JP2011006738A - 窒化型方向性電磁鋼板の窒化後のコイル巻き取り方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】AlNを二次再結晶の主なインヒビターとし二次再結晶焼鈍前に窒化をする方向性電磁鋼板製造において、鋼板表面のグラス被膜形成を均一にならしめること。
【解決手段】鋼帯を脱炭焼鈍後、一次再結晶焼鈍を施し、ストリップ走行状態下で水素、窒素及びアンモニアの混合ガス中で窒化処理し、その後MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して、鋼帯をコイル状に巻き取った状態で最終仕上げ焼鈍を施す際、鋼帯厚み表裏面における窒化窒素増量について、│(表側面窒化量−裏側面窒化量)/ΔN│×100≧15%、を満たす時は、窒化量が多い面をコイル状で最終仕上げ焼鈍する時のコイル外面側とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、主にトランス等の鉄芯として使用される方向性電磁鋼板を製造する方法に関するものである。
方向性電磁鋼板は、磁気特性、特に、鉄損、磁束密度及び磁歪が良好であることは当然であるが、その製造においては、歩留が高いことが工業生産において求められる。
方向性電磁鋼板の製造では、二次再結晶焼鈍後に平坦化処理が行われる。その結果、方向性電磁鋼板は、Goss方位の二次再結晶鋼帯の上にフォルステライトを主成分とするグラス被膜を有し、さらにその上に施された燐酸系の張力絶縁被膜を有する。
その際、フォルステライトを主成分とするグラス被膜形成が不十分であると外観が不良であるのみでなく、積層して用いられる方向性電磁鋼板では、被膜形成が不十分な箇所で短絡し、変圧器として欠陥品となり、方向性電磁鋼板製品としての商品価値は無くなる。このため、グラス被膜形成が均一でまた充分であることが求められる。
方向性電磁鋼板の二次再結晶焼鈍処理は、一次再結晶・脱炭焼鈍後の鋼帯にMgOを主成分とする焼鈍分離材を塗布しコイル状に巻取り、この鋼帯を箱型焼鈍炉で高温度の焼鈍をならしめる。この箱型焼鈍では、二次再結晶・グラス被膜形成・純化を行わせしめる。
この箱型焼鈍は、コイル状に巻取られた鋼帯を、鋼板幅方向を垂直に立てた穴縦の状態にして行われるため、鋼帯には内表面および外表面が存在する。ここで、図1に示す如くコイル内表面とは、コイル中心部に向いている面とする。
従来から、製造方法によらず、このコイル内表面でのグラス被膜形成が不十分の場合があった。この理由は、コイル内表面は引き続く平坦化処理時に張力が作用するので引っ張られ、グラス皮膜形成が不十分であると剥離するものである。即ち、グラス被膜の鋼板本体への根っ子の形成が不十分であるので、張力により剥離し易いのである。
この現象は、特に、窒化型の方向性電磁鋼板の製造の場合に顕著になる。AlNを二次再結晶の主なインヒビターとする窒化型の方向性電磁鋼板の製造では、特許文献1〜5で例示されるように、二次再結晶焼鈍前に窒化が行われる。このため、窒化型の製造では鋼板の窒素含有量が多くなるので、箱型焼鈍の最終段階での純化時に窒素が鋼帯外部に放出され、最表層のグラス被膜を破損するため、グラス被膜形成が不十分になるものと推定される。
そもそも、窒化は、一次再結晶・脱炭後にストリップを走行せしめてアンモニアを含む雰囲気中で行われる。このアンモニアガスは、最終的に、鉄を触媒として窒素と水素に分解するので鋼板表面の雰囲気は極めてドライ(還元雰囲気)となる。この極めてドライ雰囲気(還元雰囲気)では、折角形成したフォルステライトの材料となる酸化層(主成分はSiO2)の還元が生じてグラス被膜形成が不十分となる。
この還元雰囲気に接した面の性状が鋼帯の表裏(内表面および外表面)で均一であれば、窒化前の焼鈍条件の適正化で改善することも可能であるが、昨今の窒化装置の設備投資額低減、及び炉メンテナンス用スペース確保のための焼鈍炉の各種ガス管・制御系装置配線等の配置の制約等により、必ずしも鋼帯表裏(内表面および外表面)で均等な窒化が設備的に保障・実現されているわけではない。
