JP6796951B2 - ポリアミド樹脂組成物、成形品およびポリアミド樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
ポリアミド樹脂組成物、成形品およびポリアミド樹脂組成物の製造方法 Download PDFInfo
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Description
<1>半結晶化時間(ST(P))が20〜500秒であるポリアミド樹脂100質量部と、数平均繊維長が3〜10mmである炭素繊維5〜60質量部と、数平均繊維長が50〜200μmであり、炭素繊維およびガラス繊維から選択される無機繊維を含み、前記数平均繊維長が50〜200μmである無機繊維は、前記数平均繊維長が3〜10mmである炭素繊維100質量部に対し、40〜850質量部含む、ポリアミド樹脂組成物。
<2>前記数平均繊維長が50〜200μmである無機繊維は、ミルドファイバーである、<1>に記載のポリアミド樹脂組成物。
<3>さらに、エラストマーを含む、<1>または<2>に記載のポリアミド樹脂組成物。
<4>前記数平均繊維長が3〜10mmである炭素繊維と前記数平均繊維長が50〜200μmである無機繊維の合計量が、全体の35〜55質量%を占める、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物。
<5>前記数平均繊維長が50〜200μmである無機繊維が、炭素繊維を少なくとも含む、<1>〜<4>のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物。
<6>前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンの少なくとも一方に由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、<1>〜<5>のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物。
<7>前記炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸が、アジピン酸およびセバシン酸の少なくとも一方を含む、<6>に記載のポリアミド樹脂組成物。
<8><1>〜<7>のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品。
<9>半結晶化時間(ST(P))が20〜500秒であるポリアミド樹脂に、数平均繊維長が3〜10mmである炭素繊維と、数平均繊維長が50〜200μmであり、炭素繊維およびガラス繊維から選択される無機繊維を配合して混練することを含み、
前記半結晶化時間(ST(P))が20〜500秒であるポリアミド樹脂100質量部に対し、数平均繊維長が3〜10mmである炭素繊維を5〜60質量部配合し、
前記数平均繊維長が3〜10mmである炭素繊維100質量部に対し、前記数平均繊維長が50〜200μmである無機繊維を40〜850質量部配合する、ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、半結晶化時間(ST(P))が20〜500秒であるポリアミド樹脂100質量部と、数平均繊維長が3〜10mmである炭素繊維(以下、「特定炭素繊維」ということがある。)5〜60質量部と、数平均繊維長が50〜200μmであり、炭素繊維およびガラス繊維から選択される無機繊維を含み、前記数平均繊維長が50〜200μmである無機繊維(以下、「特定無機繊維」ということがある。)は、前記数平均繊維長が3〜10mmである炭素繊維100質量部に対し、40〜850質量部含むことを特徴とする。このようなポリアミド樹脂組成物を用いて成形することにより、機械的強度が高く、外観に優れた成形品が得られる。
本発明では、半結晶化時間(ST(P))が20〜500秒であるポリアミド樹脂を用いることにより、成形時の樹脂の固化測祖が遅いため、成形品表面をより樹脂で覆いやすくなり、表面のフィラー浮きを低減することができ、良好な外観が得られる。特定無機繊維は、短い繊維のため、炭素繊維に配合することによって、炭素繊維の間に短い特定無機繊維が入り込むことで成形品表面のうねりを抑制することができる。そのため、機械的強度を保ちつつ、外観に優れた成形品が得られる。
本発明では、半結晶化時間(ST(P))が20〜500秒であるポリアミド樹脂(以下、「特定ポリアミド樹脂」ということがある)を用いる。
半結晶化時間は、脱偏光光度法で、試料溶融温度がポリアミド樹脂の融点+30℃、試料溶融時間が3分、結晶化油浴温度が140℃の条件で測定された値をいう。脱変更高度法は、例えば、ポリマー結晶化速度測定装置(コタキ製作所製、形式:MK701)を使用して測定できる。
半結晶化時間を20秒以上とすることで、成形品の表面状態を均一化することができる。また前記半結晶化時間が500秒以下であれば、射出成形における固化不良や離型不良を抑制することができる。さらに、得られた成形品の結晶化が十分に進むことで、成形品の吸水率や物性の温度依存性も小さく、寸法安定性も良好となる。
本発明で用いる特定ポリアミド樹脂は、より好ましくは、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンの少なくとも一方に由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂である。このようなポリアミド樹脂を用いることにより、得られる成形品が、機械的強度と外観のバランスに優れる。
