JP2009030044A - 特異なモルフォロジーを有する樹脂組成物 - Google Patents

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和範 寺田
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Abstract

【課題】 機械的強度と耐熱性のバランスに優れ、さらに難燃性が優れた樹脂組成物とその製法および成形体を提供することである。
【解決手段】 (A)ポリフェニレンエーテルおよび(B)液晶ポリエステルを含み、(A)成分が分散相を形成し、(B)成分が連続相を形成する樹脂組成物であって、更に(B)成分の一部が(A)成分中に存在することを特徴とする樹脂組成物。(B)成分の一部または全部が、300℃以上の融点ピークを有することが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、機械的強度と耐熱性のバランスに優れ、さらに難燃性が優れた樹脂組成物とその製法および成形体に関する。
ポリフェニレンエーテルは機械的性質・電気的性質及び耐熱性が優れており、しかも寸法安定性に優れるため幅広い用途で使用されているが、単独では成形加工性に劣っており、これを改良するためにポリスチレンを配合することが広く知られている。しかしながら、耐熱性や耐薬品性が低下するという課題があった。
ポリフェニレンエーテルの流動性を改良する技術として、液晶ポリエステルを配合する技術(例えば、特許文献1参照。)が提案されているが、耐衝撃性、耐薬品性、流動性の観点において十分ではなく、アミン類で変性したポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルを配合する技術(例えば、特許文献2参照。)も提案されているが、耐衝撃性、耐薬品性、流動性、耐熱性、難燃性バランスにおいて十分なものではなかった。さらに、ウェルド強度、引張強度を改善する技術として、液晶ポリエステルとエポキシ変性ポリフェニレンエーテルとを配合する技術(例えば、特許文献3参照。)、液晶ポリエステルとポリフェニレンエーテルにエポキシ基及び/又はオキサゾリニル基を有する不飽和モノマー及び/又はポリマーを配合する技術(例えば、特許文献4参照。)、シランカップリング剤を添加する技術(例えば、特許文献5参照。)が提案されているが、耐熱性、難燃性という点では十分とは言えなかった。
そこで、機械的強度と耐熱性のバランスに優れ、さらに難燃性が優れた樹脂組成物が待望されているのが現状であった。
特開昭56−115357号公報 特開平6−122762号公報 特開平4−202461号公報 特開平4−202462号公報 特開平5−117505号公報
本発明の課題は、電気・電子部品等に好適であり、上述した技術では達成し得なかった、機械的強度と耐熱性のバランスに優れ、さらに難燃性が優れた樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる成形体を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、液晶ポリエステル連続相を形成し、ポリフェニレンエーテルが分散相を形成する樹脂組成物において、さらに液晶ポリエステルの一部がポリフェニレンエーテル中に存在する樹脂組成物が、これら特性に優れた樹脂組成物及び成形体、シートを得るために有効であることを見出し、本発明に到達した。
次に、本発明の理解を容易にするために、本発明の基本的特徴及び好ましい諸態様を列挙する。
(1)(A)ポリフェニレンエーテルおよび(B)液晶ポリエステルを含み、(A)成分が分散相を形成し、(B)成分が連続相を形成する樹脂組成物であって、更に(B)成分の一部が(A)成分中に存在することを特徴とする樹脂組成物。
(2)(B)成分の一部または全部が、300℃以上の融点ピークを有する上記(1)記載の樹脂組成物。
(3)分散相中に占める(B)成分の面積比率が、12%以上50%以下である上記(1)また(2)に記載の樹脂組成物。
(4)更に(C)成分として、エポキシ基、オキサゾリル基、イミド基、カルボン酸基、酸無水物基から選ばれる1種以上の官能基を有する化合物を含む上記(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(5)(C)成分が、エポキシ基、オキサゾリル基、イミド基、カルボン酸基、酸無水物基から選ばれる1種以上の官能基を有する化合物とスチレン系化合物との共重合体である上記(4)記載の樹脂組成物。
(6)(A)成分の一部または全部が、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物、又はエポキシ樹脂により変性されたポリフェニレンエーテルである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(7)(i)(A)成分と(B)成分の一部とを溶融混練する工程と、(ii)該(i)の工程で得られた溶融混練物に残りの(B)成分を溶融混練する工程を経てなる上記(1)〜(6)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(8)(C)成分が、(A)成分と同時に添加される上記(4)〜(7)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の樹脂組成物からなる射出成形体。
(10)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の樹脂組成物からなるシート。
(11)(i)(A)ポリフェニレンエーテルと(B)液晶ポリエステルの一部とを溶融混練する工程と、(ii)該(i)の工程で得られた溶融混練物に残りの(B)液晶ポリエステルを溶融混練する工程とを含む上記(1)〜(8)のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
本発明の特異なモルフォロジーを有する樹脂組成物は、機械的強度と耐熱性のバランスに優れ、さらに難燃性が優れた樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる成形体、シートを提供することができる。
次に本発明で使用することのできる各成分について詳しく述べる。
(A)成分のポリフェニレンエーテルとは、下記式(1)の構造単位からなる、ホモ重合体及び/または共重合体である。
〔式中、Oは酸素原子、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、炭化水素オキシ、又はハロ炭化水素オキシ(但し、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている)を表わす。〕
本発明で用いるポリフェニレンエーテルの具体的な例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体(例えば、特公昭52−17880号公報に記載されているような2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体や2−メチル−6−ブチルフェノールとの共重合体)のごときポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。ポリフェニレンエーテルとして2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体を使用する場合の各単量体ユニットの比率は、ポリフェニレンエーテル共重合体全量を100質量%としたときに、約60〜約90質量%の2,6−ジメチルフェノールと、約10〜約40質量%の2,3,6−トリメチルフェノールからなる共重合体が特に好ましい。
