JP2021084268A - 積層ポリエステルフィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温下に長時間曝しても、ヘーズの上昇や異物の生成を防止でき、優れた外観を有する積層ポリエステルフィルムを提供する。【解決手段】ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に設けられた樹脂層とを備える積層ポリエステルフィルムであって、前記樹脂層がフェノール樹脂を含む積層ポリエステルフィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に樹脂層が設けられた積層ポリエステルフィルム、及びその製造方法に関する。
ポリエステルフィルムは、透明性、寸法安定性、機械的特性、耐熱性、電気的特性などに優れることから、さまざまな分野で使用されている。例えば、近年、タッチパネル等の電子機器分野において、透明導電性積層体の基材として、ガラスの代わりに使用されることがある。透明導電性積層体としては、ポリエステルフィルムを基材とし、その上に直接、或いはアンカー層を介して、ITO(酸化インジウムスズ)膜がスパッタリングで形成されたものが知られている。
透明導電性積層体では、加熱加工された二軸延伸ポリエステルフィルムが一般的に使用されている。加熱加工としては、例えば、低熱収縮化のために150℃で1時間放置する処理(例えば、特許文献1参照)、ITOの結晶化のために150℃で熱処理を行う処理(例えば、特許文献2参照)等がある。
しかし、ポリエステルフィルムは、上記のような加熱加工などにより高温環境下に長時間曝されると、フィルム中に含有されるエステル環状三量体などのオリゴマーが、フィルム表面に析出及び結晶化することで、フィルム外観の白化による視認性の低下、後加工の欠陥、工程内や部材の汚染などが起こる。そのため、ポリエステルフィルムを基材とした透明導電性積層体の特性は、十分に満足のいくものとはいえない。
ポリエステルフィルムからオリゴマーが析出することを防止するために、例えば、ポリエステルフィルム上にシリコーン樹脂とイソシアネート系樹脂の架橋体からなる硬化性樹脂層を設けることが提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、当該硬化性樹脂層は、イソシアネート系樹脂のブロック化剤の解離のために高温処理が必要となり、加工中にカールや、たるみが発生しやすい状況にあり、取り扱いに注意が必要である。
そのため、樹脂層によるエステル環状三量体などのオリゴマーの低減策を講じる場合には、ポリエステルフィルムが、従来よりも一段と高度な耐熱性を有し、かつ樹脂層自体のエステル環状三量体封止性能が良好であることが必要とされる。
特開2007−42473号公報 特開2007−200823号公報 特開2007−320144号公報
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、例えば高温に長時間曝された際にフィルムからエステル環状三量体が析出することを抑え、フィルム保管時、フィルム使用時、フィルム加工時等において、エステル環状三量体の析出に伴う不具合を防止できる積層ポリエステルフィルムを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題に関して鋭意検討を重ねた結果、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に特定の樹脂層を設けることにより、上記課題が解決されることを見出し、以下の本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]を提供する。
[1]ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に設けられた樹脂層とを備える積層ポリエステルフィルムであって、
前記樹脂層がフェノール樹脂を含む積層ポリエステルフィルム。
[2]前記樹脂層が処理剤から形成されてなり、該処理剤がさらに架橋剤を含有する上記[1]に記載の積層ポリエステルフィルム。
[3]前記樹脂層の厚さが0.001〜0.15μmである上記[1]又は[2]に記載の積層ポリエステルフィルム。
[4]前記フェノール樹脂がレゾール型フェノール樹脂である上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
[5]ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に設けられた樹脂層とを備える積層ポリエステルフィルムの製造方法であって、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面にフェノール樹脂を含む処理剤によって前記樹脂層を形成する、ポリエステルフィルムの製造方法。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、高温下に長時間曝しても、表面からのエステル環状三量体の析出が抑制されるため、ヘーズの上昇や異物の生成を防止でき、優れた外観を有することができる。
<積層ポリエステルフィルム>
本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムと、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に設けられた樹脂層とを備える。
[ポリエステルフィルム]
本発明で使用するポリエステルフィルムは、単層構造であっても多層構造であってもよい。多層構造の場合、2層構造、3層構造などでもよいし、本発明の要旨を逸脱しない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、層数は特に限定されない。また、ポリエステルフィルムは、二軸延伸ポリエステルフィルムが好ましい。
