JP2009029692A - 焼成用道具材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】炭化ケイ素粉末原料に、焼結後の残炭率が5.0重量%未満となる量の有機バインダを添加混合する工程と、水を加えて混練し、成形する工程と、1500〜2400℃で焼結させる工程と、1200〜1650℃で1〜100時間焼成する工程と、ジルコニアまたはアルミナからなる被覆層を溶射法により形成する工程とを備えた製造方法により、シリカ層が表面に形成され、見掛け気孔率15%以上、見掛け比重3.05〜3.20、炭化ケイ素含有量が90重量%以上である炭化ケイ素基材の前記シリカ層表面に、ジルコニアまたはアルミナの少なくともいずれかからなる被覆層が形成された道具材を得る。
【選択図】なし
Description
このような被覆材は、セラミックス基材に、所望のセラミックススラリーを塗布した後、高温で焼き付ける方法、CVD法、溶射法等を用いて被膜を形成することにより得られる。これらの方法の中でも、剥離しにくい被膜が得られることから、特に、溶射法が多用されている。
上記のような構成を備えた道具材を用いることにより、基材の炭化ケイ素の酸化が抑制され、酸化反応に伴って発生する酸素濃度の変動が小さく、被焼成物であるMLCCの変色、焼結異常等を防止することができる。
前記中間層により、シリカ層を有する炭化ケイ素基材と被覆層との熱膨張差が緩和され、被覆層の剥離防止効果が向上し、また、溶射膜によれば、該被覆層の密着性の向上が図られる。
酸化処理によれば、強固なシリカ層を容易に形成することができる。
上記範囲内のシリカ量であれば、炭化ケイ素基材の炭化ケイ素結晶表面に、シリカ層を十分に形成することができ、また、耐熱強度を保持することができる。
非晶質シリカ、石英、トリジマイト、コーサイト、スティショバイトは、温度変化による相変態に伴う体積変化が小さいため、熱サイクルに対して構造的に安定な膜としてシリカ層を形成することができる。
このような製造方法によれば、上記の本発明に係る焼成用道具材を好適に得ることができる。
したがって、前記焼成用道具材は、効率的かつ安価でのMLCC等のセラミック電子部品の製造に寄与し得るものである。
また、本発明に係る製造方法によれば、上記のような焼成用道具材を好適に製造することができる。
本発明に係る焼成用道具材は、炭化ケイ素基材表面に、シリカ層が形成され、さらに、少なくとも被焼成物が載置される部分の前記シリカ層表面に、ジルコニアまたはアルミナの少なくともいずれかからなる被覆層が形成されている。
すなわち、本発明は、炭化ケイ素を基材とする焼成用道具材において、予め炭化ケイ素基材表面にシリカ層を形成しておき、その上に、MLCCの主成分であるチタン酸バリウム、フェライト等との難反応性に優れた材質であるジルコニアまたはアルミナによる表面層を備えた構成としたものである。
また、上記のように、基材の炭化ケイ素の酸化が抑制されることにより、炭化ケイ素基材と被覆層との界面での物理特性の変化が防止され、被覆層のクラックや剥離の発生を抑制する効果も得られる。
酸化処理によれば、容易かつ強固に、均一な厚さのシリカ層を基材全面に形成することができる。
前記シリカ量が0.5重量%未満であると、炭化ケイ素基材の炭化ケイ素結晶表面にシリカ層が十分に形成されない場合がある。
一方、前記シリカ量が4重量%を超えると、耐熱強度が低下し、また、シリカ層が厚くなりすぎることにより、シリカ層と被覆層との熱膨張係数の差が顕在化し、被覆層の密着性も低下するため好ましくない。
シリカの一形態であるクリストバライトには、250℃での高温型と低温型の変態があり、この変態は、体積変化を伴うため、熱サイクルを繰り返す間に、膜にひび割れが生じやすい。このようにして生じたひびは、ガスの経路となり、シリカ層の酸化抑制効果を低下させることとなるため、相変態のない非晶質シリカ、あるいはまた、変態はあるが、体積変化の小さい、石英、トリジマイト、コーサイト、スティショバイトのうちのいずれかが好ましい。
上記範囲の見掛け気孔率、見掛け比重および炭化ケイ素含有量であれば、被覆層の密着性を保持しつつ、軽量化を図ることができ、かつ、十分な耐熱強度を有する道具材として構成することができる。これにより、焼成時における該道具材の取扱いも容易となり、MLCCの生産効率の向上が図られる。
