JP2009197209A - 樹脂組成物、射出成形品及び誘電体アンテナ - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性及び成形性に優れた樹脂組成物、射出成形品、及び、該射出成形品を備えた誘電体アンテナを得る。
【解決手段】 固体相から液体相へ相転移する吸熱ピーク温度から1000Pa・s以下を満たす溶融粘度になる温度の差が異なる2種類の液晶性熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物。2種類の液晶性熱可塑性樹脂の前記温度差は互いに10℃以上異なっており、前記液晶性熱可塑性樹脂のうち、一方の液晶性熱可逆性樹脂よりも前記温度差が大きい樹脂の混合比率が99〜80vol%、前記温度差が小さい樹脂の混合比率が1〜20vol%である樹脂組成物。少なくとも1種類のセラミック粉末を含有していてもよい。誘電体アンテナはこの樹脂組成物からなる射出成形品である誘電体ブロック2を備え、誘電体ブロック2には放射電極3、給電電極4及び接地電極5が設けられている。
【選択図】図1
【解決手段】 固体相から液体相へ相転移する吸熱ピーク温度から1000Pa・s以下を満たす溶融粘度になる温度の差が異なる2種類の液晶性熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物。2種類の液晶性熱可塑性樹脂の前記温度差は互いに10℃以上異なっており、前記液晶性熱可塑性樹脂のうち、一方の液晶性熱可逆性樹脂よりも前記温度差が大きい樹脂の混合比率が99〜80vol%、前記温度差が小さい樹脂の混合比率が1〜20vol%である樹脂組成物。少なくとも1種類のセラミック粉末を含有していてもよい。誘電体アンテナはこの樹脂組成物からなる射出成形品である誘電体ブロック2を備え、誘電体ブロック2には放射電極3、給電電極4及び接地電極5が設けられている。
【選択図】図1
Description
本発明は、樹脂組成物、該樹脂組成物からなる射出成形品及び該射出成形品からなる誘電体ブロックを備えた誘電体アンテナに関する。
近年、携帯電話は小型化が進められており、携帯電話に搭載されるアンテナにおいても、小型化、軽量化の要求が高まっている。これを受けて、基板に対してアンテナをリフローにより実装することが求められている。
また、近年では、環境に対する配慮から、鉛フリーはんだを用いた基板への実装が可能であることが求められている。しかし、鉛フリーはんだは一般に融点が高くてリフロー温度も高くなるため、高温リフローに耐える複合材料が求められている。
このような複合材料として、耐熱性に優れた液晶ポリマーを用いることが検討されている。しかし、液晶ポリマーで成形品を作製した場合は、射出成形時に糸曳きが発生するため、安定して連続成形することができないという問題点を有していた。
特許文献1には、液晶ポリマーとポリアミド樹脂とを混合することにより、糸曳きの問題点を解消できる樹脂組成物及び成形品が記載されている。しかし、ポリアミド樹脂は融点が222〜283℃であり、作製した成形品は鉛フリーはんだを用いた高温リフローに耐えるほどの耐熱性を有していない。さらに、ポリアミド樹脂を使用していることで、バルクの吸水性が高くなることが予測でき、吸水によりQが低くなるので、アンテナなどの高周波部品には不向きである。また、この種のアンテナ基板としてはブリスターが発生することがないことも重要な条件である。
特開2000−34404号公報
そこで、本発明の目的は、耐熱性及び成形性に優れた樹脂組成物、射出成形品、及び、該射出成形品を備えた誘電体アンテナを提供することにある。本発明の他の目的は、前記目的を達成するとともに、ブリスターが発生することのない誘電体ブロックを備えた誘電体アンテナを提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明の第1形態である樹脂組成物は、
固体相から液体相へ相転移する吸熱ピーク温度から1000Pa・s以下を満たす溶融粘度になる温度の差が異なる2種類の液晶性熱可塑性樹脂を含み、
2種類の前記液晶性熱可塑性樹脂の前記温度差は互いに10℃以上異なっており、