ポリエステルフィルムに使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとの重縮合ポリマーであることが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。
共重合ポリエステルは、例えば、ジカルボン酸成分とグリコール成分の重縮合ポリマーであるとよく、共重合ポリエステルにおいて使用するジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられる。また、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分がテレフタル酸を含み、グリコール成分がエチレングリコールを含むことが好ましく、テレフタル酸の含有量は、例えば、ジカルボン酸成分の50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。また、エチレングリコールの含有量は、グリコール成分の50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。
また、共重合体ポリエステルは、ジカルボン酸成分、グリコール成分以外の二官能性化合物由来の構成単位を含んでもよく、ジカルボン酸成分、グリコール成分以外の二官能性化合物由来の構成単位は、ポリエステルを構成する全構成単位の総モルに対して、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。二官能性化合物としては、各種のヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオールなどが挙げられる。
ポリエステルの極限粘度は、特に限定されないが、製膜性、生産性などの観点から、0.45〜1.0dl/gが好ましく、0.5〜0.9dl/gがより好ましい。
ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸などのポリカルボン酸と脂肪族グリコールなどのポリオールを脱水重縮合して製造するとよいが、エステル交換法などにより製造してもよい。ポリエステルの重合触媒としては、特に制限はなく、従来公知の化合物を使用することができ、例えば、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等が挙げられる。この中でも、チタン化合物及びゲルマニウム化合物から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。チタン化合物及びゲルマニウム化合物は触媒活性が高く、少量で重合を行うことが可能である。そのため、フィルム中に残留する金属量が少ないことから、積層ポリエステルフィルムを透過する光の吸収が抑制され、積層ポリエステルフィルムの輝度が高くなる。さらに、ゲルマニウム化合物は高価であることから、チタン化合物を用いることがより好ましい。
チタン化合物を用いたポリエステルの場合、ポリエステルフィルムにおけるチタン元素含有量は、好ましくは50ppm以下、より好ましくは1〜20ppm、さらに好ましくは2〜10ppmの範囲である。なお、チタン元素含有量は、ポリエステルフィルムが多層である場合には、各層におけるチタン元素含有量が上記範囲内となるとよい。チタン化合物の含有量を上記上限値以下とすることで、ポリエステルを溶融押出する工程でポリエステルの劣化が防止され黄色味が強いフィルムとなることを防止できる。また、含有量を上記下限値以上とすると、重合効率が良好となって、コストが低くなり、また十分な強度を有するフィルムを得やすくなる。
チタン化合物を含有するポリエステルを用いる場合、溶融押出する工程での劣化抑制の目的で、チタン化合物の活性を下げるためにリン化合物をポリエステルに配合することが好ましい。リン化合物としては、ポリエステルの生産性や熱安定性を考慮すると、正リン酸、エチルアシッドフォスフェートなどのアルキルアシッドフォスフェートが好ましい。
ポリエステルフィルムにおけるリン元素含有量は、好ましくは1〜300ppm、より好ましくは3〜200ppm、さらに好ましくは5〜100ppmの範囲である。リン化合物の含有量を上記上限値以下とすることで、リン化合物がゲル化や異物の原因となることを防止できる。また、上記下限値以上とすることで、チタン化合物の活性を十分に下げることができ、黄色味のあるフィルムとなることを防止できる。
なお、リン元素含有量は、ポリエステルフィルムが多層である場合には、チタン元素を含有する層におけるリン元素含有量が上記範囲内となるとよい。
本発明においては、熱処理後のエステル環状三量体の析出量を抑えるために、エステル環状三量体の含有量が少ないポリエステルを原料としてフィルムを製造してもよい。エステル環状三量体の含有量が少ないポリエステルの製造方法としては、種々公知の方法を用いることができ、例えば、ポリエステル製造後に固相重合する方法等が挙げられる。
また、ポリエステルフィルムを3層以上の構成とし、ポリエステルフィルムの最外層を、エステル環状三量体の含有量が少ないポリエステル原料を用いた層とすることで、熱処理後のエステル環状三量体の析出量を抑えてもよい。
また、ポリエスエルは、エステル化もしくはエステル交換反応をした後に、さらに反応温度を高くして減圧下で溶融重縮合して得てもよい。
本発明において、ポリエステルフィルムには、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することも可能である。粒子を配合する場合、配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。これらの中でも特に少量で効果が出やすいという点でシリカ粒子や炭酸カルシウム粒子が好ましい。
