JP2008210907A - 積層型サーミスタおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】半導体セラミック層を(Ba1-w−xSrwREx)αTiO3+βSiO2+zMnO・・・組成式(1)で示される化合物を含む焼結体から構成する。組成式(1)において、REは、Y、La、Ce、Sm、Er、Nd、Dyからなる群から選択される少なくとも1種で表されるとともに、w、x、z、β(いずれもmol)、およびα(Baサイト/Tiサイトのmol比)は、0≦w≦0.3、0.002≦x≦0.008、0≦z≦0.0015、1.02≦α≦1.1、2.35α−2.39<β<2.35α−2.32を満足する。内部電極はNi系金属材料およびBaTiO3系材料から構成され、Ni系金属材料100重量部に対するBaTiO3系材料の割合を10〜25重量部とするようにした。
【選択図】図2
Description
PTCサーミスタは、チタン酸バリウム(BaTiO3)を主成分とし微量の希土類元素等を添加して導電性をもたせた半導体磁器と電極とを備えて構成されており、例えば回路の過電流保護素子として、あるいは温度センサ等として広く利用されている。
さらに、積層型PTCサーミスタにはPTC特性が高いことも要求されるが、抵抗を低減するための手法がPTC特性を劣化させるものであってはならない。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、低抵抗化を図りつつ酸化処理後のPTC特性を向上し、さらに酸化処理時における電極の酸化を防止することのできる積層型PTCサーミスタおよびその製造方法を提供することを目的とする。
(1)これまで単なる焼結助剤として考えられていたSiO2は、Baサイト/Tiサイトのmol比と相関があり、両者が特定の関係にあるときに、低抵抗率と高いPTC特性を兼備することができる。
(2)PTCサーミスタの主成分をなすチタン酸バリウム(BaTiO3)のBaサイトおよびTiサイトの各々を所定の半導体化剤で所定量だけ置換することにより、低抵抗率と高いPTC特性を兼備することができる。
(3)BaTiO3系材料を、所定条件下でNi系内部電極に含ませることにより、半導体セラミック層とNi系内部電極との収縮挙動を近似させることができる。しかも、この手法を採用することによって、上記(1)、さらには上記(2)により得られる低抵抗率と高いPTC特性を阻害することがない。
0≦w≦0.3
0.002≦x≦0.008
0≦z≦0.0015
1.02≦α≦1.1
2.35α−2.39<β<2.35α−2.32
0≦w≦0.3
0.001≦x+y≦0.005
0.2≦y/(x+y)≦0.8
0≦z≦0.0015
1.02≦α≦1.1
2.35α−2.39<β<2.35α−2.32
組成式(1)、(2)のいずれを採用する場合であっても、半導体セラミック層を構成する焼結体の空隙率は5〜25%であることが好ましい。
Ni系金属材料としては例えばNi粉末を、BaTiO3系材料としては例えばBaTiO3粉末を用いることができる。
積層体の焼結温度は1180〜1280℃とすることが好ましい。
図1は、本実施の形態における積層型サーミスタの構成を示す断面図である。
積層型サーミスタ1は直方体状のもので、半導体セラミック層2と内部電極3とを交互に積層して積層体を形成し、この積層体を一体焼成して本体4が構成されている。内部電極3は、Ni系金属材料およびBaTiO3系材料から構成される。本体4は、上記積層体を還元雰囲気中にて高温焼成した後、低温の酸化処理を施すことによって形成されたものである。
(Ba1−w−xSrwREx)αTiO3+βSiO2+zMnO…(1)
(Ba1−w−xSrwREx)α(Ti1−yTMy)O3+βSiO2+zMnO…(2)
組成式(1)において、REは、Y、La、Ce、Sm、Er、Nd、Dyからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。
組成式(2)において、REは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、DyおよびErなる群から選択される少なくとも1種の元素である。また、組成式(2)におけるTMは、V、NbおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。
以下、組成式(1)、組成式(2)について順次説明する。
0≦w≦0.3、
0.002≦x≦0.008、
