JP2009112794A - 高周波処置具 - Google Patents
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Abstract
【課題】少なくとも粘膜の切開と止血との処置を複合的に行うために、最適な高周波処置具を提供する。
【解決手段】可撓性シース2から高周波ナイフ13を最導出状態にして粘膜の切開処置を行い、またこの処置の間に生じる出血部の止血処置を行うに当って、高周波ナイフ13の電極部材14をロッド部14aと球形膨出部14bとから構成し、粘膜と粘膜下層との合計の厚みに応じて電極部材14の可撓性シース2からの最導出長さを変えるようになし、この最導出長さに応じて球形膨出部14bの外径寸法を変化させて、粘膜の切開と、止血との双方の操作性を良好なものとする。
【選択図】図3
【解決手段】可撓性シース2から高周波ナイフ13を最導出状態にして粘膜の切開処置を行い、またこの処置の間に生じる出血部の止血処置を行うに当って、高周波ナイフ13の電極部材14をロッド部14aと球形膨出部14bとから構成し、粘膜と粘膜下層との合計の厚みに応じて電極部材14の可撓性シース2からの最導出長さを変えるようになし、この最導出長さに応じて球形膨出部14bの外径寸法を変化させて、粘膜の切開と、止血との双方の操作性を良好なものとする。
【選択図】図3
Description
本発明は、内視鏡の処置具挿通チャンネル内に挿通されて、病変粘膜部の切開等の処置を行うために用いられる高周波処置具に関するものである。
内視鏡検査によって、食道,胃,十二指腸,大腸等の体腔内壁における粘膜部分に腫瘍等といった病変部が発見されると、病変粘膜を切除する処置が施される。この処置のひとつとして、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD:Endoscopic Submucosal Dissection)と呼ばれる処置がある。このESD処置は、通常、次のようにして行われる。まず、切除しようとする粘膜の部位をマーキングし、局注により病変粘膜の部位を膨隆させる。この状態で、高周波処置具を用いてマーキングに沿って粘膜を切開して、粘膜下層を構成する線維を切断して粘膜を筋層から剥離する。
以上の処置に用いられる高周波処置具は、棒状部を有する電極部材からなる高周波ナイフを可撓性シース内に装着することにより構成されるものである。可撓性シースの基端部には操作手段が連結されており、この操作手段によって高周波ナイフを可撓性シースの先端から突出させる。そして、高周波ナイフに通電することによって、粘膜の切開及び剥離を行うことができる。
ここで、ESD処置に用いられる高周波処置具を構成する高周波ナイフとしては、特許文献1にあるように、電極部材を真っ直ぐ延在させた針状ナイフと、特許文献2に示されているように、棒状の電極部材の先端に大径電極部を連設するかまたは先端を概略L字状に曲折することによりフック部を形成したフックナイフとがある。針状ナイフは、粘膜を突き刺すために使用するのに好適なものであり、また電極部材を水平移動させたり、スイング動作させたりすることによって粘膜の切開や剥離が行われる。一方、フックナイフは粘膜等を先端のフック部で引っ掛けて、引き込むように動作させることにより、粘膜の切開や剥離を行うことになる。
特開2007−68596号公報
特開2004−313537号公報
ところで、ESD処置のために用いられる高周波処置具においては、粘膜表面のマーキング,粘膜の切開及び粘膜下層の線維の切断による粘膜剥離という処置があり、またこのような処置の一環として、出血箇所があったときに、この出血箇所の組織を焼灼による凝固を行って止血することも必要である。これら全ての処置を単一の処置具を用いて行えるようにするのが最も望ましい。前述した特許文献1や特許文献2に示された高周波処置具を用いて、これら各種の処置を行うことは不可能ではない。
特許文献1の高周波処置具では、電極部材が針状となっているので、粘膜の切開及び粘膜剥離を円滑に行うことができるが、電極部材の先端が細いことから、マーキングや凝固による止血の処置を行うのには必ずしも適切ではない。これに対して、特許文献2の高周波処置具は、電極部材が棒状電極部の先端に円板形状や三角形状からなる板状電極部を設ける構成としているので、マーキングや凝固という処置を行うのに好適であるが、先端が平面形状となっていることから、粘膜の切開を行うのは困難であり、また粘膜剥離は粘膜下層における線維部を引っ掛けるようにして切断することになるが、エッジがある形状となっているので、電極部材を動かしたときに、そのエッジ部分で健康な体腔内壁を損傷させるおそれがある等といった不都合を生じる。また、このようにエッジが存在していると、板状電極部の全体にわたって電流密度が均一にならないことから、均一な焼灼を行うことができない場合もある。
