JP6112050B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、変圧器の鉄心材料に好適な方向性電磁鋼板の製造方法に関する。
変圧器や発電機等の鉄心として使用される方向性電磁鋼板は、磁束密度B(磁化力が800A/mにおける磁束密度)が高く、かつ鉄損W17/50(最大磁束密度:1.7Tおよび周波数:50Hzにおける1kg当たりの鉄損)が低いことが要求される。
方向性電磁鋼板の磁束密度を向上させるには、製品の結晶方位を(110)[001]方位、いわゆるゴス方位に高度に集積させる必要がある。かかるゴス方位の結晶粒は、最終仕上焼鈍工程における二次再結晶現象によって得ることができる。
二次再結晶では、(110)[001]方位以外の結晶粒の成長を抑制するインヒビターの添加が必須である。特にゴス方位を極めて高度に集積させる場合は、窒化物をインヒビターとして用いることが有効であり、代表的な上記窒化物としてAlN、Si、BNなどが挙げられる。インヒビターが鋼中に析出分散相を形成し、二次再結晶の直前まで一次再結晶粒の成長(正常粒成長)を抑制することによって、磁束密度の向上が図られる。
しかしながら、窒化物をインヒビターとして用いる場合には、しばしば結晶方位が(110)[001]からずれた粒が二次再結晶し、磁束密度の劣化した鋼板が製造されることが問題になっている。これは、二次再結晶焼鈍(最終仕上焼鈍)時に鋼板表面が窒化され、鋼板表層部のインヒビターの強度が変化するため、二次再結晶前に鋼板表層部における正常粒成長抑制力を制御しきれないでいることが原因である。
このような仕上焼鈍中の鋼板表層部におけるインヒビター強度を制御するには、仕上焼鈍の雰囲気を調整することが有効と考えられる。すなわち、鋼板表層の近傍の雰囲気を調整し、窒化物の生成あるいは分解・消失をコントロールすることで二次再結晶挙動を制御することができ、その結果、圧延方向に高度に集積したゴス方位を発達させることができる。
上記目的を達成するものとして、特許文献1では、方向性電磁鋼板の一種である含Al一方向性珪素鋼板の仕上焼鈍において、加熱昇温中850〜950℃までのいずれかの温度の焼鈍雰囲気のN分圧を20%以下とし、二次再結晶が開始し終了するまでの温度領域ではN分圧を5%以上とすることが提案されている。
特許文献2では、含Al一方向性珪素鋼板の仕上焼鈍において、二次再結晶の開始から完了までの途中段階で焼鈍雰囲気のN分圧を増加させることが提案されている。
特許文献3では、インヒビターとして窒化物と偏析元素を用いると共に、仕上焼鈍の際、純化温度に達するまでの昇温過程における焼鈍雰囲気について、少なくとも二次再結晶開始温度より、150℃低い温度から二次再結晶開始温度までの間に、H濃度が90%以上の雰囲気に切り替え、引き続き二次再結晶が終了するまではその雰囲気を保持することが提案されている。
特開昭55−47324号公報 特開昭62−222024号公報 特開2000−144250号公報
しかしながら、本発明者らの調査によれば、特許文献1〜3で提案される方法では、たとえ、圧延方向に高度に集積したゴス方位を発達させることができたとしても、得られるフォルステライト被膜の密着性、均一性が損なわれやすいという問題がある。
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、優れた磁気特性と被膜密着性を両立する、方向性電磁鋼板の製造方法を提案することを目的とする。
以下、本発明を成功に至らしめた実験について説明する。
実験1
質量比でC:0.05%、Si:3.4%、Mn:0.08%、Al:0.020%、N:0.006%、Sn:0.05%を含んだ珪素鋼スラブを連続鋳造にて製造し、1410℃で珪素鋼スラブを加熱した後、熱間圧延により2.4mmの厚さの熱延板に仕上げた。その後1000℃、60秒の条件で熱延板に焼鈍を施した。次いで、冷間圧延により1.8mmの板厚とした後、1050℃で120秒の中間焼鈍を施し、最高到達温度180℃の冷間圧延で0.22mmの板厚の冷延板に仕上げた。さらに、820℃で60秒、50%H−50%N(本明細書において気体の含有量を表す「%」は「vol%」である。)、露点58℃の湿潤雰囲気下で脱炭焼鈍を施した。脱炭焼鈍の加熱には誘導加熱(Induction Heating)を用い、500〜700℃の昇温速度を100℃/secとした。脱炭焼鈍の後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を、鋼板表面に塗布した。ここで、焼鈍分離剤にはMgO:100質量部に対してTiOを4質量部、さらに表1に示す薬剤(表中の副剤)を添加した。その後、図1および表1に示す条件で仕上焼鈍(BOX焼鈍)を行った。図1中の領域Aが後述する第一加熱過程であり、領域Bが後述する第二加熱過程であり、領域Cが後述する第三加熱過程である。また、領域Dの前半は純化のための均熱過程であり、領域Dの後半から領域Eは冷却過程である。
