JP4714637B2 - 磁束密度の高い方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

磁束密度の高い方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、軟磁性材料として変圧器等の電気機器の鉄芯として用いられる方向性電磁鋼板を、低温スラブ加熱により製造する方法に関するものである。
方向性電磁鋼板は、{110}<001>方位に集積した結晶粒により構成されたSiを7%以下含有した鋼板である。そのような方向性電磁鋼板の製造における結晶方位の制御は、二次再結晶とよばれるカタストロフィックな粒成長現象を利用して達成される。
この二次再結晶を制御するための一つの方法として、インヒビターとよばれる微細析出物を熱間圧延前のスラブ加熱時に完全固溶させた後、熱間圧延工程及びその後の焼鈍工程で微細析出させる方法が工業的に実施されている。この方法では、析出物を完全固溶させるために、1350℃ないし1400℃以上の高温でスラブを加熱する必要があるが、この温度は普通鋼のスラブ加熱温度に比べて約200℃高く、そのために専用の加熱炉が必要であり、また、溶融スケール量が多い等の問題がある。
そこで、低温スラブ加熱による方向性電磁鋼板の製造について研究開発が進められた。
低温スラブ加熱による製造方法として、例えば小松らは、窒化処理により形成した(Al、Si)Nをインヒビターとして用いる方法を特許文献1で開示している。また、その際の窒化処理の方法として、小林らは、脱炭焼鈍後にストリップ状で窒化する方法を特許文献2で開示しており、本発明者らも、非特許文献1で、ストリップ状で窒化する場合の窒化物の挙動を報告している。
そして、本発明者らは、そのような低温スラブ加熱による方向性電磁鋼板の製造方法においては、脱炭焼鈍時にインヒビターが形成されていないので、脱炭焼鈍における一次再結晶組織の調整が二次再結晶を制御する上で重要であり、一次再結晶粒組織の粒径分布の変動係数が0.6より大きくなり粒組織が不均一になると二次再結晶が不安定になることを特許文献3で示した。
その後、更に、二次再結晶の制御因子である一次再結晶組織とインヒビターに関する研究を行った結果、本発明者らは、一次再結晶組織中の{411}方位粒が{110}<001>二次再結晶粒の優先成長に影響を及ぼすことを見いだし、特許文献4において、脱炭焼鈍後の一次再結晶集合組織の{111}/{411}の比を3.0以下に調整し、その後窒化処理を行ってインヒビターを強化することにより磁束密度の高い方向性電磁鋼板を工業的に安定的に製造できることを示した。
また、特許文献5において、脱炭焼鈍後の集合組織のI{111}/I{411}の比率が所定値以下になるように一次再結晶を制御する方法として、脱炭焼鈍工程の昇温過程における600℃以下の温度から750〜900℃までの温度範囲内の加熱速度を、40℃/秒以上に制御することが効果的であることを示した。
なお、ここで、I{111}及びI{411}はそれぞれ{111}及び{411}面が鋼板板面に平行である粒の割合であり、X線回折測定により板厚1/10層において測定された回折強度値を表している。
しかし、脱炭焼鈍工程の加熱速度を40℃/秒以上に制御するためには、加熱手段として、例えば、レーザなどの高エネルギー熱源を利用する装置や、誘導加熱あるいは通電加熱などの電磁加熱装置のような特別な装置を脱炭焼鈍設備内に設置する必要があり、そのためコストがかかるという問題があった。
特公昭62ー45285号公報 特開平2−77525号公報 特公平8−32929号公報 特開平9−256051号公報 特開2002−60842公報 特開2005−226111公報 「Materials Science Forum」 204-206 (1996) 、pp593-598
そこで本発明は、レーザ加熱装置や誘導加熱装置のような加熱設備の増設の必要がなく、通常の設備を用いて、脱炭焼鈍後の一次再結晶粒組織中の{411}方位粒の存在する比率を高くして、I{111}/I{411}の値を小さくする方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は次のようにしたことを特徴とする。
