JP5068579B2 - 高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、軟磁性材料として変圧器等の電気機器の鉄芯として用いられる方向性電磁鋼板を、低温スラブ加熱により製造する方法に関するものである。
方向性電磁鋼板は、{110}<001>方位に集積した結晶粒により構成されたSiを7%以下含有した鋼板である。そのような方向性電磁鋼板の製造における結晶方位の制御は、二次再結晶とよばれるカタストロフィックな粒成長現象を利用して達成される。
この二次再結晶を制御するための一つの方法として、インヒビターとよばれる微細析出物を熱間圧延前のスラブ加熱時に完全固溶させた後に、熱間圧延及びその後の焼鈍工程で微細析出させる方法が工業的に実施されている。この方法では、析出物を完全固溶させるために、1350℃ないし1400℃以上の高温で加熱する必要があり、この温度は普通鋼のスラブ加熱温度に比べて約200℃高く、そのための専用の加熱炉が必要であり、また、溶融スケール量が多い等の問題がある。
そこで、上述の問題を回避するために1350℃以下の低温スラブ加熱による方向性電磁鋼板の製造について研究開発が進められた。
低温スラブ加熱による製造方法として、例えば小松らは、窒化処理により形成した(Al、Si)Nをインヒビターとして用いる方法を特許文献1で開示している。また、小林らは、その際の窒化処理の方法として、脱炭焼鈍後にストリップ状で窒化する方法を特許文献2で開示しており、本発明者らも、非特許文献1で、ストリップ状で窒化する場合の窒化物の挙動を報告している。
また、本発明者らは特許文献3で1200〜1350℃の温度でインヒビターを完全溶体化した後に窒化処理を施す製造方法を報告している。
そして、本発明者らは、そのような低温スラブ加熱による方向性電磁鋼板の製造方法においては、脱炭焼鈍時にインヒビターが形成されていないので、脱炭焼鈍における一次再結晶組織の調整が二次再結晶を制御する上で重要であり、一次再結晶粒組織の粒径分布の変動係数が0.6より大きくなり粒組織が不均一になると二次再結晶が不安定になるということを特許文献4で示した。
更に、本発明者らは、二次再結晶の制御因子である一次再結晶組織とインヒビターに関する研究を進めた結果、一次再結晶組織中の{411}方位粒が{110}<001>二次再結晶粒の優先成長に影響を及ぼすことを見い出し、特許文献5において、脱炭焼鈍後の一次再結晶集合組織の{111}/{411}の比を3.0以下に調整し、その後窒化処理を行いインヒビターを強化することにより磁束密度の高い方向性電磁鋼板が工業的に安定的に製造できること、および、その際の一次再結晶後の粒組織を制御する方法として、例えば脱炭焼鈍工程の昇温過程における加熱速度を12℃/秒以上に制御する方法があることを示した。
その後、上記加熱速度を制御する方法は、一次再結晶後の粒組織を制御する方法として大きな効果があることが分かり、本発明者らは、特許文献6において、脱炭焼鈍工程の昇温過程において、鋼板温度が600℃以下の領域から750〜900℃の範囲内の所定の温度まで40℃/秒以上の加熱速度で加熱することにより脱炭焼鈍後の粒組織においてI{111}/I{411}の比率を3以下に制御し、その後の焼鈍で鋼板の酸化層の酸素量を2.3g/m2以下に調整して二次再結晶を安定化する方法を提案した。
ここで、I{111}及びI{411}はそれぞれ{111}及び{411}面が板面に平行である粒の割合であり、X線回折測定により板厚1/10層において測定された回折強度値を表している。
上記方法においては、750〜900℃の範囲内の所定の温度まで40℃/秒以上の加熱速度で加熱する必要がある。そのための加熱手段について、特許文献6には、従来の通常輻射熱を利用したラジアントチューブ等による脱炭焼鈍設備を改造した設備、レーザ等の高エネルギー熱源を利用する方法、誘導加熱、通電加熱装置等が例示されているが、これらの加熱方法の中で、とりわけ、誘導加熱が、加熱速度の自由度が高く、鋼板と非接触に加熱でき、脱炭焼鈍炉内への設置が比較的容易である等の点から有利である。
ところで、誘導加熱によって電磁鋼板を加熱する場合、板厚が薄いためにキューリ点付近の温度になると渦電流の電流浸透深さが深くなり、帯板巾方向断面の表層部を一周している渦電流の表裏相殺が発生し、渦電流が流れなくなるため、電磁鋼板をキューリ点以上の温度に加熱するのは困難である。
方向性電磁鋼板のキューリ点は、750℃程度であるから、それまでの温度の加熱に誘導加熱を使用したとしても、それ以上の温度への加熱には、誘導加熱に代わる、例えば通電加熱などの他の手段を用いる必要がある。
しかし、他の加熱手段を併用することは、誘導加熱を用いる設備上の利点が失われるとともに、例えば、通電加熱では鋼板と接触する必要があり、鋼板に傷がついたりする問題もあった。
このため、急速加熱領域の終端が特許文献6に示されるような750〜900℃である場合では、誘導加熱の利点を十分に享受できないという問題があった。
特公昭62−45285号公報 特開平2−77525号公報 特開2001−152250号公報 特公平8−32929号公報 特開平9−256051号公報 特開2002−60842号公報 「Materials Science Forum」 204-206 (1996) 、pp593-598