このようにして得られたコイルの磁気特性およびフォルステライト被膜(本明細書において「被膜」という場合がある)の外観(外観の良否は曲げ密着性、磁気特性の良否にも影響する。)、曲げ密着性を調査した。磁気特性についてサンプルを採取する位置はコイルの内巻部、中巻部、外巻部の3カ所とし、最も劣る磁気特性をコイルの代表値とした。また、外観については、最終ラインの出側でコイル全長にわたって目視で観察を行った(実施例における外観の評価も同様に行った。)。また、被膜の曲げ密着性についてはさらにコイル内巻、中巻、外巻の3カ所について、それぞれが炉頂側エッジ、幅中央部、炉床側エッジの3カ所からサンプルを採取し、合計9カ所で最も劣る値をコイルの代表値とした。また、評価方法は以下の通りである。
磁気特性
コイルの幅方向中央部より幅30mm×長さ280mmのエプスタイン試験片を総重量で500g以上を切り出し、エプスタイン試験により磁束密度Bおよび鉄損W17/50を測定した。磁束密度Bが1.910T以上、鉄損W17/50が0.900W/kg以下のものを磁気特性が良好とした。
外観
目視で外観を評価した。均一な被膜の場合は「○」、コイルの一部に変色や欠陥が認められた場合は「△」、コイル全長にわたって変色や欠陥が認められた場合は「×」、「○」と「△」の中間の場合は「△〜○」と評価した。
曲げ密着性
曲げ密着性を評価するために、5mm間隔で種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜の剥離が生じない最小径(曲げ剥離径)で評価した。本発明においては曲げ剥離径が25mmφ以下のものを、曲げ密着性が良好とする。
Figure 0006112050
結果を表1に示すが、領域Aの雰囲気を希ガス濃度80%以上とすることで密着性の高い被膜が得られる傾向にあることがわかった。分析の結果、密着性の高い被膜にはTiが多く含まれることがわかった。フォルステライト被膜中にTiが多く含まれることで被膜の物性が変化して強度が向上することにより、被膜が剥離しにくくなったものと推定される。仕上焼鈍初期の雰囲気を希ガスとすることで、被膜密着性が改善する理由について、本発明者らは次のように考えている。
希ガスはNやHに比べて粘度の高い気体であり、BOX焼鈍の際にコイル層間に侵入しにくい。コイル層間の雰囲気は焼鈍分離剤のMgOから放出されたHOによって酸化性の高い状態になるが、仕上焼鈍初期にNやHを導入した場合、HOはNやHによってコイル層間から押し出され、コイル層間雰囲気の酸化性が低下する。しかし、仕上焼鈍初期に希ガスを導入した場合、希ガスは粘度が高くコイル層間に侵入しにくいためにHOがコイル層間に保持されて被膜形成が促進される。領域BでHを導入すると、焼鈍分離剤中のMgOの表面を活性化させ、フォルステライト被膜の形成反応を促進することになる。さらに、領域Aを希ガスとすることでコイル層間にはHOが保持されるため、領域Bでのコイル層間雰囲気は一時的に湿潤H雰囲気になると考えられる。このような条件化では鋼板表面サブスケール中のFeSiOが還元されにくくなり、MgOとFeSiOの反応によりFe2−xMgSiOの形成が促進される。Fe2−xMgSiO形成反応は健全なフォルステライト(MgSiO)形成のために重要と考えられている。また、詳細は明らかでないが、このような条件のもとで被膜形成が進むことが、焼鈍分離剤中のTiを被膜に取り込み被膜強度を向上させるための重要なポイントでもあると考えられる。
特許文献1、特許文献2で提案された技術では、仕上焼鈍初期に導入される雰囲気は、H−N混合雰囲気である。このような還元性雰囲気を導入した場合、コイル層間の雰囲気の酸化性は極めて低くなると考えられ、適切な被膜形成反応が起こらない。特許文献3で提案された技術では仕上焼鈍初期(図1の領域Aに相当)に導入される雰囲気はNである。この場合、コイル層間のHOがNに押し出されてしまうために、その後の加熱(図1の領域Bに相当)の際のコイル層間雰囲気の酸化性が高くならず適切な被膜形成反応が起こらない。領域Aの雰囲気を希ガス濃度80%以上の雰囲気とするとともに、その後H雰囲気とすることが本発明の重要なポイントである。
また、焼鈍分離剤にSnO、もしくはSbが含まれるとき、希ガス導入の効果が著しく発揮されることがわかった、SnOおよびSbは750〜900℃で分解して酸素を放出し、コイル層間雰囲気の酸化性を増加させる役割がある。この領域の雰囲気を希ガスとすることで、放出された酸素を効果的にコイル層間に保持することができると考えられる。
実験2
