JP2008239380A - 圧電磁器組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 低温焼成した場合にも優れた圧電特性が得られる圧電磁器組成物を提供する。
【解決手段】 菱面晶系ペロブスカイト構造を有する第1の化合物と、正方晶系ペロブスカイト構造を有する第2の化合物と、第3の化合物とを含有する固溶体に相当する組成を有する圧電磁器組成物である。第3の化合物は、Biを第1の構成元素、FeまたはMnを第2の構成元素、6価金属元素を第3の構成元素として含む複合酸化物である。6価金属元素は、W、Moから選ばれる少なくとも1種である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、アクチュエータやセンサー、レゾネータ等の分野において広く利用される圧電磁器組成物に関するものである。
圧電材料(圧電磁器組成物)は、外部から電界が印加されることにより歪みを発生する(電気エネルギーの機械エネルギーへの変換)効果と、外部から応力を受けることにより表面に電荷が発生する(機械エネルギーの電気エネルギーへの変換)効果とを有するものであり、近年、各種分野で幅広く利用されている。例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O:PZT)等の圧電材料は、印加電圧に対して1×10−10m/Vのオーダーでほぼ比例した歪みを発生することから、微少な位置調整等に優れており、光学系の微調整等にも利用されている。また、それとは逆に、圧電材料は加えられた応力あるいはそれによる自身の変形量に比例した大きさの電荷が発生することから、微少な力や変形を読み取るためのセンサーとしても利用されている。さらに、圧電材料は優れた応答性を有することから、交流電界を印加することで、圧電材料自身あるいは圧電材料と接合関係にある弾性体を励振して共振を起こさせることも可能であり、圧電トランス、超音波モータ等としても利用されている。
現在実用化されている圧電材料の大部分は、PbZrO(PZ)−PbTiO(PT)からなる固溶体系(PZT系)である。その理由は、菱面晶系のPZと正方晶系のPTの結晶学的な相境界(M.P.B.)付近の組成を用いることで、優れた圧電特性を得ることができるからである。このPZT系圧電材料には、様々な副成分あるいは添加物を加えることにより、多種多様なニーズに応えるものが幅広く開発されている。例えば、機械的品質係数(Qm)が小さい代わりに圧電定数(d)が大きく、直流的な使い方で大きな変位量が求められる位置調整用のアクチュエータ等に用いられるものから、圧電定数(d)が小さい代わりに機械的品質係数(Qm)が大きく、超音波モータ等の超音波発生素子のような交流的な使い方をする用途に向いているものまで様々なものがある。
また、PZT系以外にも圧電材料として実用化されているものはあるが、それもマグネシウム酸ニオブ酸鉛[Pb(Mg,Nb)O:PMN]等の鉛系ペロブスカイト組成を主成分とする固溶体がほとんどである。
前述の通り、実用化されている圧電材料はいずれも鉛系圧電材料であり、主成分として低温でも揮発性の極めて高い酸化鉛(PbO)を60〜70質量%程度と多量に含んでいる。例えば、PZTまたはPMNでは、質量比で約2/3が酸化鉛である。このように多量の鉛を含む鉛系圧電材料は、公害問題等の対環境性や生態学的見地等から問題が多い。例えば、鉛系圧電材料を製造する際には、磁器であれば焼成工程、単結晶品であれば溶融工程等の熱処理工程において、工業レベルで極めて多量の酸化鉛が大気中に揮発し拡散してしまう。また、製造段階で放出される酸化鉛については回収することも可能であるが、工業製品として市場に出された圧電製品に含有される酸化鉛については現状では回収が難しく、これらが広く環境中に放出されると、酸性雨による鉛の溶出等が心配される。したがって、圧電磁器及び単結晶の応用分野の広がりや、使用量の増大等を考慮すると、圧電材料の無鉛化が極めて重要な課題となる。
鉛を全く含有しない圧電材料としては、例えばチタン酸バリウム(BaTiO)やビスマス層状強誘電体等が知られている。しかしながら、チタン酸バリウムはキュリー点が120℃と低く、その温度以上では圧電性が消失してしまうので、はんだによる接合または車載用等の用途を考えると実用的でない。一方、ビスマス層状強誘電体は、通常400℃以上のキュリー点を有しており、熱的安定性に優れているが、結晶異方性が大きいので、ホットフォージング等で自発分極を配向させる必要があり、生産性の点で問題がある。また、一般に圧電材料における鉛の削減は圧電特性の低下に繋がり、例えば従来の圧電材料から完全に鉛の含有をなくすと、大きな圧電性を得ることが難しいとされている。
