JP6988845B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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[1]質量%で、C:0.08%以下、Si:2.0%以上8.0%以下、Mn:0.005%以上0.5%以下、Cr:0.01%以上1.50%以下、Al:0.010%以上0.065%以下、N:0.005%以上0.012%以下と、Sb:0.005%以上0.50%以下、Cu:0.01%以上1.50%以下およびP:0.005%以上0.50%以下のうちから選択される1種以上と、必要に応じてCr:0.01%以上1.50%以下とを、下記(1)式を満足する範囲で含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブに、熱間圧延を施して熱延鋼板とし、該熱延鋼板に、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して冷延鋼板とし、該冷延鋼板に、一次再結晶焼鈍を施した後に、焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上げ焼鈍を施す、方向性電磁鋼板の製造方法において、前記一次再結晶焼鈍における500℃から700℃までの平均昇温速度T(℃/s)が80℃/s以上であり、かつTとCr、Mn、及びPの含有量とが下記(2)式を満足する方向性電磁鋼板の製造方法。
記
1≦(4〔%Sb〕+〔%Cu〕+〔%P〕)/(〔%Cr〕+1/5〔%Mn〕)≦7・・・(1)式
(〔%Cr〕+1/3〔%Mn〕+〔%P〕)≧0.0002×T+0.07・・・(2)式
ただし、〔%M〕は、M元素の含有量(質量%)を示し、M元素を含有しないときは0とする。
Cは、一次再結晶時の集合組織を改善するために有用な元素であるが、C含有量が0.08%を超えると、一次再結晶時の集合組織の劣化を招くので、C含有量の上限を0.08%とする。磁気特性の観点からは、C含有量を0.01%以上0.06%以下とすることが好ましい。なお、要求される磁気特性のレベルがさほど高くない場合には、一次再結晶焼鈍における脱炭を省略または簡略化するために、C含有量を0.01%以下としてもよい。
Siは、電気抵抗を高めることにより鉄損を改善するために有用な元素であるが、Si含有量が8.0%を超えると冷間圧延性が著しく劣化するので、Si含有量の上限を8.0%とする。また、Siは、窒化物を形成する元素として機能させる必要があるため、Si含有量の下限を2.0%とする。鉄損の観点からは、Si含有量を2.0%以上4.5%以下とすることが好ましい。
Mnは、製造時における熱間加工性を向上させる効果があるが、Mn含有量が0.5%を超えると、一次再結晶時の集合組織が悪化して磁気特性の劣化を招くので、Mn含有量の上限を0.5%とする。また、Mn含有量が0.005%未満では熱間加工性を向上させる効果が得られないので、Mn含有量の下限を0.005%とする。
AlおよびNは、二次再結晶に必要なインヒビターであるAlNを構成する元素である。Al含有量およびN含有量が上述した下限に満たないとインヒビター効果が得られない。一方、Al含有量およびN含有量が上述した上限を超えると、析出物の分散状態が不均一化し、やはりインヒビター効果が得られない。そのため、Al含有量を0.010%以上0.065%以下とし、N含有量を0.005%以上0.012%以下とする。なお、スラブ加熱により固溶させるために必要な温度が高温になるため、Al含有量の上限を0.040%とすることが好ましい。
Sbは、鋼板の過剰な酸化を抑制する働きがあり、かつ二次再結晶焼鈍時には、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して、磁気特性を効果的に向上させる働きがある。そのため、Sb含有量の下限を0.005%とする。一方、Sb含有量が0.50%を超えると、冷間圧延性が劣化するおそれがあるので、Sb含有量の上限を0.50%とする。冷間圧延性を劣化させないためには、Sb含有量の上限を0.10%とすることが好ましい。
