JP3481567B2 - B8が1.88t以上の方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
B8が1.88t以上の方向性電磁鋼板の製造方法Info
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Description
数で{110}<001>方位に集積した、いわゆる方
向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。この方向
性電磁鋼板は軟磁性材料として変圧器等の電気機器の鉄
芯として用いられる。
>方位(いわゆるゴス方位)に集積した結晶粒により構
成されたSiを4.8%以下含有した鋼板である。この
鋼板は磁気特性として励磁特性と鉄損得性が要求され
る。励磁特性を表す指標としては磁場の強さ800A/
mにおける磁束密度:B8が通常使用される。また、鉄
損特性を表す指標としては周波数50Hzで1.7Tま
で磁化した時の鋼板1kgあたりの鉄損:W17/50 が用
いられる。磁束密度:B8は鉄損特性の最大の支配因子
であり、磁束密度:B8値が高いほど鉄損特性も良好に
なる。磁束密度:B8を高めるためには結晶方位を高度
に揃えることが重要である。この結晶方位の制御は二次
再結晶とよばれるカタストロフィックな粒成長現象を利
用して達成される。
再結晶前の一次再結晶組織の調整と、インヒビタ−とよ
ばれる微細析出物の調整を行うことが必要である。この
インヒビタ−は、一次再結晶組織のなかで一般の粒の成
長を抑制し、特定の{110}<001>方位粒のみを
優先成長させる機能を持つ。析出物として代表的なもの
としては、M.F.Littmann(特公昭30−3
651号公報)及びJ.E.May&D.Turnbu
ll(Trans.Met.Soc.AIME212
(1958年)p769等はMnSを、田口ら(特公昭
40−15644号公報)はAlNを、今中ら(特公昭
51−13469号公報)はMnSeを提示している。
時に完全固溶させた後に、熱間圧延及びその後の焼鈍工
程で微細析出させる方法がとられている。これらの析出
物を完全固溶させるためには1350℃ないし1400
℃以上の高温で加熱する必要があり、これは普通鋼のス
ラブ加熱温度に比べて約200℃高く、次の問題点、す
なわち、1)専用の加熱炉が必要で、2)加熱炉のエネ
ルギ−原単位が高く、3)溶融スケール量が多くノロ出
し等の操業管理が必要である。
進められ、低温スラブ加熱による製造方法として小松ら
(特公昭62ー45285号公報)は窒化処理により形
成した(Al、Si)Nをインヒビターとして用いる方
法を開示している。この窒化処理の方法として、小林等
は脱炭焼鈍後にストリップ状で窒化する方法を開示(特
開平2- 77525号公報)し、牛神等によりその窒化
物の挙動が報告されている(Materials Science Foru
m、 204-206 (1996) 、pp593-598 )。
造方法においては、脱炭焼鈍時にインヒビタ−が形成さ
れていないので、脱炭焼鈍における一次再結晶組織の調
整が二次再結晶を制御する上で重要となる。従来の高温
スラブ加熱による方向性電磁鋼板の製造方法の研究にお
いては、二次再結晶前の一次再結晶組織調整に関する知
見は殆どなく、本願発明者らは、例えば特公平8−32
929号公報、特開平9−256051号公報等にその
重要性を開示している。
次再結晶粒組織の粒径分布の変動係数が0.6より大き
くなり粒組織が不均一になると二次再結晶が不安定にな