さらに、近年、新たな圧電材料として、チタン酸ナトリウムビスマス系の材料について研究が進められている。例えば、特許文献1および特許文献2には、チタン酸ナトリウムビスマスとチタン酸バリウムとを含む材料が開示されており、特許文献3にはチタン酸ナトリウムビスマスとチタン酸カリウムビスマスとを含む材料が開示されている。さらに特許文献4にはチタン酸ナトリウムビスマスとチタン酸カリウムビスマスと第三成分を含む系について開示されている。
ただし、これらチタン酸ナトリウムビスマス系の材料では、鉛系圧電材料に比べると十分な圧電特性が得られておらず、圧電特性のより一層の向上が求められているのが実情である。このような状況から、本願出願人は、菱面晶系ペロブスカイト構造を有する第1の化合物と、正方晶系ペロブスカイト構造を有する第2の化合物と、ビスマス(Bi)と、マグネシウム(Mg)等の二価金属元素と、ジルコニウム(Zr)等の四価金属元素と、酸素(O)とを含む第3の化合物とを含有する圧電磁器を提案している(特許文献5〜特許文献7を参照)。また、同様に、菱面晶系ペロブスカイト構造を有する第1の化合物と、正方晶系ペロブスカイト構造を有する第2の化合物と、ビスマスと、鉄(Fe)と、タンタル(Ta)等の五価金属元素と、酸素(O)とを含む第3の化合物とを含有する圧電磁器を提案している(特許文献8を参照)。特許文献5〜8記載の圧電磁器によれば、変位量等の圧電特性を大きく向上させることができ、非鉛系圧電材料の利用可能性を大幅に高めることが可能である。
特公平4−60073号公報 特開平11−180769号公報 特開平11−171643号公報 特開平16−035350号公報 特開2005−47745号公報 特開2005−47746号公報 特開2005−47748号公報 特開2005−47747号公報
ところで、圧電材料としては、圧電定数(d)が大きく変位量が大きな材料が求められる一方で、低温焼成化が要求されている。圧電磁器組成物を用いて圧電素子を形成する場合、電極を形成する必要があるが、例えば高価な貴金属に変えてAg等の安価な電極材料により電極を形成する場合等においては、低温焼成化が必要である。このような観点から見た場合、前述の各特許文献に記載される非鉛系圧電材料では不十分であり、低温焼成した場合に優れた圧電特性を実現することは難しい。
本発明は、前述の従来の実情に鑑みて提案されたものであり、低温焼成によっても優れた圧電特性を実現することが可能な圧電磁器組成物を提供することを目的とする。
前述の目的を達成するために、本発明の圧電磁器組成物は、菱面晶系ペロブスカイト構造を有する第1の化合物と、正方晶系ペロブスカイト構造を有する第2の化合物と、第3の化合物と、Biを第1の構成元素、FeまたはMnの少なくとも1種を第2の構成元素、6価金属元素を第3の構成元素として含む複合酸化物である第3の化合物とから構成される固溶体に相当する組成を有する成分を含有することを特徴とする。
本発明の圧電磁器組成物に含まれる前記成分は、菱面晶系ペロブスカイト構造を有する第1の化合物と正方晶系ペロブスカイト構造を有する第2の化合物の組み合わせに対して、Biを第1の構成元素、FeまたはMnの少なくとも1種を第2の構成元素、6価金属元素を第3の構成元素として含む複合酸化物を第3の化合物として添加したものに相当する。前記複合酸化物の添加は、低温焼成化に寄与し、低温焼成した場合にも優れた圧電特性が実現される。
本発明によれば、低温焼成した場合にも圧電定数が大きな圧電磁器組成物を実現することが可能であり、変位量が大きな圧電素子を提供することが可能である。また、本発明によれば、非鉛系圧電材料においても十分な圧電特性を得ることができ、しかも、この場合には環境中への鉛の放出を最小限に抑えることができるので、低公害化、対環境性、生態的見地からも優れた圧電磁器組成物を実現することができ、圧電材料のより一層の活用を図ることができる。
以下、本発明を適用した実施形態について詳細に説明する。
本発明の圧電磁器組成物は、先ず、菱面晶(Rhombohedral)系ペロブスカイト構造を有する第1の化合物と、正方晶(Tetragonal)系ペロブスカイト構造を有する第2の化合物の組み合わせに相当する組成を基本組成とするものである。前記組み合わせに相当する組成を基本組成とすることで、少なくとも圧電磁器組成物の一部において結晶学的な相境界(M.P.B.)が形成され、優れた圧電特性が実現される。
ここで、第1の化合物は、菱面晶系ペロブスカイト構造を有する必要があるが、化合物の結晶構造は化合物の組成によって決まることから、これに基づいて選択すればよい。また、菱面晶系ペロブスカイト構造を有するか否かについては、例えばX線回折解析を行いASTMカードにより確認することも可能である。
具体的に、第1の化合物としては、例えばチタン酸ナトリウムビスマス(Na0.5Bi0.5TiO)やジルコン酸鉛(PbZrO)、ビスマスフェライト(BiFeO)、さらにはPb(Sc1/2Nb1/2)O、Pb(Fe1/2Nb1/2)O、Pb(Fe1/2Ta1/2)O、Pb(Zn1/3Nb2/3)O等の化合物を挙げることができる。ただし、非鉛系圧電材料とするためには、第1の化合物も鉛(Pb)を含まない化合物であることが好ましく、前述のチタン酸ナトリウムビスマス(NBT)は第1の化合物として好適な化合物と言える。