質量比でC:0.05%、Si:3.4%、Mn:0.08%、Al:0.020%、N:0.006%、Sb:0.05%を含んだ珪素鋼スラブを連続鋳造にて製造し、1410℃でスラブ加熱した後、熱間圧延により2.1mmの厚さの熱延板に仕上げた。その後1000℃、60秒の条件で熱延板に焼鈍を施した。次いで、冷間圧延により1.6mmの板厚とし、さらに、1130℃で120秒の中間焼鈍を施した後、最高到達温度220℃の冷間圧延で0.22mmの板厚の冷延板に仕上げた。さらに、840℃で80秒、50%H−50%N、露点60℃の湿潤雰囲気下で脱炭焼鈍を施した。脱炭焼鈍の加熱には誘導加熱を用い、500〜700℃の昇温速度を200℃/secとした。脱炭焼鈍の後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を、脱炭焼鈍後の鋼板に塗布した。ここで、焼鈍分離剤にはMgO:100質量部に対してTiOを11質量部、SnOを4質量部添加したものを用いた。その後、図1に示す条件で仕上焼鈍(BOX焼鈍)を行った。ここで、領域Aの雰囲気をAr、領域Bの雰囲気をHとする発明例、領域Aの雰囲気をN、領域Bの雰囲気をHとする比較例を行った。
得られたコイルから外観良好な部分を選び、いずれのコイルからも限界剥離径が15mmφである小サンプルを採取した。このサンプルに対し、実験室でさまざまな条件で電子ビームを照射して磁区細分化処理を行い、磁気測定と照射部の目視観察、およびSEM観察を行った。すると、磁気特性が最良となる条件において、領域AでNを導入した条件では照射痕が現れるが、希ガスを導入した条件では照射痕が現れないことがわかった。照射痕は被膜が剥離して地鉄が露出した部分に対応しており、希ガスを導入した条件では局所的な被膜剥離が起きにくいことがわかった。曲げ剥離試験というマクロな指標では判別できない局所的な被膜特性においても、希ガスを導入した条件の被膜は優れていると考えられる。照射痕が現れない場合、その後の再コーティング処理を省略できるという経済的なメリットが得られる。
本発明は上記知見に立脚するものであり、本発明者らは、焼鈍分離剤と仕上焼鈍条件を適切に制御することで、優れた鉄損と被膜密着性を両立させることに成功した。すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
(1)C:0.02〜0.12質量%、Si:2.0〜5.0質量%、Mn:0.03〜2.00質量%、Sol.Al:0.010〜0.050質量%、N:0.004〜0.010質量%、Sb及び/又はSnを合計で0.01〜0.20質量%含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる珪素鋼スラブを熱間圧延し、熱延板焼鈍を施してから、1回あるいは中間焼鈍をはさむ2回の冷間圧延を行い、脱炭焼鈍を行い、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布・乾燥してから、仕上焼鈍を行う一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法であって、前記焼鈍分離剤は、MgOを主体とし、該MgO100質量部に対して、Ti化合物をTiO換算で1〜20質量部含み、前記仕上焼鈍が、昇温過程の750〜900℃までの温度範囲において、希ガス濃度80vol%以上の雰囲気下で10〜200時間保持(第一加熱過程)した後、H濃度70vol%以上の雰囲気下で1000℃まで加熱(第二加熱過程)し、さらに、1000〜1200℃までの温度範囲において、少なくとも5時間以上、N濃度10%以上のN−H混合雰囲気を適用する(第三加熱過程)ことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
(2)前記焼鈍分離剤は、MgO100重量部に対して、Sn及びSbから選ばれる1種以上を含む化合物を、SnO換算及びSb換算での合計で1〜10質量部含むことを特徴とする(1)に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
(3)前記珪素鋼スラブは、さらに、S:0.01〜0.05質量%、Se:0.01〜0.05質量%、P:0.005〜0.500質量%、Bi:0.005〜0.500質量%、B:2〜100質量ppm、Nb:10〜300質量ppm、V:0.001〜0.010質量%、Mo:0.005〜0.100質量%、Cu:0.01〜0.50質量%、Ni:0.01〜1.00質量%、Cr:0.01〜0.50質量%から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする(1)又は(2)に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
(4)前記脱炭焼鈍は、500から700℃までの昇温速度が50〜300℃/secの条件で加熱することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
(5)前記仕上焼鈍後に、さらに、磁区細分化処理工程を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
焼鈍分離剤と仕上焼鈍条件を適切に制御することで、優れた磁気特性と被膜密着性を両立させることができる。