0≦z≦0.0015、
1.02≦α≦1.1、
βは、1.02≦α≦1.1の範囲において2.35α−2.39<β[mol]<2.35α−2.32。
Baの一部をSrで置換することによりキュリー温度を変動させることができる。但し、wが増加するにつれてキュリー温度が低下し、wが0.3を超えるとキュリー温度と室温との差が小さくなるため、wの上限は0.3とする。本発明においては、25℃における抵抗率(以下、R25℃または室温抵抗率ということがある)の2倍に抵抗率がなる温度をキュリー温度と定義する。
キュリー温度は、PTCサーミスタの用途に応じて調整する必要がある。例えば、電池パック内にPTCサーミスタを入れて電池セルの温度を検出する場合があるが、電池パックに要求されるキュリー温度は80〜90℃である。よって、本発明のPTCサーミスタを電池パック用に用いる場合には、wを0.05≦w≦0.075の範囲とすればよい。また後述する実施例で示すように、所定量のSrでBaサイトの一部を置換することにより、Srで置換しない場合よりもPTC特性を向上させることができる。高いキュリー温度を得たい場合には、wは、0≦w≦0.25の範囲とすることが好ましく、さらには0.05≦w≦0.15とすることが好ましい。PTC特性を重視する場合には、wは、0.05≦w≦0.3の範囲とすることが好ましく、さらには0.1≦w≦0.3とすることが好ましい。
REは半導体化剤として機能し、組成式(1)において、その量を示すxは、0.002≦x≦0.008の範囲とする。この範囲で、高いPTC特性を得ることができる。これに対し、xが0.002未満では、半導体セラミック層2を構成する磁器を半導体化させることが困難である。また、xが0.008を超えると、室温抵抗率が高くなるとともに、PTC特性が低下してしまう。
xは、0.002≦x≦0.006の範囲とすることが好ましく、さらには0.003≦x≦0.005とすることが好ましい。REのなかでは室温抵抗率が低く、かつPTC特性が高いという理由から、Y、Smが特に好ましい。
本発明において、MnOは、PTC特性を向上させるのに有効である。ただし、zが0.0015molを超えると室温抵抗率が高くなるとともに、PTC特性が劣化してしまう。そこで本発明は組成式(1)において、MnO量を示すzを0≦z≦0.0015とする。zは、0.0002≦z≦0.0013の範囲とすることが好ましく、さらには0.0005≦z≦0.0012とすることが好ましい。
BaサイトとTiサイトのmol比を示すαが1.02未満またはαが1.1を超えると、室温抵抗率が高くなり、PTC特性が劣化してしまう。したがって、本発明のαは1.02≦α≦1.1とする。αは1.02≦α≦1.08の範囲とすることが好ましく、さらには1.02≦α≦1.05とすることが好ましい。
SiO2は焼結助剤として機能するが、BaサイトとTiサイトのmol比と相関があり、両者が特定の関係にあるときに、低抵抗率と高いPTC特性を兼備することができる。すなわち、αおよびβを2.35α−2.39<β<2.35α−2.32に制御することにより、室温抵抗率およびPTC特性を積層型サーミスタ1として好ましい値とすることができる。この式において、1.02≦α≦1.1である。
組成式(2)において、w、x、y、z、β(いずれもmol)、およびα(BaサイトとTiサイトのmol比)はそれぞれ以下を満足する。
0≦w≦0.3
0.001≦x+y≦0.005
0.2≦y/(x+y)≦0.8、
0≦z≦0.0015、
1.02≦α≦1.1、
βは、1.02≦α≦1.1の範囲において2.35α−2.39<β[mol]<2.35α−2.32。
BaサイトのREによる置換量およびTiサイトのTMによる置換量の合計を示すx+yが少なくなると室温抵抗率が高く、かつPTCジャンプが小さくなる傾向にある。また、x+yが多くなるとPTCジャンプが小さくなる。そこで本発明では、0.001≦x+y≦0.005とする。好ましいx+yは0.002≦x+y≦0.005、さらに好ましいx+yは0.002≦x+y≦0.004である。
組成式(1)によれば、25℃における抵抗率R25℃(以下、R25℃または室温抵抗率ということがある)を2×104Ωcm以下、以下の式(3)によるPTCジャンプ(桁数)を1.6以上とすることができる。
PTCジャンプ=Log10(R200℃/R25℃)…(3)
R200℃:200℃における抵抗率
R25℃:25℃における抵抗率
