JP7116546B2 - 金属箔張積層板 - Google Patents

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Description

本発明は、全芳香族液晶ポリエステル樹脂を含む樹脂組成物からなる樹脂フィルムに関し、より詳細には、金属箔張積層板用樹脂フィルムおよび該樹脂フィルムを備える金属箔張積層板に関する。
全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、耐熱性や薄肉成形性などに優れていることから、射出成形して得られる表面実装の電子部品に幅広く用いられている。また、誘電損失が小さく電気特性にも優れる材料でもあることから、最近では、芳香族液晶ポリエステルをTダイ押出法やインフレーション法、溶液キャスト法などでフィルム状に成形する方法が検討されている。
上記課題に対し、特許文献1では、耐熱性とフィルム加工性のバランスに優れ、誘電損失が小さい芳香族液晶ポリエステルとして、2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸に由来する繰り返し構造単位(I)が40~74.8モル%、芳香族ジオール化合物に由来する繰り返し構造単位(II)が12.5~30モル%、2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する繰り返し構造単位(III)が12.5~30モル%、テレフタル酸または4,4’-ビフェニルジカルボン酸に由来する繰り返し構造単位(IV)が0.2~15モル%からなり、かつ繰り返し構造単位(III)および(IV)のモル比が(III)/{(III)+(IV)}≧0.5の関係を満たす芳香族液晶ポリエステルが提案されている。
特開2005-272810号公報
近年、情報通信量は急速に増加し続け、使用される信号の周波数はさらに高まっており、周波数が10Hz以上であるギガヘルツ(GHz)帯において更に低い誘電正接を有する樹脂が求められている。さらにこうした樹脂を使いデバイス等を設計する際は、はんだによる加工のような高温の熱プロセスを経ることが一般的であるため、十分な耐熱性が必要である。本発明者は、特許文献1において提案されるポリエステル樹脂は、測定周波数10GHzという高周波帯において要求される十分な低誘電正接と十分な耐熱性とを両立させることはできないことを見出した。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、全芳香族液晶ポリエステル樹脂において特定の構成単位およびそれらを特定の組成比に調節することにより、低誘電正接および高耐熱性を有しながら、フィルム成形性に優れた全芳香族液晶ポリエステル樹脂を得られることを見出した。
本発明の目的は、低誘電正接および高耐熱性を有する樹脂フィルムを提供することである。また、本発明の他の目的は、該樹脂フィルムを備える金属箔張積層板および当該金属箔張積層板を備えるプリント基板を提供することである。
本発明の一態様によれば、全芳香族液晶ポリエステル樹脂を含んでなる樹脂組成物からなる樹脂フィルムであって、
前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂が、
6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構成単位(I)、
芳香族ジオール化合物に由来する構成単位(II)、
テレフタル酸に由来する構成単位(III)、
2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する構成単位(IV)、
を含んでなり、
前記構成単位(I)~(IV)の組成比(モル%)が、下記の条件:
50モル%≦構成単位(I)≦65モル%
17.5モル%≦構成単位(II)≦25モル%
11モル%≦構成単位(III)≦23モル%
2モル%≦構成単位(IV)≦8モル%
を満たすことを特徴とする、樹脂フィルムが提供される。
本発明の態様においては、前記構成単位(I)~(IV)の組成比(モル%)が、下記の条件:
55モル%≦構成単位(I)≦65モル%
17.5モル%≦構成単位(II)≦24モル%
12モル%≦構成単位(III)≦21.5モル%
2.5モル%≦構成単位(IV)≦8モル%
を満たすことが好ましい。
本発明の態様においては、前記構成単位(II)が、下記式で表されることが好ましい。
Figure 0007116546000001
(式中、Arは、所望により置換基を有するフェニル、ビフェニル、ナフチル、アントリルおよびフェナントリルからなる群より選択される。)
本発明の態様においては、前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂の融点が、300℃以上であることが好ましい。
本発明の態様においては、前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂の融点+20℃、せん断速度1000s-1における溶融粘度が、10~100Pa・sであることが好ましい。
本発明の態様においては、前記樹脂フィルムは金属箔張積層板用であることが好ましい。
本発明の別の態様によれば、上記樹脂フィルムと、金属箔とを積層成形してなる、金属箔張積層板が提供される。
本発明の別の態様によれば、金属箔と、上記樹脂フィルムと、金属箔とを積層成形してなる、金属箔張積層板が提供される。
本発明に別の態様においては、前記金属箔張積層板の前記金属箔が銅箔であることが好ましい。
本発明の更に別の態様においては、上記金属箔張積層板を備えてなるプリント基板が提供される。
