JP5526609B2 - 磁束密度の良好な方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

磁束密度の良好な方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、磁束密度の良好な方向性電磁鋼板を、工業的な規模で製造する方法に関するものである。
方向性電磁鋼板は、Siを2〜5%程度含有し、結晶粒の方位が{110}<001>方位に高度に集積した鋼板であり、主に、変圧器等の静止誘導器の鉄心材料として使用されている。結晶粒方位の高度な集積は、二次再結晶という、カタストロフィックな粒成長現象を制御して達成される。
二次再結晶を制御する方法として、二次再結晶時にインヒビターとして機能する微細析出物を、熱間圧延前に、鋼片加熱で完全に固溶させ、その後、熱間圧延、及び、後の焼鈍で、微細析出させる方法がある(例えば、特許文献1〜3、参照)。特許文献1の方法では、MnSとAlNをインヒビターとして用い、特許文献2及び3の方法では、MnSとMnSeをインヒビターとして用いている。
また、二次再結晶を制御する方法として、熱間圧延前の鋼片を1280℃未満に加熱し、冷間圧延後の窒化処理でAlNを形成し、インヒビターとして用いる方法がある(例えば、特許文献4及び5、参照)。
さらに、インヒビターによる手法に加えて二次再結晶を制御する方法として、これまで脱炭焼鈍後の一次再結晶集合組織を制御する手法が開発されてきた。この方法は、二次再結晶後に磁性に良好な方位であるゴス方位({110}<001>)を発達させるために、ゴス方位が蚕食しやすい{411}<148>方位や{111}<112>方位を脱炭焼鈍終了時までに制御するものである(例えば、特許文献6参照)。
しかしながら、本発明者らの検討により、上記手法を用いて{411}<148>方位や{111}<112>方位の存在量(測定強度)を制御しても、高い磁束密度の電磁鋼板を、必ずしも安定的に製造することができないことが判明した。
特公昭40−015644号公報 特公昭51−013469号公報 特開平06−192735号公報 特公昭62−045285号公報 特開平02−077525号公報 特願平08−063146号公報
本発明は、前述した脱炭焼鈍後の一次再結晶集合組織制御の技術的課題に鑑み、該課題を解決し、磁束密度の良好な方向性電磁鋼板を、工業的な規模で、安定的に製造するための製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、脱炭焼鈍後の一次再結晶集合組織を制御することにより、さらなる磁束密度の向上について鋭意研究した。その結果、脱炭焼鈍後の鋼板表層における特定の結晶方位の強度のみならず、それらの粒の結晶粒径を制御することにより、二次再結晶後の結晶方位がより好ましいものとなり、磁束密度の良好な方向性電磁鋼板を、工業的な規模で安定的に製造することができることが判明した。なお、この点の詳細については、後述する。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)質量%で、Si:2.5〜4.5%、C:0.02〜0.10%、酸可溶性Al:0.01〜0.05%、N:0.003〜0.02%、S:0.005〜0.04%、Mn:0.04〜0.20%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるスラブを、1250℃以上に加熱し、熱間圧延で熱延板とし、該熱延板に焼鈍を施し、次いで、酸洗の後、一回又は焼鈍を挟む二回の冷間圧延で冷延板とし、該冷延板に脱炭焼鈍を施し、続いて、焼鈍分離剤を塗布し、最終仕上焼鈍を実施して方向性電磁鋼板を製造するにあたり、
前記冷間圧延を最終圧延率84%以上93%以下で行い、前記脱炭焼鈍を、300℃/s以上500℃/s以下の昇温速度で昇温して800〜900℃の温度で行うことで、脱炭焼鈍後の鋼板表層における結晶方位{111}<112>の強度を2以上11以下かつ粒径を全体の平均粒径の97%以下、結晶方位{411}<148>の強度を2以上7以下かつ粒径を全体の平均粒径の105%以上とし、さらに、最終仕上焼鈍中の850℃から950℃までを15℃/h以下の昇温速度で昇温することを特徴とする磁束密度の良好な方向性電磁鋼板の製造方法。
