JP4287124B2 - 金属酸化物被着体およびその製造方法 - Google Patents

金属酸化物被着体およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属酸化物被着体およびその製造方法に関する。詳しくは、基材の表面に金属酸化物の層を有する金属酸化物被着体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、金属酸化物は、その金属原子の種類等によってさまざまな優れた物性を有することが知られており、その特性を活かして種々の用途に利用されている。そして、これら金属酸化物を基材表面に付着させたいわゆる金属酸化物被着体として、▲1▼スパッタや真空蒸着等の気相法により得られた金属酸化物被着体、▲2▼金属カルボン酸塩溶液を基材表面に塗布して熱分解する等の熱分解法により得られた金属酸化物被着体、▲3▼一旦生成し物性的に安定した金属酸化物粒子を、基材表面に塗布して乾燥する方法により得られた金属酸化物被着体、などが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4参照。)。
【0003】
しかしながら、上記▲1▼においては、気相法を行うのに必要な装置等はコストが高く経済性に劣り、また生産性も低く、導電性の金属酸化物層を設けようとするとかなり高温で行う必要があるため基材の種類が制限されてしまううえ、結晶性に優れた良質な金属酸化物層が得られにくいという問題がある。上記▲2▼においては、高温下での操作が必要であるため基材の種類が制限されてしまううえ、結晶性に優れた良質な金属酸化物層が得られにくいという問題がある。また、上記▲3▼においては、通常粒子間の結合が不十分で多孔質構造であるため、基材表面への密着性や機械的強度が低いうえ、金属酸化物層の連続性が重要となる導電性等の機能が得られにくいという問題がある。そこで、粒子どうしを結合させた緻密な連続性の層とするために、例えば、塗布後、高温で処理することも考えられるが、高温のため基材の種類が制限されてしまうこととなる。
【0004】
【特許文献1】
特公平3−72011号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平5−339742号公報
【0006】
【特許文献3】
特公平7−115888号公報
【0007】
【特許文献4】
特開平9−161561号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、生産性が高く、低コストで経済的にも優れ、広範囲な種類の基材を用いることができ、操作も簡便な方法により得られ、金属酸化物の優れた物性が付与されてなり、密着性が高く、機械的強度が大きい金属酸化物被着体、および、その製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、基材の表面に金属酸化物層を有する金属酸化物被着体を得るにあたり、従来に無い特定の組み合わせの出発原料(具体的には、アルコールと金属カルボン酸塩)を用い、これらから生成する金属酸化物を基材の表面に膜として定着させるようにすれば、上記課題を一挙に解決できることを確認し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明にかかる金属酸化物被着体は、基材の表面に、金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系を100〜300℃に加熱することにより得られる金属酸化物の層を有する、金属酸化物被着体であって、上記金属酸化物が、上記金属カルボン酸塩と上記アルコールとを反応させて得られ、上記アルコールが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールおよび1,3−プロパンジオールからなる群から選択される少なくとも1つの炭素数1〜3の1級アルコールまたは多価アルコールを含み、上記金属カルボン酸塩の有するカルボキシル基の総数に対する、上記炭素数1〜3の1級アルコールまたは上記多価アルコール中の水酸基の総数の比が、0.8〜100であり、上記混合系に含まれる水分が、上記金属カルボン酸塩中の金属原子に対してモル比で0.1未満であることを特徴とする。
好ましい実施形態においては、上記炭素数1〜3の1級アルコールまたは多価アルコールの含有量が、該アルコール全量に対して、50重量%以上である。好ましい実施形態においては、上記金属酸化物が結晶性の金属酸化物である。
好ましい実施形態においては、上記結晶性の金属酸化物がカルボキシル基を有する。
好ましい実施形態においては、上記基材が、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、アラミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー、(メタ)アクリル樹脂、PVC樹脂、PVDC樹脂、PVA樹脂、EVOH樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂およびポリオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂からなる
【0010】
また、本発明にかかる金属酸化物被着体の製造方法は、金属酸化物を基材の表面に膜として定着させて、金属酸化物層を有する金属酸化物被着体を製造する方法であって、上記金属酸化物が、金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系を100〜300℃の温度に加熱し、上記金属カルボン酸塩と上記アルコールとを反応させることによって、生成され、上記アルコールが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオールからなる群から選択される少なくとも1つの炭素数1〜3の1級アルコールまたは多価アルコールを含み、上記炭素数1〜3の1級アルコールまたは多価アルコールの含有量が、上記アルコール全量に対して、50重量%以上であり、上記金属カルボン酸塩の有するカルボキシル基の総数に対する、上記アルコール中の水酸基の総数の比が、0.8〜100であり、上記混合系に含まれる水分が、上記金属カルボン酸塩中の金属原子に対してモル比で0.1未満であることを特徴とする。
好ましい実施形態においては、上記金属酸化物の生成は、上記出発原料の混合物、および/または、上記出発原料を混合するか、混合および加熱して得られた液を前記基材に接触させ、この接触系を100〜300℃の温度にすることにより行う。
好ましい実施形態においては、上記接触系を前記温度にすることが、上記混合物および/または液を上記基材の表面に塗布しておいて上記基材を加熱するか、または、上記基材を上記混合物および/または液に漬けておいて加熱することである。
好ましい実施形態においては、上記接触系を上記温度にすることが、上記基材を上記混合物および/または液に漬けておいて加熱することである。
好ましい実施形態においては、金属酸化物の生成は、上記出発原料の混合物、および/または、上記出発原料を混合するか、混合および加熱して得られた液を加熱しながらかまたは加熱しておいて上記基材の表面に塗布することにより行う。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる金属酸化物被着体およびその製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
本発明にかかる金属酸化物被着体は、基材の表面に金属酸化物の層を有するものである。そして、この金属酸化物層が、金属カルボン酸塩とアルコールとを出発原料として生成されるか、および/または、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料として生成されるものである。なお、本発明においては金属酸化物の層は、膜としての金属酸化物を意味する。
【0012】
上記金属酸化物層は、具体的には、例えば、出発原料となる金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系を加熱等の手段により高温状態にすることで得られる金属酸化物(以下、金属酸化物Aと称することがある。)、および/または、出発原料となる金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との混合系を加熱等の手段により高温状態にすることで得られる金属酸化物(以下、金属酸化物Bと称することがある。)、を必須としてなるものであることが好ましい。より具体的には、上記金属酸化物層は、例えば、上記出発原料(金属カルボン酸塩とアルコール、または、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物)の混合物、および/または、上記出発原料を混合するか、混合および加熱して得られる液を加熱することで得られる金属酸化物を必須としてなるものであることが好ましい。
【0013】
本発明の金属酸化物被着体においては、上記金属酸化物層とは、金属酸化物が基材表面上の所望の面積部分に切れ目なく連続的に広がって存在している形態(以下、連続層と称することがある。)の他、金属酸化物が基材表面上の所望の面積部分に不連続的に存在している形態(以下、不連続層と称することがある。)も含む。不連続層では、金属酸化物が、基材表面に、部分的に存在しているが、それらの大きさ、面積、厚みおよび形状等において特に限定されることはない。具体的には、例えば、金属酸化物が、基材表面に、微細なドット状で存在している形態や、いわゆる海島構造のように存在している形態や、縞模様状に存在している形態や、これら形態を合わせた形態等が挙げられる。
【0014】
上記連続層および不連続層において、存在する金属酸化物の構造としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、所望の大きさの空間を有する多孔質構造や、マクロ的に見てこのような多孔質構造ではない一体的な密実構造(すなわち実質的に緻密な構造)を挙げることができる。また、上記いずれの構造においても、マクロ的に見て、1次粒子としての金属酸化物が集合してなる構造であっても、2次粒子化した金属酸化物が集合してなる構造であっても、さらに大きく粒子化した金属酸化物が集合してなる構造であっても、これら形態が混在してなる構造であってもよく、特に限定はされるわけではない。なお、前述した金属酸化物の各種構造は、上記不連続層においては、部分的に存在している個々の層のすべてが備えている必要は無く、一部の層のみが備えるものであってもよい。
【0015】
上記1次粒子としての金属酸化物、2次粒子化した金属酸化物、および、さらに大きく粒子化した金属酸化物の形状としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、球状、楕円球状、立方体状、直方体状、多面体状、ピラミッド状、柱状、チューブ状、りん片状、(六角)板状等の薄片状などが挙げられる。
本発明でいう金属酸化物層においては、金属酸化物は上述したような形態および構造等を有し得るが、この金属酸化物は、結晶性の金属酸化物であっても、非結晶性の金属酸化物であってもよく、特に限定はされない。結晶性の金属酸化物層とは、規則的な原子配列が周期性をもって認められる結晶子からなる金属酸化物層であると定義することができ、電子線回折学的および/またはX線回折学的に、格子定数および/または回折パターンから金属酸化物の同定ができるものをいい、そうでないものは非結晶性の金属酸化物であるとする。導電性、半導体特性、熱伝導性、(光)磁気特性、誘電特性、発光特性、光の吸収、反射特性などの電気機能、磁気機能、半導体機能、光機能に優れる点で、結晶性であることが好ましい。また、上記結晶性の金属酸化物は、単結晶からなるものであっても、多結晶体からなるものであってもよく、特に限定はされない。
【0016】
本発明でいう金属酸化物層が、結晶性の金属酸化物からなる場合においては、電気伝導性、熱伝導性、音波伝搬性、光伝送性などの伝導、伝搬、伝送機能膜、高屈折率膜、紫外線吸収や熱線反射等の光選択吸収、反射、透過膜、エレクトロクロミズム膜、などとしての機能を発揮させようとするには、連続層であることが好ましく、電子線放出膜などとしての機能を発揮させようとするには、不連続層であることが好ましく、(光)触媒機能膜、色素増感型太陽電池用半導体膜などの大きい表面積が必要とされる膜や、低屈折率膜などとしての機能を発揮させようとするには、多孔質構造の連続層であることが好ましい。また、紫外線発光体や蛍光体などの発光機能膜などとしての機能を発揮させようとする場合は、単結晶からなる金属酸化物の連続層または不連続層であることが好ましい。
【0017】
本発明の金属酸化物被着体において、金属酸化物層が、結晶性の金属酸化物からなる場合、結晶子の配向性については、特に限定はされないが、具体的には、結晶子の結晶軸方向が基材表面に垂直に配向していても特定の角度をもって配向していても、あるいは、基材表面に沿うように該表面と平行に配向していてもよい。また、全ての結晶子の配向性が揃っていても、ランダムであっても、一部が同じ配向性で残りがランダムであってもよく、特に限定はされない。結晶子の配向性が揃っている方が、電気や熱の伝導特性;(光)磁気的性質;スピン半導体性質;強誘電性、焦電性、圧電性等の誘電特性;発光特性;電子線放出特性等において優れたものとなるため好ましい。全ての結晶子が基材表面に垂直に配向している金属酸化物からなる金属酸化物層は、電子線放出素子としての特有の優れた効果を発揮する点で好ましい。
【0018】
本発明でいう金属酸化物層が、結晶性の金属酸化物からなる場合、結晶子の形状は、特に限定はされないが、具体的には、例えば、球状、楕円球状、立方体状、直方体状、多面体状、ピラミッド状、柱状、チューブ状、りん片状、(六角)板状等の薄片状や、過飽和度の高い条件下で結晶の稜や角が優先的に伸びて生成した樹枝状、骸晶状などが挙げられる。なかでも、結晶子形状が、柱状、特に、太さが100nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下の柱状、および/または、とがった先端を有するいわゆる先鋭性を有する形状である金属酸化物からなる金属酸化物層は、発光特性や電子線放出特性に優れる点で好ましい。
【0019】
本発明でいう金属酸化物層が、結晶性の金属酸化物からなる場合、結晶子の大きさについては、特に限定はされないが、具体的には、結晶子の結晶軸方向の大きさは以下の範囲が好ましい。
すなわち、本発明でいう金属酸化物層が連続層である場合、各結晶子の結晶軸方向の大きさは、通常、1nm〜1μmであることが好ましい。
また、本発明でいう金属酸化物層が不連続層である場合は、層中に存在する金属酸化物が単結晶からなるものであれば、各単結晶(各結晶子)の結晶軸方向の大きさは、通常、1nm〜10μmであることが好ましく、存在する金属酸化物が多結晶体からなるものであれば、各結晶子の結晶軸方向の大きさは、通常、1nm〜100nmであることが好ましい。
【0020】
さらに、本発明でいう金属酸化物層が不連続層であり、かつ、存在する金属酸化物が単結晶からなるものである場合であって、発光素子や電子線放出素子として優れた金属酸化物被着体とする場合は、各結晶子の形状が量子ドット状であり、大きさが10nm以下であること、あるいは、各結晶子の形状が柱状であり、大きさについては長径と短径の比(長径/短径)が2〜100であって短径(太さ)が100nm以下(好ましくは50nm以下、より好ましくは20nm以下)であること、が好ましい。さらに、先鋭性を有する結晶子形状であると、電子線放出特性に優れる点でより好ましい。
【0021】
本発明の金属酸化物被着体においては、金属酸化物層は、結晶性の金属酸化物からなるものであるか非結晶性の金属酸化物からなるものであるかに関わらず、有機基(金属酸化物に直接結合した有機基など)を含むものであってもよい。該有機基は、金属酸化物の原料化合物として用いることのできる金属カルボン酸塩や金属アルコキシ基含有化合物やアルコールやカルボキシル基含有化合物由来のアルコキシ基やカルボキシル基、および/または、他の原料化合物由来の有機基、の一部であることが好ましい。上記有機基を含む場合、有機基は、金属酸化物膜全体中、炭素/金属(原子%)で4原子%未満であることが好ましい。また、本発明の金属酸化物被着体においては、上記金属酸化物層は、上記有機基が除去されてなるものであってもよい。有機基が除去されたものとは、例えば、気相中(空気中などの酸化性雰囲気下、還元性雰囲気下、不活性雰囲気下など)での加熱により有機基が分解されたものや、液相中での加熱により有機基が分解されたものや、酸性または塩基性の水溶液による処理や、カルボキシル基であればアルコール処理、アルコキシ基であれば酢酸処理などの化学的方法により除去されたもの、および、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理などの物理的により除去されたものを挙げることができる。
