった。
特開2002−28943号公報 特開2002−254451号公報 特開平10−316701号公報(実施例、比較例3) 特開2002-40244号公報 特開2000−313766号公報 特開2000−314811号公報 国際公開公報WO2004/076490号公報 特開2005−82744号公報 特開2003−276038号公報 特開2007−72390号公報 特開2006−89574号公報
本発明が解決しようとする課題は、連続流延製膜時の金属支持体における汚れの付着が少ないセルロースアシレートが存在しないことである。
セルロースエステルの合成では、エステル化剤として、合成しようとするセルロースエステルに対応するカルボン酸及びカルボン酸無水物の存在下、酢酸などの溶媒と触媒を用いてセルロースをエステル化することで行われる。触媒としては、様々な無機酸や塩類などが提案されており、重クロム酸カリウム、過酸化水素水、なども提案されているが、工業的に一般的に触媒として使用されるものは硫酸である。このようにセルロースエステルの合成反応において、セルロースを硫酸触媒の存在下でエステル化して3置換のセルロースエステルを得た後、この一次セルロースエステルを加水分解して、所望の置換度のセルロースエステルを得るのが通常の合成反応である。
この場合、硫酸触媒はエステル化の場合の触媒として作用するが、加水分解反応においても触媒として作用する。このため所望するセルロースエステルの置換度によっては、エステル化が終了した段階で、硫酸触媒の全部または一部をアルカリ金属またはアルカリ土類金属類を添加して中和することが行われている。
このようなセルロースエステルの合成の副反応として、硫酸エステル基がセルロースに導入される。導入された硫酸エステルの一部は加水分解され水酸基になるが、一部のものは加水分解工程が終了した段階でも硫酸エステルとして存在し続ける、そして最終的に製品中に残留する。以上の経過をとってセルロースエステル製品に残留した硫酸エステル基は、時間の経過や温度により容易に加水分解し、硫酸を遊離する。このようにして硫酸が遊離するとセルロースエステルの加水分解を促進し、セルロースエステルやその成型物の分解の原因となる。
このような製品に残留する硫酸(残存硫酸)による分解の問題を軽減するには、アルカリ土類金属の水酸化物や塩でセルロースエステルを洗浄し、製品中に少量のアルカリ土金属を残留させることが提案され、安定化処理と呼ばれるアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の水酸化物や塩の添加が通常のセルロースエステルの製造においては行われている。上記の通り、エステル化反応終了時の触媒の中和(部分中和または全中和)及び耐熱処理により、セルロースエステル中には、アルカリ金属類及びまたはアルカリ土類金属類が存在する。
耐熱処理、すなわちセルロースエステルの耐加水分解性を向上させるために使用するアルカリ土類金属は、少なく過ぎると残存硫酸の問題を軽減する効果が 不十分である。このため一般的には過剰量のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属が耐熱処理として添加されている。上記の通り、セルロースエステル中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属は不可避のものであり、これを減少させることは技術的に困難であるものと認識されていた。
本発明の発明者らか検討した結果、横断の原因となる流延時の金属支持体上の汚れにはアルカリ土類金属の中でもカルシウムが特異的に検出されることを見出した。その一方で中和剤及び耐熱処理剤としてマグネシウムを用いた場合でも、金属支持体上の汚れにはマグネシウムが検出されないことを見出した。
セルロースエステルには上記の通り耐熱処置としてアルカリ金属及びアルカリ土類金属の添加量が行われている。多くの場合にはアルカリ土類金属の方が耐熱性を向上できるので少なくともアルカリ土類金属を一成分として含有する耐熱処理が好ましく用いられている。これらのアルカリ土類金属類の中でも、前記特許文献5に記載されている通りカルシウムを総硫酸に対するカルシウムの化学当量比として0.3〜1.0含有することが湿熱安定性のために有効である提唱されていた。本発明者らが検討した結果、セルロースエステル中に残留する硫酸エステル基を減少させ、硫酸に換算したセルロースエステルに対する量として10ppm以上で160ppm以下、好ましくは140ppm以下、さらに好ましくは120ppmより好ましくは110ppm以下とすることによりカルシウムを総硫酸に対するカルシウムの化学当量比として0.3未満としても、湿熱耐熱性が確保され、なおかつカルシウム量を10ppm以下とした場合に流延時の金属支持体に析出する汚れが抑制できることを見出し本発明に到達した。
前記特許文献3にも記載されている通り、アルカリ金属、アルカリ土類金属は有効量以上存在していないとセルロースアセテートの耐熱性を損なう。しかしながら、本発明者らは、セルロースアセテート中に含有される残存硫酸の低減について検討し、このように残存硫酸が減少されたセルロースアセテートの湿熱耐熱性と流延時の金属支持体の汚染状況について詳細に検討した。
その結果、セルロースエステル中に含まれるアルカリ金属及びアルカリ土類金属の量を検討して、アルカリ土類金属としては、従来耐熱性の点から不可欠とされていたカルシウムが少ない方が好ましく、具体的な数値としては、10ppm以下、より好ましくは7ppm以下、特に好ましくは5ppm以下、より良く好ましくは3ppm以下であることが良いことを見出した。
このようにカルシウム少ない場合であっても、マグネシウムを、セルロースエステルに対する量として、 10〜70ppm、好ましくは20〜60ppm、さらに好ましくは30〜50ppmとすることで、残留硫酸量が減少されたセルロースエステルでは十分に耐熱性が保持でき、残留硫酸による分解の問題を十分に軽減しつつ、アルカリ土金属のドープの反応による不溶解物の析出とそれによる流延時の金属支持体の汚染が抑制された、製膜基板汚れの問題も大きく軽減できるセルロースアセテートを提供できることを見出した。
すなわち本発明は、
1)硫酸に換算したセルロースエステルに対する量として10ppm以上で160ppm以下、でかつ
2)カルシウムが含まれていないか、含まれている場合でもカルシウム量を10ppm以下でかつ
3)マグネシウム量を10〜60ppm含有する
セルロースエステル特にはセルローストリアセテートである。
化学量論的な正確性を期すのであれば、アルカリ土類金属や硫酸量はセルロースエステルに対するモル量あるいは化学当量で示されるべきである。化学当量で示すと、硫酸量は硫酸に換算したセルロースエステル1g当たりに対する量として0.20×10-6N〜3.2×10-6Nの範囲である。また、カルシウム量としてはセルロースエステル1g当たりに対する量として0.5×10-6N以下である。カルシウムは存在していなくても構わない。