これらの中でも特に好ましいポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、またはこれらの混合物である。
本発明で用いるポリフェニレンエーテルの製造方法は公知の方法で得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3306874号明細書、同第3306875号明細書、同第3257357号明細書及び同第3257358号明細書、特開昭50−51197号公報、特公昭52−17880号公報及び同63−152628号公報等に記載された製造方法等が挙げられる。
本発明で使用することのできるポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/c:0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.15〜0.70dl/gの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.20〜0.60dl/gの範囲、より好ましくは0.40〜0.55dl/gの範囲である。
本発明においては、2種以上の還元粘度の異なるポリフェニレンエーテルをブレンドしたものであっても構わない。例えば、還元粘度0.45dl/g以下のポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dl/g以上のポリフェニレンエーテルの混合物、還元粘度0.40dl/g以下の低分子量ポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dl/g以上のポリフェニレンエーテルの混合物等が挙げられるが、もちろん、これらに限定されることはない。
また、本発明で使用できるポリフェニレンエーテルは、全部又は一部が変性されたポリフェニレンエーテルであっても構わない。
ここでいう変性されたポリフェニレンエーテルとは、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物、又はエポキシ樹脂で変性されたポリフェニレンエーテルを指す。
該変性されたポリフェニレンエーテルの製法としては、(1)ラジカル開始剤の存在下、非存在下で100℃以上、ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度未満の範囲の温度でポリフェニレンエーテルを溶融させることなく変性化合物と反応させる方法、(2)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でポリフェニレンエーテルのガラス転移温度以上360℃以下の範囲の温度で変性化合物と溶融混練し反応させる方法、(3)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でポリフェニレンエーテルのガラス転移温度未満の温度で、ポリフェニレンエーテルと変性化合物を溶液中で反応させる方法等が挙げられ、これらいずれの方法でも構わない。
次に分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する少なくとも1種の変性化合物について具体的に説明する。
分子内に炭素−炭素二重結合とカルボン酸基、酸無水物基を同時に有する変性化合物としては、マレイン酸、フマル酸、クロロマレイン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸及びこれらの酸無水物などが挙げられる。特にフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が良好で、フマル酸、無水マレイン酸が特に好ましい。
また、これら不飽和ジカルボン酸のカルボキシル基の、1個または2個のカルボキシル基がエステルになっているものも使用可能である。
分子内に炭素−炭素二重結合とグリシジル基を同時に有する変性化合物としては、アリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、エポキシ化天然油脂等が挙げられる。
これらの中でグリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレートが特に好ましい。
分子内に炭素−炭素二重結合と水酸基を同時に有する変性化合物としては、アリルアルコール、4−ペンテン−1−オール、1,4−ペンタジエン−3−オールなどの一般式C2n−3OH(nは正の整数)の不飽和アルコール、一般式C2n−5OH、C2n−7OH(nは正の整数)等の不飽和アルコール等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,3−ジグリシジルヒダントレイン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン等が挙げられ、中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
上述した変性化合物は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
変性されたポリフェニレンエーテルを製造する際の変性化合物の添加量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.1〜80質量部が好ましい。
ラジカル開始剤を用いて変性されたポリフェニレンエーテルを製造する際の好ましいラジカル開始剤の量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.001〜1質量部である。
また、変性されたポリフェニレンエーテル中の変性化合物の付加率は、0.01〜30質量%が好ましい。より好ましくは0.1〜20質量%である。
該変性されたポリフェニレンエーテル中には、未反応の変性化合物及び/または、変性化合物の重合体が残存していても構わない。
また、ポリフェニレンエーテルの安定化の為に公知となっている各種安定剤も好適に使用することができる。安定剤の例としては、ヒンダードフェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等の有機安定剤であり、これらの好ましい配合量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して5質量部未満である。
更に、ポリフェニレンエーテルに添加することが可能な公知の添加剤等もポリフェニレンエーテル100質量部に対して10質量部未満の量で添加しても構わない。
(B)成分の液晶ポリエステルとは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルで、公知のものを使用できる。例えば、p−ヒドロキシ安息香酸およびポリエチレンテレフタレートを主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸および2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸を主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸および2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、ハイドロキノンならびにテレフタル酸を主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸および2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、ハイドロキノンならびに2,6−ナフタレンジカルボン酸を主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸および4,4′−ジヒドロキシビフェニルならびにテレフタル酸を主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステルなどが挙げられ、特に制限はない。本発明で使用される液晶ポリエステルとしては、下記構造単位(イ)、(ロ)、および必要に応じて(ハ)および/または(ニ)からなるものが好ましく用いられる。
