JP2006507358A - 糖蛋白質合成 - Google Patents

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Abstract

糖蛋白質のin vitro及びin vivo製造方法を提供する。1方法は非天然アミノ酸を蛋白質に組込む段階と、1個以上の糖部分を非天然アミノ酸に結合する段階を含む。別の方法は糖部分を含む非天然アミノ酸を蛋白質に組込む段階を含む。どちらの方法により製造される蛋白質も付加糖で更に修飾することができる。

Description

(関連出願とのクロスリファレンス)
本願は米国仮特許出願第60/419,265号(出願日2002年10月16日)、米国仮特許出願第60/420,990号(出願日2002年10月23日)、及び米国仮特許出願第60/441,450号(出願日2003年1月16日)の優先権を主張し、その明細書の開示内容全体を本明細書に組込む。
(連邦政府支援研究開発から創出された発明の権利に関する陳述)
本発明は米国国立衛生研究所により交付された助成番号第GM44154号、GM62159号及びGM66494号と、エネルギー省(DOE)により交付された助成番号第DE−FG03−00ER45812号として政府助成下に創出された。米国政府は本発明に所定の権利を有する。
(発明の技術分野)
本発明は糖ペプチド、糖蛋白質、及び関連ミメティクスと、糖ペプチド、糖蛋白質、及び関連ミメティクスの合成方法の分野に関する。
グリコシル化による蛋白質の翻訳後修飾は蛋白質フォールディング及び安定性に影響を与え、蛋白質の固有活性を変化させ、他の生体分子とのその相互作用を変化させることができる。例えば非特許文献1参照。天然糖蛋白質は多数の異なる糖形態の集団として存在することが多いので、グリカン構造の分析や、蛋白質構造及び機能に対するグリコシル化効果の研究は困難である。従って、グリカン機能の系統的開明と改良糖蛋白質治療薬の開発には均質にグリコシル化された天然及び非天然蛋白質の合成方法が必要である。
所望グリコシル化パターンをもつ蛋白質を製造するための従来公知のアプローチの1つはグリコシダーゼを使用して不均質天然糖蛋白質を単純な均質コアに変換し、糖をグリコシルトランスフェラーゼで順次グラフトできるようにしている。例えば非特許文献2参照。このアプローチは、主要グリコシル化部位が蛋白質を発現させる細胞株により予め決定されるという欠点がある。あるいは、固相ペプチド合成により所望グリカン構造を含む糖ペプチドを合成することもできる。この糖ペプチドを天然化学的ライゲーション(例えば非特許文献3参照)、発現蛋白質ライゲーション(例えば非特許文献4参照)、又は遺伝子組換えプロテアーゼにより他のペプチド又は組換え蛋白質フラグメントとカップリングすると、より大きな糖蛋白質にすることができる。例えば非特許文献5参照。天然化学的ライゲーションと発現蛋白質ライゲーションはどちらも小蛋白質で最も有効であり、糖ペプチドのN末端にシステイン残基を必要とする。ペプチドを相互にライゲーションするためにプロテアーゼを使用する場合には、良好なカップリング収率のためにはライゲーション部位をグリコシル化部位から離して配置する必要がある。例えば非特許文献5参照。第3のアプローチは化学的方法を使用して蛋白質を糖で直接修飾する方法である。ハロアセトアミド糖誘導体をシステインのチオール基にカップリングさせると、良好な選択性が得られる(例えば非特許文献6;及び非特許文献7)が、この方法は2個以上のシステイン残基をもつ蛋白質では問題となることがある。
従って、所望グリコシル化パターンをもつ糖蛋白質を製造するための改良方法が必要とされている。本発明は以下の開示から明らかなように、前記及び他の必要を満たすものである。
Varki,A.(1993)Glycobiology 3:97−130 Witte,K.ら,(1997)J.Am.Chem.Soc.119:2114−2118 Shin,Y.ら,(1999)J.Am.Chem.Soc.121:11684−11689 Tolbert,T.J.and Wong,C.−H.(2000)J.Am.Chem.Soc.122:5421−5428 Witte,K.ら,(1998)J.Am.Chem.Soc.120:1979−1989 Davis,N.J.and,Flitsch,S.L.(1991)Tetrahedron Lett.32:6793−6796 Macmillan,D.;ら,(2002)Org Lett 4:1467−1470
本発明は糖蛋白質の合成方法を提供する。これらの方法は所定態様では、第1の反応性基を含む非天然アミノ酸を蛋白質に組込む段階と;第2の反応性基を含む糖部分と前記蛋白質を接触させ、第1の反応性基を第2の反応性基と反応させて糖部分を非天然アミノ酸に結合する段階を含む。これらの方法により生産された糖蛋白質も本発明に含まれる。第1の反応性基は所定態様では求電子性部分(例えばケト部分、アルデヒド部分、及び/又は同等物)であり、第2の反応性基は求核性部分である。所定態様では、第1の反応性基は求核性部分であり、第2の反応性基は求電子性部分(例えばケト部分、アルデヒド部分、及び/又は同等物)である。例えば、求電子性部分は糖部分に結合しており、求核性部分は非天然アミノ酸に結合している。糖部分は単一糖質部分を含むこともできるし、糖部分は2個以上の糖質部分を含むこともできる。
所定態様では、方法は更に糖供与体部分から糖部分に糖を転移させるために十分な時間と適切な条件下でグリコシルトランスフェラーゼ、糖供与体部分、及びグリコシルトランスフェラーゼ活性に必要な他の反応体と糖部分を接触させる段階を含む。この反応の生成物を所望により少なくとも第2のグリコシルトランスフェラーゼ及び適当な糖供与体部分と接触させることができる。
所定態様では、方法は更に糖部分をβ1−4N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、α1,3フコシルトランスフェラーゼ、α1,2フコシルトランスフェラーゼ、α1,4フコシルトランスフェラーゼ、β1−4ガラクトシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、及び/又は同等物の1種以上と接触させ、二側鎖又は三側鎖オリゴ糖構造を形成する段階を含む。
1態様では、糖部分は末端GlcNAcを含み、糖供与体部分はUDP−Galであり、グリコシルトランスフェラーゼはβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼである。1態様では、糖部分は末端GlcNAcを含み、糖供与体部分はUDP−GlcNAcであり、グリコシルトランスフェラーゼはβ1−4N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼである。場合により、方法は更にN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ反応の生成物をβ1−4マンノシルトランスフェラーゼ及びGDP−マンノースと接触させ、Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−を含む糖部分を形成する段階を含む。場合により、方法は更にManβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−部分をα1−3マンノシルトランスフェラーゼ及びGDP−マンノースと接触させ、Manα1−3Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−を含む糖部分を形成する
段階を含む。場合により、方法は更にManα1−3Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−部分をα1−6マンノシルトランスフェラーゼ及びGDP−マンノースと接触させ、Manα1−6(Manα1−3)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−を含む糖部分を形成する段階を含む。場合により、方法は更にManα1−6(Manα1−3)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−部分をβ1−2N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ及びUDP−GlcNAcと接触させ、Manα1−6(GlcNAcβ1−2Manα1−3)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−を含む糖部分を形成する段階を含む。場合により、方法は更にManα1−6(GlcNAcpl−2Manα1−3)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−部分をβ1−2N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ及びUDP−GlcNAcと接触させ、GlcNAcβ1−2Manα1−6(GlcNAcβ1−2Manα1−3)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−を含む糖部分を形成する段階を含む。
第1の反応性基を含む非天然アミノ酸を蛋白質に組込む段階は、所定態様では直交tRNA/直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−tRNA/O−RS)対を使用し、O−tRNAはセレクターコドンを認識し、セレクターコドンに応答して非天然アミノ酸を蛋白質に組込み、O−RSはO−tRNAを非天然アミノ酸で優先的にアミノアシル化する。例えば、O−RSは配列番号1、2、又は3のいずれか1種を含むアミノ酸配列を含む。場合により、O−tRNAはmutRNATyr CUAを含む。所定態様では、非天然アミノ酸をポリペプチドにin vivoで組込む。
本発明は更に糖部分とポリペプチドを含む糖蛋白質を提供する。所定態様では、本発明の糖蛋白質において糖部分はポリペプチドに存在する非天然アミノ酸に結合した第1の反応性基と糖部分に結合した第2の反応性基の求核性反応の反応生成物によりポリペプチドと結合している。所定態様では、第1の反応性基は求電子性部分(例えばケト部分、アルデヒド部分、及び/又は同等物)であり、第2の反応性基は求核性部分である。
所定態様では、本発明の求核性部分は限定されないが、ヒドラジド、ヒドロキシルアミン、セミカルバジド、カルボヒドラジド、スルホニルヒドラジド等を含む。例えば、求核性部分は限定されないが、−NR−NH(ヒドラジド)、−NR(C=O)NRNH(セミカルバジド)、−NR(C=S)NRNH(チオセミカルバジド)、−(C=O)NRNH(カルボニルヒドラジド)、−(C=S)NRNH(チオカルボニルヒドラジド)、−(SO)NRNH(スルホニルヒドラジド)、−NRNR(C=O)NRNH(カルバジド)、−NRNR(C=S)NRNH(チオカルバジド)、及び−O−NH(ヒドロキシルアミン)等を含み、前記式中、各R、R、及びRは独立してH、又は炭素原子数1〜6のアルキルである。
本発明の所定態様では、本発明の反応生成物は例えばオキシム、アミド、ヒドラゾン、還元ヒドラゾン、カルボヒドラゾン、チオカルボヒドラゾン、スルホニルヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン等を含む。
本発明の他の側面としては、糖部分を含む非天然アミノ酸を蛋白質に組込むことによる糖蛋白質の合成方法が挙げられる。前記方法により生産された糖蛋白質も本発明の特徴である。所定態様では、組込み段階は直交tRNA/直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−tRNA/O−RS)対を使用し、O−tRNAはセレクターコドンを認識し、セレクターコドンに応答して糖部分(例えば、β−O−GlcNAc−L−セリン、トリ−アセチル−β−GlcNAc−セリン、トリ−O−アセチル−GalNAc−α−スレオニン、又はα−GalNAc−L−スレオニン、及び/又は同等物)を含む非天然アミノ酸を蛋白質に組込み、O−RSはO−tRNAを非天然アミノ酸で優先的にアミノアシ
ル化する。1態様では、組込み段階はin vivoで実施される。例えば、O−RSは配列番号4、5、又は6のいずれか1種を含むアミノ酸配列を含むか、あるいは配列番号8、9、又は10のいずれか1種のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによりコードされる。場合により、O−tRNAはmutRNATyr CUAを含む。これらの方法は更に糖供与体部分から糖部分に糖を転移させるために十分な時間と適切な条件下でグリコシルトランスフェラーゼ、糖供与体部分、及びグリコシルトランスフェラーゼ活性に必要な他の反応体と糖部分を接触させる段階を含むことができる。
所定態様では、方法は更にグリコシルトランスフェラーゼ反応の生成物を少なくとも第2のグリコシルトランスフェラーゼ及び第2の糖供与体部分と接触させる段階を含む。1態様では、糖部分は末端GlcNAcを含み、糖供与体部分はUPD−GlcNAcであり、グリコシルトランスフェラーゼはβ1−4N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼである。別の態様では、糖部分は末端GlcNAcを含み、糖供与体部分はUDP−Galであり、グリコシルトランスフェラーゼはβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼである。付加糖を加えることができる。
所定態様では、本発明のグリコシルトランスフェラーゼは限定されないが、ガラクトシルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、グルクロニルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、グルクロン酸トランスフェラーゼ、ガラクツロン酸トランスフェラーゼ、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ等を含む。
本発明は更に糖蛋白質の合成に有用な宿主細胞(例えば哺乳動物細胞、酵母細胞、細菌細胞、植物細胞、真菌細胞、始原菌細胞、昆虫細胞、及び/又は同等物)も提供する。これらの宿主細胞は、a)糖部分を含む非天然アミノ酸と;b)セレクターコドンを認識する直交tRNAと;c)非天然アミノ酸と直交tRNAの結合を触媒する直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)と;d)グリコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチドと;e)ポリペプチドをコードし、少なくとも1個のセレクターコドンを含むポリヌクレオチド配列を含む。
翻訳系を含む組成物も本発明により提供される。翻訳系は直交tRNA(O−tRNA)と直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)を含み、O−RSは糖部分(例えば、β−O−GlcNAc−L−セリン、トリ−アセチル−β−GlcNAc−セリン、トリ−O−アセチル−GalNAc−α−スレオニン、α−GalNAc−L−スレオニン、及び/又は同等物)を含む非天然アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化し、O−tRNAは少なくとも1個のセレクターコドンを認識する。所定態様では、O−RSは配列番号4、5、又は6のいずれか1種を含むアミノ酸配列を含むか、あるいは配列番号8、9、又は10のいずれか1種のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによりコードされる。場合により、O−tRNAはmutRNATyr CUAを含む。
人工(例えば人為的に作製した非天然)ポリペプチド及びポリヌクレオチドも本発明の特徴である。例えば、本発明の人工ポリペプチドは例えば(a)配列番号4〜6のいずれか1種に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;(b)配列番号8〜10のいずれか1種に示すポリヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(c)(a)、又は(b)のポリペプチドに特異的な抗体に対して特異的に免疫反応性のポリペプチド;及び(d)(a)、(b)、又は(c)の保存変異を含むアミノ酸配列を含む。本発明の人工ポリペプチドに対して特異的に免疫反応性の抗体又は抗血清も本発明により提供される。本発明の人工ポリヌクレオチドは例えば(a)配列番号8〜10のいずれか1種に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;(b)(a)のポリヌクレオ
チド配列に相補的であるか又はこれをコードするポリヌクレオチド;(c)配列番号1〜6のいずれか1種に記載のアミノ酸配列又はその保存変異体を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;(d)人工ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;(e)核酸の実質的に全長にわたって高ストリンジェント条件下で(a)、(b)、(c)、又は(d)のポリヌクレオチドとハイブリダイズする核酸;(f)(a)、(b)、(c)、(d)、又は(e)のポリヌクレオチドと少なくとも98%一致するポリヌクレオチド;及び(h)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、又は(f)の保存変異体を含むポリヌクレオチドを含む。
定義
本発明を詳細に記載する前に、本発明は特定装置又は生物系に限定されず、当然のことながら種々のものに適用できると理解すべきである。同様に、本明細書で使用する用語は特定態様のみの説明を目的とし、限定的でないことも理解すべきである。本明細書と特許請求の範囲で使用する単数形はそうでないことが内容から明白である場合を除き、複数形も含む。従って、例えば「細胞」と言う場合には2個以上の表面の組合せを含み、「細菌」と言う場合には細菌混合物を含み、他の用語についても同様である。
直交:本明細書で使用する「直交」なる用語は細胞又は他の翻訳系に内在する対応する分子により低効率で使用される分子(例えば直交tRNA(O−tRNA)及び/又は直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS))を意味する。直交とは、該当翻訳系で直交tRNAが内在tRNAシンテターゼと共に機能できないか又は低効率でしか機能できず、あるいは、直交RSが内在tRNAがと共に機能できないか又は低効率でしか機能できず、例えば20%未満、10%未満、5%未満、又は1%未満の効率でしか機能できないことを意味する。例えば、該当翻訳系における直交tRNAが該当翻訳系の任意内在RSによりアミノアシル化される効率は内在tRNAが内在RSによりアミノアシル化される効率に比較して低いか又はゼロである。別の例では、直交RSが該当翻訳系における任意内在tRNAをアミノアシル化する効率は内在RSが内在tRNAをアミノアシル化する効率に比較して低いか又はゼロである。
優先的にアミノアシル化する:「優先的にアミノアシル化する」なる用語はO−RSが非天然アミノ酸でO−tRNAをアミノアシル化する効率が天然tRNA又はO−tRNAを作製するために使用する出発材料に比較して例えば約70%、約75%、約85%、約90%、約95%、又は約99%以上であることを意味する。その場合、非天然アミノ酸は成長中のポリペプチド鎖に高い忠実度で組込まれ、例えば、所与セレクターコドンで効率約75%以上、所与セレクターコドンで効率約80%以上、所与セレクターコドンで効率約90%以上、所与セレクターコドンで効率約95%以上、又は所与セレクターコドンで効率99%以上である。
セレクターコドン:「セレクターコドン」なる用語は翻訳プロセスでO−tRNAにより認識されるが、一般に内在tRNAにより認識されないコドンを意味する。O−tRNAアンチコドンループはmRNA上のセレクターコドンを認識し、そのアミノ酸(例えば非天然アミノ酸)をポリペプチド内のこの部位に組込む。セレクターコドンとしては例えばナンセンスコドン(例えばアンバー、オーカー及びオパールコドン等の終止コドン)、4塩基以上のコドン、天然又は非天然塩基対から誘導されるコドン及び/又は同等物を挙げることができる。所与系で、内在系が該当天然3塩基コドンを使用しない場合にセレクターコドンは更に天然3塩基コドンの1種を含むことができ、例えば天然3塩基コドンを認識するtRNAを欠失する系や、天然3塩基コドンがレアコドンである系がこれに該当する。
サプレッサーtRNA:サプレッサーtRNAは所与翻訳系でメッセンジャーRNA(
mRNA)の読取りを改変するtRNAである。サプレッサーtRNAは例えば終止コドン、4塩基コドン、レアコドン、及び/又は同等物を読み飛ばすことができる。
翻訳系:「翻訳系」なる用語は成長中のポリペプチド鎖(蛋白質)に天然アミノ酸を組込むために必要な成分を意味する。翻訳系の成分としては例えばリボソーム、tRNA、シンテターゼ、mRNA等を挙げることができる。本発明の成分はin vivoでもin vitroでも翻訳系に加えることができる。翻訳系は細胞とすることができ、原核細胞(例えば大腸菌細胞、始原菌細胞等)でも真核細胞(例えば酵母、哺乳動物、植物、昆虫等)でもよい。
非天然アミノ酸:本明細書で使用する「非天然アミノ酸」なる用語は20種の天然アミノ酸の1種又はセレノシステイン又はピロリジン以外の任意アミノ酸、修飾アミノ酸、及び/又はアミノ酸類似体を意味する。
糖部分:本明細書で使用する「糖部分」なる用語は天然及び非天然糖部分を意味する(即ち、非天然糖部分、例えばヒドロキシル又はアミノ位を修飾(例えば脱ヒドロキシル化、脱アミノ化、エステル化等)された糖部分、例えば2−デオキシGalは非天然糖部分の1例である)。「糖質」なる用語は一般式(CHO)をもち、限定されないが、例えば単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類が挙げられる。オリゴ糖は糖単位(糖とも言う)から構成される鎖である。糖単位は任意規則で配置することができ、2個の糖単位間の結合は約10種の異なる方法の任意のものとすることができる。
本明細書では以下の略称を使用する:
Ara=アラビノシル;
Fru=フルクトシル;
Fuc=フコシル;
Gal=ガラクトシル;
GalNAc=N−アセチルガラクトサミニル;
Glc=グルコシル;
GlcNAc=N−アセチルグルコサミニル;
Man=マンノシル;及び
NeuAc=シアリル(一般にN−アセチルノイラミニル)。
オリゴ糖は還元末端の糖が実際に還元糖であるか否かに拘わらず、還元末端と非還元末端をもつとみなされる。容認されている命名法に従い、本明細書ではオリゴ糖は左側を非還元末端とし、右側を還元末端とする。本明細書に記載する全オリゴ糖は非還元糖の名称又は略称(例えばGal)に続いてグリコシド結合(α又はβ)、環結合の立体配置、結合に関与する還元糖の環位置を記載し、その後に還元糖の名称又は略称(例えばGlcNAc)を記載する。2個の糖間の結合は例えば2,3、2→3,2−3、又は(2,3)のように表すことができる。2個の糖間の天然又は非天然結合(例えば1−2、1−3、1−4、1−6、2−3、2−4、2−6等)も本発明に含まれる。各糖はピラノースである。
「シアル酸」(略称「Sia」)なる用語は9炭素カルボキシル化糖ファミリーの任意メンバーを意味する。シアル酸ファミリーの最も一般的なメンバーはN−アセチル−ノイラミン酸(2−ケト−5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノヌロピラノース−1−オン酸)(Neu5Ac、NeuAc、又はNANAと略称することが多い)である。このファミリーの第2のメンバーはNeuAcのN−アセチル基をヒドロキシル化したN−グリコリル−ノイラミン酸(Neu5Gc又はNeuGc)である。第3のシアル酸ファミリーメンバーは2−ケト−3−デオキシ−ノヌロソン酸(
KDN)(Nadanoら(1986)J.Biol.Chem.261:11550−11557;Kanamoriら(1990)J.Biol.Chem.265:21811−21819)である。9−O−C−Cアシル−Neu5Ac(例えば9−O−ラクチル−Neu5Ac又は9−O−アセチル−Neu5Ac)、9−デオキシ−9−フルオロ−Neu5Ac及び9−アジド−9−デオキシ−Neu5Ac等の9置換シアル酸も含まれる。シアル酸ファミリーについては、例えばVarki(1992)Glycobiology 2:25−40;Sialic Acids:Chemistry.Metabolism and Function,R.Schauer,Ed.(Springer−Verlag,New York(1992)参照。シアル酸化合物の合成とシアリル化法における使用は例えば国際出願WO92/16640(公開日1992年10月1日)に記載されている。
グリコシルトランスフェラーゼの供与体基質は活性化ヌクレオチド糖である。このような活性化糖は一般にヌクレオシド二リン酸又は一リン酸を脱離基とする糖の誘導体であるウリジン及びグアノシン二リン酸とシチジン一リン酸から構成される。細菌、植物、及び真菌系は場合により他の活性ヌクレオチド糖も使用できる。
本欄及び本明細書の他の欄で定義しない限り、本明細書で使用する全科学技術用語は本発明が属する分野の当業者に通常理解されている通りの意味である。
〔図面の簡単な説明〕
図1は非天然アミノ酸を含むポリペプチドに糖部分を結合するための2種類のスキーム(順次経路と収束経路)の例を模式的に示す。
図2は(図1の)アミノオキシ糖1とp−アセチル−L−フェニルアラニンを含む(図1の)突然変異体Zドメイン蛋白質Iの7時間及び26時間カップリング反応のHPLC分析を示す。
図3は(図1の)突然変異体Zドメイン蛋白質I、(図1の)糖蛋白質ミメティクスII、III、及びIVの高分解能MALDI−FTICR MSスペクトルを示す。各スペクトルの2同位体クラスターを示す。
図4はGly4→A突然変異体ミオグロビン(〜18.5kD)の発現を示す。蛋白質をNi2+アフィニティークロマトグラフィーにより精製し、SDS−PAGEにより分解した。ゲルを銀染色した。
図5はGly4→A突然変異体ミオグロビンの分子量のMALDI−TOF分析を示す。
図6はA、B及びCはグリコシル化アミノ酸を含む精製突然変異体ミオグロビンの特性決定を示す。AはGlcNAc特異的レクチンBanderiraea simplicifolia II(BSII)と野生型ミオグロビン及び糖ミオグロビンの結合を示す。BはUDP−[H]ガラクトースによる糖ミオグロビンのオンブロットガラクトシルトランスフェラーゼ標識を示す。Cは溶液中で実施したガラクトシルトランスフェラーゼ反応の定量分析を示し、1.0が100%転移に対応するように放射性標識ガラクトースを標準化した。
蛋白質の翻訳後修飾は代謝、シグナル伝達、及び遺伝子発現をはじめとする多数の生体プロセスを調節する。しかし、選択的に修飾された蛋白質の均質集団の作製に関連する合
成の問題により、蛋白質構造及び機能に対するこれらの修飾の効果に関する詳細な研究は妨げられている。例えば、グリコシル化は真核生物で最も一般的な蛋白質の翻訳後修飾の1種であり、フォールディングや分泌から生体分子認識及び血清半減期に至る広範な蛋白質機能に影響を与える。例えばR.A.Dwek,(1996)Chem.Rev.96:683参照。グリコシル化の効果の解明はかなり進んだが、オリゴ糖鎖の具体的な役割とその構造と機能の関係についてはまだ解明され始めたばかりである。例えば、C.R.Bertozzi,& L.L.Kiess1ing,(2001)Science 291:2357参照。主な問題は糖蛋白質が一般に糖形態の混合物として生産されるため、天然源から固有糖形態を単離しにくい点である。規定構造の糖形態を合成するために種々の方法が開発されているが、生産される糖蛋白質のサイズ、量、及び/又は品質に重大な欠点がある。例えばP.Sears,& C.H.Wong,(2001)Science 291:2344;M.Wackerら,(2002)Science 298:1790;B.G.Davis,(2002)Chem.Rev.102:579;及びH.C.Hang,& C.R.Bertozzi,(2001)Acc.Chem.Res.34:727参照。本発明はこの問題と他の問題を解決し、糖蛋白質及び糖蛋白質ミメティクス、並びに所望グリコシル化パターンをもつ糖蛋白質の合成方法を提供する。本発明の糖蛋白質及び糖蛋白質ミメティクスは均質な糖形態の治療用糖蛋白質の生産及び/又はグリコシル化蛋白質の構造と機能に関する研究の促進に有用である。
グリコシル化
本発明は糖蛋白質の合成方法を提供する。所定態様では、これらの方法は、第1の反応性基を含む非天然アミノ酸を蛋白質に組込む段階と;糖部分に結合した第2の反応性基と第1の反応性基を接触させ、共有結合を形成し、糖部分を前記蛋白質に結合する段階を含む。
多種多様な適切な反応性基が当業者に公知である。このような適切な反応性基としては、例えばアミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボン酸、カルボニル、アルケニル、アルキニル、アルデヒド、エステル、エーテル(例えばチオ−エーテル)、アミド、アミン、ニトリル、ビニル、スルフィド、スルホニル、ホスホリル、又は同様の化学反応基が挙げられる。その他の適切な反応性基としては限定されないが、マレイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド、ニトリロトリ酢酸、活性化ヒドロキシル、ハロアセチル(例えばブロモアセチル、ヨードアセチル)、活性化カルボキシル、ヒドラジド、エポキシ、アジリジン、塩化スルホニル、トリフルオロメチルジアジリジン、ピリジルジスルフィド、N−アシル−イミダゾール、イミダゾールカルバミン酸、ビニルスルホン、スクシンイミジル炭酸、アリールアジド、無水物、ジアゾ酢酸、ベンゾフェノン、イソチオシアン酸、イソシアン酸、イミドエステル、フルオロベンゼン、ビオチン及びアビジンが挙げられる。
所定態様では、反応性基の一方は求電子性部分であり、第2の反応性基は求核性部分である。求核性部分又は求電子性部分は非天然アミノ酸の側鎖に結合することができ、その場合には、対応する基を糖部分に結合する。求核性部分と反応して共有結合を形成する適切な求電子部分は当業者に公知である。このような求電子性部分としては限定されないが、例えばカルボニル基、スルホニル基、アルデヒド基、ケトン基、ヒンダードエステル基、チオエステル基、安定イミン基、エポキシド基、アジリジン基等が挙げられる。求電子性部分と反応することができる適切な求核性部分は当業者に公知である。このような求核性部分としては例えば脂肪族又は芳香族アミン(例えばエチレンジアミン)が挙げられる。他の態様では、反応性基は−NR−NH(ヒドラジド)、−NR(C=O)NRNH(セミカルバジド)、−NR(C=S)NRNH(チオセミカルバジド)、−(C=O)NRNH(カルボニルヒドラジド)、−(C=S)NRNH(チオカルボニルヒドラジド)、−(SO)NRNH(スルホニルヒドラジド)、−N
NR(C=O)NRNH(カルバジド)、−NRNR(C=S)NRNH(チオカルバジド)、−O−NH(ヒドロキシルアミン)及び/又は同等物であり、前記式中、各R、R、及びRは独立してH、又は炭素原子数1〜6のアルキル、好ましくはHである。本発明の1側面では、反応性基はヒドラジド、ヒドロキシルアミン、セミカルバジド、カルボヒドラジド、スルホニルヒドラジド等である。