Cuは、Sbと同様、鋼板の過剰な酸化を抑制する働きがあり、二次再結晶焼鈍時に、鋼板の酸化を抑制することにより、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して、磁気特性を効果的に向上させる働きがある。そのため、Cu含有量の下限を0.01%とする。一方、Cu含有量が1.50%を超えると、熱間圧延性の劣化を招くおそれがあるので、Cu含有量の上限を1.50%とする。
Pは、一次再結晶焼鈍時におけるサブスケールの形成を介して、フォルステライト被膜の形成を安定化させる働きがある。そのため、P含有量の下限を0.005%とする。一方、P含有量が0.50%を超えると、冷間圧延性が劣化するおそれがあるので、P含有量の上限を0.50%とし、好ましくは0.10%以下とする。
Crは、一次再結晶焼鈍時におけるサブスケールの形成を介して、フォルステライト被膜の形成を安定化させる働きがあるので、Cr含有量の下限を0.01%とする。一方、Cr含有量が1.50%を超えると二次再結晶が困難となり、磁気特性が劣化するので、Cr含有量の上限を1.50%とする。
1≦(4〔%Sb〕+〔%Cu〕+〔%P〕)/(〔%Cr〕+1/5〔%Mn〕)≦7・・・(1)式
ただし、〔%M〕は、M元素の含有量(質量%)を示し、M元素を含有しないときは0とする。
上記(1)式を満足することより、Mn(Crを含有する場合は、CrおよびMn)が有する過剰な酸化促進の効果と、Sb、CuまたはPが有する酸化抑制の効果とをバランスさせることができる。その結果、被膜特性の改善効果を得ることができる。
S含有量やSe含有量が0.005%以上であれば、十分なインヒビター効果が得られる。一方、S含有量やSe含有量が0.03%以下であれば、析出物の分散状態が不均一化するおそれもなく、十分なインヒビター効果が得られる。
Niは、熱延板組織の均一性を高めることにより、磁気特性を改善する働きがあり、そのためには0.005%以上含有させることが好ましい。なお、Ni含有量が1.50%以下であれば、二次再結晶が困難となるおそれもなく、磁気特性が劣化することもない。
Snは、二次再結晶焼鈍中の鋼板の窒化や酸化を抑制し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して、磁気特性を向上させる働きがあり、そのためには0.01%以上含有させることが好ましい。なお、Sn含有量が0.50%以下であれば、冷間圧延性が劣化するおそれもない。
NbおよびMoは、スラブ加熱時の温度変化による割れの抑制などを介して、熱延後のヘゲを抑制する働きがあり、そのためには、NbやMoを上述した下限以上で含有させることが好ましい。なお、Nb含有量やMo含有量が上述した上限以下であれば、炭化物や窒化物を形成するなどして最終製品まで残留した際に、鉄損を劣化させるおそれもない。
Biは、磁気特性の改善に有利な元素であり、そのためには0.0005%以上含有させることが好ましい。なお、Bi含有量が0.05%以下であれば、フォルステライト被膜の形成が阻害されるおそれもない。
上述した成分組成を有する鋼スラブを、再加熱することなく、あるいは再加熱したのち、熱間圧延に供して熱延鋼板とする。なお、鋼スラブを再加熱する場合には、再加熱温度を1200℃以上とすることが好ましい。再加熱の目的は、インヒビターを完全固溶させるためであり、Alを0.010%以上含有する系では、1200℃以上の再加熱が必要になる。再加熱温度の上限は、特に限定されないが、1450℃以下であれば、鋼スラブの形状を保つことができる。
(〔%Cr〕+1/3〔%Mn〕+〔%P〕)≧0.0002×T+0.07・・・(2)式
ただし、〔%M〕は、M元素の含有量(質量%)を示し、M元素を含有しないときは0とする。