また、組成式(2)によれば、25℃における抵抗率R25℃(以下、R25℃または室温抵抗率ということがある)を1×103Ωcm以下、以下の式(4)によるPTCジャンプ(桁数)を4以上とすることができる。
PTCジャンプ=Log10(R250℃/R25℃)…(4)
R250℃:250℃における抵抗率
R25℃:25℃における抵抗率
上記した積層型サーミスタ1を作製するには、原料を配合した後に仮焼し、得られた仮焼体を粉砕してスラリーを作製する。そして、そのスラリーを用いて半導体セラミック層用グリーンシートを作製した後、グリーンシートの上面に内部電極用ペーストを印刷して内部電極3を形成する。次いで、グリーンシートを積層して得られた積層体を焼結し、得られた本体4に対して酸化処理(熱処理)を施すのである。本発明は、上記組成式(1)または組成式(2)の組成を採用するとともに、Ni系金属材料およびBaTiO3系材料を用いて内部電極3を形成することを特徴としている。
以下、各工程について詳述する。
次いで、この仮焼体を解砕して得た仮焼粉を粉砕用ボールとともにナイロン製ポットに入れ、これに溶剤、バインダおよび可塑剤を添加して10〜20時間混合し、所定粘度のスラリーを得る。この半導体セラミック層用スラリー中の溶剤、バインダ、可塑剤の含有量には制限はないが、例えば、溶剤の含有量は10〜50重量%、バインダの含有量は1〜10重量%程度の範囲で設定することができる。また、スラリー中には、必要に応じて分散剤等を10重量%以下の範囲で含有させることができる。
有機溶剤も公知のものを用いることができ、例えばターピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テレピン油、α−テレビネオール、エチルセロソルブ、ブチルフタレート等の溶剤を用いることができる。
内部電極用ペースト中の有機バインダおよび有機溶剤の含有量は、特に限定されず、通常の含有量、たとえば、有機バインダは5〜10重量%程度、有機溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。また、内部電極用ペースト中には必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が10重量%以下の範囲で含有されてもよい。
酸化処理後の本体4の左端面4aおよび右端面4bに外部電極用ペーストを塗布した後、大気中、550〜650℃で焼き付けて外部電極5を形成して外部電極5と内部電極3の一端面3aとを電気的に接続することにより、図1に示した積層型サーミスタ1を得ることができる。外部電極用ペーストとしては、例えばAgペーストやAg−Pdペーストを用いることができる。
(Ba0.772Sr0.223REx)1.02(Ti1−yTMy)O3+0.05SiO2+0.001MnO
RE(x):Gd
TM(y):Nb
RE酸化物:Gd2O3
TM酸化物:Nb2O5
溶剤(アセトン、MEK(メチルエチルケトン)、トルエン):
粉末100重量部に対して50重量部配合した。
バインダ(アクリル樹脂):
粉末100重量部に対して5重量部配合した。
可塑剤(ブチルベンジルフタレート):
粉末100重量部に対して2.5重量部配合した。
溶剤:Ni粉末100重量部に対して50重量部配合した。
バインダ:Ni粉末100重量部に対して5重量部配合した。
積層体を大気中、600℃で2時間加熱保持してバインダを除去した後、還元雰囲気中、1200℃で2時間、積層体を焼結し、焼結体を得た。還元雰囲気は水素と窒素の混合雰囲気とし、水素と窒素の比率は1:99とした。
続いて焼結体を大気中、800℃で2時間加熱保持することにより、酸化処理を行った。なお、酸素濃度は0.2%とした。酸化処理後の焼結体の左端面および右端面にAgペーストを塗布した後、大気中650℃で焼き付けて外部電極を形成し、図1に示す構成の積層型サーミスタ1を得た。得られた積層型サーミスタ1について、25〜250℃における抵抗率を測定し、かつ式(4)に基づきPTCジャンプを求めた。得られた試料No.1〜9、比較例1〜9の結果を表1に示す。また、試料No.1〜3、比較例1〜3の室温抵抗率およびPTCジャンプを図2に、試料No.4〜6、比較例4〜6の室温抵抗率およびPTCジャンプを図3に、試料No.7〜9、比較例7〜9の室温抵抗率およびPTCジャンプを図4に、それぞれ示す。
したがって、BaTiO3粉末添加による室温抵抗率低減およびPTC特性向上という効果を得るには、BaTiO3粉末をNi粉末に対して10〜25重量部添加することが好ましい。特に、BaTiO3粉末の添加量が20重量部のときに室温抵抗率が低く、かつPTCジャンプが大きいことから、BaTiO3粉末の添加量は20重量部近傍、具体的には15〜23重量部とすることがより好ましい。