請求項1に係る方向性電磁鋼板の製造方法の発明は、質量%で、Si:0.8〜7%、C:0.085%以下、酸可溶性Al:0.01〜0.065%、N:0.012%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる珪素鋼素材を、1280℃以下の温度で加熱した後に熱間圧延し、得られた熱延板を焼鈍し、次いで一回の冷間圧延または焼鈍を介して複数の冷間圧延を施して最終板厚の鋼板とし、その鋼板を脱炭焼鈍した後、焼鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍を施すとともに、脱炭焼鈍から仕上げ焼鈍の二次再結晶開始までの間に鋼板の窒素量を増加させる処理を施す方向性電磁鋼板の製造方法において、
前記熱延板の焼鈍を、1000〜1150℃の所定の温度まで加熱して再結晶させた後、それより低い850〜1100℃の温度で焼鈍する2段階の工程で行い、C量と2段階の熱延板焼鈍の2段目の温度を変更することにより、焼鈍後の粒組織においてラメラ間隔を20μm以上に調整することを特徴とする。
ここでラメラ組織とは図1に示すように圧延面に平行な層状組織を称し、ラメラ間隔とはこの層状組織の平均間隔である。
請求項2に係る方向性電磁鋼板の製造方法の発明は、請求項1に記載の発明において、鋼板の窒素量[N]を、鋼板の酸可溶性Alの量[Al]に応じて、式:[N]≧14/27[Al]を満足するように増加させることを特徴とする。
請求項3に係る方向性電磁鋼板の製造方法の発明は、請求項1または2の発明において、前記珪素鋼素材が、さらに、Mn:1%以下、Cr:0.3%以下、Cu:0.4%以下、P:0.5%以下、Sn:0.3%以下、Sb:0.3%以下、Ni:1%以下、S及びSeを合計で0.015%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、熱延板焼鈍を2段階の温度範囲で行うという、熱延板焼鈍炉の温度制御により実施できる手段によって、特別の加熱装置を必要とすることなく、一次再結晶粒組織中において{411}方位粒の存在する比率を高くすることができ、安定して磁束密度が高い方向性電磁鋼板を製造することができる。
請求項2に係る発明のようにすることにより、さらに安定して磁束密度が高い方向性電磁鋼板を製造することができる。
請求項3に係る発明のようにすることにより、添加元素に応じてさらに磁気特性などが改良された方向性電磁鋼板を製造することができる。
本発明者らは、質量%で、Si:0.8〜7%、C:0.085%以下、酸可溶性Al:0.01〜0.065%、N:0.012%以下を含有する珪素鋼素材を、1280℃以下の温度で加熱した後に熱間圧延し、得られた熱延板を焼鈍し、次いで一回の冷間圧延または焼鈍を介して複数の冷間圧延を施して最終板厚の鋼板とし、その鋼板を脱炭焼鈍した後、焼鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍を施すとともに、脱炭焼鈍から仕上げ焼鈍の二次再結晶開始までの間に鋼板の窒素量を増加させる処理を施すことにより方向性電磁鋼板を製造する際に、冷間圧延前の粒組織におけるラメラ間隔が、一次再結晶集合組織に影響するのではないかと考え、熱延板焼鈍条件を種々変更して、二次再結晶後の鋼板の磁束密度B8に対する前記ラメラ間隔の影響について調べた。
その結果、熱延板を焼鈍する工程において、所定の温度で加熱して再結晶させた後、それより温度の低い温度でさらに焼鈍して、焼鈍後の粒組織においてラメラ間隔を20μm以上に制御することにより、前記のような特別の加熱装置を必要とすることなく、脱炭焼鈍後の集合組織のI{111}/I{411}の比率が所定値以下になるよう一次再結晶を制御でき、二次再結晶組織を安定に発達することができるという知見を得て、本発明を完成させた。
以下に、その知見が得られた実験結果について説明する。
まず、冷間圧延前の試料における粒組織のラメラ間隔と仕上げ焼鈍後の試料の磁束密度B8の関係を調べた。試料として、質量%で、Si:3.3%、C:0.045〜0.065%、酸可溶性Al:0.027%、N:0.007%、Mn:0.1%、S:0.008%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる珪素鋼スラブを1150℃の温度で加熱した後、2.3mm厚に熱間圧延し、その後、1120℃に加熱して再結晶させた後、800〜1120℃の温度で焼鈍する2段階の熱延板焼鈍を施した。その試料を0.22mm厚まで冷間圧延した後、15℃/sの加熱速度で加熱して830℃の温度で脱炭焼鈍し、続いてアンモニア含有雰囲気で焼鈍して鋼板中の窒素を増加させ、次いで、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、仕上げ焼鈍を行ったものを用いた。ラメラ間隔の調整は、C量と2段階の熱延板焼鈍の2段目の温度を変更することによって行った。