(2)質量%で、Si:2.5〜4.5%、C:0.02〜0.10%、酸可溶性Al:0.01〜0.05%、N:0.003〜0.02%、S+0.4・Se:0.005〜0.04%、Se:0.001〜0.10%、Mn:0.04〜0.20%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるスラブを、1250℃以上に加熱し、熱間圧延で熱延板とし、該熱延板に焼鈍を施し、次いで、酸洗の後、一回又は焼鈍を挟む二回の冷間圧延で冷延板とし、該冷延板に脱炭焼鈍を施し、続いて、焼鈍分離剤を塗布し、最終仕上焼鈍を実施して方向性電磁鋼板を製造するにあたり、
前記冷間圧延を最終圧延率84%以上93%以下で行い、前記脱炭焼鈍を、300℃/s以上500℃/s以下の昇温速度で昇温して800〜900℃の温度で行うことで、脱炭焼鈍後の鋼板表層における結晶方位{111}<112>の強度を2以上11以下かつ粒径を全体の平均粒径の97%以下、結晶方位{411}<148>の強度を2以上7以下かつ粒径を全体の平均粒径の105%以上とし、さらに、最終仕上焼鈍中の850℃から950℃までを15℃/h以下の昇温速度で昇温することを特徴とする磁束密度の良好な方向性電磁鋼板の製造方法。
(3)前記スラブが、さらに、Sn、Sbの1種または2種を0.0005〜1.0%含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の磁束密度の良好な方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、良好な磁気特性を備える方向性電磁鋼板を、工業的な規模で、安定的に製造することができる。
本発明は、所定の組成からなるスラブを用い、熱間圧延、熱延板焼鈍、冷間圧延、脱炭焼鈍、仕上焼鈍の各工程を経て方向性電磁鋼板を製造する際、冷間圧延を最終圧延率84%以上93%以下で行い、脱炭焼鈍を、300℃/s以上500℃/s以下の昇温速度で昇温して800〜900℃の温度で行うことで、脱炭焼鈍後の鋼板表層における結晶方位{111}<112>の強度を2以上11以下かつ粒径を全体の平均粒径の97%以下、結晶方位{411}<148>の強度を2以上以下かつ粒径を全体の平均粒径の105%以上とし、さらに、最終仕上焼鈍中の850℃から950℃までを15℃/h以下の昇温速度で昇温することを特徴とす
まず、スラブ組成を規定する理由について説明する。なお、%は、質量%を意味する。
Siは、電気抵抗を高め,鉄損を下げる作用をなす重要な元素である。2.5%未満の添加では、鉄損低下効果が発現しないので、下限を2.5%とする。しかし、4.5%を超えると、冷間圧延時に、圧延材が割れ易くなり、圧延不能となることがあるので、上限を4.5%とする。鉄損特性の向上、及び、圧延時の割れ回避の点で、2.8〜3.5%が好ましい。
Cは、強度向上に有効な元素であり、所要量添加する。後工程の脱炭焼鈍で脱炭するので、少ないほど、焼鈍時間は短かくてすみ、生産性の点で好ましいが、0.02%未満であると、スラブ加熱時に、結晶粒が粗大化して、鉄損特性が低下するので、下限を0.02%とする。
一方、0.10%を超えると、脱炭焼鈍時間が長くなり、生産性が低下するだけでなく、脱炭が不充分になり易いので、上限を0.10%とする。強度維持、及び、脱炭促進の点から、0.04〜0.08%が好ましい。
酸可溶性AlとNは、インヒビターとして機能するAlN、又は、(Al、Si)Nを形成するのに必要な元素である。
酸可溶性Alが0.01%未満、又は、Nが0.003%未満であると、AlN、又は、(Al、Si)Nの生成量が少なく、充分なインヒビター機能を確保することができず二次再結晶が発現しないので、酸可溶性Alの下限は0.01%とし、Nの下限は0.003%とする。
一方、酸可溶性Alが0.05%を超えるか、又は、Nが0.02%を超えると、二次再結晶温度が高くなり過ぎて、二次再結晶不良が生じるので、酸可溶性Alの上限は0.05%とし、Nの上限は0.02%とする。適正量のインヒビター確保の点で、酸可溶性Alは、0.02〜0.035%が好ましく、Nは0.006〜0.01%が好ましい。
Mn及びSは、スラブを比較的高温で加熱する製造方法(特許文献1、参照)において、二次再結晶時にインヒビターとして機能するMnSを形成するのに必要な元素である。
Mnが0.04%未満、又は、Sが0.005%未満であると、MnSの生成量が少なくて、充分なインヒビター機能が得られず二次再結晶が発現しないので、Mnの下限は0.04%とし、Sの下限は0.005%とする。
