JP6228956B2 - 低鉄損高磁束密度方向性電気鋼板及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、発電機や変圧器などの電子機器の鉄心材料として用いられる方向性電気鋼板の製造に関し、特に、Snを主な結晶粒成長抑制剤として活用することにより1次再結晶集合組織においてGoss集合組織の分率を高め、最終高温焼鈍後の2次結晶粒のサイズを適正化することにより磁性を向上させた低鉄損高磁束密度方向性電気鋼板およびその製造方法に関する。
方向性電気鋼板は、圧延方向に対して鋼片の集合組織が{110}<001>のGoss集合組織を示しており、一方向或いは圧延方向に磁気的特性に優れた軟磁性材料である。このようなGoss集合組織を形成するためには、製鋼段階における成分制御、熱間圧延におけるスラブ再加熱及び熱間圧延工程因子の制御、熱延板焼鈍、1次再結晶焼鈍、2次再結晶焼鈍などの様々な工程条件が非常に精密かつ厳格に管理されなければならない。
これと共にGoss集合組織を形成する因子中の一つであるインヒビターは、1次再結晶粒の無分別な成長を抑制しかつ2次再結晶発生の際にGoss集合組織のみが成長できるようにする結晶粒成長抑制剤として非常に重要な機能を行うものである。2次再結晶焼鈍の後に優れたGoss集合組織を有する最終鋼板を得るためには2次再結晶が起こる直前まですべての1次再結晶粒の成長が抑制されなければならず、このための十分な抑制力を得るためにはインヒビターの量が十分に多くなければならず、その分布も均一でなければならない。また、高温の2次再結晶焼鈍(最終高温焼鈍)の間に2次再結晶が共に起こるようにするためには、インヒビターは、その熱的安定性が優れていて容易に分解されないものでなくてはならない。2次再結晶は最終高温焼鈍の際にインヒビターが適正な温度区間で分解されるか或いは抑制力を失うことにより発生する現象であって、この場合、Goss結晶粒などの特定の結晶粒が比較的短時間内に急激に成長する。
通常、方向性電気鋼板の品質は、代表的な磁気的特性である磁束密度と鉄損によって評価でき、Goss集合組織の精密度が高いほど磁気的特性に優れる。また、品質が優れた方向性電気鋼板は、諸特性による高効率の電力機器の製造が可能であって、電力機器の小型化と共に高効率化を得ることができる。
方向性電気鋼板の鉄損を低めるための研究開発は、まず、磁束密度を高めるための研究開発から行われた。初期の方向性電気鋼板は、M.F.Littmanが提示したMnSを結晶粒成長抑制剤として使用し、2回の冷間圧延法で製造された。これによれば、2次再結晶は比較的安定的に形成されたが、磁束密度はあまり高くなく、鉄損も高い方であった。
その後、田口や板倉により、AlNとMnSとの複合析出物を結晶粒成長抑制剤として用い、80%以上の冷間圧延率で1回強冷間圧延して方向性電気鋼板を製造する技術が提案された。これは強力な結晶粒成長抑制剤と強冷間圧延によって圧延方向への{110}<001>方位の配向度を向上させて高磁束密度を得る技術であって、履歴損失が大幅改善されて低鉄損特性が得られるようになった。
一般に、鋼板の厚さを減少させることは、渦電流損失を減らして鉄損を低めるのに有効である。この方法は冷間圧延の際にさらに変形させて得ることができるが、この場合、結晶粒成長駆動力が増加するので、元来の結晶粒成長抑制剤では結晶粒成長を十分に抑制することができず、2次再結晶が不安定に行われるという問題がある。
このような結晶粒成長駆動力と抑制力のバランスを取りながら厚さを減少させるためには、最終冷間圧延の際に適正な冷間圧延率で圧延を行わなければならず、このような適正な冷間圧延率は結晶粒成長抑制剤の抑制力によって異なる。
田口が提示したAlNとMnSとの複合析出物を結晶粒成長抑制剤として用いる場合は約87%の冷間圧延率が適正であり、Littmanが提示したMnS析出物を結晶粒成長抑制剤として用いる場合は約50〜70%の冷間圧延率が適正である。ところが、このような厳しい冷間圧延条件は生産工程の負担として作用する。
前述した技術の他にも、方向性電気鋼板の磁気的特性をさらに向上させるための一環として、析出物による結晶粒成長抑制力を用いる技術とは異なり、析出物と類似水準の抑制力を得ることが可能な合金元素を添加する技術が提案されている。
これに関連し、1回の強冷間圧延による結晶粒成長抑制力の弱化を補強するために、BやTiを添加する技術が提案された。ところが、Bを添加する技術は、微少量の添加によって製鋼段階で制御することが困難であり、添加されたBが鋼中で粗大なBNを形成し易い。また、Tiを添加する技術は、固溶温度1300℃以上のTiNまたはTiCが形成されて2次再結晶後にも存在することにより、鉄損をむしろ増加させる要因として作用することもある。
結晶粒成長抑制力を向上させるための別の方法として、MnSeとSbを結晶粒成長抑制剤として用いて方向性電気鋼板を製造する技術を挙げることができる。ところが、この方法は、結晶粒成長抑制力が高くて高い磁束密度を得ることができるという利点があるが、素材自体が相当硬くてなっており1回の冷間圧延によっては製造が不可能である。よって、必須的に中間焼鈍を経由して2回の冷間圧延を行わなければならず、有毒性かつ高価なSbやSeを使用するため、有毒物質取り扱いのための別途の設備が必須的であるから、製造コストが上昇するという欠点がある。
別の提案として、SnとCrを複合して添加し、1200℃以下の温度でスラブを加熱し、熱間圧延、中間焼鈍、1回または2回の冷間圧延、脱炭焼鈍を行い、しかる後に、アンモニアガスを用いて窒化処理する、方向性電気鋼板の製造方法が提案された。ところが、これは低鉄損高磁束密度の薄物の方向性電気鋼板を製造するための非常に厳しい製造基準、すなわち酸可溶性Alと素鋼の窒素含量によって熱延板焼鈍温度を厳しく制御しなければならない制約があり、熱延板焼鈍工程の負担が伴い、有毒性のCrをSnと複合して添加しなければならないために製造コストが高くなる上、酸素親和力が強力なCrによって脱炭及び窒化焼鈍工程で形成される酸化層が相当緻密に形成されることにより、脱炭が容易でなく、窒化がうまく行われないという欠点がある。
