JP6589323B2 - ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

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本発明は、繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体に関し、さらに詳しくは、シボ転写性が良好であり、発泡させることなく成形体表面の触感が滑らかで且つソフトであり、剛性や耐衝撃性のバランスが良いポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体に関する。
ポリプロピレン系樹脂組成物は、物性、成形性、リサイクル性及び経済性などに優れた樹脂材料としてその使用分野が拡がっている。中でもインストルメントパネル、ピラーなどの自動車部品、テレビ、掃除機などの電気機器部品の分野などでは、ポリプロピレン系樹脂や、ポリプロピレン系樹脂にガラス繊維やタルクなどフィラーやエラストマー(ゴム)を複合強化した複合ポリプロピレン系樹脂などのポリプロピレン系樹脂組成物が、成形性、物性バランス、リサイクル性や経済性などに優れるため、その成形体を含め様々な分野で広く用いられている。
これらの分野においては、益々進むポリプロピレン系樹脂組成物の成形体の高機能化、大型化、用途の多様・複雑化など、とりわけ自動車内装部品分野などにおける高品質化に対応するなどのため、ポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体の成形性、物性バランスなどのほか、前記組成物や成形体の機械特性のみならず、質感の優劣に大きな影響を及ぼすシボ転写性や成形体表面の触感の向上が求められている。
ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体に、ガラス繊維やタルクなどのフィラーを含有させて、該樹脂組成物及びその成形体の機械強度(剛性や耐衝撃性等)を向上させることは広く行われている。例えば、特許文献1には強化繊維、プロピレン樹脂、および変性ポリオレフィン樹脂を含有し、全長が2〜100mmである長繊維強化樹脂ペレットであって、プロピレン樹脂と変性ポリオレフィン樹脂の重量比が99.9/0.1〜60/40であり、変性ポリオレフィン樹脂のMFRが70〜100g/10分であり、ペレットに含有される強化繊維の重量平均繊維長とペレットの長さがほぼ等しく、強化繊維が互いに平行に配列しており、プロピレン樹脂が、プロピレン単独重合体部およびプロピレン− エチレン共重合体部からなり、単独重合体部のアイソタクチックペンタッド分率が0.980以上であり、共重合体部の含有量が10〜40重量%である長繊維強化樹脂ペレット、および、それを成形して得られる成形体が開示されている。
また、特許文献2には分子量分布が1.0〜2.9であり、アイソタクチックペンタッド分率が0.9〜1.0であるプロピレン重合体(A)50〜100重量%と、分子量分布が3.0〜10であり、アイソタクチックペンタッド分率が0.9〜1.0であるプロピレン重合体(B)0〜50重量%とを含有するプロピレン系樹脂(I)と(ただし、(A)の重量と(B)の重量の合計を100重量%とする)、前記プロピレン系樹脂(I)100重量部に対して、繊維((C))5〜400重量部を含有するプロピレン系樹脂組成物が開示されている。
しかし、これらについてはシボ転写性や表面硬度については何ら考慮されておらず、特許文献1においてはプロピレン単独重合体部を含むこと、また、特許文献2においては使用しているプロピレン重合体の融点が比較的高めであることから、どちらも成形での溶融樹脂の冷却固化が比較的高温下で進行すると考えられ、シボ転写性が不良であると考えられる。
一方、シボ転写性、耐傷付性、成形外観性、触感の向上を図る組成物も提案されている。例えば、特許文献3には、メタロセン系触媒を用いて逐次重合するなどの4条件を満たすプロピレン−エチレンブロック共重合体、特定の繊維及び必要に応じ特定の変性ポリオレフィン、MFRなどの2条件を満たす熱可塑性エラストマー、特定のプロピレン系重合体樹脂、特定の脂肪酸アミドを含有した繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。しかし、特許文献3の方法では成形体表面の転写性や表面触感を良好にしようとすると各種機械物性の向上が鈍化が懸念され、一方で各種機械物性を良好にしようとすると成形体表面の転写性や表面触感の向上が鈍化してしまう場合が懸念される。そのため、シボ転写性や成形体表面の触感が良好であり、剛性や耐衝撃性をバランスよく、より向上させたポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体が求められていた。
特開2004−204224号公報 特開2008−179784号公報 特開2013−067789号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点等に鑑み、シボ転写性が良好であり、発泡させることなく成形体表面の触感が滑らかで且つソフトであり、剛性や耐衝撃性のバランスが良いポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、特定のプロピレン系重合体に、特定の繊維、特定のブロック共重合体、および、熱可塑性エラストマーを特定の割合で含有してなるプロピレン系樹脂組成物、あるいはそれを用いてなる成形体が上記の課題を解決できることを見出し、これらの知見に基き本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の条件(A−1)〜(A−3)を満足する成分(A)20〜85重量部と、下記の条件(C−1)を満足する成分(C)10〜40重量部と、下記の条件(W−1)〜(W−2)を満足する成分(W)5〜40重量部とを含有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物(但し、成分(A)、成分(C)及び成分(W)の合計を100重量部とする)が提供される。
条件(A−1)
成分(A)は、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体及びプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロピレン系重合体である。
条件(A−2)
成分(A)は、DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が110〜150℃である。
条件(A−3)
成分(A)は、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.5〜200g/10分である。
条件(C−1)
成分(C)は、無機繊維である。
条件(W−1)
成分(W)は、下記条件(B−1)を満足する成分(B)と、下記条件(D−1)〜(D−2)を満足する成分(D)とを含有する。
条件(W−2)
成分(W)5〜40重量部のうち、成分(B)の含有量は0.3重量部以上であり、成分(D)の含有量は1重量部以上である。
条件(B−1)
成分(B)は、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物の水素化物とからなる共重合体に、α、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体が結合したブロック共重合体である。
条件(D−1)
成分(D)は熱可塑性エラストマーであって、密度が0.86〜0.92g/cmである。
条件(D−2)
成分(D)は、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.5〜100g/10分である。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、成分(W)5〜40重量部のうち、成分(B)の含有量が0.3〜10重量部であり、成分(W)の残部が成分(D)であるポリプロピレン系樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、成分(A)が、プロピレン−エチレンランダム共重合体及びプロピレン−エチレンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロピレン系重合体であるポリプロピレン系樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1乃至3のいずれかの発明において、成分(C)が、ガラス繊維及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種であるポリプロピレン系樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1乃至4のいずれかの発明において、成分(D)が、エチレン−α−オレフィン系エラストマーであるポリプロピレン系樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1乃至5のいずれかの発明のポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなる成形体が提供される。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体は、シボ転写性が良好で、成形体表面の触感がソフトであり、さらに高剛性で耐衝撃性に優れ、これらのバランスが良いという特性を有する。
そのため、インストルメントパネル、グローブボックス、コンソールボックス、ドアトリム、肘掛け、グリップノブ、各種トリム類、天井部品、ハウジング類、ピラー類、マッドガード、バンパー、フェンダー、バックドアー、ファンシュラウドなどの自動車用内外装及びエンジンルーム内部品をはじめ、テレビ・掃除機などの電気電子機器部品、各種工業部品、便座などの住宅設備機器部品、建材部品などの用途に、好適に用いることができる。
本発明は、特定のプロピレン系重合体(成分(A))に、特定の繊維(成分(C))、特定のブロック共重合体(成分(B))、および、熱可塑性エラストマー(成分(D))を特定の割合で含有してなるプロピレン系樹脂組成物、あるいはそれを用いてなる成形体に関する。
以下、本願発明において用いられる各成分、得られるプロピレン系樹脂組成物及び形成体について、詳細に説明する。
1.成分(A)
本発明に用いられる成分(A)は、次の特性(A−1)〜(A−3)を満足する。
条件(A−1):成分(A)は、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体及びプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロピレン系重合体である。
条件(A−2):成分(A)は、DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)(以下、Tmと略記することがある)が110〜150℃である。
