JP5068579B2 - 高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
低温スラブ加熱による製造方法として、例えば小松らは、窒化処理により形成した(Al、Si)Nをインヒビターとして用いる方法を特許文献1で開示している。また、小林らは、その際の窒化処理の方法として、脱炭焼鈍後にストリップ状で窒化する方法を特許文献2で開示しており、本発明者らも、非特許文献1で、ストリップ状で窒化する場合の窒化物の挙動を報告している。
ここで、I{111}及びI{411}はそれぞれ{111}及び{411}面が板面に平行である粒の割合であり、X線回折測定により板厚1/10層において測定された回折強度値を表している。
方向性電磁鋼板のキューリ点は、750℃程度であるから、それまでの温度の加熱に誘導加熱を使用したとしても、それ以上の温度への加熱には、誘導加熱に代わる、例えば通電加熱などの他の手段を用いる必要がある。
しかし、他の加熱手段を併用することは、誘導加熱を用いる設備上の利点が失われるとともに、例えば、通電加熱では鋼板と接触する必要があり、鋼板に傷がついたりする問題もあった。
このため、急速加熱領域の終端が特許文献6に示されるような750〜900℃である場合では、誘導加熱の利点を十分に享受できないという問題があった。
請求項1に係る方向性電磁鋼板の製造方法の発明は、質量%で、Si:0.8〜7%、C:0.085%以下、酸可溶性Al:0.01〜0.065%、N:0.0075%以下、Mn:0.02〜0.20%、Seq.=S+0.406×Se:0.003〜0.05%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる珪素鋼素材を、下記式で表される温度T1、T2、およびT3(℃)のいずれの温度以上、1350℃以下の温度で加熱した後に熱間圧延し、得られた熱延板を焼鈍し、次いで一回の冷間圧延または焼鈍を介して複数の冷間圧延を施して最終板厚の鋼板とし、その鋼板を脱炭焼鈍した後、焼鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍を施すとともに、脱炭焼鈍から仕上げ焼鈍の二次再結晶開始までの間に鋼板の窒素量を増加させる処理を施すことよりなる方向性電磁鋼板の製造方法において、前記熱延板の焼鈍過程において、脱炭前の鋼板炭素量に対して0.002〜0.02質量%脱炭させることにより、焼鈍後の表面粒組織においてラメラ間隔を20μm以上に制御するとともに、前記最終板厚の鋼板を脱炭焼鈍する際の昇温過程において、鋼板温度が550℃から720℃にある間を40℃/秒以上の加熱速度で加熱することを特徴とする。
T1=10062/(2.72−log([Al]×[N]))−273
T2=14855/(6.82−log([Mn]×[S]))−273
T3=10733/(4.08−log([Mn]×[Se]))−273
ここで、[Al]、[N]、[Mn]、[S]、[Se]は、それぞれ酸可溶性Al、N、Mn、S、Seの含有量(質量%)である。
ここで、ラメラ組織とは、圧延面に平行な変態相、または結晶粒界によって分断された層状組織を称し、ラメラ間隔とはこの層状組織の平均間隔である。表面層とは最表面から板全厚の1/5までの領域を称する。
T4=43091/(25.09−log([Cu]×[Cu]×[S]))−273
ここで、[Cu]はCuの含有量(質量%)である。
H≦15: Ts≦550
15<H: Ts≦600
請求項6、7に係る発明のようにすることにより、脱炭焼鈍の加熱速度を高めた場合に二次再結晶をより安定的に行わせ、磁束密度の高い製品を安定して製造することができる。
また、請求項8に係る発明のようにすることにより、添加元素に応じてさらに磁気特性などが改良された方向性電磁鋼板を製造することができる。
まず、熱延板焼鈍条件と仕上げ焼鈍後の試料の磁束密度B8の関係を調べた。
図1に、冷間圧延前の試料における粒組織のラメラ間隔と仕上げ焼鈍後の試料の磁束密度B8の関係を示す。
ここで用いた試料は、質量%で、Si:3.2%、C:0.045〜0.065%、酸可溶性Al:0.025%、N:0.005%、Mn:0.04%、S:0.015%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるスラブを1300℃の温度で加熱した後、2.3mm厚に熱間圧延し(この成分系の場合、T1=1246℃、T2=1206℃である。)、その後、1100℃に加熱して熱延板焼鈍を施し、その熱延試料を0.3mm厚まで冷間圧延した後、15℃/秒の加熱速度で550℃まで加熱し、40℃/秒の加熱速度で550〜720℃の温度域を加熱し、その後15℃/秒の加熱速度でさらに加熱して830℃の温度で脱炭焼鈍し、続いて、アンモニア含有雰囲気で焼鈍して鋼板中の窒素を増加させる窒化処理を行い、次いで、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、仕上げ焼鈍を行ったものである。表面層のラメラ間隔の調整は、熱延板焼鈍の雰囲気ガスの水蒸気分圧を変更して、脱炭前後の炭素量の差が0.002〜0.02質量%の範囲になるように調整することによって行った。