求核性部分と求電子性部分の反応生成物は一般に求核性部分に元々存在する原子を組込んでいる。アルデヒド又はケトンと求核性部分を反応させることにより得られる典型的な結合としては使用される求核性部分及び求核性部分と反応させる求電子性部分(例えばアルデヒド、ケトン、及び/又は同等物)に応じてオキシム、アミド、ヒドラゾン、還元ヒドラゾン、カルボヒドラゾン、チオカルボヒドラゾン、スルホニルヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、又は類似官能基等の反応生成物が挙げられる。カルボン酸との結合は一般にカルボヒドラジド又はヒドロキサム酸と呼ばれる。スルホン酸との結合は一般にスルホニルヒドラジド又はN−スルホニルヒドロキシルアミンと呼ばれる。その後、得られた結合を化学的還元により安定化させることができる。
所定態様では、糖蛋白質は糖部分に結合した非天然アミノ酸をポリペプチドに組込むことにより合成される。例えば、セレクターコドンに応答して糖部分をもつ非天然アミノ酸を成長中のポリペプチド鎖に組込む直交O−tRNA/O−RSを使用することができる。例えば本明細書の「非天然アミノ酸をもつ蛋白質の製造」のセクション参照。
グリコシルトランスフェラーゼ
本発明はアミノ酸と結合した糖部分又は糖部分を含む非天然アミノ酸を更にグリコシル化する方法を提供する。グリコシル化段階は例えばグリコシルトランスフェラーゼ、グリコシダーゼ、又は当業者に公知の他の酵素を使用して酵素により実施することが好ましい。所定態様では、2種以上の異なるグリコシルトランスフェラーゼを含む単一反応混合物で複数の酵素段階を実施する。例えば、シアリルトランスフェラーゼとガラクトシルトランスフェラーゼの両者を反応混合物に加えることによりガラクトシル化段階とシアリル化段階を同時に実施することができる。
グリコシルトランスフェラーゼ反応を含む酵素糖合成では、本発明の組換え細胞は場合によりグリコシルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1個の異種遺伝子を含む。多数のグリコシルトランスフェラーゼとそのポリヌクレオチド配列が公知である。例えば“The WWW Guide To Cloned Glycosyltransferases”参照(世界ウェブwww.vei.co.uk/TGN/gt guide.htm参照)。グリコシルトランスフェラーゼアミノ酸配列とアミノ酸配列を推定することが可能なグリコシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列もGenBank、Swiss−Prot、EMBL等の種々の公共データベースから入手できる。
本発明の細胞で使用することができるグリコシルトランスフェラーゼとして限定されないが、ガラクトシルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、グルクロニルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、グルクロン酸トランスフェラーゼ、ガラクツロン酸トランスフェラーゼ、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ等が挙げられる。適切なグリコシルトランスフェラーゼとしては真核生物と原核生物から得られるものが挙げられる。
グリコシルトランスフェラーゼの受容体は本発明の方法により修飾する糖蛋白質に存在する。適切な受容体としては例えばGalβ1,4GalNAc−、Galβ1,3Ga
lNAc−、ラクト−N−テトラオース−、Galβ1,3GlcNAc−、Galβ1,4GlcNAc−、Galβ1,3Ara−、Galβ1,6GlcNAc−、及びGalβ1,4Glc−(ラクトース)等のガラクトシル受容体が挙げられる。他の受容体も当業者に公知である(例えばPaulsonら(1978)J.Biol.Chem.253:5617−5624参照)。一般に、受容体は糖蛋白質と結合した糖部分鎖の一部を構成する。
酵素量又は濃度は初期触媒速度の尺度である活性単位で表される。1活性単位は所与温度(一般に37℃)及びpH値(一般に7.5)で毎分1μmolの生成物の形成を触媒する。従って、酵素10単位は温度37℃とpH値7.5で1分間に基質10μmolが生成物10μmolに変換される場合の酵素の触媒量である。酵素は溶液に遊離させて使用してもよいし、ポリマー等の支持体に固定してもよい。従って、多少の沈殿が反応中に形成される場合もあるが、反応混合物は当初は実質的に均質である。
グリコシル化反応は適切なグリコシルトランスフェラーゼと受容体に加え、グリコシルトランスフェラーゼの糖供与体として機能する活性化ヌクレオチド糖を含む。反応は更にグリコシルトランスフェラーゼ活性を助長する他の成分も含むことができる。これらの成分としては2価カチオン(例えばMg+2又はMn+2)、ATP再生に必要な材料、リン酸イオン、及び有機溶媒が挙げられる。プロセスで使用される種々の反応体の濃度又は量は温度及びpH値等の反応条件や、グリコシル化すべき受容体糖の選択と量などの多数の因子により異なる。反応媒体は更に必要に応じて溶解補助界面活性剤(例えばTriton又はSDS)と、メタノール又はエタノール等の有機溶媒を加えてもよい。
本発明の方法を使用して生産されたオリゴ糖は当業者に公知の方法により分析することができる。例えば、糖質単位を例えばアルカリβ脱離により糖質部分から遊離させ、ゲル濾過によりポリペプチドから分離することができる。得られたオリゴ糖を次にゲル濾過、HPLC、薄層クロマトグラフィー、及びイオン交換クロマトグラフィー等の1種以上の標準技術又はその組み合わせを使用して相互に分離し、完全に分析することができる。精製オリゴ糖単位の完全な構造分析には単糖単位、その環形態、立体配置(D又はL)、アノマー結合(α又はβ)、糖間の結合の位置とその配列の決定が必要である。更に、置換基が存在する場合にはその位置を確認する。単糖間のグリコシド結合の位置を決定するためにはメチル化分析を使用することができる。糖残基のアノマー立体配置は例えばH NMRスペクトロスコピーを使用して割り当てることができる。完全構造糖質分析を実施するために使用する条件と方法はBeeley,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,eds.Burdon and Knippenberg,Elsevier,Amsterdam(1985),Hounsell,“Glycoanalysis Protocols”,Meth.Mol.Biol.Vol.76,1998,及びEl Rassi,Carbohydrate Analysis:High Performance Liquid Chromatography and Capillary
Electrophoresis,Elsevier Science Ltd,Vol.58(1994)に概説されている。
オリゴ糖の糖を完全に特性決定するためのその他の技術としてはFAB−MS(高速原子ボンバードメント−質量分析)、HPAE(高pHアニオン交換クロマトグラフィー)及びNMR(核磁気共鳴スペクトロスコピー、特にH−NMR及び13C−NMR)が挙げられる。これらの技術は補完的である。オリゴ糖の構造を完全に特性決定するためにこれらの技術を使用する方法の例はSpellmanら,(1989)J.Biol.Chem.264:14100,及びStanleyら(1988)J.Biol.Chem.263:11374に記載されている。他の方法としては正イオン高速原子ボンバードメント質量分析(FAB−MS)及びガスクロマトグラフィー−電子衝撃質量分析(G
C/EI−MS)によるメチル化分析(EPO出願第89305153.2号参照)が挙げられる。
糖蛋白質のin vivo合成
糖蛋白質をin vivo合成するためには、該当ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現ベクターに導入すればよい。ポリヌクレオチドは更に糖部分の結合が所望される位置に1個以上のセレクターコドンを含む。非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸(例えばアルデヒド又はケト誘導体化アミノ酸)又は糖部分を含む非天然アミノ酸)と;セレクターコドンを認識する直交tRNAと;非天然アミノ酸と直交tRNAの結合を触媒する直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)を含む宿主細胞に発現ベクターを導入する。O−RSは非天然アミノ酸を直交tRNAに結合した後に、非天然アミノ酸を未完成蛋白質に導入する。
所定態様では、宿主細胞は更にグリコシルトランスフェラーゼをコードする1種以上のポリヌクレオチドを含む。このような宿主細胞は非天然アミノ酸と結合した糖部分への1個以上の糖の付加を触媒することができる。
ターゲット核酸を宿主細胞に導入する方法としては数種の周知方法が利用可能であり、本発明ではその任意のものを使用することができる。これらの方法としては、DNAを含む細菌プロトプラストとレシピエント細胞の融合、エレクトロポレーション、遺伝子銃及びウイルスベクターによる感染等が挙げられる。本発明のDNA構築物を含むプラスミドの数を増幅するためには細菌細胞を使用することができる。対数期まで細菌細胞を増殖させると、細菌内のプラスミドを当分野で公知の各種方法により単離することができる(例えばSambrook,後出参照)。更に、細菌からプラスミドを精製するために多数のキットが市販されている(例えばEasyPrep(登録商標)、FlexiPrep(登録商標)(いずれもPharmacia Biotech);StrataClean(登録商標)(Stratagene);及びQIAprep(登録商標)(Qiagen)参照)。単離精製したプラスミドを更に操作して他のプラスミドを作製し、細胞をトランスフェクトするために使用するか又は生物に感染させるために関連ベクターに組込む。
組換え宿主細胞は例えばスクリーニング段階、プロモーター活性化又は形質転換細胞選択等の操作に合うように適宜改変した慣用栄養培地で培養することができる。これらの細胞を場合によりトランスジェニック生物で培養することができる。
例えば細胞単離及び培養(例えば後続核酸単離)に関する他の有用な文献としては、Freshney(1994)Culture of Animal Cells,a Manual of Basic Technique,第3版,Wiley−Liss,New Yorkとその引用文献;Payneら(1992)Plant Cell and Tissue Culture in Liquid Systems,John
Wiley & Sons,Inc.New York,NY;Gamborg and Phillips(eds)(1995)Plant Cell,Tissue and Organ Culture;Fundamental Methods Springer Lab Manual,Springer−Verlag(Berlin Heidelberg New York)及びAtlas and Parks(eds)The Handbook of Microbiological Media(1993)CRC Press,Boca Raton,FLが挙げられる。
分子生物学技術について記載している一般教科書としてはBerger and Kimmel,Guide to Molecular Cloning Techniqu
es,Methods in Enzymology volume 152 Academic Press,Inc.,San Diego,CA(Berger);Sambrookら,Molecular Cloning−A Laboratory Manual(第3版)),Vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,2001(「Sambrook」)及びCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubelら編,Current Protocols,a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.,(2003年補遺)(「Ausubel」))が挙げられる。これらの教科書は突然変異誘発、ベクターの使用、プロモーター及び他の多くの関連事項について記載しており、例えば非天然アミノ酸、直交tRNA、直交シンテターゼ及びその対を含む蛋白質を生産するためのセレクターコドンを含む遺伝子の作製についても記載している。
非天然アミノ酸をもつ蛋白質の製造
非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸(例えばアルデヒド又はケト誘導体化アミノ酸)又は糖部分を含む非天然アミノ酸)を含む糖蛋白質の製造も本発明の特徴である。所定態様では、本発明は第2の反応性基と反応させると共有結合を形成することができる適切な反応性基を結合した1種以上の非天然アミノ酸を含む糖蛋白質の製造に関する。所定態様では、非天然アミノ酸は求電子性部分を含み(例えばアルデヒド又はケト誘導体化アミノ酸)、アルデヒド又はケト部分を求核性部分と反応させ、糖部分をポリペプチド又は蛋白質と結合する。非天然アミノ酸を含む蛋白質は直交tRNA/アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−tRNA/O−RS)対を使用して遺伝的にコードされる付加アミノ酸を受容するように蛋白質生合成機構を改変した細胞により合成される。特に、細胞はセレクターコドン(例えば終止コドン、4塩基コドン等)を認識する直交tRNAと、アルデヒド又はケト誘導体化アミノ酸を直交tRNAと結合することが可能な直交アミノアシルtRNAシンテターゼを含む。
所定態様では、本発明は糖部分を含む1種以上の非天然アミノ酸を含む糖蛋白質の製造に関する。非天然アミノ酸を含む蛋白質は直交tRNA/アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−tRNA/O−RS)対を使用して遺伝的にコードされる付加アミノ酸を受容するように蛋白質生合成機構を改変した細胞により合成される。特に、細胞はセレクターコドン(例えば終止コドン、4塩基コドン等)を認識する直交tRNAと、糖部分をもつ非天然アミノ酸を直交tRNAと結合することが可能な直交アミノアシルtRNAシンテターゼを含む。
この技術により非天然アミノ酸を蛋白質に直接部位特異的にin vivo組込むことができる。重要な点は、非天然アミノ酸を20種の標準アミノ酸の1種に置換するのでなく遺伝子レパートリーに加えるという点である。蛋白質は蛋白質の特定位置に1又は複数の(同一又は異なる)非天然アミノ酸をもつことができる。蛋白質を誘導体化するための初期方法とは異なり、O−tRNA/O−RS対の使用により、蛋白質中で特定アミノ酸が存在する各位置でこの特定アミノ酸を誘導体化するのではなく、蛋白質中で特定アミノ酸が存在する位置のただ1つに非天然アミノ酸をもつ蛋白質を生産することができる。
糖蛋白質を生産するためには、直交tRNA/RS対による非天然アミノ酸のin vivo組込みに適した宿主細胞及び生物を使用することができる。直交tRNA、直交tRNAシンテターゼ、及び誘導体化すべき蛋白質をコードするベクターを発現する1種以上のベクターで宿主細胞を遺伝子組換え(例えば形質転換、形質導入又はトランスフェクション)する。これらの成分の各々を同一ベクターに配置してもよいし、各々別々のベク
ターに配置してもよいし、2成分を同一ベクターに配置し、第3の成分を第2のベクターに配置してもよい。ベクターは例えばプラスミド、細菌、ウイルス、裸のポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドコンジュゲートの形態とすることができる。
直交tRNA、直交tRNAシンテターゼ、及び誘導体化すべき蛋白質のコーディング領域を所望宿主細胞で機能的な遺伝子発現制御エレメントに機能的に連結する。典型的なベクターは転写及び翻訳ターミネーターと、転写及び翻訳開始配列と、特定ターゲット核酸の発現の調節に有用なプロモーターを含む。ベクターは場合により少なくとも1個の独立ターミネーター配列と、真核生物又は原核生物又は両者(例えばシャトルベクター)でカセットの複製を可能にする配列と、原核系と真核系の両者の選択マーカーを含む包括的発現カセットを含む。ベクターは原核生物、真核生物、又は好ましくは両者での複製及び/又は組込みに適している。Giliman & Smith,Gene 8:81(1979);Robertsら,Nature,328:731(1987);Schneider,B.ら,Protein Expr.Purif.6435:10(1995);Berger and Kimmel,前出;Sambrook,前出,及びAusubel,前出参照。クローニングに有用な細菌とバクテリオファージのカタログは例えばATCCから入手でき、例えばATCCから刊行されたThe ATCC Catalogue of Bacteria and Bacteriophage(1992)Ghernaら(編)が挙げられる。その他のシーケンシング、クローニング及び分子生物学の他の側面の基本手順と基礎理論事項もWatsonら(1992)Recombinant DNA Second Edition Scientific American Books,NY.Proteins and Polypeptides of Interestに記載されている。
例えば、糖蛋白質の生産方法は、少なくとも1個のセレクターコドンを含み且つ蛋白質をコードする核酸を含む細胞を適当な培地で増殖させる段階と、非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)を提供する段階と、少なくとも1個のセレクターコドンによる核酸の翻訳中に蛋白質の特定位置に非天然アミノ酸を組込むことにより、蛋白質生産する段階を含む。細胞は更に、細胞で機能し、セレクターコドンを認識する直交tRNA(O−tRNA)と;非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)でO−tRNAを優先的にアミノアシル化する直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)を含む。公開WO2002/085923号、発明の名称「非天然アミノ酸のインビボ組込み(IN VIVO INCORPORATION
OF UNNATURAL AMINO ACIDS)」はこの方法を記載しており、参考資料として本明細書に組込む。例えば、O−tRNA/O−RS対を宿主に導入すると、前記対はセレクターコドンに応答して外部から増殖培地に添加することができる非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)のin vivo蛋白質組込みを誘導する。場合により、本発明の組成物はin vitro翻訳系に導入してもよいし、in vivo系に導入してもよい。参考資料として本明細書に組込む2003年10月15日付け対応出願、発明の名称「ケトアミノ酸の部位特異的蛋白質組込み(Site Specific Incorporation of Keto Amino Acids into Proteins)」(代理人整理番号54−000170PCT)も参照されたい。
本発明の細胞は大量の有用な量の糖蛋白質を合成することができる。1側面では、組成物は場合により、例えば少なくとも10μg、少なくとも50μg、少なくとも75μg、少なくとも100μg、少なくとも200μg、少なくとも250μg、少なくとも500μg、少なくとも1mg、少なくとも10mg以上、又はin vivo蛋白質生産方法で達成可能な量の糖蛋白質を含有する(組換え蛋白質生産及び精製に関する詳細は本
明細書に記載する)。別の側面では、蛋白質は場合により例えば細胞溶解液、緩衝液、医薬緩衝液、又は他の懸濁液中(例えば約1nl〜約100Lの任意の容量中)に例えば少なくとも10μg蛋白質/l、少なくとも50μg蛋白質/l、少なくとも75μg蛋白質/l、少なくとも100μg蛋白質/l、少なくとも200μg蛋白質/l、少なくとも250μg蛋白質/l、少なくとも500μg蛋白質/l、少なくとも1mg蛋白質/l、又は少なくとも10mg蛋白質/l以上の濃度で組成物中に存在する。少なくとも1種の非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)を組込んだ蛋白質の細胞における大量(例えば他の方法、例えばin vitro翻訳で一般に可能な量よりも多量)の生産も本発明の特徴である。
非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)の組込みは例えば寸法、酸性度、求核性、水素結合、疎水性、プロテアーゼ標的部位接近性、蛋白質部分への標的接近等を改変するように例えば蛋白質構造及び/又は機能を調整するために実施することができる。非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)を含む蛋白質は触媒性又は物性を強化するか又は全く新規にすることができる。例えば、非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)を蛋白質に組込むことにより、場合により毒性、生体分布、構造的性質、分光学的性質、化学及び/又は光化学的性質、触媒能、半減期(例えば血清半減期)、他の分子との(例えば共有又は非共有)反応性等の性質を改変する。少なくとも1種の非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)を組込んだ蛋白質を含む組成物は例えば新規治療、診断、触媒酵素、産業用酵素、結合蛋白質(例えば抗体)、及び例えば蛋白質構造と機能の研究に有用である。例えばDougherty,(2000) Unnatural Amino Acids as Probes of Protein Structure and Function,Current Opinion in Chemical Biology,4:645−652参照。
本発明の1側面では、組成物は少なくとも1個、例えば少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、又は11個以上の非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)及び/又は別の非天然アミノ酸を組込んだ少なくとも1種の蛋白質を含む。非天然アミノ酸は同一でも異なっていてもよく、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10種以上の異なる非天然アミノ酸を含む1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個以上の異なる部位が蛋白質に存在することができる。別の側面では、組成物は蛋白質に存在する特定アミノ酸の全部よりは少ないが少なくとも1種を非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)で置換した蛋白質を含む。2個以上の非天然アミノ酸を組込んだ所与蛋白質では、非天然アミノ酸は同一でも異なっていてもよい(例えば蛋白質は2種以上の異なる型の非天然アミノ酸を組込んでもよいし、2個の同一非天然アミノ酸を組込んでもよい)。3個以上の非天然アミノ酸を組込んだ所与蛋白質では、非天然アミノ酸は同一でも異なっていてもよいし、同一種の複数の非天然アミノ酸と少なくとも1種の別の非天然アミノ酸の組み合わせでもよい。
本明細書に記載する組成物と方法を使用して非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合する部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)(及び例えば1個以上のセレクターコドンを含む対応する任意コーディング核酸)を組込んだほぼ任意蛋白質(又はその部分)を生産することができる。数十万種の公知蛋白質を同定しようとするのではな
く、例えば該当翻訳系に1個以上の適当なセレクターコドンを組込むように利用可能な任意突然変異法を調整することにより、1種以上の非天然アミノ酸を組込むように公知蛋白質の任意のものを改変することができる。公知蛋白質の一般的な配列寄託機関としてはGenBank、EMBL、DDBJ及びNCBIが挙げられる。他の寄託機関もインターネットを検索することにより容易に確認できる。
一般に、蛋白質は入手可能な任意蛋白質(例えば治療用蛋白質、診断用蛋白質、産業用酵素、又はその部分等)と例えば少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%以上一致し、1種以上の非天然アミノ酸を含む。1種以上の非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合する部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)を組込むために修飾することができる治療用、診断用、及び他の蛋白質の例は限定されないが、WO2002/085923,前出に記載されている。糖部分を結合するアミノ酸を含む1種以上の非天然アミノ酸及び/又は糖部分を含む非天然アミノ酸を組込むために修飾することができる治療用、診断用、及び他の蛋白質の例は限定されないが、例えばα1アンチトリプシン、アンジオスタチン、抗血友病因子、抗体(抗体の詳細については後述する)、アポリポ蛋白質、アポ蛋白質、心房性ナトリウム利尿因子、心房性ナトリウム利尿ポリペプチド、心房性ペプチド、C−X−Cケモカイン(例えばT39765、NAP−2、ENA−78、Gro−a、Gro−b、Gro−c、IP−10、GCP−2、NAP−4、SDF−1、PF−4、MIG)、カルシトニン、CCケモカイン(例えば単球化学誘引蛋白質−1、単球化学誘引蛋白質−2、単球化学誘引蛋白質−3、単球炎症性蛋白質−1α、単球炎症性蛋白質−1β、RANTES、I309、R83915、R91733、HCC1、T58847、D31065、T64262)、CD40リガンド、Cキットリガンド、コラーゲン、コロニー刺激因子(CSF)、補体因子5a、補体阻害剤、補体受容体1、サイトカイン(例えば上皮好中球活性化ペプチド−78、GROα/MGSA、GROβ、GROγ、MIP−1α、MIP−1δ、MCP−1)、表皮増殖因子(EGF)、エリスロポエチン(「EPO」、1種以上の非天然アミノ酸の組込みによる改変の好適ターゲット)、表皮剥離毒素A及びB、IX因子、VII因子、VIII因子、X因子、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、G−CSF、GM−CSF、グルコセレブロシダーゼ、ゴナドトロピン、増殖因子、ヘッジホッグ蛋白質(例えばソニック、インディアン、デザート)、ヘモグロビン、肝細胞増殖因子(HGF)、ヒルジン、ヒト血清アルブミン、インスリン、インスリン様増殖因子(IGF)、インターフェロン(例えばIFN−α、IFN−β、IFN−γ)、インターロイキン(例えばIL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12等)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、ラクトフェリン、白血病阻害因子、ルシフェラーゼ、ニュールチュリン、好中球阻害因子(NIF)、オンコスタチンM、骨形成蛋白質、副甲状腺ホルモン、PD−ECSF、PDGF、ペプチドホルモン(例えばヒト増殖ホルモン)、プレイオトロピン、プロテインA、プロテインG、発熱外毒素A、B及びC、リラキシン、レニン、SCF、可溶性補体受容体I、可溶性I−CAM1、可溶性インターロイキン受容体(IL−1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15)、可溶性TNF受容体、ソマトメジン、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ストレプトキナーゼ、スーパー抗原即ちブドウ球菌エンテロトキシン(SEA、SEB、SEC1、SEC2、SEC3、SED、SEE)、スーパーオキシドジスムターゼ、毒素性ショック症候群毒素(TSST−1)、チモシンα1、組織プラスミノーゲンアクチベーター、腫瘍壊死因子β(TNFβ)、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、血管内皮増殖因子(VEGEF)、ウロキナーゼ等が挙げられる。
本明細書に記載する非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)をin vivo組込むための組成物
と方法を使用して生産することができる蛋白質の1類としては転写モジュレーターとその一部が挙げられる。転写モジュレーターの例としては細胞増殖、分化、制御等を調節する遺伝子及び転写モジュレーター蛋白質が挙げられる。転写モジュレーターは原核生物、ウイルス及び真核生物(例えば真菌類、植物、酵母、昆虫、及び哺乳動物を含む動物)に存在し、広範な治療ターゲットを提供する。自明の通り、発現及び転写アクチベーターは例えば受容体との結合、シグナル導入カスケードの刺激、転写因子の発現調節、プロモーターやエンハンサーとの結合、プロモーターやエンハンサーと結合する蛋白質との結合、DNA巻き戻し、プレmRNAスプライシング、RNAポリアデニル化及びRNA分解等の多数のメカニズムにより転写を調節する。
本発明の蛋白質(例えば糖部分を結合するアミノ酸を含む1種以上の非天然アミノ酸及び/又は糖部分を含む非天然アミノ酸を組込んだ蛋白質)の1類としては発現アクチベーター(例えばサイトカイン、炎症性分子、増殖因子、その受容体、及び腫瘍遺伝子産物、例えばインターロイキン(例えばIL−1、IL−2、IL−8等)、インターフェロン、FGF、IGF−I、IGF−II、FGF、PDGF、TNF、TGF−α、TGF−β、EGF、KGF、SCF/c−キット、CD40L/CD40、VLA−4/VCAM−1、ICAM−1/LFA−1及びヒアルリン/CD44)と、シグナル伝達分子及び対応する腫瘍遺伝子産物(例えばMos、Ras、Raf及びMet)と、転写アクチベーター及びサプレッサー(例えばp53、Tat、Fos、Myc、Jun、Myb、Rel、及びステロイドホルモン受容体(例えばエストロゲン、プロゲステロン、テストステロン、アルドステロン、LDL受容体リガンド及びコルチコステロン))が挙げられる。
少なくとも1種の非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合する部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)を組込んだ酵素(例えば産業用酵素)又はその部分も本発明により提供される。酵素の例としては限定されないが、例えばアミダーゼ、アミノ酸ラセマーゼ、アシラーゼ、デハロゲナーゼ、ジオキシゲナーゼ、ジアリールプロパンペルオキシダーゼ、エピメラーゼ、エポキシドヒドロラーゼ、エステラーゼ、イソメラーゼ、キナーゼ、グルコースイソメラーゼ、グリコシダーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、ハロペルオキシダーゼ、モノオキシゲナーゼ(例えばp450類)、リパーゼ、リグニンペルオキシダーゼ、ニトリルヒドラターゼ、ニトリラーゼ、プロテアーゼ、ホスファターゼ、スブチリシン、トランスアミナーゼ及びヌクレアーゼが挙げられる。
