JP2008143332A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】気柱共鳴音の低減が可能でかつ、偏摩耗を軽減し得る空気入りタイヤを提案する。
【解決手段】タイヤの接地面にてトレッドの踏み込み端から蹴り出し端に至るまでの領域を通り抜けるとともに、タイヤの回転する向きに沿って伸延する少なくとも一本の周溝1と、この周溝1によって区画された複数列のリブ2とを備えた空気入りタイヤにおいて、前記各リブ2に、タイヤの接地面内にて路面との接触により閉塞空間を形成する凹部3aと、この凹部3aにつながり同じ周溝の溝壁に開口する狭窄通路3bからなり、タイヤの接地する騒音を、該騒音と略同等の周波数により共鳴させて減音する共鳴部3を設ける。そして、ショルダーのリブ2aに設けられた共鳴部3の凹部3a′については、接地面内における合計体積が、それを除く他の領域のリブ2b、2cの共鳴部3の凹部3aの合計体積よりも小さい合計体積とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、空気入りタイヤ、なかでも乗用車用の空気入りタイヤに関するものであり、トレッド踏面の周方向に直線状もしくはジグザグ状に連続して延びる周溝によって発生するのが避けられない気柱共鳴音を、とくにショルダー部における局所的な摩耗を伴うことなしに有効に低減させる技術を提案するものである。
気柱共鳴音とは、トレッド踏面の周方向に連続して延びる周溝と、トレッド踏面接地域内の路面とによって囲繞される管内の空気の共鳴によって発生する騒音であり、この気柱共鳴音の周波数は、一般的な乗用車では800〜1200Hz程度に観測されることが多く、ピークの音圧レベルが高くて周波数帯域が広いことから、タイヤの発生騒音の大きな部分を占めることになる。
また、人間の聴覚は、上記の周波数帯域(A特性)においてとくに敏感であるので、フィーリング面での静粛性を向上させる上においても、気柱共鳴音の低減は有効である。
気柱共鳴音の低減は、周溝の容積を減じることが有効であり、通常はかかる手法を採用するのが一般的であったが、近年では、一端だけを周溝に開口し、他端が陸部内で終了する長い横溝を設け、その周溝内での反共振を用いて気柱共鳴音を低減させることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、これとは別に、ヘルムホルツ共鳴器によって、気柱共鳴音の共鳴周波数付近のエネルギーを吸収する技術も提案されている(例えば、特許文献2〜4参照)。
国際公開04/103737号パンフレット 特開平5-338411号公報 特開2000-118207号公報 特開2001-191734号公報
しかしながら、周溝の溝容積を減少させる従来の技術では、排水性能の低下が余儀なくされ、長い横溝の配設が必須となっていた。
また、一端だけを周溝に開口し、他端を陸部内で終了させる長い横溝を設け、その周溝内での反共振を用いて気柱共鳴音を低減させる手法では、トレッドパターンのデザイン上の自由度、適切な陸部剛性の確保等についての難点がある、という問題があった。
これに対し、ヘルムホルツ共鳴器によって気柱共鳴音の共鳴周波数付近のエネルギーを吸収する技術については、上記従来技術のような難点がなく、有効な手段であるといえるものの、タイヤの性能全般(例えば、共鳴気室に依存したピッチノイズや気室という大きな空洞部の周辺における偏摩耗等)、タイヤの量産可能性等を十分に考慮したうえで、ヘルムホルツ共鳴器の、トレッドの具体的かつ効果的な配設方法を開示しているとはいい難く、未だ実用化には至っていないのが現状であった。
本発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、排水性能の低下をもたらすことなく、タイヤのトータル性能および量産性等を十分に確保し、併せて、デザイン上の高い自由度および所期した通りの陸部剛性を実現してなお、周溝によって発生される気柱共鳴騒音を効果的に低減するところにある。
