JP2004231495A - 金属酸化物膜の製造方法 - Google Patents

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Mitsuo Takeda
光生 武田
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Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

【課題】導電性などの膜質が良好な金属酸化物膜を得ることができる、金属酸化物膜の製造方法を提供する。
【解決手段】金属酸化物膜の製造方法は、金属カルボン酸塩とアルコールとを出発原料とするか、または、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料として生成する金属酸化物を基材の表面に膜として定着させた後、前記膜にプラズマ照射処理を施す。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属酸化物膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、金属酸化物は、その金属原子の種類等によってさまざまな優れた物性を有することが知られており、その特性を活かして種々の用途に利用されている。そして、これら金属酸化物を基材表面に膜としてとして付着させたいわゆる金属酸化物被着体として、1)スパッタや真空蒸着等の気相法により得られた金属酸化物被着体、2)金属カルボン酸塩溶液を基材表面に塗布して熱分解する等の熱分解法により得られた金属酸化物被着体、3)一旦生成し物性的に安定した金属酸化物粒子を、基材表面に塗布して乾燥する方法により得られた金属酸化物被着体、などが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4参照)。
【0003】
しかしながら、前記1)においては、気相法を行うのに必要な装置等はコストが高く経済性に劣り、また生産性も低く、導電性の金属酸化物膜を設けようとするとかなり高温で行う必要があるため基材の種類が制限されてしまううえ、結晶性に優れた良質な金属酸化物膜が得られにくいという問題があった。前記2)においては、高温下での操作が必要であるため基材の種類が制限されてしまううえ、結晶性に優れた良質な金属酸化物膜が得られにくいという問題があった。また、前記3)においては、通常粒子間の結合が不十分で多孔質構造であるため、基材表面への密着性や機械的強度が低いうえ、金属酸化物膜の連続性が重要となる導電性等の機能が得られにくいという問題があった。なお、粒子どうしを結合させた緻密な連続性の層とするには、例えば、塗布後、高温で処理することも考えられるが、高温のため基材の種類が制限されてしまうこととなる。
【0004】
このように、従来の方法によれば、生産性や基材の種類が制限されるなどの問題があると同時に、得られた金属酸化物膜も例えば導電性などの膜質が必ずしも充分ではないといった欠点があり、得られる金属酸化物膜の膜質に関しての改良が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】
特公平3−72011号公報
【0006】
【特許文献2】
特開平5−339742号公報
【0007】
【特許文献3】
特公平7−115888号公報
【0008】
【特許文献4】
特開平9−161561号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、導電性などの膜質が良好な金属酸化物膜を得ることができる、金属酸化物膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる金属酸化物膜の製造方法は、金属カルボン酸塩とアルコールとを出発原料とするか、または、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料として生成する金属酸化物を基材の表面に膜として定着させた後、前記膜にプラズマ照射処理を施す。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる金属酸化物膜の製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
本発明の金属酸化物膜の製造方法は、金属カルボン酸塩とアルコールとを出発原料とするか(以下、これら原料を「組み合わせA」とする)、または、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料とする(以下、これら原料を「組み合わせB」とする)。
【0012】
組み合わせAにおける金属カルボン酸塩としては、具体的には、分子内に、カルボキシル基の水素原子が、金属原子で置換された構造を少なくとも有する化合物であればよい。なお、金属カルボン酸塩は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、飽和モノカルボン酸、不飽和モノカルボン酸、飽和多価カルボン酸、不飽和多価カルボン酸などの鎖式カルボン酸と金属原子からなる塩;環式飽和カルボン酸と金属原子からなる塩;芳香族モノカルボン酸、芳香族不飽和多価カルボン酸などの芳香族カルボン酸と金属原子からなる塩;さらに前記各種カルボン酸の分子内にヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、スルホン基、シアノ基、ハロゲン原子等の官能基または原子団を有する化合物と金属原子からなる塩;等が挙げられる。
【0013】
前記金属カルボン酸塩としては、特に、下記一般式(1)
M(O)(m−x−y−z)/2(OCOR)(OH)(OR’) (1)
(但し、Mは、m価の金属原子;Rは、水素原子、置換基があってもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた少なくとも1種;R’は、置換基があってもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた少なくとも1種;m、x、yおよびzは、x+y+z≦m、0<x≦m、0≦y<m、0≦z<mを満たす。)
で示される化合物のような金属カルボン酸塩またはカルボン酸残基の一部が水酸基やアルコキシ基で置換された化合物;後述するカルボキシル基含有化合物の金属塩;塩基性酢酸塩;等が好ましい。とりわけ、後述のカルボキシル基含有化合物の金属塩のうち、金属飽和カルボン酸塩や金属不飽和カルボン酸塩がより好ましく、さらに好ましくは前記一般式(1)で示される金属カルボン酸塩であるのがよく、最も好ましくは金属酢酸塩や金属プロピオン酸塩であるのがよい。特に、金属原子が亜鉛(Zn)である場合には、金属酢酸塩であることが好ましい。なお、前記金属カルボン酸塩は、結晶水を含む水和物であってもよいが、無水物であることが好ましい。
【0014】
前記金属カルボン酸塩に含まれる金属原子(前記一般式(1)における金属原子(M)も含む)としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、1A族、2A族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、8族、ランタノイド元素、アクチノイド元素、1B族、2B族、3B族、4B族、5B族、6B族に含まれる金属元素の原子を挙げることができ、これらの中でも、例えば、Sr、Ce、Y、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Zn、Cd、Al、Ga、In、Ge、Sn、Sb、La等の金属元素の原子が好適である。前記金属原子は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。また、前記金属カルボン酸塩としては、前記列挙した以外に、シュウ酸バリウムチタニル等の複合金属カルボン酸塩等も好ましく用いることができる。なお、本明細書において、周期表は、「化学便覧(日本化学会編)改訂5版」(丸善株式会社より出版)に掲載されている「元素の周期表(1993年)」を用い、族番号は亜族方式により表記する。