条件(A−3):成分(A)は、メルトフローレート(以下、MFRと略記することがある)(230℃、2.16kg荷重)が0.5〜200g/10分である。
本発明に用いられる成分(A)は、低結晶性成分を含んでいるため、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)及びその成形体において、シボ転写性、表面の触感を良好にするなどの機能を付与する特徴を有する。
1−1.条件(A−1)
本発明に用いられる成分(A)は、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体及びプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリプロピレン系重合体である。(以下、本明細書においては、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体とプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を単に「プロピレン−α−オレフィン共重合体」と称することがある。)
好ましく用いられるプロピレン−α−オレフィン共重合体は、プロピレンと、エチレン又は炭素数4〜8のα−オレフィンをコモノマーとする共重合体である。通常はプロピレン含量が70〜99重量%(すなわちコモノマー含量が0.01〜30重量%)であり、更に好ましくはプロピレン含量が90重量%以上のプロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体である。また、α−オレフィンの異なるランダム共重合体またはブロック共重合体の混合物であってもよい。
また、プロピレンと共重合させるエチレン又は炭素数4〜8のα−オレフィンであるコモノマーは、1種を用いてもよいし、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、具体的に、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ペンテン−1共重合体、プロピレン−ヘキセン−1共重合体、プロピレン−オクテン−1共重合体のような二元共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ヘキセン−1共重合体のような三元共重合体などが挙げられ、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1ランダム共重合体などが好ましい。プロピレン−α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィン単量体の含有量は、通常は、0.01〜30重量%程度、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは1〜10重量%程度含むことができる。
コモノマーであるエチレン又は炭素数4〜8のα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、1−オクテン等を挙げることができる。これらの中でも、成分(A)とした時の取り扱いや入手の容易さ、また、本発明の樹脂組成物とした時の物性バランスが良好である等の点からエチレン及び1-ブテンが好ましく、特に成分(A)とした時の入手の容易さや、本発明の樹脂組成物とした時の物性バランスが良好であり、経済性等の点からエチレンが好ましい。
即ち、本発明においては、成分(A)として、プロピレン−エチレンランダム共重合体及びプロピレン−エチレンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いるのが、上記理由から好ましい。
(1)プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体
(1−1)製造方法
本発明において、成分(A)として用いられるプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体の製造には、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒等の各種の触媒を使用することができる。
(i)メタロセン触媒について
メタロセン系触媒としては、本発明で成分(A)として用いられるプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体を製造できる限りは、特に限定はされるものではないが、本発明の要件を満たすために、例えば、下記に示す様な成分(a)、(b)、および必要に応じて使用する成分(c)からなるメタロセン系触媒を用いることが好ましい。
成分(a):下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物。
成分(b):下記(b−1)〜(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分。
(b−1):有機アルミオキシ化合物が担持された微粒子状担体。
(b−2):成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸が担持された微粒子状担体。
(b−3):固体酸微粒子。
(b−4):イオン交換性層状珪酸塩。
成分(c):有機アルミニウム化合物。
成分(a)としては、下記一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物を使用することができる。
Q(C4−aa)(C4−b )MeXY (1)
ここで、Qは2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を表し、例えば、2価の炭化水素基、シリレン基ないしオリゴシリレン基、炭化水素基を置換基として有するシリレン基あるいはオリゴシリレン基、または炭化水素基を置換基として有するゲルミレン基などが例示される。この中でも好ましいものは2価の炭化水素基と炭化水素基を置換基として有するシリレン基である。
XおよびYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を示し、このうちで好ましいものとしては、水素、塩素、メチル、イソブチル、フェニル、ジメチルアミド、ジエチルアミド基などを例示することができる。XおよびYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なっていてもよい。
とRは、水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、または、リン含有炭化水素基を表す。炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、ナフチル基、ブテニル基、ブタジエニル基などが例示される。また、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、または、リン含有炭化水素基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシリル基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピラゾリル基、インドリル基、ジメチルフォスフィノ基、ジフェニルフォスフィノ基、ジフェニルホウ素基、ジメトキシホウ素基などを典型的な例として例示できる。これらの中で、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることが特に好ましい。ところで、隣接したR1とR2は、結合して環を形成してもよく、この環上に炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、または、リン含有炭化水素基からなる置換基を有していてもよい。
Meは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの中から選ばれる金属原子であり、好ましくはジルコニウム、ハフニウムである。
なお、aおよびbは、置換基の数である。
以上において記載した成分(a)の中で、本発明に用いられる成分(A)の製造に好ましいものは、炭化水素置換基を有するシリレン基、ゲルミレン基あるいはアルキレン基で架橋された置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、置換フルオレニル基、置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物であり、特に好ましくは、炭化水素置換基を有するシリレン基、あるいはゲルミレン基で架橋された2,4−位置換インデニル基、2,4−位置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物である。
非限定的な具体例としては、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチルベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−イソプロピル−4−(3、5−ジイソプロピルフェニル)インデニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−プロピル−4−フェナントリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−イソプロピル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロビフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−t−ブチル−3−クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリドなどがあげられる。これらの具体例の化合物のシリレン基をゲルミレン基に、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物も好適な化合物として例示される。なお、触媒成分は本発明の重要要素ではないので、煩雑な列記を避け、代表的な例示に限定しているが、これにより本発明の有効範囲が制限されることが無いのは自明のことである。
成分(b)としては、前記した成分(b−1)〜成分(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分を使用する。これらの各成分は、公知のものであり、公知技術の中から適宜選択して使用することができる。その具体的な例示や製造方法については、特開2002−284808公報、特開2002−53609号公報、特開2002−69116号公報、特開2003−105015号公報などに詳細な例示がある。
前記成分(b)の中で、特に好ましいものは、成分(b−4)のイオン交換性層状珪酸塩であり、さらに好ましい物は、酸処理、アルカリ処理、塩処理、有機物処理などの化学処理が施されたイオン交換性層状珪酸塩である。
必要に応じて成分(c)として用いられる有機アルミニウム化合物の例は、下記一般式(2)
