JP2009177017A - 積層型ptcサーミスタ及びその製造方法 - Google Patents

積層型ptcサーミスタ及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低い室温抵抗率と大きいPTCジャンプとを高水準で両立可能な積層型PTCサーミスタを提供すること。
【解決手段】積層型PTCサーミスタ1は、半導体セラミック層2と内部電極3とが積層されている本体4と、内部電極3と電気的に接続され、本体4の両端面4a,4bにそれぞれ設けられる外部電極5a,5bと、を備える。半導体セラミック層2は、一般式(1)のチタン酸バリウム系化合物を主成分とする空隙率が5〜25%の焼結体で構成され、チタン酸バリウム系化合物全体に対してアルカリ金属換算で0.01〜0.09質量%のアルカリ金属化合物を含有する。
(Ba1−w−xSrREα(Ti1−yTM)O+βSiO+zMnO
・・・(1)
[REはY,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Gd,Dy,Er、TMはV,Nb,Taから選択される元素、w,x,y,z,β,αは所定範囲の数値をそれぞれ示す。]
【選択図】図1

Description

本発明は、積層型PTCサーミスタ及びその製造方法に関する。
サーミスタとしては、正の抵抗温度特性を有する、つまり温度の上昇に対して抵抗が増加するPTC(Positive Temperature coefficient)サーミスタが知られている。このPTCサーミスタは、自己制御型発熱体、過電流保護素子、温度センサ等として利用されている。従来、このようなPTCサーミスタとして、主成分のチタン酸バリウム(BaTiO)に微量の希土類元素等を添加して導電性をもたせた半導体セラミック層と、半導体セラミック層を挟む一対の外部電極とを備えた単板型のPTCサーミスタが用いられてきた。
近年、PTCサーミスタに対しては、消費電力を抑制するため、非作動時の常温における抵抗率(以下、便宜上「室温抵抗率」という。)が十分に小さいことが強く望まれている。PTCサーミスタの室温抵抗率は電極面積に反比例するため、電極面積が大きいほど室温抵抗率を低減することができる。そこで、従来の単板型のPTCサーミスタに代わるものとして、複数の半導体セラミック層と複数の内部電極とが交互に積層された積層型PTCサーミスタが提案されている。積層型PTCサーミスタでは、内部電極を複数積層することによって電極面積を大幅に増やすことができるため、室温抵抗率を低下させることができる。
積層型PTCサーミスタの一例としては、下記特許文献1に、チタン酸バリウム系半導体セラミック層と卑金属系内部電極とが交互に積層された電子部品本体と、電子部品本体の端面上に形成された外部電極とを有する積層型PTCサーミスタであって、電子部品本体にガラス成分を含浸させて形成されたものである積層型PTCサーミスタが開示されている。特許文献1には、このような積層型PTCサーミスタは、低抵抗及び高耐電圧を有することが示されている。
特許第3636075号公報
ところで、PTCサーミスタには、室温抵抗率が低いことに加え、この室温抵抗率に対する作動時の抵抗率(以下、便宜上「高温抵抗率」という。)の比率(以下、便宜上「PTCジャンプ」という。)が極力大きいことも求められる。PTCジャンプが大きいと、温度変化に対する抵抗変化が大きくなるため、より確実な動作が可能となる。しかしながら、本発明者らが検討を行ったところ、上記特許文献1に示すような積層型PTCサーミスタとした場合は、室温抵抗率を低下させることができる一方、十分なPTCジャンプが得られないことが判明した。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低い室温抵抗率と大きいPTCジャンプとを高水準で両立可能な積層型PTCサーミスタを提供することを目的とする。また、そのような特性を有する積層型PTCサーミスタの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため、積層型PTCサーミスタの半導体セラミック層を構成する焼結体の組成を種々検討し、低い室温抵抗率と大きいPTCジャンプとを兼ね備える組成を見出した。そして、さらに優れた積層型PTCサーミスタを見出すべく鋭意検討したところ、焼結体に特定濃度のアルカリ金属化合物を含有させることによって、室温抵抗率とPTCジャンプとをさらに高いレベルで両立できることが分かった。
すなわち、本発明は、半導体セラミック層と内部電極とが交互に積層されている本体と、前記内部電極と電気的に接続され、前記本体の両端面に設けられている一対の外部電極とを備える積層型PTCサーミスタであって、上記半導体セラミック層は、下記一般式(1)で示されるチタン酸バリウム系化合物を主成分とする空隙率が5〜25%の焼結体で構成されており、
(Ba1−w−xSrREα(Ti1−yTM)O+βSiO+zMnO
・・・(1)
上記一般式(1)において、REは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy及びErからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、TMは、V、Nb及びTaからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、w、x、y、z、β(いずれもmol)、及びα(Baサイト/Tiサイトのmol比)は、下記式(2)〜(8)を満足し、上記焼結体は、上記チタン酸バリウム系化合物全体に対して、アルカリ金属換算で0.01〜0.09質量%のアルカリ金属化合物を含有する積層型PTCサーミスタを提供する。
0≦w≦0.3 (2)
0.001≦x+y≦0.005 (3)
0.2≦y/(x+y)≦0.8 (4)
0≦z≦0.0015 (5)
0.99≦α≦1.1 (6)
1.02≦α≦1.1の場合、
2.35α−2.39<β<2.35α−2.32 (7)
0.99≦α<1.02の場合、
0≦β<2.35α−2.32 (8)
このような積層型PTCサーミスタは、半導体セラミック層を構成する焼結体の主成分であるチタン酸バリウム(BaTiO)のBaサイト及びTiサイトの各々が所定の半導体化剤で所定量だけ置換されているため、低い室温抵抗率と大きいジャンプとを兼備することができる。また、これまで単なる焼結助剤として考えられていたSiOは、Baサイト/Tiサイトのmol比と相関があり、両者が特定の関係にあるときに、低い室温抵抗率と大きいPTCジャンプとを兼備することができる。そして、かかる関係を満足する上記一般式(1)で表されるチタン酸バリウム系化合物を主成分とする焼結体に、特定量のアルカリ金属化合物を含有させることによって、低い室温抵抗率と大きいPTCジャンプとを高水準で両立させることができる。
本発明者らは、かかる特性が発揮される理由として、焼結体中のアルカリ金属化合物の含有量を特定の範囲にした場合に、焼結体の粒界や空隙部分にアルカリ金属化合物が偏析し易くなり、その結果、大きなPTCジャンプが得られるものと考えている。ただし、PTCジャンプが向上するメカニズムはこれに限定されるものではない。
本発明において、上記アルカリ金属化合物の少なくとも一部は、上記焼結体の粒界に存在することが好ましい。これによって、一層大きなPTCジャンプを得ることができる。また、焼結体に含まれるアルカリ金属化合物の大部分が、上記焼結体の粒界に存在することが好ましい。
本発明において、上記アルカリ金属化合物は、上記チタン酸バリウム系化合物の粒子に付着したNaNO、NaOH、NaCO、NaSiO、LiO、LiOH、LiNO、LiSO、KOH、KNO、及びKCOからなる群より選択される少なくとも一つのアルカリ金属塩を、酸化雰囲気中で酸化することによって得られるものであることが好ましい。このようなアルカリ金属塩は、それ自体が酸化物であるもの、又は酸化雰囲気中で容易に酸化物となりやすいものであることから、焼結体の主成分であるチタン酸バリウム系化合物の粒子に付着することによって、焼結体の粒界部分に効率的に酸化物を形成することが可能となる。これによって、PTCジャンプを一層向上させることができる。