【0015】
組み合わせAにおけるアルコールとしては、具体的には、脂肪族1価アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、ステアリルアルコール等)、脂肪族不飽和1価アルコール(例えば、アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール等)、脂環式1価アルコール(例えば、シクロペンタノール、シクロヘキサノール等)、芳香族1価アルコール(例えば、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、メチルフェニルカルビトール等)、フェノール類(例えば、エチルフェノール、オクチルフェノール、カテコール、キシレノール、グアヤコール、p−クミルフェノール、クレゾール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、ドデシルフェノール、ナフトール、ノニルフェノール、フェノール、ベンジルフェノール、p−メトキシエチルフェノール等)、複素環式1価アルコール(例えば、フルフリルアルコール等)等の1価アルコール類;アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ピナコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等)、脂環式グリコール(例えば、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール等)、ポリオキシアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)等のグリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート等の前記グリコール類のモノエーテルまたはモノエステル等の誘導体;3価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールエタン等)、4価アルコール(例えば、エリスリトール、ペンタエリスリトール等)、5価アルコール(例えば、リピトール、キシリトール等)、6価アルコール(例えば、ソルビトール等)等の3価以上の多価アルコールや、多価芳香族アルコール(例えば、ヒドロベンゾイン、ベンズピナコール、フタリルアルコール等)や、2価フェノール(例えば、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等)、3価フェノール(例えば、ピロガロール、フロログルシン等)等の多価フェノール等の多価アルコール類;前記多価アルコール類におけるOH基の一部(1〜(n−1)個(但し、nは1分子当たりのOH基の数))がエステル結合またはエーテル結合となった誘導体;等を挙げることができる。これらの中でも特に、アルコール性水酸基に関して、3級、さらには2級、特に1級の水酸基を有するアルコールが、より低い温度状態で金属酸化物が得られるため、好ましい。同様の理由で、脂肪族アルコールも好ましい。なお、アルコールは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
組み合わせAにおける金属カルボン酸塩とアルコールとの使用量の割合については、特に限定はないが、金属カルボン酸塩の金属換算原子数に対するアルコール中の(アルコール由来の)水酸基の総数のモル比(水酸基/金属換算原子数)が、0.8/1〜1000/1となるようにすることが好ましい。また、金属カルボン酸塩の有するカルボキシル基の総数に対するアルコール中の(アルコール由来の)水酸基の総数のモル比(水酸基/カルボキシル基)が、0.8/1〜100/1となるようにすることも好ましく、より好ましくは1/1〜50/1、さらに好ましくは1/1〜20/1であるのがよい。
【0017】
組み合わせBにおける金属アルコキシ基含有化合物としては、特に限定はされないが、例えば、下記一般式(2):
M’(ORn−m (2)
(但し、M’は、金属原子;Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アシル基、アラルキル基、アリール基から選ばれた少なくとも1種;Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アシル基、アラルキル基、アリール基、不飽和脂肪族残基、および、OR基以外の官能基を含む有機基から選ばれた少なくとも1種;nは金属原子M’の価数;mは0〜n−1の範囲の整数である。)
で示される化合物、またはこの化合物を(部分)加水分解・縮合してなる縮合物等を挙げることができる。なお、金属アルコキシ基含有化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
一般式(2)中、Rとしては、水素原子および/またはアルコキシアルキル基などの置換されていてもよいアルキル基が好ましく、より好ましくは置換されていてもよいアルキル基である。また、Rとしては、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アシル基、アラルキル基、アリール基、不飽和脂肪族残基、および、β−ジケトン化合物等のOR基以外の官能基を含む有機基から選ばれた少なくとも1種であるものが好ましい。
一般式(2)中、M’としては、前記金属カルボン酸塩に含まれる金属原子Mと同様のものを挙げることができ、好ましいものについても同様であるが、その他、W、Mo、Siも好ましい。
【0019】
一般式(2)中、m=1、2または3である金属アルコキシ基含有化合物としては、例えば、各種の有機ケイ素化合物(m=1、2または3)、チタネート系カップリング剤(m=1、2または3)、アルミネート系カップリング剤(m=1または2)等が例示される。
前記有機ケイ素化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’−ビス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン等のアミノ系シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エボキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロル系シランカップリング剤;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のケチミン系シランカップリング剤;N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩等のカチオン系シランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ヒドロキシエチルトリメトキシシラン等のアルキル系シランカップリング剤;γ−ユレイドプロピルトリエトキシシラン;等を挙げることができる。
【0020】