一方、Mnが0.20%を超えるか、又は、Sが0.04%を超えると、MnとSを溶体化するスラブ加熱の加熱温度を高くするか、又は、加熱時間を長くせざるを得ず、操業上の負荷が増大するので、Mnの上限は0.20%とし、Sの上限は0.04%とする。完全な容体化処理、及び、適正量のインヒビター確保の点で、Mnは、0.06〜0.09%が好ましく、Sは、0.02〜0.03%が好ましい。
MnSの全部又は一部代替として、MnSeを使用することができる(特許文献3、参照)。この場合には、(S+0.4・Se)で、0.005〜0.04%添加する。ただし、Seは、0.001〜0.10%、好ましくは、0.001〜0.02%とする。なお、0.4=(Sの原子量)/(Seの原子量)であり、Seの作用効果をSの作用効果に換算する係数である。
(S+0.4・Se)が0.005%未満、又は、Seが0.001%未満であると、充分なインヒビター機能を確保することができず、二次再結晶が発現しないので、(S+0.4・Se)の下限は0.005%とし、Seの下限は0.001%とする。
一方、(S+0.4・Se)が0.04%を超えるか、又は、Seが0.10%を超えると、Mn、Se、Sを溶体化するスラブ加熱の加熱温度を高くするか、又は、加熱時間を長くする必要があり、操業上の負荷が増大するので、(S+0.4・Se)の上限は0.04%とし、Seの上限は0.10%とする。
適正量のインヒビター確保の点で、(S+0.4・Se)は、0.007〜0.012%が好ましい。この場合、Seは、0.014〜0.022%が好ましく、Sは、0.002〜0.005%が好ましい。
Sn、Sbは、磁気特性を良好ならしめるために、これらの1種または2種を合計量で0.0005〜1.0%の範囲で、必要に応じて添加する。
なお、本発明のスラブにおいては、特に規定はしないが磁気特性を良好ならしめるために、Cu、Bi、Te、B、P、Pb、Mo、V等の1種又は2種以上を添加してもよい。この場合、Sn、Sbを含めた合計量で0.0005〜1.0%が好ましい。
続いて製造工程について述べる。
インヒビター構成元素を、鋼のマトリックス中に溶体化するため、鋳造したスラブを、1250℃以上で加熱する。加熱温度の上限は、圧延設備の保護の点から、1450℃以下が好ましい。
加熱されたスラブを熱間圧延して熱延板に仕上る。熱延板の板厚は、特に限定されないが、後の冷間圧延の圧下率との関係で、通常は、1.8〜3.5mmとする。熱延板に、通常、750〜1200℃、30秒〜10分の焼鈍を施した後、冷間圧延に供する。
冷間圧延は、1回行うか、又は、焼鈍を挟んで2回に分けて行う。1回の冷間圧延は、焼鈍を途中に含まず、1回又は複数回の冷間圧延を行うことを意味する。いずれの態様の冷間圧延に際しても、脱炭焼鈍後の結晶組織において、後述の特定方位の強度、粒径を制御する観点から、最終の冷間圧延の圧延率(1回の場合はその圧延率)を84〜93%とする必要がある。圧延率のさらにより好ましい範囲は85%〜92%である。
冷間圧延を、焼鈍を挟んで2回に分けて行う場合、焼鈍は、750〜1200℃で、30秒〜10分間、行うのが好ましい。
冷間圧延が1回であると、電磁鋼板の幅方向及び長手方向における磁気特性が不均一になり易い。冷間圧延を2回に分けて行うと、磁気特性は均一化するが、到達磁束密度は低下する傾向がある。冷間圧延の回数は、所望の磁気特性と製造コストを勘案して、適宜、選択する。
冷間圧延の後、冷延板を脱炭焼鈍する。脱炭焼鈍は、通常、水素と窒素を含む湿潤雰囲気中で、800〜900℃で行い、Cを20ppm以下に低減する。
本発明では、さらに、脱炭焼鈍後の結晶組織において、ゴス方位粒が蚕食し易い方位である、{111}<112>方位や{411}<148>方位の強度及びこれらの方位粒の粒径を所定の範囲とする。
すなわち、ゴス粒が出現し、成長する板厚表層域(板厚の1/10厚さ近傍の領域)における、結晶方位{111}<112>の強度を2以上11以下、結晶方位{411}<148>の強度を2以上7以下とする必要がある。さらに好ましくは、結晶方位{111}<112>の強度を2以上10以下、結晶方位{411}<148>の強度を3以上7以下とする。
このときの強度の測定はX線、EBSD(Electron Back-Scattering Diffraction pattern)等のいずれの方法でも構わない。またこの際のデータ処理は、球面調和関数展開により求めた強度であることが好ましい。
