JP2006124454A - 炭素繊維含有ポリオレフィン系樹脂組成物、およびこれを用いてなるポリプロピレン系樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(a)繊維径が3〜15μm、繊維長が0.1〜20mm、引張強度が1000MPa以上、および引張弾性率が100GPa以上である炭素繊維:20重量%以上50重量%以下及び(b)炭素数2〜8のα−オレフィンの単独重合体、及び/又は、2種以上の共重合体からなり、230℃、2.16kg荷重で測定されたMFRが10〜800g/10分であるポリオレフィン系樹脂:50重量%以上80重量%以下とからなることを特徴とする炭素繊維含有ポリオレフィン系樹脂組成物(マスターバッチ)。
【選択図】なし
Description
この様な観点から、炭素繊維を複合した炭素繊維複合ポリプロピレン系樹脂組成物が開発されてきているが、通常、これらの樹脂は予め樹脂メーカーでコンパウンドして成形メーカーに供給しているので、部品のマイナーチェンジなどで成形用金型の形状が変更されたり、生産性向上のために、例えば、ゲート、ランナー、スプルーといったわずかな金型の設定変更を行った場合などにも、成形部品の寸法があわず、新たな配合設定のグレードが必要となり、グレードの統合化において大きな支障となるという問題があった。
さらに、炭素繊維に対しては、炭素繊維長繊維ペレット(例えば、特許文献3参照。)が示されており、CF長繊維ペレットの製造方法(例えば、特許文献4参照。)が示されている。
しかしながら、これらの炭素繊維長繊維ペレットでは、繊維長が長すぎるため、これをマスターバッチとして用いた場合には、炭素繊維の分散が不十分で、成形体の外観が著しく劣り、また、薄肉精密射出成形等において、薄肉部へ十分に充填できないといった問題があった。
(a)繊維径が3〜15μm、繊維長が0.1〜20mm、引張強度が1000MPa以上、および引張弾性率が100GPa以上である炭素繊維:20重量%以上50重量%以下
(b)炭素数2〜8のα−オレフィンの単独重合体、及び/又は、2種以上の共重合体からなり、230℃、2.16kg荷重で測定されたメルトフローレート(以下、MFRと記す)が10〜800g/10分であるポリオレフィン系樹脂:50重量%以上80重量%以下
(i)一般式:(RCOOX)nX(但し、Rは炭素数10〜40の炭化水素残基であり、XはLi、Na、K、Mg、Zn、Ca、Ba又はAlの金属成分であり、nは1、2、又は3である)で表される金属石鹸類
(ii)水酸基、アミノ基、カルボン酸基、無水カルボン酸基あるいはエポキシ基より選ばれる、1種又は2種以上の官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂であって、変性率が主鎖を構成するオレフィンモノマー分子に対して、0.1〜5.0重量%である変性ポリオレフィン樹脂
成分(A):第1〜3のいずれかの発明に記載の炭素繊維含有ポリオレフィン系樹脂組成物
成分(B):MFRが5g/10分以上のプロピレン単独重合体、プロピレン単独重合体およびプロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)を共重合した共重合体部分とからなるポリプロピレンブロック共重合体、またはこれらの混合物であって、プロピレン単独重合体部分のアイソタクチックペンタッド分率が98.0%以上であるポリプロピレン系樹脂(以下、ベースPPという)であり、ベースPPが当該ブロック共重合体を含む場合は、その共重合体部分のプロピレン含量が30〜75重量%、重量平均分子量が30万以上であるもの
(d)無機フィラー:レーザー回折法により測定された平均粒径が1〜15μmであるタルク
(e)エラストマー:炭素数2〜8のα−オレフィンの共重合体、及び/又は、炭素数2〜8のα−オレフィンとスチレンとの共重合体であって、その密度が0.850〜0.930g/cm3であるエラストマー
ΔFM/Δρ≧20 …(1)
(式(1)中、ΔFM=FMcp−FMbp、Δρ=ρcp−ρbpであり、FMcp:ポリプロピレン系樹脂組成物の曲げ弾性率(単位:MPa)、FMbp:ベースPPの曲げ弾性率(単位:MPa)、ρcp:ポリプロピレン系樹脂組成物の密度(単位:kg/m3)、ρbp:ベースPPの密度(単位:kg/m3)である)
(a)炭素繊維
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物で用いる炭素繊維は、繊維径が3〜15μm、好ましくは3〜12μmであり、繊維長が0.1〜20mm、好ましくは0.3〜15mm、更に好ましくは0.5〜10mmの範囲にある。また、引張強度が1000MPa以上、引張弾性率が100GPa以上であることが必要である。
繊維径が3μm未満では繊維の剛性が不足し、15μmを超えると、重量基準の繊維本数が低下すること、及び繊維のアスペクト比(繊維長さと繊維径の比:長さ/径)が低下し、夫々補強効率の低下要因となることから好ましくない。