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、粘膜表面へのマーキング,粘膜の切開及び剥離、さらに出血箇所の止血等といった処置を複合的に行うことができ、しかも少なくとも粘膜の切開と止血との関係から、それらの操作の関連において、最も円滑に高周波処置具を提供することにある。
前述の目的を達成するために、本発明は、可撓性コードの先端に高周波電流が印加される高周波ナイフを設け、可撓性シースの内部に挿通させて、この可撓性シースの先端面部から所定の長さ導出させて、体腔内壁に対する処置を行う高周波処置具であって、前記可撓性シース内には、電気絶縁性を有し、軸線方向に貫通する貫通孔を設けた硬質筒体が、その先端面をこの可撓性シースの先端面とほぼ一致させるようにして挿入・固定され、前記高周波ナイフは前記硬質筒体内に挿通可能な電極部材からなり、前記硬質筒体と前記高周波ナイフとの間には、この高周波ナイフの最導出長さを規制するストッパ手段を設け、前記電極部材はロッド部の先端に前記貫通孔の内径以下の球形となった球形膨出部を連設し、前記高周波ナイフの最導出長さの全長に対する前記球形膨出部の外径を、最導出長さが長い程大きくしたものを用いる構成としたことをその特徴とするものである。
ここで、高周波ナイフを構成する電極部材は、少なくともロッド部と球形膨出部とから構成され、これらは共にステンレス等の導電性金属で形成される。ロッド部と球形膨出部とはそれぞれ別個の部材として形成し、はんだ付け等の手段で固着することもできるが、固着箇所の表面を平滑化処理する必要がある等の点から、放電加工等により一体的に構成することもできる。球形膨出部はロッド部への移行部まで球面形状とすることもできるが、先端側をほぼ半球形状となし、ロッド部への移行部分はなだらかな曲面形状としても良い。
電極部材には可撓性コードが連結され、この可撓性コードは電極部材への給電を行うためのものであり、かつ可撓性シース内で可撓性コードを押し引き操作することによって、電極部材を可撓性シースの先端からの出没させることになる。このために、可撓性シースの基端部に操作手段が連結して設けられる。操作手段は、例えば可撓性シースに連結したパイプ部材を含む軸部と、この軸部に嵌合させ、軸部の軸線方向に移動可能となったスライダとから構成することができる。そして、パイプ部材に送液手段を接続することによって、高周波処置具に体腔内への送液機能を持たせることができる。これによって、体腔内壁に血液等の汚損物が付着しているときに、その洗浄を行うことができる。
本発明による高周波処置具は、例えばESD処置に用いられるものであって、このESD処置は、粘膜表面のマーキング,粘膜の切開及び粘膜下層の線維の切断による粘膜剥離という処置が必要となり、これらの処置を行っている際には、体腔内壁に出血を生じさせることがあるために、止血も必要となる。これらの各処置を単一の高周波処置具を用いて行うことができる構成としている。この場合、高周波ナイフを構成する電極部材は可撓性シースから最導出長さの状態で処置が実行される。従って、最導出長さは粘膜及びこの粘膜の下に位置する粘膜下層の厚さに依存する。粘膜下層の下部位置には筋層が存在し、この筋層にはダメージを与えないようにするために、高周波ナイフを構成する電極部材の最導出長さは粘膜の厚さ寸法より大きく、粘膜と粘膜下層との合計の厚さ寸法より小さくする。ここで、ESD処置は上部消化器官においては、例えば食道,胃や十二指腸の体腔壁に対して行うものであり、また下部消化器官のESD処置としては、大腸壁に対して行われる。これらの体腔壁は、いずれも粘膜及び粘膜下層が存在するが、その厚みはそれぞれ異なっている。従って、処置が行われる部位に応じて高周波ナイフの最導出長さが異なってくる。このために、高周波ナイフの最導出長さを規制するためのストッパ手段を備えている。
硬質筒体に形成した貫通孔は電極部材の挿通路として機能するが、これ以外にも、送液経路として機能させることもできる。このために、電極部材のロッド部における球形膨出部を形成側とは反対側に円周方向に所定間隔毎に羽根部を設け、この羽根部の外面を硬質筒体の貫通孔の内周面に挿通可能な大きさとする。これによって、相隣接する羽根部間に可撓性シースの内外を連通させる連通路が形成され、この連通路を送液経路として機能させることができる。しかも、羽根部の基端部に硬質筒体の孔径より外周側に突出するストッパ部を形成し、硬質筒体の基端部の内縁部にストッパ部を当接可能な構成とすることによって、電極部材の最導出位置を規制するストッパ手段とすることができる。なお、電極部材を可撓性シース内に引き込んだ状態では、先端の球形膨出部を含めて、硬質筒体より基端側に配置させるようにすると、硬質筒体の貫通孔全体が送液経路として利用することができる。
