JP2006096577A - 金属酸化物膜、金属酸化物膜の製造方法および成形品 - Google Patents

金属酸化物膜、金属酸化物膜の製造方法および成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】 基板上に形成された結晶性の金属酸化物膜、該金属酸化物膜を製造するための製造方法および該金属酸化物膜が形成された成形品を提供する。
【解決手段】 本発明の金属酸化物膜12は、基材10に付着した前駆体物質の結晶化を促進する処理後にプラズマ処理により結晶化される。結晶化を促進する処理は、前記前駆体物質の膜に真空紫外線を照射する処理でもよいし、格子定数が、金属酸化物膜を形成する金属酸化物の格子定数の±15%以内の粒子として混合する処理でもよい。また、本発明は、金属酸化物膜を形成させるための前駆体物質を基材10に付着させ、前記前駆体物質の結晶化を促進する処理が施された、またはシードを含む前駆体膜を形成する工程と、基材10に付着した前駆体膜を、プラズマ処理することにより、前駆体膜を結晶化させ金属酸化物膜12とする工程とを含む金属酸化物膜の製造方法を提供する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、薄膜形成技術に関し、より詳細には、基板上に形成された結晶性の金属酸化物膜、該金属酸化物膜を製造するための製造方法および該金属酸化物膜が形成された成形品に関する。
スパッタや真空蒸着により、ガラスやポリマー等の基材にTiOなどの金属酸化物薄膜を形成することは広く一般に行われている。近年、建材用ガラスでは、このようなプロセスで薄膜ガラス表面に形成する際にコスト的に有利になることから、1回あたりに処理するガラスの大きさを大型化する傾向にあり、またガラスなどの無機材料の他、ポリカーボネートやアクリルなどの樹脂材料が用いられるケースも増加しつつある、このようなガラスの大型化や樹脂基材の増加により、基板加熱によるワレの発生や耐熱性の乏しい基材に対応するため、基板を加熱せず、無加熱で成膜することが行われている。
しかしながら、常温でのプロセスでは結晶化のための駆動力や移動度が不充分であることから、得られる膜が非晶質になりやすく、膜欠陥ができやすいという不都合がある。このため光学特性など、表面結晶性と密接に関係する特性が必要な場合、ガス導入等の製造プロセス条件を厳しく制御しなければならなかった。また、たとえプロセス条件を制御しても、得られる膜の物性は、基板加熱により得られる薄膜よりも劣る場合が多かった。
また金属イオンを含む前駆体溶液を用い、酸化物薄膜を作製する試みも盛んに行われている。代表的な前駆体溶液としては、金属アルコキシド、金属アセテート、有機金属錯体、金属塩、金属右鹸などを挙げることができ、最も代表的な化合物として、金属アルコキシドを用いたゾルゲル法である。この方法は、金属アルコキシドを酸などの触媒、水を用いることにより、単分子状態から無秩序だが、分子同士が結合した高分子状態へと遷移させ、(この状態をゲル化という。)低温でも、有機物さえ分解・除去されれば金属酸化物が得られることを特徴とする方法である。この方法は設備コストが安く、複雑な形状のものでもディッブコートなどにより全体に均一に膜を形成できるため、多品種少量生産や比較的小型の物への金属酸化物薄膜のコーティングに適している。しかしながら、有機金属化合物に含まれる有機物の燃焼や、得られる膜内都での脱水重縮含、あるいは結晶化の促進のため、一般には少なくとも400℃程度の加熱を必要とし、耐熱性のある基材にしか適用できないという欠点があった。
ゾルゲル法で得られる薄膜については、加熱を伴わずに結晶化や緻密化を促進するため技術として、紫外線照射や水蒸気添加、電子線照射などの方法も検討されている。しかしながらこれらの技術でも結晶化は必ずしも充分でなかったり、また、プロセス条件を詳細に制御する必要があり、再現性が乏しいなどの問題点があった。この問題点を解決するために、発明者等は、前駆体の薄膜を、プラズマ処理をすることが効果的であることを見出し、その適用範囲などについて、既に出願を行ってきた(特許文献1:特願2000−306174、特許文献2:特願2002−077919、特許文献3:PCT/JP02/10181)。
上記明細書においては、プラズマによる処理が主に非晶質からなる金属化合物薄膜から、低温、かつ短時間で結晶質の金属酸化物膜を作製する手法として極めて有効であることが開示されている。しかしながら、上記明細書に開示された方法でも、未だ前駆体の種類や基材により結晶化の程度が異なることがあり、更なる効率化のためのプロセス技術が必要とされていた。
また、高温加熱によるゲル薄膜の緒晶化を効果的に進める方法として、紫外線照射や微細な結晶粒子(シード〉の添加が有勃であることが知られている。例えば、紫外線照射ではN. Kaliwoh, J-Y Zhang, I. W. Boyd等がSurf. Coatings Tech., 125, 424-427(2000)(非特許文献1)に、また林伸明等は、第20回日本セラミックス協会関東支部研究発表会、講演要旨集p58(2004)(非特許文献2)において、それぞれアルコキシド由来の酸化チタン前駆体薄膜の加熱による結晶化に際し、真空紫外光の照射効果を報告している。