そこで、本発明は、特許文献3に開示した1350℃以下の低温スラブ加熱により方向性電磁鋼板を製造する際、脱炭焼鈍後の一次再結晶後の粒組織を改善するために、脱炭焼鈍の昇温過程で加熱速度を制御する温度領域を、誘導加熱のみによって加熱できる範囲にして、上記欠点を解消することを課題とする。
上記の課題を解決するために、本発明は次のようにしたことを特徴とする。
請求項1に係る方向性電磁鋼板の製造方法の発明は、質量%で、Si:0.8〜7%、C:0.085%以下、酸可溶性Al:0.01〜0.065%、N:0.0075%以下、Mn:0.02〜0.20%、Seq.=S+0.406×Se:0.003〜0.05%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる珪素鋼素材を、下記式で表される温度T1、T2、およびT3(℃)のいずれの温度以上、1350℃以下の温度で加熱した後に熱間圧延し、得られた熱延板を焼鈍し、次いで一回の冷間圧延または焼鈍を介して複数の冷間圧延を施して最終板厚の鋼板とし、その鋼板を脱炭焼鈍した後、焼鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍を施すとともに、脱炭焼鈍から仕上げ焼鈍の二次再結晶開始までの間に鋼板の窒素量を増加させる処理を施すことよりなる方向性電磁鋼板の製造方法において、前記熱延板の焼鈍過程において、脱炭前の鋼板炭素量に対して0.002〜0.02質量%脱炭させることにより、焼鈍後の表面粒組織においてラメラ間隔を20μm以上に制御するとともに、前記最終板厚の鋼板を脱炭焼鈍する際の昇温過程において、鋼板温度が550℃から720℃にある間を40℃/秒以上の加熱速度で加熱することを特徴とする。
T1=10062/(2.72−log([Al]×[N]))−273
T2=14855/(6.82−log([Mn]×[S]))−273
T3=10733/(4.08−log([Mn]×[Se]))−273
ここで、[Al]、[N]、[Mn]、[S]、[Se]は、それぞれ酸可溶性Al、N、Mn、S、Seの含有量(質量%)である。
ここで、ラメラ組織とは、圧延面に平行な変態相、または結晶粒界によって分断された層状組織を称し、ラメラ間隔とはこの層状組織の平均間隔である。表面層とは最表面から板全厚の1/5までの領域を称する。
請求項2に係る方向性電磁鋼板の製造方法の発明は、前記請求項1に係る発明において、前記珪素鋼素材が、さらに、質量%で、Cu:0.01〜0.30%含有し,下記のT4(℃)以上、1350℃以下の温度で加熱した後に熱間圧延することを特徴とする。
T4=43091/(25.09−log([Cu]×[Cu]×[S]))−273
ここで、[Cu]はCuの含有量(質量%)である。
請求項3に係る方向性電磁鋼板の製造方法の発明は、前記請求項1または2に係る発明において、前記鋼板を脱炭焼鈍する際の昇温過程において、鋼板温度が550℃から720℃にある間を50〜250℃/秒の加熱速度で加熱することを特徴とする。
請求項4に係る方向性電磁鋼板の製造方法の発明は、前記、請求項1〜3のいずれかに係る発明において、鋼板を脱炭焼鈍する工程における鋼板温度が550℃から720℃の温度範囲内の加熱を、誘導加熱で行うことを特徴とする。
請求項5に係る方向性電磁鋼板の製造方法の発明は、請求項1〜4のいずれかに係る発明において、前記鋼板を脱炭焼鈍する際、その昇温過程において前記加熱速度で加熱する温度範囲をTs(℃)から720℃としたときに、室温から500℃までの加熱速度H(℃/秒)に応じて以下のTs(℃)から720℃までの範囲とすることを特徴とする。
H≦15: Ts≦550
15<H: Ts≦600
請求項6に係る方向性電磁鋼板の製造方法の発明は、請求項1〜5のいずれかに係る発明において、前記脱炭焼鈍を、脱炭焼鈍後の一次再結晶粒径が7μm以上18μm未満となるような温度と時間幅で行うことを特徴とする。
請求項7に係る方向性電磁鋼板の製造方法の発明は、請求項1〜6のいずれかに係る発明において、窒素量を増加させる処理を、鋼板の窒素量[N]が、鋼板の酸可溶性Alの量[Al]に応じて、式:[N]≧14/27[Al]を満足するように行うことを特徴とする。
請求項8に係る方向性電磁鋼板の製造方法の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、前記珪素鋼素材が、さらに、質量%で、Sn:0.3%以下を含有することを特徴とする。
請求項1または2に係る発明では、低温スラブ加熱による方向性電磁鋼板の製造において、熱延板焼鈍を該請求項に記載されているように、脱炭処理を施して焼鈍後の表面粒組織のラメラ間隔を制御することにより、脱炭焼鈍後の一次再結晶後の粒組織を改善するために行われる、脱炭焼鈍の昇温過程での加熱速度の制御温度範囲の上限を、誘導加熱のみによって加熱できるより低い温度範囲にすることができるから、加熱をより容易に行うことができ、磁気特性の優れた方向性電磁鋼板をより容易に得ることができる。
請求項3に係る発明では、脱炭焼鈍の昇温過程での加熱速度の制御をさらに厳格におこなうことにより、一層の磁束密度向上効果を得ることができる。