電極部材の先端が球面形状となっているので、粘膜表面に当接させたときに、広い面積で接触することになり、しかも面圧が均一になる。従って、マーキングや止血のために焼灼する場合、広い面積にわたって焼灼が可能になり、しかも全体にわたって均等に焼灼され、むら等が発生するおそれはない。また、切開時には、電極部材を粘膜に対して刺し込むが、この操作は針状の電極部材ほど円滑に行えないとは言え、先端は平面形状ではなく、凸球形となっているので、粘膜に刺し込む操作も容易に行うことができる。そして、可撓性シースの先端面は、それに装着した硬質筒体と共に広い円環状の平面部を有している。従って、電極部材を粘膜に刺し込んだ後、切開していくに当っては、この電極部材のロッド部が切開機能を発揮するが、このときに粘膜が可撓性シース及び硬質筒体の先端面と球形膨出部との間に挟持されて、切開操作中に電極部材が粘膜から抜け出さないように安定的に保持できる。さらに、電極部材を可撓性シースから導出させた状態で、この電極部材を左右に振動動作させることにより粘膜剥離を行うことができる。電極部材はエッジが存在しない形状となっているので、電流密度が偏在したり、エッジで健康な粘膜を傷付けたりすることはない。
そして、前述した粘膜表面のマーキング,粘膜の切開及び剥離、さらには止血のための焼灼といった処置を円滑に行い、粘膜下層より下部位置に存在する筋層等にダメージを与えないようにするには、電極部材の羽根部がストッパ部に当接した最導出状態となっているときに、この電極部材の硬質筒体からの突出長さを0.5mm〜4mmとなし、また球形膨出部の外径は0.8mm〜1.2mmとするのが望ましく、さらに電極部材のロッド部の直径を0.4mm〜0.6mmとするのが望ましい。
病変した粘膜を切除する処置を行う際に、特に粘膜の切開と止血との関係から、それらの操作の関連において最も操作性が良好となるように、電極部材の最導出長さに応じた球形膨出部の外径寸法が設定され、もって粘膜表面のマーキングから、粘膜の切開及び剥離といった処置を複合的に行うことができ、これらの処置と共に出血箇所の止血等の処置を円滑かつ効率的に行うことができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。まず、図1に高周波処置具の全体構成を示し、図2にその要部拡大断面を示す。
まず、図1及び図2において、1は高周波処置具であって、この高周波処置具1は長尺の可撓性シース2を有し、この可撓性シース2の基端部には接続パイプ3が連結されており、さらにこの接続パイプ3の他端には操作手段4が連結されている。操作手段4は接続パイプ3に連結した本体軸4aと、この本体軸4aに嵌合されて、本体軸4aの軸線方向に摺動可能に設けたスライダ4bとから構成されている。スライダ4bには処置具本体10を構成する可撓性コード11の基端部が連結して設けられている。
可撓性コード11は、図3に示したように、例えば導線部11aの外周部を絶縁被覆11b内に挿通させたものからなり、少なくとも曲げ方向に可撓性を備えている。この可撓性コード11における導線部11aの基端部はスライダ4bへの連結部から所定長さ突出して、接点部12が形成されている。そして、この接点部12は図示しない高周波電源装置に着脱可能に接続されるようになっている。
処置具本体10を構成する可撓性コード11は、スライダ4bへの取付部から、接続パイプ3の内部を通り、可撓性シース2内に延在されている。そして、可撓性シース2の先端部からは高周波ナイフ13が出没可能に設けられている。高周波ナイフ13は、可撓性コード11の導線部11aからの電源供給により高周波電流が流される電極部材14を有し、この電極部材14は、ロッド部14aと、このロッド部14aの先端に連設した球形膨出部14bとから構成されている。そして、ロッド部14aの基端部、つまり球形膨出部14bを連設した側とは反対側の端部には、可撓性コード11の導線部11aが電気的に接続されている。ロッド部14aの所定の長さ分及び球形膨出部14bは外部に露出しており、通電時にはこれらの部分が体内組織に作用して、この組織を焼灼して切開等の処置が行われる。
図3及び図4に示したように、可撓性シース2の先端部には、硬質筒体20が挿入・固定されている。この硬質筒体20は、電気絶縁性及び耐熱性の良好な部材、好ましくはセラミック材で構成される。硬質筒体20の外面には螺旋状の突条20aが設けられており、従ってこの硬質筒体20は可撓性シース2に螺挿されるようになっている。しかも、硬質筒体20の外面と可撓性シース2の内面との間には接着剤が介装され、この接着と外面の突条20aとの作用によって、硬質筒体20は可撓性シース2の先端側に向けて脱落することがないように固定されている。