また、B8で1.92T以上が得られた試料の脱炭焼鈍板の一次再結晶集合組織を解析した結果、全ての試料においてI{111}/I{411}の値が3以下となっているのが確認された。
熱延板焼鈍の雰囲気ガスの酸化度を調整して、ラメラ間隔を28μmとした以外は、図1と同様の条件で作成した冷間圧延試料を、脱炭焼鈍時の550〜720℃の温度域の加熱速度を昇温途中で種々変更して、仕上げ焼鈍後の試料の磁束密度B8を測定した。
図2より、脱炭焼鈍の昇温過程における550℃から720℃の温度範囲において、この範囲内の各温度における加熱速度を、40℃/秒以上に制御すると、1.92T以上の磁束密度(B8)を有する電磁鋼板が、好ましくは50〜250℃/、さらに好ましくは75〜125℃/秒の範囲に制御すると、さらに磁束密度(B8)の高い電磁鋼板を得られることがわかる。
まず、本発明で用いる珪素鋼素材の成分の限定理由について説明する。
本発明は、少なくとも、質量%で、Si:0.8〜7%、C:0.085%以下、酸可溶性Al:0.01〜0.065%、N:0.0075%以下、Mn:0.02〜0.20%、Seq.=S+0.406×Se:0.003〜0.05%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成、あるいは、この成分組成に更にCuを0.01〜0.30質量%含有させた成分組成を基本とし、必要に応じて他の成分を含有する方向性電磁鋼板用の珪素鋼スラブを素材として用いるものであり、各成分の含有範囲の限定理由は次のとおりである。
Nは、0.012%を超えると、冷延時、鋼板中にブリスターとよばれる空孔を生じるため、0.012%を超えないようにする。また、インヒビターとして機能させるためには0.0075以下とすることが必要である。0.0075%を超えると析出物の分散状態が不均一となり二次再結晶が不安定になる。
なお、特許請求の範囲には規定しないが、Cr、P、Sb、Ni、Biの少なくとも1種類を、質量%で、Crでは0.3%以下、Pでは0.5%以下、Sbでは0.3%以下、Niでは1%以下、Biでは0.01%以下の範囲で含有できる。
Pは、比抵抗を高めて鉄損を低減させることに有効な元素である。添加量が0.5%を超えると圧延性に問題を生じる。
上記の成分組成を有する珪素鋼スラブは、転炉または電気炉等により鋼を溶製し、必要に応じて溶鋼を真空脱ガス処理し、ついで連続鋳造もしくは造塊後分塊圧延することによって得られる。その後、熱間圧延に先だってスラブ加熱がなされる。本発明においては、スラブ加熱温度は1350℃以下として、高温スラブ加熱の諸問題(専用の加熱炉が必要であり、また、溶融スケール量が多い等の問題)を回避する。
T1=10062/(2.72−log([Al]×[N]))−273
T2=14855/(6.82−log([Mn]×[S]))−273
T3=10733/(4.08−log([Mn]×[Se]))−273
T4=43091/(25.09−log([Cu]×[Cu]×[S]))−273
ここで、[Al]、[N]、[Mn]、[S]、[Se]、[Cu]は、それぞれ酸可溶性Al、N、Mn、S、Se、Cuの含有量(質量%)である。
この焼鈍は1000〜1150℃の温度範囲で行い、その後、平均5℃/秒以上、さらには15℃/秒以上の冷却速度で冷却することが好ましい。
この脱炭焼鈍後の一次再結晶を制御する方法としては、脱炭焼鈍工程の昇温過程における加熱速度を調整することにより制御される。本発明では、鋼板温度が550℃から720℃にある間を40℃/秒、好ましくは50〜250℃/秒、さらに好ましくは75〜125℃/秒の加熱速度で加熱する点に特徴がある。
H≦15: Ts≦550
15<H: Ts≦600
脱炭焼鈍の加熱速度を高めた場合に二次再結晶をより安定的に行わせるためには、(Al,Si)Nの組成比率を調整することが望ましく、また、増加させた後の窒素量としては、鋼中のAl量:[Al]に対する窒素量:[N]の比、すなわち[N]/[Al]が、質量比として14/27以上となるようにする。
その後、マグネシアを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後に、仕上げ焼鈍を行い{110}<001>方位粒を二次再結晶により優先成長させる。
得られた表層ラメラ間隔の異なる試料の仕上げ焼鈍後の磁気特性を表1に示す。
