JP4239456B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、変圧器の鉄心などに使用される方向性電磁鋼板の製造方法に関し、特にその被膜特性の有利な改善を図ったものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性電磁鋼板の製造に際しては、インヒビターと呼ばれる析出物を使用して、最終仕上焼鈍中にゴス方位粒と呼ばれる{110}<001>方位粒を優先的に二次再結晶させることが、一般的な技術として使用されている。
例えば、特公昭40−15644 号公報には、インヒビターとしてAlN,MnSを使用する方法が、また特公昭51−13469 号公報には、インヒビターとしてMnS, MnSeを使用する方法が開示され、いずれも工業的に実用化されている。
これらとは別に、CuSeとBNを添加する技術が特公昭58−42244 号公報に、またTi,Zr,V等の窒化物を使用する方法が特公昭46−40855 号公報に開示されている。
【0003】
これらのインヒビターを用いる方法は、安定して二次再結晶粒を発達させるのに有用な方法であるが、析出物を微細に分散させなければならないので、熱延前のスラブ加熱を1300℃以上の高温で行うことが必要とされる。
しかしながら、スラブの高温加熱は、設備コストが嵩むことの他、熱延時に生成するスケール量も増大することから歩留りが低下し、また設備のメンテナンスが煩雑になる等の問題がある。
【0004】
これに対して、インヒビターを使用しないで方向性電磁鋼板を製造する方法が、特開昭64−55339 号、特開平2−57635 号、特開平7−76732 号および特開平7−197126号各公報に開示されている。これらの技術に共通していることは、表面エネルギーを駆動力として{110}面を優先的に成長させることを意図していることである。
表面エネルギー差を有効に利用するためには、表面の寄与を大きくするために板厚を薄くすることが必然的に要求される。例えば、特開昭64−55339 号公報に開示の技術では板厚が 0.2mm以下に、また特開平2−57635 号公報に開示の技術では板厚が0.15mm以下に、それぞれ制限されている。
しかしながら、現在使用されている方向性電磁鋼板の板厚は0.20mm以上がほとんどであるため、上記したような表面エネルギーを利用した方法で通常の方向性電磁鋼板を製造することは難しい。
【0005】
さらに、表面エネルギーを利用する方法では、表面酸化層の形成を抑制して最終仕上焼鈍を行わねばならず、たとえばMgO のような焼鈍分離剤を塗布焼鈍することができないので、最終仕上焼鈍後に通常の方向性電磁鋼板と同様な酸化物被膜を形成することはできない。例えば、珪酸化物被膜は、焼鈍分離剤としてMgOを主成分として塗布した時に形成される被膜であるが、この被膜は鋼板表面に張力を与えるだけでなく、その上にさらに塗布焼き付けられるリン酸塩を主体とする絶縁張力コーティングの密着性を確保する機能を担っている。従って、かような珪酸化物がない場合には鉄損は大幅に劣化する。
【0006】
この点、珪酸化物被膜を形成し、かつインヒビター成分を使用しないで、熱延圧下率を30%以上、熱延板厚を 1.5mm以下とすることにより二次再結晶させる技術が特開平11−61263 号公報に、さらにゴス方位への二次再結晶粒の方位集積を行う技術が特開2000−129356号公報に開示されており、表面酸化被膜がないために鉄損が劣るという問題点が解決されつつある。
しかしながら、上記の方法では、インヒビターを利用した従来の方向性電磁鋼板と比較すると、良好な外観と十分な密着性を有する珪酸化物被膜は形成できていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
インヒビターとして利用される代表的な析出物として、MnS,MnSe,AlN等が挙げられるが、これらの成分を低減した場合の被膜形成に及ぼす影響について調査を行ったところ、特にS,Seを含有しない電磁鋼板では、脱炭焼鈍時に形成されるSiO2を主体とするサブスケ−ルの形態が著しく変化していることが判明した。
すなわち、一般に、S,Seには内部酸化を抑制する効果があるため、通常のインヒビターを利用する方向性電磁鋼板に含まれる範囲のSやSeが含有されていると、サブスケールは鋼板内部への酸化進行が適度に抑制され、比較的薄くて緻密な被膜となるが、含有されていない場合にはSiO2が鋼板内部へ樹状成長を主体とした生成挙動を呈し、その後に焼鈍分離剤との反応により形状された珪酸化物被膜には緻密さがなく、十分な密着性を示さないことが見出された。