ることを開示している。その後、更に特開平9−256
051号公報において、二次再結晶の制御因子である一
次再結晶組織とインヒビターに関する研究を行った結
果、一次再結晶粒組織の粒組織として脱炭焼鈍後の集合
組織においてゴス方位粒の成長を促進すると考えられる
{111}及び{411}方位の粒の比率:I{111 }
/I{411 }の比率を調整することにより製品の磁束密
度が向上することを示した(Iは回折強度:Intensity
を表す。)ここで、I{111 }及びI{411 }はそれぞ
れ{111}及び{411}面が板面に平行である粒の
割合であり、X線回折測定により板厚1/10層におい
て測定された回折強度値を表している。
法としては、例えば脱炭焼鈍工程の加熱速度、均熱温
度、均熱時間等の脱炭焼鈍の焼鈍サイクルを調整するこ
とにより制御される。そのなかで、加熱速度を制御する
方法は一つの有力な方法であるが、基本的に磁束密度は
向上するものの、加熱速度が40℃/秒以上になると脱
炭焼鈍後の一次再結晶組織は良好であるにもかかわらず
二次再結晶が不安定になる場合があることが分かった。
再結晶不安定性の原因を解明し、工業的に安定して磁束
密度の高い優れた磁気特性を有する方向性電磁鋼板を製
造する方法を提供するものである。
決するためになされたもので、その要旨とするところは
下記のとおりである。 (1)質量で、Si:0.8〜4.8%、C:0.08
5%以下、酸可溶性Al:0.01〜0.065%、
N:0.012%以下を含み、残部Fe及び不可避的不
純物からなる珪素鋼を1280℃以下の温度で加熱した
後に熱間圧延し、次いで冷間圧延を施して最終板厚と
し、脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍を施
す方向性電磁鋼板の製造方法において、脱炭焼鈍工程の
昇温過程において、鋼板温度が600℃以下の領域から
750〜900℃の範囲内の所定の温度まで15℃/秒
以上の加熱速度で加熱することにより、脱炭焼鈍後の板
厚1/10層の粒組織においてI{111 }/I{411 }
の比率を3以下に、鋼板の酸化層の酸素量を2.3g/
m2 以下に調整し、その後窒化処理を行うことを特徴と
するB8が1.88T以上の方向性電磁鋼板の製造方
法。
て、鋼板温度が600℃以下の領域から750〜900
℃の範囲内の所定の温度まで40℃/秒以上の加熱速度
で加熱することにより脱炭焼鈍後の板厚1/10層の粒
組織においてI{111 }/I{411 }の比率を3以下に
制御し、次いで770〜900℃の温度域で雰囲気ガス
の酸化度(PH2O /PH2):0.15以上1.1以下の
範囲内で鋼板の酸素量が2.3g/ m2 以下となるよう
な時間焼鈍することを特徴とする上記(1)記載のB8
が1.88T以上の方向性電磁鋼板の製造方法。
て、鋼板温度が600℃以下の領域から750〜900
℃の範囲内の所定の温度まで75℃/秒以上125℃/
秒以下の加熱速度で加熱することにより脱炭焼鈍後の板
厚1/10層の粒組織においてI{111 }/I{411 }
の比率を3以下に制御し、次いで770〜900℃の温
度域で雰囲気ガスの酸化度(PH2O /PH2):0.15
超、1.1以下の範囲内で鋼板の酸素量が2.3g/ m
2 以下となるような時間焼鈍することを特徴とする上記
(1)記載のB8が1.88T以上の方向性電磁鋼板の
製造方法。
l]に応じて窒素量:[N]が[N]/[Al]≧2/
3を満足する量となるように窒化処理を施すことを特徴
とする上記(1)乃至(3)のいずれかの項に記載のB
