JP4736295B2 - ポリアミド樹脂組成物およびこれを用いた成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物およびこれを用いた成形品に関するものである。さらに詳しくは、機械的強度、剛性などの物性が優れた成形品が得られ、かつ、優れた外観と耐候性が要求される自動車外装部品、建材・住宅設備部品など屋外で使用される製品製造用のポリアミド樹脂組成物、および、このポリアミド樹脂組成物より得られる成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド樹脂は、機械的特性、成形加工性、耐薬品性などが良好であるので、自動車部品、機械部品、建材・住宅設備部品の成形材料として広く使用されている。しかし、ポリアミド樹脂は極めて酸化劣化を受けやすく、長期間の屋外での使用中に分子鎖の切断による分子量の低下、これに伴う機械的強度の低下、部品(製品)表面への亀裂発生、変色などによる外観劣化などの好ましくない現象が起こる。これら酸化劣化や外観劣化は、熱や光によって促進され易く、屋外で使用される用途ではその使用が制約される。
【0003】
これらの劣化現象を防止する目的で、ポリアミド樹脂に種々の安定剤を添加する手法が、特開昭48−93652号公報、特公昭63−29823号公報などに開示されている。しかしながら、これらの種々の安定剤を添加したことによる耐候性改良効果はなお不十分であり、さらに改良が望まれている。さらに、特開2000−154316号公報、特開2001−98149号公報などには、強度・剛性、耐候性などに優れた無機強化ポリアミド樹脂組成物が提案されている。しかしながら、得られる材料の剛性が低いために、成形品の形状が制限されるなど問題があり、なお改良が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術に存在した課題を解決し、ポリアミド樹脂自体が本来有している機械的強度、剛性などの優れた物性を犠牲にせず、成形品の形状が制限されることがなく、長期間屋外で使用しても酸化劣化や外観劣化が起こり難く、耐候性に優れた成形品が得られるポリアミド樹脂組成物、および成形品を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、第1発明では、芳香族混合ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応より得られる芳香族ポリアミド{(A1)成分}を含むポリアミド樹脂{(A)成分}100重量部に対して、カーボンブラック{(C)成分}が0.1〜20重量部、およびポリスチレン系樹脂{(D1)成分}が(C)成分100重量部に対して50〜200重量部、それぞれ配合されてなることを特徴とするポリアミド樹脂組成物であって、前記ポリスチレン系樹脂{(D1)成分}が、ポリスチレンまたはスチレン−アクリロニトリル共重合体であり、かつ、前記カーボンブラック{(C)成分}を、前記ポリスチレン系樹脂{(D1)成分}の一部または全部とでマスターバッチとし、配合することを特徴とするポリアミド樹脂組成物を提供する。
【0006】
また、第2発明では、上記第1発明に係るポリアミド樹脂組成物を原料とし、製造されたものであることを特徴とする成形品を提供する。
【0007】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明に係るポリアミド樹脂組成物において、基体となるポリアミド樹脂{以下、(A)成分と略称する}は、芳香族混合ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応より得られる芳香族ポリアミド{以下、(A1)成分と略称する}を含むポリアミド樹脂である。(A1)成分を含む(A)成分(ポリアミド樹脂)は、(A1)成分のほかにポリアミド6{以下、(B)成分と略称する}を配合されていてもよい。(A1)成分に対し(B)成分を配合すると、(A1)成分のみの場合に比較して、得られる成形品の耐光性、耐候性などを向上させることができる効果がある。
【0008】
本発明において(A1)成分とは、主として、芳香族混合ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応より得られる芳香族ポリアミドをいう。芳香族混合ジアミンは、パラキシリレンジアミン10〜50モル%と、メタキシリレンジアミン50〜90モル%よりなり、少量の他のジアミンを含んでいてもよい。パラキシリレンジアミンの割合が50モル%を超えると、得られる芳香族ポリアミドの融点が高くなりすぎ、成形時の加熱により熱劣化を起こしやすく、好ましくない。芳香族混合ジアミンは、中でも、パラキシリレンジアミン20〜45モル%とメタキシリレンジアミン55〜80モル%よりなる混合物が好ましく、さらに好ましくは、パラキシリレンジアミン20〜40モル%と、メタキシリレンジアミン60〜80モル%とからなる混合ジアミンである。他のジアミンは、全ジアミンの10モル%以下の量、好ましくは5モル%以下の量である。
【0009】