すなわち、耐熱処理やエステル化の触媒硫酸の中和にカルシウムを含む、水酸化物及び塩類を用いなかったとして、所謂夾雑物としてカルシウムが存在していることを許容する程度の含有量である。基本的にカルシウムとしては少なければ少ないほど好ましく、好ましくはセルロースエステル1g当たりに対する量として0.25×10-6N以下、より好ましくは0.13×10-6N以下、更に好ましくは0.10×10-6N以下である。カルシウムの分析限界としてセルロースエステル1g当たりに対する量として0.10×10-6N程度であり、所謂トレース量程度の夾雑を許容するのみである。
従来よりセルロースエステル特にはセルローストリアセテートの製造工程でエステル化後の触媒硫酸の中和(部分中和を含む)、そして耐熱処理を行わない場合にはセルロースエステル中のアルカリ金属、アルカリ土類金属を最小にできることが知られていた。(例えば特許文献3)。しかしながら、既に述べた通り、このような方法で製造されたセルローストリアセテートは耐熱性に劣るため含水フレークを熱風乾燥することができない。試験的には真空乾燥などの他の代替手段を用いることで試作はできるが工業的な生産には適さない。そして湿熱安定性も満足できるものではなく、長期間に渡る使用が予想される液晶画像表示装置の部材として用いるには不適当な物でしかなかった。
これに対して、本発明において、耐熱性を付与するためのアルカリ金属及びアルカリ土類金属としてはマグネシウムを用いる。マグネシウムと他のアルカリ金属を併用するのでも構わないが、耐熱性の付与の点ではアルカリ土類金属が優れる。カルシウムは後述する金属支持体の汚染の原因を形成するので本発明ではなるべく少ない量が含有されるようにする。そしてセルロースエステル中に含まれる硫酸量が0.20×10-6N〜3.2×10-6Nの特定の範囲内であれば、カルシウムの代替としてマグネシウムを耐熱処理剤として用いた場合でも遜色のない耐熱性を得ることができ、かつマグネシウムを用いることで金属指示体の汚れを減らすことができる。
本発明の特定の硫酸量を持つセルロースエステルを得る方法としては公知の様々な方法を用いることができる。例えば、前記特許文献7においてはセルロースエステル中においてセルロースエステル中の硫酸量を低減する方法としては
(1)中和時に添加する水の滴下速度を遅くする。
(2)触媒として用いる硫酸量を少なくする。
(3)中和前あるいは熟成中の温度を高くする。
などの方法を取ることができることが開示されている。
本発明においてもこれらの技術を用いることができ、更には必要に応じてこれらの方法を適宜組み合わせて用いることもできる。
しかしながら、また、セルロースエステルのエステル化の工程で硫酸触媒を用いる限りにおいては、前記特許文献7でのセルロースエステルの態様に最も適している製造方法を用いてセルロースエステルを製造したとしても残存する硫酸基を皆無にすることはできないことも記載されている。そして、硫酸基としては最低でもセルロースエステル1g当たり10×10-7mol程度は残留するものであることも記載されている。前記特許文献7に記載されている各々の方法は硫酸を減少させるのに効果がある。
しかしながら、前記特許文献7の方法はいずれも、セルロースの水酸基に結合した硫酸エステルを加水分解により除去することを目的としている。其れゆえに、これらの方法を用いた場合にはセルロース主鎖の加水分解反応とセルロース硫酸エステルの加水分解反応の競争反応となり、得られたセルロースエステルの重合度が低下し易い。
このため本発明で硫酸量を減少させるために最も好適な方法としては、特開2006−089574号公報に記載されている中和方法を用いることである。
ところで、セルローストリアセテートなどのセルロースエステル中に含まれるカルシウムの由来としては二種類ある。第一に上記の通り、エステル化後の触媒硫酸の中和(部分中和を含む)、そして耐熱処理に用いられたカルシウム水酸化物及びカルシウム塩が期限となるものである。また場合により加水分解終了後の反応液を沈殿する水分やフレークを洗浄する水分に不純物として含まれているカルシウムイオンに由来する場合もある。いずれにしても、これらのカルシウムイオンはエステル化の工程中に混入する。
第二のカルシウムの由来としては、原料パルプに含まれるカルシウム分である。
すなわち、パルプ中の原料となる粗リンター(コットンリンターと表記する場合もある)及び木材チップの中には、リグニン、ヘミセルロース、蛋白質、高級脂肪酸、などが含まれている。そして、これらの粗リンター及び木材チップの蒸解工程でアルカリ土類金属、特にはカルシウムが存在していると、これら特定成分の少なくとも一部、例えば高級脂肪酸やセルロース、ヘミセルロース中のカルボキシル基がカルシウム塩となる。そして、このようなカルシウム塩型の特定成分は以後のパルプの精製工程で不溶化してパルプ中に残存しやすくなる。
そして、その特定成分はアセチル化などのエステル化工程を経てもセルロースエステル中に残存する。
したがって、上記の第一の由来によるカルシウム分の低減のためにはエステル化工程での触媒硫酸の中和(部分中和を含む)剤、耐熱処理剤としてカルシウム分を含む水酸化物及び塩類を用いないことである。また、セルロースエステルの合成、沈殿、洗浄などの各工程で使用する用水には脱イオン水を用いることで対応することができる。
また、第二の由来によるカルシウムの低減については後述の通り原料パルプの精製工程そのものを検討する必要がある。しかしながら、セルロースエステル中に存在するカルシウムとしては、大部分が第一の由来によるものであり、第一の由来によるカルシウム分を少なくすることで本発明の目的を達成することができる。
無論、本発明においては上記の第二の由来のカルシウム分を少なくしても構わない。このようにして、第一の由来及び第二の由来のカルシウム分を減少させると、セルロースエステル中に含まれるカルシウム分が測定限界以下の量になる場合もある。したがって、このような場合にはセルロースエステル中にカルシウムが含まれていない様態となる。また本発明の別の様態としては、上記の第一の由来のカルシウム分については工程中での避けられない不純物としての混入程度は許容される。また、第二の由来のカルシウム分については、通常パルプ種類にもよるが、少ない場合にはこれを許容するという様態もある。何れの場合においてもカルシウムが含まれている場合でもカルシウム量を10ppm以下とすれば良い。
上記の通り、本発明で耐熱性を担うのはマグネシウムである。本発明においてはマグネシウム量を10〜60ppm含有するセルロースエステル特にはセルローストリアセテートである。化学当量で示すと、マグネシウムはセルロースエステル1g当たりに対する量として0.8×10-6N〜4.8×10-6Nの範囲である。