前記液晶性熱可塑性樹脂のうち、一方の液晶性熱可逆性樹脂よりも前記温度差が大きい樹脂の混合比率が99〜80vol%、前記温度差が小さい樹脂の混合比率が1〜20vol%であること、
を特徴とする。
固体相から液体相へ相転移する吸熱ピーク温度から1000Pa・s以下を満たす溶融粘度になる温度の差が異なる2種類の液晶性熱可塑性樹脂を含み、
2種類の前記液晶性熱可塑性樹脂の前記温度差は互いに10℃以上異なっており、
前記液晶性熱可塑性樹脂のうち、一方の液晶性熱可逆性樹脂よりも前記温度差が大きい樹脂の混合比率が99〜80vol%、前記温度差が小さい樹脂の混合比率が1〜20vol%であること、
を特徴とする。
本発明の第2形態である射出成形品は、前記樹脂組成物を含むことを特徴とする。
本発明の第3形態である誘電体アンテナは、誘電体ブロックに放射電極、給電電極及び接地電極を設けた誘電体アンテナであって、前記誘電体ブロックは前記射出成形品からなること、を特徴とする。
本発明の第4形態である誘電体アンテナは、
誘電体ブロックに放射電極、給電電極及び接地電極を設けた誘電体アンテナであって、
前記誘電体ブロックは、セラミック粉末と液晶性熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物からなり、
前記セラミック粉末は前記樹脂組成物に15〜30vol%の割合で含有されており、
前記液晶性樹脂は、固体相から液体相へ相転移する吸熱ピーク温度から1000Pa・s以下を満たす溶融粘度になる温度の差が異なる2種類の液晶性熱可塑性樹脂を含み、
2種類の前記液晶性熱可塑性樹脂の前記温度差は互いに10℃以上異なっており、
前記液晶性熱可塑性樹脂のうち、一方の液晶性熱可逆性樹脂よりも前記温度差が大きい樹脂の混合比率が99〜87vol%、前記温度差が小さい樹脂の混合比率が1〜13vol%であること、
を特徴とする。
誘電体ブロックに放射電極、給電電極及び接地電極を設けた誘電体アンテナであって、
前記誘電体ブロックは、セラミック粉末と液晶性熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物からなり、
前記セラミック粉末は前記樹脂組成物に15〜30vol%の割合で含有されており、
前記液晶性樹脂は、固体相から液体相へ相転移する吸熱ピーク温度から1000Pa・s以下を満たす溶融粘度になる温度の差が異なる2種類の液晶性熱可塑性樹脂を含み、
2種類の前記液晶性熱可塑性樹脂の前記温度差は互いに10℃以上異なっており、
前記液晶性熱可塑性樹脂のうち、一方の液晶性熱可逆性樹脂よりも前記温度差が大きい樹脂の混合比率が99〜87vol%、前記温度差が小さい樹脂の混合比率が1〜13vol%であること、
を特徴とする。
前記樹脂組成物において、少なくとも前記温度差が大きい樹脂は、前記温度差が45℃以上であることが好ましい。また、前記樹脂組成物は少なくとも1種類のセラミック粉末(例えば、チタン酸カルシウム、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、アルミナ、炭酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム)をさらに含んでいてもよい。
本発明によれば、固化速度が相対的に遅い液晶性熱可塑性樹脂と、固化速度が相対的に速い液晶性熱可塑性樹脂とを所定の割合で含むことで、鉛フリーはんだを用いたリフローに耐えうる高耐熱性を有し、かつ、射出成形時に糸曳きなどを生じることがない。また、成形品にブリスターが発生することもない。
以下、本発明に係る樹脂組成物、射出成形品及び誘電体アンテナの実施例について添付図面を参照して説明する。
樹脂組成物は、固体相から液体相へ相転移する吸熱ピーク温度から1000Pa・s以下を満たす溶融粘度になる温度の差が異なる2種類の液晶性熱可塑性樹脂を含み、2種類の前記液晶性熱可塑性樹脂の前記温度差は互いに10℃以上異なっており、前記液晶性熱可塑性樹脂のうち、一方の液晶性熱可逆性樹脂よりも前記温度差が大きい樹脂の混合比率が99〜80vol%、前記温度差が小さい樹脂の混合比率が1〜20vol%である。また、以下に説明するように、樹脂成形品にブリスターが発生しないためには、一方の液晶性熱可逆性樹脂よりも前記温度差が大きい樹脂の混合比率が99〜87vol%、前記温度差が小さい樹脂の混合比率が1〜13vol%であることが好ましい。