本発明によれば、全芳香族液晶ポリエステル樹脂を構成する単位を、特定の構成単位およびそれらを特定の組成比とすることにより、低誘電正接および高耐熱性を有しながら、フィルム成形性に優れた全芳香族液晶ポリエステル樹脂を実現することができる。したがって、このような全芳香族液晶ポリエステル樹脂を含む樹脂組成物はフィルム加工性に優れており、製造した樹脂フィルムは耐熱性を有しながら誘電正接が十分に低くなるため、低伝送損失が求められるプリント基板用の金属箔張積層板の部材として好適に使用することができる。
本発明による金属箔張積層板の層構成を示した図である。 本発明による樹脂フィルムの36GHzにおける誘電正接の測定結果(30℃から100℃の温度依存性)を示した図である。
<樹脂フィルム>
本発明による樹脂フィルムは、下記の全芳香族液晶ポリエステル樹脂を含んでなる樹脂組成物からなるものであり、低誘電正接および高耐熱性を有する全芳香族液晶ポリエステル樹脂を用いることで、低誘電正接のフィルムを得ることができる。また、このような樹脂フィルムは、高周波において電気信号の劣化が少ない回路基板を製造できることから、金属箔張積層板の部材として好適に使用することができる。
樹脂フィルムの誘電正接(測定周波数:3GHz)は、好ましくは1.50×10-3未満であり、より好ましくは1.20×10-3未満であり、さらに好ましくは0.90×10-3未満である。
樹脂フィルムの誘電正接(測定周波数:10GHz)は、好ましくは1.50×10-3未満であり、より好ましくは1.20×10-3未満であり、さらに好ましくは0.90×10-3未満である。
樹脂フィルムの誘電正接(測定周波数:36GHz)は、好ましくは2.00×10-3未満であり、より好ましくは1.50×10-3未満であり、さらに好ましくは1.20×10-3未満である。
樹脂フィルムの誘電正接(測定周波数:50GHz)は、好ましくは1.50×10-3未満であり、より好ましくは1.20×10-3未満であり、さらに好ましくは1.00×10-3未満である。
樹脂フィルムの誘電正接(測定周波数:100GHz)は、好ましくは3.00×10-3未満であり、より好ましくは2.50×10-3未満であり、さらに好ましくは2.00×10-3未満である。
また、樹脂フィルムは、30℃および100℃の誘電正接(測定周波数:36GHz)が、それぞれ、好ましくは1.80×10-3未満および3.80×10-3未満であり、より好ましくは1.50×10-3未満および3.00×10-3未満であり、さらに好ましくは1.20×10-3未満および2.00×10-3未満である。
さらに、樹脂フィルムについて、測定周波数36GHzにおける30℃から100℃までの誘電正接の変化率は、好ましくは3.0×10-5/℃未満であり、より好ましくは2.0×10-5/℃未満であり、さらに好ましくは1.5×10-5/℃未満である。温度に依存した誘電正接の変化率が小さいことで、材料使用時に温度が変わった場合にも設計に準じた物性を安定して発現させることができる。ゆえに各環境における当該材料を使用したデバイスの動作安定性に寄与できる。
なお、本明細書において、樹脂フィルムの3GHzおよび10GHzにおける誘電正接は、キーサイト・テクノロジー社のネットワークアナライザーN5247A等を用いて、スプリットポスト誘電体共振器法(SPDR法)により測定することができる。それ以外の誘電正接は円筒空洞共振器法により測定することができる。また、特別に指定がない場合、誘電正接の値は、23℃、大気雰囲気下、湿度60%での測定値である。
樹脂フィルムの実用耐熱温度は、下限値としては、好ましくは260℃以上であり、より好ましくは270℃以上であり、さらに好ましくは280℃以上である。
なお、本明細書において、樹脂フィルムの実用耐熱温度は、以下の通りに測定した温度である。まず、株式会社日立ハイテクサイエンス社製DMS6100を用いて、引張モード、窒素雰囲気下、1Hz、昇温速度5℃/分で50℃から400℃設定で樹脂フィルムの動的粘弾性を測定する。昇温の過程でフィルムは軟化し、400℃に到達する前の温度で装置の引張強度に耐えきれず破断し、測定が停止する。この材料破断による測定停止温度を実用耐熱温度とする。
(全芳香族液晶ポリエステル樹脂)
本発明の樹脂フィルムに用いる全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構成単位(I)、芳香族ジオール化合物に由来する構成単位(II)、テレフタル酸に由来する構成単位(III)、2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する構成単位(IV)を含んでなり、全芳香族液晶ポリエステル樹脂中における構成単位(I)~(IV)の組成比(モル%)は、下記の条件:
50モル%≦構成単位(I)≦65モル%
17.5モル%≦構成単位(II)≦25モル%
11モル%≦構成単位(III)≦23モル%
2モル%≦構成単位(IV)≦8モル%
を満たすものであり、さらに、下記の条件:
55モル%≦構成単位(I)≦64モル%
18モル%≦構成単位(II)≦24モル%
12モル%≦構成単位(III)≦21.5モル%
2.5モル%≦構成単位(IV)≦7モル%
を満たすことが好ましい。
全芳香族液晶ポリエステル樹脂において、構成単位(II)の組成比は、構成単位(III)および構成単位(IV)の合計の組成比と実質的に当量(構成単位(II)≒構成単位(III)+構成単位(IV))、好ましくは当量(構成単位(II)=構成単位(III)+構成単位(IV))となる。また、全芳香族液晶ポリエステル樹脂全体の構成単位に対して、構成単位(I)~(IV))の合計は、下限値としては、好ましくは90モル%以上であり、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは99モル%以上であり、上限値としては、好ましくは100モル%以下である。
