JP2006199994A - 電気銅メッキ浴、並びに銅メッキ方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 可溶性銅塩及びベース酸を含有する電気銅メッキ浴において、ベース酸がグリコール酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸よりなる群から選ばれたオキシカルボン酸又はその塩の少なくとも一種である電気銅メッキ浴である。また、これらの特定オキシカルボン酸と有機スルホン酸の混合酸、或は、イセチオン酸などの特定の有機スルホン酸をベース酸としても良い。特定の有機酸をベース酸にする銅メッキ浴であるため、従来の硫酸銅浴などに比して素地表面への均一電着性に優れる。さらには、高いビアフィリング能力も有するため、ビアホールとスルーホールの混在する基板にも良好に適用できる。
【選択図】 なし
Description
また、硫酸銅浴やピロリン酸浴はシアン化銅浴よりレベリング作用は大きいが、均一電着性の点で未だ不充分な点が残る。しかも、ビアホール並びにスルーホールの混在する基板に適用した場合、ビアフィリングはビアの底部には厚く、ビア周辺には薄く膜厚形成する必要があり、メカニズム的に均一電着性とは別ものである(或は、相反する)ため、ビアフィリングとスルーホールへの均一電着性の両立は容易でない。
先ず、特許文献1には、ミクロン又はサブミクロン寸法のトレンチ又はビアの金属化や、銅の種層に対する腐食性が低減するなどの目的で、銅アルカンスルホン酸塩及び遊離のアルカンスルホン酸を含有する電気銅メッキ液が開示されている(請求項1、段落8〜13参照)。当該アルカンスルホン酸として、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などを挙げている(請求項3〜5参照)。
また、特許文献4〜5についても、同様に、請求の範囲では、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸などの有機酸を含有する酸性銅メッキ浴を記載するが、実施例には硫酸をベース酸とする従来の硫酸銅浴の例しか記載がない。
さらに、ビアホール及びスルーホールの混在する基板に適用すると、上述の通り、ビアフィリングと均一電着性はメカニズム的に別ものであるため、これらを同時に達成するには課題が多い。
また、上記特許文献6に記載されている銅の酒石酸浴も同様の課題が残る。
本発明は、酸性の電気銅メッキ浴において、均一電着性に優れると共に、ビアフィリングにも良好に対処できることを技術的課題とする。
ベース酸がグリコール酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸よりなる群から選ばれたオキシカルボン酸又はその塩の少なくとも一種であることを特徴とする電気銅メッキ浴である。
ベース酸が2−ヒドロキシエタンスルホン酸、エタンスルホン酸よりなる群から選ばれた有機スルホン酸であることを特徴とする電気銅メッキ浴である。
補給槽に陰極と銅を材質とする可溶性陽極を配置し、補給槽に電解質液を収容し、補給槽とメッキ槽を補給路を介して連通させて、
メッキ槽及び補給槽の夫々の陽極と陰極の間に直流電流を印加して、補給槽の陽極から溶解した銅イオンを補給路を介して銅イオン濃度の低下したメッキ槽に補給可能にしながら、被メッキ物に銅メッキを施すことを特徴とする電気銅メッキ方法である。
次いで、本発明の銅メッキ浴は均一電着性のみならず、ビアフィリングにも充分に対処でき、ビアホール及びスルーホールの混在する被メッキ物に適用しても、ビアホールへの銅充填とスルーホールへの均一電着性を共に良好に達成できる。
尚、本発明の電気銅メッキ浴は特定の有機酸をベース酸とする酸性銅メッキ浴であり、従来のアルカリ性の銅浴に比べて浴管理は容易になる。
上記可溶性銅塩は、水溶液中で第一又は第二銅イオンを発生させる可溶性の塩であれば任意のものが使用でき、特段の制限はなく、難溶性塩をも排除するものではない。具体的には、硫酸銅、酸化銅、塩化銅、炭酸銅、酢酸銅、ピロリン酸銅、シュウ酸銅などが挙げられ、硫酸銅、酸化銅が好ましい。
上記特定のオキシカルボン酸はグリコール酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸よりなる群から選ばれた酸をいい、好ましくはグリコール酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸である。
