JP2007076935A - 電子部品焼成用治具およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 耐熱衝撃性に優れ、高速焼成において使用した場合であっても、亀裂や割れ、被膜の剥離を生じることなく、繰り返し使用することができる電子部品焼成用治具を提供する。
【解決手段】 シリカ質アルミナ‐シリカ質およびアルミナ‐シリカ‐マグネシア質のうちのいずれかのセラミックスからなり、熱膨張係数が5×10-6/℃以下である基材の表面の一部または全部に、ムライトを主成分とし、Al2O3含有量が50〜78重量%のアルミナ‐シリカ質の被膜からなる第1中間層と、Al2O3純度95重量%以上のアルミナ質の被膜からなる第2中間層と、未安定ジルコニア、CaOもしくはY2O3を安定化剤とした安定化もしくは部分安定化ジルコニア、および、Ca、Ba、Sr、Mgのジルコン酸塩のうちの少なくともいずれか1種の被膜からなる表面層とを順次形成する。
【選択図】 なし
【解決手段】 シリカ質アルミナ‐シリカ質およびアルミナ‐シリカ‐マグネシア質のうちのいずれかのセラミックスからなり、熱膨張係数が5×10-6/℃以下である基材の表面の一部または全部に、ムライトを主成分とし、Al2O3含有量が50〜78重量%のアルミナ‐シリカ質の被膜からなる第1中間層と、Al2O3純度95重量%以上のアルミナ質の被膜からなる第2中間層と、未安定ジルコニア、CaOもしくはY2O3を安定化剤とした安定化もしくは部分安定化ジルコニア、および、Ca、Ba、Sr、Mgのジルコン酸塩のうちの少なくともいずれか1種の被膜からなる表面層とを順次形成する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、ソフトフェライト等の電子部品用セラミックスの焼成、熱処理工程において使用されるセッタ、棚板、匣鉢等の電子部品焼成用治具およびその製造方法に関する。
電子部品用セラミックスの焼成は、一般に、1000〜1400℃の温度範囲で行われるため、その焼成用治具としては、耐熱性に優れていることが求められる。このため、アルミナ‐シリカ質、アルミナ‐シリカ‐マグネシア質、アルミナ‐シリカ‐ジルコニア質、炭化ケイ素質等のセラミックスが使用されている。
しかしながら、例えば、BaTiO3を主成分とするコンデンサ等を焼成する場合は、上記のようなセラミックス焼成用治具の上に、被焼成物を直接載せたりして接触させると、該被焼成物と反応し、融着や特性の低下等を招きやすい。
このため、難反応性であるジルコニア質等の基材表面を、同様のジルコニア質等の素材でコーティングした焼成用治具も使用されている。
また、例えば、Mn‐Zn系、Ni‐Zn系等のソフトフェライトの電子部品を焼成する場合には、その材質に応じて、適宜、アルミナ質、ジルコニア質または被焼成物と同様の材質からなる基材やコーティングした焼成用治具が使い分けられている。
このため、難反応性であるジルコニア質等の基材表面を、同様のジルコニア質等の素材でコーティングした焼成用治具も使用されている。
また、例えば、Mn‐Zn系、Ni‐Zn系等のソフトフェライトの電子部品を焼成する場合には、その材質に応じて、適宜、アルミナ質、ジルコニア質または被焼成物と同様の材質からなる基材やコーティングした焼成用治具が使い分けられている。
さらに、近年、電子部品用セラミックスは、量産、生産性の向上等の観点から、高速焼成による製造が求められ、そのためには、高速焼成工程における急激な昇降温に耐え得る耐熱衝撃性に優れた焼成用治具が必要である。
耐熱衝撃性が高い材質としては、熱膨張係数が小さい、シリカ質、コーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)質、チタン酸アルミニウム(Al2TiO5)質、炭化ケイ素質、アルミナ‐シリカ質等が挙げられる。
これらの耐熱衝撃性が高い材質からなる焼成用治具も、上述したように、表面をジルコニアやアルミナ等でコーティングする必要がある。