また、繊維長が0.1mm未満では繊維のアスペクト比が不足し、20mmを超えると加工性や外観が著しく悪化してしまうため、好ましくない。繊維の引張強度及び引張弾性率が、夫々1000MPa未満、100GPa未満の場合、繊維の剛直性が不足し、ポリプロピレン系樹脂組成物の補強効率が低下してしまうため好ましくない。
ここで、炭素繊維の引張強度及び引張弾性率は、JIS R−7601の規定に従って測定したものである。
これは、ポリオレフィン系樹脂に炭素繊維を溶融混練してマスターバッチとする際の炭素繊維仕込み段階の平均繊維長さが0.1〜20mmであるから、溶融混練後の炭素繊維の平均繊維長さが300μm以上ということは、炭素繊維の過度な折損を起こさずに必要な仕込み段階の繊維長を維持しているということを表す。このために、本発明は、ポリプロピレン系樹脂特有の性質を、例えば、軟化点または溶融点になれば、急激に粘弾性が低下するという性質を利用して、そのような粘弾性が低下した状態において、炭素繊維を投入すれば、溶融混練時のせん断負荷の影響が軽減されるので、損傷が少ない。このため、成形の原材料(粉末状、ペレット状のもの)を造る段階の押出機の温度制御、スクリユーの回転速度、およびホッパー以外にも、例えばダイ近くというような、炭素繊維の投入箇所にも、技術的な調整を加えて本発明は達成できる。
なお、マスターバッチ中の数平均繊維長、500μm以上の繊維数割合および700μm以上の繊維数割合は、次のようにして測定する。すなわち、マスターバッチペレットを400℃で1時間灰化処理し、ペレット中の炭素繊維を取り出す。取り出した炭素繊維を純水に分散させた後、得られた水分散炭素繊維をスライドグラスに滴下し、偏光顕微鏡を用いて繊維画像を観察し、デジタル顕微鏡を接続してデジタル画像として撮影する。撮影した繊維画像をトレースした後、トレース画像をイメージスキャナーで電子化し、画像解析ソフトで解析、算出する。
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物で用いるポリオレフィン系樹脂は、炭素数2〜8のα−オレフィン(エチレンを含む)の単独重合体、及び/又は、2種以上の共重合体からなり、230℃、2.16kg荷重で測定されたMFRが10〜800g/10分、好ましくは30〜500g/10分、更に好ましくは50〜300g/10分、最も好ましくは80〜150g/10分である。
MFRが10g/10分未満ではマスターバッチの溶融混練時に炭素繊維の折損が激しく、マスターバッチ中の残存繊維長が低下してしまうため好ましくない。MFRが800g/10分を超えると、マスターバッチの延性が低下し、このようなマスターバッチでポリプロピレン系樹脂組成物を構成した場合、ポリプロピレン系樹脂組成物の衝撃性が劣るため好ましくない。
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物においては、必要に応じて、(c)分散助剤を配合しても良い。本発明で用いることのできる(c)分散助剤としては、下記成分(i)金属石鹸類及び成分(ii)変性ポリオレフィン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の分散助剤を挙げることができる。
分散助剤として用いることのできる(i)金属石鹸類としては、一般式:
(RCOOX)nX
(但し、Rは炭素数10〜40の炭化水素残基であり、XはLi,Na,K,Mg,Zn,Ca,Ba又はAlの金属成分であり、nは1,2、又は3である)
で表される金属石鹸類である。
具体的には、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、及び同属のラウリン酸金属塩、ベヘン酸金属塩、モンタン酸金属塩、ヒドロキシステアリン酸金属塩等が挙げられる。上記の中で、性能と入手の簡便さより、とりわけ、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ベヘン酸マグネシウム、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸カルシウム等の金属石鹸が好ましい。
これらの金属石鹸は、カルボン酸化合物と金属水酸化物を反応させた後、水洗、脱水、乾燥する合成法(複分解法)や、水を使わずに直接反応させる方法(直接法)で製造することができる。
この様な金属石鹸類の配合比率は、ポリオレフィン系樹脂組成物100重量部に対して10重量部以下、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。金属石鹸類の配合比率が10重量部を超えると、炭素繊維と樹脂の界面強度が低下することにより、補強効率が低下してしまうため好ましくない。