磁気特性を向上させる観点からは、一次再結晶焼鈍時に急速加熱を行うことが好ましいが、急速加熱を行うと一次再結晶焼鈍後に形成される酸化被膜がデンドライト化されやすくなり、優れた磁気特性と被膜特性とを両立させることができない。しかしながら、本発明では、上記(1)式に加えて、上記(2)式を満足することにより、一次再結晶焼鈍時に急速加熱を行っても、酸化被膜のデンドライト化を抑制することができる結果、優れた磁気特性と被膜特性とを両立させることができる。なお、本明細書において、「温度」は、鋼板の表面温度を基準とする。また、平均昇温速度は、鋼板の表面温度を基に次のとおりに計算して得られる値とする。例えば、500℃から700℃までの平均昇温速度は、(700℃-500℃)/(500℃から700℃までの昇温時間(s))により算出される。
また、二次再結晶をより有利に行うためには、二次再結晶温度近傍で等温保持することが好ましい。具体的には、鋼板が800℃以上1000℃以下となる温度域において、鋼板に生じる温度変化が−5℃/h以上2℃/h以下となる時間を30時間以上とすればよい。ただし、このような効果は、昇温速度を緩やかにするなどによっても得られるため、必ずしも等温保持が必要なわけではない。
なお、Alを0.01%以上含有する場合、二次再結晶温度が800℃未満になることはほとんど認められない。また、インヒビターの効果が強すぎる場合、二次再結晶温度が1000℃を超える場合があるが、このような場合は、デンドライト状にならないように制御したサブスケールの形態もすでに変化してしまっているため、本発明の効果が得られる状態を保つことができない。このように、二次再結晶に有利な800℃〜1000℃の温度域で長時間の保持を行うと、浸窒(窒化)に寄与する時間も延長してしまうが、本発明によればこの問題は解消される。
本発明によれば、N2を100vol%含有する雰囲気下にて、二次再結晶温度近傍温度で30時間以上の均熱処理を行っても、二次再結晶時までの窒素増量を5質量ppm以下に抑制することが可能となり、磁気特性の劣化を抑制することができる。
表1に示す成分組成を有する鋼スラブを、1350℃に加熱後、熱間圧延して、板厚2.4mmの熱延鋼板とした。その後、900℃、60秒の熱延板焼鈍を施してから、酸洗し、板厚1.5mmまで冷間圧延した後、1000℃、60秒の中間焼鈍を行った。その後、板厚0.27mmまで冷延圧延を行って、冷延鋼板を得た。得られた圧延鋼板から試験片を切り出し、実験設備にて500℃から700℃までの平均昇温速度Tを表1に示す条件として、各試験片に誘導加熱処理した後、続けて840℃で2分間均熱する一次再結晶焼鈍を施した。一次再結晶焼鈍は、全工程でH2:50vol%、N2:50vol%、露点55℃の湿潤雰囲気下で行い、同時に脱炭も行った。得られた脱炭焼鈍板の表面に、MgO:100重量部に対して3重量部相当のTiO2を添加した焼鈍分離剤を塗布した。
表1のNo.9の鋼種から得られた冷延鋼板の中央部から、100mm×400mmの試験片を複数採取し、実験設備にて、一次再結晶と脱炭を兼ねた焼鈍を行なった。一次再結晶焼鈍における500℃から700℃までの昇温速度は250℃/sで固定し、H2濃度:50vol%かつ露点:55℃の雰囲気下にて、700℃から800℃の温度域における滞留時間を3秒から10秒まで変更した。また、滞留時間が7秒となる条件下で、H2濃度および露点を表2のように変更した。得られた脱炭焼鈍板の表面に、MgOを主成分としTiO2を5%含有する焼鈍分離剤を水スラリー状にして、塗布および乾燥して、焼き付けて、二次再結晶焼鈍を行った。二次再結晶焼鈍は800℃から900℃まで20時間かけて昇温したのち、900℃±7℃となる温度域にて40時間の均熱処理を行い、その後、鋼板中のインヒビター成分を除去するために1200℃まで昇温した。なお、二次再結晶焼鈍は、最初の昇温から900℃±7℃における均熱処理の終了までをN2:100vol%の雰囲気とし、それ以降はH2を含む雰囲気とした。続いて、リン酸塩系の絶縁張力コーティングの塗布焼付けた。得られた鋼板はいずれも、磁束密度(B8)が1.92T近傍の磁束密度(B8)および0.9W/kg以下の鉄損(W17/50)を有し、優れた磁気特性を示していた。その後、実施例1と同様、被膜特性を評価した。評価結果を図1および表2に示す。