前記中間層は、シリカ層を有する炭化ケイ素基材と被覆層との熱膨張差を緩和する役割を果たし、被覆層の剥離防止効果が向上し、また、焼成時において、被焼成物と道具材との接触部分における反応をより一層抑制することができる。
これにより、該道具材の繰り返し使用可能な頻度の向上も図られる。
まず、炭化ケイ素粉末原料に、焼結後の残炭率が5.0重量%未満となる量の有機バインダを添加して混合し、混合物を得る。
前記有機バインダの添加量は、焼結後の残炭率が5.0重量%未満となるようにする。
残炭率が5.0重量%を超えると、酸化量が多くなり、酸化処理に時間がかかる。
成形方法としては、プレス、ラバープレス、押出、スリップキャスト等の通常の方法を用いることができ、これらの方法により、所望の形状に成形する。
前記焼成温度が1200℃未満であると、所望のシリカ層の形成に要する時間が長くなるため好ましくない。
一方、前記焼成温度が1650℃を超えると、炭化ケイ素の酸化反応が激しくなり、シリカ層が、軟化により、発泡やクラックを生じ、安定な膜として形成されない。
なお、1450℃を超えると、クリストバライトが生成しやすくなるため、焼成温度は1200〜1450℃であることがより好ましい。
前記焼成時間が1時間未満である場合、十分なシリカ層を形成することができない。
一方、焼成時間が100時間を超えると、経済的に不利である。
なお、低温で焼成する場合は、酸化処理に時間を要するが、水蒸気を導入することにより、酸化反応を促進させることができる。
前記被覆層の形成方法としては、溶射法、所望のセラミックススラリーを塗布した後に高温で焼き付ける方法、CVD法等を用いることができるが、本発明においては、アンカー効果を利用した物理的な密着が可能であり、形成された被覆層が基材と剥離しにくいことから、プラズマ溶射等の溶射法により形成することが好ましい。
溶射法は、緻密かつ比表面積が小さく、被焼成物との難反応性にも優れた被覆層が得られるという利点も有している。
特に、水プラズマ溶射法により形成した被覆層は、表面粗さが大きく、被焼成物との接触面積が小さく、被焼成物と反応しにくいため好ましい。
また、前記被覆層の厚さは、被焼成物と炭化ケイ素基材との接触防止および剥離防止の観点から、50〜1000μmであることが好ましい。
なお、前記被覆層をジルコニアの溶射膜により形成する場合は、未安定化ジルコニアと、カルシアまたはイットリアを安定化剤とした安定化ジルコニアもしくは部分安定化ジルコニアとを混在させることが好ましい。混在比率は、被覆層の剥離防止の観点から、安定化または部分安定化ジルコニアが30〜60重量%、未安定化ジルコニアが70〜40重量%とすることが好ましい。
前記中間層は、シリカ層を有する炭化ケイ素基材と被覆層との中間的な熱膨張係数を有するものであり、両者の熱膨張差が緩和されるため、被覆層の剥離防止に効果的である。
これらの方法の中でも、被膜の密着性を高め、剥離を防止する観点から、溶射法により形成することが好ましい。特に、水プラズマ溶射法で形成された被膜は、弾性率が低く、膨張収縮に伴う熱応力の発生が小さく、応力が分散され、膨張自体が緩和される等の効果により、剥離が抑制される。
[実施例1]
まず、炭化ケイ素粉末原料に、焼結後の残炭率が5.0重量%未満となる量のメチルセルロース系バインダを添加して混合し、混合物を得た。
前記混合物に、水を加えて混練し、プレス成形により、多孔質成形体を得た。
前記多孔質成形体を2300℃で焼結させ、その後、酸素濃度4%の酸素雰囲気下、1350℃で3時間焼成して酸化処理を施し、該焼結体表面にシリカ層を形成し、150mm×150mm×厚さ3mmのシリカ層を有する炭化ケイ素基材を作製した。
この基材について、見掛け気孔率、見掛け比重を、JIS R2205−1992準拠にて測定した。
また、前記基材から、10mm×10mm×厚さ3mmの試料片(約1g)を切り出し、フッ化水素水溶液(1:1)に浸漬させ、60分後の重量減量からシリカ量を求めた。
このセッターを用いて、MLCC焼成試験を行い、焼成異常(変色)の発生等のMLCCの焼成状態を評価した。
また、MLCC焼成試験におけるセッターの酸化状態を調べるため、10mm×10mm×厚さ3mmのシリカ層を有する炭化ケイ素基材に試験片を、前記セッターと同時に焼成炉に入れ、焼成1回および10回後のシリカ量を、上記と同様にして求めた。