さらに、シード添加についてはM. Kumagai等がJ.Am.Ceram. Soc., 68[9], 500-505(1985)(非特許文献3)に、またY. Narender等が、J. Am. Ceram. Soc.,82[7]1659-1664(1999)(非特許文献4)に、更にはJ. Horn等が、J. Am. Ceram. Soc., 82[4]921-926(1999)(非特許文献5)に、それぞれ加熱による結晶化過程や微構造制御に対して、シードが有効であることを報告している。しかしながら、上述した先行技術は、加熱処理を不可欠な処理としているため、大面積基材および加熱により容易に変形する基材に対して適用することが不向きであるという、従来技術の問題点を何ら解決するものではなかった。一方、プラズマ処理は、物質の熱拡散が少ない低温での非平衡プロセスなので、適用することができる基材は広がるものの、プロセス条件および前駆体の種類に大きく依存するという不都合もある。
このため、基材に対して過大な熱的ストレスを与えず、ひいては物質の熱拡散が少ない条件下でシード添加による効果を得ることを可能とする、金属酸化物膜の製造方法、金属酸化物膜および該金属酸化物膜が形成された成形品が必要とされていた。
特願2000−306174 特願2002−077919 PCT/JP02/10181 N. Kaliwoh等、Surf. Coatings Tech., 125, 424-427(2000) 林等、第20回日本セラミックス協会関東支部研究発表会、講演要旨集p58(2004) M. Kumagai等、J.Am.Ceram. Soc., 68[9], 500-505(1985) Y. Narender等、J. Am. Ceram. Soc.,82[7]1659-1664(1999) J. Horn等、J. Am. Ceram. Soc., 82[4]921-926(1999)
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、主に非晶質からなる金属化合物薄膜を、紫外線照射およびプラズマ処理を含む低温において、基材に結晶性の金属酸化物薄膜をより効果的に形成できる技術を提供することを目的とする。
本発明者等は、プラズマ処理により、主に非晶質の金属化合物の前駆体膜を、結晶質の金属酸化物薄膜に効果的に変換することを可能とする技術を開発すべ<、鋭意検討行った。この結果、本発明者等は、プラズマに暴露する前に、あらかじめ前駆体物質の非晶質膜に対し結晶化を促進する処理を施すか、またはシードを含ませておくことで、低温でのプラズマ処理により、前駆体膜の結晶化を促進することができることを見出し、本発明に達したのである。
本発明においては、前駆体膜をプラズマに暴露する前に、あらかじめ基材に付着した前駆体物質からなる膜に、紫外線を照射するか、または当該金属化合物が結晶化した際に結晶構造が同じか、または格子定数の差が少ない結晶性物質を、あらかじめ添加して成膜する。特に波長220nm以下の成分を含む紫外線により照射された前駆体物質または外部からシードが添加粒子として加えられた前駆体物質の膜は、低温のプラズマ照射による前駆体物質の結晶化を促進させ、良好な結晶性の金属酸化物膜を提供する。
すなわち、本発明によれば、基材に付着した前駆体物質から形成される結晶性の金属酸化物膜であって、前記金属酸化物膜は、前記前駆体物質の結晶化を促進する処理後のプラズマ処理により結晶化される、結晶性の金属酸化物膜が提供される。本発明における前記結晶化を促進する処理は、前記前駆体物質の膜に波長220nm以下の成分を含む紫外線照射とすることができる。前記結晶化を促進する処理は、格子定数を有する粒子を添加する処理であり、前記シードの前記格子定数は、前記金属酸化物膜を形成する金属酸化物の格子定数の±15%以内とすることができる。本発明の前記結晶化を促進する処理は、前記シードの存在下で波長220nm以下の成分を含む紫外線照射する処理を含むことができる。
本発明によれば、基材に付着した前駆体物質から形成される結晶性の金属酸化物膜であって、前記金属酸化物膜は、前記基材に隣接する第1の金属酸化物層と、前記第1の金属酸化物層に隣接する第2の金属酸化物層とを含み、少なくとも前記第1の金属酸化物層は、前駆体物質の結晶化を促進する処理後に前記基材が熱的に変形する温度以下で結晶化される、結晶性の金属酸化物膜が提供される。
本発明によれば、基材上に結晶性の金属酸化物膜を形成するための方法であって、前記方法は、
前記金属酸化物膜を形成させるための前駆体物質を基材に付着させ、前記前駆体物質の結晶化を促進する処理が施された、またはシードを含む前駆体膜を形成する工程と、
前記基材に付着した前記前駆体膜をプラズマ処理することにより、前記前駆体膜を結晶化させ前記金属酸化物膜とする工程と
を含む、金属酸化物膜の製造方法が提供される。
本発明によれば、前記前駆体膜への結晶化を促進する処理は、前記前駆体膜に波長220nm以下の波長成分を含む紫外線を照射する工程を含むことができる。本発明における前記前駆体物質を基材に付着させる工程は、前記金属酸化物膜を形成する金属酸化物の格子定数の±15%以内の格子定数を有するシードを含む前駆体を前記基材にコーティングする工程を含むことができる。本発明の前記結晶化を促進する処理は、前記シードの存在下で波長220nm以下の成分を含む紫外線照射する処理を含むことができる。本発明では、さらに、前記基材上に結晶化を促進する処理が施されたアンダーコート層を付着させる工程と、前記アンダーコート層をプラズマ処理により結晶化させる工程と、前記アンダーコート層上に前記前駆体膜を形成する工程を含むことができる。
また、本発明においては、上記に記載した特徴を有する結晶性の金属酸化物膜が形成された成形品を提供することができる。
