JP2007200823A - 結晶性透明導電性薄膜、その製造方法、透明導電性フィルムおよびタッチパネル - Google Patents

結晶性透明導電性薄膜、その製造方法、透明導電性フィルムおよびタッチパネル Download PDF

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Abstract

【課題】 高抵抗値を有し、かつ高温・高湿の環境下における信頼性の良好な結晶性透明導電性薄膜を提供すること。
【解決手段】 酸化インジウムと酸化スズの合計に対して酸化スズを9重量%以下の割合で含有する酸化インジウム・スズを主成分としてなる結晶性透明導電性薄膜であって、当該結晶性透明導電性薄膜は、窒素を0.45原子%以下の割合で含有することを特徴とする結晶性透明導電性薄膜。
【選択図】 なし

Description

本発明は、結晶性透明導電性薄膜およびその製造方法に関する。前記結晶性透明導電性薄膜は、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどの新しいディスプレイ方式やタッチパネルなどの透明電極のほか、透明物品の帯電防止や電磁波遮断などのために用いられている。
従来より、透明導電性薄膜としては、透明性に優れていることから、酸化インジウム・スズ(ITO)薄膜が用いられている。透明導電性薄膜は、上記用途に用いられるが、例えば、タッチパネル等に適用される場合には、位置検出精度、消費電力の点から、抵抗値が高いことが望まれる。また、透明導電性薄膜は、上記用途に用いられることから、高温・高湿の環境下における信頼性(抵抗値の変化率が小さい方が信頼性が高い)を満足することが求められる。また、透明導電性薄膜は、信頼性を向上させるために、当該膜を形成したのち、当該膜を結晶化することができる。
しかし、酸化インジウム・スズ薄膜を用いた透明導電性薄膜は、抵抗値が低く、また前記信頼性も十分でない。前記信頼性については、透明導電性薄膜の膜厚を厚くすることにより、改良することができるが、前記膜厚を厚くすると、透明性や抵抗値が低下するため好ましくない。また、酸化インジウム・スズ薄膜における酸化スズの割合を多くすることで、透明導電性薄膜の前記信頼性を向上することができるが、酸化スズの割合を多くしすぎると、結晶化に要する時間が非常に長くなる点で好ましくない。
上記問題に対して、酸化インジウム・スズ薄膜に窒素をドーピングすることが提案されている(特許文献1)。かかる特許文献1には、窒素を含有する透明導電性薄膜は、酸化インジウム・スズに対して、窒素含有量で少なくとも0.25重量%以上含有させることで、透明導電性薄膜の抵抗値や前記信頼性を向上させる効果を有することが記載されている。しかし、特許文献1に記載されている透明導電性薄膜は、アモルファスなものであり、これを、結晶化して、前記信頼性をより向上させるための、結晶化に要する時間が非常に長い。
特開平4−308612号公報
本発明は、高抵抗値を有し、かつ高温・高湿の環境下における信頼性の良好な結晶性透明導電性薄膜を提供することを目的とする。
また本発明は、前記結晶性透明導電性薄膜を用いた透明導電性フィルムおよびこれを用いたタッチパネルを提供することを目的とする。
さらに本発明は、高抵抗値を有し、かつ高温・高湿の環境下における信頼性が良好であり、製造効率のよい、結晶性透明導電性薄膜の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す、結晶性透明導電性薄膜およびその製造方法等により、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、酸化インジウムと酸化スズの合計に対して酸化スズを9重量%以下の割合で含有する酸化インジウム・スズを主成分としてなる結晶性透明導電性薄膜であって、
当該結晶性透明導電性薄膜は、窒素を0.45原子%以下の割合で含有することを特徴とする結晶性透明導電性薄膜、に関する。
