JP2008001980A - 鏡面方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】珪素鋼素材を、1280℃以下の温度で加熱した後に熱間圧延し、熱延板を焼鈍し、次いで冷間圧延を施して最終板厚の鋼板とし、その鋼板を脱炭焼鈍した後、窒化処理し、アルミナを主成分焼鈍分離剤を塗布して仕上げ焼鈍を施す鏡面方向性電磁鋼板を製造する際、熱延板焼鈍を、1000〜1150℃の所定の温度まで加熱して再結晶させた後、それより温度の低い850〜1100℃で焼鈍する工程で行い、鋼板を脱炭焼鈍する際の昇温過程における加熱を、鋼板温度が550℃から720℃にある間を40℃以上、さらに好ましくは75〜125℃/秒の加熱速度となる条件で行う。
【選択図】図2
Description
低温スラブ加熱による製造方法として、例えば小松らは、窒化処理により形成した(Al、Si)Nをインヒビターとして用いる方法を特許文献7で開示している。また、小林らは、その際の窒化処理の方法として、脱炭焼鈍後にストリップ状で窒化する方法を特許文献8で開示しており、本発明者らも、非特許文献1で、ストリップ状で窒化する場合の窒化物の挙動を報告している。
ここで、I{111 }及びI{411 }はそれぞれ{111}及び{411}面が板面に平行である粒の割合であり、X線回折測定により板厚1/10層において測定された回折強度値を表している。
方向性電磁鋼板のキューリ点は、750℃程度であるから、それまでの温度の加熱に誘導加熱を使用したとしても、それ以上の温度への加熱には、誘導加熱に代わる、例えば通電加熱などの他の手段を用いる必要がある。
しかし、他の加熱手段を併用することは、誘導加熱を用いる設備上の利点が失われるとともに、例えば、通電加熱では鋼板と接触する必要があり、鋼板に傷がついたりする問題もあった。
このため、急速加熱領域の終端が特許文献11に示されるような750〜900℃である場合では、誘導加熱の利点を十分に享受できないという問題があった。
請求項1に係る鏡面方向性電磁鋼板の製造方法の発明は、質量%で、Si:0.8〜7%、C:0.085%以下、酸可溶性Al:0.01〜0.065%、N:0.012%以下を含有する珪素鋼素材を、1280℃以下の温度で加熱した後に熱間圧延し、得られた熱延板を焼鈍し、次いで一回の冷間圧延または焼鈍を介して複数の冷間圧延を施して最終板厚の鋼板とし、次いでFe系酸化物を形成させない雰囲気ガス中で脱炭焼鈍し、アルミナを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍を施すとともに、脱炭焼鈍から仕上げ焼鈍の二次再結晶開始までの間に鋼板の窒素量を増加させる処理を施すことよりなる鏡面方向性電磁鋼板の製造方法に於いて、前記熱延板の焼鈍を、1000〜1150℃の所定の温度まで加熱して再結晶させた後、それより温度の低い850〜1100℃の温度で焼鈍する工程で行うことにより、焼鈍後の粒組織においてラメラ間隔を20μm以上に制御するとともに、前記最終板厚の鋼板を脱炭焼鈍する際の昇温過程において、鋼板温度が550℃から720℃の温度範囲にある間を40℃/秒以上の加熱速度で加熱することを特徴とする。
ここでラメラ組織とは、図1に示すように圧延面に平行な層状組織を称し、ラメラ間隔とはこの層状組織の平均間隔である。
H≦15: Ts≦550
15<H: Ts≦600
また、請求項5に係る発明のように脱炭焼鈍の雰囲気ガス・温度履歴を制御することにより、磁束密度の高い鏡面方向性電磁鋼板を安定して享受することができる。
まず、熱延板焼鈍条件と仕上げ焼鈍後の試料の磁束密度B8の関係を調べた。
図2に、冷間圧延前の試料における粒組織のラメラ間隔と仕上げ焼鈍後の試料の磁束密度B8の関係を示す。ここで用いた試料は、質量%で、Si:3.3%、C:0.045〜0.055%、酸可溶性Al:0.027%、N:0.007%、Mn:0.1%、S:0.008%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるスラブを1150℃の温度で加熱した後、2.3mm厚に熱間圧延し、その後、1120℃に加熱して再結晶させた後、800〜1120℃の温度で焼鈍する2段階の熱延板焼鈍を施し、その熱延試料を0.22mm厚まで冷間圧延した後、15℃/秒の加熱速度で550℃まで加熱し、40℃/秒の加熱速度で550〜720℃の温度域を加熱し、その後15℃/秒の加熱速度でさらに加熱して830℃の温度で脱炭焼鈍し、続いて、アンモニア含有雰囲気で焼鈍して鋼板中の窒素を増加させる窒化処理を行い、次いで、アルミナを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、仕上げ焼鈍を行ったものである。ラメラ間隔の調整は、C量と2段階の熱延板焼鈍における2段目の温度を変更することによって行った。
