JP2007302866A - 携帯電子機器用ポリアミド樹脂組成物および携帯電子機器用成形品 - Google Patents

携帯電子機器用ポリアミド樹脂組成物および携帯電子機器用成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】ガラス繊維の配合により、特に優れた強度と低反り性を有し、近年薄肉軽量化が進んでいる携帯電子機器用材料として好適なポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリアミド樹脂(A)と以下の式で定義する扁平率が2.5以上である長手形状断面のガラス繊維(B)とを含有し、更に、必要に応じ、直径が3〜30μmである円形断面のガラス繊維(C)を含有し、成分(B):(C)の割合が3:7〜10:0(重量比)であり、成分(A)の割合が60〜34重量%、成分(B)又は成分(B)及び(C)の割合が40〜66重量%であり(但し上記の各成分の合計は100重量%である)、ISO試験片について測定した引張強度が200MPa以上である携帯電子機器用ポリアミド樹脂組成物。

【選択図】なし

Description

本発明は携帯電子機器用ポリアミド樹脂組成物および携帯電子機器用成形品に関する。
パソコン及びノートパソコンは、コンセントに接続されるため、難燃性が必要特性である。一方、電池によって駆動するPDA(Personal Digital Assistant)、携帯ゲーム機、携帯電話は、必ずしも難燃性は要求されないが、持ち運びする際に落下することがあり、落下衝撃が重要な特性となる。製品厚みを厚くすることが可能な場合、耐衝撃性に優れた非強化ポリカーボネートやアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(が使用される。また、これらの樹脂に少量の充填材を配合した組成物も使用される。しかしながら、剛性の低い耐衝撃性材料を使用すると、変形による内部部品の破壊を抑えるため、隙間を大きく取る必要がある。このため、例えば2つ折りやスライドタイプの携帯電子機器では厚みのある製品設計とならざるを得ない。しかしながら、持ち運びの利便性が重要な携帯電子機器においては薄い製品設計が要望される。このような場合の対策としては、マグネシウムチキソモールディング、ダイキャスト金属または鉄板加工品が選択肢としてある。
それでも、従来より、量産性に優れた熱可塑性射出成形用材料であって、高剛性、高強度かつ高衝撃性でありながら反りの少ないものが要望されている。本発明はこのような特性を持つポリアミド樹脂組成物および成形品に関する。
従来より、各種の物性を図るためにガラス繊維を配合した各種の樹脂組成物が提案されている。例えば、以下の式による扁平率が1.2以上のガラス繊維の粉末熱可塑性樹脂に配合することにより成形品の反りの問題を解決した熱可塑性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。具体的には、断面形状が長方形に近い楕円型、繭(まゆ)型などのガラス繊維が使用され、ナイロン−6、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂が使用されている。しかしながら、斯かる樹脂組成物は特に引張強度の点で十分とはいえない。
高剛性の熱可塑性樹脂材料、例えば強化ポリアミドMXD6樹脂(ポリメタキシリレンアジパミド)では、円形断面のガラス繊維による強化により引張強度を大幅に改良することが出来る。例えば、40%以上の強化では引張強度220MPa以上、50%以上の強化では引張強度250MPa以上の材料が得られる。しかしながら、円形断面のガラス繊維のみの強化では、薄肉成形品を成形すると反りが大きく、約1mmの肉厚の平板を成形すると大きく反ってしまう。このため、円形断面のガラス繊維に、平板フィラーである雲母を併用して反り特性を改良した材料が提案されている(特許文献2)。しかしながら、この場合、円形断面のガラス繊維を使用した場合に比べ、衝撃強度や引張強度などの機械的物性を犠牲にすることになる。因に、引張強度は150MPaと大きく低下する。
ポリブチレンテレフタレート樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂またはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂に対して扁平率3の繭型ガラス繊維のチョップストランドを配合した樹脂成形体が提案されている(特許文献3)。しかしながら、最大の引張強度は、ポリブチレンテレフタレート樹脂にガラス繊維のチョップストランドを60重量%配合した場合に得られているが、その値は172MPaと低くい。また、反り等の寸法安定性については何ら言及されていない。
強度を高く維持したまま反りの少ない材料として、ポリアミド66に対して円形断面のガラス繊維と扁平断面のガラス繊維とを配合した樹脂組成物が提案されている(特許文献4)。しかしながら、提案された樹脂組成物の場合、ガラス繊維の配合量は合計で30重量%であり、最大の引張強度は141MPaに過ぎない。また、実際に使用されている円形断面のガラス繊維の扁平率は2である。