これに対し、BaTiO3粉末を添加しなかった比較例7については、図6中、白矢印で示す箇所に電極切れが生じており、この箇所近傍の内部電極は酸化されていた。比較例7について、試料No.8と同様の条件でNi内部電極の抵抗率を測定したところ、5.0×10−5Ωcmであった。
Ni粉末に対するBaTiO3粉末の粒径比が0.17〜0.83の場合には、粒径比が0.1または1の場合よりも室温抵抗率が低く、かつ4.0桁以上という高いPTCジャンプが得られている。したがって、Ni粉末に対するBaTiO3粉末の粒径比は0.15〜0.9とすることが好ましい。
特に、粒径比が0.17、0.5のときに室温抵抗率が低く、かつPTCジャンプが大きいことから、Ni粉末に対するBaTiO3粉末の粒径比は0.15〜0.7とすることがより好ましい。
Ni粉末100重量部に対するBaTiO3粉末添加量を5重量部または30重量部とした以外は上記実施例2と同様の条件で積層型サーミスタを作製した。得られた積層型サーミスタについて、実施例2と同様に、室温抵抗率およびPTCジャンプを測定した。その結果を表3に示す。
Ni粉末に対するBaTiO3粉末添加量が30重量部、つまり本発明が推奨する範囲よりも多い場合にも、Ni粉末に対するBaTiO3粉末の粒径比を変動させても5.0×102Ωcm以下の室温抵抗率を得ることができない。
以上の結果から、Ni粉末に対するBaTiO3粉末の粒径比を0.15〜0.9とすることによる室温抵抗率低減およびPTCジャンプ向上という効果は、Ni粉末に対するBaTiO3粉末添加量が本発明が推奨する範囲内にある場合の特有の効果であることが確認できた。
RE酸化物、TM酸化物を以下の通りとし、最終組成が下記組成となるように調整するとともに、Ni粉末(平均粒径:0.6μm)100重量部に対してBaTiO3粉末(平均粒径:0.3μm)を20重量部添加して内部電極用ペーストを調製した以外は、実施例1と同様にして積層型サーミスタを作製した。
(Ba0.772Sr0.223REx)1.02(Ti1−yTMy)O3+0.05SiO2+0.001MnO
RE(x)、TM(y):表4、表5
RE酸化物:Y2O3、Gd2O3、La2O3、Ce2O3、Pr2O3、Sm2O3、Dy2O3、Er2O3、Nd2O3
TM酸化物:Nb2O5、V2O5、Ta2O5
表4、表5に示すように、REでBaサイトまたはTMでTiサイトの一方しか置換していない場合(No.11、26、27、30、33、38、39、42)には、PTCジャンプが4未満となるか、またはR25℃が1.0×103Ωcmを超える。
x+y(mol)が0.001未満(No.12〜14)か、0.005を超えると(No.27〜30)では、PTCジャンプが4未満の特性となってしまう。これに対して、x+yが0.001〜0.005の範囲(No.15、17〜22、24、25)にあると、室温抵抗率が1.0×103Ωcm以下、かつPTCジャンプが4以上の特性を得ることができる。x+yは0.003近傍が最も好ましい。
y/(x+y)についてみると、y/(x+y)が0.2未満または0.8を超える(No.16、23)と、PTCジャンプが4未満の特性となってしまう。これに対して、y/(x+y)が0.2〜0.8の範囲(No.17〜22、24、25)にあると、室温抵抗率が1.0×103Ωcm以下、かつPTCジャンプが4以上の特性を得ることができる。
下記の組成となるように原料を秤量し、Ni粉末(平均粒径:0.6μm)100重量部に対してBaTiO3粉末(平均粒径:0.3μm)を20重量部添加して内部電極用ペーストを調製した以外は、実施例1と同様にして積層型サーミスタを作製した。
(Ba0.772Sr0.223REx)α(Ti1−yTMy)O3+βSiO2+0.001MnO
x=0.0015、y=0.0015(x+y=0.0030、y/(x+y)=0.5)
得られた積層型サーミスタについて、実施例1と同様に、室温抵抗率、PTCジャンプを求め、また、焼結体の空隙率を測定した。その結果を表6に示す。
同様に、βの値が0.24molと同一であるNo.97とNo.100とを比較すると、αが1.10であるNo.100については室温抵抗率が低く、かつPTCジャンプが4とPTC特性も高いが、αが1.08であるNo.97については室温抵抗率が高く、PTCジャンプが1と低い。