耐熱衝撃性が高い材質としては、熱膨張係数が小さい、シリカ質、コーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)質、チタン酸アルミニウム(Al2TiO5)質、炭化ケイ素質、アルミナ‐シリカ質等が挙げられる。
これらの耐熱衝撃性が高い材質からなる焼成用治具も、上述したように、表面をジルコニアやアルミナ等でコーティングする必要がある。
しかしながら、熱膨張係数が小さい基材を使用すれば、耐熱衝撃性は向上するものの、基材とコーティング層の熱膨張係数の差が大きいため、加熱サイクルを繰り返すと、剥離しやすくなるという課題を有していた。
上記のようなコーティング層の剥離を防止する手段として、例えば、特許文献1には、Al2O3含有量が65重量%以上であるアルミナ‐シリカ質基材の表面にアルミナを溶射し、その上にジルコニアを含有する溶射層を形成する方法が開示されている。
また、特許文献2には、アルミナ中間層を介して、ジルコニア層で被覆することにより、厚膜形成法によっても、耐熱衝撃性に優れた電子部品焼成用治具とすることができることが開示されている。
特公平4−21330号公報
特開2004−137114号公報
また、特許文献2には、アルミナ中間層を介して、ジルコニア層で被覆することにより、厚膜形成法によっても、耐熱衝撃性に優れた電子部品焼成用治具とすることができることが開示されている。
しかしながら、上記特許文献1記載の電子部品焼成用治具は、基材のAl2O3含有量が多い場合、熱膨張係数が大きく、耐熱衝撃性に劣るため、高速焼成には耐えられない。一方、Al2O3含有量が少なく、熱膨張係数が小さい基材である場合は、その表面に形成されるアルミナ層との熱膨張の差が大きく、剥離しやすくなる。
また、特許文献2記載の電子部品焼成用治具においても、アルミナ中間層は、表面のジルコニア層との密着性に優れていても、熱膨張係数が小さい基材との間では熱膨張差が大きく、剥離しやすいものであった。さらに、アルミナ中間層およびジルコニア層に焼結助剤として金属酸化物を添加して焼成した場合であっても、上記剥離防止の改善は十分であるとは言えなかった。
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、耐熱衝撃性に優れ、高速焼成において使用した場合であっても、亀裂や割れ、被膜の剥離を生じることなく、繰り返し使用することができる電子部品焼成用治具を提供することを目的とするものである。
本発明に係る電子部品焼成用治具は、シリカ質、アルミナ‐シリカ質およびアルミナ‐シリカ‐マグネシア質のうちのいずれかのセラミックスからなり、熱膨張係数が5×10-6/℃以下である基材の表面の一部または全部に、ムライトを主成分とし、Al2O3含有量が50〜78重量%のアルミナ‐シリカ質の被膜からなる第1中間層が形成され、前記第1中間層の上に、Al2O3純度95重量%以上のアルミナ質の被膜からなる第2中間層が形成され、前記第2中間層の上に、未安定ジルコニア、CaOもしくはY2O3を安定化剤とした安定化もしくは部分安定化ジルコニア、および、Ca、Ba、Sr、Mgのジルコン酸塩のうちの少なくともいずれか1種の被膜からなる表面層が形成されていることを特徴とする。
コーティングされた電子部品焼成用治具において、耐熱衝撃性に優れた基材と表面層との間に、上記のような第1中間層および第2中間層を介在させることにより、基材と表面層との熱膨張差が緩和され、亀裂や割れ、被膜の剥離を抑制することができる。
コーティングされた電子部品焼成用治具において、耐熱衝撃性に優れた基材と表面層との間に、上記のような第1中間層および第2中間層を介在させることにより、基材と表面層との熱膨張差が緩和され、亀裂や割れ、被膜の剥離を抑制することができる。