このために、後窒化によって、インヒビターを作りこむ窒化型の方向性電磁鋼板の製造の場合に、被膜不良が顕著になると考えられる。
因みに、窒化型の方向性電磁鋼板の製造においては、鋼帯両面(内表面および外表面)の窒化量が異なっていても一般的に二次再結晶温度が高いので、二次再結晶開始までに窒素の全板厚への拡散が充分行われるので二次再結晶(磁気特性)の観点では問題は無い。
特開平05−112827号公報 特開2001−152250号公報 特開2000−199015号公報 特開平07−252523号公報 特開平09−227941号公報
そこで、本発明は、AlNを二次再結晶の主なインヒビターとし二次再結晶焼鈍前に窒化をする窒化型方向性電磁鋼板の製造において、グラス被膜形成を鋼帯表裏で均一ならしめることができる製造条件を提供することを課題とするものである。
発明者らは鋭意検討の結果、窒化型方向性電磁鋼板の製造では、鋼帯表裏(内表面および外表面)の窒化量の差異と窒化後のコイル形成時の巻取り方の間に、グラス被膜形成に関して関連があることを見出した。すなわち、鋼帯表裏(内表面および外表面)の窒化量の比率によって、コイルの巻取り方法を変えることでグラス被膜形成が改善することを見出した。
そのような検討の結果なされた本発明は、AlNを二次再結晶の主なインヒビターとし、二次再結晶焼鈍前に窒化をする窒化型方向性電磁鋼板の製造において、コイル内表面および外表面の窒化の割合により窒化後の巻き取り方向を規定するものであり、以下の構成からなる。
(1)鋼帯を脱炭焼鈍後、一次再結晶焼鈍を施し、ストリップ走行状態下で水素、窒素及びアンモニアの混合ガス中で窒化処理し、その後MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して、鋼帯をコイル状に巻き取った状態で最終仕上げ焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造方法において、鋼帯厚み表裏面における窒化窒素増量の差異が(式1)を満たす時は、窒化量が多い面をコイル状で最終仕上げ焼鈍する時のコイル外面側とすることを特徴とする鋼帯の巻き取り方法。
│(表側面窒化量−裏側面窒化量)/ΔN│×100≧15% ・・・(式1)
ここで、
表側面窒化量:表側面の表面から板厚(1/10)tまでの部分の窒素含有量から溶製での窒素含有量を差し引いた値
裏側面窒化量:裏側面の表面から板厚(1/10)tまでの部分の窒素含有量から溶製での窒素含有量を差し引いた値
ΔN:総窒化量で、全板厚での窒化後窒素から窒化前窒素を差し引いた値
である。
なお、コイル外表面とは、図1に示す通りとし、板厚(1/10)tは、図2に示す通りとする。
本発明の巻き取り方法に従って方向性電磁鋼板を製造することにより、窒化型製造方法での方向性電磁鋼板のグラス被膜形成を良好ならしめることができる。
コイルの内表面、外表面を示した図である。 鋼帯における窒素量を規定する板厚位置を示した図である。 コイル内外面の窒化量差と皮膜欠陥率の関係を示した図である。
本発明者らは、AlNを二次再結晶の主なインヒビターとし、二次再結晶焼鈍前に窒化をする窒化型方向性電磁鋼板の製造において、一次再結晶・脱炭焼鈍後にストリップを走行させた状態下でアンモニアを含んだ雰囲気で窒化させる際、鋼帯表裏(内表面および外表面)の窒化量の差異と窒化後のコイル形成時の巻取り方がグラス被膜の形成に関連があることを見出した。
窒化型方向性電磁鋼板の製造において、窒化は、アンモニアの分解を用いて行われるので、鋼板表面は、極度の還元雰囲気となる。このため、脱炭焼鈍時に鋼板表面に形成されたフォルステライトを主成分とするグラス被膜の原料となるSiO2が還元されるので、グラス被膜形成が不十分になる。
一方、そもそも窒化しない方向性電磁鋼板においても内表面は、グラス被膜の欠陥が生じ易い。これは、コイル状で二次再結晶焼鈍された後、平滑化処理されるので内表面には張力が働き、内部酸化層の根っ子の形成が不十分であると剥離し金属面が露出する。すなわち、そもそも、内表面では、グラス被膜形成性が劣る。