他のジアミンとしては、パラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン以外の芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミンなどが挙げられる。芳香族ジアミンとしては、例えば、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミンなどが挙げられ、脂肪族ジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミンなどが挙げられ、脂環族ジアミンとしては、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0010】
脂肪族ジカルボン酸は、少量の芳香族ジカルボン酸を含んでいてもよい。脂肪族ジカルボン酸は、好ましくはα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸であり、中でより好ましいのは炭素数が6〜12のものである。脂肪族ジカルボン酸類の具体例としては、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などが挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、1,5−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、全ジカルボン酸の10モル%以下の量、好ましくは5モル%以下の量を使用することができる。
【0011】
(A)成分の相対粘度は、96%硫酸中での濃度を1g/100mlとし、温度25℃の条件下の測定値が1.6〜3.0の範囲が好ましい。相対粘度が高すぎると樹脂組成物の成形性が低下し、かつ、成形品の表面光沢が向上させることができず、相対粘度が低すぎると得られる成形品の機械的強度が不十分であり、いずれも好ましくない。(A)成分の相対粘度のより好ましい範囲は1.7〜2.9であり、中でも好ましいのは1.8〜2.8である。
【0012】
上記(A)成分に(B)成分を配合して混合ポリアミドとする際には、(A1)成分を50重量%以上、(B)成分を50重量%以下とするのが好ましい。(B)成分が50重量%を超えると、成形品の剛性低下や吸湿に基づく寸法安定性が低下する場合があり、いずれも好ましくない。
【0013】
(B)成分の相対粘度は、98%硫酸中濃度1g/100ml、温度25℃の条件下の測定値で、1.8〜3.5が好ましい。相対粘度が高すぎると樹脂組成物の成形性が低下し、相対粘度が低すぎると得られる成形品の機械的強度が不十分であり、いずれも好ましくない。(B)成分の相対粘度のより好ましい範囲は2.0〜3.2であり、中でも好ましいのは2.1〜3.0である。
【0014】
本発明に係るポリアミド樹脂組成物は、上記(A)成分にカーボンブラック{以下、(C)成分と略称する}を配合する。(C)成分は、本発明に係るポリアミド樹脂組成物の耐候性を向上させるように機能する。本発明において(C)成分は、特に限定されるものではないが、例えばサーマルブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどが挙げられる。(C)成分は、平均粒子径が10μm〜40μmの範囲、BET吸着法による比表面積が50〜300m2/gの範囲、ジブチルフタレートを用いた吸油量の測定値が50cc/100g〜150cc/100gの範囲であるものが好適である。
【0015】
上記(A)成分に対する(C)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して、カーボンブラック{(C)成分}を0.1〜20重量部の範囲とする。(C)成分の配合量が0.1重量部未満であると、本発明に係るポリアミド樹脂組成物の耐候性向上効果が小さく、(C)成分の配合量が20重量部を越えると、ポリアミド樹脂組成物の強度・剛性を損なうこととなり、いずれも好ましくない。
【0016】
本発明に係るポリアミド樹脂組成物は、ポリスチレン系樹脂{以下、(D1)成分と略称する}またはポリエチレン系樹脂{以下、(D2)成分と略称する}を含むことも特徴である。具体的には、(C)成分100重量部に対して、(D1)成分または(D2)成分を50〜200重量部とする。(D1)成分または(D2)成分が50重量部未満であると、耐候性向上効果が小さく、200重量部を超えると強度・剛性を損なうことになり、いずれも好ましくない。(C)成分100重量部に対する(D1)成分または(D2)成分の好ましい範囲は、75〜150重量部である。
【0017】
(D1)成分は、スチレンの含有率が10重量%以上のスチレン系重合体、共重合体、グラフト共重合体を意味する。具体的には、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(p−メチルスチレン)などの単独重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン単量体とマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、またはアクリルアミドなどのアクリルアミド系単量体との共重合体などが挙げられる。さらに、スチレン系重合体のスチレンの一部を、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレンなどの単量体に置換した共重合体であってもよい。上記(D1)成分の中では、耐候性の観点で好ましいのはポリスチレンとAS樹脂であり、中でもAS樹脂が特に好ましい。
