JP7116546B2 - 金属箔張積層板 - Google Patents
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Description
前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂が、
6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構成単位(I)、
芳香族ジオール化合物に由来する構成単位(II)、
テレフタル酸に由来する構成単位(III)、
2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する構成単位(IV)、
を含んでなり、
前記構成単位(I)~(IV)の組成比(モル%)が、下記の条件:
50モル%≦構成単位(I)≦65モル%
17.5モル%≦構成単位(II)≦25モル%
11モル%≦構成単位(III)≦23モル%
2モル%≦構成単位(IV)≦8モル%
を満たすことを特徴とする、樹脂フィルムが提供される。
55モル%≦構成単位(I)≦65モル%
17.5モル%≦構成単位(II)≦24モル%
12モル%≦構成単位(III)≦21.5モル%
2.5モル%≦構成単位(IV)≦8モル%
を満たすことが好ましい。
本発明による樹脂フィルムは、下記の全芳香族液晶ポリエステル樹脂を含んでなる樹脂組成物からなるものであり、低誘電正接および高耐熱性を有する全芳香族液晶ポリエステル樹脂を用いることで、低誘電正接のフィルムを得ることができる。また、このような樹脂フィルムは、高周波において電気信号の劣化が少ない回路基板を製造できることから、金属箔張積層板の部材として好適に使用することができる。
樹脂フィルムの誘電正接(測定周波数:10GHz)は、好ましくは1.50×10-3未満であり、より好ましくは1.20×10-3未満であり、さらに好ましくは0.90×10-3未満である。
樹脂フィルムの誘電正接(測定周波数:36GHz)は、好ましくは2.00×10-3未満であり、より好ましくは1.50×10-3未満であり、さらに好ましくは1.20×10-3未満である。
樹脂フィルムの誘電正接(測定周波数:50GHz)は、好ましくは1.50×10-3未満であり、より好ましくは1.20×10-3未満であり、さらに好ましくは1.00×10-3未満である。
樹脂フィルムの誘電正接(測定周波数:100GHz)は、好ましくは3.00×10-3未満であり、より好ましくは2.50×10-3未満であり、さらに好ましくは2.00×10-3未満である。
また、樹脂フィルムは、30℃および100℃の誘電正接(測定周波数:36GHz)が、それぞれ、好ましくは1.80×10-3未満および3.80×10-3未満であり、より好ましくは1.50×10-3未満および3.00×10-3未満であり、さらに好ましくは1.20×10-3未満および2.00×10-3未満である。
さらに、樹脂フィルムについて、測定周波数36GHzにおける30℃から100℃までの誘電正接の変化率は、好ましくは3.0×10-5/℃未満であり、より好ましくは2.0×10-5/℃未満であり、さらに好ましくは1.5×10-5/℃未満である。温度に依存した誘電正接の変化率が小さいことで、材料使用時に温度が変わった場合にも設計に準じた物性を安定して発現させることができる。ゆえに各環境における当該材料を使用したデバイスの動作安定性に寄与できる。
なお、本明細書において、樹脂フィルムの3GHzおよび10GHzにおける誘電正接は、キーサイト・テクノロジー社のネットワークアナライザーN5247A等を用いて、スプリットポスト誘電体共振器法(SPDR法)により測定することができる。それ以外の誘電正接は円筒空洞共振器法により測定することができる。また、特別に指定がない場合、誘電正接の値は、23℃、大気雰囲気下、湿度60%での測定値である。
なお、本明細書において、樹脂フィルムの実用耐熱温度は、以下の通りに測定した温度である。まず、株式会社日立ハイテクサイエンス社製DMS6100を用いて、引張モード、窒素雰囲気下、1Hz、昇温速度5℃/分で50℃から400℃設定で樹脂フィルムの動的粘弾性を測定する。昇温の過程でフィルムは軟化し、400℃に到達する前の温度で装置の引張強度に耐えきれず破断し、測定が停止する。この材料破断による測定停止温度を実用耐熱温度とする。
本発明の樹脂フィルムに用いる全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構成単位(I)、芳香族ジオール化合物に由来する構成単位(II)、テレフタル酸に由来する構成単位(III)、2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する構成単位(IV)を含んでなり、全芳香族液晶ポリエステル樹脂中における構成単位(I)~(IV)の組成比(モル%)は、下記の条件:
50モル%≦構成単位(I)≦65モル%
17.5モル%≦構成単位(II)≦25モル%
11モル%≦構成単位(III)≦23モル%
2モル%≦構成単位(IV)≦8モル%
を満たすものであり、さらに、下記の条件:
55モル%≦構成単位(I)≦64モル%
18モル%≦構成単位(II)≦24モル%
12モル%≦構成単位(III)≦21.5モル%
2.5モル%≦構成単位(IV)≦7モル%
を満たすことが好ましい。
