JP6798474B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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本発明は、変圧器の鉄心などに使用される方向性電磁鋼板の製造方法に関し、その被膜特性と磁気特性の双方に有利な改善を図ったものである。
方向性電磁鋼板の製造に際しては、インヒビターと呼ばれる微細な析出物を使用して、最終仕上焼鈍中にゴス方位粒と呼ばれる{110}<001>方位粒を優先的に二次再結晶させることが、一般的な技術として使用されている。例えば、特許文献1には、インヒビターとしてAlN,MnSを使用する方法が、また特許文献2には、インヒビターとしてMnS,MnSeを使用する方法が開示され、いずれも工業的に実用化されている。
これらインヒビターを用いる方法は、安定して二次再結晶粒を発達させるのに有用な方法であるが、析出物を微細に分散させなければならないので、熱延前のスラブ加熱を1300℃以上の高温で行うことが必要とされる。しかしながら、スラブの高温加熱は、設備コストが嵩むことの他、熱延時に生成するスケール量も増大することから歩留りが低下し、また設備のメンテナンスが煩雑になる等の問題がある。
これに対して、インヒビターを使用しないで方向性電磁鋼板を製造する方法が、特許文献3、特許文献4、特許文献5および特許文献6に開示されている。これらの技術に共通していることは、表面エネルギーを駆動力として{110}面を優先的に成長させることを意図していることである。表面エネルギー差を有効に利用するためには、表面の寄与を大きくするために板厚を薄くすることが必然的に要求される。例えば、特許文献3に開示の技術では板厚が0.2mm以下に、また特許文献4に開示の技術では板厚が0.15mm以下に、それぞれ制限される。
さらに、表面エネルギーを利用する方法では、表面酸化層の形成を抑制して最終仕上焼鈍を行わねばならず、たとえばMgOのような焼鈍分離剤を塗布焼鈍することができないので、最終仕上焼鈍後に通常の方向性電磁鋼板と同様な酸化物被膜を形成することはできない。例えば、珪酸化物被膜は、焼鈍分離剤としてMgOを主成分として塗布した時に形成される被膜であるが、この被膜は鋼板表面に張力を与えるだけでなく、その上にさらに塗布焼き付けられるリン酸塩を主体とする絶縁張力コーティングの密着性を確保する機能を担っている。従って、かような珪酸化物被膜がない場合には鉄損は大幅に劣化する。
この点、珪酸化物被膜を形成し、かつインヒビター成分を使用しないで、熱延圧下率を30%以上、熱延板厚を1.5mm以下とすることにより二次再結晶させる技術が特許文献7に、さらにゴス方位への二次再結晶粒の方位集積を行う技術が特許文献8に開示されており、表面酸化被膜がないために鉄損が劣るという問題点が解決されつつある。しかしながら、上記の方法では、インヒビターを利用した従来の方向性電磁鋼板と比較すると、良好な外観と十分な密着性を有する珪酸化物被膜は形成できていない。
特公昭40−15644号公報 特公昭51−13469号公報 特開昭64−55339号公報 特開平2−57635号公報 特開平7−76732号公報 特開平7−197126号公報 特開平11−61263号公報 特開2000−129356号公報 特許第4239456号公報
インヒビターとして利用される代表的な析出物として、MnS,MnSe,AlN等が挙げられるが、これらの成分を低減した場合の被膜形成に及ぼす影響について調査を行ったところ、特にS,Seを含有しない電磁鋼板では、脱炭焼鈍時に形成されるSiO2を主体とするサブスケ−ルの形態が著しく変化することが判明した。一般に、S,Seには内部酸化を抑制する効果があるため、通常のインヒビターを利用する方向性電磁鋼板に含まれる程度のSやSeが含有されていると、サブスケールは鋼板内部への酸化進行が適度に抑制され、比較的薄くて緻密な被膜となる。しかしながら、SやSeが含有されていない場合にはSiO2が鋼板内部へ樹状成長を主体とした生成挙動を呈し、その後に焼鈍分離剤との反応により形成された珪酸化物被膜には緻密さがなく、十分な密着性を示さない。