本発明では、上記一般式(1)のx及びyが下記式(9)及び(10)を満足することが好ましい。これによって、室温抵抗率を一層低減しつつPTCジャンプを一層向上させることができる。
0.002≦x+y≦0.005 (9)
0.3≦y/(x+y)≦0.7 (10)
本発明では、上記REがY及びGdの1種又は2種であり、上記TMがNbであることが好ましい。これによって、室温抵抗率を一層低減しつつPTCジャンプを一層向上させることができる。
本発明では、上記一般式(1)において、α、β、w及びzが下記式(11)〜(14)を満足することが好ましい。これによって、室温抵抗率を一層低減しつつPTCジャンプを一層向上させることができる。
1.02≦α≦1.08 (11)
2.35α−2.37≦β≦2.35α−2.34 (12)
0.05≦w≦0.3 (13)
0.0002≦z≦0.0013 (14)
また、本発明では、半導体セラミック層と内部電極とが交互に積層されている本体と、内部電極と電気的に接続され、本体の両端面にそれぞれ設けられている外部電極とを備える積層型PTCサーミスタの製造方法であって、チタン酸バリウム系化合物の原料粉末を仮焼した仮焼粉及びバインダを含む、半導体セラミック層の前駆体層と、内部電極の前駆体層と、が交互に積層された積層体を得る工程と、積層体を還元雰囲気中で焼成してチタン酸バリウム系化合物を得る工程と、前記チタン酸バリウム系化合物の粒子にアルカリ金属塩を付着させて酸化雰囲気中で再酸化する工程と、を有しており、上記半導体セラミック層は、下記一般式(1)で示されるチタン酸バリウム系化合物を主成分とする空隙率が5〜25%の焼結体を備えており、
(Ba1−w−xSrREα(Ti1−yTM)O+βSiO+zMnO
・・・(1)
上記一般式(1)において、REは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy及びErからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、TMは、V、Nb及びTaからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、w、x、y、z、β(いずれもmol)、及びα(Baサイト/Tiサイトのmol比)は、下記式(2)〜(8)を満足し、上記焼結体は、上記チタン酸バリウム系化合物全体に対して、アルカリ金属換算で0.01〜0.09質量%のアルカリ金属化合物を含有する積層型PTCサーミスタの製造方法を提供する。
0≦w≦0.3 (2)
0.001≦x+y≦0.005 (3)
0.2≦y/(x+y)≦0.8 (4)
0≦z≦0.0015 (5)
0.99≦α≦1.1 (6)
1.02≦α≦1.1の場合、
2.35α−2.39<β<2.35α−2.32 (7)
0.99≦α<1.02の場合、
0≦β<2.35α−2.32 (8)
上記製造方法により、低い室温抵抗率と大きなPTCジャンプとを高水準で両立可能な積層型PTCサーミスタを製造することができる。
本発明の製造方法によって得られる積層型PTCサーミスタは、アルカリ金属化合物の少なくとも一部が、前記半導体セラミック層に備えられる前記焼結体の粒界に存在することが好ましい。これによって、一層大きなPTCジャンプを有する積層型PTCサーミスタを得ることができる。
また、本発明の製造方法では、上記アルカリ金属塩が、NaNO、NaOH、NaCO、NaSiO、LiO、LiOH、LiNO、LiSO、KOH、KNO、KCOからなる群より選択される少なくとも一つであることが好ましい。このようなアルカリ金属塩は、焼結体の粒界に容易に偏析する傾向がある。このように粒界に偏析したアルカリ金属は、焼結体の再酸化工程において、酸素が粒界に化学吸着することを促す助剤として機能すると考えられる。そのため、再酸化工程においては、アルカリ金属によって粒界の酸化が促進され、その結果として大きなPTCジャンプが得られるようになると考えられる。
本発明によれば、低い室温抵抗率と大きいPTCジャンプとを高水準で両立可能な積層型PTCサーミスタを提供することができる。また、そのような特性を備える積層型PTCサーミスタの製造方法を提供することができる。
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な一実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
積層型PTCサーミスタ1は、図1に示すように、半導体セラミック層2と、内部電極3とが交互に積層された直方体状の本体4と、本体4の端面4a,4bにそれぞれ形成された一対の外部電極5a,5bとを有する。なお、端面4a,4bは、半導体セラミック層2と内部電極3との境界面に直交し、かつ半導体セラミック層2及び内部電極3の積層方向に平行な本体4の一対の面である。
本体4の端面4a,4bには、各内部電極3の一方の電極端面3aのみが交互に露出しており、他方の電極端面3bは半導体セラミック層2の内部に位置し、本体4内に埋設されている。外部電極5aは、本体4の端面4aにおいて、内部電極3の電極端面3aと電気的に接続され、外部電極5bは、本体4の端面4bにおいて、内部電極3の電極端面3aと電気的に接続されている。
すなわち、PTCサーミスタ1は、半導体セラミック層2、及びこの半導体セラミック層2内に埋設された互いに平行な複数の内部電極3を有する本体4と、この本体4の両端面4a,4bを覆うように設けられ、複数の内部電極3の少なくとも一つの電極端面3aと電気的に接続されている外部電極5aとを備える。
半導体セラミック層2は下記の一般式(1)で示される化合物を主成分とする焼結体から構成される。
(Ba1−w−xSrREα(Ti1−yTM)O+βSiO+zMnO
・・・(1)
一般式(1)において、REは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy及びErからなる群より選択される少なくとも1種の元素である。また、TMは、V、Nb及びTaからなる群より選択される少なくとも1種の元素である。
一般式(1)において、(Ba1−w−xSrREα(Ti1−yTM)Oの項は、チタン酸バリウム(BaTiO)のBaサイトの一部をSr、REで置換し、さらにTiサイトの一部をTMで置換することを示している。ただし、SrによるBaサイトの置換は任意である。本実施形態において、Baサイトの一部をREで置換し、かつTiサイトの一部をTMで置換することにより、低抵抗化を図りつつ優れたPTC特性を示す積層型PTCサーミスタとすることができる。Baサイトの一部をREで置換すること、またはTiサイトの一部をTMで置換するだけでは、この効果を得ることができない。
なお、本発明におけるPTCジャンプは、下記式(15)によって計算することができる。下記式(15)で計算される値が大きいほど、PTCジャンプが大きくPTC特性に優れている。なお、式(15)におけるRT℃の測定温度(T℃)としては、例えば200〜250℃とすることができる。
PTCジャンプ=Log10(RT℃/R25℃) (15)
T℃:T℃における抵抗率(高温抵抗率)
25℃:25℃における抵抗率(室温抵抗率)
一般式(1)において、Baサイトの一部をSr、REで置換する量、さらにTiサイトの一部をTMで置換する量をそれぞれ示すw、x及びyは、下記式(2)〜(4)を満足する。
0≦w≦0.3 (2)
0.001≦x+y≦0.005 (3)
0.2≦y/(x+y)≦0.8 (4)
<Sr置換量[w]について>