オキシカルボン酸の塩は、オキシカルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグムシウム塩、アンモニウム塩又はアミン塩などをいう。
上記アルカンスルホン酸としては、化学式CnH2n+1SO3H(例えば、n=1〜5)で示されるものが使用でき、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン酸、2―プロパンスルホン酸、1―ブタンスルホン酸、2―ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などの外、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸などが挙げられる。好ましい例は、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン酸、2―プロパンスルホン酸である。
尚、上記有機スルホン酸としては、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸を挙げているが、これ以外に芳香族スルホン酸も有効である。
当該芳香族スルホン酸としては、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸などであって、具体的には、1−ナフタレンスルホン酸、2―ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p―フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニルアミン―4―スルホン酸などが挙げられる。
本発明5の電気銅メッキ浴は、オキシカルボン又はその塩と有機スルホン酸との混合酸をベース酸とするが、オキシカルボン酸又はその塩、有機スルホン酸は夫々を単用又は併用できる。混合酸のメッキ浴に対する含有量は上記本発明1の銅メッキ浴の場合と同じく、0.1〜12モル/Lが適当であり、好ましくは0.2〜3.0モル/Lである。オキシカルボン酸又はその塩と有機スルホン酸との混合比率(モル/L換算)はオキシカルボン酸又はその塩/有機スルホン酸=1/10〜10/1であるが、オキシカルボン酸又はその塩には銅皮膜の均一電着性を促進する作用に優れることから、オキシカルボン酸又はその塩のモル比率は1/2を越えることが好ましい。
本発明4の電気銅メッキ浴では、イセチオン酸とエタンスルホン酸を単用する外に、これらを併用しても良く、その含有量は本発明1又は5のベース酸の濃度と同様である。
尚、本発明の銅メッキ浴では、特定の酸成分をベース酸に使用することに特徴があるが、硫酸、ピロリン酸などの特定以外の酸が少量混入することを排除するものではない。
上記レベラーは界面活性剤や染料を主とする窒素系有機化合物などである。
この界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン系界面活性剤、或はアニオン系界面活性剤を単用又は併用できる。
当該ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリエチレングリコール(以下、PEGという)、ポリプロピレングリコールを初め、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、(ポリ)C1〜C25アルキルフェノール、(ポリ)アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミン、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合させたものや、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)などが挙げられる。
Ra・Rb・(MO)P=O …(a)
(式(a)中、Ra及びRbは同一又は異なるC1〜C25アルキル、但し、一方がHであっても良い。MはH又はアルカリ金属を示す。)
R1N(R2)2→O
(上式中、R1はC5〜C25アルキル又はRCONHR3(R3はC1〜C5アルキレンを示す)、R2は同一又は異なるC1〜C5アルキルを示す。)などで示されるアミンオキシドを用いることができる。
(R1・R2・R3・R4N)+・X- …(b)