チタン酸ナトリウムビスマスは、ナトリウム(Na)及びビスマス(Bi)がペロブスカイト構造のAサイトに位置し、チタン(Ti)がペロブスカイト構造のBサイトに位置する化合物である。チタン酸ナトリウムビスマスにおいて、Bサイト元素(Ti)に対するAサイト元素(Na,Bi)のモル比(以下、A/B比という。)は、化学量論組成では1であが、これに限らず若干のズレは許容される。例えば、チタン酸ナトリウムビスマスを一般式(Na0.5Bi0.5TiO(ただし、式中aはA/B比を表す。)で表した時に、A/B比aが1以下であれば焼結性を高めることができるとともにより高い圧電特性を得ることができるので好ましく、またA/B比aが0.85以上、1.0以下の範囲内であれば、さらに高い圧電特性を得ることができるのでより好ましい。なお、前記一般式におけるナトリウムとビスマスのモル比、及び酸素のモル比は化学量論組成によるものであるが、これらのモル比についても化学量論組成からの若干のずれは許容される。
第1の化合物は、1種類の化合物により構成されてもよいが、複数種の化合物により構成されてもよい。複数種の化合物よりなる場合、それらは互いに固溶していてもよく、固溶していなくてもよい。また、複数種の化合物よりなる場合、前述のA/B比は各化合物において1以下、さらには0.85以上、1.0以下の範囲内であるか、あるいは、各化合物のA/B比を組成に基づいて算術平均した値が1以下、さらには0.85以上、1.0以下の範囲内であることが好ましい。
一方、第2の化合物は、正方晶系ペロブスカイト構造を有する化合物である。前述の通り、化合物の結晶構造は化合物の組成によって決まることから、これに基づいて正方晶系ペロブスカイト構造を有する化合物を選択すればよい。また、正方晶系ペロブスカイト構造を有するか否かについては、菱面晶系ペロブスカイト構造の場合と同様、例えばX線回折解析を行いASTMカードにより確認することも可能である。
第2の化合物の具体例としては、例えばチタン酸カリウムビスマス(K0.5Bi0.5TiO)やチタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)、さらにはPb(Mg1/3Nb2/3)O、KLiNb15、SrKNb15等の化合物を挙げることができる。また、斜方晶系ペロブスカイト構造を有する化合物であっても、a軸長とb軸長が近い値である場合には、前記正方晶系ペロブスカイト構造を有する化合物と見なして用いることも可能である。
これら化合物の中で、チタン酸カリウムビスマス(KBT)やチタン酸バリウム、あるいはチタン酸カリウムビスマス(KBT)とチタン酸バリウムを組み合わせて用いることが好ましい。チタン酸カリウムビスマスやチタン酸バリウムは、鉛を含まない化合物であり圧電磁器組成物を非鉛化することができ、特性上も好ましい。
前記チタン酸カリウムビスマス(KBT)は、カリウム(K)及びビスマス(Bi)がペロブスカイト構造のAサイトに位置し、チタン(Ti)がペロブスカイト構造のBサイトに位置する化合物である。チタン酸カリウムビスマスにおいて、Bサイト元素(Ti)に対するAサイト元素(K,Bi)のモル比(A/B比)は、化学量論組成では1であが、これに限らず若干のズレは許容される。例えば、チタン酸カリウムビスマスを一般式(K0.5Bi0.5TiO(ただし、式中bはA/B比を表す。)で表した時に、A/B比bが1以下であれば焼結性を高めることができるとともにより高い圧電特性を得ることができるので好ましく、またA/B比bが0.85以上、1.0以下の範囲内であれば、さらに高い圧電特性を得ることができるのでより好ましい。なお、前記一般式におけるカリウムとビスマスのモル比、及び酸素のモル比は化学量論組成から求めたものであるが、これらのモル比についても化学量論組成からの若干のずれは許容される。
第2の化合物も、1種類の化合物により構成されてもよいし、複数種の化合物により構成されてもよい。複数種の化合物よりなる場合、それらは互いに固溶していてもよく、固溶していなくてもよい。また、複数種の化合物よりなる場合、前述のA/B比は各化合物において1以下、さらには0.85以上、1.0以下の範囲内であるか、あるいは、各化合物のA/B比を組成に基づいて算術平均した値が1以下、さらには0.85以上、1.0以下の範囲内であることが好ましい。
本発明の圧電磁器組成物は、前記基本組成に第3の化合物を添加物として添加した場合に相当する組成を有することが大きな特徴である。第3の化合物は、Biを第1の構成元素、FeまたはMnを第2の構成元素、6価金属元素を第3の構成元素として含む複合酸化物であり、例えば第1の化合物あるいは第2の化合物、またはその両方に固溶する形で存在する。第3の化合物がWやMo等の6価金属元素を構成元素として含むことにより、低温焼成した場合にも圧電定数等の圧電特性が大幅に改善される。
