JP2006137786A - 熱可塑性液晶ポリマーフィルムおよびこれを用いた回路基板 - Google Patents

熱可塑性液晶ポリマーフィルムおよびこれを用いた回路基板 Download PDF

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Abstract

【課題】 低吸湿性、高耐熱性、吸湿寸法安定性、熱寸法安定性に優れ、安定的にかつ低コストで誘電率、誘電損失を一層低下させた熱可塑性液晶ポリマーフィルム、およびこれを絶縁層とした回路基板を提供する。
【解決手段】 熱可塑性液晶ポリマーの成形後に熱処理されたフィルムであって、1GHz以上の周波数における誘電率および誘電損失の前記熱処理後の値が、それぞれ熱処理前の値の0.85〜0.98倍および0.60〜0.98倍に調整されている。この誘電特性を調整した熱可塑性液晶ポリマーフィルムを絶縁層として回路基板が構成される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、光学的異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性ポリマーからなるフィルム(以下、これを熱可塑性液晶ポリマーフィルムと称する)およびこれを絶縁層とする回路基板に関する。
近年、パーソナルコンピュータ(PC)など情報処理分野、携帯電話などの無線通信分野の発展は目覚ましい。ここで、これらの機器に組み込まれる回路基板に使用される絶縁材料には、低誘電率化による信号伝播速度の向上が求められるほか、低誘電率化および低誘電損失化(低誘電特性)による信号減衰量の低減が求められている。
ところで、材料の誘電特性は、その分子構造により決定されるため各材料に固有の値を持ち、これを制御するには一定の限界がある。このため、従来から、誘電率が1と低い空気を材料に含ませて多孔質化することにより、材料の誘電特性を制御した多孔質材料が多く報告されている。多孔質材料はその構造により分類され、例えば、小さな空孔が均一に分散したスポンジ構造、上下のフィルム層と内部の構造体で囲まれた空間が空孔となるボイド構造がある。この例として、空孔径がナノサイズであるスポンジ構造で、超臨界炭酸ガスを用いて高表面積を有する多孔質材を形成し、低誘電特性を得ることが知られている(例えば、特許文献1)。
特開2000−154273号公報
しかし、上記多孔質材を形成する方法では、高温高湿度雰囲気下、空隙中に存在する水分により誘電率、誘電損失が大きくなってしまい、屋外設置、車載用といった過酷な環境使用状況においては安定な特性を維持できず民生用電子機器の要求に応えられないといった問題がある。
一方、熱可塑性液晶ポリマーフィルムは素材に由来した優れた低吸湿性、耐熱性、耐薬品性、および電気的性質を有し、特に低誘電率、低誘電損失であるので高周波回路基板として有用であるが、今後の高周波機器に対応するために更なる低誘電率、低誘電損失が求められている。しかし、従来技術では、熱可塑性液晶ポリマーフィルムにおいても、やはり誘電率、誘電損失はその分子構造により決定されるため固有の値を持ち、これを制御するには一定の限界があった。
本発明の目的は、低吸湿性、高耐熱性、吸湿寸法安定性、熱寸法安定性に優れ、安定的にかつ低コストで誘電率、誘電損失を一層低下させた熱可塑性液晶ポリマーフィルム、およびこれを絶縁層とした回路基板を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明にかかる熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、熱可塑性液晶ポリマーの成形後に熱処理されたフィルムであって、1GHz以上の周波数における誘電率および誘電損失の前記熱処理後の値が、それぞれ熱処理前の値の0.85〜0.98倍(改善率2〜15%)および0.60〜0.98倍(改善率2〜40%)に調整されているものである。
本発明は、熱可塑性液晶ポリマーを熱処理することにより誘電率、誘電損失を制御できることの知見に基づいてなされたものであり、熱可塑性液晶ポリマーフィルムが、素材である剛直分子が高周波の動きに追従できず、ギガヘルツ帯での誘電率および誘電損失が小さいことに鑑みて、熱処理によって結晶サイズが大きく成長する効果により、誘電率および誘電損失が一層低下することを利用するものである。つまり、熱処理によって大きなサイズの強固なドメインが成長し、このドメインがフィルムを補強する自己補強効果を生み、高周波の動きに追従できない剛直且つ強固なドメインが成長することにより誘電率および誘電損失が一層低下するものと考えられる。