図2に、得られたラメラ間隔と磁束密度B8の関係を示す。図2から明らかなように、ラメラ間隔が20μm以上においてB8で1.90T以上の高磁束密度が得られることがわかる。
また、B8で1.90T以上が得られた試料の脱炭焼鈍板の一次再結晶集合組織を解析した結果、全ての試料においてI{111}/I{411}の値が3以下となっているのが確認された。
次に、熱延板焼鈍温度と仕上げ焼鈍後の試料の磁束密度B8の関係を調べた。
実験に用いた試料は、熱延板焼鈍温度について、一段目の温度を900℃〜1150℃、2段目の温度を920℃とした以外は、図2で使用されたものと同様の試料を用いた。
図3に、得られた熱延板焼鈍温度と磁束密度B8の関係を示す。図3から明らかなように、熱延板焼鈍温度が1000℃〜1150℃においてB8で1.90T以上の高磁束密度が得られることがわかる。
また、B8で1.90T以上が得られた試料の脱炭焼鈍板の一次再結晶集合組織を解析した結果、全ての試料においてI{111}/I{411}の値が3以下となっているのが確認された。
以上のことから、熱延板を焼鈍する工程において、1000〜1150℃の所定の温度まで加熱して再結晶させた後、それより温度の低い850〜1100℃で焼鈍して、焼鈍後の粒組織においてラメラ間隔を20μm以上に制御することにより、{411}方位の粒の存在する比率を高め、特許文献3に示されているようにI{111 }/I{411 }の比率を3以下にすることができ、磁束密度が高い方向性電磁鋼板を安定して製造することができることがわかる。
熱延板焼鈍後の粒組織においてラメラ間隔を制御することにより{411}、{111}の集合組織が変化する理由についてはまだ明らかになっていないが、現在のところ次のように考えている。一般的に再結晶する方位によって再結晶粒の発生する優先サイトが存在することが知られており、冷延工程において{411}はラメラ組織の内部で、{111}はラメラ近傍部で再結晶核が形成されると考えると、冷延前の結晶組織のラメラ間隔を制御することによって、一次再結晶後の{411}、および{111}結晶方位の存在比率が変化する現象を説明することができる。
以上の知見に基づきなされた本発明につき、以下で順次説明する。
まず、本発明で用いる珪素鋼素材の成分の限定理由について説明する。
本発明は、少なくとも、質量%で、Si:0.8〜7%、C:0.085%以下、酸可溶性Al:0.01〜0.065%、N:0.012%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなる成分組成を基本とし、必要に応じて他の成分を含有する方向性電磁鋼板用の珪素鋼スラブを素材として用いるものであり、各成分の含有範囲の限定理由は次のとおりである。
Siは、添加量を多くすると電気抵抗が高くなり、鉄損特性が改善される。しかし、7%を超えて添加されると冷延が極めて困難となり、圧延時に割れてしまう。より工業生産に適するのは4.8%以下である。また、0.8%より少ないと、仕上げ焼鈍時にγ変態が生じ、鋼板の結晶方位が損なわれてしまう。
Cは、一次再結晶組織を制御するうえで有効な元素であるが、磁気特性に悪影響を及ぼすので、仕上げ焼鈍前に脱炭する必要がある。Cが0.085%より多いと、脱炭焼鈍時間が長くなり、工業生産における生産性が損なわれてしまう。
酸可溶性Alは、本発明においてNと結合して(Al、Si)Nとして、インヒビターとしての機能を果すために必須の元素である。二次再結晶が安定する0.01〜0.065%を限定範囲とする。
Nは、0.012%を超えると、冷延時、鋼板中にブリスターとよばれる空孔を生じるため、0.012%を超えないようにする。
また、本発明では、スラブの素材として、上記成分に加えて、必要に応じて、さらに、Mn、Cr、Cu、P、Sn、Sb、Ni、S、Seの少なくとも1種類を、質量%で、Mnでは1%以下、Crでは0.3%以下、Cuでは0.4%以下、Pでは0.5%以下、Snでは0.3%以下、Sbでは0.3%以下、Niでは1%以下、S及びSeを合計で0.015%以下の範囲で含有できる。すなわち、
Mnは、比抵抗を高めて鉄損を低減させる効果がある。また、熱間圧延における割れの発生を防止する目的のために、S及びSeの総量との関係でMn/(S+Se)≧4添加することが望ましい。しかしながら添加量が1%を超えると、製品の磁束密度が低下してしまう。
Crは、脱炭焼鈍の酸化層を改善し、グラス被膜形成に有効な元素であり、0.3%以下の範囲で添加する。