硬質筒体20には高周波ナイフ13を出没させるための貫通孔21が軸線方向に貫通するように穿設されている。また、硬質筒体20の両端面は、その軸線と直交する面となっている。この硬質筒体20は、その先端面が可撓性シース2の先端面とほぼ同一の平面となる位置まで挿入されており、従ってこれら可撓性シース2と硬質筒体20との先端面により可撓性シース2における先端面部を構成する円環状端壁Pを有する構成となる。
硬質筒体20の基端部には、高周波ナイフ13を貫通孔21より基端側の位置から確実に貫通孔21内に呼び込むための呼び込み部材22が装着されている。この呼び込み部材22はステンレス等から構成される内周面がテーパ状となったリング状の部材である。高周波ナイフ13は、常時においては、図5に示したように、硬質筒体20より基端側に引き込まれており、この状態では硬質筒体20の貫通孔21は、その全長が開放された状態となっている。可撓性コード11を押し出すように操作すると、高周波ナイフ13は、図6に示したように、呼び込み部材22に沿って貫通孔21の方向に向けてガイドされて、電極部材14における先端の球形膨出部14bが貫通孔21内に導かれることになる。
高周波ナイフ13における電極部材14のロッド部14aは所定の長さを有する直杆状の導電部材からなり、その基端側の位置には相互に90°の角度位置に4個の羽根部15が外方に向けて放射状に突出するように設けられている。羽根部15の先端面15aは、この羽根部15を硬質筒体20の貫通孔21に導くための傾斜面となっており、また羽根部15の外面15bは、円周方向においては、貫通孔21の曲率とほぼ一致する円弧形状となり、所定の長さを有している。従って、高周波ナイフ13を硬質筒体20の貫通孔21内に挿入すると、4箇所設けた羽根部15の外面15bが貫通孔21の内面と実質的に摺接することになる。その結果、先端に球形膨出部14bを有する電極部材14は硬質筒体20の軸線に対して調芯されその先端部分に外力が作用しても、みだりに振れないように安定的に保持される。
さらに、羽根部15の基端側の部位は丈高となる段差が形成されており、この段差壁がストッパ部15cとなる。このストッパ部15cは、電極部材14を硬質筒体20の貫通孔21に挿入したときに、このストッパ部15cが硬質筒体20の基端面と当接する位置までは進入可能であって、それ以上は突出できないようになっている。つまり、ストッパ部15cは高周波ナイフ13の可撓性シース2からの最導出位置を規定するものであり、このストッパ部15cと硬質筒体20の基端面の内縁部とでストッパ手段が構成される。そして、高周波処置具1は体腔内壁における病変粘膜部を剥離するための処置として用いられるものであり、高周波ナイフ13における電極部材14の可撓性シース2の先端面部を構成する円環状端壁Pからの最導出長さは、体腔内壁における粘膜の厚み寸法より長く、かつこれら粘膜と粘膜下層との合計の厚みより短くなるように設定されている。
ここで、高周波処置具1を用いて行われるESD処置が行われる部位は、食道,胃,十二指腸からなる上部消化器官や、大腸等の下部消化器官があり、これらの部位の粘膜及び粘膜下層の厚みは異なっている。従って、処置すべき部位に応じて、高周波ナイフ13の最導出長さが異なってくる。例えば、胃壁における粘膜及び粘膜下層は所定の厚みを有するものであり、食道壁や大腸壁においては、粘膜及び粘膜下層の合計厚みが胃壁と比較して、かなり薄いものとなっている。従って、処置すべき部位に応じて、高周波ナイフ13の可撓性シース2の先端面部からの最導出長さが異なるものを用いることになる。電極部材14において、そのロッド部14aは、曲げ強度等の観点から所定の直径を必要とするが、必要以上の外径とはしない。従って、最導出長さに応じて、球形膨出部14bの外径寸法を決定する。これによって、ロッド部14aの長さが決まることになる。
可撓性シース2の先端における円環状端壁Pからの高周波ナイフ13の最導出長さは、0.5mm〜4mmとする。そして、球形膨出部14bの外径は硬質筒体20の貫通孔21の孔径以下とするが、高周波ナイフ13の最導出長さに応じて変化させる。処置すべき部位における粘膜及び粘膜下層の厚み寸法から、0.8mm〜1.2mmとすることになる。ここで、電極部材14のロッド部14aは、処置を行う間に曲がりが生じないようにする必要があり、このために、その直径は0.4mm〜0.6mmとする。