本発明は、タイヤの接地面にてトレッドの踏み込み端から蹴り出し端に至るまでの領域を通り抜けるとともに、タイヤの回転する向きに沿って伸延する少なくとも一本の周溝と、この周溝によって区画された複数列のリブとを備えた空気入りタイヤにおいて、
前記各リブに、タイヤの接地面内にて路面との接触により閉塞空間を形成する凹部と、この凹部につながり同じ周溝の溝壁に開口する狭窄通路からなり、タイヤの接地転動中に生起する騒音を、該騒音と略同等の周波数により共鳴させて減音する共鳴部を設け、
ショルダーのリブに設けられた共鳴部の凹部については、それを除く他の領域の共鳴部の凹部の合計体積よりも小さい合計体積を有する、ことを特徴とする空気入りタイヤであり、本発明においては、ショルダーのリブを除く多のリブにのみ共鳴部を設けた場合(ショルダーのリブには共鳴部を形成しない)も上記の要件を満足するものとする。
上記の構成になる空気入りタイヤにおいて、前記合計体積は、凹部の深さを変更することによって設定するか、凹部の開口面積を変更することによって設定するか、共鳴部の設置個数を変更することによって設定することができるが、これらの組合せにより合計体積を変更してもよい。
また、本発明は、タイヤの接地面にてトレッドの踏み込み端から蹴り出し端に至るまでの領域を通り抜けるとともに、タイヤの回転する向きに沿って伸延する少なくとも一本の周溝と、この周溝によって区画された複数列のリブとを備えた空気入りタイヤにおいて、
前記各リブに、タイヤの接地面内にて路面との接触により閉塞空間を形成する凹部と、この凹部につながり同じ周溝の溝壁に開口する狭窄通路からなり、タイヤの接地する騒音を、該騒音と略同等の周波数により共鳴させて減音する共鳴部を設け、
ショルダーのリブにおけるリブ容積に対する共鳴部の凹部の合計容積の比をV、ショルダーのリブを除く他の領域におけるリブのリブ容積に対する共鳴部の凹部の合計容積の比をVとした場合にV<Vである、ことを特徴とする空気入りタイヤであり、上記リブ容積は、リブ幅、ゴム厚さを基にして求められるものであって、ゴム厚さとは、溝部の最も深いところからトレッド表面に至るまでの垂直距離をいうものとする。
前記共鳴部については、下記式によって得られる共鳴周波数fが700〜1400Hzであるヘルムホルツタイプの共鳴器が有利に適合する。

Figure 2008143332
ここに、r :狭窄通路の半径、
l0 :狭窄通路の長さ、
S :狭窄通路の断面積、
V :凹部の容積、
C :音速
また、前記共鳴部は、凹部及び狭窄通路をそれぞれ第1管路、第2管路とみなしそれらを相互に連結した連結管路からなり、下記式にしたがって共鳴周波数fを求めることができる段付きタイプの共鳴器が適用できる。

tan(kl)tan(kl)−(S/S)=0 、k=2πf/c
c:音速
l:第1管路の長さ
l:第2管炉の長さ
S:第1管路の断面積
S:第2管路の断面積
ショルダーのリブ(陸部)に設けられた共鳴部の凹部の接地面内における合計体積(ショルダーの陸部に存在する共鳴部の凹部の体積の総和)を、それを除く他の領域の共鳴部の凹部の接地面内における合計体積よりも小さくするということは、タイヤの幅方向の中央域に位置するリブほど多くの共鳴部が存在するか、あるいはサイズの大きな共鳴部を配置することを意味するものであって、これにより気柱共鳴音の軽減を図ることができるだけでなく、同時にショルダーにおける偏摩耗(肩落ち摩耗)を回避することが可能となる。本発明において接地面とは、タイヤを適用リムに装着するとともに、それに規定の空気圧を充填して平板上に垂直に置き、そこに最大負荷荷重の80%に相当する質量を負荷したときに平板と接触することになるトレッドゴムの表面領域をいう。
