JP2006233148A - ポリエステルマクロモノマーおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明は、下記の式(1)または(2)の構造を有するポリエステルマクロモノマーであって、
【化1】
ここで、mは1〜50の整数であり、lおよびnは次の関係式:6≧l+n≧3を満たす整数であり、R1は、少なくとも3つ以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールの残基であり、Xは、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する有機基または水素(ただしすべてのXが水素である場合を除く)である、ポリエステルマクロモノマーを提供する。
【選択図】 なし
Description
一般に、ポリエステルマクロモノマーとは、分子主鎖にエステル構造を有し、分子量が約100〜20,000の範囲、好ましくは、約300〜10,000の範囲で、その末端に重合可能な官能基を有するオリゴマーまたはポリマーをいう。ここで、重合可能な官能基とは、ビニル基、ビニリデン基、ビニレン基、環状オレフィン、ジカルボン酸、ジオール、ジアミン等が挙げられ、この官能基によりグラフト共重合体を得ることができる。
上記のポリエステルマクロモノマーを製造するには次の方法で行なう。まず、飽和ポリエステル樹脂またはその廃棄物に、必要ならば破砕、洗浄、およびふるいに掛ける前処理を行なう。この必要に応じて前処理された飽和ポリエステル樹脂または廃棄物を多価アルコールに混入し、飽和ポリエステル樹脂の分解生成物を得る。そしてこの分解生成物にアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する有機基を反応させて、ポリエステルマクロモノマーを製造する。
本発明のポリエステルマクロモノマーの製造において、飽和ポリエステル樹脂の破砕は、衝撃式破砕機(ハンマー式、チェーン式)、せん断式破砕機、切断式破砕機、圧縮式破砕機(ロール式、コンベア式、スクリュ式)、スタンプミル、ボールミル、ロッドミル粉砕機等により行なう。破砕物の大きさは小さい方が好ましく、目の開き20mmのふるいを通る物が好適である。好ましくは10mm、更に好ましくは5mmのふるいを通る破砕物が使用される。
飽和ポリエステル樹脂を多価アルコールで分解する際の温度は、通常100℃〜300℃の範囲、好ましくは150℃〜280℃の範囲である。この分解温度範囲において、飽和ポリエステル樹脂の分解速度は速く、効率的に分解物を得ることができる。そして分解反応は、窒素雰囲気下および酸化防止剤存在下で行なうことにより、酸化反応による着色等が防止できる。本発明では、大気圧下または加圧下で分解を行なうこともできる。なお分解反応に低沸点グリコールを用いて、このグリコールの沸点以上の温度で分解反応を行なう場合は、加圧下で行なう。
本発明において使用し得る飽和ポリエステル樹脂としては、好ましくは、ポリエチレンテレフタラートが使用され、ボトル、フィルム、成型品に用いられるポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレート(PEN)またはこれらの廃棄物等も使用可能である。さらに、これらのバージンペレット等も利用し得る。
本発明において、多価アルコールは、飽和ポリエステル樹脂またはその廃棄物を分解し、分解生成物を得るために使用する。この多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、1,3,5−シクロヘキサントリオールおよびこれらのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。ここで当該アルキレンオキサイドは、炭素数が2〜4であることが好ましく、多価アルコールのそれぞれのヒドロキシル基に対して1〜30モルの範囲内で用いることが好ましい。なお、本発明において、多価アルコールとは、分子内にヒドロキシル基を3つ以上有するアルコールである。
飽和ポリエステル樹脂と、この飽和ポリエステルを分解するために用いる多価アルコールの質量比を変えることにより、分解生成物の分子量を調整し得る。また、飽和ポリエステル樹脂のエステル結合のモル数(E’)と多価アルコールのモル数(G’)の比は、1:0.2〜5であり、好ましくは、1:0.2〜2である。多価アルコールの混合量が少ないと分解生成物の平均分子量は大きくなり、他方で、多価アルコールの混合量が多いと、分解生成物の分子量は小さくなる。
本発明において、飽和ポリエステル樹脂の多価アルコールによる分解生成物に、アクリロイル基またはメタクリロイル基を結合させる工程は、分解生成物にアクリル酸またはメタクリル酸と縮合反応により行うことができる。