【0018】
(D2)成分は、分子鎖中にエチレン鎖を有するエチレン系重合体、共重合体を意味する。具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)などに代表される各種ポリエチレンのほか、エチレン−プロピレンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン−ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体などのエチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレン−メタクリレート、エチレン−ブチルアクリレートなどのエチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、エチレン−酢酸ビニルなどのエチレンと脂肪族ビニルとの共重合体などが挙げられる。上記(D2)成分の中では、加工性の観点から低密度ポリエチレン(LDPE)が最も好ましい。
【0019】
本発明に係るポリアミド樹脂組成物では、上記(C)成分を、使用する(D1)成分または(D2)成分の一部または全部でマスターバッチ{以下、(C-MB)と略称する}を製造し、配合するのが、(C)成分の分散性を向上させる目的からも好ましい。(C)成分の(C-MB)を製造するには、溶融させた(D1)成分または(D2)成分に、(C)成分を混練する方法によることができる。(C)成分を(D1)成分または(D2)成分に混練するには、押出機、加熱ロール、バンバリーミキサー、スーパーミキサーなどの溶融混練機を使用することができる。
【0020】
本発明に係るポリアミド樹脂組成物は、上記(A)成分、(B)成分、(C-MB)のほかに、無機充填材{以下、(E)成分と略称する}、銅化合物{以下、(F1)成分と略称する}および/またはハロゲン化合物{以下、(F2)成分と略称する}、他の各種添加剤{以下、(G)成分と略称する}を配合することができる。(E)成分を配合すると、本発明に係るポリアミド樹脂組成物の機械的強度・剛性を大幅に改善できる。(F1)成分および/または(F2)成分を配合すると、本発明に係るポリアミド樹脂組成物の耐候性を一層向上させることができる。
【0021】
(E)成分(無機充填材)は、その種類に制限がなく、従来から知られている無機充填材であってよく、形状も特に制限がなく、繊維状、板状、針状、球状、粉末などいずれであってもよい。(E)成分の具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ウォラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウムウィスカー、ガラスビーズ、バルーン、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、クレー、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ガラス繊維、マイカ、針状ウォラストナイトおよびホウ酸アルミニウムウィスカーである。これら(E)成分は、1種でもまたは2種以上の混合物であってもよい。
【0022】
(E)成分の配合量は、混合ポリアミド樹脂100重量部に対して、50〜300重量部の範囲とする。(E)成分の配合量が50重量部未満であると、得られる樹脂組成物の弾性率が十分でなく、300重量部を越えると、得られる樹脂組成物の加工性が低下し、いずれも好ましくない。
【0023】
(F1)成分(銅化合物)としては、種々の無機または有機酸の銅塩であって、第1銅、第2銅のいずれであってもよく、具体的には、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、リン化銅、ステアリン酸化銅などが挙げられる。(F1)成分の配合量は、混合ポリアミド樹脂100重量部に対して、0.01〜2重量部の範囲が好ましい。
【0024】
(F2)成分(ハロゲン化合物)としては、有機または無機のハロゲン化物が挙げられる。具体的には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化合物、ハロゲン化アンモニウム、有機化合物の第4級アンモニウムのハロゲン化物、またはハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリルなどが挙げられ、ヨウ化アンモニウム、ステアリルトリエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウムアイオダイドなどが挙げられる。特に好ましいのは、ハロゲン化アルカリ金属塩であり、塩化カリウム、塩化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムなどである。(F2)成分の配合量は、混合ポリアミド樹脂100重量部に対して、0.05〜3重量部の範囲が好ましい。