ジアミン成分として、キシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合は、ジアミン由来の構成単位の20モル%未満であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
また、特定ポリアミド樹脂のガラス転移点は、50〜150℃が好ましく、55〜120℃がより好ましく、さらに好ましくは60〜100℃である。この範囲であると、成形品の耐熱性がより良好となる傾向にある。
融点およびガラス転移点は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
特定ポリアミド樹脂の分子量分布は、例えば、重合時に使用する開始剤や触媒の種類、量および反応温度、圧力、時間等の重合反応条件などを適宜選択することにより調整できる。
本発明のポリアミド樹脂組成物に含まれる特定ポリアミド樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明では、数平均繊維長が3〜10mmである炭素繊維(特定炭素繊維)を用いる。このような長さの炭素繊維を用いることにより、機械的強度に優れた成形品が得られる。特定炭素繊維は、その種類等を特に定めるものではなく、ポリアクリロニトリル系炭素繊維(PAN系繊維)およびピッチを使ったピッチ系炭素繊維のいずれも好ましく用いられ、ポリアクリロニトリル系炭素繊維(PAN系繊維)がより好ましい。
特定炭素繊維は、数平均繊維長の下限が3mm以上であり、4mm以上が好ましい。前記数平均繊維長の上限は、10mm以下であり、8mm以下が好ましく、7mm以下がより好ましく、6mm以下がさらに好ましい。
特定炭素繊維は、数平均繊維径が3〜20μmのものが好ましく、5〜15μmのものがより好ましい。このような範囲の炭素繊維を用いることにより、得られる成形品を機械強度と外観のバランスにより優れたものとすることができる。
また、特定炭素繊維は、特定炭素繊維の23℃におけるJIS R7601準拠による測定で引張強度が5.0GPa以下であるもの(好ましくは、3.5〜5.0GPa、より好ましくは、3.5〜4.9GPa)を用いることもできる。
本発明のポリアミド樹脂組成物では、このように引張強度が比較的低いものを用いても、弾性率とシャルピー衝撃強度を維持することができ、さらに、良好な外観を達成できる。
特定炭素繊維の具体例としては、例えば、東レ(株)製のトレカ、東邦テナックス(株)製のベスファイトフィラメント、三菱レイヨン(株)製のパイロフィル等が挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物に含まれる特定炭素繊維は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明では、数平均繊維長が50〜200μmである無機繊維(特定無機繊維)を用いるが、ミルドファイバーであることが好ましい。ミルドファイバーは、無機繊維をミルする際に、繊維の表面に傷がつく。この傷の部分が溶融混練の際に、特定炭素繊維をより細かく破砕するのを助け、得られる成形品の表面外観をより効果的に向上させることができる。
本発明で用いる特定無機繊維は、数平均繊維径の下限が1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることがさらに好ましい。前記数平均繊維径の上限は25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、得られる成形品を機械的強度と外観のバランスにより優れたものとすることができる。
平均繊維長および平均繊維径は、それぞれ、任意の100本の繊維について、顕微鏡を用いて長さおよび径を観察し、平均値を算出することによって求められる。
本発明で用いる特定無機繊維の市販品としては、セントラル硝子社製、EFH 50−31/T、日本電気硝子社製、EPG70M−01N、ゾルテック社製、PX35MF0150が例示される。
本発明のポリアミド樹脂組成物に含まれる特定無機繊維は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、エラストマーを含んでいてもよい。エラストマーを含むことにより、耐衝撃性を向上させることができる。エラストマーは耐衝撃改良剤として知られているが、炭素繊維を配合した樹脂組成物では、耐衝撃性が向上しないことが知られており、本発明のポリアミド樹脂組成物に、エラストマーを配合することにより、耐衝撃性が向上することは驚くべきことである。
本発明で用いるエラストマーとしては、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート−ブタジエンゴム共重合体(MB樹脂)、SBS、SEBSと呼ばれているスチレン−ブタジエン系トリブロック共重合体とその水添物、SPS、SEPSと呼ばれているスチレン−イソプレン系トリブロック共重合体とその水添物、TPOと呼ばれているオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系エラストマー、シロキサン系ゴム、アクリレート系ゴム、シロキサン共重合体エラストマー等が挙げられる。エラストマーとしては、特開2012−251061号公報の段落番号0075〜0088に記載のエラストマー、特開2012−177047号公報の段落番号0101〜0107に記載のエラストマー等を用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。本発明では、スチレン−ブタジエン系トリブロック共重合体とその水添物が好ましく、SEBSがより好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、エラストマーを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、黒色系着色剤を含むことが好ましい。本発明では、黒色系着色剤を配合することにより、剛性が高く、かつ、弾性率が高く、さらに、炭素繊維の浮きおよび炭素繊維の透けの抑制された、外観に優れた成形品を提供可能になる。