このため、請求項4に係る発明のように、前記加熱を誘導加熱で行うことにより、加熱速度の自由度が高く、鋼板と非接触に加熱でき、さらに、脱炭焼鈍炉内への設置が比較的容易であるなどの効果が得られる。
請求項5に係る発明では、脱炭焼鈍の昇温過程において、加熱速度を制御する開始温度を、該開始温度までの低温域の加熱速度を調整することによって高め、それによって加熱速度を制御する必要がある温度範囲を縮小することができる。
請求項6、7に係る発明のようにすることにより、脱炭焼鈍の加熱速度を高めた場合に二次再結晶をより安定的に行わせ、磁束密度の高い製品を安定して製造することができる。
また、請求項8に係る発明のようにすることにより、添加元素に応じてさらに磁気特性などが改良された方向性電磁鋼板を製造することができる。
特許文献3に開示した1350℃以下の低温スラブ加熱により方向性電磁鋼板を製造する際に、焼鈍後の熱延板の粒組織におけるラメラ間隔が、一次再結晶後の粒組織に影響し、脱炭焼鈍時の急速加熱を中断する温度を低下させても、一次再結晶集合組織中の{411}粒の存在比率を高められるのではないかと考え、熱延板焼鈍条件を種々変更して、二次再結晶後の鋼板の磁束密度B8に対する熱延板の焼鈍後の粒組織におけるラメラ間隔の関係及び磁束密度B8に対する脱炭焼鈍の昇温過程における各温度での加熱速度の影響について調べた。
その結果、熱延板を焼鈍する工程において、脱炭前の鋼板炭素量に対して0.002〜0.02%脱炭することにより、焼鈍後の表面粒組織においてラメラ間隔を20μm以上に制御した場合、脱炭焼鈍工程の昇温過程における組織変化の大きな温度域は、700〜720℃であり、その温度域を含む550℃から720℃の温度域の加熱速度を40℃/秒以上、さらに好ましくは50〜250℃/秒とすることにより、脱炭焼鈍後の集合組織のI{111}/I{411}の比率が所定値以下になるよう一次再結晶を制御でき、二次再結晶組織を安定に発達することができるという知見を得て、本発明を完成させた。
以下に、その知見が得られた実験について説明する。
まず、熱延板焼鈍条件と仕上げ焼鈍後の試料の磁束密度B8の関係を調べた。
図1に、冷間圧延前の試料における粒組織のラメラ間隔と仕上げ焼鈍後の試料の磁束密度B8の関係を示す。
ここで用いた試料は、質量%で、Si:3.2%、C:0.045〜0.065%、酸可溶性Al:0.025%、N:0.005%、Mn:0.04%、S:0.015%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるスラブを1300℃の温度で加熱した後、2.3mm厚に熱間圧延し(この成分系の場合、T1=1246℃、T2=1206℃である。)、その後、1100℃に加熱して熱延板焼鈍を施し、その熱延試料を0.3mm厚まで冷間圧延した後、15℃/秒の加熱速度で550℃まで加熱し、40℃/秒の加熱速度で550〜720℃の温度域を加熱し、その後15℃/秒の加熱速度でさらに加熱して830℃の温度で脱炭焼鈍し、続いて、アンモニア含有雰囲気で焼鈍して鋼板中の窒素を増加させる窒化処理を行い、次いで、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、仕上げ焼鈍を行ったものである。表面層のラメラ間隔の調整は、熱延板焼鈍の雰囲気ガスの水蒸気分圧を変更して、脱炭前後の炭素量の差が0.002〜0.02質量%の範囲になるように調整することによって行った。
図1から明らかなように、表面層のラメラ間隔が20μm以上に制御した場合に、脱炭焼鈍の550〜720℃の温度域において40℃/秒の加熱速度で昇温することによってでB8で1.92T以上の高磁束密度が得られることがわかる。
また、B8で1.92T以上が得られた試料の脱炭焼鈍板の一次再結晶集合組織を解析した結果、全ての試料においてI{111}/I{411}の値が3以下となっているのが確認された。
次に、冷間圧延前の試料における粒組織のラメラ間隔を20μm以上とした条件下における、高磁束密度(B8)の鋼板が得られる脱炭焼鈍時の加熱条件について調べた。
熱延板焼鈍の雰囲気ガスの酸化度を調整して、ラメラ間隔を28μmとした以外は、図1と同様の条件で作成した冷間圧延試料を、脱炭焼鈍時の550〜720℃の温度域の加熱速度を昇温途中で種々変更して、仕上げ焼鈍後の試料の磁束密度B8を測定した。
図2より、脱炭焼鈍の昇温過程における550℃から720℃の温度範囲において、この範囲内の各温度における加熱速度を、40℃/秒以上に制御すると、1.92T以上の磁束密度(B8)を有する電磁鋼板が、好ましくは50〜250℃/、さらに好ましくは75〜125℃/秒の範囲に制御すると、さらに磁束密度(B8)の高い電磁鋼板を得られることがわかる。
以上のことから、熱延板を焼鈍する工程において、脱炭前の鋼板炭素量に対して0.002〜0.02質量%脱炭させることにより、焼鈍後の表面粒組織においてラメラ間隔を20μm以上に制御することにより、脱炭焼鈍工程の昇温過程における急速加熱する温度範囲を、鋼板温度が550℃から720℃の範囲としても、{411}方位の粒の存在する比率を高め、特許文献6に示されているようにI{111}/I{411}の比率を3以下にすることができ、磁束密度が高い方向性電磁鋼板を安定して製造することができることがわかる。