【0025】
本発明に係るポリアミド樹脂組成物は、(F1)成分を単独で配合した樹脂組成物では、得られる成形品は(F1)成分の銅により赤褐色に着色してしまうことがあるが、本発明では(C)成分によって黒に着色するので、特に問題とならない。しかし、(F1)成分と(F2)成分とを併用配合すると、耐候性の観点からさらに優れた効果を発揮するのでより好ましく、特に好ましいのは銅化合物とハロゲン化アルカリ金属塩との併用である。
【0026】
(F1)成分および/または(F2)成分の配合量は、混合ポリアミド樹脂100重量部に対して、合計で0.01〜5重量部の範囲で選ぶのが好ましい。配合量が0.01重量部未満であると、耐候性の改良効果が顕著でなく、配合量が5重量部を越えると、機械的物性の低下が著しく、いずれも好ましくない。(F1)成分および/または(F2)成分の特に好ましい配合量は、混合ポリアミド樹脂100重量部に対して0.03〜2重量部であり、中でも特に好ましいのは0.05〜1重量部である。
【0027】
(G)成分(他の各種添加剤)としては、高分子材料に一般に用いられている各種添加剤、例えば、染顔料(ただし、カーボンブラックを除く)、離型剤、滑剤、核剤、発泡剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。これら(G)成分の配合量は、本発明の目的・効果を阻害しない範囲で適宜選ぶことができる。
【0028】
本発明に係るポリアミド樹脂組成物の製造方法は、特に制限はなく、この種樹脂組成物を製造する際に採用されている方法によることができる。例えば、(i)(A)成分(ポリアミド樹脂)、(B)成分(ポリアミド6)、(C-MB){(C)成分と(D1)成分(ポリスチレン系樹脂)または(D2)成分(ポリエチレン系樹脂)を含む}、さらに要すれば、(E)成分、(F1)成分、(F2)成分、(G)成分などから選ばれる成分を各所定量秤量し、ドライブレンドした後、溶融・混練する方法、(ii)(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D1)成分または(D2)成分、さらに要すれば、(E)成分、(F1)成分、(F2)成分、(G)成分などから選ばれる成分を各所定量秤量し、任意の順序で、例えば、ベント式押出機またはこれに類似した装置を用いて、溶融混練して粒状化する方法、などによることができる。
【0029】
本発明に係るポリアミド樹脂組成物は、各種の製品、部品などの成形品製造用として好適である。成形品を製造するには、熱可塑性樹脂から成形品を製造する際に採用されている成形方法によることができる。具体的には、射出成形法、押出成形法、回転成形法、圧縮成形法などが挙げられる。
【0030】
本発明に係るポリアミド樹脂組成物から製造できる成形品は、上記の成形方法によって製造できるものであれば特に制限がない。本発明に係るポリアミド樹脂組成物は、耐候性に優れ、表面光沢の優れた成形品が得られるので、表面光沢が要求される成形品製造用の材料、屋外で長期間使用される成形品製造用の材料として好適である。これら成形品としては、ドアミラースティー、ルーフレール、ドアハンドル、フェンダー、バンパー、ホイールキャップ、エアロパーツなどの自動車外装部品のほか、クレセント、フランス落とし、マンホールステップ、手摺などの建材・住宅設備部品、鉄道用外装部品などが挙げられる。成形品は、これら例示されたものに限定されるものではない。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。
【0032】
実施例および比較例において用いた原料の略称、特性は次のとおりである。
(A1)成分:下記の参考例に記載した方法で得られた芳香族ポリアミドである。
(B)成分:相対粘度が2.2のポリアミド6{三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:ノバミッド(登録商標)1007J}である。
【0033】
(C)成分:カーボンブラック(三菱化学社製、商品名:#CB45)である。
(C-MB)a:ベースレジンをAS樹脂、カーボンブラックの濃度50重量%で、200℃、荷重5kgの条件下でのMFR(Melt Flow
Rate)値が、12g/10minのカーボンブラックマスターバッチ(日本ピグメント社製、商品名:BSA8257)である。
(C-MB)b:ベースレジンをポリスチレン、カーボンブラックの濃度を50重量%としたカーボンブラックマスターバッチ(レジノカラー社製、商品名:1683DK)である。
【0034】
(E)成分a:長さ3mmのガラス繊維チョップドストランド(旭ファイバーグラス社製、商品名:CS03−JAFT2)である。
(E)成分b:マイカ(クラレ社製、商品名:スゾライトマイカ325HK)である。
(E)成分c:針状ウォラストナイト(NYCO社製、商品名:ナイグロス8)である。
(E)成分d:ホウ酸アルミニウムウィスカー(四国化成社製、商品名:アルボレックスY3A)である。
(E)成分e:タルク(富士タルク工業社製、商品名:TM−2)である。
【0035】
(F1)成分:ヨウ化銅(日本化学産業社製)である。