電極部材14が最導出位置となったときに、図4から明らかなように、電極部材14のロッド部14aの外径と外周と硬質筒体20の貫通孔21の孔径との径差に基づいて、相隣接する羽根部15,15間の部位に4箇所の概略扇形の連通路23が形成されることになる。高周波処置具1の可撓性シース2の基端側の部位に設けた接続パイプ3は接続口3aを有するものであり、この接続口3aには生理食塩水等の生体適合性のある液体が供給されるようになっている。そして、この接続口3aには、図1に示したように、送液タンク5からの送液配管6が着脱可能に接続されるようになっている。送液配管6の途中には、フットスイッチ等のように、流路を開閉する切換手段7が設けられており、液体の供給制御が行われる。従って、接続パイプ3に連結されている可撓性シース2の内部が送液通路となる。ここで、処置具本体10を構成する可撓性コード11がこの可撓性シース2から接続パイプ3を経て操作手段4のスライダ4bに連結されているが、接続パイプ3内に可撓性コード11の周囲にシール部材23が装着されて、生理食塩水等の逆流を防止している。
以上の構成を有する高周波処置具1は、図9に示したように、観察部Wを有する内視鏡挿入部Sに設けた処置具挿通チャンネルCを介して体腔内に挿入され、例えば食道,胃,十二指腸,大腸等の体腔内壁に病変粘膜が存在する際には、この病変粘膜部を剥離して除去する処置を施すために用いられる。そこで、この病変粘膜を切除する処置の一例について説明する。この処置は、例えば、内視鏡検査の結果、粘膜に病変部が存在していることが確認されたときに行われることになる。
まず、図10に示したように、切除すべき病変部Dが存在している粘膜に、その病変粘膜領域Dを囲むようにマーキングする。このマーキングする領域は、病変部を完全に取り除くことができ、しかも健康な粘膜部分に対してはできるだけダメージを与えない範囲とする。マーキングは、病変粘膜領域Dの周囲の所要個所に焼灼スポットBが施される。このマーキングを行うために、高周波処置具1が用いられる。
即ち、内視鏡挿入部Sの先端を処置具挿通チャンネルCに高周波処置具1を挿入して、この高周波処置具1における可撓性シース2をこの処置具挿通チャンネルCから突出させる。そして、図11に示したように、可撓性シース2から高周波ナイフ13を導出させて、病変粘膜領域Dの外縁部に対して所定の距離を隔てて対面させる。この状態で、高周波ナイフ13における電極部材14の先端部、つまり球形膨出部14bを粘膜表面に当接させる。このときに、高周波ナイフ13における電極部材14の位置を内視鏡の観察部W内に収めるようにする。ここで、観察部Wによる観察像においては、図12に示したように、電極部材14の先端における球形膨出部14bが明確に表示され、マーキングを正確に行うことができる。
マーキングが行われるのは、粘膜層LUの表面に対してであり、この粘膜層LUの下部は粘膜下層LMとなっており、この粘膜下層LMの下部に筋層LBが存在している。電極部材14を粘膜層LUに軽く押し当てると、粘膜は凹状に変形することになり、球形膨出部14bは広い面で粘膜と当接する。しかも、球形膨出部14bによる粘膜への押圧力は全体にわたって均一になり、高周波ナイフ13に電流を流したときには、この当接面のほぼ全面にわたって電流密度が均一になる結果、広い領域にわたって全体が均一に焼灼されることになって、明確なマーキングが行われる。
次に、図13に示したように、病変粘膜領域Dの内部に生理食塩水やヒアルロン酸ナトリウム等の局注液による局注を行う。このためには、処置具挿通チャンネルから一度高周波処置具1を引き出し、これに代えて局注手段Nを処置具挿通チャンネルC内に挿通させて、筋層LBと粘膜層LUとの間の粘膜下層LMの部位に局注液を注入して、粘膜下層LMを膨出・隆起させる。このように、粘膜下層LMを膨隆させるのは、粘膜層LUを筋層LBから離間させて、円滑かつ安全に処置を行うためである。
以上のようにして、マーキングを行った病変粘膜領域Dの外側に沿って粘膜層LUの切開を行う。このために、粘膜下層LMを十分膨隆させた後に、処置具挿通チャンネルCから局注手段Nを抜き出して、高周波処置具1を再び挿通させて、内視鏡挿入部Sから可撓性シース2を突出させる。高周波ナイフ13全体を可撓性シース2内に引き込んだ状態とするが、電極部材14を導出させた状態としても差し支えない。この状態で、可撓性シース2の先端を病変粘膜領域Dの外縁部のいずれかの箇所における粘膜の表面に当接させる。ここで、好ましくは、可撓性シース2及び硬質筒体20の先端面2a,20aで形成される円環状端壁Pを粘膜層LMに正対させ、この円環状端壁Pを粘膜表面に軽く押し当てて、極力押圧力を作用させないようにする。