一方、特許文献1には、鋼板にSb、P、Snなどの元素を添加して電気鋼板の磁性を向上させた技術が開示されている。この技術は、具体的には、P:0.015〜0.07wt%を含み、必要に応じてSb:0.005〜0.2wt%およびSn:0.01〜0.5wt%の中から選択された1種または2種をさらに添加することにより安定な磁気特性が得られることを提示している。
また、特許文献2には、Sb、P、Snを単独で或いは複合して添加する技術が開示されている。この技術は必要に応じてSn、Sb、Pの少なくとも1種以上を0.02〜0.30wt%で含有して磁気特性を向上させることを提示している。
また、特許文献3には、Pを0.2wt%以下で素鋼中に添加し、必要に応じてSb:0.001〜0.02wt%およびSn:0.002〜0.1wt%の中から選ばれる1種以上の元素をさらに含む方向性電気鋼板の製造方法が開示されており、磁気的特性は圧延方向に対して45°方向に優秀に現れるという特徴がある。
また、特許文献4には、電気鋼板の成分系にSb、P、Sn、B、Bi、Mo、Te、Geなどの元素の中から選択された1種以上の元素を0.0005〜2.0%添加する電気鋼板の製造方法が開示されている。
上述したような技術は、Sb、P、Sn、Bなどの合金元素を添加して方向性電気鋼板を製造するための概略的な構成は記載されているが、合金元素の範囲があまりに広範囲に記載されており、それぞれの合金元素が単独で添加されることによる効果が主流となるのではなく、大部分は2種以上の合金元素のうち1種以上を含むという程度にのみ記述されている。また、上述の合金元素を主結晶粒成長抑制剤として活用するための具体的な方案については提案されていない。すなわち、現在の技術によれば、SbやP、Sn、Bなどの合金元素のうち1種以上を添加することにより磁性が向上できるという程度のみ知られているだけで、各合金元素を主な結晶粒成長抑制剤として活用するための適正な含量および工程条件やこれに対する原因関係の詳細な解明は未だ行われていない。それだけでなく、前述したように合金元素を添加した技術は方向性電気鋼板の1次再結晶および2次再結晶の挙動が異なるにもかかわらず、これに対する解決方案を全く提供していないというのが実情である。
特開第2006−241503号公報 特開第2007−254829号公報 特開第2007−051338号公報 特開平11−335794号公報
本発明は、上述した従来の技術の諸般問題点を解消するために案出されたもので、その目的は、製鋼段階でSnを添加するが、主な結晶粒成長抑制剤として活用可能な適正な範囲に制御して1次再結晶組織におけるGoss集合組織の分率を高め、2次再結晶粒のサイズを適正化することにより磁性を向上させた低鉄損高磁束密度方向性電気鋼板及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、スラブ加熱温度を制御して素鋼の中のNの固溶量を制御し、Snの主な結晶粒成長抑制剤としての効果を極大化するために、脱炭焼鈍前の昇温条件を制御し、結晶粒成長駆動力と抑制力のバランスが保たれるように脱炭焼鈍温度条件を適切に制御して適正サイズの1次再結晶粒を形成することにより生産性の低下をもたらすことなく、極めて優れた磁性を有する方向性電気鋼板を製造することが可能な方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る低鉄損高磁束密度方向性電気鋼板の製造方法は、重量%で、Si:2.0〜4.5%、Al:0.005〜0.040%、Mn:0.20%以下、N:0.010%以下、S:0.010%以下、P:0.005〜0.05%、C:0.04〜0.07%、およびSn:0.08〜0.10%を含有し、残部がFe及びその他不可避な不純物からなるスラブを加熱し、熱間圧延した後、熱延板焼鈍し、冷間圧延した後、脱炭及び窒化焼鈍を行い、次いで2次再結晶焼鈍を行う過程を含み、Snが主な結晶粒成長抑制剤として活用されることを特徴とする。
前記脱炭及び窒化焼鈍は、1次再結晶粒のサイズを18〜25μmに制御することができるように800〜950℃の温度範囲で行われ、脱炭焼鈍前の昇温の際に600℃以上700℃以下の温度で維持することが好ましく、脱炭焼鈍前の昇温の際に600〜700℃の温度領域における昇温速度は1℃/s×[Sn(重量%)]以上12℃/s×[Sn(重量%)]以下に制御されることが特に好ましい。
また、本発明の方向性電気鋼板の製造方法は、熱間圧延前にスラブを1050〜1250℃の温度で加熱し、スラブの加熱は素鋼の中のNの固溶量が20〜50ppmの範囲となるように制御することが好ましい。
また、本発明の方向性電気鋼板の製造方法は、2次再結晶された鋼板において結晶方位の絶対値の面積加重平均でβ角度が3°未満となるように制御し、2次再結晶された鋼板の平均結晶粒サイズが1〜2cmとなるように制御することを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る低鉄損高磁束密度方向性電気鋼板は、重量%で、Si:2.0〜4.5%、Al:0.005〜0.040%、Mn:0.20%以下、N:0.010%以下、S:0.010%以下、P:0.005〜0.05%、およびSn:0.08〜0.10%を含有し、残部がFe及びその他不可避な不純物からなることを特徴とする。