AlRaP3−a (2)
(式中、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基、Pは、水素、ハロゲンまたはアルコキシ基、aは、0<a≦3の数を表わす。)で示されるトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムまたはジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。またこの他に、メチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
触媒の形成方法としては、前記の成分(a)と成分(b)及び必要に応じて成分(c)を接触させて触媒とする。なお、その接触方法は触媒を形成することができる方法であれば特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
また、成分(a)と(b)及び(c)の使用量は、任意である。例えば、成分(b)に対する成分(a)の使用量は、成分(b)1gに対して、好ましくは0.1〜1,000μmol、特に好ましくは0.5〜500μmolの範囲である。成分(b)に対する成分(c)の使用量は、成分(b)1gに対し、好ましくは遷移金属の量が0.001〜100μmol、特に好ましくは0.005〜50μmolの範囲である。
さらに、本発明にて使用される触媒は、予めオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すことが好ましい。
(ii)チーグラー触媒
プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体の製造は、チーグラー触媒等を用いて行うこともできる。チーグラー触媒としては、四塩化チタンを有機アルミニウム等で還元して得られた三塩化チタンまたは三塩化チタン組成物を電子供与性化合物で処理し更に活性化したもの(例えば特開昭47−34478号、特開昭58−23806号、特開昭63−146906号)、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、更に各種の電子供与体及び電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と、有機アルミニウム化合物及び芳香族カルボン酸エステルとからなる触媒(特開昭56―100806号、特開昭56−120712号、特開昭58−104907号の各公報参照)、及び、ハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体からなる担持型触媒(特開昭57−63310号、特開昭58−157808号、特開昭58−83006号、特開昭58−5310号、特開昭61−218606号、特開昭63−43915号、特開昭63−83116号の各公報参照)等を例示することができる。
(iii)重合方法
本発明に用いられる成分(A)がプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体である場合、その製造に際しては、第1成分(プロピレン単独重合体、又はα−オレフィン含有量の少ないプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体)と第2成分(プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体)とを逐次重合を行うことにより製造を行う。
逐次重合を行う際には、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から連続法を用いることが望ましい。
バッチ法の場合には、時間と共に重合条件を変化させることにより、単一の反応器を用いても第1成分と第2成分とを重合することが可能である。本発明の効果を阻害しない限り、複数の反応器を並列に接続して用いてもよい。
連続法の場合には、第1成分と第2成分とを個別に重合する必要から2個以上の反応器を直列に接続した製造設備を用いる必要があるが、本発明の効果を阻害しない限り第1成分と第2成分の夫々について複数の反応器を直列及び/または並列に接続して用いてもよい。
(iv)重合プロセス
プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体の重合形式としては、スラリー法、バルク法、気相法など任意の重合方法が可能である。また、これらの重合形式を組み合わせて行うことも可能である。バルク法と気相法の中間的な条件として、超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。
第1成分(プロピレン単独重合体、又はα-オレフィン含有量の少ないプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体)の製造に対しては、どのプロセスを用いても特に問題はないが、比較的結晶性の低い成分(α-オレフィン含有量の少ないプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体)を製造する場合には、反応器への生成物の付着などの問題を避けるために気相法を用いることが好ましい。
第2成分(プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体)は、炭化水素などの有機溶媒や液化プロピレンに溶けやすいため、製造に際しては気相法を用いることが好ましい。
従って、連続法を用いて、先ず第1成分をバルク法もしくは気相法にて重合し、引き続き第2成分を気相法にて重合することが最も好ましい。
(v)その他の重合条件
重合温度は、通常用いられている温度範囲であれば、特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、より好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。
重合圧力は、選択するプロセスによって最適な圧力には差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば、特に問題なく用いることができる。具体的には、大気圧に対する相対圧力で0MPaより大きく200MPaまで、より好ましくは0.1MPa〜50MPaの範囲を用いることができる。この際窒素などの不活性ガスを共存させてもよい。
第1工程で第1成分、第2工程で第2成分の逐次重合を行う場合、第2工程にて系中に重合抑制剤を添加することが望ましい。第2工程のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合を行う反応器に重合抑制剤を添加すると、得られるパウダーの粒子性状(流動性など)やゲルなどの製品品質を改良することができる。この手法については、各種技術検討がなされており、一例として、特公昭63−54296号、特開平7−25960号、特開2003−2939号などの公報に記載の方法を例示することができる。本発明にも当該手法を適用することが望ましい。
(2)プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体
本発明に用いられる成分(A)としてプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を用いる場合、特に成分(A)としてプロピレン−エチレンランダム共重合体を用いる場合、エチレン含量が好ましくは1〜5重量%、より好ましくは1.5〜4重量%、さらに好ましくは2〜3重量%である。成分(A)としてプロピレン−エチレンランダム共重合体を用いる際にエチレン含量をこの様な範囲とすることにより、本発明の樹脂組成物及び成形体のシボ転写性、表面の触感を良好にすると共に、高い剛性を得ることができるという効果を有する。即ち、プロピレン−エチレンランダム共重合体のエチレン含量が1重量%未満であると、樹脂組成物とした時のシボ転写性、表面の触感が低下するおそれがあり、逆にエチレン含量が5重量%を超えると、樹脂組成物とした時の剛性が低下するおそれがある。
また、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体は、2種以上を併用することもできる。
(2−1)製造方法
本発明に用いられるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の製造は、特に限定されず、メタロセン触媒、チーグラー触媒等を用いることができる。特に、メタロセン触媒を使用して得られるものがシボ転写性、触感に優れるので好ましい。
特に、シボ転写性を重視する用途では、メタロセン触媒を使用して得られるものが好ましいが、チーグラー触媒を使用して得られるものに、分子量降下剤を使用してQ値を調整することにより、メタロセン触媒を使用して得られるものと同格の効果を得ることも可能である。
(i)メタロセン触媒
メタロセン触媒の種類は、本発明に用いられるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を製造できる限りは、特に限定はされるものではなく、前述のプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体の製造用として例示したメタロセン触媒を同様に用いることができる。
(ii)チーグラー触媒
チーグラー触媒の種類は、本発明に用いられるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を製造できる限りは、特に限定はされるものではなく、前述のプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体の製造用として例示したチーグラー触媒を同様に用いることができる。
(iii)重合プロセス
経時的な運転手法としては、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から連続法を用いることが望ましい。重合形式としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン若しくはトルエンなどの不活性炭化水素を重合溶媒として用いるスラリー重合、プロピレン自体を重合溶媒とするバルク重合、また、原料のプロピレンを気相状態下で重合する気相重合が可能である。また、これらの重合形式を組み合わせて行うことも可能である。
重合温度は、通常用いられている温度範囲であれば、特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、より好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。
重合圧力は、選択するプロセスによって最適な圧力には差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば、特に問題なく用いることができる。具体的には、大気圧に対する相対圧力で0MPaより大きく200MPaまで、より好ましくは0.1MPa〜50MPaの範囲を用いることができる。この際窒素などの不活性ガスを共存させてもよい。
