JP2006137786A - 熱可塑性液晶ポリマーフィルムおよびこれを用いた回路基板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 熱可塑性液晶ポリマーの成形後に熱処理されたフィルムであって、1GHz以上の周波数における誘電率および誘電損失の前記熱処理後の値が、それぞれ熱処理前の値の0.85〜0.98倍および0.60〜0.98倍に調整されている。この誘電特性を調整した熱可塑性液晶ポリマーフィルムを絶縁層として回路基板が構成される。
【選択図】 図1
Description
(1)融点
示差走査熱量計を用いて、フィルムの熱挙動を観察して得た。つまり、供試フィルムを20℃/分の速度で昇温して完全に溶融させた後、溶融物を50℃/分の速度で50℃まで急冷し、再び20℃/分の速度で昇温した時に現れる吸熱ピークの位置を、フィルムの融点として記録した。
膜厚は、デジタル厚み計(株式会社ミツトヨ製)を用い、選られたフィルムをTD方向に1cm間隔で測定し、中心部および端部から任意に選んだ10点の平均値を膜厚とした。
空洞共振器摂動法による誘電体材料計測装置(関東電子応用開発(株)製)を使用して測定周波数1GHzおよび10GHzで測定を行った。摂動法による誘電率測定方法は、図3に示すように、空洞共振器に微小な材料(幅:2.7mm×長さ:45mm)を挿入し挿入前後の共振周波数の変化から材料の誘電率および誘電損失を測定するものである。
誘電率、誘電損失の改善率の定義
誘電率改善率(%)=((熱処理前の誘電率−熱処理後の誘電率)
/熱処理前の誘電率)×100
誘電損失改善率(%)=((熱処理前の誘電損失−熱処理後の誘電損失)
/熱処理前の誘電損失)×100
この場合、熱処理の効果が大きいほど、改善率が大きくなる。
分子配向度SOR(Segment Orientation Ratio)とは、分子配向の度合いを与える指標をいい、従来のMOR(Molecular Orientation Ratio)とは異なり、物体の厚さを考慮した値である。この分子配向度SORは、以下のように算出される。
まず、周知のマイクロ波分子配向度測定機において、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを、マイクロ波の進行方向にフィルム面が垂直になるように、マイクロ波共振導波管中に挿入し、該フィルムを透過したマイクロ波の電場強度(マイクロ波透過強度)が測定される。
そして、この測定値に基づいて、次式により、m値(屈折率と称する)が算出される。
m=(Zo/△z) X [1−νmax/νo]
ただし、 Zoは装置定数、△z は物体の平均厚、νmaxはマイクロ波の振動数を変化させたとき、最大のマイクロ波透過強度を与える振動数、νoは平均厚ゼロのとき(すなわち物体がないとき)の最大マイクロ波透過強度を与える振動数である。
次に、マイクロ波の振動方向に対する物体の回転角が0°のとき、つまり、マイクロ波の振動方向と、物体の分子が最もよく配向されている方向であって、最小マイクロ波透過強度を与える方向とが合致しているときのm値をm0、回転角が90°のときのm値をm90として、分子配向度SORがm0/ m90により算出される。
p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の共重合物で、融点が283℃である熱可塑性液晶ポリマーを溶融押出し、インフレーション成形法により膜厚が50μm、分子配向度SORが1.03の熱可塑性液晶ポリマーフィルム1を得た。熱可塑性液晶ポリマーフィルム1(融点Tm1:283℃)の誘電率および誘電損失は表6に示すとおり、誘電率:3.00(1GHz),2.92(10GHz)、誘電損失:0.0025(1GHz),0.0022(10GHz)であった。
図1a〜図1cに示すように、参考例で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルム1(図1a)に熱処理炉3を用いてTm1−10℃で2時間、融点Tm1+10℃で3時間、酸素濃度21%の雰囲気で加熱処理を行い(図1b)、融点Tm2(310℃)の誘電特性を調整した熱可塑性液晶ポリマ−フィルム2を得た(図1c)。
誘電特性は表6に示すとおり、誘電率が2.90(1GHz)および2.81(10GHz)、誘電損失が0.0022(1GHz),0.0020(10GHz)であった。誘電率の改善率は3.3%(1GHz)および3.8%(10GHz)、誘電損失の改善率は12.0%(1GHz)および9.1%(10GHz)であった。