前記第3の化合物を構成する構成元素のうち、第2の構成元素に関しては、FeとMnとから選択することができる。いずれの場合にも圧電特性の改善に効果があるが、特にMnを選択した場合には、Qm値を向上することができるという付随的な効果も得ることができる。圧電材料としては、圧電定数(d)が大きく変位量が大きな材料が求められる一方で、交流的な使い方をする用途等において、Qm(機械的品質係数:エネルギーロスの指標)が大きい材料も求められている。例えば、高周波で駆動されるレゾネータ等において、圧電材料のQmが小さいと発熱等の要因となる。また、大振幅振動が要求される圧電素子等では、圧電材料のQmが小さいと素子破壊に繋がるおそれもある。第3の化合物の構成元素としてMnを選択すれば、圧電定数(d)が改善されるのみならず、Qm値も改善され、圧電定数が大きくQm値も大きな圧電磁器組成物が実現される。
第3の化合物を構成する構成元素のうち、第3の構成元素に関しては、6価金属元素から選択することができる。6価金属元素としては、W、Moから選ばれる少なくとも1種である。
第3の構成元素が6価金属元素である場合には、前記第3の化合物の組成は、一般式Bi(M 3/4II 1/4)Oにより表される。前記一般式中、前記一般式中、MはFeまたはMnを表す。MIIは6価金属元素(すなわち、W、Moから選ばれる少なくとも1種)を表す。Biのモル比cは、化学量論組成においては1であるが、若干のずれは許容される。M(FeまたはMn)と6価金属元素MIIのモル比、及び酸素のモル比についても、前記一般式では化学量論組成に基づいて決められているが、Biと同様、化学量論組成からの若干のずれは許容される。
本発明の圧電磁器組成物は、前述の第1の化合物、第2の化合物、第3の化合物に換算して組成を表すことができるが、この場合、第1の化合物と第2の化合物の比率については、菱面晶系ペロブスカイト構造を有する第1の化合物と正方晶系ペロブスカイト構造を有する第2の化合物との結晶学的な相境界(M.P.B.)付近の組成を中心に適宜設定すればよい。
また、第1の化合物と第2の化合物については、全体でのA/B比が1以下、さらには0.85以上、1以下であることが好ましい。すなわち、第1の化合物と第2の化合物のA/B比を組成に基づいて算術平均した値が1以下、さらには0.85以上、1.0以下の範囲内であることが好ましい。これを式で表すと、例えば第1の化合物のモル比をα、A/B比をs、第2の化合物のモル比をβ、A/B比をtとしたときに(ただし、α+β=1)、(α・s+β・t)≦1、さらには0.85≦(α・s+β・t)≦1である。既に説明したように、この範囲内において高い焼結性及び優れた圧電特性を得ることができるからである。
第3の化合物の添加量についても特性等を考慮して適宜設定すればよいが、第3の化合物も含めた具体的な組成に関しては、特に第2の化合物の種類によって最適範囲が異なる。例えば、第2の化合物としてチタン酸カリウムビスマス(KBT)を用いた場合には、第1の化合物のモル比をx、第2の化合物のモル比をy、第3の化合物のモル比をzとしたときに、0.76≦x≦0.91、0.08≦y≦0.23、0<z≦0.05、x+y+z=1とすることが好ましい。第2の化合物としてチタン酸バリウムを用いた場合には、0.85≦x≦0.99、0<y≦0.10、0<z≦0.05、x+y+z=1とすることが好ましい。
前述の範囲外では、菱面晶系ペロブスカイト構造を有する第1の化合物と正方晶系ペロブスカイト構造を有する第2の化合物との結晶学的な相境界(M.P.B.)から遠ざかり、圧電特性が低下してしまうおそれがある。例えば第1の化合物のモル比xが0.76より少ない場合及び0.92を越えた場合は、第1の化合物と第2の化合物で形成される結晶学的な相境界(M.P.B.)から遠ざかることで、誘電率と圧電特性が低下する。第2の化合物を含まない場合は、結晶学的な相境界(M.P.B.)が形成されないため圧電特性が低く、第2の化合物のモル比が0.23(チタン酸カリウムビスマスの場合)、あるいは0.10(チタン酸バリウムの場合)を越えると、結晶学的な相境界(M.P.B.)から遠ざかることで誘電率、圧電特性が低下する。
また、第3の化合物の含有量が前記範囲を外れて多くなり過ぎても、圧電特性が低下してしまうおそれがある。第3の化合物が第1の成分または第2の成分に固溶することによって圧電特性が向上すると考えられるため、第3の化合物のモル比zが0.05を越えると固溶できなくなって異相を形成し、その量が増えることにより圧電特性が低下する。
本発明の圧電磁器組成物は、前述の第1の化合物、第2の化合物、及び第3の化合物の少なくとも一部が互いに固溶した固溶体と等価な形態を有している。すなわち、本発明の圧電磁器組成物では、少なくとも一部において結晶学的な相境界(M.P.B.)が形成され、圧電特性が向上するようになっている。特に、第3の化合物を含む3成分系において相境界(M.P.B.)が形成されているので、1成分系あるいは2成分系に比べて誘電率、電気機械結合係数、変位量等の圧電特性が向上する。なお、本発明の圧電磁器組成物における結晶粒の平均粒径は、例えば0.5μm〜20μmである。