本発明により修飾することができる多数の蛋白質が市販されており(例えばSigma
BioSciences 2002カタログ及び価格表参照)、対応する蛋白質配列と遺伝子及び、一般に多くのその変異体は周知である(例えばGenbank参照)。例えば1種以上の該当治療特性に関して蛋白質を改変するように本発明に従って糖部分を結合するアミノ酸を含む1種以上の非天然アミノ酸、又は糖部分を含む非天然アミノ酸を挿入することにより前記蛋白質の任意のものを修飾することができる。治療関連特性の例としては血清半減期、貯蔵半減期、安定性、免疫原性、治療活性、(例えば非天然アミノ酸へのレポーター基(例えばラベル又はラベル結合部位)の付加による)検出性、LD50又は他の副作用の低減、胃を通して体内に導入できること(例えば経口利用性)等が挙げられる。診断関連特性の例としては貯蔵半減期、安定性、診断活性、検出性、特異性等が挙げられる。該当酵素特性の例としては貯蔵半減期、安定性、酵素活性、産生能、特異性等が挙げられる。
他の各種蛋白質も本発明の1種以上の非天然アミノ酸を含むように修飾することができる。例えば、本発明は糖部分を結合するアミノ酸を含む1種以上の非天然アミノ酸で1種以上のワクチン蛋白質の1種以上の天然アミノ酸を置換するか、又は糖部分を含む非天然アミノ酸を例えば感染性真菌(例えばAspergillus、Candida種);細
菌、特に病原細菌モデルとして利用できる大腸菌や医学的に重要な細菌(例えばStaphylococci(例えばaureus)又はStreptococci(例えばpneumoniae));原生動物(例えば胞子虫類(例えばPlasmodia)、根足虫類(例えばEntamoeba)及び鞭毛虫類(Trypanosoma、Leishmania、Trichomonas、Giardia等));ウイルス(例えば(+)RNAウイルス(例えばポックスウイルス(例えばワクシニア)、ピコルナウイルス(例えばポリオ)、トガウイルス(例えば風疹)、フラビウイルス(例えばHCV)、及びコロナウイルス)、(−)RNAウイルス(例えばラブドウイルス(例えばVSV)、パラミクソウイルス(例えばRSV)、オルトミクソウイルス(例えばインフルエンザ)、ブンヤウイルス及びアレナウイルス)、dsDNAウイルス(例えばレオウイルス)、RNA→DNAウイルス(即ちレトロウイルス、例えばHIV及びHTLV)、及び所定のDNA→RNAウイルス(例えばB型肝炎))に由来する蛋白質に組込むことができる。
昆虫耐性蛋白質(例えばCry蛋白質)、澱粉及び脂質産生酵素、植物及び昆虫毒素、毒素耐性蛋白質、マイコトキシン解毒蛋白質、植物成長酵素(例えばリブロース1,5−ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ、「RUBISCO」)、リポキシゲナーゼ(LOX)及びホスホエノールピルビン酸(PEP)カルボキシラーゼ等の農業関連蛋白質も本発明の非天然アミノ酸組込み及び/又は糖付加による修飾に適切なターゲットである。
所定態様では、本発明の方法及び/又は組成物における該当蛋白質又はポリペプチド(又はその部分)は核酸によりコードされる。一般に、核酸は少なくとも1個のセレクターコドン、少なくとも2個のセレクターコドン、少なくとも3個のセレクターコドン、少なくとも4個のセレクターコドン、少なくとも5個のセレクターコドン、少なくとも6個のセレクターコドン、少なくとも7個のセレクターコドン、少なくとも8個のセレクターコドン、少なくとも9個のセレクターコドン、10個以上のセレクターコドンを含む。
免疫反応性によるポリペプチドの特性決定
本発明の糖ポリペプチドは(例えば本明細書に記載する翻訳系で合成される蛋白質の場合には糖部分を結合することができるアミノ酸を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸を含み、又は例えば新規シンテターゼの場合には標準アミノ酸の新規配列を含む)種々の新規ポリペプチド配列を提供するので、糖ポリペプチドは例えば免疫アッセイで認識することができる新規構造特徴も提供する。本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗血清の作製とこのような抗血清と結合したポリペプチドも本発明の特徴である。本明細書で使用する「抗体」なる用語は限定されないが、検体(抗原)と特異的に結合してこれを認識する1又は複数の免疫グロブリン遺伝子又はそのフラグメントにより実質的にコードされるポリペプチドを意味する。例えばポリクローナル、モノクローナル、キメラ、及び1本鎖抗体等が挙げられる。Fabフラグメントやファージディスプレイを含む発現ライブラリーにより生産されるフラグメント等の免疫グロブリンフラグメントも本明細書で使用する「抗体」なる用語に含まれる。抗体構造及び用語については、例えばPaul,Fundamental Immunology,4th Ed.,1999,Raven Press,New York参照。
例えば、本発明は本明細書に記載する各種配列の1種以上から選択されるシンテターゼアミノ酸配列を含む免疫原に対して作製した抗体又は抗血清に特異的に結合するか又は特異的に免疫反応性であるシンテターゼ蛋白質を含む。他の相同体との交差反応性をなくすために、野生型M.janaschiiチロシルシンテターゼ(TyrRS)等の入手可能なシンテターゼ又はWO 2002/085923に記載されているもの等の公知人工シンテターゼを用いて抗体又は抗血清をサブトラクションする。野生型Methanococcus jannaschii(M.janaschii)チロシルシンテターゼ(
TyrRS)又は従来配列が核酸に対応する場合には、場合により核酸によりコードされるポリペプチドを作製し、抗体/抗血清サブトラクション目的に使用する。
典型的なフォーマットの1例では、イムノアッセイは本明細書に記載するシンテターゼ配列の1種以上又はその実質的サブ配列(即ち記載する全長配列の少なくとも約30%)を含む1種以上のポリペプチドに対して作製したポリクローナル抗血清を使用する。これらの配列に由来する潜在的ポリペプチド免疫原群を以下の文中では「免疫原性ポリペプチド」と総称する。得られた抗血清を場合により対照シンテターゼ相同体(野生型TyrRs、及び/又はWO2002/085923に記載のシンテターゼ)に対する交差反応性が低くなるように選択し、ポリクローナル抗血清をイムノアッセイで使用する前に例えば対照シンテターゼ相同体の1種以上の免疫吸着によりこのような交差反応性を除去する。
イムノアッセイ用抗血清を作製するためには、免疫原性ポリペプチドの1種以上を本明細書に記載するように作製し、精製する。例えば、組換え蛋白質を組換え細胞で生産することができる。(マウスの仮想遺伝子一致により結果の再現性が高いのでこのアッセイで使用する)近交系マウスに標準アジュバント(例えばフロイントアジュバント)と共に免疫原性蛋白質を標準マウス免疫プロトコールに従って免疫する(抗体作製、イムノアッセイフォーマット及び特異的免疫反応性を測定するために使用可能な条件の標準解説については例えばHarlow and Lane(1988)Antibodies.A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New York参照。抗体のその他の点については本明細書にも記載しており、この場合の免疫反応性によるポリペプチドの特性決定に適用することができる)。あるいは、本明細書に開示する配列に由来する1種以上の合成又は組換えポリペプチドをキャリヤー蛋白質にコンジュゲートし、免疫原として使用する。蛋白質、抗体、抗血清等に関するその他の詳細はWO2002/085923,前出に記載されている。
ポリクローナル血清を採取し、イムノアッセイ(例えば固体支持体に固定化した免疫原性蛋白質の1種以上を使用する固相イムノアッセイ)で免疫原性ポリペプチドに対する力価を測定する。10以上の力価をもつポリクローナル抗血清を選択し、プールし、対照シンテターゼポリペプチドでサブトラクションし、高力価ポリクローナル抗血清サブトラクションプールを作製する。
高力価ポリクローナル抗血清サブトラクションプールを比較イムノアッセイで対照相同体に対する交差反応性について試験する。この比較アッセイでは、サブトラクション高力価ポリクローナル坑血清に差別的な結合条件を設定し、高力価ポリクローナル坑血清と免疫原性シンテターゼの結合のシグナル対ノイズ比を対照シンテターゼ相同体との結合に比較して少なくとも約5〜10倍にする。即ち、アルブミン又は脱脂粉乳等の非特異的競合剤を加えるか及び/又は塩条件、温度、及び/又は同等物を調節することにより結合反応のストリンジェンシーを調整する。これらの結合条件は、試験ポリペプチド(免疫原性ポリペプチド及び/又は対照ポリペプチドに比較するポリペプチド)がサブトラクションポリクローナル坑血清プールに特異的に結合するか否かを調べる後期アッセイで使用される。特に、差別的結合条件下で対照シンテターゼ相同体の少なくとも2〜5倍のシグナル対ノイズ比と、免疫原性ポリペプチドの少なくとも約1/2のシグナル対ノイズ比を示す試験ポリペプチドは公知シンテターゼに比較して免疫原ポリペプチドと実質的な構造類似性をもつので、本発明のポリペプチドである。
別の例では、試験ポリペプチドの検出に競合的結合フォーマットのイムノアッセイを使用する。例えば、上述のように、対照ポリペプチドの免疫吸着により坑血清混合物プールから交差反応性抗体を除去する。次に、免疫原性ポリペプチドを固体支持体に固定化し、支持体をサブトラクション坑血清プールに暴露する。試験蛋白質をアッセイに加え、サブ
トラクション坑血清プールとの結合を競合させる。試験蛋白質が固定化蛋白質に対してサブトラクション坑血清プールとの結合を競合する能力と、アッセイに加えた免疫原性ポリペプチドが結合を競合する能力を比較する(免疫原性ポリペプチドは坑血清プールとの結合を固定化免疫原性ポリペプチドと有効に競合する)。標準計算を使用して試験蛋白質の交差反応性百分率を計算する。
平行アッセイでは、場合により対照蛋白質がサブトラクション坑血清プールとの結合を競合する能力を免疫原性ポリペプチドが坑血清との結合を競合する能力と比較測定する。この場合も、標準計算を使用して対照ポリペプチドの交差反応性百分率を計算する。試験ポリペプチドの交差反応性百分率が対照ポリペプチドの少なくとも5〜10倍である場合又は試験ポリペプチドの結合が免疫原性ポリペプチドの結合とほぼ同一範囲である場合に、試験ポリペプチドはサブトラクション坑血清プールに特異的に結合すると言う。
一般に、本明細書に記載する競合的結合イムノアッセイでは任意試験ポリペプチドを免疫原性及び/又は対照ポリペプチドに比較するために免疫吸着坑血清プールを使用することができる。この比較を行うためには、免疫原性、試験及び対照ポリペプチドを各々広い濃度範囲でアッセイし、サブトラクション坑血清と例えば固定化した対照、試験又は免疫原性蛋白質との結合の50%を阻害するために必要な各ポリペプチドの量を標準技術により決定する。競合アッセイで結合に必要な試験ポリペプチドの量が免疫原性ポリペプチドの必要量の2倍未満であり、対照ポリペプチドの少なくとも約5〜10倍である場合に、試験ポリペプチドは免疫原性蛋白質に対して作製した抗体に特異的に結合すると言う。
特異性の付加試験として、得られる免疫原性ポリペプチドサブトラクション坑血清プールと免疫吸着に使用する免疫原性ポリペプチドの結合が殆ど又は全く検出できなくなるまで場合により坑血清プールを(対照ポリペプチドではなく)免疫原性ポリペプチドに完全に免疫吸着させる。この完全に免疫吸着した坑血清を次に試験ポリペプチドとの反応性について試験する。反応性が殆ど又は全く観察されない場合(即ち完全に免疫吸着した坑血清と免疫原性ポリペプチドの結合に観察されるシグナル対ノイズ比の2倍以下)には、試験ポリペプチドは免疫原性蛋白質により誘導される坑血清に特異的に結合する。
直交tRNAと直交アミノアシルtRNAシンテターゼの対
1種以上の非天然アミノ酸を含む蛋白質の生産に適した翻訳系は国際特許出願第WO2002/086075号、発明の名称「直交tRNA−アミノアシルtRNAシンテターゼ対を作製するための方法及び組成物(METHODS AND COMPOSITION FOR THE PRODUCTION OF ORTHOGONAL tRNA−AMINOACYL tRNA SYNTHETASE PAIRS)」及びWO2002/085923号,前出に記載されている。これらの出願は各々その開示内容全体を参考資料として本明細書に組込む。このような翻訳系は一般に直交tRNA(O−tRNA)と、直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)と、非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸(例えばアルデヒド又はケト誘導体化アミノ酸)又は糖部分を含む非天然アミノ酸)を含む細胞を含み、O−RSはO−tRNAを非天然アミノ酸でアミノアシル化する。細胞は成長中のポリペプチド鎖に非天然アミノ酸を組込むためにこれらの成分を使用する。
直交対はO−tRNA(例えばサプレッサーtRNA、フレームシフトtRNA等)とO−RSから構成される。O−tRNAは上述のように内在シンテターゼによりアシル化されず、セレクターコドンをデコードすることができる。O−RSは例えば拡張アンチコドンループでO−tRNAを認識し、O−tRNAを非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)で優先的にアミノアシル化する。多重直交tRNA/シンテターゼ対の開発により、各種コドン
を使用して多重非天然アミノ酸を同時に組込むことが可能になる。代表的O−tRNA及びO−RS配列については実施例5参照。
O−tRNAとO−RSは天然に存在するものでもよいし、起源と宿主名で記載されている各種生物に由来する天然tRNA及び/又はRSを突然変異させることにより誘導してもよい。各種態様において、O−tRNAとO−RSは少なくとも1種の生物に由来する。別の態様では、O−tRNAは第1の生物に由来する天然に存在するか又は天然に存在するものを突然変異させたtRNAから誘導し、O−RSは第2の生物に由来する天然に存在するか又は天然に存在するものを突然変異させたRSから誘導する。
具体的には、これらの方法は(a)第1の生物に由来する少なくとも1種のtRNAから誘導されるtRNAのライブラリーを作製する段階と、(b)第1の生物に由来するRSの不在下で第2の生物に由来するアミノアシルtRNAシンテターゼ(RS)によりアミノアシル化されるtRNAのライブラリーをネガティブ選択することによりtRNAのプールを提供する段階と、(c)導入した直交RS(O−RS)によりアミノアシル化されるメンバーをtRNAのプールから選択することにより少なくとも1種の組換えO−tRNAを提供する段階を含む。組換えO−tRNAはセレクターコドンを認識し、第2の生物に由来するRSにより効率的に認識されず、O−RSにより優先的にアミノアシル化される。方法は更に、(d)第3の生物に由来する少なくとも1種のアミノアシルtRNAシンテターゼ(RS)から誘導される突然変異体RSのライブラリーを作製する段階と、(e)非天然アミノ酸と天然アミノ酸の存在下で組換えO−tRNAを優先的にアミノアシル化するメンバーをRSのライブラリーから選択することにより活性RSのプールを提供する段階と、(f)非天然アミノ酸の不在下で少なくとも1種の組換えO−tRNAを優先的にアミノアシル化する活性RSのプールをネガティブ選択することにより特異的O−tRNA/O−RS対を提供する段階を含み、特異的O−tRNA/O−RS対は非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)に特異的な少なくとも1種の組換えO−RSと組換えO−tRNAを含む。
直交対を作製するストラテジーの1つは突然変異体ライブラリーを作製してこのライブラリーからO−tRNA又はO−RSをスクリーニング及び/又は選択する方法である。
直交tRNA/シンテターゼ対を作製する第2のストラテジーは異種tRNA/シンテターゼ対(例えば別の生物起源の対)を宿主細胞に導入する方法である。異種シンテターゼ候補の性質としては、例えば宿主細胞tRNAに負荷しないことが挙げられ、異種tRNA候補の性質としては、例えば宿主細胞シンテターゼによりアシル化されないことが挙げられる。更に、異種tRNAから誘導される異種tRNAは全宿主細胞シンテターゼに直交性である。
直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)
本発明のO−RSはO−tRNAを非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)で優先的にin vitro又はin vivoアミノアシル化する。本発明のO−RSはO−RSを含むポリペプチド及び/又はO−RS又はその一部をコードするポリヌクレオチドにより翻訳系(例えば細胞又はin vivo翻訳系)に提供することができる。例えば、O−RSは配列番号1〜6に記載のアミノ酸配列又はその保存変異体を含む。別の例では、O−RS、又はその一部は配列番号1〜6を含むアミノ酸をコードするポリヌクレオチド配列又はその相補的ポリヌクレオチド配列によりコードされるか、又は配列番号8、9、もしくは10のいずれか1種を含むポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによりコードされるO−RS又はその一部が挙げられる。例えば代表的O−RS分子の配列については本明
細書の表2と実施例5参照。本明細書の「核酸及びポリペプチド配列と変異体」のセクションも参照。
O−RSの作製方法は野生型シンテターゼの骨格から突然変異体シンテターゼのプールを作製した後、例えばアルデヒドもしくはケト部分又は糖部分をもつ非天然アミノ酸に対する特異性を20種の標準アミノ酸と比較検討することにより突然変異RSを選択することを基本とする。このようなシンテターゼを単離するために、本発明の選択方法は(i)1回目の選択からの所望シンテターゼの活性を低くすることができ、集団が小さいので高感度であり、(ii)各回の選択で選択ストリンジェンシーを変えることが望ましいので「調節可能」であり、(iii)汎用性であるため、種々の非天然アミノ酸に使用できる。
直交アミノアシルtRNAシンテターゼの作製方法は例えばシンテターゼを例えばシンテターゼの活性部位、シンテターゼの編集メカニズム部位、各種シンテターゼドメインを組み合わせることにより各種部位等で突然変異させる段階と、選択プロセスを適用する段階を含む。ポジティブ選択後にネガティブ選択を行う併用ストラテジーを使用する。ポジティブ選択では、ポジティブマーカーの非必須位置に導入したセレクターコドンが抑圧されると、細胞はポジティブ選択圧下で生存する。従って、天然及び非天然アミノ酸両者の存在下で生存細胞は直交サプレッサーtRNAに天然又は非天然アミノ酸を負荷する活性シンテターゼをコードする。ネガティブ選択では、非天然アミノ酸の不在下でネガティブマーカーの非必須位置に導入したセレクターコドンが抑圧されると、天然アミノ酸特異性をもつシンテターゼは除去される。ネガティブ選択とポジティブ選択の生存細胞は直交サプレッサーtRNAを非天然アミノ酸のみでアミノアシル化(負荷)するシンテターゼをコードする。その後、これらのシンテターゼを例えばDNAシャフリング、他の再帰的突然変異誘発法、及び/又は同等物により更に突然変異誘発することができる。
突然変異体RSのライブラリーは当分野で公知の種々の突然変異誘発技術を使用して作製することができる。例えば、突然変異体RSは部位特異的突然変異、ランダム点突然変異、相同組換え、キメラ構築等により作製することができる。RSのキメラライブラリーも本発明に含まれる。
ポジティブ選択は選択マーカー遺伝子にセレクターコドン(例えばアンバー終止コドン)を含むポジティブ選択マーカーにおけるセレクターコドンの抑圧に基づいて行うことができる。抗生物質又は他の選択物質をポジティブ選択圧として適用することができる。更に、非天然アミノ酸の存在下と不在下で本明細書に記載するようなポジティブマーカーとネガティブマーカーのいずれにも選択マーカーを使用することができる。場合により、セレクターコドンを含む選択マーカー遺伝子をポジティブ選択に使用し、少なくとも1個以上のセレクターコドンを含むネガティブ選択マーカー(例えばバルナーゼ遺伝子等の毒性マーカー)をネガティブ選択に使用する。
ポジティブ選択は細胞をアンピシリン耐性にするβ−ラクタマーゼ遺伝子の非必須位置のセレクターコドンの抑圧に基づいて行うこともでき、ネガティブマーカーとしてリボヌクレアーゼバルナーゼを使用するネガティブ選択を使用する。ペリプラズムに分泌されるβ−ラクタマーゼに対して、細胞質に局在するクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子を使用することもでき、更にアンピシリンは殺菌性であるが、クロラムフェニコールは静菌性である。
シンテターゼにポジティブ及びネガティブ選択/スクリーニングストラテジーを実施した後、これらのシンテターゼを更に突然変異誘発させることができる。例えば、O−RSをコードする核酸を単離することができ;(例えばランダム突然変異誘発、部位特異的突
然変異誘発、組換え又はその任意組み合わせにより)突然変異O−RSをコードする1組のポリヌクレオチドを核酸から作製することができ;O−tRNAを非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)で優先的にアミノアシル化する突然変異O−RSが得られるまでこれらの個々の段階又はこれらの段階の組み合わせを繰り返すことができる。本発明の1側面では、段階を複数回、例えば少なくとも2回実施する。場合により、選択物質の濃度を変動させる。
本発明の方法では、O−tRNA、O−RS、又はその対を作製するために付加レベルの選択/スクリーニングストリンジェンシーを使用することもできる。選択又はスクリーニングストリンジェンシーはO−RSを作製するための方法の一方又は両方の段階で変動させることができる。これは例えば選択/スクリーニング物質の使用量等の変動とすることができる。付加回のポジティブ及び/又はネガティブ選択を実施することもできる。選択又はスクリーニングは更にアミノ酸浸透率の変化、翻訳効率の変化、翻訳忠実度の変化等の1種以上を含むこともできる。一般に、1種以上の変化は蛋白質を生産するために直交tRNA−tRNAシンテターゼ対を使用する生物で1個以上の遺伝子の突然変異に基づく。
O−RSの作製、シンテターゼの基質特異性の改変、O−RSの他の例に関するその他の詳細についてはWO2002/086075,前出参照。
直交tRNA(O−tRNAS)
本発明の直交tRNA(O−tRNA)はO−tRNAにより例えばin vivo又はin vitro認識されるセレクターコドンを含むポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質への非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸(例えばアルデヒド又はケト誘導体化アミノ酸)又は糖部分を含む非天然アミノ酸)の組込みを媒介する。
本発明のO−tRNAの1例は配列番号7である。代表的O−tRNA及びO−RS分子の配列については本明細書の表2と実施例5参照。本明細書の「核酸及びポリペプチド配列と変異体」のセクションも参照。tRNA分子では、チミン(T)はウラシル(U)に置換される。塩基に付加修飾を加えてもよい。本発明はO−tRNAの保存変異体も含む。例えば、O−tRNAの保存変異体としては、配列番号7のO−tRNAと同様に機能し、tRNA L−形構造を維持するが、同一配列ではない(と共に野生型tRNA分子でもない)分子が挙げられる。本明細書の「核酸及びポリペプチド配列と変異体」のセクションも参照。
組換え直交tRNA(O−tRNA)の作製方法は国際特許出願第WO2002/086075号,前出に記載されている。
例えば、所望RSに対するその親和性を維持しながらtRNAの直交性を改善するために、本方法は夫々コグネイトシンテターゼの不在下と存在下の突然変異体サプレッサーtRNAライブラリーによるネガティブ選択とポジティブ選択を組合せる。ネガティブ選択では、セレクターコドンをマーカー遺伝子(例えばバルナーゼ遺伝子等の毒性遺伝子)の非必須位置に導入する。例えばMethanococcus jannaschiiに由来する突然変異tRNAライブラリーのメンバーが内在宿主(例えば大腸菌)シンテターゼによりアミノアシル化される(即ち宿主、例えば大腸菌シンテターゼに非直交性である)場合には、セレクターコドン(例えばアンバーコドン)は抑圧され、産生された毒性遺伝子産物は細胞死に至る。直交tRNA又は非機能的tRNAをもつ細胞は生存する。その後、生存細胞をポジティブ選択し、セレクターコドン(例えばアンバーコドン)をポジティブマーカー遺伝子(例えばβ−ラクタマーゼ遺伝子等の薬剤耐性遺伝子)に配置する
。これらの細胞はコグネイトRSをもつ発現ベクターも含む。これらの細胞を選択物質(例えばアンピシリン)の存在下に増殖させる。その後、同時発現したコグネイトシンテターゼによりアミノアシル化することができ、このセレクターコドンに応答してアミノ酸を挿入することができるtRNAを選択する。非機能的tRNA又は該当シンテターゼにより認識することができないtRNAを含む細胞は抗生物質に感受性である。従って、(i)内在宿主(例えば大腸菌)シンテターゼの基質ではなく、(ii)該当シンテターゼによりアミノアシル化することができ、(iii)翻訳で機能的なtRNAは両者選択後に生存している。
突然変異tRNAのライブラリーを構築する。tRNAの所望ループ(例えばアンチコドンループ(Dアーム、Vループ、TΨCアーム)又はループ組合せ又は全ループ)の特定位置(例えば非保存位置又は保存位置)、ランダム位置又は両者の組合せに突然変異を導入することができる。tRNAのキメラライブラリーも本発明に含まれる。なお、場合により各種生物(例えば真正細菌又は始原細菌等の微生物)に由来するtRNAシンテターゼのライブラリー(例えば天然ダイバーシティーを含むライブラリー)(例えば米国特許第6,238,884号(Shortら);米国特許第5,756,316号(Schallenbergerら);米国特許第5,783,431号(Petersenら);米国特許第5,824,485号(Thompsonら);米国特許第5,958,672号(Shortら)参照)を構築し、直交対についてスクリーニングしてもよい。
tRNAの所望ループ又は領域(例えばアンチコドンループ、アクセプターステム、Dアーム又はループ、可変ループ、TΨCアーム又はループ、tRNA分子の他の領域又はその組合せ)の特定位置(例えば非保存位置又は保存位置)、ランダム位置又は両者の組合せに付加突然変異を導入することができる。一般に、tRNAの突然変異としてはセレクターコドンの認識を可能にするような突然変異体tRNAのライブラリーの各メンバーのアンチコドンループの突然変異が挙げられる。この方法は更にO−tRNAの3’末端への付加配列(CCA)の付加を含むことができる。一般に、O−tRNAは所望RSに対するその親和性を維持しながら、出発材料(例えば複数のtRNA配列)に比較して所望生物に対する直交性が改善されている。
例えば、ネガティブ選択では、ネガティブ選択マーカー、例えば抗生物質耐性を付与する酵素(例えばβ−ラクタマーゼ)、検出可能な産物を付与する酵素(例えばβ−ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT))、例えば毒性物質(例えばバルナーゼ)をコードするポリヌクレオチドの非必須位置(例えば機能的バルナーゼを依然として産生する位置)等にセレクターコドンを導入する。スクリーニング/選択は場合により選択物質(例えばアンピシリン等の抗生物質)の存在下に細胞集団を増殖させることにより実施される。1態様では、選択物質の濃度を変動させる。
例えば、サプレッサーtRNAの活性を測定するためには、セレクターコドンのin vivo抑圧(例えばネガティブ選択マーカー(例えばβ−ラクタマーゼ遺伝子(bla))をコードするポリヌクレオチドに導入されたナンセンス又はフレームシフト突然変異)に基づく選択システムを使用する。例えば、ポリヌクレオチド変異体(例えば所定位置にセレクターコドンを含むbla変異体)を構築する。細胞(例えば細菌)をこれらのポリヌクレオチドで形質転換する。内在大腸菌シンテターゼにより効率的に負荷することができない直交tRNAの場合には、抗生物質耐性(例えばアンピシリン耐性)はプラスミドで形質転換されていない細菌と同等以下のはずである。tRNAが直交性でない場合、又はtRNAに負荷することが可能な異種シンテターゼを系で同時発現させる場合には、より高レベルの抗生物質(例えばアンピシリン)耐性が観察される。プラスミドで形質転換されていない細胞と同等程度の抗生物質濃度のLB寒天プレートで増殖することができない細胞(例えば細菌)を選択する。
毒性物質(例えばリボヌクレアーゼバルナーゼ)の場合には、複数の潜在的tRNAのメンバーが内在宿主(例えば大腸菌)シンテターゼによりアミノアシル化されるとき(即ち、宿主、例えば大腸菌シンテターゼに直交でないとき)には、セレクターコドンは抑圧され、産生される毒性ポリヌクレオチド産物は細胞死に至る。直交tRNA又は非機能的tRNAを含む細胞は生存する。場合により、リボヌクレアーゼバルナーゼ遺伝子に2個以上のアンバーコドンを付加してもよい。生存細胞は例えば比較比細胞密度アッセイを使用することにより選択することができる。
1態様では、所望生物に直交性のtRNAプールをポジティブ選択し、セレクターコドンを例えばβ−ラクタマーゼ遺伝子等の薬剤耐性遺伝子によりコードされるポジティブ選択マーカーに配置する。ポジティブ選択は細胞に直交性のtRNAプールのメンバーをコードするか又は含むポリヌクレオチドと、ポジティブ選択マーカーをコードするポリヌクレオチドと、コグネイトRSをコードするポリヌクレオチドを含む細胞で実施される。所定態様では、第2の細胞集団はネガティブ選択により排除されなかった細胞を含む。ポリヌクレオチドを細胞で発現させ、選択物質(例えばアンピシリン)の存在下に細胞を増殖させる。次に、同時発現させたコグネイトシンテターゼによりアミノアシル化され、このセレクターコドンに応答してアミノ酸を挿入することができるtRNAを選択する。一般に、これらの細胞は非機能的tRNA、又は該当シンテターゼにより効率的に認識することができないtRNAをもつ細胞に比較して高い抑圧効率を示す。非機能的tRNA、又は該当シンテターゼにより効率的に認識されないtRNAを含む細胞は抗生物質に感受性である。従って、(i)内在宿主(例えば大腸菌)シンテターゼの基質ではなく;(ii)該当シンテターゼによりアミノアシル化することができ;(iii)翻訳で機能的なtRNAは両者選択後に生存している。
上記方法における選択(例えばポジティブ選択、ネガティブ選択又はポジティブ選択とネガティブ選択の両者)のストリンジェンシーは場合により選択ストリンジェンシーの変動を含む。例えば、バルナーゼは極毒性蛋白質であるので、異なる数のセレクターコドンをバルナーゼ遺伝子に導入するか及び/又は誘導プロモーターを使用することによりネガティブ選択のストリンジェンシーを制御することができる。別の例では、選択又はスクリーニング物質(例えばアンピシリン)の濃度を変動させる。本発明の1側面では、初期回に所望活性を低くできるのでストリンジェンシーを変動させる。即ち、初期回には低ストリンジェンシー選択基準を適用し、後期回の選択では高ストリンジェンシー基準を適用する。所定態様では、ネガティブ選択、ポジティブ選択又はポジティブ選択とネガティブ選択の両者を複数回反復する。複数の異なるネガティブ選択マーカー、ポジティブ選択マーカー又はポジティブ選択とネガティブ選択の両者のマーカーを使用することができる。所定態様では、ポジティブ選択マーカーとネガティブ選択マーカーを同一とすることができる。