(式(b)中、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アルカンスルホン酸又は硫酸、R1、R2、R3及びR4は同一又は異なるC1〜C20アルキル、アリール又はベンジルを示す。)或は、下記の一般式(c)で表されるピリジニウム塩などが挙げられる。
R6−(C5H4N−R5)+・X- …(c)
(式(c)中、C5H4Nはピリジン環、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アルカンスルホン酸又は硫酸、R5はC1〜C20アルキル、R6はH又はC1〜C10アルキルを示す。)
具体例としては、C.I.(Color Index)ベーシックレッド2、トルイジンブルーなどのトルイジン系染料、C.I.ダイレクトイエロー1、C.I.ベーシックブラック2などのアゾ系染料、3−アミノ−6−ジメチルアミノ−2−メチルフェナジン一塩酸などのフェナジン系染料、コハク酸イミド、2′−ビス(2−イミダゾリン)などのイミダゾリン類、イミダゾール類、ベンゾイミダゾール類、インドール類、2−ビニルピリジン、4−アセチルピリジン、4−メルカプト−2−カルボキシルピリジン、2,2′−ビピリジル、フェナントロリンなどのピリジン類、キノリン類、イソキノリン類、アニリン、チオ尿素、ジメチルチオ尿素などのチオ尿素類、3,3′,3′′−ニトリロ三プロピオン酸、ジアミノメチレンアミノ酢酸、グリシン、N−メチルグリシン、ジメチルグリシン、β−アラニン、システイン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アミノ吉草酸、オルニチンなどが挙げられる。
好ましい例は、C.I.ベーシックレッド2、ヤーナスグリーンB、トルイジンブルー、コハク酸イミドが挙げられる。
即ち、上記メッキ装置は函型のメッキ槽1と補給槽2から構成される。メッキ槽1には被メッキ物からなる陰極3と白金又はカーボンなどの不溶性陽極4を配置し、ケース状のイオン交換膜5で陽極4を下方から遊嵌し、陽極室6をメッキ槽1から隔離するとともに、メッキ槽1に本発明の電気銅メッキ浴7を収容する。
上記補給槽2に陰極9と銅を材質とする可溶性陽極8を配置し、補給槽2に電解質液10を収容する。補給槽2とメッキ槽1を補給路12を介して連通させ、補給路11には搬送ポンプ12及びフィルタ13を介装する。また、仮想線で示すように、補給路12とは別に、還流路14を介してメッキ槽1と補給槽2を連通し、還流路14に搬送ポンプ15を介装することにより、メッキ槽1と補給槽2を循環可能に連通しても良い。
そして、メッキ槽1及び補給槽2の夫々の陽極と陰極の間に直流電流を印加して、補給槽2の銅陽極8から溶解した銅イオンを補給路11を介して銅イオン濃度の低下したメッキ槽1に補給可能にしながら、被メッキ物に銅メッキを施す。
陽極室6をイオン交換膜5でメッキ槽1から隔離する形態としては、不溶性陽極4を囲繞するタイプのアノードケース(図2参照)に代えて、陽極室と陰極室を隔壁状のイオン交換膜5で隔離しても良い。
補給槽2に収容する電解質液10は特に制限はないが、本発明で特定された酸(グリコール酸など)、本発明の銅メッキ浴から銅塩を除いた液、或は、蒸留水などが適当である。尚、メッキ槽1と補給槽2を循環式にする場合には、メッキ槽1に収容される銅メッキ浴のベース酸を本発明の特定の酸又はその塩に良好に保持するため、電解質液10に本発明の特定以外の酸(例えば、硫酸など)を選択することは避けた方が良い。
尚、本発明は、下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
実施例1〜14のうち、実施例1〜6は特定のオキシカルボン酸をベース酸にする例(本発明1に相当)、実施例7〜9は特定の有機スルホン酸をベース酸にする例(本発明4に相当)、実施例10〜14は特定のオキシカルボン酸と有機スルホン酸との混合酸をベース酸にする例(本発明5に相当)である。実施例1、4〜6はグリコール酸濃度を変化させた例であり、このうち、実施例4はグリコール酸濃度を標準濃度(0.5モル/L)から減量した例であり、実施例5と6は当該標準濃度から増量した例である。実施例13は混合酸の濃度を上記標準濃度から増量した例である。
また、比較例1〜4のうち、比較例1と2は従来公知の硫酸をベース酸とする銅浴の例である。比較例3は冒述の特許文献1〜5に準拠した銅の有機酸浴の例であり、具体的にはメタンスルホン酸をベース酸にする例である。比較例4は冒述の特許文献6に準拠して酒石酸塩(ロッシェル塩)をベース酸にする例である。