本発明の圧電磁器組成物は、鉛を含んでいてもよいが、その含有量は1質量%以下であることが好ましく、鉛を全く含んでいないことがより好ましい。非鉛系材料とすれば、焼成時における鉛の揮発、及び圧電部品として市場に流通し廃棄された後における環境中への鉛の放出を最小限に抑制することができ、低公害化、対環境性および生態学的見地から好ましいからである。
以上のような構成を有する圧電磁器組成物は、例えば、次のようにして製造することができる。
先ず、出発原料として、酸化ビスマス(Bi)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、酸化チタン(TiO)、酸化鉄(Fe)、炭酸マンガン(MnCO)、及び酸化タングステン(WO)、酸化モリブデン(MoO)等の原料粉末を必要に応じて用意し、100℃以上の温度で十分に乾燥させた後、目的とする組成に応じて秤量する。なお、出発原料には、酸化物に代えて炭酸塩あるいはシュウ酸塩のように焼成により酸化物となるものを用いてもよく、炭酸塩に代えて酸化物あるいは焼成により酸化物となる他の化合物を用いてもよい。
次いで、例えば、秤量した出発原料をボールミル等により有機溶媒中または水中で5時間〜20時間十分に混合した後、十分乾燥し、プレス成形して、750℃〜900℃で1時間〜3時間程度仮焼する。続いて、例えば、この仮焼物をボールミル等により有機溶媒中または水中で5時間〜30時間粉砕した後、再び乾燥し、バインダー溶液を加えて造粒する。造粒した後、例えば、この造粒粉をプレス成形してブロック状とする。
ブロック状とした後、例えば、この成形体を400℃〜800℃で2時間〜4時間程度熱処理してバインダーを揮発させ、950℃〜1300℃で2時間〜4時間程度本焼成する。本焼成の際の昇温速度および降温速度は、共に例えば50℃/時間〜300℃/時間程度とする。本焼成の後、得られた焼結体を必要に応じて研磨し、電極を設ける。その後、25℃〜150℃のシリコンオイル中で5MV/m〜10MV/mの電界を5分間〜1時間程度印加して分極処理を行う。これにより、圧電磁器組成物により形成される圧電磁器が得られ、圧電素子として使用することができる。
本発明の圧電磁器組成物においては、WやMo等の6価金属元素を構成元素として含む第3の化合物を添加しているので、低温焼成が可能である。例えば、前記本焼成の際の温度を1050℃程度とした場合にも、十分な圧電特性を得ることが可能である。
以上詳述したように、本発明の圧電磁器組成物においては、菱面晶系ペロブスカイト構造を有する第1の化合物及び正方晶系ペロブスカイト構造を有する第2の化合物に加えて、WやMo等の6価金属元素を構成元素として含む第3の化合物を添加しているので、低温焼成した場合にも、誘電率や電気機械結合係数、変位量等の圧電特性を向上させることができる。
また、本発明の圧電磁器組成物においては、非鉛化した場合にも優れた圧電特性を維持することができるので、利用の可能性を大幅に高めることができる。すなわち、焼成時における鉛の揮発、及び圧電部品として市場に流通し廃棄された後における環境中への鉛の放出を最小限に抑制することができ、低公害化、対環境性及び生態学的見地から極めて優れた圧電磁器組成物を提供することが可能となり、圧電磁器組成物の広範な活用を図ることが可能である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明が前述の実施形態に限られるものでないことは言うまでもなく、種々の変更が可能である。例えば、前述の実施形態においては、第1の化合物、第2の化合物及び第3の化合物のみを含む場合について説明したが、本発明の圧電磁器組成物は、これらに加えて他の化合物、あるいは元素を不純物あるいは添加物として含んでいてもよい。そのような元素としては、例えば、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、リチウム(Li)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ケイ素(Si),ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、希土類元素等を挙げることができる。
また、前述の実施形態では、第1の化合物や第2の化合物の結晶構造についても説明したが、例示したチタン酸ナトリウムビスマスやチタン酸カリウムビスマス等を含む固溶体に相当する組成を有していれば、圧電磁器組成物の結晶構造について論じるまでもなく、本発明の圧電磁器組成物に該当する。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。