これに加えて、窒化型では、窒化量が両面で異なると上述の如く窒化後のSiO2の形成が異なり、引いては被膜形成が同様でなく差異が生じる。
本発明者らの検討の結果、両面層の窒化量の差異割合が15%以下であれば殆ど等量の窒化と見なされコイルの内表面および外表面のグラス被膜形成に差異は殆ど及ぼさないこと、さらに、この差異割合が15%を超え、かつ、窒化が多い面を内表面とするとグラス被膜欠陥(剥離)が多く生じ、特に、コイルの内巻き部の曲率半径が小さい部分で激しく欠陥が生じることが見出された。
そのため、この差異割合が15%を超えるような場合には、窒化が多い面を外表面とすることで、その面におけるグラス被膜欠陥の発生を抑制するようにすればよいことも見出した。
この方法を実際の製造に適用しようとすると、アンモニアを用いる方法で窒化された窒素はその時点では両面再表層に局在するため、この定量化は現代の分析機器を用いても非常な困難を伴う。
そこで、操業の実際的な指標としては、図2に示すように、内表面から板厚tの10分の1までの厚さ(1/10t位置)までの平均的窒素含有量を用いればよいことを見出した。
即ち、窒化後の鋼板の表側面及び裏側面において、それぞれの表面から板厚1/10tまでの部分の窒素含有量から溶製での窒素含有量を差し引いた値を、それぞれ表側面窒化量及び裏側面窒化量とし、総窒化量で、全板厚での窒化後窒素から窒化前窒素を差し引いた値をΔNとした場合に、下記の(式1)が満たされる場合には、窒化量が多い面をコイル状で二次再結晶焼鈍する時のコイル外面側とする
│(表側面窒化量−裏側面窒化量)/ΔN│×100≧15% ・・・(式1)
ここで、コイル外表面とは、図1に示す通りとし、板厚(1/10)tは、図2の鋼帯における板厚位置に示す通りとする。
窒化量が多い面を外表面とする方法は、連続窒化炉で窒化後に鋼帯を巻き取る際、巻取りの回転方向を変えることで可能で容易である。例えば、水平炉で窒化時に連続窒化炉の上面で窒化が多い場合は、鋼帯の進行方向の右側からみれば、時計廻りで巻取る。巻取り方法は、通常のリールでも良いしカローセルリールでも良く、巻取り近傍の装置の幾何学的配置で決まる。
なお、窒素量の分析は、一般的に実施されている化学分析で行う。表面側窒化量は、表面側の表面から板厚(1/10)tまでの部分を残して、裏面側から研磨し、そこから切子を採取し、化学分析により表面側の窒素量を分析する。裏面側窒化量も同様にして分析する。
本発明は、以上のように、窒化後の鋼板の表・裏側面のそれぞれの窒化量の差異に基づいて、最終仕上焼鈍に供する鋼板の巻取方向を変えることにより、グラス被膜を方向性電磁鋼板の表側・裏側の両面で良好に形成することができる。
以上のような本発明は、通常の窒化型方向性電磁鋼板の製造方法にそのまま適用できる。そのため、方向性電磁鋼板用素材及び製造条件について、特に制限されるものではないが、それぞれ好ましい態様について説明する。
本発明では、方向性電磁鋼板用素材として、一般に窒化型方向性電磁鋼板用として知られている鋼が使用できる。
好ましい鋼の化学組成は、質量%でC:0.025〜0.09%、Si:2.5〜4.0%、Mn:0.03〜0.15%、S+0.405Se:0.005〜0.020%、酸可溶性Al:0.022〜0.033%、N:0.003〜0.009%、を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるもの、あるいは、さらに、Sb、Sn、Pの1種以上:0.02〜0.30%、Cu:0.05〜0.15%、Cr:0.02〜0.15%を必要に応じて含有させたものである。
各成分の選定理由は次のとおりである。
Cは、0.025%より少ないと一次再結晶集合組織が適切でなくなり、0.09%を超えると脱炭が困難になり工業生産に適していない。
Siは、2.5%より少ないと良好な鉄損が得られず、4.0%を超えると冷延が極めて困難となり工業生産に適していない。
Mnは、0.03%より少ない熱延鋼帯では割れが発生しやすく、歩留まりが低下し二次再結晶が安定しない。一方、0.15%を超えるとMnS、MnSeが多く粗大になり、固溶・析出の程度が場所により不均一となり実工業生産では安定生産に問題が生じる。