Cuは、比抵抗を高めて鉄損を低減させることに有効な元素である。添加量が0.4%を超えると鉄損低減効果が飽和するとともに、熱延時に「カッパーヘゲ」なる表面疵の原因になる。
Pは、比抵抗を高めて鉄損を低減させることに有効な元素である。添加量が0.5%を超えると圧延性に問題を生じる。
SnとSbは、良く知られている粒界偏析元素である。本発明はAlを含有しているため、仕上げ焼鈍の条件によっては焼鈍分離剤から放出される水分によりAlが酸化されてコイル位置でインヒビター強度が変動し、磁気特性がコイル位置で変動する場合がある。この対策の一つとして、これらの粒界偏析元素の添加により酸化を防止する方法があり、そのためにそれぞれ0.30%以下の範囲で添加できる。一方0.30%を超えると脱炭焼鈍時に酸化されにくく、グラス皮膜の形成が不十分となるとともに、脱炭焼鈍性を著しく阻害する。
Niは比抵抗を高めて鉄損を低減させることに有効な元素である。また、熱延板の金属組織を制御して磁気特性を向上させるうえで有効な元素である。しかしながら、添加量が1%を超えると二次再結晶が不安定になる。
その他、SおよびSeは磁気特性に悪影響を及ぼすので総量で0.015%以下とすることが望ましい。
次に、本発明で用いる製造条件について説明する。
上記の成分組成を有する珪素鋼スラブは、転炉または電気炉等により鋼を溶製し、必要に応じて溶鋼を真空脱ガス処理し、ついで連続鋳造もしくは造塊後分塊圧延することによって得られる。その後、熱間圧延に先だってスラブ加熱がなされる。本発明においては、スラブ加熱温度は1280℃以下として、上述の高温スラブ加熱の諸問題を回避する。
珪素鋼スラブは、通常は150〜350mmの範囲、好ましくは220〜280mmの厚みに鋳造されるが、30〜70mmの範囲のいわゆる薄スラブであっても良い。薄スラブの場合は熱延板を製造する際に中間厚みに粗加工を行う必要がないという利点がある。
上述した温度にて加熱されたスラブは引続き熱間圧延され所要板厚の熱延板とされる。この熱延板を、1000〜1150℃の所定の温度まで加熱して再結晶させた後、それより温度の低い850〜1100℃で焼鈍し、焼鈍後の粒組織においてラメラ間隔を20μm以上に制御する。
一段目の焼鈍温度範囲を1000〜1150℃としたのは、図3に示されるようにその範囲でB8で1.90T以上の磁束密度の鋼板が得られるためであり、2段目の焼鈍温度範囲を一段目の温度より低い850〜1100℃としたのは、図2に示されるようにラメラ間隔を20μm以上とするために必要であるからである。
なお、より好ましい条件としては、一段目の焼鈍温度は1050〜1125℃であり、二段目の焼鈍温度は850℃〜950℃である。
一段目の焼鈍については、熱延板の再結晶を促進する観点からは5℃/s以上、好ましくは10℃/s以上の加熱速度で行い、1100℃以上の高温では0s、1000℃程度の低温では30s以上の時間焼鈍を行えば良い。また、二段目の焼鈍時間はラメラ構造を制御する観点から20秒以上行えば良い。二段目の焼鈍後はラメラ組織を保存する観点から、平均5℃/s以上、好ましくは15℃/s以上の冷却速度で冷却すれば良い。
なお、熱延板焼鈍を2段階で行うことは、特許文献6に示されているが、特許文献6に記載されている方向性電磁鋼板の製造方法は、前記背景技術で説明した、インヒビターを熱間圧延工程などで微細析出させる方法と、脱炭焼鈍後の窒化処理によってインヒビターを形成する方法を組み合わせたものであって、その焼鈍の目的は、インヒビター状態の調整を行うことであり、本願発明のように、前記後者の方法で方向性電磁鋼板の製造する際、2段階の熱延板焼鈍によって、焼鈍後の粒組織におけるラメラ間隔を制御し、一次再結晶後に二次再結晶しやすい方位の粒の存在する比率を高め、磁束密度が高い方向性電磁鋼板を得ることについては従来知られていなかった。
その後、一回もしくは焼鈍を挟んだ二回以上に冷間圧延により最終板厚とする。冷間圧延の回数は、望む製品の特性レベルとコストとを勘案して適宜選択される。冷間圧延に際しては、最終冷間圧延率を80%以上とすることが、{411}及び{111}等の一次再結晶方位を発達させる上で必要である。
冷間圧延後の鋼板は、鋼中に含まれるCを除去するために湿潤雰囲気中で脱炭焼鈍を施す。
脱炭焼鈍は周知の方法で行われるが、本発明では、上記特許文献4、5に記載された、脱炭焼鈍工程の昇温過程における加熱速度を高める方法を排除するものではなく、本発明における熱延板焼鈍方法と、この加熱速度を高める方法を併用すれば、より効果を高めることができる。