実験1
本実験では、チタン酸ナトリウムビスマス(NBT)を第1の化合物、チタン酸カリウムビスマス(KBT)を第2の化合物、鉄・タングステン酸ビスマス(BFW)を第3の化合物とする固溶体に相当する組成を有する圧電磁器組成物からなる圧電磁器の作製を試みた。第3の化合物は、Biを第1の構成元素、Feを第2の構成元素とし、Wを第3の構成元素とする複合酸化物である。
これら化合物の原料として、酸化ビスマス粉末、炭酸ナトリウム粉末、炭酸カリウム粉末、酸化チタン粉末、酸化鉄粉末、及び酸化タングステン粉末を用意し、100℃以上で十分に乾燥させた後、所定の組成となるようにそれらを秤量した。次いで、秤量した出発原料をボールミルにより水中で約16時間混合した後、十分乾燥し、プレス成形して、850℃で約2時間仮焼した。続いて、この仮焼物をボールミルにより水中で約16時間粉砕した後、再び乾燥し、バインダーとしてポリビニールアルコール(PVA)水溶液を加えて造粒した。
その後、この造粒粉を直径17mm、厚さ1.5mmの円板状ペレットに成形し、700℃で2時間の熱処理を行ってバインダーを揮発させ、1050℃で2時間の本焼成を行った。焼成条件は、昇温、降温共に200℃/時間とした。次いで、得られた焼成体を厚さ約0.4mm〜0.6mmの平行平板状に研磨した後、銀ペーストを600℃〜700℃で焼き付け、電極とした。さらに、50℃〜150℃のシリコンオイル中で10MV/mの電界を15分間印加して分極処理を行った。
前述の作製方法に従い、焼成後の圧電磁器組成物(圧電磁器)における各化合物に換算した組成[KBT、NBT及びBFWのモル比(ここではモル%)]が表1−1及び表1−2に示す値となるように出発原料の配合比を設定し、試料1−1〜試料1−68を作製した。前記組成において、NBTは(Na0.5Bi0.50.99TiO3、KBTは(K0.5Bi0.50.99TiO、BFWはBi(Fe3/4
1/4 )Oとした。NBT及びKBT、さらにはこれらを合わせたものにおいて、A/B比=0.99である。なお、表1中、*印を付した試料1−1〜試料1−12は、第3の化合物である鉄・タングステン酸ビスマス(BFW)を含んでおらず、比較例に相当するものである。
得られた試料1−1〜試料1−68について、比誘電率εd、広がり方向の電気機械結合係数kr、d33を測定した。比誘電率εdの測定はLCRメータ(ヒューレットパカード社製HP4284A)により行い、電気機械結合係数krの測定はインピーダンスアナライザー(ヒューレットパカード社製HP4194A)とデスクトップコンピュータを用いた自動測定器により共振反共振法で行った。d33の測定は、d33メーター(中国科学院声学研究所製d33メーター)により行った。作製した圧電磁器の組成(各化合物に換算した組成:モル%)及び各特性の測定結果を表1−1、表1−2に併せて示す。
Figure 2008239380
Figure 2008239380
表1−1,1−2から明らかなように、第3の化合物を含んでいない比較例(試料1−1〜試料1−12)に比べて、第3の化合物を含む試料(試料1−13〜試料1−68:実施例に相当)では各特性が改善されている。また、本実験例では、1050℃、2時間という低温焼成にも関わらず、優れた圧電特性が得られている。
ただし、第1の化合物(NBT)のモル比が0.92(92モル%)を越えた試料1−13や、第2の化合物(KBT)のモル比が0.08(8モル%)未満の試料1−27,1−41、第2の化合物(KBT)のモル比が0.23(23モル%)を越えた試料1−26,1−40,1−54、第3の化合物(BFW)のモル比が0.05(5モル%)を越えた試料1−55〜1−68においては、各特性の劣化が見られる。したがって、NBT−KBT−BFW系圧電磁器組成物においては、NBTのモル比x、KBTのモル比y、BFWのモル比zについて、0.76≦x≦0.92、0.08≦y≦0.23、0<z≦0.05、x+y+z=1とすることが好ましいことがわかる。
実験2
第3の化合物として、鉄・タングステン酸ビスマス(BFW)の代わりに鉄・モリブデン酸ビスマス(BFM)(第3の構成元素が6価金属元素であるMo)を用い、他は実験1と同様にして圧電磁器(試料2−1,2−2)を作製した。さらに、作製した圧電磁器について、実験1と同様の手法により比誘電率εd、広がり方向の電気機械結合係数kr、d33を測定した。作製した圧電磁器の組成(各化合物に換算した組成:モル%)及び特性の測定結果を表2に示す。
Figure 2008239380
第3の化合物としてBFMを用いた場合についても、例えばNBTやKBTの組成が同等で第3の化合物(BFWやBFM)を含まない試料1−9と比較すると、特性の大幅な改善が見られる。
実験3