ここで、構造単位(イ)、(ロ)はそれぞれ、p−ヒドロキシ安息香酸から生成したポリエステルの構造単位と、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸から生成した構造単位である。構造単位(イ)、(ロ)を使用することで、優れた耐熱性、流動性や剛性などの機械的特性のバランスに優れた本発明の熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。上記構造単位(ハ)、(ニ)中のXは、下記式よりそれぞれ任意に1種あるいは2種以上選択することができる。
構造単位(ハ)において好ましいのは、エチレングリコール、ハイドロキノン、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノールAそれぞれから生成した構造単位であり、さらに好ましいのは、エチレングリコール、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンであり、特に好ましいのは、ハイドロキノンである。構造単位(ニ)において好ましいのは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸それぞれから生成した構造単位である。
構造単位(ハ)および構造単位(ニ)は、上記に挙げた構造単位を少なくとも1種あるいは2種以上を併用することができる。具体的には、2種以上併用する場合、構造単位(ハ)においては、1)エチレングリコールから生成した構造単位/ハイドロキノンから生成した構造単位、2)エチレングリコールから生成した構造単位/4,4′−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、3)ハイドロキノンから生成した構造単位/4,4′−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、などを挙げることができる。
また、構造単位(ニ)においては、1)テレフタル酸から生成した構造単位/イソフタル酸から生成した構造単位、2)テレフタル酸から生成した構造単位/2,6−ナフタレンジカルボン酸から生成した構造単位、などを挙げることができる。ここでテレフタル酸量は2成分中、好ましくは40wt%以上、さらに好ましくは60wt%以上、特に好ましくは80wt%以上である。テレフタル酸量を2成分中40wt%以上とすることで、比較的に流動性、耐熱性が良好な樹脂組成物となる。液晶ポリエステル中の構造単位(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の使用割合は特に限定されない。ただし、構造単位(ハ)と(ニ)は基本的にほぼ等モル量となる。
また、構造単位(ハ)、(ニ)からなる構造単位(ホ)を、液晶ポリエステル中の構造単位として使用することもできる。具体的には、1)エチレングリコールとテレフタル酸から生成した構造単位、2)ハイドロキノンとテレフタル酸から生成した構造単位、3)4,4′−ジヒドロキシビフェニルとテレフタル酸から生成した構造単位、4)4,4′−ジヒドロキシビフェニルとイソフタル酸から生成した構造単位、5)ビスフェノールAとテレフタル酸から生成した構造単位、6)ハイドロキノンと2,6−ナフタレンジカルボン酸から生成した構造単位などを挙げることができる。
本発明の液晶ポリエステルには、必要に応じて本発明の特徴と効果を損なわない程度の少量の範囲で、他の芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸から生成する構造単位を導入することができる。本発明の液晶ポリエステルの溶融時での液晶状態を示し始める温度(以下、液晶開始温度という)は、好ましくは150〜350℃、さらに好ましくは180〜320℃である。液晶開始温度をこの範囲にすることは、得られる樹脂組成物を好ましい色調と耐熱性と成形加工性バランスの良いものとする。
本発明の液晶ポリエステルは、DSC(示差走査熱量測定)により融点ピークが観察されるものであってもよい。耐熱性の観点から、融点ピークが260℃以上であることが好ましく、さらに難燃性の観点から、300℃以上であることが好ましい。
本発明の液晶ポリエステルの25℃、1MHzにおける誘電正接(tanδ)は、好ましくは0.03以下であり、さらに好ましくは0.025以下である。この誘電正接の値が小さければ小さいほど、誘電損失は小さくなり、この樹脂組成物を電気・電子部品の原料として用いる時、発生する電気的ノイズが抑制され好ましい。特に25℃、高周波数領域下、すなわち1〜10GHz領域において、誘電正接(tanδ)は、好ましくは0.03以下であり、さらに好ましくは0.025以下である。
本発明の液晶ポリエステルの見かけの溶融粘度(液晶開始温度+30℃でずり速度100/秒)は、好ましくは10〜3,000Pa・s、さらに好ましくは10〜2,000Pa・s、特に好ましくは10〜1,000Pa・sである。見かけの溶融粘度をこの範囲にすることは、得られる組成物の流動性を好ましいものとする。
本発明において、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルを溶融混練するための好ましい温度は、250〜350℃の範囲の中から任意に選ぶことができる。中でも280〜350℃の範囲がより好ましい。
本発明におけるポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルの好ましい配合比は、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルの合計100質量部としたとき、ポリフェニレンエーテル20〜50質量部、液晶ポリエステル50〜80質量部である。より好ましくはポリフェニレンエーテル30〜50質量部、液晶ポリエステル50〜70質量部である。
本発明においては、ポリフェニレンエーテルが分散相、液晶ポリエステルが連続相を形成することが必要である。液晶ポリエステルが連続相を形成することにより、耐薬品性、剛性に優れる。これらモルフォロジーについては、例えば透過型顕微鏡を用いて観察することにより容易に判断することができる。
また、液晶ポリエステルの一部が、分散相であるポリフェニレンエーテル中に存在することが必要であり、これにより難燃性が優れる。好ましくは、分散相中に占める液晶ポリエステルの面積比率が、12%以上50%以下である。より好ましくは20%以上50%以下であり、さらに好ましくは20%以上40%以下、特に好ましくは25%以上40%以下である。これら分散相中に占める液晶ポリエステルの面積比率については、上記透過型顕微鏡写真を、公知の画像解析装置を用いることにより、容易に算出することができる。
(C)成分のエポキシ基、オキサゾリル基、イミド基、カルボン酸基、酸無水物基から選ばれる1種以上の官能基を有する化合物とは、分子構造内にエポキシ基、オキサゾリル基、イミド基、カルボン酸基、酸無水物基から選ばれる1種以上の官能基を有する化合物である。また、これらの官能基の数としては、1つのみ含んでいても2つ以上含んでいても構わない。官能基を2つ以上含む場合は、1種の官能基を2つ以上含んでいても構わないし、2種以上の官能基をそれぞれ1つずつ含んでいても構わないし、1種の官能基を1つ、それ以外の官能基を2つ以上含んでいても構わない。もちろん、2種以上の官能基をそれぞれ2つ以上含んでいても構わない。中でも、エポキシ基、オキサゾリル基、イミド基を有する化合物が好ましく、エポキシ基を有する化合物が特に好ましい。これら化合物は、公知のエポキシ樹脂のようなポリマーであってももちろん構わない。