SおよびSeは、Mn、Cuと結合して析出し先天的インヒビターを形成し、AlNの析出核としても有用である。S当量(Seq=S+0.405Se)は0.005%以上0.020%以下である。S当量が0.005%より少ないと、先天的インヒビターの絶対量が不足して二次再結晶が不安定なる。また0.020%を超えると固溶・析出の程度が鋼帯部位により不均一となり実工業生産では安定生産に問題が生じ、また、この時に窒化するとインヒビター強度が大きくなり過ぎGoss方位先鋭性が劣り磁束密度が低下する。
酸可溶性AlはNと結合してAlNを形成し、主に一次・二次インヒビターとして機能する。このAlNは、窒化前に形成されるものと窒化後高温焼鈍時に形成されるものがあり、この両方のAlNの量確保のために0.022〜0.033%必要である。この上限を外れると二次再結晶不良が生じる。また、下限を外れるとGoss方位集積度が著しく劣化する。
スラブに含まれるAlNも同様に一次再結晶粒を制御するために非常に重要なものであり、Nが0.003%未満では一次インヒビターの絶対量が不足し二次再結晶不良が生じる。0.009%を超えた場合は、ブリスターと言う膨れが多く生じ表面欠陥となる。
また、Sn、Sb、Pは一次再結晶集合組織の改善に有効である。これらの元素の含有量が0.02%より少ないと改善効果が少なく、また、0.30%を超えると安定したフォルステライト皮膜(一次皮膜、グラス皮膜)形成がそもそも困難となる。さらに、Sn,Sb、Pは粒界偏析元素であり二次再結晶焼鈍時の雰囲気遮断効果があり二次再結晶を安定化ならしめることは周知である。
Cuは、SやSeとともに熱間圧延条件に拘わらず最終冷間圧延前の焼鈍により微細な析出物を形成し、一次・二次インヒビター効果を発揮する。また、この析出物はAlNの分散をより均一にする析出核ともなり二次インヒビターの役割も演じ、この効果が二次再結晶を良好ならしめる。0.05%より少ないと上記効果が減じ工業生産の安定性が劣ることがあり、0.30%を超えると上記効果が飽和するとともに、熱延時に「カッパーヘゲ」なる表面疵の原因になる。
Crはフォルステライト皮膜(一次皮膜、グラス皮膜)形成に有効であるので0.02〜0.30%含むことが望まれる。0.03%未満では酸素が確保されにくく、0.30%を超えると皮膜が形成されない。
Tiについて、0.005%を超えて含有すると、NはTiNとなって実質低N含有鋼となり、インヒビター強度が確保されず二次再結晶不良が生じることがあるので、少ない方が望ましい。
その他、Ni、Mo,Cdについては、添加することを妨げない。また電気炉溶製の場合は必然的に混入するものでもある。Niは一次、二次インヒビターとしての析出物の均一分散に著しい効果があるので、Niを添加すると磁気特性は更に良好且つ安定する。0.02%より少ないと効果が無く、0.3%を超えると、脱炭焼鈍後の酸素の富化し難くくになりフォルステライト皮膜形成が困難になる。Mo、Cdは硫化物もしくはセレン化物を形成しインヒビターの強化に資する。0.008%未満では効果が無く、0.3%を超えると析出物が粗大化してインヒビターの機能を得られず、磁気特性が安定しない。
次に、本発明を実施するのに好適な成分以外の製造条件について述べる。
本発明は、アルミニウム含有の方向性電磁鋼板の製造において、窒化が必須の製造方法を対象とする。窒化を必要とする製造方法には、スラブ加熱を1280℃未満で行う、特許文献1で例示される(a)充分析出型と、より高い温度でスラブ加熱を行って、インヒビター物質を完全固溶させる、特許文献2で例示される(b)完全固溶型がある。本発明は、このいずれの方法にも適用することができる。
スラブを得るための鋳造は、従来の連続鋳造でよい。さらにスラブ加熱をたやすくするために分塊法を適用することは構わない。この場合、炭素含有量を減じることができることは周知である。具体的には、公知の連続鋳造法により初期の厚みが150mmから300mmの範囲、好ましくは200mmから250mmの範囲のスラブを製造する。