熱延板焼鈍後の粒組織において表面層のラメラ間隔を制御することにより{411}、{111}の集合組織が変化する理由についてはまだ明らかになっていないが、現在のところ次のように考えている。一般的に再結晶する方位によって再結晶粒の発生する優先サイトが存在することが知られており、冷延工程において{411}はラメラ組織の内部で、{111}はラメラ近傍部で再結晶核が形成されると考えると、冷延前の結晶組織のラメラ間隔を制御することによって、一次再結晶後の{411}、および{111}結晶方位の存在比率が変化する現象を説明することができる。また、(Al,Si)N、およびAlNをインヒビターとして用いた場合、これらのインヒビターは表面から弱体化して、{110}<001>二次再結晶方位粒は表面層から発生するので、表面層の集合組織を制御することが、特に重要と考えられる。
以上の知見に基づきなされた本発明につき、以下で順次説明する。
まず、本発明で用いる珪素鋼素材の成分の限定理由について説明する。
本発明は、少なくとも、質量%で、Si:0.8〜7%、C:0.085%以下、酸可溶性Al:0.01〜0.065%、N:0.0075%以下、Mn:0.02〜0.20%、Seq.=S+0.406×Se:0.003〜0.05%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成、あるいは、この成分組成に更にCuを0.01〜0.30質量%含有させた成分組成を基本とし、必要に応じて他の成分を含有する方向性電磁鋼板用の珪素鋼スラブを素材として用いるものであり、各成分の含有範囲の限定理由は次のとおりである。
Siは、添加量を多くすると電気抵抗が高くなり、鉄損特性が改善される。しかし、7%を超えて添加されると冷延が極めて困難となり、圧延時に割れてしまう。より工業生産に適するのは4.8%以下である。また、0.8%より少ないと、仕上げ焼鈍時にγ変態が生じ、鋼板の結晶方位が損なわれてしまう。
Cは、一次再結晶組織を制御するうえで有効な元素であるが、磁気特性に悪影響を及ぼすので、仕上げ焼鈍前に脱炭する必要がある。Cが0.085%より多いと、脱炭焼鈍時間が長くなり、工業生産における生産性が損なわれてしまう。
酸可溶性Alは、本発明においてNと結合して(Al、Si)Nとして、インヒビターとしての機能を果すために必須の元素である。二次再結晶が安定する0.01〜0.065%を限定範囲とする。
Nは、0.012%を超えると、冷延時、鋼板中にブリスターとよばれる空孔を生じるため、0.012%を超えないようにする。また、インヒビターとして機能させるためには0.0075以下とすることが必要である。0.0075%を超えると析出物の分散状態が不均一となり二次再結晶が不安定になる。
Mnは、0.02%より少ないと熱間圧延における割れの発生しやすくなる。また、MnS、MnSeとしてインヒビターとしての機能を果たすが、0.20%を超えるとMnS、MnSe析出物の分散が不均一になりやすくなるため二次再結晶が不安定になる。望ましくは、0.03〜0.09%である。
S及びSeは、Mnと結合してインヒビターとして機能する。Seq.=S+0.406×Seが0.003%より少ないとインヒビターとしての機能が減じてしまう。また、0.05%を超えると析出物の分散が不均一になりやすくなるため二次再結晶が不安定になる。
本発明では、更にインヒビター構成元素としてCuを添加することができる。CuもSやSeと析出物を形成してインヒビターとしての機能を果たす。0.01%より少ないとインヒビターとしての機能が減じてしまう。添加量が0.3%を超えると析出物の分散が不均一になりやすくなり鉄損低減効果が飽和してしまう。
本発明では、スラブの素材として、上記成分に加えて、必要に応じて、さらに、Snを0.3%以下の範囲で含有できる。
なお、特許請求の範囲には規定しないが、Cr、P、Sb、Ni、Biの少なくとも1種類を、質量%で、Crでは0.3%以下、Pでは0.5%以下、Sbでは0.3%以下、Niでは1%以下、Biでは0.01%以下の範囲で含有できる。
Crは、脱炭焼鈍の酸化層を改善し、グラス被膜形成に有効な元素であり、0.3%以下の範囲で添加する。
Pは、比抵抗を高めて鉄損を低減させることに有効な元素である。添加量が0.5%を超えると圧延性に問題を生じる。
SnとSbは、良く知られている粒界偏析元素である。本発明はAlを含有しているため、仕上げ焼鈍の条件によっては焼鈍分離剤から放出される水分によりAlが酸化されてコイル位置でインヒビター強度が変動し、磁気特性がコイル位置で変動する場合がある。この対策の一つとして、これらの粒界偏析元素の添加により酸化を防止する方法があり、そのためにそれぞれ0.30%以下の範囲で添加できる。一方0.30%を超えると脱炭焼鈍時に酸化されにくく、グラス皮膜の形成が不十分となるとともに、脱炭焼鈍性を著しく阻害する。
Niは比抵抗を高めて鉄損を低減させることに有効な元素である。また、熱延板の金属組織を制御して磁気特性を向上させるうえで有効な元素である。しかしながら、添加量が1%を超えると二次再結晶が不安定になる。
Biは、0.01%以上添加すると硫化物などの析出物を安定化してインヒビターとしての機能を強化する効果がある。しかしながら、0.01%以上添加するとグラス被膜形成に悪影響を及ぼす。