【0022】
本発明の金属酸化物被着体においては、上記金属酸化物層の厚み(基材の表面に対して垂直な方向の厚み)は、特に限定はされないが、通常、1nm〜1000μmであることが好ましく、より好ましくは1nm〜10μmである。なお、本発明でいう金属酸化物層が、多孔質状構造の連続層または不連続層である場合は、10nm〜100μmがより好ましい。上記厚みが1nm未満であると、所望の金属酸化物層の機能、ひいては所望の金属酸化物被着体の機能が得られないおそれがあり、1000μmを超えると、機能面においてさらなる向上は見られず、かえってコスト高となったり、金属酸化物被着体からなる素子全体が厚くなり過ぎて使用しにくくなるおそれがある。
【0023】
本発明の金属酸化物被着体における基材としては、その材質は、特に限定されるわけではなく、具体的には、例えば、酸化物、窒化物、炭化物等のセラミクス、ガラスなどの無機物;PET、PBT、PENなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、アラミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマーなどの耐熱性樹脂フィルムとして知れられる樹脂フィルム、シートのほか、従来公知の(メタ)アクリル樹脂、PVC樹脂、PVDC樹脂、PVA樹脂、EVOH樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PTFE、PVF、PGF、ETFE等のフッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂等の各種樹脂からなるフィルムやシート各種樹脂高分子、および、これら各種樹脂高分子にアルミ、アルミナ、シリカなどを蒸着したフィルム等の加工品、などの有機物;各種金属類などが好ましく挙げられる。また、その形態は、具体的には、例えば、フィルム状、シート状、板状、繊維状、積層体状などが挙げられるが、特に限定はされない。また、上記基材は、機能的には、特に限定はされず、具体的には、光学的には透明、不透明;電気的には絶縁体、導電体、p型またはn型の半導体あるいは誘電体;磁気的には磁性体、非磁性体;など目的に応じて選択される。
【0024】
上記基材としては、上記有機物の基材であって、以下に示す特定の化合物によって表面改質されたものがより好ましい。このように表面改質されていることによって、金属酸化物層と基材との密着性に非常に優れた金属酸化物被着体となる。
上記特定の化合物としては、例えば、いわゆる有機金属化合物などを挙げることができるが、具体的には、下記(a)、(b)で表される有機基含有化合物等の、加水分解性基あるいは金属水酸基と有機基とを有する化合物を挙げることができる。すなわち、(a)の有機基含有化合物は、下記一般式(1):
iMXj (1)
(但し、Yは有機官能基、Mは金属原子、Xは加水分解性基、iおよびjは1〜(s−1)の整数であってi+j≦s(sはMの原子価)を満足する。)
で表される有機基含有化合物およびその(部分)加水分解縮合物であり、(b)の有機基含有化合物は、チタネート系カップリング剤およびその(部分)加水分解縮合物である。
【0025】
上記(a)の有機基含有化合物について説明する。
上記一般式(1)において、有機官能基であるYとしては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種の置換されていても良い基であることが好ましい。また、Yは、それ自体が高分子量の有機官能基であってもよいし、高分子が結合している基であってもよく、例えば、ビニルトリメトキシシランやアクリロキシプロピルトリメトキシシラン(これら自身も(a)である。)等の重合性基を有する化合物をビニル系モノマーや(メタ)アクリル系モノマー等と共重合させて得られる共重合体の有機金属部分などが挙げられ、このような高分子量のYとしては、主鎖がビニル系、(メタ)アクリル系、オレフィン系等の(共)重合体からなるポリマーや、ポリエステル系、エポキシ系等の(共)重合体からなるポリマーが挙げられる。
【0026】
上記一般式(1)において、加水分解性基であるXとしては、水素原子、ハロゲン原子、OR1基(但し、R1は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種の置換されていても良い基である。)およびNH2基から選ばれる少なくとも1種の置換されていても良い基であることが好ましい。
上記OR1基のR1としては、アルキル基が工業的に入手し易く、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。R1にはエトキシエキトシエチル基等の置換されたアルキル基も含まれる。
【0027】
また、上記置換されていてもよいNH2基としては、例えば、NHR2やNR34(ただし、R2、R3およびR4は、置換基があってもよいシリル基の他、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種の置換されていても良い基である。)を挙げることができ、一般式(1)におけるXが上記NH2、NHR2またはNR34である場合の(a)の有機基含有化合物としては、例えば、シラザン、ジシラザン、トリシラザン、ジメチルシラザン、トリメチルシラザン、ヘキサメチルジシラザン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルシクロテトラシラザン、ポリシラザン等のシラザン類などを挙げることができる。
【0028】
上記一般式(1)において、金属原子であるMとしては、2価以上の金属原子が化学結合し易い点で好ましく、アルミニウム、ケイ素およびジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属原子がさらに好ましく、金属酸化物との反応性が特に高く、取扱い易く、工業的に入手し易い。
Mがアルミニウムである有機基含有化合物としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムアルキルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノメタクリレート、アルミニウムステアレートオキサイドトリマー、イソプロポキシアルミニウムアルキルアセトアセテートモノ(ジオクチルホスフェート)等の各種アルミニウム系カップリング剤等が例示される。
【0029】
Mがケイ素である有機基含有化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’−ビス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン等のアミノ系シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロル系シランカップリング剤;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のケチミン系シランカップリング剤;N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩等のカチオン系シランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ヒドロキシエチルトリメトキシシラン等のアルキル系シランカップリング剤;γ−ユレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等の各種シランカップリング剤等が例示される。
【0030】
Mがジルコニウムである有機基含有化合物としては、例えば、ジルコニウムジn−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムトリn−ブトキシドペンタンジオネート、ジルコニウムジメタクリレートジブトキシド等の各種ジルコニウム化合物等が例示される。
一方、(b)の有機基含有化合物であるチタネート系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、テトラオクニルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート等が例示される。
【0031】
上記有機基含有化合物(a)および(b)は、いずれか1種を用いても併用してもよく、特に限定はされない。
本発明でいう基材を、上記(a)および(b)等の特定の化合物で表面改質処理しておく方法としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、これらの特定の化合物を溶媒に溶解してなる液、あるいは、溶媒に溶解して加水分解・縮合してなる液を、基材表面に塗布して、加熱する及び/又は紫外線を照射することにより、上記(a)や(b)等の特定の化合物またはこれらの結合体等の誘導体からなる被覆層を基材表面に形成させる方法などが挙げられる。
【0032】
上記有機物の基材(例えば、高分子フィルムなどの高分子基材)については、該基材への金属酸化物層の密着性を高めるために、上記(a)や(b)の特定の化合物で処理することで基材表面を改質しておく方法以外に、予め、基材裏面をコロナ処理しておく方法、基材裏面をプラズマ処理しておく方法、基材表面に紫外線を照射しておく方法、基材表面にシリカやアルミナ等の酸化物、窒化物、炭化物および硫化物なとの無機膜やアルミニウムや銅などの金属膜なとの薄膜を蒸着等により形成しておく方法、基材表面に酸化物、炭化物、窒化物および硫化物などの無機物微粒子および/またはアルミやCuなどの金属微粒子を含有する塗膜(好ましくは、これら含有される無機物微粒子および/または金属微粒子の全粒子または少なくとも一部が、微粒子の一部分を塗膜表面に露出してなる塗膜)を形成しておく方法、基材表面にアクリルポリオールやポリエステルポリアミン等の極性の高い官能基を高密度に有する高分子ポリマーからなる塗膜を形成しておく方法、基材表面を両親媒性化合物等で処理しておく方法などの化学的に金属酸化物層との密着性を高める方法の他、基材となる有機物よりもTg、分子量あるいは結晶性の低い高分子塗膜を形成しておく方法などにより、基材表面を改質しておく方法が挙げられる。
【0033】
本発明の金属酸化物被着体においては、金属酸化物層を形成する金属酸化物は、単一酸化物、複合酸化物および固溶体酸化物のいずれであってもよく、特に限定はされない。
上記金属酸化物Aや金属酸化物Bは、容易に安定して低コストで得られ、また、低温で所望の組成および原子価を有する結晶性の金属酸化物として得られるものである。よって、本発明の金属酸化物被着体では、任意の基材、例えば耐熱性の低い基材等にも容易に金属酸化物層を形成することができる。
本発明の金属酸化物被着体においては、これら金属酸化物Aや金属酸化物Bは、1種のみ用いられていてもよいし、2種以上が併用されていてもよい。
【0034】
また、本発明の金属酸化物被着体においては、上記金属酸化物に、さらに、従来公知の、金属蒸気を酸素雰囲気下で高温処理する方法や金属塩(例えば金属ハロゲン化物など)の熱分解を利用する方法などのいわゆる乾式法により得られる金属酸化物、および、金属塩を水溶液中で中和加水分解して得られた水酸化物や炭酸塩を乾燥後に焼成する方法や金属アルコキシドをアルコール中で加水分解する方法などのいわゆる湿式法により得られる金属酸化物などを併用することもできる。
上記金属酸化物Aを得る反応の際に用いられる出発原料(金属カルボン酸塩とアルコール)について以下に詳しく説明する。
【0035】
金属カルボン酸塩としては、具体的には、分子内にカルボキシル基の水素原子が金属原子で置換された結合を少なくとも1つ有する化合物であり、カルボキシル基としては、例えば、飽和モノカルボン酸、不飽和モノカルボン酸、飽和多価カルボン酸、不飽和多価カルボン酸などの鎖式カルボン酸;環式飽和カルボン酸;芳香族モノカルボン酸、芳香族不飽和多価カルボン酸などの芳香族カルボン酸;さらに分子内にヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、スルホン基、シアノ基、ハロゲン原子等の官能基または原子団を有する化合物などの金属塩;などを好ましく用いることができるが、特にこれらに限定はされるわけではない。なかでも、下記一般式(I):
M(O)(m-x-y-z)/2(OCOR)x(OH)y(OR’)z (I)
(但し、Mはm価の金属原子;Rは、水素原子、置換基があってもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた少なくとも1種;R’は、置換基があってもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた少なくとも1種;m、x、yおよびzは、x+y+z≦m、0<x≦m、0≦y<m、0≦z<mを満たす。)
で示される化合物のように、上記した金属カルボン酸塩またはカルボン酸残基の一部が水酸基やアルコキシ基で置換されたものや、後述のカルボキシル基含有化合物の金属塩や、塩基性酢酸塩、など好ましく挙げることができる。なかでも、後述のカルボキシル基含有化合物の金属塩の中の金属飽和カルボン酸塩や金属不飽和カルボン酸塩がより好ましく、さらにより好ましくは上記一般式(I)で示される金属カルボン酸塩であり、最も好ましくは金属酢酸塩や金属プロピオン酸塩であり、金属(M)がZnである場合は金属酢酸塩であることが特に好ましい。なお、上記金属カルボン酸塩は、結晶水を含む金属カルボン酸塩の水和物であってもよいが、無水物であることが好ましい。
【0036】
上記金属カルボン酸塩に含まれる金属(M)としては(一般式(I)中の金属元素(M)も含む)、特に限定はされないが、具体的には、例えば、1A族、2A族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、8族、ランタノイド元素、アクチノイド元素、1B族、2B族、3B族、4B族、5B族、6B族に含まれる金属元素を挙げることができ、これらの中でも、例えば、Sr、Ce、Y、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Zn、Cd、Al、Ga、In、Ge、Sn、SbおよびLa等の金属元素が、本発明においては好適である。これらは1種のみでも2種以上併存していてもよい。金属カルボン酸塩としては、上記列挙した以外に、シュウ酸バリウムチタニル等の複合金属カルボン酸塩等も好適である。なお、本明細書においては、周期表は、改訂5版「化学便覧(日本化学会編)」(丸善株式会社より出版)に掲載されている「元素の周期表(1993年)」を用い、族番号は亜族方式により表記する。
【0037】
アルコールとしては、例えば、脂肪族1価アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、ステアリルアルコール等)、脂肪族不飽和1価アルコール(アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール等)、脂環式1価アルコール(シクロペンタノール、シクロヘキサノール等)、芳香族1価アルコール(ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、メチルフェニルカルビトール等)、フェノール類(エチルフェノール、オクチルフェノール、カテコール、キシレノール、グアヤコール、p−クミルフェノール、クレゾール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、ドデシルフェノール、ナフトール、ノニルフェノール、フェノール、ベンジルフェノール、p−メトキシエチルフェノール等)、複素環式1価アルコール(フルフリルアルコール等)等の1価アルコール類;アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ピナコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等)、脂環式グリコール(シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール等)、および、ポリオキシアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)等のグリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート等の上記グリコール類のモノエーテルまたはモノエステル等の誘導体;グリセリンやトリメチロールエタン等の3価アルコール、エリスリトールやペンタエリスリトール等の4価アルコール、リピトールやキシリトール等の5価アルコール、ソルビトール等の6価アルコール等の3価以上の多価アルコール、ヒドロベンゾイン、ベンズピナコール、フタリルアルコール等の多価芳香族アルコール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等の2価フェノールや、ピロガロール、フロログルシン等の3価フェノール等の多価フェノール、および、これら多価アルコール類におけるOH基の一部(1〜(n−1)個(ただし、nは1分子当たりのOH基の数))がエステル結合またはエーテル結合となった誘導体;等を挙げることができる。