表7に示すように、仮焼温度を変えることにより、室温抵抗率およびPTC特性が変動することがわかる。また、表7より、本発明の効果を享受するために、組成式(2)の組成を採用する場合には仮焼温度を1000〜1150℃とすることが好ましい。
下記の組成となるように原料を秤量し、Ni粉末(平均粒径:0.6μm)100重量部に対してBaTiO3粉末(平均粒径:0.3μm)を20重量部添加して内部電極用ペーストを調製した以外は、実施例1と同様にして積層型サーミスタを作製した。ただし、wは表8に示す通りとした。得られた積層型サーミスタについて、実施例1と同様に、室温抵抗率を測定し、かつ式(4)に基づきPTCジャンプを求め、また、焼結体の空隙率を測定した。その結果を表8に示す。
(Ba0.995−x−wSrwYx)1.02(Ti1−yNby)O3+0.05SiO2+0.001MnO
x=0.0015、y=0.0015(x+y=0.0030、y/(x+y)=0.5)
下記の組成となるように原料を秤量し、Ni粉末(平均粒径:0.6μm)100重量部に対してBaTiO3粉末(平均粒径:0.3μm)を20重量部添加して内部電極用ペーストを調製した以外は、実施例1と同様にして積層型サーミスタを作製した。ただし、zは表9に示す通りとした。得られた積層型サーミスタについて、実施例1と同様に、室温抵抗率を測定し、かつ式(4)に基づきPTCジャンプを求め、また、焼結体の空隙率を測定した。その結果を表9に示す。
(Ba0.772Sr0.223Yx)1.02(Ti1−yNby)O3+0.05SiO2+zMnO
x=0.0015、y=0.0015(x+y=0.0030、y/(x+y)=0.5)
表9に示すように、MnO量が0〜0.002molの場合には4以上というPTCジャンプを示したが、その量が0.1molになるとPTC特性が得られなくなった。
また表9に示すように、MnO量が0.001molの場合にはMnO量が0molの場合と同等の室温抵抗率を示すが、MnO量が0.002molの場合には室温抵抗率が大幅に増加する。
したがって、低い室温抵抗率および高いPTC特性を兼備するには、MnO量、つまりzは0≦z≦0.0015、さらには0.0005≦z≦0.001とすることが好ましい。
BaCO3、TiO2、SrCO3、SiO2、RE酸化物としてのY2O3、およびMn(NO3)2・6H2Oを下記の組成になるようにそれぞれ秤量し、1150℃で仮焼を行った以外は、実施例1と同様にして積層型サーミスタを作製した。得られた積層型サーミスタについて、実施例1と同様に、室温抵抗率を測定した。また式(3)に基づきPTCジャンプを求めた。その結果を表10に示す。
(Ba0.772Sr0.223Y0.005)αTiO3+0.05SiO2+0.001MnO
下記組成となるように原料の秤量を行い、Ni粉末100重量部に対してBaTiO3粉末を20重量部添加して内部電極用ペーストを調製した以外は、実施例7と同様にして積層型サーミスタを作製した。得られた積層型サーミスタについて、実施例7と同様に室温抵抗率を測定し、また式(3)に基づきPTCジャンプを求めた。その結果を表12に示す。
(Ba0.772Sr0.223Y0.005)αTiO3+βSiO2+0.0010MnO
また、αに対してβが小さすぎても、また大きすぎても室温抵抗率および/またはPTC特性が劣化してしまう。例えばβの値が0.05molと同一である試料No.133と試料No.137とを比較すると、αが1.02である試料No.133については室温抵抗率が1.4×10[Ωcm]と低くかつPTCジャンプが3.2桁という特性を示すが、αが1.04である試料No.137についてはPTC特性が不十分である。つまり、0.05molというSiO2添加量はαが1.02の場合には適量であるが、αが1.04の場合には少なすぎるといえる。
同様に、βの値が0.24molと同一である試料No.148と試料No.151とを比較すると、αが1.10である試料No.151については室温抵抗率が低くかつPTC特性が高いが、αが1.08である試料No.148については室温抵抗率が高すぎ、PTC特性ではなくNTC特性を示した。つまり、0.24molというSiO2添加量はαが1.08の場合には多すぎるが、モル比Baサイト/Tiサイトが1.10の場合には適量であるといえる。
したがって、組成式(1)を採用する場合も、βは単独で決定すべきではなく、αに応じて決定すべきである。本発明者が表12の結果を整理した結果、所望の室温抵抗率およびPTC特性を兼備した試料については、2.35α−2.39<β<2.35α−2.32(但し、1.02≦α≦1.1)を満足することを確認した。
