JP2008081718A - ポリイミド樹脂粒子の製造方法 - Google Patents

ポリイミド樹脂粒子の製造方法 Download PDF

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智央 山内
Akio Matsutani
晃男 松谷
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知穂 吉見
Masahito Shintaku
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Abstract

【課題】 有機溶媒への溶解性が良好な可溶性ポリイミド樹脂、またはその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 ポリイミド樹脂溶液に貧溶媒を添加し、得られたポリイミド樹脂混合溶液を、更に貧溶媒、あるいは貧溶媒を含有する混合溶媒中に滴下してポリイミド樹脂を沈殿させることで、造粒工程においてポリイミド樹脂が塊となることなく、粒径の小さなポリイミド樹脂が得られる製造方法により、上記課題を解決することが出来る。
【選択図】 なし

Description


本発明は、溶解性に優れたポリイミド樹脂粒子の製造方法に関する。
ポリイミド樹脂は、耐熱性、電気絶縁性、耐溶剤性に優れていることから、電子材料として広く使用されている。しかし、耐溶剤性に優れているために、逆に成形加工の際に困難を伴うことがあった。
そこで、近年では有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂が開発されている。例えば、ポリイミドスクリーン印刷用として有機溶媒に可溶なポリイミド樹脂がある(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この様な可溶性ポリイミド樹脂を使用した場合でも、完全に溶解する為には、数十時間、長い場合には数日の溶解時間が必要であった為に、実用性が乏しかった。特に最近新たな用途として検討されている光学用途(例えば、光導波路、各種保護板、光拡散板、光反射板、偏光板、位相差板等)においては、僅かな未溶解物等の存在も許されず、安定して溶解した状態に至る為に、膨大な時間を要するものであった。
また、コーティングにより光学的な機能を有する層を形成する場合には、その光学特性を制御する為にその層の厚みが重要な因子となることがあるが、未溶解物が存在すると溶液の濃度が変わり、その結果厚みが変わり光学特性を所望の値に制御できないこととなる為、やはり完全に溶解した状態とする為に膨大な時間を要していた。
一方、ポリイミド樹脂粒子の形状については、圧縮成形用途において検討されていたが(例えば、特許文献2、特許文献3参照)、溶解時間との関係で検討されることはなかった。
また、ポリイミド樹脂粒子の製造方法は、前記特許文献2、特許文献3を含め一般的には、ポリアミド酸からポリイミドへ変性する際の溶解性の変化を利用して析出させるものであり、特に析出条件を操作してその粉体の形状を任意に制御することは行われていなかった。
また、本発明者の検討によれば、脂肪族系のポリイミド樹脂(例えば、イミド基に結合する炭素の一部が脂肪族系炭素であるポリイミド樹脂)を含有した系、特に重量平均分子量が20,000以上、150,000以下である系においては、ポリイミド樹脂の溶液に貧溶媒を滴下してポリイミド樹脂粒子を析出させる方法では、ポリイミド樹脂が塊として析出してしまい、取り扱い性の良い粒子として取り出すことが困難であった。これは、樹脂の構造に由来するものと考えられ、更には上記の様な比較的分子量分布が狭い場合、貧溶媒の割合が特定の比率になった時に急激にポリイミド粒子が析出してしまうことが原因であると推察される。
また、この様なポリイミド樹脂の塊は非常に堅く、事後に粉砕することは容易ではない。更に、塊の中に重合時等に使用した副原料や溶媒等が取り込まれてしまい、後に使用する際に不純物として混入するという問題もあった。
特開2000−154346号公報 特許第3596284号公報 特許第2609279号公報
本発明は、従来の技術が有する上記課題に鑑みてなされたもので、溶解性が良好なポリイミド樹脂粒子、またはその製造方法を提供することを目的とする。
そこで本発明者らは鋭意検討した結果、
1)可溶性ポリイミド樹脂の溶液(以下、ポリイミド樹脂溶液)に、沈殿を生じない範囲の量の貧溶媒を添加し(以下、ポリイミド樹脂混合溶液)、更に、得られたポリイミド樹脂混合溶液を、貧溶媒または貧溶媒を含有する混合溶媒中に滴下してポリイミド樹脂を沈殿させることで、造粒工程においてポリイミド樹脂が塊となることなく、粒径の小さなポリイミド樹脂粒子が得られることを見出し、本発明に至った。
さらに、本発明は、
2)可溶性ポリイミド樹脂が、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキソラン、クロロホルム、ジクロロメタンから選ばれる1以上の溶媒に、固形分濃度5重量%以上の濃度で溶解可能なポリイミド樹脂であることを特徴とする1)記載のポリイミド樹脂粒子の製造方法に関する。
3)前記ポリイミド樹脂溶液が、下記一般式(1)で表されるユニットを含有してなるポリイミド樹脂溶液であることを特徴とする1)又は2)に記載のポリイミド樹脂粒子の製造方法に関する。
Figure 2008081718
(ここでRは、炭素数が1〜20である炭化水素からなり、イミド基が結合している炭素が、脂肪族炭素である。)
4)貧溶媒にアルコール類又は炭化水素類を主成分として含む有機溶媒を用いることを特徴とする前記1)〜3)のいずれかに記載のポリイミド樹脂の製造方法に関する。
5)更に、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)においてポリエチレングリコール換算したときの重量平均分子量が20,000以上、150,000以下であることを特徴とする前記1)〜4)のいずれかに記載のポリイミド樹脂の製造方法に関する。