さらに、上記方位粒の平均粒径を、結晶方位{111}<112>では全方位の平均結晶粒径の97%以下、結晶方位{411}<148>では全方位の平均結晶粒径の105%以上とする。
このときの粒径測定は、結晶方位をEBSDで求めることとし、結晶方位の尤度は10度以内とする。全体の平均結晶粒径、結晶方位{111}<112>の平均粒径及び結晶方位{411}<148>の平均粒径は、いずれも300粒以上の個数の平均値とすることが好ましい。平均粒径の導出は、EBSDで測定したものから直接求めても良いし、市販の画像解析を用いても良いが、円相当の平均粒径とする。
結晶方位{111}<112>と{411}<148>の強度と粒径を上記のように制御することにより、磁束密度の良好な方向性電磁鋼板を製造することができる。この理由は、二次再結晶直前に表層の結晶粒が粒成長を生じるが、その際上記2つの方位の存在量が、粒成長前の強度と粒径により適正に制御されるからである。
脱炭焼鈍における昇温速度は、50℃/s以上500℃/s以下とする。この理由は昇温速度50℃/s以上で、前述の特定方位の強度と相対的な粒径比を制御でき、良好な磁束密度が得られるからである。上限500℃/sとしたのは、これ以上では効果が飽和するからである。
なお、特許請求の範囲では、昇温速度の下限を実施例で確認されている300℃/sとした。
脱炭焼鈍の後、冷延板に、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して、仕上焼鈍を施す。
仕上焼鈍は、{110}<001>方位の結晶粒を二次再結晶させる工程であり、磁束密度を高めるために重要な工程である。通常、窒素と水素の混合雰囲気中、950℃以上における昇温過程で、二次再結晶を発現させ、その後、上記雰囲気を水素雰囲気に切り替え、1100〜1200℃で20時間程度の焼鈍を行う。この焼鈍で、N、S、Se等を、冷延板から除去し、磁気特性を良好なものとする。
仕上焼鈍において、上記以外の昇温速度で重要な温度範囲は850℃から950℃である。この温度範囲が重要な理由は、表層近傍の析出物を弱体化させ、表層粒を粗大化させる、又は、表層粒から二次再結晶を開始させるためである。すなわち、850℃から950℃までの温度範囲における昇温速度を15℃/h以下で実行する必要がある。15℃/h以下とすることで磁束密度の良好な方向性電磁鋼板の製造が可能となる。このうち、より好ましい範囲は10℃/h以下である。下限は特に規定しないが、生産性の観点から1℃/h以上であることが好ましい。
また、特に規定はしないが磁束密度の向上の観点から、950℃から1100℃までの昇温速度を25℃/h以下で実行することが好ましい。また、生産性の点から、3℃/h以上が好ましい。より好ましい範囲は、5〜20℃/hである。
なお、850℃までの昇温速度は、特に限定されないが、通常、15〜100℃/hであり、生産性の点で、速いほうが望ましい。
仕上焼鈍後の冷延板に、例えば、リン酸アルミニウムとコロイダルシリカを主成分とする被膜液を塗布して焼き付け、絶縁被膜を形成する。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例の条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例1)
真空溶解炉にて、質量%で、C:0.09%、Si:3.1%、Al:0.03%、N:0.01%、S:0.03%、Mn:0.08%、を含有する鋼を溶製し、これを鋳造してスラブを作製した。このスラブに、1350℃で1時間の焼鈍を施した後、熱間圧延で、種々の板厚の熱延板に仕上げた。
上記熱延板に、1080℃で120秒の焼鈍を施し、次いで、酸洗の後、1回の冷間圧延で板厚0.23mmの冷延板に仕上げた。この冷延板に、湿水素中にて、昇温速度300℃/s、840℃で110秒の脱炭焼鈍を施した。このとき、脱炭焼鈍板の板厚1/10の板面についてEBSDにより、結晶方位{111}<112>、{411}<148>の強度及び全体の平均粒径と上記各方位粒の平均粒径を求めた(全体の平均粒数 約10000粒)。その後、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を水スラリーにて塗布し、次いで、1200℃、20時間の仕上焼鈍を施した。このとき仕上焼鈍における850℃から950までの昇温速度を12℃/hとした。