全芳香族液晶ポリエステル樹脂の誘電正接(測定周波数:10GHz)は、好ましくは0.75×10-3以下であり、より好ましくは0.72以下×10-3であり、さらに好ましくは0.70以下×10-3である。この誘電正接の値は、全芳香族液晶ポリエステル樹脂の射出成形品(30mm×30mm×0.4mmの平板状試験片)の測定値である。
なお、本明細書において、全芳香族液晶ポリエステル樹脂の10GHzにおける誘電正接は、キーサイト・テクノロジー社のネットワークアナライザーN5247A等を用いて、スプリットポスト誘電体共振器法(SPDR法)により測定することができる。
全芳香族液晶ポリエステル樹脂の融点は、下限値としては、好ましくは300℃以上であり、より好ましくは305℃以上であり、さらに好ましくは310℃以上であり、また、上限値としては、好ましくは350℃以下であり、より好ましくは345℃以下であり、さらに好ましくは340℃以下である。全芳香族液晶ポリエステル樹脂の融点を上記数値範囲とすることにより、これを用いて製造したフィルムの加熱加工に対する耐熱性を向上させることができる。なお、本明細書において、全芳香族液晶ポリエステル樹脂の融点は、ISO11357、ASTM D3418の試験方法に準拠するものであり、日立ハイテクサイエンス(株)製の示差走査熱量計(DSC)等を用いて、測定することができる。
液晶ポリエステル樹脂の溶融粘度は、液晶ポリエステル樹脂の融点+20℃、せん断速度1000s-1において、下限値として、好ましくは10Pa・s以上であり、より好ましくは20Pa・s以上であり、上限値として、好ましくは100Pa・s以下であり、より好ましくは90Pa・s以下である。全芳香族液晶ポリエステル樹脂の溶融粘度を上記数値範囲とすることにより、フィルム成形性を向上させることができる。なお、本明細書において、全芳香族液晶ポリエステル樹脂の溶融粘度は、JIS K7199に準拠し、(株)東洋精機製作所キャピログラフ1D を用いて測定することができる。
本発明による全芳香族液晶ポリエステル樹脂の液晶性は、メトラー製の顕微鏡用ホットステージ(商品名:FP82HT)を備えたオリンパス(株)製の偏光顕微鏡(商品名:BH-2)等を用い、全芳香族液晶ポリエステル樹脂を顕微鏡加熱ステージ上にて加熱溶融させた後、光学異方性の有無を観察することにより確認することができる。
以下、全芳香族液晶ポリエステル樹脂に含まれる各構成単位について説明する。
(6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構成単位(I))
全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、下記式(I)で表される6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構成単位(I)を含み、全芳香族液晶ポリエステル樹脂中における構成単位(I)の組成比(モル%)は、50モル%以上65モル%以下である。全芳香族液晶ポリエステル樹脂の誘電正接の低下および融点の向上という観点からは、構成単位(I)の組成比(モル%)は、下限値としては、好ましくは52モル%以上であり、より好ましくは54モル%以上であり、上限値としては、好ましくは64モル%以下であり、より好ましくは62モル%以下である。
Figure 0007116546000002
構成単位(I)を与えるモノマーとしては、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA、下記式(1))、そのアセチル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物等が挙げられる。
Figure 0007116546000003
(芳香族ジオール化合物に由来する構成単位(II))
全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、芳香族ジオール化合物に由来する構成単位(II)を含み、液晶ポリエステル中における構成単位(II)の組成比(モル%)は、17.5モル%以上25モル%以下である。全芳香族液晶ポリエステル樹脂の誘電正接の低下および融点の向上という観点からは、構成単位(II)の組成比(モル%)は、下限値としては、好ましくは18モル%以上であり、より好ましくは19モル%以上であり、上限値としては、好ましくは24モル%以下であり、より好ましくは23モル%以下である。なお、全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、2種以上の構成単位(II)を含むものであってもよい。
一実施態様において、構成単位(II)は下記式で表される。
Figure 0007116546000004
上記式中Arは、所望により置換基を有するフェニル、ビフェニル、ナフチル、アントリルおよびフェナントリルからなる群より選択される。これらの中でもフェニルおよびビフェニルがより好ましい。置換基としては、水素、アルキル基、アルコキシ基、ならびにフッ素等が挙げられる。アルキル基が有する炭素数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。また、直鎖状のアルキル基であっても、分岐鎖状のアルキル基であってもよい。アルコキシ基が有する炭素数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。