Baの一部をSrで置換することによりキュリー温度を変動させることができる。但し、xが増加するにつれてキュリー温度が低下し、xが0.3を超えるとキュリー温度と室温との差が小さくなるため、xの上限は0.3とすることが好ましい。なお、本発明においては、抵抗率が室温抵抗率R25℃の2倍になる温度をキュリー温度とする。キュリー温度は、PTCサーミスタの用途に応じて調整する必要がある。例えば、電池パック内にPTCサーミスタを入れて電池セルの温度を検出する場合があるが、電池パックに要求されるキュリー温度は80〜90℃である。よって、本発明のPTCサーミスタを電池パック用に用いる場合には、wを0.05≦w≦0.075の範囲とすればよい。また後述する実施例で示すように、所定量のSrでBaサイトの一部を置換することにより、Srで置換しない場合よりもPTC特性を向上させることができる。高いキュリー温度を得たい場合には、wは、0≦w≦0.25の範囲とすることが好ましく、さらには0.05≦w≦0.15とすることが好ましい。PTC特性を重視する場合には、wは、0.05≦w≦0.3の範囲とすることが好ましく、さらには0.1≦w≦0.3とすることが好ましい。
<RE、TM置換量[0.001≦x+y≦0.005、0.2≦y/(x+y)≦0.8]について>
BaサイトのREによる置換量及びTiサイトのTMによる置換量の合計を示すx+yが少なくなると室温抵抗率が高く、かつPTCジャンプが小さくなる傾向にある。また、x+yが多くなるとPTCジャンプが小さくなる傾向がある。そこで本発明では、0.001≦x+y≦0.005とする。好ましいx+yは0.002≦x+y≦0.005、さらに好ましいx+yは0.002≦x+y≦0.004である。
BaサイトのREによる置換量x及びTiサイトのTMによる置換量yの合計x+yに対するyの比率を示すy/(x+y)の値も、室温抵抗率及びPTC特性に影響を与える傾向がある。y/(x+y)の値が過剰に小さくなるか、又は過剰に大きくなると、室温抵抗率が高くなるとともにPTCジャンプが小さくなる傾向にある。そこで本実施形態では、0.2≦y/(x+y)≦0.8とする。好ましくは0.3≦y/(x+y)≦0.7、より好ましくは0.35≦y/(x+y)≦0.67である。
<MnO量[z]について>
本実施形態において、MnOは、PTC特性を向上させるのに有効である。ただし、MnO量を示すzが過剰に大きくなると室温抵抗率が高くなりすぎて良好なPTC特性が得られず、温度の上昇に対して抵抗が減少するNTC(Negative Temperature coefficient)特性を示す傾向にある。そこで、本実施形態では、一般式(1)において、MnO量を示すzは、下記式(5)を満足する。zの範囲は、0.0002≦z≦0.0013とすることが好ましく、さらには0.0005≦z≦0.0012とすることが好ましい。なお、半導体セラミック層の焼結体がMnOを含有する場合は、MnOを含有しない場合(z=0の場合)に比べて、PTCジャンプが大きくなる傾向にあるものの、条件によっては室温抵抗率が高くなる場合がある。したがって、室温抵抗率を十分低減するためには、半導体セラミック層を構成する焼結体がMnOを含有しないこと(すなわち、z=0とすること)が好ましい。
0≦z≦0.0015 (5)
<BaサイトとTiサイトとのmol比[α]>
BaサイトとTiサイトのmol比を示すαが0.99未満又はαが1.1を超えると、室温抵抗率が高くなり、PTCジャンプが小さくなる。したがって、本実施形態のαは下記式(6)を満足する。また、αの範囲は、1.02≦α≦1.08とすることが好ましく、さらには1.02≦α≦1.05とすることが好ましい。
0.99≦α≦1.1 (6)
<SiO量[β]>
SiOは焼結助剤として機能するが、このSiOの量βは、BaサイトとTiサイトとのmol比αと相関があり、両者が特定の関係にあるときに、低抵抗率と高いPTC特性を兼備することができる。そこで、本実施形態では、SiO量βが、上述したαの数値範囲(0.99≦α≦1.1)内で、αの値に対して特定の関係を満たすようにする。具体的には、1.02≦α≦1.1の場合、下記式(7)を満たすように制御し、また、0.99≦α<1.02の場合、下記式(8)を満たすように制御する。これにより、室温抵抗率及びPTCジャンプを積層型PTCサーミスタ1として好ましい値とすることができる。なお、MnOの場合と同様、半導体セラミック層がSiOを含有する場合は、SiOを含有しない場合(β=0の場合)に比べて、PTCジャンプが大きくなるものの、条件によっては室温抵抗率が高くなる場合がある。したがって、室温抵抗率を一層低減するためには、半導体セラミック層を構成する焼結体がSiOを含有しないこと(すなわち、β=0とすること)が好ましい。
2.35α−2.39<β<2.35α−2.32 (7)
0≦β<2.35α−2.32 (8)
すなわち、室温抵抗率を十分に低減するためには、半導体セラミック層を構成する焼結体の主成分が、下記式(16)で示されるチタン酸バリウム系化合物であることが好ましい。
(Ba1−w−xSrREα(Ti1−yTM)O (16)
半導体セラミックス層2はチタン酸バリウム系化合物を主成分とする焼結体で構成されるが、その空隙率は5〜25%である。空隙率は室温抵抗率及びPTCジャンプと相関があり、空隙率が5%未満の場合、大きなPTCジャンプが得られない。一方、空隙率が25%を超えると、室温抵抗率が大きくなり、また、大きなPTCジャンプが得られない。焼結体の好ましい空隙率は10〜25%、さらに好ましくは10〜23%である。なお、空隙率を変動させる要因として、チタン酸バリウム系化合物の組成及び還元焼成条件が挙げられる。
焼結体の主成分である、上記一般式(1)で表されるチタン酸バリウム系化合物の含有量は、焼結体全体に対して95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましい。当該含有量が高いほど、低い室温抵抗率と大きいPTCジャンプを一層高水準で両立することが可能となる。
焼結体に含まれるアルカリ金属化合物としては、アルカリ金属酸化物が挙げられる。アルカリ金属化合物の含有量は、焼結体に主成分として含まれるチタン酸バリウム系化合物全体に対して、0.01〜0.09質量%である。この範囲内で、アルカリ金属化合物の含有量を高めにすれば、PTCジャンプを一層大きくすることができる。一方、アルカリ金属化合物の含有量を低めにすれば、室温抵抗率を一層低くすることができる。なお、上述のアルカリ金属化合物の含有量が0.09質量%を超えると、アルカリ金属化合物が焼結体のチタン酸バリウム系化合物の粒子内、すなわち焼結体の粒内に存在しやすくなり、焼結体の粒内までも過剰に酸化されてしまい、十分に低い室温抵抗率が得られない。一方、アルカリ金属化合物の含有量が0.01質量%未満であると、十分に大きなPTCジャンプを得ることができない。アルカリ金属化合物の含有量を、0.02〜0.04質量%とすることにより、十分に低い室温抵抗率と十分に大きいPTCジャンプとをバランスよく備える積層型PTCサーミスタを得ることができる。
内部電極3は、主成分として卑金属を含む。内部電極3の具体的な組成としては、例えば、Ni、又はNi−Pd等のNi合金等が挙げられる。また、外部電極5a,5bの具体的な組成としては、例えば、Ag、又はAg−Pd合金等が挙げられる。
次に、本実施形態に係る積層型PTCサーミスタ1の製造方法について説明する。
本実施形態に係る積層型PTCサーミスタ1の製造方法は、例えば、図2に示すように、主な工程として、チタン酸バリウム系化合物の原料を混合する工程(混合工程;ステップS11)と、混合した原料を仮焼きする工程(仮焼工程;ステップS12)と、仮焼き後の原料を粉砕する工程(粉砕工程;ステップS13)と、半導体セラミック層の前駆体層(以下、「半導体セラミック前駆体層」という。)と、内部電極の前駆体層(以下、「内部電極前駆体層」という。)とが交互に積層された積層体を形成する工程(成形工程;ステップS14)と、積層体に含まれるバインダを除去する工程(脱バインダ工程;ステップS15)と、脱バインダ工程後の積層体を還元性雰囲気中で焼成し、多孔質の焼結体を形成する工程(焼成工程;ステップS16)と、アルカリ金属塩を含む溶液に焼結体を含浸させて、焼結体にアルカリ金属塩を付着させる工程(アルカリ金属付着工程;ステップS17)と、アルカリ金属塩を付着させた焼結体を乾燥させる工程(乾燥工程;ステップS18)と、乾燥後の焼結体を酸化雰囲気中で再酸化する工程(再酸化工程;ステップS19)と、を備える。以下、図2に基づいて各工程を説明する。