高周波処置具1の先端を粘膜表面に押し当てたときに、粘膜層LMが押圧変形されないようにするために、円環状端壁Pの面積が広くする必要がある。円環状端壁Pの内側には連通路23が形成されており、この連通路23の通路面積は、電極部材14の球形膨出部14bの直径より僅かに大きくなっている。これを条件として、円環状端壁Pの表面積をできるだけ広くする。これにより、高周波処置具1を粘膜層LUに押し当てたときに、この粘膜表面は最小限度しか押圧変形されることがなく、筋層LBまでの距離を十分確保できる。
可撓性シース2及び硬質筒体20の先端面2a,20aからなる先端面部で形成される円環状端壁Pを粘膜層LMに当接させた状態で、操作手段4を操作して、高周波ナイフ13を構成する電極部材14を導出させる。また、予め電極部材14を導出させている場合には、可撓性シース2を徐々に粘膜層LUに向けて押圧する。これによって、図14に示したように、電極部材14の先端を構成する球形膨出部14bは粘膜下層LM内にまで入り込むようになる。電極部材14は粘膜層LUを貫通して、粘膜下層LMにまで導かれ、もって病変粘膜領域Dの切開が開始される。この状態で、観察部Wによる観察下で、内視鏡挿入部Sを動かしたり、またその湾曲部を湾曲操作したりする操作によって、焼灼スポットBの外周側に沿うように切開していく。
切開は、図15に示したように、電極部材14に高周波電流を流した状態で、そのロッド部14aを粘膜層LUに沿って押動するように操作する。このときに、可撓性シース2がスイング動作をする等により粘膜層LUから逸脱する方向の力が作用する。また、電極部材14に対して可撓性シース2内に引き込まれる方向の力も作用することがある。しかしながら、電極部材14の球形膨出部14bは粘膜下層LM内に入り込んで、アンカー効果を発揮するようになる。また、図16に矢印X方向に向けて、電極部材14を進行させることにより切開を行う場合には、粘膜層LUの部位が電極部材14のロッド部14aにより切り裂かれるようになるが、この時に粘膜が可撓性シース2及び硬質筒体20の円環状端壁Pと球形膨出部14bとの間に挟み込まれるようになる。従って、電極部材14が球形膨出部14bによりアンカー効果を発揮して、矢印Z方向に抜け出すのを防止できるようになる。その結果、安定した状態で切開を行うことができる。また、勿論、拍動等の粘膜に動きがあっても、電極部材14は容易には粘膜層LUから抜け出すことはない。
このように、電極部材14においては、ロッド部14aに球形膨出部14bを連設し、このロッド部14aから球形膨出部14bへの移行部に形状変化部を形成することにより、切開時における電極部材14の逸脱が防止される。ただし、この形状変化部において、急激に形状を変化させると、電極部材14に粘膜等が絡み付いて、動きを損なうことがあるので、ある程度はなだらかな形状変化とするのが望ましい。
前述したように、粘膜層LUを切開することによって、図16に示したように、病変粘膜領域Dの外周部を全周にわたって切開されるが、それだけでは粘膜層LUを除去することはできない。即ち、粘膜層LUと筋層LBとの間は線維性の粘膜下層LMで繋がっているので、この線維を切断することにより筋層LBから剥離する必要がある。この粘膜剥離も高周波処置具1を用いて行う。即ち、図17に示したように、高周波処置具1の可撓性シース2から突出する電極部材14を切開により生じた粘膜下層LMの露出部分に進入させて、この電極部材14を水平移動させたり、スイング動作させたりすることにより、粘膜下層LMを切断するように動作させる。この動作は、内視鏡挿入部Sの先端部分を湾曲させる等の操作によって、容易に行うことができる。その結果、迅速かつ効率的に粘膜剥離が行われることになる。そして、このロッド部14aの先端は球形膨出部14bとなっているので、粘膜下層LMにこの球形膨出部14bが押し込まれると、粘膜層LUが持ち上げられるようになるので、その剥離が促進される。
さらに、粘膜剥離を行う際に、局注液を補給する必要がある。既に局注して、局注液により病変粘膜領域Dを膨隆させているが、切開を行う間に供給した局注液が流出したり、体内に吸収されたりして、膨隆部が収縮してしまうことがある。そこで、粘膜下層LMを膨隆状態に維持させるために、局注液と同じ液体からなる補給液を供給しながら粘膜剥離を行う。この補給も連通路23から行うことができる。このときには、電極部材14を硬質筒体20より基端側に引き込み、円環状端壁Pを粘膜下層LMに当接させた状態とするようになし、接続パイプ3の接続口3aから可撓性シース2を介して補給液を注入すると、より効率的に補給液を供給でき、粘膜下層LMに向けて直接注入することができる。その結果、剥離しようとする粘膜下層LMを膨隆状態に維持することができる。