構成単位(II)を与えるモノマーとしては、例えば、ハイドロキノン(HQ,下記式(2))、4,4-ジヒドロキシビフェニル(BP、下記式(3))、3,3’-ジメチル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジオール(OCBP、下記式(4))およびこれらのアシル化物等が挙げられる。これらのモノマーの中でも、4,4-ジヒドロキシビフェニルを用いることがより好ましい。4,4-ジヒドロキシビフェニルはハイドロキノンに比べ、反応系中での昇華性が低いため、これを用いることでモノマー仕込み比と同等の組成を持つ(モノマーバランスの崩れのない)ポリマーをより容易に製造でき、製造安定性を向上させることができる。
Figure 0007116546000005
Figure 0007116546000006
Figure 0007116546000007
(テレフタル酸に由来する構成単位(III))
全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、下記式(III)で表されるテレフタル酸に由来する構成単位(III)を含み、液晶ポリエステル中における構成単位(III)の組成比(モル%)は、11モル%以上23モル%以下である。全芳香族液晶ポリエステル樹脂の誘電正接の低下および融点の向上という観点からは、構成単位(III)の組成比(モル%)は、下限値としては、好ましくは12モル%以上であり、より好ましくは13モル%以上であり、上限値としては、好ましくは21.5モル%以下であり、より好ましくは20モル%以下である。
Figure 0007116546000008
構成単位(III)を与えるモノマーとしては、テレフタル酸(TPA、下記式(5))、およびこれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物等が挙げられる。
Figure 0007116546000009
(2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する構成単位(IV))
全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、下記式(IV)で表される2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する構成単位(IV)を含み、液晶ポリエステル中における構成単位(IV)の組成比(モル%)は、2モル%以上8モル%以下である。全芳香族ポリエステル樹脂の融点向上という観点からは、構成単位(IV)の組成比(モル%)は、下限値としては、好ましくは2.5モル%以上であり、より好ましくは3モル%以上であり、上限値としては、好ましくは7モル%以下であり、より好ましくは6モル%以下である。液晶ポリエステル中における構成単位(IV)の組成比が10モル%以上の場合、例えば、特許文献1に記載されるような組成の場合、構成単位(III)を与えるモノマーとしてハイドロキノンを用いると製造安定性が低下したり、4,4-ジヒドロキシビフェニルを用いると融点が低下したりする恐れがある。
Figure 0007116546000010
構成単位(IV)を与えるモノマーとしては、2,6-ナフタレンジカルボン酸(NADA、下記式(6))、およびこれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物等が挙げられる。
Figure 0007116546000011
(全芳香族液晶ポリエステル樹脂の製造方法)
本発明に係る全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、構成単位(I)~(IV)を与えるモノマーを、溶融重合、固相重合、溶液重合およびスラリー重合等、従来公知の方法で重合することにより製造することができる。一実施態様において、本発明に係る全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、溶融重合のみによって製造することができる。また、溶融重合によりプレポリマーを作製し、これをさらに固相重合する2段階重合によっても製造することができる。
溶融重合は、本発明に係るポリエステル化合物が効率よく得られる観点から、上記構成単位(I)~(IV)を与えるモノマーを、所定の配合で合わせて100モル%として、モノマーが有する全水酸基に対し、1.05~1.15モル当量の無水酢酸を存在させて酢酸還流下において行うことが好ましい。
溶融重合とこれに続く固相重合の二段階により重合反応を行う場合は、溶融重合により得られたプレポリマーを冷却固化後に粉砕してパウダー状もしくはフレーク状にした後、公知の固相重合方法、例えば、窒素等の不活性雰囲気下、または真空下において200~350℃の温度範囲で1~30時間プレポリマー樹脂を熱処理する等の方法が好ましくは選択される。固相重合は、攪拌しながら行ってもよく、また攪拌することなく静置した状態で行ってもよい。
重合反応において触媒は使用してもよいし、また使用しなくてもよい。使用する触媒としては、ポリエステルの重合用触媒として従来公知のものを使用することができ、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属塩触媒、N-メチルイミダゾール等の窒素含有複素環化合物等、有機化合物触媒等が挙げられる。触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、モノマーの総量100重量部に対して、0.0001~0.1重量部であることが好ましい。
溶融重合における重合反応装置は特に限定されるものではないが、一般の高粘度流体の反応に用いられる反応装置が好ましく使用される。これらの反応装置の例としては、例えば、錨型、多段型、螺旋帯型、螺旋軸型等、あるいはこれらを変形した各種形状の攪拌翼をもつ攪拌装置を有する攪拌槽型重合反応装置、又は、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー等の、一般に樹脂の混練に使用される混合装置等が挙げられる。