半導体セラミック層を構成する焼結体の主成分となるチタン酸バリウム系化合物の原料粉末として、酸化物又は加熱により酸化物となる化合物を用いる。具体的にはBaCO、TiO、SrCO、SiO、Mn(NO6HO、REの酸化物(例えばY)、TMの酸化物(例えば、Nb)を用いることができる。なお、上述した原料粉末に限らず、各金属の酸化物や塩(炭酸塩や硝酸塩)のほか、2種以上の金属を含む複合酸化物の粉末を原料粉末としてもよい。各原料粉末の平均粒径は0.1〜3.0μmの範囲で適宜選択することが好ましい。
上述の各原料粉末をそれぞれ所定量秤量した後、混合工程(ステップS11)において、各原料粉末を純水及び粉砕用ボールと共にナイロン製ポット内に入れて、4〜8時間粉砕混合し、乾燥させて、混合粉末を得る。
次に、仮焼工程(ステップS12)において、必要に応じて混合粉末を仮成形した後、1000〜1150℃程度の雰囲気温度で、0.5〜5時間程度仮焼きして、仮焼体を得る。
仮焼体を得た後、粉砕工程(ステップS13)において、仮焼体を粉砕して仮焼粉を得る。次に、仮焼粉を純水及び粉砕用ボールと共にナイロン製ポットに入れ、これに溶剤、バインダ、及び可塑剤を所定量添加して、10〜20時間程度混合し、所定粘度のグリーンシート用スラリーを得る。なお、グリーンシート用スラリー中には、必要に応じて分散剤を含有させてもよい。
次いで、成形工程(ステップS14)において、半導体セラミック前駆体層と内部電極前駆体層とが交互に積層された積層体を形成する。この成形工程においては、まず、ポリエステルフィルム等の上にグリーンシート用スラリーをドクターブレード法等で塗布し、これを乾燥させて、グリーンシート(半導体セラミック前駆体層)を得る。グリーンシートの厚さは、例えば10〜100μm程度とすればよい。
このようにして得られたグリーンシートの上面に、内部電極用ペーストをスクリーン印刷等により印刷する。これにより、グリーンシート(半導体セラミック前駆体層)上に内部電極ペーストからなる内部電極前駆体層が形成される。なお、内部電極用ペーストは、例えば、卑金属粉末と、電気絶縁材(ワニス)とを、混合・調製して得られたものである。卑金属粉末としては、例えば、Ni粉末、又はNi−Pd等のNi合金粉末を用いればよい。
次に、内部電極前駆体層が形成されたグリーンシートを複数積層し、その上面及び下面に内部電極前駆体層が形成されていないグリーンシートを重ね、これをプレス機で積層方向から加圧、圧着して、圧着体を得る。そして、この圧着体をカッター等で所望のサイズに切断することにより、積層体を得る。なお、成形工程においては、積層体は、積層型PTCサーミスタ1の本体4の構成に対応するように形成する。すなわち、積層体は、グリーンシート(半導体セラミック前駆体層)と内部電極前駆体層とが交互に積層され、且つ、各内部電極前駆体の一方の端面が積層体の左端面又は右端面に露出するとともに、内部電極前駆体層と他方の端面は積層体の内部に封入されるようにする。
脱バインダ工程(ステップS15)においては、得られた積層体を、250〜600℃程度の大気中に1〜10時間程度保持して、積層体からグリーンシートに含まれていたバインダ等の液体成分を除去する。
次に、焼成工程(ステップS16)において、脱バインダ工程後の積層体を、1150〜1250℃程度の還元雰囲気中で、0.5〜4時間程度焼成し、多孔質の焼結体を得る。ここで、還元雰囲気とは、少なくとも内部電極前駆体層において酸化が生じないような雰囲気であり、例えば水素と窒素との混合雰囲気とすればよい。内部電極前駆体層に含まれる卑金属(Ni、又はNi合金等)は、通常容易に酸化されて内部電極としての機能が低下し易いものであったが、還元雰囲気中で積層体を焼成することによって、このような酸化を防止しつつ、積層体を焼結させることができる。
焼成工程により得られた多孔質の焼結体の空隙率は5〜25%である。空隙率が上記範囲の場合、焼結体が有する結晶粒子の粒界や空隙部分に後述するアルカリ金属塩を選択的に含浸させることが可能となる。これによって、後述する再酸化工程において、選択的に粒界や空隙部分を酸化させることが可能となる。なお、焼結体の空隙率は、ポロシメータ等で測定することができる。
焼結体の空隙率を変動させる要因としては、半導体セラミック前駆体層の組成や積層体の焼成条件が挙げられる。焼結体を多孔質とし、かつ、その空隙率を好適な範囲内とするためには、半導体セラミック前駆体層の組成を、例えば、(Ba0.9985Gd0.00150.995(Ti0.9985Nb0.0015)Oとすることが好ましい。また、積層体を、1200℃、1体積%H/N、露点10℃の雰囲気中で焼成することが好ましい。
焼成工程によって多孔質の焼結体を得た後、アルカリ金属付着工程(ステップS17)において、焼結体を構成するチタン酸バリウム系化合物の粒子にアルカリ金属塩を付着させる。チタン酸バリウム系化合物の粒子にアルカリ金属塩を付着させる方法としては、特に限定されないが、好ましくは、アルカリ金属塩を含む溶液をチタン酸バリウム系化合物の粒子に付着させる方法が挙げられる。具体的には、アルカリ金属塩を含む溶液に焼結体を含浸させる。アルカリ金属塩を含む溶液に焼結体を含浸させることによって、焼結体内に溶液が浸透するため、チタン酸バリウム系化合物を主成分とする焼結体内の空隙部分や粒界にアルカリ金属塩を優先的に付着させることが可能となる。
アルカリ金属塩としては、NaNO、NaOH、NaCO、NaSiO、LiO、LiOH、LiNO、LiSO、KOH、KNO、KCOからなる群より選択される少なくとも一つであることが好ましい。これらのアルカリ金属塩は、水などの溶媒に容易に溶解し、焼結体をその溶液に含浸した場合に、焼結体の空隙部分や粒界に付着しやすい傾向がある。
なお、チタン酸バリウム系化合物の粒子にアルカリ金属塩を付着させる方法としては、上述の方法以外に、アルカリ金属塩を含む溶液の塗布や吹きつけ等が挙げられる。また、アルカリ金属塩を含む溶液としては、アルカリ金属塩が可溶であれば特に限定されず、水溶液を用いてもよく、有機溶液を用いてもよい。
アルカリ金属塩を含む溶液におけるアルカリ金属塩の濃度は、アルカリ金属元素換算で、0.05〜7.0質量%であることが好ましく、0.25〜1.8質量%であることがより好ましく、0.5〜1.1質量%であることがさらに好ましい。0.25〜1.8質量%のアルカリ金属塩溶液を用いることによって、焼結体の有する粒子の粒界部分や空隙部分にアルカリ金属化合物を一層選択的に偏析させることが可能となる。なお、上述の範囲でアルカリ金属塩濃度を調整することによって、最終的に焼結体に含まれるアルカリ金属化合物の量を調整することができる。溶液中のアルカリ金属塩の濃度が低過ぎると、焼結体の粒界や空隙部分に存在するアルカリ金属化合物の量が不十分となり、PTCジャンプを大きくする効果が十分に得られない傾向がある。一方、溶液中のアルカリ金属塩の濃度が高過ぎると、焼結体に付着するアルカリ金属塩の量が過剰となり、その後の工程でアルカリ金属が粒内に侵入して焼結体の粒内までも過剰に酸化されてしまう傾向がある。これによって、低い室温抵抗率及び大きいPTCジャンプが損なわれる傾向がある。
アルカリ金属塩を含む溶液に焼結体を含浸させた後には、乾燥工程(ステップS18)において、焼結体を乾燥させる。
次に、再酸化工程(ステップS19)において、乾燥後の焼結体を、酸化雰囲気中で熱処理して再酸化し、本体4を得る。再酸化の条件は、少なくとも得られる半導体セラミック層2が確実にPTC特性を発現でき、しかも内部電極3に酸化が生じない程度の条件とする。再酸化の条件としては、酸化雰囲気の酸素濃度、熱処理温度、熱処理時間等の各条件が挙げられるが、これらは、焼結体の寸法に応じて適宜設定すればよい。これらの条件を適切に設定することで、好適な室温抵抗率及びPTC特性を有する積層型PTCサーミスタ1を得ることができる。
具体的には、本実施形態では、再酸化工程の熱処理温度を600〜800℃とすることが好ましく、700〜800℃とすることがより好ましい。この熱処理温度が低過ぎると、焼結体が有する結晶粒子の粒界の酸化が不十分となり、PTCジャンプを大きくする効果が小さくなる傾向がある。一方、熱処理温度が高過ぎると、内部電極が酸化されてしまう傾向がある。また、酸化雰囲気の酸素濃度は0.1〜30体積%程度とすることが好ましく、熱処理時間は0.5〜2時間程度とすることが好ましい。