分散助剤として用いることのできる(ii)変性ポリオレフィン系樹脂としては、水酸基、アミノ基、カルボン酸基、無水カルボン酸基、エポキシ基より選ばれた、1種又は2種以上の官能基によりポリオレフィンを変性した樹脂であって、変性率が、主鎖を構成するオレフィンモノマー分子に対して、0.1〜5.0重量%である変性ポリオレフィン樹脂である。
変性率が0.1重量%未満の場合、炭素繊維表面との反応性が乏しく、5重量%を超えると、非極性であるポリオレフィン樹脂との相溶性が低下するため、夫々好ましくない。
この様な変性ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、水酸基変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、グリシジルメタクリレート−ポリエチレン共重合体(住友化学社製ボンドファーストなど)などを挙げることが出来る。
これらの変性ポリオレフィン樹脂は、従来公知の押出機や反応釜を用いて、無水マレイン酸などのグラフトモノマーと有機化酸化物などのグラフト触媒をポリオレフィン樹脂と反応させることにより製造することが出来るが、その変性率は、本発明で規定している範囲内であることが必要である。
この様な任意成分とは、着色するための顔料、フェノール系、イオウ系、リン系などの酸化防止剤、帯電防止剤、ヒンダードアミン等の光安定剤、紫外線吸収剤、有機アルミ・燐酸エステル等の各種造核剤、有機過酸化物、分散剤、中和剤、発泡剤、銅害防止剤、滑剤、難燃剤、タルク、炭酸カルシウム、ワラストナイト、ウイスカー、モンモリロナイト、合成マイカ、天然マイカ、金属繊維、カーボンブラック、ビニルエステル、カーボンナノチューブ、フラーレン、塗装改質剤、各種カップリング剤、等を挙げることが出来る。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上記成分(A)炭素繊維含有ポリオレフィン系樹脂組成物をマスターバッチとして用い、下記成分(B)ポリプロピレン系樹脂(ベースPP)とを、ペレット状態のまま、成分(A)と成分(B)との混合比率が、(A):(B)=1〜90:99〜10(重量%比)の比率で混合することにより得られる組成物である。
本発明で用いる(B)成分は、MFRが5g/10分以上、アイソタクチックペンタッド分率が98.0%以上であるプロピレン単独重合体あるいはプロピレン単独重合体部分とプロピレンと他のα−オレフィンを共重合した共重合体部分とからなるポリプロピレンブロック共重合体である。これらの混合物であってもよい。ブロック共重合体にあっては共重合体部分のプロピレン含量が30〜75重量%、重量平均分子量が30万以上であるものが好ましい。
MFRが5g/10分未満の場合、炭素繊維の増粘化効果により成形加工時の流動性が劣るばかりでなく、マスターバッチ中の残存繊維長が、成形機内の剪断により折損され、成形体中の残存繊維長が低下してしまうため、好ましくない。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠し、230℃で測定する値である。
ここで、アイソタクチックペンタッド分率とは、Macromolecules,6,925(1973年)記載の方法、すなわち13C−NMRを使用する方法で測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック分率である。換言すれば、アイソタクチックペンタッド分率は、プロピレンモノマー単位が5個接続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。ただし、ピークの帰属に関しては、Macromolecules,8,687(1975年)に記載の方法に基づいて行った。具体的には13C−NMRスペクトルの、メチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピーク強度分率としてアイソタクチックペンタッド単位を測定する。
共重合体部分の分子量は、共重合体部分の重合時に、水素濃度を制御することにより調整することができる。
ここで、重量平均分子量は、下記のようにして求めるゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したものをいう。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαにおいて、K及びαとして、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.78
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
なお、GPCの測定条件は、以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:ο−ジクロロベンゼン(ODCB)