Alについても同様で、Siの替わりにAlが酸化されることによって相対的にSiO2の形成を抑制する効果があると考えられ、従ってAl濃度を極端に低減するとSやSeを低減したときと同様に脱炭焼鈍時のサブスケールの形態が劣化する。
上記課題に対して、特許文献9には、サブスケールの形成に重要な表面近傍のCu濃度を高めることで、サブスケールが樹状を主体とした形態から球状あるいはラメラ状を主体とした薄くて緻密な被膜に改善できる技術が開示されている。しかしながら、同時にSiの表面での濃度を低下させSiO2の急速な成長を抑制することが必須となっているが、Siの表面濃度低下を制御することが難しく、低下させすぎると磁気特性が劣化してしまうという問題があった。
発明者らは、表面近傍のSi濃度の制御に代わる、サブスケールの緻密性を上げて密着性に優れる被膜を形成する新たな添加元素について探索したところ、PとSnの添加が有効であることを見出した。
両者はともに偏析元素として知られているが、サブスケールの緻密性を改善させる効果だけでなく、磁気特性の安定化にも有効であることが明らかとなった。
方向性電磁鋼板へのPやSnの添加については、AlNやMnSe、MnS等のインヒビターを補強する手段として鋼中へ添加する手法が多数開示されているが、いずれもインヒビター成分を含む鋼成分を前提としたものであり、インヒビター成分を含まない電磁鋼板の被膜形成の改善手段としては何ら検討されていない。
PやSnの添加によりサブスケールの緻密性が改善するだけでなく、磁気特性の安定化にも有効であるメカニズムは明らかではないが、インヒビターの補強というよりは、サブスケールの緻密化を通して、粒界エネルギーを活用する本発明の最終仕上焼鈍中の二次再結晶において、粒界酸化や不可避的に起こる雰囲気ガスからの窒化による窒化物形成により粒界移動を妨げる影響を抑制しているのではないかと推定している。
また、Mnは、従来、方向性電磁鋼板の二次再結晶を制御するMnSeやMnS等のインヒビター形成元素として添加されていたが、インヒビター成分を含まない本発明においてはその役割はなく、主にSiを多量に含む電磁鋼板の加工性を改善するために必要である。
しかしながら、本発明のようにSやSeを含まない成分系では、SやSeと結合していないフリーなMnが存在すると、脱炭焼鈍においてサブスケールの最表面に形成されるFeとSiの複合酸化物(ファイアライト)のFeがMnと一部置換したFe、MnとSiの複合酸化物が同時に形成される。
このようなMn含有複合酸化物の磁気特性に及ぼす影響は明らかではないが、Mnと置換していないFeとSiの複合酸化物(ファイアライト)のみの場合と比較して、酸化が促進して表面酸化量が増加し、インヒビター成分を含まない成分系の二次再結晶を不安定にさせる傾向が見られた。
したがって、熱間圧延等の大きな加工を考慮するとMnの添加は必要であるが、サブスケール形成に影響する表面近傍ではできるだけ少ない方が望ましい。
本発明は、上述したように、鋼中へのPやSn添加と脱炭焼鈍直前における鋼板表面のCu濃度およびMn濃度が、脱炭焼鈍時に形成されるサブスケールの形態や酸化量に及ぼす影響について研究を進めた末に、完成されたものである。
すなわち、本発明は、質量%で、C:0.08%以下,Si:2.0〜8.0%、Mn:0.005〜2.0%およびCu:0.005〜0.3%を含み、かつSn:0.01〜0.20%およびP:0.02〜0.40%の少なくとも1種を含み、さらにAlを100ppm未満、S,Seをそれぞれ50ppm以下に低減した溶鋼を鋳造して得た鋼スラブを、熱間圧延し、ついで必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、ついで脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を適用して最終仕上焼鈍を施すことからなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