【0038】
上記アルコールとしては、なかでも、後述する金属錯体モノマーやその誘導体をより低い温度状態で得やすく且つ金属カルボン酸塩と反応して後述する予備反応物さらには金属酸化物を生成し易いアルコールが好ましく、アルコール性水酸基に関して3級、さらには2級、特に1級の水酸基を有するアルコールが、より低い温度状態で金属酸化物が得られるため、最も好ましい。同様の理由で、脂肪族アルコールも好ましい。
本発明においては、上記出発原料となる金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系とは、該金属カルボン酸塩およびアルコールをそれぞれ少なくとも一部ずつ混ぜ合わせた段階以降の系を意味する。すなわち、前述した、組み合わせAの出発原料の混合物、および/または、組み合わせAの出発原料を混合するか、または混合および加熱して得られた液が含まれる。この混合系の内部状態としては、金属カルボン酸塩およびアルコールのいずれもが原料状態の化学構造を変化させずに存在している状態であることに限らず、例えば、金属カルボン酸塩およびアルコールの少なくとも1つが溶解状態下で特有の化学構造に変化して存在している状態であってもよいし、金属カルボン酸塩とアルコールとがこれらの予備反応物となって存在している状態であってもよく、すなわち、出発原料そのままの状態から何れの状態に変化して存在していてもよい。
【0039】
ここでいう予備反応物(以下、予備反応物aと称することがある。)は、金属カルボン酸塩とアルコールとから得られるものであって、金属カルボン酸塩とアルコールとの反応による反応物として金属酸化物(以下、金属酸化物Aと称することがある。)が生成されるまでの任意の段階の状態の反応中間体であり、生成される金属酸化物Aに対する前駆体(金属酸化物前駆体)である。すなわち、予備反応物aは、出発原料としての金属カルボン酸塩でもアルコールでもなく、両者の反応物ではあるが、生成される金属酸化物Aでもない金属酸化物前駆体である。なお、上述の金属酸化物Aが生成されるまでの任意の段階の状態とは、用いた金属カルボン酸塩のうちの50重量%以上が粒径5nm以上の粒子状の金属酸化物Aの生成が認められる前の状態をいうとする。
【0040】
また、上記予備反応物aは、例えば、アルコールまたはアルコールを含む溶媒に金属カルボン酸塩を溶解させるだけで直ちに得られる場合もあるが、好ましくは金属カルボン酸塩とアルコールとの混合と、緩やかな昇温(金属酸化物Aが得られる高温状態にするよりも緩やかな条件下での昇温)と、好ましくは加圧下の加熱とにより得られる。予備反応物aは溶液状態であることが好ましい。
予備反応物aとしては、特に限定はされないが、例えば、1)金属カルボン酸塩の金属原子に、アルコールまたはアルコキシ基が配位(吸着による配位も含む。)してなる金属錯体モノマー(この場合、カルボキシル基の一部がアルコールのアルコキシ基で置換された錯体も含まれる。)、2)金属カルボン酸塩が酸素原子を介して「金属−酸素−金属」の結合が形成されてなる縮合物に原料のカルボン酸基(−COO基)以外にさらにアルコールまたはアルコキシ基が配位(吸着による配位も含む。)してなる化合物(金属錯体モノマー誘導体)、などが好ましく挙げられる。なかでも、1)でいう金属錯体モノマーがより好ましく挙げられる。また、上記金属錯体モノマーは、上述のような方法以外によっても得ることができる。上述の方法以外によって得られた金属錯体モノマーを上記混合系にさらに加えて高温状態にすることにより金属酸化物を得ることもできる。
【0041】
出発原料となる上記金属カルボン酸塩とアルコールとの使用量に関しては、特に限定はないが、金属カルボン酸塩の金属換算原子数に対するアルコール中の(アルコール由来の)水酸基の数の比が、0.8〜1000となるようにすることが好ましい。また、上記使用量に関しては、金属カルボン酸塩の有するカルボキシル基の総数に対するアルコール中の(アルコール由来の)水酸基の総数の比が、0.8〜100となるようにすることも好ましく、より好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜20である。
金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系は、ペースト状、懸濁液状、溶液状などの流動性のある液状であることが好ましい。さらに、必要に応じて、後述する反応溶媒をも混合することによって、上記液状としてもよい。通常、金属カルボン酸塩は、特に限定はされないが、金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系においては、粒子状で分散した状態、溶解した状態、または、一部が溶解した状態で残りが粒子状で分散している状態、などの状態で存在する。
【0042】
上記金属酸化物Bを得る反応の際に用いられる出発原料(金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物)について以下に詳しく説明する。
金属アルコキシ基含有化合物としては、特に限定はされないが、例えば、下記一般式(II):
M’(ORan-mb m (II)
(但し、M’は、金属原子;Raは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アシル基、アラルキル基、アリール基から選ばれた少なくとも1種;Rbは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アシル基、アラルキル基、アリール基、不飽和脂肪族残基、および、ORa基以外の官能基を含む有機基から選ばれた少なくとも1種;nは金属原子M’の価数;mは0〜n−1の範囲の整数である。)
で示される化合物、またはこの化合物を(部分)加水分解・縮合してなる縮合物を挙げることができる。
【0043】
一般式(II)中、Raとしては、水素原子および/またはアルコキシアルキル基などの置換されていてもよいアルキル基が好ましく、より好ましくは置換されていてもよいアルキル基である。また、Rbとしては、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アシル基、アラルキル基、アリール基、不飽和脂肪族残基、および、β−ジケトン化合物等のORa基以外の官能基を含む有機基から選ばれた少なくとも1種であるものが好ましい。
一般式(II)中、M’としては、上記金属カルボン酸塩に含まれる金属元素(M)と同様のものを挙げることができ、好ましいものについても同様であるが、その他、W、Mo、Siも好ましい。
【0044】
一般式(II)中、m=1、2または3である金属アルコキシ基含有化合物としては、例えば、各種の有機ケイ素化合物(m=1、2または3)、チタネート系カップリング剤(m=1、2または3)、アルミネート系カップリング剤(m=1または2)等が例示される。
有機ケイ素化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’−ビス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン等のアミノ系シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エボキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロル系シランカップリング剤;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のケチミン系シランカップリング剤;N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩等のカチオン系シランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ヒドロキシエチルトリメトキシシラン等のアルキル系シランカップリング剤;γ−ユレイドプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0045】
チタネート系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタロイルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、および、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート等を挙げることができる。
【0046】
アルミネート系カップリング剤としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムアルキルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノメタクリレート、イソプロポキシアルミニウムアルキルアセアセテートモノ(ジオクチルホスフェート)、および、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート等を挙げることができる。
金属アルコキシ基含有化合物は、上記で説明したもの以外であってもよく、単一金属のアルコキシ基含有化合物の他、例えば、バリウムチタンダブルアルコキシド等のヘテロ金属アルコキシ基含有化合物であってもよい。なお、ヘテロ金属アルコキシ基含有化合物とは、2個以上の異なる金属原子を有し、アルコキシ基や酸素原子を介したり、金属−金属結合等によって結ばれた金属アルコキシ基含有化合物のことである。ヘテロ金属アルコキシ基含有化合物を用いた場合は、複合酸化物からなる金属酸化物を得ることができる。
【0047】
結晶性の金属酸化物を得る場合には、一般式(II)中、mが0である化合物を主成分とすることが最も好ましく、単一金属のアルコキシ基含有化合物やヘテロ金属アルコキシ基含有化合物が挙げられる。
また、本発明においては、含有金属原子の異なる2種以上の金属アルコキシ基含有化合物を出発原料とする場合は、上記ヘテロ金属アルコキシ基含有化合物であってもよい。ヘテロ金属アルコキシ基含有化合物の場合、アルコキシ基や酸素原子を介したり、金属−金属結合等によって結ばれた、2種以上の金属アルコキシ基含有化合物の組み合わせは、上に列挙した組み合わせと同様であることが好ましい。
【0048】
カルボキシル基含有化合物は、分子内にカルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物であり、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸(飽和モノカルボン酸)、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸(不飽和モノカルボン酸)、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、β,β−ジメチルグルタル酸等の飽和多価カルボン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和多価カルボン酸等の鎖式カルボン酸類、シクロヘキサンカルボン酸等の環式飽和カルボン酸類、安息香酸、フェニル酢酸、トルイル酸等の芳香族モノカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸等の不飽和多価カルボン酸等の芳香族カルボン酸類、無水酢酸、無水マレイン酸、ピロメリット酸無水物等のカルボン酸無水物、トリフルオロ酢酸、o−クロロ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、 アントラニル酸、p−アミノ安息香酸、アニス酸(p−メトキシ安息香酸)、トルイル酸、乳酸、サリチル酸(o−ヒドロキシ安息香酸)等の分子内にカルボキシル基以外のヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、スルホン酸基、シアノ基、ハロゲン原子等の官能基または原子団を有する化合物、アクリル酸ホモポリマー、アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体等、重合体原料として上記不飽和カルボン酸を少なくとも1つ有する重合体を挙げることができる。これらのカルボキシル基含有化合物のなかでも、後述する金属錯体モノマーやその誘導体を得やすく且つより低い温度状態で金属酸化物が得られ易いという点でアルコールと反応して後述する予備反応物さらには金属酸化物の形成をより低い温度で起こし易い化合物が好ましく、水中(25℃、0.1モル/L)での酸解離定数pKaが4.5〜5であるものがより好ましく、具体的には、飽和カルボン酸が好ましく、さらに、立体的にも反応性が高い点で酢酸が最も好ましい。また、カルボキシル基含有化合物が液体の場合は、後述の反応溶媒としても用いることもできる。
【0049】
本発明においては、上記出発原料となる金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との混合系とは、該金属アルコキシ基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物をそれぞれ少なくとも一部ずつ混ぜ合わせた段階以降の系を意味する。すなわち、前述した、組み合わせBの出発原料の混合物、および/または、組み合わせBの出発原料を混合するか、または混合および加熱して得られた液が含まれる。この混合系の内部状態としては、金属アルコキシ基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物のいずれもが原料状態の化学構造を変化させずに存在している状態であることに限らず、例えば、金属アルコキシ基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物の少なくとも1つが溶解状態下で特有の化学構造に変化して存在している状態であってもよいし、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とがこれらの予備反応物となって存在している状態であってもよく、すなわち、出発原料そのままの状態から何れの状態に変化して存在していてもよい。
【0050】
ここでいう予備反応物(以下、予備反応物bと称することがある。)は、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とから得られるものであって、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との反応による反応物として金属酸化物(以下、金属酸化物Bと称することがある。)が生成されるまでの任意の段階の状態の反応中間体であり、生成される金属酸化物Bに対する前駆体(金属酸化物前駆体)である。すなわち、予備反応物bは、出発原料としての金属アルコキシ基含有化合物でもカルボキシル基含有化合物でもなく、両者の反応物ではあるが、生成される金属酸化物Bでもない金属酸化物前駆体である。なお、上述の金属酸化物Bが生成されるまでの任意の段階の状態とは、用いた金属アルコキシ基含有化合物のうちの50重量%以上が粒径5nm以上の粒子状の金属酸化物Bの生成が認められる前の状態をいうとする。
【0051】
また、上記予備反応物bは、例えば、カルボキシル基含有化合物またはカルボキシル基含有化合物を含む溶媒に金属アルコキシ基含有化合物を溶解させるだけで直ちに得られる場合もあるが、好ましくは金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との混合と、緩やかな昇温(金属酸化物Bが得られる高温状態にするよりも緩やかな条件下での昇温)と、好ましくは加圧下での加熱とにより得られる。予備反応物bは溶液状態であることが好ましい。