【0008】
また、Alについても、同様に、Siの替わりにAlが酸化されることによって相対的にSiO2の形成を抑制する効果があると考えられ、従ってAl濃度を低減するとSやSeを低減したときと同様に脱炭焼鈍時のサブスケールの形態が劣化する。
【0009】
従来から、脱炭焼鈍後のサブスケールの被膜品質を改善する手法は数多く提案されているが、いずれもインヒビター成分を含む鋼成分を前提としており、サブスケールの形態を大幅に変更させるものではなかった。
【0010】
本発明は、上記の実状に鑑み開発されたもので、インヒビターを含まない鋼を素材として方向性電磁鋼板を製造する場合に、該鋼板に対して優れた密着性を有する珪酸化物被膜を形成することができる、被膜特性に優れた方向性電磁鋼板の新規な製造方法を提案することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
以下、本発明の解明経緯について説明する。
さて、発明有らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、被膜形成に及ぼすCu元素の添加効果に着目した。
すなわち、インヒビター成分を含まない成分系について脱炭焼鈍時のサブスケール形成に及ぼすCu添加の影響について調査したところ、適量のCuを添加すると、SiO2主体のサブスケールが、樹状を主体とした形態から球状あるいはラメラ状を主体とした薄くて緻密な酸化物被膜に変化することが見出されたのである。
【0012】
但し、出鋼成分中にCuを予め大量に添加すると、熱間圧延時に表面割れを起こし易く、最終製品の表面性状を劣化させるおそれがある。
従って、脱炭焼鈍時に表面酸化に関与する表面近傍についてのみ、Cu濃度を高めることが重要である。
【0013】
なお、方向性電磁鋼板へのCu添加については、特開平4−341519号公報に、インヒビション効果を補強する手段として鋼中へ添加する手法が、また特開平3−240922号公報には、磁気特性と共にベンド特性を改善する手段として、脱炭焼鈍後の鋼板表面にCuを付着させる技術が開示されている。
しかしながら、これらはいずれも、インヒビター成分を含む鋼成分を前提としたものであり、インヒビター成分を含まない成分系については何ら考慮が払われていない。
【0014】
また、発明者らは、サブスケールの形態を変化させる成分として、SiO2の主原料となるSi自身にも着目した。すなわち、脱炭焼鈍にいたる方向性電磁鋼板の一連の製造工程における熱延板焼鈍あるいは中間焼鈍において、鋼板表面は酸化を受けて酸化スケールが形成されると、最表層のSiは消費され、板厚中心と比較して鋼板表面のSi濃度は低下する。
従って、このSiの表面での濃度低下を利用することで、インヒビター成分を含まない成分系の脱炭焼鈍時におけるSiO2の急速な成長を抑制し、サブスケールの形態を樹状から球状あるいはラメラ状に変化させることが可能となる。
【0015】
本発明は、上述したように、脱炭焼鈍直前における鋼板表面のCuおよびSi濃度が、脱炭焼鈍時に形成されるサブスケールの形態に及ぼす影響について研究を進めた末に、完成されたものである。
【0016】
すなわち、本発明は、質量%で、C:0.08%以下, Si:2.0〜8.0%、Mn:0.005〜3.0%およびCu:0.005〜0.3%を含み、Alを 100 ppm未満、S, Seをそれぞれ50ppm 以下に低減した溶鋼を用いて製造した鋼スラブを、熱間圧延し、ついで必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、ついで脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を適用して最終仕上焼鈍を施すことからなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
脱炭焼鈍直前の鋼板について、板厚中心に対する鋼板表面のCuの濃度比を1.20以上とし、かつSiの該濃度比を0.90以下としたことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明を由来するに至った実験結果について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%(mass%)を意味する。