8が1.88T以上の方向性電磁鋼板の製造方法。 (5)質量で、更にSnを0.02〜0.15%添加す
ることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかの項
に記載のB8が1.88T以上の方向性電磁鋼板の製造
方法。
度を40℃/秒以上に高めた場合に、脱炭焼鈍後の一次
再結晶組織は良好であるにもかかわらず二次再結晶が不
安定になる原因を追求するために詳細な調査を行った。
その結果、まず加熱速度を高めた場合には、加熱時間と
均熱時間の両方を合わせた在炉時間が短いにもかかわら
ず、脱炭焼鈍後の鋼板の表面酸化量が多くなることが分
かった。この表面酸化層の二次再結晶に及ぼす影響にを
調べたところ、多量の表面酸化物が形成された場合に
は、仕上げ焼鈍の二次再結晶温度域において(Al,S
i)Nインヒビターが急速に分解して二次再結晶が不安
定になってしまうことが解明された。表面酸化物が多量
に形成された場合、(Al,Si)Nインヒビターの分
解速度が速まるのは表面酸化層による脱N促進、ないし
は表面酸化物によるAlの酸化が促進されるためである
と推定される。二次再結晶が不安定になる原因は一次再
結晶組織の影響ではなく、インヒビタ−の影響であるこ
とが明らかになったので、この問題を解決する方法を検
討した結果、脱炭焼鈍の均熱帯の雰囲気ガスの酸化度と
均熱時間を管理して、一次再結晶粒組織の調整と併せ
て、表面酸化層の酸素量を2.3g/ m2 以下に限定す
ることにより、(Al,Si)Nインヒビタ−の分解を
抑制して高い磁束密度を有する方向性電磁鋼板の製品が
安定して製造できることを見いだした。
明する。図1は製品の磁束密度:B8に及ぼす一次再結
晶集合組織(I{111 }/I{411 })と酸素量の影響
を示したものである。ここでは、Si:3.1%、C:
0.05%、酸可溶性Al:0.027%、N:0.0
08%、Mn:0.1%、S:0.007%を含有し、
残部Feおよび不可避的不純物からなる珪素鋼スラブを
1100℃に加熱し、冷延して2.0mm厚の冷延板と
した。この熱延板を1100℃で焼鈍し、冷間圧延し、
最終板厚0.2mm厚の冷延板とした。その後、加熱速
度:5℃/秒〜600℃/秒の範囲で850℃まで加熱
した後に室温まで冷却した。その後、加熱速度30℃/
秒で加熱し、830℃で2分間、酸化度(PH2O /P
H2) 0.33〜0.70の範囲の雰囲気ガスで90秒焼
鈍した後、アンモニア含有雰囲気中で750℃で30秒
焼鈍し、鋼板中の窒素量を0.02%とした。次いで、
MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、120
0℃で20時間仕上げ焼鈍を施した。
加熱速度を40℃/秒以上とすると、一次再結晶集合組
織は適正範囲に調整されているにも関わらず、二次再結
晶が不安定になり磁束密度が低下する場合があることが
判明した。この原因を調査した結果、脱炭焼鈍後の鋼板
の酸化量が増加しており、このように多量の表面酸化物
が形成された場合には、仕上げ焼鈍の二次再結晶温度域
において(Al,Si)Nインヒビターが急速に分解し
て二次再結晶が不安定になってしまうことが確認され
た。
鈍後の酸素量示す。この図3から加熱速度を高めると在
炉時間が短くなるにもかかわらず酸素量が増加している
ことが分かる。これは、加熱速度により鋼板の加熱過程
における初期酸化状態が変化して、その後の均熱過程に
おける酸化挙動に影響を与えたものと考えられる。これ
らの試料の仕上げ焼鈍中のインヒビタ−の変化挙動を調
査した結果、酸素量が高い場合には仕上げ焼鈍中のイン