前記チタネート系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタロイルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、および、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート等を挙げることができる。
【0021】
前記アルミネート系カップリング剤としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムアルキルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノメタクリレート、イソプロポキシアルミニウムアルキルアセアセテートモノ(ジオクチルホスフェート)、および、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート等を挙げることができる。
前記金属アルコキシ基含有化合物は、前述した以外のものであってもよく、単一金属のアルコキシ基含有化合物のほか、例えば、バリウムチタンダブルアルコキシド等のヘテロ金属アルコキシ基含有化合物であってもよい。なお、ヘテロ金属アルコキシ基含有化合物とは、2個以上の異なる金属原子を有し、アルコキシ基や酸素原子を介したり、金属−金属結合等によって結ばれた金属アルコキシ基含有化合物のことである。ヘテロ金属アルコキシ基含有化合物を用いた場合は、複合酸化物からなる金属酸化物を得ることができる。
【0022】
結晶性の金属酸化物を得る場合には、一般式(2)中、mが0である化合物を主成分とすることが最も好ましく、単一金属のアルコキシ基含有化合物やヘテロ金属アルコキシ基含有化合物が挙げられる。
組み合わせBにおけるカルボキシル基含有化合物は、分子内にカルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物であればよい。なお、カルボキシル基含有化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記カルボキシル基含有化合物の具体例としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸(飽和モノカルボン酸)、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸(不飽和モノカルボン酸)、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、β,β−ジメチルグルタル酸等の飽和多価カルボン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和多価カルボン酸等の鎖式カルボン酸類;シクロヘキサンカルボン酸等の環式飽和カルボン酸類、安息香酸、フェニル酢酸、トルイル酸等の芳香族モノカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸等の不飽和多価カルボン酸等の芳香族カルボン酸類;無水酢酸、無水マレイン酸、ピロメリット酸無水物等のカルボン酸無水物、トリフルオロ酢酸、o−クロロ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、アントラニル酸、p−アミノ安息香酸、アニス酸(p−メトキシ安息香酸)、トルイル酸、乳酸、サリチル酸(o−ヒドロキシ安息香酸)等の分子内にカルボキシル基以外のヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、スルホン酸基、シアノ基、ハロゲン原子等の官能基または原子団を有する化合物、アクリル酸ホモポリマー、アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体等、重合体原料として前記不飽和カルボン酸を少なくとも1つ有する重合体;等を挙げることができる。これらの中でも、水中(25℃、0.1モル/L)での酸解離定数pKaが4.5〜5であるものが好ましい。具体的には、飽和カルボン酸が好ましく、さらに、立体的にも反応性が高い点で酢酸が最も好ましい。また、カルボキシル基含有化合物が液体の場合は、後述の反応溶媒としても用いることもできる。
【0023】
組み合わせBにおける金属アルコキシ基含有化合物と、カルボキシル基含有化合物との使用量の割合については、特に限定はないが、カルボキシル基含有化合物の金属アルコキシ基含有化合物に対するモル比が、金属アルコキシ基含有化合物に含有されている金属原子M’の平均原子価数Navを用いて、好ましくは下限が0.8Nav超、さらに好ましくは1.2Nav超であり、また、好ましくは上限が10Nav未満である。ここで、平均原子価数Navは、金属アルコキシ基含有化合物として、含有金属原子の異なるp種の金属アルコキシ基含有化合物(含有金属元素がそれぞれM1、M2、M3、・・・、Mpであるp種の金属アルコキシ基含有化合物(2≦p))を併せて用いる場合、下記数式:
【0024】
【数1】
Figure 2004231495
【0025】
(数式中、Niは、金属Miの原子価(価数)を表す。また、Xiは、金属アルコキシ基含有化合物として用いた金属元素Miのモル数を表す。pは2以上の整数である。)
から算出することができる。また、カルボキシル基含有化合物の総量に含まれるカルボキシル基の数が、金属アルコキシ基含有化合物の総量に含まれるアルコキシ基の数N’に対して、0.8N’超であることも好ましく、1N’〜10N’が特に好ましい。なお、数値範囲を表す際に、数値の後ろに「超」と付した場合は、その数値を含まずそれより大きい数値範囲を示すものとする。
【0026】
本発明の金属酸化物膜の製造方法においては、前記組み合わせAまたは組み合わせBを出発原料として金属酸化物を生成させ、生成する金属酸化物を基材の表面に膜として定着させる。詳しくは、金属酸化物は、前記出発原料を混合して得られた液(以下「混合系」と称することもある。)を高温状態にすることにより生成させるのであり、前記混合系が基材に接触している状態で該混合系を高温状態にすることにより、生成する金属酸化物を基材の表面に膜として定着させる。
前記出発原料を混合して得られた液(混合系)とは、前記組み合わせAまたは組み合わせBの出発原料を混合して得られたものであればよく、その内部状態としては、前記各原料のいずれもが原料状態の化学構造を変化させずに存在している状態であることに限らず、例えば、原料の少なくとも1つが溶解状態下で特有の化学構造に変化して存在している状態や、各原料が反応して後述する予備反応物となって存在している状態であってもよい。言い換えれば、前記混合系において出発原料の一部または全部は、そのままの状態から何れの状態に変化して存在していてもよい。
【0027】
前記予備反応物は、前記組み合わせAにおける金属カルボン酸塩とアルコールとの反応による反応物(予備反応物A)、または組み合わせBにおける金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との反応による反応物(予備反応物B)として、金属酸化物が生成されるまでの任意の段階の状態(金属酸化物の生成が認められる前の状態)の反応中間体であり、生成される金属酸化物に対する前駆体(金属酸化物前駆体)である。すなわち、予備反応物は、各原料のいずれでもなく、生成される金属酸化物でもないものである。このような予備反応物は、例えば、各原料を混合(好ましくは加圧下で混合)するだけで直ちに得られるか、各原料の混合物を緩やかな高温状態(金属酸化物が得られる温度よりも低い温度である状態)にすることにより得られる。
【0028】