ポリブチレンテレフタレート樹脂に扁平率1.8と2.3のガラス繊維を配合した組成物が提案されている(特許文献5)。そして、ガラス繊維の配合量が40重量%までの組成物について、成形品とした場合の反りの評価が行われている。また、ここで得られている最大の引張強度は164MPaでしかない。
ポリアミド9Tに扁平ガラスを配合した組成物が提案されている(特許文献6)。そして、扁平率が2.0±0.3の扁平ガラス繊維を使用した組成物の低反り性について、添加量約60重量%において円形断面のガラス繊維を使用した組成物よりも優れていることが報告されている。摺動性については、ベース樹脂のポリアミド9MTが優れており、ガラス繊維の配合による差は認められないと報告されている。また、最大の引張強度については、ガラス繊維の配合量が約55重量%の組成物において190MPaの値が得られているが、それ以上の強度を発現する方法についての提案はなされていない。
ポリアミドMXD6に変成ポリオレフィンと超高分子量ポリエチレンと扁平ガラス繊維を使用した組成物が提案されている(特許文献7)。しかしながら、この組成物が目的とする成形品は歯車であり、また、具体的には扁平率約2の繭型ガラス繊維についてしか評価されていない。また、摺動性についての評価はなされておらず、また、反りに関する物性の変化についても何ら言及されていない。
結晶性芳香族ポリアミド(ポリアミドMXD6)に、非晶性ポリアミドとポリアミド6と共にガラス繊維などの繊維強化材を配合した材料による電子機器筐体が提案されている(特許文献8)。ここでは、使用したガラス繊維の詳細が不明であるが、一般的な円形断面のガラス繊維を使用したものと判断される。何れにしても、高強度の材料の可能性はあるものの、低反りに関するガラス繊維面での工夫はなされておらず、非晶性ポリアミドによってある程度の低反り性を確保した結果が報告されているに過ぎない。
特開平7−18186号公報 特開平1−263151号公報 特開昭62−268612号公報 特開平10−219026号公報 特開平2−173047号公報 特開2003−82228号公報 特開2003−201398号公報 特開2004−168849号公報
以上の通り、強化熱可塑性樹脂組成物において、引張強度が200MPa以上で、しかも弾性率や衝撃強度が高く、低い反り性を有する材料は、従来知られていない。
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、ガラス繊維の配合により、特に優れた強度と低反り性を有し、近年薄肉軽量化が進んでいる携帯電子機器用材料として好適なポリアミド樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため検討を重ね、ポリアミド樹脂あるいは更に高強度材料としてメタキシリレンジアミンを使用したポリアミドMXD6等のベース樹脂に、特定の扁平な断面形状をしたガラス繊維を強化材として使用することにより、携帯電子機器に要求される、高い剛性と高い衝撃性を両立させたまま、更に好ましい低反り性能を発揮させる材料の開発を実現し、その材料による携帯電子機器の構造成形品を提供できることを見出した。また、金属代替として携帯電子機器部品へ適応させるためには材料の引張強度が高いことが重要であることを知得した。
すなわち、本発明の第1の要旨は、ポリアミド樹脂(A)と以下の式で定義する扁平率が2.5以上である長手形状断面のガラス繊維(B)とを含有し、更に、必要に応じ、直径が3〜30μmである円形断面のガラス繊維(C)を含有し、成分(B):(C)の割合が3:7〜10:0(重量比)であり、成分(A)の割合が60〜34重量%、成分(B)の割合または成分(B)及び(C)の合計量の割合が40〜66重量%であり(但し上記の各成分の合計は100重量%である)、ISO試験片について測定した引張強度が200MPa以上であることを特徴とする携帯電子機器用ポリアミド樹脂組成物に存する。
そして、本発明の第2の要旨は、上記の樹脂組成物を成形して成り、成形品のリブを除く平板部の平均厚さが1.2mm以下であることを特徴とする携帯電子機器部品に存する。
本発明によれば、強度、弾性率などの機械的特性に優れると共に、低い反り性を有し、携帯電子機器用部品の材料として好適なポリアミド樹脂組成物が提供される。
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)と長手形状断面のガラス繊維(B)とを必須成分として含有し、円形断面のガラス繊維(C)を任意成分として含有する。
<ポリアミド樹脂(A)>
本発明において使用されるポリアミド樹脂とは、通常、四員環以上のラクタムもしくはω−アミノ酸の重縮合、または、二塩基酸とジアミンとの重縮合によって得られるポリアミド樹脂である。金属の代替材料として必要な高耐熱、高強度、高剛性を実現するためには、ポリマーの繰り返し単位中のメチレン基数が20以下のポリアミド樹脂、特には12以下のポリアミド樹脂が好適である。