下記組成となるように原料の秤量を行い、Ni粉末100重量部に対してBaTiO3粉末を20重量部添加して内部電極用ペーストを調製した以外は、実施例7と同様にして積層型サーミスタを作製した。得られた積層型サーミスタについて、実施例7と同様に室温抵抗率を測定し、また式(3)に基づきPTCジャンプを求めた。その結果を表13に示す。
(Ba0.995−wSrwY0.005)1.02TiO3+0.05SiO2+0.0010MnO
下記組成になるように原料の秤量を行うとともに、xの値を0.003mol、0.005molまたは0.010molとした。REとしては本発明が推奨するLa、Nd、Sm、Yの他、比較例としてYbを使用した。そしてNi粉末100重量部に対してBaTiO3粉末を20重量部添加して内部電極用ペーストを調製した以外は、実施例7と同様にして積層型サーミスタを作製した。得られた積層型サーミスタについて、実施例7と同様に室温抵抗率を測定し、また式(3)に基づきPTCジャンプを求めた。さらに密度を測定した。それらの結果を表14に示す。なお、室温抵抗率の欄で「高」と表示されているのは、室温抵抗率が1×109Ωcm以上のものである。
(Ba0.777−xSr0.223REx)1.00TiO3+0.05SiO2+0.0010MnO
(Ba0.777−xSr0.223REx)1.02TiO3+0.05SiO2+0.0010MnO
なお、1300℃で還元焼成した場合には、各試料とも高い密度を示すが、0.5以上のPTCジャンプを得ることはできなかった。1300℃で還元焼成した場合には、焼結体が緻密であるためにその後に酸化処理を施したとしても、酸素が焼結体の内部に浸透しにくく、酸化処理が十分に進行しないためであると推察される。
下記組成となるように原料粉末の秤量を行い、Ni粉末100重量部に対してBaTiO3粉末を20重量部添加して内部電極用ペーストを調製した以外は、実施例7と同様にして積層型サーミスタを作製した。得られた積層型サーミスタについて、実施例7と同様に室温抵抗率を測定し、また式(3)に基づきPTCジャンプを求めた。その結果を表15に示す。
(Ba0.772Sr0.223Y0.005)1.02TiO3+0.05SiO2+zMnO
したがって、低い室温抵抗率および高いPTC特性を兼備するには、MnO量、つまりzは0≦z≦0.0015、さらには0.0005≦z≦0.001とすることが好ましい。
(Ba0.772Sr0.223Y0.005)αTiO3+βSiO2+0.0010MnO
内部電極を作製する際にBaTiO3粉末を添加しなかった以外は、上記実施例13と同様の条件で積層型サーミスタを作製した。得られた積層型サーミスタについて、実施例13と同様に室温抵抗率を測定し、また式(3)に基づきPTCジャンプを求めた。その結果を表17に示す。
一方、表17に示すように、Ni内部電極にBaTiO3粉末を含有させなかった場合には、室温抵抗率が高く、実用的なPTCサーミスタを得ることができなかった。
Claims (7)
- 半導体セラミック層と内部電極とが交互に積層されるとともに、前記内部電極と電気的に接続された外部電極とを有し、正の抵抗温度特性を有する積層型サーミスタであって、
前記内部電極はNi系金属材料およびBaTiO3系材料から構成され、前記Ni系金属材料100重量部に対する前記BaTiO3系材料の割合が10〜25重量部であり、
前記半導体セラミック層は、(Ba1-w−xSrwREx)αTiO3+βSiO2+zMnO・・・組成式(1)で示される化合物を含む焼結体から構成され、
前記組成式(1)において、
前記REは、Y、La、Ce、Sm、Er、Nd、Dyからなる群から選択される少なくとも1種で表されるとともに、
w、x、z、β(いずれもmol)、およびα(Baサイト/Tiサイトのmol比)は、以下を満足することを特徴とする積層型サーミスタ。
0≦w≦0.3
0.002≦x≦0.008
0≦z≦0.0015
1.02≦α≦1.1
2.35α−2.39<β<2.35α−2.32 - 半導体セラミック層と内部電極とが交互に積層されるとともに、前記内部電極と電気的に接続された外部電極とを有し、正の抵抗温度特性を有する積層型サーミスタであって、
前記内部電極はNi系金属材料およびBaTiO3系材料から構成され、前記Ni系金属材料100重量部に対する前記BaTiO3系材料の割合が10〜25重量部であり、
前記半導体セラミック層は、(Ba1−w−xSrwREx)α(Ti1−yTMy)O3+βSiO2+zMnO…組成式(2)で示される化合物を含む焼結体から構成され、