(F2)成分:ヨウ化カリウム(日本化学産業社製)である。
【0036】
[参考例]
撹拌装置、加熱装置、還流冷却器、温度計、原料滴下装置および窒素ガス導入管を装備した容量が3リットルのフラスコに、730gのアジピン酸を仕込み、フラスコ内を窒素で置換し、フラスコの内温を160℃に昇温してアジピン酸を溶融させた。このフラスコ内容物を撹拌しつつ、パラキシリレンジアミンを30モル%、メタキシリレンジアミンを70モル%よりなる混合ジアミン680gを、約2.5時間かけてフラスコに逐次滴下した。この間、フラスコの内温を反応生成物の融点を常に上回る温度となるように維持しつつ、約270℃まで昇温した。また、反応によって発生する水は、還流冷却器を介して反応系外に排出させた。混合ジアミンの滴下終了後、フラスコ内温を275℃まで昇温し、この温度でさらに1時間反応を継続した。この後、反応生成物をフラスコから取り出し、ペレット化した。反応生成物である芳香族ポリアミド{(A1)成分}の融点は258℃、結晶化温度は216℃、相対粘度(96%硫酸中、濃度1g/100mlの測定条件下で測定)は2.08であった。
【0037】
[実施例1〜実施例7、比較例1〜比較例3]
<樹脂組成物の調製>
上記の各成分を、表−1〜表−2に示す量(単位は重量部である)で秤量し、各成分をタンブラ−で混合した。得られた混合物を、ベント式押出機(東芝機械社製、型式:TEM−35B)を使用し、シリンダー温度を270℃として溶融混練した後、ストランド状に押出し、水槽を通過させて冷却し、切断、乾燥して樹脂組成物のペレットとした。
【0038】
<各種評価試験>
得られたペレットから試験片を製造し、この試験片について、以下に記載した方法で、曲げ特性と耐候性の評価試験を行なった。評価結果を、表−1〜表−2に示す。
(1)曲げ特性の評価試験:射出成形機(ファナック社製、型式:ロボショットα100iA)を使用し、シリンダー設定温度275℃、金型設定温度130℃、射出圧力700kgf/cm2、射出速度50mm/sec、保圧500kgf/cm2、射出保圧時間20秒、冷却時間15秒という条件下で、試験片を製造した。得られた試験片につき、ISO−178に準拠して、曲げ強度(MPa)および曲げ弾性率(GPa)を測定した。
【0039】
(2)色差(ΔE):射出成形機(ファナック社製、型式:ロボショットα100iA)を使用し、樹脂温度275℃、金型温度130℃、射出圧力700kgf/cm2、射出速度50mm/sec、保圧400kgf/cm2、射出保圧時間12秒、冷却時間15秒という条件下で、70mm×70mm、厚さ3mmの鏡面状平板を成形した。鏡面状平板につき、以下に記載の試験条件で促進劣化試験を行ない、試験前後の色差変化(ΔE)と表面光沢度を以下に記載の方法で測定した。
【0040】
(促進劣化試験での試験条件)
上記鏡面状平板につき、サンシャインウエザオ試験機(スガ試験機社製、型式:WEL−SUN−DC)を使用して、ブラックパネル温度83℃、120分間に18分間継続して雨を降らせることを1サイクルとし、250サイクル(500時間)繰り返す方法である。
【0041】
(色差変化(ΔE)の測定方法)
多光源分光測色計(日本電色工業社製、型式:SE−2000)を使用し、JIS Z8722の準拠した反射法により測定した。光学系はC光源2度視野、光束はφ30mmとした。色差変化は、促進劣化試験前と後にそれぞれ色差を測定し、促進劣化試験後の色差から試験前の色差を減じた値を示した。測定値が小さいほど、色差が小さく変色が少ないことを意味する。
【0042】
(3)表面外観:上記(2)の促進劣化試験を行なった試験片(平板)につき、その表面外観を顕微鏡で観察し、観察結果を次の4段階で判定して表に示した。
◎:表面荒れおよびカーボンブラックの浮きが殆ど認められない。
○:表面荒れおよびカーボンブラックの浮きがわずかに認められる。
△:表面荒れおよびカーボンブラックの浮きが認められる。
×:表面荒れおよびカーボンブラックの浮きが著しく認められる。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
表−1および表−2より、次のことが明らかとなる。
(1)本発明に係るポリアミド樹脂組成物から得られる成形品は、(A1)成分、(C)成分、および(D1)成分または(D2)成分が特定の範囲で配合されているので、ポリアミド樹脂自体が本来有する曲げ特性を犠牲にせず、促進劣化試験での色差変化が少なく、成形品の表面の劣化も少ない(実施例1〜実施例7参照)。
(2)本発明に係るポリアミド樹脂組成物に、さらに(E)成分(無機充填材)を配合した場合は、これを配合しないものに比べて曲げ特性を大幅に向上させることができる(実施例3〜実施例7参照)。
(3)これに対して、ポリアミド6のみよりなり、(C)成分(カーボンブラック)を含まない比較例1の樹脂組成物は、機械的強度も不十分であり、促進劣化試験前後の色差変化が大きく、促進劣化試験後の表面外観に劣る。
(4)さらに、(C)成分(カーボンブラック)および(E)成分、(F1)成分、(F2)成分を含むが(D1)成分(ポリスチレン系樹脂)、(D2)成分(ポリエチレン系樹脂)のいずれも配合されていない比較例2、比較例3の樹脂組成物は、促進劣化試験前後の色差変化が大きく、促進劣化試験後の表面外観に劣る。