四員環以上のラクタムとしては、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等が挙げられ、ω−アミノ酸としては、ε−カプロン酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノラウリン酸などが挙げられる。また、二塩基酸としては、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸(I)、テレフタル酸(T)等のα、ω−直鎖脂肪族二塩基酸が挙げられるが、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸またはドデカン二酸が好ましく、アジピン酸が特に好ましい。ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ノナンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルペンタンジアミン、オクタメチレンジアミン、ジアミノブタン、メタキシリレンジアミン(MXDA)、パラキシリレンジアミン等が挙げられ、これらは複数使用した混合ジアミンとして使用してもよい。
上記のようなポリアミド樹脂の具体例として、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンドデカミド、ポリアミド9T、ポリアミド9MT等が挙げられる。また、本発明ではこれらの共重合体も使用することが出来、その具体例としては、ポリアミド66/6、ポリアミド66/6T、ポリアミド6/6T、ポリアミド6I/6T,ポリアミド66/6T/6I等が挙げられる。
本発明で求められる後述の引張強度(200MPa以上)の物性を満足するためには、ポリアミドを適宜に選択することが好ましい。脂肪族ポリアミドでは、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド66が好ましい。ポリアミド11やポリアミド12は、本発明で使用するガラス繊維を添加しても上記の引張強度を満足することが困難な傾向にある。
また、芳香族系モノマー由来の繰り返し単位を30モル%以上含むポリアミド樹脂も好ましい。斯かるポリアミド樹脂としては、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンデカミド(ポリアミドMXD10)、ポリアミド9Tが挙げられる。ポリアミド芳香族系モノマー由来の繰り返し単位を含むことにより、生成するポリマーの剛性が高くなり、結果として、200MPa以上の引張強度を達成し易くなる。なお、ポリアミド芳香族系モノマー由来の繰り返し単位が30モル%より少ない割合である場合はの効果が分かり難い。
また、本発明では前記のようなポリアミドの共重合体も好適に使用することが出来、その具体例としては、ポリアミド6/ポリアミド66コポリマー(ポリアミド6/66)、ポリメタキシリレンアジパミド/ポリパラキシリレンアジパミドコポリマー(ポリアミドMP6)、ポリメタキシリレンアジパミド/ポリメタキシリレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミドMXD6/MXDI)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/M5T)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ポリアミド6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T/6I)等が挙げられる。
ベース樹脂として剛性が高くて好ましいポリアミド樹脂はポリアミドMX樹脂が挙げられる。ポリアミドMX樹脂とは、キシリレンジアミンとα,ω−二塩基酸の重縮合で得られるポリアミド樹脂であり、具体的には、メタキシリレンジアミン単独、またはメタキシリレンジアミン50モル%以上とパラキシリレンジアミン50モル%以下からなるキシリレンジアミンと、炭素数6〜12のα、ω−直鎖脂肪族二塩基酸、または芳香族二塩基酸との重縮合で得られるポリアミドMX樹脂挙げられる。パラキシリレンを含むことで結晶化速度が速まり、成形サイクルが短縮されるため、特にそのような性能が必要とされる場合は、キシリレンジアミンとして混合キシリレンジアミンを使用するのも好ましい。
本発明に使用されるポリアミド樹脂の相対粘度は、通常2.0〜4.0、好ましくは2.0〜2.7である。相対粘度が低すぎる(低分子量であることを意味する)と樹脂の物性が不足し、一方、高すぎると成形が困難である。また、相対粘度が4.0を超えるポリアミド樹脂の製造は困難になる。なお、本明細書において、ポリアミド樹脂の相対粘度は、溶媒として96重量%硫酸を使用し、樹脂濃度1g/100mlの溶液を使用して測定した粘度を意味する。
本発明においては、2種以上のポリアミド樹脂を混合してもよい。また、他の熱可塑性樹脂を混合してポリマーアロイとしてもよい。例えば、ポリアミドMXD樹脂の表面外観改良のために、これと他のポリアミド樹脂(例えば、ポリアミド6、ポリアミド6/66、66/6I、6/6T6I等)とのアロイとすることが可能である。また、例えば、成形サイクルを短縮するため、ポリアミドMXD樹脂に、ポリアミド46、66、66/6T、9T、66等の融点が高いポリアミド樹脂と混合することが出来る。また、主たるポリアミド樹脂の耐薬品性を改良するため、変性ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂PPS樹脂とのアロイとすることが出来る。この他、衝撃性改良のため、PPE、AS樹脂、ABS樹脂、PET等とのアロイとすることも可能である。
<長手形状断面のガラス繊維(B)>