尚、実施例及び比較例の各銅メッキ浴について、銅塩と酸の夫々の種類と含有量を図1の左半部の欄にまとめた(濃度の単位Mはモル/Lを表す)。
[標準組成の電気銅メッキ浴]
可溶性銅塩(Cuイオンとして) 0.8モル/L
酸 0.5モル/L
PEG(平均分子量2000) 10ppm
ヤーナスグリーンB 10ppm
SPS 10ppm
塩化物イオン 10ppm
当該電気メッキ浴のメッキ条件は浴温25℃、陰極電流密度2A/dm2とする。
上記標準組成のメッキ浴(以下、標準メッキ浴という)を基本として、可溶性銅塩に酸化銅(II)(以下の実施例、比較例も同様)、酸にグリコール酸を各々使用して、電気銅メッキ浴を建浴した。
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にクエン酸を各々使用して、電気銅メッキ浴を建浴した。
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にグルコン酸を各々使用して、電気銅メッキ浴を建浴した。
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にグリコール酸を各々使用し、グリコール酸の含有量を0.5モル/Lから0.1モル/Lに減量して、電気銅メッキ浴を建浴した。
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にグリコール酸を各々使用し、グリコール酸の含有量を0.5モル/Lから1.0モル/Lに増量して、電気銅メッキ浴を建浴した。
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にグリコール酸を各々使用し、酸化銅の含有量を0.8モル/Lから0.3モル/Lに減量し、グリコール酸の含有量を0.5モル/Lから2.0モル/Lに増量して、電気銅メッキ浴を建浴した。
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にイセチオン酸を各々使用して、電気銅メッキ浴を建浴した。
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に硫酸銅、酸にイセチオン酸を各々使用して、電気銅メッキ浴を建浴した。
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にエタンスルホン酸を各々使用して、電気銅メッキ浴を建浴した。
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にグリコール酸とメタンスルホン酸(MSA)の混合酸を各々使用して、電気銅メッキ浴を建浴した。混合酸のうちのグリコール酸の含有量は0.3モル/L、MSAは0.2モル/Lに調整した(従って、酸の合計量は0.5モル/Lである;下記の実施例11〜12、14も同様)。
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にグリコール酸とイセチオン酸の混合酸を各々使用して、電気銅メッキ浴を建浴した。混合酸のうちのグリコール酸の含有量は0.3モル/L、イセチオン酸は0.2モル/Lに調整した。
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にグリコール酸とMSAの混合酸を各々使用して、電気銅メッキ浴を建浴した。混合酸のうちのグリコール酸の含有量は0.1モル/L、MSAは0.4モル/Lに調整した。
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にグリコール酸とMSAの混合酸を各々使用し、酸化銅の含有量を0.5モル/Lから0.3モル/Lに減量し、酸の含有量を0.5モル/Lから2.0モル/Lに増量して、電気銅メッキ浴を建浴した。混合酸のうちのグリコール酸の含有量は1.0モル/L、MSAは1.0モル/Lに調整した。
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にグリコール酸とイセチオン酸の混合酸を各々使用して、電気銅メッキ浴を建浴した。混合酸のうちのグリコール酸の含有量は0.4モル/L、イセチオン酸は0.1モル/Lに調整した。
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に硫酸銅、酸に硫酸を各々使用して、電気銅メッキ浴を建浴した。