したがって、カルシウムとマグネシウムの量の総計としてはセルロースエステル1g当たり5.3×10-6N以下である。この範囲は特許文献3で開示されている5.5×10-6N以下であり、金属に対する剥離性を考慮した場合にはこの範囲がより好ましい。より好ましくは、マグネシウム量を20〜60ppm、更に好ましくは30〜50ppm含むものである。これらのマグネシウム量はセルロースエステル1g当たりに対するマグネシウム量として表記した場合はそれぞれ1.7×10-6N〜4.8×10-6N及び、2.5×10-6N〜3.3×10-6Nの範囲に相当する。
特許文献3に記載されている技術では、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の量は少なければ少ないほど好ましく、例えばより好ましい範囲としてはセルロースエステル1g当たりのアルカリ土類金属及びアルカリ金属量の総含有量として2.5×10-6N以下という範囲が開示されている。本発明においては、硫酸量が上記の所定の範囲内であることを前提とするが、2.5×10-6Nよりもやや大きな量のアルカリ土類金属類の添加が耐熱性の点でもより好ましい効果生じる。
含有硫酸量、カルシウム量、マグネシウム量を特定の範囲とすることにより、セルロースエステル特にはセルローストリアセテートの連続流延製膜時の金属支持体における汚れの付着が少なく、また流延製膜時の金属支持体からの剥離性も高い。このセルロースエステル特にはセルローストリアセテートは湿熱安定性や耐熱性も共に優れている。
セルロース誘導体は、通常、木材パルプ(例えば、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなど)、リンターパルプ(例えば、コットンリンターパルプなど)などの種々のパルプを原料として用いることにより得ることができる。これらのパルプは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。すなわち、例えば、リンターパルプ(精製綿リンターパルプ)と木材パルプとを組み合わせてもよい。これらのパルプのうち、後述の理由により、木材由来のパルプが好ましい。
パルプ中のα−セルロース含量(重量基準)は、例えば、94%以上、好ましくは96〜100%、さらに好ましくは98〜100%(特に99〜100%)程度である。また、前記パルプは、通常、ヘミセルロースなどの異成分を含有している。従って、本願明細書において、「セルロース」という語は、ヘミセルロースなどの異成分も含有する意味で用いる。さらに、セルロースは、通常、セルロース分子及び/又はヘミセルロース分子に結合した状態などで多少のカルボキシル基を含有していてもよい。
パルプ中のマンノース含量(重量基準)は、例えば、0.01〜3%(好ましくは0.1〜1%)程度であり、キシロース含量は、例えば、0.05〜5%(好ましくは0.5〜5%)程度であってもよい。
[パルプのカルシウム含量]
本発明では、原料パルプとして、カルシウム含量の少ないパルプを用いるのが好ましい。カルシウム含量の少ないパルプを用いることにより、セルロースエステル中に含まれるカルシウム量を少なくすることができる。例えば好適なパルプのカルシウム含量は20ppm以下(例えば、0.01〜18ppm)であり、好ましくは15ppm以下(例えば、0.01〜15ppm)、さらに好ましくは10ppm以下(例えば、0.05〜10ppm)、特に5ppm以下(例えば、0.1〜5ppm)である。なお、溶解パルプ中のカルシウム含量は、光学的な品質の観点からは、少なければ少ないほど好ましい。
本発明者らの検討では、例えば、クラフト法パルプの場合は、蒸解工程で使用する水酸化ナトリウムを回収再生品からバージン品に切り替えることにより、カルシウム含量として3ppm程度の溶解パルプを得ることができた。原料パルプ中のカルシウム量を減少させる方法として(1)元来カルシウム成分が少ないセルロース源(粗リンター及び木材チップ)の種類を限定する方法、(2)パルプの蒸解工程でカルシウムが混入しないようにする方法、(3)前記(1)及び(2)の方法を組み合わせる方法が挙げられる。これらの方法によって、パルプ中のカルシウム含量を減少できる。
方法(2)において、パルプの蒸解工程は、溶解パルプの製造における工程である。溶解パルプの製造方法は様々な方法が提案されているが、工業的には、サルファイト法とクラフト法の二種類が使用される。これらの溶解パルプの製造方法については、例えば、「木材化学」(E.スヨストローム著、近藤民雄訳、講談社発行、1986年刊行、104〜147頁)などに詳細に記載された方法などが利用できる。蒸解工程は、いずれの方法であっても行われるが、その主な目的はパルプ原料(木材チップなど)に含まれるリグニンの除去である。サルファイト法では、蒸解液は、亜硫酸及び重亜硫酸塩を含む水溶液が用いられる。重亜硫酸塩の塩基としては、例えば、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム又はアンモニウムが用いられるが、工業的には、主にはカルシウムが用いられる。従って、サルファイト法では、アルカリ土類金属、特にカルシウムの混入が多いため、重亜硫酸塩としてカルシウム塩を使用しないことにより、カルシウムの含有量を低減できる。
クラフト法では、蒸解液は、水酸化ナトリウム及び硫化ナトリウムの混合溶液が用いられ、硫化ナトリウムがリグニンと反応してチオリグニンを生成してリグニンを可溶化する。蒸解されたパルプの洗浄液には、チオリグニン、過剰の硫化ナトリウム及び水酸化ナトリウムが含まれている。さらに、リグニンなどの不純物を含むこの洗浄液は、還元性雰囲気下で燃焼され、硫黄分は硫化ナトリウムとなる。一方、他のナトリウム成分は炭酸ナトリウムとなる。硫化ナトリウム及び炭酸ナトリウムは、炉に残る残渣物(sediment)として回収され、水に溶解される。次に、酸化カルシウムか、或いは酸化カルシウムを水に溶解した水酸化カルシウムを残渣溶液に添加する。
この操作により、炭酸ナトリウムが苛性化され、水酸化ナトリウム及び炭酸カルシウムになり、残渣溶液は、硫化ナトリウム、水酸化ナトリウム及び炭酸カルシウムを含む溶液となる。この段階で、炭酸カルシウムは、溶解度の限界を超える部分については沈殿し、ろ過工程で溶液と分離される。すなわち、炭酸カルシウムが沈降、ろ過されることにより、蒸解に用いられる水酸化ナトリウムは回収され、炭酸カルシウムと水酸化ナトリウムとが分離される。しかし、この沈殿物のろ過工程では、工業的には完全に両者を分離できないため、従来は、蒸解液へ炭酸カルシウムが微量混入することは許容されていた。このため、脱リグニンの過程で添加する水酸化ナトリウム溶液には、微量の炭酸カルシウムが混入していたのが通常のクラフト法での製造工程である。
従って、クラフト法においてカルシウムを減少する方法としては、(1)使用する水酸化ナトリウム及び硫化ナトリウムについて、回収(再生)品を使用しない方法、(2)使用する水酸化ナトリウム及び硫化ナトリウムについて、回収(再生)品の使用割合を減少する方法、(3)炭酸カルシウムと、硫化ナトリウム及び水酸化ナトリウムを含む溶液との濾別において、メンブレンフィルタなどを使用してろ過により完全に固液を分離する方法、(4)炭酸カルシウムと硫化ナトリウム及び水酸化ナトリウムを含む溶液とのろ別において、ろ過工程を多段階に設置して工業的にろ過する方法などが利用できるが、これらの方法に限定されない。