予備反応物bとしては、特に限定はされないが、例えば、1)金属アルコキシ基含有化合物の金属原子に、カルボキシル基含有化合物が−COOH基または−COO基を介して配位(吸着による配位も含む。)してなる金属錯体モノマー(この場合、アルコキシ基の一部がカルボキシ基で置換された錯体も含まれる。)、2)金属アルコキシ基含有化合物が酸素原子を介して「金属−酸素−金属」の結合が形成されてなる縮合物に原料のアルコキシ基以外にさらにカルボキシル基含有化合物が配位(吸着による配位も含む。)してなる化合物(金属錯体モノマー誘導体)、などが好ましく挙げられる。なかでも、1)でいう金属錯体モノマーがより好ましく挙げられる。また、上記金属錯体モノマーは、上述のような方法以外の方法によっても得ることができる。上述の方法以外によって得られた金属錯体モノマーをさらに加熱することにより金属酸化物を得ることもできる。
【0052】
出発原料となる金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との使用量に関しては、それらの配合割合(カルボキシル基含有化合物/金属アルコキシ基含有化合物)が、特に限定はされないが、金属アルコキシ基含有化合物に含有されている金属原子Mの平均原子価数Navを用いて、好ましくは下限が0.8Nav超、さらに好ましくは1.2Nav超であり、また、好ましくは上限が10Nav未満である。ここで、平均原子価数Navは、金属アルコキシ基含有化合物として、含有金属元素の異なるp種の金属アルコキシ基含有化合物(含有金属元素がそれぞれM1、M2、M3、・・・、Mpであるp種の金属アルコキシ基含有化合物(2≦p))を併せて用いる場合、下記数式:
【0053】
【数1】
Figure 0004287124
【0054】
(数式中、Niは、金属Miの原子価(価数)を表す。また、Xiは、金属アルコキシ基含有化合物として用いた金属元素Miのモル数を表す。pは2以上の整数である。)
から算出することができる。また、出発原料として用いたカルボキシル基含有化合物の総量に含まれるカルボキシル基の数が、出発原料として用いた金属アルコキシ基含有化合物の総量に含まれるアルコキシ基の数N’に対して、0.8N’超であることも好ましく、1N’〜10N’が特に好ましい。なお、数値範囲を表す際に、数値の後ろに「超」と付した場合は、その数値を含まずそれより大きい数値範囲を示すものとする。
【0055】
金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系は、ペースト状、懸濁液状、溶液状などの流動性のある液状であることが好ましい。さらに、必要に応じて、後述する反応溶媒をも混合することによって、上記液状としてもよい。通常、金属カルボン酸塩は、特に限定はされないが、金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系においては、粒子状で分散した状態、溶解した状態、または、一部が溶解した状態で残りが粒子状で分散している状態、などの状態で存在する。
金属カルボン酸塩とアルコールとを出発原料として金属酸化物Aを得るか、または、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料として金属酸化物Bを得るにあたっては、さらに反応溶媒を用いてもよい。具体的には、これら出発原料を混合するにあたり、あるいは、これら出発原料の混合系を高温状態にするにあたり、さらに反応溶媒を加えた上で行うようにすればよい。
【0056】
反応溶媒をも用いる場合、その使用量については、特に限定はないが、金属酸化物Aを得る場合は、出発原料として用いた全ての金属カルボン酸塩およびアルコールと反応溶媒との合計使用量に対する、上記全ての金属カルボン酸塩の合計使用量の割合が0.1〜50重量%となるようにすることが好ましい。同様に、金属酸化物Bを得る場合は、出発原料として用いた全ての金属アルコキシ基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物と反応溶媒との合計使用量に対する、上記全ての金属アルコキシ基含有化合物の合計使用量の割合が0.1〜50重量%となるようにすることが好ましい。これによって、金属酸化物を経済的に得ることができる。
【0057】
上記反応溶媒としては、水以外の溶媒、すなわち、非水溶媒が好ましい。非水溶媒としては、例えば、エチルベンゼン、オクタン、キシレン類、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン、ジメチルナフタレン、スチレン、ソルベントナフサ、デカリン、デカン、テトラリン、ドデシルベンゼン、トルエン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、流動パラフィン等の炭化水素;各種ハロゲン化炭化水素;アルコール(フェノール類や、多価アルコールおよびその誘導体で水酸基を有する化合物なども含む);アニソール、エピクロロヒドリン、エポキシブタン、クラウンエーテル類、ジイソアミルエーテル、ジエチルアセタート、ジオキサン、ジグリシジルエーテル、ジフェニルエーテル、ジブチルエーテル、ジベンジルエーテル、ジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル等のエーテルおよびアセタール;アセチルアセトン、アセトアルデヒド、アセトフェノン、アセトン、イソホロン、エチル−n−ブチルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジ−n−プロピルケトン、ホロン、メシチルオキシド、メチル−n−アミルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノン、メチル−n−ヘプチルケトン等のケトンおよびアルデヒド;アジピン酸ジエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセト酢酸エチル、アビエチン酸メチル、安息香酸ベンジル、安息香酸メチル、イソ吉草酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、ギ酸プロピル、クエン酸トリブチル、ケイ皮酸メチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸n−ブチル、酢酸ベンジル、酢酸メチル、酢酸メチルシクロヘキシル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル、シュウ酸ジブチル、酒石酸ジエチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、炭酸ジフェニル、炭酸ジメチル、乳酸ブチル、乳酸メチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、γ−ブチロラクトン、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ベンジル、プロピオン酸メチル、ホウ酸エステル類、マレイン酸ジオクチル、マロン酸ジメチル、酪酸イソアミル、酪酸メチル、リン酸エステル類等のエステル;エチレンカーボナート、プロピレンカーボネート、エチレングリコールジアセタート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジアセタート、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸ジエステル、両末端に水酸基を有しないポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)誘導体等の多価アルコール類のすべての水酸基の水素がアルキル基やアシル基で置換された誘導体化合物;カルボン酸およびその無水物や、シリコーン油、鉱物油等を挙げることができる。反応溶媒としては、親水性溶媒が特に好ましい。具体的には、常温(25℃)において、水を5重量%以上含み溶液状態になり得る溶媒が好ましく、任意の量の水を含み溶液状態になり得る溶媒がより好ましい。
【0058】
上記アルコール(フェノールや、多価アルコールおよびその誘導体で水酸基を有する化合物を含む。以下、アルコールと示す場合は同様とする。)としては、金属酸化物Aを得る場合に用いるアルコールとして列挙したものと同様のものを好ましく挙げることができる。
反応溶媒としては、さらに、アミンやアルカノールアミン等のいわゆるアミン類を用いることもできるが、該アミン類は、大量に用いると(具体的には、反応系中に含まれる金属の原子数と同量もしくは多い量を用いると)、予備反応物aや予備反応物bの生成が阻害されたり、金属酸化物Aや金属酸化物Bの生成反応が阻害されることがある。よって、該アミン類を反応溶媒として使用する場合は、金属カルボン酸塩または金属アルコキシ基含有化合物の金属換算原子数に対するモル比で0.1以下となる量を使用することが好ましい。
【0059】
金属酸化物Bを得る場合は、反応溶媒としては、特に、非水溶媒のうちでも、アルコール性またはフェノール性水酸基を有しない非水溶媒である非アルコール性有機溶媒が好ましく、これを用いた際の反応収率が高い。非アルコール性有機溶媒としては、例えば、炭化水素;ハロゲン化炭化水素; エーテルおよびアセタール;ケトンおよびアルデヒド;エステル;多価アルコール類のすべての水酸基の水素がアルキル基やアセトキシ基で置換された誘導体化合物;カルボン酸およびその無水物や、シリコーン油、鉱物油等を挙げることができる。これらの非アルコール性有機溶媒のなかでも、エーテルおよびアセタール;ケトンおよびアルデヒド;エステル;多価アルコール類のすべての水酸基の活性水素がアルキル基やアセトキシ基で置換された誘導体化合物等が好ましい。
【0060】
金属酸化物Aは、前述したように、出発原料を金属カルボン酸塩とアルコールとし、これらの混合系を高温状態にすることにより得られることが好ましいが、上記混合系を高温状態にするとは、上記混合系の温度を常温よりも高い温度であって金属酸化物Aが生成し得る温度、またはそれ以上の温度に昇温することである。上記高温状態の温度(金属酸化物Aが生成し得る温度)は、得ようとする金属酸化物の種類等によって異なるが、具体的には、50℃以上であることが好ましく、結晶性の高い金属酸化物が得られるという点で、100℃以上がより好ましく、100〜300℃の範囲がさらに好ましい。
【0061】
上記混合系を高温状態にするための具体的な昇温手段(予備反応物aを得る場合に緩やかな高温状態にするための昇温手段も含む)としては、例えば、ヒーター、温風や熱風による加熱などが一般的であるが、これに制限されるものではなく、例えば、紫外線照射などの手段を採用することもできる。上記混合系を高温状態にする際は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力下で行ってもよく、特に限定はされないが、加圧下で出発原料を加熱等により高温状態にすることがより好ましい。また、反応溶媒等の沸点が金属酸化物Aの生成される反応温度よりも低い場合は、耐圧反応装置を用いて行うことも好ましい。通常、反応温度、反応時の気相圧は、溶媒となる成分の臨界点以下で行うが、超臨界条件で行うこともできる。
【0062】
金属酸化物Aを生成させる場合においては、金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系に含まれる水分が少ない方が、得られる金属酸化物の欠陥が少なくなるため好ましい。具体的には、上記混合系中に、出発原料として使用した金属カルボン酸塩中の金属原子に対してモル比で4未満のわずかな水分しか含有しないことが好ましく、水分がモル比で1未満であるとさらに好ましく、0.5未満であると特に好ましく、0.1未満が最も好ましい。
本発明では、金属酸化物Aは金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系を高温状態にすることにより得られるが、該高温状態は、金属カルボン酸塩とアルコールとを混合すると同時かまたは混合した後に得られていればよく、すなわち、上記混合系を得るための出発原料の混合と、該混合系を高温状態にするための昇温とは、別々となるようにしてもよいし、同時(一部同時も含む)となるようにしてもよく、特に限定はされない。より詳しくは、上記混合系の昇温のための具体的手段(例えば加熱等)は、上記出発原料の混合に関わらず任意の方法・タイミングで行うことができ、例えば、混合前の出発原料の少なくとも一方を加熱等しておくことで混合と同時に該混合系を昇温させるようにしてもよいし、混合して得られる混合系に対して、該混合をしながらか又は該混合を終了した後で、加熱等を施し該混合系を昇温させるようにしてもよく、特に限定はされない。したがって、この混合と、昇温のための加熱等とのタイミングとしては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、1)金属カルボン酸塩とアルコールとを混合しておいて、これを加熱等により昇温し高温状態にする、2)アルコールを所定温度に加熱等しておき、これに金属カルボン酸塩を混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、3)反応溶媒と金属カルボン酸塩とを混合して所定温度に加熱等しておき、これにアルコールを混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、4)各成分(金属カルボン酸塩およびアルコール、および必要に応じて反応溶媒)を別々に加熱等しておいた後、これらを混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、5)金属カルボン酸塩とアルコールとを混合(および、必要により、上記高温状態にするよりも緩やかな条件下で加熱等)して予備反応物aを得ておいて、これを加熱等により昇温し高温状態にする、等が好ましく挙げられる。
【0063】
なお、予備反応物aを、金属カルボン酸塩とアルコールとの、混合、および、上記高温状態にするよりも緩やかな条件下での加熱等により得る場合、該混合と該昇温のための加熱等とのタイミングとしては、上述した金属酸化物Aを得る際の混合と昇温のための加熱等とのタイミングと同様であることが好ましい。
金属酸化物Bは、上述のように、出発原料を金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とし、これらの混合系を高温状態にすることにより得られるものが好ましいが、上記混合系を高温状態にするとは、上記混合系の温度を常温よりも高い温度であって金属酸化物Bが生成し得る温度、またはそれ以上の温度に昇温することである。上記高温状態の温度(金属酸化物Aが生成し得る温度)は、得ようとする金属酸化物の種類等によって異なるが、具体的には、50℃以上であることが好ましく、結晶性の高い金属酸化物が得られるという点で、100℃以上がより好ましく、100〜300℃の範囲がさらに好ましい。
【0064】
上記混合系を高温状態にするための具体的な昇温手段(予備反応物bを得る場合に緩やかな高温状態にするための昇温手段も含む)としては、前述の金属酸化物Aを得る場合と同様の手段が採用できる。混合系を高温状態にする際は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力下で行ってもよく、特に限定はされないが、加圧下で出発原料を加熱等により高温状態にすることがより好ましい。また、反応溶媒等の沸点が金属酸化物Bの生成される反応温度よりも低い場合は、耐圧反応装置を用いて行うことも好ましい。通常、反応温度、反応時の気相圧は、溶媒の臨界点以下で行うが、超臨界状態で行うこともできる。
【0065】
金属酸化物Bを生成させる場合においては、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との混合系に含まれる水分が少ない方が、得られる金属酸化物の欠陥が少なくなるため好ましい。具体的には、上記混合系中に、出発原料として使用した金属アルコキシ基含有化合物中の金属原子に対してモル比で1未満のわずかな水分しか含有しないことが好ましく、水分がモル比で0.2未満であるとさらに好ましく、0.1未満であると特に好ましい。