このように、補給液の追加は、処置具挿通チャンネルCに挿通されている高周波処置具1を取り出して、注射器を交換的に挿通させるという煩わしい操作を行う必要がなく、粘膜剥離処置が中断されることはない。従って、この点でも、処置の効率化,迅速化が図られる。しかも、円環状端壁Pから何等の部材も突出していないことから、貫通孔21の先端を粘膜下層LMに当接させることができ、必要な箇所に向けて的確に補給して粘膜下層LMを確実に膨隆状態に維持して、電極部材14による粘膜剥離を安全かつ迅速に行うことができる。
また、必要に応じて粘膜層LUに負圧吸引力を作用させることもできる。吸引は粘膜剥離の処置を実行している間も、またこの処置前または処置後にも行われることがある。いずれにしても、接続口3aに吸引配管を接続しておき、フットスイッチ等により吸引制御を行うことができる。従って、吸引が必要な場合には、フットスイッチを操作して、吸引配管に負圧を発生させるように作動すれば、連通路23を介して体内からの吸引を行うことができる。
ところで、前述した粘膜剥離を行っている間に、その処置箇所等が出血する可能性がある。このために、接続パイプ3の接続口3aから可撓性シース2内に高圧で生理食塩水等の液体を供給して洗浄する。硬質筒体20の先端には、電極部材14のロッド部14aの相隣接する羽根部15,15間において、硬質筒体20の貫通孔21の内側に、接続口3aに通じる連通路23が開口している。従って、この連通路23から出血個所に向けて液体を噴射することによって、出血部分を迅速に洗い流すことができる。
この洗浄操作は、粘膜剥離の処置を継続している間に、つまり電極部材14を可撓性シース2の先端から突出させたままで行える。また、図5に示したように、高周波ナイフ13の全体を硬質筒体20より基端側に引き込むようにすると、この状態では硬質筒体20の貫通孔21は、その全長が開放されることになるので、大量の液体を噴射させることができる。
出血部分が洗浄された後、この出血部に電極部材14の球形膨出部14bを当接させるようになし、この状態で電極部材14に高周波電流を流すことによって、出血箇所を凝固することができ、もって止血を行うことができる。ここで、球形膨出部14bの外径をできるだけ大きくすることによって、止血を効率的に行うことができ、また粘膜表面への当接部は球面形状となっているので、当接部の全体にわたってほぼ均一な電流密度が得られる。なお、球形膨出部14bの表面に血液が付着すると、電極部材14に高周波電流を流しても、その球形膨出部14bから出血部に向けて高周波電流を有効に流すことができない場合がある。この場合には、図18に示したように、電極部材14を可撓性シース2の先端から導出させた状態で、球形膨出部14bを粘膜から離間させて、連通路23から出血個所に向けて液体を噴射する。これによって、同図に矢印で示したように、液体は球形膨出部14bに沿って先端側に向けて流れるので、この球形膨出部14bに付着した血液等を液体の流れにより取り除くことができる。
以上のようにして行われるESD処置において、マーキングと、粘膜の切開及び剥離、さらには止血の各機能を単一の高周波処置具1を用いて行うことができる。これによって、内視鏡挿入部Sの先端を処置具挿通チャンネルCにおける処置具の交換頻度を著しく少なくすることができるので、効率的な処置が可能になる。ここで、マーキング及び止血は電極部材14のうちの球形膨出部14bにより行われるものであり、また切開及び剥離は主にロッド部14aが機能し、球形膨出部14bも一定の機能を発揮する。いずれにしろ、この電極部材14は、前述した各処置を行っている間は、可撓性シース2の先端からの最導出位置とする。
止血処置を円滑かつ確実に行うには、球形膨出部14bの外径は大きければ大きいほど良い。また、マーキングについても、球形膨出部14bの外径が大きいと、より鮮明なマーキングを行うことができる。これに対して、切開及び剥離を効率的に行うには、むしろロッド部14aの長さを長くした方が良い。従って、胃,十二指腸,大腸等の処置部位によって、粘膜及び粘膜下層の合計の厚みが変化するために、それぞれの部位によって最導出長さの異なる複数の高周波処置具を用意しておき、処置を行う際に、それぞれの処置部位に適合する高周波処置具を選択して用いるようにする。即ち、電極部材14の最導出長さに占めるロッド部14aの長さと、球形膨出部14bの外径との間に一定の関係を持たせることが、各々の処置にとって重要になる。