なお、これらの方法を用いた場合には、カルシウムを低減したパルプを得るためにパルプの原料として使用する木材チップの種類に制限をする必要がない。このため、パルプの原料に左右されず、従来の知見で目的のフィルムに最適な物性のセルロース誘導体を得るためのパルプに適用することができるため好適である。
[パルプ中のカルシウム含量の測定方法]
パルプ中のカルシウム含量の測定は原子吸光法で行う。具体的な測定の前処理手順としては以下の方法を用いる。
(1)洗浄した50ml容量の磁性坩堝を2N硝酸水溶液中に1晩浸漬する。
(2)2N硝酸に漬けておいた磁性坩堝を純水で洗浄した後、超純水ですすぎ、乾燥
器中で乾燥させる。
(3)試料2gを磁性坩堝に精秤する。
(4)電熱器上で磁性坩堝中の試料を炭化させる。
(5)磁性坩堝を電気炉に入れ、500℃で約1時間、600℃で約1.5時間、灰
化する。
(6)完全に白く灰化したら、電気炉を止め、そのまま炉中で放冷する。
(7)0.5N塩酸水溶液を磁性坩堝に10ml入れ、サンドバス上で加熱溶解する。
(8)溶液を放冷後、50mlのメスフラスコに洗浄済みのロートを用いて移し、磁性
坩堝を超純水で洗いこみメスアップする(塩酸濃度:0.1Nとなる)。
(9)標準液として、1000ppm濃度のカルシウム標準液を0.1N塩酸水溶液で
希釈し、0.1ppm、0.75ppm、1.5ppmの濃度で調製する。
(10)フレーム原子吸光にて測定する。
検量線は次の方法で作成した。検量線用の標準液は市販の原子吸光用標準液を0.1N
の塩酸水溶液にて、0.1、0.75、1.5ppm濃度に、希釈調製し使用した。使用
した原子吸光装置は、島津製作所(株)製、商品名「AA−680」である。
[セルロース誘導体]
液晶表示装置において液晶の表示方法としてOCB法やVA法が存在する。このようなOCB用やVA用の光学フィルムおいては、所望の光学適性を得るために延伸する場合もある。このような延伸性は、セルローストリアセテートは不足する。したがって、延伸する必要に応じて、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロース混合脂肪酸エステルを本発明に用いても良い。またセルロースアセテートの延伸性を改良するために、セルロースをエーテル化した後、エステル化したようなセルロース誘導体も本発明には好ましく用いることができる。更には、セルロースアセテートに環状ラクトンなどを作用させたセルロース誘導体も場合により用いることができる。
本発明において、セルロースエステルと称する物は、これらのセルロースエステル、エーテル化したセルロースのエステル化物を含む。
好ましくはセルローストリアセテートであり、この場合のセルロースエステルの置換度は2.80〜2.965(特に2.85〜2.965)程度である。酢化度で表記した場合は、55.0〜62.0%、である。この場合の酢化度は60〜62.0、(置換度で2.79〜2.96、さらに好ましくは61.0〜62.0%(特に61.1〜61.4%)程度であってもよい。
[セルロースエステルの製造方法]
本発明のセルロースエステルの製造方法は、好ましくはカルシウム含量が20ppm以下のパルプと、エステル化剤とを反応させる方法であるが、通常のパルプを原料として合成することができる。本発明においては後記の通り、セルロースエステル中に残存する総硫酸量を減少させるために前記特許文献7に記載されている方法や、特開2006−089574号公報に記載されている中和方法を用いる点を除いては、慣用の製造方法を利用できる。得られるセルロースエステルの分子量を高くできる点で、特開2006−089574号公報に記載されている中和方法を用いるのが好ましい。
またセルロースアシレートなどのセルロースエステルの場合、「繊維素系樹脂」(宇多田和夫、丸澤廣著、日刊工業新聞社発行)に記載の方法などにより製造でき、例えば、原料パルプ(セルロース)を活性化する活性化工程と、活性化されたセルロースをエステル化剤(アシル化剤)でアシル化するアシル化工程と、アシル化反応の終了後、アシル化剤を失活させる失活工程と、生成したセルロースアシレートを熟成(ケン化、加水分解)する熟成工程を経て製造できる。
(活性化工程)
前記活性化工程において、原料パルプ(セルロース)は、通常、乾式などで解砕処理される。解砕処理されたパルプを活性化処理する方法としては、例えば、有機カルボン酸や含水有機カルボン酸(酢酸や含水酢酸)の噴霧や、有機カルボン酸や含水有機カルボン酸への浸漬などによリ、パルプ(セルロース)を処理することにより行うことができる。有機カルボン酸(酢酸など)の使用量は、セルロース100重量部に対して10〜100重量部、好ましくは20〜80重量部、さらに好ましくは30〜60重量部程度であってもよい。
(アシル化工程)
前記アシル化工程では、活性化されたセルロースをアシル化触媒(特に、硫酸などの強
酸)の存在下、アシル化剤でアシル化する。
アシル化触媒としての硫酸の使用量は、通常、原料セルロース100重量部に対して、1〜15重量部程度の範囲から選択でき、通常、5〜15重量部(例えば、5〜12重量部)、好ましくは7〜13重量部、さらに好ましくは5〜10重量部程度である。アシル化剤としては、酢酸クロライドなどの有機酸ハライドであってもよいが、通常、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などのC2-6アルカンカルボン酸無水物などが使用できる。これらのアシル化剤(酸無水物など)は単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。好ましいアシル化剤は、C2-4アルカンカルボン酸無水物、特に少なくとも無水酢酸を含む。好ましい態様において、アシル化工程では、無水酢酸と反応させてセルロースをアセチル化する。
アシル化工程(アセチル化工程などのエステル化工程)でのアシル化剤(無水酢酸など)の使用量は、前記アシル化度に応じて選択でき、例えば、セルロース100重量部に対して230〜300重量部、好ましくは240〜290重量部、さらに好ましくは250〜280重量部程度である。
アシル化工程において、通常、溶媒又は稀釈剤として有機カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸などのC2-6アルカンカルボン酸など)が使用される。有機カルボン酸(酢酸など)の使用量は、例えば、セルロース100重量部に対して200〜700重量部、好ましくは300〜600重量部、さらに好ましくは350〜500重量部程度である。なお、アシル化反応は、慣用の条件、例えば、0〜50℃(例えば、5〜40℃)程度の温度で行うことができる。
アシル化反応によりセルロースエステル(特に、セルローストリアセテートなどのセルローストリアシレート)を生成させることができる。