仕上焼鈍後の鋼板を水洗した後、磁気測定用の単板サイズに剪断し、リン酸アルミニウムとコロイダルシリカを主成分とする被膜液を塗布して焼き付け、絶縁被膜付き方向性電磁鋼板を作製した。
作製した方向性電磁鋼板の磁束密度B8を測定した。B8は、50Hzにて800A/mの磁場を付与したときの磁束密度であり、W60×L300の単板で評価した。熱延板厚毎に、測定用の単板を5枚用意し、B8を測定し、その平均値を求めた。
表1に、熱延板板厚、冷間圧延率、脱炭焼鈍板の測定結果(全体の平均粒径、結晶方位{111}<112>、{411}<148>の強度及び粒径比(全体の平均粒径に対する各方位粒の平均粒径の比率))、製品板磁束密度B8の平均値を示す。熱延板板厚の増加に伴い、すなわち冷延率増加に伴い全体の平均粒径は小さくなり、{111}<112>の強度は強く、粒径比は小さくなり、{411}<148>の強度は強く、粒径比は小さくなることがわかる。このうち、試料符号2〜6は、結晶方位{111}<112>の強度は2以上7以下、粒径比は97%以下、結晶方位{411}<148>の強度は2以上7以下、粒径比は105%以上であり、磁束密度B8も1.90T以上であり良好な磁気特性が得られた。
以上より、冷間圧延率を84〜93%の範囲とした試料符号2〜6は、ゴス粒が蚕食し易い結晶方位の存在状態が適切であるため、良好な磁気特性を有していた。
Figure 0005526609
(実施例2)
実施例1と同様にして、質量%で、C:0.08%、Si:3.2%、Al:0.03%、N:0.01%、S:0.03%、Mn:0.07%、Sn:0.08%を含有するスラブを作製した。このスラブに、1350℃、1時間の焼鈍を施した後、熱間圧延で、2.3mmの板厚の熱延板に仕上げた。
上記熱延板に、1100℃で110秒の焼鈍を施し、次いで、酸洗の後、1回の冷間圧延で板厚0.23mmの冷延板に仕上げた。この冷延板に、湿水素中にて、種々の昇温速度で昇温し、850℃で120秒保持する脱炭焼鈍を施した。このとき、脱炭焼鈍板の板厚1/10の板面についてEBSDにより、実施例1と同様の解析を実施した。その後、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を水スラリーにて塗布し、次いで、1200℃で20時間の仕上焼鈍を施した。このとき仕上焼鈍における850℃から950までの昇温速度を10℃/hとした。
仕上焼鈍後の鋼板を水洗した後、磁気測定用の単板サイズに剪断し、リン酸アルミニウムとコロイダルシリカを主成分とする被膜液を塗布して焼き付け、絶縁被膜付き方向性電磁鋼板を作製した。
作製した方向性電磁鋼板の磁束密度B8を測定した。評価方法は実施例1と同様に実施した。
表2に、脱炭板昇温速度、脱炭焼鈍板の測定結果、製品板磁束密度B8の平均値を示す。昇温速度の増加に伴い、{111}<112>の強度は弱く、粒径比は小さくなり、{411}<148>の強度は強く、粒径比は小さくなることがわかる。このうち、試料符号3〜6は、結晶方位{111}<112>の強度は2以上11以下、粒径比は97%以下、結晶方位{411}<148>の強度は2以上7以下、粒径比は105%以上であり、磁束密度B8も1.90T以上であり良好な磁気特性が得られた。しかしながら、試料6については磁束密度改善効果が飽和しているため、比較例とする。
以上より、昇温速度を50℃/s以上500℃/s以下%の範囲とした試料符号2〜5は、ゴス粒が蚕食し易い結晶方位の存在状態が適切であるため、良好な磁気特性を有していた。
Figure 0005526609
参考例1
実施例1と同様にして、質量%で、C:0.08%、Si:3.3%、Al:0.03%、N:0.01%、S:0.003%、Se:0.013%、Mn:0.07%、Sb:0.03%を含有するスラブを作製した。このスラブに、1400℃で1時間の焼鈍を施した後、熱間圧延で、2.3mmの板厚の熱延板に仕上げた。
上記熱延板に、1000℃で60秒の焼鈍を施し、次いで酸洗の後、冷間圧延で板厚1.6mmの板厚とした。さらに1100℃、100sにて焼鈍を実施し、その後0.23mmの冷延板に仕上げた。この冷延板に、湿水素中にて、80℃/sの昇温速度で昇温し、850℃で120秒保持する脱炭焼鈍を施した。このとき、脱炭焼鈍板の板厚1/10の板面についてEBSDにより、実施例1と同様の解析を実施した。その後、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を水スラリーにて塗布し、次いで、1200℃で20時間の仕上焼鈍を施した。このとき、仕上焼鈍の昇温途中における850℃での保定時間を変更し、その後、850℃から950までの昇温速度を25℃/hとした。850℃から950までの昇温速度は、850℃の保定開始から950℃に到達するまでの時間の昇温速度である。