さらに、本発明で用いる珪素鋼素材は、磁気特性を損なわない範囲で、上記以外の元素及び/又は他の不可避的混入元素を含有していてもよい。
次に本発明の製造条件について説明する。
上記の成分組成を有する珪素鋼スラブは、転炉または電気炉等により鋼を溶製し、必要に応じて溶鋼を真空脱ガス処理し、ついで連続鋳造もしくは造塊後分塊圧延することによって得られる。その後、熱間圧延に先だってスラブ加熱がなされる。本発明においては、スラブ加熱温度は1350℃以下として、高温スラブ加熱の諸問題(専用の加熱炉が必要であり、また、溶融スケール量が多い等の問題)を回避する。
また、本発明ではスラブ加熱の下限温度はインヒビター(AlN、MnS、およびMnSeなど)が完全溶体化する必要がある。そのためには、スラブ加熱温度を、下記式で表される温度T1、T2、およびT3(℃)のいずれの温度以上とするとともに、インヒビター構成元素量を制御する必要がある。AlとNの含有量に関しては、下記式T1が1350℃以下となるようにする必要がある。同様に、MnとSの含有量、またMnとSeの含有量、さらにCuとSの含有量に関しては、それぞれ下記式のT2、T3、T4が1350℃以下となるようにする必要がある。
T1=10062/(2.72−log([Al]×[N]))−273
T2=14855/(6.82−log([Mn]×[S]))−273
T3=10733/(4.08−log([Mn]×[Se]))−273
T4=43091/(25.09−log([Cu]×[Cu]×[S]))−273
ここで、[Al]、[N]、[Mn]、[S]、[Se]、[Cu]は、それぞれ酸可溶性Al、N、Mn、S、Se、Cuの含有量(質量%)である。
珪素鋼スラブは、通常は150〜350mmの範囲、好ましくは220〜280mmの厚みに鋳造されるが、30〜70mmの範囲のいわゆる薄スラブであっても良い。薄スラブの場合は熱延板を製造する際に中間厚みに粗加工を行う必要がないという利点がある。
上述した温度にて加熱されたスラブは、引続き熱間圧延され所要板厚の熱延板とされる。熱延板の焼鈍工程において、脱炭前後の炭素量の差が0.002〜0.02質量%の範囲になるように脱炭することにより、焼鈍後の表面粒組織においてラメラ間隔を20μm以上に制御する。
この焼鈍は1000〜1150℃の温度範囲で行い、その後、平均5℃/秒以上、さらには15℃/秒以上の冷却速度で冷却することが好ましい。
焼鈍工程における脱炭処理は、雰囲気ガスに水蒸気を含有させて酸化度を調整する方法、また、脱炭促進剤(例えば、K2CO3、Na2CO3)を鋼板表面に塗布する方法など公知の方法を用いることができる。脱炭量(脱炭前後の炭素量の差)は0.002〜0.02%、好ましくは0.003〜0.008%の範囲で表面層のラメラ間隔を制御する。脱炭量が0.002未満では表面のラメラ間隔に影響がなく、0.02以上だと表面部の集合組織に悪影響がでる。
その後、一回もしくは焼鈍を挟んだ二回以上に冷間圧延により最終板厚とする。冷間圧延の回数は、望む製品の特性レベルとコストとを勘案して適宜選択される。冷間圧延に際しては、最終冷間圧延率を80%以上とすることが、{411}や{111}等の一次再結晶方位を発達させる上で必要である。
冷間圧延後の鋼板は、鋼中に含まれるCを除去するために湿潤雰囲気中で脱炭焼鈍を施す。その際、脱炭焼鈍後の粒組織においてI{111}/I{411}の比率を3以下とし、その後二次再結晶発現前に窒素を増加させる処理を行うことにより、磁束密度の高い製品を安定して製造することができる。
この脱炭焼鈍後の一次再結晶を制御する方法としては、脱炭焼鈍工程の昇温過程における加熱速度を調整することにより制御される。本発明では、鋼板温度が550℃から720℃にある間を40℃/秒、好ましくは50〜250℃/秒、さらに好ましくは75〜125℃/秒の加熱速度で加熱する点に特徴がある。
加熱速度は、一次再結晶集合組織I{111}/I{411}に大きな影響を及ぼす。一次再結晶では、結晶方位によって再結晶しやすさが異なるため、I{111}/I{411}を3以下とするためには、{411}方位粒が再結晶しやすい加熱速度に制御する必要がある。{411}方位粒は100℃/秒近傍の速度で一番再結晶しやすいので、I{111}/I{411}を3以下として磁束密度(B8)の高い製品を安定して製造するために、加熱速度を40℃/秒、好ましくは50〜250℃/秒、さらに好ましくは75〜125℃/秒の加熱速度で加熱する。
この加熱速度で加熱する必要がある温度域は、基本的に550℃から720℃までの温度域である。もちろん、550℃以下の温度から上記の加熱速度範囲での急速加熱を開始してもよい。この加熱速度を高い加熱速度に維持すべき温度範囲の下限温度は、低温域での加熱サイクルの影響を受ける。そのため、急速加熱が必要な温度範囲を開始温度Ts(℃)から720℃としたときに、室温から500℃までの加熱速度H(℃/秒)に応じて以下のTs(℃)から720℃までの範囲とするのがよい。
H≦15: Ts≦550
15<H: Ts≦600