なお、本明細書において、全芳香族液晶ポリエステル樹脂の10GHzにおける誘電正接は、キーサイト・テクノロジー社のネットワークアナライザーN5247A等を用いて、スプリットポスト誘電体共振器法(SPDR法)により測定することができる。
全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、下記式(I)で表される6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構成単位(I)を含み、全芳香族液晶ポリエステル樹脂中における構成単位(I)の組成比(モル%)は、50モル%以上65モル%以下である。全芳香族液晶ポリエステル樹脂の誘電正接の低下および融点の向上という観点からは、構成単位(I)の組成比(モル%)は、下限値としては、好ましくは52モル%以上であり、より好ましくは54モル%以上であり、上限値としては、好ましくは64モル%以下であり、より好ましくは62モル%以下である。
全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、芳香族ジオール化合物に由来する構成単位(II)を含み、液晶ポリエステル中における構成単位(II)の組成比(モル%)は、17.5モル%以上25モル%以下である。全芳香族液晶ポリエステル樹脂の誘電正接の低下および融点の向上という観点からは、構成単位(II)の組成比(モル%)は、下限値としては、好ましくは18モル%以上であり、より好ましくは19モル%以上であり、上限値としては、好ましくは24モル%以下であり、より好ましくは23モル%以下である。なお、全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、2種以上の構成単位(II)を含むものであってもよい。
全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、下記式(III)で表されるテレフタル酸に由来する構成単位(III)を含み、液晶ポリエステル中における構成単位(III)の組成比(モル%)は、11モル%以上23モル%以下である。全芳香族液晶ポリエステル樹脂の誘電正接の低下および融点の向上という観点からは、構成単位(III)の組成比(モル%)は、下限値としては、好ましくは12モル%以上であり、より好ましくは13モル%以上であり、上限値としては、好ましくは21.5モル%以下であり、より好ましくは20モル%以下である。
全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、下記式(IV)で表される2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する構成単位(IV)を含み、液晶ポリエステル中における構成単位(IV)の組成比(モル%)は、2モル%以上8モル%以下である。全芳香族ポリエステル樹脂の融点向上という観点からは、構成単位(IV)の組成比(モル%)は、下限値としては、好ましくは2.5モル%以上であり、より好ましくは3モル%以上であり、上限値としては、好ましくは7モル%以下であり、より好ましくは6モル%以下である。液晶ポリエステル中における構成単位(IV)の組成比が10モル%以上の場合、例えば、特許文献1に記載されるような組成の場合、構成単位(III)を与えるモノマーとしてハイドロキノンを用いると製造安定性が低下したり、4,4-ジヒドロキシビフェニルを用いると融点が低下したりする恐れがある。
本発明に係る全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、構成単位(I)~(IV)を与えるモノマーを、溶融重合、固相重合、溶液重合およびスラリー重合等、従来公知の方法で重合することにより製造することができる。一実施態様において、本発明に係る全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、溶融重合のみによって製造することができる。また、溶融重合によりプレポリマーを作製し、これをさらに固相重合する2段階重合によっても製造することができる。
本発明の樹脂フィルムは、上記全芳香族液晶ポリエステル樹脂を含む樹脂組成物からなるものである。樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、全芳香族液晶ポリエステル樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレートおよびポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂、ポリアクリレート、ポリメタアクリレートおよびポリメチルメタアクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドおよびポリエーテルイミド等のイミド樹脂、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン、AS樹脂およびABS樹脂等のポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素樹脂ならびにポリカーボネート樹脂等が挙げられ、樹脂組成物は、これらを1種または2種以上含んでいてもよい。