また、B8で1.92T以上が得られた試料の脱炭焼鈍板の一次再結晶集合組織を解析した結果、全ての試料においてI{111}/I{411}の値が3以下となっているのが確認された。
ここで用いた試料は、熱延板焼鈍温度について、一段目の温度を900℃〜1150℃、2段目の温度を920℃とした以外は、図2の場合と同様に作成されたものを用いた。
図3から明らかなように、一段目の熱延板焼鈍温度が1000℃〜1150℃においてB8で1.92T以上の高磁束密度が得られることがわかる。
また、B8で1.92T以上が得られた試料の脱炭焼鈍板の一次再結晶集合組織を解析した結果、全ての試料においてI{111}/I{411}の値が3以下となっているのが確認された。
C:0.055%、熱延板焼鈍温度について、一段目の温度を1120℃、2段目の温度を920℃としてラメラ間隔を25μmとした以外は、図2と同様の条件で作成した冷間圧延試料を、脱炭焼鈍時の550〜720℃の温度域の加熱速度を昇温途中で種々変更して、仕上げ焼鈍後の試料の磁束密度B8を測定した。
図4より、脱炭焼鈍の昇温過程における550℃から720℃の温度範囲において、この範囲内の各温度における加熱速度を40℃/秒以上に制御すると、1.92T以上の磁束密度(B8)を有する電磁鋼板が、好ましくは50℃/秒以上、さらに好ましくは加熱速度を75〜125℃/秒の範囲に制御すると、B8が1.93T以上のさらに磁束密度の高い電磁鋼板が得られることがわかる。
まず、本発明で用いる珪素鋼素材の成分の限定理由について説明する。
本発明は、少なくとも、Si:0.8〜7%、C:0.085%以下、酸可溶性Al:0.01〜0.065%、N:0.012%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を基本とし、必要に応じて他の成分を含有する方向性電磁鋼板用の珪素鋼スラブを素材として用いるものであり、各成分の含有範囲の限定理由は次のとおりである。
Nは、0.012%を超えると、冷延時、鋼板中にブリスターとよばれる空孔を生じるため、0.012%を超えないようにする。
Cuは、比抵抗を高めて鉄損を低減させることに有効な元素である。添加量が0.4%を超えると鉄損低減効果が飽和するとともに、熱延時に「カッパーヘゲ」なる表面疵の原因になる。
SnとSbは、良く知られている粒界偏析元素である。本発明はAlを含有しているため、仕上げ焼鈍の条件によっては焼鈍分離剤から放出される水分によりAlが酸化されてコイル位置でインヒビター強度が変動し、磁気特性がコイル位置で変動する場合がある。この対策の一つとして、これらの粒界偏析元素の添加により酸化を防止する方法があり、そのためにそれぞれ0.30%以下の範囲で添加できる。一方0.30%を超えると脱炭焼鈍時に脱炭性を著しく阻害する。
その他、SおよびSeは磁気特性に悪影響を及ぼすので総量で0.015%以下とすることが望ましい。
上記の成分組成を有する珪素鋼スラブは、転炉または電気炉等により鋼を溶製し、必要に応じて溶鋼を真空脱ガス処理し、ついで連続鋳造もしくは造塊後分塊圧延することによって得られる。その後、熱間圧延に先だってスラブ加熱がなされる。本発明においては、スラブ加熱温度は1280℃以下として、上述の高温スラブ加熱の諸問題を回避する。
珪素鋼スラブは、通常は150〜350mmの範囲、好ましくは220〜280mmの厚みに鋳造されるが、30〜70mmの範囲のいわゆる薄スラブであっても良い。薄スラブの場合は熱延板を製造する際に中間厚みに粗加工を行う必要がないという利点がある。
一段目の焼鈍温度範囲を1000〜1150℃としたのは、図3に示されるようにその範囲で再結晶させた場合、B8で1.92T以上の磁束密度の鋼板が得られるためであり、2段目の焼鈍温度範囲を一段目の温度より低い850〜1100℃としたのは、図2に示されるようにラメラ間隔を20μm以上とするために必要であるからである。
なお、より好ましい条件としては、一段目の焼鈍温度は1050〜1125℃であり、二段目の焼鈍温度は850℃〜950℃である。
この脱炭焼鈍後の一次再結晶を制御する方法としては、脱炭焼鈍工程の昇温過程における加熱速度を調整することにより制御される。本発明では、鋼板温度が550℃から720℃にある間を40℃/秒、好ましくは50℃/秒以上、さらに好ましくは75〜125℃/秒の加熱速度で加熱する点に特徴がある。
H≦15: Ts≦550
15<H: Ts≦600
脱炭焼鈍の加熱速度を高めた場合に二次再結晶をより安定的に行わせるためには、(Al、Si)Nの組成比率を調整することが望ましく、また、増加させた後の窒素量としては、鋼中のAl量:[Al]に対する窒素量:[N]の比、すなわち[N]/[Al]が、質量比として14/27以上、望ましくは2/3以上となるようにする。