本発明では例えば非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸(例えばアルデヒド又はケト誘導体化アミノ酸)又は糖部分を含む非天然アミノ酸)を利用する例えばO−tRNA、O−RS、及びO−tRNA/O−RS対を作製するために他の型の選択も使用できる。例えば、ポジティブ選択段階、ネガティブ選択段階又はポジティブ選択段階とネガティブ選択段階の両者はレポーターを使用することができ、レポーターは蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)により検出される。例えば、ポジティブ選択マーカー(例えばクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子)を使用し、CAT遺伝子にセレクターコドン(例えばアンバー終止コドン)を付加してまずポジティブ選択を行った後にネガティブ選択スクリーニングを行い、別の遺伝子(例えばGFP)の転写を行うネガティブマーカー(例えばT7 RNAポリメラーゼ遺伝子)内の位置でセレクターコドン(例えば2個以上)を抑圧できないものを選択することができる。1態様では、ポジティブ選択マーカーとネガティブ選択マーカー
を同一ベクター(例えばプラスミド)に配置することができる。ネガティブマーカーの発現はレポーター(例えば緑色蛍光蛋白質(GFP))の発現を誘導する。選択とスクリーニングのストリンジェンシーは変動させることができ、例えばレポーターを蛍光発光させるために必要な光強度を変動させることができる。別の態様では、FACによりスクリーニングされるレポーターをポジティブ選択マーカーとして使用してポジティブ選択を行った後にネガティブ選択スクリーニングを行い、ネガティブマーカー(例えばバルナーゼ遺伝子)内の位置でセレクターコドン(例えば2個以上)を抑圧できないものを選択することができる。例えば本明細書の実施例4も参照。
場合により、レポーターを細胞表面、ファージディスプレイ等に提示する。細胞表面ディスプレイ(例えばOmpA細胞表面ディスプレイシステム)は大腸菌細胞表面における特定エピトープ(例えば外膜ポリンOmpAに融合したポリオウイルスCペプチド)の発現に依存する。エピトープは翻訳中に蛋白質メッセージ中のセレクターコドンが抑圧されるときにしか細胞表面に提示されない。従って、提示されるペプチドはライブラリー内の突然変異体アミノアシルtRNAシンテターゼの1種により認識されるアミノ酸を含み、特定非天然アミノ酸を含むペプチドに対する抗体と共に対応するシンテターゼ遺伝子を含む細胞を分離することができる。OmpA細胞表面ディスプレイシステムはファージディスプレイの代法としてGeorgiouらにより開発され、改良された。Francisco,J.A.,Campbell,R.,Iverson,B.L.& Georgoiu,G.Production and fluorescence−activated cell sorting of Escherichia coli expressing a functional antibody fragment on
the external surface.Proc Natl Acad Sci
U S A.90:10444−8(1993)参照。
選択段階はin vitroで実施することもできる。その後、選択した成分(例えばシンテターゼ及び/又はtRNA)を非天然アミノ酸のin vivo組込み用細胞に導入することができる。
組換え直交tRNAの他の作製方法も例えば国際特許出願第WO2002/086075号,前出に記載されている。Forsterら,(2003)Programming
peptidomimetic synthetases by translating genetic codes designed de novo PNAS 100(11):6353−6357;及びFengら,(2003),Expanding tRNA recognition of a tRNA synthetase by a single amino acid change,PNAS 100(10):5676−5681も参照。
資源及び宿主生物
本発明の糖蛋白質を生産するための翻訳成分は一般に非真核生物に由来する。例えば、直交O−tRNAは非真核生物(又は生物組み合わせ)、例えばMethanococcus jannaschii、Methanobacterium thermoautotrophicum、Halobacterium(例えばHaloferax volcanii及びHalobacterium種NRC−1)、Archaeoglobus fulgidus、Pyrococcus furiosus、Pyrococcus horikoshii、Aeuropyrum pernix、Methanococcus maripaludis、Methanopyrus kandleri、Methanosarcina mazei(Mm)、Pyrobaculum aerophilum、Pyrococcus abyssi、Sulfolobus solfataricus(Ss)、Sulfolobus tokodaii、Thermo
plasma acidophilum、Thermoplasma volcanium等の始原菌や、Escherichia coli,Thermus thermophilus,Bacillus stearothermphilus等の真正細菌に由来することができ、直交O−RSは非真核生物(又は生物組み合わせ)、例えばMethanococcus jannaschii、Methanobacterium thermoautotrophicum、Halobacterium(例えばHaloferax volcanii及びHalobacterium種NRC−1)、Archaeoglobus fulgidus、Pyrococcus furiosus、Pyrococcus horikoshii、Aeuropyrum pernix、Methanococcus maripaludis、Methanopyrus kandleri、Methanosarcina mazei、Pyrobaculum aerophilum、Pyrococcus abyssi、Sulfolobus solfataricus、Sulfolobus tokodaii、Thermoplasma acidophilum、Thermoplasma volcanium等の始原菌や、Escherichia coli,Thermus thermophilus,Bacillus stearothermphilus等の真正細菌に由来することができる。1態様では、例えば植物(例えば単子葉植物、又は双子葉植物等の複雑な植物)、藻類、原生動物、真菌類、酵母、動物(例えば哺乳動物、昆虫、節足動物等)等の真核資源もO−tRNA及びO−RS資源として使用することができる。
O−tRNA/O−RS対の個々の成分は同一生物に由来するものでも異なる生物に由来するものでもよい。直交tRNA/O−RS対は種々の宿主生物(例えば第2の生物)で使用することができる。1態様では、O−tRNA/O−RS対は同一生物に由来する。あるいは、O−tRNA/O−RS対のO−tRNAとO−RSは異なる生物に由来する。
セレクターコドン
本発明のセレクターコドンは非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)を組込むように蛋白質生合成機構の遺伝コドン枠を拡張する。例えば、セレクターコドンとしては例えばユニーク3塩基コドン、ナンセンスコドン、(例えばアンバーコドン又はオパールコドン等の終止コドン)、非天然コドン、少なくとも4塩基のコドン、レアコドン等が挙げられる。例えば1個以上、2個以上、3個以上等の多数のセレクターコドンを所望遺伝子に導入することができる。
64種の遺伝コドンは20種のアミノ酸と3種の終止コドンをコードする。翻訳終結には1個の終止コドンしか必要ないので、他の2個は主に非蛋白産生アミノ酸をコードするために使用することができる。アンバー終止コドンUAGはin vitro生合成系とアフリカツメガエル卵母細胞で使用して非天然アミノ酸の組込みに成功している。3種の終止コドンのうちでUAGは大腸菌での使用頻度が最も低い終止コドンである。大腸菌株にはUAGを認識して天然アミノ酸を挿入する天然サプレッサーtRNAを含むものもある。更に、これらのアンバーサプレッサーtRNAは慣用蛋白質突然変異誘発でも使用されている。本発明の所定態様では、他の終止コドンを本発明で使用する。
1態様では、本方法は非天然アミノ酸のin vivo組込みに終止コドンであるセレクターコドンを使用する。例えば、終止コドン(例えばUAG)を認識するO−tRNAを作製し、O−RSにより所望非天然アミノ酸でアミノアシル化する。このO−tRNAは天然アミノアシルtRNAシンテターゼにより認識されない。慣用部位特異的突然変異誘発を使用して終止コドン(例えばTAG)を蛋白質遺伝子内の該当部位に導入することができる。例えばSayers,J.R.,Schmidt,W.Eckstein,F
.5’,3’Exonuclease in phosphorothioate−based oligonucleotide−directed mutagenesis.Nucleic Acids Res,791−802(1988)参照。O−RS、O−tRNA及び突然変異体遺伝子をin vivo融合すると、UAGコドンに応答して非天然アミノ酸が組込まれ、特定位置に非天然アミノ酸を含む蛋白質が得られる。
非天然アミノ酸のin vivo組込みは宿主(例えば大腸菌)にさほど影響を与えずに行うことができる。例えば、大腸菌等の非真核細胞では、UAGコドンの抑圧効率はO−tRNA(例えばアンバーサプレッサーtRNA)と(UAGコドンに結合してリボソームから成長中のペプチドの放出を開始する)放出因子1(RF1)の競合に依存するので、例えばO−tRNA(例えばサプレッサーtRNA)の発現レベルを上げるか又はRF1欠損株を使用することにより抑圧効率を調節することができる。
非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸(例えばアルデヒド又はケト誘導体化アミノ酸)又は糖部分を含む非天然アミノ酸)はレアコドンでコードすることもできる。例えば、in vitro蛋白質合成反応でアルギニン濃度を下げると、レアアルギニンコドンAGGはアラニンでアシル化された合成tRNAによるAlaの挿入に有効であることが分かっている。例えばMaら,Biochemistry,32:7939(1993)参照。この場合には、合成tRNAは大腸菌に少量種として存在する天然tRNAArgと競合する。生物によっては全三重項コドンを使用しないものもある。Micrococcus luteusで割り当てられないコドンAGAがin vitro転写/翻訳抽出物へのアミノ酸挿入に使用されている。例えば、Kowal and Oliver,Nucl.Acid.Res.,25:4685(1997)参照。本発明の成分はこれらのレアコドンをin vivo使用するために作製することができる。
セレクターコドンは更に4塩基以上のコドン(例えば4、5、6塩基以上のコドン)も含む。4塩基コドンの例としては例えばAGGA、CUAG、UAGA、CCCU等が挙げられる。5塩基コドンの例としては例えばAGGAC、CCCCU、CCCUC、CUAGA、CUACU、UAGGC等が挙げられる。例えば、アンチコドンループ(例えば少なくとも8〜10ntアンチコドンループ)をもつ突然変異O−tRNA(例えば特殊フレームシフトサプレッサーtRNA)の存在下では、4塩基以上のコドンは単一アミノ酸として読取られる。他の態様では、アンチコドンループは例えば少なくとも4塩基コドン、少なくとも5塩基コドン、又は少なくとも6塩基以上のコドンをデコードすることができる。4塩基コドンは256種が考えられるので、4塩基以上のコドンを使用すると同一細胞で多重非天然アミノ酸をコードすることができる。Andersonら,Exploring the Limits of Codon and Anticodon Size,Chemistry and Biology,Vol.9,237−244(2002);及びMagliery,Expanding the Genetic Code:Selection of Efficient Suppressors of Four−base Codons and Identification of“Shifty”Four−base Codons with a Library
Approach in Escherichia coli,J.Mol.Biol.307:755−769(2001)参照。
本発明の方法はフレームシフト抑圧に基づく拡張コドンを使用する。4塩基以上のコドンは例えば1個又は多数の非天然アミノ酸を同一蛋白質に挿入することができる。例えば、in vitro生合成法を使用して非天然アミノ酸を蛋白質に組込むために4塩基コドンが使用されている。例えばMaら,Biochemistry,1993,32,7939(1993);及びHohsakaら,J.Am.Chem.Soc.,121:
34(1999)参照。2個の化学的にアシル化したフレームシフトサプレッサーtRNAで2−ナフチルアラニンとリジンのNBD誘導体をストレプトアビジンに同時にin vitro組込むためにCGGGとAGGUが使用されている。例えばHohsakaら,J.Am.Chem.Soc.,121:12194(1999)参照。in vivo試験では、MooreらはNCUAアンチコドンをもつtRNALeu誘導体がUAGNコドン(NはU、A、G又はCであり得る)を抑圧する能力を試験し、四重項UAGAはUCUAアンチコドンをもつtRNALeuにより13〜26%の効率でデコードすることができるが、0又は−1フレームでは殆どデコードできないことを見出した。Mooreら,(2000)J.Mol.Biol.,298:195参照。1態様では、レアコドン又はナンセンスコドンに基づく拡張コドンを本発明で使用し、他の望ましくない部位でのミスセンス読み飛ばしとフレームシフト抑圧を減らすことができる。
翻訳バイパス系を使用して非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)を所望ポリペプチドに組込むこともできる。1翻訳バイパス系では、大きい配列を遺伝子に挿入するが、蛋白質に翻訳しない。この配列はリボソームに配列を飛び越させて挿入の下流の翻訳を再開するための合図として機能する構造を含む。
非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)をポリペプチドに組込むために他の上記方法の代用又は併用としてトランス翻訳系を使用することができる。この系は大腸菌に存在するtmRNAと呼ばれる分子を利用する。このRNA分子はアラニルtRNAと構造的に近縁であり、アラニルシンテターゼによりアミノアシル化される。tmRNAとtRNAの相違はアンチコドンループが特殊な大きい配列で置換されていることである。この配列はtmRNA内でコードされるオープンリーディングフレームを鋳型として使用し、停止している配列上でリボソームに翻訳を再開させることができる。本発明では、直交シンテターゼで優先的にアミノアシル化して非天然アミノ酸を負荷する直交tmRNAを作製することができる。この系を使用する遺伝子を転写することにより、リボソームは特定部位で停止し、非天然アミノ酸はこの部位に導入され、その後、直交tmRNA内にコードされた配列を使用して翻訳が再開する。
所与系で、内在系が該当天然3塩基コドンを使用しない(又は殆ど使用しない)場合にセレクターコドンは更に天然3塩基コドンの1種を含むことができる。例えば、天然3塩基コドンを認識するtRNAを欠失する系、及び/又は3塩基コドンがレアコドンである系がこれに該当する。
セレクターコドンは場合により非天然塩基対を含む。これらの非天然塩基対は更に既存遺伝アルファベットを拡張する。塩基対が1個増えると、三重項コドン数は64から125に増す。第3の塩基対の性質としては安定的且つ選択的な塩基対合、高い忠実度でポリメラーゼによるDNAへの効率的な酵素組込み、及び未完成非天然塩基対の合成後の効率的な持続的プライマー伸長が挙げられる。方法と組成物に適応可能な非天然塩基対については、例えばHiraoら,An unnatural base pair for incorporating amino acid analogues into protein,Nature Biotechnology,20:177−182(2002)も参照。他の関連文献は以下に挙げる。
in vivo使用では、非天然ヌクレオシドは膜透過性であり、リン酸化され、対応する三リン酸塩を形成する。更に、増加した遺伝情報は安定しており、細胞酵素により破壊されない。Bennerらによる従来の報告ではカノニカルワトソンクリック対とは異なる水素結合パターンを利用しており、そのうちで最も注目される例はイソC:イソG対
である。例えばSwitzerら,(1989)J.Am.Chem.Soc.,111:8322;及びPiccirilliら,(1990)Nature,343:33;Kool,(2000)Curr.Opin.Chem.Biol..4:602参照。これらの塩基は一般に天然塩基とある程度まで誤対合し、酵素複製することができない。Koolらは水素結合を塩基間の疎水性パッキング相互作用に置き換えることにより塩基対の形成を誘導できることを立証した。Kool,(2000)Curr.Opin.Chem.Biol.,4:602;及びGuckian and Kool,(1998)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,36,2825参照。上記全要件を満足する非天然塩基対を開発しようとして、Schultz,Romerbergらは一連の非天然疎水性塩基を体系的に合成し、試験した。PICS:PICS自己対は天然塩基対よりも安定であり、大腸菌DNAポリメラーゼIのKlenowフラグメント(KF)によりDNAに効率的に組込むことができる。例えばMcMinnら,(1999)J.Am.Chem.Soc.,121:11586;及びOgawaら,(2000)J.Am.Chem.Soc.,122:3274参照。生物機能に十分な効率と選択性でKFにより3MN:3MN自己対を合成することができる。例えばOgawaら,(2000)J.Am.Chem.Soc.,122:8803参照。しかし、どちらの塩基も後期複製用チェーンターミネーターとして機能するに止まっている。PICS自己対を複製するために使用できる突然変異体DNAポリメラーゼが最近開発された。更に、7AI自己対も複製することができる。例えばTaeら,(2001)J.Am.Chem.Soc.,123:7439参照。Cu(II)と結合すると安定な対を形成する新規メタロ塩基対Dipic:Pyも開発された。Meggersら,(2000)J.Am.Chem.Soc..122:10714参照。拡張コドンと非天然コドンは天然コドンに本質的に直交性であるので、本発明の方法はその直交tRNAを作製するためにこの性質を利用することができる。
非天然アミノ酸
本明細書で使用する非天然アミノ酸とはセレノシステイン及び/又はピロリジンと20種の遺伝的にコードされる以下のαアミノ酸、即ちアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトフアン、チロシン、バリン以外の任意アミノ酸、修飾アミノ酸又はアミノ酸類似体を意味する。αアミノ酸の一般構造は式I:

により表される。
非天然アミノ酸は一般に式Iをもつ任意構造であり、式中、R基は20種の天然アミノ酸で使用されている以外の任意置換基である。20種の天然アミノ酸の構造については、例えばL.Stryer著Biochemistry,第3版,1988,Freeman and Company,New Yorkを参照されたい。なお、本発明の非天然アミノ酸は上記20種のαアミノ酸以外の天然化合物でもよい。
本発明の非天然アミノ酸は場合により側鎖のみが天然アミノ酸と異なるので、天然蛋白質と同様に他のアミノ酸(例えば天然又は非天然アミノ酸)とアミド結合を形成する。他方、非天然アミノ酸は天然アミノ酸と異なる側鎖基をもつ。
本発明の糖蛋白質の生産には、式IにおいてRが非天然アミノ酸を含む蛋白質と糖部分
を結合するように糖部分と結合した反応性基と反応することができる部分を含む非天然アミノ酸が特に重要である。適切なR基としては、例えばケト、アジド、ヒドロキシル、ヒドラジン、シアノ、ハロ、アミノオキシ、アルケニル、アルキニル、カルボニル、エーテル、チオール、セレノ、スルホニル、硼酸、ボロン酸、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、チオエステル、ヒンダードエステル、ヒドロキシルアミン、アミン等、又はその任意組み合わせが挙げられる。所定態様では、非天然アミノ酸は光架橋基をもつ。
新規側鎖を含む非天然アミノ酸に加え、非天然アミノ酸は場合により例えば式II及びIII:

の構造により表されるような修飾主鎖構造を含み、式中、Zは一般にOH、NH、SH、NH−R’又はS−R’を含み、XとYは同一でも異なっていてもよく、一般にS又はOであり、RとR’は場合により同一又は異なり、一般に式Iをもつ非天然アミノ酸について上記に記載したR基と同一の基及び水素から選択される。例えば、本発明の非天然アミノ酸は場合により式II及びIIにより表されるようにアミノ又はカルボキシル基に置換を含む。この種の非天然アミノ酸としては限定されないが、例えば20種の標準天然アミノ酸に対応する側鎖又は非天然側鎖をもつα−ヒドロキシ酸、α−チオ酸、α−アミノチオカルボキシレートが挙げられる。更に、α−炭素の置換は場合によりL、D又はα,α−ジ置換アミノ酸(例えばD−グルタミン酸、D−アラニン、D−メチル−O−チロシン、アミノ酪酸等)を含む。他の代替構造としては環状アミノ酸(例えばプロリン類似体や、3、4、6、7、8及び9員環プロリン類似体)、β及びγアミノ酸(例えば置換β−アラニン及びγ−アミノ酪酸)が挙げられる。
例えば、多数の非天然アミノ酸は天然アミノ酸(例えばチロシン、グルタミン、フェニルアラニン等)ベースとする。チロシン類似体としてはパラ置換チロシン、オルト置換チロシン、及びメタ置換チロシンが挙げられ、置換チロシンはアセチル基、ベンゾイル基、アミノ基、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、チオール基、カルボキシ基、イソプロピル基、メチル基、C−C20直鎖又は分枝鎖炭化水素、飽和又は不飽和炭化水素、O−メチル基、ポリエーテル基、ニトロ基等を含む。更に、多重置換アリール環も考えられる。本発明のグルタミン類似体としては限定されないが、α−ヒドロキシ誘導体、γ置換誘導体、環状誘導体及びアミド置換グルタミン誘導体が挙げられる。フェニルアラニン類似体の例としては限定されないが、メタ置換、オルト置換、及び/又はパラ置換フェニルアラニンが挙げられ、置換基はヒドロキシ基、メトキシ基、メチル基、アリル基、アルデヒド基、ケト基等を含む。
非天然アミノ酸の具体例としては限定されないが、p−アセチル−L−フェニルアラニン、O−メチル−L−チロシン、L−3−(2−ナフチル)アラニン、3−メチルフェニルアラニン、O−4−アリル−L−チロシン、4−プロピル−L−チロシン、トリ−O−アセチル−GlcNAcβ−セリン、β−O−GlcNAc−L−セリン、トリ−O−アセチル−GalNAc−α−スレオニン、α−GalNAc−L−スレオニン、L−Dopa、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル−L−フェニルアラニン、p−アジド−
L−フェニルアラニン、p−アシル−L−フェニルアラニン、p−ベンゾイル−L−フェニルアラニン、L−ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p−ヨードフェニルアラニン、p−ブロモフェニルアラニン、p−アミノ−L−フェニルアラニン、イソプロピル−L−フェニルアラニン、下記又は本明細書の他の箇所に記載するもの等が挙げられる。各種非天然アミノ酸の構造は例えばWO2002/085923の図17、18、19、26及び29に示される。
本発明の方法で使用するのに適した非天然アミノ酸としては、糖部分がアミノ酸側鎖に結合したものも挙げられる。1態様では、糖部分をもつ非天然アミノ酸としてはMan、GalNAc、Glc、Fuc、又はGal部分をもつセリン又はスレオニンが挙げられる。糖部分を含む非天然アミノ酸の例としては限定されないが、例えばトリ−O−アセチル−GlcNAcβ−セリン、β−O−GlcNAc−L−セリン、トリ−O−アセチル−GalNAc−α−スレオニン、α−GalNAc−L−スレオニン、O−Man−L−セリン、テトラ−アセチル−O−Man−L−セリン、O−GalNAc−L−セリン、トリ−アセチル−O−GalNAc−L−セリン、Glc−L−セリン、テトラアセチル−Glc−L−セリン、fuc−L−セリン、トリ−アセチル−fuc−L−セリン、O−Gal−L−セリン、テトラ−アセチル−O−Gal−L−セリン、β−O−GlcNAc−L−スレオニン、トリ−アセチル−β−GlcNAc−L−スレオニン、O−Man−L−スレオニン、テトラ−アセチル−O−Man−L−スレオニン、O−GalNAc−L−スレオニン、トリ−アセチル−O−GalNAc−L−スレオニン、Glc−L−スレオニン、テトラアセチル−Glc−L−スレオニン、fuc−L−スレオニン、トリ−アセチル−fuc−L−スレオニン、O−Gal−L−スレオニン、テトラ−アセチル−O−Gal−セリン等が挙げられる。本発明は上記非天然アミノ酸の未保護形態とアセチル化形態を含む。WO2003/031464A2、発明の名称「ペプチドのリモデリングと糖結合(Remodelling and Glycoconjugation of Peptides)」;及び米国特許第6,331,418号、発明の名称「糖組成物、その合成方法及び装置(Saccharide Compositions,Methods and Apparatus for their synthesis)」も参照されたい。
非天然アミノ酸の化学的合成
上記非天然アミノ酸の多くは例えばSigma(米国)やAldrich(Milwaukee,WI,米国)から市販されている。市販されていないものは場合により下記実施例の記載や当業者に公知の標準方法を使用して合成する。有機合成技術については例えばFessendonとFessendon著Organic Chemistry(1982,第2版,Willard Grant Press,Boston Mass.);March著Advanced Organic Chemistry(第3版,1985,Wiley and Sons,New York);及びCareyとSundberg著Advanced Organic Chemistry(第3版,Parts A and B,1990,Plenum Press,New York)を参照されたい。非天然アミノ酸のその他の合成についてはWO2002/085923参照。
例えば、メタ置換フェニルアラニンはWO2002/085923に要約するような手順で合成される(例えば公報の図14参照)。一般に、NBS(N−ブロモスクシンイミド)をメタ置換メチルベンゼン化合物に加えてメタ置換臭化ベンジルを得た後にマロン酸化合物と反応させてメタ置換フェニルアラニンを得る。メタ位に使用される典型的置換基としては限定されないが、ケトン、メトキシ基、アルキル、アセチル等が挙げられる。例えば、3−アセチルフェニルアラニンはNBSを3−メチルアセトフェノンの溶液と反応させることにより製造される。詳細については下記実施例を参照されたい。同様の合成を
使用して3−メトキシフェニルアラニンを製造する。その場合の臭化ベンジルのメタ位のR基は−OCHである。例えば、Matsoukasら,J.Med.Chem.,1995,38,4600−4669参照。
所定態様では、シンテターゼ(例えば直交tRNAをアミノアシル化するために使用する直交tRNAシンテターゼ)の活性部位に関する公知情報により非天然アミノ酸の設計を変更する。例えば、アミドの窒素を置換した誘導体(1)、γ位のメチル基(2)、及びN−Cγ−環状誘導体(3)の3種のグルタミン類似体が提供される。例えば活性部位Phe233から疎水性小アミノ酸への突然変異はGlnのCγ位の立体嵩増加により補完できるので、主要結合部位残基が酵母GlnRSに相同である大腸菌GlnRSのX線結晶構造に基づき、グルタミン側鎖から10Å以内の残基の一連の側鎖突然変異を補完するように類似体を設計した。
例えば、N−ナフタロイル−L−グルタミン酸1,5−無水物(WO2002/085923の図23の化合物番号4)を場合により使用してアミドの窒素に置換基をもつグルタミン類似体を合成する。例えばKing,F.E.& Kidd,D.A.A.A New Synthesis of Glutamine and of γ−Dipeptides of Glutamic Acid from Phthylated Intermediates.J.Chem.Soc.,3315−3319(1949);Friedman,O.M.& Chatterrji,R.Synthesis of Derivatives of Glutamine as Model Substrates for Anti−Tumor Agents.J.Am.Chem.Soc.81,3750−3752(1959);Craig,J.C.ら,Absolute Configuration of the Enantiomers of 7−Chloro−4−[[4−(diethylamino)−1−methylbutyl]amino]quinoline(Chloroquine).J.Org.Chem.53,1167−1170(1988);及びAzoulay,M.,Vilmont,M.& Frappier,F.Glutamine analogues as
Potential Antimalarials,.Eur.J.Med.Chem.26,201−5(1991)参照。前記無水物は一般にグルタミン酸から製造され、まずアミンをフタルイミドとして保護した後に酢酸中で還流させる。次に無水物を多数のアミンで開環し、アミドに各種置換基を付ける。フタロイル基をヒドラジンで脱保護すると、WO2002/085923の図23に示すような遊離アミノ酸が得られる。
γ位の置換は一般にグルタミン酸のアルキル化により実施される。例えばKoskinen,A.M.P.& Rapoport,H.Synthesis of 4−Substituted Prolines as Conformationally Constrained Amino Acid Analogues.J.Org.Chem.54,1859−1866(1989)参照。例えばWO2002/085923の図24の化合物番号5に示すような保護アミノ酸は場合によりまずアミノ部分を9−ブロモ−9−フェニルフルオレン(PhflBr)でアルキル化(例えばChristie,B.D.& Rapoport,H.Synthesis of Optically Pure Pipecolates from L−Asparagine.Application to the total Synthesis of(+)−Apovincamine through Amino Acid Decarbonylation and Iminium Ion Cyclization.J.Org.Chem.1989,1859−1866(1986)参照)した後、O−tert−ブチル−N,N’−ジイソプロピルイソ尿素を使用して酸部分をエステル化することにより製造される。KN(Si(CHを加えてメチルエステルのα位を部位選択的に脱プロトン化してエノラートを形成した後、場合により各種ヨウ化アルキルでアルキル化する