本発明の樹脂フィルムは、上記の樹脂組成物を用いて、従来公知の方法、例えば、インフレーション成形、溶融押出成形等の押出成形、および溶液キャスト法により得ることができる。このようにして得られるフィルムは、全芳香族液晶ポリエステル樹脂からなる単層フィルムであってもよく、異種材料との多層フィルムであってもよい。なお、溶融押出成形、溶液キャスト成形したフィルムを寸法安定性、機械特性を改良する目的で、単軸、または二軸にて延伸処理をしてもよい。また、これらフィルムの異方性を除去する、または耐熱性向上目的で熱処理を行ってもよい。
本発明による金属箔張積層板は、上記の樹脂フィルムと金属箔とを積層成形したものである。また、金属箔張積層板は、金属箔と上記の樹脂フィルムと金属箔とをこの順に積層成形したものでもよい。このような金属箔張積層板は、伝送損失が低いため、プリント基板等の回路基板に好適に使用することができる。回路基板に信号を流した際の劣化、すなわち伝送損失は絶縁フィルムでの損失である誘電損失と導体での損失の導体損失の和となる。また誘電損失は、使用する信号周波数における比誘電率の1/2乗と誘電正接の積に比例する。例えば、各周波数で半減以下の誘電正接を示した積層板を用いることができれば、有意に伝送損失を低減した回路基板用材料とすることができる。
(実施例1)
攪拌翼を有する重合容器に、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)60モル%、4,4-ジヒドロキシビフェニル(BP)20モル%、テレフタル酸(TPA)15.5モル%、2,6-ナフタレンジカルボン酸(NADA)4.5モル%を加え、触媒として酢酸カリウムおよび酢酸マグネシウムを仕込み、重合容器の減圧-窒素注入を3回行って窒素置換を行った後、無水酢酸(水酸基に対して1.08モル当量)を更に添加し、150℃まで昇温し、還流状態で2時間アセチル化反応を行った。
モノマー仕込みを、HNA60モル%、BP20モル%、TPA17モル%、NADA3モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
モノマー仕込みを、HNA60モル%、BP20モル%、TPA14モル%、NADA6モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
モノマー仕込みを、HNA50モル%、BP25モル%、TPA17モル%、NADA8モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
モノマー仕込みを、HNA55モル%、BP22.5モル%、TPA18モル%、NADA4.5モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
モノマー仕込みを、HNA55モル%、BP22.5モル%、TPA16.5モル%、NADA6モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
モノマー仕込みを、HNA55モル%、BP22.5モル%、TPA14.5モル%、NADA8モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
モノマー仕込みを、HNA58モル%、BP21モル%、TPA16.5モル%、NADA4.5モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
モノマー仕込みを、HNA65モル%、BP17.5モル%、TPA15.5モル%、NADA2モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
モノマー仕込みを、HNA65モル%、BP17.5モル%、TPA13モル%、NADA4.5モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
モノマー仕込みを、HNA27モル%、HBA73モル%に変更し、固相重合の最終温度を270℃にした以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。なお、本組成は2成分型の液晶ポリエステルとしてよく知られた組成である。
モノマー仕込みを、HNA30モル%、BP35モル%、TPA30.5モル%、NADA4.5モル%に変更し、固相重合の最終温度を295℃、保持時間を1時間にした以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
モノマー仕込みを、HNA50モル%、BP25モル%、TPA10モル%、NADA15モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
モノマー仕込みを、HNA55モル%、BP22.5モル%、TPA12.5モル%、NADA10モル%に変更し、固相重合の最終温度を295℃、保持時間を1時間にした以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
モノマー仕込みを、HNA60モル%、BP20モル%、TPA19.5モル%、NADA0.5モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
モノマー仕込みを、HNA60モル%、BP20モル%、TPA5モル%、NADA15モル%に変更し、固相重合の最終温度を295℃、保持時間を1時間にした以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