ここに、空気入りタイヤ、なかでも乗用車用タイヤの多くはタイヤ径がタイヤの幅方向中央では大きく、ショルダーでは小さいため、この径差に起因して幅方向中央ではトレッドの非圧縮に伴う周方向へのゴム流動によりドライビング方向(タイヤの回転する向き)のせん断力(接地面内せん断力)が発生しやすくなり、ショルダーではブレーキング方向(タイヤの回転する向きとは逆向き)のせん断力が発生しやすくなる。ショルダーの偏摩耗はかかるせん断力が大きな原因であって、ショルダーにおけるブレーキング方向のせん断力を緩和するには、ドライビング方向のせん断力を軽減するのが有効であり(ショルダーのブレーキング方向のせん断力は中央域におけるドライビング方向のせん断力とは相対的な関係があり、ドライビング方向のせん断力を軽減することでブレーキング方向のせん断力が軽減される)、そのためには、タイヤの幅方向中央域のリブに空隙を持たせればよく、このような空隙の機能を共鳴部の凹部に付加することで気柱共鳴音の軽減と偏摩耗の防止を同時に達成するものであって、そのためにタイヤの中央域のリブに多くの共鳴部を配置するか、サイズの大きな共鳴部を配置してショルダーのリブに設けられた共鳴部の凹部の合計体積よりも小さくする。
タイヤのドライビング方向のせん断力を軽減するには、ショルダーのリブにおけるリブ容積に対する共鳴部の凹部の合計容積の比Vを、ショルダーのリブを除く他の領域におけるリブのリブ容積に対する共鳴部の凹部の合計容積の比Vよりも小さく(V<V)してもよく、これにより、ショルダーのリブに設けられた共鳴部の凹部の合計体積を他の領域の合計体積よりも小さくする場合と同様に、気柱共鳴音の軽減と合わせてショルダーのリブにおける偏摩耗を軽減することが可能となる。
以下、図面を用いて本発明をより具体的に説明する。
図1は本発明に従う空気入りタイヤの実施の形態を要部について模式的に示したものであり、かかるタイヤは、図2に示すような接地面を形成するものであり、ここに、接地面とは、適用リムに装着したタイヤに規定の空気圧を充填して平板に垂直に置き、そのタイヤに、規定の質量(最大負荷荷重)の80%に対応する負荷を作用させたときに平板と接触することになるトレッドゴムの表面領域をいうものとする。
図における1はトレッドの踏み込み端から蹴り出し端に到るまでの領域を通り抜けるとともに、タイヤの回転する向きに沿って伸延する、例えば直線状に連続して延びて全体として円環形状をなす周溝である。
また、2は周溝1によって区画されたリブ、3はタイヤの接地転動中に生起する気柱共鳴音を減音するための共鳴部である。この共鳴部3はタイヤの接地面内にて路面との接触により閉塞空間を形成する気室として機能する凹部3aと、この凹部3aにつながり周溝1の溝壁に対してそれぞれ個別に開口する狭窄通路3bからなる。
上記のような構成において共鳴部3の共鳴周波数を、周溝1の周波数の帯域に合わせることにより、周溝2の一次共鳴エネルギーが、共鳴部3の狭窄通路3b内での空気の振動によって吸収され、周溝1内の気柱共鳴音は、その周溝1の溝容積を減少させることなしに有効に低減されることとなり、加えてショルダーのリブ2aに設けられた共鳴部3の凹部3aは接地面内における合計体積が、それを除く他の領域のリブ2b、2cの共鳴部3の凹部3aの合計体積よりも小さいので、ブレーキング方向のせん断力の軽減に有利なドライビング方向のせん断力が小さくなりショルダーのリブ2aにおける偏摩耗が軽減される。
図3はヘルムホルツ共鳴器を模式的に示したものである。本発明の共鳴部3における凹部3aの陸部開口及び狭窄通路3bはともに、路面によって閉塞された状態では、図3に示すような共鳴器を構成するものであって、その共鳴部3の共振周波数f0は前述した式によって求められる。
共鳴部3の狭窄通路3bの断面形状が円形ではなく上掲図1に示したようなスリットタイプとする場合には、上記の式中の半径rは、該狭窄通路3bの断面積を基にして逆算することによって求められる。
共鳴部3の共鳴周波数f0は、上記の如く、狭窄通路3bの断面積Sや凹部3aの容積V等を適宜選択することで変更され、式中の係数1.3は文献によっては異なる値が存在するが、一般的には実験式から求めることが可能で、本発明においても一つの係数として用いるものとする。
共鳴部3の凹部3aは、その深さ方向の全体にわたって、開口面積と同一の横断面積を有するものを適用することができるが、深さ方向に向けて横断面積が漸増もしくは漸減するものを適用してもよい。凹部3aの底壁は平坦面とすることができるのはもちろん、開口側に向けて凸もしくは凹状の曲面を設けることも可能である。底壁に凹凸(起伏)を設ける場合には、凸部の高さは1.6mm以上、より好ましくは3.0mm以上とする。