また、本発明に係る電子部品焼成用治具の製造方法は、シリカ質、アルミナ‐シリカ質およびアルミナ‐シリカ‐マグネシア質のうちのいずれかのセラミックスからなり、熱膨張係数が5×10-6/℃以下である基材の表面の一部または全部に、ムライトを主成分とし、Al2O3含有量が50〜78重量%のアルミナ‐シリカ質の溶射被膜からなる第1中間層を形成し、前記第1中間層の上に、Al2O3純度95重量%以上のアルミナ質の溶射被膜からなる第2中間層を形成し、前記第2中間層の上に、未安定ジルコニア、CaOもしくはY2O3を安定化剤とした安定化もしくは部分安定化ジルコニア、および、Ca、Ba、Sr、Mgのジルコン酸塩のうちの少なくともいずれか1種の溶射被膜からなる表面層を形成することを特徴とする。
前記電子部品焼成用治具の第1中間層、第2中間層および表面層は、上記のように、それぞれ溶射被膜として形成されることにより、被膜の剥離防止効果の向上が一層図られる。
前記電子部品焼成用治具の第1中間層、第2中間層および表面層は、上記のように、それぞれ溶射被膜として形成されることにより、被膜の剥離防止効果の向上が一層図られる。
上記製造方法においては、前記各溶射被膜の形成後、熱処理を施すことが好ましい。
このような熱処理により、形成された溶射被膜の安定化を図ることでき、特に、表面層の被焼成物との難反応性を向上させることができる。
このような熱処理により、形成された溶射被膜の安定化を図ることでき、特に、表面層の被焼成物との難反応性を向上させることができる。
上述したとおり、本発明に係る電子部品焼成用治具を用いれば、耐熱衝撃性に優れているため、高速焼成において使用した場合であっても、亀裂や割れを生じることなく、また、被膜が剥離することなく、繰り返し使用することができる。
したがって、本発明に係る電子部品焼成用治具は、効率的かつ安価での電子部品の製造に寄与し得るものである。
したがって、本発明に係る電子部品焼成用治具は、効率的かつ安価での電子部品の製造に寄与し得るものである。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明に係る電子部品焼成用治具は、基材表面に、第1中間層、第2中間層および表面層が順次積層された構成を備えているものである。
すなわち、本発明は、コーティングされた電子部品焼成用治具において、耐熱衝撃性に優れた基材と表面層との熱膨張差を緩和する第1中間層および第2中間層を介する構成としたものである。
本発明に係る電子部品焼成用治具は、基材表面に、第1中間層、第2中間層および表面層が順次積層された構成を備えているものである。
すなわち、本発明は、コーティングされた電子部品焼成用治具において、耐熱衝撃性に優れた基材と表面層との熱膨張差を緩和する第1中間層および第2中間層を介する構成としたものである。
本発明における基材としては、シリカ質、アルミナ‐シリカ質およびアルミナ‐シリカ‐マグネシア質のうちのいずれかのセラミックスからなるものが用いられ、これらの中でも、熱膨張係数が5×10−6/℃以下であるシリカ質、コーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)質、ムライト‐コーディエライト(3Al2O3・2SiO2‐2MgO・2Al2O3・5SiO2)質等の材質からなるものが好ましい。
より好ましくは、熱膨張係数が3×10−6/℃以下であり、このような材質からなる基材であれば、例えば、100℃/min.程度での急激な昇降温を伴う環境下においても、十分に使用可能である。
より好ましくは、熱膨張係数が3×10−6/℃以下であり、このような材質からなる基材であれば、例えば、100℃/min.程度での急激な昇降温を伴う環境下においても、十分に使用可能である。
電子部品の高速焼成においては、上述したように、焼成用治具は、急激な昇降温を繰り返す環境下で使用される。このため、該治具は、部位により温度差を生じやすく、熱膨張も部分によって差を生じる。この熱膨張差による熱応力のため、該焼成用治具に亀裂や割れが生じると、使用することができなくなる。