前記予備反応物Aとしては、特に限定はされないが、例えば、1)金属カルボン酸塩の金属原子に、アルコールまたはアルコキシ基が配位(吸着による配位も含む。)してなる金属錯体モノマー(この場合、カルボキシル基の一部がアルコールのアルコキシ基で置換された錯体も含まれる。)、2)金属カルボン酸塩が酸素原子を介して「金属−酸素−金属」の結合が形成されてなる縮合物に原料のカルボン酸基(−COO基)以外にさらにアルコールまたはアルコキシ基が配位(吸着による配位も含む。)してなる化合物(金属錯体モノマー誘導体)、などが好ましく挙げられる。なかでも、1)でいう金属錯体モノマーがより好ましい。なお、前記金属錯体モノマーは、前述した各原料の混合する方法や各原料の混合物を緩やかな高温状態にする方法以外によっても得ることができ、本発明においては、前述した方法以外の方法で得られた金属錯体モノマーを前記混合系にさらに加えるようにしてもよい。
【0029】
前記予備反応物Bとしては、特に限定はされないが、例えば、1)金属アルコキシ基含有化合物の金属原子に、カルボキシル基含有化合物が−COOH基または−COO基を介して配位(吸着による配位も含む。)してなる金属錯体モノマー(この場合、アルコキシ基の一部がカルボキシ基で置換された錯体も含まれる。)、2)金属アルコキシ基含有化合物が酸素原子を介して「金属−酸素−金属」の結合が形成されてなる縮合物に原料のアルコキシ基以外にさらにカルボキシル基含有化合物が配位(吸着による配位も含む。)してなる化合物(金属錯体モノマー誘導体)、などが好ましく挙げられる。なかでも、1)でいう金属錯体モノマーがより好ましい。なお、前記金属錯体モノマーは、前述した各原料の混合する方法や各原料の混合物を緩やかな高温状態にする方法以外によっても得ることができ、本発明においては、前述した方法以外の方法で得られた金属錯体モノマーを前記混合系にさらに加えるようにしてもよい。
【0030】
なお、前記予備反応物AまたはBの一形態である金属錯体モノマーに関しては、その配位数(アルコール、アルコキシ基、カルボキシル基の金属1個あたりの総配位数)は、金属の価数と同じ場合と、金属の価数よりも高い場合とがあり得る。例えば、予備反応物Aでは、カルボキシル基の一部は出発原料であるアルコールと反応して脱離し、例えば、アルコキシ基に置換されて生成する。出発原料であるアルコール、金属カルボン酸塩の金属の種類、カルボキシル基の種類(相当するカルボン酸のpKa)により配位数は異なる。また、出発原料であるアルコールの種類によって、アルコールとして吸着する場合と、アルコキシ基として金属に結合する場合とがある。
【0031】
前記混合系は、ペースト状、懸濁液状、溶液状、スラリー状(詳しくは、例えば、金属カルボン酸塩がアルコール中に懸濁したスラリー状、金属アルコキシ基含有化合物がカルボキシル基含有化合物中に懸濁したスラリー状)などの流動性のある液状であることが好ましく、なかでも、溶液状であることが、厚みが均一な金属酸化物膜が得られやすく、さらに、複合酸化物や固溶体酸化物を得ようとする場合には、偏析のない金属組成の均一な金属酸化物膜が得られやすいため、好ましい。
前記混合系には、必要に応じて、前記出発原料とともに反応溶媒をも混合し、液状となるようにしてもよい。具体的には、組み合わせAまたは組み合わせBの出発原料の一部または全部を混合する際、あるいは、混合系を高温状態にする際に、さらに混合系に反応溶媒を加えればよい。
【0032】
前記反応溶媒をも用いる場合、その使用量については、特に限定はないが、経済的に金属酸化物を得ることを考慮すると、金属カルボン酸塩または金属アルコキシ基含有化合物の使用量が、該反応溶媒を含めた全重量に対して0.1〜50重量%となるようにすることが好ましい。
前記反応溶媒としては、例えば、水;エチルベンゼン、オクタン、キシレン類、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン、ジメチルナフタレン、スチレン、ソルベントナフサ、デカリン、デカン、テトラリン、ドデシルベンゼン、トルエン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、流動パラフィン等の炭化水素系溶媒;各種ハロゲン化炭化水素系溶媒;組み合わせAにおいて前述したアルコール等のアルコール(フェノール類や、多価アルコールおよびその誘導体で水酸基を有する化合物なども含む)系溶媒;アニソール、エピクロロヒドリン、エポキシブタン、クラウンエーテル類、ジイソアミルエーテル、ジエチルアセタート、ジオキサン、ジグリシジルエーテル、ジフェニルエーテル、ジブチルエーテル、ジベンジルエーテル、ジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル等のエーテルもしくはアセタール系溶媒;アセチルアセトン、アセトアルデヒド、アセトフェノン、アセトン、イソホロン、エチル−n−ブチルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジ−n−プロピルケトン、ホロン、メシチルオキシド、メチル−n−アミルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノン、メチル−n−ヘプチルケトン等のケトンもしくはアルデヒド系溶媒;アジピン酸ジエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセト酢酸エチル、アビエチン酸メチル、安息香酸ベンジル、安息香酸メチル、イソ吉草酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、ギ酸プロピル、クエン酸トリブチル、ケイ皮酸メチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸n−ブチル、酢酸ベンジル、酢酸メチル、酢酸メチルシクロヘキシル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル、シュウ酸ジブチル、酒石酸ジエチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、炭酸ジフェニル、炭酸ジメチル、乳酸ブチル、乳酸メチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、γ−ブチロラクトン、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ベンジル、プロピオン酸メチル、ホウ酸エステル類、マレイン酸ジオクチル、マロン酸ジメチル、酪酸イソアミル、酪酸メチル、リン酸エステル類等のエステル系溶媒;エチレンカーボナート、エチレングリコールジアセタート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸ジエステル、両末端に水酸基を有しないポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)誘導体等の多価アルコール類のすべての水酸基の活性水素がアルキル基やアセトキシ基で置換された誘導体化合物;カルボン酸およびその無水物;シリコーン油、鉱物油;等を挙げることができる。これらの中でも特に、有機溶媒が好ましく、例えば、特に、組み合わせAの場合の反応溶媒としては、必須の出発原料として用いられるアルコールを溶媒とすることが好ましく、組み合わせBの場合の反応溶媒としては、アルコール性またはフェノール性の水酸基を有しない非アルコール性有機溶媒が反応収率の点から好ましい。
【0033】
また、反応溶媒としては、さらに、アミンやアルカノールアミン等のいわゆるアミン類を用いることもできるが、アミン類を大量に用いると(具体的には、反応系中に含まれる金属の原子数と同モル量以上を用いると)、予備反応物の生成が阻害されたり、金属酸化物の生成反応が阻害されることがある。よって、アミン類を反応溶媒として使用する場合は、金属カルボン酸塩または金属アルコキシ基含有化合物の金属換算原子数に対するモル比で0.1以下とすることが好ましい。