また、分子量調整剤として、補助的に水素をプロピレンに対して、モル比で1.0×10−6以上、1.0×10−2以下の範囲で用いることができる。好ましくは、1.0×10−5以上、0.9×10−2以下である。
(3)Q値
本発明の成分(A)は、Q値が好ましくは2〜5であり、より好ましくは、2.3〜4.8、さらに好ましくは、2.5〜4.5である。Q値をこの様な範囲とすることにより、本発明の樹脂組成物及び成形体に於いて、耐衝撃性とシボ転写性を良好なものにすることができる。即ち、Q値が2未満では、耐衝撃性が低下する場合が有り、5を超えるとシボ転写性が悪化するおそれがある。Q値は、触媒および重合条件の調節、さらには分子量降下剤の添加量により制御することができる。
Q値とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で定義される。なお、本願におけるGPC測定の詳細は下記の通りであり、同等の装置等を用いても測定は可能である。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN社製 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S 3本(カラムの較正は東ソー社製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量はポリスチレンとポリプロピレンの粘度式を用いてポリプロピレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数はα=0.723、logK=−3.967であり、ポリプロピレンはα=0.707、logK=−3.616である。)
測定温度:140℃
濃度:20mg/10ml
注入量:0.2ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
1−2.条件(A−2)
本発明に用いられる成分(A)のDSC(示差走査熱量計)法により測定された融解ピーク温度(Tm)は、110〜150℃であり、好ましくは115〜148℃、より好ましくは120〜145℃である。Tmをこの様な範囲の成分(A)を用いることにより、本発明の樹脂組成物及び成形体に於いて、シボ転写性及び触感を良好にすると共に、高い剛性を発現することが可能となる。即ち、Tmが110℃未満であると、樹脂組成物及びその成形体の剛性が低下するおそれがある。一方、150℃を超えると、シボ転写性、及び触感などが低下するおそれがある。Tmは、使用する触媒やプロピレンと共重合するエチレンに代表されるコモノマーの含有量を調節することにより制御することができる。
Tmの測定は、示差走査熱量計(例えば、本願の実施例ではセイコー・インスツルメンツ社製DSC6200型)を用い、サンプル5.0mgを採り、200℃で5分間保持後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときのピーク温度で評価する。
1−3.条件(A−3)
(A−I−iv)メルトフローレート(MFR)
本発明に用いられる成分(A)のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、0.5〜200g/10分であり、好ましくは3〜150g/10分、より好ましくは5〜50g/10分である。MFRこのような範囲とすることにより、本発明の樹脂組成物及びその成形体において、シボ転写性や成形性(流動性)を良好にすると共に、耐衝撃性を良好にするという効果を有する。即ち、MFRが0.5g/10分未満であると、樹脂組成物及びその成形体において、シボ転写性や成形性(流動性)が低下するおそれがある。一方、200g/10分を超えると、耐衝撃性が低下するおそれがある。MFRは、重合条件(重合温度、コモノマー量、水素添加量等)を調整したり、分子量降下剤を用いるなどして制御することができる。
1−4.含有割合
成分(A)の含有量は、成分(A)、成分(C)及び成分(W)の合計100重量部において、20〜85重量部であり、好ましくは30〜75重量部である。成分(A)の含有量をこの様な範囲とすることにより、本発明の樹脂組成物及びその成形体のシボ転写性や耐衝撃性を良好なものとすることが可能となる。即ち、成分(A)の含有量が20重量部未満であると、本発明の樹脂組成物及びその成形体のシボ転写性などが低下するおそれがある。一方、85重量部を超えると、耐衝撃性などが低下するおそれがある。
なお、本発明に於いて使用できるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体及びプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体は種々の製品が市販されているので、これらの市販から所望の物性を有する製品を購入し、使用することもできる。市販品としては、例えば、日本ポリプロ社製ウィンテックシリーズ、ウェルネクスシリーズ、ノバテックシリーズ等を挙げることができる。
2.成分(C)
2−1.条件(C−1)
本発明に用いられる成分(C)は、無機繊維である。使用することができる無機繊維としては、ガラス繊維、セラミック繊維(バサルト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維等)、炭素繊維、金属繊維(銅繊維またはステンレス繊維など)、ウィスカー等が例示できるが、ガラス繊維及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。本発明に用いられる成分(C)は、引張弾性率および引張強度が高いため、本発明の樹脂組成物及びその成形体の剛性や耐衝撃性、更には耐熱性などの物性、寸法安定性(線膨張係数の低減など)、環境適応性の各向上などに寄与するという特徴を有する。
これらの無機繊維を収束するためには収束剤を用いてもよく、収束剤としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、澱粉、植物油等が挙げられる。さらに、酸変性ポリオレフィン樹脂、表面処理剤、パラフィンワックス等の潤滑剤を配合してもよい。
無機繊維と成分(A)との濡れ性や接着性等を良好にするために、無機繊維を表面処理剤で予め処理してもよい。この表面処理剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、クロム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤、ボラン系カップリング剤等が挙げられる。これらの中で好ましくは、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤であり、特に好ましくはシラン系カップリング剤である。
前記のシラン系カップリング剤としては、例えば、トリエトキシシラン、ビニルトリス
(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ
−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)
エチルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキ
シシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ
−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシ
シラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシ
シラン等が挙げられる。
前述の通り、成分(C)は、ガラス繊維及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。また、本発明の効果が十分に得られると共に、本発明の樹脂組成物の製造のし易さ及び経済性などの観点から、特にガラス繊維を用いることが好ましい。
また、成分(C)は、2種以上を併用することもでき、予め成分(A)のプロピレン系重合体などに比較的高濃度に含有させた、所謂マスターバッチとした形で使用することもできる。
また、条件(C−1)に該当しないタルク、マイカ、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ウィスカー及び有機繊維などの各種無機又は有機のフィラーを本発明効果を著しく損なわない範囲内で併用することもできる。
(1)ガラス繊維
ガラス繊維としては、特に限定されず用いることができ、繊維に用いられるガラスの種類としては、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラスなどが挙げることができ、中でもEガラスが好ましい。ガラス繊維の製造方法は、特に限定されたものではなく、公知の各種製造方法にて製造される。
なお、ガラス繊維を2種以上を併用することもできる。
ガラス繊維長は、好ましくは、2〜20mmであり、より好ましくは、3〜10mmである。ガラス繊維の長さをこの様な範囲とすることにより、本発明の樹脂組成物及びその成形体の剛性などの物性やシボ転写性、触感等を良好なものとすることができる。即ち、ガラス繊維の長さが2mm未満であると、樹脂組成物及びその成形体の剛性などの物性を低下させるおそれがあり、一方、20mmを超えると、シボ転写性、触感や成形性(流動性)を低下させるおそれがある。
本明細書でいう繊維長とは、通常のロービング状、ストランド状の繊維である場合、溶融混練する前のガラス繊維をそのまま原料として用いる場合における長さを表す。ただし、後述する溶融押出加工し、連続した多数本のガラス繊維を集合一体化したガラス繊維含有ペレットの場合は、ペレットの一辺(押出方向)の長さが、実質的にペレット中の繊維の長さと同じであるため、ペレットの一辺(押出方向)の長さを、繊維の長さとする。
ここで「実質的に」とは、具体的には、繊維含有ペレット中の繊維の個数全体を基準として、50%以上、好ましくは90%以上において、その長さが炭素繊維含有ペレットの長さ(押出方向)と同じであって、該ペレット調製の際に繊維の折損を殆ど受けないことを意味する。
なお、本明細書でいう繊維長は、顕微鏡により計測し、100本以上の繊維の長さの平均値を算出することにより求めることができる。
その具体的な測定は、例えば本発明の樹脂組成物を燃焼、灰化させてガラス繊維のみを残渣として得、得られたガラス繊維を界面活性剤含有水に混合し、該混合水液を薄ガラス板上に滴下拡散した後、デジタル顕微鏡(例えばキーエンス社製VHX−900型)を用いて100本以上のガラス繊維長さを測定しその平均値を算出する方法による。
また、ガラス繊維の繊維径は3〜25μmのものが好ましく、6〜20μmのものがより好ましい。繊維径が3μm未満であると、樹脂組成物及びその成形体の製造、成形時などにおいて該ガラス繊維が折損し易くなるおそれがあり、一方、25μmを超えると、繊維のアスペクト比が低下することに伴い、樹脂組成物及びその成形体の剛性などの各向上効果などが低下するおそれがある。