また、前記凹部3aの、リブ表面への開口形状は多角形、円形、楕円形その他の曲線輪郭形状を適用し得る。
狭窄通路3bの平面形状については、直線部、曲線部もしくは屈曲部を少なくとも一つをもった任意の形状とすることができ、一つの凹部3aに対して複数設けることも可能であり、この場合、該狭窄通路3bの断面積はその合計(断面積の総和)とし、また、長さについては平均値を用いて凹部3aの設定を行なう。
例えば、狭窄通路3bを二本設ける場合には、下記式を適用することができる。
Figure 2008143332
狭窄通路1:l01、1、1
狭窄通路2:l02、2、2
狭窄通路3bが三本を越える場合には√内の(l+1.3r)、Sがその本数に応じて加算され、分子における係数はその本数分を表示した式に変更する。
共鳴部3の凹部3aは、加硫成型金型のキャスト部分(骨)によって形成することが可能であり、狭窄通路3bは、該加硫成型金型のサイプブレードによって形成することができる。
また、共鳴部3は、円環状をなす一本の周溝1に対して一個だけ設けることができるが、より好ましくは、適用リムに装着したタイヤに規定の空気圧を充填し、そのタイヤに規定の荷重の80%に対応する負荷を作用させた状態で、タイヤの接地面内に常に一つ以上を存在(凹部3aはもちろん、狭窄通路3bを含めてその全部が完全に存在させることを意味し、サイズの異なる共鳴部3(共鳴周波数の異なる共鳴部)の複数個を配置してもよい。)させる配置態様とする。
ここに、上記「適用リム」とは、タイヤのサイズに応じて下記の規格に規定されたリムを、「規定の空気圧」とは、下記の規格において、最大負荷能力に対応して規定される空気圧をいい、最大負荷能力とは、下記の規格で、タイヤに負荷することが許容される最大の質量をいう。また「規定の質量」とは、上記の最大負荷能力をいう。なお、ここでいう空気は、窒素ガス等の不活性ガスその他に置換することも可能である。
また、規格とは、タイヤが生産または使用される地域に有効な産業規格によって決められたものであり、たとえば、アメリカ合衆国では、"THE TIRE AND RIM ASSOCIATION INC.のYEAR BOOK"であり、欧州では、THE European Tyre and Rim Technical OrganisationのSTANDARDS MANUAL"であり、日本では日本自動車タイヤ協会の"JATMA YEAR BOOK"である。
凹部3aの、リブ2の表面からの平均深さhは、リブ2を区画する周溝1の最大深さHの20%以上、とくには40〜80%とするのがよい。
また、狭窄通路3bの、リブ2の表面からの深さdは、凹部3aの平均深さhの70%以下、とくには50%以下とするのがよく、その幅t(狭窄通路が円形の場合には直径)については、凹部3の幅Tの3〜50%(より好ましくは3〜20%以下)とするのがよい。
一般的な乗用車では気柱共鳴音の周波数が800〜1200Hzの範囲で観測されることが多いので、共鳴周波数f0は700〜1400Hzの範囲、または、700〜1800Hzの範囲に設定するのが好ましい。
凹部3aの開口形状は矩形状のものを例として示したが、タイヤの特性に応じて種々の形状に変更することが可能であり、開口面積については25〜300mm、より好ましくは、72〜180mmの範囲とすることができる。その理由は、凹部3aにそれ本来の機能を有効に発揮させつつ、凹部開口縁の、路面衝突騒音の増加を有効に抑制することができるからであり、開口面積が25mm未満では、凹部に所要の容積を確保すべく、凹部3aの深さを深くしても、共鳴部としての機能を十分に発揮させることが困難となる一方、300mmを超えると、開口縁の長さが長くなるために路面衝突音の顕在化が否めなくなるからである。
上述したような、ヘルムホルツ型の共鳴器を適用することができない場合(共鳴部の形状が「いびつ」でデザイン上に問題がある等)や上記の式において共振周波数が予測できない領域がある場合等には、図4〜図6に示すように、凹部3a及び狭窄通路3bをそれぞれ第1管路3a′、第2管路3b′とみなしてそれらを相互に連結した連結管路からなる段付きタイプの共鳴器を適用し下記式にしたがって共鳴周波数fを求めることができる。