再酸化工程では、アルカリ金属付着工程において、焼結体の主に粒界及び空隙部分に付着したアルカリ金属塩が、場合により酸化されて酸化物になると考えられる。これによって、得られる積層型PTCサーミスタは低い室温抵抗率と大きなPTCジャンプとを高水準で両立させることができる。
再酸化工程後、本体4の端面4a,4bにそれぞれ外部電極用ペーストを塗布した後、550〜650℃程度の大気中で焼き付けることにより、これらの端面に外部電極5a,5bを形成する。なお、外部電極用ペーストとしては、例えばAgペースト又はAg−Pdペースト等を用いればよい。その結果、図1に示した構成を有する積層型PTCサーミスタ1を得ることができる。
上述した実施形態の積層型PTCサーミスタ1の製造方法によれば、焼成工程後、再酸化工程前に、焼結体に含まれるチタン酸バリウム系化合物の粒子にアルカリ金属塩を付着させていることから、半導体セラミック層2を構成する焼結体の粒界付近の再酸化が良好に生じ、その結果、得られる積層型PTCサーミスタ1のPTCジャンプを大きくすることができる。また、従来は、積層型PTCサーミスタのPTCジャンプが大きいほど、積層型PTCサーミスタの室温抵抗率が大きい傾向があったが、本実施形態においては、アルカリ金属付着工程でアルカリ金属塩を粒界付近に選択的に付着させ、再酸化工程において上記粒界付近を選択的に酸化させ、粒界にアルカリ金属化合物を偏析させることができる。これによって、積層型PTCサーミスタ1の室温抵抗率を十分に低い値に維持しつつPTCジャンプを十分に大きくすることができる。すなわち、本実施形態の積層型PTCサーミスタは、焼結体に含まれるアルカリ金属化合物の含有量を、特定の範囲とすることによって、焼結体の主成分であるチタン酸バリウム系化合物粒子の好適な組成を維持しつつ、粒界に選択的にアルカリ金属化合物を偏析させて、十分に低い室温抵抗率と十分に大きなPTCジャンプとを両立させている。
以上、本発明に係る積層型PTCサーミスタ及びその製造方法の好適な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述した製造方法では、グリーンシートからなる半導体セラミック前駆体層、及び、内部電極ペーストからなる内部電極前駆体層を例示したが、半導体セラミック前駆体層及び内部電極前駆体層は、焼成や再酸化によって半導体セラミック層及び内部電極となり得るものであれば、必ずしも上記に限定されない。
また、アルカリ金属付着工程では、アルカリ金属塩の溶液を付着させる例について説明したが、溶液を用いずに、アルカリ金属塩を直接焼結体に付着させてもよい。さらに、積層型PTCサーミスタは、上述した構造を有するものに限定されず、各層の積層数や内部電極の形成位置等が適宜異なっていてもよい。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。まず、低い室温抵抗率と大きいPTCジャンプとを高水準で両立可能な積層型PTCサーミスタを得るために、半導体セラミック層を構成する焼結体に含まれるチタン酸バリウム系化合物の好適な組成について、以下の製造例1〜4で検討した。
(製造例1)
得られるチタン酸バリウム系化合物が下記式(A)の組成になるように、BaCO、TiO、SrCO、RE酸化物、TM酸化物、SiO及びMn(NO・6HOをそれぞれ秤量した後、純水ならびに粉砕用ボールとともにナイロン製ポット内に入れて6時間混合し、乾燥させて混合粉末を得た。なお、RE酸化物、TM酸化物は以下の通りである。下記式(A)における、上記一般式(1)の「2.35α−2.39」及び「2.35α−2.32」の値は、それぞれ0.007、0.077となり、β=0.05である。したがって、下記式(A)のチタン酸バリウム系化合物は、上記式(7)を満足する。
(Ba0.772Sr0.223RE1.02(Ti1−yTM)O+0.05SiO+0.001Mn・・・(A)
RE(x)、TM(y):表1及び表2を参照
RE酸化物:Y、Gd、La、Ce、Pr、Sm、Dy、Er、Nd
TM酸化物:Nb、V、Ta
表1及び2に示す試料No.1〜62の混合粉末をそれぞれ仮成形し、これを1150℃の大気中に4時間保持して仮焼して、仮焼体を得た。次いで、この仮焼体を解砕して得た仮焼粉末(平均粒径1μm)を純水ならびに粉砕用ボールとともにナイロン製ポットに入れ、これに溶剤、バインダ及び可塑剤を添加して3本ロールにて20時間混合し、半導体セラミック層形成用スラリーを得た。なお、溶剤、バインダ、可塑剤の各配合比は、仮焼粉末100質量部に対して、それぞれ50質量部、5質量部、2.5質量部とした。
得られた半導体セラミック層形成用スラリーをポリエステルフィルムの上にドクターブレード法で塗布、乾燥して厚さ80μmのグリーンシートを作製した。このグリーンシートを50mm×50mmの寸法に打ち抜いて多数枚の半導体セラミック層用グリーンシートを得た後、グリーンシートの上面に内部電極用ペーストをスクリーン印刷で印刷して内部電極を形成した。なお、内部電極用ペーストは、平均粒径0.2μmのNi粉末100質量部に対して電気絶縁材としてのBaTiOを10質量部加え、混練して調製したものである。
内部電極の一端面がセラミック層の左端部、右端部に交互に露出するようグリーンシートを積層し、その上面及び下面に、内部電極が形成されていないグリーンシートを重ね、これをプレスで積層方向に加圧、圧着した。圧着体をカッターで切断し、2mm×1.2mm×1.2mmの積層体を得た。
積層体を大気中、300℃で8時間加熱保持してバインダを除去した後、還元雰囲気中、表1及び表2に示す焼成温度(1200〜1280℃)で2時間、積層体を焼結し、本体(焼結体)を得た。還元雰囲気は水素と窒素の混合雰囲気とし、水素と窒素の体積比率は1:99、混合雰囲気の露点を10℃とした。
続いて得られた本体を大気中、800℃で2時間加熱保持することにより、酸化処理を行った。なお、酸素濃度は0.2%とした。酸化処理後の本体の左端面及び右端面にAgペーストを塗布した後、大気中650℃で焼き付けて外部電極を形成し、図1に示す構成の積層型PTCサーミスタ1を得た。
得られた積層型PTCサーミスタ1について、25℃における抵抗率(室温抵抗率(R25℃)、単位:Ωcm)、及び250℃における抵抗率(高温抵抗率(R250℃)、単位:Ωcm)、をそれぞれ測定した。更に、室温抵抗率(R25℃)、高温抵抗率(R250℃)の各測定値から、PTCジャンプ[log10(R250℃/R25℃)]を求めた。また、半導体セラミック層2を構成する焼結体の空隙率をポロシメータにより測定した。その結果を表1、表2に示す。
表1、表2に示すように、REによるBaサイトの置換又はTMによるTiサイトの置換のいずれか一方しか行っていない場合(No.1、16、17、20、23、28、29、32の場合)には、PTCジャンプが4未満となるか、またはR25℃が1.0×10Ωcmを超えることが確認された。
x+y(mol)が0.001未満であるNo.2〜4、または0.005を超えるNo.17〜20では、PTCジャンプが4未満の特性となってしまった。これに対して、x+yが0.001〜0.005の範囲であるNo.5、7〜12、14、15では、R25℃が1.0×10Ωcm以下、かつPTCジャンプが4以上の特性を得ることができた。また、x+yは0.003近傍が最も好ましいことが確認された。
y/(x+y)についてみると、y/(x+y)が0.2未満又は0.8を超えるNo.6、13では、PTCジャンプが4未満の特性となってしまった。これに対して、y/(x+y)が0.2〜0.8の範囲内であるNo.7〜12、14、15では、R25℃が1.0×10Ωcm以下、かつPTCジャンプが4以上の特性を得ることができた。