。t−ブチルエステルとPhfl基を加水分解すると、所望γ−メチルグルタミン類似体(WO2002/085923の図24の化合物番号2)が得られた。
WO2002/085923の図25に化合物番号3で示すようなN−Cγ−環状類似体は場合により従来記載されているようにBoc−Asp−Ot−Buから4段階で製造される。例えばBartonら,Synthesis of Novel α−Amino−Acids and Derivatives Using Radical Chemistry:Synthesis of L−and D−α−Amino−Adipic Acids,L−α−aminopimelic Acid and Appropriate Unsaturated Derivatives.Tetradedron Lett.43,4297−4308(1987)及びSubasingheら,Quisqualic acid analogues:synthesis of beta−heterocyclic 2−aminopropanoic acid derivatives and their activity at a novel quisqualate−sensitized site.J.Med.Chem.35 4602−7(1992)参照。N−t−Boc−ピロリジノン、ピロリジノン、又はオキサゾリドンのアニオンの生成後に図25に示すような化合物7を加えるとマイケル付加物が得られる。次にTFAで脱保護すると遊離アミノ酸が得られる。
上記非天然アミノ酸以外に、チロシン類似体ライブラリーも設計した。活性部位がM.jannashiiシンテターゼと高度に相同のB.stearothermophilus TyrRSの結晶構造に基づき、チロシンの芳香族側鎖から10Å以内の残基を突然変異させた(Y32,G34,L65,Q155,D158,A167,Y32及びD158)。これらの活性部位アミノ酸の一連の置換を補完するようにWO2002/085923の図26に示すようなチロシン類似体ライブラリーを設計した。これらは種々の疎水性及び水素結合性を付与する各種フェニル置換パターンを含む。チロシン類似体は場合によりWO2002/085923(例えば公報の図27参照)により示す一般ストラテジーを使用して製造される。例えば、場合によりナトリウムエトキシドを使用してアセトアミドマロン酸ジエチルのエノラートを生成する。その後、適当な臭化ベンジルを加えた後に加水分解することにより所望チロシン類似体を製造することができる。
非天然アミノ酸の細胞取込み
非天然アミノ酸取込みは例えば蛋白質に組込むために非天然アミノ酸を設計及び選択する場合に一般に検討される問題の1つである。例えば、αアミノ酸は電荷密度が高いのでこれらの化合物は細胞浸透性になりにくいと思われる。天然アミノ酸は種々の程度のアミノ酸特異性を示す一連の蛋白質輸送系を介して細菌に取込まれる。従って、本発明は非天然アミノ酸が細胞に取込まれる場合にどの非天然アミノ酸が取込まれるかを調べる迅速なスクリーニングを提供する。
例えば、種々の非天然アミノ酸を場合により最少培地で細胞毒性についてスクリーニングする。毒性は一般に(1)倍加時間の有意変化がない無毒性、(2)倍加時間の増加が約10%未満である低毒性、(3)倍加時間の増加が約10%〜約50%である中毒性、(4)倍加時間の増加が約50%〜約100%である高毒性、及び(5)倍加時間の増加が約100%を上回る極毒性の5分類に分類される。例えばLiu,D.R.& Schultz,P.G.Progress toward the evolution of an organism with an expanded genetic code.PNAS,USA 96,4780−4785(1999)参照。一般に高毒性又は極毒性に分類されるアミノ酸の毒性をその濃度の関数として測定し、IC50値を得る。一般に、天然アミノ酸の近縁類似体であるか又は反応性官能基を示すアミノ酸が最高毒性を示す。この傾向はこれらの非天然アミノ酸の毒性メカニズムが天然アミノ酸をプロ
セシングする必須酵素の蛋白質組込み又は阻害である可能性を示唆している。
毒性アミノ酸の可能な取込み経路を同定するためには、場合により例えば過剰の構造的に類似する天然アミノ酸を加えた培地でIC50レベルの毒性アッセイを繰返す。毒性アミノ酸では過剰の天然アミノ酸の存在は一般に毒素存在下の細胞の増殖能を補うが、これは天然アミノ酸が細胞取込み又は必須酵素との結合に関して毒素との競合を有効に解消するためであると予想される。これらの場合には、場合により毒性アミノ酸を可能な取込み経路に割り当て、細胞生存にその相補が必要な「致死対立遺伝子」と呼ぶ。これらの致死対立遺伝子は細胞が非毒性非天然アミノ酸を取込む能力をアッセイするのに極めて有用である。毒性対立遺伝子の相補は細胞増殖の回復により判断され、恐らく致死対立遺伝子に割り当てられると同一の取込み経路により非毒性アミノ酸が細胞に取込まれることを示唆している。相補の欠如については結論が出ていない。例えば、試験と結論については下記実施例を参照されたい。
(例えば下記実施例に記載するような)得られた結果は、致死非天然アミノ酸対立遺伝子の相補がアミノ酸取込みを定量的に試験するために効率的な方法であることを立証している。この方法は一般に多数の化合物を放射性標識するよりも手間がかからないので該当非天然アミノ酸の分析方法としてより有利な方法である。この一般ストラテジーは場合により核酸塩基類似体、糖質類似体又はペプチド類似体等の広範な分子の細胞取込みを迅速に評価するために使用される。例えば、このストラテジーは場合により本明細書に記載する非天然アミノ酸の細胞取込みを評価するために使用される。
本発明は非天然アミノ酸を送達するための一般方法として全アミノ酸取込み経路に独立した方法も提供する。この一般方法は細胞膜を通してジペプチドとトリペプチドを輸送するペプチドパーミアーゼによる取込みに依存する。ペプチドパーミアーゼはサホド側鎖特異的ではなく、その基質に対するKD値はアミノ酸パーミアーゼのKDアミノ酸と同等であり、例えば約0.1mM〜約10mMである。例えばNickitenkoら,A structure of DppA,a periplasmic depeptide
transport/chemosensory receptor.Biochemistry 34,16585−16595(1995)及びDunten,P.,Mowbray,S.L.Crystal structure of the dipeptide binding protein from Escherichia coli involved in active transport and chemotaxis.Protein Science 4,2327−34(1995)参照。その後、非天然アミノ酸はリジン等の天然アミノ酸のコンジュゲートとして取込まれ、内在大腸菌ペプチダーゼの1種によるジペプチドの加水分解後に細胞質に放出される。このアプローチを試験するために、数種のUnn−Lys及びLys−Unnジペプチドを固相合成により合成し、これらのジペプチドの存在下と不在下にリジン最少培地でリジン生合成欠損大腸菌株の増殖を試験した。これらの細胞に利用可能な唯一のリジン源は非天然アミノ酸を含むジペプチドである。ホスホノセリン、ホスホノチロシン、ペンタフルオロフェニルアラニン及びケージドセリンの取込みをこのように分析した。4例のいずれでも10mM以上のジペプチド濃度で増殖が観察された。取込みは本明細書に記載する方法で容易に分析されるが、細胞取込み経路に利用可能な非天然アミノ酸を設計する別法は、アミノ酸をin vivo生産する生合成経路の提供である。
非天然アミノ酸の生合成
細胞にはアミノ酸と他の化合物を生産するために多数の生合成経路が元々存在している。特定非天然アミノ酸の生合成法は自然界(例えば細胞中)には存在しないと思われるが、本発明はこのような方法を提供する。例えば、場合により新規酵素を付加するか又は既存大腸菌経路を改変することにより非天然アミノ酸の生合成経路を大腸菌で形成する。付
加新規酵素は場合により天然酵素でも人工的に作製した酵素でもよい。例えば(WO2002/085923に記載するような)p−アミノフェニルアラニンの生合成は他の生物からの公知酵素の組合せの付加に依存している。これらの酵素の遺伝子はこの遺伝子を含むプラスミドで細胞(例えば大腸菌細胞)を形質転換することにより細胞に導入することができる。遺伝子は細胞で発現されると、所望化合物を合成するための酵素経路を提供する。場合により付加される酵素種の例は下記実施例に記載する。付加酵素配列は例えばGenbankに登録されている。場合により人工的に作製した酵素も同様に細胞に付加する。このように、非天然アミノ酸を生産するように細胞機構と細胞資源を操作する。
生合成経路で使用する新規酵素の生産方法又は既存経路を進化させる方法は種々のものが入手可能である。例えば場合により例えばMaxygen,Inc.(世界ウェブwww.maxygen.com参照)により開発されたような再帰的組換えを使用して新規酵素及び経路を開発する。例えばStemmer 1994,“Rapid evolution of a protein in vitro by DNA shuffling,”Nature Vol.370 No.4:Pg.389−391;及びStemmer,1994,“DNA shuffling by random fragmentation and reassembly:In vitro recombination for molecular evolution,”Proc.Natl.Acad.Sci.USA.Vol.91:Pg.10747−10751参照。同様に、場合によりGenencor(世界ウェブgenencor.com参照)により開発されたDesignPath(登録商標)を代謝経路組換えに使用し、例えば大腸菌で非天然アミノ酸を生産するように経路を組換える。この技術は例えば機能ゲノミクスと分子進化及び設計により同定した新規遺伝子の組合せを使用して宿主生物で既存経路を再構築する。Diversa Corporation(世界ウェブdiversa.com参照)も例えば新規経路を創製するために遺伝子ライブラリーと遺伝子経路を迅速にスクリーニングするための技術を提供している。
一般に、本発明の生合成方法(例えばコリスミン酸からp−アミノフェニルアラニン(pAF)を生産するための経路)は細胞で生産される他のアミノ酸濃度に影響を与えない。例えば、コリスミン酸からpAFを生産するために使用される経路は細胞内でpAFを生産するが、コリスミン細胞から一般に生産される他の芳香族アミノ酸の濃度は実質的に変わらない。一般に本発明の組換え生合成経路で生産される非天然アミノ酸は効率的蛋白質生合成に十分な濃度(例えば天然細胞量)で生産されるが、他のアミノ酸の濃度を変化させたり細胞資源を枯渇させる程にはならない。こうしてin vivo生産される典型濃度は約10mM〜約0.05mMである。特定経路に所望される酵素を生産するために使用される遺伝子を含むプラスミドで細菌を形質転換し、21番目のアミノ酸(例えばpAF、dopa、O−メチル−L−チロシン等)を作製したら、場合によりin vivo選択を使用してリボソーム蛋白質合成と細胞増殖の両者に合うように非天然アミノ酸の生産を更に最適化させる。
核酸及びポリペプチド配列変異体
上記及び下記に記載するように、本発明は核酸ポリヌクレオチド配列(例えばO−tRNA及びO−RS)及びポリペプチドアミノ酸配列(例えばO−RS)と、例えば前記配列を含む組成物と方法を提供する。前記配列(例えばO−tRNA及びO−RS)の例を本明細書に開示する(表2、例えば配列番号1〜10参照)。しかし、当業者に自明の通り、本発明は本明細書(例えば実施例)に開示する配列に限定されない。当業者に自明の通り、本発明は本明細書に記載する機能をもつ(例えばO−tRNA又はO−RSをコードする)多数の非関連配列も提供する。
本発明はポリペプチド(例えばO−RS)とポリヌクレオチド(例えばO−tRNA)
、O−RS又はその部分をコードするポリヌクレオチド、アミノアシルtRNAシンテターゼクローンを単離するために使用されるオリゴヌクレオチド等を提供する。本発明のポリヌクレオチドとしては、本発明の非天然アミノ酸を組込んだポリペプチド又は蛋白質が挙げられる。本発明のポリペプチドは更に人工ポリペプチドを含み、例えば(a)配列番号4〜6のいずれか1種に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;(b)配列番号8〜10のいずれか1種に示すポリヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(c)(a)、又は(b)のポリペプチドに特異的な抗体に対して特異的に免疫反応性のポリペプチド;及び(d)(a)、(b)、又は(c)の保存変異を含むアミノ酸配列が挙げられる。本発明の人工ポリペプチドに対して特異的に免疫反応性の抗体又は抗血清も提供される。1態様では、組成物は本発明のポリペプチドと賦形剤(例えば緩衝液、水、医薬的に許容可能な賦形剤等)を含む。
本発明のポリヌクレオチドとしては1個以上のセレクターコドンを含む本発明の該当蛋白質又はポリペプチドをコードするものが挙げられる。本発明のポリヌクレオチドは配列番号8、8、もしくは10のいずれか1種、又はその保存変異体を含むポリヌクレオチドも含む。本発明のポリヌクレオチドは配列番号1〜6のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含む。本発明のポリヌクレオチドは本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも含む。同様に、核酸の実質的に全長にわたって高ストリンジェント条件下で上記ポリヌクレオチドとハイブリダイズする人工核酸(天然ポリヌクレオチド以外のもの)も本発明のポリヌクレオチドである。人工ポリヌクレオチドとは天然に存在しない人造ポリヌクレオチドである。
所定態様では、ベクター(例えばプラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス等)に本発明のポリヌクレオチドを導入する。1態様では、ベクターは発現ベクターである。別の態様では、発現ベクターは本発明のポリヌクレオチドの1種以上と機能的に連結したプロモーターを含む。別の態様では、本発明のポリヌクレオチドを組込んだベクターを細胞に導入する。
当業者に自明の通り、開示配列の多数の変異体も本発明に含まれる。例えば、機能的に同一配列となる開示配列の保存変異体も本発明に含まれる。少なくとも1種の開示配列にハイブリダイスする核酸ポリヌクレオチド配列の変異体も本発明に含むものとする。例えば標準配列比較法により本明細書に開示する配列のユニークサブ配列であるとみなされる配列も本発明に含まれる。
保存変異
遺伝コードの縮重により、「サイレント置換」(即ちコードされるポリペプチドに変化を生じない核酸配列の置換)はアミノ酸をコードする全核酸配列の暗黙の特徴である。同様に、「保存アミノ酸置換」はアミノ酸配列中の1又は数個のアミノ酸を高度に類似する特性をもつ別のアミノ酸で置換するものであり、このような置換も開示構築物と高度に類似することは自明である。各開示配列のこのような保存変異は本発明の特徴である。
特定核酸配列の「保存変異」とは同一又は本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を意味し、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には本質的に同一の配列を意味する。当業者に自明の通り、コードされる配列中の単一アミノ酸又は低百分率(一般に5%未満、より一般には4%、2%又は1%未満)のアミノ酸を置換、付加又は欠失させる個々の置換、欠失又は付加の結果としてアミノ酸1個を欠失するか、アミノ酸1個が付加されるか、又はアミノ酸1個が化学的に類似するアミノ酸1個で置換される場合には、これらの改変は「保存改変変異」である。従って、本発明のポリペプチド配列の「保存変異」としては、糖部分を結合するアミノ酸を含む保存的非天然アミノ酸及び/又は同一保存置換基の糖部分を含む非天然アミノ酸でポリペプチド配列のアミノ酸の低百分率、一般に5%
未満、より一般には2%又は1%未満を置換する場合が挙げられる。最後に、非機能的配列の付加のように核酸分子のコードされる活性を変えない配列の付加も基本核酸の保存変異である。
機能的に類似するアミノ酸を示す保存置換表は当分野で周知である。相互に「保存置換」を含む天然アミノ酸を含むグループの例を以下に示す。

核酸ハイブリダイゼーション
比較ハイブリダイゼーションを使用して本発明の核酸の保存変異を含む本発明の核酸(例えば配列番号7、8、9、又は10)を同定することができ、この比較ハイブリダイゼーション法は本発明の核酸を識別する好適な方法である。更に、高、超高及び超々高ストリンジェンシー条件下で配列番号7、8、9、又は10に示す核酸とハイブリダイズするターゲット核酸も本発明の特徴である。このような核酸の例としては所与核酸配列と比較して1又は数個のサイレント又は保存核酸置換をもつものが挙げられる。
完全にマッチする相補的ターゲットに比較して少なくとも1/2の割合でプローブにハイブリダイズする場合、即ちマッチしないターゲット核酸の任意のものとのハイブリダイゼーションに観測されるシグナル対ノイズ比の少なくとも約5倍〜10倍で完全にマッチするプローブが完全にマッチする相補的ターゲットと結合する条件下におけるプローブとターゲットのハイブリダイゼーションに比較してシグナル対ノイズ比が少なくとも1/2である場合に試験核酸はプローブ核酸に特異的にハイブリダイズすると言う。
核酸は一般に溶液中で会合するときに「ハイブリダイズ」する。核酸は水素結合、溶媒排除、塩基スタッキング等の種々の十分に特性決定された物理化学的力によりハイブリダイズする。核酸ハイブリダイゼーションの詳しい手引きはTijssen(1993)Laboratory Techniques in Biochemistry and
Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Acid Probes part I chapter 2,“Overview of principles of hybridization and
the strategy of nucleic acid probe assays,”(Elsevier,New York)及びAusubel,前出に記載されている。Hames and Higgins(1995)Gene Probes 1
IRL Press at Oxford University Press,Oxford,England,(Hames and Higgins 1)及びHames and Higgins(1995)Gene Probes 2 IRL Press at Oxford University Press,Oxford,England(Hames and Higgins 2)はオリゴヌクレオチドを含むDNAとRNAの合成、標識、検出及び定量について詳細に記載している。
サザン又はノーザンブロットでフィルター上で100を越える相補的残基をもつ相補的核酸のハイブリダイゼーションを行うためのストリンジェントハイブリダイゼーション条件の1例は、50%ホルマリンにヘパリン1mgを加え、42℃で一晩のハイブリダイゼーションである。ストリンジェント洗浄条件の1例は65℃、0.2×SSCで15分間である(SSC緩衝液の説明についてはSambrook,前出参照)。多くの場合には
高ストリンジェンシー洗浄の前に低ストリンジェンシー洗浄でバックグラウンドプローブシグナルを除去する。低ストリンジェンシー洗浄の1例は40℃、2×SSCで15分間である。一般に、シグナル対ノイズ比が特定ハイブリダイゼーションアッセイで非関連プローブに観測されるよりも5倍(以上)である場合に特異的ハイブリダイゼーションが検出されたとみなす。
サザン及びノーザンハイブリダイゼーション等の核酸ハイブリダイゼーション実験に関して「ストリンジェントハイブリダイゼーション洗浄条件」は配列依存的であり、種々の環境パラメーターにより異なる。核酸ハイブリダイゼーションの詳しい手引きはTijssen(1993),前出やHames and Higgins 1及び2に記載されている。ストリンジェントハイブリダイゼーション及び洗浄条件は任意試験核酸について経験により容易に決定することができる。例えば高ストリンジェントハイブリダイゼーション及び洗浄条件を決定するには、総合選択基準に合致するまで(例えばハイブリダイゼーション又は洗浄における温度上昇、塩濃度低下、界面活性剤濃度増加及び/又はホルマリン等の有機溶媒濃度増加により)ハイブリダイゼーション及び洗浄条件を漸増させる。例えばマッチしないターゲットとプローブのハイブリダイゼーションに観測されるシグナル対ノイズ比の少なくとも約5倍でプローブが完全にマッチする相補的ターゲットと結合するまでハイブリダイゼーション及び洗浄条件を漸増させる。
「超ストリンジェント」条件は特定プローブの熱融点(Tm)に等しくなるように選択する。Tmは(規定イオン強度及びpH下で)試験配列の50%が完全にマッチするプローブとハイブリダイズする温度である。本発明の趣旨では、一般に規定イオン強度及びpHで特定配列のTmよりも約5℃低くなるように「高ストリンジェント」ハイブリダイゼーション及び洗浄条件を選択する。
「超高ストリンジェンシー」ハイブリダイゼーション及び洗浄条件は完全にマッチする相補的ターゲット核酸とプローブを結合させる場合のシグナル対ノイズ比がマッチしないターゲット核酸の任意のものとのハイブリダイゼーションに観測されるシグナル対ノイズ比の少なくとも10倍になるまでハイブリダイゼーション及び洗浄条件のストリンジェンシーを増す条件である。完全にマッチする相補的ターゲットのシグナル対ノイズ比の少なくとも1/2で前記条件下でプローブとハイブリダイズする場合にターゲット核酸は超高ストリンジェンシー条件下でプローブと結合すると言う。
同様に、該当ハイブリダイゼーションアッセイのハイブリダイゼーション及び/又は洗浄条件を漸増させることにより更に高いレベルのストリンジェンシーを決定することもできる。例えば、完全にマッチする相補的ターゲット核酸とプローブを結合させる場合のシグナル対ノイズ比がマッチしないターゲット核酸の任意のものとのハイブリダイゼーションに観測されるシグナル対ノイズ比の少なくとも10倍、20倍、50倍、100倍又は500倍以上になるまでハイブリダイゼーション及び洗浄条件のストリンジェンシーを増す。完全にマッチする相補的ターゲットのシグナル対ノイズ比の少なくとも1/2で前記条件下でプローブとハイブリダイズする場合にターゲット核酸は超々高ストリンジェンシー条件下でプローブと結合すると言う。
ストリンジェント条件下で相互にハイブリダイズしない核酸でも、これらの核酸によりコードされるポリペプチドが実質的に同一である場合には実質的に同一である。これは、例えば遺伝コードに許容される最大コドン縮重を使用して核酸のコピーを作製する場合に該当する。
ユニークサブ配列
1側面では、本発明は本明細書に開示するO−tRNA及びO−RSの配列から選択さ
れる核酸にユニークサブ配列を含む核酸を提供する。ユニークサブ配列は任意公知O−tRNA及びO−RS核酸配列に対応する核酸に比較してユニークである。例えばデフォルトパラメーターに設定したBLASTを使用してアラインメントを実施することができる。任意ユニークサブ配列は例えば本発明の核酸を同定するためのプローブとして有用である。
同様に、本発明は本明細書に開示するO−RSの配列から選択されるポリペプチド中にユニークサブ配列を含むポリペプチドを含む。この場合には、ユニークサブ配列は公知ポリペプチド配列の任意のものに対応するポリペプチドに比較してユニークである。
本発明はO−RSの配列から選択されるポリペプチド中のユニークサブ配列をコードするユニークコーディングオリゴヌクレオチドとストリンジェント条件下でハイブリダイズするターゲット核酸も提供し、この場合、ユニークサブ配列は対照ポリペプチド(例えば本発明のシンテターゼを得るために例えば突然変異させた親配列)の任意のものに対応するポリペプチドに比較してユニークである。ユニーク配列は上記のように決定する。
配列比較、一致度及び相同度
2種以上の核酸又はポリペプチド配列に関して「一致」又は「一致度」百分率なる用語は2種以上の配列又はサブ配列を最大限に対応するように対比及び整列させ、以下に記載する配列比較アルゴリズム(又は当業者に入手可能な他のアルゴリズム)の1種を使用するか又は目視により測定した場合に相互に同一であるか又は同一のアミノ酸残基もしくはヌクレオチドの百分率が特定値であることを意味する。
2種以上の核酸又はポリペプチド(例えばO−tRNAもしくはO−RS又はO−RSのアミノ酸配列をコードするDNA)に関して「実質的に一致」なる用語は2種以上の配列又はサブ配列を最大限に対応するように対比及び整列させ、配列比較アルゴリズムを使用するか又は目視により測定した場合にヌクレオチド又はアミノ酸残基一致度が少なくとも約60%、好ましくは80%、最も好ましくは90〜95%であることを意味する。このような「実質的に一致」する配列は一般に実際の起源が記載されていなくても「相同」であるとみなす。少なくとも約50残基長の配列の領域にわたって「実質的一致」が存在することが好ましく、少なくとも約100残基長の配列の領域がより好ましく、少なくとも約150残基又は比較する2配列の全長にわたって配列が実質的に一致していることが最も好ましい。
蛋白質及び/又は蛋白質配列は共通の祖先蛋白質又は蛋白質配列から天然又は人工的に誘導される場合に「相同」である。同様に、核酸及び/又は核酸配列は共通の祖先核酸又は核酸配列から天然又は人工的に誘導される場合に相同である。例えば、入手可能な任意突然変異誘発法により任意天然核酸を改変し、1個以上のセレクターコドンを加えることができる。この突然変異誘発した核酸は発現されると、1種以上の非天然アミノ酸を含むポリペプチドをコードする。突然変異法は当然のことながら更に1個以上の標準コドンを変異させ、得られる突然変異体蛋白質の1個以上の標準アミノ酸も変異させることができる。相同性は一般に2種以上の核酸又は蛋白質(又はその配列)間の配列類似度から推定される。相同性の判定に有用な配列間類似度の厳密な百分率は該当核酸及び蛋白質により異なるが、通常は25%程度の低い配列類似度を使用して相同性を判定する。もっと高いレベルの配列類似度、例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%以上を使用して相同性を判定することもできる。配列類似度百分率の決定方法(例えばデフォルトパラメーターを使用するBLASTP及びBLASTIN)は本明細書に記載し、一般に入手可能である。
配列比較及び相同性決定には、一般に一方の配列を参照配列としてこれに試験配列を比
較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合には、試験配列と参照配列をコンピューターに入力し、必要に応じてサブ配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指定する。こうすると、配列比較アルゴリズムは指定プログラムパラメーターに基づいて参照配列に対して試験配列の配列一致度百分率を計算する。
比較のための最適な配列アラインメントは例えばSmith & waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズム、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性探索法、これらのアルゴリズムのコンピューターソフトウェア(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIのGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA)、又は目視(一般にAusubelら,後出参照)により実施することができる。
配列一致度及び配列類似度百分率を決定するのに適したアルゴリズムの1例はAltschulら,J.Mol.Biol.215:403−410(1990)に記載されているBLASTアルゴリズムである。BLAST分析を実施するためのソフトウェアはNational Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公に入手可能である。このアルゴリズムはデータベース配列中の同一長さの単語と整列した場合に所定の正の閾値スコアTと一致するか又はこれを満足するクエリー配列中の長さWの短い単語を識別することによりまず高スコア配列対(HSP)を識別する。Tを隣接単語スコア閾値と言う(Altschulら,前出)。これらの初期隣接単語ヒットをシードとして検索を開始し、これらの単語を含むもっと長いHSPを探索する。次に、累積アラインメントスコアを増加できる限り、単語ヒットを各配列に沿って両方向に延長する。ヌクレオチド配列の場合にはパラメーターM(1対のマッチ残基のリウォードスコア、常に>0)及びN(ミスマッチ残基のペナルティースコア、常に<0)を使用して累積スコアを計算する。アミノ酸配列の場合には、スコアリングマトリクスを使用して累積スコアを計算する。累積アラインメントスコアがその最大到達値から量Xだけ低下するか、累積スコアが1カ所以上の負スコア残基アラインメントの累積によりゼロ以下になるか、又はどちらかの配列の末端に達したら各方向の単語ヒットの延長を停止する。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T及びXはアラインメントの感度と速度を決定する。BLASTINプログラム(ヌクレオチド配列用)は語長(W)11、期待値(E)10、カットオフ100、M=5、N=4、及び両鎖の比較をデフォルトとして使用する。アミノ酸配列用として、BLASTPプログラムは語長(W)3、期待値(E)10、及びBLOSUM62スコアリングマトリクスをデフォルトとして使用する(Henikoff & Henikoff(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915参照)。
配列一致度百分率の計算に加え、BLASTアルゴリズムは2配列間の類似性の統計分析も実施する(例えばKarlin & Altschul,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873−5787(1993)参照)。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の1尺度は2種のヌクレオチド又はアミノ酸配列間に偶然にマッチが起こる確率を示す最小合計確率(P(N))である。例えば、試験核酸を参照核酸に比較した場合の最小合計確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合に核酸は参照核酸に類似しているとみなす。
突然変異誘発及び他の分子生物学技術
本発明のポリヌクレオチドとポリペプチド及び本発明で使用されるポリヌクレオチドとポリペプチドは分子生物学技術を使用して操作することができる。分子生物学技術について記載している一般教科書としてはBerger and Kimmel,前出;Sambrook,前出;及びAusubel,前出が挙げられる。これらの教科書は突然変異誘発、ベクターの使用、プロモーター及び他の多くの関連事項について記載しており、例えば直交tRNA、直交シンテターゼ及びその対を含む本発明の糖蛋白質を生産するためのセレクターコドンを含む遺伝子の作製についても記載している。