本発明の方向性電気鋼板は、重量%で、Si:2.0〜4.5%、Al:0.005〜0.040%、Mn:0.20%以下、N:0.010%以下、S:0.010%以下、P:0.005〜0.05%、C:0.04〜0.07%、およびSn:0.08〜0.10%を含有し、残部がFe及びその他不可避な不純物からなるスラブを用いて製造できる。
本発明の方向性電気鋼板は、2次再結晶された鋼板において結晶方位の絶対値の面積加重平均でβ角度が3°未満であり、2次再結晶された鋼板の平均結晶粒サイズが1〜2cmであることを特徴とする。
本発明によれば、適正量で添加されるSnが主な結晶粒成長抑制剤として作用して1次再結晶集合組織でGoss方位を有する結晶粒の分率が増加することにより、最終2次再結晶後の{110}<001>方位への集積度が非常に高く、結晶粒サイズが微細なGoss集合組織から構成された超低鉄損高磁束密度方向性電気鋼板を製造することができる。
また、本発明によれば、スラブ再加熱の際に固溶されるNの含量を制御し、脱炭焼鈍前の昇温条件を制御してSnの主な結晶粒成長抑制剤としての効果を極大化し、脱炭焼鈍を通常の条件よりやや高い温度範囲で行って1次再結晶粒が適正なサイズに形成されるようにすることにより、結晶粒成長駆動力と抑制力のバランスを適切に維持させて2次再結晶を安定化することにより極めて優れた磁性を有する方向性電気鋼板を製造することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明者らは、方向性電気鋼板の製造において多様な合金元素が磁性に及ぼす種類別影響と、各合金元素が添加された成分系におけるスラブ加熱及び脱炭焼鈍などの工程条件が磁性に及ぼす影響について研究し、実験を重ねて調査した結果、Snを0.08〜0.10重量%で添加して主な結晶粒成長抑制剤として活用すると、1次再結晶集合組織でGoss方位を有する結晶粒の分率が増加し、最終2次再結晶後の{110}<001>方位への集積度が非常に高く結晶粒サイズが微細なGoss集合組織から構成された2次再結晶組織が確保されて鉄損が極めて低く磁束密度が高い方向性電気鋼板を製造することができるという事実が判明した。
また、本発明者らは、Snが上記の組成範囲で添加される成分系のスラブを用いて2次再結晶を安定的に起こすためには、スラブ再加熱の際に固溶されるNの含量を20〜50ppmに制御し、Goss集合組織を有する結晶粒を除いた他の結晶粒の粒界にSnが優先偏析するように脱炭焼鈍前の昇温の際に600〜700℃の温度で維持させ、結晶粒成長駆動力と抑制力のバランスが保たれるように脱炭焼鈍を通常の条件よりやや高い温度範囲(800〜950℃)で行って1次再結晶粒を18〜25μmのサイズに形成させなければならないという事実に注目し、本発明を完成することができた。
本発明は、重量%で、Si:2.0〜4.5%、Al:0.005〜0.040%、Mn:0.20%以下、N:0.010%以下、S:0.010%以下、P:0.005〜0.05%、C:0.04〜0.07%、およびSn:0.08〜0.10%を含有し、残部がFe及びその他不可避な不純物からなるスラブを1050〜1250℃で加熱して素鋼の中のNの固溶量を20〜50ppmの範囲に制御し、熱間圧延した後、900〜1200℃の温度で熱延板焼鈍を行い、しかる後に、冷間圧延を行い、600℃以上700℃以下の温度で維持した後、昇温して800〜950℃の温度で脱炭及び窒化焼鈍を行って1次再結晶粒のサイズを18〜25μmに制御した後、2次再結晶焼鈍を行い、2次再結晶された鋼板の平均結晶粒サイズが1〜2cmとなるように制御することにより、磁性に優れた方向性電気鋼板を製造するもので、Snが主な結晶粒成長抑制剤として活用されることを特徴とする。
本発明において、SnはGoss結晶粒を除いた他の結晶粒の粒界に偏析して結晶粒界の移動を妨害する主な結晶粒成長抑制剤として作用し、安定的な2次再結晶を起こすためにはSnが0.08〜0.10%の適正量で添加されなければならない。上述したような適正量のSnが添加されると、1次再結晶集合組織の{110}<001>方位のGoss結晶粒の分率が増加して集積度が向上し、2次再結晶集合組織に成長するGoss方位の核が多くなる。
本発明は、上述したような適正量のSnが添加される成分系のスラブを用いたものであって、このようなスラブの再加熱の際にNの固溶量が20〜50ppmの範囲となるようにスラブ加熱温度を制御し、Goss結晶粒を除いた他の結晶粒の粒界にSnが優先偏析するようにするために、脱炭焼鈍前の昇温の際に600〜700℃の温度で維持させ、結晶成長駆動力と抑制力のバランスが保たれるように脱炭焼鈍温度を制御して1次再結晶粒を18〜25μmの適正サイズに形成させ、最終製品で2次再結晶粒のサイズを1〜2cmに適正化し、その結果としてGoss集合組織の核生成場所が増大し、最終鋼板のβ角度が3°以下になって極めて優れた磁気的特性を有する方向性電気鋼板を製造することができる。ここで、β角度は2次再結晶集合組織の圧延直角方向を軸として[100]方向と圧延方向間のずれ角度である。
まず、本発明の成分限定理由について説明する。
[Si:2.0〜4.5重量%]
Siは電気鋼板の基本組成であって、素材の比抵抗を増加させて鉄損を低める役割を果たす。Siの含量が2.0%未満の場合は、比抵抗が減少して鉄損特性が劣化し、高温焼鈍の際にフェライトとオーステナイト間の相変態が発生して2次再結晶が不安定になる上、集合組織が激しく毀損してしまう。Siの含量が4.5%を超えて過剰含有される場合は、電気鋼板の機械的特性である脆性が増加し、靭性が減少して圧延過程中に板破断発生率が激しくなり、2次再結晶の形成が不安定になる。よって、Siは2.0〜4.5重量%に限定することが好ましい。
[Al:0.005〜0.04重量%]