また、粒子の平均粒径は、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは0.01〜3.0μmの範囲である。平均粒径を5.0μm以下とすることで、フィルムの表面粗度が大きくなることを防止して、後工程の種々の加工で不具合が生じにくくなる。また、平均粒径が上記範囲内の粒子を使用することで、ヘーズが低く抑えられ、積層ポリエステルフィルム全体として透明性を確保しやすい。
さらにポリエステルフィルムにおける粒子の含有量は、ポリエステルフィルム全量に対して、好ましくは5質量%未満、より好ましくは0.0003〜1質量%の範囲、さらに好ましくは0.0005〜0.5質量%の範囲である。粒子含有量を5質量%未満とすることで、ヘーズが高くなることを防止して、透明性を確保しやすくなる。そのため、例えば、種々の検査時に、異物等の欠陥検査などを容易に行うことができる。
ポリエステルフィルムが粒子を含有しない場合、あるいは含有量が少ない場合は、ポリエステルフィルムの透明性が高くなり、外観が良好なフィルムとなるが、滑り性が不十分となる場合がある。そのため、後述する樹脂層中に粒子を入れることにより、滑り性を向上させたりするとよい。
使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。
これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
ポリエステルフィルムに粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルフィルムの各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後に添加するのがよい。また、エステル化もしくはエステル交換反応をした後に、溶融重縮合、固相重合などを行う場合には、エステル化もしくはエステル交換反応をした後であり、かつ溶融重縮合前又は固相重合前に粒子を添加することがより好ましい。
ポリエステルフィルムが、多層である場合には、少なくともいずれか1つの層に粒子を含有させるとよいが、最外層に粒子を含有させることが好ましい。例えば、最外層、中間層、及び最外層をこの順に備える多層構造においては、各最外層に粒子を含有させるとよい。
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜300μm、好ましくは15〜250μm、より好ましくは20〜200μmの範囲である。
本発明のフィルムの製膜方法としては、通常知られている製膜法を採用でき、特に制限はない。例えば、二軸延伸ポリエステルフィルムを製造する場合、まず先に述べたポリエステル原料を、押出機を用いてダイから溶融押し出しして、溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法や液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に、通常70〜170℃で、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍で延伸する。引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸延伸フィルムを得る方法が挙げられる。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
また、ポリエステルフィルムの製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
[樹脂層]
本発明において、樹脂層は、上記したポリエステルフィルムの少なくとも片面に設けられる層であり、フェノール樹脂を含有する。樹脂層は、ポリエステルフィルムの片面のみに設けられてもよいし、両面に設けられてもよい。
本発明において、積層ポリエステルフィルムは、フェノール樹脂を含有する樹脂層を有することで、高温下に長時間曝されても、ポリエステルフィルムからエステル環状三量体がフィルム表面に析出することを抑制できる。その理由は定かではないが、フェノール樹脂が三次元の緻密な網目構造を形成するため、その網目構造が高温下でも長時間にわたって維持され、その網目構造によりフィルム中に含まれるエステル環状三量体の析出が防止できるためと考えられる。また、エステル環状三量体の析出を防止することで、異物が発生したり、フィルムヘーズが大きくなったりすることも防止できる。
(フェノール樹脂)
本発明におけるフェノール樹脂としては、レゾール型フェノール樹脂及びノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。レゾール型フェノール樹脂は、フェノール類と過剰のアルデヒド類とを塩基性触媒の存在下で反応させることで得られる熱硬化性樹脂である。ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下で反応させることで得られる熱可塑性樹脂である。なお、レゾール型フェノール樹脂を使用する場合、レゾール型フェノール樹脂を硬化することで樹脂層を形成するとよい。レゾール型フェノール樹脂及びノボラック型フェノール樹脂は、それぞれ従来公知のフェノール樹脂の合成条件により製造できる。