本発明の金属酸化物薄膜製造プロセスによれば、加熱処理を施すことなく、種々の基材に熱変形やワレを生じさせることなく、結晶質の金属酸化物膜を効果的に形成することができる。すなわち、本発明によれば、低温下で結晶性金属酸化物膜を成膜できるので、高温下での処理を要した従来の金属酸化物製造プロセスの欠点を克服でき、新奇な膜製造プロセスおよび結晶性の金属酸化物膜並びに該金属酸化物膜が形成された成形品を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は、後述する実施の形態に限定されるものではない。
図1には、本発明の金属酸化物膜および基材を示す。図1(a)は、基材10上に前駆体膜を形成させ、前駆体膜に対して紫外光線、具体的には172nmの真空紫外線を照射して結晶化を促進する処理を施し、その後に、プラズマ照射を施すことにより、結晶性の金属酸化物膜12を形成させた場合の実施の形態を示した図である。また、図1(b)は、本発明において、基材10上にシード粒子14を添加した前駆体膜を形成させ、その後にプラズマ照射を施すことにより形成された結晶性の金属酸化物膜16を生成させた場合の実施の形態を示した図である。さらに、図1(c)は、基材10上に、シードを形成させるためのアンダーコート層18を形成しておき、アンダーコート層18上に本発明の金属酸化物膜20を形成させた場合の実施の形態である。また、アンダーコート層18についても、本発明において使用される前駆体に対して、220nm以下の波長成分を含む紫外線による照射の後のプラズマ照射またはシード粒子を添加した前駆体から、後述する本発明の方法により形成することができる。
以下、本発明の構成をより詳細に説明すると、本発明において使用することができる基材は、特に制限はなく、シリコン、ガラス、ゲルマニウム、Ga−As等の無機材料からなる基材の他、低温性膜を可能とするので、ポリエチレンテレフタレートといった有機重合体を使用することができる。基材の形状は、フィルム、プレートといった2次元的な広がりを持つ形状の他、湾曲、多孔質、深絞り、パイプなど種々の形状を用いることができる。上述した重合体は、樹脂のいかなるブレンドとしても使用することができる。
本発明は、前駆体膜の結晶化に際し、上述した重合体が熱変形する温度以下で前駆体物質を結晶化させることができる。このため、重合体から形成されたフィルム、プレート、または異形形状の物体であっても金属酸化物膜の形成前後での形状保存性を向上させることができ、特に大面積の金属酸化物膜を良好に成膜することが可能となる。
本発明において使用することができる有機金属化合物、すなわち、前駆体物質としては、これまで知られたいかなる種々の物質を使用することができる。本発明において使用することができる前駆体物質としては、より具体的には、酸化チタンの場合には、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルオキシチタン、テトラステアリルオキシチタン、テトラメトキシチタンなどのテトラアルコキシチタン化合物を挙げることができる。
さらに、本発明において使用することができる金属化合物としては、例えば、上記以外にも、チタンキレート化合物、チタンアシレート化合物などを挙げることができる。さらに、本発明では上述した前駆体物質の他にも、アルコキシド、アセテート、金属有機酸塩、金属塩、金属石鹸などを、単独でまたはいかなる混合物としても使用することができる。
本発明において上述した前駆体を膜状に成膜する場合には、種々の方法を使用することができ、特定の方法に限定されるものではないが、例えば、スパッタリング法、蒸着法、または金属アルコキシド、金属アセテート、金属有機酸塩、金属塩、金属石鹸など、金属元素を有するイオンを含む前駆体物質またはその溶液を、スピンコート、ディッブコート、フローコート、バーコートなどを使用して湿式コーティングする方法を挙げることができる。特に、湿式コーティングを行う場合には、基材の形状に関わらず結晶性の金属酸化物膜を形成することができる。
湿式コーティングを使用して基材上に前駆体膜を形成する場合には、膜厚、濡れ性、膜質を調節するために、上述した有機金属化合物を種々の溶剤で希釈することができる。このような溶剤としては、当業界においてこれまで知られた種々の溶剤を使用することができ、水の他、具体的には例えば、アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、シクロヘキセン、シクロペンタン、ジペンテン、ジメチルナフタレン、シメン類、樟脳油、石油エーテル、石油ベンジン、ソルベントナフサ、デカリン、デカン、テトラリン、テレピン油、灯油、ドデカン、ドデシルベンゼン、トルエン、ナフタレン、ノナン、パインオイル、ピネン、メチルシクロヘキサン、p−メンタン、リグロインといった炭化水素系溶剤を挙げることができる。
上記有機溶媒としてはさらに、環境に対して悪影響を与えない範囲において、2−エチルヘキシルクロリド、塩化アミル、塩化イソプロピル、塩化エチル、塩化ナフタレン、塩化ブチル、塩化ヘキシル、塩化メチル、塩化メチレン、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、クロロベンゼン、四塩化炭素、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、ジクロロトルエン、ジクロロブタン、ジクロロプロパン、ジクロロベンゼン、ジブロモエタン、ジブロモブタン、ジブロモプロパン、ジブロモベンゼン、ジブロモペンタン、臭化アリル、臭化イソプロピル、臭化エチル、臭化オクチル、臭化ブチル、臭化プロピル、臭化メチル、臭化ラウリル、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、テトラブロモエタン、テトラメチレンクロロブロミド、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、トリクロロベンゼン、ブロモクロロエタン、1−ブロモ−3−クロロプロパン、ブロモナフタレン、ブロモベンゼン、ヘキサクロロエタン、ペンタメチレンクロロブロミド等のハロゲン化炭化水素系溶剤を用いることが可能である。