仕上焼鈍における温度変化を示す図である。
次に本発明の構成要件の限定理由について述べる。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
本発明は、珪素鋼スラブを熱間圧延し、熱延板焼鈍を施してから、1回あるいは中間焼鈍をはさむ2回の冷間圧延を行い、脱炭焼鈍を行い、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布・乾燥してから、仕上焼鈍を行う一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法である。上記珪素鋼スラブは、C:0.02〜0.12質量%、Si:2.0〜5.0質量%、Mn:0.03〜2.0質量%、Sol.Al:0.01〜0.05質量%、N:0.004〜0.010質量%、Sb及び/又はSnを合計で0.01〜0.20質量%含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる。先ず、珪素鋼スラブに含まれる成分について説明する。なお、成分の含有量を表す「%」は「質量%」、「ppm」は「質量ppm」を意味する。
C:0.02〜0.12%
Cの含有量が0.12%を超えると脱炭が困難になるので、Cの含有量は0.12%以下に限定される。一方、Cの含有量が0.02%に満たないと微細炭化物による一次再結晶集合組織の改善効果が失われる。従って、Cの含有量は0.02〜0.12%に限定される。好ましい範囲は0.04〜0.09%である。
Si:2.0〜5.0%
Siは鋼の比抵抗を高め、鉄損を改善させるために必要な元素である。Siの含有量が2.0%未満であると上記改善効果が低い。一方、Siの含有量が5.0%を超えると鋼の加工性が劣化し、圧延が困難となる。したがって、Siの含有量は2.0〜5.0%に限定される。好ましい範囲は2.5〜4.0%である。
Mn:0.03〜2.0%
Mnは熱間加工性を良好にするために必要な元素である。Mnの含有量が0.03%未満であると熱間加工性を良好にする効果が低い。一方、Mnの含有量が2.0%を超えると脱炭性を阻害する。したがって、Mnの含有量は0.03〜2.0%に限定される。好ましい範囲は0.05〜1.0%である。
sol.Al:0.010〜0.050%
Alは微細AlNを形成して一次再結晶組織の粒成長を抑制するインヒビター元素である。Alの含有量が0.010%未満ではピン止め力が低く、Alの含有量が0.050%を超えるとスラブ加熱でのAINの固溶が困難になる。したがって、Alの含有量は0.010〜0.050%に限定される。好ましい範囲は0.015〜0.030%である。
N:0.004〜0.010%
Nは微細AINを形成して一次再結晶組織の粒成長を抑制するインヒビター元素である。Nの含有量が0.004%未満ではピン止め力が低く、Nの含有量が0.010%を超えると表面欠陥が多発する。したがって、Nの含有量は0.004〜0.010%に限定される。好ましい範囲は0.006〜0.009%である。
Sb及び/又はSn:合計0.01〜0.20%
Sb、Snは粒界に偏析して一次再結晶組織の粒成長を抑制する偏析型インヒビター元素である。また、鋼板表面に編析して仕上焼鈍中の窒化を抑制し、二次再結晶方位を改善する効果もある。合計量が0.01%未満では窒化防止効果が低く、0.20%を超えると過剰な粒界脆化により割れが多発する。したがって、合計量は0.01〜0.20%に限定される。好ましい範囲は0.03〜0.10%である。
上記成分以外の残部は、鉄および不可避的不純物である。
以上、本発明の基本成分について説明したが、本発明ではその他にもS、Se、P、Bi、B、Nb、V、Mo、Cu、Ni、Crを含有させることができる。
特に、S:0.01〜0.05%、Se:0.01〜0.05%、P:0.005〜0.500%、Bi:0.005〜0.500%、B:2〜100ppm、Nb:10〜300ppm、V:0.001〜0.010%、又はMo:0.005〜0.100%のいずれか一種以上を添加すれば、これらの元素は補助インヒビターとして働く。それぞれ添加量が下限量以上の場合には磁気特性向上効果が充分になり、上限量以下であれば二次再結晶粒の発達が抑制されにくくなり、特に、磁気特性に優れる。
また、被膜密着性を向上させるためにCu:0.01〜0.50%、Ni:0.01〜1.00%、Cr:0.01〜0.50%のいずれか一種以上を添加できる。それぞれ添加量が下限量以上の場合には被膜改善向上効果が充分になり、上限量以下になると被膜密着性がより高まる。
続いて、製造方法について説明する。
上記成分を有する溶鋼から、通常の造塊法、連続鋳造法で珪素鋼スラブを製造してもよいし、100mm以下の珪素鋼スラブ(薄鋳片)を直接鋳造法で製造してもよい。