上記本発明の結晶性透明導電性薄膜は、酸化スズ含有量を所定量以下の割合で含有させた酸化インジウム・スズであり、酸化スズを含有させることによる抵抗値の低下が小さく制御されており、抵抗値の高いものが得られる。しかも、本発明の結晶性透明導電性薄膜は、窒素を含有させているため、これにより抵抗値をさらに向上させることができる。また、本発明の透明導電性薄膜は、結晶性であるため、アモルファスの透明導電性薄膜に比べて高温・高湿の環境下における信頼性が良好である。また、窒素を含有させることで前記信頼性が向上している。さらには、前記窒素は、結晶性透明導電性薄膜において、0.45原子%以下の非常に少ない割合で含有されているため、透明導電性薄膜の結晶化工程における結晶化速度を低下させるものではない。窒素の含有量が0.45原子%を超える場合には、結晶化速度が低下し好ましくない。なお、前記のように、結晶性透明導電性薄膜における窒素の含有量は、非常に少ないため、検出限界よりも小さい微量成分として含まれている場合があるが、窒素含有量が、このような検出限界以下の場合であっても、透明導電性薄膜の製造時の雰囲気中に窒素を含有させていることにより、結晶性透明導電性薄膜中に窒素が含まれていることが推認される。
また本発明は、上記結晶性透明導電性薄膜が、透明フィルム基材の片面に設けられていることを特徴とする透明導電性フィルム、に関する。
また本発明は、導電性薄膜を有する一対のパネル板を、導電性薄膜同士が対向するようにスペーサを介して対向配置してなるタッチパネルにおいて、パネル板の少なくとも一方が、上記透明導電性フィルムからなることを特徴とするタッチパネル、に関する。
また本発明は、上記結晶性透明導電性薄膜の製造方法であって、
アルゴンガスと窒素ガスを含み、かつ、前記窒素ガスを、アルゴンガスと窒素ガスの合計に対して、3000ppm〜13000ppmの範囲で含むアルゴン雰囲気中において、酸化インジウムと酸化スズとの混合物の焼結体を透明導電性薄膜形成材料に用いて気相法により、酸化インジウムと酸化スズの合計に対して酸化スズを9重量%以下の割合で含有する酸化インジウム・スズを成膜して、透明導電性薄膜を形成する工程、
および、当該透明導電性薄膜を加熱処理して結晶化する工程、を有することを特徴とする結晶性透明導電性薄膜の製造方法、に関する。
上記本発明の窒素を0.45原子%以下の割合で含有する結晶性透明導電性薄膜は、当該結晶性透明導電性薄膜を気相法で成膜するにあたり、当該成膜を、窒素ガスを、アルゴンガスと窒素ガスの合計に対して、3000ppm〜13000ppmの範囲で含むアルゴン雰囲気中で行うことができる。アルゴン雰囲気中における、窒素ガスの前記割合が3000ppm未満では、結晶性透明導電性薄膜に含有させる窒素量が少なくなり、抵抗値の向上が殆どなく、また高温・高湿の環境下における信頼性が不十分である。一方、アルゴン雰囲気中における、窒素ガスの前記割合が13000ppmを超えると、透明導電性薄膜の結晶化工程に長時間を要するようになり、製造効率の点で好ましくない。かかる点から、アルゴン雰囲気中における、窒素ガスとの前記割合は、アルゴンガスと窒素ガスの合計に対して、3000ppm〜12000ppmであるのが好ましい。
上記結晶性透明導電性薄膜の製造方法において、アルゴン雰囲気は、酸素ガスを含有することが好ましい。
本発明の製造方法では、透明導電性薄膜の形成工程に用いたターゲットが、酸化インジウム・スズの酸化物であるため、アルゴン雰囲気が前記所定量の範囲で窒素を含んでいれば、アルゴン雰囲気中に酸素を含有させなくてもよいが、アルゴン雰囲気中には酸素を含有させることができる。アルゴン雰囲気中に酸素を含有させることで、膜の透明性、抵抗値を高精度に制御することができる。
上記製造方法において、結晶性透明導電性薄膜を、透明フィルム基材の片面に形成することができる。これにより、透明導電性フィルムが得られる。
上記製造方法において、前記結晶化工程における加熱処理条件は、135〜155℃で、2.5時間以下で行うことができる。
結晶化工程における加熱処理条件は、特に制限されないが、例えば、透明フィルム基材として、プラスチック基材を用いる場合には、高温になると、フィルム基材の性能を損なうおそれがあること、一方、ある程度の加熱温度でないと、結晶化速度が遅くなり製造効率が低下することから、前記結晶化工程における加熱温度は、135〜155℃、さらには140〜155℃、さらには140〜150℃であるのが好ましい。なお、本発明では、結晶化工程が施される透明導電性薄膜は窒素を含有しているものの、その含有量は微量であり、結晶化速度を損なわせるものではない。したがって、前記加熱温度の範囲であれば、結晶化工程を2時間以下、さらには1.5時間以下に行うことができ、結晶化工程を効率よく行うことができる。