図19において、電極部材14を最導出長さとしたときに、球形膨出部14bの直径に対する切開及び剥離処置の操作性と、止血及びマーキングの処置の操作性との関係を示す。図中において、Oは切開若しくは切開及び剥離処置の操作性を、またHは止血若しくは止血及びマーキングの操作性を示している。ここで、電極部材14の導出長において、電極部材14のロッド部14aを長くすれば、切開・剥離の操作性は優れたものとなるが、球形膨出部14bの外径が小さくなるので、止血・マーキングの操作性は劣る。一方、止血・マーキングの操作性を向上するために、球形膨出部14bの外径を大きくすると、ロッド部14aの長さが短くなるので、切開・剥離の処置の操作性が低下することになる。
以上のことから、線Oと線Hとの交点とその前後の範囲Rが全ての処置を行う上で操作性が最も望ましいものとなる。即ち、粘膜及び粘膜下層の合計厚みにより変化する電極部材14の可撓性シース2からの最導出長さの寸法に応じて、球形膨出部14bの外径を変化させる。具体的には、電極部材14の最導出長さが1.0mm以下であれば、球形膨出部14bの外径を0.80〜0.83mmとし、最導出長さが1.0〜1.5mmの範囲であれば、球形膨出部14bの外径は0.83〜0.87mmとし、最導出長さが1.5〜2.0mmの範囲であれば、球形膨出部14bの外径は0.87〜0.92mmとし、最導出長さを2.0mm以上としたときには、球形膨出部14bの外径を0.92mm以上とするのが最も望ましい。なお、いずれの場合においても、ロッド部14aの直径は0.4mm〜0.6mmとする。
1 高周波処置具 2 可撓性シース
3 接続パイプ 4 操作手段
10 処置具本体 11 可撓性コード
13 高周波ナイフ 14 電極部材
14aロッド部 14b 球形膨出部
15 羽根部 15a 先端面
15b 外面 15c ストッパ部
20 硬質筒体 21 貫通孔
22 呼び込み部材 23 連通路
P 円環状端壁
3 接続パイプ 4 操作手段
10 処置具本体 11 可撓性コード
13 高周波ナイフ 14 電極部材
14aロッド部 14b 球形膨出部
15 羽根部 15a 先端面
15b 外面 15c ストッパ部
20 硬質筒体 21 貫通孔
22 呼び込み部材 23 連通路
P 円環状端壁
Claims (5)
- 可撓性コードの先端に高周波電流が印加される高周波ナイフを設け、可撓性シースの内部に挿通させて、この可撓性シースの先端面部から所定の長さ導出させて、体腔内壁に対する処置を行う高周波処置具において、
前記可撓性シース内には、電気絶縁性を有し、軸線方向に貫通する貫通孔を設けた硬質筒体が、その先端面をこの可撓性シースの先端面とほぼ一致させるようにして挿入・固定され、
前記高周波ナイフは前記硬質筒体内に挿通可能な電極部材からなり、
前記硬質筒体と前記高周波ナイフとの間には、この高周波ナイフの最導出長さを規制するストッパ手段を設け、
前記電極部材はロッド部の先端に前記貫通孔の内径以下の球形となった球形膨出部を連設し、
前記高周波ナイフの最導出長さの全長に対する前記球形膨出部の外径を、最導出長さが長い程大きくしたものを用いる
構成としたことを特徴とする高周波処置具。 - 前記高周波ナイフは少なくとも粘膜を切除し、また出血箇所の止血を行うために用いられるものであり、前記高周波ナイフの最導出長さは粘膜の厚みにより異なるものとし、この最導出長さを長くしたときには、前記球形膨出部の外径を大きくする構成としたことを特徴とする請求項1記載の高周波処置具。
- 前記可撓性シースには送液手段と接続可能な構成となし、この送液手段から供給される液体は前記可撓性シースの内部を通り、この可撓性シースの先端から噴出可能な構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の高周波処置具。
- 前記可撓性シースには、前記硬質筒体の前記貫通孔を通路の一部とする送液通路が形成され、前記電極部材は、前記ロッド部の前記球形膨出部を形成した部位とは反対側に円周方向に所定間隔毎に羽根部を設け、この羽根部の外面は前記硬質筒体の前記貫通孔の内周面に挿通可能な大きさとなし、かつこの羽根部の基端部に形成され、前記硬質筒体の孔径より外周側に突出するストッパ部を形成することによって、前記ストッパ手段を構成し、前記ストッパ部が前記硬質筒体の端面に当接したときには、相隣接する羽根部間に前記可撓性シースの内外を連通させる連通路が形成されるように構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の高周波処置具。
- 前記ストッパ手段による前記電極部材の前記硬質筒体からの最導出長さが0.5mm〜4mmであり、この最導出長さに応じて、前記球形膨出部の外径を0.8mm〜1.2mmで変化させ、さらに前記電極部材のロッド部の外径は0.4mm〜0.6mmとすることを特徴とする請求項4記載の高周波処置具。
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