本発明において、前記混合系を高温状態にするとは、前記混合系の温度を常温よりも高い温度(金属酸化物が生成する温度)、またはそれ以上の温度にまで昇温することである。高温状態の温度(金属酸化物が生成する温度)は、得ようとする金属酸化物の種類等によって異なるが、通常50℃以上であり、結晶性の高い金属酸化物を得るためには、100℃以上が好ましく、さらに100〜300℃の範囲であるのが好ましい。
【0034】
前記混合系を高温状態にするための具体的な昇温手段(予備反応物を得る場合に緩やかな高温状態にするための昇温手段も含む)としては、例えば、ヒーター、温風や熱風による加熱などが一般的であるが、これに制限されるものではなく、例えば、紫外線照射による加熱などの手段を採用することもできる。なお、前記混合系を高温状態にする際の加熱(予備反応物を得る場合に緩やかな高温状態にする際の加熱も含む)は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力下で行ってもよく、特に限定はされない。また、後述する反応溶媒等の沸点が高温状態の温度(金属酸化物が生成する温度)よりも低い場合は、耐圧反応装置を用いて行うことも好ましい。
【0035】
本発明の製造方法において、前記混合系を得る際の混合と、前記混合系を高温状態にする際の昇温(予備反応物を、各原料の混合と、さらに緩やかな高温状態にすることとで得る場合において、緩やかな高温状態にする際の昇温も含む)とは、別々に行っても、同時(一部同時も含む)に行ってもよく、特に限定はされない。具体的には、例えば、1)各原料を混合した後、該混合物を所定温度に昇温する、2)アルコールもしくはカルボキシル基含有化合物を所定温度に昇温しておき、該温度を維持しながら、これにその他の原料を混合することにより、混合系を昇温させる、3)反応溶媒と金属カルボン酸塩もしくは金属アルコキシ基含有化合物とを混合して所定温度に昇温しておき、該温度を維持しながら、これにその他の原料を混合することにより、混合系を昇温させ高温状態にする、4)各原料を別々に所定温度に昇温しておいた後、これらを混合する、などのようにすればよい。
【0036】
本発明において、前記混合系を基材と接触させる方法としては、前記混合系を基材に塗布する方法、基材を前記混合系の中に浸漬する方法などがあり、前記混合系が基材に接触している状態で該混合系を高温状態にするには、例えば、下記(I)〜(IV)のいずれかの方法を採用すればよい。なかでも、結晶性の高い金属酸化物膜を得るためには、下記(I)の方法が好ましい。また、下記(II)の方法、(III)の方法および(IV)の方法では、塗布した後、(I)の方法を組み合わせることが好ましい。
(I)出発原料を混合して得られた液を前記基材の表面に塗布しておいて前記基材を加熱する。
(II)出発原料を混合して得られた液を加熱しながらかまたは加熱しておいて前記基材の表面に塗布する。
(III)出発原料を混合して得られた液を加熱しておいた前記基材の表面に塗布する。
(IV)出発原料を混合して得られた液に前記基材を漬けておいて加熱する。
【0037】
前記(I)の方法、前記(II)の方法および(III)の方法は、前記混合系を基材の表面に塗布する方法であり、(I)の方法では塗布後に、(II)の方法では塗布前もしくは塗布中に、混合系を高温状態にすることにより、基材の表面に金属酸化物を定着させ、(III)の方法では予め加熱しておいた基材に混合系を塗布することにより、塗布と同時に混合系を高温状態にし、基材の表面に金属酸化物を定着させる。一方、前記(IV)の方法は、前記混合系に基材を浸漬した状態で該混合系を高温状態にすることにより、基材の表面に金属酸化物を析出させ成長させて、基材表面に金属酸化物を定着させる。以下、(I)の方法、(II)の方法および(III)の方法を塗布法として、(IV)の方法を浸漬法として、それぞれ説明する。
【0038】
前記塗布法において、(I)の方法では前記混合系の基材へ塗布後に、(II)の方法では前記混合系の基材へ塗布前もしくは塗布中に、混合系を高温状態にするものであるが、混合系を得る際の混合、高温状態とする際の昇温、および基材への塗布のタイミングについては、特に制限はない。但し、前記混合系が予備反応物を含む場合、予備反応物は常温で長時間溶解状態で存在し難い傾向があるため、予備反応物を得たあとは、速やかに該混合系を基材に塗布することが好ましい。なお、(III)の方法では、高温状態とする際の昇温と基材への塗布は実質的に同時に行うこととなる。
【0039】
前記(II)の方法のうち、前記混合系の基材へ塗布中に、混合系を高温状態にする形態の具体例としては、例えば、混合系を、基材の塗布部分に直結する加熱されたパイプに通して加熱し、塗布する形態や、混合系をロールコーターのパン中で加熱し、加熱された状態のまま基材に塗布する形態、などが挙げられるが、特にこれらに限定はされない。(II)の方法のうち、前記混合系の基材へ塗布前に、混合系を高温状態にする形態の具体例としては、例えば、混合系を(耐圧)回分式反応装置などを用いて加熱しておき、基材に塗布する形態、などが挙げられるが、特に限定されるわけではない。
【0040】
前記塗布法を採用する場合、前記反応溶媒として、常圧における沸点が金属酸化物の生成する温度(高温状態にする際の温度)よりも高い溶媒成分を、前記混合系に含有させておくことが好ましい。これにより、透明性に優れた金属酸化物膜や、酸化物含有量の高い金属酸化物膜が容易に得られる。前記溶媒成分としては、例えば、沸点が100℃以上の、アルコールおよびその誘導体(多価アルコールおよびその誘導体も含む)、ケトン、エステル、カルボン酸、カルボン酸無水物等を挙げることができるが、なかでもアルコール類(アルコールおよびその誘導体)が、前記混合系中での他の成分(特に予備反応物)との相溶性が高いため、好ましい。この場合、前記溶媒成分の含有量は、前記混合系中の金属に対するモル比で、等モル以上であることが好ましく、より好ましくは2倍モル以上である。前記溶媒成分の含有量が、等モル未満であると、前述した効果が十分に得られないおそれがある。
【0041】
前記塗布法において、混合系を基材に塗布する際の方法としては、特に制限はなく、具体的には、例えば、バーコーター法、ロールコーター法、ナイフコーター法、ダイコーター法、スピンコート法、ディッピング法などの従来公知の方法を採用すればよい。
前記塗布法において、高温状態とする際には、基材のみを昇温してもよいし、塗布面のみを昇温するようにしてもよいし、基材および塗布面の両方を昇温してもよく、特に限定はされない。
前記塗布法において、(I)の方法と、(II)の方法または(III)の方法とを組み合わせる形態を採用する場合、塗布前または塗布中に高温状態とする際の温度もしくはあらかじめ基材を加熱しておく際の温度は、予備反応物を生成させる程度の温度が好ましく、具体的には、50℃以上でかつ塗布後に高温状態とする際の温度以下であることが好ましい。
【0042】
前記塗布法においては、高温状態にする際の加熱時間は、特に限定されるわけではなく、具体的には、10秒〜1時間が好ましいが、結晶性を高めたり基材との密着性を高めるなどといった目的で、さらに加熱して熟成させてもよい。熟成の際の温度や時間、昇温手段については、特に限定はなく、適宜選択すればよい。
前記塗布法においては、前記混合系として予備反応物を含むものを用いることがより好ましい。特に、開放系で塗布および加熱をする場合であって、組み合わせAの出発原料を用いる場合は、混合系が、金属カルボン酸塩とアルコールとがそのままの状態にある混合物であるときは、高温状態にするための昇温の際、反応が十分に進む前にアルコールが蒸散してしまい、金属酸化物膜中の金属酸化物含有率が低下したり、結晶性の低いものしか得られない場合があるからである。