珪素鋼スラブは公知の方法で加熱して熱間圧延を行うことができる。珪素鋼スラブの加熱では、インヒビターを完全に固溶させることが好ましく、インヒビター成分の固溶が不完全の場合には、十分なピン止め力が得られない。この熱間圧延により珪素鋼スラブは熱延板になる。
次いで、熱延板に焼鈍を施す。熱延板焼鈍温度は特に限定されないが800℃以上1200℃以下が好適である。熱延板焼鈍温度が800℃未満であると熱延でのバンド組織が残留し、整粒の一次再結晶組織を実現することが困難になり二次再結晶の発達が阻害される場合がある。熱延板焼鈍温度が1200℃を超えると、インヒビターが一部固溶する場合があるため、適切なピン止め力を得ることが難しい場合がある。
熱延板を焼鈍後、必要に応じて中間焼鈍を挟む1回以上の冷延を施した後、脱炭焼鈍を行う。中間焼鈍温度は特に限定されないが900℃以上1200℃以下が好適である。温度が900℃未満であると再結晶粒が細かくなり、一次再結晶組織におけるGoss核が減少し磁性が劣化する場合がある。また1200℃を超えると、インヒビターが一部固溶するため、適切なピン止め力を得ることが難しい場合がある。中間焼鈍の後に行う最終冷間圧延では、板温を100℃〜300℃に上昇させて行うこと、および冷間圧延途中で100〜300℃の範囲での時効処理を1回または複数回行うことが、再結晶集合組織を改善して磁気特性を向上させるために有効である。
次いで、脱炭焼鈍を行うが、雰囲気や温度は公知の条件を用いることができる。例えば、均熱温度は800℃以上900℃以下とすることが脱炭性の観点から有利である。脱炭焼鈍の加熱においては、500℃以上700℃以下の昇温速度を50℃/sec以上300℃/sec以下とすることが磁気特性改善の観点から好適である。昇温速度をこの範囲に制御することで一次再結晶集合組織中の(110)[001]方位粒が増加し、二次再結晶粒の微細化や方位改善効果、ひいては製品の磁気特性改善効果が得られる。50℃/sec未満では(110)[001]方位粒の増加が不十分になる場合がある。300℃/secを超えると{111}方位粒が減少するためかえって磁気特性が劣化する場合がある。したがって、昇温速度の範囲は50〜300℃/secが好ましい。より好ましい範囲は80〜150℃/secである。昇温速度をこの範囲に制御した場合、サブスケール形態が粗雑になるため被膜の密着性が損なわれやすいが、本発明ではコイル層間の雰囲気を適切に制御しているため、サブスケール形態の良否によらず良好な被膜が得られる。加熱方式は誘導加熱や通電加熱などの公知の方式を用いることができる。
脱炭焼鈍後にMgOを主体とする焼鈍分離剤を、例えばスラリーとして、脱炭焼鈍後の鋼板に塗布し、乾燥させる。また、MgOに副剤を添加して用いることができる。本発明においては、MgO:100質量部に対して、Ti化合物をTiO換算で1〜20質量部を含む焼鈍分離剤を用いる。そして、本発明においては、さらに、Sn、Sbから選んだ1種もしくは2種以上を含む化合物を、SnO、Sb換算で合計1〜10質量部含む焼鈍分離剤を用いることが極めて有利である。ここで、MgOを主体とするとは、焼鈍分離剤がMgOを60質量%以上含有することを指す。なお、焼鈍分離剤にはMgO、Ti化合物、Sn化合物、Sb化合物以外の成分を含んでもよい。
Ti化合物:TiO換算で1〜20質量部
Ti化合物はフォルステライト被膜形成反応を促進する効果のほか、被膜にTiを供給して被膜強度を向上させるという効果を奏する。MgO:100質量部に対してTiO換算で1質量部未満だと被膜形成が困難であり、20質量部を超えると被膜形成が過剰に促進され、かえって被膜特性が劣化する。従って、Ti化合物の含有量はTiO換算で1〜20質量部に限定される。化合物の形態としては、酸化物、水酸化物、硫酸塩、窒化物などが好適であり、これらの化合物の中では特にTiOを用いることが好適である。
Sn、Sb化合物:SnO、Sb換算で合計1〜10質量部
Sn、Sb化合物(特に酸化物、水酸化物、硫酸塩など)は比較的低温で分解して酸素を放出し、コイル層間雰囲気の酸化性を増加させる。本発明者らの調査によれば、これらの分解温度は750〜900℃の範囲にあり、この領域の雰囲気を希ガス濃度80%以上とすることで、コイル層間雰囲気の酸化性を効果的に高く保持することができると考えられる。MgO:100質量部に対してSnO、Sb換算で合計1質量部未満だと被膜改善効果が薄く、SnO、Sb換算で合計10質量部を超えると過剰な酸素供給によってかえって被膜の密着性が損なわれる。従って、焼鈍分離剤は、MgO100質量部に対して、Sn、Sb化合物をSnO、Sb換算で1〜10質量部の範囲で含有することが好ましい。化合物の形態としては、酸化物、水酸化物、硫酸塩などが好適であり、これらの化合物の中では特にSnO、Sbを用いることが好適である。
この他、焼鈍分離剤に添加する助剤として、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)、B(OH)、CaSO、SrSO、BaSO、NaB等、公知の化合物を用いることができる。