また、上記有機溶媒としては、アミルアルコール、アリルアルコール、イソアミルアルコール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、ウンデカノール、エタノール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール、2−オクタノール、n−オクタノール、グリシドール、シクロヘキサノール、3,5,−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、n−デカノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、α−テルピネオール、ネオペンチルアルコール、ノナノール、フーゼル油、ブタノール、フルフリルアルコール、プロパギルアルコール、プロパノール、ヘキサノール、ヘプタノール、ベンジルアルコール、ペンタノール、メタノール、メチルシクロヘキサノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−1−ペンチン−3−オールといったアルコール類も挙げることができる。
さらに、上記有機溶媒としては、アニソール、エチルイソアミルエーテル、エチル−t−ブチルエーテル、エチルベンジルエーテル、エポキシブタン、クラウンエーテル類、クレジルメチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチルアセタール、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,8−シネオール、ジフェニルエーテル、ジブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジベンジルエーテル、ジメチルエーテル、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、トリオキサン、ビス(2−クロロエチル)エーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、フラン、フルフラール、メチラール、メチル−t−ブチルエーテル、メチルフラン、モノクロロジエチルエーテルといったエーテル・アセタール系溶剤も挙げることができる。
また、上述の有機溶媒としては、アセチルアセトン、アセトアルデヒド、アセトフェノン、アセトン、イソホロン、エチル−n−ブチルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、ジ−n−プロピルケトン、ホロン、メシチルオキシド、メチル−n−アミルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−へプチルケトンといったケトン・アルデヒド系溶剤も同様に用いることができる。
これらの有機溶媒の他、さらにアジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸アリル、アセト酢酸メチル、アビエチン酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸プロピル、安息香酸ベンジル、安息香酸メチル、イソ吉草酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、ギ酸イソアミル、ギ酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、ギ酸プロピル、ギ酸ヘキシル、ギ酸ベンジル、ギ酸メチル、クエン酸トリブチル、ケイ皮酸エステル、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸エチル、酢酸アミル、酢酸アリル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸−2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ベンジル、酢酸メチル、酢酸メチルシクロヘキシル、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、蓚酸ジアミル、蓚酸ジエチル、蓚酸ジブチル、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、セパシン酸ジオクチル、セパシン酸ジブチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、炭酸ジメチル、乳酸アミル、乳酸エチル、乳酸メチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジメチル、γ−ブチロラクトン、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ベンジル、プロピオン酸メチル、ホウ酸エステル類、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸ジブチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジメチル、酪酸イソアミル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸メチル、燐酸エステル類といったエステル系溶剤も挙げることができる。