得られた試料の仕上げ焼鈍後の磁気特性を表2に示す。なお、試料の記号は、表層ラメラ間隔と加熱速度の組み合わせを示す。熱延板焼鈍及び脱炭焼鈍とも本発明の条件を満たす場合には、高い磁束密度が得られる。
得られた試料の仕上げ焼鈍後の磁気特性を表3に示す。なお、試料の記号は、表層ラメラ間隔と加熱速度の組み合わせを示す。熱延板焼鈍及び脱炭焼鈍とも本発明の条件を満たす場合には、高い磁束密度が得られる。
得られた窒素量の異なる試料の仕上げ焼鈍後の磁気特性を表4に示す。
得られた脱炭焼鈍後の一次再結晶粒径の異なる試料の仕上げ焼鈍後の磁気特性を表5に示す。
得られた表層ラメラ間隔の異なる試料の仕上げ焼鈍後の磁気特性を表6に示す。
仕上げ焼鈍後の試料の磁気特性を表7に示す。低温域の加熱速度を速めることにより、100℃/秒で加熱する開始温度を600℃に高めても良好な磁気特性が得られることが分かる。
Claims (8)
- 質量%で、Si:0.8〜7%、C:0.085%以下、酸可溶性Al:0.01〜0.065%、N:0.0075%以下、Mn:0.02〜0.20%、Seq.=S+0.406×Se:0.003〜0.05%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる珪素鋼素材を、下記式で表される温度T1、T2、およびT3(℃)のいずれの温度以上、1350℃以下の温度で加熱した後に熱間圧延し、得られた熱延板を焼鈍し、次いで一回の冷間圧延または焼鈍を介して複数の冷間圧延を施して最終板厚の鋼板とし、その鋼板を脱炭焼鈍した後、焼鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍を施すとともに、脱炭焼鈍から仕上げ焼鈍の二次再結晶開始までの間に鋼板の窒素量を増加させる処理を施すことよりなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
前記熱延板の焼鈍過程において、脱炭前の鋼板炭素量に対して0.002〜0.02質量%脱炭させることにより、焼鈍後の表面粒組織においてラメラ間隔を20μm以上に制御するとともに、
前記最終板厚の鋼板を脱炭焼鈍する際の昇温過程において、鋼板温度が550℃から720℃にある間を40℃/秒以上の加熱速度で加熱することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
T1=10062/(2.72−log([Al]×[N]))−273
T2=14855/(6.82−log([Mn]×[S]))−273
T3=10733/(4.08−log([Mn]×[Se]))−273
ここで、[Al]、[N]、[Mn]、[S]、[Se] は、それぞれ
酸可溶性Al、N、Mn、S、Seの含有量である。 - 前記珪素鋼素材が、さらに、質量%で、Cu:0.01〜0.30%含有し, 下記のT4(℃)以上、1350℃以下の温度で加熱した後に熱間圧延することを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
T4=43091/(25.09−log([Cu]×[Cu]×[S]))−273
ここで、[Cu]は、Cuの含有量である。 - 前記鋼板を脱炭焼鈍する際の昇温過程において、鋼板温度が550℃から720℃にある間を50〜250℃/秒の加熱速度で加熱することを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記鋼板を脱炭焼鈍する際の、前記鋼板温度が550℃から720℃にある間の加熱を、誘導加熱で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記鋼板を脱炭焼鈍する際、その昇温過程において前記加熱速度で加熱する温度範囲をTs(℃)から720℃としたときに、室温から500℃までの加熱速度H(℃/秒)に応じて以下のTs(℃)から720℃までの範囲とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
H≦15: Ts≦550
15<H: Ts≦600 - 前記脱炭焼鈍を、脱炭焼鈍後の一次再結晶粒径が7μm以上18μm未満となるような温度と時間幅で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記窒素量を増加させる処理を、鋼板の窒素量[N]が、鋼板の酸可溶性Alの量[Al]に応じて、式:[N]≧14/27[Al]を満足するように行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記珪素鋼素材が、さらに、質量%で、Sn:0.3%以下を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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