JP2006347799A - 誘電体セラミック、積層セラミックコンデンサ及び積層セラミックコンデンサの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 BaTiO3を主成分とし、Vを含有する誘電体セラミックにおいて、Vの価数が3.8〜4.1であることを特徴とする。また、セラミック誘電体層と内部電極層とを交互に積層した積層チップの表面に外部電極を備えた積層セラミックコンデンサにおいて、前記セラミック誘電体層が、BaTiO3を主成分とし、Vを含有する誘電体セラミックからなり、Vの価数が3.8〜4.1であることを特徴とする。その積層セラミックコンデンサの製造方法において、誘電体セラミック中に含有されたVの価数を3.8〜4.1に調整することを特徴とする。
Description
このような現象について鋭意研究したところ、Vは還元焼成雰囲気下において、価数が3〜5価にわたって幅広い状態で存在することがわかった。そのため、電子のやり取りによるホッピング伝導が生じて、絶縁抵抗が低下することがわかった。また、3価のVは、BaTiO3における拡散性が高く、Ti4+との置換反応が進む。そのため、3価のVが多いと、コアシェル構造を破壊しやすくなり、比誘電率の低下、温度特性の悪化が起こることがわかった。一方、5価のVは、BaTiO3に拡散しにくく、Baと二次相を形成してバナジウム酸バリウムとして析出する。そのため5価のVが多いと、誘電率の低下と、耐還元性と再酸化性が損なわれることによる寿命特性の悪化が生じてしまうことがわかった。
(1)BaTiO3を主成分とし、Vを含有する誘電体セラミックにおいて、Vの価数が3.8〜4.1であることを特徴とする誘電体セラミックである。
(2)V4+を30%以上含有することを特徴とする前記(1)の誘電体セラミックである。
(3)さらに、希土類酸化物を含有することを特徴とする前記(1)又は(2)の誘電体セラミックである。
(4)さらに、MgO、CaO及びSrOから選ばれる一種又は二種以上のアルカリ土類酸化物を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一項の誘電体セラミックである。
(5)セラミック誘電体層と内部電極層とを交互に積層した積層チップの表面に外部電極を備えた積層セラミックコンデンサにおいて、前記セラミック誘電体層が、BaTiO3を主成分とし、Vを含有する誘電体セラミックからなり、Vの価数が3.8〜4.1であることを特徴とする積層セラミックコンデンサである。
(6)内部電極が卑金属であることを特徴とする前記(5)の積層セラミックコンデンサである。
(7)前記誘電体セラミックが、V4+を30%以上含有することを特徴とする前記(5)又は(6)の積層セラミックコンデンサである。
(8)前記誘電体セラミックが、さらに、希土類酸化物を含有することを特徴とする前記(5)〜(7)のいずれか一項の積層セラミックコンデンサである。
(9)前記誘電体セラミックが、さらに、MgO、CaO及びSrOから選ばれる一種又は二種以上のアルカリ土類酸化物を含有することを特徴とする前記(5)〜(8)のいずれか一項の積層セラミックコンデンサである。
(10)BaTiO3を主成分とし、V酸化物を含有する仮焼物に、バインダ及び溶剤を加えてセラミックグリーンシートを作製し、得られた前記シートの表面に所定パターンで内部電極を印刷し、積層し、個々の積層チップに切断し、脱バインダ処理を行い、焼成し、外部電極を形成し、再酸化処理する積層セラミックコンデンサの製造方法において、誘電体セラミック中に含有されたVの価数を3.8〜4.1に調整することを特徴とする積層セラミックコンデンサの製造方法である。
(11)前記仮焼物が、さらに、希土類酸化物を含有することを特徴とする前記(10)の積層セラミックコンデンサの製造方法である。
(12)前記仮焼物が、さらに、MgO、CaO及びSrOから選ばれる一種又は二種以上のアルカリ土類酸化物を含有することを特徴とする前記(10)又は(11)の積層セラミックコンデンサの製造方法である。
(13)前記内部電極を卑金属とすることを特徴とする前記(10)〜(12)のいずれか一項の積層セラミックコンデンサの製造方法である。