ヒビタ−の減少速度が速くなっていることが分かった。
そこで、図2の結果を一次再結晶集合組織(I{111 }
/I{411 }比率)と酸素量の影響が明確になるように
解析した結果、図1に示すように鋼板の酸素量が2.3
g/ m2 以下の場合に二次再結晶組織は安定に発達し、
一次再結晶集合組織としてI{111 }/I{411 }の比
率が3以下で磁束密度;B8が1.88T以上の方向性
電磁鋼板製品を安定して製造できることが分かった。
(Al,Si)Nの分解を抑制するためであると考えら
れるので、更に、(Al,Si)Nインヒビタ−自体を
調整するために脱炭焼鈍後の窒化処理による窒素増量を
変え、二次再結晶に及ぼす影響を調べた。上記冷延板を
用いて、加熱速度50℃/秒で840℃に加熱し、その
後840℃で120秒間、酸化度0.37の窒素及び水
素混合雰囲気で脱炭焼鈍した。鋼板の酸素量は1.8g
/ m2 であった。その後、アンモニア含有雰囲気で焼鈍
し窒化処理を施した。その際、アンモニア含有量を変え
窒素を0.012〜0.030%とした。次いで、Mg
Oを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、仕上げ焼鈍
を行った。図4から、窒素量0.018%以上、すなわ
ち[N]/[Al]≧2/3の範囲において二次再結晶
が安定して磁束密度が向上することが確認できる。従っ
て、安定な(Al,Si)Nを形成させるためには、窒
素:[N]とアルミニウム:[Al]の組成比率として
[N]/[Al]≧2/3とする必要があることが分か
る。
て脱炭焼鈍の加熱速度を制御する技術は、例えば、特開
平1ー290716号公報、特開平6ー212262号
公報等に開示されている。しかしながら、これらの特許
は高温スラブ加熱による方向性電磁鋼板の製造方法に適
用したものであり、その効果も二次再結晶粒径が小さく
なり鉄損特性が向上するというものである。
と異なり、磁束密度(B8)の向上に大きな効果をもた
らすものである。この磁束密度向上の機構に関しては、
本願発明者らは次のように考えている。二次再結晶粒の
粒成長は駆動力となるマトリックス粒の粒界エネルギー
密度と粒成長を抑制するインヒビターのバランスによっ
て決まる。一般に、脱炭焼鈍の加熱速度を速めると一次
再結晶組織のなかでゴス方位近傍の粒(二次再結晶粒の
核)が増加することがこれまで知られており、それが二
次再結晶組織が微細化する原因と考えられている。とこ
ろが、本発明において窒化処理により形成された(A
l,Si)N等の窒化物のように熱的に安定な(強い)
インヒビタ−を用いた場合には、粒界移動の粒界性格依
存性が高くなるために、ゴス方位粒の数よりもゴス方位
粒を優先成長させる{111}方位粒及び{411}方
位粒等のゴス方位と対応方位関係にあるマトリックス粒
の調整がより重要になる。一次再結晶集合組織をこの観
点で調べた結果、例えば、図1の加熱速度20℃/ 秒と
100℃/秒で処理した試料を比較すると、磁束密度が
高くなる加熱速度100℃/ 秒で処理した試料の対応方
位密度分布の方が20℃/秒で処理した試料よりも、そ
の分布が尖鋭になること、その場合I{111 }/I{41
1 }比率が小さくなることが確認された。従って、脱炭
焼鈍の加熱速度による一次再結晶集合組織、特にゴス方
位と対応方位関係にある方位粒の調整と、強い(Al,
Si)Nインヒビタ−の相乗効果により、はじめて尖鋭
なゴス方位のみを選択的に発達させることが可能にな
り、高い磁束密度を持つ方向性電磁鋼板製品が安定して
製造できたものと推定される。
4.8%、C:0.085%以下、酸可溶性Al:0.