本実験例では、NBTとKBTのA/B比を変え、他は実験1と同様にして圧電磁器を作製した(試料3−1〜3−7)。同様に、BFWを含まない場合についても、NBTとKBTのA/B比を変え、他は実験1と同様にして圧電磁器を作製した(試料3−8〜3−12:比較例に相当)。なお、A/B比はNBT及びKBTについての値であるが、NBTとKBTのA/B比が同じ値であることから、NBTとKBTを合わせたものについても同様のA/B比となる。
作製した圧電磁器について、実験1と同様の手法により比誘電率εd、広がり方向の電気機械結合係数kr、d33を測定した。作製した圧電磁器の組成(各化合物に換算した組成:モル%)、第1の化合物及び第2の化合物全体のA/B比及び特性の測定結果を表3に示す。
Figure 2008239380
BFWを含まない比較例(試料3−8〜3−12)に比べて、BFWを含む試料3−1〜3−7では、いずれの試料においても圧電特性の改善が見られる。また、第1の化合物と第2の化合物全体のA/B比を1以下とすることで、電気機械結合係数krや圧電定数d33の向上が顕著である。
これに対して、前記A/B比が1を越えた場合、電気機械結合係数krや圧電定数d33の低下が見られる。これは、前記A/B比が1を越えると得られる圧電磁器の焼結性が悪くなり、密度が向上せず、分極時に高い電圧が印加できなかったことによるものと考えられる。一方、前記A/B比が0.8の場合には、電気機械結合係数krや圧電定数d33の低下が見られる。これは、前記A/B比が小さすぎるとBサイト成分であるTiが多量に余り、異相が生じてしまったことによるものと考えられる。異相の形成は圧電特性の低下に繋がる。
以上の実験結果より、第1の化合物のモル比をα、A/B比をs、第2の化合物のモル比をβ、A/B比をtとしたときに(ただし、α+β=1)、0.85≦(α・s+β・t)≦1とすることで変位量等の圧電特性がより向上することが確認された。
実験4
本実験では、第2の化合物をチタン酸バリウム(BT)に変え、他は実験1と同様に圧電磁器を作製し、 作製した圧電磁器について、実験1と同様の手法により比誘電率εd、広がり方向の電気機械結合係数kr、d33を測定した。作製した圧電磁器の組成(各化合物に換算した組成:モル%)、及び特性の測定結果を表4に示す。
Figure 2008239380
第2の化合物としてBTを用いた場合にも、BFWを含まない試料4−13,4−14(比較例に相当)に比べて、BFWを含む試料4−1〜4−12において圧電特性の改善が見られる。ただし、BFWが5モル%を越える試料4−4,4−8,4−12において圧電特性の低下が見られることから、第3の化合物にBTを用いた場合には、NBTのモル比x、BTのモル比y、BFWのモル比zについて、0.85≦x≦0.99、0<y≦0.10、0<z≦0.05とすることが好ましいと言える。
実験5
第3の化合物として、鉄・タングステン酸ビスマス(BFW)の代わりにマンガン・タングステン酸ビスマス(BMW)を用い、他は実験1と同様にして圧電磁器(試料5−1〜5−68)を作製した。第3の化合物は、Biを第1の構成元素、Mnを第2の構成元素とし、Wを第3の構成元素とする複合酸化物である。なお、前記試料のうち試料5−1〜5−12(*印を付した試料)は、第3の化合物であるBMWを含んでおらず、比較例に相当する。
作製した圧電磁器について、実験1と同様の手法により比誘電率εd、広がり方向の電気機械結合係数kr、d33を測定した。作製した圧電磁器の組成(各化合物に換算した組成:モル%)及び特性の測定結果を表5−1,5−2に示す。
Figure 2008239380
Figure 2008239380
第3の化合物としてBMWを用いた場合にも、BMWを含まない試料5−1〜5−12に比べて、BMWを含む試料5−13〜5−68において圧電特性の改善が見られる。ただし、第1の化合物(NBT)のモル比が0.92(92モル%)を越えた試料5−13や、第2の化合物(KBT)のモル比が0.08(8モル%)未満の試料5−27,5−41、第2の化合物(KBT)のモル比が0.23(23モル%)を越えた試料5−26,5−40,5−54、第3の化合物(BMW)のモル比が0.05(5モル%)を越えた試料5−55〜5−68においては、各特性の劣化が見られる。したがって、NBT−KBT−BMW系圧電磁器組成物においても、NBTのモル比x、KBTのモル比y、BMWのモル比zについて、0.76≦x≦0.92、0.08≦y≦0.23、0<z≦0.05、x+y+z=1とすることが好ましい。
実験6
第3の化合物として、マンガン・タングステン酸ビスマス(BMW)の代わりにマンガン・モリブデン酸ビスマス(BMM)(第3の構成元素が6価金属元素であるMo)を用い、他は実験5と同様にして圧電磁器(試料6−1,6−2)を作製した。さらに、作製した圧電磁器について、実験1と同様の手法により比誘電率εd、広がり方向の電気機械結合係数kr、d33を測定した。作製した圧電磁器の組成(各化合物に換算した組成:モル%)及び特性の測定結果を表6に示す。
Figure 2008239380