C:40ppm 、Si:3.40%、Mn:0.25%、Al:30ppm、S:5ppm、Se:5ppm、N:10ppmおよびCu:0.05%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、連続鋳造後、1150℃に加熱したのち、熱間圧延によって2.5mm 厚の熱延板とし、ついで1000℃で、酸素ポテンシャル〔P(H2O)/P(H2)〕が0.50の雰囲気中にて熱延板焼鈍を施したのち、中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延によって0.30mmの最終板厚に仕上げた。この時、中間焼鈍の酸素ポテンシャルはP(H2O)/P(H2)=0.35の一定とする一方、焼鈍時間とその後の酸洗条件を種々に変更して、板厚方向にわたって、種々のCuおよびSi濃度分布を持つ最終冷延板を作製した。
ついで、これらを 830℃の湿水素雰囲気中にて脱炭焼鈍し、その後MgO を主体とする焼鈍分離剤を塗布後、1120℃まで昇温する最終仕上焼鈍を行った。
かくして得られた最終焼鈍板のフォルステライト被膜の外観と曲げ密着性について調べた結果を、CuおよびSiの板厚中心に対する鋼板表面の濃度比について調べた結果と併せて、表1に示す。
【0018】
ここに、CuおよびSiの濃度比は、GDS(Glow Discharge Spectrometer)を用いて板厚方向の強度分布を調べ、板厚中心および表面における測定強度からバックグラウンドを除いた値の比で評価した。なお、測定法としては、CuやSiの濃度を評価できる測定法であれば、GDSに限らず、SIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)等の物理分析やその他の化学分析であってもかまわない。また、曲げ密着性については、種々の径を持つ丸棒に試料を沿わせて曲げを行い、被膜がはく離しない最小直径で評価した。
【0019】
【表1】
Figure 0004239456
【0020】
同表に示したとおり、Cuの濃度比が1.20以上でかつ、Siの濃度比が0.90以下の場合に、被膜外観が良好でしかも曲げ密着性に優れたフォルステライト被膜が得られることが分かる。
これに対し、Cu濃度比およびSi濃度比のいずれかが適合しない場合には、良好な外観が得られなかったり、十分な曲げ密着性が得られなかったりした。
【0021】
ここに、表面におけるSi濃度分布は主に、中間焼鈍時にSiを含む表面酸化物を形成させて、表面近傍のSiを消費させたのち、形成させた表面酸化物を酸洗もしくは研削等で除去することにより、制御が可能である。また、上記した実験例のような焼鈍時間の調整だけでなく、焼鈍雰囲気の酸化性や焼鈍温度を変更することによっても制御可能で、中間焼鈍を行わない場合には、熱延板焼鈍時にSi濃度を調整すればよい。
【0022】
一方、表面におけるCuの濃化については、上記焼鈍後に行われる酸洗条件が重要である。すなわち、Cuは、酸化力のある硝酸等により溶解するが、酸化力の弱い塩酸やリン酸等で酸洗処理を行うと、Cuは溶解せずにFeのみが溶解するため、結果として表面におけるCuの濃度を相対的に高めることができる。
但し、酸洗時間が長かったり、濃度が高かったりした場合には、Cuの濃度上昇には有利であるが、焼鈍時に形成された表面の低Si層が酸洗によって減少してしまうので、適切な酸濃度や液温度、処理時間を選択しなければならないのはいうまでもない。
【0023】
【作用】
本発明において、インヒビター成分を含まない鋼において二次再結晶が発現する理由は必ずしも明らかではないが、以下のように考えている。
さて、発明者らは、ゴス方位粒が二次再結晶する理由について鋭意研究を重ねた結果、一次再結晶組織における方位差角が20〜45°である粒界が重要な役割を果たしていることを発見し、Acta Material 45巻(1997)1285頁に報告した。
【0024】
すなわち、方向性電磁鋼板の二次再結晶直前の状態である一次再結晶組織を解析し、様々な結晶方位を持つ各々の結晶粒の周囲の粒界について、粒界方位差角が20〜45°である粒界の全体に対する割合を調査したところ、ゴス方位が最も高い頻度を持つことが解明された。方位差角が20〜45°の粒界は、C. G. Dunnらによる実験データ(AIME Transaction 188巻(1949)368 頁)によれば、高エネルギー粒界である。この高エネルギー粒界は粒界内の自由空間が大きく乱雑な構造をしている。粒界拡散は粒界を通じて原子が移動する過程であるので、粒界中の自由空間の大きい、高エネルギー粒界の方が粒界拡散は速い。
二次再結晶は、インヒビターと呼ばれる析出物の拡散律速による成長に伴って発現することが知られている。高エネルギー粒界上の析出物は、仕上焼鈍中に優先的に粗大化が進行するので、優先的にピン止めがはずれて粒界移動を開始し、ゴス粒が成長する機構を示した。