本発明において、焼結体の空隙率は5〜25%である。空隙率はR25℃及びPTCジャンプ(PTC特性)と相関があり、空隙率が5%未満と低すぎるとPTCジャンプが小さくなる。一方、空隙率が25%を超えると、室温抵抗率R25℃が大きくなる。例えば表1のNo.26の空隙率は27%(25%超の値)であり、室温抵抗率R25℃が1.0×10Ωcmよりも高くなっている。また、空隙率が4%のNo.27は室温抵抗率R25℃が2.0×10Ωcmと低いものの、PTCジャンプも0.1と小さかった。
表2に示すように、REについては、Y以外のGd、La、Ce、Pr、Sm、Dy、Er及びNd、また、TMについてはNb以外のV及びTaであっても、x+y及びy/(x+y)が各々上記式(3)及び(4)を満足する場合、室温抵抗率R25℃が1.0×10Ωcm以下、かつ大きいPTCジャンプ(4以上)を得ることができた。表1、表2より、REとしてY及びGdの1種または2種、TMとしてNbを選択した場合に、室温抵抗率R25℃及びPTCジャンプが最も大きくなることがわかった。
Figure 2009177017
Figure 2009177017
(製造例1a)
得られるチタン酸バリウム系化合物が下記式(B)の組成となるように原料粉末を秤量したこと以外は、試料No.1〜62と同様にして、試料1a〜62aの積層型PTCサーミスタをそれぞれ作製した。
(Ba0.772Sr0.223RE0.99(Ti1−yTM)O ・・・(B)
RE(x)、TM(y):表1a、表2a
RE酸化物:Y、Gd、La、Ce、Pr、Sm、Dy、Er、Nd
TM酸化物:Nb、V、Ta
なお、上記組成では、上記一般式(1)におけるα=0.99であるから、上記式(B)の「2.35α−2.32」は、0.0065となる。上記式(B)における、上記一般式(1)のSiOの量を示すβは0であるから、上記式(B)のチタン酸バリウム系化合物は、上記式(8)を満足する。なお、上記式(B)の組成では、MnOの量を示す上記一般式(1)におけるzは0である。
得られた各積層型PTCサーミスタについて、得られた積層型PTCサーミスタについて、製造例1と同様に、25℃及び250℃における抵抗率を測定し、PTCジャンプ[log10(R250℃/R25℃)]を求めた。また、半導体セラミック層2を構成する焼結体の空隙率をポロシメータにより測定した。その結果を表1a、表2aに示す。
表1a、表2aに示すように、半導体セラミック層の焼結体の主成分であるチタン酸バリウム系化合物が、SiO及びMnOを含有しない場合であっても、当該チタン酸バリウム系化合物が、上記式(1)〜(8)を満足し、焼結体の空隙率が5〜25%である場合には、室温抵抗率R25℃が低く(1×10[Ωcm])、かつPTCジャンプを大きくできる(4以上)ことが確認された。
Figure 2009177017
Figure 2009177017
(製造例2)
得られるチタン酸バリウム系化合物が下記式(C)の組成となるように原料粉末を秤量したこと以外は、製造例1と同様にして表3に示す試料No.131〜140及び70〜95の積層型PTCサーミスタを作製した。なお、式(C)中のα及びβは、表3に示す通りである。
(Ba0.772Sr0.223REα(Ti1−yTM)O+βSiO+0.001MnO ・・・(C)
なお、上記式(C)において、x=0.0015、y=0.0015、x+y=0.0030、y/(x+y)=0.5である。
得られた積層型PTCサーミスタについて、製造例1と同様に、25℃及び250℃における抵抗率を測定してPTCジャンプ[log10(R250℃/R25℃)]を求めた。また、半導体セラミック層2を構成する焼結体の空隙率をポロシメータにより測定した。その結果を表3に示す。
Figure 2009177017
表3に示すように、αを固定してβを変動させることにより、室温抵抗率R25℃、PTCジャンプ及び空隙率が変動することが確認された。また、αに対してβが小さすぎても、また大きすぎても、室温抵抗率が増大し、PTCジャンプが小さくなることが確認された。例えばβの値が0.05molと同一であるNo.72とNo.76とを比較すると、αが1.02であるNo.72については、室温抵抗率R25℃が1.0×10[Ωcm]以下を示し、かつPTCジャンプが4.0以上と高いPTC特性を示した。これに対して、αが1.04であるNo.76についてはPTCジャンプが1と低かった。つまり、0.05molというSiO添加量(β)はαが1.02の場合には適しているが、αが1.04の場合には不適であることが確認された。同様に、βの値が0.24molと同一であるNo.87とNo.90とを比較すると、αが1.10であるNo.90については室温抵抗率R25℃が低く、かつPTCジャンプが4.0とPTC特性も高かったが、αが1.08であるNo.87については室温抵抗率R25℃が高く、PTCジャンプが1と小さかった。
図3は、αが1.02≦α≦1.1の範囲内であるNo.70〜91のα及びβをプロットしたグラフである。図3中、室温抵抗率R25℃が1×10[Ωcm]以下で、かつPTCジャンプが4以上である試料は円(o)でプロットし、室温抵抗率R25℃又はPTCジャンプが上記範囲外のものをバツ(×)でプロットした。図3に示す結果から、1.02≦α≦1.1において上記式(7)、すなわち「2.35α−2.39<β<2.35α−2.32」を満足する試料No.71〜73,77,78,81,83〜85,89,90においては、室温抵抗率R25℃が1×10[Ωcm]以下で、かつPTCジャンプが4以上であることが確認できた。また、図3及び表3に示す結果から、α及びβが、上記式(12)すなわち「2.35α−2.37≦β≦2.35α−2.34」を満足することによって、室温抵抗率R25℃を更に低くし、かつPTCジャンプを更に大きくできることが確認された。
図4は、αが1.02未満であるNo.131〜140のα及びβを、図3の場合と同様にプロットしたグラフである。図4に示す結果から、0.99≦α<1.02において、上記式(8)すなわち「0≦β<2.35α−2.32」を満足する試料No.132,134,135,137〜139においては、室温抵抗率R25℃が1×10[Ωcm]以下で、かつPTCジャンプが4.0以上であることが確認できた。
上述のように、表3、図3、及び図4に示す結果から、βは単独で決定すべきではなく、αに応じて決定すべきであることが確認された。具体的には、1.02≦α≦1.1の場合、2.35α−2.39<β<2.35α−2.32、0.99≦α<1.02である場合、0≦β<2.35α−2.32、となるようにα及びβを制御することによって、室温抵抗率R25℃が低く、且つPTC特性に優れた積層型PTCサーミスタを形成しうるチタン酸バリウム系化合物を得ることができる。
なお、表3に示すように、αが0.99未満であるNo.131では、PTCジャンプが小さかった。また、αが1.10を超えるNo.94、95においては、室温抵抗率R25℃が高くなり、PTCジャンプが小さくなった。したがって、αを0.99≦α≦1.1の範囲とすることによって、これらの傾向を回避できることが確認された。また、室温抵抗率R25℃を低下させ、且つ、PTC特性を向上させるためには、αは1.02≦α≦1.08の範囲とすることが好ましく、1.02≦α≦1.05とすることがより好ましいことが確認された。
(製造例3)
得られるチタン酸バリウム系化合物が下記式(D)の組成となるように原料粉末を秤量したこと以外は、製造例1と同様にして表4に示す試料No.100〜103の積層型PTCサーミスタを作製した。なお、wは表4に示す通りとした。得られた積層型PTCサーミスタについて、製造例1と同様に、25℃及び250℃における抵抗率を測定し、PTCジャンプ[log10(R250℃/R25℃)]を求めた。また、半導体セラミック層2を構成する焼結体の空隙率をポロシメータにより測定した。その結果を表4に示す。
(Ba0.995−x−wSr1.02(Ti1−yNb)O+0.05SiO+0.001MnO ・・・(D)
上記式(D)では、x=0.0015、y=0.0015、x+y=0.0030、y/(x+y)=0.5である。