酸化未処理の炭化ケイ素基材を用いて、それ以外については、実施例1と同様にして、シリカ量の測定およびMLCC焼成試験を行った。
酸化処理の際の焼成温度を、表1の実施例2〜4、比較例2,3にそれぞれ示す温度とし、それ以外については、実施例1と同様にして、シリカ量の測定およびMLCC焼成試験を行った。
なお、表1のMLCC焼成状態の評価において、◎:良好、○:おおむね良好、×:焼成異常発生を意味する。
一方、酸化処理によるシリカ層の形成が不十分である場合(比較例1,2)は、MLCC焼成時におけるシリカ量の増量が多く、MLCCに焼成異常が発生した。これは、シリカ量の増量が多いと、基材の炭化ケイ素の酸化反応による焼成炉内における酸素濃度の変化量が大きくなったためであると考えられる。
なお、酸化処理温度を1700℃とした場合(比較例3)は、酸化反応が激しくなり、発泡を伴い、所望のシリカ層を形成することは困難であった。部分的にはシリカ層が形成されていたため、この部分について測定した見掛け気孔率、見掛け比重およびシリカ量を、表1にカッコ書で示した。
酸化処理の際、酸素雰囲気における酸素濃度を20%とし、また、焼成温度および時間を、表2の実施例5〜8、表3の比較例5,6にそれぞれ示す条件とし、それ以外については、実施例1と同様にして、シリカ層を有する炭化ケイ素基材を作製し、見掛け気孔率、見掛け比重およびシリカ量を測定した。
なお、実施例6においては、酸化処理時に、酸化反応を促進するため、水蒸気を導入した。
このセッターについて、耐酸化性評価を行った。評価方法は、電気炉を用い、炭化ケイ素の酸化反応を促進するために、水蒸気を含む雰囲気下で、1回につき、1300℃で10時間保持し、これを10回繰り返すことにより行った。このセッターから、10mm×10mm×厚さ3mmの試料片(約1g)を切り出し、上記と同様にして、シリカ量を測定した。
酸化未処理の炭化ケイ素基材を用いて、それ以外については、実施例5と同様にして、耐酸化性評価を行った。
一方、表3示す結果から分かるように、酸化処理によるシリカ層の形成が不十分である場合(比較例4,5)、また、シリカ層中のシリカがクリストバライトの場合(比較例6)は、シリカ量の増量が多く、MLCC等の焼成に使用した場合に雰囲気制御に与える影響が大きいと推測される。
Claims (6)
- シリカ層が表面に形成され、見掛け気孔率15%以上、見掛け比重3.05〜3.20、炭化ケイ素含有量が90重量%以上である炭化ケイ素基材の、少なくとも被焼成物が載置される部分の前記シリカ層表面に、ジルコニアまたはアルミナの少なくともいずれかからなる被覆層が形成されていることを特徴とする焼成用道具材。
- 前記シリカ層と被覆層との間に、アルミナまたはムライトの少なくともいずれかからなる中間層が形成され、かつ、前記被覆層が溶射膜であることを特徴とする請求項1記載の焼成用道具材。
- 前記シリカ層が、炭化ケイ素基材表面の酸化により形成されたものであることを特徴とする請求項1または2記載の焼成用道具材。
- 前記シリカ層中のシリカは、炭化ケイ素基材中の炭化ケイ素と該シリカ層中のシリカとの合量に対して0.5〜4重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の焼成用道具材。
- 前記シリカ層中のシリカが、非晶質シリカまたは石英、トリジマイト、コーサイト、スティショバイトのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の焼成用道具材。
- 炭化ケイ素粉末原料に、焼結後の残炭率が5.0重量%未満となる量の有機バインダを添加して混合し、混合物を得る工程と、
前記混合物に水を加えて混練し、成形して、多孔質成形体を得る工程と、
前記多孔質成形体を1500〜2400℃で焼結させ、焼結体を得る工程と、
前記焼結体を1200〜1650℃で1〜100時間焼成し、該焼結体表面にシリカ層を形成する工程と、
前記シリカ層表面に、ジルコニアまたはアルミナの少なくともいずれかからなる被覆層を溶射法により形成する工程とを備えていることを特徴とする焼成用道具材の製造方法。
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