本発明では、金属酸化物Bは金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との混合系を高温状態にすることにより得られるが、該高温状態は、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを混合すると同時かまたは混合した後に得られていればよく、すなわち、上記混合系を得るための出発原料の混合と、該混合系を高温状態にするための昇温とは、別々となるようにしてもよいし、同時(一部同時も含む)となるようにしてもよく、特に限定はされない。より詳しくは、上記混合系の昇温のための具体的手段(例えば加熱等)は、上記出発原料の混合に関わらず任意の方法・タイミングで行うことができ、例えば、混合前の出発原料の少なくとも一方を加熱等しておくことで混合と同時に該混合系を昇温させるようにしてもよいし、混合して得られる混合系に対して、該混合をしながらか又は該混合を終了した後で、加熱等を施し該混合系を昇温させるようにしてもよく、特に限定はされない。したがって、この混合と、昇温のための加熱等とのタイミングとしては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、1)金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを混合しておいて、これを加熱等により昇温し高温状態にする、2)カルボキシル基含有化合物を所定温度に加熱等しておき、これに金属アルコキシ基含有化合物を混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、3)反応溶媒と金属アルコキシ基含有化合物とを混合して所定温度に加熱等しておき、これにカルボキシル基含有化合物を混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、4)各成分(金属アルコキシ基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物、および必要に応じて反応溶媒)を別々に加熱等しておいた後、これらを混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、5)金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを混合(および、必要により、上記高温状態にするよりも緩やかな条件下で加熱等)して予備反応物bを得ておいて、これを加熱等により昇温し高温状態にする、等が好ましく挙げられる。
【0066】
なお、予備反応物bを、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との、混合、および、上記高温状態にするよりも緩やかな条件下での加熱等により得る場合、該混合と該昇温のための加熱等とのタイミングとしては、上述した金属酸化物Bを得る際の混合と昇温のための加熱等とのタイミングと同様であることが好ましい。
上記金属酸化物は、前述したように様々な優れた特性を有するものであり、本発明の金属酸化物被着体の構成要素として膜(金属酸化物層)として用いられることによって、その特性を該金属酸化物被着体に十分付与し、同様の特性を金属酸化物被着体に発揮させることができる。
【0067】
前述の通り、本発明の金属酸化物被着体においては、該膜を構成する金属酸化物は、単一酸化物、複合酸化物および固溶体酸化物のいずれであってもよく、特に限定はされないが、導電性機能などに優れる点では2種以上の金属元素を含有する複合酸化物あるいは固溶体酸化物が好ましい。以下に、単一酸化物、複合酸化物および固溶体酸化物それぞれについての具体例を示す。
〔単一酸化物〕
3次元格子構造を有する酸化物として、M2O型酸化物(Li2O、Na2O、K2O、Rb2O;Cu2O、Ag2O);MO型酸化物(MgO、CaO、SrO、BaO;FeO、CoO、NiO、MnO;TiO、VO;BeO、ZnO;NbO;PdO、PtO、CuO、AgO);M23型酸化物(Al23、Ti23、V23、Fe23、Cr23、Rh23、Ga23;Mn23、Sc23、 Y23、In23、Tl23;α−Bi23、β−Bi23、γ−Bi23;B23;ランタノイド系金属酸化物);MO2型酸化物(ZrO2、HfO2、CeO2、ThO2、UO2;TiO2、SnO2、VO2、CrO2、MoO2、WO2、MnO2、GeO2;SiO2、GeO2);MO3型酸化物(ReO3、WO3)が挙げられる。
【0068】
低次元格子構造を有する酸化物として、層状格子構造酸化物(M2O型酸化物(Ca2O);MO型酸化物(PbO、SnO);M25型酸化物(V25);MO3型酸化物(MoO3)等);鎖状格子構造酸化物(HgO、SeO2、CrO3、Sb23);分子格子構造酸化物(RuO4、OsO4、Tc27、Sb46)が挙げられる。
〔複合酸化物〕
ABO2型複合酸化物(LiBO2;LiGaO2;γ−LiAlO2;LiFeO2、LiInO2、LiScO2、LiEuO2、LiNiO2、LiVO2、NaFeO2、NaInO2;CuCrO2、CuFeO2、PdCoO2、PdCrO2、PdRhO2、PtCoO2);ABO3型複合酸化物(ScTiO3、ScVO3;FeVO3、MnFeO3、FeCrO3、TiVO3、FeTiO3、CoMnO3、CoVO3、NiTiO3、CdTiO3、LiNbO3;LiSbO3;PbReO3、BiYO3、AO3の最密面を有するABO3型酸化物として、BaNiO3、ペロブスカイト酸化物(KTaO3、NaNbO3、BaMnO3、SrTiO3;BiAlO3、PbSnO3、BaTiO3、PbTiO3;LaAlO3、LiNiO3、BiFeO3、KNbO3;GdFeO3、YFeO3、NdGaO3、CaTiO3)、BaMnO3、SrTiO3、Sr4Re2SrO12、BaRuO3等);ABO4型複合酸化物(PBO4、BeSO4;CrVO4、ZnCrO4;α−MnMoO4;CaWO4、CaMoO4;Bi2(MoO43、Eu2(WO43;MNbO4、MTaO4(M:3価);CaCrO4、YVO4;CrVO4、AlAsO4;FeVO4、FeWO4、MnWO4、NiWO4;CuWO4;CoMoO4);AB24型複合酸化物(NiCr24、CoCr24、MnCr24、NiFe24、CoFe24、MnFe24、ZnFe24;Be2SiO4;CaFe24、CaTi24等)などが挙げられる。
【0069】
上記列挙した酸化物以外にも、ケイ酸塩やアルミノケイ酸塩;Mo、W、V、Nb、Ta等のポリ酸であって、異種原子を取り込んだヘテロポリ酸、さらに、Mo、W、V等の一部を異種金属で置換した混合ヘテロポリ酸や、これらの塩等も、複合酸化物として挙げられる。
〔固溶体酸化物〕
固溶体酸化物とは、単一酸化物または複合酸化物に、任意の異種金属を固溶した侵入型または置換型固溶体酸化物と定義される。
上記単一酸化物または複合酸化物が上記金属酸化物Aである場合、固溶させる異種金属は、金属カルボン酸塩や金属アルコキシ基含有化合物に由来するものであることが好ましいが、なかでも、金属カルボン酸塩由来のものが、固溶率の高い固溶体が得られるためより好ましい。
【0070】
また、上記単一酸化物または複合酸化物が上記金属酸化物Bである場合、固溶させる異種金属は、金属アルコキシ基含有化合物や金属カルボン酸塩に由来するものであることが好ましいが、なかでも、金属アルコキシ基含有化合物由来のものが、固溶率の高い固溶体が得られるためより好ましい。
以下、固溶体酸化物について具体的に例示するが、特にこれらに限定はされない。
(1)導電性酸化物
上記金属酸化物に、導電性を高める目的で、ドナーやアクセプターとなる異種金属元素やフッ素、水素などを含有または固溶させることがあるが、これらの酸化物も本発明でいう金属酸化物に含まれる。例えば、ZnOにAl、In、Ga、Si;TiO2にTa;Fe23にTi;BaTiO3にLa、Ta;In23にSn、Ti;SnO2にSb、P、F;MgIn24にH;というようなn型半導性酸化物にドナーとなる異種金属元素を含有させてなるn型導電性酸化物や、NiOにLi;CoOにLi;FeOにLi;MnOにLi;Bi23にBa;Cr23にMg;LaCrO3にSr;LaMnO3にSr;SrCu22にK;というようなp型半導性酸化物にアクセプターとなる異種元素を含有させてなるp型導電性酸化物が挙げられる。さらに、K2O−11Fe23にTiを添加してなるイオン−電子複合伝導体や、イオン伝導体として知られる酸化ジルコニウムにY、Sc等の金属をドープ(固溶)してなる酸化ジルコニウム系固溶体も含まれる。通常、固溶させるドナーあるいはアクセプターの濃度は、母体の金属酸化物の金属に対する原子数比で表して、0.01〜20%、好ましくは0.1〜5%である。これら導電性酸化物は、通常、熱線を含む赤外線吸収または反射機能を有するので、熱線遮蔽材料としても有用である。また、上述のLaMnO3にSrを含有させてなるp型導電性酸化物のように、前記したペロブスカイト型酸化物やスピネル型酸化物等の複合酸化物中の金属元素の一部を任意の異種金属元素で置換してなるものも含まれる。
【0071】
これらの導電性酸化物のうち、n型導電性酸化物は、熱線を含む赤外線吸収能に優れるので、赤外線遮断材料としても有用である。
(2)希薄磁性半導体酸化物
23、TiO2、Fe23、ZnO、In23、SnO2、BaTiO3、MgIn24などの酸化物や、これらに異種金属を固溶してなるか酸素欠陥を導入してなるn型又はp型半導体または導電性の酸化物に、Fe、Cr、Mn、Co、Ni等の磁性金属イオンを固溶させることによって得ることができる。
好ましい磁性金属イオンの濃度は、半導体または導電体の酸化物における金属に対する原子数比で、1%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、特に好ましくは10〜30%である。
(3)蛍光体酸化物
単一酸化物または複合酸化物などの母体結晶酸化物に、発光中心となる金属イオン又は非金属元素の1種または2種以上を固溶させてなる酸化物である。発光中心となる金属イオンとしては、例えば、Mn(II)、Cr(III)、Ag(I)、Cu(II)、Sb(III)、Sn(II)、Pb(II)、Tl(I)等の典型金属元素のイオンや遷移金属元素のイオンの他、Eu(II)、Eu(III)、Nd(III)、Tb(III)、Pr(III)、Yb(III)、Sm(III)、Ho(III)等のランタノイド金属元素のイオンなどを好ましく用いることができ、非金属元素としては、例えば、FおよびCl等のハロゲン原子などを好ましく用いることができる。また、母体結晶酸化物としては、可視光および/または近赤外線領域の光に対して実質的に吸収のない酸化物が好ましく、ZnO、Zn2SiO4、Y23、SnO2、In23等がより好ましい。
【0072】
ZnOにMn(II)、Sb(III)をZnに対する原子数比で0.1〜5%固溶させてなる蛍光体は、特に、金属イオンが均一分散した固溶体が得られる点で好ましい。
さらに本発明でいう金属酸化物について、その機能とその具体例を列挙する。すなわち、熱電変換には、ZnO(In)、ZnO(Al)、In25−ZnO系ホモロガス化合物などが好ましい。光電変換用半導体には、TiO2、ZnOなどが好ましい。光触媒には、TiO2、ZnOなどが好ましい。圧電体や表面弾性波素子用には、ZnOなどが好ましい。熱伝導膜には、Al23やZnOなどが好ましい。UV吸収には、TiO2、ZnO、CeO2、Fe23などが好ましい。赤外線吸収には、透明導電膜と同様の材料が好ましい。高屈折率には、TiO2、Cr23、ZrO2、ZnO、In23、Al23などが好ましく、これらは反射やぎらつきの防止もできる。強磁性には、ZnFe24、MnFe24、NiFe24等のフェライト、Fe34などが好ましい。蛍光および発光には、ZnO、ZnO(Mn)、ZnO(Cu)などのZnO系のものや、Y23(Eu)、Y23(Er)などが好ましく、紫外線発光体またはグリーン等の可視光発光体として用い得る。エレクトロルミネッセンスには、WO3、NaxWO3等の酸化タングステン系のものなどが好ましい。
【0073】
本発明にかかる金属酸化物被着体の製造方法(以下、本発明の方法と称することがある。)は、前述のように、金属カルボン酸塩とアルコールとを出発原料とするか、または、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料として生成する金属酸化物を膜として基材の表面に定着させるようにしている。好ましくは、上記出発原料を混合すると同時かまたはその後に該混合系を高温状態にする方法であり、このような過程を経て生成する金属酸化物を膜として基材の表面に定着させるようにする。
本発明の方法における出発原料やその混合系および上記特定の化合物等の詳細、および、上記出発原料の混合や、上記出発原料の混合系を高温状態にすること等の、操作条件や反応条件等の詳細については、基本的にすべて上記本発明の金属酸化物被着体の説明で記載した内容と同様であることが好ましい。
【0074】
なお、予備反応物(予備反応物aや予備反応物b)の一形態である金属錯体モノマーに関しては、その配位数(アルコール、アルコキシ基、カルボキシル基の金属1個あたりの総配位数)は、金属の価数と同じ場合、金属の価数よりも高い場合とがあり得る。前者の場合には、カルボキシル基の一部は出発原料であるアルコールと反応して脱離し、例えば、アルコキシ基に置換されて生成する。出発原料であるアルコール、金属カルボン酸塩の金属の種類、カルボキシル基の種類(相当するカルボン酸のpKa)により配位数は異なる。また、出発原料であるアルコールの種類によって、アルコールとして吸着する場合と、アルコキシ基として金属に結合する場合とがある。
【0075】
前述の通り、本発明の方法は、出発原料となる金属カルボン酸塩そのものの熱分解反応や、同様に出発原料となる金属アルコキシドそのものの加水分解反応により得られる金属酸化物を基材の表面に定着させる方法をも包含するものであるが、本発明の方法の好ましい実施形態は、金属カルボン酸塩とアルコールという特定の組み合わせからなる出発原料の反応、あるいは、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物という特定の組み合わせからなる出発原料の反応により得られる金属酸化物を基材の表面に定着させることであり、さらに好ましくは、金属酸化物の生成に際してエステル化合物や水の生成をも伴うことである。
【0076】
本発明の方法においては、アルコールやカルボキシル基含有化合物は、単に反応溶媒としての役割を果たす成分ということには限らず、むしろそれら自体が出発原料となり得るという点で好ましい。そして、前述のように金属カルボン酸塩とアルコール、あるいは、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物という特定の組み合わせの出発原料を用いることにより、従来の熱分解法や加水分解法に比べ、より低温で容易に金属酸化物層を得ることができ、例えば、耐熱性の低い高分子フィルム等に対しても金属酸化物層を容易に形成し、金属酸化物被着体を得ることができる。
【0077】
本発明の方法においては、さらに上記混合系(例えば、上記出発原料の混合物、および/または、上記出発原料を混合するか、混合および加熱して得られる液)を上記基材に接触させ、この接触系を高温状態にすることにより、基材の表面に金属酸化物を膜として生成させ定着させるようにすることが好ましい。
具体的には、例えば、上記接触系を高温状態にすることが、上記混合系を表面に塗布してなる基材を加熱等により昇温させ高温状態にするか、上記混合系に基材を漬けておいて加熱等により昇温させ高温状態にすることにより、基材の表面に金属酸化物を膜として生成させ定着させるようにすることがより好ましい。ここでいう金属酸化物の生成・定着の方法については、前者は、いわゆる塗布法に属し、後者は、いわゆる液中析出法(浸漬法)に属する方法である。
【0078】
また、本発明の方法においては、さらに上記混合系を、加熱等により昇温させて高温状態にしながらか該高温状態にしておいて、上記基材の表面に塗布することにより、基材の表面に金属酸化物を膜として生成させ定着させるようにすることがより好ましい。ここでいう金属酸化物の生成・定着の方法は、いわゆる塗布法に属し、後者は、いわゆる液中析出法(浸漬法)に属する方法である。
以下、液中析出法について説明し、続いて塗布法についても説明する。
液中析出法とは、前述した組み合わせAまたは組み合わせBの出発原料の混合系に基材を漬けておいた状態で加熱等により昇温させ高温状態にすることにより、基材の表面に金属酸化物を析出させ成長させて、基材表面に金属酸化物を定着させ金属酸化物層を形成させる方法である。したがって、液中析出法は、金属酸化物層が、不連続層や、多孔質構造を有する連続層の生成に好適である。ただし、加熱温度や、アルコール等の種類、金属元素の種類によっても、金属酸化物層のマクロな構造(つまり、連続膜層か不連続層か、または、緻密性に優れているか多孔質であるか、など)や、結晶構造(結晶子の大きさや形状など)を制御することができる。