繊維径は、繊維を繊維長さ方向に垂直に裁断し、その断面を顕微鏡観察して直径を計測し、100本以上の繊維の直径の平均値を算出することにより求める。
ガラス繊維は、表面処理されたものも無処理のものもいずれも用いることができるが、ポリプロピレン系樹脂への分散性を向上させるなどのため、有機シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤、シリコーン化合物、高級脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステルなどによって表面処理されているものを用いることが好ましい。
また、ガラス繊維は、集束剤で集束(表面)処理されたものを用いてもよく、集束剤の種類としては、エポキシ系集束剤、芳香族ウレタン系集束剤、脂肪族ウレタン系集束剤、アクリル系集束剤及び無水マレイン酸変性ポリオレフィン系集束剤などが挙げられる。これらの集束剤は、ポリプロピレン系樹脂との溶融混練において融解する必要があるため、200℃以下で溶融するものであることが好ましい。
ガラス繊維は、表面処理されたものも無処理のものもいずれも用いることができるが、ポリプロピレン系樹脂への分散性を向上させるなどのため、有機シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤、シリコーン化合物、高級脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステルなどによって表面処理されているものを用いることが好ましい。
表面処理に使用する有機シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。また、チタネートカップリング剤としては、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル)チタネートなどが挙げられる。また、アルミネートカップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどを挙げることができる。また、ジルコネートカップリング剤としては、例えば、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル)ブチル、ジ(トリデシル)ホスフィトジルコネート;ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリネオデカノイルジルコネートが挙げられる。また、前記シリコーン化合物としては、シリコーンオイル、シリコーン樹脂などが挙げられる。
さらに、表面処理に使用する高級脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、カプリン酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、カレイン酸、リノール酸、ロジン酸、リノレン酸、ウンデカン酸、ウンデセン酸などが挙げられる。また、高級脂肪酸金属塩としては、炭素数9以上の脂肪酸、例えば、ステアリン酸、モンタン酸などのナトリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩などが挙げられる。中でも、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウムが好適である。また、脂肪酸エステルとしては、グリセリン脂肪酸エステルなどの多価アルコール脂肪酸エステル、アルファスルホン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどが例示される。
前記表面処理剤の使用量は、特に制限されるわけではないが、ガラス繊維100重量部に対して0.01重量部〜5重量部が好ましく、0.1重量部〜3重量部がより好ましい。
ガラス繊維は、繊維原糸を所望の長さに裁断した、所謂チョップドストランド状ガラス繊維として用いることもできる。この中でも、樹脂組成物及びその成形体の剛性、耐衝撃性などの観点から、ガラス繊維を収束したストランドを引き揃えて、2mm〜20mmに切断して得られるチョップドストランド状ガラス繊維を用いることが好ましい。
ガラス繊維の具体例としては、日本電気硝子社製(T480H)などを挙げることができる。
また、これらのガラス繊維は、予め任意の量の例えばプロピレン系重合体(A)などと、溶融押出加工して連続した多数本のガラス繊維を集合一体化し「ガラス繊維含有ペレット」として用いることができ、樹脂組成物及びその成形体のシボ転写性、剛性などの各向上効果などをより高める観点から好ましい。
このようなガラス繊維含有ペレットの場合、前述したように繊維長は、ガラス繊維含有ペレットの長さ(押出方向)とし、2〜20mmが好ましい。
このようなガラス繊維含有ペレットの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
また、ガラス繊維含有ペレットにおいて、ガラス繊維の含有量は、該ペレット全体100重量%を基準として、20重量%〜70重量%であることが好ましい。
ガラス繊維の含有量が20重量%未満であるガラス繊維含有ペレットを本発明において用いた場合、樹脂組成物及びその成形体の剛性などの物性が低下するおそれがあり、一方、70重量%を超えるものを用いた場合には、シボ転写性、触感や成形性(流動性)などを低下させるおそれがある。
(2)炭素繊維
炭素繊維としては、特に限定されず用いることができる。ここで、炭素繊維とは、微細炭素繊維とも称される例えば繊維径が500nm以下の極細のものも含まれる。なお、炭素繊維は2種以上併用することもできる。
炭素繊維の繊維長は、好ましくは、1〜20mmであり、より好ましくは、3〜10mmである。該炭素繊維の長さが1mm未満の場合、樹脂組成物及びその成形体における最終繊維長がより短くなり、樹脂組成物及びその成形体の剛性、耐衝撃性などの物性を低下させるおそれがあり、一方、20mmを超えると、シボ転写性、触感や成形性(流動性)を低下させるおそれがある。
なお、炭素繊維の長さは、前述のガラス繊維と同様の方法で測定される。
炭素繊維の繊維径は、好ましくは2〜20μmであり、より好ましくは、3〜15μmである。繊維径が2μm未満であると、樹脂組成物及びその成形体の製造、成形時などにおいて炭素繊維が折損し易くなるおそれがあり、樹脂組成物及びその成形体の剛性などの物性の各向上効果などが低下するおそれがある。また、繊維径が20μmを超えると繊維のアスペクト比が低下することに伴い、樹脂組成物及びその成形体の、剛性などの各向上効果などが低下するおそれがある。
繊維径は、公知の方法で測定され、例えば、JIS R7607(旧JIS R7601)や顕微鏡観察法により測定される。
炭素繊維の種類としては、前記した様に特に限定されないが、例えばアクリロニトリルを主原料とするPAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維、タールピッチを主原料とするピッチ系炭素繊維、さらにはレーヨン系炭素繊維などが挙げられ、いずれも好適に用いられる。これらの本発明に対する適性はいずれも高いがどちらかといえばその組成純度や均一性などの観点からPAN系炭素繊維が好ましい。なお、これらは各々を単独使用してもよく、併用してもよい。なお、これらの炭素繊維の製造方法は特に限定されない。
炭素繊維の具体例としては、PAN系炭素繊維では、三菱レイヨン社製商品名「パイロフィル」、東レ社製商品名「トレカ」、東邦テナックス社製商品名「ベスファイト」などを挙げることができ、ピッチ系炭素繊維では、三菱樹脂社製商品名「ダイアリード」、大阪ガスケミカル社製商品名「ドナカーボ」、呉羽化学社製商品名「クレカ」などを挙げることができる。
また、これらの炭素繊維は、前述のガラス繊維と同様に、予め任意の量の例えばプロピレン−エチレンランダム共重合体(ア)及び/又はプロピレン−エチレンブロック共重合体(イ)などと、溶融押出加工して連続した多数本の炭素繊維を集合一体化した「炭素繊維含有ペレット」として用いることもでき、樹脂組成物及びその成形体のシボ転写性、剛性などの各向上効果などをより高める観点から好ましい。
このような炭素繊維含有ペレットの場合、前述したように炭素繊維の長さは、該炭素繊維含有ペレットの長さ(押出方向)とし、2〜20mmとすることが好ましい
炭素繊維は、通常200〜1000GPa程度の引張弾性率を有するが、本発明の樹脂組成物及びその成形体の強度や経済性などから本発明においては、200〜900GPaのものを用いるのが好ましく、200〜300GPaのものを用いるのがより好ましい。
また、炭素繊維は、通常1.7〜5g/cm程度の密度を有するが、軽量性や経済性などから1.7〜2.5g/cmの密度を有するものを用いるのが好ましい。
ここで、引張弾性率及び密度の測定方法は夫々公知の方法であり、例えば引張弾性率は、JIS R7606(旧JIS R7601)が挙げられ、同様に密度は、例えばJIS R7603(旧JIS R7601)が挙げられる。
これらの炭素繊維は、繊維原糸を所望の長さに裁断した、所謂チョップド(ストランド状)カーボンファイバー(以下、単にCCFともいう。)として用いる事もでき、また必要に応じて、各種集束剤を用いて集束処理されたものであってもよい。本発明においては、樹脂組成物及びその成形体における、剛性などの物性の各向上効果などをより高めるため、このCCFを用いることが好ましい。
この様なCCFの具体例としては、PAN系炭素繊維では、三菱レイヨン社製商品名「パイロフィルチョップ」、東レ社製商品名「トレカチョップ」、東邦テナックス社製商品名「ベスファイトチョップ」などを挙げることができ、ピッチ系炭素繊維では、三菱樹脂社製商品名「ダイアリードチョップドファイバー」、大阪ガスケミカル社製商品名「ドナカーボチョップ」、呉羽化学社製商品名「クレカチョップ」などを挙げることができる。
また、炭素繊維含有ペレットにおいて、炭素繊維の含有量は、ペレット全体100重量%を基準として、20〜70重量%であることが好ましい。
炭素繊維の含有量が20重量%未満である炭素繊維含有ペレットを本発明において用いた場合、繊維強化組成物及びその成形体の剛性、耐衝撃性などの物性が低下するおそれがあり、一方、70重量%を超えるものを用いた場合には、シボ転写性、触感や成形性(流動性)などを低下させるおそれがある。
2−2.含有割合
本発明に用いられる成分(C)の含有割合は、成分(A)、成分(C)及び成分(W)の合計100重量部において、10〜40重量部であることが好ましく、さらに好ましくは15〜35重量部である。成分(C)の含有量をこの様な範囲とすることにより、本発明の繊維強化組成物及びその成形体の剛性および耐衝撃性などの物性や、シボ転写性、触感等を良好なものとすることができる。即ち、成分(C)の含有量が10重量部未満であると、本発明の繊維強化組成物及びその成形体の剛性および耐衝撃性などの物性低下のおそれがあり、一方、40重量部を超えると、シボ転写性、触感や成形性(流動性)などが低下するおそれがある。
ここで、成分(C)の含有割合は実量であり、例えば、前記ガラス繊維含有ペレットを用いる場合は、該ペレットに含有する繊維(C)の実含有量に基づき算出する。