01〜0.065%、N:0.012%以下を含有する
ことが必要である。Siは添加量を多くすると電気抵抗
が高くなり、鉄損特性が改善される。しかしながら、
4.8%を超えると圧延時に割れやすくなってしまう。
また、0.8%より少ないと仕上げ焼鈍時にγ変態が生
じ結晶方位が損なわれてしまう。
な元素であるが、磁気特性に悪影響を及ぼすので仕上げ
焼鈍前に脱炭する必要がある。Cが0.085%より多
いと脱炭焼鈍時間が長くなり生産性が損なわれてしま
う。酸可溶性Alは、本願発明においてNと結合して
(Al,Si)Nとしてインヒビターとしての機能をは
たすために必須の元素である。従って、酸可溶性Alは
二次再結晶が安定する0.01〜0.065%の範囲と
する。
スターとよばれる鋼板中の空孔を生じるので0.012
%以下とする。Snは上記の脱炭焼鈍後の{111}及
び{411}等の集合組織を改善し、磁束密度の高い製
品を安定して製造することに有効な元素である。後述の
実施例5に示すように、Snは0.02〜0.15%添
加することが望ましい。この下限値未満では集合組織改
善効果が少なく実質的な磁束密度向上効果が得られな
い。また、この上限値を超えると鋼板中への窒化が難し
くなり、二次再結晶が不安定になる場合を生じる。
で0.015%以下とすることが望ましい。Crは脱炭
焼鈍の酸化層を改善し、グラス被膜形成に有効な元素で
あり、0.03〜0.2%添加することが望ましい。な
お、微量のCu,Sb,Mo,Bi,Ti等を鋼中に含
有しても本発明の効果を喪失するものではない。上記の
成分組成を有する珪素鋼スラブは、転炉または電気炉等
により鋼を溶製し、必要に応じて溶鋼を真空脱ガス処理
し、ついで連続鋳造もしくは造塊後分塊圧延することに
よって得られる。その後、熱間圧延に先だってスラブ加
熱がなされる。本発明においては、スラブ加熱温度は1
280℃以下として、上述の高温スラブ加熱の諸問題を
回避する。
き熱間圧延され所要板厚の熱延板とされる。この熱延板
は、通常、磁気特性を高めるために900〜1200℃
で30秒〜30分間の短時間焼鈍を施される。その後、
一回もしくは焼鈍を挟んだ二回以上に冷間圧延により最
終板厚とする。望む製品の特性レベルとコストを勘案し
て採否を決めることが望ましい。次いで、一回もしくは
焼鈍を挟んだ二回以上に冷間圧延により最終板厚とされ
る。冷間圧延としては、最終冷間圧延率を80%以上と
することが、{111}、{411}等の一次再結晶方
位を発達させる上で必要である。
除去するために湿潤雰囲気中で脱炭焼鈍を施す。その
際、脱炭焼鈍後の粒組織においてI{111 }/I{411
}の比率を3以下とし、かつ鋼板の酸化層の酸素量を
2.3g/ m2 以下に調整し、その後二次再結晶発現前
に窒化処理を行うことにより、磁気特性:B8が1.8
8T以上の製品を安定して製造することができる。この
脱炭焼鈍後の一次再結晶を制御する方法としては、例え
ば、脱炭焼鈍工程の加熱速度、均熱温度、均熱時間等の
脱炭焼鈍の焼鈍サイクル条件を調整することにより制御
される。その際に一次再結晶集合組織を制御すると同時
に、鋼板の酸素量が2.3g/ m2 以下となるように雰
囲気ガスの酸化度(PH2O /PH2)及び焼鈍時間を制御
することが本発明のポイントである。
({111}、{411})を制御する大きな因子であ
る。この加熱速度で加熱する必要がある温度域は少なく
とも600℃から750〜900℃までの温度域であ
る。図5及び図6に上記の結論を導いた実験結果を示
す。冷延板を40℃/秒の加熱速度で室温から600℃