本発明で使用する長手形状断面のガラス繊維は、以下の式による扁平率が2.5以上のものである。
上記の扁平率(又は長径および短径)はメーカーのによる公称値があればそれをそのまま使用することが出来るが、公称値が無い場合は顕微鏡による測定値から容易に求めることが出来る。
長手形状断面のガラス繊維としては、例えば、断面形状が、長方形、長方形に近い長円形、楕円形、長手方向の中央部がくびれた繭型などが挙げられ、これらのガラス繊維は、前述の特許文献1に示されて公知である。繭型のガラス繊維は、中央部がくびれていて、その部分の強度が低く真ん中で割れることがあり、また、くびれた部分の樹脂との密着性が劣る場合もある。従って、ガラス繊維は、断面形状が、長方形、長方形に近い長円形または楕円形のものである。
扁平率が2.5未満のガラス繊維を使用した樹脂組成物の場合、板状成形品の反りの問題が悪化する。扁平率は、好ましくは2.5〜10.0、更に好ましくは3.0を超えて10.0以下であり、特に好ましくは3.1〜6.0である。扁平率が極端に大きい場合、他の成分との混合の他、混練、成形などの処理の際、ガラス繊維に加わる荷重で破砕され、成形品中での実際のガラス繊維の扁平率が小さくなる場合があるため、それほど大きい扁平率のガラス繊維を使用する必要はない。
長手形状断面のガラス繊維の太さは、任意であるが、ガラス繊維の断面の短径D1が0.5〜25μm、ガラス繊維の断面の長径D2が1.25〜250μmであることが好ましい。細すぎる場合はガラス繊維の紡糸が困難な場合があり、太すぎる場合は樹脂との接触面積の減少などにより成形品の強度が低下する場合がある。短径D1は3μm以上が好ましい。更には、短径D1が3μm以上で且つ扁平率が3より大きい値であることが好ましい。
長手形状断面のガラス繊維は、例えば、特公平3−59019号公報、特公平4−13300号公報、特公平4−32775号公報などに記載の方法で製造することが出来る。特に、底面に多数のオリフィスを有するオリフィスプレートにおいて、複数のオリフィス出口を囲み、当該オリフィスプレート底面より下方に延びる凸状縁を設けたオリフィスプレート、または、単数もしくは複数のオリフィス孔を有するノズルチップの外周部先端から下方に延びる複数の凸状縁を設けた異形断面ガラス繊維紡糸用ノズルチップを使用して製造された長手形状断面のガラス繊維が好ましい。
<円形断面のガラス繊維(C)>
本発明で使用する円形断面(扁平率1)のガラス繊維は直径が3〜30μmのものである。斯かるガラス繊維は、チョップドストランドの形で市場から入手可能である。入手の容易性から直径が6〜17μmのものが好ましい。
<ガラス繊維(B)及びガラス繊維(C)>
前記のガラス繊維(B)及びガラス繊維(C)の組成は、任意であるが、溶融ガラスよりもガラス繊維化が可能な組成が好ましい。具体的な組成として、Eガラス組成、Cガラス組成、Sガラス組成、耐アルカリガラス組成などが挙げられる。また、ガラス繊維の引張り強度は、任意であるが、通常290kg/mm以上である。これらの中ではEガラスが入手が容易であるので好ましい。
前記のガラス繊維(B)及びガラス繊維(C)は、例えば、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤で表面処理されていることが好ましく、その付着量はガラス繊維重量に対し通常0.01重量%以上である。更に、必要に応じ、他の表面処理を施すことも出来、表面処理剤としては、例えば、脂肪酸アミド化合物、シリコーンオイル等の潤滑剤;第4級アンモニウム塩などの帯電防止剤;エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの被膜形成能を有する樹脂;被膜形成能を有する樹脂と、熱安定剤、難燃剤などとを併用した表面処理剤が挙げられる。
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物において、前記の各成分(A)〜(C)の使用割合は次の通りである(但し上記の各成分の合計は100重量%である)。すなわち、成分(B):(C)の割合は3:7〜10:0(重量比)である。成分(C)は、任意成分であるが、引張強度の観点から、成分(B)と共に使用することが好ましい。しかしながら、成分(B)に対する成分(C)の割合が上記の範囲を超えて高い場合は、樹脂組成物中の成分(B)の含有量が低下し、板状成形品の反り抑制の効果が発現されない。成分(A)の割合は60〜34重量%、成分(B)の割合または成分(B)及び(C)の合計量の割合は40〜66重量%である。成分(B)の割合または成分(B)及び(C)の合計量の割合が40重量%未満の場合は、補強効果が小さく、引張強度が不十分であり、66重量%を超える場合はコンパウンドが困難となる。