6)また、一般式(1)のRが、下記一般式群(2)で表される少なくとも1種の構造であるポリイミド樹脂であることを特徴とする、前記1)〜5)のいずれかに記載のポリイミド樹脂の製造方法に関する。
Figure 2008081718
(但し、式中のXは、O、SO、CH、C(CH3、C(CFから選ばれる置換基であり、式中のYはそれぞれ独立した、H、F、Cl、Br,CF、CCl、CBrから選ばれる置換基である。)
7)前記ポリイミド樹脂が、更に下記一般式(3)で表されるユニットを含有することを特徴とする前記1)〜6)のいずれかに記載のポリイミド樹脂の製造方法に関する。
Figure 2008081718
(ここでRは炭素数が1〜20である炭化水素からなり、イミド基が結合している炭素が、芳香族炭素である。)
8)上記1)〜7)のいずれかに記載のポリイミド樹脂粒子の製造方法により製造された粒径が5mm以下である粒子の割合が60重量%以上であることを特徴とするポリイミド樹脂粒子に関する。
本発明によれば、脂肪族系のポリイミドユニットを含有したポリイミド樹脂を製造する際にも、粒径の小さなポリイミド樹脂粒子を得ることができるので、これを有機溶媒等に溶解して使用する際に短時間で溶解させることが可能となり、また、混入する不純物の量を低減することも可能であり、有用である。特に光学用途で使用する際に重要である。
本発明は、可溶性ポリイミド樹脂の溶液に、沈殿を生じない範囲の量の貧溶媒を添加し、更に得られたポリイミド樹脂混合溶液を貧溶媒または貧溶媒を含有する混合溶媒中に滴下してポリイミド樹脂を沈殿させることを特徴とする、ポリイミド樹脂粒子の製造方法に関するものである。この方法によれば、得られるポリイミド樹脂が塊となり難く、後に強固な塊を粉砕する等の作業を行うことなしに、再び溶解する際の溶解時間を短くすることが可能となる。また、ポリイミド樹脂を取り出す際に塊の中に重合時等に使用した副原料や溶媒等が取り込まれてしまうことが低減でき、その結果不純物の含有量を低下することが可能となる。
本発明で用いる可溶性ポリイミド樹脂は、各種有機溶剤に溶解可能であれば特に制限されない。有機溶剤としては例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶剤、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン系溶剤、ジオキソラン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤を用いることができる。特にジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキソラン、クロロホルム、ジクロロメタンから選ばれる1以上の溶媒に、固形分濃度5重量%以上の濃度で溶解可能なポリイミド樹脂であることが特に好ましい。前記可溶性ポリイミド樹脂の中でも一般式(1)で表されるユニットを含有してなる可溶性ポリイミド樹脂がより好ましい。
Figure 2008081718
ここでRは、炭素数が1〜20である炭化水素からなり、イミド基が結合している炭素が、脂肪族炭素である。さらに、Rは一般式群(2)で表される群から選ばれる1以上の構造であることが好ましい。
Figure 2008081718
式中、Xは、O、SO、CH、C(CH、C(CFから選ばれる置換基であり、式中のYはそれぞれ独立した、H、F、Cl、Br、CF、CCl、CBrから選ばれる置換基である。
本発明で用いられるポリイミド樹脂は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を反応させる方法(より具体的には、一度ポリアミド酸を合成した後、これを脱水閉環してポリイミド樹脂とする方法)により好適に製造することができるが、この際に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、カルボニル基が結合している炭素が脂肪族炭素であることが好ましい(以下、この様な酸二無水物を脂肪族テトラカルボン酸二無水物ということがある。)。ここで脂肪族炭素とは、隣接する原子との結合が全て一重結合である炭素原子であることを表す(即ち、脂肪族系の炭素、脂環式系の炭素等が含まれる。)。本発明においては、カルボニル基が結合している炭素が脂肪族炭素である脂肪族テトラカルボン酸二無水物を使用することにより、ポリイミド樹脂の分子内共役及び電荷移動吸収が抑制され、結果として高透明性を有するポリイミド樹脂を好適に得ることが可能となる。
その具体例としては、例えば、1,2,4,5−シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1−メチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1−エチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジエチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラエチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラフェニルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジアリール−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ジアリール−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、ビシクロ[2,2,2] −オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,1] −ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、3,4−ジカルボキシテトラリン−1−コハク酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1−コハク酸二無水物等が挙げられる。特に、ポリイミド樹脂の溶解性を向上することが可能な点で3,4−ジカルボキシテトラリン−1−コハク酸二無水物を用いるのが好ましい。また、他の特性を調整する等の為に、これらの内複数、またはこれらとは異なる他のテトラカルボン酸二無水物を併用して用いることも可能である。