【0025】
発明者らは、この研究をさらに発展させて、ゴス方位粒の二次再結晶の本質的要因は、一次再結晶組織中の高エネルギー粒界の分布状態にあり、インヒビターの役割は、高エネルギー粒界と他の粒界の移動速度差を生じさせることにあることを見い出した。
従って、この理論に従えば、インヒビターを用いなくとも、粒界の移動速度差を生じさせることができれば、二次再結晶させることが可能となる。
【0026】
さて、鋼中に存在する不純物元素は、粒界とくに高エネルギー粒界に偏析し易いため、不純物元素を多く含む場合には、高エネルギー粒界と他の粒界の移動速度に差がなくなっているものと考えられる。
この点、素材の高純度化によって、上記したような不純物元素の影響を排除することができれば、高エネルギー粒界の構造に依存する本来的な移動速度差が顕在化して、ゴス方位粒の二次再結晶が可能になるものと考えられる。
【0027】
さらに、粒界移動速度差を利用して安定した二次再結晶を可能とするためには、一次再結晶組織をできる限り均一な粒径分布に保つことが肝要である。というのは、均一な粒径分布が保たれている場合には、ゴス方位粒以外の結晶粒は粒界移動速度の小さい低エネルギー粒界の頻度が大きいため、粒成長が抑制されている状態、いわゆるTexture Inhibition効果の発揮により、粒界移動速度が大きい高エネルギー粒界の頻度が最大であるゴス方位粒の選択的粒成長としての二次再結晶が進行するからである。
これに対し、粒径分布が一様でない場合には、隣接する結晶粒同士の粒径差を駆動力とする正常粒成長が起こるため、粒界移動速度差と異なる要因で成長する結晶粒が選択されるために、Texture Inhibition効果が発揮されずに、ゴス方位粒の選択的粒成長が起こらなくなる。
【0028】
ところが、工業生産の上では、インヒビター成分を完全に除去することは実用上困難なので、不可避的に含有されてしまうが、熱延加熱温度が高い場合には、加熱後に固溶した微量不純物としてのインヒビター成分が熱延時に不均一に微細析出する結果、粒界移動が局所的に抑制されて粒径分布が極めて不均一になり、二次再結晶の発達が阻害される。そのためインヒビター成分を低減することが第一であるが、不可避的に混入する微量のインヒビター成分の微細析出を回避して無害化するためには、熱延前の加熱温度を圧延可能な範囲で、できる限り低めに抑えることが有効である。
【0029】
次に、本発明において、素材であるスラブの成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。
C:0.08%以下
C量が0.08%を超えると、磁気時効の起こらない 50ppm以下まで低減することが困難になるので、Cは0.08%以下に制限した。
Si:2.0 〜8.0 %
Siは、鋼の電気抵抗を増大し鉄損を低減するのに有用な元素であるので、2.0%以上含有させる。しかしながら、含有量が 8.0%を超えると加工性が著しく低下して冷間圧延が困難となる。そこでSi量は 2.0〜8.0 %の範囲に限定した。
Mn:0.005 〜3.0 %
Mnは、熱間加工性を改善するために有用な元素であるが、含有量が 0.005%未満ではその添加効果に乏しく、一方 3.0%を超えると磁束密度の低下を招くので、Mn量は 0.005〜3.0 %の範囲とする。
【0030】
Cu:0.005 〜0.3 %
Cuは、上述した被膜改善効果を得るためには、少なくとも 0.005%含有させる必要があるが、0.3 %を超えると熱間圧延時に表面割れが生じ、製品の表面性状が劣化するおそれがあるので、Cu量は 0.005〜0.3 %の範囲に限定した。
【0031】
Al:100 ppm 未満、S, Seはそれぞれ 50ppm以下
また、不純物元素であるAlは 100 ppm未満、S, Seについても 50ppm以下、好ましくは 30ppm以下に低減することが、良好に二次再結晶させる上で不可欠である。その他、Nや、窒化物形成元素であるTi, Nb, B, Ta, V等についても、それぞれ50 ppm以下に低減することが鉄損の劣化を防止し、良好な加工性を確保する上で有効である。
【0032】
以上、必須成分および抑制成分について説明したが、本発明では、その他にも以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Ni:0.005 〜1.50%、Sn:0.01〜0.50%、Sb:0.005 〜0.50%、P:0.005 〜0.50%、Cr:0.01〜1.50%のうちから選んだ少なくとも1種