(樹脂組成物)
本発明の樹脂フィルムは、上記全芳香族液晶ポリエステル樹脂を含む樹脂組成物からなるものである。樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、全芳香族液晶ポリエステル樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレートおよびポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂、ポリアクリレート、ポリメタアクリレートおよびポリメチルメタアクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドおよびポリエーテルイミド等のイミド樹脂、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン、AS樹脂およびABS樹脂等のポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素樹脂ならびにポリカーボネート樹脂等が挙げられ、樹脂組成物は、これらを1種または2種以上含んでいてもよい。
樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の添加剤、例えば、着色剤、分散剤、可塑剤、酸化防止剤、硬化剤、難燃剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤を含んでいてもよい。
(樹脂フィルムの製造方法)
本発明の樹脂フィルムは、上記の樹脂組成物を用いて、従来公知の方法、例えば、インフレーション成形、溶融押出成形等の押出成形、および溶液キャスト法により得ることができる。このようにして得られるフィルムは、全芳香族液晶ポリエステル樹脂からなる単層フィルムであってもよく、異種材料との多層フィルムであってもよい。なお、溶融押出成形、溶液キャスト成形したフィルムを寸法安定性、機械特性を改良する目的で、単軸、または二軸にて延伸処理をしてもよい。また、これらフィルムの異方性を除去する、または耐熱性向上目的で熱処理を行ってもよい。
<金属箔張積層板>
本発明による金属箔張積層板は、上記の樹脂フィルムと金属箔とを積層成形したものである。また、金属箔張積層板は、金属箔と上記の樹脂フィルムと金属箔とをこの順に積層成形したものでもよい。このような金属箔張積層板は、伝送損失が低いため、プリント基板等の回路基板に好適に使用することができる。回路基板に信号を流した際の劣化、すなわち伝送損失は絶縁フィルムでの損失である誘電損失と導体での損失の導体損失の和となる。また誘電損失は、使用する信号周波数における比誘電率の1/2乗と誘電正接の積に比例する。例えば、各周波数で半減以下の誘電正接を示した積層板を用いることができれば、有意に伝送損失を低減した回路基板用材料とすることができる。
金属箔張積層板に使用する金属箔は、プリント基板用材料に用いられるものであれば、特に限定されないが、銅箔やアルミニウム箔であることが好ましい。
本発明による金属箔張積層板の構成を図面を参照しながら説明する。図1に示した金属箔張積層板10は、本発明による樹脂フィルム11の両面に金属箔12を備えてなるものである。なお、本発明による金属箔張積層板は、樹脂フィルム11の片面のみに金属箔12を備えるものであってもよい。
本発明による金属箔張積層板は、例えば、上記の樹脂フィルムを1枚あるいは複数枚以上を重ねて、所望によりその片面もしくは両面に、銅やアルミニウムなどの金属箔を配置した構成で、積層成形することにより製造することができる。成形条件としては、通常のプリント基板用積層板及び多層板の手法が適用できる。例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機などを使用し、温度は100~300℃、圧力は2~100kgf/cm、加熱時間は0.05~5時間の範囲が一般的である。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
<全芳香族液晶ポリエステル樹脂の製造>
(実施例1)
攪拌翼を有する重合容器に、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)60モル%、4,4-ジヒドロキシビフェニル(BP)20モル%、テレフタル酸(TPA)15.5モル%、2,6-ナフタレンジカルボン酸(NADA)4.5モル%を加え、触媒として酢酸カリウムおよび酢酸マグネシウムを仕込み、重合容器の減圧-窒素注入を3回行って窒素置換を行った後、無水酢酸(水酸基に対して1.08モル当量)を更に添加し、150℃まで昇温し、還流状態で2時間アセチル化反応を行った。
アセチル化終了後、酢酸留出状態にした重合容器を0.5℃/分で昇温して、槽内の溶融体温度が300℃になったところで重合物を抜き出し、冷却固化した。得られた重合物を粉砕し目開き2.0mmの篩を通過する大きさに粉砕してプレポリマーを得た。
次に、上記で得られたプレポリマーを、ヤマト科学(株)製のオーブンでヒーターにより、温度を室温から14時間かけて300℃まで昇温した後、300℃で温度を2時間保持して固相重合を行った。その後室温で自然放熱し、全芳香族液晶ポリエステル樹脂を得た。メトラー製の顕微鏡用ホットステージ(商品名:FP82HT)を備えたオリンパス(株)製の偏光顕微鏡(商品名:BH-2)を用い、全芳香族液晶ポリエステル樹脂試料を顕微鏡加熱ステージ上にて加熱溶融させ、光学異方性の有無から液晶性を確認した。