段付きタイプの共鳴器につき、境界における第1管路3a′側の音響インピーダンスをZ12 、境界における第2管路3b′側の音響インピーダンスをZ21 とすると、
連続の条件から、
Z21 =(S2/S1)・Z12
第2管路3b′について、境界条件を、x=0でV2=V0ejwt 、x=l2でP2/V2=Z2 とすると、第2管路3b′の音圧分布P2 は、
P2=Zs・{Z21cos(k(l2−x))+jZcsin(k(l2−x))/Zccos(kl2)+ jZ21 sin(kl2 )}・V0ejwt
ここに、V:第2管路3b′の粒子速度分布、V0:入力点の粒子速度、j:虚数単位、Z c :ρc (ρ:空気の密度、c:音速)
また、第1管路3a′について、境界条件を、x=l1でV1=0、x=l2でP2/V2=Z21とすると、第1管路3a′の音圧分布P1は、
P1=Zs・〔Z21cos(k(l2−x))/cos(kl1)・{ Zccos(kl2)+jZ21 sin(kl2 )}〕・V0ejwt
ここに、共鳴の条件 x=0でP2=0より、
tan(kl1)tan(kl2)−(S2/S1)=0、k=2πf/c となり、この共鳴の条件式に基づいてk、l1、l2、S2、S1、cを決定して共鳴周波数fを求める。
段付き管タイプの共鳴器は図示の例では、直方体になる管路を組み合わせたものを示したが、上記の条件式で共鳴周波数を求めるには各管路の断面積Sと長さlを決定すればよいので、管路の形状は直方体に限定されることはなく種々の形状のものを適用し得る。
また、第2管路3b′の一端は周溝1の溝壁で開口していることが不可欠となるが、第1管路3a′、第2管路3b′は、トレッド踏面の接地面内で路面との接触により閉空間を形成することになるので、その上端を図5に示すように、リブ2の表面で開口させておくことが可能であり、この点についても限定されることはない。
実施例1
凹部の周方向に沿う寸法L:18mm、幅T:6mm、深さh:7mm、狭窄通路の長さL′:6mm、深さd:2mm、幅t:1mm、作用周波数:1061Hz)になるヘルムホルツタイプの共鳴器をタイヤの周りに60個(タイヤ一周につき60個という意味でピッチ長さは約34mmであり、以下、タイヤ一周につき60個設けた場合を周上60ピッチという)設けた図7に示すような接地面を有する、サイズが195/65R15のタイヤ(リブ幅20mm、厚さ8mm、溝幅8mm、深さ8mmのストレートの周溝を4本有する)を製作し、これを適合タイヤ1として6JJのリムに装着し、空気圧を210kPaとした状態で、室内ドラム試験機により、4kNの荷重の作用下で80km/hの速度で負荷転動させ、このときのタイヤの側方音をJASO C606に定める条件に従って測定し、1/3オクターブバンド中心周波数800Hz-1000Hz-1250Hz帯域のオーバオール値について比較タイヤとともに評価した(直線状の周溝を4本のみ設けたタイヤ対比)。
この場合、効果有りと判断するのは、実車試験によるドライバーのフィーリング評価で改善効果が見込める2dB以上の音圧低下とした。
なお、比較タイヤ1は、図8に示すような接地面を有し、該接地面内に4本の直線状の周溝を延在させてその周溝によって区画された各リブのうちショルダーのリブのみに共鳴部3(適合タイヤ1と同じもの)を配置したものを用い、共鳴部の共鳴周波数f0は、前述したように、
Figure 2008143332
で求められる値(音速cは343.7m/sで計算)とした。
その結果、比較タイヤ1については1000Hzの周波数帯域で発生する騒音が、直線状の周溝を4本のみ設けたタイヤ対比で2.1dB程度低減されたのに対し、図7に示すような適合タイヤ1では2.3dB程度低減され、騒音レベルがより低減されることが確認された。
また、上記適合タイヤ1、比較タイヤ1については、室内ドラム試験機(Safety walk表面)用いて、速度:80km/h、入力:フリーローリング10分、制動方向に0.1G、10分の交互繰返し、の条件で1200km走行させてその際の摩耗重量(摩耗したゴムの量)を評価した。
摩耗重量は指数表示とし、標準を100とし5%以内の違いならば同程度とみなし、10%以上違いがある場合には顕著な改善効果があるとした。