表4に示すように、上記一般式(1)で表されるチタン酸バリウム系化合物において、BaをSrで置換することによりキュリー温度及びPTC特性が変動することがわかった。また、wが多くなるにつれてPTC特性が向上するが、その一方でキュリー温度が低下してしまうため、wは0≦w≦0.3、さらには0≦w≦0.25とすることが好ましい。また、4を超えるPTCジャンプを得たい場合には、wは、0.05≦w≦0.3の範囲とすることが好ましい。
Figure 2009177017
(製造例4)
得られるチタン酸バリウム系化合物が下記式(E)の組成となるように原料粉末を秤量したこと以外は、製造例1と同様にして表5に示す試料No.110〜113の積層型PTCサーミスタを作製した。なお、下記式(E)におけるzは表5に示す通りとした。得られた積層型PTCサーミスタについて、製造例1と同様に、25℃及び250℃における抵抗率を測定し、PTCジャンプ[log10(R250℃/R25℃)]を求めた。また、半導体セラミック層2を構成する焼結体の空隙率をポロシメータにより測定した。その結果を表5に示す。
(Ba0.772Sr0.2231.02(Ti1−yNb)O+0.05SiO+zMnO ・・・(E)
なお、上記式(E)において、x=0.0015、y=0.0015、x+y=0.0030、y/(x+y)=0.5である。
表5に示すように、MnO量が0〜0.002molの場合には4.0以上というPTCジャンプを示したが、その量が0.1molになるとPTCジャンプが小さくなった。また表5に示すように、MnO量が0.001molの場合にはMnO量が0molの場合と同等の室温抵抗率R25℃を示すが、MnO量が0.002molの場合には室温抵抗率R25℃が大幅に増加することが確認された。したがって、低い室温抵抗率R25℃及び大きいPTCジャンプを兼備するには、MnO量、つまり上記一般式(1)におけるzは0≦z≦0.0015、さらには0.0005≦z≦0.001とすることが好ましい。
Figure 2009177017
上記の検討結果から、低い室温抵抗率と大きいPTCジャンプを兼ね備えるチタン酸バリウム系化合物の組成範囲が特定された。次に、当該組成範囲のチタン酸バリウム系化合物を主成分として含有する焼結体に、アルカリ金属化合物を含有させて、低い室温抵抗率と大きいPTCジャンプとをより高水準で両立させることを試みた。
(実施例1)
BaCO、TiO、Gd、Nbを、得られるチタン酸バリウム系化合物が下記式(G)の組成になるようにそれぞれ秤量した後、純水ならびに粉砕用ボールとともにナイロン製ポット内に入れて6時間混合した後、乾燥させ混合粉末を得た。
(Ba0.9985Gd0.00150.995(Ti0.9985Nb0.0015)O・・・(G)
次に、混合粉末を仮成形した後、これを1150℃の大気中に4時間保持して仮焼して、仮焼体を得た。この仮焼体を解砕して、平均粒径1μmの仮焼粉を作製した。次に、仮焼粉を純水及び粉砕用ボールと共にナイロン製ポットに入れ、これに溶剤、バインダ、及び可塑剤を添加したものを、3本ロールにて20時間混合して、グリーンシート用スラリーを得た。なお、溶剤、バインダ、可塑剤の各配合比は、仮焼粉100質量部に対して、それぞれ、50質量部、5質量部、2.5質量部とした。
得られたグリーンシート用スラリーをポリエステルフィルムの上にドクターブレード法で塗布し、これを乾燥した後、50mm×50mmの寸法に打ち抜いて、厚さ20μmのグリーンシート(半導体セラミック前駆体層)を複数作製した。このグリーンシートの上面に内部電極用ペーストをスクリーン印刷で印刷して、内部電極前駆体層を形成した。なお、内部電極用ペーストは、平均粒径0.2μmのNi粉末100質量部に対して電気絶縁材としてのBaTiOを10質量部加えたものを混練して調製した。
次に、内部電極前駆体層が形成されたグリーンシートを5つ積層し、その上面及び下面に、内部電極前駆体層が形成されていないグリーンシートを重ね、これをプレス機で積層方向に加圧・圧着して、圧着体を得た。この圧着体をカッターで切断し、2mm×1.2mm×1.2mmの寸法を有する積層体を作成した。この切断では、内部電極前駆体層の一端面のみがグリーンシートの端縁まで延びて、内部電極前駆体の他方の端面はグリーンシートの内側に位置するように切断を行った。また、積層方向における内部電極前駆体層の間隔は14μmとした。
得られた積層体を、300℃の大気中で8時間加熱保持して、積層体からバインダを除去した。次に、1200℃の還元雰囲気中で積層体を2時間焼成し、多孔質の焼結体を得た。なお、還元雰囲気は水素と窒素との混合雰囲気とし、水素と窒素の体積比率は1:99、混合雰囲気の露点を10℃とした。
次に、アルカリ金属塩溶液(NaNO3の8質量%水溶液)に焼結体を含浸した。含浸後、焼結体を大気中、常温で1時間乾燥させた。次に、焼結体を、700℃の大気中で2時間加熱保持することにより再酸化して、本体4を得た。
次に、本体4の端面4a,4bに、Ag−Pdペーストを塗布した後、これを650℃の大気中で焼き付けて外部電極5a,5bを形成した。このようにして、図1に示す構成の積層型PTCサーミスタ1を得た。
半導体セラミック層2を構成する焼結体の空隙率をポロシメータにより測定した。また、半導体セラミック層2を構成する焼結体に含まれるアルカリ金属化合物のアルカリ金属換算の量をICP発光分析装置により測定した。測定結果は、表6に示すとおりであった。なお、ICP発光分析装置によるアルカリ金属の定量結果は、焼結体の空隙がアルカリ金属塩の水溶液で満たされるとの前提で算出されるアルカリ金属の量と合致していた。
[抵抗率の測定]
得られた積層型PTCサーミスタについて、25℃における抵抗率(室温抵抗率(R25℃)、単位:Ωcm)、及び200℃における抵抗率(高温抵抗率(R200℃)、単位:Ωcm)、をそれぞれ測定した。更に、室温抵抗率(R25℃)、高温抵抗率(R200℃)の各測定値から、PTCジャンプ[log10(R200℃/R25℃)]を求めた。結果は表6に示すとおりであった。なお、上記製造例1〜4では、PTCジャンプを25℃の抵抗率と250℃の抵抗率とから求めたが、本実施例では、25℃の抵抗率と200℃の抵抗率とから求めた。
(実施例2〜25)
アルカリ金属塩溶液として、NaNO3の8質量%水溶液の代わりに、表6に示すアルカリ金属塩溶液をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、実施例2〜25の各積層型PTCサーミスタを作製した。そして、実施例1と同様にして、室温抵抗率(R25℃)、高温抵抗率(R200℃)を測定し、PTCジャンプ[log10(R200℃/R25℃)]を求めた。結果は表6に示すとおりであった。
(比較例1)
アルカリ金属塩溶液に含浸しなかったこと以外は実施例1と同様にして積層型PTCサーミスタを作製した。そして、実施例1と同様にして、室温抵抗率(R25℃)、高温抵抗率(R200℃)を測定し、PTCジャンプ[log10(R200℃/R25℃)]を求めた。結果は表6に示すとおりであった。
(比較例2)
アルカリ金属塩溶液として、NaNO3の8質量%水溶液の代わりに、NaNO3の0.5質量%水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、積層型PTCサーミスタを作製した。そして、実施例1と同様にして、室温抵抗率(R25℃)、高温抵抗率(R200℃)を測定し、PTCジャンプ[log10(R200℃/R25℃)]を求めた。結果は表6に示すとおりであった。
(比較例3)
上記式(G)の比率になるように秤量したBaCO粉体、TiO粉体、Gd粉体、及びNb粉体と、NaNO3粉体とを、純水ならびに粉砕用ボールとともにナイロン製ポット内に入れて6時間混合した後、乾燥させ混合粉末を得た。なお、NaNO3粉体は、焼結体に含まれる上記式(G)の化合物全体に対して、アルカリ金属換算で0.005質量%となるように配合した。原料として上記混合粉末を用いたこと、及びアルカリ金属塩溶液に含浸しなかったこと以外は実施例1と同様にして積層型PTCサーミスタを作製した。そして、実施例1と同様にして、室温抵抗率(R25℃)、高温抵抗率(R200℃)を測定し、PTCジャンプ[log10(R200℃/R25℃)]を求めた。結果は表6に示すとおりであった。
(比較例4)