本発明の結晶性透明導電性薄膜は、酸化インジウム・スズを主成分とし、これに窒素が0.45原子%以下の割合で含有されている。
上記結晶性透明導電性薄膜の材料としては、高温・高湿の環境下における信頼性が良好であることから、酸化インジウム・スズを用いられる。ただし、酸化インジウム・スズにおいて、酸化スズの割合が多くなると、抵抗値が大きいこと、また結晶化速度が低下することから、酸化スズの割合は、酸化インジウムと酸化スズの合計に対して9重量%以下とするのが好ましい。前記観点から、酸化インジウム・スズにおいて、酸化スズの割合は、2〜9重量%であるのが好ましく、さらには3〜8重量%であるのが好ましい。
また本発明の結晶性透明導電性薄膜において、当該薄膜を形成する材料は結晶化されているが、その結晶の割合は、50面積%以上とすることが高温・高湿の環境下における信頼性の点で好ましい。前記結晶含有量は、70面積%以上であることが好ましく、さらには、80面積%以上であることが好ましい。全て結晶とすることもできる。
また結晶性透明導電性薄膜において、当該薄膜を形成する結晶の最大粒径は350nm以下であることが好ましい。前記最大粒径は250nm以下、さらには150nm以下であることが好ましい。結晶粒径が小さくなりすぎると、前記薄膜中に非結晶状態に類似した部分が多くなり、高温・高湿の環境下における信頼性が低下するため、結晶粒径が極端に小さくなりすぎないようにするのが望ましい。かかる観点から、結晶の最大粒径は、10nm以上、さらには、30nm以上であるのが好ましい。
結晶の最大粒径および分布は、電界放出型透過型電子顕微鏡(FE−TEM)により導電性薄膜を表面観察することにより決定される。結晶の最大粒径は、観察される多角形状または長円形状の各領域における、対角線または直径の最大のものである。また、前記最大粒径を有する結晶の含有量は、具体的には、前記電子顕微鏡画像において単位面積(1.5μm×1.5μm)当たり、各粒径の結晶が占める面積である。
本発明の結晶性透明導電性薄膜の膜厚は、厚さが通常10nm以上、好適には10〜300nmであるのがよい。前記膜厚は、さらには15〜100nm、さらには20〜70nmであるのが好ましい。前記膜厚が、厚さが10nmより薄いと、表面電気抵抗が1×103Ω/□以下となる良好な導電性を有する連続被膜となりにくく、厚すぎると、透明性の低下などをきたしやすい。
なお、本発明の結晶性透明導電性薄膜の表面電気抵抗は、高抵抗値を示すように、200Ω/□以上、さらには200〜500Ω/□であるのが好ましい。
本発明の結晶性透明導電性薄膜の製造方法では、まず、酸化インジウムと酸化スズとの混合物の焼結体をターゲットとして用い、アルゴンガスと窒素ガスを含み、かつ、前記窒素ガスを、アルゴンガスと窒素ガスの合計に対して、3000ppm〜13000ppmの範囲で含むアルゴン雰囲気中において、気相法により、成膜して、透明導電性薄膜を形成する。これにより、窒素が、透明導電性薄膜中に含有される。
気相法としては、各種手段を採用できるが、例えば、電子ビーム蒸着法、スパッタ蒸着法、イオンプレーティング法等があげられる。これらのなかでも、均一な薄膜が得られる点から、スパッタ蒸着法が好ましい。スパッタ蒸着法を採用する場合には、高周波マグネトロンスパッタ法を採用できる。
アルゴン雰囲気における、窒素ガスの含有量は、前記の通り、アルゴンガスと窒素ガスの合計に対して、容量比で、3000ppm〜13000ppmである。
前記アルゴン雰囲気中には、窒素ガスの他に、酸素ガスを含有することができる。酸素ガスの含有量は、特に制限されないが、アルゴンガスに対して、容量比で、2%以下、さらには0.3%〜2%である。酸素ガスの割合が多くなると、後述の加熱処理による結晶化の点で好ましくなく、アルゴン雰囲気中における酸素ガスの割合は前記範囲とするのが好ましい。
本発明の結晶性透明導電性薄膜の製造方法では、次いで、前記透明導電性薄膜を加熱処理して結晶化する。前記結晶化工程における加熱処理条件は、前記の通り、135〜155℃で、2.5時間以下とするのが好ましい。
上記製造方法により、各種基材上に、結晶性透明導電性薄膜を形成することができる。例えば、透明フィルム基材の片面に、結晶性透明導電性薄膜を形成することができ、これにより透明導電性フィルムが得られる。