その後、マグネシアを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後に、仕上げ焼鈍を行い{110}<001>方位粒を二次再結晶により優先成長させる。その際、脱炭焼鈍後、二次再結晶発現前に窒化処理を行うことにより、磁気特性:B8が1.90T以上の製品を安定して製造することができる。
窒化処理としては、アンモニア等の窒化能のあるガスを含有する雰囲気中で焼鈍する方法、MnN等の窒化能のある粉末を焼鈍分離剤中に添加すること等により仕上げ焼鈍中に行う方法等がある。
二次再結晶をより安定的に行わせるためには、鋼板中の(Al,Si)Nの組成比率を調整することが望ましく、その場合には、窒化処理後の窒素量としては鋼中のAl量に対して[N]/[Al]が質量比として14/27以上となるように調整する。
以上、説明したように、本発明では、珪素鋼を、1280℃以下の温度で加熱した後に熱間圧延し、熱延板焼鈍し、次いで一回の冷間圧延または焼鈍を介して複数の冷間圧延を施して最終板厚とし、脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍を施すとともに、脱炭焼鈍から仕上げ焼鈍の二次再結晶開始までの間に鋼板に窒化処理を施して、方向性電磁鋼板を製造する際に、熱延板焼鈍する工程において、1000〜1150℃の所定の温度まで加熱して再結晶させた後、それより温度の低い850〜1100℃で焼鈍することにより、熱延板焼鈍後の粒組織においてラメラ間隔を20μm以上に制御することにより、磁束密度の高い方向性電磁鋼板を製造することができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、実施例で採用した条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するための一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載される事項によってのみ規定されており、本発明を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
質量%で、Si:3.3%、C:0.06%、酸可溶性Al:0.028%、N:0.008%、Mn:0.1%、S:0.008%、Cr:0.1%、P:0.03%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなるスラブを1150℃の温度で加熱した後、2.3mm厚に熱間圧延し、その後、一部の試料(A)は1120℃の一段焼鈍を行い、一部の試料(B)は1120℃+920℃の二段焼鈍を施した。これらの試料を0.22mm厚まで冷間圧延した後、15℃/sの加熱速度で加熱して830℃の温度で脱炭焼鈍し、続いてアンモニア含有雰囲気で焼鈍して鋼板中の窒素を0.02%に増加させ、次いで、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、仕上げ焼鈍を施した。
得られた試料の仕上げ焼鈍後の磁気特性を表1に示す。
質量%で、Si:3.3%、C:0.055%、酸可溶性Al:0.027%、N:0.008%、Mn:0.1%、S:0.007%、Cr:0.1%、Sn:0.05%、P:0.03%、Cu:0.2%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなるスラブを1150℃の温度で加熱した後、2.3mm厚に熱間圧延し、その後、一部の試料(A)は1100℃の一段焼鈍を行い、一部の試料(B)は1100℃+900℃の二段焼鈍を施した。これらの試料を0.22mm厚まで冷間圧延した後、15℃/sの加熱速度で加熱して840℃の温度で脱炭焼鈍し、続いてアンモニア含有雰囲気で焼鈍して鋼板中の窒素を0.02%に増加させ、次いで、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、仕上げ焼鈍を施した。
得られた試料の仕上げ焼鈍後の磁気特性を表2に示す。
質量%で、Si:3.3%、C:0.055%、酸可溶性Al:0.027%、N:0.008%、Mn:0.1%、S:0.007%、Cr:0.1%、Sn:0.06%、P:0.03%、Ni :0.2%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなるスラブを1150℃の温度で加熱した後、2.3mm厚に熱間圧延し、その後、一部の試料(A)は1100℃の一段焼鈍を行い、一部の試料(B)は1100℃+900℃の二段焼鈍を施した。これらの試料を0.22mm厚まで冷間圧延した後、15℃/sの加熱速度で加熱して840℃の温度で脱炭焼鈍し、続いてアンモニア含有雰囲気で焼鈍して鋼板中の窒素を0.02%に増加させ、次いで、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、仕上げ焼鈍を施した。