表1に記載のNo.12の鋼種から得られた鋼スラブを実験設備にて再溶解し、表3に示す成分を添加して、真空鋼塊を作製した。得られた真空鋼塊を1400℃に加熱した後に、熱間圧延を行い、板厚2.3mmの熱延鋼板とした。その後、1050℃、70秒の熱延板焼鈍を施した。その後、板厚0.29mmまで冷間圧延し、500℃から700℃までの平均昇温速度Tを250℃/sとする一次再結晶焼鈍を施した。得られた鋼板の表面に、主成分をMgOとする焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上げ焼鈍を行った。最終仕上げ焼鈍は、880℃までの昇温を60時間かけて行い、引き続き880℃±5℃で30時間均熱保持したのち、1150℃±5℃で8時間均熱保持した。なお、880℃±5℃の均熱保持が終了するまで、N2:H2=75:25となる雰囲気とした。また、1150℃±5℃での均熱保持の際は、H2:100vol%の雰囲気とした。最終仕上げ焼鈍後、リン酸マグネシウムを主成分とする絶縁コーティングを塗布し、800℃で焼き付けた。得られた鋼板について、鉄損(W17/50)を測定するとともに、実施例1,2と同様、被膜特性を評価した。評価結果を表3に示す。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.08%以下、Si:2.0%以上8.0%以下、Mn:0.005%以上0.5%以下、Al:0.010%以上0.065%以下、N:0.005%以上0.012%以下と、Sb:0.005%以上0.50%以下、Cu:0.01%以上1.50%以下およびP:0.005%以上0.50%以下のうちから選択される1種以上と、必要に応じてCr:0.01%以上1.50%以下とを、下記(1)式を満足する範囲で含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブに、熱間圧延を施して熱延鋼板とし、該熱延鋼板に、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して冷延鋼板とし、該冷延鋼板に、一次再結晶焼鈍を施した後に、MgOを含有する焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上げ焼鈍を施す、方向性電磁鋼板の製造方法において、前記一次再結晶焼鈍における500℃から700℃までの平均昇温速度T(℃/s)が80℃/s以上であり、かつTとCr、Mn、及びPの含有量とが下記(2)式を満足し、二次再結晶焼鈍中、鋼板が1000℃に昇温されるまでの時間を、窒素を100vol%含有する雰囲気下にて50時間以上とし、かつ、鋼板が800℃以上1000℃以下となる温度域において、該鋼板に生じる温度変化が−5℃/h以上2℃/h以下となる時間を30時間以上とする方向性電磁鋼板の製造方法。
記
1≦(4〔%Sb〕+〔%Cu〕+〔%P〕)/(〔%Cr〕+1/5〔%Mn〕)≦7・・・(1)式
(〔%Cr〕+1/3〔%Mn〕+〔%P〕)≧0.0002×T+0.07・・・(2)式
ただし、〔%M〕は、M元素の含有量(質量%)を示し、M元素を含有しないときは0とする。 - 前記一次再結晶焼鈍では、700℃から800℃の温度域において、H2濃度:40%以上60%以下かつ露点:53℃以上63℃以下の雰囲気下にて、鋼板を5秒以上滞留させる、請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記成分組成が、インヒビターとしてMnSまたはCu2Sをさらに用いる場合には、質量%で、S:0.005%以上0.03%以下を含有し、あるいは、インヒビターとしてMnSeまたはCu2Seをさらに用いる場合には、質量%で、Se:0.005%以上0.03%以下を含有する、請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- 前記成分組成が、質量%で、Ni:0.005%以上1.50%以下、Sn:0.01%以上0.50%以下、Nb:0.0005%以上0.0100%以下、Mo:0.01%以上0.50%以下およびBi:0.0005%以上0.05%以下のうちから選択される1種以上をさらに含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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