この樹脂組成物は少なくとも1種類のセラミック粉末をさらに含んでいてもよい。例えば、チタン酸カルシウム、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、アルミナ、炭酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムなどの1種又は複数種を組み合わせて用いることができる。
また、樹脂組成物に含まれる2種類の液晶性熱可塑性樹脂(以下、LCPとも称する)としては、それぞれ従来から知られている組成物から選択することができる。特に、固体相から液体相へ相転移する吸熱ピーク温度から1000Pa・s以下を満たす溶融粘度になる温度の差が45℃以上の組成物としては、特開2005−272810号公報に記載の素材を用いることができる。
本実施例では、以下の表1に示すLCP1,2,3,4を用いた。
通常のLCPは、剛直な棒状分子がネマチック液晶状態で配向した溶融構造をとるため、固化時にほとんど構造変化がなく、固化速度が速いことが特徴となる。固化速度の遅いLCP(固体相から液体相へ相転移する吸熱ピーク温度から1000Pa・s以下を満たす溶融粘度になる温度の差が45℃以上)の組成としては、以下の化学構造式に示す(A)〜(D)の化学構造単位が繰り返し現れる芳香族液晶ポリエステルが知られている。詳しくは、(A)〜(D)の繰返し構造単位の合計に対して、(A)の繰返し構造単位が40〜74.8mol%、(B)の繰返し構造単位が12.5〜30mol%、(C)の繰返し構造単位が12.5〜30mol%、及び、(D)の繰返し構造単位が0.2〜15mol%であり、かつ、(C)及び(D)で表される繰返し構造単位のmol比が(C)/{(C)+(D)}≧0.5の関係を満たしている。
なお、前記化学構造式におけるAr1及びAr2は、それぞれ独立に、1,4フェニレン、又は、パラ位でつながるフェニレン数2以上の2価の残基から選ばれる基である。
LCP1,2,3,4の具体的な組成は以下のとおりである。
LCP1 2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸 55.0mol%
ハイドロキノン 22.5mol%
2,6−ナフタレンジカルボン酸 17.5mol%
テレフタル酸 5.0mol%
LCP2 4−ヒドロキシ安息香酸 2.0mol%
1,4−ジヒドロキシベンゼン 34.3mol%
4,4'−ジヒドロキシビフェニル 14.7mol%
テレフタル酸 24.5mol%
2,6−ナフタレンジカルボン酸 24.5mol%
LCP3 2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸 40.0mol%
1,4−ジヒドロキシベンゼン 30.0mol%
テレフタル酸 30.0mol%
LCP4 2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸 50.0mol%
ハイドロキノン 25.0mol%
2,6−ナフタレンジカルボン酸 23.0mol%
テレフタル酸 2.0mol%
LCP1 2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸 55.0mol%
ハイドロキノン 22.5mol%
2,6−ナフタレンジカルボン酸 17.5mol%
テレフタル酸 5.0mol%
LCP2 4−ヒドロキシ安息香酸 2.0mol%
1,4−ジヒドロキシベンゼン 34.3mol%
4,4'−ジヒドロキシビフェニル 14.7mol%
テレフタル酸 24.5mol%
2,6−ナフタレンジカルボン酸 24.5mol%
LCP3 2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸 40.0mol%
1,4−ジヒドロキシベンゼン 30.0mol%
テレフタル酸 30.0mol%