モノマー仕込みを、HNA65モル%、BP17.5モル%、TPA2.5モル%、NADA15モル%に変更した以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
モノマー仕込みを、HNA50モル%、BP25モル%、TPA2モル%、NADA23モル%に変更し、固相重合の最終温度を295℃、保持時間を1時間に設定した以外は実施例1と同様にして重合反応を試みた。反応終了後、室温に戻ったオーブンを開けたところ、固相重合過程で融解してしまい、粉末状を維持しておらず、一度融けて固まったサンプルとなっていたので、サンプルを粉砕して液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
モノマー仕込みを、HNA50モル%、BP25モル%、TPA5モル%、NADA20モル%に変更し、固相重合の最終温度を295℃、保持時間を1時間に設定した以外は実施例1と同様にして重合反応を試みた。反応終了後、室温に戻ったオーブンを開けたところ、固相重合過程で融解してしまい、粉末状を維持しておらず、一度融けて固まったサンプルとなっていたので、サンプルを粉砕して液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
モノマー仕込みを、HNA55モル%、HQ22.5モル%、TPA5モル%、NADA17.5モル%に変更し、固相重合の最終温度を295℃、保持時間を1時間に設定した以外は実施例1と同様にして重合反応を試みた。反応終了後、室温に戻ったオーブンを開けたところ、固相重合過程で融解してしまい、粉末状を維持しておらず、固まったサンプルとなっていたので、サンプルを粉砕して液晶ポリエステル樹脂を得た。続いて、上記と同様にして液晶性を確認した。
<誘電正接測定(10GHz)>
実施例1~10および比較例1~10で得られた全芳香族液晶ポリエステル樹脂を融点~融点+30℃条件で加熱溶融、射出成形し、30mm×30mm×0.4mmの平板状試験片を作製した。この試験片の面内方向の誘電正接について、キーサイト・テクノロジー社のネットワークアナライザーN5247Aを用いて、スプリットポスト誘電体共振器法(SPDR法)により、周波数10GHzの誘電正接を測定した。測定結果を表1に示した。
実施例1~10および比較例1~10で得られた全芳香族液晶ポリエステル樹脂の融点を、日立ハイテクサイエンス(株)製の示差走査熱量計(DSC)により測定した。このとき、昇温速度10℃/分で室温から360~380℃まで昇温してポリマーを完全に融解させた後、速度10℃/分で30℃まで降温し、更に10℃/分の速度で380℃まで昇温するときに得られる吸熱ピークの頂点を融点(Tm2)とした。測定結果を表1に示した。
実施例1~10および比較例1~10で得られた全芳香族液晶ポリエステル樹脂の、せん断速度1000S-1における融点+20℃での溶融粘度(Pa・s)を、キャピラリーレオメーター粘度計((株)東洋精機製作所キャピログラフ1D)と内径1mmキャピラリーを用い、JIS K7199に準拠して測定した。測定結果を表1に示した。
実施例1で得られた全芳香族液晶ポリエステル樹脂を(株)東洋精機製作所製ラボプラストマイクロで二軸混練し、混錬部温度360℃でペレット化して、樹脂ペレットを得た。続いて、得られた樹脂ペレットを使用し、2軸押し出し機(テクノベル社製:KZW-30MG:ベントなし)により、ダイ幅120mmのTダイから溶融樹脂を押出して、冷却ロールを通過させた後、巻取りロールで巻取って樹脂フィルムを製膜した。製造時の各設定温度は、ダイ温度:337℃、混錬部温度340℃、ロール温度50℃、巻取りロールは室温であった。スクリュー回転150rpm、巻取り速度が3m/分のとき、幅90mm、平均膜厚が50μm程度の均一なフィルムが得られた。全量で1kgの樹脂ペレットを使用し、問題なく最後までフィルム化することができた。
上記で得られた実施例1の樹脂フィルムと、厚さ12μm、粗化面の粗さRzが0.5~1.0のタフピッチ銅箔とを用いて、減圧プレス機によって十分に密着した表面が平滑な銅箔-樹脂フィルム-銅箔の3層積層板を作成した。プレスは、真空下、295度、プレス圧力4MPaで30分維持して作製した。
実施例1および比較例1で得られた樹脂フィルムの中央から13mm角の正方形フィルムを切削して試験フィルムとした。この試験フィルムの面内方向の誘電正接について、キーサイト・テクノロジー社のネットワークアナライザーN5247Aを用いて、スプリットポスト誘電体共振器法(SPDR法)により、実施例1においては周波数3GHzおよび10GHzについて、比較例1においては周波数3GHzについての誘電正接を測定した。N=3で測定を実施し、その平均値を算出した。
実施例1および比較例1で得られた樹脂フィルムの中央から13mm角の正方形フィルムを切削して試験フィルムとした。この試験フィルムを、宇都宮大学大学院工学研究科 古神・清水研究室にて36、50、100GHz用共振器に装荷し、円筒空洞共振器法により、25℃、湿度50%の環境下で誘電正接を測定した。(36、50、100GHz用の共振器を用いたが、実際の測定周波数は材料の共振特性により、それぞれ36、52、103GHz付近の測定となった。)