仕上焼鈍後の鋼板を水洗した後、磁気測定用の単板サイズに剪断し、リン酸アルミニウムとコロイダルシリカを主成分とする被膜液を塗布して焼き付け、絶縁被膜付き方向性電磁鋼板を作製した。
作製した方向性電磁鋼板の磁束密度B8を測定した。評価方法は実施例1と同様に実施した。
表3に、仕上焼鈍における850℃保定時間、850℃から950℃までの昇温速度、脱炭焼鈍板の測定結果、製品板磁束密度B8の平均値を示す。
このうち、昇温速度15℃/h以下である試料符号2〜6は、磁束密度B8が1.90T以上であり良好な磁気特性が得られた。
以上より、仕上焼鈍850℃〜950℃までの昇温速度15℃/h以下とした試料符号2〜6は、良好な磁気特性を有していた。
Figure 0005526609
前述したように、本発明によれば、磁束密度の良好な方向性電磁鋼板を、工業的な規模で、安定的に製造することができる。したがって、本発明は、電磁鋼板製造産業において利用可能性が大きいものである。

Claims (3)

  1. 質量%で、Si:2.5〜4.5%、C:0.02〜0.10%、酸可溶性Al:0.01〜0.05%、N:0.003〜0.02%、S:0.005〜0.04%、Mn:0.04〜0.20%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるスラブを、1250℃以上に加熱し、熱間圧延で熱延板とし、該熱延板に焼鈍を施し、次いで、酸洗の後、一回又は焼鈍を挟む二回の冷間圧延で冷延板とし、該冷延板に脱炭焼鈍を施し、続いて、焼鈍分離剤を塗布し、最終仕上焼鈍を実施して方向性電磁鋼板を製造するにあたり、
    前記冷間圧延を最終圧延率84%以上93%以下で行い、前記脱炭焼鈍を、300℃/s以上500℃/s以下の昇温速度で昇温して800〜900℃の温度で行うことで、脱炭焼鈍後の鋼板表層における結晶方位{111}<112>の強度を2以上11以下かつ粒径を全体の平均粒径の97%以下、結晶方位{411}<148>の強度を2以上7以下かつ粒径を全体の平均粒径の105%以上とし、さらに、最終仕上焼鈍中の850℃から950℃までを15℃/h以下の昇温速度で昇温することを特徴とする磁束密度の良好な方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 質量%で、Si:2.5〜4.5%、C:0.02〜0.10%、酸可溶性Al:0.01〜0.05%、N:0.003〜0.02%、S+0.4・Se:0.005〜0.04%、Se:0.001〜0.10%、Mn:0.04〜0.20%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるスラブを、1250℃以上に加熱し、熱間圧延で熱延板とし、該熱延板に焼鈍を施し、次いで、酸洗の後、一回又は焼鈍を挟む二回の冷間圧延で冷延板とし、該冷延板に脱炭焼鈍を施し、続いて、焼鈍分離剤を塗布し、最終仕上焼鈍を実施して方向性電磁鋼板を製造するにあたり、
    前記冷間圧延を最終圧延率84%以上93%以下で行い、前記脱炭焼鈍を、300℃/s以上500℃/s以下の昇温速度で昇温して800〜900℃の温度で行うことで、脱炭焼鈍後の鋼板表層における結晶方位{111}<112>の強度を2以上11以下かつ粒径を全体の平均粒径の97%以下、結晶方位{411}<148>の強度を2以上7以下かつ粒径を全体の平均粒径の105%以上とし、さらに、最終仕上焼鈍中の850℃から950℃までを15℃/h以下の昇温速度で昇温することを特徴とする磁束密度の良好な方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記スラブが、さらに、Sn、Sbの1種または2種を0.0005〜1.0%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の磁束密度の良好な方向性電磁鋼板の製造方法。
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