得られた試料の仕上げ焼鈍後の磁気特性を表3に示す。
質量%で、Si:3.3%、C:0.055%、酸可溶性Al:0.028%、N:0.008%、Mn:0.1%、Se:0.007%、Cr:0.1%、P:0.03%、Sn:0.05%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなるスラブを1150℃の温度で加熱した後、2.3mm厚に熱間圧延し、その後、一部の試料(A)は1120℃の一段焼鈍を行い、一部の試料(B)は1120℃+900℃の二段焼鈍を施した。これらの試料を0.22mm厚まで冷間圧延した後、15℃/sの加熱速度で加熱して830℃の温度で脱炭焼鈍し、続いてアンモニア含有雰囲気で焼鈍して鋼板中の窒素を0.02%に増加させ、次いで、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、仕上げ焼鈍を施した。
得られた試料の仕上げ焼鈍後の磁気特性を表4に示す。
質量%で、Si:3.3%、C:0.06%、酸可溶性Al:0.028%、N:0.008%、Mn:0.1%、S:0.008%、Cr:0.1%、P:0.03%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなるスラブを1150℃の温度で加熱した後、2.3mm厚に熱間圧延し、その後、1120℃+920℃の二段焼鈍を施した。この試料を0.22mm厚まで冷間圧延した後、15℃/sの加熱速度で加熱して830℃の温度で脱炭焼鈍し、続いてアンモニア含有雰囲気で焼鈍して鋼板中の窒素を0.008〜0.023%に増加させ、次いで、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、仕上げ焼鈍を施した。
得られた試料の仕上げ焼鈍後の磁気特性を表5に示す。
冷延前粒組織のラメラ組織を示す圧延方向に平行な断面組織写真である(板厚2.3mm)。 冷延前粒組織のラメラ間隔と磁束密度B8の関係を示す図である。 一段目の熱延板焼鈍温度と磁束密度B8の関係を示す図である(加熱速度5℃/s、および10℃/s)。

Claims (3)

  1. 質量%で、Si:0.8〜7%、C:0.085%以下、酸可溶性Al:0.01〜0.065%、N:0.012%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる珪素鋼素材を、1280℃以下の温度で加熱した後に熱間圧延し、得られた熱延板を焼鈍し、次いで一回の冷間圧延または焼鈍を介して複数の冷間圧延を施して最終板厚の鋼板とし、その鋼板を脱炭焼鈍した後、焼鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍を施すとともに、脱炭焼鈍から仕上げ焼鈍の二次再結晶開始までの間に鋼板の窒素量を増加させる処理を施す方向性電磁鋼板の製造方法において、
    前記熱延板の焼鈍を、1000〜1150℃の所定の温度まで加熱して再結晶させた後、それより低い850〜1100℃の温度で焼鈍する2段階の工程で行い、C量と2段階の熱延板焼鈍の2段目の温度を変更することにより、焼鈍後の粒組織においてラメラ間隔を20μm以上に調整することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記鋼板の窒素量を増加させる処理において、鋼板の窒素量[N]を、鋼板の酸可溶性Alの量[Al]に応じて、式:[N]≧14/27[Al]を満足するように増加させることを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記珪素鋼素材が、さらに、質量%で、Mn:1%以下、Cr:0.3%以下、Cu:0.4%以下、P:0.5%以下、Sn:0.3%以下、Sb:0.3%以下、Ni:1%以下、S及びSeを合計で0.015%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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