(実施例2)
モノマー仕込みを、HNA60モル%、BP20モル%、TPA17モル%、NADA3モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
(実施例3)
モノマー仕込みを、HNA60モル%、BP20モル%、TPA14モル%、NADA6モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
(実施例4)
モノマー仕込みを、HNA50モル%、BP25モル%、TPA17モル%、NADA8モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
(実施例5)
モノマー仕込みを、HNA55モル%、BP22.5モル%、TPA18モル%、NADA4.5モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
(実施例6)
モノマー仕込みを、HNA55モル%、BP22.5モル%、TPA16.5モル%、NADA6モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
(実施例7)
モノマー仕込みを、HNA55モル%、BP22.5モル%、TPA14.5モル%、NADA8モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
(実施例8)
モノマー仕込みを、HNA58モル%、BP21モル%、TPA16.5モル%、NADA4.5モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
(実施例9)
モノマー仕込みを、HNA65モル%、BP17.5モル%、TPA15.5モル%、NADA2モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
(実施例10)
モノマー仕込みを、HNA65モル%、BP17.5モル%、TPA13モル%、NADA4.5モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
(比較例1)
モノマー仕込みを、HNA27モル%、HBA73モル%に変更し、固相重合の最終温度を270℃にした以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。なお、本組成は2成分型の液晶ポリエステルとしてよく知られた組成である。
(比較例2)
モノマー仕込みを、HNA30モル%、BP35モル%、TPA30.5モル%、NADA4.5モル%に変更し、固相重合の最終温度を295℃、保持時間を1時間にした以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
(比較例3)
モノマー仕込みを、HNA50モル%、BP25モル%、TPA10モル%、NADA15モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
(比較例4)
モノマー仕込みを、HNA55モル%、BP22.5モル%、TPA12.5モル%、NADA10モル%に変更し、固相重合の最終温度を295℃、保持時間を1時間にした以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
(比較例5)
モノマー仕込みを、HNA60モル%、BP20モル%、TPA19.5モル%、NADA0.5モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
(比較例6)
モノマー仕込みを、HNA60モル%、BP20モル%、TPA5モル%、NADA15モル%に変更し、固相重合の最終温度を295℃、保持時間を1時間にした以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
(比較例7)
モノマー仕込みを、HNA65モル%、BP17.5モル%、TPA2.5モル%、NADA15モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
(比較例8)
モノマー仕込みを、HNA50モル%、BP25モル%、TPA2モル%、NADA23モル%に変更し、固相重合の最終温度を295℃、保持時間を1時間に設定した以外は実施例1と同様にして重合反応を試みた。反応終了後、室温に戻ったオーブンを開けたところ、固相重合過程で融解してしまい、粉末状を維持しておらず、一度融けて固まったサンプルとなっていたので、サンプルを粉砕して液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
(比較例9)
モノマー仕込みを、HNA50モル%、BP25モル%、TPA5モル%、NADA20モル%に変更し、固相重合の最終温度を295℃、保持時間を1時間に設定した以外は実施例1と同様にして重合反応を試みた。反応終了後、室温に戻ったオーブンを開けたところ、固相重合過程で融解してしまい、粉末状を維持しておらず、一度融けて固まったサンプルとなっていたので、サンプルを粉砕して液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
(比較例10)
モノマー仕込みを、HNA55モル%、HQ22.5モル%、TPA5モル%、NADA17.5モル%に変更し、固相重合の最終温度を295℃、保持時間を1時間に設定した以外は実施例1と同様にして重合反応を試みた。反応終了後、室温に戻ったオーブンを開けたところ、固相重合過程で融解してしまい、粉末状を維持しておらず、固まったサンプルとなっていたので、サンプルを粉砕して液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