前記熱応力に関係する因子としては、積載物の量および載せ方、焼成用治具の形状、材質、熱伝導率、弾性率、ポアッソン比、熱膨張係数等が挙げられる。これらの因子の中でも特に、熱膨張係数が、耐熱衝撃性に大きく影響する。
本発明においては、上記のように、熱膨張係数が小さい材質からなる基材とすることにより、大きな熱応力が発生し難く、耐熱衝撃性に優れた電子部品焼成用部材を構成することができる。
前記熱応力に関係する因子としては、積載物の量および載せ方、焼成用治具の形状、材質、熱伝導率、弾性率、ポアッソン比、熱膨張係数等が挙げられる。これらの因子の中でも特に、熱膨張係数が、耐熱衝撃性に大きく影響する。
本発明においては、上記のように、熱膨張係数が小さい材質からなる基材とすることにより、大きな熱応力が発生し難く、耐熱衝撃性に優れた電子部品焼成用部材を構成することができる。
なお、前記基材は、その上に形成される被膜と基材との接触面積を大きくすることにより、両者の密着性が高まるため、コーティングの前処理として、ブラスト等により適度な表面粗さに調整しておくことが好ましい。
前記基材上には、ムライトを主成分とするアルミナ‐シリカ質の被膜からなる第1中間層が形成される。
ムライトの組成は、3Al2O3・2SiO2であり、Al2O3は71.8重量%含有されている。現行の市販の原料ムライトは、Al2O3含有量が68〜85重量%である。
前記基材がムライト‐コーディエライト質である場合には、ムライト組成のままでもよいが、基材がより熱膨張係数の小さいシリカ質等である場合は、シリカを混合して熱膨張係数を下げた方が、基材との熱膨張差が小さくなるため好ましい。
このように、基材との熱膨張差を小さくし、被膜の剥離を防止する観点から、第1中間層におけるムライトを主成分とするアルミナ‐シリカ質の被膜のAl2O3含有量は50〜78重量%であることが好ましい。
ムライトの組成は、3Al2O3・2SiO2であり、Al2O3は71.8重量%含有されている。現行の市販の原料ムライトは、Al2O3含有量が68〜85重量%である。
前記基材がムライト‐コーディエライト質である場合には、ムライト組成のままでもよいが、基材がより熱膨張係数の小さいシリカ質等である場合は、シリカを混合して熱膨張係数を下げた方が、基材との熱膨張差が小さくなるため好ましい。
このように、基材との熱膨張差を小さくし、被膜の剥離を防止する観点から、第1中間層におけるムライトを主成分とするアルミナ‐シリカ質の被膜のAl2O3含有量は50〜78重量%であることが好ましい。
前記第1中間層は、セッタ、棚板、匣鉢等の電子部品焼成用治具の具体的な使用目的、用途等において、必要に応じて、前記基材の全面に形成してもよく、あるいはまた、表面の一部のみに形成してもよい。
前記第1中間層の上には、さらに、アルミナ質の被膜からなる第2中間層が形成される。
該第2中間層は、前記第1中間層と表面層との間で、これらの熱膨張差を緩和する役割を果たす。
前記第2中間層を構成するアルミナ質からなる被膜は、積載物から滲出するアルカリ、重金属等の成分に対する耐食性の観点から、Al2O3純度が95%以上であることが好ましく、99%以上の高純度であることがより好ましい。
該第2中間層は、前記第1中間層と表面層との間で、これらの熱膨張差を緩和する役割を果たす。
前記第2中間層を構成するアルミナ質からなる被膜は、積載物から滲出するアルカリ、重金属等の成分に対する耐食性の観点から、Al2O3純度が95%以上であることが好ましく、99%以上の高純度であることがより好ましい。
前記第1中間層および第2中間層の被膜の形成方法としては、ムライト等の所定の材質をスラリーとしたものをスプレーコート等で塗布した後に高温で焼き付ける方法、プラズマ溶射等の溶射法により被膜を形成する方法等が実用的である。
前記各被膜は、その密着性を高め、剥離を防止する観点から、溶射法により形成することが好ましい。特に、水プラズマ溶射法で形成された被膜は、弾性率が低く、膨張収縮に伴う熱応力の発生が小さく、応力が分散され、膨張自体が緩和される等の効果により、剥離が抑制される。