同様に、溶媒としては、エチレングリコール、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジアセタート、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールモノイソプロピルエータル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノメトキシメチルエーテル、エチレンクロロヒドリン、1,3−オクチレングリコール、グリセリン、グリセリン1,3−ジアセタート、グリセリンジアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリントリアセタート、グリセリントリラウラート、グリセリンモノアセタート、2−クロロ−1,3−プロパンジオール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ポリプロピレングリコールといった多価アルコール及びそれらの誘導体を挙げることができる。
さらに、上述の溶媒としては、イソ吉草酸、イソ酪酸、イタコン酸、2−エチルヘキサン酸、2−エチル酢酸、オレイン酸、カプリル酸、カプロン酸、ギ酸、吉草酸、酢酸、乳酸、ピバリン酸、プロピオン酸、といったカルボン酸誘導体、エチルフェノール、オクチルフェノール、カテコール、グアヤコール、キシレノール、p−クミルフェノール、クレゾール、ドデシルフェノール、ナフトール、ノニルフェノール、フェノール、ベンジルフェノール、p−メトキシエチルフェノールといったフェノール類、アセトニトリル、アセトンシアノヒドリン、アニリン、アリルアミン、アミルアミン、イソキノリン、イソブチルアミン、イソプロパノールアミン類、イソプロピルアミン、イミダゾール、N−エチルエタノールアミン、2−エチルヘキシルアミン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、カプロラクタム、キノリン、クロロアニリン、シアノ酢酸エチル、ジアミルアミン、イソブチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジアエタノールアミン、N,N−ジエチルアニリン、ジエチルアミン、ジエチルベンジルアミン、ジエチレントリアミン、ジオクチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、トリアミルアミン、トリオクチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリオクチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリプロピルアミン、トリメチルアミン、トルイジン、ニトロアニソール、ピコリン、ピペラジン、ピラジン、ピリジン、ピロリジン、N−フェニルモルホリン、モルホリン、ブチルアミン、ヘプチルアミン、ルチジンといった含窒素化合物、これらの溶媒の他、含イオウ化合物系溶剤、フッ素系溶剤等も挙げることができるし、上述した溶媒を適宜所望する種類および混合比で混合溶媒として使用することができることはいうまでもない。
本発明においては、上述した金属有機化合物から形成され、金属酸化物とされる前の膜を、以下、前駆体膜として参照する。前駆体膜の膜厚は、用途および特性に応じて特に限定されるものではないが、本発明においては、概ね1nm〜1μmの範囲の膜厚として上述した基材上に形成させることができる。ただし、有機基の含有率が高い金属アルコキシドなどの前駆体溶液から1回のコーティングで厚膜の前駆体膜を形成させると、膜に発生する応力により、処理中または処理後に膜の割れなどが生じやすいことから、成膜後の膜厚が200nm以下になるようにプロセス条件を制御することが好ましい。本発明にしたがい、200nm以上の厚さの前駆体膜を成膜する場合には、プロセスを繰り返して厚膜化させることもできる。
本発明においては、プラズマで前駆体膜を処理するに先立って、前駆体膜に結晶化の際のシードを生成または添加または接触させることでプラズマ処理時の結晶化を促進することができる。本発明において結晶化を促進させる方法は、下記の処理プロセスを使用することができる。
(1)低温度での処理を用いて前駆体膜中に結晶化を促進する変化を生じさせる方法。
(2)有機金属化合物から生成される金属酸化物の結晶成長を促進することができる程度に格子定数の近い微粒子を添加しておく方法。
(3)基材に隣接してシードを含むアンダーコート層を予め形成させておき、この膜上に、さらに他の前駆体膜を形成させる方法。
本発明において、シードは、目的とする結晶化した金属酸化物の微粒子から形成することが好ましい。しかしながら、本発明では、シードと、目的とする結晶性の金属酸化物とは異なる物理的および化学的性質を有していてもよい。この場合、目的とする結晶性の金属酸化物層と、シードとは、約15%以内の格子定数の差とすることができる。