実施例1とは熱処理時間のみが異なる条件で図1に示すように、参考例で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルム1に熱処理炉3を用いてTm1−10℃で2時間、融点Tm1+10℃で5時間、酸素濃度21%の雰囲気で加熱処理を行い、融点Tm3(320℃)の誘電特性を調整した熱可塑性液晶ポリマ−フィルム2を得た。
誘電特性は表6に示すとおり、誘電率が2.80(1GHz)および2.70(10GHz)、誘電損失が0.0022(1GHz)および0.0020(10GHz)であった。誘電率の改善率は6.7%(1GHz)および7.5%(10GHz)、誘電損失の改善率は12.0%(1GHz)および9.1%(10GHz)であった。
図2a〜図2gに示すように、熱可塑性液晶ポリマーフィルム1(Tm1:283℃)に銅箔5、5'(厚さ18μm)を重ね合わせ(図2a、b)、真空熱プレス装置を用い、加熱盤を280℃に設定し、40Kg/cm2の圧力で加熱圧着し(図2c)、熱可塑性液晶ポリマーフィルム1と銅箔5、5'の組み合わせからなる両面銅張り板4を作製した(図2d)。次に、銅箔5、5'を塩化第二鉄水溶液(東亜合成(株)製)で部分的に除去することにより、回路基板6を得た後(図2e)、引き続き、実施例1と同条件で熱処理炉3を用いて熱処理し(図2f)、誘電特性を調整した回路基板7を得た(図2g)。
誘電特性は表6に示すとおり、誘電率が2.80(1GHz)および2.80(10GHz)、誘電損失が0.0019(1GHz)および0.0019(10GHz)であった。誘電率の改善率は6.7%(1GHz)および4.1%(10GHz)、誘電損失の改善率は24.0%(1GHz)および13.6%(10GHz)であった。
実施例3とは熱処理時間のみが異なる条件で、図2に示すようにして、Tm1−10℃で1時間、融点Tm1+10℃で5時間加熱処理を行った後、誘電特性を調整した回路基板7を得た。誘電特性は、誘電率が2.70(1GHz)および2.70(10GHz)、誘電損失が0.0019(1GHz)および0.0019(10GHz)であった。誘電率の改善率は10.0%(1GHz)および7.5%(10GHz)、誘電損失の改善率は24.0%(1GHz)および13.6%(10GHz)であった。
熱処理中の雰囲気を窒素置換により酸素濃度5.0%にした熱処理炉を用いて熱処理を行った他は実施例2と同様に処理を行い、融点Tm5(315℃)の誘電特性を調整した熱可塑性液晶ポリマ−フィルム2を得た。
誘電特性は表6に示すとおり、誘電率が2.80(1GHz)および2.70(10GHz)、誘電損失が0.0022(1GHz)および0.0020(10GHz)であった。誘電率の改善率は6.7%(1GHz)および7.5%(10GHz)、誘電損失の改善率は12.0%(1GHz)および9.1%(10GHz)であった。
熱処理中の雰囲気を窒素置換により酸素濃度1.0%にした熱処理炉を用いて熱処理を行った他は実施例2と同様に処理を行い、融点Tm6(320℃)の誘電特性を調整した熱可塑性液晶ポリマ−フィルム2を得た。
誘電特性は表6に示すとおり、誘電率が2.90(1GHz)および2.81(10GHz)、誘電損失が0.0022(1GHz),0.0020(10GHz)であった。誘電率の改善率は3.3%(1GHz)および3.8%(10GHz)、誘電損失の改善率は12.0%(1GHz)および9.1%(10GHz)であった。
熱処理中の雰囲気を窒素置換により酸素濃度0.1%にした熱処理炉を用いて熱処理を行った他は実施例1と同様に融点Tm7(310℃)の誘電特性を調整した熱可塑性液晶ポリマ−フィルムを得た。
誘電特性は、誘電率が3.00(1GHz)および2.90(10GHz)、誘電損失が0.0029(1GHz)および0.0029(10GHz)であった。誘電率の改善率は0.0%(1GHz)および0.7%(10GHz)、誘電損失の改善率は-16.0%(1GHz)および-31.8%(10GHz)であった。
熱処理中の雰囲気を窒素置換により酸素濃度0.1%にした熱処理炉を用いて熱処理を行った他は実施例2と同様に処理を行い、融点Tm8(320℃)の誘電特性を調整した熱可塑性液晶ポリマ−フィルムを得た。