【0043】
また、塗布法を組み合わせAの出発原料を用いて行う場合であって、混合系を均一透明な塗布液として調製する際は、出発原料として用いるアルコールとして、前述した各種アルコールのなかでも、炭素数1〜3のアルコールを含有させることが好ましい。こうすることによって、均一透明な塗布液として混合系をより低温で調製することができ、また、より低い加熱温度で金属酸化物膜を形成することができるため、経済的に優れ、耐熱性の低い高分子フィルムにも容易に金属酸化物膜を形成することができる等といった利点がある。前記炭素数1〜3のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノールなどを挙げることができ、なかでもメタノールが好ましい。この場合、これら炭素数1〜3のアルコールは、出発原料として用いるアルコール全量中、20重量%以上含有させることが好ましく、より好ましくは50重量%以上である。前記炭素数1〜3のアルコールが、20重量%未満の場合は、前述した効果が十分に得られないおそれがある。
【0044】
なお、塗布法の特殊な形態として、反応溶媒にシリコーン油や鉱物油等の不揮発性の溶媒を用いた塗布液を基材表面に塗布し、加熱することによって、金属酸化物層を形成させた後、不揮発性溶媒を洗浄等の方法で除去するといった方法も採用し得る。
前記塗布法は、連続層、特に、表面の平滑性が高くかつ緻密な連続層の金属酸化物膜を得る場合に好適である。
前記浸漬法においては、金属酸化物の生成が完全に終わるまでに、好ましくは金属酸化物の生成反応を開始させるまでに、基材を前記混合系に漬けておけばよく、混合系を得る際の混合、高温状態とする際の昇温、および基材の浸漬のタイミングについては、特に制限はない。具体的には、例えば、基材を前記混合系に漬けておいてから加熱する形態、加熱したアルコールまたはカルボキシル基含有化合物中に基材を漬けておいて加熱した金属カルボン酸塩または金属アルコキシ基含有化合物を添加する形態、加熱した反応溶媒と金属カルボン酸塩または金属アルコキシ基含有化合物とに基材を漬けておいて加熱したアルコールまたはカルボキシル基含有化合物を添加する形態などを挙げることができる。但し、前記混合系が予備反応物を含む場合、予備反応物は常温で長時間溶解状態で存在し難い傾向があるため、予備反応物を得たあとは、速やかに該混合系に基材を浸漬することが好ましい。
【0045】
前記浸漬法においては、通常用いられている装置を使用することができるが、基材を固定する機能を備えたものが好ましい。例えば、基板(基材)ホルダーを設置してなる回分式反応装置を使用することができる。撹拌の有無や、撹拌条件は特に限定されず、適宜選択すればよい。
前記浸漬法において、高温状態にする際には、基材を漬けている状態で混合系全体を昇温するようにしてもよいし、基材を漬けている状態で基材のみを選択的に昇温するようにしてもよいが、基材のみを選択的に昇温する方が、基材表面での反応が選択的に起こりやすく、基材表面に密着性の高い金属酸化物膜が形成されやすいため好ましい。
【0046】
また、浸漬法を組み合わせAの出発原料を用いて行う場合であって、混合系を均一透明な塗布液として調製する際は、出発原料として用いるアルコールとして、前述した各種アルコールのなかでも、炭素数1〜3の1級アルコールまたは多価アルコールを含有させることが好ましい。こうすることによって、均一透明な塗布液として混合系をより低温で調製することができ、また、より低い加熱温度で金属酸化物膜を形成することができるため、経済的に優れ、耐熱性の低い高分子フィルムにも容易に金属酸化物膜を形成することができる等といった利点がある。前記炭素数1〜3の1級アルコールまたは多価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオールなどを挙げることができ、なかでもメタノールが好ましい。この場合、これら炭素数1〜3の1級アルコールは、出発原料として用いるアルコール全量中、20重量%以上含有させることが好ましく、より好ましくは50重量%以上である。前記炭素数1〜3のアルコールが、20重量%未満の場合は、前述した効果が十分に得られないおそれがある。一方、多価アルコールは、出発原料として用いるアルコール全量中、0.1〜20重量%でも有効である。
【0047】
前記浸漬法は、不連続層や多孔質構造を有する連続層の金属酸化物膜を得る場合に好適である。但し、高温状態にする際の温度や原料の種類によって、金属酸化物膜のマクロな構造(連続層か不連続層か、または、緻密性に優れているか多孔質であるか、など)や、結晶構造(結晶子の大きさや形状など)を制御することができる。
本発明の方法においては、生成する金属酸化物が固溶体酸化物や複合酸化物となるようにしてもよい。
生成する金属酸化物が固溶体酸化物となるようにするには、例えば、1)前記組み合わせAもしくはBの出発原料を用いた混合系に、ドーパントとなる金属の化合物を含有させておき、高温状態にする方法、2)前記組み合わせAもしくはBの出発原料を用いた前記混合系とは別に、別途、出発原料として用いた金属カルボン酸塩または金属アルコキシ基含有化合物に代えてドーパントとなる金属の金属カルボン酸塩または金属アルコキシ基含有化合物を用いて得られる混合系(出発原料の組み合わせは同じとする。例えば、組み合わせAの場合にはドーパントとなる金属の金属カルボン酸塩を用いる。)をも調製し、両混合系を混合したものを高温状態にする方法、などの方法を採用すればよい。なお、ドーパントとなる金属の化合物の種類は、特に限定されず、金属の無機塩、金属カルボン酸塩、金属アルコキシ基含有化合物などを用いることができるが、金属カルボン酸塩、金属アルコキシ基含有化合物が好ましく、金属カルボン酸塩の中では金属酢酸塩が、金属アルコキシ基含有化合物の中ではアルコキシ基以外に有機基等を有しない金属アルコキシドが、より好ましい。さらに詳しくは、前記組み合わせAの出発原料を用いる場合には、金属カルボン酸塩または金属アルコキシド類が好ましく、前記組み合わせBの出発原料を用いる場合には、金属アルコキシド類が好ましい。
【0048】
生成する金属酸化物が複合酸化物となるようにするには、例えば、1)所定の金属の金属カルボン酸塩または金属アルコキシ基含有化合物を用いて得られる前記混合系(第1の混合系)と、別途、前記第1の混合系で用いた金属カルボン酸塩または金属アルコキシ基含有化合物の金属とは異なる金属の金属カルボン酸塩または金属アルコキシ基含有化合物を用いて得られる混合系(第2の混合系)をも調製し、両混合系を混合したものを高温状態にする方法、2)前記混合系を調製するに際し、出発原料とする金属カルボン酸塩または金属アルコキシ基含有化合物として含有金属の異なる2種以上を用いるようにする方法(いわゆる同時調製法)、3)所定の金属の金属カルボン酸塩を用いて得られる前記組み合わせAの混合系の調製過程または調製後の任意の段階に、前記所定の金属とは異なる金属の金属アルコキシ基含有化合物を添加しておく方法、などの方法を採用すればよい。
【0049】