〜1000℃の温度域の所定の温度まで加熱した後、窒
素ガスで室温まで冷却した。その後20℃/秒の加熱速
度で850℃まで加熱し、雰囲気ガスの酸化度0.33
で120秒焼鈍した。その後、窒化処理により窒素量を
0.021%とした後、MgOを主成分とする焼鈍分離
剤を塗布して仕上げ焼鈍を行った。図5に示すように、
40℃/秒の加熱速度での到達温度が750℃以上、9
00℃以下の範囲で磁束密度が大幅に向上していること
が分かる。750℃未満で効果が発揮されないのは、7
50℃未満では一次再結晶が完了しておらず、所望の一
次再結晶集合組織を得るためには再結晶を完了させる必
要があるためである。また、900℃超の温度まで加熱
すると、試料の一部に変態組織が生じ、その後の脱炭焼
鈍完了時点での組織が混粒組織になるためであると考え
られる。
で300℃から750℃の温度域の所定の温度まで加熱
し、その温度から加熱速度40℃/秒で850℃まで加
熱した後、窒素ガスで室温まで冷却した。その後、20
℃/秒の加熱速度で850℃まで加熱し、雰囲気ガスの
酸化度0.33で120秒焼鈍した。その後、窒化処理
により窒素量を0.021%とした後、MgOを主成分
とする焼鈍分離剤を塗布して仕上げ焼鈍を行った。図6
に示すように、加熱速度40℃/秒の加熱開始温度が6
00℃超では磁束密度向上効果がないことが分かる。
再結晶集合組織を介して磁気特性(B8)に影響を及ぼ
す温度域は少なくとも600℃から750〜900℃ま
での温度域であることが分かる。加熱速度は、一次再結
晶集合組織I{111 }/I{411 }に大きな影響を及ぼ
し、I{111 }/I{411 }を3以下として製品の磁束
密度B8が1.88T以上のものを安定して製造するた
めには15℃/秒以上とする必要がある。加熱速度が4
0℃/秒以上の場合には、これまで詳細に述べたよう
に、集合組織の制御と併せて脱炭焼鈍過程での酸化量を
制御するように脱炭焼鈍条件を制御する必要がある。後
述の実施例4に示すように、加熱速度は好ましくは75
〜125℃/秒の範囲で製品の磁束密度が最も良好とな
る。
は特に限定するものではなく、40〜100℃/秒程度
の加熱速度に対しては、従来の通常輻射熱を利用したラ
ジアントチューブ等による脱炭焼鈍設備を改造した設
備、また100℃/秒以上の加熱速度に対しては、新た
なレーザー、プラズマ等の高エネルギー熱源を利用する
方法、誘導加熱、通電加熱装置等を適用することが有効
である。また、従来の通常輻射熱を利用したラジアント
チューブ等による脱炭焼鈍設備に新たなレーザー、プラ
ズマ等の高エネルギー熱源を利用する方法、誘導加熱、
通電加熱装置等を適用する方法等を適宜組み合わせるこ
とも可能である。
182866号公報、または特開平9−256051号
公報に示されるような一次再結晶粒組織の調整を勘案し
て設定する。通常は770〜900℃の範囲で行う。ま
た、均熱の前段で脱炭した後に、粒調整のために均熱の
後段の温度を高めることも有効である。雰囲気ガスの酸
化度が0.15未満では鋼板表面に形成されるグラス被
膜の密着性が劣化し、1.1を越えるとグラス被膜に欠
陥が生じる。昇温段階での加熱速度を高めた場合には、
均熱時の酸化が促進されるので酸素量を一定の範囲内に
管理するためには雰囲気酸化度または均熱時間を制御す
る必要がある。
のあるガスを含有する雰囲気中で焼鈍する方法、MnN
等の窒化能のある粉末を焼鈍分離剤中に添加すること等
により仕上げ焼鈍中に行う方法等がある。脱炭焼鈍の加
熱速度を高めた場合に二次再結晶を安定的に行わせるた
めには、(Al,Si)Nの組成比率を調整する必要が