前記各被膜は、その密着性を高め、剥離を防止する観点から、溶射法により形成することが好ましい。特に、水プラズマ溶射法で形成された被膜は、弾性率が低く、膨張収縮に伴う熱応力の発生が小さく、応力が分散され、膨張自体が緩和される等の効果により、剥離が抑制される。
前記第1中間層および第2中間層の厚さは、焼成用治具の形状、基材の材質等により異なるが、各層の厚さは0.05mm以上であれば、耐熱衝撃性等の効果は十分に得られる。層の厚さは、厚いほど、被膜の断熱効果により基材が保護されるが、厚すぎると、焼成用治具自体の重量が重くなり、取り扱い上好ましくなく、また、被膜が剥離しやすくなる。
例えば、外径100〜500mm四方、肉厚3〜20mmの標準サイズの焼成用容器の場合には、各層の厚さは、0.1〜0.6mmであることが好ましい。
例えば、外径100〜500mm四方、肉厚3〜20mmの標準サイズの焼成用容器の場合には、各層の厚さは、0.1〜0.6mmであることが好ましい。
次に、前記第2中間層の上には、未安定ジルコニア、CaOもしくはY2O3を安定化剤とした安定化もしくは部分安定化ジルコニア、および、Ca、Ba、Sr、Mgのジルコン酸塩のうちの少なくともいずれか1種の被膜からなる表面層が形成される。
被焼成物と接触する表面層を構成する被膜には、被焼成物との難反応性、剥離や脱落等を生じない耐久性等の特性が要求される。
ジルコニアは、難反応性であることから、従来から、電子部品焼成用治具の材質として使用されている。
セッタやコーティング材として使用される場合は、通常、CaOやY2O3で安定化または部分安定化されたジルコニアが使用され、本発明における表面層としても、好適に用いることができる。
ジルコニアは、難反応性であることから、従来から、電子部品焼成用治具の材質として使用されている。
セッタやコーティング材として使用される場合は、通常、CaOやY2O3で安定化または部分安定化されたジルコニアが使用され、本発明における表面層としても、好適に用いることができる。
一方、未安定ジルコニアは、焼成工程における温度変化により、1000℃付近で、単斜晶、正方晶および立方晶間での相転移を生じ、この相転移に伴う体積変化により、割れや粒子の脱落が起こりやすい。
このため、未安定ジルコニアは、バルクではあまり使用されないが、焼結助剤を含まないため、難反応性に優れていることから、敷粉としての利用は多く、本発明における前記表面層にも、好適に使用することができる。
このため、未安定ジルコニアは、バルクではあまり使用されないが、焼結助剤を含まないため、難反応性に優れていることから、敷粉としての利用は多く、本発明における前記表面層にも、好適に使用することができる。
また、被焼成物である電子部品の種類、用途等によっては、反応性、耐久性の観点から、前記表面層には、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)、ジルコン酸ストロンチウム(SrZrO3)またはジルコン酸マグネシウム(MgZrO3)等のアルカリ土類金属のジルコン酸塩が好適に用いられる。
前記表面層の被膜の形成方法としては、緻密かつ比表面積が小さく、被焼成物との難反応性にも優れた被膜が得られることから、プラズマ溶射等の溶射により形成することが好ましい。特に、水プラズマ溶射法により形成した被膜は、表面粗さが大きく、被焼成物との接触面積が小さくなるため、被焼成物と反応し難いため好ましい。
プラズマ溶射法による被膜の形成は、プラズマアーク中で原料が一旦溶解した後、吹き付けることにより行うが、溶射の条件によっては、プラズマアークが還元雰囲気であるために酸素欠陥が生じたり、急冷凝固するために不安定な結晶構造で被膜が形成される場合がある。
このような場合には、被膜が活性化され、被焼成物と反応しやすくなるため、焼成用治具の使用前に一度、実際の使用温度またはそれよりもやや高温で熱処理することが好ましい。この熱処理により、表面層を安定な被膜として形成することができる。