3.成分(W)
成分(W)は以下の条件(W−1)〜(W−2)を満足する。
条件(W−1)
成分(W)は、下記条件(B−1)を満足する成分(B)と、下記条件(D−1)〜(D−2)を満足する成分(D)とを含有する。
条件(W−2)
成分(W)5〜40重量部のうち、成分(B)の含有量は0.3重量部以上であり、成分(D)の含有量は1重量部以上である。
即ち、成分(W)は特定の成分(B)と成分(D)とを、特定の量含有している。
3−1.条件(W−1)
成分(W)は、成分(B)と、成分(D)とを含有する。このことにより、本発明の樹脂組成物及びその成形体の耐衝撃性や剛性などの物性を、良好なものとすることが可能となる。
3−2.条件(W−2)
成分(W)5〜40重量部のうち、成分(B)の含有量は0.3重量部以上であり、成分(D)の含有量は1重量部以上である。このことにより、本発明の樹脂組成物及びその成形体の耐衝撃性や剛性などの物性を、良好なものとすることが可能となる。
3−3.成分(B)
(1)条件(B−1)
本発明に用いられる成分(B)は、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物の水素化物とからなる共重合体に、α、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体が結合したブロック共重合体(以下、変性ブロック共重合体と略記することがある)である。
芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物の水素化物とからなる共重合体で用いられる芳香族ビニル化合物として代表的な化合物には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルビニルキシレン、ビニルナフタリンおよびこれらの混合物が例示され、また共役ジエン化合物には、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンまたは2,3−ジメチルブタジエンおよびこれらの混合物が挙げられる。
これらの中でも、好ましい芳香族ビニル化合物としては、スチレン、共役ジエン化合物としてブタジエンが挙げられる。これらのブロック共重合体の末端のブロックは同じであっても異なっていても良い。これらの共重合体の数平均分子量は10000〜800000、好ましくは20000〜500000である。また、ブロック共重合体中の芳香族ビニル化合物の含有量は10〜70重量%が好ましく、より好ましくは10〜55重量%である。
(2)製造方法
芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物の水素化物からなる水素化ブロック共重合体は、前記ブロック共重合体の共役ジエン部分を選択的に水素化することによって得られるものであり、例えば、特公昭42-8704号公報記載の方法、つまりn-ヘキサンとシクロヘキサンの混合溶媒中でナフテン酸コバルトとトリエチルアルミニウムを触媒として水素を添加する方法で前記ブロック共重合体を水素化することにより、ビニル芳香族化合物ブロックの芳香族二重結合の20%をこえない部分及び共役ジエン化合物重合体ブロックの脂肪族二重結合の少なくとも80%が水素添加されている水素化ブロック共重合体が合成される。これらの水素化ブロック共重合体は一種のみならず2種以上を混合して用いることもできる。
本発明で用いられる変性ブロック共重合体(成分(B))は前記水素化ブロック共重合体にα,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体を付加させることにより得られるが、ここで用いる水素化ブロック共重合体中の芳香族ビニル化合物の含有量は10〜70重量%、好ましくは15〜60重量%である。
変性ブロック共重合体(成分(B))を調製する際に用いるα,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体の例としては、マレイン酸,無水マレイン酸,フマル酸,イタコン酸,アクリル酸,メタクリル酸,コハク酸,無水コハク酸,クロトン酸,フタル酸,無水フタル酸等が挙げられるが、これらの中では無水マレイン酸が特に好ましい。
変性ブロック共重合体(成分(B))は、例えば、水素化ブロック共重合体にα,β-不飽和カルボン酸またはその誘導体を溶液状態または溶融状態において、ラジカル開始剤を使用あるいは使用せずに付加せしめることによって得られる。これら変性ブロック共重合体の製造方法に関しては、本発明においては特に限定しないが、得られた変性ブロック共重合体がゲル等の好ましくない成分を含んだり、その溶融粘度が著しく増大して加工性が悪化したりする製造方法は好ましくない。好ましい方法としては、押出機中で、ラジカル開始剤存在下で、水素化ブロック共重合体とα,β-不飽和カルボン酸またはその誘導体と反応させる方法がある。
変性ブロック共重合体(成分(B))の変性量は、未変性の水素化ブロック共重合体100重量部あたり、耐衝撃性の観点から0.1重量部以上であり、また耐熱性及び成形加工性の観点から3重量部以下であることが必要であり、好ましくは0.15〜1.8重量部である。
なお、これらの変性ブロック共重合体は種々の製品が多くの会社から市販されている(例えば、旭化成社製・タフテックシリーズ等)ので、所望の物性を有する製品を入手し、使用することもできる。
(3)含有割合
本発明に用いられる変性ブロック共重合体(成分(B))の含有割合は、成分(W)5〜40重量部のうち、0.3重量部以上である。これは、樹脂組成物100重量部において、0.3重量部以上であることを意味している。成分(W)5〜40重量部のうち、成分(B)の含有量が0.3〜15重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。成分(B)の含有量をこの様な範囲とすることにより、本発明の樹脂組成物及びその成形体の耐衝撃性や剛性などの物性を、良好なものとすることが可能となる。即ち、変性ブロック共重合体の含有量が0.3重量部未満であると、本発明の繊維強化組成物及びその成形体の曲げ強度および特に耐衝撃性などの物性低下のおそれがあり、一方、15重量部を超えると、剛性などが低下するおそれがある。
3−4.成分(D)
本発明に用いられる成分(D)は、下記条件(D−1)〜(D−2)を満足する。
条件(D−1)
成分(D)は熱可塑性エラストマーであって、密度が0.86〜0.92g/cmである。
条件(D−2)
成分(D)は、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.5〜100g/10分である。
(1)条件(D−1)
本発明に用いられる成分(D)は熱可塑性エラストマーであり、本発明の樹脂組成物及び成形体において、耐衝撃性やソフトな触感などの機能を付与するという特徴を有する。
また、本明細書における熱可塑性エラストマー(成分(D))とは、オレフィン系エラストマー及びスチレン系エラストマーなどから選ばれる熱可塑性エラストマーを表し、前記成分(A)に該当する、プロピレン−エチレンブロック共重合体に代表されるプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体およびプロピレン−エチレンランダム共重合体に代表されるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体に該当しないことは言うまでもない。
オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(EPR)、エチレン・ブテン共重合体エラストマー(EBR)、エチレン・ヘキセン共重合体エラストマー(EHR)、エチレン・オクテン共重合体エラストマー(EOR)などのエチレン−α−オレフィン系エラストマー(エチレン−α−オレフィン共重合エラストマー);エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・イソプレン共重合体などのエチレン・α−オレフィン・ジエン三元共重合体エラストマーなどを挙げることができる。
また、スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック共重合体エラストマー(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック共重合体エラストマー(SIS)、スチレン−エチレン・ブチレン共重合体エラストマー(SEB)、スチレン−エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(SEP)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体エラストマー(SEBS)、スチレン−エチレン・ブチレン−エチレン共重合体エラストマー(SEBC)、水添スチレン・ブタジエンエラストマー(HSBR)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体エラストマー(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体エラストマー(SEEPS)、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体エラストマー(SBBS)などを挙げることができる。
さらに、エチレン−エチレン・ブチレン−エチレン共重合体エラストマー(CEBC)などの水添ポリマー系エラストマーなども挙げることができる。
中でもエチレン−α−オレフィン系エラストマーが好ましく、特にエチレン・オクテン共重合体エラストマー(EOR)、エチレン・ブテン共重合体エラストマー(EBR)及びエチレン・プロピレン共重合体エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも一種を使用すると、樹脂組成物及びその成形体において、触感及び耐衝撃性などの性能がより優れ、経済性にも優れる傾向にあることなどの点から好ましい。
なお、熱可塑性エラストマー(成分(D))は、2種以上を併用することもできる。
本発明に用いられる熱可塑性エラストマー(成分(D))の密度は、0.86〜0.92g/cmであり、好ましくは、0.865〜0.91g/cm、さらに好ましくは0.87〜0.90g/cmである。熱可塑性エラストマー(成分(D))の密度をこの様な範囲とすることにより、本発明の樹脂組成物及びその成形体において、剛性や触感を良好なものとすることができる。即ち、密度が0.86g/cm未満であると、本発明の樹脂組成物及びその成形体において、剛性が低下し、0.92g/cmを超えると、触感が低下するおそれがある。
(2)条件(D−2)
本発明に用いられる熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)は、0.5〜100g/10分の範囲であり、好ましくは1.5〜50g/10分、さらに好ましくは2〜15g/10分の範囲内である。MFRをこの様な範囲とすることにより、本発明の樹脂組成物及びその成形体のシボ転写性と、耐衝撃性を良好なものとすることができる。即ち、MFRが0.5g/10分未満であると、本発明の樹脂組成物及びその成形体のシボ転写性、及び成形性(流動性)、などが低下するおそれがあり、100g/10分を超えると、耐衝撃性が低下するおそれがある。