本発明において用いることのできる基材としては、特に制限はない。本発明の金属酸化物膜の製造方法によれば、より低い結晶化温度で結晶性に優れた金属酸化物膜を得ることができるので、任意の基材、例えば耐熱性の低い基材等にも容易に金属酸化物膜を形成することができるからである。前記基材の材質は、特に限定されるわけではなく、具体的には、例えば、酸化物、窒化物、炭化物などのセラミックス、ガラス等の無機物;PET、PBT、PENなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、アラミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、PVC樹脂、PVDC樹脂、PVA樹脂、EVOH樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PTFE、PVF、PGF、ETFEなどのフッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂等の各種樹脂や、これら各種樹脂にアルミ、アルミナ、シリカなどを蒸着した加工品等の有機物;各種金属類;等が好ましく挙げられる。また、前記基材の形態は、具体的には、例えば、フィルム状、シート状、板状、繊維状、積層体状などが挙げられるが、特に限定はされない。また、前記基材は、機能的には、特に限定はされず、具体的には、光学的には透明、不透明;電気的には絶縁体、導電体、p型またはn型の半導体あるいは誘電体;磁気的には磁性体、非磁性体;など目的に応じて選択される。
【0050】
また、前記基材のうち、有機物の基材については、形成される金属酸化物膜と基材との密着性を向上させるため、あらかじめ表面改質処理を施しておくこともできる。具体的には、例えば、加水分解性基あるいは金属水酸基と有機基とを有する化合物等で処理する方法が好ましく、このほかにも、基材裏面をコロナ処理しておく方法、基材裏面をプラズマ処理しておく方法、基材表面に紫外線を照射しておく方法、基材表面にシリカやアルミナ等の酸化物、窒化物、炭化物および硫化物なとの無機膜やアルミニウムや銅などの金属膜なとの薄膜を蒸着等により形成しておく方法、基材表面に酸化物、炭化物、窒化物および硫化物などの無機物微粒子および/またはアルミやCuなどの金属微粒子を含有する塗膜(好ましくは、これら含有される無機物微粒子および/または金属微粒子の全粒子または少なくとも一部が、微粒子の一部分を塗膜表面に露出してなる塗膜)を形成しておく方法、基材表面にアクリルポリオールやポリエステルポリアミン等の極性の高い官能基を高密度に有する高分子ポリマーからなる塗膜を形成しておく方法、基材表面を両親媒性化合物等で処理しておく方法、基材となる有機物よりもTg、分子量あるいは結晶性の低い高分子塗膜を形成しておく方法等が挙げられる。
【0051】
本発明の金属酸化物膜の製造方法においては、以上のような方法で金属酸化物を生成させ、生成する金属酸化物を基材の表面に膜として定着させた後、前記膜にプラズマ照射処理を施すことが重要である。これによって、例えば導電性などの膜質を改善することが可能となる。該膜質改善の効果は、具体的には、例えば、膜の抵抗値の減少などに現れる。
前記プラズマ照射処理は、例えば、空間を介した2つの相対した電極間に高電圧を印加することにより前記空間に存在するガスに電離が生じて該空間が放電プラズマ状態となるので、このような放電プラズマ状態となった空間に被処理物(基材の表面に金属酸化物の膜を定着させて得た被着体)を存在させることにより行えばよい。具体的には、2つの相対した電極間に被処理物(基材の表面に金属酸化物の膜を定着させて得た被着体)を載置しておき、任意のガスを導入して該電極間に高電圧を印加することにより、プラズマを発生させる方法や、電極間に被処理物(被着体)を載置するのではなく、前記電極間に任意のガスを導入して該電極間に高電圧を印加することにより発生させたプラズマを、被処理面(基材の表面に定着させた金属酸化物の膜表面)に誘導する方法などを採用することができる。前記プラズマ照射処理は、常圧下で行うことが、設備的な面などから好ましい。
【0052】
プラズマを発生させる際の条件としては、特に制限されないが、印加電圧200V以上、周波数1kHz以上、電極間距離1〜3mmとすることが、プラズマ照射処理効果が実質的に得られる点で好ましく、ガスとしては窒素ガスを用いることが経済性の点でも好ましい。また、処理時間(プラズマ照射時間)は、適宜設定すればよいが、1秒〜10分間とするのが好ましい。
前記プラズマ照射処理は、前記被処理体や前記被処理面ごとにバッチ式で行ってもよいが、好ましくは、プラズマを発生させうる装置内で前記被処理体を移動させながら処理する連続式で行うことが生産性の点から望ましい。連続式で行う場合には、移動速度によって処理時間を調整すればよい。
【0053】
本発明の金属酸化物膜の製造方法においては、生成した金属酸化物膜が有機基を有する場合、さらに、該金属酸化物膜が有する有機基を除去する処理を行ってもよい。前記有機基を除去するための処理としては、具体的には、気相中(空気中などの酸化性雰囲気下、還元性雰囲気下、不活性雰囲気下など)での加熱により有機基を分解する処理、液相中での加熱により有機基を分解する処理、酸性または塩基性の水溶液を用いて化学的方法により分解する処理、有機基がカルボキシル基の場合はアルコール存在下での加熱処理、有機基がアルコキシ基の場合は酢酸存在下での加熱処理、有機鎖の切断に有効な波長300nm以下(特に、波長200nm以下)の紫外線による高エネルギー紫外線照射処理、コロナ放電による処理などを挙げることができるが、特に限定されるわけではない。前記高エネルギー紫外線照射処理を施す場合は、高圧水銀ランプよりも短波長(高エネルギー)の紫外線を多く含む低圧水銀ランプを用いることが好ましい。
【0054】
本発明の金属酸化物膜の製造方法によって得られた金属酸化物膜(基材に金属酸化物膜が定着した被着体)は、例えば、透明導電、帯電防止、面状発熱体、熱伝導、磁性体、電波吸収、電磁波遮断、希薄磁性半導体、紫外線吸収、熱線反射、高屈折率、低屈折率、反射防止、発光・蛍光体、電子線放出素子、(光)触媒、太陽電池用半導体、電極、光電変換素子、熱電変換素子、表面弾性波素子、(強)誘電体、圧電体、バリスター、エレクトロルミネッセンス等の機能を有する膜をフィルム、ガラス、セラミックス、金属表面に形成してなる機能性材料として、窓材(自動車用、建築用等)、農業用資材、メモリー素子、光源、表示デバイス、情報通信・伝送の各種デバイス、太陽電池などの各種の用途分野で有用な材料に好適に用いることができる。
【0055】
【実施例】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と記すものとする。
下記実施例・比較例において得られた被着体の解析・評価は以下のようにして行った。
<薄膜XRD解析>
得られた被着体について薄膜X線回折測定法による測定を下記の条件で行い、得られた回折パターンから膜の結晶性を評価した。
【0056】
・測定装置:リガク社製「RAD−rX」(薄膜測定用アタッチメント使用)
・出力:55kV、180mA
・X線入射角:通常は0.5°に固定(必要に応じて0.2〜0.5°の範囲内で適宜設定して固定)
・2θ:3〜100°
・走査速度:2θについて2°/min
なお、必要に応じて、被着体から剥離した膜片を試料として透過型電子顕微鏡により観察しながら電子線回折測定による同定を行った。
【0057】
<膜の厚み>
得られた被着体の基材が高分子材料である場合には、被着体を膜厚方向に薄片化した試料を作製し、該試料の断面をFE−TEM(電界放射型透過型電子顕微鏡)にて観察し、その透過像写真から膜部分の厚みを測定した。
得られた被着体の基材が高分子材料以外の材料である場合には、ガラスカッター等で被着体を膜厚方向に切断し、膜の断面部分をSEM(走査型電子顕微鏡)にて観察し、そのSEM像から膜部分の厚みを測定した。
<膜の透明性>
濁度計(日本電色工業社製「NDH−1001 DP」)を用いて、得られた被着体と、膜を形成する前の基板(ガラス板もしくはコロナ処理PETフィルム)のみとについてそれぞれ、全光線透過率および拡散光線透過率を測定し、下記式より被着体のヘイズ値(Hc)と基板のヘイズ値(Ho)とをそれぞれ求めた。