この代わりに、近年、通常の連続熱間圧延を補完するものとして、厚み30mm〜100mmの薄スラブ鋳造、直接鋼帯を得る鋼帯鋳造(ストリップキャスター)が実用化されているが、本発明に関して、適用は妨げない。しかし、実際問題として、これらでは凝固時に所謂“中心偏析”等のための析出物等が不均一となり完全均一な固溶・析出状態を得ることは極めて困難である。完全均一な固溶・析出状態を得るためには熱延鋼帯を得る前に一度、固溶化熱処理又は1200℃以下低温度での充分析出処理を伴ってのスラブ再加熱が強く望まれる。
通常の熱間圧延の場合は、先立つスラブ加熱温度の条件は、(a)充分析出型か(b)完全固溶型で異なる。前者では、1200℃以下が望ましいが、後者では、1300℃超が望ましい。もちろん、工業生産上で熱延の加熱方法には通常のガス加熱方法に加え、誘導加熱、直接通電加熱を用いてもよいし、これらの特別な加熱方法のための形状を確保するために、ブレイクダウンを鋳込みスラブに施しても何ら問題ない。また、加熱温度が高い1300℃以上になる場合は、このブレイクダウンにより集合組織の改善を施しC量を減じてもよい。これらは従来の公知技術の範囲である。
(a)充分析出型の場合は、仕上げ出口温度は、低い930℃以下が望ましく、巻き取り温度も600℃以下が望ましい。(b)完全固溶型では、仕上げ入り口温度は、なるたけ高い1100℃以上が望ましく、巻き取り温度は600℃以下が望ましい。
熱間圧延後、安定的に良好なGoss方位を得るために焼鈍が行われる。この焼鈍は、主に熱間圧延時に生じた鋼帯内の組織の均一化及びインヒビターの微細分散析出のために行われるもので、熱延鋼帯での焼鈍でも良いし、一度冷間圧延した後の最終冷間圧延前の焼鈍でも良い。すなわち、最終冷間圧延前に熱延でのインヒビターと金属組織の均一化・適正化を行うために1回以上の連続焼鈍が行われる。
焼鈍条件としては、例えば、1060℃〜1150℃での90秒〜180秒の焼鈍後750℃〜900℃から15℃/秒以上の冷却速度で室温まで冷却する態様が例示される。
焼鈍後の冷却は、均一なインヒビター分布状態を確保し焼き入れハード相(主にベーナイト相)を確保するために15℃/秒以上であることが望ましい。例えば、特許文献5で示された方法で良い。
冷間圧延における最終冷延率は80%未満であると{110}<001>集合組織がブロードになり高磁束密度が得られず、92%を超えると{110}<001>集合組織が極端に少なくなり二次再結晶が不安定になる。
最終冷間圧延は常温で実施してもよいが、少なくとも1パスを100〜300℃の温度範囲に1分以上保つと一次再結晶集合組織が改善され磁気特性が極めて良好になる。これは、公知である。保定時間は1分以上であれば良いのだが、実際の冷間圧延は、リバースミルで行われるので、ある温度の保定時間は、一般的には10分以上となる。長くなることは本発明では妨げないし、むしろ良好な磁気特性を得る方策でもある。
冷間圧延後に脱炭焼鈍が行われる。脱炭焼鈍は公知の条件、すなわち650〜950℃で板厚に応じて60〜500秒間、好ましくは80〜300秒間、窒素と水素の混合湿潤雰囲気で行われる。
脱炭焼鈍完了後の一次再結晶粒の平均粒径は、例えば特許文献4では一次再結晶粒の平均粒径を18〜35μmとしている。一方、特許文献1では、一次再結晶粒の平均粒径を7μm以上18μm未満である。
脱炭燒鈍における室温から650〜850℃までの加熱速度を100℃/sec以上とすると、一次再結晶集合組織が改善され磁気特性が良好になるのでその適用を妨げない。加熱速度を確保するためには種々な方法が考えられる。即ち、抵抗加熱、誘導加熱、直接エネルギー付与加熱等がある。加熱速度を早くすると一次再結晶集合組織においてGoss方位が多くなり二次再結晶粒径が小さくなることは特公平6−51887号公報等で公知である。特公平6−51887号公報では、加熱速度を140℃/sec以上としているが、本発明では、前記加熱速度が100℃/secでも効果があり、望ましくは150℃/sec以上である。