あり、窒化処理後の窒素量としては鋼中のAl量に対し
て[N]/[Al]が質量比として2/3以上とする必
要がある。
離剤を塗布した後に、仕上げ焼鈍を行い{110}<0
01>方位粒を二次再結晶により優先成長させる。
C:0.05%、酸可溶性Al:0.024%、N:
0.007%、Cr:0.1%、Sn:0.05%、M
n:0.1%、S:0.008%を含有する珪素鋼スラ
ブを1150℃加熱し、板厚2.3mmに熱間圧延し
た。この熱間圧延板を1120℃で焼鈍し、その後、
0.22mm厚に冷間圧延した。この冷延板を100℃
/秒で800℃に加熱した後、820℃で90〜600
秒間、雰囲気酸化度0.52で脱炭焼鈍した。その後、
750℃で30秒間アンモニア含有雰囲気中で焼鈍し、
鋼板中の窒素量を0.025%とした。次いで、MgO
を主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、1200℃で
20時間仕上げ焼鈍を施した。製品の特性値を表1に示
す。鋼板の酸素量が2.41g/m2 と多くなった場合
には磁気特性が劣化していることが分かる。
C:0.05%、酸可溶性Al:0.024%、N:
0.007%、Cr:0.1%、Sn:0.05%、M
n:0.1%、S:0.008%含有する珪素鋼スラブ
を1150℃加熱し、板厚2.3mmに熱間圧延した。
この熱間圧延板を1120℃で焼鈍し、その後、0.2
2mm厚に冷間圧延した。この冷延板を100℃/秒で
800℃に加熱した後、820℃で110秒間、雰囲気
酸化度0.44で脱炭焼鈍した。集合組織:I{111 }
/I{411 }比率は1.7、鋼板酸素量は1.9g/m
2 であった。その後、750℃で30秒間アンモニア含
有雰囲気中で焼鈍し、アンモニア含有量を変えることに
より鋼板中の窒素量を0.012〜0.026%とし
た。次いで、マグネシアを主成分とする焼鈍分離剤を塗
布した後、1200℃で20時間仕上げ焼鈍を施した。
製品の特性値を表2に示す。窒素量が0.017%以上
([N]/[Al]>2/3)で磁束密度が高くなるこ
とが分かる。
n:0.1%、C:0.05%、S:0.008%、酸
可溶性Al:0.029%、N:0.008%、Sn:
0.1%を含む板厚2.3mm珪素鋼熱延板を最終板厚
0.25mmに冷延した。この冷延板を酸化度0.03
3の窒素と水素の混合ガス中において、加熱速度(a)
20℃/秒、(b)100℃/秒でそれぞれ840℃ま
で加熱し、840℃で150秒焼鈍し一次再結晶させ
た。その後、750℃で30秒間アンモニア含有雰囲気
中で焼鈍し鋼板中の窒素量を0.023%とした。これ
らの鋼板にマグネシアを主成分とする焼鈍分離剤を塗布
した後、仕上げ焼鈍を施した。仕上げ焼鈍は1200℃
まではN2 :25%+ H2 :75%の雰囲気ガス中で1
5℃/hrの加熱速度で行い、1200℃でH2 :10
0%に切りかえ20時間焼鈍を行った。これらの試料を
張力コーテイング処理を施した。得られた製品の磁気特
性を表3に示す。実施例1及び2と比較すると、冷延前
の焼鈍を行っていないので全体の磁束密度は低いが、本
発明の磁束密度向上効果が確認できる。
Al:0.027%、N:0.007%、Cr:0.1
%、Sn:0.05%、Mn:0.1%、S:0.00
8%含有する珪素鋼スラブを1150℃加熱し、板厚
2.3mmに熱間圧延した。この熱間圧延板を1120
℃で焼鈍し、その後、0.22mm厚に冷間圧延した。
この冷延板を3〜200℃/秒の加熱速度で820℃に
加熱した後、820℃で110秒間、雰囲気酸化度0.