Niは、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させる有用元素である。しかしながら、含有量が0.01%未満では磁気特性の向上量が小さく、一方1.50%を超えると二次再結晶が不安定になり磁気特性が劣化するので、Ni量は 0.005〜1.50%とした。
また、Sn,Sb,P, Crはそれぞれ、鉄損の向上に有用な元素であるが、いずれも上記範囲の下限値に満たないと鉄損の向上効果が小さく、一方上限量を超えると二次再結晶粒の発達が阻害されるので、それぞれSn:0.01〜0.50%,Sb:0.005 〜0.50%,P:0.005 〜0.50%,Cr:0.01〜1.5 %の範囲で含有させる必要がある。
【0033】
次に、本発明の製造工程について説明する。
上記の好適成分組成に調整した溶鋼を、転炉、電気炉などを用いる公知の方法で精錬し、必要があれば真空処理などを施したのち、通常の造塊法や連続鋳造法を用いてスラブを製造する。また、直接鋳造法を用いて 100mm以下の厚さの薄鋳片を直接製造してもよい。
スラブは、通常の方法で加熱して熱間圧延するが、鋳造後、加熱せずに直ちに熱延に供してもよい。また、薄鋳片の場合には、熱間圧延を行っても良いし、熱間圧延を省略してそのまま以後の工程に進めてもよい。
熱間圧延前のスラブ加熱温度は1250℃以下に抑えることが、熱延時に生成するスケール量を低減する上で特に望ましい。また、結晶組織の微細化および不可避的に混入するインヒビター成分の弊害を無害化して、均一な整粒一次再結晶組織を実現する意味でもスラブ加熱温度の低温化が望ましい。
【0034】
ついで、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。ゴス組織を製品板において高度に発達させるためには、熱延板焼鈍温度は 800〜1100℃の範囲が好適である。というのは、熱延板焼鈍温度が 800℃未満では熱延でのバンド組織が残留し、整粒の一次再結晶組織を実現することが困難になる結果、二次再結晶の発達が阻害され、一方熱延板焼鈍温度が1100℃を超えると、不可避的に混入するインヒビター成分が固溶し冷却時に不均一に再析出するために、整粒一次再結晶組繊を実現することが困難となり、やはり二次再結晶の発達が阻害されるからである。また、熱延板焼鈍温度が1100℃を超えると、熱延板焼鈍後の粒径が粗大化しすぎることも、整粒の一次再結晶組織を実現する上で極めて不利である。
【0035】
熱延板焼鈍後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施したのち、脱炭焼鈍を施して、Cを磁気時効の起こらない 50ppm以下好ましくは 30ppm以下まで低減する。
上記の冷間圧延において、圧延温度を 100〜250 ℃に上昇させて圧延を行うことや、冷間圧延の途中で 100〜250 ℃の範囲での時効処理を1回または複数回行うことが、ゴス組織を発達させる上で有効である。
【0036】
最終冷延後の脱炭焼鈍は、湿潤雰囲気を使用して 700〜1000℃の温度で行うことが好適である。また、脱炭焼鈍後に浸珪法によってにSi量を増加させる技術を併用してもよい。
ここに、上記した脱炭焼鈍に至るまでに、熱延板焼鈍や中間焼鈍における焼鈍温度、時間、雰囲気酸化度、さらには酸洗条件を適切に制御することによって、板厚中心に対する鋼板表面のCu濃度比を1.20以上、またSi濃度比を0.90以下に制御することが重要である
【0037】
その後、焼鈍分離剤を適用して、最終仕上焼鈍を施すことにより二次再結晶組織を発達させるとともに珪酸化物被膜を形成させる。最終仕上焼鈍は、二次再結晶発現のために 800℃以上で行う必要があるが、800 ℃までの加熱速度は磁気特性に大きな影響を与えないので任意の条件でよい。
【0038】
その後、平坦化焼鈍を施して形状を矯正する。
ついで、上記の平坦化焼鈍後、鉄損の改善を目的として、鋼板表面に張力を付与する絶縁コーティングを施すことが有利である。
さらに、公知の磁区細分化技術を適用できることはいうまでもない。
【0039】
【実施例】
実施例1
C:200ppm, Si:3.30%, Mn:0.20%, Al:25ppm, S:4ppm, Se:5ppm, N:12ppmおよびCu:0.10%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、連続鋳造後、熱間圧延し、ついで 950℃、60秒の熱延板焼鈍を施したのち、酸洗し、冷間圧延によって最終板厚:0.35mmに仕上げた。この時、熱延板焼鈍における焼鈍温度と酸素ポテンシャルおよび熱延板焼鈍後の酸洗条件を種々に変更して、板厚方向にわたり種々のCuおよびSi濃度分布を持つ最終冷延板を作製した。なお、酸洗温度は80℃、酸洗時間は60秒の一定とした。