なお、本発明における非晶質の膜とは、X線的に検出可能な結晶構造の秩序が生じていない状態にある膜を意味する。より具体的には、本発明において「非晶質の膜」とは、X線回折パターンにおいて有意なピークを有しない膜を指す。また本発明においては、結晶性の膜の定義もまた、X線回折パターンに基づいてなされ、本発明における用語「結晶化」とは、X線回折パターンで有意な回折ピークを与えない非晶質の状態から、X線的に有意な結晶構造秩序の形成、および成長が行われること、すなわち、X線回折パターンにおいて回折ピークを生成させるように状態を変化させることとして定義することができる。
本発明において、前駆体物質に対して低温度で結晶化を促進させる処理としては、具体的には、特定は長、より具体的には概ね真空紫外領域の波長を含む波長の光線を照射する処理を用いることができる。このような波長としては、有機金属化合物の特性にもよるが、概ね220nm以下の波長成分を含む紫外線を、好ましく使用することができる。上述した真空紫外線を提供することができる光源としては、充填される希ガスの種類により、172nm、222nmなどの、紫外線をほぼ選択的(波長幅15nm程度)に放出させることができる、エキシマランプを挙げることができる。
この他、上述した波長範囲の紫外線を与えることができる光源としては、アルゴンイオンレーザ、YAGレーザなどの高調波、ArFなどのエキシマーレーザなどを使用することができる。真空紫外レーザを使用する場合には、シードをパターン状に形成させておき、金属酸化物膜をパターン状に形成させることもできる。
上述した光線のうち、特に真空紫外線は、空気中では酸素分子が吸収し、光吸収した酸素分子は、オゾンを発生させてしまう。このため、真空紫外光線の照射は、前駆体膜がコーティングされた基板を、真空チャンバ、または窒素ガスまたはアルゴンなど不活性ガス雰囲気とした照射チャンバ内に配置して行うことが好ましい。このための照射チャンバは、いかなる市販のものでも使用することができる。また、真空紫外線が膜に到達し、オゾンが問題とならない実施の形態または環境下では、大気中で真空紫外線を照射することができる。
また、本発明においてシードとして使用することができる結晶質粒子としては、格子定数が上述した条件を満たす範囲で種々のものを用いることができ、具体的には例えば、本発明において形成可能な金属酸化物として挙げることができる、酸化チタン、ITO、酸化ジルコニウム、酸化鉛、および上記酸化物のいかなる混合物でも使用することができる。
さらに、これらの酸化物は、ルチル型、アナターゼ型、立方晶、単斜晶などの結晶構造を有することができる。
上述した結晶性のシードは、5nm〜1μmの範囲の粒子径(体積平均粒径)を有することができ、使用する粒子径は、成膜する結晶性の金属酸化物膜の目的厚さおよび膜特性に依存して適宜選択することができる。また、本発明においては、結品質粒子を前駆体膜中に混合させる場合は、粒子の大きさよりも、その数が重要であり、数が少なすぎると効果が得られず、数が多すぎても効果が飽和してしまう。このため、本発明において添加するシードの個数は、概ね4×1014個/cm程度、より広くは、シードとして添加した結晶性の粒子が明確なX線回折パターンを与える量以下として添加することができる。
上述したシードは、有機金属化合物の溶液中にあらかじめ分散しておき、前駆体膜のコーティングする工程中に、スピンコート、ディップコート、バーコート、フローコートなどの方法により容易に前駆体膜中に含有させることができる。
本発明において、前駆体膜から結晶性の金属酸化物膜が形成されると、膜が緻密化する。緻密化は、結晶化の進行程度を判断するパラメータとすることができる。より具体的には、酸化物の物性として一般に与えられる理論密度に対し、得られた酸化物膜の密度が90%以上の値を与えるまで緻密化が進行した段階で結晶化が達成されたと判断する。また、結晶化の新工程度は、相対密度でも判断でき、相対密度は、膜重量や、屈折率、エリプソメトリー、紫外−可視(UV−VIS)スペクトルなどを基準として判断できる。
また、上述した有機金属化合物のうち、湿式コーティング法により成膜できる化合物を使用する場合には、異形形状の物体を基材として用いるであってもディップコートなどによって前駆体をコーティングし、シードと共にプラズマ中へ暴露することで、結晶性の金属酸化物膜を形成できる。
また、金属酸化物膜を、複数の金属酸化物層の積層構造として形成させる場合には、アンダーコート層を使用することができる。本発明において金属酸化物膜を積層構造として形成させる場合のアンダーコート層は、まず前駆体膜を基材上に形成させておき、紫外線を照射した後、プラズマ照射を施してシードとして機能させる程度のシード粒子を生成させ、アンダーコート層とすることができる。また、別の実施の形態においては、シードを添加した前駆体膜をコーティングして、アンダーコート層とすることもできる。その後、プラズマ処理を施して、アンダーコート層の結晶化を行う。さらにその後、目的の厚さの金属酸化物層を与える前駆体膜をアンダーコート層上に形成して、本発明にしたがい紫外線照射およびプラズマ処理を施して、積層構造の本発明の金属酸化物膜を形成させることができる。
さらに、本発明の別の実施の形態においては、アンダーコート層が充分に結晶化しており、また、上層の前駆体膜がプラズマ処理だけで理論比90%以上の結晶性を与えることができる場合には、上層には、シードまたは紫外線照射を行う必要はない。アンダーコート層の厚さには特に制限はないものの、アンダーコート層としての機能を考慮すれば、その上に形成される金属酸化物層よりも薄く形成することができる。また、本発明の別の実施の形態においては、アンダーコート層と、金属酸化物層とを、所定の格子定数を有する異なる材料から形成することもできる。