(14)Vの価数を調整する手段は、焼成時の雰囲気で酸素分圧を調整することであることを特徴とする前記(10)〜(13)のいずれか一項の積層セラミックコンデンサの製造方法である。
(15)Vの価数を調整する手段は、再酸化処理の雰囲気の酸素濃度を調整することであることを特徴とする前記(10)〜(14)のいずれか一項の積層セラミックコンデンサの製造方法である。
(16)Vの価数を調整する手段は、仮焼物に含有させるV酸化物に、価数の異なる2種類以上のV酸化物を用いることであることを特徴とする前記(10)〜(15)のいずれか一項の積層セラミックコンデンサの製造方法である。
Vの価数と存在割合の算出法には、XPSによるV2pスペクトル観測結果からスペクトル分離を用いる。
また、4価に近い状態にすることで、BaTiO3への過剰な拡散あるいはバナジウム酸バリウム相の析出が抑制され、適度な濃度勾配があるシェル相を持ったコアシェル構造を形成することができる。
Vの添加量は、BaTiO3100molに対して0.05〜5.0molが好ましい。
主成分のBaTiO3になる粉末と副成分のV酸化物等になる粉末をボールミル等で混合粉砕したセラミック材料粉末を仮焼し、BaTiO3とV酸化物等からなる仮焼物を製造する。仮焼温度は800℃程度が好ましい。
なお、V酸化物は、V2O5の他、V2O4等価数の異なるものを混合したものを適宜用いても良い。
得られた仮焼物にバインダ及び溶剤を加え、これを数時間ボールミル等で撹拌・混合することにより適度な粘度をもったスラリーを作製する。次に、ドクターブレード法等により、スラリーからセラミックグリーンシートを作製する。このドクターブレード法では、PET等のベースフィルム上にスラリーを流し、その厚みをドクターブレードとの隙間で調整する。この後、これを乾燥させて所定の厚みのセラミックグリーンシートを得る。
予め用意された導体ペーストをスクリーン印刷法等の印刷手法によってグリーンシートの表面に所定パターン、所定厚で印刷することにより内部電極層とする。内部電極としてはNi等の卑金属が好ましい。
印刷後のグリーンシートを所定の単位寸法でカットしてベースフィルムから取り出し、取り出されたグリーンシートを必要枚数積み重ねる。
積み重ねられたグリーンシートを仮圧着し、さらに本圧着する。
本圧着後の積層グリーンシートを回転ブレードや昇降ブレード等のブレードによって個々の積層チップに切断する。
切断した積層チップを脱バインダ炉に投入して、所定の温度及び時間等の条件下で積層チップ本体(グリーンセラミック層)に含まれているバインダを除去する。雰囲気としては、N2雰囲気が好ましい。
積層チップを焼成炉に投入して、所定の温度及び時間等の条件下で焼成する。焼成温度は、1150℃〜1350℃が好ましい。
焼成時の雰囲気は、酸素分圧が10-9atm(10-4Pa)〜10-12atm(10-7Pa)が一般的であるが、Vの価数を制御するため、例えばNi−NiOの平衡酸素分圧相当の10-8atm(10-3Pa)付近までの雰囲気が適用可能である。なお、Vの価数制御は、焼成温度の昇温速度あるいは降温速度、後述の再酸化処理工程の条件によっても可能である。
予め用意された導体ペーストをローラ塗布法やディップ法等の塗布手法によって、焼成された積層チップ両端部に所定厚及び所定形状で塗布し、焼付けて外部電極を形成する。外部電極としてはNi、Cu、Ag等が好ましい。
なお、外部電極ペーストの塗布を焼成前の積層チップの段階で行い、グリーンセラミック層、内部電極層及び外部電極を同時焼成してもよい。
焼成工程の後で、焼成温度よりも低い温度の酸化性雰囲気下で再酸化処理を行う。再酸化処理の温度は600〜800℃が好ましい。
酸化性雰囲気としては、大気雰囲気に限定することなく、例えば、N2や、N2に数ppmのO2を混合したような低酸素濃度の雰囲気も使用することができる。
どのような温度あるいはどのような酸素濃度の雰囲気にするかは、内部電極(Ni等の卑金属)の酸化、あるいはVの価数制御などを考慮して種々変更する必要がある。
次に、この混合物を脱水し乾燥して、空気中、800℃の条件で仮焼し、仮焼物を得た。この仮焼物をエタノールで湿式解砕し、乾燥した。これに有機バインダ、溶剤を加えてドクターブレード法で約4μmの厚みでシート化した。
次に、このシートにNiの内部電極を印刷法により形成した。このシートを10層に積層して、熱圧着して積層体を得、縦3.2mm×横1.6mmの3216形状に切断した。