ついで、これらを湿水素雰囲気中にて 830℃で脱炭焼鈍し、その後MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布してから1120℃まで昇温する最終仕上焼鈍を行った。
かくして得られた最終焼鈍板のフォルステライト被膜の外観と曲げ密着性について調べた結果を、CuおよびSiの板厚中心に対する鋼板表面の濃度比についてGDSを用いて調べた結果と併せて、表2に示す。
【0040】
【表2】
Figure 0004239456
【0041】
同図から明らかなように、Cu濃度比が1.20以上でかつSi濃度比が0.90以下の試料No.1, 2では、均一で良好な外観を呈し、また曲げ密着性にも優れたフォルステライト被膜をうることができた。
これに対し、熱延板焼鈍時のスケール形成が不十分であったり、その後の酸洗条件が不適切であった試料No.3〜5はいずれも、Cu濃度比やSi濃度比が適正範囲から外れたため、全体にフォステライト膜が薄く、または形成が不完全であり、被膜密着性にも劣っていた。
【0042】
実施例2
C:300ppm,Si:3.40%,Mn:0.30%,Al:40ppm,S:5ppm,Se:4ppm,N:15ppmおよびCu:0.25%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、連続鋳造後、熱間圧延し、ついで酸素ポテンシャル〔P(H2O)/P(H2)〕が0.60の雰囲気中にて1000℃, 60秒の熱延板焼鈍を施したのち、中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延によって、最終板厚:0.30mmに仕上げた。この時、中間焼鈍条件を1000℃、60秒とし、焼鈍時の酸素ポテンシャルとその後の酸洗条件を種々に変更して、板厚方向にわたり種々のCuおよびSi濃度分布を持つ最終冷延板を作製した。
ついで、これらを湿水素雰囲気中にて 840℃で脱炭焼鈍し、その後CaOを主体とする焼鈍分離剤を塗布してから1100℃まで昇温する最終仕上焼鈍を行った。
かくして得られた最終焼鈍板の珪酸化物被膜の外観と曲げ密着性について調べた結果を、CuおよびSiの板厚中心に対する鋼板表面の濃度比についてGDSを用いて調べた結果と併せて、表3に示す。
【0043】
【表3】
Figure 0004239456
【0044】
同表に示したとおり、Cu濃度比およびSi濃度比が本発明の範囲を満足する試料No.1, 2はいずれも、均一で良好な外観を呈し、また曲げ密着性にも優れた珪酸化物被膜を得ることができた。
これに対し、中間焼鈍時のスケール形成が不十分であったり、その後の酸洗が過剰となり、Cu濃度比やSi濃度比が適正範囲から外れた試料No.3〜5はいずれも、珪酸化物被膜が薄かったり、ほとんど形成されず不完全であり、また被膜密着性にも劣っていた。
【0045】
【発明の効果】
かくして、本発明によれば、インヒビターを利用せずに二次再結晶を生じさせる方法によって方向性電磁鋼板を製造する場合に、板厚中心に対する鋼板表面のCuの濃度比およびSi濃度比を適正に制御することにより、被膜外観が良好で、しかも被膜密着性に優れた珪酸化物被膜をそなえる方向性電磁鋼板を安定して得ることができる。

Claims (1)

  1. 質量%で、C:0.08%以下, Si:2.0〜8.0%、Mn:0.005〜3.0%およびCu:0.005〜0.3%を含み、Alを 100 ppm未満、S, Seをそれぞれ50ppm 以下に低減した溶鋼を用いて製造した鋼スラブを、熱間圧延し、ついで必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、ついで脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を適用して最終仕上焼鈍を施すことからなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
    脱炭焼鈍直前の鋼板について、板厚中心に対する鋼板表面のCuの濃度比を1.20以上とし、かつSiの該濃度比を0.90以下としたことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
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