本発明におけるプラズマの照射条件は、先に上述した本発明者らの特許出願に記述したと同じ条件が適用できる。より具体的には、プラズマガスとしては、酸素、窒素、アルゴンおよびこれらの混合ガスなどを挙げることができる。また、プラズマ・チャンバ内のガス圧は、概ね、5Pa〜1×10Paの範囲とすることができ、ガスフローレートは、上述した圧力範囲を提供することができれば、真空ポンプおよびガス供給システムの能力に応じて適宜設定することができる。また、プラズマを立ち上げるための交流電界の周波数は、1kHz〜300MHz、より具体的には、市販の装置で利用できる13.56MHzを使用することができる。また、プラズマ発生装置としては、容量結合や誘導結合のプラズマ発生手段を有し、高周波アンプを備えたプラズマ発生装置を使用することができる。
以下、本発明を具体的な実施の形態を用いて説明するが、本発明は、後述する実施の形態に限定されるものではない。
(実施例1)
テトライソプロポキシチタン(NDH-510C:日本曹達株式会社製)を用いて、スピンコート法(4000rpm、15秒)を用い、シリコンウェハー上に前駆体膜を成膜した。その後、前駆体膜が形成されたシリコンウェハーを、照射チャンバ中に配置し、窒素雰囲気中にてXeエキシマランプ(ウシオ電機株式会社製、UER20−172)を用いて波長172nmの真空紫外線を1時間照射した。その後、得られた薄膜に対して、周波数13.56MHz、アンプパワー500W、酸素分圧3.3×10の酸素プラズマを10分間照射して、金属酸化物膜(膜厚83nm)を得た。
(比較例1)
テトライソプロポキシチタン(NDH-510C:日本曹達株式会社製)を用いて、スピンコート法(4000rpm、15秒)を用い、シリコンウェハー上に前駆体薄膜を成膜した。その後、真空紫外線の照射を行わずに、実施例1と同じ条件でプラズマ照射を行ない、金属酸化物膜(膜厚90nm)を得た。図2には、実施例1および比較例1について得られたTiO膜のX線回折パターン(フィリップス社製、PW−3050、測定条件:標準条件)を示す。図2(a)は、実施例1の金属酸化物膜について得られたX線回折パターンであり、図2(b)は、比較例1の金属酸化物膜について得られたX線回折パターンであり、図2(c)は、プラズマ照射を行わない場合の前駆体膜のX線回折パターンを示す。
図2に示されるように、真空紫外光の照射を受けた実施例1の方(a)が、シャープなピークを与えており、結晶化がより促進されていることが示された。また得られた膜についてエリブソメトリー(ウラーム社製、V−VASE(商標)、測定条件:標準条件)で得られた膜厚および屈折率は、それぞれ実施例1で83nm、2.24なのに対し、比較例1では、90nm、2.14となり、実施例1のものの方が膜が薄く、高密度化しており、また高い屈折率が得られた。得られた結果を、表1にまとめて示す。表1には、各実施例、比較例について、成膜条件と、X線回折パターンにおけるピーク幅(FWHM)に対応する角度と、比較例1のピーク幅を使用した相対結晶化度=(比較例のピーク幅/対応する実施例でのピーク幅)の値を示す。
(実施例2)
テトライソプロポキシチタン(NDH-510C:日本曹達株式会社製)にTiO(アナターゼ)粒子を、添加数で4×1014個/cm(体積平均粒径=10nm)混合し、スピンコート法(4000rpm、10秒)でシリコンウェハー上に前駆体膜を成膜した。その後、実施例1と同様にして真空紫外線を照射し、その後プラズマ照射を行い、結晶性の金属酸化物膜を得た。得られたTiO膜について、実施例1で説明したと同一の装置を使用して測定したX線回折パターンを図3に示す。なお、図3には、同一の条件下で測定した実施例1の方法により得られた金属酸化物のX線回折パターンを同時に示した。図3(a)は、プラズマ照射を施す前のX旋回折パターンを示した図であり、図3(b)が、プラズマ照射を行った後のX線回折パターンを示した図である。
図3に示したように、プラズマ照射後には、アナターゼ粒子の添加を行った実施例2の膜の方が実施例1の膜よりもシャープな回折ピークを与えており、アナターゼ粒子の添加により、真空紫外線照射単独の場合に比較して結晶化が促進されていることが示される。また、図3(a)において、X線回折パターンが見られなかったのは、シードとして添加したTiOの量が、明確なピークを与えない程度の量だからである。得られた結果を、表1にまとめて示す。
(実施例3)
基材としてパイレックス(登録商標)ガラスを使用し、実施例2と同様にTiO(アナターゼ)粒子を混合したテトライソプロポキシチタンを用いて、前駆体膜を成膜した。その後、前駆体薄膜に対して、窒素雰囲気中でXeエキシマランプを用いて波長172nmの真空紫外光を1時間照射した。得られた薄膜に対し、周波数13.56MHz、アンプパワー500W、酸素分圧3.3×10Paの酸素プラズマを20分間照射して、金属酸化物膜を得た。
実施例3により得られた金属酸化物膜について得られたX線回折パターンの測定結果を、図4に示す。図4(a)がプラズマ照射前のX線回折パターンであり、図4(b)がプラズマ照射後のX線回折パターンである。図4に示すように、TiO(アナターゼ)粒子をシードとして添加した実施例3の金属酸化物膜では、プラズマ照射により、X線回折パターンに明確なピークが現れることが示されている。得られた結果を表1に示す。
Figure 2006096577