LCP4 2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸 50.0mol%
ハイドロキノン 25.0mol%
2,6−ナフタレンジカルボン酸 23.0mol%
テレフタル酸 2.0mol%
また、固体相から液体相へ相転移する吸熱ピーク温度から1000Pa・s以下を満たす溶融粘度になる温度の差が45℃以上の組成物としては、前記以外に、
LCP5 2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸 50.0mol%
4,4'−ジヒドロキシビフェニル 25.0mol%
2,6−ナフタレンジカルボン酸 23.0mol%
テレフタル酸 2.0mol%
LCP6 2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸 60.0mol%
ハイドロキノン 20.0mol%
2,6−ナフタレンジカルボン酸 15.0mol%
テレフタル酸 5.0mol%
などを挙げることができる。
LCP5 2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸 50.0mol%
4,4'−ジヒドロキシビフェニル 25.0mol%
2,6−ナフタレンジカルボン酸 23.0mol%
テレフタル酸 2.0mol%
LCP6 2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸 60.0mol%
ハイドロキノン 20.0mol%
2,6−ナフタレンジカルボン酸 15.0mol%
テレフタル酸 5.0mol%
などを挙げることができる。
前記LCP1,2,3,4について、評価1として、溶融粘度が1000Pa.s以下となる温度を測定した。測定には、島津製作所製CFT−500を用いた。また、評価2として、5mgのサンプルを10℃/minの条件で温度を上昇させ、固体相から液体相へ相転移する吸熱ピーク温度を測定した。測定には、セイコーインスツルメンツ社製DSC220Cを用いた。
表1に示したように、LCP1,4は、それぞれ283℃、287℃以上で1000Pa・s以下になり、吸熱ピーク温度よりもそれぞれ56℃、48℃低い温度で測定が可能になった。また、LCP2,3は、それぞれ306℃、308℃以上で1000Pa・s以下になり、吸熱ピーク温度よりもそれぞれ26℃、36℃低い温度で測定が可能になった。
LCP1,4では、吸熱ピーク温度から1000Pa・s以下を満たす溶融温度になる温度の差が大きいことから、樹脂が固化するまでの温度範囲が広く、LCP2,3に比べて固化速度が遅いことが分かる。同様に、LCP2,3はこの温度差が小さいことから、樹脂が固化するまでの温度範囲が狭く、LCP1,4に比べて固化速度が速いことが分かる。
次に、セラミック粉末として平均粒径1.6μmのチタン酸カルシウム(CaTiO3)と前記LCP1,2,3,4を混合して以下の表2に示す実施例1〜20及び比較例1〜7の樹脂組成物を作製した。即ち、前記セラミック粉末及び4種類のLCPを表2に示す混合比率となるように秤量し、2軸の押出し機を用いて330℃にて溶融混練を行った。溶融混練時にヘッド穴を通して直径2mmの糸状にして、ペレタイザーにより長さ5mm程度にカットし、射出成形用のペレットとした。
以上のごとく作製したペレットを用い、射出成形機(ファナック社製α−30C)にて320℃で射出成形を行い、以下の試験片を作製して評価3〜7を試みた。
評価3のために、厚さ1.3mm、直径55mmの試験片を作製し、ネットワークアナライザー(アジレントテクノロジー社製HP8510)を用いて、摂動法により3GHzでの電気特性を測定した。評価4のために、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片を作製し、島津製作所製オートグラフを用いて3点曲げ試験(JIS規格K7171)を行った。
評価5としては、射出成形時に糸曳きが発生するか否かを確認した。評価6としては、成形品を観察してウェルドラインの有無を確認した。評価7としては、成形品をリフロー炉(鉛フリーリフロー対応温度)に投入し、ブリスター発生の有無を確認した。