焼鈍分離剤を塗布した後、二次再結晶と被膜形成を目的とした仕上焼鈍を行う。本発明において仕上焼鈍は、第一加熱過程、第二加熱過程、第三加熱過程を有する。
第一加熱過程とは、750℃から900℃までの温度範囲において、10〜200時間、希ガス濃度80%以上の雰囲気下で保持する過程である。750℃から900℃までの温度範囲中の任意の温度領域において、上記の保持する過程があればよい。本過程は、昇温過程で保持してもよいし、特定の温度で保持してもよい。750℃以上900℃以下の温度範囲で希ガス濃度80%以上の雰囲気を導入することは、MgOや副剤から放出されるHO、Oをコイル層間に保持し、その後の加熱雰囲気の酸化性を高くするために必要である。このとき雰囲気の希ガス濃度は、好ましくは95%以上である。10時間以上200時間以下の保持はコイル内温度の均一化に有効であり、被膜形成反応を均一化する効果がある。10時間未満だと被膜改善効果が薄く、200時間を超えるとインヒビターのオストワルド成長が進んで二次再結晶が起こりにくくなる。このため、保持時間は10時間以上200時間以下に制限される。希ガスを導入するタイミングは750℃以下でもよく、製品を安定的に製造する観点からは低温から希ガスを導入するほうがよい。なお、用いる希ガス元素としては、コストの観点からArが好適である。
第二加熱過程とは、第一加熱過程後の鋼板を、H濃度が70%以上の雰囲気で保持する過程である。H雰囲気にはHのみからなる場合だけでなく、Nを含有する場合も含まれる。本過程は特定の温度での保持でもよいし、昇温させながらの保持でもよい。この過程には、被膜形成反応を促進させる効果、および鋼板の窒化を防ぎ二次再結晶方位を改善する効果がある。H−N混合雰囲気でも被膜改善効果が得られるが、磁気特性改善の観点からH濃度は高いほうが好ましい。H−N混合雰囲気を用いる場合、H濃度は70%以上に制限される。より好ましい範囲は90%以上である。また、このときの昇温速度はインヒビターを適切に制御し二次再結晶方位を改善するために5℃/hr以上50℃/hr以下とすることが好ましい。昇温速度が5℃/hr未満の場合、インヒビターのオストワルド成長が進み、二次再結晶不良が発生する場合がある。昇温速度が50℃/hrを超える場合、インヒビターのピン止め力が過剰に高い状態で高温に到達するため、二次再結晶方位が劣化する場合がある。
第三加熱過程とは、1000℃から1200℃までの温度範囲において、5時間以上、N濃度10%以上のN−H混合雰囲気下で保持する過程を指す。1000℃から1200℃までの温度範囲の任意の温度範囲で、上記保持する過程があればよい。仕上焼鈍の1000℃以上1200℃以下の温度範囲において、少なくとも5時間以上をN濃度10%以上のN−H混合雰囲気とすることは、TiをTiNとして被膜中に固定する効果があり、被膜の密着性を向上するために必要である。N−H混合雰囲気を導入する時間が長すぎると鋼中窒素の純化不良が起きる場合があるため、導入時間は5時間以上40時間以下とすることが好ましい。
第三加熱過程の後、不要なインヒビター成分等を純化するために、1100〜1300℃で1〜10時間程度の均熱を実施してもよい。このときの雰囲気はArやHを用いることができるが、被膜形成の点からはH雰囲気が好適である。
上記仕上焼鈍後には、付着した焼鈍分離剤を除去するため、水洗やブラッシング、酸洗を行う事が有用である。その後、平坦化焼鈍を行い、形状を矯正することが鉄損低減のために有効である。また、層間抵抗を改善するために、平坦化焼鈍前もしくは後に、鋼板表面に絶縁コーティングを施すことが有効である。鉄損低減のためには鋼板に張力を付与できるコーティングが望ましく、例えば、リン酸塩とコロイダルシリカを混合した水溶液を塗布、焼き付けすることが有効である。
また、仕上焼鈍後(上記水洗、酸洗、平坦化焼鈍、絶縁コーティング形成等を行う場合にはこれらを行った後)に、鉄損低減のために、磁区細分化処理を行うことが望ましい。処理方法としては一般的に実施されているような、最終製品板に溝を形成したり、レーザー、プラズマ、電子ビーム等により線状に熱歪や衝撃歪を導入したりする方法や、最終仕上板厚に達した冷間圧延板などの中間製品にあらかじめ溝を形成する方法を用いることができる。本発明は特に電子ビーム照射の照射痕を抑制する効果が高い。電子ビームはレーザー、プラズマ照射に比べて鋼板への浸入深さが深いため被膜へのダメージが小さく、照射痕を抑制するために有効な手段であるが、本発明と組み合わせることによってさらなる抑制効果を得ることができる。
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1