フェノール類としては特に制限はなく、例えば、フェノール、オルトクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、キシレノール、アルキルフェノール(例えば、アルキル基の炭素数が2〜10)、ビスフェノールA、ビスフェノールS、フェニルフェノール等が挙げられる。これらのなかでは、樹脂層を緻密な網目構造とする観点から、フェノール、オルトクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾールが好ましく、フェノールがより好ましい。フェノール類は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルデヒド類としては特に制限がなく、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、ブチルアルデヒド、アセタール類等が挙げられる。これらの中では、樹脂層を緻密な網目構造とする観点からは、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが好ましい。アルデヒド類は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
塩基性触媒としては特に制限はないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、アンモニア、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ヘキサメチレンテトラミン等が挙げられる。これらの塩基性触媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸触媒としては特に制限はないが、例えば、塩酸、硫酸、ぎ酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸及びシュウ酸が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
フェノール樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、フェノール樹脂としては、加熱により硬化し、樹脂層がより三次元の緻密な網目構造をとりやすい観点から、レゾール型フェノール樹脂が好ましい。
本発明において樹脂層は、フェノール樹脂を含有する処理剤より形成されてなるとよい。処理剤は、不揮発成分としてフェノール樹脂単独からなるものでもよいし、その他の成分を含有してもよい。本発明の処理剤においてフェノール樹脂の含有量は、処理剤における不揮発成分に対して、通常1〜100質量%、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは15〜100質量%、さらに好ましくは20〜100質量%の範囲である。1質量%以上とすることで、高温下に長時間曝してもエステル環状三量体の析出を効果的に抑えることができる。
また、後述する架橋剤を使用する場合、架橋剤を一定量以上配合するために、フェノール樹脂の含有量は、処理剤における不揮発成分に対して、通常99質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは92質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
(架橋剤)
本発明の樹脂層の形成に用いる処理剤は、さらに架橋剤を含有してもよい。すなわち、樹脂層は、架橋剤により架橋されていてもよい。本発明の樹脂層は、架橋剤が用いられなくても、エステル環状三量体の析出を抑制できるが、樹脂層の耐久性及び塗布性向上の観点からは架橋剤を使用することが好ましい。
架橋剤としては、種々公知の架橋剤が使用できるが、例えば、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。これらの中でもより緻密な樹脂層を形成し、高温下で長時間曝された場合におけるエステル環状三量体の析出防止効果という観点から、メラミン化合物が好適に用いられる。架橋剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。アルキロール化としては、メチロール化、エチロール化、イソプロピロール化、n−ブチロール化、イソブチロール化などが挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、メチロール化が好ましい。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール等が好適に用いられ、これらの中ではメチルアルコールがより好ましい。
また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できる。さらに、メラミン化合物の反応性を上げるために、処理剤には、さらに触媒を配合してもよい。
なお、上記した架橋剤は、乾燥過程や製膜過程において反応させて、樹脂層の性能を向上させるように設計するとよい。形成される樹脂層中には、架橋剤の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測される。
本発明の処理剤において架橋剤の含有量は、処理剤における不揮発成分に対して、通常1〜95質量%、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは8〜80質量%、さらに好ましくは10〜75質量%の範囲である。1質量%以上とすることで、架橋剤を配合したことにより効果を発揮しやすくなる。また、95質量%以下とすることで、処理剤にフェノール樹脂を一定量以上配合できるので、高温下で長時間曝された時におけるエステル環状三量体の析出を効果的に抑えることができる。
(その他の成分)
また、樹脂層を形成するための処理剤には、上記したフェノール樹脂、架橋剤以外のポリマー成分を含有させることも可能である。ポリマー成分を併用することで、例えば、樹脂層の外観の向上を図ることができ、また、樹脂層の表面に種々の表面機能層又は透明電極膜などを形成したときに、その表面機能層などに対する密着性を向上させることなどもできる。処理剤におけるポリマー成分の含有量は、特に限定されないが、高温下で長時間曝された時におけるエステル環状三量体の析出を効果的に抑えることから、多くし過ぎないことが好ましく、具体的には質量基準でフェノール樹脂より少なくすることが好ましく、フェノール樹脂の50質量%以下がより好ましく、フェノール樹脂の20質量%以下がさらに好ましい。