Alは、熱間圧延と熱延板焼鈍の際に微細に析出されたAlN以外にも、冷間圧延後の焼鈍工程でアンモニアガスによって導入された窒素イオンが鋼中に固溶状態で存在するAl、Si、Mnと結合して(Al、Si、Mn)N形態の窒化物を形成することにより、強力な結晶粒成長抑制剤の役割を果たす。Alの含量が0.005%未満の場合は、形成される個数と体積が相当低い水準であるため、抑制剤への十分な効果を期待することができず、Alの含量が0.040%を超える場合は、粗大な窒化物を形成することにより結晶粒成長抑制力が低下する。よって、Alの含量は0.005〜0.040重量%に限定する。
[Mn:0.02重量%以下]
MnはSiと同様に比抵抗を増加させて渦電流損を減少させることにより鉄損を低減させる効果もあり、Siと共に、窒化処理によって導入される窒素と反応して(Al、Si、Mn)Nの析出物を形成することにより、1次再結晶粒の成長を抑制して2次再結晶を起こすのに重要な元素である。ところが、0.20%を超えて添加する場合は、鋼板の表面にFeSiO以外に(Fe、Mn)及びMn酸化物が多量に形成され、高温焼鈍中に形成されるベースコーティングの形成を妨害して表面品質を低下させることになり、高温焼鈍工程でフェライトとオーステナイト間の相変態を誘発するため、集合組織が激しく毀損して磁気的特性が大きく劣化する。よって、Mnは0.20重量%以下とする。
[N:0.010重量%以下]
NはAlと反応してAlNを形成する重要な元素であって、製鋼段階で0.010重量%以下で添加することが好ましい。0.01重量%を超えて添加されると、熱間圧延後の工程で窒素拡散によるブリスターという表面結果をもたらし、スラブ状態で窒化物が過剰形成されて圧延が難しくなり、次の工程が複雑になり、製造コストを上昇させるので、0.01%以下に抑制する。一方、(Al、Si、Mn)N及びAlNなどの窒化物を形成するためにさらに必要なNは冷間圧延後の焼鈍工程でアンモニアガスを用いて鋼中に窒化処理を施して補強する。
[C:0.04〜0.07重量%]
Cはフェライト及びオーステナイト間の相変態を引き起こす元素であって、脆性が強くて圧延性が良くない電気鋼板の圧延性向上のために必須的な元素であるが、最終製品に残存する場合、磁気的時効効果により形成される炭化物が磁気的特性を悪化させる元素であるため、適正な含量に制御されることが好ましい。上述したSi含量の範囲でCが0.04%未満で含有されると、フェライトおよびオーステナイト間の相変態がまともに作用しないため、スラブ及び熱間圧延微細組織の不均一化を引き起こす。したがって、Cの最小含量は0.04%以上とすることが好ましい。一方、熱延板焼鈍熱処理の後に鋼板内に存在する残留炭素によって冷間圧延中の転位の固着を活性化させてせん断変形帯を増加させてGoss核の生成場所を増加させて1次再結晶微細組織のGoss結晶粒の分率を増加させるようにCの含量を高めることが有利であろうと考えられるが、上述したSi含量の範囲でCが0.07%を超えて含有されると、別途の工程や設備を追加しなければ、脱炭及び焼鈍工程で十分な脱炭を得ることができない上、これにより引き起こされる相変態現象により2次再結晶集合組織が激しく毀損してしまうことになり、ひいては最終製品を電力機器に適用するときに磁気時効による磁気的特性の劣化現象をもたらす。よって、Cは最大0.07%で含有されることが好ましい。
[S:0.010重量%以下]
Sは0.01%を超えて含有されると、MnSの析出物がスラブ内で形成されて結晶粒成長を抑制することになり、鋳造の際にスラブの中心部に偏析して以後の工程での微細組織を制御することが難しい。また、本発明では、MnSを主な結晶粒成長抑制剤として用いるのではないため、Sが不可避に混入される含量を超過して析出されることは好ましくない。よって、Sの含量は0.010重量%以下にすることが好ましい。
[Sn:0.08〜0.10重量%]
Snは本発明で核心となる合金元素であって、結晶粒界に偏析して結晶粒界の移動を妨害して結晶粒の成長を抑制する抑制剤として作用する。また、1次再結晶集合組織において{110}<001>方位のGoss結晶粒の分率を増加させ、{111}及び{411}などのGoss集合組織が容易に成長できるようにするのに役立つ集合組織を監視することにより、2次再結晶集合組織に成長するGoss方位の核が多くなるようにする。よって、適正量のSnが添加されると、2次再結晶微細組織のサイズが減少し、これにより最終製品で結晶粒のサイズが小さくなって渦電流損が減少するので、磁性に画期的に優れた方向性電気鋼板を製造することができる。
このように、Snは結晶粒界への偏析によって結晶粒の成長を抑制するのに重要な役割を果たすものである。これは、微細化された1次再結晶微細組織の結晶粒成長駆動力を抑制する効果を向上させる上、2次再結晶集合組織の形成のための高温焼鈍過程中に(Al、Si、Mn)N及びAlNなどの結晶粒成長抑制を引き起こす粒子が粗大化して結晶粒成長抑制力を減少させ、Si含量の増加により結晶粒成長抑制効果を有する粒子が数的に減少して結晶粒成長抑制力が弱化することを防止する。これは結果的に、低いSi含量だけでなく、高いSi含量においても2次再結晶集合組織の形成に成功することを保証する。
また、Snは、薄物化のために最終製品の厚さを減少させるために圧延率を高めようとする場合において、粒子による結晶粒成長抑制力を有する薄物方向性電気鋼板の問題点として指摘されている粒子の熱的不安定性を補償して2次再結晶集合組織の成長に成功することを保証することができる。よって、適正量のSn添加は、1次再結晶集合組織におけるGoss集合組織の分率を高め、結晶粒成長抑制力を増加させるため、さらに優れた集合組織、安定的な結晶粒成長抑制力、薄物化による鉄損減少効果を同時に得ることができるようにし、結果として集積度が非常に高いGoss結晶粒から構成された2次再結晶集合組織を確保することができる。