第3の化合物としてBMMを用いた場合についても、例えばNBTやKBTの組成が同等で第3の化合物(BMWやBMM)を含まない試料5−9と比較すると、特性の大幅な改善が見られる。
実験7
本実験例では、NBTとKBTのA/B比を変え、他は実験5と同様にして圧電磁器を作製した(試料7−1〜7−7)。なお、A/B比はNBT及びKBTについての値であるが、NBTとKBTのA/B比が同じ値であることから、NBTとKBTを合わせたものについても同様のA/B比となる。
作製した圧電磁器について、実験1と同様の手法により比誘電率εd、広がり方向の電気機械結合係数kr、d33を測定した。作製した圧電磁器の組成(各化合物に換算した組成:モル%)、第1の化合物及び第2の化合物全体のA/B比及び特性の測定結果を表7に示す。
Figure 2008239380
表7から明らかなように、第1の化合物と第2の化合物全体のA/B比を1以下とすることで、電気機械結合係数krや圧電定数d33の向上が見られる。これに対して、前記A/B比が1を越えた場合、電気機械結合係数krや圧電定数d33の低下が見られる。これは、前記A/B比が1を越えると得られる圧電磁器の焼結性が悪くなり、密度が向上せず、分極時に高い電圧が印加できなかったことによるものと考えられる。一方、前記A/B比が0.8の場合には、電気機械結合係数krや圧電定数d33のいずれにおいても低下が見られる。これは、前記A/B比が小さすぎるとBサイト成分であるTiが多量に余り、異相が生じてしまったことによるものと考えられる。異相の形成は圧電特性の低下に繋がる。
以上の実験結果より、第3の化合物をBMMとした場合にも、第1の化合物のモル比をα、A/B比をs、第2の化合物のモル比をβ、A/B比をtとしたときに(ただし、α+β=1)、0.85≦(α・s+β・t)≦1とすることで変位量等の圧電特性がより向上することが確認された。
実験8
本実験では、第2の化合物をチタン酸バリウム(BT)に変え、他は実験5と同様に圧電磁器を作製し、 作製した圧電磁器について、実験1と同様の手法により比誘電率εd、広がり方向の電気機械結合係数kr、d33を測定した。作製した圧電磁器の組成(各化合物に換算した組成:モル%)、及び特性の測定結果を表8に示す。
Figure 2008239380
第2の化合物としてBTを用いた場合にも、BMWを含まない試料(先の試料4−13,4−14:比較例に相当)に比べて、BMWを含む試料8−1〜8−12において圧電特性の改善が見られる。
比較実験
第1の化合物としてNBTを、第2の化合物としてBTを、第3の化合物として鉄・ニオブ酸ビスマス(BFN)を用い、各実験例と同様に圧電磁器を作製した。組成は、NBT81モル%、BT18モル%、BFN1モル%である。
各実験例と同様、1050℃で2時間の本焼成を行ったところ、得られた圧電磁器の比誘電率εd=700、電気機械結合係数kr=23.5(%)、d33=105(pC/N)であった。すなわち、第3の化合物として従来技術において提案されている鉄・ニオブ酸ビスマス(BFN)を用いた場合には、低温焼成では十分な特性が得られないことがわかった。

Claims (7)

  1. 菱面晶系ペロブスカイト構造を有する第1の化合物と、正方晶系ペロブスカイト構造を有する第2の化合物と、Biを第1の構成元素、FeまたはMnの少なくとも1種を第2の構成元素、6価金属元素を第3の構成元素として含む複合酸化物である第3の化合物とから構成される固溶体に相当する組成を有する成分を含有することを特徴とする圧電磁器組成物。
  2. 前記6価金属元素がW、Moから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の圧電磁器組成物。
  3. 前記第1の化合物がチタン酸ナトリウムビスマスであることを特徴とする請求項1または2記載の圧電磁器組成物。
  4. 前記第2の化合物がチタン酸カリウムビスマスであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の圧電磁器組成物。
  5. 前記組成を前記第1の化合物のモル比x、前記第2の化合物のモル比y、前記第3の化合物のモル比zとして換算したときに、0.76≦x≦0.91、0.08≦y≦0.23、0<z≦0.05、x+y+z=1であることを特徴とする請求項4記載の圧電磁器組成物。
  6. 前記第2の化合物がチタン酸バリウムであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の圧電磁器組成物。
  7. 前記組成を前記第1の化合物のモル比x、前記第2の化合物のモル比y、前記第3の化合物のモル比zとして換算したときに、0.85≦x≦0.99、0<y≦0.10、0<z≦0.05、x+y+z=1であることを特徴とする請求項6記載の圧電磁器組成物。
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