本発明のポリアミド樹脂組成物では、カーボンブラックを配合することにより、カーボンブラックが核剤として働き、薄肉成形した際にも、良好な成形性を達成できる。すなわち、本発明では結晶化速度が遅い樹脂を用いているため、薄肉成形では硬化が進みにくいが、黒色系着色剤として、カーボンブラックを配合することにより、カーボンブラックが核剤として働き、硬化を進める。この結果、本発明では、厚さ1mm以下の部分を有する薄肉成形品についても、良好に成形できる。
本発明のポリアミド樹脂組成物に含まれる黒色系着色剤は、1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。2種以上含まれる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、成形時の離型性を向上させるため、離型剤を配合することが好ましい。離型剤としては、本発明のポリアミド樹脂組成物の難燃性を低下させ難いものが好ましく、例えば、カルボン酸アミド系ワックスやビスアミド系ワックス、長鎖脂肪酸金属塩等が挙げられる。
ジアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、トリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
離型剤は、1種のみでもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、結晶化速度を調整するために、核剤を含んでいてもよい。核剤の種類は、特に、限定されるものではないが、タルク、窒化ホウ素、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、窒化珪素、チタン酸カリウムおよび二硫化モリブデンが好ましく、タルクおよび窒化ホウ素がより好ましく、タルクがさらに好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物が核剤を含む場合、その含有量は、特定ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜8質量部がより好ましく、0.1〜5質量部がさらに好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、核剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物は、必要に応じ、他の成分を含有してもよい。例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、黒色系着色剤以外の染顔料、難燃剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、上記以外の熱可塑性樹脂などが挙げられる。これらの成分は、本発明のポリアミド樹脂組成物の5質量%以下であることが好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、特定炭素繊維および特定無機繊維以外の他のフィラー成分を含んでいてもよい。他のフィラー成分としては、数平均繊維長が3mm未満の炭素繊維や数平均繊維長が10mmを超える炭素繊維やウィスカーが挙げられる。本発明のポリアミド樹脂組成物の一実施形態として、他のフィラー成分を実質的に含まないこともできる。ここでの実質的に含まないとは、特定炭素繊維の配合量の5質量%以下とすることが例示される。
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法は、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法の一実施形態として、半結晶化時間(ST(P))が20〜500秒であるポリアミド樹脂に、数平均繊維長が3〜10mmである炭素繊維と、数平均繊維長が50〜200μmであり、炭素繊維およびガラス繊維から選択される無機繊維を配合して混練することを含み、前記半結晶化時間(ST(P))が20〜500秒であるポリアミド樹脂100質量部に対し、数平均繊維長が3〜10mmである炭素繊維を5〜60質量部配合し、前記数平均繊維長が3〜10mmである炭素繊維100質量部に対し、前記数平均繊維長が50〜200μmである無機繊維を40〜850質量部配合する、ポリアミド樹脂組成物の製造方法が挙げられる。このようなポリアミド樹脂組成物の一例として、ペレットが挙げられる。
具体的には、特定ポリアミド樹脂、特定炭素繊維および特定無機繊維、ならびに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
また、例えば、一部の成分(例えば、黒色系着色剤)を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって本発明のポリアミド樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、分散し難い成分を混合する際には、その分散し難い成分を予め水や有機溶剤等の溶媒に溶解または分散させ、その溶液または分散液と混練するようにすることで、分散性を高めることもできる。