これら(C)成分は、エポキシ基、オキサゾリル基、イミド基、カルボン酸基、酸無水物基から選ばれる1種以上の官能基を有する化合物とスチレン系化合物との共重合体であることがさらに好ましい。具体例としては、グリシジルメタクリレート/スチレン共重合体、グリシジルメタクリレート/スチレン/メチルメタクリレート共重合体、グリシジルメタクリレート/スチレン/メチルメタクリレート/メタクリレート共重合体、グリシジルメタクリレート/スチレン/アクリロニトリル共重合体、ビニルオキサゾリン/スチレン共重合体、N−フェニルマレイミド/スチレン共重合体、N−フェニルマレイミド/スチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
また、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体とポリスチレンのグラフト共重合体のようなグラフト共重合体でも構わない。中でもグリシジルメタクリレート/スチレン共重合体、ビニルオキサゾリン/スチレン共重合体、N−フェニルマレイミド/スチレン共重合体、N−フェニルマレイミド/スチレン/無水マレイン酸共重合体が好ましく、グリシジルメタクリレート/スチレン共重合体がさらに好ましい。これら共重合体中のエポキシ基、オキサゾリル基、イミド基、カルボン酸基、酸無水物基から選ばれる1種以上の官能基を有する化合物とスチレン系化合物の比率に特に制限はないが、射出成形時のシルバーの発生や押出加工時のメヤニの観点から、エポキシ基、オキサゾリル基、イミド基、カルボン酸基、酸無水物基から選ばれる1種以上の官能基を有する化合物が50質量%以下であることが好ましい。
これら(C)成分の好ましい添加量としては、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルの合計100質量部に対し、引張り強度の観点から0.1質量部以上であり、難燃性の観点から10質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上7質量部以下、さらに好ましくは3.5質量部以上6質量部以下である。
(C)成分の添加方法については特に制限はないが、ポリフェニレンエーテルとともに添加する方法が好ましい。
さらに、本発明ではスチレン系重合体を含んでいてもよい。本発明でいうスチレン系重合体とは、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−ゴム質重合体−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等が挙げられる。スチレン系重合体を含むことで、本発明の課題を達成する他に、耐候性を向上することができる。スチレン系重合体の好ましい配合量としては、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルの合計100質量部に対し、50質量部未満の量である。これらスチレン系重合体の添加方法に特に制限はないが、ポリフェニレンエーテル成分と同時に添加されることが好ましい。
本発明においては、エラストマーをさらに添加することができる。好ましいエラストマーとしては、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体が挙げられる。
本発明の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」とは、当該ブロックにおいて、少なくとも50質量%以上が芳香族ビニル化合物であるブロックを指す。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」に関しても同様で、少なくとも50質量%以上が共役ジエン化合物であるブロックを指す。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
この場合、例えば芳香族ビニル化合物ブロック中にランダムに少量の共役ジエン化合物もしくは他の化合物が結合されているブロックの場合であっても、該ブロックの50質量%が芳香族ビニル化合物より形成されていれば、芳香族ビニル化合物を主体とするブロック共重合体とみなす。また、共役ジエン化合物の場合においても同様である。
芳香族ビニル化合物の具体例としてはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもスチレンが特に好ましい。
共役ジエン化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。
ブロック共重合体の共役ジエン化合物ブロック部分のミクロ構造は1,2−ビニル含量もしくは1,2−ビニル含量と3,4−ビニル含量の合計量5〜80%が好ましく、さらには10〜50%が好ましく、15〜40%が最も好ましい。
本発明におけるブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック[A]と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック[B]が、A−B型、A−B−A型、A−B−A−B型から選ばれる結合形式を有するブロック共重合体である事が好ましく、これらの混合物であっても構わない。これらの中でもA−B型、A−B−A型、又はこれらの混合物がより好ましく、A−B−A型がもっとも好ましい。
また、本発明で使用することのできる芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体は、水素添加されたブロック共重合体であることがより好ましい。水素添加されたブロック共重合体とは、上述の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体を水素添加処理することにより、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの脂肪族二重結合を0を越えて100%の範囲で制御したものをいう。該水素添加されたブロック共重合体の好ましい水素添加率は80%以上であり、最も好ましくは98%以上である。
これらブロック共重合体は水素添加されていないブロック共重合体と水素添加されたブロック共重合体の混合物としても問題なく使用可能である。
また、これら芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体は、本発明の趣旨に反しない限り、結合形式の異なるもの、芳香族ビニル化合物種の異なるもの、共役ジエン化合物種の異なるもの、1,2−結合ビニル含有量もしくは1,2−結合ビニル含有量と3,4−結合ビニル含有量の異なるもの、芳香族ビニル化合物成分含有量の異なるもの等を混合して用いても構わない。
また、本発明で使用するブロック共重合体は、全部又は一部が変性されたブロック共重合体であっても構わない。
ここでいう変性されたブロック共重合体とは、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性されたブロック共重合体を指す。
該変性されたブロック共重合体の製法としては、(1)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でブロック共重合体の軟化点温度以上250℃以下の範囲の温度で変性化合物と溶融混練し反応させる方法、(2)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でブロック共重合体の軟化点以下の温度で、ブロック共重合体と変性化合物を溶液中で反応させる方法、(3)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でブロック共重合体の軟化点以下の温度で、ブロック共重合体と変性化合物を溶融させることなく反応させる方法等が挙げられ、これらいずれの方法でも構わないが、(1)の方法が好ましく、更には(1)の中でもラジカル開始剤存在下で行う方法が最も好ましい。