上記脱炭焼鈍直前の鋼板について、板厚中心に対する鋼板表面のCuの濃度比を1.4以上、かつ板厚中心に対する鋼板表面のMnの濃度比を0.80以下とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法である。
本発明によれば、インヒビターを利用せずに二次再結晶を生じさせる方法によって方向性電磁鋼板を製造する場合に、Pおよび/またはSnを添加し、かつ板厚中心に対する鋼板表面のCuの濃度比およびMn濃度比を適正に制御することにより、磁気特性に優れ、かつ被膜外観が良好で被膜密着性に優れた珪酸化物被膜をそなえる方向性電磁鋼板を安定して得ることができる。
以下、本発明を由来するに至った実験結果について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%(mass%)を意味するものとする。
C:300ppm、Si:3.40%、Mn:0.25%、Al:50ppm、S:5ppm、Se:5ppm、N:30ppmおよびCu:0.04%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブ(鋼種A)と、これにP:0.04%を添加した鋼スラブ(鋼種B)をそれぞれ、連続鋳造後、1150℃に加熱したのち、熱間圧延によって2.2mm厚の熱延板とし、ついで1000℃で熱延板焼鈍を施したのち、中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延によって0.23mmの最終板厚に仕上げた。この時、中間焼鈍の雰囲気酸化性〔P(H2O)/P(H2)〕は0.35の一定とする一方、焼鈍時間とその後の酸洗条件を種々に変更することにより、板厚方向にわたってCuとMnが濃度分布を持つ最終冷延板を作製した。
ついで、これらを830℃の湿水素雰囲気中にて脱炭焼鈍し、その後MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布後、900℃まで昇温し、900℃一定として20時間保定したのち、1120℃まで昇温して純化を行う最終仕上焼鈍を行った。
かくして得られた最終焼鈍板の磁束密度B8(T)とフォルステライト被膜の外観と曲げ密着性について調べた結果を、CuおよびMnの板厚中心に対する鋼板表面の濃度比を測定した結果と併せて表1に示す。
ここに、CuやMnの濃度比は、GDS(Glow Discharge Spectrometer)を用いて板厚方向の強度分布を調べ、板厚中心および表面における測定強度からバックグラウンドを除いた値の比で評価した。なお、測定法としては、CuやMnの濃度を評価できる測定法であれば、GDSに限らず、SIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)等の物理分析やその他の化学分析であってもかまわない。
また、曲げ密着性については、種々の径を持つ丸棒に試料を沿わせて曲げを行い、被膜がはく離しない最小直径で評価した。この最小直径が25mm以下であれば、曲げ密着性に優れていると言える。
Figure 0006798474
同表に示したとおり、Pを添加し(鋼種B)、Cuの濃度比を1.40以上、Mnの濃度比を0.80以下とした場合に、磁束密度が高く、被膜外観が良好でしかも曲げ密着性に優れたフォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板を得ることができた。
これに対し、Pを添加しない場合(鋼種A)や、Pを添加してもCuやMnの濃度比が適正範囲を満足しない場合には、良好な磁束密度や外観が得られなかったり、十分な曲げ密着性が得られなかったりした。
ここに、Mnの濃度分布は主に、中間焼鈍時にSiと同時に酸化されるMnを含む表面酸化物を形成させて表面近傍のMnを消費させたのち、形成させた表面酸化物を酸洗もしくは研削等で除去することにより、制御が可能である。また、上記した実験例のような焼鈍時間の調整だけでなく、焼鈍雰囲気の酸化性や焼鈍温度を変更することによっても制御可能で、中間焼鈍を行わない場合には、熱延板焼鈍時にMn濃度を調整すればよい。