表2に示す成分と残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを連続鋳造にて製造し、1400℃でスラブ加熱した後、熱間圧延により、2.3mm厚に仕上げた。この後、1020℃で60秒の熱延板焼鈍を施し、冷間圧延により1.5mmの厚みとした後、1130℃で60秒の中間焼鈍を施し、さらに冷間圧延により0.22mm厚に仕上げた。その後、850℃で120秒、50%H−50%N、露点60℃の湿潤雰囲気下で脱炭焼鈍を行い、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布した。脱炭焼鈍の加熱には誘導加熱を用い、500〜700℃の昇温速度を100℃/sとした。また、焼鈍分離剤にはMgO:100質量部に対してTiOを8質量部、SnOを4質量部添加した。その後、図1および表3に示す条件で仕上焼鈍(BOX焼鈍)を行った(領域Cは図に記載の条件ではなく、表3に記載の条件とした。)。仕上焼鈍の後、リン酸Mgとコロイダルシリカを主剤とするコーティング液を塗布し、N雰囲気で820℃×30secの平坦化焼鈍を施した。かくして得られた板に電子ビーム(EB)を照射し、磁区細分化処理を施した。
Figure 0006112050
得られたコイルの磁気特性および被膜の外観、曲げ密着性、照射痕の有無について調査した。磁気特性の調査では、サンプルを採取する位置はコイルの内巻部、中巻部、外巻部の3カ所とし、この中から最も劣る磁気特性をコイルの代表値とした。また、被膜の曲げ密着性についてはさらにコイル内巻、中巻、外巻の3カ所について、それぞれ炉頂側エッジ、幅中央部、炉床側エッジの3カ所からサンプルを採取し、合計9カ所で最も劣る値をコイルの代表値とした。
磁気特性
コイルの長さ方向中央部かつ幅方向中央部より幅30mm×長さ280mmのエプスタイン試験片を総重量で500g以上を切り出し、エプスタイン試験により磁束密度Bおよび鉄損W17/50を測定した。磁束密度Bが1.910T以上、鉄損W17/50が0.900以下のものを磁気特性が良好とした。
外観
目視で外観を評価した。均一な被膜の場合は「○」、コイルの一部に変色や欠陥が認められた場合は「△」、コイル全長にわたって変色や欠陥が認められた場合は「×」、「○」と「△」の中間の場合は「△〜○」と評価した。
曲げ密着性
曲げ密着性を評価するために、5mm間隔で種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜の剥離が生じない最小径(曲げ剥離径)で評価した。本発明においては曲げ剥離径が25mmφ以下のものを、曲げ密着性が良好とする。
EB照射痕
目視で照射痕を評価した。照射部の被膜が剥離し金属光沢が見える場合は「顕著」、照射痕が長さ比率で10%以上容易に確認できる場合は「あり」、容易に確認できる照射痕が長さ比率で1〜10%の場合は「ほぼなし」、長さ比率で1%以下の場合は「なし」と評価した。「ほぼなし」、「なし」の場合が良好な結果であるとした。
得られた結果を表3に示す。本発明の範囲内の条件においては優れた磁気特性と被膜密着性が得られており、照射痕も発生していない。
Figure 0006112050
実施例2
質量比でC:0.08%、Si:3.7%、Mn:0.06%、Se:0.02%、Al:0.025%、N:0.008%、Sb:0.03%、Sn:0.02%を含んだ鋼スラブを連続鋳造にて製造し、1420℃でスラブ加熱した後、熱間圧延により、2.4mmの厚さに仕上げた。その後、1100℃で60秒の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延により1.8mmの厚みとした。その後、1080℃で40秒の中間焼鈍を施した後、最高到達温度250℃の温間圧延により0.22mmの板厚に仕上げた。さらに、830℃で60秒、50%H−50%N、露点59℃の湿潤雰囲気下で脱炭焼鈍を施した。脱炭焼鈍の際の昇温速度は表4に示した。脱炭焼鈍の加熱には誘導加熱を用い、500〜700℃の昇温速度を制御した。脱炭焼鈍の後、MgOを主体とし、MgO100質量部に対して表4に示す副剤を含む焼鈍分離剤を塗布した。ここで、図1における領域AはAr雰囲気、領域BはH雰囲気、領域CはH濃度70%、N濃度30%の混合雰囲気、領域DはH雰囲気、領域EはAr雰囲気とする条件で、仕上焼鈍の後、リン酸Mgとコロイダルシリカを主剤とするコーティング液を塗布し、N雰囲気で820℃×30secの平坦化焼鈍を施した。かくして得られた板に電子ビーム(EB)を照射し、磁区細分化処理を施した。
得られたコイルの磁気特性および被膜の外観、曲げ密着性、照射痕の有無について、実施例1と同様の方法で調査した。得られた結果を表4に示す。本発明の範囲内の条件においては優れた磁気特性と被膜密着性が得られており、照射痕も発生していない。
また、脱炭焼鈍の昇温速度の条件が50〜300℃/secの範囲にある発明例は、昇温速度の条件が上記範囲から外れる発明例(No.10、13)と比較して、より優れた磁気特性を有する。
Figure 0006112050
実施例3