これにより、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの素材に由来する低吸湿性、高耐熱性、吸湿寸法安定性、熱寸法安定性に優れる特性をもつだけでなく、当該素材に由来する低誘電率、低誘電損失など電気的性質に優れた特性について、安定的にかつ低コストで当該誘電率、誘電損失を一層低下させた熱可塑性液晶ポリマーフィルムが得られる。
好ましくは、酸素濃度が0.5%〜21%の雰囲気で熱処理される。また、この熱処理には、熱可塑性液晶ポリマーの融点より10〜30℃低い温度で熱処理する第1の熱処理と、第1の熱処理後に、該融点より0〜20℃高い温度で熱処理する第2の熱処理が含まれる。
本発明に使用される熱可塑性液晶ポリマーフィルムの原料は特に限定されるものではないが、その具体例として、以下に例示する化合物およびその誘導体から導かれる公知のサーモトロピック液晶ポリエステルおよびサーモトロピック液晶ポリエステルアミドを挙げることができる。但し、光学的に異方性の溶融相を形成し得るポリマーを得るためには、繰り返し単位の好適な組み合わせが必要とされる。
(1)芳香族または脂肪族ジヒドロキシ化合物(代表例は表1参照)
Figure 2006137786
(2)芳香族または脂肪族ジカルボン酸(代表例は表2参照)
Figure 2006137786
(3)芳香族ヒドロキシカルボン酸(代表例は表3参照)
Figure 2006137786
(4)芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミンまたは芳香族アミノカルボン酸(代表例は表4参照)
Figure 2006137786
これらの原料化合物から得られる熱可塑性液晶ポリマーの代表例として表5に示す構造単位を有する共重合体(a)〜(e)を挙げることができる。
Figure 2006137786
本発明において、誘電率および誘電損失を低下する方法としては、一旦得られたフィルムを加熱処理する、真空プレス装置等を用いて導電体と熱圧着させた後、加熱処理を行う、スパッタリングやめっきなどによりフィルム上に箔導電体を直接形成した後、加熱処理する方法がある。熱処理の手段としては特に制限はなく、熱風循環炉、熱ロール、セラミックヒーター、熱プレスなどを例示することができる。
熱処理条件としては、温度及び時間を変えて1段階または複数段階の熱処理が可能であるが、誘電率および誘電損失を効果的に低下させる方法としては、2段階で熱処理を行うことが望ましい。2段階の処理では、融点より10℃〜30℃低い温度、好ましくは融点より10℃〜20℃低い温度で熱処理する第1の熱処理を行い、第2の熱処理では融点より0〜30℃高い温度で熱処理することが好ましい。第1の熱処理を融点より高い温度で処理を行うと構造を崩してしまい、強固なドメインが成長しにくくなり、誘電率および誘電損失を低下させる効果が少ない。第2の熱処理は融点より高い温度で熱処理を行えば、第1の熱処理で得られた強固なドメインをさらに大きく成長させることが可能になる。
また、熱処理時間としては、本発明の目的を達成する限りにおいて、特に限定されるものではないが、2段階で熱処理を行う場合には第1の熱処理よりも第2の熱処理の処理時間が長いほど、さらには第2の熱処理の処理時間が長いほど効果的である。より具体的には、第1の熱処理の処理時間としては30分から3時間程度が好ましく、次いで第2の熱処理の処理時間を第1の熱処理の処理時間の1〜4倍に設定することが、誘電率および誘電損失を低下する方法として効果的である。
熱処理の雰囲気としては、大気または不活性ガスを選択することができる。不活性ガスを採用する例としては、窒素置換により酸素濃度を低くして熱処理する方法がある。窒素置換により酸素濃度を低くすることにより熱処理によるドメイン成長が促され短時間処理が可能になる。しかし、表層に生成するアミド結合により誘電率および誘電損失が悪化する場合があるので、適度な酸素濃度で熱処理を行うことが望ましい。熱処理雰囲気の酸素濃度としては、0.5%以上21%以下が好ましく、さらに1%以上21%以下で熱処理を行うことが好ましい。
本発明に使用される熱可塑性液晶ポリマーの融点としては、フィルムの所望の耐熱性および加工性を得る目的においては、約200〜約400℃の範囲内、とりわけ約250〜約350℃の範囲内に融点を有するものが好ましいが、フィルム製造の点からは、比較的低い融点の熱可塑性液晶ポリマーが誘電率および誘電損失の低下効果が大きい。