その結果、適合タイヤ1は94(6%改善)であり、比較タイヤは107(7%悪化)であり、本発明に従うタイヤは摩耗についても著しい改善効果があることが明らかとなった。
実施例2
図9に示すような接地面(センター陸部にL:18mm、T:6mm、h:7mm、L′:6mm、d:2mm、t:1mm、作用周波数:1061Hzの共鳴器を周上60mmピッチで配置、セカンド陸部にL:18mm、T:6mm、h:5mm、L′:6mm、d:2mm、t:0.7mm、作用周波数1063Hzの共鳴器を周上60mmピッチで配置、ショルダー陸部にL:18mm、T:6mm、h:3mm、L′:6mm、d:1.6mm、t:0.7mm、作用周波数1054Hzの共鳴器を周上60mmピッチで配置)を有する、サイズが195/65R15のタイヤ(リブ幅20mm、厚さ8mm、溝幅8mm、深さ8mmのストレートの周溝を4本有する)を製作しこれを適合タイヤ2として、6JJのリムに装着し、空気圧を210kPaとした状態で、実施例1と同様の条件で騒音状況、摩耗重量について調査した。
その結果、比較タイヤ2(接地面は適合タイヤ2と同じ、センター陸部にL:18mm、T:6mm、h:3mm、L′:6mm、d:1.6mm、t:0.5mm、作用周波数:1054Hzの共鳴器を周上60mmピッチで配置、セカンド陸部にL:18mm、T:6mm、h:5mm、L′:6mm、d:2mm、t:0.7mm、作用周波数1063Hzの共鳴器を周上60mmピッチで配置、ショルダー陸部にL:18mm、T:6mm、h:7mm、L′:6mm、d:2mm、t:1mm、作用周波数1061Hzの共鳴器を周上60mmピッチで配置)、適合タイヤ2の何れにおいても1000Hzの周波数帯域で発生する騒音が、直線状の周溝を4本のみ設けたタイヤ対比で2.6dB程度低減された。
摩耗重量に関しては、適合タイヤ1は93(7%改善)であったのに対して、比較タイヤ2は110(10%悪化)であった。
実施例3
上掲図9に示した接地面(センター陸部にL:18mm、T:6mm、h:7mm、、L′:6mm、d:2mm、t:1mm、作用周波数:1061Hzの共鳴器を周上60mmピッチで配置、セカンド陸部にL:12mm、T:5mm、h:7mm、L′:8mm、d:2mm、t:0.7mm、作用周波数1061Hzの共鳴器を周上60mmピッチで配置、ショルダー陸部にL:9mm、T:4mm、h:7mm、L′:12mm、d:2mm、t:0.5mm、作用周波数966Hzの共鳴器を周上60mmピッチで配置)を有するタイヤ(サイズは実施例1と同じ)を製作し、これを適合タイヤ3として実施例1と同様の条件で騒音状況、摩耗重量について調査した。
その結果、比較タイヤ3(接地面は適合タイヤ2と同じ、センター陸部にL:9mm、T:4mm、h:7mm、L′:12mm、d:2mm、t:0.5mm、作用周波数:966Hzの共鳴器を周上60mmピッチで配置、セカンド陸部にL:12mm、T:5mm、h:7mm、L′:8mm、d:2mm、t:0.7mm、作用周波数1061Hzの共鳴器を周上60mmピッチで配置、ショルダー陸部にL:18mm、T:6mm、h:7mm、L′:6mm、d:2mm、t:1mm、作用周波数1061Hzの共鳴器を周上60mmピッチで配置)、適合タイヤ3の何れにおいても1000Hzの周波数帯域で発生する騒音が、直線状の周溝を4本のみ設けたタイヤ対比で2.3dB程度低減された。
一方、摩耗重量については、比較タイヤ3が108(8%悪化)であったの対して適合タイヤ3は94(6%改善)であった。
実施例4
図10に示した接地面(L:9mm、T:4mm、h:7mm、L′:12mm、d:2mm、t:0.5mm、作用周波数:966Hzの共鳴器をショルダー陸部、セカンド陸部周上40mmピッチ(タイヤ一周につき40個、ピッチ長さ約50mm)、センター陸部周上80mmピッチ(タイヤ一周につき80個、ピッチ長さ約25mm)で配置)を有するタイヤ(適合タイヤ4(サイズは実施例1と同じ))及び図11に示した接地面(L:9mm、T:4mm、h:7mm、L′:12mm、d:2mm、t:0.5mm、作用周波数:966Hzの共鳴器をセンター陸部、セカンド陸部周上60mmピッチで配置、ショルダー陸部周上30mmピッチで配置)を有するタイヤ(比較タイヤ4(サイズは実施例1と同じ))をそれぞれ製作し、実施例1と同様の条件で騒音状況、摩耗重量について調査した。