ポリマー成分の具体例としては、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール等)、導電性ポリマー、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。また、ポリマー成分は、活性エネルギー照射や加熱により重合してポリマーとなる光重合性成分、熱重合性成分であってもよい。
また、樹脂層を形成するための処理剤には、ブロッキング、滑り性改良を目的として粒子を含有させることも可能である。粒子の平均粒径は、フィルムの透明性の観点から、好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.2μm以下の範囲である。また、粒子の平均粒径は、滑り性をより効果的に向上させるために、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上であり、特に好ましくは樹脂層の厚さよりも大きい範囲である。粒子の具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、有機粒子等が挙げられる。それらの中でも、透明性の観点からシリカが好ましい。
本発明の処理剤において粒子の含有量は、処理剤中の不揮発成分に対して、通常0.1〜20質量%、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは2〜10質量%の範囲である。粒子の含有量を上記範囲内とすることで、ヘーズ値を良好にしつつ、ブロッキング、滑り性を適切に改良できる。
さらに、本発明の主旨を損なわない範囲において、樹脂層を形成するための処理剤には、必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等を含有させることも可能である。
また、樹脂層の厚さは、最終的に得られる積層ポリエステルフィルムにおける樹脂層の厚さとして、通常0.001〜1μmの範囲であり、好ましくは0.001〜0.5μm、より好ましくは0.001〜0.25μm、さらに好ましくは0.001〜0.15μm、特に好ましくは0.005〜0.07μmの範囲である。厚さを0.001μm以上とすることで、フィルムから析出するエステル環状三量体の量を十分に少なくできる。また、1μm以下とすることで、樹脂層の外観の悪化や、積層ポリエステルフィルムのヘーズの悪化を防止できる。また、樹脂層の厚さを0.15μm以下又は0.07μm以下などの一定値以下とすることで、初期ヘーズが良好となり、かつ高温環境下におけるエステル環状三量体の析出を効果的に防止でき、積層ポリエステルフィルムの外観を良好にしやすくなる。
[積層ポリエステルフィルムの製造方法]
本発明における積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面にフェノール樹脂を含む処理剤によって前記樹脂層を形成することで製造できる。樹脂層は、上記した処理剤を塗布液として、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布して形成すればよい。樹脂層は、ポリエステルフィルムに処理剤を塗布した後に必要に応じて加熱などして、適宜乾燥、硬化などさせるとよい。
処理剤は、溶媒により希釈することで塗布液としてもよい。処理剤を構成する各成分(フェノール樹脂、架橋剤など)は、溶媒に溶解させてもよいし、溶媒中に分散させてもよい。処理剤に用いる溶媒には制限はなく、水及び有機溶剤のいずれを使用すればよいが、環境保護の観点から、水を溶媒とする水性塗布液とすることが好ましく、フェノール樹脂を水分散体とすることがより好ましい。水性塗布液は、少量(例えば、水の50質量%未満、好ましくは20質量%未満)の有機溶剤を含有していてもよい。
ポリエステルフィルムに塗布液(処理剤)を塗布する方法としては、例えば、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、ナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファロールコート、グラビアコート、キスロールコート、キャストコート、スプレイコート、カーテンコート、カレンダコート、押出コート等従来公知の塗布方法を用いることができる。
樹脂層は、ポリエステルフィルムの製造ラインでフィルム表面に塗布液を塗布するインラインコーティングにより形成されてもよく、一旦製造したポリエステルフィルム上に、系外(製造ライン外)で塗布液を塗布するオフラインコーティングにより形成してもよいが、好ましくはインラインコーティングにより形成する。
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程ライン内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押出ししてから延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルムの何れかにコーティングする。
また、特に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、ポリエステルフィルムの製膜と樹脂層形成を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、また、コーティング後に延伸を行うために、樹脂層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。