本発明に使用される熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、熱可塑性液晶ポリマーを押出成形して得られる。任意の押出成形法がこの目的のために使用されるが、周知のTダイ法、インフレーション法等が工業的に有利である。特にインフレーション法では、フィルムの機械軸方向(以下、MD方向と略す)だけでなく、これと直交する方向(以下、TD方向と略す)にも応力が加えられるため、MD方向とTD方向との間における機械的性質および熱的性質のバランスのとれたフィルムを得ることができるので、より好適に用いることができる。
なかでも、分子配向度SORが1.3以下の熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、MD方向とTD方向との間における機械的性質および熱的性質のバランスが良好であるので、より実用性が高い。分子配向度SORは、マイクロ波分子配向度測定機において、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを、マイクロ波の進行方向にフィルム面が垂直になるように、マイクロ波共振導波管中に挿入し、該フィルムを透過したマイクロ波の電場強度を検出することによって測定される、分子配向の度合いを与える指標である。本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムの適用分野によって、必要とされる分子配向度SORは当然異なるが、SOR≧1.5の場合は熱可塑性液晶ポリマー分子の配向の偏りが著しいためにフィルムが硬くなり、かつMD方向に裂け易い。加熱時の反りがないなどの形態安定性が必要とされるプリント配線板や多層プリント配線板等の場合には、SOR≦1.3であることが望ましい。特に加熱時の反りをほとんど無くす必要がある精密プリント配線板や多層プリント配線板等の場合には、SOR≦1.03であることが望ましい。
本発明において使用される熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、任意の厚みであってもよく、そして、5mm以下の板状またはシート状のものをも包含する。ただし、高周波回路基板に使用する場合は、厚みが厚いほど伝送損失が小さくなるので、できるだけ厚みを厚くする必要がある。しかしながら電気絶縁層として熱可塑性液晶ポリマーフィルムを単独で用いる場合、そのフィルムの膜厚は、10〜150μmの範囲内にあることが好ましく、15〜100μmの範囲内がより好ましい。フィルムの厚さが薄過ぎる場合には、フィルムの剛性や強度が小さくなることから、フィルム膜厚10〜150μmの範囲のフィルムを積層させて任意の厚みを得る方法を使用する。
本発明において使用される熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、電気絶縁層となる熱可塑性液晶ポリマーフィルムの少なくとも一方の面に銅箔などの金属箔を導電体として積層して形成されるもの(以下、銅張積層板ということもある)である。用いられる金属箔の材質としては、電気的接続に使用されるような金属が好適であり、銅のほか金、銀、ニッケル、アルミニウムなどを挙げることができる。銅箔は圧延法、電気分解法などによって製造される何れのものでも用いることができるが、表面粗さの大きい電気分解法によって製造されるものが好ましい。金属箔には、銅箔に対して通常施される酸洗浄などの化学的処理が施されていてもよい。用いられる金属箔の厚さは、10〜100μmの範囲内が好ましく、10〜35μmの範囲内がより好ましい。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。また、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点、膜厚、誘電率、誘電損失および分子配向度の評価は以下の方法で行った。
(1)融点
示差走査熱量計を用いて、フィルムの熱挙動を観察して得た。つまり、供試フィルムを20℃/分の速度で昇温して完全に溶融させた後、溶融物を50℃/分の速度で50℃まで急冷し、再び20℃/分の速度で昇温した時に現れる吸熱ピークの位置を、フィルムの融点として記録した。
(2)膜厚
膜厚は、デジタル厚み計(株式会社ミツトヨ製)を用い、選られたフィルムをTD方向に1cm間隔で測定し、中心部および端部から任意に選んだ10点の平均値を膜厚とした。
(3)誘電率、誘電損失
空洞共振器摂動法による誘電体材料計測装置(関東電子応用開発(株)製)を使用して測定周波数1GHzおよび10GHzで測定を行った。摂動法による誘電率測定方法は、図3に示すように、空洞共振器に微小な材料(幅:2.7mm×長さ:45mm)を挿入し挿入前後の共振周波数の変化から材料の誘電率および誘電損失を測定するものである。