一方、表面におけるCuの濃化は、上記焼鈍後に行われる酸洗条件が重要である。すなわち、Cuは酸化力のある硝酸等により溶解するが、酸化力の弱い塩酸やリン酸等で酸洗処理を行うと、Cuは溶解せずにFeのみが溶解するため、結果として表面におけるCuの濃度を相対的に高めることができる。但し、酸洗時間が長かったり、濃度が高かったりした場合には、Cuの濃度上昇には有利であるが、焼鈍時に形成された表面の低Mn層が酸洗によって減少してしまうので、適切な酸濃度や液温度、処理時間を選択すべきである。また、脱炭焼鈍前に、電気メッキや無電解メッキなどの追加処理により、Cuを密着させて、表面濃度を高めることも有効である。
本発明において、インヒビター成分を含まない成分系において二次再結晶が発現する理由は、必ずしも明らかではないが、以下のように考えている。
一次再結晶組織において、ゴス方位粒と方位差角が20〜45°であるいわゆる高エネルギー粒界が二次再結晶において重要な役割を果たしていることがActa Material 45巻(1997)1285頁に報告されている。
すなわち、方向性電磁鋼板の二次再結晶直前の状態である一次再結晶組織を解析し、様々な結晶方位を持つ各々の結晶粒の周囲の粒界について、粒界方位差角が20〜45°である粒界の全体に対する割合を調査したところ、ゴス方位が最も高い頻度を持つことが解明された。方位差角が20〜45°の粒界は、C. G. Dunnらによる実験データ(AIME Transaction 188巻(1949)368 頁)によれば、高エネルギー粒界である。この高エネルギー粒界は粒界内の自由空間が大きく乱雑な構造をしている。粒界拡散は粒界を通じて原子が移動する過程であるので、粒界中の自由空間の大きい、高エネルギー粒界の方が粒界拡散は速い。二次再結晶は、インヒビターと呼ばれる析出物の拡散律速による成長に伴って発現することが知られている。高エネルギー粒界上の析出物は、最終仕上焼鈍中に優先的に粗大化が進行するので、優先的にピン止めがはずれて粒界移動を開始し、ゴス粒が成長する機構が示された。
発明者らは、この研究をさらに発展させて、ゴス方位粒の二次再結晶の本質的要因は、一次再結晶組織中の高エネルギー粒界の分布状態にあり、インヒビターの役割は、高エネルギー粒界と他の粒界の移動速度差を生じさせることにあることを見い出した。従って、この理論に従えば、インヒビターを用いなくとも、粒界の移動速度差を生じさせることができれば、二次再結晶させることが可能となる。
粒界移動速度差を利用して安定した二次再結晶を可能とするためには、一次再結晶組織をできる限り均一な粒径分布に保つことが肝要である。というのは、均一な粒径分布が保たれている場合には、ゴス方位粒以外の結晶粒は粒界移動速度の小さい低エネルギー粒界の頻度が大きいため、粒成長が抑制されている状態、いわゆるTexture Inhibition効果の発揮により、粒界移動速度が大きい高エネルギー粒界の頻度が最大であるゴス方位粒の選択的粒成長としての二次再結晶が進行するからである。
これに対し、粒径分布が一様でない場合には、隣接する結晶粒同士の粒径差を駆動力とする正常粒成長が起こるため、粒界移動速度差と異なる要因で成長する結晶粒が選択され、Texture Inhibition効果が発揮されずに、ゴス方位粒の選択的粒成長が起こらなくなる。
工業生産の上では、インヒビター成分を完全に除去することは実用上困難なので、不可避的に含有されてしまうが、熱延加熱温度が高い場合には、加熱後に固溶した微量不純物としてのインヒビター成分が熱延時に不均一に微細析出する結果、粒界移動が局所的に抑制されて粒径分布が極めて不均一になり、二次再結晶の発達が阻害される。そのためインヒビター成分を低減することが第一であるが、不可避的に混入する微量のインヒビター成分の微細析出を回避して無害化するためには、熱延前の加熱温度を圧延可能な範囲で、できる限り低めに抑えることが有効である。
本発明において、PやSn添加が二次再結晶の安定化に効果を発揮する理由は定かではないが、表面近傍に濃化したCuと同様、サブスケールの緻密性の向上により表面からの追加酸化や窒化を抑制し、粒界酸化や窒化物形成により、粒径分布の不均一化や方位差角に基づく粒界エネルギーの序列の乱れを抑えることで、インヒビター成分のない鋼板の二次再結晶を高位に安定させていると考えている。