例えばtRNA分子を突然変異させるため、tRNAのライブラリーを作製するため、シンテターゼのライブラリーを作製するため、例えば非天然アミノ酸(例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸又は糖部分を含む非天然アミノ酸)をコードするセレクターコドンを該当蛋白質又はポリペプチドに挿入するために、本発明では各種突然変異誘発を使用する。これらの例としては限定されないが、部位特異的、ランダム点突然変異誘発、相同組換え、DNAシャフリング又は他の再帰的突然変異誘発法、キメラ構築、ウラシル含有鋳型を使用する突然変異誘発、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発、ホスホロチオエート修飾DNA突然変異誘発、ギャップデュプレクスDNAを使用する突然変異誘発等、又はその任意組み合わせが挙げられる。他の利用可能な方法としては点ミスマッチ修復、修復欠損宿主株を使用する突然変異誘発、制限−選択及び制限−精製、欠失突然変異誘発、完全遺伝子合成による突然変異誘発、2本鎖切断修復等が挙げられる。例えばキメラ構築物を使用する突然変異誘発も本発明に含まれる。1態様では、天然分子又は改変もしくは突然変異させた天然分子の公知情報(例えば配列、配列比較、物性、結晶構造等)により突然変異誘発を実施することができる。
本発明のポリヌクレオチド又は本発明のポリヌクレオチドを組込んだ構築物(例えばクローニングベクター又は発現ベクター等の本発明のベクター)で宿主細胞を遺伝子組換え(例えば形質転換、形質導入又はトランスフェクション)する。例えば、直交tRNA、直交tRNAシンテターゼ、及び例えば糖部分を結合することができる部分を含む非天然アミノ酸(例えばアルデヒド又はケト誘導体化アミノ酸)又は糖部分を含む非天然アミノ酸で誘導体化すべき蛋白質のコーディング領域を所望宿主細胞で機能的な遺伝子発現制御エレメントに機能的に連結する。典型的なベクターは転写及び翻訳ターミネーターと、転写及び翻訳開始配列と、特定ターゲット核酸の発現の調節に有用なプロモーターを含む。ベクターは場合により少なくとも1個の独立ターミネーター配列と、真核生物又は原核生物又は両者(例えばシャトルベクター)でカセットの複製を可能にする配列と、原核系と真核系の両者の選択マーカーを含む包括的発現カセットを含む。ベクターは原核生物、真核生物、又は好ましくは両者での複製及び/又は組込みに適している。Giliman & Smith,Gene 8:81(1979);Robertsら,Nature,328:731(1987);Schneider,B.ら,Protein Expr.Purif.6435:10(1995);Ausubel,Sambrook,Berger(いずれも前出)参照。ベクターは例えばプラスミド、細菌、ウイルス、裸のポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドコンジュゲートの形態とすることができる。ベクターはエレクトロポレーション(Fromら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82,5824(1985))、ウイルスベクターによる感染、核酸を小ビーズもしくは粒子のマトリックスに埋込むか又は表面に付着させて小粒子形態で高速射入する方法(Kleinら,Nature 327,70−73(1987)、及び/又は同等物の標準方法により細胞及び/又は微生物に導入する。
クローニングに有用な細菌とバクテリオファージのカタログは例えばATCCから入手でき、例えばATCCから刊行されたThe ATCC Catalogue of Bacteria and Bacteriophage(1992)Ghernaら(編)が挙げられる。その他のシーケンシング、クローニング及び分子生物学の他の側面の基
本手順と基礎理論事項もSambrook(前出),Ausubel(前出)及びWatsonら(1992)Recombinant DNA Second Edition
Scientific American Books,NYに記載されている。更に、Midland Certified Reagent Company(Midland,TX mcrc.com)、The Great American Gene Company(Ramona,CA,世界ウェブgenco.com参照)、ExpressGen Inc.(Chicago,IL,世界ウェブexpressgen.com参照)、Operon Technologies Inc.(Alameda,CA)、その他多数の各種販売会社からほぼ任意核酸(及び標準又は標準外を問わずほぼ任意標識核酸)をオーダーメード又は標準注文することができる。
組換え宿主細胞は例えばスクリーニング段階、プロモーター活性化又は形質転換細胞選択等の操作に合うように適宜改変した慣用栄養培地で培養することができる。これらの細胞を場合によりトランスジェニック生物で培養することができる。(例えば後期核酸分離のための)例えば細胞分離及び培養に関する他の有用な文献としてはFreshney(1994)Culture of Animal Cells,a Manual of
Basic Technique,第3版,Wiley−Liss,New Yorkとその引用文献;Payneら(1992)Plant Cell and Tissue Culture in Liquid Systems John Wiley &
Sons,Inc.New York,NY;Gamborg and Phillips(eds)(1995)Plant Cell,Tissue and Organ
Culture;Fundamental Methods Springer Lab Manual,Springer−Verlag(Berlin Heidelberg New York)及びAtlas and Parks(eds)The Handbook of Microbiological Media(1993)CRC
Press,Boca Raton,FLが挙げられる。
キット
キットも本発明の特徴である。例えば、少なくとも糖部分を含む糖蛋白質の製造用キットが提供され、キットはO−tRNAをコードするポリヌクレオチド配列、及び/又はO−tRNA、及び/又はO−RSをコードするポリヌクレオチド配列、及び/又はO−RSを含む。1態様では、キットは更に糖部分をもつ非天然アミノ酸、又は糖部分を結合するための部分をもつ非天然アミノ酸を含む。別の態様では、キットは更に糖蛋白質を製造するための説明書を含む。
以下、実施例により本発明を例証するが、これらの実施例により本発明を限定するものではない。当然のことながら、本明細書に記載する実施例及び態様は例証の目的に過ぎず、これらの記載に鑑みて種々の変形又は変更が当業者に想到され、このような変形又は変更も本願の精神及び範囲と特許請求の範囲に含むものとする。
ケト官能基を蛋白質に組込むためのシステム
本実施例はp−アセチル−L−フェニルアラニンを製造し、この非天然アミノ酸を蛋白質に組込むためのシステムについて記載する。
殆どの公知生物の遺伝コードは蛋白質生合成の構成単位として同一の20種の標準アミノ酸をコードする。稀なケースではセレノシステイン(例えばBock,A.ら,(1991)Mol.Microbiol.5:515−520参照)又はピロリジン(例えばSrinivasan,G.ら,(2002)Science 296:1459−1462;Hao,B.ら,(2002)Science 296:1462−1466参照
)が加わる。標準アミノ酸の側鎖は驚くほど少数の官能基−−窒素塩基、カルボン酸及びアミド、アルコール及びチオール基と、残余の単純なアルカン又は疎水性基からなる。遺伝的にコードされるアミノ酸に新規アミノ酸(例えば金属キレート性、蛍光、レドックス活性、光活性又はスピン標識側鎖をもつアミノ酸)を付加することができるならば、蛋白質の構造と機能及び恐らく生体自体の操作可能性が著しく増すと考えられる。最近、本発明者らは大腸菌の翻訳機構に新規成分を付加することにより、多数の非天然アミノ酸を高い忠実度で蛋白質に部位特異的にin vivo組込むことができたと報告した(例えばWang,L.ら(2001)Science 292:498−500;Wang,L.ら(2002)J.Am.Chem.Soc.124:1836−1837;及びZhang,Z.ら(2002)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.41:2840−2842参照)。本実施例はケト含有アミノ酸を生物(例えば大腸菌)の遺伝コードに付加するためにこのアプローチを拡張できることと、ケト基のユニークな反応性を使用して多様な物質で蛋白質を選択的にin vitro修飾できることを立証する。
ケト基は有機化学で遍在性であり、付加反応からアルドール縮合に至る多数の反応に関与している。更に、ケト基のユニークな反応性により、他のアミノ酸側鎖の存在下にヒドラジド及びヒドロキシルアミン誘導体で選択的に修飾することができる。例えばCornish,V.W.ら(1996)J.Am.Chem.Soc.118:8150−8151;Geoghegan,K.F.& Stroh,J.G.(1992)Bioconjug.Chem.3:138−146;及びMahal,L.K.ら(1997)Science 276:1125−1128参照。この重要な官能基は補因子(例えばBegley,T.P.ら(1997)in Top.Curr.Chem..eds.Leeper,F.J.& Vederas,J.C.(Springer−Verlag,New York),Vol.195,pp.93−142参照)や代謝産物(例えばDiaz,E.ら(2001)Microbiol.Mol.Biol.Rev.65:523−569参照)に存在し、更に蛋白質の翻訳後修飾基として(例えばOkeley,N.M.& van der Donk,W.A.(2000)Chem.Biol.7:R159−R171参照)存在するが、標準アミノ酸の側鎖には存在しない。この官能基を大腸菌でp−アセチル−L−フェニルアラニンとして遺伝的にコードするために、アンバーナンセンスコドン(のみ)に応答してこのアミノ酸を大腸菌で蛋白質に部位特異的に挿入することが可能なtRNA−シンテターゼを開発した。重要な点として、このtRNA−シンテターゼ対は20種の標準アミノ酸のその対応部分に直交性であり、即ち、直交シンテターゼ(のみ)が直交tRNA(のみ)を非天然アミノ酸でのみアミノアシル化し、得られるアシル化tRNAはアンバーコドンのみに応答して非天然アミノ酸を挿入する。
材料と方法
p−アセチル−L−フェニルアラニンの製造:Fmoc−4−アセチル−L−フェニルアラニンをRSP Amino Acid Analogues,Inc.(Worcester,MA)から購入した。この化合物(1.0g,2.3mmol)にピペリジン4mL(ジメチルホルムアミド(DMF)中20%)を加えて2時間室温で撹拌した。溶媒を蒸発させると、白色粉末が得られた。次に固形分を冷水(0.1%トリフルオロ酢酸(TFA))10mLに再懸濁し、上清を濾取した。分取逆相HPLC(Microsorb C18,Rainin Instrument Co.,Inc.,Woburn,MA)を使用して所望生成物を反応混合物から分離した(0.1%TFA添加HO中5→30%CHCNを使用して30分間)。溶出液(t=12分)を凍結乾燥すると、白色固体が得られた(0.45g,88%)。H NMR(400MHz,DO):δ7.85−7.28(m,4H),4.23(dd,1H,5.4Hz),3.2(m,2H),2.7(s,3H).MSエレクトロスプレーイオン化(ESI):C1113NO計算値[M+1]208.09,実測値(ESI):208.47。
p−アセチル−(±)−フェニルアラニンの合成(例えばCleland,G.H.(1969)J.Org.Chem.34:744−747参照):N−ブロモスクシンイミド(NBS)(18.5g,105mmol)を4−メチルアセトフェノン(13.4g,100mmol)の四塩化炭素(400mL)溶液に撹拌下に加えた後、2’,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(0.43g,2.5mmol)を加えた。次に反応混合物を4時間加熱還流した。反応(TLC:8:1/ヘキサン:EtOAc)の完了後、溶液を水(1×100mL)、1MHCl水溶液(3×100mL)、0.5%NaHCO水溶液(3×100mL)及びブライン(1×100mL)で洗浄した。有機層を合わせて無水MgSOで乾燥し、溶媒を蒸発させると、黄色固体が得られ、ヘキサンで再結晶させると、所望1−(4−ブロモエチル−フェニル)エタノンが固体として得られた(16.8g,78%)。ペンタンで洗浄したナトリウム片(2.3g,0.1mol)に無水エタノール(50ml)をアルゴン雰囲気下で15分間滴下し、溶液を更に15分間撹拌した。次に固体アセトアミドマロン酸ジエチル(2.7g,10mmol)を撹拌下に30分間加えた後に、無水エタノール中1−(4−ブロモエチル−フェニル)エタノン(2.1g,10mmol)を90分間滴下した。混合物を一晩加熱還流し、冷却した後、ジエチルエーテル(150mL)と水(100mL)を溶液に加えた。有機層を分離し、0.5%NaHCO(3×100mL)とブライン(1×100mL)で順次洗浄した。無水MgSOで乾燥後、溶媒を減圧除去すると、茶色ガム状固体が得られた。ヘキサン−ジクロロメタン(4:1)を残渣に加え、不溶性材料を濾別し、10:1ジクロロメタン−ベンゼンで十分に洗浄すると、2−アセチルアミノ−2−(4−アセチル−ベンジル)マロン酸ジエチルエステルが黄色固体として得られた(3.3g,95%粗収率)。この化合物にジオキサン中4M HClを加えて一晩撹拌した。次に混合物を蒸発乾涸し、水で再結晶させると、p−アセチル−(±)−フェニルアラニン(13.2g,64%総収率)が白色固体として得られた。HNMR(400MHz,DO):δ7.85−7.28(m,4H),4.27(dd,1H,5.4HZ),3.30(m,2H),2.68(s,3H)。13C NMR(400MHz,DO):δ195.8,174.3,145.9,133.1,128.9,127.8,60.2,38.3,26.5。MS(ESI):C1113NO計算値[M+1]208.09,実測値208.07。
突然変異体シンテターゼ進化:ポジティブ選択では、プラスミドpYC−J17を使用し、mutRNATyr CUA遺伝子と、Asp112にTAG終止コドンをもつクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子を発現させた。例えばWang,L.ら(2001)Science 292:498−500参照。pYC−J17を導入した大腸菌DH10Bコンピテント細胞にチロシルtRNAシンテターゼ(TyrRS)ライブラリーをコードするスーパーコイルDNAを形質転換した。1%グリセロールと0.3mMロイシンを含有する最少培地(GMML)プレートに17μg/mLテトラサイクリン、25μg/mLカナマイシン、60μg/mLクロラムフェニコール、及び1mM p−アセチル−L−フェニルアラニンを添加し、細胞をプレーティングした。37℃で40時間インキュベーション後にコロニーをプールし、プラスミドを単離した。ゲル電気泳動を使用して突然変異体シンテターゼをコードするプラスミド(pBKプラスミド)をpYC−J17から分離し、ネガティブ選択用pLWJ17B3を導入した大腸菌DH10Bコンピテント細胞に形質転換した。プラスミドpLWJ17B3はlppプロモーターとrrnCターミネーターの制御下にmutRNATyr CUAを発現し、アラビノースプロモーターの制御下にGln2、Asp44、及びGly65に3個のアンバーコドンをもつバルナーゼ遺伝子を発現する。0.2%アラビノース、50μg/mlカナマイシン、及び35μg/mlクロラムフェニコールを添加したLB(Luria−Bertani)プレートで形質転換細胞を増殖させた。8時間後に細胞をプレートから取出し、pBKプラスミドを更に数回の選択で精製した。2回目と3回目のポジティブ
選択では、クロラムフェニコールの濃度を夫々80及び100μg/mLに増加した。3回のポジティブ選択と2回のネガティブ選択を交互に行った後に、in vivo CATアッセイでp−アセチル−L−フェニルアラニンの不在下に9μg/mlクロラムフェニコールと、p−アセチル−L−フェニルアラニンの存在下に120μg/mlクロラムフェニコールのIC50値を示す11個の突然変異体TyrRSが同定された。例えばWang,L.& Schultz,P.G.(2001)Chem.Biol.8:883−890参照。各突然変異体TyrRSのコドン使用は異なるが、これらの突然変異体TyrRSの蛋白質配列は3個の独立クローンLW1、LW5及びLW6で収束した。
蛋白質発現及び精製:プラスミドpLEIZを使用してバクテリオファージT5プロモーターとtターミネーターの制御下に7位にアンバーコドンとCOOH末端His6タグをもつZドメイン遺伝子を発現させ、lppプロモーターとrrnCターミネーターの制御下にmutRNATyr CUA遺伝子を発現させた。クローンLW1から単離された突然変異体シンテターゼ遺伝子(LW1RS)は構成的大腸菌GlnRSプロモーター及びターミネーターの制御下にプラスミドpBKLW1RSでコードされた。1%グリセロールと0.3mMロイシンを含有する最少培地(GMML培地)に25μg/mLカナマイシン、34μg/mLクロラムフェニコール、及び1.0mM p−アセチル−(±)−フェニルアラニンを添加し、pLEIZとpBK−LW1RSで共形質転換した大腸菌DH10B細胞を増殖させた。細胞がOD600=0.5に達したら、イソプロピル−p−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)(1mM)を添加して蛋白質発現を誘導した。5時間後に細胞をペレット化し、製造業者のプロトコール(Qiagen,Valencia,CA)に従って変性条件下に蛋白質をNi2+アフィニティークロマトグラフィーにより精製した。次に蛋白質をPD−10カラム(Amersham Pharmacia,Piscataway,NJ)で脱塩し、水中溶出させた。蛋白質収率をブラッドフォードアッセイ(BCA kit,Biorad,Hercules,CA)により測定した。蛋白質アリコートをドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)と質量分析に使用した。
フルオレセインヒドラジドとビオチンヒドラジドによるin vitro蛋白質修飾:精製野生型(wt)及び突然変異体Zドメイン蛋白質をリン酸緩衝食塩水(100mMリン酸カリウム,pH6.5,0.5M塩化ナトリウム)で透析により交換した。フルオレセインヒドラジド1(Molecular Probe,Eugene,OR)又はビオチンヒドラジド2(Molecular Probe,Eugene,OR)をDMFに溶かし、シランコーティングエッペンドルフチューブに入れた各蛋白質0.07μmolに終濃度1mMまで添加した。最終容量0.5mlまでPBS緩衝液(pH6.5)を加えた。反応混合物を25℃に18時間維持した。PD−10カラム(Amersham Pharmacia,Piscataway,NJ)を使用して未反応色素又はビオチンを蛋白質から除去し、蛋白質をPBS緩衝液で溶出させた。標識効率を測定するために、溶出した蛋白質試料を次に逆相HPLCにより分析した(ZORBAX SB−C18,4.6mm×250mm,流速1.0mL/分,水性50mM酢酸トリエチルアミン緩衝液,pH7.0中10→40%CHCNを使用して70分間,Agilent,Palo Alto,CA)。無標識突然変異体Zドメインの保持時間(t)は39.3分であり、フルオレセインヒドラジド標識突然変異体Zドメインのtは40.7分であり、ビオチンヒドラジド標識突然変異体Zドメインのtは40.9分であった。
蛍光スペクトル測定:全蛍光発光スペクトルは励起490nm;夫々励起及び発光帯域4nm及び4nm;光電子増倍管電圧950V;及び走査速度1nm/秒でFluoroMax−2スペクトロフルオロメーター(Instruments S.A.,Inc.,Edison,NJ)を使用して記録した。各標識蛋白質10ngを使用した。報告するスペクトルは3回の走査の平均を表す。
結果と考察
ケトアミノ酸:ケト基はカルボニル基又は酸性Cα位への付加反応に関与することができるため、20種の標準アミノ酸には存在しないユニークな化学反応性を提供する。この基は多様な化学試薬による蛋白質の選択的修飾で天然アミノ酸システインに代用できる。システインの反応性チオール基は種々の生体物理学的プローブを蛋白質に結合するために広く使用されている。例えばCreighton,T.E.(1986)Methods
Enzymol.131:83−106;Altenbach,C.ら,(1990)Science 248:1088−1092;Brinkley,M.(1992)Bioconjug.Chem.3:2−13;Giuliano,K.A.ら(1995)Annu.Rev.Biophvs.Biomol.Struct.24:405−434;Mannuzzu,L.M.ら,(1996)Science 271:213−216;Griffin,B.A.ら(1998)Science 281:269−272;Llopis,J.ら,(2000)Methods Enzymol.327:546−564;及びGaietta,G.ら,(2002)Science 296:503−507参照。しかし、蛋白質には反応性基が2個以上存在することと、ジスルフィド結合を使用する場合に遊離チオールの存在下で生じる交換反応により、単一システイン残基の標識は困難なことが多い。そこで、直交反応性をもつ非蛋白質産生アミノ酸を利用できるならば、単一システインを選択的に標識できない場合や、2種の異なるラベルが必要な場合にも蛋白質の選択的修飾が可能になる。ケトは水溶液中で温和な条件下にヒドラジド、ヒドロキシルアミン、及びセミカルバジドと容易に反応し、夫々生理条件下で安定なヒドラゾン、オキシム、及びセミカルバゾン結合を形成する。例えばJencks,W.P.(1959)J.Am.Chem.Soc.81:475−481;and,Shao,J.& Tam,J.P.(1995)J.Am.Chem.Soc.117:3893−3899参照。
カルボニル基をペプチド及び小蛋白質に選択的に組込むために数種の方法が開発されている。まず、N末端セリン又はスレオニンを過ヨウ素酸塩で酸化することによりペプチドのN末端にアルデヒドが導入された。アルデヒド基はビオチン及び蛍光レポーター(例えば、Geoghegan,K.F.& Stroh,J.G.(1992)Bioconjug.Chem.3:138−146参照)又はヒドラゾン結合を介してCOOH末端ヒドラジドを含む蛋白質フラグメントとカップリングされた(例えば、Gaertner,H.F.ら,(1994)J.Biol.Chem.269:7224−7230参照)。しかし、この方法により導入されるカルボニル基はN末端に限られており、蛋白質は酸化に対して安定でなければならない。その後、固相ペプチド合成(SPPS)を使用してヒドラジド又はヒドロキシルアミンを含むペプチドセグメントを製造した後に分枝鎖アルデヒドコアマトリックスと反応させてペプチドデンドリマーを形成したり(例えばShao,J.& Tam,J.P.(1995)J.Am.Chem.Soc.117:3893−3899;及びRose,K.(1994)J.Am.Chem.Soc.116:30−33参照)、ケト含有ペプチドセグメントと反応させて合成蛋白質を形成する方法が実施されている(例えばCanne,L.E.ら,(1995)J.Am.Chem.Soc.117:2998−3007参照)。SPPSは蛋白質全体にケト基を導入することができるが、大型のペプチド又は蛋白質の合成に伴う固有の問題がある。このサイズの制約は場合によっては、合成ペプチドを組換え蛋白質のCOOH末端に化学的にライゲーションする発現蛋白質ライゲーション(EPL)により解決することができる。例えばMuir,T.W.ら(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.U S
A 95:6705−6710参照。ケトン基を含むペプチドがSPPSにより製造され、Abelson蛋白質チロシンキナーゼのSrcホモロジー3ドメインとライゲーションされている。例えばAyers,B.ら,(1999)Biopolymers 51:343−354参照。
ケト基を蛋白質に組込むためにin vitro生合成法も使用されている。例えば、Cornish,V.W.ら(1996)J.Am.Chem.Soc.118:8150−8151参照。この方法では、ケト基を含む非天然アミノ酸をアンバーサプレッサーtRNAに化学的にアシル化する。蛋白質生合成を補助することが可能なin vitro抽出液中でアシル化tRNAと突然変異体遺伝子を融合すると、UAGコドンに応答して非天然アミノ酸が選択的に組込まれる。この方法はサプレッサーtRNAを非天然アミノ酸で化学的にin vitroアミノアシル化する必要があり、アシル化tRNAが翻訳中に化学量論的試薬として消費され、再生できないため、蛋白質収率が低い。p−アセチル−Lフェニルアラニンに対して特異性をもつ直交tRNA−シンテターゼ対を開発することにより、例えばUAGコドンに応答して生きた大腸菌細胞でケトアミノ酸を蛋白質に直接組込むことができる。生物(例えば大腸菌)で発現させることができる限り、ターゲット蛋白質にサイズ制約はなく、多量の突然変異体蛋白質を発現させることができると考えられる。更に、標識試薬が細胞浸透性で非毒性である限り、ラベルを全細胞に選択的に導入できると考えられる。
p−アセチル−L−フェニルアラニンに対して特異性をもつ突然変異体シンテターゼの進化:Methanococcus jannaschiiチロシルtRNAシンテターゼ(TyrRS)と突然変異体チロシンアンバーサプレッサーtRNA(mutRNATyr CUA)を直交tRNA−シンテターゼ対の作製用出発点として使用した。従来、この対は大腸菌で直交性であることが示されている。例えば、Wang,L.& Schultz,P.G.(2001)Chem.Biol.8:883−890;及びWang,L.ら(2000)J.Am.Chem.Soc.122:5010−5011参照。p−アセチル−L−フェニルアラニンを負荷し、20種の標準アミノ酸を負荷しないようにTyrRSのアミノ酸特異性を変化させるために、M.jannaschii TyrRS突然変異体のライブラリーを作製し、スクリーニングした。相同Bacillus stearothermophilus TyrRSの結晶構造(例えば、Brick,P.ら(1989)J.Mol.Biol.208:83−98参照)を使用して結合チロシンのアリール環のパラ位から6.5Å以内にある残基を同定した。M.jannaschii TyrRSの活性部位の5個の対応する残基(Tyr32,Glu107,Asp158,Ile159及びLeul62)をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりランダムに突然変異させ、1.6×10のサイズのライブラリーを作製した(例えば、Wang,L.ら(2001)Science 292:498−500参照。このTyrRS突然変異体ライブラリーをまず大腸菌に導入したプラスミドpYC−J17(例えば、Wang,L.ら(2001)Science 292:498−500参照)上でコードされるクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子の非必須位置(Asp112)におけるアンバー終止コドンの抑圧に基づき、1mM p−アセチル−L−フェニルアラニンの存在下にポジティブ選択にかけた。クロラムフェニコール中で生存する細胞はmutRNATyr CUAを標準アミノ酸又はp−アセチル−L−フェニルアラニンでアミノアシル化する突然変異体シンテターゼをコードするはずである。そこで、突然変異体シンテターゼをコードするDNAを単離し、(プラスミドpLWJ17B3上でコードされる)許容部位に3個のアンバーコドンを含む毒性蛋白質バルナーゼ遺伝子を発現するネガティブ選択株に形質転換した。mutRNATyr CUAに天然アミノ酸を負荷する突然変異体シンテターゼをコードする細胞はバルナーゼを産生し、死滅する。ネガティブ選択では増殖培地にp−アセチル−L−フェニルアラニンを添加しなかったので、生存細胞は非天然アミノ酸に対して特異性をもつシンテターゼをコードするはずである。クロラムフェニコール濃度を増加しながらポジティブ選択3回とネガティブ選択2回を交互に行った後に、クロラムフェニコール中での生存がp−アセチル−L−フェニルアラニンの添加に依存する多数のクローンが出現した。CAT遺伝子内のAsp112TAGコドンの抑圧に基づくin vivoアッセイを使用してこれらのTyrRSを
特性決定した。例えばWang,L.& Schultz,P.G.(2001)Chem.Biol.8:883−890参照。11個のTyrRS突然変異体が同定された。選択したシンテターゼとmutRNATyr CUAを発現する細胞は1%グリセロールと0.3mMロイシンを含有する最少培地プレート(GMMLプレート)でp−アセチル−L−フェニルアラニンの不在下では9μg/mlクロラムフェニコールで生存し、この非天然アミノ酸の存在下では、細胞はGMMLプレートで120μg/mlクロラムフェニコール中で生存した。この結果は選択した突然変異体シンテターゼが天然アミノ酸よりもp−アセチル−L−フェニルアラニンに対して高い活性をもつことを示唆している。これらの突然変異体のDNAを配列決定した処、アミノ酸のコドン使用は異なるが、蛋白質レベルでは3個の独立した突然変異体(LW1,LW5,及びLW6)で収束することが判明した。突然変異体シンテターゼの活性部位突然変異を表1に示す。B.stearothermophilusに由来する相同TyrRSの結晶構造によると、M.jannaschii Tyr32及びAsp158の保存側鎖は基質チロシンのヒドロキシル基と水素結合を形成すると思われる。突然変異体シンテターゼではTyr32はLeu又はAlaに突然変異し、Asp158はGly158に突然変異している。これらの突然変異はチロシンの結合に不利であると同時にp−アセチル−L−フェニルアラニンのメチル基を受用する余地ができると思われる。突然変異体のX線結晶構造を決定することにより、これらの突然変異体の厳密な役割が解明されると思われる。
p−アセチル−L−フェニルアラニンを組込んだ突然変異体蛋白質の特性決定:進化型シンテターゼとmutRNATyr CUAがp−アセチル−L−フェニルアラニンを蛋白質に選択的に組込む能力を試験するために、COOH末端His6タグを付けたブドウ球菌プロテインA(例えば、Nilsson,B.ら(1987)Protein Eng.1:107−113参照)のZドメインの遺伝子の許容部位(Lys7)をアンバー終止コドンに置換した。Zドメインは分子量約7.9kDであるので、その質量はイオンサイクロトロン共鳴(ICR)質量分析を使用して非常に高確度で測定することができる。mutRNATyr CUA、LW1RS及びZドメイン遺伝子(Lys7TAG)で形質転換した細胞を1mM p−アセチル−(±)−フェニルアラニンの存在下に増殖させた。非天然アミノ酸の添加は細胞の増殖速度に影響しなかった。突然変異体蛋白質をNi2+アフィニティークロマトグラフィーにより精製すると、総単離収量は最少培地中3.6mg/Lであった。比較のために、突然変異体TyrRSの代わりに野生型(wt)TyrRSを使用した処、Zドメインの収量は最少培地中9.2mg/Lであった。p−アセチル−(±)−フェニルアラニン、mutRNATyr CUA又はLW1RSの不在下ではZドメインは得られず、この部位への非天然アミノ酸組込みの忠実度が非常に高いことが判明した。他の蛋白質(例えばCdc42)へのp−アセチル−Lフェニルアラニンの組込みにも成功した。