一般に、電子部品用セラミックスの焼成温度は、800〜1400℃程度であるため、前記熱処理は、1000〜1500℃程度で行うことが好ましい。
このような場合には、被膜が活性化され、被焼成物と反応しやすくなるため、焼成用治具の使用前に一度、実際の使用温度またはそれよりもやや高温で熱処理することが好ましい。この熱処理により、表面層を安定な被膜として形成することができる。
一般に、電子部品用セラミックスの焼成温度は、800〜1400℃程度であるため、前記熱処理は、1000〜1500℃程度で行うことが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。
[実施例1]
150mm×150mm×厚さ5mmのムライト‐コーディエライト質(Al2O3;50重量%、SiO2;40重量%、MgO;6重量%、その他の成分;4重量%)の棚板の基材を、サンドブラストにより、表面粗さ8〜12μmとし、この表面に、水プラズマ溶射法により、膜厚150μmのムライト質(Al2O3;76重量%)の溶射被膜からなる第1中間層を形成した。
次に、その上に、同様に、膜厚150μmのアルミナ質(Al2O3;99重量%)の溶射被膜からなる第2中間層を形成した。
さらに、その上に、水プラズマ溶射法により、膜厚150μmのY2O3安定化ジルコニア質(Y2O3;8重量%)の溶射被膜からなる表面層を形成した。
[実施例1]
150mm×150mm×厚さ5mmのムライト‐コーディエライト質(Al2O3;50重量%、SiO2;40重量%、MgO;6重量%、その他の成分;4重量%)の棚板の基材を、サンドブラストにより、表面粗さ8〜12μmとし、この表面に、水プラズマ溶射法により、膜厚150μmのムライト質(Al2O3;76重量%)の溶射被膜からなる第1中間層を形成した。
次に、その上に、同様に、膜厚150μmのアルミナ質(Al2O3;99重量%)の溶射被膜からなる第2中間層を形成した。
さらに、その上に、水プラズマ溶射法により、膜厚150μmのY2O3安定化ジルコニア質(Y2O3;8重量%)の溶射被膜からなる表面層を形成した。
〈サイクル加熱試験〉
上記において作製した棚板を、340mm×340mm×厚さ30mmの台板上に、10mm×10mm×15mmのスペーサを用いて、4枚×5段積みし、合計20枚セットした。これを台板ごと、1000℃に保持した電気炉内への出し入れし、この急熱、急冷サイクルを10回繰り返したときのクラック発生率を求め、耐熱衝撃性を評価した。
上記において作製した棚板を、340mm×340mm×厚さ30mmの台板上に、10mm×10mm×15mmのスペーサを用いて、4枚×5段積みし、合計20枚セットした。これを台板ごと、1000℃に保持した電気炉内への出し入れし、この急熱、急冷サイクルを10回繰り返したときのクラック発生率を求め、耐熱衝撃性を評価した。
〈剥離試験〉
上記において作製した棚板を、340mm×340mm×厚さ30mmの台板上に、10mm×10mm×15mmのスペーサを用いて、10段積みにセットした。これを台板ごと、電気炉内で、1400℃まで昇温し、2時間保持した後、500℃まで降温し、再度1400℃に昇温した。このように、500℃から1400℃の間での昇降温を繰り返し、10、20、30回終了後の剥離発生率を求め、耐剥離性を評価した。
上記サイクル加熱試験および剥離試験の結果を表1に示す。
上記において作製した棚板を、340mm×340mm×厚さ30mmの台板上に、10mm×10mm×15mmのスペーサを用いて、10段積みにセットした。これを台板ごと、電気炉内で、1400℃まで昇温し、2時間保持した後、500℃まで降温し、再度1400℃に昇温した。このように、500℃から1400℃の間での昇降温を繰り返し、10、20、30回終了後の剥離発生率を求め、耐剥離性を評価した。
上記サイクル加熱試験および剥離試験の結果を表1に示す。