次に、本発明において、素材であるスラブの成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。
C:0.08%以下
C量が0.08%を超えると、脱炭焼鈍において、磁気時効の起こらない50ppm以下まで低減することが困難になるので、C量は0.08%以下に制限した。
Si:2.0〜8.0%
Siは、鋼の電気抵抗を増大し鉄損を低減するのに有用な元素であるので、2.0%以上含有させる。しかしながら、含有量が8.0%を超えると加工性が著しく低下して冷間圧延が困難となる。そこで、Si量は2.0〜8.0%の範囲に限定した。
Mn:0.005〜2.0%
Mnは、熱間加工性を改善するために有用な元素であるが、含有量が0.005%未満ではその添加効果に乏しく、一方、一般的には3.0%を超えると磁束密度の低下を招く。ただし、脱炭焼鈍における酸化抑制効果をあげるためには、表面での低減効果を考慮しても、上限は2.0%とする必要がある。そこで、Mn量は0.005〜2.0%の範囲とする。
Cu:0.005〜0.3%
Cuは、上述した被膜改善効果を得るためには、少なくとも0.005%含有させる必要があるが、0.3%を超えると熱間圧延時に表面割れが生じ、製品の表面性状が劣化するおそれがあるので、Cu量は0.005〜0.3%の範囲に限定した。
Al:100ppm未満、S,Se:それぞれ50ppm以下
不純物元素であるAlは100ppm未満、S,Seについては50ppm以下好ましくは30ppm以下に低減することが、良好に二次再結晶を発現させる上で不可欠である。
その他、Nや窒化物形成元素であるTi,B,Ta,V等についても、それぞれ50ppm以下に低減することが鉄損の劣化を防止し、良好な加工性を確保する上で有効である。
Sn:0.01〜0.20%、P:0.02〜0.40%
SnとPは二次再結晶を安定して発現させるために、少なくともそれぞれ0.01%、0.02%含有させる必要があるが、それぞれ0.20%、0.40%を超えるとむしろサブスケール品質の劣化を招く。SnやPの効果は従来、インヒビター成分の補強と考えられてきたが、本発明においては最終仕上焼鈍の長時間保定と合わせて、インヒビターレス成分系の粒界エネルギー差を有効に活用するために添加されており、従来知見とは異なる効果を発現させたものである。
以上、必須成分および抑制成分について説明したが、本発明では、その他にも以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Ni:0.005〜1.50%、Sb:0.005〜0.50%およびCr:0.01〜1.50%のうちから選んだ少なくとも1種
Niは、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させる有用元素である。しかしながら、含有量が0.005%未満では磁気特性の向上量が小さく、一方1.50%を超えると二次再結晶が不安定になり磁気特性が劣化するので、Ni量は0.005〜1.50%とした。
また、Sb,Crはそれぞれ、鉄損の向上に有用な元素であるが、いずれも上記範囲の下限値に満たないと鉄損の向上効果が小さく、一方上限量を超えると二次再結晶粒の発達が阻害されるので、それぞれSb:0.005〜0.50%、Cr:0.01〜1.50%の範囲で含有させるものとした。
次に、本発明の製造工程について説明する。
上記の好適成分組成に調整した溶鋼を、転炉、電気炉などを用いる公知の方法で精錬し、必要があれば真空処理などを施したのち、通常の造塊法や連続鋳造法を用いてスラブを製造する。また、直接鋳造法を用いて100mm以下の厚さの薄鋳片を直接製造してもよい。スラブは、通常の方法で加熱して熱間圧延するが、鋳造後、加熱せずに直ちに熱延に供してもよい。また、薄鋳片の場合には、熱間圧延を行っても良いし、熱間圧延を省略してそのまま以後の工程に進めても良い。