ここでいう分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する少なくとも1種の変性化合物とは、変性されたポリフェニレンエーテルで述べた変性化合物と同じものが使用できる。
本発明におけるエラストマーの配合量としては、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルの合計量100質量部に対し、50質量部未満であることが好ましい。これらエラストマーの添加方法に特に制限はないが、ポリフェニレンエーテルと同時に添加されることが好ましい。
また、I価、II価、III価またはIV価の金属元素を含有する化合物を含有していても構わない。I価、II価、III価またはIV価の金属元素を含有する化合物とは、金属を含有する無機化合物または有機化合物であり、本質的に金属元素を主たる構成成分とする化合物である。I価、II価、III価またはIV価をとりうる金属元素の具体例として、Li、Na、K、Zn、Cd、Sn、Cu、Ni、Pd、Co、Fe、Ru、Mn、Pb、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ti、Ge、Sbが挙げられる。中でもZn、Mg、Ti、Pb、Cd、Sn、Sb、Ni、Al、Ge元素が好ましく、さらにはZn、Mg、Ti元素が好ましい。ダート衝撃性を大きく向上させる観点から、I価、II価、III価またはIV価の金属元素がZn元素および/またはMg元素であることが特に好ましい。
具体例としては、上記金属元素の酸化物、水酸化物、アルコキサイド塩、脂肪族カルボン酸塩、酢酸塩が好ましい。さらに、好ましい酸化物の例としては、ZnO、MgO、TiO4、TiO、PbO、CdO、SnO、SbO、Sb、NiO、Al、GeOなどが挙げられる。また、好ましい水酸化物の例としては、Zn(OH)、Mg(OH)、Ti(OH)、Ti(OH)、Pb(OH)、Cd(OH)、Sn(OH)、Sb(OH)、Sb(OH)、Ni(OH)、Al(OH)、Ge(OH)などが挙げられる。また好ましいアルコキサイド塩の例としては、Ti(OPr)、Ti(OBu)などが挙げられる。また好ましい脂肪族カルボン酸塩の例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸チタニウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドニウム、ステアリン酸すず、ステアリン酸アンチモン、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸ゲルマニウムなどが挙げられる。中でも特に好ましい具体例は、ZnO、Mg(OH)、Ti(OPr)、Ti(OBu)、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、が挙げられる。
本発明のI価、II価、III価またはIV価の金属元素を含有する化合物の好ましい配合量としては、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルの合計100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下である。これらI価、II価、III価またはIV価の金属元素を含有する化合物の添加方法に特に制限はないが、ポリフェニレンエーテルと同時に添加する方法が好ましい。
本発明においては、さらに難燃剤を添加することができる。難燃剤としては、ケイ素化合物、環状窒素化合物、あるいはリン系難燃剤が好ましい。
ケイ素化合物の例としては、例えば、シリコーン、籠状シルセスキオキサンまたはその部分開裂構造体、シリカ等が挙げられる。
シリコーンは、オルガノシロキサンポリマーのことで、直鎖構造のもの、架橋構造のもの、あるいはそれらがある割合で構成された構造のものでもよく、又、単独あるいはそれらの混合物でもよい。難燃性、流動性の観点から、直鎖構造のものがより好ましい。また難燃性、耐衝撃性の観点から、分子内の末端基あるいは側鎖基として官能基を有するものが好ましい。官能基は特にエポキシ基、アミノ基が好ましい。具体的には例えば、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製のシリコーンオイル、変性シリコーンオイル、シリコーンパウダー、信越化学工業株式会社製のストレートシリコーンオイル、反応性シリコーンオイル、非反応性シリコーンオイル、シリコーンパウダーKMPシリーズなどを用いることができる。液体状、固体状いずれのものも用いることができる。
液体状のものは、25℃における粘度が、10〜10,000(mm/s)が好ましく、100〜8,000(mm/s)がより好ましく、500〜3,000(mm/s)が特により好ましい。固体のものは、平均粒径が0.1〜100μmが好ましく、0.5〜30μmがより好ましく、0.5〜5μmが特により好ましい。このシリコーンは、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルの合計100質量部に対して、難燃効果の点から0.1質量部以上であり、また剛性低下の点から10質量部以下の割合で含有されていることが好ましく、0.3〜5質量部がさらに好ましく、0.5〜2質量部が特により好ましい。
環状窒素化合物とは、窒素元素を含有する環状の有機化合物である。具体的にはメラミン誘導体である、メラミン、メレム、メロンが好ましく用いられる。中でも揮発性の観点から、メレム、メロンが好ましい。
リン系難燃剤としては、赤燐、リン酸エステル化合物、亜リン酸エステル化合物、フォスファゼン化合物、ホスフィン酸塩類等が挙げられる。中でもリン酸エステル化合物、ホスフィン酸塩類がより好ましい。
リン酸エステル化合物としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのモノ有機リン化合物や有機リン化合物オリゴマーが挙げられるが、有機リン化合物オリゴマーが特に好ましい。
有機リン化合物オリゴマーの特に好ましい例としては、下記式(2)で表される化合物群より選ばれるものを挙げることができる。

(式中、Q、Q、Q、Qは、炭素数1から6のアルキル基または水素を表し、nは1以上の整数、m、m、m、mは0から3の整数を示し、Xは以下の式(3)のいずれかから選択される。)
(式中、S、S、Sはメチル基または水素を表す。n、n、nは0から2の整数を示す。)
具体的には、大八化学社製のCR−741、CR−747、CR−733Sなどが好適である。
ホスフィン酸塩類としては、下記式(4)で表されるホスフィン酸塩及び/又は下記式(5)で表されるジホスフィン酸塩、またはこれらの縮合物の中から選ばれる少なくとも1種のホスフィン酸塩類が好ましい。
(式中、R及びRは、同一か又は異なり、直鎖状もしくは分岐状のC〜C−アルキル及び/又はアリールもしくはフェニルであり、Rは、直鎖状もしくは分岐状のC〜C10−アルキレン、C〜C10−アリーレン、C〜C10−アルキルアリーレン又はC〜C10−アリールアルキレンであり、Mはカルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)、亜鉛(イオン)、ビスマス(イオン)、マンガン(イオン)、ナトリウム(イオン)、カリウム(イオン)及びプロトン化された窒素塩基から選ばれる1種以上であり、mは2又は3であり、nは1〜3であり、xは1又は2である。)