mutRNATyr CUA/WT TyrRSにより発現されたwt Zドメイン蛋白質と、mutRNATyr CUA/LW1RSにより発現された突然変異体Zドメイン蛋白質の両者をエレクトロスプレーイオン化フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT−ICR MS)により分析した。wt Zドメイン蛋白質では、無傷の蛋白質と、最初のメチオニンをもたない蛋白質と、最初のメチオニンをもたない蛋白質のアセチル化形態に対応する質量の3個のピークが観察された(N末端トリプシン消化ペプチドフ
ラグメントのタンデム質量分析により確認)。突然変異体Zドメイン蛋白質では、無傷の蛋白質の実験モノアイソトピック質量は7949.893Daであり、理論質量7949.874Daから2.2ppm以内であった。他の2個のピークは夫々最初のメチオニンをもたない蛋白質(MExperimental=7818.838Da,MTheoretical=7818.833Da)とそのアセチル化形態(MExperimental=7860.843Da,MTheoretical=7860.844Da)に対応する。アンバーコドン位置に他のアミノ酸をもつ突然変異体蛋白質に対応するピークはスペクトルに観察されなかった。無傷の蛋白質質量スペクトルに観察された1500を上回るシグナル対ノイズ比はp−アセチル−L−フェニルアラニンの組込みの忠実度が99.8%を上回ることを意味する。トリプシン消化物の液体クロマトマグラフィータンデム質量分析を実施し、NH末端ペプチドの配列を確認した。NH末端トリプシン消化ペプチドMTSVDNY*INKの二重負荷分子イオンに対応する606.23Daの前駆体イオンを単離し、イオントラップ質量分析計(ITMS)で断片化した。フラグメントイオン質量は明確に割当られ、p−アセチル−L−フェニルアラニンの部位特異的組込みが確認された。これらの結果が明白に示すように、進化型シンテターゼはmutRNATyr CUAと協同して天然アミノ酸ではなくp−アセチル−L−フェニルアラニンを他の位置ではなくアンバーコドンによりコードされる位置に組込む。
フルオレセインヒドラジドによる部位特異的蛋白質修飾:次に、p−アセチル−L−フェニルアラニンのケト基がin vitro部位特異的蛋白質修飾の化学的ハンドルとして機能できるか否かを調べた。精製突然変異体p−アセチル−L−フェニルアラニンZドメイン蛋白質(突然変異体Zドメイン)とwt Zドメイン蛋白質をリン酸緩衝液中1mMフルオレセインヒドラジド(スキーム1で25℃にて18時間処理した。反応後に蛋白質をサイズ排除クロマトグラフィーにより過剰のフルオレセインヒドラジドから分離し、ドデシル硫酸−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)で分析した。まずゲルを蛍光イメージングシステムでイメージングした後、銀染色した。突然変異体Zドメインのバンドは蛍光シグナルを示すが、wt Zドメインから蛍光を検出することはできない。これらの2種の蛋白質のアリコートを使用して490nm励起で蛍光スペクトルを測定した。p−アセチル−L−フェニルアラニンを含むZドメイン蛋白質のみがフルオレセインに類似する蛍光スペクトルを示す。wt Zドメインに蛍光シグナルは検出されないことから、ヒドラジドとケトンの間のみに標識反応が生じ、wt蛋白質に官能基は存在しないことが分かった。標識産物を四重極型飛行時間質量分析(QTOF MS)で分析した。8425.160Da(MTheoretical=8424.958Da)の実験モノアイソトピック質量が得られ、フルオレセインヒドラジドは突然変異体Zドメイン蛋白質とモル比1:1で反応したことが確認された。標識の程度を調べるために、反応混合物を高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により分離した。標識Zドメインのピーク面積と未標識Zドメインのピーク面積の比は90±5%であった。
ビオチンヒドラジドによる部位特異的蛋白質修飾:このアプローチの汎用性を立証するために、Zドメインを更にビオチンヒドラジド誘導体(構造C)で標識した。精製突然変異体及びwt Zドメインをリン酸緩衝液中1mMビオチンヒドラジドで25℃にて18
時間処理した。リン酸緩衝液で透析して過剰のビオチンヒドラジドを除去した後、蛋白質をSDS−PAGEにかけた。分離した蛋白質をニトロセルロース膜に転写し、ビオチン特異的アビジン−HRPコンジュゲートでプローブした。予想通り、p−アセチル−L−フェニルアラニンを含む突然変異体Zドメインのみが検出され、ビオチンヒドラジドで標識されたことが判明した。wt Zドメインにシグナルは観察されなかった。フルオレセイン標識実験で記載したようにHPLC分析により標識効率を測定した処、80±10%であった。標識蛋白質はQTOF MS(MExperimental=8416.236,MTheoretical=8416.146Da)によりビオチンヒドラジド1分子と突然変異体Zドメイン1分子から形成された産物であることが確認された。これらの実験はin vitro蛋白質修飾に対するケトンハンドルの優れた特異性を立証するものである。
要するに、新規化学官能基であるケト基を蛋白質に部位特異的にin vivo組込んだ。この官能基はケト基とヒドラジド誘導体の特異的化学反応により例えばフルオレセインとビオチンで選択的且つ効率的にin vitro標識することができる。このアプローチを使用すると、蛋白質構造及び機能のプローブとして利用するため、触媒もしくは治療特性を強化した蛋白質を作製するため、又は蛋白質を使用するバイオアッセイを実施するために、多様な他のヒドラジド又はヒドロキシルアミン誘導体(糖類、スピンラベル、金属キレート剤、架橋剤、ポリエーテル、脂肪酸及び毒素など)で蛋白質を選択的に標識することができる。ユニークな化学的ハンドルを生きた細胞で蛋白質に直接部位特異的に組込むことができるならば、分子分解時の蛋白質局在、蛋白質移動及び蛋白質のコンホメーション変化のin vivoイメージングのために小分子フルオロフォアで蛋白質のin vivo修飾が可能になる。この技術により大腸菌中でp−アセチル−L−フェニルアラニンを含む蛋白質をフルオロフォアでin vivo標識することもできる。
参考資料として本明細書に組込む2003年10月15日付け対応出願、発明の名称「ケトアミノ酸の部位特異的蛋白質組込み(SITE SPECIFIC INCORPORATION OF KETOAMINO ACIDS INTO PROTEINS)」(代理人整理番号54A−000170PCT)も参照されたい。
メタ−チロシン類似体のin vivo組込み
mtRNATyr CUA(WO2002/085923の実施例1に記載)をメタ−チロシン類似体でアミノアシル化するために直交TyrRSを作製した。
突然変異体TyrRSライブラリープラスミドの作製:WO2002/085923の実施例1に記載されている方法にほぼ従い、メタ置換チロシン誘導体に特異的な突然変異体M.jannaschii TryRSをコードするプラスミドライブラリーを構築した。要約すると、上記実施例1に記載したようにNNKコドンスキームを使用してBacillus stearothermophilus TyrRSの結晶構造中の結合チロシンのアリール環のメタ位から6.9Å以内にあるM.jannaschii TyrRSの活性部位の6個の残基(Tyr32、Ala67、His70、Gln155、Asp158、Ala167)をDNAレベルで全20種のアミノ酸に突然変異させた。構築したプラスミドライブラリーpBK−libは約1×10個の独立クローンを含んでいた。
m−アセチルフェニルアラニンの組込み用直交tRNA−シンテターゼ対の進化:ポジティブ選択3回とネガティブ選択2回を行った後に、クロラムフェニコール中での生存が非天然アミノ酸の添加に依存する5個の候補クローン(WO2002/085923の配列番号17〜21及びWO2002/085923の配列番号49〜53)が出現した。m−アセチルフェニルアラニンの不在下では、3種の突然変異体TyrRSプラスミドのうちの1種を導入した細胞のクロラムフェニコール耐性のIC50は20μg/mlである。m−アセチルフェニルアラニンの存在下では、同一細胞のクロラムフェニコール耐性のIC50は100μg/mlである。これらの2つの数値に大差があるのは選択したシンテターゼが細胞内で天然アミノ酸よりもm−アセチルフェニルアラニンを特異的に組込むことができるためである。m−メトキシフェニルアラニンのデータも同様であり、5個のクローンを単離した(WO2002/085923の配列番号22〜26とWO2002/085923の配列番号54〜58)。
非天然アミノ酸を組込んだDHFRの蛋白質発現:上記で選択したm−メトキシフェニルアラニン及びm−アセチルフェニルアラニンシンテターゼを使用してWO2002/085923の実施例1に記載したようにアンバーコドンに応答してDHFRに該当非天然アミノ酸を組込ませた。陰性対照として、tRNA/シンテターゼの直交対とDHFRをコードするアンバー突然変異体ベクターの両者を導入した細胞を非天然アミノ酸の不在下に増殖させた。蛋白質発現の結果をWO2002/085923の図10に示す。これらの結果から、tRNA/シンテターゼの直交対は非天然m−メトキシフェニルアラニン及びm−アセチルフェニルアラニンを特異的に組込むことが明白に立証された。DHFR蛋白質の発現収率はどちらの場合も約0.5mg/L培養液であった。
1態様では、化合物(例えばヒドラジド誘導体)を使用して蛋白質を少なくとも1種の非天然アミノ酸(例えばメタ−チロシン類似体)でin vivo標識することができる。
糖蛋白質ミメティクスの合成
ユニークな反応性をもつ非蛋白産生官能基を利用できるならば、蛋白質の選択的化学修飾は非常に容易になる。ケト基はこのような化学的ハンドルであり、天然アミノ酸の側鎖には存在せず、標準アミノ酸の存在下に温和な条件下でヒドラジド及びヒドロキシルアミン誘導体と容易且つ選択的に反応する。例えばCornish,V.Wら,(1996)J.Am.Chem.Soc.118:8150−8151とその引用文献参照。ケト基は固相ペプチド合成によりペプチドに挿入されており、求核性糖誘導体とカップリングしてネオ糖ペプチドが構築されている。例えばRodriguez,E.C.ら,(1998)J.Org.Chem.63:7134−7135参照。本発明者らは非天然アミノ酸を生きた細胞で蛋白質に直接部位特異的に組込むことが可能な一般方法を最近開発した(例えば参考資料として本明細書に組込むWO2002/085923と2003年10月15日付け対応出願、発明の名称「ケトアミノ酸の部位特異的蛋白質組込み(SITE
SPECIFIC INCORPORATION OF KETO AMINO ACIDS INTO PROTEINS)」、代理人整理番号54−000170PCT参照)。例えばWang,L.ら,(2001)Science 292:498−500も参照。アンバーナンセンスコドンに応答して99.8%を上回る翻訳忠実度でケト含有アミノ酸p−アセチル−L−フェニルアラニンの組込みに成功した。例えばWang,L.ら,(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100:56−61参照。本実施例は遺伝的にコードされるケト官能基とアミノオキシ糖誘導体を使用する均質糖蛋白質ミメティクスの製造について記載する。
糖蛋白質ミメティクスを作製するために2種類の経路を検討した(図1参照)。第1のアプローチでは、まずアミノオキシ基で誘導体化した糖をケト基とカップリングし、付加糖をグリコシルトランスフェラーゼで酵素結合する。より収束的な第2の経路では、規定構造をもつグリカンをアミノオキシ誘導体として製造し、1段階で蛋白質に直接カップリングする。ブドウ球菌プロテインAのZドメインは比較的小寸法(分子量7.9kD)であるため、非常に高確度で質量分析特性決定し易いのでこれをモデル蛋白質として使用した(例えばNilsson,B.ら,(1987).Protein Eng.1:107−113参照)。
対応する遺伝子の7番目のコドンをアンバー終止コドンTAGに突然変異させ、His6タグをC末端に付けて蛋白質精製し易くした。従来報告されているプロトコールによりp−アセチル−L−フェニルアラニンをアンバー位置に組込み、突然変異体Zドメイン蛋白質を得た。例えばWang,L.ら,(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100:56−61参照。ニッケルアフィニティークロマトグラフィー後に蛋白質約3.6mg/Lが得られた。次に、公開方法に従って図1のN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)1のβ結合アミノオキシ類似体を合成した。例えばCao,S.ら,(1995)Tetrahedron 51:6679−6686参照。突然変異体Zドメイン蛋白質(10mg/mL)とアミノオキシ糖1(21mM)を水性100mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中で混合し、37℃で7〜26時間インキュベートした。280nmの吸光度をモニターすることにより反応混合物を逆相高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した(図2参照)。主ピークは2個しか観察されず、対応する溶出液をマトリックス支援レーザー脱離/イオン化−フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(MALDI−FTICR MS)により特性決定した(図3参照)。得られたモノアイソトピック質量から、一方のピーク(t=44.8分)は未反応突然変異体Zドメイン(Mtheoretical=7818.833Da,Mexperimental=7818.836Da)に対応し、他方のピーク(t=43.2分)はアミノオキシ糖1で誘導体化された突然変異体Zドメイン(Mtheoretical=8036.924Da,Mtheoretical=8036.914Da)に対応することが判明した。大腸菌で発現させると、Zドメイン蛋白質は無傷の蛋白質と、最初のメチオニンをもたない蛋白質と、最初のメチオニンをもたない蛋白質のアセチル化形態の3形態をもつ。無傷の蛋白質は逆相HPLCを使用して他の2形態から分離することができる。質量分析を簡単にするために、本実施例では最初のメチオニンをもたないZドメインを含む精製フラクションとそのアセチル化形態を使用した。図2でIII及びIVのスペクトルに示すように、全質量スペクトルでこれらの2形態に対応する2個のピークを観察することができる。構造については図1参照。対照として、チロシンをZドメインの7位に組込んだ場合には、糖誘導体化蛋白質は観察されない。この事実と、糖修飾Zドメインに観察される高確度質量(誤差<1.2ppm)から、アミノオキシ糖1はケト基に選択的に結合していることが確認された。カップリング効率は時間と共に増加し(出発材料と生成物に対応するHPLCピークの面積から判断)、出発材料から生成物への変換率は7時間後に42%であり、26時間後には95%を上回った(図2参照)。
次に、第1の糖に第2の糖を酵素カップリングできるか否かを調べた。精製付加物II(5mg/mL)(構造については図1参照)を150mM HEPES(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸)緩衝液(pH7.4)中でUDP−ガラクトース(UDP−Gal)(16mM)とβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(0.4単位/mL)の存在下に48時間周囲温度でインキュベートした。β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼは糖ヌクレオチドからガラクトースをGlcNAc部分の4位に転移させ、Galβ1,4GlcNAcを形成することが知られている。例えばSchanbacher,F.L.,and Ebner,K.E.(1970)J.Biol.Chem.245:5057−5061参照。HPLCによる分離後
に新規ピーク(t=42.5分)が同定された。MALDI−FTICR MSにより測定した溶出液のモノアイソトピック質量(Mtheoretical=8198.977,Mexperimental=8198.969)から、ガラクトースはGlcNAcとカップリングし、付加物IIIとなることが確認された(図3参照)。構造については図1参照。HPLC分析により測定したカップリング効率は約60%であり、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼについて従来報告されている値に近似した。例えばWitte,K.ら,(1997)J.Am.Chem.Soc.119:2114−2118参照。この結果は第1の糖と蛋白質の非天然結合がグリコシルトランスフェラーゼ反応にさほど影響を与えないことを示している。この二糖標識蛋白質を更にCMP−シアル酸及びα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ(例えばKitagawa,H.,and Paulson,J.C.(1994)J.Biol.Chem.269:1394−1401参照)と反応させると、シアル酸がガラクトースに付加され、IVとなる(t=41.7分)ことがMALDI−FTICR MSにより確認された(Mtheoretical=8490.072,Mexperimental=8490.014)(図3参照)。IIIからIVへの変換のカップリング効率はHPLC分析によると65%であった。構造については図1参照。
収束経路を使用して蛋白質ミメティクスIII及びIVも作製した。図1参照。β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(0.75単位/mL)とグリコシル供与体UDP−ガラクトースを使用して150mM HEPES緩衝液(pH7.4)中総収率70%でアミノオキシGlcNAc(0.05M)は2に変換された。アミノプロピルシリカゲルHPLCによる精製後、α−2,3−シアリルトランスフェラーゼ(0.22単位/mL)とCMP−シアル酸(0.03M)を使用してシアル酸を2(0.03M)に加えると、収率約80%で上記と同一緩衝液中に3が得られた。100mM水性酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中でp−アセチル−L−フェニルアラニンを含むZドメイン蛋白質(5mg/mL)に精製アミノオキシ類似体2及び3(夫々13及び7.2mM)を周囲温度でカップリングすると、夫々糖蛋白質ミメティクスIII及びIVが得られた。図1参照。得られたIII及びIVは第1の順次経路により作製した対応する付加物と一致することがHPLC及びMALDI−FTICR MS分析により確認された。同一反応条件下で26時間の2とI及び3とIのカップリング効率は夫々約76%及び60%であった。収率は1とIのカップリング(95%)よりも低かったが、これはグリカンが複雑になるにつれて立体効果が増すためであると考えられる。
要するに、規定糖置換基を含む均質糖蛋白質ミメティクスを合成するための一般方法を実証した。
実験材料及び方法
概説:UDP−Gal、CMP−NeuAc、β−1、4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(β−1,4−GalT)及びα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ(α−2,3−SialT)はCalbiochemから購入した。特に指定しない限り、全薬品はAldrich、Acros又はSigmaから入手し、それ以上精製せずに使用した。ニンヒドリン又はモリブデン酸セリウム発色剤を展開試薬として使用して薄層クロマトグラフィー(TLC)により反応をモニターした。全非水性反応はオーブン乾燥ガラス容器でAr雰囲気下に実施した。全非水性溶媒は使用前に蒸留させた。NMRスペクトルはBruker AMX−400、AMX−500又はAMX−600MHzスペクトロメーターで記録し、残留溶媒ピーク(CDClHδ7.24,13Cδ77.0;CDOD:Hδ3.30,13Cδ49.0;DO:Hδ4.76)と照合した。
図1の化合物2:新たに調製したMnCl溶液(2mmol)を添加したHEPES緩衝液(150mM,pH7.4)350μLに図1の化合物1(5mg,0.021m
mol)とUDP−Gal(21mg,0.032mmol)を溶かした。β−1,4−GalT(0.3U,0.1UμL−1)とアルカリホスファターゼ(0.5U,1UμL−1)を加え、反応混合物を周囲温度で2日間温和に振盪した。反応混合物を遠心し、流速1mL min−1で90分間100:0 A:B→50:50 A:B(A=MeCN及びB=HO)のグラジエント溶離を利用してアミノプロピルシリカゲルHPLCにより上清を精製した。所望生成物の滞留時間は53分であった。カラムフラクションを凍結乾燥すると、図1の純粋な化合物2(6mg,70%)が白色粉末として得られた;H NMR(DO,600MHz)δ4.58(d,J=6.12,1H),4.42(d,J=7.44,1H),3.96(d,J=11.88 1H),3.87(m,1H),3.78(dd,J=4.83,12.3,1H),3.72−3.69(m,6H),3.62(dd,J=3.06,10.08,1H),3.56(m,1H),3.50(m,1H),1.98(s,3H)。13C NMR(DO,150MHz)δ175.18,103.98,103.31,78.63,75.78,75.13,72.92,72.82,71.39,68.99,61.46,60.43,53.80,22.55。HR−FTMS(pos)C142611の計算値[M+Na]=421.1429,実測値421.1448。
図1の化合物3:新たに調製したMnCl溶液(5mmol)を添加したHEPES緩衝液(150mM,pH7.4)450μLに図1の化合物2(5.3mg,0.013mmol)とCMP−NeuAc(10mg,0.016mmol)を溶かした。α−2,3−SialT(22mU,3.7mUμL−1)とアルカリホスファターゼ(50mU,50mUμL−1)を加え、反応混合物を周囲温度で2日間温和に振盪した。反応混合物を遠心し、流速1mL min−1で30分間100:0 A:B→0:100 A:B(A=MeCN及びB=HO)のグラジエント溶離を利用してアミノプロピルシリカゲルHPLCにより上清を精製した。対応フラクション(27分)を集め、凍結乾燥すると、白色粉末が得られた(7mg,76%)。H NMR(DO,600MHz)δ4.55(d,J=8.34,1H),4.48(d,J=7.86,1H),4.04(dd,J=3.06,9.60,1H),3.58−3.96(m,17H),3.51(m,1H),2.67(dd,J=4.80,12.72,1H),1.98(s,3H),1.96(s,3H),1.75(t,J=12.30,1H)。ES−MS(neg)C254319の計算値[M−H]=688,実測値688。
アミノオキシ糖誘導体を突然変異体Zドメイン蛋白質にカップリングするための一般手順:典型的反応では、アミノオキシ糖誘導体(500μg)と突然変異体Zドメイン蛋白質〜1mgを100mM NaOAc緩衝液(pH5.5)に溶かした。水を総容量100μLまで加え、反応混合物を37℃で26時間振盪した。次に、混合物を遠心し、流速1mL min−1で70分間90:10 A:B→60:40 A:B(A=HO中0.1%TFA及びB=MeCN中0.1%TFA)のグラジエント溶離を利用してAgilent ZORBAX SB−C18 4.6mm×250mmカラムで逆相HPLCにより上清を精製した。カラムフラクションをTrisCl緩衝液(pH7.0)で中和し、サイズ排除カラムで脱塩した。水で溶出後、溶出液を凍結乾燥すると、図1の純粋なII、III、及びIVが白色粉末として夫々収率96%、76%及び60%で得られた。
順次経路を使用した(図1の)糖蛋白質ミメティクスIII及びIVの製造:図1のIIIを製造するために、新たに調製したMnCl溶液(0.5mmol)を添加した150mM HEPES緩衝液(pH7.4)90μLに図1のII(〜0.5mg)とUDP−Gal(1mg)を溶かした。β−1,4−GalT(40mU,40mUμL−1)とアルカリホスファターゼ(50mU,50mUμL−1)を加え、反応混合物を周囲温度で2日間温和に振盪した。反応混合物を遠心し、上清を逆相HPLCにより精製し
た。図1のIVを製造するために、新たに調製したMnCl溶液(0.5mmol)を添加した150mM HEPES緩衝液(pH7.4)90μLに図1のIII(〜0.5mg)とCMP−NeuAc(0.5mg)を溶かした。α−2,3−SialT(10mU,3.7mUμL−1)とアルカリホスファターゼ(50mU,50mUμL−1)を加え、反応混合物を周囲温度で2日間温和に振盪した。反応混合物を遠心し、上清を逆相HPLCにより精製した。
MALDI−FTICR MS:MALDI−FTICR MS実験にはAPEX IIコンソールと9.4Tマグネットを備えるBruker Daltonics(Billerica,MA)製ホームビルド機器を使用した。TFAを含有する通常のMALDI試料調製物を使用した場合に糖部分は崩壊する傾向がある。本発明者らは低感受性で低温のマトリックスを使用した。マトリックスは3−ヒドロキシピコリン酸(20mg mL−1)とクエン酸二アンモニウム(1mg mol−1)の混合物である。イオン源に衝突冷却を提供することにより準安定分解を減らすFTICRの特殊中圧MALDI源により糖蛋白質の分解を更に最小限にした。
糖蛋白質合成の別のストラテジー
本発明の1態様では、グリコシル化アミノ酸の翻訳時組込みにより生物(例えば大腸菌)で均質糖蛋白質を合成するための別のストラテジーが開発された。例えば、規定位置にβ−GlcNAc−セリンを含むミオグロビンを大腸菌で良好な収率と高い忠実度で発現させることができる。β−GlcNAc部分は糖質結合蛋白質により認識することができ、又はガラクトシルトランスフェラーゼで後期修飾することもできる。このアプローチは他の翻訳後修飾(例えば蛋白質リン酸化、アセチル化、メチル化等)にも適用可能であると思われる。
グリコシル化は真核生物で最も一般的な蛋白質の翻訳後修飾の1種であり、フォールディングや分泌から生体分子認識及び血清半減期に至る広範な蛋白質機能に影響を与える。例えばR.A.Dwek,(1996)Chem.Rev.96:683参照。グリコシル化の効果の解明はかなり進んだが、オリゴ糖鎖の具体的な役割とその構造と機能の関係についてはまだ解明され始めたばかりである。例えば、C.R.Bertozzi,& L.L.Kiessling,(2001)Science 291:2357参照。主な問題は糖蛋白質が一般に糖形態の混合物として生産されるため、天然源から固有糖形態を単離しにくい点である。規定構造の糖形態を合成するために種々の方法が開発されているが、生産される糖蛋白質のサイズ、量、及び/又は品質に重大な欠点がある。例えばP.Sears,& C.H.Wong,(2001)Science 291:2344;M.Wackerら,(2002)Science 298:1790;B.G.Davis,(2002)Chem.Rev.102:579;及びH.C.Hang,& C.R.Bertozzi,(2001)Acc.Chem.Res.34:727参照。本実施例では、セレクターコドン(例えばアンバーコドン、TAG)に応答してグリコシル化アミノ酸を遺伝的にコードする直交シンテターゼ−tRNA対の開発を含め、ユニークな糖形態を大腸菌で生産するために使用されるストラテジーと成分を記載する。上記及び他の糖修飾アミノ酸の直接遺伝的蛋白質組込みにより、糖蛋白質構造及び機能の分析及び操作能を著しく拡大することができる。
新規化学的及び物理的性質をもつアミノ酸を大腸菌(例えばL.Wangら,(2001)Science 292:498;L.Wangら,(2002)J.Am.Chem.Soc.124:1836;Z.Zhangら,(2002)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.41:2840;J.W.Chinら,(2002)J.Am.Chem.Soc.124:9026;J.W.Chinら,(2002)Proc
.Natl.Acad.Sci.U S A 99:11020;S.W.Santoroら,(2002)Nat.Biotechnol.20:1044;L.Wangら,(2003),Proc.Natl.Acad.Sci.U S A 100:56;及びZ.Zhangら,(2003)Biochemistry 42:6735参照)と酵母(例えばJ.W.Chinら,Science,(2003年印刷中)参照)の遺伝コードに体系的に付加することを初めて可能にした数種の方法が従来開発されている。このアプローチでは、内在tRNA及びシンテターゼと交差反応しないアンバーサプレッサーM.jannaschii TyrRS−mutRNATyr CUA対を開発し、所望非天然アミノ酸のみを負荷するように進化させている。この方法はグリコシル化、リン酸化、又はメチル化アミノ酸を蛋白質に直接組込むこともでき(例えばT.Arslanら,(1997)J.Am.Chem.Soc.119:10877参照)、蛋白質の選択的酵素又は化学的翻訳後修飾の必要がなくなる。β−O−GlcNAc−L−セリン(化合物A,GlcNAc:N−アセチルグルコサミン)を大腸菌で蛋白質に部位特異的に組込む試みがなされた。O−GlcNAc修飾はほぼ全真核細胞で遍在性であり、細胞シグナリング、蛋白質トラフィキング及び細胞増殖の調節に関与しており、より複雑な糖質を生産するための基質でもある。例えばL.Wellsら,(2001)Science 291:2376;及びN.Lamarre−Vincent,& L.Hsieh−Wilson,(2003)J.Am.Chem.Soc.125:6612参照。しかし、遊離ヒドロキシル基をもつ糖誘導体は真核細胞の膜を通過しにくいので、基質化合物Aは細胞浸透性でないと思われる。例えばA.K.Sarkarら,(1995),Proc.Natl.Acad.Sci.U S A 92:3323参照。他方、糖のヒドロキシル基のアセチル化が細胞膜通過を助長し、ヒドロキシルアセチル基を一旦細胞内に導入してから非特異的サイトゾルエステラーゼにより脱アセチル化できることが示されている。例えばN.Lamarre−Vincent,& L.Hsieh−Wilson,(2003)J.Am.Chem.Soc.125:6612参照。従って、これらの実験では前駆体N−Fmoc−トリ−アセチル−β−GlcNAc−セリンが市販されているアセチル化誘導体トリ−アセチル−β−GlcNAc−セリン(化合物B)を使用した。化合物は下式で示される。