熱間圧延前のスラブ加熱温度は1250℃以下に抑えることが、熱延時に生成するスケール量を低減する上で特に望ましい。また、結晶組織の微細化および不可避的に混入するインヒビター成分の弊害を無害化して、均一な整粒一次再結晶組織を実現する意味でもスラブ加熱温度の低温化が望ましい。
ついで、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。ゴス組織を製品板において高度に発達させるためには、熱延板焼鈍温度は800〜1100℃の範囲が好適である。というのは、熱延板焼鈍温度が800℃未満では熱延でのバンド組織が残留し、整粒の一次再結晶組織を実現することが困難になる結果、二次再結晶の発達が阻害される。一方、熱延板焼鈍温度が1100℃を超えると、不可避的に混入するインヒビター成分が固溶し、冷却時に不均一に再析出するために、整粒一次再結晶組織を実現することが困難となり、やはり二次再結晶の発達が阻害される。また、熱延板焼鈍温度が1100℃を超えると、熱延板焼鈍後の粒径が粗大化しすぎることも、整粒の一次再結晶組織を実現する上で極めて不利である。
熱延板焼鈍後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施したのち、脱炭焼鈍を施して、Cを磁気時効の起こらない50ppm以下好ましくは30ppm以下まで低減する。この冷間圧延において、圧延温度を100〜250℃に上昇させて圧延を行うことや、冷間圧延の途中で100〜250℃の範囲での時効処理を1回または複数回行うことは、ゴス組織を発達させる上で有効である。
最終冷延後の脱炭焼鈍は、湿潤雰囲気を使用して700〜1000℃の温度で行うことが好適である。また、脱炭焼鈍後に浸珪法によってSi量を増加させる技術を併用してもよい。
本発明では、上記した脱炭焼鈍に至るまでに、熱延板焼鈍や中間焼鈍における焼鈍温度、時間、雰囲気酸化性、さらには酸洗条件を適切に制御することによって、板厚中心に対する鋼板表面のCu濃度比を1.40以上、かつMn濃度比を0.80以下に制御することが重要である。
その後、焼鈍分離剤を適用して、最終仕上焼鈍を施すことにより二次再結晶組織を発達させるとともに珪酸化物被膜を形成させる。最終仕上焼鈍は、二次再結晶発現のために800℃以上で行う必要があるが、800℃までの加熱速度は磁気特性に大きな影響を与えないので任意の条件でよい。その後、必要に応じてさらに温度を高めて純化処理を行う。インヒビターなし成分系ではあるが、Si以外の元素は磁気特性には有害であるため、可能な限り低減した方が良い。
その後、平坦化焼鈍を施して形状を矯正する。
ついで、上記の平坦化焼鈍後、鉄損の改善を目的として、鋼板表面に張力を付与する絶縁コーティングを施すことが有利である。さらに、公知の磁区細分化技術を適用できることはいうまでもない。
実施例1
C:350ppm,Si:3.40%,Mn:0.30%,Al:50ppm,S:10ppm,Se:5ppm,N:20ppmおよびCu:0.25%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブ(鋼種C)と、これにSn:0.03%を添加した鋼スラブ(鋼種D)をそれぞれ、連続鋳造後、熱間圧延して2.4mm厚とした後、1000℃で,雰囲気酸化性P(H2O)/P(H2)が0.50の雰囲気中にて60秒の熱延板焼鈍を施し、ついで中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延によって最終板厚:0.23mmに仕上げた。この時、中間焼鈍条件を1050℃、60秒とし、焼鈍時の酸素ポテンシャル〔P(H2O)/P(H2)〕とその後の酸洗条件を種々に変更して、板厚方向にわたり種々のCuおよびMn濃度分布を持つ最終冷延板を作製した。
ついで、これらを湿水素雰囲気中にて840℃で脱炭焼鈍し、その後MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布してから1100℃まで昇温する最終仕上焼鈍を行った。
かくして得られた最終焼鈍板の珪酸化物被膜の外観と曲げ密着性について調べた結果を、CuおよびMnの板厚中心に対する鋼板表面の濃度比についてGDSを用いて調べた結果と併せて、表2に示す。