また、この際に使用するジアミンとしては、アミノ基が結合している炭素が脂肪族炭素であるものが好ましい(以下、この様なジアミンを脂肪族ジアミンということがある。)。ここで脂肪族炭素とは、隣接する原子との結合が全て一重結合である炭素原子であることを表す(即ち、脂肪族系の炭素、脂環式系の炭素等が含まれる。)。本発明においては、アミノ基が結合している炭素が脂肪族炭素である脂肪族ジアミンを使用することにより、ポリイミド樹脂の分子内共役及び電荷移動吸収が抑制され、結果として、脂肪族酸二無水物と組み合わせることで、より透明性の高いポリイミド樹脂を好適に得ることが可能となる。その具体例としては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4´−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロへキサン、4,4´−ジアミノジシクロヘキシルプロパン、2,3−ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,7−ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,3−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,2−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,4−ビス(アミノメチル)ベンゼン等が挙げられる。この中でも、特に前記一般式(1)中のRとして前記一般式群(2)で表される構造を与えるジアミンを用いることが好ましい。
また、得られるポリイミド樹脂の溶媒への溶解性を向上する目的で、上記脂肪族ジアミンに加えて、芳香族ジアミンがポリイミド樹脂中に導入されていることが好ましい。即ち、本発明で使用するポリイミド樹脂は、上記一般式(1)で表されるユニットに加えて一般式(3)で表されるユニットを含有して形成されていることが好ましい。
Figure 2008081718
(ここでRは炭素数が1〜20である炭化水素からなり、イミド基が結合している炭素が、芳香族炭素である。) 例えば、好適に用いることが出来る芳香族ジアミンとしては、例えば2,2´−ジメチル−4,4´−ジアミノビフェニル、2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジアミノビフェニル、2,2´−ビス(トリクロロメチル)−4,4´−ジアミノビフェニル、2,2´−ビス(トリブロモメチル)−4,4´−ジアミノビフェニル、2,2´−ジフルオロ−4,4´−ジアミノビフェニル、2,2´−ジクロロ−4,4´−ジアミノビフェニル、2,2´−ジブロモ−4,4´−ジアミノビフェニル、4,4´−ジアミノビフェニル、4,4´−ジアミノ−ベンゾフェノン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−2−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−2−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−2−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−トリフルオロメチルフェニル)フルオレン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ジアミノジフェニルプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられる。また、屈曲性のジアミンである4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ジアミノジフェニルプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、または、フッ素基を導入した2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジアミノビフェニル(TFMB)等も同様にポリイミド樹脂の溶解性を向上することが可能である。これらの中でも、特に2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジアミノビフェニル(TFMB)が好ましく、TFMBの含有量を変化させることで、容易に所望の有機溶媒に可溶となるポリイミド樹脂を得ることができる。
一般式(1)で示される脂肪族アミンと、一般式(3)で示される芳香族アミンを使用する場合、その割合は、ポリアミド酸の重合に用いるジアミンの全モル数を1モル当量とした場合に、脂肪族ジアミンが0.1モル当量以上であることが好ましく、0.2モル当量以上であることがより好ましい。上限は特に制限されないが、0.85モル当量以下、0.7当量以下であることがより好ましく、0.5モル当量以下がより好ましい。
また、ポリイミド樹脂の分子量は、GPCのPEG(ポリエチレングリコール)換算で、重量平均分子量が20,000以上、150,000以下であることが好ましく、さらに20,000以上、100,000以下であることが好ましい。分子量が20,000以下の場合は、膜やフィルムにした場合の機械的強度が低下したり、光学特性が変化しやすくなる等の問題があり、分子量が150,000以上になるとポリイミド樹脂の溶解性が低下する場合がある。