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料はODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
本発明のベースPPに配合される無機フィラーは、レーザー回折法により測定された平均粒径が1〜15μmであるものが好ましい。平均粒径が1μm未満では無機フィラーの分散性が極めて劣り、15μmを超えると補強効率が低下するため夫々好ましくない。この様な無機フィラーとしては、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ワラストナイト、ウイスカーなどを例示することが出来、このうちタルク、炭酸カルシウム、マイカが好適に用いられる。これら無機フィラーは、1種類を単独で用いても2種以上を併用して用いても良い。
上記無機フィラーの配合比率は、1〜40重量%、好ましくは3〜35重量%、更に好ましくは5〜30重量%である。無機フィラーの配合比率が1重量%未満の場合、無機フィラーを配合する意味が事実上なく、40重量%を超えると、比重の増加が激しく、軽量性の観点で好ましくない。
上記無機フィラーをベースPP側に配合することにより、ポリプロピレン系樹脂組成物の剛性を改良するだけでなく、マスターバッチ側から供給される炭素繊維と相まって線膨張係数を劇的に改良することが可能となるため、高度な寸法安定性を要求されるような部品に対しては特に有効である。この様に、無機フィラーと炭素繊維を併用することにより高度な寸法安定性を得ることが可能となるが、本発明のマスターバッチ方式においては、無機フィラーはベースPP側に配合しておくことが好ましい。無機フィラーをマスターバッチ側に配合した場合、炭素繊維の濃度が高いために、マスターバッチの溶融混練時の粘度が高く、ここに更に無機フィラーが入ることにより、炭素繊維の折損を助長する結果となり、最終的なマスターバッチ中の残存繊維長が低下してしまうため好ましくない。
本発明のベースPPに配合されるエラストマーは、炭素数2〜8のα−オレフィンの共重合体又は炭素数2〜8のα−オレフィンとスチレンとの共重合体であって、その密度が0.850〜0.930g/cm3である。これらの混合物であってもよい。密度が0.850g/cm3未満では、エラストマーのハンドリング性が著しく低下するばかりでなく、炭素繊維の補強効率も低下するため好ましくない。また密度が0.930g/cm3を超えると、衝撃性の向上効果が低下するため好ましくない。
この様なエチレン系エラストマーとしては、例えば、三井化学社製「タフマー」、デュポンダウエラストマー社製「エンゲージ」「アフィニティ」、JSR社製「ダイナロン」、住友化学「エスプレン」、日本ポリエチレン社製「カーネル」、エクソンモービルケミカル社製「ビスタロン」「イグザクト」などを例示することが出来る。
A−B 又は、A−B−A
(但し、Aはポリスチレン構造セグメントを示し、Bはエチレン・ブテン又はエチレン・プロピレンの構造セグメントを示す)
上記Aセグメントの含量が1%未満では、事実上スチレン系エラストマーとはいえず、25%を超えると、ポリプロピレン樹脂との相溶性が著しく低下し、十分な分散が得られないため、好ましくない。
この様なスチレン系エラストマーとしては、例えば、クレイトンポリマー社製「クレイトン」、旭化成社製「タフテック」、クラレ社製「セプトン」「ハイブラー」、JSR社製「ダイナロン」などを例示することが出来る。
ΔFM/Δρ≧20 …(1)
(式(1)中、ΔFM=FMcp−FMbp、Δρ=ρcp−ρbp、FMcp:ベースPPとマスターバッチの混合物の曲げ弾性率(単位:MPa)、FMbp:ベースPPの曲げ弾性率(単位:MPa)、ρcp:ベースPPとマスターバッチの混合物の密度(単位:kg/m3)、ρbp:ベースPPの密度(単位:kg/m3)である。)
本発明で意図していることは、高度な補強効率を得ることにより、軽量性に優れたポリプロピレン系樹脂組成物とすることばかりでなく、複雑多岐にわたるグレード数を、マスターバッチという方法を用いることによって削減し、高度な物性バランスを有する材料を効率性に優れた方法で提供することを目的としている。この様に、本発明では、マスターバッチ方式によるグレード数削減を最終的な目的としているため、例えば、柔軟な領域から超高剛性領域まで、一つのマスターバッチで幅広くカバーすることを考慮した場合、マスターバッチの補強効率は高い方がより好ましい。
この様なマスターバッチの製造方法としては、例えば、2軸押出機による溶融混練では、ポリオレフィン樹脂と、更に必要に応じて、分散助剤成分とを十分に溶融混練した後、炭素繊維成分、更に必要に応じて、分散助剤成分とをサイドフィード法により、溶融したポリオレフィン樹脂に添加し、繊維の折損を最小限に抑えながら、収束繊維を分散させる方法等を例示することが出来る。