低温域の加熱速度が15℃/秒の標準的な加熱速度の場合には、550℃から720℃の範囲を40℃/秒以上の加熱速度で急速加熱する必要がある。低温域の加熱速度が15℃/秒よりも遅い場合には、550℃以下の温度から720℃の範囲を40℃/秒以上の加熱速度で急速加熱する必要がある。一方、低温域の加熱速度が15℃/秒よりも速い場合には、550℃よりも高い温度で600℃以下の温度から720℃までの範囲を40℃/秒以上の加熱速度で急速加熱すれば十分である。例えば、室温から50℃/秒で加熱した場合は、600℃から720℃の範囲の昇温速度が40℃/秒以上であればよい。
上記の脱炭焼鈍の加熱速度を制御する方法は特に限定するものではないが、本発明では、急速加熱の温度範囲の上限が720℃となったことから、誘導加熱を有効に利用することができる。
また、上記の加熱速度の調整の効果を安定して発揮させるためには、特許文献5に示されているように、加熱した後に770〜900℃の温度域で雰囲気ガスの酸化度(PH2O/PH2)を0.15超1.1以下として鋼板の酸素量を2.3g/m2以下とすることが有効である。雰囲気ガスの酸化度が0.15未満では鋼板表面に形成されるグラス被膜の密着性が劣化し、1.1を越えるとグラス被膜に欠陥が生じる。また、鋼板の酸素量を2.3g/m2以下とすることにより、(Al,Si)Nインヒビタ−の分解を抑制して高い磁束密度を有する方向性電磁鋼板の製品が安定して製造できる。
また、脱炭焼鈍の加熱を、特許文献3に示されているように、一次再結晶粒径が7〜18μm となるような温度と時間幅で行うことにより、二次再結晶をより安定して発現でき、さらに優れた方向性電磁鋼板を製造することができる。
窒素を増加させる窒化処理としては、脱炭焼鈍に引き続いて、アンモニア等の窒化能のあるガスを含有する雰囲気中で焼鈍する方法、MnN等の窒化能のある粉末を焼鈍分離剤中に添加すること等により仕上げ焼鈍中に行う方法等がある。
脱炭焼鈍の加熱速度を高めた場合に二次再結晶をより安定的に行わせるためには、(Al,Si)Nの組成比率を調整することが望ましく、また、増加させた後の窒素量としては、鋼中のAl量:[Al]に対する窒素量:[N]の比、すなわち[N]/[Al]が、質量比として14/27以上となるようにする。
その後、マグネシアを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後に、仕上げ焼鈍を行い{110}<001>方位粒を二次再結晶により優先成長させる。
以上、説明したように、本発明では、珪素鋼を、所定の析出物が完全溶体化する温度以上、かつ1350℃以下の温度で加熱した後に熱間圧延し、熱延板焼鈍し、次いで一回の冷間圧延または焼鈍を介して複数の冷間圧延を施して最終板厚とし、脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍を施すとともに、脱炭焼鈍から仕上げ焼鈍の二次再結晶開始までの間に鋼板に窒化処理を施して、方向性電磁鋼板を製造する際に、熱延板を焼鈍する工程において、脱炭前の鋼板炭素量に対して0.002〜0.02質量%脱炭することにより、焼鈍後の表面粒組織においてラメラ間隔を20μm以上に制御するとともに、前記鋼板を脱炭焼鈍する際の昇温過程において、鋼板温度が550℃から720℃にある間を40℃/秒以上、好ましくは50〜250℃/秒、さらに好ましくは75〜125℃/秒の加熱速度で加熱し、次いで、脱炭焼鈍を、一次再結晶粒径が7〜18μmの範囲となるような温度、および時間にわたって行うことにより、磁束密度の高い方向性電磁鋼板を製造することができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、実施例で採用した条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するための一条件例である。本発明は、この一例に限定されるものではなく、本発明を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
質量%で、Si:3.2%、C:0.05%、酸可溶性Al:0.024%、N:0.005%、Mn:0.04%、S:0.01%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるスラブを1320℃の温度(この成分系の場合、T1=1242℃、T2=1181℃である。)で加熱した後、2.3mm厚に熱間圧延し、その後、1100℃の温度で焼鈍した。その際、雰囲気ガス(窒素と水素の混合ガス)中に水蒸気を吹き込み、表面から脱炭させて表面層のラメラ間隔を変更した。これらの試料を0.3mm厚まで冷間圧延した後、100℃/秒の加熱速度で720℃まで加熱して、その後10℃/秒で850℃の温度まで加熱して脱炭焼鈍し、続いてアンモニア含有雰囲気で焼鈍して鋼板中の窒素を0.018%に増加させ、次いで、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、仕上げ焼鈍を施した。
得られた表層ラメラ間隔の異なる試料の仕上げ焼鈍後の磁気特性を表1に示す。
Figure 0005068579