ホスフィン酸塩類は、本発明の効果を損ねない範囲であれば、如何なる組成で混合されていても構わないが、難燃性、モールドデポジットの抑制の観点から、上記(4)で表されるホスフィン酸塩を90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、最も好ましくは98質量%以上含んでいる事が好ましい。
本発明において、好ましく使用可能なホスフィン酸の具体例としては、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸、メタンジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)、メチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸およびこれらの混合物等が挙げられる。
また好ましく使用可能な金属成分としてはカルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、ビスマスイオン、マンガンイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び/又はプロトン化された窒素塩基から選ばれる1種以上であり、より好ましくは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオンから選ばれる1種以上である。
ホスフィン酸塩類の好ましく使用可能な具体例としては、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル−n−プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸亜鉛、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。
特に難燃性や、モールドデポジットの抑制の観点からジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛が好ましい。中でもジエチルホスフィン酸アルミニウムが特に好ましい。
また、本発明の樹脂組成物を成形して得られる成形品の機械的強度、成形品外観を考慮し、好ましいホスフィン酸塩類の平均粒子径の下限値は0.5μmである。より好ましい下限値は1.0μmであり、最も好ましい下限値は2μmである。また、好ましいホスフィン酸塩類の平均粒子径の上限値は40μmであり、より、好ましい上限値は20μmであり、更に好ましくは15μmであり、最も好ましくは10μmである。
ホスフィン酸塩類の数平均粒子径を0.5μm以上とする事により、溶融混練等の加工時において、取扱い性や押出し機等への噛み込み性が向上し好ましい。また、平均粒子径を40μm以下とする事により、樹脂組成物の機械的強度が発現し易くなり、かつ成形品の表面良外観が向上するといった効果が得られ好ましい。
ホスフィン酸塩類の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計(例えば、島津製作所社製、商品名:SALD−2000)を用い、水中にホスフィン酸塩類を分散させ測定解析する事が出来る。水のホスフィン酸塩類への分散方法は、超音波拡散機およびまたは、攪拌機を備えた攪拌槽へ水及びホスフィン酸塩類を加える事で可能である。この分散液をポンプを介してレーザー回折粒度分布計の測定セルへ送液し、レーザー回折により粒子径を測定する。測定によって得られる、粒子径と粒子数の頻度分布より数平均粒子径として計算する事が出来る。
また、本発明におけるホスフィン酸塩類には、本発明の効果を損なわなければ、未反応物あるいは副生成物が残存していても構わない。
これらのリン系難燃剤の配合量としては、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルの合計100質量部に対して、難燃性の点から0.1質量部以上であり、また耐熱性の点から40質量部の割合で含有されていることが好ましく、さらに好ましくは1〜20質量部、特により好ましくは3〜10質量部である。
本発明では、上記した成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて付加的成分を添加しても構わない。
また、無機強化充填材を添加しても構わない。無機強化充填材の例としては、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、カオリン、クレイ、酸化チタン、チタン酸カリウム、炭酸カルシウム、ガラスフレーク等が挙げられる。これらの中から選ばれる1種以上が好ましく、1種類を用いても構わないし、2種類以上を混合して使用しても構わない。2種類以上を混合して使用する場合、射出成形品のそりが小さくなる等の観点から、繊維状の充填材と、非繊維状の充填材を混合することが好ましい。より好ましい充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、クレイ、酸化チタンであり、さらに好ましくはガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、酸化チタンである。
本発明で好適に使用可能なガラス繊維としては、繊維径が5μm〜20μmのチョップドストランドが、機械的特性及び取り扱い性の観点から好ましい。より好ましい繊維径は8μm〜15μmである。
本発明で好ましく使用可能な炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。これらは単独で使用しても構わないし、2種類以上を併用しても構わない。
好ましい繊維径は、5μm〜20μmであり、より好ましくは5〜13μmである。アスペクト比は10以上であることが望ましい。
本発明で使用可能なウォラストナイトは、珪酸カルシウムを成分とする天然鉱物を精製、粉砕及び分級したものである。また、人工的に合成したものも使用可能である。ウォラストナイトの大きさとしては、平均粒子径2〜9μm、アスペクト比5以上のものが好ましく、より好ましくは平均粒子径3〜7μm、アスペクト比5以上のもの、さらに好ましくは平均粒子径3〜7μm、アスペクト比8以上30以下のものである。
本発明で好適に使用可能なタルクとは、珪酸マグネシウムを成分とする天然鉱物を精製、粉砕及び分級したものである。また広角X線回折によるタルクの(0 0 2)回折面の結晶子径が570Å以上であることがより好ましい。
ここでいうタルクの(0 0 2)回折面は、広角X線回折装置を用いて、タルクMgSi10(OH)の存在が同定され、その層間距離がタルクの(0 0 2)回折面による格子面間隔である約9.39Åに一致することにより確認できる。また、タルクの(0 0 2)回折面の結晶子径は、そのピークの半値幅から算出される。
好ましい形状としては、平均粒子径が1μm以上20μm以下であり、粒子径の小さい方から25%の粒径(d25%)と75%の粒径(d75%)の比(d75%/d25%)が1.0以上2.5以下である粒径分布を有するものである。更には、(d75%/d25%)が1.5以上2.2以下であることがより好ましい。
タルクの好ましい平均粒子径は、1μm以上16μm以下であり、さらに好ましくは3μmより大きく9μm未満である。
ここでいうタルクの平均粒子径及び粒子径分布は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した体積基準の粒子径である。また、タルクの分散溶媒としてエタノールを用いて測定される値である。