特に、板状成形品の反り抑制の観点から、成分(B)の割合は、成分(A)及び(B)の合計量または成分(A)、(B)及び(C)の合計量に対する値として25〜66重量%であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、上述の必須成分の他、本発明の組成物の特性を損なわない範囲で添加剤を配合することが出来る。具体的には、結晶化速度を上げて成形性を向上させるため、核剤を添加することが好ましい。核剤としては、通常、タルク、チッ化硼素などの無機核剤が挙げられるが、有機核剤を添加してもよい。核剤の添加量は次の通りである。すなわち、窒化ホウ素や有機核剤の場合、成分(A)及び(B)の合計100重量部または成分(A)、(B)及び(C)の合計100重量部に対し、通常0.001〜6重量部、好ましくは0.01〜1重量部である。少なすぎる場合は期待される核剤効果が得られず、多すぎると高価な材料のためコストが上がる。タルクの場合、通常0.1〜8重量部、好ましくは0.3〜2重量部である。その他の無機核剤の場合、通常0.3〜8重量部、好ましくは0.5〜4重量部である。タルク及びその他の核剤の場合、少なすぎる場合は核剤効果が得られず、多すぎる場合は異物効果となって強度や衝撃値が低下する。特に、平均粒子径2μm以下のタルク0.1〜8重量部を使用するのが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、成形時の離型性を向上させるため、離型剤を添加することが好ましく、摺動性改良の効果も併せ持つように、比較的多く添加することが好ましい。離型剤としては、ステアリン酸、パルミチン酸などの炭素数14以上の長鎖脂肪族カルボン酸およびその誘導体(例えば、エステル、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミド等);ステアリルアルコール等の炭素数14以上の高級脂肪族アルコール及びその誘導体;ステアリルアミン等の炭素数14以上のアミン及びその誘導体;低分子量ポリエチレンワックス、パラフィン素ワックス等のワックス類;シリコーンオイル、シリコンガム等が挙げられる。添加量は、成分(A)及び(B)の合計100重量部または成分(A)、(B)及び(C)の合計100重量部に対し、通常0.03〜1.5重量部、好ましくは0.03〜0.5重量部である。
また、本発明の樹脂組成物は、耐衝撃性を向上させるため、ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物(D)を含有することが好ましく、その含有量は、ポリアミド樹脂100重量部に対し、通常0.5〜20重量%、好ましくは1〜15重量%である。含有量が0.5重量%未満の場合は成分(D)の効果が発現されず、20重量%より多い場合は、成形加工性が劣り、外観が悪化する。
上記の成分(D)においては、主にブロックb中の脂肪族不飽和結合数が水素化により減少している。ブロックa及びブロックbの配列には、線状構造のもの又は分岐構造(ラジアルテレブロック)のものを含む。また、これらの構造のうちで一部にビニル芳香族化合物と共役ジエン系化合物とのランダム共重合部分に由来するランダム鎖を含んでいてもよい。これら構造のうちでも線状構造のものが好ましく、耐衝撃性の観点から、a−b−a型のトリブロック構造のものが特に好ましく、この場合、a−b型のジブロック構造のものを含んでいてもよい。
成分(D)のビニル芳香族化合物重合体ブロックaを構成する単量体(ビニル芳香族化合物)としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等が挙げられるが、好ましくはスチレンである。また、共役ジエン系化合物重合体ブロックbを構成する単量体(共役ジエン系化合物)としては、通常1,3−ブタジエン又は2−メチル−1,3−ブタジエンが挙げられる。成分(D)におけるビニル芳香族化合物に由来する繰り返し単位の占める割合は、通常10〜70重量%、好ましくは10〜40重量%である。成分(D)が有する不飽和結合は、共役ジエン系化合物に由来する脂肪族性不飽和結合のうち、水素添加されずに残存している割合として、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。また、ビニル芳香族化合物に由来する芳香族性不飽和結合の約25重量%以下が水素添加されていてもよい。共役ジエン系化合物重合体ブロックbを構成する単量体(共役ジエン系化合物)が1,3−ブタジエンの場合の成分(D)は、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)と称され、また、2−メチル−1,3−ブタジエンの場合の成分(D)は、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)と称され、種々のa−b−a型のトリブロック構造のものが市販されており、容易に入手できる。
上記の成分(D)において、ブロック共重合体の水素添加物の数平均分子量は、通常180,000以下、好ましくは120,000以下が好ましい。数平均分子量が180,000を超える場合は、成形加工性が劣り、外観が悪化する。なお、数平均分子量の下限は通常10,000である。
上記の成分(D)は、ポリアミド樹脂(A)への相溶性の点から、不飽和酸および/またはその誘導体で変性して使用するのが好ましい。上記の不飽和酸としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、ナジック酸等のα,β−不飽和カルボン酸が挙げられる。また、その誘導体としては、酸無水物、酸ハライド、アミド、イミド、エステル等があり、具体的には、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル等が挙げられる。これらの中では、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好ましく、特に、マレイン酸、イタコン酸又はこれらの酸無水物が好ましい。