なお、表3において、評価5の欄で、「◎」印は糸曳きがなく安定して連続成形ができること、「○」印は糸曳きがあるが安定して連続成形できること、「△」印は糸曳きがあり連続成形100回以内に成形不具合があること、「×」印は糸曳きがあり連続成形できないこと、をそれぞれ示している。評価6の欄で、「○」印はウェルドラインが確認できないこと、「×」印はウェルドラインが確認できたこと、をそれぞれ示している。評価7の欄で、「○」印はブリスターが発生していないこと、「×」印はブリスターが発生したこと、をそれぞれ示している。
表3に示したように、実施例1〜20は、全て誘電率が高く、強度が十分であり、また、射出成形時に糸曳きが発生しないことが確認された。従って、この樹脂成形品で誘電体ブロックを作製してアンテナ基板として問題なく使用できることが確認された。即ち、固化速度の温度差が10℃以上存在し、かつ、固化速度の比較的遅いLCPと固化速度の比較的早いLCPの混合比率が樹脂分を100%として、80〜99vol%:20〜1vol%であれば、射出成形時に糸曳きが発生することなく、連続成形が可能である。一方、比較例1〜7では、射出成形時に糸曳きが発生するため、連続成形ができない。
前記実施例1〜20で好ましい評価が得られたのは、固化速度が速いLCPが先に固化することで、混合比率の多い固化速度の遅いLCPの相互作用を弱くすることにより、糸曳きがなくなり、連続成形が可能になった。また、実施例1〜8,13〜20に関しては、吸熱ピーク温度から1000Pa・s以下を満たす溶融粘度になる温度が45℃以上のLCPをマトリックスとして用いているため、固化が遅くなり、ウェルド部が接着するのでウェルドラインの発生をも防止することができ、さらに好ましい。
また、実施例1〜3、5〜7、9〜11、13〜15、17〜19に関しては、即ち、糸曳きが発生しない組成において、固化速度が速い(温度差が小さい)樹脂の混合比率を13vol%以下にした場合、成形品をリフロー炉に投入した後においてブリスターが発生しなかった。これは、LCPどおしの界面の密着が弱いため、固化速度が速い樹脂の混合比率が多い場合にはマトリックスとなるLCPの量が減り、リフロー炉に投入した際の膨張収縮により界面が剥がれる。しかし、固化速度が速い樹脂の混合比率が少ない場合には、マトリックスとなるLCPの量が多くなるため、界面の剥がれを防ぐことが可能になると考えられる。
1種類のLCPのみを用いた比較例1〜4は、異なるLCP間の界面が存在しないため、樹脂内の相互作用が強く、射出成形時に糸曳きが発生する。比較例5,6では固化速度が速いLCPの混合比率が20vol%を超えていることで、固化速度が速いLCPどおしが成形時につながりを持ってしまい、異なるLCP間の界面が減少してしまう。これにより、固化速度が遅いLCPの相互作用を弱くする効果が低減されるため、糸曳きが発生する。また、固化速度の速いLCP内の相互作用が強くなるために糸曳きが発生する。比較例7では、二つのLCPの固化速度の温度差が8℃であるため、温度差が小さくなり、固化速度が遅いLCP内の相互作用を弱くする効果が低減されるため、糸曳きが発生する。
なお、固化速度が速いLCPの混合比率を1vol%以上としているのは、混合比率が1vol%を下回ると、固化速度が遅いLCP内の相互作用を弱める効果を得ることができないことによる。
次に、前記樹脂組成物からなる射出成形品を誘電体ブロックとして用いた誘電体アンテナについて図1を参照して説明する。
この誘電体アンテナ1は、誘電体ブロック2の表面に、放射電極3、給電電極4及び接地電極5を設けたもので、これらの電極3,4,5はそれぞれリン青銅からなり、銅、銀がめっきされている。放射電極3は誘電体ブロック2の上面に設けられ、引出し部3a,3bが誘電体ブロック2の側面に延在されている。給電電極4及び接地電極5はそれぞれ引出し電極3a,3bに接続されている。
誘電体アンテナ1においては、給電電極4から放射電極3に高周波電流が供給され、これにより放射電極3に高周波電磁界が発生し、電波が送信される。また、電波を受信したときには、放射電極3において高周波電流が励起され、接地電極5を介して図示しないRF回路へ伝達される。