また、これらの無機強化充填材には、表面処理剤として、高級脂肪酸又はそのエステル、塩等の誘導体(例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アミド、ステアリン酸エチルエステル等)やカップリング剤(例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等)を必要により使用することができる。その使用量は、無機強化充填材を100質量部としたとき、0.05〜5質量部であり、より好ましくは0.1〜2質量部である。
これら、無機強化充填材の好ましい量は、すべての樹脂組成物の量を100質量%としたとき、10〜60質量%であり、より好ましくは15〜50質量%であり、更に好ましくは18〜45質量%である。
これらの無機強化充填材には、取り扱い性を高める目的で、若しくは樹脂との密着性を改善する目的で、集束剤で集束されていてもよい。この際の集束材としては、エポキシ系、ウレタン系、ウレタン/マレイン酸変性系、ウレタン/アミン変性系の化合物が好ましく使用できる。これら集束剤はもちろん併用してもよい。また、この集束剤として、分子構造内に複数のエポキシ基を有するエポキシ系化合物を用いたものが、上述の中では、特に好ましく使用可能である。エポキシ化合物の中でも、ノボラック型エポキシが特に好ましい。
付加的成分の例を以下に挙げる。
導電性付与材(導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ等)、可塑剤(オイル、低分子量ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)及び、帯電防止剤、各種過酸化物、硫化亜鉛、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤等である。
本発明の組成物を得るための具体的な加工機械としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等が挙げられるが、中でも二軸押出機が好ましく、特に、上流側供給口と1カ所以上の下流側供給口を備えた二軸押出機が好ましい。
二軸押出機を用いた製造方法としては特に制限されるものではなく、(1)上流側供給口よりポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルを供給して溶融混練する方法、(2)上流側供給口よりポリフェニレンエーテルを供給し、下流側供給口より液晶ポリエステルを供給して溶融混練する方法、(3)上流側供給口よりポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルの一部を供給し、下流側供給口より残りの液晶ポリエステルを供給して溶融混練する方法等が挙げられる。中でも、難燃性向上の観点から、上流側供給口よりポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルの一部を供給し、下流側供給口より残りの液晶ポリエステルを供給して溶融混練する方法がより好ましい。
また、エポキシ基、オキサゾリル基、イミド基、カルボン酸基、酸無水物基から選ばれる1種以上の官能基を有する化合物が添加される場合は、上記の製造方法において、ポリフェニレンエーテルと同時に添加されることが好ましい。
また、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステル以外の樹脂、添加剤等を配合する場合も、上流側供給口より添加しても構わないし、下流側供給口より添加しても構わない。さらに、ガラス繊維やタルクなどの無機充填材を配合する場合、上流側供給口よりポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルを供給し、下流側供給口より無機充填材を供給して溶融混練する方法、上流側供給口と下流側に2箇所の供給口を備えた押出機を用いて、上流側供給口よりポリフェニレンエーテルを供給し、下流側第1供給口より液晶ポリエステルを供給し、下流側第2供給口より無機充填材を供給して溶融混練する方法、上流側供給口よりポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルの一部を供給し、下流側第1供給口より残りの液晶ポリエステルを供給し、下流側第2供給口より無機充填材を供給して溶融混練する方法等が挙げられる。また、無機充填材を添加せずに作成した組成物を用いて、該組成物を上流側供給口より供給し、下流側供給口より無機充填材を供給して溶融混練する方法でもよい。
このようにして得られる本発明の組成物は、従来より公知の種々の方法、例えば、射出成形により各種部品の成形体として成形できる。
これら各種部品としては、例えば、パソコン、ハードディスクDVDドライブレコーダー、デジタルビデオカメラ、携帯型デジタル音楽プレーヤー、携帯電話などのデジタル家電製品に使用されるハードディスクの内部部品や各種コンピューターおよびその周辺機器等の内部部品、ICトレー材料、各種ディスクプレーヤー等のシャーシー、キャビネット等の電気・電子部品、リレーブロック材料等に代表されるオートバイ・自動車の電装部品、自動車用耐熱部品あるいは事務機器用耐熱部品に好適である。中でも精密成形が必要とされるハードディスクの内部部品として好適に使用される。
ハードディスクの内部部品としては例えばブラケット、ラッチ、コウム、スポイラー、ブッシュ、マウントプレート、フックなどが挙げられる。
自動車用耐熱部品は例えば、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウウォッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、点火装置ケースなどの部品、ホイールキャップ、ランプソケット、ランプハウジング、ランプエクステンション、ランプリフレクターなどが好適である。
また、事務機器用耐熱部品は、例えば、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品などに好適である。
また、このようにして得られる本発明の組成物は、シートにすることも好適である。ここでのシートとは、厚みが0.001〜2.0mmのものであり、好ましくは0.005〜0.50mmであり、より好ましくは0.005〜0.20mmである。場合によってはフィルムと呼ばれることもある。
シートは、上記で得られた樹脂組成物を原料とし、押出シート成形により得ることもできるし、本発明の成分を押出シート成形機に直接投入し、ブレンドとシート成形を同時に実施して得ることもできる。
シートの製造方法としては、押出しチューブラー法、場合によってはインフレーション法とも呼ばれる方法にて製造することができる。円筒から出てきたパリソンがすぐに冷却してしまわないように、50〜290℃の温度範囲の中から適宜選択して、パリソンの温度制御することがシート厚みを均一にし、層剥離のないシートを作成する上で極めて重要である。
また、Tダイ押出成形によっても製造することができる。この場合、無延伸のまま用いてもよいし、1軸延伸してもよいし、2軸延伸することによっても得られる。シートの強度を高めたい場合は、延伸することにより達成することができる。
こうして得られたシートは、耐熱性に優れ、外観に優れるため、これらの特性が要求される用途に好適に用いることができる。例えば、プリント基板材料、プリント基板周辺部品、プリント基板製造用剥離フィルム、半導体パッケージ、データ系磁気テープ、APS写真フィルム、フィルムコンデンサー、モーターやトランスなどの絶縁材料、スピーカー振動板、自動車用シートセンサー、ワイヤーケーブルの絶縁テープ、TABテープ、発電機スロットライナ層間絶縁材料、トナーアジテーター、リチウムイオン電池などの絶縁ワッシャーなどが挙げられる。
以下、本発明を実施例及び比較例により、更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例に示されたものに限定されるものではない。