前記フィルム基材は、その材質に特に限定はなく、適宜なものを使用することができる。具体的には、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、特に好ましいものは、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などである。
透明導電性フィルムに使用する透明なフィルム基材としては、透明なフィルム基材を1枚用いる。または2枚以上の透明なフィルム基材を、粘着剤層を介して貼り合わせた積層体を用いる。
透明なフィルム基材の厚みは、75〜400μm程度であることが好ましい。より好ましくは100〜200μmである。透明なフィルム基材の厚みが75μmより小さい場合は、高温・高湿の環境下における信頼性の問題や加工性にも問題がある。透明なフィルム基材の厚みが400μmより大きい場合はタッチパネル部位が大きくなるのに加えてタッチパネル入力特性として、重加重が必要となり好ましくない。
また、透明なフィルム基材が、2枚以上の透明なフィルム基材の積層体である場合には、各フィルム基材の厚さ、材料を適宜に選択することができるが、少なくとも一方は、20〜125μmであるのが好ましい。
透明なフィルム基材を、透明なフィルム基材の積層体とする場合に用いる粘着剤層としては、透明性を有するものを特に制限なく使用できる。たとえば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤などが用いられる。粘着剤層は、透明基体の接着後そのクッション効果により、フィルム基材の一方の面に設けられた結晶性透明導電性薄膜の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性を向上させる機能を有する。この機能をより良く発揮させる観点から、粘着剤層の弾性係数を1〜100N/cm2の範囲、厚さを1μm以上、通常5〜100μmの範囲に設定するのが好ましい。
上記結晶性透明導電性薄膜は、アンカー層を介して、前記フィルム基材に設けられていてもよい。アンカー層は1層または2層以上設けることができ。アンカー層としては、無機物、有機物または無機物と有機物との混合物により形成する。アンカー層の形成は、フィルム基材と結晶性透明導電性薄膜との密着性を向上させるとともに、結晶性透明導電性薄膜の耐擦傷性や耐屈曲性を向上させ、タッチパネル用としての打点特性の向上に有効である。
アンカー層を形成する無機材料としては、例えば、無機物として、SiO2、MgF2、A123などが好ましく用いられる。また有機物としてはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマーなどの有機物が挙げられる。特に、有機物としては、メラミン樹脂とアルキド樹脂と有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用するのが望ましい。
アンカー層は、上記の材料を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーテフィング法、塗工法などにより形成できる。
なお、結晶性透明導電性薄膜の付設に際しては、フィルム基材のフィルム表面にコロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、スパッタエッチング処理等の適宜な接着処理を施して、結晶性透明導電性薄膜との密着性を高めることもできる。
上記フィルム基材において、結晶性透明導電性薄膜を設けない側の面には、ハードコート層を形成することができる。ハードコート処理は、例えばアクリルウレタン系樹脂やシロキサン系樹脂などの硬質樹脂を塗布して硬化処理する方法などにより行うことができる。ハードコート処理に際しては、前記アクリルウレタン系樹脂やシロキサン系樹脂などの硬質樹脂にシリコーン樹脂等を配合して表面を粗面化して、タッチパネル等として実用した際に鏡作用による写り込みを防止しうるノングレア面を同時に形成することもできる。またハードコート層上には防汚層を形成することもできる。
ハードコート層を形成する際、厚さが薄いと硬度不足となり、一方厚すぎるとクラックが発生する場合がある。また、カールの防止特性等も考慮に入れると、好ましいハードコート層の厚さは0.1〜30μm程度であるのが好ましい。