誘電率、誘電損失の改善率の定義
誘電率改善率(%)=((熱処理前の誘電率−熱処理後の誘電率)
/熱処理前の誘電率)×100
誘電損失改善率(%)=((熱処理前の誘電損失−熱処理後の誘電損失)
/熱処理前の誘電損失)×100
この場合、熱処理の効果が大きいほど、改善率が大きくなる。
(4)分子配向度の測定
分子配向度SOR(Segment Orientation Ratio)とは、分子配向の度合いを与える指標をいい、従来のMOR(Molecular Orientation Ratio)とは異なり、物体の厚さを考慮した値である。この分子配向度SORは、以下のように算出される。
まず、周知のマイクロ波分子配向度測定機において、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを、マイクロ波の進行方向にフィルム面が垂直になるように、マイクロ波共振導波管中に挿入し、該フィルムを透過したマイクロ波の電場強度(マイクロ波透過強度)が測定される。
そして、この測定値に基づいて、次式により、m値(屈折率と称する)が算出される。
m=(Zo/△z) X [1−νmax/νo]
ただし、 Zoは装置定数、△z は物体の平均厚、νmaxはマイクロ波の振動数を変化させたとき、最大のマイクロ波透過強度を与える振動数、νoは平均厚ゼロのとき(すなわち物体がないとき)の最大マイクロ波透過強度を与える振動数である。
次に、マイクロ波の振動方向に対する物体の回転角が0°のとき、つまり、マイクロ波の振動方向と、物体の分子が最もよく配向されている方向であって、最小マイクロ波透過強度を与える方向とが合致しているときのm値をm0、回転角が90°のときのm値をm90として、分子配向度SORがm0/ m90により算出される。
参考例
p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の共重合物で、融点が283℃である熱可塑性液晶ポリマーを溶融押出し、インフレーション成形法により膜厚が50μm、分子配向度SORが1.03の熱可塑性液晶ポリマーフィルム1を得た。熱可塑性液晶ポリマーフィルム1(融点Tm1:283℃)の誘電率および誘電損失は表6に示すとおり、誘電率:3.00(1GHz),2.92(10GHz)、誘電損失:0.0025(1GHz),0.0022(10GHz)であった。
Figure 2006137786
実施例1
図1a〜図1cに示すように、参考例で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルム1(図1a)に熱処理炉3を用いてTm1−10℃で2時間、融点Tm1+10℃で3時間、酸素濃度21%の雰囲気で加熱処理を行い(図1b)、融点Tm2(310℃)の誘電特性を調整した熱可塑性液晶ポリマ−フィルム2を得た(図1c)。
誘電特性は表6に示すとおり、誘電率が2.90(1GHz)および2.81(10GHz)、誘電損失が0.0022(1GHz),0.0020(10GHz)であった。誘電率の改善率は3.3%(1GHz)および3.8%(10GHz)、誘電損失の改善率は12.0%(1GHz)および9.1%(10GHz)であった。
実施例2
実施例1とは熱処理時間のみが異なる条件で図1に示すように、参考例で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルム1に熱処理炉3を用いてTm1−10℃で2時間、融点Tm1+10℃で5時間、酸素濃度21%の雰囲気で加熱処理を行い、融点Tm3(320℃)の誘電特性を調整した熱可塑性液晶ポリマ−フィルム2を得た。
誘電特性は表6に示すとおり、誘電率が2.80(1GHz)および2.70(10GHz)、誘電損失が0.0022(1GHz)および0.0020(10GHz)であった。誘電率の改善率は6.7%(1GHz)および7.5%(10GHz)、誘電損失の改善率は12.0%(1GHz)および9.1%(10GHz)であった。
実施例3
図2a〜図2gに示すように、熱可塑性液晶ポリマーフィルム1(Tm1:283℃)に銅箔5、5'(厚さ18μm)を重ね合わせ(図2a、b)、真空熱プレス装置を用い、加熱盤を280℃に設定し、40Kg/cmの圧力で加熱圧着し(図2c)、熱可塑性液晶ポリマーフィルム1と銅箔5、5'の組み合わせからなる両面銅張り板4を作製した(図2d)。次に、銅箔5、5'を塩化第二鉄水溶液(東亜合成(株)製)で部分的に除去することにより、回路基板6を得た後(図2e)、引き続き、実施例1と同条件で熱処理炉3を用いて熱処理し(図2f)、誘電特性を調整した回路基板7を得た(図2g)。