(1)MFR(単位:g/10min):JIS K7210 条件14に準拠し、230℃、2.16kg荷重(21.18N荷重)で測定した。
(2)曲げ弾性率(単位:MPa):JIS−K7171に準拠して23℃下で測定した
(3)アイゾット(IZOD)衝撃強度(単位:kJ/m2):JIS−K7110に準拠し、23℃、及び−30℃で測定した。
(4)引張り伸び(単位:%):JIS K7113に準拠し、23℃で測定した。
(5)荷重たわみ温度(単位:℃):JIS−K7191−2に準拠して、1.86MPaの条件で測定した。
(6)密度(単位:g/cm3):JIS−K7112に準拠して、水中置換法にて測定した。
(7)線膨張係数(単位:cm/cm・℃):ASTM D696に準拠して、23℃〜80℃の温度範囲で測定した。
(8)マスターバッチ中の炭素繊維の残存繊維長分布(単位:mm):マスターバッチペレットを400℃で1時間灰化処理し、ペレット中の炭素繊維を取り出す。取り出した炭素繊維を純水に分散させた後、得られた水分散炭素繊維をスライドグラスに滴下し、偏光顕微鏡(ニコン社製:OPTIGHOT−POL×2対物レンズ〜PLAN 2P〜)を用いて繊維画像を観察し、デジタル顕微鏡(キーエンス社製:VH−7000)を接続して、デジタル画像として撮影する。撮影した繊維画像をトレースした後、トレース画像をイメージスキャナー(セイコーエプソン社製:ES−2000)で電子化し、画像解析ソフト(プラネトロン社製:Image Pro Plus ver.4.5)で、観察全繊維の繊維長を測定し、数平均繊維長、500μm以上の繊維数割合、700μm以上の繊維数割合を算出した。
(1)炭素繊維
表1に示す、チョップドカーボンファイバーを用いた。
製造例1〜2で製造したポリプロピレン系樹脂、及び表2に示す、市販のポリオレフィン系樹脂を用いた。
(i)重合触媒成分(1)の製造
充分に窒素置換した10L反応器に、脱水および脱酸素したn−ヘプタン4000mlを導入し、次いでMgCl2を8モル、Ti(O−n−C4H9)4を16モル導入し、95℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルヒドロポリシロキサン(20センチストークス)を960ml導入し、3時間反応させた。生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。次いで、充分に窒素置換した10L反応器に、上記と同様に精製したn−ヘプタンを1000ml導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で4.8モル導入した。次いでn−ヘプタン500mlにSiCl4を8モル混合して30℃、30分間でフラスコへ導入し、70℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いでn−ヘプタン500mlにフタル酸クロライド0.48モルを混合して、70℃、30分間でフラスコへ導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いで、SiCl4200mlを導入して80℃で6時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄し固体成分を得た。このもののチタン含量は1.3重量%であった。
次いで、充分に窒素置換したフラスコに、上記と同様に精製したn−ヘプタンを1000ml導入し、上記で合成した固体成分を100グラム導入し、24mlの(t−C4H9)Si(CH3)(OCH3)2、34グラムのAl(C2H5)3を30℃で2時間接触させた。接触終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄し、塩化マグネシウムを主体とする重合触媒成分(1)を得た。このもののチタン含量は1.1重量%であった。
(ii)ポリプロピレン系樹脂の製造
重合触媒成分(1)及びトリエチルアルミニウムを使用し、第1重合工程として反応部容積280Lを有する流動床式気相反応器を用い、重合温度85℃、プロピレン分圧22kg/cm2の条件下プロピレン単独重合を連続的に行った。この時、固体触媒成分は1.8g/hrの速度で、またトリエチルアルミニウムを5.5g/hrの速度で連続的に供給した。第1重合工程より抜き出されるパウダーを25kg/hrで連続的に第2重合工程として用いる反応部容積280Lを有する流動床式気相反応器に送り、プロピレンとエチレンの共重合を連続的に行った。第2重合工程から連続的に27kg/hrのポリマーを抜き出した。各重合工程での水素濃度は、1槽目でH2/プロピレン=0.045モル比、2槽目でH2/(エチレン+プロピレン)=0.01モル比にコントロールすることにより分子量を制御した。ゴム状プロピレン・エチレン共重合体部のエチレン組成は、第2重合工程でのプロピレンとエチレンのガス組成をプロピレン/エチレン=1/1モル比にコントロールすることによりプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−1)を得た。1段重合槽から抜き出したプロピレン単独重合体の[mmmm]は、0.986、MFRは142g/10分、2段目重合槽から抜き出したプロピレン・エチレンブロック共重合体のMFRは65g/10分であった。