また、上記のとおり、延伸前にフィルム上に樹脂層を形成すると、樹脂層をポリエステルフィルムと共に延伸することができ、それにより樹脂層をポリエステルフィルムに強固に密着させることができる。さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造において、クリップ等によりフィルム端部を把持しつつ延伸することで、フィルムを縦および横方向に拘束することができ、熱固定工程において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。
それゆえ、コーティング後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、樹脂層の造膜性が向上し、樹脂層とポリエステルフィルムをより強固に密着させることができ、さらには、強固な樹脂層とすることができる。
本発明において、ポリエステルフィルム上に樹脂層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより樹脂層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
一方、インラインコーティングにより樹脂層を設ける場合、通常、70〜270℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。なお、活性エネルギー線照射は、樹脂層を形成するための処理剤が、例えばポリマー成分として光重合性化合物を含有する場合に行うとよい。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルム及び樹脂層以外の層を有してもよく、積層ポリエステルフィルムの表面に設けられる表面機能層などを備えてもよい。表面機能層としては、具体的にはハードコート層が挙げられる。ハードコート層を形成することで、積層ポリエステルフィルムの表面硬度を向上させ、カール防止や耐擦傷性の向上を図ることができる。
ハードコート層は、例えば、ポリエステルフィルムの樹脂層が設けられない面に設けられるとよく、例えばポリエステルフィルムの一方の面に樹脂層が設けられ、他方の面にハードコート層が設けられるとよい。また、ハードコート層は、ポリエステルフィルムの樹脂層が設けられる面に設けられてもよく、例えば、ポリエステルフィルムの両面に樹脂層が設けられる場合には、その一方の樹脂層の上に設けられるとよい。
したがって、他の層を有する積層ポリエステルフィルムにおいては、樹脂層が最外層を構成してもよいが、必ずしも最外層となる必要もない。
ハードコート層は公知のハードコート剤を硬化して形成される硬化物層が好ましい。ハードコート剤としては、特に限定されないが、活性エネルギー線硬化性組成物などを使用すればよい。ハードコート剤は、活性エネルギー線の照射により硬化物を形成する重合性モノマーや重合性オリゴマー等を含むとよい。また、ハードコート層は、アクリル系樹脂層であることが好ましく、したがって、重合性モノマーや重合性オリゴマーには、(メタ)アクリレートモノマー又は(メタ)アクリレートオリゴマーなどの(メタ)アクリル系化合物を含むとよい。なお、活性エネルギー線は、紫外線や電子線等の活性線である。
ハードコート剤は、必要に応じて、架橋剤、重合開始剤、滑剤、可塑剤、有機粒子、無機粒子、防汚剤、酸化防止剤、触媒等の添加剤を含有してもよい。
ハードコート層の厚さは、特に限定されないが、例えば0.5〜15μm、好ましくは1〜10μmの範囲である。
[積層ポリエステルフィルムの特性及び用途]
本発明における積層ポリエステルフィルムは、フィルムヘーズが、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下である。積層ポリエステルフィルムは、フィルムヘーズを5.0%以下とすることで、視認性及び外観が良好となる。積層ポリエステルフィルムは、例えば、タッチパネル用等に使用される場合など、高度な透明性が要求される場合があるが、そのような場合でもフィルムヘーズを5.0%以下とすることで好適に使用できる。なお、フィルムヘーズとは、初期のフィルムヘーズであり、後述する熱処理をする前のヘーズ値である。
本発明における積層ポリエステルフィルムは、熱処理(150℃、90分間)によるフィルムヘーズ変化量が、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.0〜0.5%の範囲である。フィルムヘーズ変化量を1.5%以下とすると、高温下に長時間曝した後でもエステル環状三量体の析出によってフィルムヘーズが上昇しにくくなる。積層ポリエステルフィルムは、例えば、タッチパネル用等、長時間、高温雰囲気下にさらされた後であっても、高度な透明性が要求される場合があるが、そのような場合でも、フィルムヘーズ変化量を1.5%以下とすることで好適に使用できる。なお、上記熱処理は、例えば、積層ポリエステルフィルムの樹脂層が設けられた面をむき出しにして行うとよく、そのような場合でも、ヘーズ変化量は上記上限値以下とすることができる。
また、本発明における積層ポリエステルフィルムは、エステル環状三量体の析出量の観点では、熱処理(180℃、30分間)後のフィルム表面における、ジメチルホルムアミドにより抽出されたエステル環状三量体量が、好ましくは3.0mg/m以下、より好ましくは2.5mg/m以下、さらに好ましくは0.0〜2.0mg/mの範囲である。エステル環状三量体量を3.0mg/m以下とすることで、後工程において、例えば、180℃、30分間等の高温雰囲気下で長時間の加熱処理を行っても、エステル環状三量体の析出量が抑制され、フィルムの透明性が低下したり、後工程などにおいて汚染が発生したりすることを防止できる。なお、エステル環状三量体量の測定は、樹脂層が設けられた面に対して行う。