不飽和酸および/またはその誘導体による成分(D)の変性を効率的に行うためには、ラジカル発生剤を使用することが好ましい。ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、アゾ化合物などが挙げられる。
有機過酸化物としては、(a)ハイドロパーオキサイド類:例えば、t−ブチル−ハイドロパーオキサイド、キュメン−ハイドロパーオキサイド、2、5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチル−ハイドロパーオキサイド、p−メンタン−ハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等;(b)ジ−アルキルパーオキサイド類:例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチル−パーオキサイド、t−ブチル−キュミル−パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−キュミルパーオキサイド等;(c)パーオキシケタール類:例えば、2,2−ビス−t−ブチルパーオキシ−ブタン、2,2−ビス−t−ブチル−パーオキシ−オクタン、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ−シクロヘキサン、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等;(d)パーオキシエステル類:例えば、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−ベンゾイルパーオキシ−ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等;(e)ジアシルパーオキサイド類:例えば、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
アゾ化合物としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−〔(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ〕ホルムアミド、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)等が挙げられる。その他のラジカル発生剤としてジクミルを挙げることが出来る。特に、寸法安定性や耐衝撃性の点から、10時間での半減期温度が120℃以上のラジカル発生剤が好ましい。10時間での半減期温度が120℃未満のものでは、寸法安定性や耐衝撃性の点で好ましくない。
なお、本発明において、成分(D)として、変性品と未変性品とを併用することも可能である。
更に、本発明の樹脂組成物は、成分(D)以外のエラストマーを含有することが可能である。エラストマーとしては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、ジエン系エラストマー、成分(D)以外の他のスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコン系エラストマー等の公知のエラストマーが挙げられる。これらのエラストマーは、ポリアミド樹脂(A)との相溶化のための変性を行って使用することも可能である。
本発明においては、以上の成分他、必要に応じ、ポリアミド樹脂組成物に一般に使用されている各種の添加剤、例えば、難燃剤、安定剤、顔料、染料、耐候性改良剤などを適宜添加することが出来る。例えば、難燃剤としては、公知のリン系、ハロゲン系、あるいはシリコン系の使用が可能である。また、安定剤としては、ハロゲン化銅系安定剤(例えば、沃化銅、塩化銅、臭化銅)とハロゲン化金属系安定剤(例えば、沃素カリウム、臭化カリウム等)の混合安定剤、有機系安定剤(例えば、ヒンダードフェノール系、フォスファイト系)が挙げられる。
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、通常、上記の各成分の所定量を配合した後に溶融混練することにより製造される。溶融混練の方法は、公知の如何なる方法であってもよい。例えば、単軸や2軸の押出機、バンバリーミキサー又はこれに類似した装置を使用することが出来る。そして、一括で押出機の基部から全ての材料を投入して溶融混練してもよいし、また、樹脂成分を投入して溶融しながら、ガラス繊維をサイドフィードして混練してもよい。また、添加剤や組成が異なる2種以上のコンパウンド物をペレット化した後にペレットブレンドする方法、一部の粉末成分や液体成分を別途ブレンドする方法などでもよい。