【0058】
ヘイズ値(%)=(拡散光線透過率/全光線透過率)×100
そして、被着体のヘイズ値(Hc)から基板のヘイズ値(Ho)を差し引いた値((Hc)−(Ho))を膜のヘイズ値(Hf)とし、以下の基準により透明性を評価した。
ランクA:Hf≦3(%)
ランクB:10≧Hf>3(%)
ランクC:Hf>10(%)
<膜の表面抵抗>
得られた被着体の膜表面にマスクを用いて金を蒸着して櫛型電極(電極厚み:約30nm、電極長さ:20.77cm、電極間距離:0.15mm)を形成した。該櫛型電極を用いて印加電圧1Vにおける電流を測定し、得られた抵抗値R(Ω)を下記式にて補正することにより、表面抵抗値ρs(Ω)を求めた。該表面抵抗値ρsが小さいほど、電気伝導性に優れると言える。
【0059】
ρs=R×(20.77/0.015)
(実施例1)
撹拌機、添加口、温度計、留出ガス出口、窒素ガス導入口を備えた、外部より加熱し得る耐圧ガラス製反応器に、酢酸亜鉛15部、プロピレングリコールモノメチルエーテル250部、エチレングリコール5部からなる混合物を仕込み、反応器内を窒素でパージした。次いで、撹拌しながら30分間かけて常温(19℃)より110℃にまで昇温し、110℃で1時間保持した後、室温まで冷却して、透明溶液を得、該透明溶液を塗布液とした。次に、前記塗布液をガラス板(厚み0.7mm)にバーコーターにて塗布し、次いで、該塗布液を塗布したガラス板を120℃で30分間加熱して予備被着体を得た。次に、前記予備被着体を塗布液の塗布面が上になるようにして相対する2つの電極間に配置し、常圧下、該電極間に電圧を印加することによりプラズマを発生させるプラズマ照射処理(印加電圧:250V、周波数:5kHz、電極間距離:2mm、ガス:窒素ガス)を1分間施し、被着体を得た。
【0060】
得られた被着体を薄膜XRD解析したところ、ZnOに帰属される回折ピークが認められ、ZnO結晶からなる膜が形成されていることが確認された。また、得られた被着体の膜の厚みは0.1μmであった。また、該膜の表面抵抗値は8×1014Ω/□であり、膜の透明性はランクAであった。
(比較例1)
実施例1と同様にして予備被着体を得、該予備被着体を、プラズマ処理を行うことなく、被着体とした。
得られた被着体を薄膜XRD解析したところ、ZnOに帰属される回折ピークが認められ、ZnO結晶からなる膜が形成されていることが確認された。また、得られた被着体の膜の厚みは0.1μmであった。また、該膜の表面抵抗値は2×1015Ω/□であり、膜の透明性はランクAであった。
【0061】
(実施例2)
実施例1と同様にして透明溶液を得た。他方、ITO超微粒子粉末(シーアイ化成製)を微粒子濃度20重量%となるようにn−ブタノールに分散させたITO分散液を調製した。次に、前記透明溶液100部と前記ITO分散液29部とを混合し、ホモジナイザーで分散処理して、ZnO換算濃度1.9重量%、ITO濃度4.5重量%の塗布液を得た。次に、前記塗布液をアルミナ蒸着PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムにバーコーターにて塗布し、次いで、該塗布液を塗布したPETフィルムを120℃で30分間加熱して予備被着体を得た。次に、前記予備被着体に実施例1と同様にして常圧でプラズマ照射処理を1分間施し、被着体を得た。
【0062】
得られた被着体を薄膜XRD解析したところ、酸化インジウムに帰属される回折ピークとともに、ZnOに帰属される回折ピークが認められ、ZnO結晶とITO超微粒子とからなる膜が形成されていることが確認された。また、得られた被着体の膜の厚みは0.1μmであった。また、該膜の表面抵抗値は2×10Ω/□であり、膜の透明性はランクBであった。
(比較例2)
実施例2と同様にして予備被着体を得、該予備被着体を、プラズマ処理を行うことなく、被着体とした。
【0063】
得られた被着体を薄膜XRD解析したところ、酸化インジウムに帰属される回折ピークとともに、ZnOに帰属される回折ピークが認められ、ZnO結晶とITO超微粒子とからなる膜が形成されていることが確認された。また、得られた被着体の膜の厚みは0.1μmであった。また、該膜の表面抵抗値は3×10Ω/□であり、膜の透明性はランクBであった。
(実施例3)
実施例1と同様にして透明溶液を得た。他方、別途合成して得た熱線吸収性InドープZnO超微粒子(ウィルソン解析法による結晶子径15nm)を微粒子濃度20重量%となるようにn−ブタノールに分散させたInドープZnO分散液を調製した。次に、前記透明溶液100部と前記InドープZnO分散液12.3部とを混合し、ホモジナイザーで分散処理して、InドープZnO分散液が分散含有されてなる塗布液を得た。次に、前記塗布液をシリカ蒸着PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムにバーコーターにて塗布し、次いで、該塗布液を塗布したPETフィルムを140℃で30分間加熱して予備被着体を得た。次に、前記予備被着体に実施例1と同様にして常圧でプラズマ照射処理を1分間施し、被着体を得た。
【0064】
得られた被着体を薄膜XRD解析したところ、ZnOに帰属される回折ピークが認められ、ZnO結晶からなる膜が形成されていることが確認された。また、得られた被着体の膜の厚みは0.2μmであった。また、該膜の表面抵抗値は4×10Ω/□であり、膜の透明性はランクAであった。
(比較例3)
実施例3と同様にして予備被着体を得、該予備被着体を、プラズマ処理を行うことなく、被着体とした。
得られた被着体を薄膜XRD解析したところ、ZnOに帰属される回折ピークが認められ、ZnO結晶とITO超微粒子とからなる膜が形成されていることが確認された。また、得られた被着体の膜の厚みは0.2μmであった。また、該膜の表面抵抗値は5×1010Ω/□であり、膜の透明性はランクAであった。
【0065】
【発明の効果】
本発明にかかる金属酸化物膜の製造方法によれば、導電性などの膜質が良好な金属酸化物膜を得ることができる。

Claims (6)

  1. 金属カルボン酸塩とアルコールとを出発原料とするか、または、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料として生成する金属酸化物を基材の表面に膜として定着させた後、前記膜にプラズマ照射処理を施す、金属酸化物膜の製造方法。
  2. 前記金属酸化物の生成は、前記出発原料を混合して得られた液を前記基材の表面に塗布しておいて前記基材を加熱することにより行う、請求項1に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  3. 前記金属酸化物の生成は、前記出発原料を混合して得られた液を加熱しながらかまたは加熱しておいて前記基材の表面に塗布することにより行う、請求項1に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  4. 前記金属酸化物の生成は、前記出発原料を混合して得られた液を加熱しておいた前記基材の表面に塗布することにより行う、請求項1に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  5. 前記金属酸化物の生成は、前記出発原料を混合して得られた液に前記基材を漬けておいて加熱することにより行う、請求項1に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  6. 前記プラズマ照射処理を常圧下で行うようにする、請求項1から5までのいずれかに記載の金属酸化物膜の製造方法。
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