一次再結晶・脱炭焼鈍後にストリップを走行させた状態下でアンモニアを含んだ雰囲気で窒化させる。総窒化量は、多いと地鉄が露出した一次被膜(グラス被膜)欠陥が多発し、Goss方位集積度が極めて劣化し、少ないと二次再結晶が不良となる。本発明により、高磁束密度を得るためには、窒化後の総窒素含有量は0.011%〜0.023%が望まれる。
窒化処理後、公知の方法に従い、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して最終仕上げ焼鈍を施す。本発明では、上述のように、炉の構成上、窒化後の鋼板の表・裏側面のそれぞれの窒化量の多少が規定されるので、これに基づいて最終仕上げ焼鈍に供する鋼板の巻取方向を決める。
通常は、焼鈍後、絶縁張力コーティングの塗布と平坦化処理を行って製品とする。
質量%で、Cを0.065%、Siを3.37%、酸可溶性Alを0.026%、Nを0.0081%、Sを0.0065%、Mnを0.098%、Snを0.065%、Crを0.12%有し、残部Fe及び不可避的不純物を有する溶鋼より得られたスラブを1150℃で再加熱した後、通常の方法で熱間圧延し、890℃で仕上げ熱間圧延を終了して2.6mmの熱延板とし、560℃巻き取った。その後、1120℃で10秒、900℃で100秒保定して750℃20℃/秒の冷却で室温まで水冷し、酸洗でデスケリーングを行った。その後、250℃で3回の温間圧延で0.22mmの冷延板とした。その後、700℃まで150℃/秒で加熱して、850℃で110秒で水素75%、窒素25%、露点70℃の湿雰囲気で一次再結晶・脱炭焼鈍を施した。その後、アンモニア雰囲気内で窒素総量が195ppm〜225ppmの範囲になるように、また鋼帯の表側・裏側のそれぞれの面で窒化量を変更させ、(式1)の値が2.5%から27%になるように、窒化炉の鋼帯上下面のアンモニア流量を変化させ、その後MgOを主成分とする焼鈍分離材を塗布して巻き取り方向を変えて巻き取った。
その後、箱型焼鈍を水素75%、窒素25%で15℃/時間で1200℃まで昇温し、その後1200℃20時間の純化焼鈍を行った。その後、平坦化処理を行い、燐酸アルミニウムを主成分とする張力絶縁被膜を塗布した。その場合のグラス被膜欠陥率を示す。
(式1)から求められたコイル内外面の窒化差異ごとに、巻取り方向を変えて巻取った場合のグラス被膜欠陥率を調べ、得られた結果を図3に示した。
図3に示されるように、窒化量が多い面をコイル状で最終仕上げ焼鈍する時のコイル外面側とした例(○)では、窒化量の差の大小にかかわらず、グラス被膜欠陥率は5%未満であったが、窒化量が多い面を内面側とした例(●)では、(式1)から求められた窒化差異の値が15%を超えると、ラス被膜欠陥率は5%を超えて増大した。
なお、グラス被膜欠陥には、密着性不良、金属光沢の露出、グラス形成不良、変色があるが、この実施例では、密着性不良と金属光沢の露出をグラス被膜欠陥とした。

Claims (1)

  1. 鋼帯を脱炭焼鈍後、一次再結晶焼鈍を施し、ストリップ走行状態下で水素、窒素及びアンモニアの混合ガス中で窒化処理し、その後MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して、鋼帯をコイル状に巻き取った状態で最終仕上げ焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造方法において、鋼帯厚み表裏面における窒化窒素増量の差異が(式1)を満たす時は、窒化量が多い面をコイル状で最終仕上げ焼鈍する時のコイル外面側とすることを特徴とする鋼帯の巻き取り方法。
    │(表側面窒化量−裏側面窒化量)/ΔN│×100≧15% ・・・(式1)
    ここで、
    表側面窒化量:表側面の表面から板厚(1/10)tまでの部分の窒素含有量から溶製での窒素含有量を差し引いた値
    裏側面窒化量:裏側面の表面から板厚(1/10)tまでの部分の窒素含有量から溶製での窒素含有量を差し引いた値
    ΔN:総窒化量で、全板厚での窒化後窒素から窒化前窒素を差し引いた値
    である。
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