本発明の樹脂組成物は、ISO試験片について測定した引張強度が200MPa以上である。斯かる特徴により、本発明の樹脂組成物は、金属代替として携帯電子機器部品へ適応させるための材料として有用である。すなわち、金属代替として携帯電子機器部品へ適応させる一つの方法としては、樹脂組成物中のガラス繊維の含有量を高める方法がある。また、反りの問題を解決する方法としては、前述の先行技術の教示に従ってガラスフレーク等の板状フイラーを使用する方法がある。確かに、これらの方法により、成形品の剛性を向上させ、弾性率を金属材料のそれに近づけることが可能である。しかしながら、この場合、強度が不十分なために変形に対しての許容範囲が小さくなり、また、製品落下試験において求められる衝撃強度が不十分になるという問題がある。これに対し、本発明の樹脂組成物は、上記の問題を惹起することなく、上記の特徴を有するが故に、携帯電子機器部品に起こり得る変形にも耐えられる。また、本発明の樹脂組成物は薄肉化にも十分に対応することが出来る。
<携帯電子機器部品>
本発明の携帯電子機器部品は、前記の本発明の樹脂組成物を成形して成り、リブを除く平板部の平均厚さが1.2mm以下であることを特徴とする。一般に本発明の携帯電子機器部品は射出成形によって得られる。得られた携帯電子機器部品は、高い耐衝撃特性と剛性、優れた耐熱性を併せ持つ上、異方性が小さくて反りが小さいという特徴を有する。本発明の携帯電子機器部品は、電子手帳、携帯用コンピューター等のPDA、ポケットベル、携帯電話、PHSなどの内部構造物および筐体として有効であり、特に携帯電子機器の筐体として適している。なお、携帯電子機器部品の平板部には、ネジ穴等が存在してもよい。
本発明の携帯電子機器部品は、EMIシールド性を求められる場合、ガラス繊維以外に、カーボン繊維、金属繊維、金属メッキされた繊維(ガラス繊維、カーボン繊維、有機繊維)を併用することが可能である。また、導電塗装、金属メッキ、金属蒸着によってEMIシールド性を付与することも出来る。
以下に本発明を実施例および比較例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの例により何ら限定されるものではない。以下の例で使用した材料は以下の通りである。
(1)ポリアミド樹脂(MXD6):
三菱瓦斯化学(株)製「ポリアミドMXD6#6000」(融点243℃、相対粘度2.14)
(2)ポリアミド樹脂(PA66):
デュポン社製「ザイテル101」(相対粘度3.0)
(3)ブロック共重合体の水素添加物の酸変性体(変性SEBS):
後述の製造例1で調製した変性SEBSを使用した。
(4)GFA(長手形状断面のガラス繊維):
日東紡績社製チョップドストランド「CSG 3PA−820S」[扁平率=長径(28μm)/短径(7μm)(メーカー公称値)]
(5)GFB(繭形断面ガラス繊維):
日東紡績社製チョップドストランド「CSG 3PA−870S」[扁平率=長径(20μm)/短径(10μm)(メーカー公称値)2.0±0.3]
(6)GFC(円形断面ガラス繊維):
旭ファイバーグラス社製チョップドストランド「CS03JAFT2」[繊維径10μm、扁平率=1(メーカー公称値)]
(9)タルクA:
林化成社製「ミセルトン」[平均粒径1.4μm(メーカー公称値)]
(10)タルクB:
林化成社製「ミクロンホワイト5000A」[平均粒径4.1μm(メーカー公称値)]
(11)ガラスフレーク:
日本板硝子社製「フレカREFG−301」[平均粒径約600μm(メーカー公称値)]
離型剤(モンタン酸エステルワックス):
クラリアントジャパン社製「Licowax E」
製造例1(ブロック共重合体の水素添加物の酸変性体の調製):
スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、無水マレイン酸およびラジカル発生剤をヘンシェルミキサーで均一に混合した後、二軸押出機(スクリュウ径30mm、L/D=42)を使用し、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数300rpmにて溶融反応させ、ペレット化して、変性水素化ブロック共重合体(以下変性SEBSと略す)を得た。なお、無水マレイン酸としては、三菱化学(株)製の無水マレイン酸を使用し、ラジカル発生剤としては、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(化薬アクゾ社製「パーカドックス14」10時間での半減期温度121℃)を使用した。このようにして得られた変性SEBSを加熱減圧乾燥した後、ナトリウムメチラートによる滴定で無水マレイン酸の付加量を求めたところ、0.5重量%であった。
実施例1〜5及び比較例1〜10:
表2に示す組成となるように、各成分を秤量し、繊維状充填材を除く成分をタンブラーにてブレンドし、二軸押出機(東芝機械社製「TEM35B」)の基部から投入して溶融した後、ガラス繊維をサイドフィードして樹脂ペレットを作成した。押出機の温度設定は、サイドフィード部まで280℃、サイドフィード部からは260℃とした。
また、各樹脂組成物のペレットを使用し、ISO引張試験片(10mm×10mm×4mm)を成形した。曲げ試験片およびびシャルピー衝撃試験片は、両端切断とノッチカット(「有り」と「無し」)を成形した。この方法はISO規格に準拠して行った。
上記の成形は、射出成形機(ファナック社製「100T」)を使用し、シリンダー温度設定:280℃(一律)、金型温調機設定:130℃の条件で行った。また、射出速度は、ISO引張試験片中央部の断面積から樹脂流速を計算して300mm/sとなるように設定し、約95重量%充填時にVP切替となるように保圧に切り替えた。保圧はバリの出ない範囲で高めに620kgf/cmを25秒とした。