表1に示されるように、実施例1で得られる結晶性よりもTiO(アナターゼ)粒子をシードとして添加した実施例2の方が、高い結晶性を示していることがわかる。このことは、プラズマ処理という低温プロセスで、物質移動が低い条件下でも、シードの存在が結晶化を促進していることを示すものである。また、表1には参考例として、PCT/JP02/10181号明細書に記載された酸化チタンのパイレックス(登録商標)ガラス上での結晶化の結果を示す。実施例3と参考例とを比較すると、パイレックス(登録商標)ガラスを基材としてプラズマ照射のみを行った場合には、結晶化していない。しかしながら、実施例3で示されるように、本発明により、真空紫外線照射およびシードの添加により、パイレックス(登録商標)ガラス基材上に形成された前駆体膜についてもプラズマ照射により結晶化を促進することが示された。したがって、本発明によれば、プラズマ照射による結晶化における基材の種類依存性を著しく改善することが示され、本発明が広基材の種類に対する広い適用性を提供することができることが示された。
以上、本発明によれば、大面積基材または加熱下での結晶化を行うことのできない基材に対して結晶性の金属酸化物膜を形成させることができる金属酸化物膜およびその製造方法を提供することができる。本発明で得られる結晶性の金属酸化物膜は、フィルター、ディレイライン、コンデンサー、サーミスター、圧電部材、薄膜基板、オーバーコート、ハイブリッドIC、EMC装置、携帯電話、プラズマディスプレイパネル、液晶ディスプレイパネル、電極材料、光学部品、積層基板、太陽電池、蛍光灯、ランプ、照明、布、カード、衛星冬期、ビデオカメラ、医療機器、胃カメラ、眼鏡、信号、自転車、スピーカー、アンテナ、食器類、洗濯機、バイク、ボート電気・電子デバイス、導電性フィルムなどの機能性フィルム、各種の光学部品、その他の結晶性の金属酸化物の特性が必要とされる部材または部品などの成形品に対して広く形成することができる。
本発明により基材上に金属酸化物膜が形成された実施の形態を示した概略図。 実施例1および比較例1の膜の酸素プラズマ処理後のX線回折パターンを示した図。 実施例2および同一条件下での実施例1の方法により得られた金属酸化物の酸素プラズマ処理前後でのX線回折パターンの変化を示した図。 実施例3で得られた金属酸化物膜の酸素プラズマ処理前後でのX線回折パターンの変化を示した図。
符号の説明
10…基材
12、16、20…金属酸化物膜
14…シード粒子
18…アンダーコート層

Claims (11)

  1. 基材に付着した前駆体物質から形成される結晶性の金属酸化物膜であって、前記金属酸化物膜は、前記前駆体物質の結晶化を促進する処理後のプラズマ処理により結晶化される、結晶性の金属酸化物膜。
  2. 前記結晶化を促進する処理は、前記前駆体物質の膜に波長220nm以下の成分を含む紫外線照射である、請求項1に記載の金属酸化物膜。
  3. 前記結晶化を促進する処理は、格子定数を有する粒子を添加する処理であり、前記シードの前記格子定数は、前記金属酸化物膜を形成する金属酸化物の格子定数の±15%以内である、
    請求項1に記載の結晶性の金属酸化物膜。
  4. 前記結晶化を促進する処理は、前記シードの存在下で波長220nm以下の成分を含む紫外線照射する処理である、請求項3に記載の金属酸化物膜。
  5. 基材に付着した前駆体物質から形成される結晶性の金属酸化物膜であって、前記金属酸化物膜は、前記基材に隣接する第1の金属酸化物層と、前記第1の金属酸化物層に隣接する第2の金属酸化物層とを含み、少なくとも前記第1の金属酸化物層は、前駆体物質の結晶化を促進する処理後に前記基材が熱的に変形する温度以下で結晶化される、結晶性の金属酸化物膜。
  6. 基材上に結晶性の金属酸化物膜を形成するための方法であって、前記方法は、
    前記金属酸化物膜を形成させるための前駆体物質を基材に付着させ、前記前駆体物質の結晶化を促進する処理が施された、またはシードを含む前駆体膜を形成する工程と、
    前記基材に付着した前記前駆体膜をプラズマ処理することにより、前記前駆体膜を結晶化させ前記金属酸化物膜とする工程と
    を含む、金属酸化物膜の製造方法。
  7. 前記前駆体膜への結晶化を促進する処理は、前記前駆体膜に波長220nm以下の波長成分を含む紫外線を照射する工程を含む、
    請求項6に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  8. 前記シードを含む前駆体膜を形成する工程は、前記金属酸化物膜を形成する金属酸化物の格子定数の±15%以内の格子定数を有するシードを含む前駆体を前記基材にコーティングする工程を含む、
    請求項6に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  9. 前記結晶化を促進する処理は、前記シードの存在下で波長220nm以下の成分を含む紫外線照射する処理である、請求項8に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  10. さらに、前記基材上に結晶化を促進する処理が施されたアンダーコート層を付着させる工程と、前記アンダーコート層をプラズマ処理により結晶化させる工程と、前記アンダーコート層上に前記前駆体膜を形成する工程を含む、請求項6に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  11. 請求項1または5のいずれか1項に記載の金属酸化物膜が形成された成形品。
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