質量%で、Si:3.2%、C:0.05%、酸可溶性Al:0.024%、N:0.005%、Mn:0.04%、S:0.01%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるスラブを1320℃の温度(この成分系の場合、T1=1242℃、T2=1181℃である。)で加熱した後、2.3mm厚に熱間圧延した。その後、1100℃の温度で焼鈍した。その際、雰囲気ガス(窒素と水素の混合ガス)中に水蒸気を吹き込み、表面から脱炭させて表面のラメラ間隔を(A)、(B)の2種類に調整した。これらの試料を0.3mm厚まで冷間圧延した後、(1)15℃/秒、(2)40℃/秒の加熱速度で720℃まで加熱して、その後10℃/秒で850℃の温度まで加熱して脱炭焼鈍し、続いてアンモニア含有雰囲気で焼鈍して鋼板中の窒素を0.02%に増加させ、次いで、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、仕上げ焼鈍を施した。
得られた試料の仕上げ焼鈍後の磁気特性を表2に示す。なお、試料の記号は、表層ラメラ間隔と加熱速度の組み合わせを示す。熱延板焼鈍及び脱炭焼鈍とも本発明の条件を満たす場合には、高い磁束密度が得られる。
Figure 0005068579
質量%で、Si:3.2%、C:0.055%、酸可溶性Al:0.026%、N:0.005%、Mn:0.05%、Cu:0.1%、S:0.012%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるスラブを1330℃の温度(この成分系の場合、T1=1250℃、T2=1206℃、T4=1212℃である。)で加熱した後、2.3mm厚に熱間圧延した。その後、1100℃の温度で焼鈍した。その際、雰囲気ガス(窒素と水素の混合ガス)中に水蒸気を吹き込み、表面から脱炭させて表面層のラメラ間隔を(A)、(B)の2種類に調整した。これらの試料を0.3mm厚まで冷間圧延した後、20℃/秒の加熱速度で550℃まで加熱し、さらに(1)15℃/秒、(2)40℃/秒、(3)100℃/秒の加熱速度で550〜720℃まで加熱し、その後15℃/秒の加熱速度でさらに加熱して840℃の温度で脱炭焼鈍し、続いてアンモニア含有雰囲気で焼鈍して鋼板中の窒素を0.02%に増加させ、次いで、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、仕上げ焼鈍を施した。
得られた試料の仕上げ焼鈍後の磁気特性を表3に示す。なお、試料の記号は、表層ラメラ間隔と加熱速度の組み合わせを示す。熱延板焼鈍及び脱炭焼鈍とも本発明の条件を満たす場合には、高い磁束密度が得られる。
Figure 0005068579
質量%で、Si:3.2%、C:0.055%、酸可溶性Al:0.026%、N:0.005%、Mn:0.05%、Cu:0.1%、S:0.012%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるスラブを1330℃の温度で加熱した後、2.3mm厚に熱間圧延した。その後、1100℃の温度で焼鈍した。その際、雰囲気ガス(窒素と水素の混合ガス)中に水蒸気を吹き込み、表面から脱炭させて表面層のラメラ間隔を27μmにした。この試料を0.3mm厚まで冷間圧延した後、20℃/秒の加熱速度で550℃まで加熱し、さらに40℃/秒の加熱速度で550〜720℃まで加熱し、その後15℃/秒の加熱速度でさらに加熱して840℃の温度で脱炭焼鈍し、続いてアンモニア含有雰囲気で焼鈍して鋼板中の窒素を0.08〜0.02%に増加させ、次いで、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、仕上げ焼鈍を施した。
得られた窒素量の異なる試料の仕上げ焼鈍後の磁気特性を表4に示す。
Figure 0005068579
試料として、実施例4で用いた冷延板を40℃/秒の加熱速度で720℃まで加熱し、その後15℃/秒の加熱速度でさらに加熱して800〜900℃の温度で脱炭焼鈍し、続いてアンモニア含有雰囲気で焼鈍して鋼板中の窒素を0.02%に増加させ、次いで、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、仕上げ焼鈍を施した。
得られた脱炭焼鈍後の一次再結晶粒径の異なる試料の仕上げ焼鈍後の磁気特性を表5に示す。
Figure 0005068579
質量%で、Si:3.2%、C:0.055%、酸可溶性Al:0.026%、N:0.006%、Mn:0.05%、S:0.05%、Se:0.015%、Sn:0.1%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるスラブを1330℃の温度(この成分系の場合、T1=1269℃、T2=1152℃、T3=1217℃である。)で加熱した後、2.3mm厚に熱間圧延した。その後、一部の試料(A)はそのまま、一部の試料(B)は表面にK2CO3を塗布し、窒素と水素の乾燥雰囲気ガス中で、1080℃の温度で焼鈍を行った。これらの試料を0.3mm厚まで冷間圧延した後、20℃/秒の加熱速度で550℃まで加熱し、さらに100℃/秒の加熱速度で550〜720℃まで加熱し、その後15℃/秒の加熱速度でさらに加熱して840℃の温度で脱炭焼鈍し、続いてアンモニア含有雰囲気で焼鈍して鋼板中の窒素を0.018%に増加させ、次いで、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、仕上げ焼鈍を施した。