この様なポリイミド樹脂を合成した場合、合成時に使用した溶媒中にポリイミド樹脂が溶解したポリイミド樹脂溶液の形で得られることが多い。ポリイミド樹脂溶液からポリイミド樹脂を取り出す方法としては、通常、ポリイミド樹脂溶液に対し沈殿を生じるのに十分な量の貧溶媒を添加する方法、またはポリイミド樹脂溶液に対し沈殿を生じるのに十分な量の貧溶媒中にポリイミド樹脂溶液を投入する方法が用いられるが、本発明で使用する特定のポリイミド樹脂においては、この様な方法を用いると、樹脂の特性によるものと推定されるが、ポリイミド樹脂が塊として析出してしまい、取り扱い性の良い粒子として取り出すことができなかった。
本発明でポリイミド樹脂粒子を得るためにポリイミド樹脂溶液に添加する溶媒としては、ポリイミド樹脂溶液を構成する溶媒のポリイミド樹脂に対する溶解度(溶媒がポリイミド樹脂を溶解する割合、混合溶媒の時は溶媒全体に対する溶解度)よりも溶解度が低ければ各種溶媒が使用可能である。本明細書においては、ポリイミド樹脂溶液を構成する溶媒の溶解度よりも相対的に溶解度が低い溶媒を貧溶媒という。特にポリイミド樹脂溶液中に溶解しているポリイミド樹脂を溶解する能力が低いか、または全く溶解する能力のない溶媒、例えば、該ポリイミド樹脂を固形分濃度で0.5重量%以上、更に好ましくは0.1重量%以上溶解することができない溶媒であることが好ましく、更にポリイミド樹脂溶液を構成する溶媒と混和し、多量に使用した場合にポリイミド樹脂を沈殿させるものであることが好ましい。尚、貧溶媒は使用するポリイミド樹脂またはポリイミド樹脂溶液を構成する溶媒により変わり一概に決まるものではないが、例えば、アルコール類、炭化水素類、水等を主成分として含む溶媒が使用できる可能性がある。ここで「主成分」とは、貧溶媒中の重量%が最も高いものを指す。アルコール類としては、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、2−ペンチルアルコール、2−ヘキシルアルコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、フェノール(本発明では、これらもアルコール類として考えることとする)等が使用できる可能性があり、特に乾燥効率の面から、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコールが、また、得られるポリイミド樹脂のイミド化率を高位に安定化させることが容易であるという点から、2−プロピルアルコール、2−ブチルアルコール、2−ペンチルアルコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、t−ブチルアルコール等の2級又は3級アルコール等が好ましく、その中でも2−プロピルアルコールが特に好ましい。
炭化水素類の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、エチルベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロホルム、塩化イソプロピル、塩化ブチル、塩化ペンチル、塩化ヘキシル、クロロベンゼン、ブロモベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、アニソール、ジオキサン、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類が挙げられる。ポリイミド樹脂の収率向上の面で、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、エチルベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。
また、添加する溶媒、特に貧溶媒の量は、ポリイミド樹脂の沈殿を生じない範囲の量であることが好ましい(ここで”沈殿”とは、均一に混合した状態で析出が生じる状態を意味するものである。これに対し、貧溶媒を添加した直後に白濁を生じ、その後に均一に混合した時に溶解することがあるが、この様な状態を意味するものではない。)。ポリイミド樹脂の組成、分子量、溶解している溶媒組成、溶液温度、添加する貧溶媒種等に応じ、調整することが好ましい。尚、取り扱い性の点から、その添加量は、貧溶媒が重量でポリイミド樹脂溶液の0.1倍以上、1.5倍以下、さらに好ましくは0.2倍以上、1.0倍以下の量で添加されることが好ましい。
また、ポリイミド樹脂溶液に沈殿を生じない範囲の量の貧溶媒を添加したポリイミド樹脂混合溶液の溶液粘度が、20Pa・s以下となる様に溶媒種、添加量を調整することが好ましい。溶液粘度が20Pa・sより高いと、例えばポリイミド樹脂混合溶液を小径の穴(例えば、直径が約5mm)の滴下漏斗を用いて貧溶媒中に滴下する際に、滴下することが難しくなることがある。尚、大径の液滴や、高濃度の液滴を貧溶媒中に滴下すると、得られるポリイミド樹脂粒子の粒径が大きくなったり、粒子の密度が高くなり、後に溶媒に溶解する際に長い溶解時間が必要となったり、また不純物を取り込んだまま粒子が形成されたりする可能性があり好ましくない。
貧溶媒を添加する温度については特に制限はないが、10℃以上60℃以下が好ましい。このうち20℃以上、40℃以下がさらに好ましい。貧溶媒を添加する温度が60℃以上の場合、イミド構造が開環するなど品質の低下を引き起こす可能性がある。また10℃以下の場合、粒子同士の付着を防止するため続いて行う濾過、洗浄工程も10℃前後で行う必要があるためである。
ポリイミド樹脂混合溶液を貧溶媒中に滴下する際、攪拌下で行うことが好ましい。攪拌槽、攪拌翼形状は特に制限されるものではなく、一般的な装置が使用可能である。攪拌強度についても特に制限はないが、粒子同士の合一を抑制するため、単位液量あたりの所要動力が0.3kW/m以上であることが好ましい。