本発明における積層ポリエステルフィルムは、様々な用途に特に制限なく使用でき、熱処理工程を経た後でも、フィルムヘーズの上昇が小さく、かつエステル環状三量体の析出が少ない性能を必要とする用途において好適に用いることができる。そのような用途の具体例としては、透明導電性積層体の基材などが挙げられ、より具体的にはタッチパネル用基材として使用することが好ましい。
積層ポリエステルフィルムは、透明導電性積層体の基材に使用する場合、積層ポリエステルフィルムの表面にITO膜などの透明導電膜が設けられるとよい。透明導電膜は、積層ポリエステルフィルムの樹脂層が設けられた面に設けられてもよいし、樹脂層が設けられない面に設けられてもよい。また、上記のとおりハードコート層が設けられる場合には、例えば、積層ポリエステルフィルムのハードコート層が設けられた面とは反対側の面に透明導電膜が設けられるとよく、この場合には透明電極膜は、積層ポリエステルフィルムの樹脂層が設けられた面に設けられることが好ましい。
<語句の説明など>
一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格;JIS K6900)。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、本明細書において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例における評価方法は下記のとおりである。
(1)ポリエステルの極限粘度の測定方法
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)平均粒径(d50:μm)の測定方法
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
(3)樹脂層の厚さの測定方法
樹脂層の表面をRuOで染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片をRuOで染色し、樹脂層断面をTEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 H−7650、加速電圧100kV)を用いて測定した。
(4)フィルムの熱処理方法
各実施例、比較例において積層ポリエステルフィルムの樹脂層がむき出しとなる状態でケント紙と重ねて固定し、窒素雰囲気下で、150℃で90分間放置して熱処理を行った。ただし、比較例1では、樹脂層が設けられないので、ポリエステルフィルムの一方の表面がむき出しとなる状態でケント紙を重ねた。
(5)フィルムヘーズの測定方法
試料フィルムをJIS−K−7136に準じ、株式会社村上色彩技術研究所製ヘーズメーター「HM−150」により、フィルムヘーズを測定した。
(6)加熱処理によるフィルムヘーズ変化量の測定方法
各実施例、比較例において積層ポリエステルフィルムの樹脂層が設けられた面とは反対側の面に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート80質量部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート20質量部、光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)5質量部、及びメチルエチルケトン200質量部からなる混合塗液を乾燥後の厚さが3μmになるように塗布して乾燥させ、かつ紫外線を照射して硬化させハードコート層を形成した。なお、比較例1では、ポリエステルフィルムに樹脂層が設けられず、ポリエステルフィルムの一方の面にハードコート層を形成した。ハードコート層を有する積層ポリエステルフィルムのヘーズを(5)の方法で測定した。次いで(4)項の方法で加熱した後、(5)の方法でヘーズを測定した。熱処理後のヘーズと熱処理前のヘーズの差を計算し、フィルムヘーズ変化量とした。フィルムヘーズ変化量が低いほど、高温処理によるエステル環状三量体の析出が少ないことを示し、良好である。
(7)積層ポリエステルフィルムの表面に析出するエステル環状三量体析出量の測定
各実施例、比較例において、積層ポリエステルフィルムを空気中、180℃で30分間加熱する。その後、熱処理をした当該フィルムを上部が開いている縦横10cm、高さ3cmになるように、測定面(樹脂層)を内面として箱形の形状を作成した。ただし、比較例1では、樹脂層が設けられないので、ポリエステルフィルムの一方の面を測定面とした。
次いで、上記の方法で作成した箱の中にDMF(ジメチルスルホアミド)4mlを入れて3分間放置した後、DMFを回収し、液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製:LC−7A 移動相A:アセトニトリル、移動相B:2質量%酢酸水溶液、カラム:三菱化学株式会社製「MCI GEL ODS 1HU」、カラム温度:40℃、流速:1ml/分、検出波長:254nm)に供給して、DMF中のエステル環状三量体量を求め、この値を、DMFを接触させたフィルム面積で割って、フィルム表面エステル環状三量体量(mg/m)とした。DMF中のエステル環状三量体は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。なお、標準試料の作成は、予め分取したエステル環状三量体を正確に秤量し、正確に秤量したDMFに溶解し作成した。
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール60質量部、エチルアシッドフォスフェートを生成するポリエステルに対して30ppm、及び触媒として酢酸マグネシウム・四水和物を生成するポリエステルに対して100ppmを混合して、窒素雰囲気下、260℃でエステル化反応をさせた。引き続いて、テトラブチルチタネートを生成するポリエステルに対して50ppm添加し、2時間30分かけて280℃まで昇温すると共に、絶対圧力0.3kPaまで減圧し、さらに80分間溶融重縮合させ、極限粘度0.63dl/gのポリエステル(A)を得た。