(使用した原料)
(1)ポリフェニレンエーテル(以下、PPEと略記)
ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)
還元粘度:0.41dl/g、(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)
(2)液晶ポリエステル(以下、LCPと略記)
LCP−1:窒素雰囲気下において、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、無水酢酸を仕込み、加熱溶融し、重縮合することにより、以下の理論構造式を有する液晶ポリエステルを得た。DSCによる融点ピークは282℃であった。なお、組成の成分比はモル比を表す。
LCP−2:窒素雰囲気下において、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、ハイドロキノン、2,6−ナフタレンジカルボン酸、無水酢酸を仕込み、加熱溶融し、重縮合することにより、以下の理論構造式を有する液晶ポリエステルを得た。DSCによる融点ピークは319℃であった。なお組成の成分比はモル比を表す。
(3)スチレン/グリシジルメタクリレート共重合体(以下、St−1と略記。)
商品名:マープルーフG−1005S(登録商標)(日本油脂社製)
(4)ヒンダードフェノール系安定剤(以下、Ph−1と略記。)
商品名:Irganox1330(登録商標)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
(評価方法)
以下に、評価方法について述べる。
<荷重たわみ温度(HDT)>
実施例および比較例で得られた樹脂組成物ペレットを、120℃の乾燥機を用いて3時間乾燥し、射出成形機[IS−80EPN:東芝機械社製]を用いて、射出速度700mm/秒、保圧40MPa、射出+保圧時間10秒、冷却時間15秒、金型温度120℃、溶融樹脂温度340℃に設定し、127×13×3.2mmの成形片を成形した。得られた成形片を使用し、ASTM D648に準拠し、1.82MPaで荷重たわみ温度を測定した。
<引張り強度>
実施例および比較例で得られた樹脂組成物ペレットを、120℃の乾燥機を用いて3時間乾燥し、射出成形機[IS−80EPN:東芝機械社製]を用いて、射出速度700mm/秒、保圧40MPa、射出+保圧時間10秒、冷却時間15秒に設定し、金型温度120℃、溶融樹脂温度340℃に設定し、ダンベル型成形片(TypeI)を成形した。得られた成形片を使用し、23℃、50RH%にて、ASTM D638に準拠し、引張り速度5mm/minで引張り強度を測定した。5本の成形片にて測定し、その平均値を測定値とした。
<難燃性>
実施例および比較例で得られた樹脂組成物ペレットを、120℃の乾燥機を用いて3時間乾燥し、射出成形機[IS−80EPN:東芝機械社製]を用いて、射出速度700mm/秒、保圧40MPa、射出+保圧時間10秒、冷却時間15秒、金型温度120℃、溶融樹脂温度340℃に設定して、127×13×1.6mmの成形片を成形した。得られた試験片を用いて、UL-94(米国アンダーライターズラボラトリー規格)に基づき、5本の試験片について、各々2回ずつ接炎し、合計10回の燃焼時間について測定し、平均燃焼時間、最大燃焼時間を評価した。
<モルフォロジー>
ウルトラミクロトームを用いて、上記により成形したダンベル型成形片の樹脂の流動方向が観察できる方向で厚み80nmの超薄切片を作成し、それを透過型電子顕微鏡で観察した。また、5,000倍の観察倍率で写真を撮影し、得られた電子顕微鏡写真を元に、画像解析装置により、分散相中に占める液晶ポリエステルの面積比率を算出した。
[実施例1〜10]
押出機上流側から1番目のバレルに上流側供給口、6番目のバレルに下流側供給口、5番目のバレルと10番目のバレルに真空ベントを有し、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=44(バレル数:11)の二軸押出機[ZSK−40:コペリオン社製(ドイツ)]を用いて、上流側供給口からダイまでを330℃に設定し、スクリュー回転数300rpm、吐出量60kg/hで、表1記載の割合となるように、上流側供給口、下流側供給口より原料を供給し、溶融混練して樹脂組成物ペレットを作製した。尚、このとき真空ベントより揮発分を除去した。得られた樹脂組成物の、荷重たわみ温度、引張り強度、難燃性、モルフォロジーを評価した。物性値を組成と共に表1に併記した。モルフォロジーに関しては、いずれのサンプルも、液晶ポリエステルが連続相を形成し、ポリフェニレンエーテルが分散相を形成していることが確認された。また、分散相中に液晶ポリエステルの存在が確認できた。実施例1、4、6については、モルフォロジーを図1〜3に記した。
本発明の樹脂組成物、および該樹脂組成物からなる成形体、シートは、電気・電子部品、OA部品、車両部品、機械部品などの幅広い分野に使用することができる。
実施例1の樹脂組成物の透過型電子顕微鏡写真 実施例4の樹脂組成物の透過型電子顕微鏡写真 実施例6の樹脂組成物の透過型電子顕微鏡写真

Claims (11)

  1. (A)ポリフェニレンエーテルおよび(B)液晶ポリエステルを含み、(A)成分が分散相を形成し、(B)成分が連続相を形成する樹脂組成物であって、更に(B)成分の一部が(A)成分中に存在することを特徴とする樹脂組成物。
  2. (B)成分の一部または全部が、300℃以上の融点ピークを有する請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 分散相中に占める(B)成分の面積比率が、12%以上50%以下である請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. 更に(C)成分として、エポキシ基、オキサゾリル基、イミド基、カルボン酸基、酸無水物基から選ばれる1種以上の官能基を有する化合物を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. (C)成分が、エポキシ基、オキサゾリル基、イミド基、カルボン酸基、酸無水物基から選ばれる1種以上の官能基を有する化合物とスチレン系化合物との共重合体である請求項4に記載の樹脂組成物。
  6. (A)成分の一部または全部が、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物、又はエポキシ樹脂により変性されたポリフェニレンエーテルである請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
  7. (i)(A)成分と(B)成分の一部とを溶融混練する工程と、(ii)該(i)の工程で得られた溶融混練物に残りの(B)成分を溶融混練する工程を経てなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  8. (C)成分が、(A)成分と同時に添加される請求項4〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる射出成形体。
  10. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなるシート。
  11. (i)(A)ポリフェニレンエーテルと(B)液晶ポリエステルの一部とを溶融混練する工程と、(ii)該(i)の工程で得られた溶融混練物に残りの(B)液晶ポリエステルを溶融混練する工程とを含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
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