また、ポリイミド樹脂混合溶液を貧溶媒中に滴下してポリイミド樹脂を沈殿させる際の貧溶媒量は、重量でポリイミド樹脂混合溶液の0.3倍以上、さらに好ましくは0.5倍、0.7倍以上の量を用いることが好ましい。
またこのポリイミド樹脂を沈殿させる際に用いる溶媒として、貧溶媒と樹脂を溶解可能な溶媒を混合して用いることもできる(以下、貧溶媒を含有する混合溶媒ともいう)。この方法によると、滴下したポリイミド樹脂混合溶液の液滴形状の影響を受けず、小粒径の樹脂が得られる。これにより、濾過工程での脱液性および洗浄効率を向上することができる。
ここで用いる溶解可能な溶媒は、樹脂を溶解することができ、かつ貧溶媒と均一に混合されるものが好ましい。さらに好ましくは重合溶媒と同一のものであれば工業的にも有利である。例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキソラン、クロロホルム、ジクロロメタンなどが好適に使用され得る。
貧溶媒を含有する混合溶媒中、貧溶媒と樹脂を溶解可能な溶媒の比率は、樹脂を沈殿できる範囲であれば特に制限されない。しかし生成した粒子中に溶解可能な溶媒を多く含んでいると、濾過、乾燥工程で粒子同士付着する等のトラブルを招くことがある。このためポリイミド混合樹脂溶液を添加し終わった後の粒子が懸濁した液において、溶解可能な溶媒の比率を一定以下の範囲とする必要がある。使用する溶媒の種類によって変化するが、全溶媒量に対し溶解可能な溶媒の比率が50重量%以下、より好ましくは10重量%以上40重量%以下の範囲である。
前述のとおり沈殿により生成した粒子の濾過、乾燥工程での粒子の付着を抑制するためには、樹脂を溶解可能な溶媒の使用量に相応した貧溶媒量が必要となる。したがって貧溶媒と樹脂を溶解可能な溶媒の混合溶液およびポリイミド樹脂混合溶液を交互に添加することにより使用する貧溶媒量を抑えることができる。
また、この様にして形成したポリイミド樹脂粒子は、その粒径が5mm以下、さらに好ましくは3mm以下、特には1mm以下であることが好ましい。また、この粒径の粒子が、得られたポリイミド樹脂粒子中に60重量%以上、更には80重量%以上含まれていることが好ましい(この範囲を下回ると、比較的大きな粒子が生成し、粉砕して使用することも困難となる可能性がある。)。粒子径が小さいほど溶解時間を短くすることが容易となり、また粒子中に取り込まれる不純物も低減しやすくなり好ましい。
尚、ポリイミド樹脂溶液からポリイミド樹脂粒子を沈殿させ分離しただけでは、乾燥後に所望の状態(有機溶媒に溶解しやすい状態)のポリイミド樹脂を得ることが難しいことがある。これはポリイミド樹脂中にポリイミド樹脂溶液を構成していた溶媒等が多く含有されていることによるものと推察され、ポリイミド樹脂を更に前記貧溶媒等で洗浄することで所望の状態のポリイミド樹脂粒子を容易に得ることが可能となる。
また、この様にして製造したポリイミド樹脂粒子の乾燥は、真空乾燥、熱風乾燥等の各種方法が使用可能であるが、光学用途に用いる場合、乾燥時の着色が問題となる場合があるので、120℃以下で行うことが望ましい。
以下、本発明で使用するポリイミド樹脂、特にポリイミド樹脂溶液の合成方法について説明する。本発明で使用するポリイミド樹脂溶液は、以下の(1)、(2)で示す2つの工程を経ることで、好適に製造することができる。それぞれの工程について例を挙げて説明する。但し、本発明は以下の製造方法、又はこれによって得られる樹脂に限定されるものではない。
(1)ポリアミド酸の重合 ジアミンを溶解した有機溶媒中に、酸二無水物を分散し、攪拌することで完全に溶解させ重合させる方法、酸二無水物を有機溶媒中に溶解及び/または分散させた後、ジアミンを用いて重合させる方法、酸二無水物とジアミンの混合物を有機溶媒中で反応させて重合する方法など、公知の重合方法を用いることができる。
反応は、例えばポリアミド酸溶液中のポリアミド酸濃度が30重量%の場合、ポリアミド酸溶液の粘度が、5Pa・s以上になるまで反応を行うことが好ましく、さらには10Pa・s以上、20Pa・s以上まで反応を行うことが好ましい。ポリアミド酸溶液の粘度が20Pa・s以上であると、後の貧溶媒を添加する工程において溶解性の優れたポリイミド樹脂を得ることが容易となるので好ましい。
反応装置には、反応温度を制御するための温度調製装置を備えていることが好ましく、反応溶液温度として60℃以下が好ましく、さらに、40℃以下であることが反応を効率良くしかも、ポリアミド酸の粘度が上昇しやすいことから好ましい。
ポリアミド酸の重合に使用する有機溶媒としては、例えばテトラメチル尿素、N,N−ジメチルエチルウレアのようなウレア類、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、テトラメチルスルフォンのようなスルホキシドあるいはスルホン類、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ―ブチルラクトン、ヘキサメチルリン酸トリアミドのようなアミド類、またはホスホリルアミド類の非プロトン性溶媒、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化アルキル類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、フェノール、クレゾールなどのフェノール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、p−クレゾールメチルエーテルなどのエーテル類等が挙げられる。通常はこれらの溶媒を単独で用いるが、必要に応じて2種以上を適宜組合わせて用いても良い。これらのうちDMF、DMAc、NMPなどのアミド類が好ましく使用される。
ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸の重量%は、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、更に好ましくは15〜35重量%であることが、取り扱い性の面から好ましい。
(2)ポリアミド酸のイミド化 ポリアミド酸をイミド化する方法について記載する。ポリアミド酸をイミド化する方法として、公知の各種方法を使用することができる。例えば、熱的に脱水閉環する熱的イミド化法や、脱水剤を用いる化学的イミド化法が使用できる。
熱的イミド化法は、イミド化反応時に生成する水と共沸するトルエン等の共沸溶媒をポリアミド酸溶液に添加後、加熱して行うことが一般的である。熱的イミド化法ではイミド化促進剤を併用することができる。
一般的に化学的イミド化法は、熱的イミド化法よりもイミド化反応が進行しやすく、加熱時のポリアミド酸の分解を抑制し、イミド化できる点で好ましい。
化学的イミド化法ではイミド化促進剤を用いることが、反応を短時間で終了させる点で好ましい。イミド化促進剤としては、各種三級アミンが使用可能であるが、特にピリジン、3−メチル−ピリジン、キノリン、イソキノリンなどの複素環式第3級アミン類などが高いイミド化率を有するポリイミド樹脂が得られる点で好ましい。
化学的イミド化法で用いる脱水剤としては、無水酢酸などの脂肪族酸無水物や芳香族酸無水物などが挙げられる。無水酢酸を用いることがポリイミド樹脂の析出工程に適しているという点から好ましい。
ポリアミド酸に対するイミド化促進剤の添加量は、イミド化促進剤/ポリアミド酸中アミド基のモル比で0.5〜5、より好ましくは、1〜5、さらに好ましくは2〜4であるように用いることが好ましい。イミド化促進剤/ポリアミド酸中アミド基のモル比が小さすぎるとイミド化が十分に進行しない場合がある。逆に大きすぎると、ポリイミド樹脂粉体の析出で用いる貧溶媒にもよるが、イミド化率を低下させる傾向にある。
ポリアミド酸に対する脱水剤の添加量は、脱水剤/ポリアミド酸中のアミド基のモル比で1.2〜4.0となるよう用いることが好ましい。脱水剤の量が脱水剤/ポリアミド酸中のアミド基のモル比で1.2未満だとイミド化が十分に進行しない場合があり、逆に脱水剤/ポリアミド酸中のアミド基のモル比で4より大きいと分子量の低下や着色を引き起こすことがある。
イミド化における反応温度は、120℃以下で行うことが好ましく、さらに好ましくは50℃以下で反応を行うことが好ましい。これは、ポリアミド酸の状態において、反応温度が高温の場合分子量低下を引き起こす恐れがあり、且つ、100℃以上に加温するとポリイミド樹脂溶液の着色を引き起こすおそれがあるため、目的の高透明なポリイミド樹脂を得るためには、イミド化時の着色を防ぐ必要がある。そのため、0℃から30℃でイミド化を行うことが、着色を防ぐ上でより好ましい。
このようにして得られたポリイミド樹脂溶液は一旦乾燥させて溶媒を除去し、得られるポリイミド樹脂を各種有機溶剤に溶解してポリイミド樹脂溶液としてやってもよいし、そのままポリイミド樹脂溶液として、本発明のポリイミド樹脂粒子の製造方法に付してやればよい。もちろん、ポリイミド樹脂が溶解していれば、新たに溶媒を追加してポリイミド樹脂溶液としてもよい。
本発明のポリイミド樹脂の着色度は、ポリイミド樹脂を溶剤に溶解した際のハーゼンナンバー(APHA値)によって評価することができる。着色度は、ポリイミド樹脂粒子を固形分濃度15重量%となるようにDMFに溶解した際のハーゼンナンバーが250以下であることが好ましく、200以下であることがさらに好ましい。ハーゼンナンバーが前記範囲を上回ると、液晶表示装置等のディスプレイ材料として用いた場合に、白色表示が黄色く着色する等、色再現性に劣る場合がある。
本発明で製造されるポリイミド樹脂粒子は、前述の溶解可能な溶媒に溶解して(この状態をワニスと言うことがある。)例えば塗布・乾燥することにより、フィルム状、若しくは層状に成型することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(粘度測定方法)東機産業製の恒温槽付属E型粘度計(RE550U)を用い、20℃で測定した。標準ロータ(1°34′コーン)を用い、測定可能範囲の10〜20%となる回転数で、測定開始1分後の値を読み取った。
(実施例1)TDA−TFMB/CHDA(50%/50%)ポリイミド樹脂の製造
(ポリアミド酸の重合) ポリテトラフルオロエチレン製シール栓付き攪拌機(攪拌翼が4枚羽根)、窒素導入管を備えた容積300mLのガラス製セパラブルフラスコを用いてポリアミド酸を製造した。
上記セパラブルフラスコに、trans−1,4−ジアミノシクロヘキサン(CHDA)3.56g(31.2ミリモル)と4,4‘−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)9.98g(31.2ミリモル)を入れ、重合用溶媒として脱水したN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)70.0gを仕込み攪拌した後、この溶液に、TDA(3,4−ジカルボキシテトラリン−1−コハク酸二無水物、新日本理化(株)製、商品名リカジットTDA−100)18.71g(62.0ミリモル)を加えて攪拌した。反応中は25℃の水浴中で60時間攪拌し、ポリアミド酸を得た。なお、この反応溶液における脂肪族ジアミン化合物及び脂肪族テトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応液に対して30重量%となっていた。
(ポリアミド酸のイミド化) 上記溶液にDMFを11.52g加えた後、さらにイミド化触媒として3−メチル−ピリジンを23.21g(”イミド化促進剤/ポリアミド酸中アミド基”のモル比=2.0)添加して、完全に分散させた。分散させた溶液中に無水酢酸を16.67g(”脱水剤/ポリアミド酸中アミド基”のモル比=1.2)を添加し、25℃で、4時間攪拌を行った。