そして、所定のアシル化度(特に、アセチル化度)に到達した後、アシル化反応を停止し、硫酸(残存硫酸)を熟成触媒(又は脱アシル化触媒)として利用して、所定量の塩基(特に無機塩基)を添加して残存硫酸成分を部分中和しつつ、熟成(又は加水分解)する。なお、本明細書において、「多段中和」とは、熟成工程において塩基を添加して行う中和を意味し、アシル化反応の停止(および熟成反応の開始)のために添加する塩基による中和(部分中和)を含まない。
なお、アシル化反応を停止するため、前記のように、水および酸水溶液[例えば、水とカルボン酸類(特にアシル化剤に対応するカルボン酸など)との混合溶媒]を反応系に添加したり、前記塩基(通常、塩基の水溶液)を添加したりして、アシル化剤を失活させるとともに、反応系に水を存在させる場合が多い。水および酸水溶液を添加した場合は、アシル化触媒として添加された硫酸触媒は中和されない。一方、前記前記を添加した場合は、少なくとも部分的に硫酸触媒は中和される。水の添加量は、アシル化剤の残存量に応じて選択でき、例えば、アシル化剤の残存量1モルに対して1.2〜3モル、好ましくは1.5〜2.5モル程度である。なお、高置換度のセルロースエステルを得るためには、前記混合溶媒(例えば、酢酸水溶液)を用いるのが有利である。混合溶媒中のカルボン酸類の含有量は、例えば、20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%程度であってもよい。
常用の技術では前記塩基としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、遷移金属化合物、アンモニアなどが例示できる。アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど)、有機酸塩(酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの酢酸塩など)などが例示できる。アルカリ土類金属化合物としては、例えば、水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなど)、炭酸塩(炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウムなど)、有機酸塩(酢酸マグネシウム、酢酸カルシウムなどの酢酸塩など)などが例示される。
しかしながら、本発明では、前記塩基としてカルシウムからなる塩基を用いない。そして好適には少なくとも前記塩基の一部分はマグネシウムからなる塩基を添加する。マグネシウムからなる塩基としては特に限定されず、例えば、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウムなどが例示される。
(熟成工程)
熟成工程とは加水分解工程である。すなわち、アシル化工程でその含有する全ての水酸基をエステル化されたセルロースエステルは熟成工程により加水分解され所望する平均置換度のセルロースエステルとして得られる。熟成反応は、その加水分解速度を調整するため必要であれば、他の酸触媒(プロトン酸、ルイス酸)を使用してもよい。しかしながら、置換度が高い場合は、残存硫酸(アシル化触媒の硫酸が部分中和された残りの硫酸)を熟成反応の触媒として使用する場合が多い。熟成反応は、不活性ガス雰囲気中で行ってもよく、空気雰囲気中で行ってもよい。
熟成工程での反応(熟成反応)は、20〜90℃程度の範囲で行ってもよいが、アシル基の置換度を高いレベルに維持するためには温和な条件で行うのが好ましい。そのため、熟成工程での反応(熟成反応)は、例えば、温度20〜60℃(例えば、30〜60℃)、好ましくは25〜60℃(例えば、30〜55℃)、さらに好ましくは30〜55℃(例えば、40〜55℃)程度で好適に行ってもよい。
本発明では、熟成工程において、反応系に所定量の塩基を連続的に添加するか又は複数回に分けて間欠的(又は段階的)に添加して部分中和し、連続的に又は複数回に亘り熟成反応(脱アシル化および脱硫酸エステル反応)を行う。本発明では、連続的又は間欠的な添加(又は添加方法)により反応系の硫酸量を低減し、セルロースエステル結合の形態で導入された硫酸(硫酸エステル基)を脱離させることができる。すなわち、脱アシル化反応と脱硫酸反応とは、前記のように、競争反応であるようである。
このような反応系において、連続的又は間欠的な塩基の添加により、残存硫酸成分(結合硫酸など)の脱離効率を選択的に高めることができ、生成した硫酸金属塩を硫酸成分として除去できる。特に、カルシウムを除くアルカリ土類金属化合物を添加すると、反応系で不溶性硫酸金属塩(特に、硫酸マグネシウム)が生成し、析出とともに硫酸成分を反応系から除去できる。そして、本発明においては、このような熟成工程で連続的または間欠的に添加される前記塩基にカルシウムからなる塩基を除く塩基を用いる。
特に好ましくは前記マグネシウムからなる塩基を用いる。塩基を反応系に短いインターバルをおいて滴下又は添加することにより、塩基を実質的に連続して添加できる。複数回に分けて塩基を添加する場合、塩基の添加回数は、少なくとも3回(例えば、3〜100回)、好ましくは4回以上(4〜100回)、さらに好ましくは5回以上(5〜100回)であってもよい。工業的に有利に熟成を行うためには、少なくとも3回、例えば、3〜50回(例えば、3〜20回)、好ましくは4〜25回(4〜20回)程度である場合が多く、3〜10回程度であってもよい。
多段中和(熟成工程での塩基の添加)のための塩基の量は、反応系中の硫酸触媒1当量に対して、部分中和(又は中和操作)1回あたり0.1〜0.9当量、好ましくは0.2〜0.8当量、さらに好ましくは0.3〜0.7当量(例えば、0.3〜0.6当量)程度の範囲から選択できる。さらに、熟成工程では、このような硫酸触媒の部分中和をくり返すことができる。
好ましくは、熟成工程(又は熟成反応)の初期に塩基の添加量を多くし、後期に至るにつれて塩基の添加量を連続的又は間欠的(段階的)に低減してもよい。塩基の添加は、通常、熟成工程の後期よりも初期での塩基の添加量を多くする場合が多い。複数回に分けて塩基を添加する場合、好ましい態様では、初回(熟成工程における第1回目の塩基の添加)において、当初の硫酸触媒量(残存硫酸量)に対して10〜90当量%(好ましくは25〜90当量%、さらに好ましくは30〜70当量%、特に40〜60当量%)程度の塩基を添加して部分中和し、熟成反応(第1熟成反応)を行う場合が多く、20〜80当量%(例えば、45〜55当量%)程度の塩基を添加して部分中和し、熟成反応(第1熟成反応)を行ってもよい。このような塩基の添加(又は中和処理)により、当初の硫酸量を10〜75重量%(好ましくは30〜70重量%、さらに好ましくは40〜60重量%)程度に低減でき、結合硫酸を脱離しつつ、熟成反応を行うことができる。
熟成工程では、連続的又は間欠的に塩基を添加して行えばよいが、残存硫酸量を所定の範囲に制御しつつ行うのが好ましい。例えば、反応系中の残存硫酸量[S]を下記式(1)で表される量に制御しつつ、熟成反応を行うことができる。