誘電体ブロック2は前記樹脂組成物を射出成形することにより作製した。射出成形にあっては、金型にそれぞれの電極3,4,5をインサートしてブロック2を一体成形した。アウトサート成形であってもよい。使用した樹脂組成物は表2に示した実施例6であり、得られた混合物を連続2軸押出し機を用いて溶融混練、乾燥し、得られた乾燥物をペレタイザーを用いてペレット状に粉砕し、このペレットを用いて射出成形した。なお、溶融混練、乾燥、粉砕、成形には種々の機器を用いることができることは勿論である。
図1に示す誘電体アンテナ1において、誘電体ブロック2上には放射電極3、給電電極4及び接地電極5が複数組設けられていてもよい。また、各電極3,4,5は種々の材料で形成でき、スパッタや蒸着などで形成してもよい。また、各電極3,4,5の形状や配置は周波数に応じて調整される。
誘電体ブロック2は直方体形状に限定するものではなく、誘電体ブロック2の上面にキャビティを形成した風呂おけ形状であってもよく、あるいは、円板形状であってもよい。さらに、誘電体ブロック2は複数の誘電体基板を積層した多層基板で構成してもよい。
(他の実施例)
なお、本発明に係る樹脂組成物、射出成形品及び誘電体アンテナは前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができることは勿論である。
なお、本発明に係る樹脂組成物、射出成形品及び誘電体アンテナは前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができることは勿論である。
1…誘電体アンテナ
2…誘電体ブロック
3…放射電極
4…給電電極
5…接地電極
2…誘電体ブロック
3…放射電極
4…給電電極
5…接地電極
Claims (7)
- 固体相から液体相へ相転移する吸熱ピーク温度から1000Pa・s以下を満たす溶融粘度になる温度の差が異なる2種類の液晶性熱可塑性樹脂を含み、
2種類の前記液晶性熱可塑性樹脂の前記温度差は互いに10℃以上異なっており、
前記液晶性熱可塑性樹脂のうち、一方の液晶性熱可逆性樹脂よりも前記温度差が大きい樹脂の混合比率が99〜80vol%、前記温度差が小さい樹脂の混合比率が1〜20vol%であること、
を特徴とする樹脂組成物。 - 少なくとも前記温度差が大きい樹脂は、前記温度差が45℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
- 少なくとも1種類のセラミック粉末をさらに含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
- 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の樹脂組成物を含むことを特徴とする射出成形品。
- 誘電体ブロックに放射電極、給電電極及び接地電極を設けた誘電体アンテナであって、
前記誘電体ブロックは請求項4に記載の射出成形品からなること、
を特徴とする誘電体アンテナ。 - 誘電体ブロックに放射電極、給電電極及び接地電極を設けた誘電体アンテナであって、
前記誘電体ブロックは、セラミック粉末と液晶性熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物からなり、
前記セラミック粉末は前記樹脂組成物に15〜30vol%の割合で含有されており、
前記液晶性樹脂は、固体相から液体相へ相転移する吸熱ピーク温度から1000Pa・s以下を満たす溶融粘度になる温度の差が異なる2種類の液晶性熱可塑性樹脂を含み、
2種類の前記液晶性熱可塑性樹脂の前記温度差は互いに10℃以上異なっており、
前記液晶性熱可塑性樹脂のうち、一方の液晶性熱可逆性樹脂よりも前記温度差が大きい樹脂の混合比率が99〜87vol%、前記温度差が小さい樹脂の混合比率が1〜13vol%であること、
を特徴とする誘電体アンテナ。 - 少なくとも前記温度差が大きい樹脂は、前記温度差が45℃以上であることを特徴とする請求項6に記載の誘電体アンテナ。
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