第1重合工程の水素量を、H2/プロピレンモル比で0.048、第2重合工程の水素量を、H2/プロピレンモル比で0.015に変更した以外は、製造例1と同様にしてプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−2)を得た。
1段重合槽から抜き出したプロピレン単独重合体の[mmmm]は、0.986、MFRは213g/10分、2段目重合槽から抜き出したプロピレン・エチレンブロック共重合体のMFRは100g/10分であった。
表3に示す、金属石鹸、マレイン化PPを用いた。なお、マレイン化PPは、以下に示す製造例3〜4に従って製造した。
ホモポリプロピレン(日本ポリプロ社製:MA8)5kgに、無水マレイン酸20g、ベンゾイルパーオキサイド20gをドライブレンドし、設定温度200℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量10kg/hの条件で、2軸押出機(日本製鋼所社製:TEX30α)中で溶融混練し、ダイスより押し出したストランドを水槽で冷却して、カッターによりカットしてペレット状の無水マレイン酸変性ポリプロピレン(マレイン化PP−1)とした。得られたマレイン化PP−1の酸変性度(マレイン化率)は0.3重量%、MFRは16g/10分であった。
無水マレイン酸の仕込み量とベンゾイルパーオキサイドの仕込み量をそれぞれ40gとした以外は製造例3と同様の方法により無水マレイン酸変性ポリプロピレン(マレイン化PP−2)を得た。得られたマレイン化PP−2の酸変性度(マレイン化率)は、0.7重量%、MFRは40g/10分であった。
ポリプロピレン樹脂として製造例1、2で得られたPP−1、PP−2、及び、日本ポリプロ(株)社製ポリプロピレン(PP−3;ノバテックポリプロBC6C)を用い、更に成分(d)無機フィラー(タルク)、成分(e)エラストマー(ゴム−1〜ゴム−3)とを配合し、日本製鋼所社製2軸押出機(TEX30α)を用いて溶融混練し、ベースPPとした。使用した各成分の構造的特長を表4に、ポリプロピレン系樹脂組成物の配合を表5に示す。
表6に示した配合組成・製造条件により、マスターバッチを製造した。マスターバッチは、日本製鋼所社製2軸押出機(TEX30α)を用い、根元ホッパーよりポリオレフィン樹脂、及び、エラストマーを供給し、シリンダ温度200℃、スクリュー回転数400rpmの条件で、ポリオレフィン樹脂とエラストマーを、第1混練部で溶融混練し、第1混練部よりも川下側(ダイス側)に設けたサイドフィード口よりサイドコンパクターにより炭素繊維を供給し、繊維の折損を最小限に抑えるように構成した第2混練部で、収束繊維を分散させた後、ダイスより押し出したストランドを水槽で冷却して、カッターによりカットして、ペレット状のマスターバッチとした。得られたマスターバッチとベースPPを、表6に示した混合比率でペレットブレンドし、東芝機械社製IS100射出成形機(型締力:100t)を用いて、成形温度220℃の条件で、各種試験片を成形した。採取した試験片は、23℃の恒温室で7日間状態調節した後、各種物性を測定した。評価結果を表7に示す。
マスターバッチの配合組成・製造条件、及び、マスターバッチと混合するベースPPを、表6に示す通りとした以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表7に示す。
マスターバッチの配合組成・製造条件、及び、マスターバッチと混合するベースPPを、表8に示す通りとした以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表9に示す。
実施例及び比較例で使用したベースPPの各種物性を表10に示す。
Claims (10)
- 下記(a)炭素繊維および(b)ポリオレフィン系樹脂とからなることを特徴とする、炭素繊維含有ポリオレフィン系樹脂組成物。
(a)繊維径が3〜15μm、繊維長が0.1〜20mm、引張強度が1000MPa以上、および引張弾性率が100GPa以上である炭素繊維:20重量%以上50重量%以下
(b)炭素数2〜8のα−オレフィンの単独重合体、及び/又は、2種以上の共重合体からなり、230℃、2.16kg荷重で測定されたメルトフローレート(以下、MFRと記す)が10〜800g/10分であるポリオレフィン系樹脂:50重量%以上80重量%以下 - 溶融混練によって製造された樹脂組成物中に残存する炭素繊維の平均繊維長が300μm以上であり、且つ、残存全繊維のうち繊維長が500μm以上の繊維数の割合が20重量%以上、かつ、繊維長が700μm以上の繊維数の割合が5重量%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の炭素繊維含有ポリオレフィン系樹脂組成物。