前記組成式(2)において、
前記REは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、DyおよびErからなる群から選択される少なくとも1種の元素、
前記TMは、V、NbおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
w、x、y、z、β(いずれもmol)、およびα(Baサイト/Tiサイトのmol比)は、以下を満足することを特徴とする積層型サーミスタ。
0≦w≦0.3
0.001≦x+y≦0.005
0.2≦y/(x+y)≦0.8
0≦z≦0.0015
1.02≦α≦1.1
2.35α−2.39<β<2.35α−2.32 - 前記半導体セラミック層を構成する前記焼結体の空隙率は5〜25%であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層型サーミスタ。
- 半導体セラミック層とNi系金属材料から構成される内部電極とが交互に積層されるとともに、前記内部電極と電気的に接続された外部電極とを有し、正の抵抗温度特性を有する積層型サーミスタの製造方法であって、
前記Ni系金属材料と、前記Ni系金属材料の平均粒径に対して0.15〜0.9倍の平均粒径を有するBaTiO3系材料とを用い、前記Ni系金属材料100重量部に対する前記BaTiO3系材料の割合が10〜25重量部である内部電極用ペーストを作製する工程と、
前記半導体セラミック層形成用のシートと前記内部電極用ペーストとが交互に積層された積層体を得る工程と、
前記積層体を還元雰囲気中で焼結し、焼結体を得る工程と、
前記焼結体を酸化雰囲気中で熱処理する工程と、を備え、
前記半導体セラミック層は、(Ba1-w−xSrwREx)αTiO3+βSiO2+zMnO・・・組成式(1)で示される化合物を含む前記焼結体から構成され、
前記組成式(1)において、
前記REは、Y、La、Ce、Sm、Er、Nd、Dyからなる群から選択される少なくとも1種で表されるとともに、
w、x、z、β(いずれもmol)、およびα(Baサイト/Tiサイトのmol比)は、以下を満足することを特徴とする積層型サーミスタの製造方法。
0≦w≦0.3
0.002≦x≦0.008
0≦z≦0.0015
1.02≦α≦1.1
2.35α−2.39<β<2.35α−2.32 - 半導体セラミック層とNi系金属材料から構成される内部電極とが交互に積層されるとともに、前記内部電極と電気的に接続された外部電極とを有し、正の抵抗温度特性を有する積層型サーミスタの製造方法であって、
前記Ni系金属材料と、前記Ni系金属材料の平均粒径に対して0.15〜0.9倍の平均粒径を有するBaTiO3系材料とを用い、前記Ni系金属材料100重量部に対する前記BaTiO3系材料の割合が10〜25重量部である内部電極用ペーストを作製する工程と、
前記半導体セラミック層形成用のシートと前記内部電極用ペーストとが交互に積層された積層体を得る工程と、
前記積層体を還元雰囲気中で焼結し、焼結体を得る工程と、
前記焼結体を酸化雰囲気中で熱処理する工程と、を備え、
前記半導体セラミック層は、(Ba1−w−xSrwREx)α(Ti1−yTMy)O3+βSiO2+zMnO…組成式(2)で示される化合物を含む焼結体から構成され、
前記組成式(2)において、
前記REは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、DyおよびErからなる群から選択される少なくとも1種の元素、
前記TMは、V、NbおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
w、x、y、z、β(いずれもmol)、およびα(Baサイト/Tiサイトのmol比)は、以下を満足することを特徴とする積層型サーミスタの製造方法。
0≦w≦0.3
0.001≦x+y≦0.005
0.2≦y/(x+y)≦0.8
0≦z≦0.0015
1.02≦α≦1.1
2.35α−2.39<β<2.35α−2.32 - 前記Ni系金属材料はNi粉末であり、前記BaTiO3系材料はBaTiO3粉末であることを特徴とする請求項4または5に記載の積層型サーミスタの製造方法。
- 前記積層体は1180〜1280℃で焼結されることを特徴とする請求項4〜6に記載の積層型サーミスタの製造方法。
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