[S]=2/[a(k×t+4/[S]0)] (1)
式中、[S]は原料セルロース100重量部に対する硫酸量(重量部)、[S]0は中和前(塩基添加前)の原料セルロース100重量部に対する硫酸量(重量部)、係数aは0.5〜2、係数kは0.01〜0.1、tは、連続的添加では塩基添加開始からの経過時間(分)、段階的添加では塩基の添加からの経過時間(分)を示す。)
より具体的には、塩基を連続的又は間欠的(段階的)に添加して反応系中の硫酸量[S]を下記式(2)で表される範囲に制御し、熟成反応を行うことができる。
2/[a(0.1×t+4/[S]0)]≦[S]≦2/[a(0.01×t+4/[S]0)] (2)
(式中、[S]、[S]0、a、tは前記に同じ)
なお、前記式(1)及び(2)において、中和前(塩基添加前)の原料セルロース100重量部に対する硫酸量[S]0は塩基の添加条件(添加量、添加方法)と残存硫酸成分量との関係に基づいて外挿により求めることができるが、中和前の反応系中の硫酸量を実際に測定することは困難である。そのため、実用的な観点からすると、塩基を連続的又は段階的に添加する方法において、各塩基の添加(又は添加完了)から3分経過以内の反応系中の硫酸量(原料セルロース100重量部に対する硫酸量)[S]を下記式(3)で表される範囲に制御し、熟成反応を行ってもよい。すなわち、上記式(2)を下記式(3)に置き換えて反応系中の硫酸量を制御しつつ、熟成反応を行ってもよい。
2/(0.1×t+4/[S]0)≦[S]≦2/[0.6(0.01×t+4/[S]0)] (3)
(式中、[S]は原料セルロース100重量部に対する硫酸量(重量部)、[S]0は塩基の添加前(塩基添加前)の原料セルロース100重量部に対する反応系の硫酸量(重量部)、tは、連続的添加では塩基添加開始からの経過時間(分)、段階的添加では塩基の添加からの経過時間(分)を示す)
式(3)において、[S]0は、各塩基の添加(又は添加完了)から3〜5分経過後(特に3分経過後)の硫酸量(重量部)として測定する場合が多い。前記反応系中の硫酸量(重量部)は、反応系中の残存硫酸量(特に結合硫酸を含む残存硫酸成分量)を意味する。
前記式(1)〜(3)は、硫酸基の置換度と脱硫酸の速度との関係を示す反応速度論を基にして速度定数を求めることにより実験的に得られた関係式であり、塩基の添加からの経過時間t(連続的添加では塩基の添加開始からの経過時間(分)、段階的又は間欠的添加では各添加操作での塩基の添加終了からの経過時間(分)、例えば、式(3)では塩基の塩基添加終了から3〜5分後)において、塩基の添加前の反応系中の硫酸量(残存硫酸量)[S]0に対して、反応系中の硫酸量(残存硫酸量)[S]を所定の割合で低減させることを意味する。
すなわち、式(1)〜(3)は、塩基の添加前の硫酸量(仕込み硫酸量又は残存硫酸量)[S]0に対して、塩基添加による中和初期(例えば、時間t=0)における硫酸量(残存硫酸量)[S]を所定割合(例えば、40〜60重量%、特に45〜55重量%)に低減させて(又は所定量の硫酸を残存させて)アシル化することを意味する。なお、第1回の塩基の添加前では、塩基の添加前の反応系中の硫酸量(残存硫酸量)[S]は反応に使用した硫酸の使用量(又は仕込量)に相当する。
このような連続的又は多段熟成反応(脱アシル化反応、脱硫酸エステル反応)によりアシル化度(アセチル化度など)を調整し、所定のアシル化度のセルロースエステル(セルロースアセテートなど)を生成できる。さらに、アシル化工程での触媒硫酸量を低減することなく、生成したセルロースエステル中の残存硫酸量(特に結合硫酸量)を大きく低減できるとともに残存硫酸量をコントロールできる。例えば、絶乾でのセルロースエステル中の残存硫酸量(硫黄に基づく硫酸換算の量)を160ppm以下(0〜160ppm、特に10〜160ppm)、通常、140ppm以下(例えば、50〜140ppm、特に20〜140ppm)、好ましくは130ppm以下(例えば、20〜130ppm)、さらに好ましくは120ppm以下(例えば、90〜110ppm以下)、特に100から120ppmの範囲に低減することもできる。
残存硫酸量(又は総硫酸量)は、乾燥したセルロースエステルを1300℃の電気炉で焼き、昇華した亜硫酸ガスを10%過酸化水素水にトラップし、規定水酸化ナトリウム水溶液にて滴定し、SO42-換算の量として測定する。測定値は絶乾状態のセルロースエステル1g中の硫酸含有量としてppm単位で表される。
熟成工程(又は熟成反応)の停止は、反応系中の残存硫酸を完全に中和(完全中和)するための完全中和工程を経ることにより行われる。すなわち、前記熟成反応の後、塩基(特に金属成分)で構成された中和剤(好ましくはアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物)を添加する場合が多い。通常、熟成工程(又は熟成反応)を停止させるため(又は反応系中の残存硫酸を中和するため)、前記塩基(特に過剰量の塩基)を添加して完全中和する場合が多い。なお、当初の硫酸量(触媒硫酸量、仕込み量)に対して残存硫酸量が1〜35重量%(例えば、15〜35重量%)、好ましくは1〜15重量%(例えば、5〜15重量%)、さらに好ましくは1〜10重量%程度(例えば、5重量%以下)に低減したとき、完全中和のための塩基(例えば、中和用塩基の残存量)を反応系に一括して添加してもよい。
(沈殿工程)
前記の熟成工程での反応生成物は、通常、洗浄、沈析などの操作による精製工程に供される。代表的には、反応生成物を水又は酢酸水溶液などに投入し、生成したセルロースエステル(沈澱物)を分離し、水洗などにより遊離の金属成分や硫酸成分などを除去する場合が多い。特に、前記熟成反応の後(完全中和の後)、セルロースエステルの耐熱安定性を高めるため、必要に応じてさらに、前記塩基[アルカリ金属化合物及び/又はカルシウムを含まないアルカリ土類金属化合物、特に少なくともマグネシウム化合物(水酸化マグネシウムなど)]を添加してもよい。また、反応生成物を水又は酢酸水溶液などに投入して生成したセルロースエステルを分離し、水洗などにより遊離の金属成分や硫酸成分などを除去してもよい。
(耐熱処理)
このようなセルロースアシレートの製造工程(例えば、製造工程の最終段階)においては、耐熱処理を行うのが望ましい。すなわち、セルロースアシレートは、通常、熱が作用し水分が存在している環境下では加水分解を起こす。そのため、常用の技術では熱安定性や湿熱安定性を向上させるため、安定剤として、例えば、アルカリ金属(リチウム、カリウム、ナトリウムなど)又はその塩やその化合物、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムなど)又はその塩やその化合物を含有させることにより、硫酸を触媒として用いた際に導入される硫酸基を不活性化し、耐熱安定性を付与する。