【0079】
塗布法としては、例えば、前記混合系を表面に塗布してなる基材を高温状態にすることにより、その基材の表面に金属酸化物を定着させ金属酸化物層を形成させる方法が挙げられ、通常、基材表面への金属酸化物層の形成過程で同時に揮発性の溶媒成分や反応により生成した水、エステル等を蒸発除去する過程を伴う。もちろん、塗布した後、金属酸化物を形成しない温度で乾燥(蒸発除去)した後、金属酸化物を形成する温度以上で加熱することによっても金属酸化物層を形成させることができる。特に、予備反応物a、bはこの方法を使っても問題ない。したがって、塗布法は、金属酸化物層として、連続層、特に、表面の平滑性が高く且つ緻密な連続層の生成に好適である。また、塗布法の特殊な形態として、反応溶媒にシリコーン油や鉱物油等の不揮発性の溶媒を用いた塗布液を基材表面に塗布し、加熱することによって、金属酸化物層を形成させた後、不揮発性溶媒を洗浄等の方法で除去するといった方法も採用し得る。
【0080】
上記液中析出法および塗布法において、前記混合系として予備反応物(予備反応物aや予備反応物b)を必須とする液を用いる場合、予備反応物は、常温で長時間、溶解状態で存在し難い場合があるため、予備反応物を含む混合系を得たあとは、例えば、速やかに該混合系に基材を漬けて高温状態にする、もしくは、速やかに該混合系を基材に塗布して高温状態にすることが好ましい。前記混合系として予備反応物(予備反応物aや予備反応物b)を必須とする液を用いる場合は、該混合系を緩やかに加温しながら予備反応物の溶液状態を保持しておき、該混合系に基材を漬けて高温状態にする、もしくは、該混合系を基材に塗布して高温状態にするのが好ましい。
【0081】
以下、液中析出法について詳細に説明する。
上記液中析出法においては、金属酸化物の生成が完全に終わるまでに、好ましくは金属酸化物の生成反応を開始させるまでに、基材を前記混合系に漬けておけばよく、出発原料の混合や高温状態にするための加熱と、基材の浸漬とのタイミングについては、特に限定はされない。具体的には、例えば、基材を、前記混合系に漬けておいてから加熱する形態、加熱したアルコール中に基材を漬けておいて加熱した金属カルボン酸塩を添加する形態、加熱した反応溶媒と金属カルボン酸塩に基材を漬けておいて加熱したアルコールを添加する形態、加熱したカルボキシル基含有化合物中に基材を漬けておいて加熱した金属アルコキシ基含有化合物を添加する形態、加熱した反応溶媒と金属アルコキシ基含有化合物に基材を漬けておいて加熱したカルボキシル基含有化合物を添加する形態、予備反応物aやbに漬けてから加熱する形態などを挙げることができる。
【0082】
なお、液中析出法においては、前記混合系は、流動性のある液状であれば、例えば、溶液状、懸濁液状、ペースト状、スラリー状(詳しくは、例えば、金属カルボン酸塩がアルコール中に懸濁したスラリー状、金属アルコキシ基含有化合物がカルボキシル基含有化合物中に懸濁したスラリー状)でもよく、特に限定はされないが、溶液状であることが好ましい。溶液状であるほうが、厚みが均一な金属酸化物層が得られやすく、さらに、複合酸化物や固溶体酸化物を得ようとする場合には、偏析のない金属組成の均一な金属酸化物層が得られやすいため好ましい。該混合系は、必要に応じて、反応溶媒をも混合することによって、上記液状としてもよい。
【0083】
液中析出法を、組み合わせAの混合系を用いて行う場合であって、該混合系を均一透明な塗布液となるようにする際は、用いるアルコールとして、前述した各種アルコールのなかでも、炭素数1〜3の1級アルコールまたは多価アルコールを含有させることが好ましい。これにより、均一透明な塗布液としての該混合系がより低温で得られ、また、より低い加熱温度で金属酸化物層を形成することができるため、経済的に優れ、耐熱性の低い高分子フィルムにも容易に金属酸化物層を形成することができる等といった点で有効である。上記炭素数1〜3の1級アルコールまたは多価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオールなどを挙げることができ、なかでもメタノールが好ましい。この場合、該混合系を得る際に出発原料として用いるアルコール全量中、上記炭素数1〜3の1級アルコールを、20重量%以上含有させることが好ましく、より好ましくは50重量%以上である。上記炭素数1〜3の1級アルコールが、20重量%未満の場合は、前述した効果が十分に得られないおそれがある。また、多価アルコールを用いる場合は、上記出発原料として用いるアルコール全量中、0.1〜20重量%でも有効である。
【0084】
液中析出法では、前述したように、基材を前記混合系に漬けておいて高温状態にすることで、基材と前記混合系との接触系を高温状態となるようにするが、上記接触系を高温状態にするとは、上記接触系の温度を常温よりも高い温度であって金属酸化物が生成し得る温度、またはそれ以上の温度に昇温することである。上記高温状態の温度(金属酸化物が生成し得る温度)は、得ようとする金属酸化物の種類等によって異なるが、通常、50〜300℃にすることが好ましく、結晶性の金属酸化物膜を得るためには、100〜300℃がより好ましく、100〜200℃の温度範囲がさらにより好ましい。液中析出法において上記接触系を高温状態にする際は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力下で行ってもよく、特に限定はされないが、加圧下で出発原料を加熱等により高温状態にすることがより好ましい。また、前記混合系の出発原料となるアルコールやカルボキシル基含有化合物や反応溶媒等の沸点より高い温度で反応させる場合は、耐圧反応装置を用いて行えばよい。通常は、常圧または加圧下で行われる。
【0085】
金属酸化物を経済的な時間で生成させるための温度は、金属カルボン酸塩の種類やアルコールの種類、金属アルコキシ基含有化合物の種類やカルボキシル基含有化合物の種類、または、金属酸化物前駆体の種類により、適宜設定すればよい。
金属酸化物の構造、結晶子や粒状金属酸化物の大きさおよび形状などに関して所望の金属酸化物層を得ようとした場合、金属カルボン酸塩の種類やアルコールの種類、金属アルコキシ基含有化合物の種類やカルボキシル基含有化合物の種類、または、金属酸化物前駆体の種類によって、適宜適切な反応温度を設定することが好ましい。
【0086】
液中析出法においては、通常、金属酸化物を製造する場合に用いられている装置を好ましく使用することができるが、基材を固定する機能を備えたものがより好ましい。例えば、基板(基材)ホルダーを設置してなる回分式反応装置を使用することができる。撹拌の有無や、撹拌条件は特に限定されず、適宜選択すればよい。
液中析出法において、基材と前記混合系との接触系を高温状態にする方法としては、基材を漬けている状態で前記混合系全体を加熱する方法以外に、基材を前記混合系に漬けている状態で基材のみを選択的に加熱する方法などが好ましく挙げられる。なかでも後者の方法は、基材表面での反応が選択的に起こりやすく、基材表面に密着性の高い金属酸化物層が形成されやすいため好ましい。
【0087】
液中析出法において、上記加熱を行う方法としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、ヒーターによる加熱、温風や熱風による加熱、マイクロウェーブによる加熱、電子線による加熱、紫外線照射による加熱などを好ましく挙げることができる。
以下、塗布法について詳細に説明する。
塗布法においては、具体的には、例えば、▲1▼前記混合系を基材の表面に塗布しておいて該基材を加熱することにより、基材と前記混合系との接触系を高温状態にする方法、▲2▼前記混合系を加熱して高温状態にしながら基材に塗布する方法、▲3▼前記混合系を加熱して高温状態にしておいて基材に塗布する方法、▲4▼基材を高温状態にしておいて、前記混合系を塗布する方法、などを好ましく挙げることができる。なかでも、結晶性の高い金属酸化物膜を得るためには、上記▲1▼のように基材表面に前記混合系を塗布してなるものを高温状態にすることが好ましい。
【0088】
上記▲2▼の方法の具体例としては、例えば、混合系を、基材の塗布部分に直結する加熱されたパイプに通して高温状態にし、塗布する方法や、混合系を、ロールコーターのパン中で加熱して高温状態にし、該高温状態のまま基材に塗布する方法、などが挙げられるが、特にこれらに限定はされない。
上記▲3▼の方法の具体例としては、例えば、混合系を、(耐圧)回分式反応装置などを用いて加熱して高温状態にしておき、基材に塗布する方法、などが挙げられるが、特に限定されるわけではない。
上記▲3▼の方法の具体例としては、例えば、混合系を、(耐圧)回分式反応装置などを用いて加熱して高温状態にしておき、基材に塗布する方法、などが挙げられるが、特に限定されるわけではない。
【0089】
また、上記▲2▼、▲3▼および▲4▼の方法では、塗布した後、上記▲1▼の方法を組み合わせることが好ましい。
なお、塗布法においても、上述した液中析出法と同様に、塗布液として用いる前記混合系は、流動性のある液状であれば、例えば、溶液状、懸濁液状、ペースト状、スラリー状(詳しくは、例えば、金属カルボン酸塩がアルコール中に懸濁したスラリー状、金属アルコキシ基含有化合物がカルボキシル基含有化合物中に懸濁したスラリー状)でもよく、特に限定はされないが、溶液状であることが好ましい。溶液状であるほうが、厚みが均一な金属酸化物膜が得られやすく、さらに、複合酸化物や固溶体酸化物を得ようとする場合には、偏析のない金属組成の均一な金属酸化物膜が得られやすいため好ましい。該混合系は、上記本発明の製造方法と同様に、必要に応じて、反応溶媒をも混合することによって、上記液状としてもよい。
【0090】
塗布法としては、上記▲1▼〜▲4▼などの方法を取り得るが、この▲1▼〜▲4▼の方法において、前記接触系または混合系を高温状態にするとは、前記接触系または混合系の温度を常温よりも高い温度であって金属酸化物が生成し得る温度、またはそれ以上の温度に昇温することである。上記高温状態の温度(金属酸化物が生成し得る温度)は、得ようとする金属酸化物の種類等によって異なるが、通常は液中析出法と同様に、50〜300℃にすることが好ましく、結晶性の金属酸化物膜を得るためには、100〜300℃がより好ましく、100〜200℃の温度範囲がさらにより好ましい。塗布法において前記接触系または混合系を高温状態にする際は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力下で行ってもよく、特に限定はされないが、加圧下で出発原料を加熱等により高温状態にすることがより好ましい。また、前記混合系の出発原料となるアルコールやカルボキシル基含有化合物や反応溶媒等の沸点より高い温度で反応させる場合は、耐圧反応装置を用いて行えばよい。通常は、常圧または加圧下で行われる。
【0091】
さらに、塗布法における塗布液としては、予備反応物(予備反応物aや予備反応物b)を含むものを用いることがより好ましい。特に、開放系で塗布および加熱をする場合であって、塗布液が、金属カルボン酸塩とアルコールとが単に混合されてなる混合系であるときは、高温状態にするための昇温の際、反応が十分に進む前にアルコールが蒸散してしまい、金属酸化物膜中の金属酸化物含有率が低下したり、結晶性の低いものしか得られない場合があるからである。
塗布法を、前記混合系を用いて行う場合、常圧における沸点が成膜温度(上記▲1▼〜▲4▼の方法でいう高温状態の温度)よりも高い溶媒成分を、前記混合系に含有させておくことが好ましい。これにより、透明性に優れた金属酸化物膜や、酸化物含有量高い金属酸化物膜が容易に得られる。上記溶媒成分としては、例えば、沸点が100℃以上の、アルコールおよびその誘導体(多価アルコールおよびその誘導体も含む)、ケトン、エステル、カルボン酸、カルボン酸無水物等を挙げることができるが、なかでもアルコール類(アルコールおよびその誘導体)が、前記混合系中での他の成分(特に予備反応物)との相溶性が高いため、好ましい。この場合、上記溶媒成分の含有量は、前記混合系中の金属に対するモル比で、等モル以上であることが好ましく、より好ましくは2倍モル以上である。上記溶媒成分の含有量が、等モル未満であると、上述した効果が十分に得られないおそれがある。
【0092】
同様に、塗布法を、前記混合系を用いて行う場合、水と共沸し得る非水成分を、前記混合系に含有させておくことが好ましい。これにより、緻密な金属酸化物膜を、より低温で容易に形成することができ、透明導電膜などの電子伝導性膜や、イオン伝導性膜、熱伝導性膜などの各種機能性膜に関して当該機能により優れたものを経済的に得ることができるため有効である。上記非水成分としては、水と共沸する有機溶媒であればいずれも使用できるが、例えば、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、フルアリルアルコール、t−ブタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができ、共沸温度における共沸組成が上記非水成分濃度が60重量%以下である、水と共存し得る非水成分を用いることが好ましい。この場合、上記非水成分の含有量は、前記混合系中の金属に対するモル比で、等モル以上であること好ましく、より好ましくは2倍モル以上、さらに好ましくは5倍以上である。上記非水成分が、等モル未満であると、緻密でない部分を有する金属酸化物膜が形成されるおそれがある。
【0093】
塗布法を、組み合わせAの混合系を用いて行う場合であって、該混合系を均一透明な塗布液として調製する際は、上述した液中析出法と同様に、出発原料として用いるアルコールとして、前述した各種アルコールのなかでも、炭素数1〜3のアルコールを含有させることが好ましい。こうすることによって、均一透明な塗布液として該混合系をより低温で調製することができ、また、より低い加熱温度で金属酸化物膜を形成することができるため、経済的に優れ、耐熱性の低い高分子フィルムにも容易に金属酸化物膜を形成することができる等といった点で有効である。上記炭素数1〜3のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノールなどを挙げることができ、なかでもメタノールが好ましい。この場合、該混合系に出発原料として用いるアルコール全量中、上記炭素数1〜3のアルコールを、20重量%以上含有させることが好ましく、より好ましくは50重量%以上である。上記炭素数1〜3のアルコールが、20重量%未満の場合は、前述した効果が十分に得られないおそれがある。
【0094】
塗布法においては、基材への塗布の方法としては、具体的には、例えば、前記混合系を、基材表面にバーコーター法、ロールコーター法、ナイフコーター法、ダイコーター法、スピンコート法などの従来公知の成膜方法を用いた方法を好ましく挙げることができるが、特にこれらに限定されるわけではなく、加熱しておいてもよい前記混合系に基材の一部または全部を漬けた後取り出して得られた塗布物を加熱する、いわゆるディッピング法を用いることもできる。
塗布法において、塗布後に高温状態にする(接触系を高温状態にする)場合、その方法は、特に限定されるわけではないが、具体的には、ヒーターによる加熱、温風や熱風による加熱、熱線(特に、近赤外線)により加熱、マイクロウェーブによる加熱、電子線による加熱、紫外線照射(特に、波長0.3〜0.4μmの紫外線(例えば、高水銀圧ランプにより照射される紫外線))による加熱などを好ましく挙げることができる。また、金属酸化物の層形成に有効な点で、波長0.3μm以下(特に0.2〜0.3μm)の紫外線と波長0.2μm以下の紫外線とを同時に照射することによる加熱も好ましく採用でき、例えば、低水銀ランプやエキシマレーザーを用いればよい。上記加熱により、金属酸化物膜が形成されるとともに、反応溶媒等を揮発させ除去させることができる。また、上記加熱時の雰囲気としては、具体的には、例えば、空気雰囲気、窒素やヘリウムなどの不活性ガス雰囲気、水素などの還元雰囲気など、特に限定されるわけではないが、通常、空気または窒素雰囲気で行うことが好ましい。上記加熱は、基材のみを加熱しても、塗布面のみを加熱しても、基材および塗布面の両方を加熱してもよく、特に限定はされない。
【0095】
塗布法では、高温状態の温度は、前述のように、上記液中析出法と同様であることが好ましいが、前記▲2▼および▲3▼の方法であって、前記▲1▼の方法をさらに組み合わせる場合は、この▲2▼および▲3▼の方法でいう高温状態の温度は、予備反応物aや予備反応物bを生成させる程度の温度が好ましく、具体的には、50℃以上かつ塗布後に高温状態とする際の温度以下であることが好ましい。