<性能評価>
<誘電正接測定(10GHz)>
実施例1~10および比較例1~10で得られた全芳香族液晶ポリエステル樹脂を融点~融点+30℃条件で加熱溶融、射出成形し、30mm×30mm×0.4mmの平板状試験片を作製した。この試験片の面内方向の誘電正接について、キーサイト・テクノロジー社のネットワークアナライザーN5247Aを用いて、スプリットポスト誘電体共振器法(SPDR法)により、周波数10GHzの誘電正接を測定した。測定結果を表1に示した。
<融点の測定>
実施例1~10および比較例1~10で得られた全芳香族液晶ポリエステル樹脂の融点を、日立ハイテクサイエンス(株)製の示差走査熱量計(DSC)により測定した。このとき、昇温速度10℃/分で室温から360~380℃まで昇温してポリマーを完全に融解させた後、速度10℃/分で30℃まで降温し、更に10℃/分の速度で380℃まで昇温するときに得られる吸熱ピークの頂点を融点(Tm)とした。測定結果を表1に示した。
<溶融粘度の測定>
実施例1~10および比較例1~10で得られた全芳香族液晶ポリエステル樹脂の、せん断速度1000S-1における融点+20℃での溶融粘度(Pa・s)を、キャピラリーレオメーター粘度計((株)東洋精機製作所キャピログラフ1D)と内径1mmキャピラリーを用い、JIS K7199に準拠して測定した。測定結果を表1に示した。
Figure 0007116546000012
<樹脂フィルムの製造>
実施例1で得られた全芳香族液晶ポリエステル樹脂を(株)東洋精機製作所製ラボプラストマイクロで二軸混練し、混錬部温度360℃でペレット化して、樹脂ペレットを得た。続いて、得られた樹脂ペレットを使用し、2軸押し出し機(テクノベル社製:KZW-30MG:ベントなし)により、ダイ幅120mmのTダイから溶融樹脂を押出して、冷却ロールを通過させた後、巻取りロールで巻取って樹脂フィルムを製膜した。製造時の各設定温度は、ダイ温度:337℃、混錬部温度340℃、ロール温度50℃、巻取りロールは室温であった。スクリュー回転150rpm、巻取り速度が3m/分のとき、幅90mm、平均膜厚が50μm程度の均一なフィルムが得られた。全量で1kgの樹脂ペレットを使用し、問題なく最後までフィルム化することができた。
実施例2~10の全芳香族液晶ポリエステル樹脂を用いて、上記の樹脂フィルムの製造と同様にして、樹脂ペレットを得た。続いて、ダイ温度や混錬部温度、巻取り速度を各全芳香族液晶ポリエステル樹脂に応じて調節した以外は上記の樹脂フィルムの製造と同様にして、幅90mm、平均膜厚が50μm程度の均一なフィルムを得た。いずれも、問題なく最後までフィルム化することができた。
<銅箔張積層板の製造>
上記で得られた実施例1の樹脂フィルムと、厚さ12μm、粗化面の粗さRzが0.5~1.0のタフピッチ銅箔とを用いて、減圧プレス機によって十分に密着した表面が平滑な銅箔-樹脂フィルム-銅箔の3層積層板を作成した。プレスは、真空下、295度、プレス圧力4MPaで30分維持して作製した。
上記で得られた比較例1の樹脂フィルムと、上記と同様の粗化面の粗さRzが0.5~1.0のタフピッチ銅箔とを用いて、減圧プレス機によって十分に密着した表面が平滑な銅箔-樹脂フィルム-銅箔の3層積層板を作成した。プレスは、真空下下、260度、プレス圧力4MPaで30分維持して作製した。
<誘電正接測定(3GHz、10GHz)>
実施例1および比較例1で得られた樹脂フィルムの中央から13mm角の正方形フィルムを切削して試験フィルムとした。この試験フィルムの面内方向の誘電正接について、キーサイト・テクノロジー社のネットワークアナライザーN5247Aを用いて、スプリットポスト誘電体共振器法(SPDR法)により、実施例1においては周波数3GHzおよび10GHzについて、比較例1においては周波数3GHzについての誘電正接を測定した。N=3で測定を実施し、その平均値を算出した。
<誘電正接測定(36、50、100GHz)>
実施例1および比較例1で得られた樹脂フィルムの中央から13mm角の正方形フィルムを切削して試験フィルムとした。この試験フィルムを、宇都宮大学大学院工学研究科 古神・清水研究室にて36、50、100GHz用共振器に装荷し、円筒空洞共振器法により、25℃、湿度50%の環境下で誘電正接を測定した。(36、50、100GHz用の共振器を用いたが、実際の測定周波数は材料の共振特性により、それぞれ36、52、103GHz付近の測定となった。)
<誘電正接測定(GHz領域における温度依存性)>
実施例1および比較例1で得られた樹脂フィルムの中央13mm角の正方形フィルムを切削して試験フィルムとした。この試験フィルムを、宇都宮大学大学院工学研究科 古神・清水研究室にて36GHz用共振器を用いて円筒空洞共振器法により、測定温度を変化させながら誘電正接測定を行った。具体的な測定方法は次の通りである。試験フィルムをセットした該共振器を恒温槽に配置し、恒温槽の設定温度を105℃に設定後、2時間経過させた。その後、恒温槽を20℃に設定し、槽内温度を自然降下させ、この時の誘電正接を1℃間隔で測定した。結果を図2に示した。また30℃および100℃での誘電正接と30℃から100℃までの誘電正接の変化率を表2に示した。
<誘電損失>
実施例1および比較例1で得られた樹脂フィルムを用いた積層板で回路基板を作成した場合、実施例1のフィルムを用いたものが比較例1に比べてどの程度の誘電損失低減効果を得られるかを知るために測定データから両者の比較を行った。回路基板における誘電損失は、技術文献(高周波用高分子材料の開発と応用、CMCテクニカルライブラリー201、馬場文明監修、120頁参照)の記載によると下記式で求められる。