このようなSnが0.08重量%未満で含有される場合、本発明者らの研究実績から確認してみた結果、磁気的特性が向上する効果はあるが、Goss集合組織の集積度が向上する効果は少なく、むしろ基地内に存在する粒子による結晶粒成長抑制力を保証する効果が少なくて磁性向上の効果は微々たる水準に過ぎなかった。
逆にSnが0.10重量%を超えて含有される場合、結晶粒成長抑制力が過剰に増加して相対的に結晶粒成長駆動力を増加させるために、1次再結晶微細組織の結晶粒サイズを減少させなければならないから、脱炭焼鈍を低温で行わなければならず、これにより適切な酸化層により制御することが難しくなって良好な表面を確保することができない。また、機械的特性の観点から粒界偏析元素の過剰偏析により脆性が増加して製造過程中に板破断を引き起こすおそれもあるので、Snは0.08〜0.10重量%で含有されることが好ましい。
[P:0.005〜0.05重量%]
PはSnと類似の効果を示す元素であって、結晶粒界に偏析して結晶粒界の移動を妨害しかつ結晶粒の成長を抑制する補助的な役割が可能であり、微細組織の観点から{110}<001>集合組織を改善する効果がある。Pの含量が0.005重量%未満の場合は、添加の効果がなく、Pの含量が0.05重量%を超える場合は、脆性が増加して圧延性が大きく悪くなるので、0.005〜0.05重量%に限定することが好ましい。
上述の組成を有するスラブを用いて製造された方向性電気鋼板は、Goss集合組織の核生成場所の増大によりGoss集合組織と圧延方向の方位関係の一つであるβ方位(β角度:TD方位を軸として[001]方位とRD方位間の角度)が3°以内に確保されて極めて優れた磁気的特性を有する。
以下、本発明の低鉄損高磁束密度方向性電気鋼板の製造方法について説明する。
まず、熱間圧延に先立ってスラブを再加熱するが、スラブ再加熱は、固溶されるN及びSが不完全溶体化する温度範囲で行うことが好ましい。N及びSが完全溶体化する温度でスラブを加熱すると、熱延板焼鈍熱処理の後に窒化物または硫化物が微細に多量形成され、これにより後続工程の冷間圧延を1回の強冷間圧延によって実施することが不可能であり、追加の工程を必要とするので製造コストが上昇し、1次再結晶粒のサイズが相当微細になるため、適切な2次再結晶を実現することができなくなる。
本発明者らは、多様な実験と研究により、素鋼の中のNの総含量を制御するよりはスラブの再加熱によって固溶されるNの固溶量を制御することがさらに重要であり、スラブの再加熱によって素鋼内に固溶されるNの含量が20〜50ppmとなるようにスラブ加熱条件を制御することが磁性の向上に極めて有効であることを見出した。
スラブの再加熱によって固溶されるNは、脱炭及び窒化焼鈍工程で形成される追加的なAlNのサイズ及び量を左右する。AlNのサイズが同一の場合に形成される量があまりに多い場合は、結晶粒成長抑制力が増加してGoss集合組織からなる適切な2次再結晶微細組織を得ることができなくなる。逆にAlNの量があまりに少ない場合は、1次再結晶微細組織の結晶粒成長駆動力が増加して上述の現象と同様に適切な2次再結晶微細組織を得ることができなくなる。したがって、スラブの再加熱によって素鋼内に固溶されるNの含量が20〜50ppmとなるように、スラブ加熱条件を制御することが好ましい。
スラブの再加熱によって固溶されるNの含量は素鋼内に含有されているAlの含量を考慮しなければならないが、これは、結晶粒成長抑制剤として用いられる窒化物が(Al、Si、Mn)N及びAlNであるためである。純粋3%珪素含有鋼板のAlとNとの固溶度に関連し、固溶温度の相関関係式はIwayamaが提案し、次のとおりである。
Figure 0006228956
Iwayamaによる固溶度の式によれば、酸可溶性Alが0.028重量%、Nが0.0050重量%であると仮定した場合、理論上の固溶温度T(K)は1258℃であって、このためには電気鋼板のスラブを約1300℃で加熱しなければならない。
ところが、スラブを1280℃以上の温度で加熱すると、鋼板に低融点の珪素と基地金属の鉄の化合物である鉄かんらん石(FeSiO、Fayalite)が生成されながら鋼板の表面が溶け出して熱間圧延作業性が低下し、溶け出した金渋のせいで加熱炉を補修しなければならないという問題が発生する。したがって、加熱炉の補修による操業中断を減らし、冷間圧延と1次再結晶集合組織の適切な制御ができるようにスラブを1050〜1250℃の温度で再加熱して不完全溶体化させることが好ましい。
上述したような範囲の温度でスラブを加熱した後、熱間圧延する。熱間圧延された熱延板内には応力によって圧延方向に延伸された変形組織が存在し、熱延中にAlNやMnSなどが析出する。
冷間圧延の前に均一な再結晶微細組織と微細なAlNの析出物分布を有するためには、もう一度スラブ加熱温度以下まで熱延板を加熱し、変形した組織を再結晶させ、かつ十分なオーステナイト相を確保してAlN及びMnSなどの結晶粒成長抑制剤の固溶を促進することが好ましい。このような熱延板焼鈍はオーステナイトの分率を最大にするために900〜1200℃の温度まで加熱し、亀裂熱処理を施した後、冷却する方法を取ることが好ましい。熱延板焼鈍された鋼板内析出物の平均サイズは200〜3000Åの範囲を有するように形成される。
熱延板焼鈍の後にはリーバス圧延機或いはタンデム圧延機を用いて冷間圧延を行って0.10mm以上0.50mm以下の冷延板を製造する。冷間圧延を行うに際しては中間に変形した組織のアニーリング(中間焼鈍)を行わず初期熱延厚さから直ちに最終製品の厚さにまで圧延する1回の強冷間圧延が最も好ましい。1回の強冷間圧延によって{110}<001>方位の集積度が低い方位は変形方位に回転し、{110}<001>方位に最もよく配列されたGoss結晶粒のみ冷却圧延板に存在する。よって、2回以上の圧延方法では、集積度の低い方位も冷間圧延板に存在して最終高温焼鈍の際に一緒に2次再結晶されるので、磁束密度と鉄損が劣化する。よって、冷間圧延は1回の強冷間圧延によって冷間圧延率が87%以上となるように圧延することが最も好ましい。