本発明の成形品は、本発明のポリアミド樹脂組成物を成形してなる。この成形品の形状、模様、色彩、寸法などに制限はなく、その成形品の用途に応じて任意に設定すればよい。
特に、本発明の成形品の例としては、薄肉成形品が挙げられる。本発明のポリアミド樹脂組成物から提供される成形品中の薄い部分の厚さは、0.2〜4mmとすることが可能であり、特に厚さ0.5〜2mmの部分を有する成形品を提供することも可能である。
本発明のポリアミド樹脂組成物から得られた成形品は、曲げ強度が300MPa以上であることが好ましく、340MPa以上であることがより好ましく、350MPa以上であることがさらに好ましく、370MPa以上であることが一層好ましい。前記曲げ強度の上限は、特に定めるものではないが、例えば、500MPa以下、さらには、450MPa以下でも十分に実用レベルである。
本発明のポリアミド樹脂組成物から得られた成形品は、曲げ弾性率が23GPa以上であることが好ましく、25GPa以上であることがより好ましく、27GPa以上であることがさらに好ましい。前記弾性率の上限は、特に定めるものではないが、例えば、40GPa以下、さらには、38GPa以下でも十分に実用レベルである。
本発明における曲げ強度および曲げ弾性率は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
MXD6:ポリメタキシリレンアジパミド、三菱ガス化学社製、商品名「MXナイロンS6000」、融点243℃、ガラス転移点75℃。
脱偏光光度法で、試料溶融温度がポリアミド樹脂の融点+30℃、試料溶融時間が3分、結晶化油浴温度が140℃の条件でポリマー結晶化速度測定装置(コタキ製作所製、形式:MK701)を使用して測定した半結晶化時間(ST(P))は100秒であった。
なお、ポリアミド樹脂の融点は、DSC(示差走査熱量測定)法により観測される昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度として測定した。ポリアミド樹脂のガラス転移温度は、ポリアミド樹脂を一度加熱溶融させ熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度昇温して測定されるピークトップの温度として測定した。
具体的には、DSC測定器を用い、試料であるポリアミド樹脂の量は約1mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30mL/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温から予想される融点以上の温度まで加熱し溶融させた際に観測される吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めた。次いで、溶融したポリアミド樹脂を、ドライアイスで急冷し、10℃/分の速度で融点以上の温度まで再度昇温し、ガラス転移温度を求めた。DSC測定器としては、島津製作所(SHIMADZU CORPORATION)製、DSC−60を用いた。
上記と同様にして測定した半結晶化時間(ST(P))は3秒であった。
<<ポリアミド(MP6)の合成>>
アジピン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を攪拌しながら、パラキシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)とメタキシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)のモル比が3:7の混合ジアミンを、加圧(0.35MPa)下でジアミンとアジピン酸(ローディア社製)とのモル比が約1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を270℃まで上昇させた。滴下終了後、0.06MPaまで減圧し10分間反応を続け分子量1,000以下の成分量を調整した。その後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミド樹脂を得た。以下、「MP6」という。得られたMP6の融点は257℃、ガラス転移点は75℃であった。上記と同様にして測定した半結晶化時間(ST(P))は30秒であった。
<<ポリアミド(MP10)の合成>>
撹拌装置、温度計、還流冷却器、原料滴下装置、加熱装置などを装備した容量が3Lのフラスコに、セバシン酸730gを仕込み、窒素雰囲気下、フラスコ内温を160℃に昇温してセバシン酸を溶融させた。フラスコ内に、パラキシリレンジアミンを30モル%、メタキシリレンジアミンを70モル%含有する混合キシリレンジアミ680gを、約2.5時間かけて逐次滴下した。この間、撹拌下、内温を生成物の融点を常に上回る温度に維持して反応を継続し、反応の終期には270℃に昇温した。反応によって発生する水は、分縮器によって反応系外に排出させた。滴下終了後、275℃の温度で攪拌し反応を続け、1時間後に反応を終了した。生成物をフラスコより取り出し、水冷しペレット化した。得られたMP10の融点は215℃、ガラス転移点は63℃であった。上記と同様にして測定した半結晶化時間(ST(P))は30秒であった。
炭素繊維2:ゾルテックミルドファイバー、ゾルテック社製、PX35MF0150、数平均繊維径7μm、数平均繊維長100μm
ガラス繊維1:ミルドファイバー、セントラル硝子社製、EFH 50−31/T、数平均繊維径11μm、数平均繊維長50μm