(3)製造方法
本発明に用いられる熱可塑性エラストマー(成分(D))は、例えばオレフィン系エラストマーにおいては、エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーや、エチレン・α−オレフィン・ジエン三元共重合体エラストマーなどは、各モノマーを触媒の存在下、重合することにより製造される。
触媒としては、例えばハロゲン化チタンの様なチタン化合物、アルキルアルミニウム−マグネシウム錯体の様な有機アルミニウム−マグネシウム錯体、アルキルアルミニウム、またはアルキルアルミニウムクロリドなどのいわゆるチーグラー型触媒、WO91/04257号パンフレットなどに記載のメタロセン化合物触媒などを使用することができる。
重合法としては、気相流動床法、溶液法、スラリー法などの製造プロセスを適用して重合することができる。また、成分(D)のうち、スチレン系エラストマーは、通常のアニオン重合法及びそのポリマー水添技術などにより製造することができる。
また、これらの熱可塑性エラストマーは種々の製品が多くの会社から市販されている(例えば、ダウ・ケミカル社製、エンゲージシリーズ等)ので、所望の物性を有する製品を入手し、使用することもできる。
(4)含有割合
本発明に用いられる熱可塑性エラストマー(成分(D))の含有割合は、成分(W)5〜40重量部のうち、1重量部以上である。これは、樹脂組成物100重量部において、1重量部以上であることを意味している。成分(W)5〜40重量部のうち、変性ブロック共重合体(成分(B))の含有割合は、前述のように0.3〜15重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜10重量部であり、その残部が成分(D)であるので、成分(D)の好ましい範囲は成分(W)中の成分(B)との差し引きにより求められる。また、その効果は前述の成分(B)同様、本発明の樹脂組成物及びその成形体の耐衝撃性や剛性などの物性を、良好なものとすることが可能となる
3−5.成分(W)の含有割合
成分(W)の含有割合は、成分(A)、成分(C)及び成分(W)の合計を100重量部として、5〜40重量部であり、好ましくは10〜35重量部である。成分(W)の含有量をこの様な範囲とすることにより、本発明の樹脂組成物及びその成形体の耐衝撃性や剛性などの物性を良好なものにすることができる。即ち、成分(W)の含有量が5重量部未満であると、本発明の樹脂組成物及びその成形体の曲げ強度、耐衝撃性などの物性低下のおそれがあり、一方、40重量部を超えると、剛性などが低下するおそれがある。
4.任意添加成分
本発明の樹脂組成物は、任意添加成分として、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、分子量降下剤、潤剤、酸化防止剤などの各種任意添加成分を含有することができる。
任意添加成分は、2種以上を併用してもよく、樹脂組成物に添加してもよいし、前記成分(A)〜(D)の各成分に予め添加されていてもよく、それぞれの成分においても2種以上併用することもできる。本発明において、任意添加成分の含有割合は特に限定されないが、通常、樹脂組成物100重量部において、0.01〜0.5重量部程度であり、その目的に応じて適宜選択される。
(1)分子量降下剤
分子量降下剤は、成形性(流動性)などの付与、向上に有効である。
分子量降下剤は、例えば、各種の有機過酸化物や、分解(酸化)促進剤と称されるものなどが使用でき、有機過酸化物が好適である。
有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルパーアセテート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチル−ジ−パーアジペート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、メチル−エチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジキュミルパーオキサイド、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルキュミルパーオキサイド、1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス−t−ブチルパーオキシブタン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−サイメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラ−メチルブチルハイドロパーオキサイド及び2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(ハイドロパーオキシ)ヘキサンのグループから選ばれる1種または2種以上からなるものを挙げることができる。
(2)潤剤
潤剤は、樹脂組成物及びその成形体の成形時の離型性などの付与、向上に有効である。
潤剤としては、例えば、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸ブチル、シリコーンオイルなどを挙げることができる。
(3)酸化防止剤
酸化防止剤は、樹脂組成物及びその成形体の品質劣化の防止に有効である。
酸化防止剤として、例えば、フェノール系、リン系やイオウ系の酸化防止剤などを挙げることができる。
(4)その他
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、成分(A)以外のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂やポリステル樹脂などの熱可塑性樹脂、成分(D)以外のエラストマー(ゴム成分)などを含有することができる。
これらの任意成分は、種々の製品が多くの会社から市販されており、その目的に応じて、所望の製品を入手し、使用することができる。
5.ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法
本発明の樹脂組成物は、プロピレン系重合体(成分(A))、無機繊維(成分(C))及び成分(W)に対して、必要に応じ任意添加成分を加え、前記含有割合で、従来公知の方法で配合し、溶融混練する混練工程を経ることにより製造することができる。
混合は、通常、タンブラー、Vブレンダー、リボンブレンダーなどの混合機器を用いて行い、溶融混練は、通常、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー、撹拌造粒器などの混練機器を用いて(半)溶融混練し、造粒する。(半)溶融混練・造粒して製造する際には、前記各成分の配合物を同時に混練してもよく、また性能向上をはかるべく各成分を分割して混練する、すなわち、例えば、先ず成分(A)の一部または全部と、無機繊維(成分(C))の一部とを混練し、その後に残りの成分を混練・造粒するといった方法を採用することもできる。
本発明の樹脂組成物は、溶融混練する混練工程を経て得られた樹脂組成物ペレット中、あるいは成形体中に存在する無機繊維(成分(C))の平均長さが0.3mm以上好ましくは0.4mm以上2.5mm以下となる様な複合化方法にて製造するのが好ましい。
また、樹脂組成物の好ましい製造方法としては、例えば2軸押出機による溶融混練において、例えば成分(A)及び成分(W)を十分に溶融混練した後、無機繊維(成分(C))をサイドフィード法などによりフィードし、繊維の折損を最小限に留めながら、集束繊維を分散させるなどの方法が挙げられる。
また、例えば成分(A)及び成分(W)を、ヘンシェルミキサー内で高速撹拌してこれらを半溶融状態とさせながら混合物中の無機繊維(成分(C))を混練するいわゆる撹拌造粒方法も繊維の折損を最小限に留めながら繊維を分散させ易いので好ましい製造方法の一つである。
さらに、予め無機繊維(成分(C))を除く成分(A)および成分(W)を押出機などで溶融混練してペレットと成し、該ペレットと前記のガラス繊維含有ペレットや炭素繊維含有ペレットなどの所謂「無機繊維含有ペレット」とを混合することにより樹脂組成物とする製造方法も前記同様の理由などで好ましい製造方法の一つである。
以上の通り、本発明の樹脂組成物の好ましい製造方法としては、混練工程において、無機繊維(成分(C))以外の成分を混練した後に、無機繊維(成分(C))を加える方法を挙げることができ、容易な製造方法により本発明の樹脂組成物を製造することができる。
6.成形体の製造方法及び特性
本発明の成形体は、前記方法で製造された樹脂組成物を、例えば、射出成形(ガス射出成形、二色射出成形、コアバック射出成形、サンドイッチ射出成形も含む)、射出圧縮成形(プレスインジェクション)、押出成形、シート成形及び中空成形などの周知の成形方法にて成形することによって得ることができる。この内、射出成形または射出圧縮成形にて得ることが好ましい。
本発明の成形体は、シボ転写性が良好であり、成形体表面の触感がソフトであり、さらに高剛性・高衝撃強度であるという特性が発揮される。さらに、本発明の成形体は、経済的に有利な成分を使用し、容易な製造方法にて製造し、低コストで得られる。
そのため、インストルメントパネル、グローブボックス、コンソールボックス、ドアトリム、肘掛け、グリップノブ、各種トリム類、天井部品、ハウジング類、ピラー類、マッドガード、バンパー、フェンダー、バックドアー、ファンシュラウドなどの自動車用内外装及びエンジンルーム内部品をはじめ、テレビ・掃除機などの電気電子機器部品、各種工業部品、便座などの住宅設備機器部品、建材部品などの用途に、好適に用いることができる。特に、ソフトな触感と高い物性バランスの特性を兼ね備えることにより、自動車部品、特に内装用部品に好適である。
本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例で用いた評価法、分析の各法および材料は、以下の通りである。
1.評価方法
(1)光沢(シボ転写性)
下記方法にて作成した試験片のシボ面光沢を光沢計(日本電色工業社製VG−2000型)にて入射角60°の条件で測定し(n数=5)、平均値で評価した。本発明では、1.7以下であれば、良好と判断できる。
・試験片=平板状(60×80×2t(mm))。
・測定面=シボ面(自動車内装皮シボ)。
・成形機=東芝機械社製EC20型射出成形機。
・成形条件=成形温度220℃、金型温度40℃、射出圧力50MPa、射出時間5秒、冷却時間20秒。
(2)HDD(D硬度)
JIS K7215に準拠し、試験温度=23℃にて測定した。試験片は、前記光沢用試験片を3枚重ねて本評価用の試験片として用いた。本発明では、62以下であれば、良好と判断できる。
(3)曲げ特性