得られた表層ラメラ間隔の異なる試料の仕上げ焼鈍後の磁気特性を表6に示す。
Figure 0005068579
実施例4の冷延板を用いて、加熱速度(A)15℃/秒、(B)50℃/秒の加熱速度で、(1)500℃、(2)550℃および(3)600℃の温度まで加熱し、その後、100℃/秒の加熱速度で720℃まで加熱し、更に10℃/秒で830℃の温度まで加熱して脱炭焼鈍を施した。続いてアンモニア含有雰囲気で焼鈍して鋼板中の窒素を0.022%に増加させ、次いで、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、仕上げ焼鈍を施した。
仕上げ焼鈍後の試料の磁気特性を表7に示す。低温域の加熱速度を速めることにより、100℃/秒で加熱する開始温度を600℃に高めても良好な磁気特性が得られることが分かる。
Figure 0005068579
冷延前の表面粒組織のラメラ間隔と磁束密度B8の関係を示す図である。 脱炭焼鈍の昇温途中の550〜720℃の温度域の加熱速度と製品の磁束密度(B8)の関係を示す図である。

Claims (8)

  1. 質量%で、Si:0.8〜7%、C:0.085%以下、酸可溶性Al:0.01〜0.065%、N:0.0075%以下、Mn:0.02〜0.20%、Seq.=S+0.406×Se:0.003〜0.05%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる珪素鋼素材を、下記式で表される温度T1、T2、およびT3(℃)のいずれの温度以上、1350℃以下の温度で加熱した後に熱間圧延し、得られた熱延板を焼鈍し、次いで一回の冷間圧延または焼鈍を介して複数の冷間圧延を施して最終板厚の鋼板とし、その鋼板を脱炭焼鈍した後、焼鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍を施すとともに、脱炭焼鈍から仕上げ焼鈍の二次再結晶開始までの間に鋼板の窒素量を増加させる処理を施すことよりなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
    前記熱延板の焼鈍過程において、脱炭前の鋼板炭素量に対して0.002〜0.02質量%脱炭させることにより、焼鈍後の表面粒組織においてラメラ間隔を20μm以上に制御するとともに、
    前記最終板厚の鋼板を脱炭焼鈍する際の昇温過程において、鋼板温度が550℃から720℃にある間を40℃/秒以上の加熱速度で加熱することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
    T1=10062/(2.72−log([Al]×[N]))−273
    T2=14855/(6.82−log([Mn]×[S]))−273
    T3=10733/(4.08−log([Mn]×[Se]))−273
    ここで、[Al]、[N]、[Mn]、[S]、[Se] は、それぞれ
    酸可溶性Al、N、Mn、S、Seの含有量である。
  2. 前記珪素鋼素材が、さらに、質量%で、Cu:0.01〜0.30%含有し, 下記のT4(℃)以上、1350℃以下の温度で加熱した後に熱間圧延することを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
    T4=43091/(25.09−log([Cu]×[Cu]×[S]))−273
    ここで、[Cu]は、Cuの含有量である。
  3. 前記鋼板を脱炭焼鈍する際の昇温過程において、鋼板温度が550℃から720℃にある間を50〜250℃/秒の加熱速度で加熱することを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 前記鋼板を脱炭焼鈍する際の、前記鋼板温度が550℃から720℃にある間の加熱を、誘導加熱で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 前記鋼板を脱炭焼鈍する際、その昇温過程において前記加熱速度で加熱する温度範囲をTs(℃)から720℃としたときに、室温から500℃までの加熱速度H(℃/秒)に応じて以下のTs(℃)から720℃までの範囲とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
    H≦15: Ts≦550
    15<H: Ts≦600
  6. 前記脱炭焼鈍を、脱炭焼鈍後の一次再結晶粒径が7μm以上18μm未満となるような温度と時間幅で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  7. 前記窒素量を増加させる処理を、鋼板の窒素量[N]が、鋼板の酸可溶性Alの量[Al]に応じて、式:[N]≧14/27[Al]を満足するように行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  8. 前記珪素鋼素材が、さらに、質量%で、Sn:0.3%以下を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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