このように冷間圧延された板は、脱炭及び窒化焼鈍を行う。これにより、炭素を一定の水準以下に除去して磁気時効を防止し、変形した組織が再結晶されるようにし、アンモニアガスを用いて窒化処理を行う。窒化処理はアンモニアガスを用いて鋼板に窒素イオンを導入することにより、主析出物である(Al、Si、Mn)N及びAlNなどの窒化物を形成することができる。このような窒化処理は、脱炭及び再結晶を済ませた後に行われるか、或いは脱炭と同時に窒化処理を一緒に行うことができるようにアンモニアガスを同時に用いて行われてもよく、いずれも本発明の効果を発揮するのには問題がない。
本発明ではSnを主な結晶粒成長抑制剤として活用することを技術的思想とし、このためにはGoss集合組織を有する結晶粒を除いた他の結晶粒の粒界にSnが優先偏析するようにする必要がある。
本発明者らは、Goss集合組織を有する結晶粒を除いた他の結晶粒の粒界にSnが効果的に偏析できる工程条件について研究と実験を重ねた結果、Snが600℃以上700℃以下の温度で結晶粒界に効果的に粒界偏析するという事実を見出した。特に、脱炭焼鈍前の昇温の際に600℃以上700℃以下の温度で維持することにより、主な結晶粒成長抑制剤としての機能を極大化することができることを確認した。
脱炭焼鈍前の昇温過程において600℃未満の温度で維持してもSnの粒界偏析は発生せず、700℃を超える温度では結晶粒の集合組織を問わず選択的な粒界偏析が起こらなくなる。上述した理由によりSnの粒界偏析のための脱炭焼鈍前の昇温過程の維持熱処理は600℃以上700℃以下の温度範囲で行うことが好ましい。
また、本発明者らは、脱炭焼鈍前の昇温速度が磁性に及ぼす影響について調査した結果、600〜700℃の温度領域で昇温速度をSnの含量に応じて1℃/s×[Sn(重量%)]以上12℃/s×[Sn(重量%)]以下に制御することが好ましいという事実を見出することができた。
脱炭焼鈍前の昇温の際に600〜700℃の温度領域で昇温速度を1℃/s×[Sn(重量%)]未満にすると、焼鈍時間及び設備が商業的生産に適さない程度に長くなり、逆に脱炭焼鈍前の昇温の際に600〜700℃の温度領域で昇温速度が12℃/s×[Sn(重量%)]を超えると、Snによって、Goss集合組織を有する結晶粒の粒界にまで偏析し、Goss集合組織を有する結晶粒の選択的結晶粒成長抑制力を失ってしまうという問題点が生ずる。
これと共に、本発明者らは、Snを添加したスラブを用いて方向性電気鋼板を製造しようとする場合、結晶粒成長抑制力と結晶粒成長駆動力間のバランスが異なるように作用し、これを厳密に考慮すべき必要があることに着目し、これについて研究した結果、本発明で提示する成分系において極めて優れた磁性が確保されるためには、結晶粒成長駆動力と結晶粒成長抑制力のバランスが適切に調節されなければならず、このためには1次再結晶粒のサイズを18μm以上25μm以下に制御しなければならないという事実を見出した。
上述したように1次再結晶粒のサイズを18μm以上25μm以下に制御するためには、脱炭焼鈍は、本発明より低いSn含量を含有する通常の成分系からなるスラブを用いた場合に比べて最小10℃以上、最大30℃以上高い温度範囲で実施しなければならない。
以下、上述したような知見についてさらに具体的に説明する。本発明の組成範囲を有するスラブを用いて方向性電気鋼板を製造しようとする場合、Snが1次再結晶粒のサイズを微細にする効果と、Snが結晶粒界に偏析して結晶粒成長抑制力を強化する効果が同時に発生する。すなわち、本発明の組成範囲を有するスラブを用いて方向性電気鋼板を製造しようとする場合、再結晶粒のサイズが微細化して2次再結晶がよく起こるという効果が発生するが、同じ1次再結晶粒のサイズ条件ではSnは2次再結晶がよく起こらないように作用するので、結晶粒成長駆動力と結晶粒成長抑制力のうちどの因子がさらに優勢に作用するかを綿密に検討し、脱炭焼鈍の温度条件を解明しなければならない必要がある。本発明者らは、これについての研究及び実験結果から、本発明の成分組成範囲では結晶粒成長駆動力の増加因子が結晶粒成長抑制力の増加因子より強く作用して2次再結晶が速く起ころうとする傾向が強いことを確認することができた。
すなわち、本発明でのような含量で粒界偏析元素Snを添加した場合において、脱炭焼鈍を通常の温度範囲で実施すると、1次再結晶組織が微細になって一般な成分系を用いた場合より結晶粒成長駆動力が強くなるおそれがあるので、脱炭焼鈍を通常の温度範囲より高い温度範囲で行って1次再結晶微細組織を安定化させる必要がある。
よって、本発明では、脱焼焼鈍の温度範囲を通常の場合に比べて最小10℃以上、最大30℃以上高い800〜950℃、より好ましくは850〜950℃に設定する必要がある。脱炭焼鈍温度が800℃より低い場合は、1次再結晶粒のサイズがあまりに小さくなって結晶粒成長駆動力が大きくなり、低温での焼鈍熱処理により脱炭に長時間がかかって生産が低下する。また、鋼板の表面にFeSiOが相当緻密に形成されて脱炭及び内部酸化層の形成が遅延し、SiO酸化層が狭い領域で緻密に形成されてベースコーティング欠陥が発生する。逆に脱炭焼鈍温度が950℃を超える場合は、再結晶粒と窒化物が粗大に成長して結晶成長駆動力があまりに低下してしまい、安定な2次再結晶が形成されない。
したがって、本発明では、上述したように結晶粒成長駆動力と結晶粒成長抑制力のバランスを適切に調節し、Goss集合組織からなる適切な2次再結晶を得ることができるように1次再結晶粒が18〜25μmの適正サイズに形成されるようにする。