(ポリイミド樹脂粒子の製造) 上記で得られた固形成分濃度20.0重量%であるポリイミド樹脂溶液を、300回転に撹拌翼で撹拌した後、穴の直径が約5mmの滴下漏斗から160mlの貧溶媒2−プロピルアルコール(IPA)を、30ml/分の速度でポリイミド樹脂溶液中に滴下し(析出は生じなかった)、溶液粘度が2Pa・sであるポリイミド樹脂混合溶液を調整した。操作は25℃の室温で行った。
次に、25℃の室温下で、上記の操作で得られたポリイミド樹脂混合溶液を、穴の直径が約5mmの滴下漏斗を用いて、300回転に撹拌翼で撹拌した300mlの貧溶媒IPA中に8ml/分の速度で滴下した。滴下後、攪拌翼を100回転に下げ、20分攪拌した。攪拌翼の回転を止め、樹脂固形分を静沈させ、これをろ過した。さらに、濾別して得られた樹脂固形成分をIPA300mlで洗浄した(ジメチルホルムアミド、3−メチル−ピリジン等の除去を行った。)。この洗浄作業を5回実施した後に、真空乾燥装置で100℃に加熱乾燥して、ポリイミド樹脂粒子を得た。
(評価) (重量平均分子量(Mw)) 下記表1の条件で測定を行った。
Figure 2008081718
評価結果を表2に記載した。重量平均分子量は37000であり特に問題のない結果であった。
Figure 2008081718
(ポリイミド樹脂粒子の形状) 得られたポリイミド樹脂粒子をふるいにかけ、粒径が5mm以下の粒子の割合が80%以上存在するものを○、60%以上、80%未満のものを△、60%未満のものを×として評価した。評価結果を表2に記載した。粒子は1〜3mm程度の粒子であり良好な形状であった。
(ポリイミド樹脂粒子中の残存溶媒量) ガスクロマトグラフ(HEWLETT PACKARD製 HP6890seriesGC System)を用い測定を行った。
得られたポリイミド樹脂粒子40mgをテトラヒドロフラン溶媒に溶かして4gの溶液を調整し、サンプルとした。
検出されたDMF、β−ピコリン、酢酸の含有量を表2に記載した。製品中の残溶剤は少ないほど良いが、樹脂に対し2重量%以下を目安とした。残存溶剤量は合計で1.29%であり良好な結果であった。
(ワニスの着色度) 得られたポリイミド樹脂粒子を固形成分濃度15重量%となるようDMFに溶解後、石油色試験機(OME−2000)を用いて測定した。ハーゼンナンバー(APHA値)で着色度を判断し、YI値の同値が3回でるときの値を採用した。200以下の数値を良好と判断した。
評価結果を表2に記載する。APHA値は149であり良好な結果であった。
(実施例2) 貧溶媒をメタノールとした以外は、実施例1と同一の方法で行った。評価結果を表2に示す。実施例1に比べ、残存溶剤量0.67%と少ない結果であったが、重量平均分子量、着色度、粒子形状は実施例1と同等であり、良好な結果であった。
(実施例3)TDA−TFMB/CHDA(70%/30%)ポリイミド樹脂の製造
(ポリアミド酸の重合) ポリテトラフルオロエチレン製シール栓付き攪拌器(攪拌翼が4枚羽根)、窒素導入管を備えた容積2Lのガラス製セパラブルフラスコを用いてポリアミド酸を製造した。
上記セパラブルフラスコに、trans−1,4−ジアミノシクロヘキサン(CHDA)18.45g(161.6ミリモル)と4,4‘−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)120.70g(376.9ミリモル)を入れ、重合用溶媒として脱水したN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)557.1gを仕込み攪拌した後、この溶液に、TDA(3,4−ジカルボキシテトラリン−1−コハク酸二無水物、新日本理化(株)製、商品名リカジットTDA−100)161.74g(538.7ミリモル)を加えて攪拌した。反応中は25℃の水浴中で60時間攪拌し、ポリアミド酸を得た。なお、この反応溶液における脂肪族ジアミン化合物及び脂肪族テトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応液に対して35重量%となっていた。
(ポリアミド酸のイミド化)上記溶液630.0gにDMFを221.0g加えた後、さらにイミド化触媒として3−メチル−ピリジンを147.24g(”イミド化促進剤/ポリアミド酸中アミド基”のモル比=2.0)添加して、完全に分散させた。分散させた溶液中に無水酢酸を96.8g(”脱水剤/ポリアミド酸中アミド基”のモル比=1.2)を添加し、25℃で、4時間攪拌を行った。
(ポリイミド樹脂粒子の製造) 上記で得られたポリアミド酸100gにDMF33.3gを添加し固形分濃度を15重量%に調整した。このポリイミド樹脂溶液133gを、撹拌翼で520回転で撹拌した後、穴の直径が約5mmの滴下漏斗から100mlの貧溶媒IPAを、40ml/分の速度でポリイミド樹脂溶液中に滴下した(析出は生じなかった)。操作は25℃の室温で行った。
次に、上記の操作で得られたポリイミド樹脂混合溶液を、25℃の室温にて、穴の直径が約5mmの滴下漏斗を用いて、440回転で撹拌した550mlのIPA中に8ml/分の速度で滴下した。滴下後、30分攪拌を継続した。攪拌翼の回転を止め、樹脂固形分を静沈させ、これをろ過した。さらに、濾別して得られた樹脂固形成分をIPA200mlで洗浄した(ジメチルホルムアミド、3−メチル−ピリジン等の除去を行った。)。この洗浄作業を3回実施した後に、100℃に真空乾燥して、ポリイミド樹脂粒子を得た。
(評価) (重量平均分子量(Mw))
評価結果を表2に記載した。重量平均分子量は45000であり特に問題のない結果であった。
(ポリイミド樹脂粒子の形状) 評価結果を表2に記載した。2〜3mm程度の粒子が得られ、良好な結果であった。
(ポリイミド樹脂粒子中の残存溶媒量)
検出されたDMF、β−ピコリン、酢酸の含有量を表2に記載した。残存溶剤量は合計で0.66%であり良好な結果であった。