塗布法においては、高温状態にする際の加熱等による昇温時間は、特に限定されるわけではなく、具体的には、10秒〜1時間が好ましいが、結晶性を高めたり基材との密着性を高めるなどといった目的で、上記高温状態の温度またはこれとは異なる温度で、さらに熟成を行ってもよい。熟成の温度および時間は、特に限定はなく、適宜選択すればよい。また、熟成の方法は、加熱以外の方法でもよい。
【0096】
本発明の方法において、金属酸化物被着体の金属酸化物層を形成する金属酸化物が、固溶体酸化物や複合酸化物となるようにする場合は、以下のような方法を採用することが好ましい。
すなわち、固溶体酸化物となるようにする場合は、例えば、
▲1▼前記混合系に、ドーパントとなる金属の化合物を添加しておき、液中析出法や塗布法に用いる液とする方法、
▲2▼前記混合系を調製する際に、この調製をドーパントとなる金属の化合物の存在下で行い、液中析出法や塗布法に用いる液とする方法、
▲3▼前記混合系を調製し、別途、この混合系と同様の調製方法ではあるが出発原料として用いた金属カルボン酸塩および金属アルコキシ基含有化合物に代えてドーパントとなる金属の金属カルボン酸塩や金属アルコキシ基含有化合物を用いて得られる混合系も調製した上で、出発原料の対応する混合系どうし(例えば、金属酸化物Aを得るための混合系どうし)を混合して、液中析出法や塗布法に用いる液とする方法、
などが採用できる。
【0097】
なお、上記のドーパントとなる金属の化合物の種類は、特に限定されず、金属の無機塩、金属カルボン酸塩および金属アルコキシ基含有化合物などを用いることができるが、金属カルボン酸塩および金属アルコキシ基含有化合物が好ましく、金属カルボン酸塩の中では、金属酢酸塩が、金属アルコキシ基含有化合物の中では、アルコキシ基以外に有機基等を有しない金属アルコキシドが、より好ましい。
前記組み合わせAの混合系を用いて固溶体酸化物を生成させる場合は、ドーパントとなる金属の化合物としては、金属カルボン酸塩または金属アルコキシド類が好ましく、前記組み合わせBの混合系を用いて固溶体酸化物を生成させる場合は、ドーパントとなる金属の化合物としては、金属アルコキシド類が好ましい。
【0098】
次に、複合酸化物となるようにする場合については、例えば、▲1▼所定の金属の金属カルボン酸塩や金属アルコキシ基含有化合物を用いて得られる前記混合系を調製し、別途、上記所定の金属とは異なる金属の金属カルボン酸塩や金属アルコキシ基含有化合物を用いて得られる混合系を調製した上で、出発原料の対応する混合系どうし(例えば、金属酸化物Aを得るための混合系どうし)を混合して、液中析出法や塗布法に用いる液とする方法、▲2▼前記混合系を調製するに際し、出発原料とする金属カルボン酸塩や金属アルコキシ基含有化合物として含有金属の異なる2種以上を用いるようにし、液中析出法や塗布法に用いる液とする方法(いわゆる同時調製法)、▲3▼所定の金属の金属カルボン酸塩を用いて得られる、前記組み合わせAの混合系の調製過程または調製後の任意の段階に、上記所定の金属とは異なる金属の金属アルコキシ基含有化合物を添加し、液中析出法や塗布法に用いる液とする方法、などが採用できる。
【0099】
本発明の方法において用いる基材としては、上記本発明の金属酸化物被着体についての説明で記載したものと同様のものが好ましく挙げられる。よって、前述したように、金属酸化物層の基材への密着性に優れるという点において、予め特定の化合物等により表面改質してなる有機物の基材(高分子基材)を用いることがより好ましい。
本発明の方法においては、一旦得られた金属酸化物被着体の金属酸化物層が有機基を有する場合、さらに以下のような処理をすることにより、該金属酸化物層が有する有機基を除去する処理を行ってもよい。すなわち、上記有機基を除去するための処理とは、具体的には、気相中(空気中などの酸化性雰囲気下、還元性雰囲気下、不活性雰囲気下など)での加熱により有機基を分解する処理、液相中での加熱により有機基を分解する処理、酸性または塩基性の水溶液を用いて化学的方法により分解する処理、有機基がカルボキシル基の場合はアルコール存在下での加熱処理、有機基がアルコキシ基の場合は酢酸存在下での加熱処理、有機鎖の切断に有効な波長300nm以下(特に、波長200nm以下)の紫外線による高エネルギー紫外線照射処理、コロナ放電による処理、プラズマ処理などを挙げることができるが、特に限定されるわけではない。上記高エネルギー紫外線照射処理を施す場合は、高圧水銀ランプよりも短波長(高エネルギー)の紫外線を多く含む低圧水銀ランプを用いることが好ましい。
【0100】
本発明の金属酸化物被着体、および、本発明の製造方法により得られる金属酸化物被着体は、特に限定はされないが、具体的には、前述した金属酸化物の各種優れた機能と同様の機能を有するものであり、例えば、透明導電、帯電防止、面状発熱体、熱伝導、磁性体、電波吸収、電磁波遮断、希薄磁性半導体、紫外線吸収、熱線反射、高屈折率、低屈折率、反射防止、発光・蛍光体、電子線放出素子、(光)触媒、太陽電池用半導体、電極、光電変換素子、熱電変換素子、表面弾性波素子、(強)誘電体、圧電体、バリスター、エレクトロルミネッセンス等の機能を有する膜をフィルム、ガラス、セラミックス、金属表面に形成してなる機能性膜として、窓材(自動車用、建築用等)、農業用資材、メモリー素子、光源、表示デバイス、情報通信・伝送の各種デバイス、太陽電池などの各種の用途分野で有用な材料に好適に用いることができる。
【0101】
【実施例】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と記すことがある。また、「重量%」を「wt%」と記すことがある。また、金属酸化物の「層」を、金属酸化物の「膜」と称することがある。
まず、下記実施例・比較例において形成された金属酸化物層(金属酸化物膜)の、各種分析・測定方法および物性評価について以下に詳しく説明する。
(金属酸化物層の結晶性評価)
得られた金属酸化物層を有する基板等(金属酸化物被着体)について、薄膜X線回折測定法による測定をし、得られた回折パターンから金属酸化物層を構成する金属酸化物の結晶性について評価した。
【0102】
「測定条件」
測定装置:RAD−rX(薄膜測定用アタッチメント使用)(リガク社製)
出力:55kV、180mA
X線入射角:通常は0.5°に固定(必要に応じて0.2〜0.5°の範囲内で適宜設定して固定)
2θ:3〜100°
走査速度:2θについて2°/min
(金属酸化物層の組成分析)
得られた金属酸化物層を有する基板等(金属酸化物被着体)に関し、その金属酸化物層の組成、すなわち含有金属元素の種類や含有比、金属酸化物含有量、有機基の有無やその同定や定量について、分析した。具体的には、ESCA測定(測定装置:JPS−9000型X線電子分光装置(日本電子株式会社製))、および、GC−MS分析装置に直結した昇温脱離分析、イオンクロマト分析、元素分析、TG−DTA分析を行った。なお、金属酸化物層を有する基板等のままでは上記各種測定・分析が十分に行うことができない場合などは、必要に応じて、金属酸化物層を剥がすか、または、酸性あるいは塩基性水溶液に膜を溶解させて、測定・分析した。
【0103】
(金属酸化物層の厚み)
得られた金属酸化物層を有する基板等(金属酸化物被着体)をガラスカッターで切断した後、その切断面をSEMにより観察し、SEM像から金属酸化物層の厚みを測定した。
(金属酸化物層の透明性)
得られた金属酸化物層を有する基板等(金属酸化物被着体)と、金属酸化物層を形成する前の基板等のみとを、濁度計(NDH−1001 DP(日本電色工業社製))で測定し、それぞれのヘイズ値を求めた。前者のヘイズ値から後者のヘイズ値を差し引いた値をもって、以下の基準により金属酸化物層の透明性を評価した。
【0104】
ランクA:ヘイズ≦5%
ランクB:ヘイズ>5%
−実施例1−
撹拌機、添加口、温度計、留出ガス出口、窒素ガス導入口を備えた、外部より加熱し得る耐圧ガラス製反応器(容量1リットル)、および、添加口にボールバルブを介して直結する添加槽、留出ガス出口にニードルバルブを介して直結する冷却器および留出液トラップを備えた耐圧回分式反応装置(A)を用意した。
耐圧回分式反応装置(A)内には、基板ホルダーが設置されている。
【0105】
基板ホルダーにc面((0001)面)が研磨されたサファイア基板を基板ホルダーに設置した。
サファイア基板としては、厚み0.5mm、直径50mmの丸型基板を用いた。
反応器内に、n−ブタノール74部、酢酸ブチル6部、酢酸亜鉛無水物9.2部(n−BuOH/Zn=50/1(モル))からなる混合物(1−1)を仕込み、反応装置内を窒素でパージした。混合物(1−1)を撹拌しながら、常温(18℃)より、34分かけて170℃に昇温した。昇温中、混合物(1−1)は140℃で透明化し、そのあと濁った。
【0106】
170℃昇温後(反応器内の気相部圧はゲージ圧で0.4MPa)、170℃±2℃で保持しながら、留出ガス出口に直結するニードルバルブの開度を調節しながら、混合物(1−1)の揮発成分を一部留去した。留去した成分は、冷却器で凝縮され留出液トラップに保持された。保持された留出液は、含水率4.5wt%のn−ブタノールを主成分とする液であり、留出液量は20部であった。また、反応器内の残存液には、酢酸ブチルが20wt%含まれていた。
冷却後、反応器内の基板ホルダーより、サファイア基板を取り出し、n−ブタノールで流し洗浄し、アセトンで流し洗浄した後、真空乾燥器で50℃で1時間真空乾燥して、基板(1)を得た。
【0107】
得られた基板(1)を解析した結果、結晶性のZnOの膜がサファイア基板上に形成されていることが確認され、この膜の厚みは0.1μm、透明性はランクAであった。また、得られた膜では、ZnO結晶のZn原子に対して4モル%のアセトキシ基が結合していた。
−実施例2−
実施例1と同様の耐圧回分式反応装置(A)の基板ホルダーに、研磨処理された(100)面を基材面とするMgO基板を基板ホルダーに設置した。
MgO基板としては、厚み0.5mm、15mm×15mmの角型基板を用いた。
【0108】
反応器内に、メタノール96部、酢酸亜鉛無水物5.505部(MeOH/Zn=100/1(モル))からなる混合物(1−2)を仕込み、反応装置内を窒素でパージした。混合物(1−2)を撹拌しながら、常温(16℃)より、31分かけて150℃に昇温した。昇温中、混合物(1−2)は120℃で透明化し、128℃で濁り出した。
150℃昇温後、150℃±2℃で1時間保持した後、冷却した。
冷却後、反応器内の基板ホルダーより、MgO基板を取り出し、メタノールで洗浄した後、真空乾燥器で50℃で1時間真空乾燥して、基板(2)を得た。
【0109】
得られた基板(2)を解析した結果、結晶性のZnOの膜がMgO基板上に形成されていることが確認され、この膜の厚みは0.3μm、透明性はランクAであった。また、得られた膜では、ZnO結晶のZn原子に対して0.7モル%のアセトキシ基が結合していた。さらに、得られた膜の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、柱状結晶が生成していることが確認された。
−実施例3−
実施例1と同様の耐圧回分式反応装置(A)の基板ホルダーに、ITO膜(スズドープ酸化インジウム膜:表面抵抗200Ω)が形成されたガラス基板(厚み1mm、20mm×20mm角型基板)を設置した。
【0110】
耐圧回分式反応装置(A)の反応器内に、PGMAc(ブロピレングリコールメチルエーテルアセテート)90部、テトラ(メトキシイソプロポキシ)チタン2.1部、酢酸2部からなる混合物(3)(黄褐色の濁った液)を仕込み、系内を窒素でパージした。
混合物(1−3)を撹拌しながら、常温(26℃)より、20分かけて200℃に昇温した。昇温中、混合物(1−3)は100℃付近で透明化し、また色相も黄褐色から赤褐色に変化した。170℃より液は濁り出し、190℃でほぼ不透明は白色液に変化した。
【0111】
200℃に昇温後、冷却した。
冷却後、反応器内の基板ホルダーよりガラス基板を取り出し、PGMAc、アセトンで順次流し洗浄した後、真空乾燥器で50℃で1時間真空乾燥して、基板(3)を得た。
得られた基板(3)を解析した結果、結晶性のアナタース型酸化チタンの膜がガラス基板上に形成されていることが確認され、この膜の厚みは0.1μm、透明性はランクAであった。また、得られた膜では、アナタース型酸化チタン結晶のTi原子に対して15モル%のメトキシイソプロポキシ基が結合していた。
【0112】
また、ガラス基板を取り出した後の反応器内の液の分析を行った結果、この液中には、PGMAc以外にメトキシイソプロポキシアセテートが2.8%含有されていることが確認された。
−実施例4−
前駆体溶液調製装置(B−1)と金属酸化物化装置(B−4)とからなる、反応装置(B)を用意した。
前駆体溶液調製装置(B−1)は、金属カルボン酸塩とアルコールまたは金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とから、前駆体溶液を調製する「反応器」(B−2)と、基板上への「液の供給・塗布部」(B−3)とを備えている。詳しくは、前駆体溶液調製装置(B−1)の本体は、撹拌機、添加口、温度計、窒素ガス入口、リーク口を備えた外部より加熱できる耐圧ガラス製反応器(B−2)と、その反応器の底部よりニードルバルブ、ガラス管、扇状部からなる「液の塗布・供給部」(B−3)とからなる。
【0113】
前駆体溶液調製装置(B−1)の本体における添加口は、ボールバルブを介して添加槽に直結している。
「液の供給・塗布部」(B−3)は、「金属酸化物化装置」(B−4)の基板面に扇状部により接触しており、前駆体溶液が基板面に流されるようエ夫されている。扇状部の先端(基板面への接触部である先端部分)は、フレキシブルな耐熱ゴム製となっている。また、「液の供給・塗布部」(B−3)は、所定温度で加熱可能なようになっている。
「金属酸化物化装置」(B−4)は、基板を保持し、且つ、「液の供給・塗布部」(B−3)から「加熱炉」に所定速度で移動できるよう、移動式の架台と加熱炉ならびに加熱炉に直結する冷却部よりなる。加熱炉は、加熱により蒸発した溶媒成分等のガス成分が加熱炉内から放出されるよう、窒素ガスが一定速度で流れている。加熱炉内の温度は、常温より300℃まで可変であり、その温度はサーミスタにより検知できるようになっている。
【0114】
また、基板は、該基板と架台の間に、面上ヒーターを設置することによって、前駆体溶液を塗布するに先立ち、予備加熱しておくことが可能である。
冷却部は、加熱炉に直結しており、常温の窒素ガスを流すことによって、冷却する装置である。
「液の供給・塗布部」(B−3)は、120℃に加熱保持した。
また、「金属酸化物化装置」(B−4)の加熱炉は、180℃に設定し、加熱炉内に窒素を流しながら、加熱保持した。冷却部には窒素ガスを50ml/minで流しておいた。
【0115】
また、ガラス基板を、面上ヒーターにて予め120℃に加熱しておいた。
2−ブトキシエタノール100部、酢酸亜鉛無水18.35部、酢酸インジウム無水物0.58部を混合し、ホモミキサーで分散処理して、混合スラリー(2−1)を調製した。
前駆体溶液調製装置の反応器(B−2)に、2−ブトキシエタノール847部、添加槽に調製した混合スラリー(2−1)118.93部を仕込み、各系内を窒素パージした。
反応器(B−2)内の2−ブトキシエタノールを加温昇温し、160℃に達した時点で添加槽内の混合スラリー(2−1)全量を、窒素圧で圧入した。その結果、150℃で均一透明化した前駆体溶液(2−1)が得られた。速やかに得られた前駆体溶液(2−1)を、「液の供給・塗布部」(B−3)のニードルバルブを開けることにより、「液の供給・塗布部」(B−3)を介して、ガラス基板上に塗布し、その後加熱炉内に移し、加熱炉内で10分間加熱保持した後、冷却部に移して冷却することで、基板(4)を得た。
【0116】
得られた基板(4)を解析した結果、薄膜XRDでの回折ピークがZnO(Zincite)に帰属されるものであり、結晶性のZnOの膜がガラス基板上に形成されていることが確認された。この膜の厚みは0.3μm、透明性はランクAであった。また、この膜は、Znに対しInを2原子%含有するものであった。得られた膜では、ZnO結晶のZn原子に対して5モル%のアセトキシ基が結合していた。
−実施例5〜24−
実施例4において、原料の種類、前駆体溶液調製条件、基板、加熱炉温度などを表1および表2に示すようにした以外は、実施例4と同様の操作により、各種酸化物膜が被着した基板(5)〜(24)を得た。
【0117】