ワラストナイト:NYGLOS8−10013、巴工業社製
エラストマー:SEBS、FG1901GH、クレイトンポリマージャパン社製
核剤1:タルク、林化成社製、ミクロンホワイト5000S
核剤2:タルク、林化成社製、ミクロンホワイト5000A
黒色系着色剤2:カーボンブラック、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、PR−MP6BK
黒色系着色剤3:カーボンブラック、オオタ化成社製、#45−50
離型剤1:ケトンワックス、エメリーオレオケミカルズジャパン社製、LOXIOLEP2036−18
離型剤2:モンタン酸カルシウム、日東化成工業社製、CS−8CP
<ポリアミド樹脂組成物のコンパウンド>
各成分を後述する表1に従って秤量し、炭素繊維、ガラス繊維、ワラストナイトおよび黒色系着色剤を除く成分をタンブラーにてブレンドし、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)の根本から投入し、溶融した。黒色系着色剤は、ポリアミド樹脂で50質量%マスターバッチを製造してから投入し、混練した。混練後、炭素繊維、ガラス繊維およびワラストナイトをサイドフィードして樹脂ペレット(ポリアミド樹脂組成物)を作製した。押出機の設定温度は、280℃にて実施した。
上述の製造方法で得られた樹脂ペレットを120℃で4時間乾燥させた後、日精樹脂工業社製、NEX140IIIを用いて、4mm厚さのISO引張り試験片を射出成形した。シリンダー温度は280℃、金型温度は130℃にて実施した。
ISO178に準拠して、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度で曲げ強度(単位:MPa)および曲げ弾性率(単位:GPa)を測定した。
上述の方法で得られたISO引張り試験片を用い、ISO179−1およびISO179−2に準拠し、23℃の条件で、ノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。シャルピー衝撃強度の単位は、kJ/m2で示した。
上記の方法で得られたISO引張試験片を用い、ISO1883に準拠し、比重を測定した。
上述の製造方法で得られた樹脂ペレットを120℃で4時間乾燥させた後、ファナック社製、ファナックα−100iAを用いて、厚さ3mmの100角プレートを射出成型した。シリンダー温度は280℃、金型温度は130℃にて実施した。得られたプレートを三波長蛍光灯下にて斜めから目視で確認し、プレート表面の状態を以下の基準で数値化した。
5:うねりが確認されず完全に鏡面となっているもの
4:うねりがほとんど確認されずほぼ鏡面となっているもの
3:うねりが極一部で確認されるものの鏡面に近いもの
2:うねりが一部で確認されるもの
1:うねりが全面に渡り確認されるもの
上記結果から明らかな通り、本発明のポリアミド樹脂組成物は、高い機械的強度と優れた外観を達成できた。さらに、比重も小さい成形品が得られた。さらに、エラストマーを配合することにより、より高いシャルピー衝撃強度を達成可能になった。
Claims (8)
- 半結晶化時間(ST(P))が20〜500秒であるポリアミド樹脂100質量部と、数平均繊維長が3〜10mmである炭素繊維5〜60質量部と、数平均繊維長が50〜200μmであり、炭素繊維およびガラス繊維から選択される無機繊維を含み、
前記数平均繊維長が50〜200μmである無機繊維は、前記数平均繊維長が3〜10mmである炭素繊維100質量部に対し、40〜850質量部含み、
前記数平均繊維長が50〜200μmである無機繊維は、ミルドファイバーである、ポリアミド樹脂組成物。 - さらに、エラストマーを含む、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記数平均繊維長が3〜10mmである炭素繊維と前記数平均繊維長が50〜200μmである無機繊維の合計量が、全体の35〜55質量%を占める、請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記数平均繊維長が50〜200μmである無機繊維が、炭素繊維を少なくとも含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンの少なくとも一方に由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸が、アジピン酸およびセバシン酸の少なくとも一方を含む、請求項5に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品。
- 半結晶化時間(ST(P))が20〜500秒であるポリアミド樹脂に、数平均繊維長が3〜10mmである炭素繊維と、数平均繊維長が50〜200μmであり、炭素繊維およびガラス繊維から選択される無機繊維を配合して混練することを含み、
前記半結晶化時間(ST(P))が20〜500秒であるポリアミド樹脂100質量部に対し、数平均繊維長が3〜10mmである炭素繊維を5〜60質量部配合し、
前記数平均繊維長が3〜10mmである炭素繊維100質量部に対し、前記数平均繊維長が50〜200μmである無機繊維を40〜850質量部配合する、ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
Priority Applications (1)
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