最後に、一般に、方向性電気鋼板の製造の際に、鋼板にMgOを基本とする焼鈍分離剤を塗布した後、最終高温焼鈍して2次再結晶を起こすことにより鋼板の{110}面が圧延面に対して平行であり、<001>方向が圧延方向に対して平行な{110}<001>集合組織を形成して磁気特性に優れた方向性電気鋼板を製造する。最終高温焼鈍の目的は、大まかに言うと、2次再結晶による{110}<001>集合組織の形成、脱炭の際に形成された酸化層とMgOの反応によるガラス質の皮膜形成による絶縁性付与、および磁気特性を害する不純物の除去である。最終高温焼鈍の方法では、2次再結晶が起こる前の昇温区間では窒素と水素の混合ガスで維持して粒子成長抑制剤としての窒化物を保護することにより2次再結晶がよく発達することができるようにし、2次再結晶の完了後には100%の水素雰囲気で長時間維持して不純物を除去する。
本発明の組成範囲を有するスラブを用いて上述の方法で製造された方向性電気鋼板は、Goss集合組織の核生成場所の増大により、Goss集合組織と圧延方向の方位関係中の一つであるβ方位(β角度;TD方位を軸として[001]方位とRD方位間の角度)が3°以内に確保され、2次再結晶された鋼板の平均結晶粒サイズが1〜2cmに形成されて極めて優れた磁気的特性を有する。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
重量%で、Si:3.2%、C:0.055%、Mn:0.099%、S:0.0045%、N:0.0043%、Sol.Al:0.028%、P:0.028%、およびSnを含有し、残部がFeとその他不可避な不純物からなるスラブを真空溶解させた後、インゴットを製造した。Snの含量は下記表1に示すように変化させた。次いで、1200℃の温度で加熱した後、厚さ2.3mmに熱間圧延した。熱間圧延された熱延板は1050℃の温度で加熱し、950℃で180秒間維持して焼鈍した後、水冷した。熱延焼鈍板は酸洗した後、0.23mmの厚さとなるように1回強冷間圧延し、冷間圧延された板は870℃の温度で湿潤水素、窒素及びアンモニアの混合ガス雰囲気中で180秒間維持して窒素含量が200ppmとなるように同時脱炭及び窒化焼鈍した。この鋼板に焼鈍分離剤としてのMgOを塗布した後、コイル状に最終焼鈍した。最終焼鈍は、1200℃までは25%窒素+75%水素の混合雰囲気で行い、1200℃到達後には100%水素雰囲気で10時間以上維持した後、炉冷した。それぞれの条件について磁気的特性を測定した。その結果を下記表1に示す。
Figure 0006228956
表1から確認することができるように、Snが0.08〜0.10重量%の範囲で含有される発明材1〜7は、比較材1〜11に比べて鉄損が低く磁束密度が高い。
比較材1〜11においても、Snの添加量に比例して鉄損が低くなり磁束密度が高くなる傾向性はある程度認められるが、特にSnが0.08%以上添加されると、急激に鉄損が低くなり磁束密度は高くなることを確認することができる。これは、Snが0.08%以上0.10%以下で添加される場合、主な結晶粒成長抑制剤として作用するためである。
(実施例2)
重量%で、Si:3.2%、C:0.055%、Mn:0.099%、S:0.0045%、 N:0.0043%、Sol.Al:0.028%、P:0.028%、およびSnを含有し、残部がFeとその他不可避な不純物からなるスラブを真空溶解させた後、インゴットを製造した。Snの含量は下記表2に示すように変化させた。次いで、1200℃の温度で加熱した後、厚さ2.3mmに熱間圧延した。熱間圧延された熱延板は1050℃の温度で加熱し、950℃で180秒間維持して焼鈍した後、水冷した。熱延焼鈍板は酸洗した後、下記表2に示すような多様な厚さとなるように1回強冷間圧延し、冷間圧延された板は870℃の温度で湿潤水素、窒素及びアンモニアの混合ガス雰囲気中で180秒間維持して窒素の含量が200ppmとなるように同時脱炭及び窒化焼鈍した。この鋼板に焼鈍分離剤としてのMgOを塗布した後、コイル状に最終焼鈍した。最終焼鈍は、1200℃までは25%窒素+75%水素の混合雰囲気とし、1200℃到達後には100%水素雰囲気で10時間以上維持した後、炉冷した。それぞれの条件に対して磁気的特性(W17/50、B)を測定した。その結果を下記表2に示す。
Figure 0006228956
表2から確認することができるように、最終製品の厚さを問わず、Snが0.08〜0.10重量%の範囲で含有される発明材8〜11はいずれも、同一の厚さに製造された比較材12〜19に比べて鉄損が低く磁束密度が高く、最終製品の厚さが薄くなるほど磁気的特性の向上効果は大きくなる傾向を示す。
(実施例3)
重量%で、Si:3.2%、C:0.055%、Mn:0.099%、S:0.0045%、N:0.0043%、Sol.Al:0.028%、P:0.028%、およびSnを含有し、残部がFeとその他不可避な不純物からなるスラブを真空溶解させた後、インゴットを製造した。Snの含量は下記表3に示すように変化させた。次いで、1200℃の温度で加熱した後、厚さ2.3mmに熱間圧延した。熱間圧延された熱延板は1050℃の温度で加熱し、950℃で180秒間維持して焼鈍した後、水冷した。熱延板の焼鈍の際に熱処理中の湿潤雰囲気で脱炭を行った。水冷した熱延焼鈍板は、酸洗した後、0.23mmの厚さとなるように1回強冷間圧延した。冷間圧延された板は870℃の温度で湿潤水素、窒素及びアンモニアの混合ガス雰囲気中で180秒間維持して窒素含量が200ppmとなるように同時脱炭及び窒化焼鈍した。この鋼板に焼鈍分離剤としてのMgOを塗布した後、コイル状に最終焼鈍した。最終焼鈍は、1200℃までは25%窒素+75%水素の混合雰囲気で行い、1200℃到達後には100%水素雰囲気で10時間以上維持した後、炉冷した。それぞれの条件に対して磁気的特性(W17/50、B)を測定した。その結果を下記表3に示す。また、2次再結晶粒の{110}<001>以上の方位からずれた角度の絶対値を計算した後、すべての位置で面積加重平均してβ角度を測定し、2次再結晶粒のサイズを測定した。その結果を表3に共に示す。2次再結晶粒のサイズは、2次再結晶された鋼板の表面から観察される2次再結晶微細組織の最長長さと最短長さを加えた値を半分に分けて各2次再結晶粒のサイズを算出した後、算出された各2次再結晶粒のサイズを平均した値で求めた。