Figure 0006798474
同表に示したとおり、Sn添加の鋼種DでかつCu濃度比およびMn濃度比が本発明の範囲を満足する試料No.2、6はいずれも、磁束密度が高く、また均一で良好な外観を呈し、さらに曲げ密着性にも優れた珪酸化物被膜を得ることができた。
これに対し、中間焼鈍時のスケール形成が不十分であったり、その後の酸洗が過剰となり、Cu濃度比やMn濃度比が適正範囲から外れた試料No.3、7、8や、Snが添加されていない鋼種Cの試料No.1、4、5はいずれも、磁束密度が低く、珪酸化物被膜が薄かったり、ほとんど形成されず不完全であり、また被膜密着性にも劣っていた。
実施例2
C:400ppm,Si:3.30%,Mn:0.20%,Al:25ppm,S:20ppm,Se:5ppm,N:10ppm, Cu:0.10%およびP:0.06%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、連続鋳造後、熱間圧延して2.4mm厚とした後、950℃、60秒の熱延板焼鈍を施し、ついで酸洗後、冷間圧延によって最終板厚:0.27mmに仕上げた。この時、熱延板焼鈍における焼鈍温度と雰囲気酸化性P(H2O)/P(H2)および熱延板焼鈍後の酸洗条件を種々に変更して、板厚方向にCuおよびMn濃度分布を変化させた最終冷延板を作製した。なお、酸洗温度は80℃、酸洗時間は30秒の一定とした。
ついで、これらを湿水素雰囲気中にて830℃で脱炭焼鈍を施す前に、一部の鋼板についてはグルコン酸銅水溶液に浸漬して、表面にCuを電着する処理を行った。その後MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布してから1120℃まで昇温する最終仕上焼鈍を行った。
かくして得られた最終焼鈍板のフォルステライト被膜の外観と曲げ密着性について調べた結果を、脱炭焼鈍前の鋼板からサンプル採取してCuおよびMnの板厚中心に対する鋼板表面の濃度比をGDSを用いて測定した結果と併せて、表3に示す。
Figure 0006798474
同表から明らかなように、Cu電着により表面のCu濃度を高めた条件も含め、Cu濃度比が1.40以上でかつMn濃度比が0.80以下の試料No.1、4、6では、磁束密度が高く、また均一で良好な外観を呈し、さらに曲げ密着性にも優れたフォルステライト被膜を得ることができた。
これに対し、熱延板焼鈍時のスケール形成が不十分であったり、その後の酸洗条件が不適切であった試料No.2、3、5、7はいずれもCu濃度比やMn濃度比が適正範囲から外れたため、全体にフォステライト膜が薄く、または形成が不完全となり、磁束密度が低く、被膜密着性にも劣っていた。

Claims (1)

  1. 質量%で、C:0.08%以下,Si:2.0〜8.0%、Mn:0.005〜2.0%およびCu:0.005〜0.3%を含み、かつSn:0.01〜0.20%およびP:0.02〜0.40%の少なくとも1種を含み、さらにAlを100ppm未満、S,Seをそれぞれ50ppm以下に低減し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼を鋳造して得た鋼スラブを、熱間圧延し、ついで必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、ついで脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を適用して最終仕上焼鈍を施すことからなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
    上記脱炭焼鈍直前の鋼板について、板厚中心に対する鋼板表面のCuの濃度比を1.4以上、かつ板厚中心に対する鋼板表面のMnの濃度比を0.80以下とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。


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