常用技術では安定剤は、カルシウム化合物が好ましく用いられるが、本発明においては通常、前記に例示したカルシウムを除くアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などであり、特に、マグネシウム化合物が好ましく用いることができる。
特には、酢酸マグネシウムであってもよい。安定剤の添加方法としては、前記金属化合物の希薄水溶液をセルロース誘導体が分散した懸濁液に添加する方法などが挙げられる。
特に、本発明では、アシル化工程、熟成工程、耐熱処理工程(特に耐熱処理工程)で、アルカリ土類金属のカルシウムが混入した場合であってもカルシウム成分が前記範囲内であれば金属支持体の汚れを抑制でき、またマグネシウム成分と硫酸成分が前記範囲内であれば、マグネシウム成分によって耐熱性及び湿熱安定性を向上できる。
本発明のセルロースエステル特にはセルローストリアセテートは液晶表示装置用の光学フィルムの材料として好適である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
原料パルプの物性については以下の様にして評価した。
[αセルロース含量]
試料5gを300mlのビーカに取り、17.5%水酸化ナトリウム溶液50mlを加える。3.5分後から先端の平たいガラス棒で押し潰して離解し、20分間放置する。撹拌しながら50mlの純水を加え、測定開始から35.5分後にビーカ内容物を重量既知の金巾を敷いたブフナー漏斗に移し、吸引濾過する。ろ過終了後、再濾過し濾液が80mlとなるまで圧搾し、次に水900mlで洗浄する。水洗後の残渣に10%酢酸40mlを加え5分間放置する。最後に1000mlの純水で洗浄し、残渣を金巾と共に80℃で30分乾燥後105℃で乾燥して恒量を求め、試料重量(乾燥重量)に対する重量%を算出する。
[パルプ中のカルシウム含量]
パルプ中のカルシウム含量は、前述の測定方法に従って測定した。
セルロースアセテートの酢化度、粘度平均重合は次のようにして評価した。
[酢化度]
酢化度は、単位重量当たりの結合酢酸の重量百分率を意味し、以下の通り測定した。乾
燥したセルロースアセテート1.9gを精秤し、アセトンとジメチルスルホキシドとの混
合溶液(容量比4:1)150mlに溶解した後、1N−水酸化ナトリウム水溶液30m
lを添加し、25℃で2時間ケン化する。フェノールフタレインを指示薬として添加し、
1N−硫酸(濃度ファクター:F)で過剰の水酸化ナトリウムを滴定する。また、同様の
方法でブランク試験を行い、下記式に従って酢化度を計算する。

酢化度(%)={6.5×(B−A)×F}/W

(式中、Aは試料の1N−硫酸の滴定量(mL)を、Bはブランク試験の1N−硫酸の滴
定量(mL)を、Fは1N−硫酸の濃度ファクターを、Wは試料の重量を示す)
[粘度平均重合度]
メチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比)の混合溶液に、乾燥したセルロー
スアセテートを溶解し、所定の濃度C(2.00g/リットル)の溶液を調製する。この
溶液をオストワルド粘度計に注入し、25℃で粘度計の刻線間を溶液が通過する時間t(
秒)を測定した。一方、前記混合溶媒単独についても同様にして通過時間(秒)t0を測
定し、下記式に従って、粘度平均重合度を算出した。

ηrel=t/t0
[η]=(ln ηrel)/C
DP=[η]/(6×10-4

[式中、tは溶液の通過時間(秒)、t0は溶媒の通過時間(秒)、Cは溶液のセルロー
スアセテート濃度(g/リットル)、ηrelは相対粘度、[η]は極限粘度、DPは粘度
平均重合度を示す]。
[カルシウム量及びマグネシウム量]
試料3.0gをルツボに採り、電熱器上で炭化した後、電気炉に入れて800±10℃で約2時間灰化する。蓋をして放冷後、0.07%塩酸溶液25mlを添加し、ホットプレート上で加温溶解する。放冷後、200mlナルゲルフラスコに溶液を移す。蒸留水でルツボを洗浄し、その液もナルゲルフラスコに移し、蒸留水を標線まで注ぐ。
これを検液として、原子吸光光度計を用いて吸光度を測定し、試料中のCa、Mgを求める。
[安定度]
湿熱安定性は次のようにして測定した。
乾燥したセルロースエステルを粉砕し約2.0gをパイレックス(登録商標)試験管に秤取し、2mlの蒸留水を加えたのち、密栓して沸騰水浴中に7時間浸漬する。冷却後、内容物を沸騰水で濾紙上に洗い出し、濾液を合わせて150mlとする。この液についてフェノールフタレインを指示薬として0.01N−NaOH溶液で滴定する。同時に使用水のみを用いたブランクテストを行い、次式により湿熱安定性を算出する。

安定度(%)=(A−B)×F×0.06÷試料重量(g)

(但し、A:0.01N−NaOH溶液の滴定量(ml)、B:ブランクテストにおける0.01N−NaOH溶液の滴定量(ml)、F:0.01N−NaOH溶液のファクター)。
[イエローネスインデックス(YI)]
乾燥したセルロースエステル12.0gを正確に秤量し、溶媒(メチレンクロライド/
メタノール=9/1(重量比)の混合溶媒やアセトンなど)88.0gを加えて完全に溶
解させる(12重量%試料溶液)。色差計(日本電色工業(株)製,色差計Σ90)と、
ガラスセル(横幅45mm,高さ45mm,光路長10mm)を用い、下記式によりYI
を算出する。

YI=YI2 −YI1

(式中、YI1 は溶媒のYI値,YI2 は12重量%試料溶液のYI値を示す)。
[ヘーズ]
濁度計(日本電色工業製)を用い、ガラスセル(横幅45mm,高さ45mm,光路長
10mm)を使用し、次のようにして測定する。
まず、上記と同様の溶媒(メチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比))をガラスセルに入れて濁度計にセットし、0点合わせと標準合わせを行う。次いで、ガラスセルに上記と同様にして調製した12重量%試料溶液(メチレンクロライド/メタノール混合溶媒溶液)を入れて濁度計にセットし、得られた数値を読み取る。
[耐熱度]
色味が異なるフレーク試料を数種類準備して、これのYI値を測定して、標準試料とする。
YI値10のものを、5級とし、以下同様にYI値22のものを6級とし、YI値26のものを7級とし、YI値31のものを8級とし、YI値36のものを9級とし標準試料とする。
粉砕乾燥試料約3gをパイレックス(登録商標)試験管に固く詰めて、240±1℃のソルトバス中で試料の上端が液面下に隠れるように浸漬し、10分間加熱後取出し、水に浸けて冷却後、限度見本と比較して等級を判定する。
[流延金属支持体汚れ評価法]
下記の方法で製膜することに流延金属支持体の汚れについて確認した。流延装置としては特開2002−254451号公報に記載されているのと同様な装置を用いて行った。すなわち、特開2002−254451号公報の図16に示されている流延支持体として冷却ドラムを用い、また、テンタ−を用いたものにより製膜試験を行った。使用したドープ(流延液)の組成は以下の通りである。
セルローストリアセテート 20.4質量部
トリフェニルフォスフェート 3.1質量部
ジクロロメタン 65.0質量部