本発明において、多価アルコールによる飽和ポリエステル樹脂の分解生成物は、通常末端にOH基を有する。この分解生成物に、ウレタン結合を介して重合可能な基を導入する場合は、イソシアネート化合物に多価アルコール分解生成物を付加反応させることにより合成し得る。イソシアネート化合物は、下記の化学式(3)〜(6)に示すように、市販品である3−イソプロペニル−α,α’−ジメチルベンジルイソシアネート(3)、アリルイソシアネート(4)および2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(5)を使用でき、さらに合成品としての、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するアルコールとジイソシアネート化合物との反応で得られる化合物(6)も使用し得る。この合成イソシアネート化合物は、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するアルコールとジイソシアネートとを1:1のモル比で反応させることにより得ることができる。この合成イソシアネート化合物の製造において使用可能なジイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−フェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。この合成イソシアネートの製造において使用可能なアルコールとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート等が挙げられる。
合成したポリエステルマクロモノマーは、重合開始剤の存在下、必要ならば希釈モノマーを添加して、重合させることができる。マクロモノマーは、分子量3,000以下では、均一系で、モノマーの反応性と変わらないといわれている。
PETペレット250gに多価アルコールとしてトリメチロールプロパン250g(PETのエステル結合に対して1.5モル)および酢酸亜鉛2水和物2.5gを加え、オートクレーブ中窒素雰囲気下190℃で、27時間反応させた。分解物をクロロホルムに溶解して反応容器より取り出した後、減圧濃縮した。さらに60℃で6時間減圧乾燥することにより505gの分解物が得られた。分解物の酸価=0.03mmol/g、OH価(OH基のモル数)=8.3mol/kg、数平均分子量=953、重量平均分子量=1680であった。
実施例1に記載の多価アルコール分解物50gにメタアクリル酸42g、トルエン180ml、p−トルエンスルホン酸5g、ヒドロキノン0.5gを加え、攪拌しながら、加熱、還流、脱水し、エステル化反応を7時間行った。反応終了後、15% NaOH水溶液で洗浄し、触媒、ヒドロキノンを除去し、中性になるまで水洗した。そして硫酸ナトリウムを入れ、一夜乾燥し、トルエンを減圧下で留去したところ、生成物42gが得られた。
実施例1に記載の多価アルコール分解物50gにアクリル酸77g、トルエン180ml、p−トルエンスルホン酸5g、ヒドロキノン0.5gを加え、攪拌しながら、加熱、還流、脱水し、エステル化反応を7時間行った。反応終了後、15% NaOH水溶液で洗浄し、触媒、ヒドロキノンを除去し、中性になるまで水洗した。そして硫酸ナトリウムを入れ、一夜乾燥し、トルエンを減圧下で留去したところ、生成物42gが得られた。
実施例1に記載の多価アルコール分解物10.0gにメタクリル酸クロリド4.9ml、トリエチルアミン8.9ml、THF50mlを加え、室温で3時間反応させた。反応終了後1N NaOH水溶液で洗浄し、さらに有機層が中性になるまで水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後濾過し、減圧濃縮してマクロモノマー12.97gを得た。
実施例1に記載の多価アルコール分解物10.0gにメタクリル酸クロリド9ml、ピリジン9mlを加え、室温で一昼夜反応させた。反応終了後1N NaOH水溶液で洗浄し、さらに有機層が中性になるまで水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後濾過し、減圧濃縮して生成物6.8gを得た。
PETペレット100gに多価アルコールとしてトリメチロールエタン100g(PETのエステル結合に対して1.5モル)および酢酸亜鉛2水和物3.0gを加え、オートクレーブ中窒素雰囲気下190℃で、26時間反応させた。分解物をクロロホルムに溶解して反応容器より取り出した後、減圧濃縮した。さらに60℃で6時間減圧乾燥することにより210gの分解物が得られた。分解物の酸価=0.08mmol/g、OH価(OH基のモル数)=7.7mol/kg、数平均分子量=913、重量平均分子量=1320であった。
PETペレット100gに多価アルコールとしてペンタエリスリトール100g(PETのエステル結合に対して1.5モル)および酢酸亜鉛2水和物5.0gを加え、オートクレーブ中窒素雰囲気下190℃で、37時間反応させた。得られた分解物をクロロホルムに溶解して反応容器より取り出した後、減圧濃縮した。さらに60℃で6時間減圧乾燥することにより195gの分解物が得られた。分解物の酸価=0.19mmol/g、OH価(OH基のモル数)=7.9mol/kg、数平均分子量=761、重量平均分子量=1092であった。