誘電特性は、誘電率が3.03(1GHz)および2.93(10GHz)、誘電損失が0.0029(1GHz)および0.0029(10GHz)であった。誘電率の改善率は-1.0%(1GHz)および-0.3%(10GHz)、誘電損失の改善率は-16.0%(1GHz)および-31.8%(10GHz)であった。
実施例1とは熱処理時間のみが異なる条件で図1に示すように、参考例で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルム1に熱処理炉3を用いてTm1で5時間、窒素置換により酸素濃度0.1%の雰囲気で加熱処理を行い、融点Tm9(320℃)の誘電特性を調整した熱可塑性液晶ポリマ−フィルムを得た。
誘電特性は、誘電率が3.03(1GHz)および2.93(10GHz)、誘電損失が0.0029(1GHz)および0.0029(10GHz)であった。誘電率の改善率は-1.0%(1GHz)および-0.3%(10GHz)、誘電損失の改善率は-16.0%(1GHz)および-31.8%(10GHz)であった。
熱処理中の雰囲気を窒素置換により酸素濃度を0.1%にした熱処理炉を用い、Tm1−10℃で2時間、融点Tm1+10℃で5時間加熱処理を行った他は実施例3と同様にして、誘電特性を調整した回路基板を得た。
誘電特性は、誘電率が3.00(1GHz)および2.93(10GHz)、誘電損失が0.0029(1GHz)および0.0029(10GHz)であった。誘電率の改善率は0.0%(1GHz)および0.7%(10GHz)、誘電損失の改善率は-16.0%(1GHz)および-31.8%(10GHz)であった。
熱処理中の雰囲気を窒素置換により酸素濃度を0.1%にした熱処理炉を用い、Tm1−10℃で2時間、融点Tm1+10℃で5時間加熱処理を行った他は実施例4と同様にして、誘電特性を調整した回路基板を得た。
誘電特性は、誘電率が3.03(1GHz)および2.93(10GHz)、誘電損失が0.0029(1GHz)および0.0029(10GHz)であった。誘電率の改善率は-1.0%(1GHz)および-0.3%(10GHz)、誘電損失の改善率は-16.0%(1GHz)および-36.4%(10GHz)であった。
2:誘電特性を調整した熱可塑性液晶ポリマーフィルム
3:熱処理炉
4:両面銅張り板
5、5':銅箔
6:エッチング後の回路基板
7:誘電特性を調整したエッチング後の回路基板
Claims (7)
- 光学的異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性ポリマー(以下、これを熱可塑性液晶ポリマーと称する)の成形後に熱処理されたフィルムであって、1GHz以上の周波数における誘電率および誘電損失の前記熱処理後の値が、それぞれ熱処理前の値の0.85〜0.98倍および0.60〜0.98倍に調整されている熱可塑性液晶ポリマーフィルム。
- 酸素濃度が0.5%〜21%の雰囲気で熱処理される請求項1に記載の熱可塑性液晶ポリマーフィルム。
- 前記熱処理が、熱可塑性液晶ポリマーの融点より10〜30℃低い温度で熱処理する第1の熱処理と、第1の熱処理後に、該融点より0〜20℃高い温度で熱処理する第2の熱処理とを含む請求項1または2に記載の熱可塑性液晶ポリマーフィルム。
- 熱処理後の誘電率が2.5〜3.2、誘電損失が0.001〜0.003である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性液晶ポリマーフィルム。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性液晶ポリマーフィルムを電気絶縁層とする回路基板。
- 熱可塑性液晶ポリマーの成形後に熱処理してフィルムを製造する方法であって、1GHz以上の周波数における誘電率および誘電損失の熱処理後の値が、それぞれ熱処理前の値の0.85〜0.98倍および0.60〜0.98倍に調整されるように熱処理を行う熱可塑性液晶ポリマーフィルムの製造方法。
- 熱可塑性液晶ポリマーフィルムを絶縁層とする回路基板を製造する方法であって、該熱可塑性液晶ポリマーフィルムと導電体からなる複合体を形成した後に、該熱可塑性液晶ポリマーフィルムの1GHz以上の周波数における誘電率および誘電損失の熱処理後の値が、それぞれ熱処理前の値の0.85〜0.98倍および0.60〜0.98倍に調整されるように熱処理を行う回路基板の製造方法。
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