上記の調査では、騒音に関して適合タイヤ4では2.5db程度、また、比較タイヤ4では2.4db程度の改善がみられた。
また、摩耗重量については、適合タイヤ4は92(8%程度の改善)であったのに対して、比較タイヤ4では106(6%程度悪化)であることが確認された。
ショルダー部の局所的な摩耗を抑制しつつ気柱共鳴音を効果的に低減できる空気入りタイヤが提供できる。
本発明に従う空気入りタイヤの要部を模式的に示した図である。 図1に示したタイヤの接地面を示した図である。 ヘルムホルツタイプの共鳴器を示した図である。 段付き管タイプの共鳴器を模式的に示した図である。 段付き管タイプの共鳴器を設けたタイヤの外表面の要部を示した図である。 段付き管タイプの共鳴器を備えたタイヤの接地面を示した図である。 適合タイヤ1の接地面を示した図である。 比較タイヤ1の接地面を示した図である。 適合タイヤ2、3、比較タイヤ2、3の接地面を示した図である。 適合タイヤ4の接地面を示した図である。 比較タイヤ4の接地面を示した図である。
符号の説明
1 周溝
2 リブ(陸部)
3 共鳴部
3a 凹部
3b 狭窄通路

Claims (6)

  1. タイヤの接地面にてトレッドの踏み込み端から蹴り出し端に至るまでの領域を通り抜けるとともに、タイヤの回転する向きに沿って伸延する少なくとも一本の周溝と、この周溝によって区画された複数列のリブとを備えた空気入りタイヤにおいて、
    前記各リブに、タイヤの接地面内にて路面との接触により閉塞空間を形成する凹部と、この凹部につながり同じ周溝の溝壁に開口する狭窄通路からなり、タイヤの接地する騒音を、該騒音と略同等の周波数により共鳴させて減音する共鳴部を設け、
    ショルダーのリブに設けられた共鳴部の凹部については、接地面内における合計体積が、それを除く他の領域のリブの共鳴部の凹部の合計体積よりも小さい合計体積を有する、ことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記合計体積は、凹部の深さを変更することによって設定される、請求項1記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記合計体積は、凹部の開口面積を変更することによって設定される、請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記合計体積は、共鳴部の設置個数を変更することによって設定される、請求項1〜3の何れかに記載の空気入りタイヤ。
  5. タイヤの接地面にてトレッドの踏み込み端から蹴り出し端に至るまでの領域を通り抜けるとともに、タイヤの回転する向きに沿って伸延する少なくとも一本の周溝と、この周溝によって区画された複数列のリブとを備えた空気入りタイヤにおいて、
    前記各リブに、タイヤの接地面内にて路面との接触により閉塞空間を形成する凹部と、この凹部につながり同じ周溝の溝壁に開口する狭窄通路からなり、タイヤの接地する騒音を、該騒音と略同等の周波数により共鳴させて減音する共鳴部を設け、
    ショルダーのリブにおけるリブ容積に対する共鳴部の凹部の合計容積の比をV、ショルダーのリブを除く他の領域におけるリブのリブ容積に対する共鳴部の凹部の合計容積の比をVとした場合にV<Vである、ことを特徴とする空気入りタイヤ。
  6. 前記共鳴部は、下記式にしたがって共鳴周波数f0 を求めることができるヘルムホルツタイプの共鳴器である、請求項1〜4の何れかに記載の空気入りタイヤ。

    Figure 2008143332
    ここに、r :狭窄通路の半径、
    l0 :狭窄通路の長さ、
    S:狭窄通路の断面積
    V :凹部の容積、
    C :音速
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