誘電特性は表6に示すとおり、誘電率が2.80(1GHz)および2.80(10GHz)、誘電損失が0.0019(1GHz)および0.0019(10GHz)であった。誘電率の改善率は6.7%(1GHz)および4.1%(10GHz)、誘電損失の改善率は24.0%(1GHz)および13.6%(10GHz)であった。
実施例4
実施例3とは熱処理時間のみが異なる条件で、図2に示すようにして、Tm1−10℃で1時間、融点Tm1+10℃で5時間加熱処理を行った後、誘電特性を調整した回路基板7を得た。誘電特性は、誘電率が2.70(1GHz)および2.70(10GHz)、誘電損失が0.0019(1GHz)および0.0019(10GHz)であった。誘電率の改善率は10.0%(1GHz)および7.5%(10GHz)、誘電損失の改善率は24.0%(1GHz)および13.6%(10GHz)であった。
実施例5
熱処理中の雰囲気を窒素置換により酸素濃度5.0%にした熱処理炉を用いて熱処理を行った他は実施例2と同様に処理を行い、融点Tm5(315℃)の誘電特性を調整した熱可塑性液晶ポリマ−フィルム2を得た。
誘電特性は表6に示すとおり、誘電率が2.80(1GHz)および2.70(10GHz)、誘電損失が0.0022(1GHz)および0.0020(10GHz)であった。誘電率の改善率は6.7%(1GHz)および7.5%(10GHz)、誘電損失の改善率は12.0%(1GHz)および9.1%(10GHz)であった。
実施例6
熱処理中の雰囲気を窒素置換により酸素濃度1.0%にした熱処理炉を用いて熱処理を行った他は実施例2と同様に処理を行い、融点Tm6(320℃)の誘電特性を調整した熱可塑性液晶ポリマ−フィルム2を得た。
誘電特性は表6に示すとおり、誘電率が2.90(1GHz)および2.81(10GHz)、誘電損失が0.0022(1GHz),0.0020(10GHz)であった。誘電率の改善率は3.3%(1GHz)および3.8%(10GHz)、誘電損失の改善率は12.0%(1GHz)および9.1%(10GHz)であった。
比較例1
熱処理中の雰囲気を窒素置換により酸素濃度0.1%にした熱処理炉を用いて熱処理を行った他は実施例1と同様に融点Tm7(310℃)の誘電特性を調整した熱可塑性液晶ポリマ−フィルムを得た。
誘電特性は、誘電率が3.00(1GHz)および2.90(10GHz)、誘電損失が0.0029(1GHz)および0.0029(10GHz)であった。誘電率の改善率は0.0%(1GHz)および0.7%(10GHz)、誘電損失の改善率は-16.0%(1GHz)および-31.8%(10GHz)であった。
比較例2
熱処理中の雰囲気を窒素置換により酸素濃度0.1%にした熱処理炉を用いて熱処理を行った他は実施例2と同様に処理を行い、融点Tm8(320℃)の誘電特性を調整した熱可塑性液晶ポリマ−フィルムを得た。
誘電特性は、誘電率が3.03(1GHz)および2.93(10GHz)、誘電損失が0.0029(1GHz)および0.0029(10GHz)であった。誘電率の改善率は-1.0%(1GHz)および-0.3%(10GHz)、誘電損失の改善率は-16.0%(1GHz)および-31.8%(10GHz)であった。
比較例3
実施例1とは熱処理時間のみが異なる条件で図1に示すように、参考例で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルム1に熱処理炉3を用いてTm1で5時間、窒素置換により酸素濃度0.1%の雰囲気で加熱処理を行い、融点Tm9(320℃)の誘電特性を調整した熱可塑性液晶ポリマ−フィルムを得た。
誘電特性は、誘電率が3.03(1GHz)および2.93(10GHz)、誘電損失が0.0029(1GHz)および0.0029(10GHz)であった。誘電率の改善率は-1.0%(1GHz)および-0.3%(10GHz)、誘電損失の改善率は-16.0%(1GHz)および-31.8%(10GHz)であった。
比較例4
熱処理中の雰囲気を窒素置換により酸素濃度を0.1%にした熱処理炉を用い、Tm1−10℃で2時間、融点Tm1+10℃で5時間加熱処理を行った他は実施例3と同様にして、誘電特性を調整した回路基板を得た。
誘電特性は、誘電率が3.00(1GHz)および2.93(10GHz)、誘電損失が0.0029(1GHz)および0.0029(10GHz)であった。誘電率の改善率は0.0%(1GHz)および0.7%(10GHz)、誘電損失の改善率は-16.0%(1GHz)および-31.8%(10GHz)であった。