- ポリオレフィン系樹脂組成物が、更に(i)金属石鹸類および(ii)変性ポリオレフィン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の分散助剤(成分(c))を含有し、その配合量がポリオレフィン系樹脂組成物100重量部に対して10重量部以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の炭素繊維含有ポリオレフィン系樹脂組成物。
(i)一般式:(RCOOX)nX(但し、Rは炭素数10〜40の炭化水素残基であり、XはLi、Na、K、Mg、Zn、Ca、Ba又はAlの金属成分であり、nは1、2、又は3である)で表される金属石鹸類
(ii)水酸基、アミノ基、カルボン酸基、無水カルボン酸基あるいはエポキシ基より選ばれる、1種又は2種以上の官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂であって、変性率が主鎖を構成するオレフィンモノマー分子に対して、0.1〜5.0重量%である変性ポリオレフィン樹脂 - 下記成分(A)および成分(B)を、(A):(B)=1〜90:99〜10(重量%比)で混合したポリプロピレン系樹脂組成物。
成分(A):請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭素繊維含有ポリオレフィン系樹脂組成物
成分(B):MFRが5g/10分以上のプロピレン単独重合体、プロピレン単独重合体およびプロピレンと他のα−オレフィン(エチレンを含む)を共重合した共重合体部分とからなるポリプロピレンブロック共重合体、またはこれらの混合物であって、プロピレン単独重合体部分のアイソタクチックペンタッド分率が98.0%以上であるポリプロピレン系樹脂(以下、ベースPPという)であり、ベースPPが当該ブロック共重合体を含む場合は、その共重合体部分のプロピレン含量が30〜75重量%、重量平均分子量が30万以上であるもの - 成分(B)ベースPPが、更に下記成分(d)無機フィラー及び/又は下記成分(e)エラストマーを含有し、その配合割合がベースPP:成分(d):成分(e)=20〜99:1〜40:1〜40(重量%比)であることを特徴とする請求項4に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
(d)無機フィラー:レーザー回折法により測定された平均粒径が1〜15μmであるタルク
(e)エラストマー:炭素数2〜8のα−オレフィンの共重合体、及び/又は、炭素数2〜8のα−オレフィンとスチレンとの共重合体であって、その密度が0.850〜0.930g/cm3であるエラストマー - ポリプロピレン系樹脂組成物の密度及び曲げ弾性率と、ベースPPの密度及び曲げ弾性率によって定義される補強効率(ΔFM/Δρ)が、下記関係式(1)を満足することを特徴とする、請求項4又は5に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
ΔFM/Δρ≧20 …(1)
(式(1)中、ΔFM=FMcp−FMbp、Δρ=ρcp−ρbpであり、FMcp:ポリプロピレン系樹脂組成物の曲げ弾性率(単位:MPa)、FMbp:ベースPPの曲げ弾性率(単位:MPa)、ρcp:ポリプロピレン系樹脂組成物の密度(単位:kg/m3)、ρbp:ベースPPの密度(単位:kg/m3)である) - MFRが5〜100g/10分、曲げ弾性率が1200〜10000MPa、23℃で測定されたアイゾッド衝撃強度が400J/m以上、−30℃で測定されたアイゾッド衝撃強度が40J/m以上、1.86MPaの条件下で測定された荷重たわみ温度が50℃以上、密度が1.10g/cm3未満、23℃から80℃までの線膨張係数が6×10−5cm/cm・℃以下であることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
- 射出成形、圧縮成形および射出圧縮成形からなる群より選ばれた成形加工法により成形されることを特徴とする、請求項4〜7のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物の成形体。
- 成形体が車両用部品あるいは家電用部品であることを特徴とする、請求項8に記載のポリプロピレン系樹脂組成物の成形体。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭素繊維含有ポリオレフィン系樹脂組成物を用いたマスターバッチ。
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