ISO527規格の1及び2に準じ、引張強度、引張伸び、曲げ強度、曲げ弾性率、ノッチ付きシャルピー衝撃強度、ノッチなしシャルピー衝撃強度を測定した。結果を表2に示した。
また、反り評価用の試験片を作成して反り試験を行った。評価用の試験片は次のようにして作成した。すなわち、縦横100mmで厚み1mmのキャビティに、その一辺(100mm)全体に設けられた厚み0.8mmのファンゲートから樹脂を充填して成形を行った後、冷却し、ゲート部分をカットしないまま金型から取り出し、試験片として使用した。上記の成形は、射出成形機(ファナック社製「100T」)を使用し、シリンダー温度設定:280℃(一律)、金型温調機設定:130℃、射出時間:15秒、冷却時間:30秒の条件で行った。
反り試験は次の要領で行った。すなわち、試験片を、25℃、湿度65%の条件で一昼夜放置した後。水平面に置き、ファンゲート側を基準とし、これと反対側の端面の高さを「浮き上がりの高さ」(反り)として次の4段階の基準により評価した。結果を表2に示した。
実施例1〜実施例5は、ガラス繊維として、本発明で規定する長手形状断面のガラス繊維(GFA)を使用したことにより、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、衝撃強度が高く、伸び及び反りが小さいという利点を有し、携帯電子機器用部品に適している。
しかしながら、一般的なガラス繊維である円形断面のガラス繊維(GFC)を使用した場合(比較例2、比較例8、比較例10)、長手形状断面のガラス繊維であっても扁平率が小さいガラス繊維(GFB)を使用した場合(比較例1、比較例6)は、特に反りと衝撃強度に顕著な欠点が見られ、携帯電子機器用部品に適していない。
更に、比較例3は、円形断面のガラス繊維(GFC)と共に、反りの低減方法として従来知られているガラスフレークを多量に使用した場合である。この場合、ガラスフレークを多量に使用することにより、反りは低減されるが、実施例1に比べ強度の面で著しく劣っている。比較例4は、比較例3において、ガラスフレークの使用量を減らした例であるが、反りの抑制効果が不十分である。
比較例5は、ガラス繊維として、本発明で規定する長手形状断面のガラス繊維(GFA)と円形断面のガラス繊維(GFC)とを併用した例であるが、その使用比率が本発明で規定する範囲外であるため、実施例に比べて特に衝撃強度や反りの評価が劣っている。
比較例6は、実施例2において、長手形状断面のガラス繊維として扁平率が低いガラス繊維を使用した例であるが、実施例に比べて特に衝撃強度や反りの評価が劣っている。
比較例7は、ガラス繊維として、本発明で規定する長手形状断面のガラス繊維(GFA)を使用しているが、その使用割合が少な過ぎるため、ISO引張強度が小さく、その結果、他の強度も不十分である。比較例9は、ガラス繊維として、本発明で規定する長手形状断面のガラス繊維(GFA)を使用しているが、その割合が多すぎるため押出が不可能であった。

Claims (9)

  1. ポリアミド樹脂(A)と以下の式で定義する扁平率が2.5以上である長手形状断面のガラス繊維(B)とを含有し、更に、必要に応じ、直径が3〜30μmである円形断面のガラス繊維(C)を含有し、成分(B):(C)の割合が3:7〜10:0(重量比)であり、成分(A)の割合が60〜34重量%、成分(B)の割合または成分(B)及び(C)の合計量の割合が40〜66重量%であり(但し上記の各成分の合計は100重量%である)、ISO試験片について測定した引張強度が200MPa以上であることを特徴とする携帯電子機器用ポリアミド樹脂組成物。
  2. 成分(A)及び(B)の合計量または成分(A)、(B)及び(C)の合計量に対する成分(B)の割合が25〜66重量%である請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. ガラス繊維(B)の断面の短径D1が3μm以上で且つ扁平率が3以上ある請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 成分(A)の50重量%以上が芳香族モノマー由来の繰り返し単位を30モル%以上含むポリアミド樹脂である請求項1〜3の何れかに記載の樹脂組成物。
  5. 芳香族モノマー由来の繰り返し単位を30モル%以上含むポリアミド樹脂がポリアミドMX樹脂である請求項4に記載の樹脂組成物。
  6. 成分(A)及び(B)の合計量100重量部または成分(A)、(B)及び(C)の合計量100重量部に対し、平均粒子径が2μm以下のタルク0.1〜8重量部を含む請求項1〜5の何れかに記載の樹脂組成物。
  7. 更に、ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物(D)を含有し、その割合がポリアミド樹脂(A)100重量部当たり0.5〜20重量部である請求項1〜6の何れかに記載の樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7の何れかに記載の樹脂組成物を成形して成り、成形品のリブを除く平板部の平均厚さが1.2mm以下であることを特徴とする携帯電子機器部品。
  9. 携帯電子機器の筐体に使用する請求項8に記載の携帯電子機器部品。
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