得られるチタン酸バリウム系化合物が下記式(H)の組成になるように、BaCO、TiO、Gd、Nb、MnOをそれぞれ秤量した後、純水ならびに粉砕用ボールとともにナイロン製ポット内に入れて6時間混合した後、乾燥させ混合粉末を得た。
(Ba0.9985Gd0.00150.995(Ti0.9985Nb0.0015)O+0.002MnO・・・(H)
原料として上記混合粉末を用いたこと、及びアルカリ金属塩溶液に含浸しなかったこと以外は実施例1と同様にして積層型PTCサーミスタを作製した。そして、実施例1と同様にして、室温抵抗率(R25℃)、高温抵抗率(R200℃)を測定し、PTCジャンプ[log10(R200℃/R25℃)]を求めた。結果は表6に示すとおりであった。
Figure 2009177017
焼結体のチタン酸バリウム系化合物全体に対する、アルカリ金属換算のアルカリ金属化合物の含有量が、0.01〜0.09質量%である積層型PTCサーミスタの場合、低い室温抵抗率と大きなPTCジャンプとを高水準で両立できることが確認できた。また、積層型PTCサーミスタにおける焼結体のCMA分析を行ったところ、焼結体のアルカリ金属化合物の含有量が上記範囲にある場合、アルカリ金属化合物が焼結体の粒界や空隙部分に偏析していることが確認された。
本発明の積層型PTCサーミスタの好適な一実施形態を示す積層型PTCサーミスタの概略断面図である。 本発明に係る積層型PTCサーミスタの製造方法の好適な一実施形態を示す工程図である。 試料No.70〜91のα及びβをプロットしたグラフである。 試料No.131〜140のα及びβをプロットしたグラフである。
符号の説明
1…積層型PTCサーミスタ、2…半導体セラミック層、3…内部電極、4・・・本体、5a,5b…外部電極。

Claims (11)

  1. 半導体セラミック層と内部電極とが交互に積層されている本体と、前記内部電極と電気的に接続され、前記本体の両端面にそれぞれ設けられている外部電極と、を備える積層型PTCサーミスタであって、
    前記半導体セラミック層は、下記一般式(1)で示されるチタン酸バリウム系化合物を主成分とする空隙率が5〜25%の焼結体で構成されており、
    (Ba1−w−xSrREα(Ti1−yTM)O+βSiO+zMnO
    ・・・(1)
    前記一般式(1)において、
    前記REは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy及びErからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、
    前記TMは、V、Nb及びTaからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、
    w、x、y、z、β(いずれもmol)、及びα(Baサイト/Tiサイトのmol比)は、下記式(2)〜(8)を満足し、
    0≦w≦0.3 (2)
    0.001≦x+y≦0.005 (3)
    0.2≦y/(x+y)≦0.8 (4)
    0≦z≦0.0015 (5)
    0.99≦α≦1.1 (6)
    1.02≦α≦1.1の場合、
    2.35α−2.39<β<2.35α−2.32 (7)
    0.99≦α<1.02の場合、
    0≦β<2.35α−2.32 (8)
    前記焼結体は、前記チタン酸バリウム系化合物全体に対してアルカリ金属換算で0.01〜0.09質量%のアルカリ金属化合物を含有する積層型PTCサーミスタ。
  2. 前記アルカリ金属化合物の少なくとも一部が、前記焼結体の粒界に存在する請求項1記載の積層型PTCサーミスタ。
  3. 前記アルカリ金属化合物は、前記チタン酸バリウム系化合物の粒子に付着したNaNO、NaOH、NaCO、NaSiO、LiO、LiOH、LiNO、LiSO、KOH、KNO、KCOからなる群より選択される少なくとも一つのアルカリ金属塩を、酸化雰囲気中で酸化することによって得られる請求項1又は2記載の積層型PTCサーミスタ。
  4. 前記一般式(1)において、x及びyが下記式(9)及び(10)を満足する請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層型PTCサーミスタ。
    0.002≦x+y≦0.005 (9)
    0.3≦y/(x+y)≦0.7 (10)
  5. 前記REがY及びGdの1種又は2種であり、前記TMがNbである請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層型PTCサーミスタ。
  6. 前記一般式(1)において、α、βが下記式(11)及び(12)を満足する請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層型PTCサーミスタ。
    1.02≦α≦1.08 (11)
    2.35α−2.37≦β≦2.35α−2.34 (12)
  7. 前記一般式(1)において、wが下記式(13)を満足する請求項1〜6のいずれか一項に記載の積層型PTCサーミスタ。
    0.05≦w≦0.3 (13)
  8. 前記一般式(1)において、zが下記式(14)を満足する請求項1〜7のいずれか一項に記載の積層型PTCサーミスタ。
    0.0002≦z≦0.0013 (14)
  9. 半導体セラミック層と内部電極とが交互に積層されている本体と、前記内部電極と電気的に接続され、前記本体の両端面にそれぞれ設けられている外部電極と、を備える積層型PTCサーミスタの製造方法であって、
    チタン酸バリウム系化合物の原料粉末を仮焼した仮焼粉及びバインダを含む、前記半導体セラミック層の前駆体層と、前記内部電極の前駆体層と、が交互に積層された積層体を得る工程と、
    前記積層体を還元雰囲気中で焼成して、前記チタン酸バリウム系化合物を得る工程と、前記チタン酸バリウム系化合物の粒子にアルカリ金属塩を付着させて酸化雰囲気中で再酸化する工程と、を有しており、
    前記半導体セラミック層は、下記一般式(1)で示される前記チタン酸バリウム系化合物を主成分とする空隙率が5〜25%の焼結体で構成されており、
    (Ba1−w−xSrREα(Ti1−yTM)O+βSiO+zMnO
    ・・・(1)
    前記一般式(1)において、
    前記REは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy及びErからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、
    前記TMは、V、Nb及びTaからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、
    w、x、y、z、β(いずれもmol)、及びα(Baサイト/Tiサイトのmol比)は、下記式(2)〜(8)を満足し、
    0≦w≦0.3 (2)
    0.001≦x+y≦0.005 (3)
    0.2≦y/(x+y)≦0.8 (4)
    0≦z≦0.0015 (5)
    0.99≦α≦1.1 (6)
    1.02≦α≦1.1の場合、
    2.35α−2.39<β<2.35α−2.32 (7)
    0.99≦α<1.02の場合、
    0≦β<2.35α−2.32 (8)
    前記焼結体は、前記チタン酸バリウム系化合物全体に対して、アルカリ金属換算で0.01〜0.09質量%のアルカリ金属化合物を含有する積層型PTCサーミスタの製造方法。
  10. 前記アルカリ金属化合物の少なくとも一部が、前記焼結体の粒界に存在する請求項9記載の積層型PTCサーミスタの製造方法。
  11. 前記アルカリ金属塩が、NaNO、NaOH、NaCO、NaSiO、LiO、LiOH、LiNO、LiSO、KOH、KNO、KCOからなる群より選択される少なくとも一つである請求項9又は10記載の積層型PTCサーミスタの製造方法。
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