(濾過ケーキ固形分率の測定方法)洗浄後の濾過ケーキ約1gを精秤し、130℃で4時間減圧乾燥を行った。乾燥前と乾燥後の重量変化より、下式により濾過ケーキ固形分量を算出した。
濾過ケーキ固形分率[%]=(乾燥後ケーキ重量)/(乾燥前ケーキ重量)×100
(濾過ケーキの固形分量)
洗浄後の濾過ケーキの測定をした結果、16重量%の結果であった。低めではあるが、処理できるレベルであった。
評価結果を表2に記載する
(実施例4)
実施例3で作成したポリイミド樹脂混合溶液42.9gを、穴の直径が約5mmの滴下漏斗を用いて、520回転で攪拌したIPA41.9mlとDMF14.1mlの混合溶液中に30ml/分の速度で滴下した。続いて、IPA53.4mlを添加し攪拌した後、実施例3で作成したポリイミド樹脂混合溶液123.4gを同様の方法で滴下した。さらにIPAを147.4ml添加し攪拌した後、ポリイミド樹脂混合溶液を同様の方法で43.7g滴下した。IPAを202.0ml追加した後、30分攪拌を継続した。実施例3と同様の方法で、濾過、洗浄、乾燥を行った。操作は25℃の室温で行った。
(評価) (重量平均分子量(Mw))
評価結果を表2に記載した。重量平均分子量は45000であり特に問題のない結果であった。
(ポリイミド樹脂粒子の形状) 評価結果を表2に記載した。0.5〜1mm程度の粒子が得られ、良好な結果であった。
(ポリイミド樹脂粒子中の残存溶媒量)
検出されたDMF、β−ピコリン、酢酸の含有量を表2に記載した。残存溶剤量は合計で0.50%であり良好な結果であった。
(濾過ケーキの固形分量)
洗浄後の濾過ケーキの測定をした結果、32重量%の結果であった。濾過ケーキ中の残存溶媒量も少なく良好な結果であった。
評価結果を表2に記載する。
(比較例1) ポリイミド樹脂溶液の製造は、実施例1と同一の方法で行った。
(ポリイミド樹脂粒子の製造) 300回転で撹拌したポリイミド樹脂溶液中に、穴の直径が約5mmの滴下漏斗から460mlのIPAを5ml/分の速度で滴下した。操作は室温25℃にて実施した。ポリイミド樹脂はIPAを200ml滴下した時点で、塊となり、粉体として回収できなかった。滴下後、攪拌翼を100回転に下げ、20分攪拌した。攪拌後、回転を止めこの樹脂固形分を静沈した後、溶媒をろ過した。これをミキサーでポリイミド樹脂を粉砕し粉々に砕いた後、実施例1と同一の方法で洗浄、乾燥を行った。

重量平均分子量は実施例1と同じく37000であり分子量の増減は見られなかった。しかし着色度が269と高い結果となった。また残存溶剤量も2.69重量%と多い結果となった。評価結果を表2に記載した。
(比較例2) 貧溶媒をメタノールとした以外は、比較例1と同一の方法で行った。比較例1と同様の塊となり、粉体として回収できなかった。
重量平均分子量は実施例1と同じく37000であり分子量の増減は見られなかった。しかし着色度が278と高い結果となった。また残存溶剤量も3.05重量%と多い結果となった。評価結果を表2に記載した。

Claims (8)

  1. 可溶性ポリイミド樹脂の溶液(以下、ポリイミド樹脂溶液)に沈殿を生じない範囲の量の貧溶媒を添加し(以下、ポリイミド樹脂混合溶液)、更に得られたポリイミド樹脂混合溶液を貧溶媒または貧溶媒を含有する混合溶媒中に滴下してポリイミド樹脂を沈殿させることを特徴とする、ポリイミド樹脂粒子の製造方法。
  2. 可溶性ポリイミド樹脂が、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキソラン、クロロホルム、ジクロロメタンから選ばれる1以上の溶媒に、固形分濃度5重量%以上の濃度で溶解可能なポリイミド樹脂であることを特徴とする請求項1記載のポリイミド樹脂粒子の製造方法。
  3. 前記ポリイミド樹脂溶液が、下記一般式(1)で表されるユニットを含有してなるポリイミド樹脂溶液であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリイミド樹脂粒子の製造方法。
    Figure 2008081718
    (ここでRは、炭素数が1〜20である炭化水素からなり、イミド基が結合している炭素が、脂肪族炭素である。)
  4. 前記貧溶媒が、アルコール類又は炭化水素類を主成分として含んでいることを特徴とする請求項1〜3に記載のポリイミド樹脂粒子の製造方法。
  5. ポリイミド樹脂の重量平均分子量が20,000以上、150,000以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のポリイミド樹脂粒子の製造方法。
  6. 一般式(1)のRが、下記一般式群(2)で表される群から選ばれる1以上の構造であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のポリイミド樹脂粒子の製造方法。
    Figure 2008081718
    (但し、式中のXは、O、SO、CH、C(CH、C(CFから選ばれる置換基であり、式中のYはそれぞれ独立した、H、F、Cl、Br,CF、CCl、CBrから選ばれる置換基である。)
  7. 前記ポリイミド樹脂が、更に一般式(3)で表されるユニットを含有していることを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載のポリイミド樹脂粒子の製造方法。
    Figure 2008081718
    (ここでRは炭素数が1〜20である炭化水素からなり、イミド基が結合している炭素が、芳香族炭素である。)
  8. 上記請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリイミド樹脂粒子の製造方法により製造された粒径が5mm以下である粒子の割合が60重量%以上であることを特徴とするポリイミド樹脂粒子。
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