Figure 0006228956
表3から確認することができるように、Snが0.08〜0.10重量%の範囲で含有される発明材2、4、6および7は、Goss集合組織の核生成場所の増大効果により、Goss方位からずれた程度を示す最終鋼板のβ角度が3°未満であって、配向性が著しく向上し、2次再結晶粒が1〜2cmの適正なサイズに形成されて磁性に優れたが、Snが本発明の範囲から外れる比較材2〜8および11は最終鋼板のβ角度が3°を超えて磁性に劣った。
(実施例4)
重量%で、Si:3.2%、C:0.054%、Mn:0.093%、S:0.0046%、N:0.0042%、Sol.Al:0.029%、P:0.025%、およびSnを含有し、残部がFeとその他不可避な不純物からなるスラブを真空溶解させた後、インゴットを製造した。この際、Snの含量は下記表4に示すように変化させた。次いで、1200℃の温度で加熱した後、厚さ2.3mmに熱間圧延した。熱間圧延された熱延板は1050℃の温度で加熱し、950℃で180秒間維持して焼鈍した後、水冷した。熱延板の焼鈍の際に、熱処理中の湿潤雰囲気で脱炭を行った。水冷した熱延焼鈍板は、酸洗した後、0.23mmの厚さとなるように1回強冷間圧延した。冷間圧延された板は、865℃まで昇温する途中で600℃から700℃まで昇温速度を異ならせて昇温を行い、865℃の温度で湿潤水素、窒素及びアンモニアの混合ガス雰囲気中で180秒間維持して窒素含量が200ppmとなるように同時脱炭及び窒化焼鈍した。この鋼板に焼鈍分離剤としてのMgOを塗布した後、コイル状に最終焼鈍した。最終焼鈍は、1200℃までは25%窒素+75%水素の混合雰囲気で行い、1200℃到達後には100%水素雰囲気で10時間以上維持した後、炉冷した。それぞれの条件に対して、脱炭及び窒化焼鈍の際に600℃以上700℃以下の温度領域で測定した昇温速度と最終焼鈍後に測定した磁気的特性(W17/50、B)を表4に示した。
Figure 0006228956
表4から確認することができるように、Snが0.08〜0.10重量%の範囲で含有され、脱炭及び窒化焼鈍の際に600〜700℃の温度領域で昇温速度を1℃/s×[Sn(重量%)]以上12℃/s×[Sn(重量%)]以下に制御し、Goss集合組織を有する結晶粒界にSnが選択的に粒界偏析できるように制御した発明材12〜14が比較材29〜34に比べてさらに磁性に優れていた。

Claims (6)

  1. 重量%で、Si:2.0〜4.5%、Al:0.005〜0.040%、Mn:0.20%以下、N:0.010%以下、S:0.010%以下、P:0.005〜0.05%、C:0.04〜0.07%、Sn:0.08〜0.10%を含有し、残部がFe及びその他不可避な不純物からなるスラブを加熱し、熱間圧延した後、熱延板焼鈍し、次いで冷間圧延した後、脱炭焼鈍してから窒化焼鈍するか又は脱炭焼鈍と同時に窒化焼鈍した後、次いで2次再結晶焼鈍を行う過程を含み、Snが主な結晶粒成長抑制剤として活用され、
    前記冷間圧延は、87%以上の冷間圧延率で1回の圧延を行い、
    前記脱炭焼鈍は800〜950℃の温度範囲で行い、
    前記脱炭焼鈍および窒化焼鈍において、脱炭焼鈍の前に、600℃以上700℃以下の温度で維持する過程をさらに含み、前記600℃以上700℃以下の温度領域における昇温速度は他の温度領域における昇温速度より遅く制御し、
    前記脱炭及び窒化焼鈍は、600〜700℃の温度領域における昇温速度が1℃/s×[Sn(重量%)]以上12℃/s×[Sn(重量%)]以下に制御されることを特徴とする、低鉄損高磁束密度方向性電気鋼板の製造方法。
  2. 1次再結晶粒のサイズを18〜25μmに制御することを特徴とする、請求項1に記載の低鉄損高磁束密度方向性電気鋼板の製造方法。
  3. 熱間圧延前のスラブの加熱温度は1050〜1250℃とすることを特徴とする、請求項1又は2に記載の低鉄損高磁束密度方向性電気鋼板の製造方法。
  4. 熱間圧延前のスラブの加熱は素鋼の中のNの固溶量が20〜50ppmの範囲となるように加熱温度を制御することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の低鉄損高磁束密度方向性電気鋼板の製造方法。
  5. 2次再結晶された鋼板において結晶方位の絶対値の面積加重平均でβ角度が3°未満となるように制御することを特徴とし、β角度は、2次再結晶集合組織の圧延直角方向を軸として[100]方向と圧延方向との間のずれ角度である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の低鉄損高磁束密度方向性電気鋼板の製造方法。
  6. 2次再結晶された鋼板の平均結晶粒サイズが1〜2cmとなるように制御することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の低鉄損高磁束密度方向性電気鋼板の製造方法。
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