本発明の透明導電性フィルムの光透過率は86%以上であることが好ましい。より好ましくは88%以上、更に好ましくは90%以上である。透明なフィルム基材の光透過率が86%より小さい場合は、本発明の透明導電性フィルムを用いてタッチパネルを形成した場合、表示が暗くなり、光学特性に問題が生じる場合がある。
本発明の透明導電性フィルムはタッチパネルのパネル板として好適に適用される。すなわち、透明導電性薄膜を有する一対のパネル板を、互いに直交する縞状に形成した透明導電性薄膜同士が対向するように、スペーサを介して対向配置してなるタッチパネルにおいて、一方のパネル板として、上記透明導電性フィルムを用いることができる(通常、押圧する上側のパネル板)。このタッチパネルは、上側のパネル板側より、スペーサの弾性力に抗して押圧打点したとき、透明導電性薄膜同士が接触して、電気回路のON状態となり、上記押圧を解除すると、元のOFF状態に戻る、透明スイッチ構体として機能する。タッチパネルに用いるパネル板は、上下いずれか一方には、本発明の透明導電性フィルムを用いるが、他のパネル板は、プラスチックフィルムやガラス板などからなる透明基体に透明導電性薄膜を設けたものを用いることができる。上下いずれも、本発明の透明導電性フィルムを用いてもよい。
以下に、本発明の実施例を、比較例と対比して記載し、より具体的に説明する。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味するものとする。
実施例1
(フィルム基材)
厚さが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、第1PETフィルムという)からなる透明なフィルム基材を用いた。
(アンカー層の形成)
上記第1PETフィルムの片面に、メラミン樹脂:アルキッド樹脂:有機シラン縮合物=2:2:1(重量比)からなる熱硬化型樹脂組成物の硬化被膜(屈折率1.54,厚さ150nm)を形成した。これを、第1アンカー層とした。次いで、第1アンカー層上に、シリカコート法により、シリカゾル(コルコート社製の「コルコートP」)を固形分濃度が2%となるようにエタノールで希釈したものを塗布し、150℃で2分乾燥後、硬化させて、厚さが30nmのSiO2薄膜を形成した。これを、第2アンカー層とした。
(結晶性透明導電薄膜の形成)
上記第2アンカー層に、酸化インジウム・スズ(酸化インジウム95重量%,酸化スズ5重量%)をターゲットとして用い、4×10-3Paのアルゴン雰囲気(アルゴンガス:酸素ガス=100:1(容量比),窒素ガスをアルゴンガスと窒素ガスの合計に対して6000ppm含有(容量比))雰囲気中で、スパッタリング法により、厚さが25nmの透明導電薄膜(ITO薄膜)を形成した。次いで、150℃で1時間の結晶化速度で、加熱処理して、結晶性透明導電薄膜とし、透明導電性フィルムを得た。
(ハードコート層の形成)
厚さ125μmのPETフィルム(以下、第2PETフィルムという)の一方の面に、アクリル・ウレタン系樹脂(大日本インキ化学工業社製の商品名「ユニディック17−806」)100部に、光重合開始剤としてヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャルティケミカルズ社製の商品名「イルガキュア184」)5部を加えて、50重量%の濃度に希釈したトルエン溶液を塗布し、100℃で3分乾燥後、直ちにオゾンタイプ高圧水銀灯(80W/cm,15cm集光型)2灯で紫外線照射を行い、厚さが5μmのハードコート層を形成した。
(透明導電性積層体の作製)
次いで、上記第2PETフィルムのハードコート層とは他面に、弾性係数が10N/cm2に調整された透明なアクリル系粘着剤層(アクリル酸ブチル:アクリル酸:酢酸ビニルの重量比100:2:5の単量体混合物の共重合体100部に、イソシアネート系架橋剤を1部配合してなるアクリル系粘着剤)を、約20μmの厚さに形成した。さらにこの粘着剤層面に、上記透明導電性フィルムの第1PETフィルム側の面(ITO薄膜を形成しない面)を貼り合わせて、透明導電性積層体を作製した。
(結晶性)