44で脱炭焼鈍した。酸素量は1.9〜2.1g/m2
であった。その後、750℃で30秒間アンモニア含有
雰囲気中で焼鈍し、アンモニア含有量を変えることによ
り鋼板中の窒素量を0.023〜0.029%とした。
その後、マグネシアを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し
た後、1200℃で20時間仕上げ焼鈍を施した。これ
らの試料を張力コーテイング処理を施した。得られた製
品の磁気特性を表4に示す。表4より加熱速度20℃/
秒以上、更に好ましくは75〜125℃/秒の範囲で磁
束密度(B8)が1.88T以上に高くなることが分か
る。
C:0.05%、酸可溶性Al:0.026%、N:
0.07%、Mn:0.1%、S:0.007%、S
n:0〜0.2%を含有するスラブを1150℃の温度
で加熱した後、2.3mm厚に熱間圧延した。その後、
1120℃で焼鈍した後、0.22mm厚まで冷間圧延
後、加熱速度40℃/秒で800℃まで加熱した後、8
20℃の温度で2分間、酸化度0.59の窒素及び水素
混合雰囲気で脱炭焼鈍した後、アンモニア含有雰囲気で
焼鈍して窒素を0.020〜0.023%とした。次い
で、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後仕上
げ焼鈍を行った。これらの試料を張力コーテイング処理
を施した。得られた製品の磁気特性を表5に示す。表5
よりSnを0.02〜0.15%添加することにより磁
束密度(B8)が高くなることが分かる。
起因する諸問題のない低温スラブ加熱による方向性電磁
鋼板の製造方法を基に、一次再結晶組織、表面酸化層及
び窒化量を規定することにより、工業的に安定して磁束
密度の高い優れた磁気特性を有する方向性電磁鋼板を安
定して製造することができる。
集合組織(I{111 }/I{411 }比率)と脱炭焼鈍板
の酸素量の影響を示した図である。
加熱速度と雰囲気ガスの酸化度の影響を示した図であ
る。
熱速度の影響を示した図である。
/[酸可溶性Al]比率)の影響を示した図である。
了温度の影響を示した図である。
始温度の影響を示した図である。
Claims (5)
- 【請求項1】 質量で、Si:0.8〜4.8%、C:
0.085%以下、酸可溶性Al:0.01〜0.06
5%、N:0.012%以下を含み、残部Fe及び不可
避的不純物からなる珪素鋼を1280℃以下の温度で加
熱した後に熱間圧延し、次いで冷間圧延を施して最終板
厚とし、脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍
を施す方向性電磁鋼板の製造方法において、脱炭焼鈍工
程の昇温過程において、鋼板温度が600℃以下の領域
から750〜900℃の範囲内の所定の温度まで15℃
/秒以上の加熱速度で加熱することにより、脱炭焼鈍後
の板厚1/10層の粒組織においてI{111 }/I{41
1 }の比率を3以下に、鋼板の酸化層の酸素量を2.3
g/ m2 以下に調整し、その後窒化処理を行うことを特
徴とするB8が1.88T以上の方向性電磁鋼板の製造
方法。 - 【請求項2】 前記脱炭焼鈍工程の昇温過程において、
鋼板温度が600℃以下の領域から750〜900℃の
範囲内の所定の温度まで40℃/秒以上の加熱速度で加
熱することにより脱炭焼鈍後の板厚1/10層の粒組織
においてI{111 }/I{411 }の比率を3以下に制御
し、次いで770〜900℃の温度域で雰囲気ガスの酸
化度(PH2O /PH2):0.15超1.1以下の範囲内
で鋼板の酸素量が2.3g/ m2 以下となるような時間
焼鈍することを特徴とする請求項1記載のB8が1.8
8T以上の方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項3】 前記脱炭焼鈍工程の昇温過程において、
鋼板温度が600℃以下の領域から750〜900℃の
範囲内の所定の温度まで75℃/秒以上125℃/秒以
下の加熱速度で加熱することにより脱炭焼鈍後の板厚1
/10層の粒組織においてI{111 }/I{411 }の比
率を3以下に制御し、次いで770〜900℃の温度域
で雰囲気ガスの酸化度(PH2O /PH2):0.15超、
1.1以下の範囲内で鋼板の酸素量が2.3g/ m2 以
下となるような時間焼鈍することを特徴とする請求項1
記載のB8が1.88T以上の方向性電磁鋼板の製造方
法。 - 【請求項4】 前記鋼板の酸可溶性Alの量:[Al]
に応じて窒素量:[N]が[N]/[Al]≧2/3を
満足する量となるように窒化処理を施すことを特徴とす
る請求項1乃至3のいずれかの項に記載のB8が1.8
8T以上の方 向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項5】 質量で、更にSn:0.02〜0.15
%を添加することを特徴とする請求項1乃至4のいずれ
かの項に記載のB8が1.88T以上の方向性電磁鋼板
の製造方法。
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