仕上げ焼鈍後,表面は既に平滑化されているので,張力コーテイング処理を行い,必要に応じてレーザ照射等の磁区細分化処理を施す。
得られた試料の仕上げ焼鈍後の磁気特性を表1に示す。なお、試料の記号は、焼鈍方法と加熱速度の組み合わせを示す。熱延板焼鈍及び脱炭焼鈍とも本発明の条件を満たす場合には、高い磁束密度が得られる。
得られた試料の仕上げ焼鈍後の磁気特性を表2に示す。なお、試料の記号は、焼鈍方法と加熱速度の組み合わせを示す。熱延板焼鈍及び脱炭焼鈍とも本発明の条件を満たす場合には、高い磁束密度が得られる。
得られた窒素量の異なる試料の仕上げ焼鈍後の磁気特性を表3に示す。
得られた脱炭焼鈍後の一次再結晶粒径の異なる試料の仕上げ焼鈍後の磁気特性を表4に示す。
仕上げ焼鈍後の試料の磁気特性を表5に示す。低温域の加熱速度を速めることにより、100℃/秒で加熱する開始温度を600℃に高めても良好な磁気特性が得られることが分かる。
Claims (8)
- 質量%で、Si:0.8〜7%、C:0.085%以下、酸可溶性Al:0.01〜0.065%、N:0.012%以下を含有する珪素鋼素材を、1280℃以下の温度で加熱した後に熱間圧延し、得られた熱延板を焼鈍し、次いで一回の冷間圧延または焼鈍を介して複数の冷間圧延を施して最終板厚の鋼板とし、次いでFe系酸化物を形成させない雰囲気ガス中で脱炭焼鈍し、アルミナを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍を施すとともに、脱炭焼鈍から仕上げ焼鈍の二次再結晶開始までの間に鋼板の窒素量を増加させる処理を施すことよりなる鏡面方向性電磁鋼板の製造方法に於いて、
前記熱延板の焼鈍を、1000〜1150℃の所定の温度まで加熱して再結晶させた後、それより低い850〜1100℃の温度で焼鈍する工程で行うことにより、焼鈍後の粒組織においてラメラ間隔を20μm以上に制御するとともに、
前記最終板厚の鋼板を脱炭焼鈍する際の昇温過程において、鋼板温度が550℃から720℃にある間を40℃/秒以上の加熱速度で加熱することを特徴とする鏡面方向性電磁鋼板の製造方法。 - 前記鋼板を脱炭焼鈍する際の昇温過程において、鋼板温度が550℃から720℃にある間を75〜125℃/秒の加熱速度で加熱することを特徴とする請求項1に記載の鏡面方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記鋼板を脱炭焼鈍する際の前記鋼板温度が550℃から720℃にある間の加熱を、誘導加熱で行うことを特徴とする請求項1または2に記載の鏡面方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記鋼板を脱炭焼鈍する際、その昇温過程において前記加熱速度で加熱する温度範囲をTs(℃)から720℃としたときに、室温から500℃までの加熱速度H(℃/秒)に応じて以下のTs(℃)から720℃までの範囲とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
H≦15: Ts≦550
15<H: Ts≦600 - 前記脱炭焼鈍を、雰囲気ガスの酸化度(PH2O/PH2):0.01以上0.15以下の範囲の条件の下で、一次再結晶粒径が15μm以上となるような温度と時間幅で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鏡面方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記窒素量を増加させる処理を、鋼板の窒素量[N]が、鋼板の酸可溶性Alの量[Al]に応じて、式:[N]≧14/27[Al]を満足するように行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の鏡面方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記鋼板の窒素量[N]を、鋼板の酸可溶性Alの量[Al]に応じて、式:[N]≧2/3[Al]を満足するように増加させることを特徴とする請求項6に記載の鏡面方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記珪素鋼素材が、さらに、質量%で、Mn:1%以下、Cr:0.3%以下、Cu:0.4%以下、P:0.5%以下、Sn:0.3%以下、Sb:0.3%以下、Ni:1%以下、S及びSeを合計で0.015%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の鏡面方向性電磁鋼板の製造方法。
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