比較例5
熱処理中の雰囲気を窒素置換により酸素濃度を0.1%にした熱処理炉を用い、Tm1−10℃で2時間、融点Tm1+10℃で5時間加熱処理を行った他は実施例4と同様にして、誘電特性を調整した回路基板を得た。
誘電特性は、誘電率が3.03(1GHz)および2.93(10GHz)、誘電損失が0.0029(1GHz)および0.0029(10GHz)であった。誘電率の改善率は-1.0%(1GHz)および-0.3%(10GHz)、誘電損失の改善率は-16.0%(1GHz)および-36.4%(10GHz)であった。
表6から明らかなように、本発明になる誘電特性調整方法により、実施例1〜6で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、熱処理前と比較して誘電率改善率が3.3%〜10.0%(1GHz)および3.8%〜7.5%(10GHz)であり改善効果が認められる。熱処理方法の比較では、融点以下の熱処理を行った後、融点以上の熱処理を行うと効果的であり、熱処理時間が長いほど改善効果が大きい。また、一旦得られたフィルムを加熱処理することによって誘電特性の改善を図る方法と、真空プレス装置等を用いて金属箔と熱圧着させた後に加熱処理を行い誘電特性の改善を図る方法のいずれも効果が認められる。
一方、窒素置換により酸素濃度を0.5%未満とした雰囲気で熱処理した比較例1〜5の熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、処理前と比較して誘電率改善率が0.0%〜-1.0%(1GHz)および0.7%〜-0.3%(10GHz)であり、改善効果はなかった。また、熱処理前と比較して誘電率改善率が-16.0%(1GHz)および誘電損失改善率は-31.8%〜-36.4%(10GHz)であり、改善効果はなく逆に悪化した。
本発明にかかる熱可塑性液晶ポリマーフィルムの製造方法を示す構成図である。 図1の熱可塑性液晶ポリマーフィルムを用いた回路基板の製造方法を示す構成図である。 誘電特性を測定する装置のブロック図である。
符号の説明
1:熱可塑性液晶ポリマーフィルム
2:誘電特性を調整した熱可塑性液晶ポリマーフィルム
3:熱処理炉
4:両面銅張り板
5、5':銅箔
6:エッチング後の回路基板
7:誘電特性を調整したエッチング後の回路基板

Claims (7)

  1. 光学的異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性ポリマー(以下、これを熱可塑性液晶ポリマーと称する)の成形後に熱処理されたフィルムであって、1GHz以上の周波数における誘電率および誘電損失の前記熱処理後の値が、それぞれ熱処理前の値の0.85〜0.98倍および0.60〜0.98倍に調整されている熱可塑性液晶ポリマーフィルム。
  2. 酸素濃度が0.5%〜21%の雰囲気で熱処理される請求項1に記載の熱可塑性液晶ポリマーフィルム。
  3. 前記熱処理が、熱可塑性液晶ポリマーの融点より10〜30℃低い温度で熱処理する第1の熱処理と、第1の熱処理後に、該融点より0〜20℃高い温度で熱処理する第2の熱処理とを含む請求項1または2に記載の熱可塑性液晶ポリマーフィルム。
  4. 熱処理後の誘電率が2.5〜3.2、誘電損失が0.001〜0.003である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性液晶ポリマーフィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性液晶ポリマーフィルムを電気絶縁層とする回路基板。
  6. 熱可塑性液晶ポリマーの成形後に熱処理してフィルムを製造する方法であって、1GHz以上の周波数における誘電率および誘電損失の熱処理後の値が、それぞれ熱処理前の値の0.85〜0.98倍および0.60〜0.98倍に調整されるように熱処理を行う熱可塑性液晶ポリマーフィルムの製造方法。
  7. 熱可塑性液晶ポリマーフィルムを絶縁層とする回路基板を製造する方法であって、該熱可塑性液晶ポリマーフィルムと導電体からなる複合体を形成した後に、該熱可塑性液晶ポリマーフィルムの1GHz以上の周波数における誘電率および誘電損失の熱処理後の値が、それぞれ熱処理前の値の0.85〜0.98倍および0.60〜0.98倍に調整されるように熱処理を行う回路基板の製造方法。
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