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸に硫酸を各々使用して、電気銅メッキ浴を建浴した。
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にMSAを各々使用して、電気銅メッキ浴を建浴した。
下記の組成で電気銅メッキ浴を建浴した。
酸化銅(Cuイオンとして) 0.16モル/L
ロッシェル塩 0.35モル/L
水酸化ナトリウム 50g/L
当該電気メッキ浴のメッキ条件は浴温60℃、陰極電流密度2A/dm2とする。
《ハルセルテストによる均一電着性の評価試験例》
即ち、鉄製のハルセル板を用いて、1A−5分−無撹拌の条件で通電しながら銅メッキを行って、高電流端から1.0cm、3.5cm、6.0cm、8.5cmの膜厚を蛍光X線膜厚計により測定し、下記に示すFieldの式に基づいて、異なる2点間の均一電着性の比率T(%)を算出した。異なる2点間の組み合わせは、6.0/8.5→P4.5、3.5/8.5→P10、1.0/8.5→P22とした。
[Fieldの式]
T(%)=100(P−M)/(P−M−2)
T:均一電着性
P:2点間の一次電流分布比
M:2点間のメッキ膜厚の比
(但し、ハルセルの陰極上の一次電流密度の分布は、i=I(5.10−5.24LogL)で表される。i:電流密度(A/dm2)、I:全電流(A)、L:高電流密度側端部からの距離(cm);所定の組み合わせによる2点間の電流密度の比が、夫々の一次電流密度分布比Pの数値(P4.5、P10、P22)となり、当該組み合わせによる測定点のメッキ膜厚の比が夫々Mの数値となる。)
理論的に、一次電流分布比Pでは、P4.5<P10<P22の順に数値が良くなり、固定した2点間のP値ごとに均一電着性は評価することができる。下記の評価はP22の項目に該当する実施例と比較例の対比に基づいて行ったが、P4.5、P10でも同様の傾向を示した。
従来公知の硫酸をベース酸とする比較例1〜2の均一電着性(P22)は37.7〜33.1%であったが、実施例1〜14では、実施例4を除いて、47.7〜72.6%(P22)を示し、特に、酸濃度の高い実施例5〜6では70%以上を示した。一般の目安として、P22で70%以上はきわめて優れた数値である。尚、実施例4では、グリコール酸の濃度が低いために均一電着性も他の実施例に比べて相対的に低くなったものと思われるが、比較例1〜2より高い数値であった。
従って、本発明の特定のオキシカルボン酸、当該オキシカルボン酸と有機スルホン酸の混合酸、或は、特定の有機スルホン酸をベース酸とする銅メッキ浴は、均一電着性の点で比較例1〜2に対して顕著な優位性を示した。
先ず、特定のオキシカルボン酸をベース酸とする実施例1〜6において、濃度が共通する実施例1〜3では、オキシカルボン酸としてはグリコール酸が優れていることが確認できる(上述の通り、実施例1では60.5%)。実施例5〜6に見るように、酸濃度が増すと均一電着性は向上し、逆に、実施例4に見るように、酸濃度が低いと均一電着性は低下する。しかしながら、前述の通り、実施例4の数値は比較例1〜3のそれを上回っていた。
第二に、特定の有機スルホン酸であるイセチオン酸、エタンスルホン酸をベース酸にする実施例7〜9では、特定のオキシカルボン酸に遜色がない均一電着性を示した。但し、濃度が共通する実施例1との対比では、これらの特定の有機スルホン酸に比べて、グリコール酸が優れた均一電着性を発揮することが確認できた。
第三に、特定のオキシカルボン酸(グリコール酸)と有機スルホン酸との混合酸をベース酸とする実施例10〜14を見ると、グリコール酸とイセチオン酸を混合した実施例11では、イセチオン酸を単用した実施例7〜8より優れた均一電着性を示した。グリコール酸とメタンスルホン酸を混合した実施例10では、メタンスルホン酸を単用した比較例3より優れた均一電着性を示した。また、混合酸の種類と濃度が同じ場合、グリコール酸の割合が増すと(実施例12→10、実施例11→14)、均一電着性は向上した。さらに、混合酸の濃度が増すと、均一電着性は向上した(実施例10、12→実施例13)。
スルーホール径0.4mm、板厚2.0mmのガラス・エポキシ系基板に、常法に従ってPd触媒活性を施し、薄付け無電解銅メッキを行ったものを試験片に用いた。