PETペレット100gにトリメチロールプロパン50gおよびネオペンチルグリコール39g、酢酸亜鉛2水和物1.0gを加え、オートクレーブ中窒素雰囲気下190℃で13時間反応させた。分解物をクロロホルムに溶解して反応容器より取り出した後、減圧濃縮した。さらに60℃で6時間減圧乾燥することにより178gの分解物が得られた。分解物の酸価=0.03mmol/g、OH価(OH基のモル数)=8.1mol/kg。GPC(ポリスチレン換算)による数平均分子量=835、重量平均分子量=1132であった。
イソホロンジイソシアネート5.3mlに2−ヒドロキシエチルメタクリレート3.6ml、ジブチル錫ジラウリレート631mg、ヒドロキノン50mg、トルエン30mlを加え、50〜60℃で1時間反応させた。反応混合物に実施例1に記載の分解物3.0gを加え、50〜60℃でさらに4時間攪拌した。生成物を過剰のヘキサン中に投入し、沈殿を生成させた。沈殿物を減圧乾燥し、生成物8.7gを得た。生成物の赤外吸収スペクトルを測定した結果、2200〜2300cm−1にはイソシアネート基由来の吸収は全く観測されなかった。またGPC(ポリスチレン換算)による数平均分子量=1052、重量平均分子量=1573であった。
実施例1および3で得られたマクロモノマー10gに対して光開始剤イルガキュアー907を0.3gを加え、ガラス板上に塗布した。得られた薄膜にUV照射(210mJ)することにより硬化物を得た。硬化膜の鉛筆硬度をJIS K5400 8.4.2に準拠して測定したところそれぞれ2Hであり、実施例1および3から得られたメタクリロイル基およびアクリロイル基を有するマクロモノマーは非常に強固な硬化物を与えることがわかる。
Claims (11)
- 前記R1は、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、およびこれらのアルキレンオキサイド付加物からなる群より選択されるアルコールの残基であることを特徴とする、請求項1に記載のポリエステルマクロモノマー。
- 飽和ポリエステル樹脂を、ヒドロキシル基を少なくとも3つ以上有する多価アルコールで分解する工程と、
前記工程で分解された分解物の分子末端にアクリロイル基またはメタクリロイル基を結合させる工程と、
を包含するポリエステルマクロモノマーの製造方法。 - 前記飽和ポリエステル樹脂を、ヒドロキシル基を少なくとも3つ以上有する前記多価アルコールで分解する工程において、ヒドロキシル基を少なくとも3つ以上有する多価アルコールと共に、2価のアルコールを一緒に用いることを特徴とする、請求項4に記載のポリエステルマクロモノマーの製造方法。
- 前記ヒドロキシル基を少なくとも3つ以上有する多価アルコールは、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、およびこれらのアルキレンオキサイド付加物からなる群より選択される、請求項4または5に記載のポリエステルマクロモノマーの製造方法。
- 飽和ポリエステル樹脂を、ヒドロキシル基を少なくとも3つ以上有する多価アルコールで分解する工程と、
前記工程で分解された分解物に、メタクリル酸またはアクリル酸を反応させて、分子末端にメタクリロイル基またはアクリロイル基を結合させる工程と、
を包含するポリエステルマクロモノマーの製造方法。 - 飽和ポリエステル樹脂を、ヒドロキシル基を少なくとも3つ以上有する多価アルコールで分解する工程と、
前記工程で分解された分解物に、メタクリル酸クロリドまたはアクリル酸クロリドを反応させて、分子末端にメタクリロイル基またはアクリロイル基を結合させる工程と、
を包含するポリエステルマクロモノマーの製造方法。 - 飽和ポリエステル樹脂を、ヒドロキシル基を少なくとも3つ以上有する多価アルコールで分解する工程と、
前記工程で分解された分解物に、3−イソプロペニル−α,α’−ジメチルベンジルイソシアネート(3)、アリルイソシアネート(4)および2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(5)またはアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するアルコールとジイソシアネート化合物との反応で得られる化合物(6):
を結合させて、分子末端にメタクリロイル基またはアクリロイル基を結合させる工程と、
を包含するポリエステルマクロモノマーの製造方法。 - 前記飽和ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする、請求項4〜9のいずれかに記載のポリエステルマクロモノマーの製造方法。
- 請求項4〜10のいずれかに記載のポリエステルマクロモノマーの製造方法によって製造されたポリエステルマクロモノマー。
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