実施例1および比較例1で得られた樹脂フィルムの中央13mm角の正方形フィルムを切削して試験フィルムとした。この試験フィルムを、宇都宮大学大学院工学研究科 古神・清水研究室にて36GHz用共振器を用いて円筒空洞共振器法により、測定温度を変化させながら誘電正接測定を行った。具体的な測定方法は次の通りである。試験フィルムをセットした該共振器を恒温槽に配置し、恒温槽の設定温度を105℃に設定後、2時間経過させた。その後、恒温槽を20℃に設定し、槽内温度を自然降下させ、この時の誘電正接を1℃間隔で測定した。結果を図2に示した。また30℃および100℃での誘電正接と30℃から100℃までの誘電正接の変化率を表2に示した。
実施例1および比較例1で得られた樹脂フィルムを用いた積層板で回路基板を作成した場合、実施例1のフィルムを用いたものが比較例1に比べてどの程度の誘電損失低減効果を得られるかを知るために測定データから両者の比較を行った。回路基板における誘電損失は、技術文献(高周波用高分子材料の開発と応用、CMCテクニカルライブラリー201、馬場文明監修、120頁参照)の記載によると下記式で求められる。
・αD=27.3×(f/C)×(Er)1/2×tanδ
αD:誘電損失(dB/m)
f:周波数(Hz)
C:光速
Er:比誘電率
tanδ:誘電正接
この式によると、ある周波数における(Er)1/2×tanδの値を材料間で比較することで、材料ごとの誘電損失の低減度合いを知ることができる。
実施例1および比較例1で得られた樹脂フィルムを長さ30mm、幅8mmのサイズで切削し(長辺が製膜におけるMD方向)、試験フィルムとした。株式会社日立ハイテクサイエンス社製DMS6100を用いて、引張モード、窒素雰囲気下、1Hz、昇温速度5℃/分で50℃から400℃設定で試験フィルムの動的粘弾性を測定した。昇温の過程でフィルムは軟化し、400℃に到達する前の温度で装置の引張強度に耐えきれず破断し、測定は停止した。この材料破断による測定停止温度を実用耐熱温度とした。測定結果を表2に示した。
11 樹脂フィルム
12 金属箔
Claims (7)
- 全芳香族液晶ポリエステル樹脂を含んでなる樹脂組成物からなる樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの片面もしくは両面に積層した金属箔とを備えてなる、金属箔張積層板であって、
前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂が、
6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構成単位(I)、
芳香族ジオール化合物に由来する構成単位(II)、
テレフタル酸に由来する構成単位(III)、
2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する構成単位(IV)、
を含んでなり、
前記構成単位(I)~(IV)の組成比(モル%)が、下記の条件:
50モル%≦構成単位(I)≦65モル%
17.5モル%≦構成単位(II)≦25モル%
11モル%≦構成単位(III)≦23モル%
2モル%≦構成単位(IV)≦8モル%
を満たし、
前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂の下記方法により測定した誘電正接が、0.75×10-3以下であることを特徴とする、金属箔張積層板。
(測定方法)
前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂を融点~融点+30℃条件で加熱溶融、射出成形し、30mm×30mm×0.4mmの平板状試験片を作製する。この平板状試験片についてスプリットポスト誘電体共振器法により、気温23℃、大気雰囲気下、湿度60%における、周波数10GHzの誘電正接の値を測定する。 - 前記構成単位(I)~(IV)の組成比(モル%)が、下記の条件:
55モル%≦構成単位(I)≦64モル%
18モル%≦構成単位(II)≦24モル%
12モル%≦構成単位(III)≦21.5モル%
2.5モル%≦構成単位(IV)≦7モル%
を満たす、請求項1に記載の金属箔張積層板。 - 前記構成単位(II)が、ハイドロキノン、4,4-ジヒドロキシビフェニル、および3,3’-ジメチル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジオールからなる群から選択される少なくとも1種に由来する、請求項1または2に記載の金属箔張積層板。
- 前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂の融点が、300℃以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属箔張積層板。
- 前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂の融点+20℃、せん断速度1000s-1における溶融粘度が、10~100Pa・sである、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属箔張積層板。
- 前記金属箔が銅箔である、請求項1~5のいずれか一項に記載の金属箔張積層板。
- 請求項1~6のいずれか一項に記載の金属箔張積層板を備える、プリント基板。
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