上記実施例1〜14及び比較例1〜4の各銅メッキ浴を用いて当該試験片に電気メッキした後、スルーホールの中心を軸心方向に切断し、スルーホール端部のメッキ厚さ(T1)と、スルーホール中央部のメッキ厚さ(T2)を顕微鏡で測定し、下式により均一電着性T(%)を算出した。
T(%)=(T2/T1)×100
尚、電気銅メッキの条件は、前述の標準メッキ浴及び比較例4のメッキ浴の欄で示した各条件とした。
比較例1〜4のスルーホールでの均一電着性は78〜81%であるが、実施例1〜14では、実施例4を除いて概ね90%を越えた数値を示した。尚、酸濃度が低い実施例4も比較例1〜4を越える数値であった。
一般に、スルーホールでの均一電着性の評価では、ハイスロー浴と呼ばれる酸濃度の高いもので90%程度、一般浴で70〜80%程度が目安となるが、特定のオキシカルボン酸、当該オキシカルボン酸と有機スルホン酸の混合酸、或は、特定の有機スルホン酸をベース酸とする実施例では、概ね90%を越える数値であることから、スルーホールでの均一電着性に優れることが確認できた。特に、グリコール酸を単用した実施例1では、一般的な酸濃度(0.5モル/L)であるにも拘わらず、98%の高い数値を示したことは注目に値する。また、グリコール酸に有機スルホン酸を混合した場合でも、これに準じる数値を示した。
以上のように、本発明の特定の有機酸をベース酸とする銅メッキ浴では、従来公知の硫酸をベース酸とする銅浴やメタンスルホン酸をベース酸とする銅浴に比べて顕著な均一電着性、特に、スルーホールでの均一電着性に優れることが確認できた。
そこで、今度は、上記スルーホールを有する基板に代えて、本発明の銅メッキ浴(例えば、実施例1)をビアホールを有する基板に適用したところ、良好なビアフィリング能力があることが確認できた。従って、本発明の銅メッキ浴をビアホールとスルーホールが混在する基板に適用した場合、ビアホールでの銅充填とスルーホールでの均一電着性を同時に達成できることが期待できる。尚、前述の通り、ビアフィリングはメカニズム的に均一電着性とは別ものであり、優れた均一電着性を示す一方で、良好なビアフィリング能力を示す理由は現時点では不明である。
Claims (8)
- 可溶性銅塩及びベース酸を含有する電気銅メッキ浴において、
ベース酸がグリコール酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸よりなる群から選ばれたオキシカルボン酸又はその塩の少なくとも一種であることを特徴とする電気銅メッキ浴。 - オキシカルボン酸がグリコール酸であることを特徴とする請求項1に記載の電気銅メッキ浴。
- グリコール酸の含有量が0.1〜12モル/Lであることを特徴とする請求項2に記載の電気銅メッキ浴。
- 可溶性銅塩及びベース酸を含有する電気銅メッキ浴において、
ベース酸が2−ヒドロキシエタンスルホン酸、エタンスルホン酸よりなる群から選ばれた有機スルホン酸であることを特徴とする電気銅メッキ浴。 - 請求項1又は2に記載のオキシカルボン酸又はその塩と、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸よりなる群から選ばれた有機スルホン酸との混合酸をベース酸にすることを特徴とする電気銅メッキ浴。
- さらに、レベラー、ブライトナーなどの添加剤を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気銅メッキ浴。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気銅メッキ浴を用いて、ビアホール及びスルーホールの混在する被メッキ物に銅メッキ皮膜を形成することを特徴とする電気銅メッキ方法。
- メッキ槽と補給槽を別々に設け、メッキ槽に被メッキ物からなる陰極と不溶性陽極を配置し、陽極室をイオン交換膜でメッキ槽から隔離し、メッキ槽に請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気銅メッキ浴を収容するとともに、
補給槽に陰極と銅を材質とする可溶性陽極を配置し、補給槽に電解質液を収容し、補給槽とメッキ槽を補給路を介して連通させて、
メッキ槽及び補給槽の夫々の陽極と陰極の間に直流電流を印加して、補給槽の陽極から溶解した銅イオンを補給路を介して銅イオン濃度の低下したメッキ槽に補給可能にしながら、被メッキ物に銅メッキを施すことを特徴とする電気銅メッキ方法。
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