・α=27.3×(f/C)×(Er)1/2×tanδ
α:誘電損失(dB/m)
f:周波数(Hz)
C:光速
Er:比誘電率
tanδ:誘電正接
この式によると、ある周波数における(Er)1/2×tanδの値を材料間で比較することで、材料ごとの誘電損失の低減度合いを知ることができる。
優れた低誘電特性を持つ実施例1で得られた樹脂フィルムが比較例1で得られた樹脂フィルムに対してどの程度誘電損失を低減できるかを見積もるため、各周波数における比誘電率と誘電正接の値を用いてそれぞれの(Er)1/2×tanδの値を算出した。その上で、比較例1で得られた樹脂フィルムの(Er)1/2×tanδを100としたときの実施例1で得られた樹脂フィルムの(Er)1/2×tanδの値を表2に示した。誘電損失を低減することで、発信される情報の劣化を防ぐことができるため、各周波数においてより小さい(Er)1/2×tanδを示すほど優れた材料であると言える。表2の結果から、各周波数において、比較例1で得られた樹脂フィルムの(Er)1/2×tanδを100としたときの実施例1で得られた樹脂フィルムの(Er)1/2×tanδの値がいずれも100未満で、かつ半減程度の値を示したため、実施例1で得られた樹脂フィルムが比較例1で得られた樹脂フィルムよりも、優れた材料であることが示された。
<耐熱性評価>
実施例1および比較例1で得られた樹脂フィルムを長さ30mm、幅8mmのサイズで切削し(長辺が製膜におけるMD方向)、試験フィルムとした。株式会社日立ハイテクサイエンス社製DMS6100を用いて、引張モード、窒素雰囲気下、1Hz、昇温速度5℃/分で50℃から400℃設定で試験フィルムの動的粘弾性を測定した。昇温の過程でフィルムは軟化し、400℃に到達する前の温度で装置の引張強度に耐えきれず破断し、測定は停止した。この材料破断による測定停止温度を実用耐熱温度とした。測定結果を表2に示した。
Figure 0007116546000013
10 金属箔張積層板
11 樹脂フィルム
12 金属箔

Claims (7)

  1. 全芳香族液晶ポリエステル樹脂を含んでなる樹脂組成物からなる樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの片面もしくは両面に積層した金属箔とを備えてなる、金属箔張積層板であって、
    前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂が、
    6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構成単位(I)、
    芳香族ジオール化合物に由来する構成単位(II)、
    テレフタル酸に由来する構成単位(III)、
    2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する構成単位(IV)、
    を含んでなり、
    前記構成単位(I)~(IV)の組成比(モル%)が、下記の条件:
    50モル%≦構成単位(I)≦65モル%
    17.5モル%≦構成単位(II)≦25モル%
    11モル%≦構成単位(III)≦23モル%
    2モル%≦構成単位(IV)≦8モル%
    を満たし、
    前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂の下記方法により測定した誘電正接が、0.75×10-3以下であることを特徴とする、金属箔張積層板。
    (測定方法)
    前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂を融点~融点+30℃条件で加熱溶融、射出成形し、30mm×30mm×0.4mmの平板状試験片を作製する。この平板状試験片についてスプリットポスト誘電体共振器法により、気温23℃、大気雰囲気下、湿度60%における、周波数10GHzの誘電正接の値を測定する。
  2. 前記構成単位(I)~(IV)の組成比(モル%)が、下記の条件:
    55モル%≦構成単位(I)≦64モル%
    18モル%≦構成単位(II)≦24モル%
    12モル%≦構成単位(III)≦21.5モル%
    2.5モル%≦構成単位(IV)≦7モル%
    を満たす、請求項1に記載の金属箔張積層板。
  3. 前記構成単位(II)が、ハイドロキノン、4,4-ジヒドロキシビフェニル、および3,3’-ジメチル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジオールからなる群から選択される少なくとも1種に由来する、請求項1または2に記載の金属箔張積層板。
  4. 前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂の融点が、300℃以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属箔張積層板。
  5. 前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂の融点+20℃、せん断速度1000s-1における溶融粘度が、10~100Pa・sである、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属箔張積層板。
  6. 前記金属箔が銅箔である、請求項1~5のいずれか一項に記載の金属箔張積層板。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載の金属箔張積層板を備える、プリント基板。
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