【0046】
【発明の効果】
本発明は、以上詳細に説明したとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係るポリアミド樹脂組成物は、混合ジアミンを用いた芳香族ポリアミド{(A1)成分}、カーボンブラック{(C)成分}、およびポリスチレン系樹脂{(D1)成分}が特定の範囲で配合されており、ポリアミド樹脂自体が本来有する機械的強度、剛性などを犠牲にすることがないので、成形材料として有用である。
2.本発明に係るポリアミド樹脂組成物は、(A1)成分、(C)成分、および(D1)成分を各々特定の範囲とし、さらに(E)成分を配合したときは、剛性が向上し、金属代替の成形材料として有用である。
3.本発明に係るポリアミド樹脂組成物から得られる成形品は、(A1)成分、(C)成分、および(D1)成分が特定の範囲で配合されているので、成形品は表面光沢に優れ、屋外で長期間使用されても成形品は変色し難く、耐候性に優れている。
4.本発明に係るポリアミド樹脂組成物から得られる成形品は、耐候性などに優れているので、自動車外装部品、建材・住設部品に利用でき、極めて有用である。
Claims (14)
- 芳香族混合ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応より得られる芳香族ポリアミド{(A1)成分}を含むポリアミド樹脂{(A)成分}100重量部に対して、カーボンブラック{(C)成分}が0.1〜20重量部、およびポリスチレン系樹脂{(D1)成分}が(C)成分100重量部に対して50〜200重量部、それぞれ配合されてなることを特徴とするポリアミド樹脂組成物であって、前記ポリスチレン系樹脂{(D1)成分}が、ポリスチレンまたはスチレン−アクリロニトリル共重合体であり、かつ、前記カーボンブラック{(C)成分}を、前記ポリスチレン系樹脂{(D1)成分}の一部または全部とでマスターバッチとし、配合することを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
- 芳香族混合ジアミンが、パラキシリレンジアミン10〜50モル%とメタキシリレンジアミン50〜90モル%とよりなる、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 芳香族混合ジアミンが、パラキシリレンジアミン20〜45モル%とメタキシリレンジアミン55〜80モル%とよりなる、請求項1または請求項2に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 脂肪族ジカルボン酸が、α、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 脂肪族ジカルボン酸が、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸である、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 芳香族ポリアミド樹脂{(A1)成分}の相対粘度が、1.6〜3.0である、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物
- ポリアミド樹脂{(A)成分}が、芳香族ポリアミド{(A1)成分}50重量%以上、ポリアミド6{(B)成分}50重量%以下よりなる混合ポリアミドである、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物に、さらに無機充填材{(E)成分}が配合されてなるポリアミド樹脂組成物。
- 無機充填材{(E)成分}の配合量が、ポリアミド樹脂{(A)成分}100重量部に対して50〜300重量部とされてなる、請求項8に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 無機充填材{(E)成分}が、マイカ、針状ウォラストナイトおよびホウ酸アルミニウムよりなる群より選ばれた1種以上である、請求項8または請求項9に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物に、さらに銅化合物{(F1)成分}および/またはハロゲン化合物{(F2)成分}が配合されてなるポリアミド樹脂組成物。
- ポリアミド樹脂{(A)成分}が、芳香族ポリアミド{(A1)成分}50重量%以上、ポリアミド6{(B)成分}50重量%以下よりなる混合ポリアミドであり、銅化合物{(F1)成分}および/またはハロゲン化合物{(F2)成分}の配合量が、該混合ポリアミド100重量部に対して、銅化合物{(F1)成分}0.01〜2重量部、ハロゲン化合物{(F2)成分}0.05〜3重量部とされてなる、請求項11に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物を原料とし、製造されたものであることを特徴とする成形品。
- 成形品が、屋外で使用されるものである、請求項13に記載の成形品。
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