質量比でC:0.07%、Si:3.2%、Mn:0.07%、Se:0.03%、Al:0.023%、N:0.007%、Sn:0.05%を含んだ鋼スラブを連続鋳造にて製造し、1400℃でスラブ加熱した後、熱間圧延により2.2mmの厚さに仕上げた。その後1120℃で90秒の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延により1.6mmの板厚とした。その後、1120℃で80秒の中間焼鈍を施した後、最高到達温度220℃の温間圧延で0.22mmの板厚に仕上げた。さらに、830℃で60秒、50%H−50%N、露点59℃の湿潤雰囲気下で脱炭焼鈍を行った。ここで、焼鈍の均熱時間の後半は露点10℃とした。脱炭焼鈍の加熱には通電加熱を用い、300〜700℃の昇温速度を120℃/secとした。
脱炭焼鈍の後、MgOを主体とし、MgO100重量部に対してTiOを11重量部含む焼鈍分離剤を塗布した。その後、図1に示す仕上焼鈍(BOX焼鈍)を行った。ただし、領域Aは表5に示す条件、領域Bは表5に示す領域Aの均熱温度から1100℃(ただし、No.9では1080℃)までをH雰囲気、領域Cは表5に示す条件、領域Dは図1に示す条件(一定温度で保持する部分における温度は、領域Cの終了温度とした)、領域Eは図1に示す条件で行った。仕上焼鈍の後、リン酸Mgとコロイダルシリカを主剤とするコーティング液を塗布し、N雰囲気で820℃×30secの平坦化焼鈍を施した。かくして得られた板に電子ビーム(EB)を照射し、磁区細分化処理を施した。
得られたコイルの磁気特性および被膜の外観、曲げ密着性、照射痕の有無について調査した。このとき、サンプルを採取する位置はコイルの内巻部、中巻部、外巻部の3カ所とし、この中から最も劣る磁気特性をコイルの代表値とした。また、被膜の曲げ密着性についてはさらにコイル内巻、中巻、外巻の3カ所について、それぞれ炉頂側エッジ、幅中央部、炉床側エッジの3カ所からサンプルを採取し、合計9カ所で最も劣る値をコイルの代表値とした。得られた結果を表5に示すが、本発明の範囲内の条件においては優れた鉄損と被膜密着性が得られており、照射痕も発生していない。
Figure 0006112050

Claims (5)

  1. C:0.02〜0.12質量%、Si:2.0〜5.0質量%、Mn:0.03〜2.0質量%、Sol.Al:0.010〜0.050質量%、N:0.004〜0.010質量%、Sb及び/又はSnを合計で0.01〜0.20質量%含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる珪素鋼スラブを熱間圧延し、熱延板焼鈍を施してから、1回あるいは中間焼鈍をはさむ2回の冷間圧延を行い、脱炭焼鈍を行い、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布・乾燥してから、仕上焼鈍を行う一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法であって、
    前記焼鈍分離剤は、MgOを主体とし、該MgO100質量部に対して、Ti化合物をTiO換算で1〜20質量部含み、
    前記仕上焼鈍が、昇温過程の750〜900℃までの温度範囲において、希ガス濃度80vol%以上の雰囲気下で10〜200時間保持(第一加熱過程)した後、H濃度80vol%以上の雰囲気下で1100℃まで加熱(第二加熱過程)し、さらに、1100〜1200℃までの温度範囲において、少なくとも5時間以上、N濃度10vol%以上30vol%以下のN−H混合雰囲気を適用する(第三加熱過程)ことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記焼鈍分離剤は、MgO100重量部に対して、Sn及びSbから選ばれる1種以上を含む化合物を、SnO換算及びSb換算での合計で1〜10質量部含むことを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記珪素鋼スラブは、さらに、S:0.01〜0.05質量%、Se:0.01〜0.05質量%、P:0.005〜0.500質量%、Bi:0.005〜0.500質量%、B:2〜100質量ppm、Nb:10〜300質量ppm、V:0.001〜0.010質量%、Mo:0.005〜0.100質量%、Cu:0.01〜0.50質量%、Ni:0.01〜1.00質量%、Cr:0.01〜0.50質量%から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 前記脱炭焼鈍は、500から700℃までの昇温速度が50〜300℃/secの条件で加熱することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 前記仕上焼鈍後に、さらに、磁区細分化処理工程を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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