一連のポジフィブ及びネガティブ選択を使用して活性部位突然変異体のライブラリーから大腸菌で直交mutRNATyr CUAにβ−GlcNAc−セリンを特異的に負荷するTyrRSを単離した。相同Bacillus stearothermophilus TyrRSのX線構造に基づき、活性部位残基をランダムに配置した2個のライブラリー、即ちプラスミドpBK−lib−mによりコードされ、残基Tyr32、Ala67、His70、Gln155、Asp158、及びAla167をランダムに配置した第1のライブラリーと、プラスミドpBK−libによりコードされ、残基Tyr32、Glu107、Asp158、Ile159、及びLeu162をランダムに配置した第2のライブラリーを構築した。これらの残基はいずれもフェニル環から6.9Å以内にあり、基質結合ポケットを形成する主残基である。ライブラリー合計で独立クローン約2.6×10とした。このライブラリーを次にポジティブ選択にかけ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子のAsp112に導入したアンバーコドンの抑圧に基づき、グリコシル化アミノ酸を組込むことが可能なTyrRS突然変異体を選択した。高濃度のクロラムフェニコールの存在下で生存する細胞はAsp112TAGアンバーコドンに応答してβ−GlcNAc−セリン又は内在アミノ酸を挿入する能力をもつ突然変異体TyrRSを発現すると考えられる。次に、毒性バルナーゼ遺伝子の3個
のアンバーコドンの抑圧に基づくネガティブ選択を使用し、選択したクローンから内在アミノ酸を組込む突然変異体TyrRSを排除した。5回のポジティブ選択と4回のネガティブ選択後に高濃度のクロラムフェニコールの存在下で生存する3個のクローンが出現した。これらのクローンとその突然変異は以下の通りである。S1−90(Glu107→Pro107,Asp158→Cys158,Ile159→Tyr159,Leu162→Arg162)、S4−5(Tyr32→Gly32,Glu107−Gly107,Asp158→Cys158,Leu162→His162)、S1−5(Glu107→Cys107,Asp158→His158,Ile159→Asp159,Leu162→Met162)。化合物Bの代わりに1mMセリン、α−トリ−アセチル−GalNAc−スレオニン、α/β−トリ−アセチル−GalNAc−セリン又はβ−テトラ−アセチル−Glu−アスパラギンを使用しても30μg/mlクロラムフェニコールを上回る細胞増殖は得られないので、これらの全クローンはβ−GlcNAc−セリンに高度に選択的であると思われる。これらのin vivo遺伝結果から、新規に選択された突然変異体TyrRSはβ−GlcNAc−L−セリンに対して優れた特異性をもつと考えられる。
化合物Bの組込み効率及び忠実度を試験するために、4位にアンバーコドンとC末端His6タグを含む突然変異体ミオグロビン遺伝子(Gly4TAG)を作製した。例えばS.W.Santoroら,(2002)Nat.Biotechnol.20:1044参照。突然変異体シンテターゼS1−90を最少培地で化合物Bの存在下にmutRNATyr CUA及びGly4TAGミオグロビン遺伝子と同時発現させると、全長突然変異体ミオグロビン1mg/Lが生産された(図4参照)。比較のために、同様の条件下で野生型ミオグロビン5.5mg/Lが生産され、S1−90の抑圧レベルが良好であることが判明した。S−90、mutRNATyr CUA、又は化合物Bの不在下では銀染色SDS−PAGEにより全長ミオグロビンの発現は観察されなかった(図4参照)。
図4はGly4→化合物A突然変異体ミオグロビン(〜18.5kD)の発現を示す。蛋白質をNi2+−アフィニティークロマトグラフィーにより精製し、SDS−PAGEにより分解した。ゲルを銀染色した。レーン1は直交tRNA、シンテターゼS1−90、及び化合物Bの存在下でミオグロビンが発現されたことを示す。〜18kDaバンドは全長ミオグロビンに対応する。レーン2は直交tRNAとシンテターゼS1−90の存在下で且つ基質化合物Bの不在下に発現後に溶出した蛋白質を示す。レーン3は直交tRNAと基質化合物Bの存在下で且つシンテターゼS1−90の不在下に発現後に溶出した蛋白質を示す。レーン4はシンテターゼS1−90と基質化合物Bの存在下で且つ直交tRNAの不在下に発現後に溶出した蛋白質を示す。レーン5は比較用に精製野生型ミオグロビンを含む。
高分解能MALDI−TOF分析によると、His6タグ精製突然変異体ミオグロビンのモノアイソトピック質量は18430.1Daであり、Glc(OH)Nac−セリンを含み、メチオニンを欠失するミオグロビンの理論質量(Mtheoretical=1.8429.5Da)と32ppm以内で一致する。図5参照。N末端Metの欠失は大腸菌で一般的であることに留意されたい。更に、O−アセチル化糖ミオグロビン又は野生型ミオグロビンに対応するシグナルは観察されなかった。質量スペクトルデータにより、GlcNAc−セリンのミオグロビン組込みの高度特異性が確認された(>96%)。
突然変異体ミオグロビンを更に特性決定するために数種の付加実験を実施した。まず、ELISA様アッセイを使用し、GlcNAc特異的レクチンBandeiraea simplicifolia II(BSII)(例えばS.Ebisuら,(1978),Carbohydr.Res.61:129参照)と野生型ミオグロビン及び糖ミオグロビンの結合を分析した。図6A参照。図6AはGlcNAc特異的レクチンBande
riraea simplicifolia II(BSII)と野生型ミオグロビン及び糖ミオグロビンの結合を示す。野生型ミオグロビン、糖ミオグロビン、及び陰性対照(レクチン非添加)のA405値を示す。Gly4→化合物A突然変異体ミオグロビン(200ng)と野生型ミオグロビン(200ng)をマイクロタイタープレートウェルに固定化した後、ビオチン化BSIIとストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲートの存在下にインキュベートした。ウェルをリン酸p−ニトロフェニルの存在下にインキュベートし、405nmの吸光度を測定することによりモニターした。2種の形態のミオグロビンをマイクロタイタープレートウェルに固定化した後、夫々ビオチン化BSII、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲート、及びリン酸p−ニトロフェニルの存在下にインキュベートした。野生型ミオグロビンを含むウェルは陰性対照ウェルと等価のシグナルを発生した。他方、糖ミオグロビンを含むウェルは野生型ミオグロビンの少なくとも200倍のシグナルを発生し、GlcNAc特異的レクチンによる選択的認識が立証された。更に、このレクチンはGlcNAcに高度に選択的であるので、この結果から糖質はGalNAcやManNAc等の他の異性形に修飾されていないことも判明した(例えばS.Ebisuら,(1978),Carbohydr.Res.61:129参照)。
ミオグロビンのO−GlcNAc−セリン残基をガラクトシルトランスフェラーゼで選択的に修飾できるか否かについても検討した。β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼは糖ヌクレオチドUDP−Galからガラクトース(Gal)をN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)の4位に転移させ、Galβ1,4GlcNAcを形成することが知られている。O−グリコシル化ミオグロビンをUDP−Galで修飾できるか否かを調べるために、野生型及びO−グリコシル化ミオグロビンの両者をSDS−PAGEにより分解し、PVD膜に転写させた。次に膜を牛乳ガラクトシルトランスフェラーゼ及び放射性UDP−[H]−ガラクトースの存在下に室温で24時間インキュベートした。例えばK.Kamemuraら,(2002),J.Biol.Chem.277:19229参照。膜をX線フィルムに露光することにより[H]−Galの取込みをモニターした。糖ミオグロビンのみが標識され、野生型ミオグロビンでは検出可能なシグナルは観察されなかった。図6B参照。図6BはUDP−[H]ガラクトースによる糖ミオグロビンのオンブロットガラクトシルトランスフェラーゼ標識を示す。野生型ミオグロビン(1μg)とGly4→化合物A突然変異体ミオグロビン(1μg)を12%SDS−PAGEにより分解し、PVD膜に転写させた。次に膜を牛乳ガラクトシルトランスフェラーゼ(1U)、UDP−[H]−ガラクトース(0.5μCi)及びウシ腸アルカリホスファターゼ(1U)で24時間室温にて処理した。十分に洗浄後、エンハンストオートラジオグラフィーを使用して膜をX線フィルムに露光した。
定量分析のために、更に糖転移反応を溶液中で実施した。例えばK.Witteら,(1997)J.Am.Chem.Soc.119:2114参照。48時間室温でインキュベーション後に存在する放射性ラベルを基準に72%の二糖収率が得られた。図6C参照。図6Cは溶液中で実施したガラクトシルトランスフェラーゼ反応の定量分析を示し、1.0が100%転移に対応するように放射性標識ガラクトースを標準化した。HPLC精製野生型ミオグロビン(100μg)とGly4→化合物A突然変異体ミオグロビン(100μg)を含有する溶液にピルビン酸キナーゼ(5U)、UDP−グルコースピロホスホリラーゼ(1U)、無機ピロホスホリラーゼ(10U)、ガラクトース−1−リン酸−ウリジルトランスフェラーゼ(1U)、牛乳ガラクトシルトランスフェラーゼ(2U)、グルコース−1−リン酸(3μmol)、ウリジル二リン酸(3μmol)、ホスホエノールピルビン酸(0.01mmol)、及びDTT(2μmol)を加えた。反応溶液をpH7.2に調整した後、[H]−ガラクトース−1−リン酸(0.01mmol)を加えた。48時間室温で反応させた。蛋白質産物をPD−10 Sephadex 25カラムで分離した。放射性ラベル取込みを液体シンチレーションアナライザーで測定し
た。
これらの試験の結果、β−GlcNAc−L−セリンは優れた特異性と良好な収率で大腸菌で蛋白質に翻訳時組込みが可能であることが立証された。組込まれたβ−GlcNAc−セリンは糖をグリコシルトランスフェラーゼで順次付加することができる主グリコシル化部位として機能することができる。例えばK.Kamemuraら,(2002),J.Biol.Chem.277:19229。
材料と方法
突然変異体TyrRS酵素の指向進化。ポジティブ及びネガティブ選択の一般手順は従来報告されている。例えばZ.Zhangら,(2003)Biochemistry,42:6735参照。要約すると、プラスミドpRep(2)/YC(例えば、S.W.Santoroら,(2002)Nat.Biotechnol.20:1044参照)を導入したコンピテント大腸菌DH10BにプラスミドpBK−lib−m(例えば、Z.Zhangら,(2003)Biochemistry 42:6735参照)及びpBK−lib(例えば、L.Wangら,(2001)Science 292:498参照)の組み合わせを形質転換した。40μg/mlテトラサイクリン、50μg/mlカナマイシン、68μg/mlクロラムフェニコール、及び1mM化合物Bを添加したGMML培地(1%グリセロール,0.3mMロイシン,1mM MgCl,0.1mM
CaCl及び0.5% NaClを含有する1×M9最少培地)500ml中で形質転換細胞を60時間37℃で増殖させた。プラスミド(pBK)を生存細胞から精製し、pLWJ17B3(例えば、L.Wangら,(2001)Science 292:498参照)を導入した大腸菌DH10Bに形質転換し、ネガティブ選択を開始した。次に、40μg/mlクロラムフェニコール、50μg/mlカナマイシン、及び0.02%L−アラビノースを添加したLB(Luria−Bertani)プレートに細胞をプレーティングし、37℃で8時間インキュベートした。プラスミドpBKを生存細胞から精製し、後続ポジティブ及びネガティブ選択に使用した。ポジティブ選択5回とネガティブ選択4回の後に、基質依存的クロラムフェニコール耐性を付与する3個の候補直交tRNA−シンテターゼ対を単離し、配列決定した。
突然変異体ミオグロビンの発現と特性決定。カナマイシン、テトラサイクリン、0.02%L−アラビノース、5μM FeCl、及び0又は1mM化合物Bを加えたGMML培地500ml中でpBAD/JYAMB−4TAG(例えばS.W.Santoroら,(2002)Nat.Biotechnol.20:1044参照)とpS1−90を導入したDH10B細胞を増殖させた。細胞をペレット化させ、溶解させ、天然条件下にNi2+−NTAビーズを使用してアフィニティークロマトグラフィーにより蛋白質を精製した。蛋白質を12%SDS−PAGEにより分析し、銀染色した。精製蛋白質のアリコートを高分解能質量分析した。飛行時間(TOF)質量分析計(Voyager DE−STR,Applied Biosystems,Foster City,CA)によるマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)を使用して蛋白質の分子量を測定した。蛋白質試料を337nm窒素レーザーから照射後に脱離イオン化した。シナピン酸をMALDIマトリックスとして使用した。確立プロトコール(例えば、K.Kamemuraら,(2002),J.Biol.Chem.277:19229;及びK.Witteら,(1997)J.Am.Chem.Soc.119:2114参照)に従ってレクチン結合及びグリコシルトランスフェラーゼ反応を実施した。
代表的O−RSの配列
本発明で使用することができる代表的O−RSとしては、配列番号1〜6(表2参照)が挙げられ、本発明で使用することができる代表的O−tRNAとしては配列番号7が挙
げられる。O−RSをコードする代表的ポリヌクレオチドとしては配列番号8〜10が挙げられる。
当然のことながら、本明細書に記載する実施例及び態様は例証の目的に過ぎず、これらの記載に鑑みて種々の変形又は変更が当業者に想到され、このような変形又は変更も本願の精神及び範囲と特許請求の範囲に含むものとする。
以上、明確に理解できるように本発明を多少詳細に記載したが、本発明の真の範囲を逸脱することなく形態や細部に種々の変更が可能であることは以上の開示から当業者に自明である。例えば、上記全技術及び装置は種々に組合せて使用することができる。本明細書に引用した全刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文献はその開示内容全体を全目的で参考資料として組込み、各刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文献を全目的で参考資料として組込むと個々に記載しているものとして扱う。


非天然アミノ酸を含むポリペプチドに糖部分を結合するための2種類のスキーム(順次経路と収束経路)の例を模式的に示す。 (図1の)アミノオキシ糖1とp−アセチル−L−フェニルアラニンを含む(図1の)突然変異体Zドメイン蛋白質Iの7時間及び26時間カップリング反応のHPLC分析を示す。 (図1の)突然変異体Zドメイン蛋白質I、(図1の)糖蛋白質ミメティクスII、III、及びIVの高分解能MALDI−FTICR MSスペクトルを示す。各スペクトルの2同位体クラスターを示す。 Gly4→A突然変異体ミオグロビン(〜18.5kD)の発現を示す。蛋白質をNi2+アフィニティークロマトグラフィーにより精製し、SDS−PAGEにより分解した。ゲルを銀染色した。 Gly4→A突然変異体ミオグロビンの分子量のMALDI−TOF分析を示す。 グリコシル化アミノ酸を含む精製突然変異体ミオグロビンの特性決定を示す。AはGlcNAc特異的レクチンBanderiraea simplicifolia II(BSII)と野生型ミオグロビン及び糖ミオグロビンの結合を示す。BはUDP−[H]ガラクトースによる糖ミオグロビンのオンブロットガラクトシルトランスフェラーゼ標識を示す。 グリコシル化アミノ酸を含む精製突然変異体ミオグロビンの特性決定を示す。Cは溶液中で実施したガラクトシルトランスフェラーゼ反応の定量分析を示し、1.0が100%転移に対応するように放射性標識ガラクトースを標準化した。

Claims (57)

  1. a)第1の反応性基を含む非天然アミノ酸を蛋白質に組込む段階と;
    b)第2の反応性基を含む糖部分と前記蛋白質を接触させ、第1の反応性基を第2の反応性基と反応させて糖部分を非天然アミノ酸に結合する段階を含む糖蛋白質の合成方法。
  2. 第1の反応性基が求電子性部分であり、第2の反応性基が求核性部分である請求項1に記載の方法。
  3. 求電子性部分がケト又はアルデヒド部分である請求項2に記載の方法。
  4. 求核性部分が−NR−NH(ヒドラジド)、−NR(C=O)NRNH(セミカルバジド)、−NR(C=S)NRNH(チオセミカルバジド)、−(C=O)NRNH(カルボニルヒドラジド)、−(C=S)NRNH(チオカルボニルヒドラジド)、−(SO)NRNH(スルホニルヒドラジド)、−NRNR(C=O)NRNH(カルバジド)、−NRNR(C=S)NRNH(チオカルバジド)、及び−O−NH(ヒドロキシルアミン)(式中、各R、R、及びRは独立してH、又は炭素原子数1〜6のアルキルである)から構成される群から選択される請求項2に記載の方法。
  5. 求核性部分かヒドラジド、ヒドロキシルアミン、セミカルバジド、及びカルボヒドラジドから構成される群から選択される請求項4に記載の方法。
  6. 反応生成物がオキシム、アミド、ヒドラゾン、カルボヒドラゾン、チオカルボヒドラゾン、スルホニルヒドラゾン、セミカルバゾン、又はチオセミカルバゾンを含む請求項2に記載の方法。
  7. 反応生成物が還元ヒドラゾンを含む請求項6に記載の方法。
  8. 第1の反応性基が求核性部分であり、第2の反応性基が求電子性部分である請求項1に記載の方法。
  9. 求電子性部分がケト又はアルデヒド部分である請求項8に記載の方法。
  10. 糖部分が2個以上の糖質部分を含む請求項1に記載の方法。
  11. 糖供与体部分から糖部分に糖を転移させるために十分な時間と適切な条件下でグリコシルトランスフェラーゼ、糖供与体部分、及びグリコシルトランスフェラーゼ活性に必要な他の反応体と糖部分を接触させる段階c)を更に含む請求項1に記載の方法。
  12. グリコシルトランスフェラーゼがガラクトシルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、グルクロニルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、グルクロン酸トランスフェラーゼ、ガラクツロン酸トランスフェラーゼ、及びオリゴサッカリルトランスフェラーゼから構成される群から選択される請求項11に記載の方法。
  13. 段階(c)の生成物を少なくとも第2のグリコシルトランスフェラーゼ及び第2の糖供与体部分と接触させる段階を更に含む請求項11に記載の方法。
  14. 糖部分が末端GlcNAcを含み、糖供与体部分UDP−Galであり、グリコシルトランスフェラーゼがβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼである請求項11に記載の方法。
  15. 糖部分が末端GlcNAcを含み、糖供与体部分がUPD−GlcNAcであり、グリコシルトランスフェラーゼがβ1−4N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼである請求項11に記載の方法。
  16. N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ反応の生成物をβ1−4マンノシルトランスフェラーゼ及びGDP−マンノースと接触させ、Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−を含む糖部分を形成する段階を更に含む請求項15に記載の方法。
  17. Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−部分をα1−3マンノシルトランスフェラーゼ及びGDP−マンノースと接触させ、Manα1−3Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−を含む糖部分を形成する段階を更に含む請求項16に記載の方法。
  18. Manα1−3Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−部分をα1−6マンノシルトランスフェラーゼ及びGDP−マンノースと接触させ、Manα1−6(Manα1−3)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−を含む糖部分を形成する段階を更に含む請求項17に記載の方法。
  19. Manα1−6(Manα1−3)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−部分をβ1−2N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ及びUDP−GlcNAcと接触させ、Manα1−6(GlcNAcβ1−2Manα1−3)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−を含む糖部分を形成する段階を更に含む請求項18に記載の方法。
  20. Manα1−6(GlcNAcpl−2Manα1−3)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−部分をβ1−2N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ及びUDP−GlcNAcと接触させ、GlcNAcβ1−2Manα1−6(GlcNAcβ1−2Manα1−3)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc−を含む糖部分を形成する段階を更に含む請求項19に記載の方法。
  21. 糖部分をβ1−4N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、α1,3フコシルトランスフェラーゼ、α1,2フコシルトランスフェラーゼ、α1,4フコシルトランスフェラーゼ、β1−4ガラクトシルトランスフェラーゼ、及びシアリルトランスフェラーゼの1種以上と接触させ、二側鎖又は三側鎖オリゴ糖構造を形成する段階を更に含む請求項11に記載の方法。
  22. 組込み段階をin vivoで実施する請求項1に記載の方法。
  23. 組込み段階が直交tRNA/直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−tRNA/O−RS)対を使用し、O−tRNAがセレクターコドンを認識し、セレクターコドンに応答して非天然アミノ酸を蛋白質に組込み、O−RSがO−tRNAを非天然アミノ酸で優先的にアミノアシル化する請求項1に記載の方法。
  24. O−RSが配列番号1、2、又は3のいずれか1種を含むアミノ酸配列を含む請求項23に記載の方法。
  25. O−tRNAがmutRNATyr CUAを含む請求項23に記載の方法。
  26. 請求項1に記載の方法により生産された糖蛋白質。
  27. 請求項22に記載の方法により生産された糖蛋白質。
  28. 糖部分とポリペプチドを含む糖蛋白質であって、糖部分がポリペプチドに存在する非天然アミノ酸に結合した第1の反応性基と糖部分に結合した第2の反応性基の求核性反応の反応生成物によりポリペプチドと結合している前記糖蛋白質。
  29. 第1の反応性基が求電子性部分であり、第2の反応性基が求核性部分である請求項28に記載の糖蛋白質。
  30. 求電子性部分がケト又はアルデヒド部分である請求項29に記載の糖蛋白質。
  31. 求核性部分が−NR−NH(ヒドラジド)、−NR(C=O)NRNH(セミカルバジド)、−NR(C=S)NRNH(チオセミカルバジド)、−(C=O)NRNH(カルボニルヒドラジド)、−(C=S)NRNH(チオカルボニルヒドラジド)、−(SO)NRNH(スルホニルヒドラジド)、−NRNR(C=O)NRNH(カルバジド)、−NRNR(C=S)NRNH(チオカルバジド)、及び−O−NH(ヒドロキシルアミン)(式中、各R、R、及びRは独立してH、又は炭素原子数1〜6のアルキルである)から構成される群から選択される請求項29に記載の糖蛋白質。
  32. 求核性部分かヒドラジド、ヒドロキシルアミン、セミカルバジド、及びカルボヒドラジドから構成される群から選択される請求項31に記載の糖蛋白質。
  33. 反応生成物がオキシム、アミド、ヒドラゾン、カルボヒドラゾン、チオカルボヒドラゾン、スルホニルヒドラゾン、セミカルバゾン、又はチオセミカルバゾンを含む請求項28に記載の糖蛋白質。
  34. 反応生成物が還元ヒドラゾンを含む請求項33に記載の糖蛋白質。
  35. 糖部分を含む非天然アミノ酸を蛋白質に組込む段階を含む糖蛋白質の合成方法。
  36. 糖供与体部分から糖部分に糖を転移させるために十分な時間と適切な条件下でグリコシルトランスフェラーゼ、糖供与体部分、及びグリコシルトランスフェラーゼ活性に必要な他の反応体と糖部分を接触させる段階を更に含む請求項35に記載の方法。
  37. グリコシルトランスフェラーゼがガラクトシルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、グルクロニルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、グルクロン酸トランスフェラーゼ、ガラクツロン酸トランスフェラーゼ、及びオリゴサッカリルトランスフェラーゼから構成される群から選択される請求項36に記載の方法。
  38. グリコシルトランスフェラーゼ反応の生成物を少なくとも第2のグリコシルトランスフェラーゼ及び第2の糖供与体部分と接触させる段階を更に含む請求項36に記載の方法。
  39. 糖部分が末端GlcNAcを含み、糖供与体部分がUPD−GlcNAcであり、グリ
    コシルトランスフェラーゼがβ1−4N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼである請求項36に記載の方法。
  40. 糖部分が末端GlcNAcを含み、糖供与体部分がUDP−Galであり、グリコシルトランスフェラーゼがβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼである請求項36に記載の方法。
  41. 組込み段階が直交tRNA/直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−tRNA/O−RS)対を使用し、O−tRNAがセレクターコドンを認識し、セレクターコドンに応答して非天然アミノ酸を蛋白質に組込み、O−RSがO−tRNAを非天然アミノ酸で優先的にアミノアシル化する請求項35に記載の方法。
  42. O−RSが配列番号4、5、又は6のいずれか1種を含むアミノ酸配列を含む請求項41に記載の方法。
  43. O−tRNAがmutRNATyr CUAを含む請求項41に記載の方法。
  44. 組込み段階をin vivoで実施する請求項35に記載の方法。
  45. 非天然アミノ酸がβ−O−GlcNAc−L−セリン、トリ−アセチル−β−GlcNAc−セリン、トリ−O−アセチル−GalNAc−α−スレオニン、又はα−GalNAc−L−スレオニンを含む請求項35に記載の方法。
  46. 請求項35に記載の方法により生産された糖蛋白質。
  47. a)糖部分を含む非天然アミノ酸と;
    b)セレクターコドンを認識する直交tRNAと;
    c)非天然アミノ酸と直交tRNAの結合を触媒する直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)と;
    d)グリコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチドと;
    e)ポリペプチドをコードし、少なくとも1個のセレクターコドンを含むポリヌクレオチド配列を含む糖蛋白質合成用宿主細胞。
  48. グリコシルトランスフェラーゼがガラクトシルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、グルクロニルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、グルクロン酸トランスフェラーゼ、ガラクツロン酸トランスフェラーゼ、及びオリゴサッカリルトランスフェラーゼから構成される群から選択される請求項47に記載の宿主細胞。
  49. 宿主細胞が哺乳動物細胞、酵母細胞、細菌細胞、植物細胞、真菌細胞、始原菌細胞、又は昆虫細胞である請求項47に記載の宿主細胞。
  50. 翻訳系を含む組成物であって、翻訳系が直交tRNA(O−tRNA)と直交アミノアシルtRNAシンテターゼ(O−RS)を含み、O−RSが糖部分を含む非天然アミノ酸でO−tRNAを優先的にアミノアシル化し、O−tRNAが少なくとも1個のセレクターコドンを認識する前記組成物。
  51. O−RSが配列番号4、5、もしくは6のいずれか1種又はその保存変異体を含むアミノ酸配列を含む請求項50に記載の組成物。
  52. O−RSが配列番号8、9、もしくは10のいずれか1種又はその保存変異体を含むポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによりコードされる請求項50に記載の組成物。
  53. O−tRNAがmutRNATyr CUAを含む請求項50に記載の組成物。
  54. 非天然アミノ酸がβ−O−GlcNAc−L−セリン、トリ−アセチル−β−GlcNAc−セリン、トリ−O−アセチル−GalNAc−α−スレオニン、又はα−GalNAc−L−スレオニンを含む請求項50に記載の組成物。
  55. (a)配列番号4〜6のいずれか1種に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;
    (b)配列番号8〜10のいずれか1種に示すポリヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
    (c)(a)、又は(b)のポリペプチドに特異的な抗体に対して特異的に免疫反応性のポリペプチド;及び
    (d)(a)、(b)、又は(c)の保存変異を含むアミノ酸配列から構成される群から選択される人工ポリペプチド。
  56. 請求項55に記載のポリペプチドに対して特異的に免疫反応性の抗体又は抗血清。
  57. (a)配列番号8〜10のいずれか1種に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
    (b)(a)のポリヌクレオチド配列に相補的であるか又はこれをコードするポリヌクレオチド;
    (c)配列番号1〜6のいずれか1種に記載のアミノ酸配列又はその保存変異体を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
    (d)請求項55に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
    (e)核酸の実質的に全長にわたって高ストリンジェント条件下で(a)、(b)、(c)、又は(d)のポリヌクレオチドとハイブリダイズする核酸;
    (f)(a)、(b)、(c)、(d)、又は(e)のポリヌクレオチドと少なくとも98%一致するポリヌクレオチド;及び
    (h)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、又は(f)の保存変異を含むポリヌクレオチドから構成される群から選択される人工ポリペプチド。
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