JIS K7171に準拠し、試験温度=23℃にて曲げ弾性率及び曲げ強度を測定した。なお、下記条件にて作成した平板状試験片を、本評価用の試験片とした。本発明では、曲げ弾性率が3000MPa以上又は曲げ弾性率が3000MPa未満であっても、曲げ強度/曲げ弾性率が0.025以上であれば良好と判断できる。
・成形機=東芝機械社製EC20型射出成形機。
・金型=物性評価用短冊状試験片(10×80×4t(mm))2個取り。
・成形条件=成形温度220℃、金型温度40℃、射出圧力50MPa、射出時間5秒、冷却時間20秒。
(4)衝撃特性(シャルピー衝撃強度(ノッチ付)):
JIS K7111に準拠し、試験温度=23℃にて測定した。試験片は上記曲げ特性の評価用平板状試験片を用いた。本発明では、13kJ/m以上であれば、良好と判断できる。
(5)融点ピーク温度(Tm)
セイコー・インスツルメンツ社製DSC6200型を用い、サンプル5.0mgを採り、200℃で5分間保持後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させて測定した。
(6)メルトフローレート(MFR):成分(A)
JIS K7210に準拠し、試験温度=230℃、荷重=2.16kgで測定した。
(7)Q値
試料20gを溶媒10mlに溶解し、以下の方法にて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)から計算にて求めた。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN社製 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S 3本(カラムの較正は東ソー社製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量はポリスチレンとポリプロピレンの粘度式を用いてポリプロピレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数はα=0.723、logK=−3.967であり、ポリプロピレンはα=0.707、logK=−3.616である。)
測定温度:140℃
濃度:20mg/10ml
注入量:0.2ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
2.材料
(1)成分(A):プロピレン系重合体
(A−1):プロピレン−エチレンブロック共重合体、ウェルネックス(日本ポリプロ社製)
メタロセン系触媒、MFR(230℃、2.16kg荷重)60g/10分、プロピレン−エチレンブロック共重合体全体のエチレン含有量5.0重量%、融解ピーク温度(Tm)=133℃、Q値=2.8
(A−2):プロピレン−エチレンランダム共重合体 ウィンテックWSX02(日本ポリプロ社製)
メタロセン系触媒、MFR(230℃、2.16kg荷重)25g/10分、エチレン含有量3.5重量%、融解ピーク温度(Tm)=125℃、Q値=2.6
(A−3):プロピレン−エチレンランダム共重合体 ノバテックMG3F(日本ポリプロ社製)
チーグラー系触媒、MFR(230℃、2.16kg荷重)8g/10分、エチレン含有量2.5重量%、融解ピーク温度(Tm)=144℃、Q値=4.5
(2)成分(C):無機繊維
(C−1):T480H(日本電気硝子社製)
ガラス繊維、チョップドストランド(繊維径10μm、長さ4mm)。
(3)成分(B):マレイン酸変性水添スチレンブタジエンブロック共重合体
(B−1):タフテックM1943(旭化成社製)
スチレン成分約20重量%、MFR(230℃、2.16kg荷重)8g/10分、密度0.90g/cm(カタログ値)、形状=ペレット。
(4)成分(D):熱可塑性エラストマー
(D−1):エンゲージEG8200(ダウ・ケミカル社製)
エチレン−オクテン共重合エラストマー、MFR(230℃、2.16kg荷重)10g/10分、密度0.87g/cm(カタログ値)、形状=ペレット。
(5)成分(E):酸変性ポリプロピレン樹脂
(E−1):無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂
P928(三菱化学社製)、形状=ペレット。
3.実施例及び比較例
[実施例1〜17及び比較例1〜12]
(1)樹脂組成物の製造
前記成分(A)〜(E)を、下記の添加剤とともに表1及び表2に示す割合で配合し、下記の条件で混練、造粒し、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを製造した。
この際、前記成分(A)〜(E)からなる組成物全体100重量部当たり、BASF社製IRGANOX1010を0.1重量部、BASF社製IRGAFOS168を0.05重量部それぞれ配合した。
混練装置:神戸製鋼社製「KTX44」型2軸押出機。
混練条件:温度=200℃、スクリュー回転数=300rpm、吐出量=30kg/Hr。
なお、成分(C)のガラス繊維は、押出機中段からサイドフィードした。
(2)評価
得られたポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを用いて、前記評価方法に従い、各種評価を行った。結果を表1及び表2に示す。




4.評価
表1及び表2に示す結果から、本発明の樹脂組成物及びその成形体の発明要件を満たしている実施例1〜17は、光沢の評価で表されるシボ転写性が良好であり、硬度の評価から分かる様に成形体表面の触感がソフトであり、さらに曲げ特性及び衝撃特性が良好である。
一方、上記本発明の特定事項を満たさない比較例において、比較例1〜12に示す組成を持った樹脂組成物及びその成形体は、これらの性能バランスが不良で、実施例1〜17のものに対して見劣りしている。
例えば、比較例1〜5では、曲げ強度/曲げ弾性率が劣っており、これらは樹脂と繊維フィラーとの界面接着強度が低く、曲げ強度の向上が不十分であったためと考えられる。比較例6〜10では、シボ転写性(光沢)もしくは成形体表面の触感(硬度)が劣っており、これらは変性ポリオレフィン樹脂に由来する高結晶成分の付与によるものと考えられる。比較例11では、エラストマー成分が少ないため、衝撃特性に劣っており、比較例12では、繊維フィラー含有量が多いため、成形体表面の触感(硬度)が劣っている。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体は、シボ転写性が良好であり、成形体表面の触感がソフトであり、さらに高剛性・高衝撃強度であるため、発泡成形体の様なソフト感を有する別途成形体部品との積層化などが不要であり、低コスト化を一層図ることができる。さらに、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、経済的に有利な成分を使用し、容易な製造方法にて製造でき、低コストである。
よって、インストルメントパネル、グローブボックス、コンソールボックス、ドアトリム、肘掛け、グリップノブ、各種トリム類、天井部品、ハウジング類、ピラー類、マッドガード、バンパー、フェンダー、バックドアー、ファンシュラウドなどの自動車用内外装及びエンジンルーム内部品をはじめ、テレビ・掃除機などの電気電子機器部品、各種工業部品、便座などの住宅設備機器部品、建材部品などの用途に、好適に用いることができ、特にソフトで滑らかな触感と高い物性バランス特性を兼ね備えるため、自動車部品として好適に用いることができ、産業上大いに有用である。

Claims (6)

  1. 下記の条件(A−1)〜(A−3)を満足する成分(A)20〜85重量部と、
    下記の条件(C−1)を満足する成分(C)10〜40重量部と、
    下記の条件(W−1)〜(W−2)を満足する成分(W)5〜40重量部とを含有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物(但し、成分(A)、成分(C)及び成分(W)の合計を100重量部とする)。
    条件(A−1)
    成分(A)は、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体及びプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロピレン系重合体である。
    条件(A−2)
    成分(A)は、DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が110〜150℃である。
    条件(A−3)
    成分(A)は、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.5〜200g/10分である。
    条件(C−1)
    成分(C)は、無機繊維である。
    条件(W−1)
    成分(W)は、下記条件(B−1)を満足する成分(B)と、下記条件(D−1)〜(D−2)を満足する成分(D)とを含有する。
    条件(W−2)
    成分(W)5〜40重量部のうち、成分(B)の含有量は0.3重量部以上であり、成分(D)の含有量は1重量部以上である。
    条件(B−1)
    成分(B)は、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物の水素化物とからなる共重合体に、α、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体が結合したブロック共重合体である。
    条件(D−1)
    成分(D)は熱可塑性エラストマーであって、密度が0.86〜0.92g/cmである。
    条件(D−2)
    成分(D)は、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.5〜100g/10分である。
  2. 成分(W)5〜40重量部のうち、成分(B)の含有量が0.3〜10重量部であり、成分(W)の残部が成分(D)である請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  3. 成分(A)が、プロピレン−エチレンランダム共重合体及びプロピレン−エチレンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロピレン系重合体である請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  4. 成分(C)が、ガラス繊維及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至3の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  5. 成分(D)が、エチレン−α−オレフィン系エラストマーである請求項1乃至4の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  6. 請求項1乃至5の何れか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなる成形体。
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