[実施例2,3および比較例1,2]
表1の実施例2,3および比較例1,2にそれぞれ示す基材および中間層とし、それ以外については、実施例1と同様にして、棚板を作製し、サイクル加熱試験および剥離試験を行った。
これらの結果を表1にまとめて示す。
表1の実施例2,3および比較例1,2にそれぞれ示す基材および中間層とし、それ以外については、実施例1と同様にして、棚板を作製し、サイクル加熱試験および剥離試験を行った。
これらの結果を表1にまとめて示す。
表1から分かるように、ムライト‐コーディエライト質、コーディエライト質またはシリカ質の基材に、ムライトを主成分とし、Al2O3含有量が50〜78重量%のアルミナ‐シリカ質の被膜からなる第1中間層、Al2O3純度95%以上のアルミナ質の被膜からなる第2中間層、Y2O3部分安定化ジルコニアの被膜からなる表面層が順次形成された棚板(実施例1〜3)は、サイクル加熱試験の結果、クラックの発生は認められなかった。
また、剥離試験の結果においても、繰り返し回数が20回まで、いずれも被膜の剥離を生じることなく、特に、基材がムライト‐コーディエライト質、コーディエライト質である場合(実施例1,2)には、30回繰り返しても、被膜の剥離は認められなかった。
また、剥離試験の結果においても、繰り返し回数が20回まで、いずれも被膜の剥離を生じることなく、特に、基材がムライト‐コーディエライト質、コーディエライト質である場合(実施例1,2)には、30回繰り返しても、被膜の剥離は認められなかった。
これに対して、基材が熱膨張係数の大きい高アルミナ質であり、実施例のような第1中間層を形成しなかった場合(比較例1)は、被膜の剥離は見られなかったものの、サイクル加熱試験において、クラック発生率が高く、耐熱衝撃性に劣ることが認められた。
また、基材が熱膨張係数の小さいシリカ質であり、実施例のような第1中間層を形成しなかった場合(比較例2)は、耐剥離性に劣るものであった。
また、基材が熱膨張係数の小さいシリカ質であり、実施例のような第1中間層を形成しなかった場合(比較例2)は、耐剥離性に劣るものであった。
Claims (3)
- シリカ質、アルミナ‐シリカ質およびアルミナ‐シリカ‐マグネシア質のうちのいずれかのセラミックスからなり、熱膨張係数が5×10-6/℃以下である基材の表面の一部または全部に、ムライトを主成分とし、Al2O3含有量が50〜78重量%のアルミナ‐シリカ質の被膜からなる第1中間層が形成され、前記第1中間層の上に、Al2O3純度95%以上のアルミナ質の被膜からなる第2中間層が形成され、前記第2中間層の上に、未安定ジルコニア、CaOもしくはY2O3を安定化剤とした安定化もしくは部分安定化ジルコニア、および、Ca、Ba、Sr、Mgのジルコン酸塩のうちの少なくともいずれか1種の被膜からなる表面層が形成されていることを特徴とする電子部品焼成用治具。
- シリカ質、アルミナ‐シリカ質およびアルミナ‐シリカ‐マグネシア質のうちのいずれかのセラミックスからなり、熱膨張係数が5×10-6/℃以下である基材の表面の一部または全部に、ムライトを主成分とし、Al2O3含有量が50〜78重量%のアルミナ‐シリカ質の溶射被膜からなるを第1中間層を形成し、前記第1中間層の上に、Al2O3純度95%以上のアルミナ質の溶射被膜からなる第2中間層として形成し、前記第2中間層の上に、未安定ジルコニア、CaOもしくはY2O3を安定化剤とした安定化もしくは部分安定化ジルコニア、および、Ca、Ba、Sr、Mgのジルコン酸塩のうちの少なくともいずれか1種の溶射被膜からなる表面層を形成することを特徴とする電子部品焼成用治具の製造方法。
- 前記各溶射被膜の形成後、熱処理を施すことを特徴とする請求項2記載の電子部品焼成用治具の製造方法。
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-
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