<ポリエステル(B)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール60質量部、及び触媒として酢酸マグネシウム・四水和物を生成するポリエステルに対して900ppmを混合して、窒素雰囲気下、225℃でエステル化反応をさせた。引き続いて、正リン酸を生成するポリエステルに対して3500ppm、二酸化ゲルマニウムを生成するポリエステルに対して70ppm添加し、2時間30分かけて280℃まで昇温すると共に、絶対圧力0.4kPaまで減圧し、さらに85分間溶融重縮合させ、極限粘度0.64dl/gのポリエステル(B)を得た。
<ポリエステル(C)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、溶融重縮合前に平均粒径2μmのシリカ粒子を0.3質量部添加する以外はポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(C)を得た。
樹脂層を構成する化合物は以下のとおりである。
・フェノール樹脂(I): レゾール型フェノール樹脂の水分散体
・メラミン化合物(II):ヘキサメトキシメチロールメラミン
・粒子(III):平均粒径0.07μmのシリカ粒子
[実施例1]
ポリエステル(A)、(B)、(C)をそれぞれ91質量%、3質量%、6質量%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ97質量%、3質量%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1:18:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。
次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、下記表1に示す配合を有する塗布液1を塗布した。塗布液1が塗布されたフィルムは、テンターに導き、横方向に110℃で4.3倍延伸し、235℃で30秒間熱処理を行い、塗布液1を乾燥かつ硬化させた後、横方向に2%弛緩し、厚さ(乾燥後)が0.10μmの樹脂層を有する厚さ50μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムは、加熱処理によるフィルムヘーズ変化量が小さく、エステル環状三量体の析出量も少なく良好であった。このフィルムの特性を下記表2に示す。
[実施例2、3、4]
実施例1において、得られる樹脂層の厚さを表2に示すとおりに変更した以外は実施例1と同様に実施して、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムは表2に示すとおり、加熱処理によるフィルムヘーズの上昇はなく、エステル環状三量体の析出量も少なく良好であった。
[実施例5〜9]
塗布液の組成を表1に示す組成に変更する以外は実施例2と同様に実施して、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムは表2に示すとおり、加熱処理によるフィルムヘーズの上昇は実質的になく、エステル環状三量体の析出量も少なく良好であった。
[比較例1]
樹脂層を設けないこと以外は実施例1と同様にして実施してポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すとおり、加熱処理によるフィルムヘーズが大きく上昇し、エステル環状三量体の析出も多いものであった。
[比較例2]
塗布液の組成を表1に示す組成に変更する以外は実施例2と同様に実施して、積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムを評価したところフィルムヘーズの変化量と加熱処理によるエステル環状三量体の析出が多いものであり、外観が悪くかつ工程の汚染が懸念されるものであった。
Figure 2021084268

※表1における各質量%は、処理剤における不揮発成分に対する値である。
Figure 2021084268
本発明の積層ポリエステルフィルムは、高温雰囲気下にフィルムが長時間曝される過酷な熱処理工程を経た後でも、フィルムヘーズの上昇が小さく、エステル環状三量体の析出が少ないという性能を必要とする用途において使用でき、例えば、透明導電性積層体の基材として、好適に利用することができる。

Claims (5)

  1. ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に設けられた樹脂層とを備える積層ポリエステルフィルムであって、
    前記樹脂層がフェノール樹脂を含む積層ポリエステルフィルム。
  2. 前記樹脂層が処理剤から形成されてなり、該処理剤が架橋剤を含有する請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
  3. 前記樹脂層の厚さが0.001〜0.15μmである請求項1又は2に記載の積層ポリエステルフィルム。
  4. 前記フェノール樹脂がレゾール型フェノール樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  5. ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に設けられた樹脂層とを備える積層ポリエステルフィルムの製造方法であって、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面にフェノール樹脂を含む処理剤によって前記樹脂層を形成する、ポリエステルフィルムの製造方法。
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