そして、得られた積層体を、N2雰囲気で脱バインダ処理した後、酸素分圧が2.5×10-9atm(=2.5×10-4Pa)〜2.0×10-8atm(=2.0×10-3Pa)の範囲で1200℃にて熱処理し、チップ焼結体を得た。
得られた焼結体にAg外部電極をディップで形成し、その後、チップ焼結体をN2/600〜800℃の条件で再酸化処理を行い、積層セラミックコンデンサを得た。
Claims (16)
- BaTiO3を主成分とし、Vを含有する誘電体セラミックにおいて、Vの価数が3.8〜4.1であることを特徴とする誘電体セラミック。
- V4+を30%以上含有することを特徴とする請求項1に記載の誘電体セラミック。
- さらに、希土類酸化物を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の誘電体セラミック。
- さらに、MgO、CaO及びSrOから選ばれる一種又は二種以上のアルカリ土類酸化物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の誘電体セラミック。
- セラミック誘電体層と内部電極層とを交互に積層した積層チップの表面に外部電極を備えた積層セラミックコンデンサにおいて、前記セラミック誘電体層が、BaTiO3を主成分とし、Vを含有する誘電体セラミックからなり、Vの価数が3.8〜4.1であることことを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
- 内部電極が卑金属であることを特徴とする請求項5に記載の積層セラミックコンデンサ。
- 前記誘電体セラミックが、V4+を30%以上含有することを特徴とする請求項5又は6に記載の積層セラミックコンデンサ。
- 前記誘電体セラミックが、さらに、希土類酸化物を含有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサ。
- 前記誘電体セラミックが、さらに、MgO、CaO及びSrOから選ばれる一種又は二種以上のアルカリ土類酸化物を含有することを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサ。
- BaTiO3を主成分とし、V酸化物を含有する仮焼物に、バインダ及び溶剤を加えてセラミックグリーンシートを作製し、得られた前記シートの表面に所定パターンで内部電極を印刷し、印刷したシートを積層し、個々の積層チップに切断し、脱バインダ処理を行い、焼成し、外部電極を形成し、再酸化処理する積層セラミックコンデンサの製造方法において、誘電体セラミック中に含有されたVの価数を3.8〜4.1に調整することを特徴とする積層セラミックコンデンサの製造方法。
- 前記仮焼物が、さらに希土類酸化物を含有することを特徴とする請求項10に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
- 前記仮焼物が、さらにMgO、CaO及びSrOから選ばれる一種又は二種以上のアルカリ土類酸化物を含有することを特徴とする請求項10又は11に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
- 前記内部電極を卑金属とすることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
- Vの価数を調整する手段は、焼成時の雰囲気で酸素分圧を調整することであることを特徴とする請求項10〜13のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
- Vの価数を調整する手段は、再酸化処理の雰囲気の酸素濃度を調整することであることを特徴とする請求項10〜14のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
- Vの価数を調整する手段は、仮焼物に含有させるV酸化物に、価数の異なる2種類以上のV酸化物を用いることであることを特徴とする請求項10〜15のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
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