n−ブタノール 5.4質量部
メタノール 9.1質量部
このドープを用い流延速度80m/min、剥ぎ取り角度75度、残留溶媒濃度が300wt%、フィルム厚みが80μmとなるように流延製膜を行った。得られたフィルムを目視により観察し、評価した。評価内容は以下の通りである。
◎:ムラが視認できないレベル
○:ムラは視認できるが、ムラ限度より良いレベル
△:ムラ限度と同じレベル
×:ムラ限度より悪いレベル
そして、比較例8において◎の状態のフィルムが得られる連続運転時間を100として、各実施例及び比較例での連続運転時間を評価した。
[合成例1]
広葉樹クラフト法パルプ(α−セルロース含量98.5重量%、含水率8.5%、パルプ中のカルシウム含有量5ppm)100重量部に氷酢酸51重量部を散布して前処理活性化させた後、氷酢酸384重量部、無水酢酸241重量部、および硫酸7.7重量部の混合物を添加し、43℃以下の温度で撹拌混合しながらエステル化を行った。なお、繊維片がなくなったときをエステル化反応の終点とした。
そして、エステル化反応終了時に反応系に18.5重量部の24重量%酢酸マグネシウム水溶液を添加し、過剰の無水酢酸を分解させ、硫酸量を3.6重量部まで中和し、さらに水を添加して反応浴の酢酸に対する水の割合を13モル%に調整し、65度で30分間保持して熟成を行った。その後、5分間かけて12.6重量部の15重量%酢酸マグネシウム水溶液を添加し、硫酸量が1.8重量部になるまで中和し、さらに65度で10分間保持し、第2の熟成反応を行った。
すなわち、熟成工程において、中和操作(多段中和操作)を1回繰り返した。その後、過剰量の15重量%酢酸マグネシウム水溶液を添加し、残存硫酸を完全に中和して熟成反応を停止した。
[合成例2]
以下の操作を行う以外、合成例1と同様としてセルローストリアセテートを生成させた。エステル化反応終了時に反応系に18.5重量部の24重量%酢酸マグネシウム水溶液を添加し、過剰の無水酢酸を分解させ、硫酸量を3.6重量部まで中和し、さらに水を添加して反応浴の酢酸に対する水の割合を13モル%に調整し、65度で30分間保持して熟成を行った。その後、5分間かけて12.6重量部の15重量%酢酸マグネシウム水溶液を添加し、硫酸量が1.9重量部になるまで中和し、さらに65度で10分間保持し、第2の熟成反応を行った。
さらに、5分間かけて6.5重量部の15重量%酢酸マグネシウム水溶液を添加し、硫酸量が0.9重量部になるまで中和し、65度で20分間保持し、第3の熟成反応を行った。さらに、5分間かけて3.3重量部の15重量%酢酸マグネシウム水溶液を添加し、硫酸量が0.5重量部になるまで中和し、65度で25分間保持し、第4の熟成反応を行った。すなわち、熟成工程において、中和操作(部分中和操作)を3回繰り返した。その後、過剰量の15重量%酢酸マグネシウム水溶液を BR>Y加し、残存硫酸を完全に中和して熟成反応を停止した。
[合成例3]
以下の操作を行う以外、合成例1と同様としてセルローストリアセテートを生成させた。エステル化反応終了時に反応系に18.5重量部の24重量%酢酸マグネシウム水溶液を添加し、過剰の無水酢酸を分解させ、硫酸量を3.6重量部まで中和し、さらに水を添加して反応浴の酢酸に対する水の割合を13モル%に調整し、65度で30分間保持して熟成を行った。その後、5分間かけて12.6重量部の15重量%酢酸マグネシウム水溶液を添加し、硫酸量が1.9重量部になるまで中和し、さらに65度で10分間保持し、第2の熟成反応を行った。
さらに、5分間かけて6.5重量部の15重量%酢酸マグネシウム水溶液を添加し、硫酸量が0.9重量部になるまで中和し、65度で20分間保持し、第3の熟成反応を行った。すなわち、熟成工程において、中和操作(部分中和操作)を2回繰り返した。その後、過剰量の15重量%酢酸マグネシウム水溶液を添加し、残存硫酸を完全に中和して熟成反応を停止した。
[合成例4]
以下の操作を行う以外、合成例1と同様としてセルローストリアセテートを生成させた。
エステル化反応終了時に反応系に18.5重量部の24重量%酢酸マグネシウム水溶液を添加し、過剰の無水酢酸を分解させ、硫酸量を3.6重量部まで中和し、さらに水を添加して反応浴の酢酸に対する水の割合を13モル%に調整し、65度で30分間保持して熟成を行った。そして、触媒硫酸量に対して十分に過剰量の15重量%酢酸マグネシウム水溶液を添加し、残存硫酸を完全に中和して熟成反応を停止させた。
実施例及び比較例
上記の合成例1から4で得られたセルロースアセテートの反応溶液(ドープ)として得られた溶液に10重量%酢酸水溶液中に加え、攪拌することでセルロースアセテートの沈殿を得た。
得られた沈澱を濾別した後、純水の温水にて各々流水洗浄、脱液を行って、実施例および比較例に用いる湿綿を採取した。前記の洗浄した湿綿すなわち含水率80%のもの6kgに対して12kgの表1に記載の安定剤(所定濃度の酢酸マグネシウム水溶液又は酢酸カルシウム水溶液)に30分間浸漬して各実施例及び比較例のセルロースエステルを得た。
Figure 2009161701
実施例1から7及び比較例1から7について、酢化度粘度平均重合度、カルシウム量、マグネシウム量、総硫酸量、安定度(湿熱安定性)、耐熱度、イエローネスインデックス、ヘーズを測定した。結果を表2に記載する。
Figure 2009161701
また、実施例1から7及び比較例1から8について、上記の「流延金属支持体汚れ評価法」に記載の方法で流延製膜し、流延金属支持体の汚れにより連続製造ができなくなるまでの、連続製造時間を比較例8を100として評価した。結果を表3に記載する。
Figure 2009161701

Claims (6)

  1. 下記の要件を満たすセルロースエステル
    1)セルロースエステルに残存する総硫酸が硫酸に換算した量としてセルロースエステルに対する量として10ppm以上で160ppm以下でかつ、
    2)カルシウムが含まれていないか、または含まれている場合であってもセルロースエステルに対する量として10ppm以下でかつ、
    3)マグネシウムを含み、マグネシウム量がセルロースエステルに対する量として10〜60ppmである。
  2. セルロースエステルがセルロースアセテートである請求項1に記載のセルロースエステル。
  3. マグネシウム量がセルロースエステルに対する量として30〜50ppmである請求項1乃至2に記載のセルロースエステル。
  4. カルシウム量が5ppm以下であるか、含まれていない請求項1から3何れかに記載のセルロースエステル。
  5. セルロースエステルに残存する総硫酸が硫酸に換算した量としてセルロースエステルに対する量として60ppm以上で140ppm以下である請求項1から4いずれかに記載のセルロースエステル。
  6. セルロースエステルの粘度平均重合度が280〜310である請求項1から5何れかに記載のセルロースエステル。
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