なお、結晶性透明導電薄膜の結晶粒径および粒径分布は、粒径300nm以下の結晶が80面積%以上であった。これは、電界放出型透過型電子顕微鏡(FE−TEM,Hitachi,HF−2000)により、導電性薄膜の表面観察を行い、評価した。結晶の最大粒径は具体的には、次の方法で測定した。まずポリエステルフィルム上に、スパッタリングでITO膜を形成する。これをシャーレに静置し、ヘキサフルオロイソプロパノールを静に注ぎ、ポリエステルフィルムを溶解除去する。そして白金製のメッシュでITOの薄膜をすくい取り、透過型電子顕微鏡のサンプルステージに固定する。これを各例に応じて5万倍〜20万倍ほどの倍率で写真撮影し、1.5μm×1.5μmの面積当たりに存在する結晶の最大粒径を観察して評価した。
実施例2〜8、比較例1〜8
実施例1の結晶性透明導電薄膜の形成において、酸化インジウム・スズ(ITO)における酸化スズの割合、アルゴン雰囲気における窒素ガスの割合を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電性積層体を作製した。結晶化速度(温度,時間)は表1に示す。
上記の実施例および比較例で得られた透明導電性フィルムおよび透明導電性積層体について下記評価を行った。結果を表1に示す。
<窒素含有量>
結晶性透明導電性薄膜の窒素含有量(原子%)をESCA分析により測定した。詳しくは、形成されたITO膜をアルゴンイオンエッチングし、下記測定装置を用いて、構成元素比率を測定した。測定装置:(株)島津製作所製、KratosAXIS‐HSi。分析領域(面積):300μm×700μm。検出限界は、0.1原子%以下である。
<フィルム抵抗>
四端子法を用いて、透明導電性積層体の表面電気抵抗(Ω/□)を測定した。
<全光線透過率>
島津製作所製の分光分析装置UV−240を用いて、光波長550nmにおける可視光線透過率を測定した。
<高温・高湿の環境下における信頼性>
各例で得られた透明導電性積層体をサンプルAとした。サンプルAを、85℃、85%R.H.の環境下に500時間放置した。この処理されたものを、サンプルBとした。これらについて、表面電気抵抗(Ω/□)を測定し、サンプルAの抵抗(RA)と、サンプルBの抵抗(R)から、比(R/R)を求め、信頼性を評価した。
Figure 2007200823
実施例では、200Ω/□以上の表面電気抵抗を有し、かつ高温・高湿の環境下における信頼性が良好な結晶性透明導電薄膜が得られている。また、実施例では結晶化速度が早く、製造効率も良好である。一方、比較例では、上記特性を有し、かつ製造効率の良好な場合はない。

Claims (7)

  1. 酸化インジウムと酸化スズの合計に対して酸化スズを9重量%以下の割合で含有する酸化インジウム・スズを主成分としてなる結晶性透明導電性薄膜であって、
    当該結晶性透明導電性薄膜は、窒素を0.45原子%以下の割合で含有することを特徴とする結晶性透明導電性薄膜。
  2. 請求項1記載の結晶性透明導電性薄膜が、透明フィルム基材の片面に設けられていることを特徴とする透明導電性フィルム。
  3. 導電性薄膜を有する一対のパネル板を、導電性薄膜同士が対向するようにスペーサを介して対向配置してなるタッチパネルにおいて、パネル板の少なくとも一方が、請求項2記載の透明導電性フィルムからなることを特徴とするタッチパネル。
  4. 請求項1記載の結晶性透明導電性薄膜の製造方法であって、
    アルゴンガスと窒素ガスを含み、かつ、前記窒素ガスを、アルゴンガスと窒素ガスの合計に対して、3000ppm〜13000ppmの範囲で含むアルゴン雰囲気中において、酸化インジウムと酸化スズとの混合物の焼結体を透明導電性薄膜形成材料に用いて気相法により、酸化インジウムと酸化スズの合計に対して酸化スズを9重量%以下の割合で含有する酸化インジウム・スズを成膜して、透明導電性薄膜を形成する工程、
    および、当該透明導電性薄膜を加熱処理して結晶化する工程、を有することを特徴とする結晶性透明導電性薄膜の製造方法。
  5. 前記アルゴン雰囲気は、酸素ガスを含有することを特徴とする請求項4記載の結晶性透明導電性薄膜の製造方法。
  6. 結晶性透明導電性薄膜を、透明フィルム基材の片面に形成することを特徴とする請求項4または5記載の結晶性透明導電性薄膜の製造方法。
  7. 前記結晶化工程における加熱処理条件が、135〜155℃で、2.5時間以下であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の結晶性透明導電性薄膜の製造方法。
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