実施例5〜9で得られた基板(5)〜(9)をそれぞれ解析したところ、いずれも薄膜XRDでの回折ピークがZnO(Zincite)に帰属されるものであり、結晶性のZnOの膜がガラス基板上に形成されていることが確認された。また、実施例14および15で得られた基板(14)および基板(15)を解析したところ、基板(14)において形成された膜はX線回折学的にアモルファスであり、基板(15)において形成された膜はX線回折学的に結晶性のIn23からなることが確認された。
なお、表1および表2中の「基板」欄において、
フィルムA:ポリエチレンナフタレートフィルム(コロナ処理済み)、
フィルムB:シリカ蒸着ポリエーテルサルフォンフィルム、
フィルムC:アルミナ蒸着ポリカーボネートフィルム、
フィルムD:ポリイミドフィルム、である。
【0118】
実施例5〜24で得られた基板(5)〜(24)についての測定・分析結果を、実施例4で得られた基板(4)の測定・分析結果と合わせて、表3に示す。
−比較例1−
実施例1と同様の耐圧回分式反応装置(A)を用意した。
2−ブトキシエタノール100部、酢酸亜鉛無水物100部、酢酸インジウム無水物3.188部を混合し、ホモミキサーで分散処理して、混合スラリー(C1)を調製し、添加槽に全量を仕込んだ。
反応器内に2−ブトキシエタノール500部を仕込み、反応装置内を窒素でパージした後、撹拌しながら170℃に昇温した。
【0119】
170℃に達した時点で、混合スラリー(C1)を、添加槽より圧入し、一旦、温度が低下したが、170℃に戻ってから5時間加熱した。冷却後、反応液を得た。
冷却後、反応器内の反応液を、ガラス基板に塗布し、180℃で10分間加熱することによって、基板(c1)を得た。
得られた基板(c1)を解析した結果、膜は、ZnOからなり、蛍光X線分析により元素分析した結果、InがZnに対して2原子%含まれるものであった。
実施例4で得られた基板(4)と、基板(c1)とを比較した結果、実施例4で得られた基板(4)は、紙でこすっても剥がれは認められず、基板(c1)は、手でこすっても容易に剥がれるほど密着性の低いものであった。
【0120】
実施例4で得られた基板(4)は基板(c1)に比べて、その表面抵抗値(Ω)が103〜105オーダー低いものであった。
−比較例2−
実施例1において、n−ブタノール74部の代わりに酢酸ブチル74部を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、基板(c2)を得た。
得られた基板(c2)を解析した結果、薄膜XRDでのZnO結晶に帰属される明確な回折ピークは観測されなかった。
また、留出液中の水分濃度は0.1%以下であり、留出液および反応器内の残存液中の合計水分量は0.1部以下であった。
【0121】
−比較例3−
実施例3において、酢酸を用いなかった以外は、実施例3と同様の操作により基板(c3)を得た。
得られた基板(c3)を解析した結果、薄膜XRDでの酸化チタン結晶に帰属される明確な回折ピークは観測されなかった。
また、ガラス基板を取り出した後の反応器内の液の分析を行った結果、この液中には、メトキシイソプロポキシアセテートは含有されていないことが確認された。
【0122】
【表1】
Figure 0004287124
【0123】
【表2】
Figure 0004287124
【0124】
【表3】
Figure 0004287124
【0125】
−実施例25−
撹拌機、添加口、温度計、窒素ガス導入口・出口を備えた、外部より加熱し得る耐圧ガラス製反応器(容量10リットル)を用意した。
この反応器に、酢酸亜鉛無水物15部およびメタノール250部からなる混合物を仕込み、反応装置内を窒素パージした後、混合物を常温(19℃)より加圧下で90℃に昇温し、冷却することにより、均一透明溶液(a)を得た。
均一透明溶液(a)をガラス基板にバーコーターで塗布し、塗布したガラス基板を150℃に加熱された乾燥機中で30分間加熱し、その後冷却して、基板(25)を得た。
【0126】
得られた基板(25)を解析した結果、薄膜XRDでのZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、結晶性のZnOがガラス基板上に生成していることが確認された。ところが、この膜の厚みは0.2μm、透明性はランクBであり、機械的強度の低い膜であった。
−実施例26−
実施例25において、酢酸亜鉛15部およびメタノール250部からなる混合物の代わりに酢酸亜鉛15部、メタノール200部およびベンジルアルコール50部からなる混合物を用い、常温(19℃)より90℃に昇温するところを加圧下で110℃に昇温するようにした以外は、実施例25と同様の操作により均一透明溶液(b)を得た。
【0127】
均一透明溶液(b)をガラス基板にバーコーターで塗布し、塗布したガラス基板を150℃に加熱された乾燥機中で30分間加熱し、その後冷却して、基板(26)を得た。
得られた基板(26)を解析した結果、薄膜XRDでの回折ピークがZnO(Zincite)に帰属されるもののみであり、結晶性のZnOの膜がガラス基板上に形成されていることが確認された。この膜の厚みは0.1μm、透明性はランクAであった。この膜では、ZnO結晶のZn原子に対して8モル%のアセトキシ基が結合していた。また、この膜の表面を爪でこすっても、目視で認められるような傷が生じず、基板(25)において形成された膜に比べて強靭な膜であった。
【0128】
得られた基板(26)は、分光透過率曲線を測定した結果、紫外線を吸収する膜であることが確認された。
得られた基板(26)において形成された膜の分光透過率曲線を図1に示した。
−実施例27−
実施例26において、ベンジルアルコール50部の代わりに、水との共沸溶媒としてのジエチレングリコールモノメチルエーテル20部を用いた以外は、実施例26と同様の操作により均一透明溶液(c)を得た。
【0129】
均一透明溶液(c)を、ガラス基板にバーコーターで、塗布し、塗布したガラス板を120℃に加熱された乾燥機中で30分間加熱して、基板(27)を得た。
得られた基板(27)を解析した結果、薄膜XRDでの回折ピークがZnO(Zincite)に帰属されるもののみであり、結晶性のZnOの膜がガラス基板上に形成されていることが確認された。この膜の厚みは0.1μm、透明性はランクAであった。この膜では、ZnO結晶のZn原子に対して6モル%のアセトキシ基が結合していた。また、この膜の表面を爪でこすっても、目視で認められるような傷が生じず、基板(25)において形成された膜に比べて強靭な膜であった。
【0130】
得られた基板(27)は、分光透過率曲線を測定した結果、紫外線を吸収する膜であることが確認された。
−実施例28−
実施例27において調製した均一透明溶液(c)を、ガラス基板に塗布した後、常温で10分乾燥し、その後、塗布面側から高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射して、基板(28)を得た。
得られた基板(28)を解析した結果、薄膜XRDでの回折ピークがZnO(Zincite)に帰属されるもののみであり、結晶性のZnOの膜がガラス基板上に形成されていることが確認された。この膜の厚みは0.1μm、透明性はランクAであった。
【0131】
−実施例29−
実施例28において、高圧水銀ランプを用いた後、低圧水銀ランプ(放射光として184.9nm、253.7nmの短波長の紫外線を主に放射することのできる低圧水銀ランプ)を照射した以外は、実施例28同様と同様の操作により基板(29)を得た。
得られた基板(29)を解析した結果、薄膜XRDでの回折ピークがZnO(Zincite)に帰属されるもののみであり、結晶性のZnOの膜がガラス基板上に形成されていることが確認された。この膜の厚みは0.1μmであった。また、この膜の表面を爪でこすっても、目視で認められるような傷が生じず、強靭な膜であった。
【0132】
−実施例30−
実施例25において、酢酸亜鉛15部およびメタノール250部からなる混合物に、さらに水との共沸溶媒としてのn−ブタノール20部を添加した以外は、実施例25と同様の操作により均一透明溶液(d)を得た。
均一透明溶液(d)をガラス基板にバーコーターで塗布し、塗布したガラス基板を150℃に加熱された乾燥機中で30分間加熱し、その後冷却して、基板(30)を得た。
得られた基板(30)を解析した結果、薄膜XRDでの回折ピークがZnO(Zincite)に帰属されるもののみであり、結晶性のZnOの膜がガラス基板上に形成されていることが確認された。この膜の厚みは0.1μm、透明性はランクAであった。この膜では、ZnO結晶のZn原子に対して4モル%のアセトキシ基が結合していた。また、この膜の表面を爪でこすっても、目視で認められるような傷が生じず、基板(25)において形成された膜に比べて強靭な膜であった。
【0133】
−実施例31−
実施例26で調製した均一透明溶液(b)を、ポリカーボネート(PC)基板にバーコーターで塗布し、塗布したPC基板を140℃に加熱された乾燥機中で30分間加熱し、その後冷却して、基板(31)を得た。
得られた基板(31)を解析した結果、薄膜XRDでの回折ピークがZnO(Zincite)に帰属されるもののみであり、結晶性のZnOの膜がPC基板上に形成されていることが確認された。この膜の厚みは0.1μm、透明性はランクAであった。ところが、この膜は、PC基板への密着性が低いものであった。
【0134】
−実施例32−
実施例31において、PC基板として、予めその表面を処理しておいたものを用いた以外は、実施例30と同様の操作により、基板(32)を得た。
上記PC基板の表面処理では、具体的には、まず、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン10部およびテトラメトキシシラン5部を、酢酸0.5部、水3部およびエタノール700部からなる溶液に溶解し、50℃で1時間加熱した後、冷却することにより表面処理溶液を得、この表面処理溶液をPC板に塗布して1晩常温で乾燥した後、100℃で1時間加熱することにより、膜厚0.05μmの3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとテトラメトキシシランの共加水分解縮合物よりなる表面処理層を形成させるようにした。
【0135】
得られた基板(32)を解析した結果、薄膜XRDでの回折ピークがZnO(Zincite)に帰属されるもののみであり、結晶性のZnOの膜がPC基板上に形成されていることが確認された。この膜の厚みは0.1μm、透明性はランクAであった。この膜のPC基板への密着性は、基板(31)での膜に比べて高いものであった。
−実施例33−
実施例26で調製した均一透明溶液(b)を、紫外線照射処理したPETフィルムにバーコ一ターで塗布し、塗布したフィルムを120℃に加熱された乾燥機中で30分加熱し、その後、冷却して、基板(33)を得た。
【0136】
得られた基板(33)を解析した結果、薄膜XRDでの回折ピークがZnO(Zincite)に帰属されるもののみであり、結晶性のZnOの膜がPETフィルム上に形成されていることが確認された。この膜の厚みは0.2μm、透明性はランクAであった。この膜のPETフィルムヘの密着性は高いものであった。
上記紫外線照射処理では、放射光として184.9nm、253.7nmの短波長の紫外線を主に放射する低圧水銀ランプを光源として紫外線照射し、PETフィルムの表面を親水化(ぬれ性試薬で54dyne)するようにした。
【0137】
−実施例34〜37−
実施例33において、紫外線照射処理したPETフィルムの代わりに、下記の各種PETフィルムを用いた以外は同様の操作により、基板(34)〜(37)を得た。
実施例34では、PETフィルム上にアルミナ蒸着することにより膜厚0.03μmのアルミナ膜を形成したPETフィルム、実施例35では、ZnO超微粒子(結晶子径:15nm)をポリエステル樹脂溶液に分散して得られた塗料をバーコーターでPETフィルム上に塗布および乾燥することにより、ZnO超微粒子が70wt%含有した塗膜(塗膜の厚み:2μm)を形成したPETフィルム、実施例36では、ポリエステルポリオール樹脂溶液にIn2%ドープZnO超微粒子(結晶子径:12nm)を分散し、ポリイソシアネート系硬化剤をポリエステルポリオールの水酸基に対し1/2当量となるよう添加して得られた塗料をPETフィルム上に塗布して100℃で加熱することにより、InドープZnO超微粒子が70wt%含有した塗膜(塗膜の厚み:1μm)を形成したPETフィルム、実施例37では、ヘキサメチレンジシラザンを10wt%含有する溶液をPETフィルム上に塗布して加熱することにより、膜厚0.05μmのシリカ膜を形成したPETフィルム、を用いた。
【0138】
得られた基板(34)〜(37)をそれぞれ解析した結果、薄膜XRDでの回折ピークがZnO(Zincite)に帰属されるもののみであり、結晶性のZnOの膜が基板上に形成されていることが確認された。いずれの膜の厚みも0.1μmであり、透明性はランクAであった。いずれの膜もPETフィルムヘの密着性は非常に高いものであった。
−実施例38−
実施例3で得られた基板(3)について、酸化チタン膜が形成された膜面側から実施例29で用いた低圧水銀ランプにより紫外線を照射することにより、上記酸化チタン膜が、Ti原子に対するメトキシイソプロポキシ基の量が1モル%以下の酸化チタン膜に改質されたことが確認された。
【0139】
−実施例39−
実施例1で得られた基板について、酸化亜鉛膜が形成された膜面側から実施例29で用いた低圧水銀ランプにより紫外線を照射することにより、上記酸化亜鉛膜が、Zn原子に対するアセトキシ基の量が1モル%の酸化亜鉛膜に改質されたことが確認された。
−実施例40−
実施例25において、メタノール250部の代わりに、メタノール5.23部(メタノール/Zn=2/1(モル比))およびジエチレングリコールジメチルエーテル200からなる混合物を添加した以外は、実施例25と同様の操作により均一透明溶液(e)を得た。
【0140】
均一透明溶液(e)を、実施例25と同様に、ガラス基板に塗布し、その後、加熱および冷却をして、基板(40)を得た。
得られた基板(40)を解析した結果、薄膜XRDでの回折ピークとしてZnO(Zincite)に帰属されるものが確認され、結晶性のZnOの膜がガラス基板上に形成されていることが確認された。
−比較例4−
実施例25において、メタノール250部の代わりにエチレングリコールジメチルエーテル250部を用いた以外は、実施例25と同様に操作により基板(c4)を得た。
【0141】
得られた基板(c4)を解析した結果、薄膜XRDでのZnO結晶に帰属される明確な回折ピークは観測されなかった。
−比較例5〜9−
実施例25において、メタノール250部の代わりに、比較例5ではプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート250部、比較例6ではトルエン250部、比較例7では酢酸ブチル250部、比較例8ではメチルエチルケトン250部、比較例9では酢酸250部をそれぞれ用いた以外は、実施例25と同様の操作により、基板(c5)〜(c9)を得た。
【0142】
得られた基板(c5)〜(c9)をそれぞれ解析した結果、薄膜XRDでのZnO結晶に帰属される明確な回折ピークは観測なかった。
−比較例10−
実施例25において、メタノール250部の代わりに水250部を用いた以外は、実施例25と同様の操作により、基板(c10)を得た。
得られた基板(c10)を解析した結果、薄膜XRDでのZnO結晶に帰属される明確な回折ピークは観測されず、低角側にブロードなピークが観測された。
−比較例11−
実施例25において、酢酸亜鉛無水物15部の代わりに亜鉛メトキシエトキシド17.6部を用いた以外は、実施例25と同様の操作により、基板(c11)を得た。
【0143】
得られた基板(c11)を解析した結果、薄膜XRDでのZnO結晶に帰属される明確な回折ピークは観測されなかった。
−比較例12−
実施例25において、酢酸亜鉛無水物15部の代わりに亜鉛2,4−ペンタンジオネート2水和物21.5部を用いた以外は、実施例25と同様の操作により、基板(c12)を得た。
得られた基板(c12)を解析した結果、薄膜XRDでのZnO結晶に帰属される明確な回折ピークは観測されなかった。
【0144】
【発明の効果】
本発明によれば、生産性が高く、低コストで経済的にも優れ、広範囲な種類の基材を用いることができ、操作も簡便な方法により得られ、金属酸化物の優れた物性が付与されてなり、密着性が高く、機械的強度が大きい金属酸化物被着体、および、その製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例26における分光透過率曲線図

Claims (10)

  1. 基材の表面に、金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系を100〜300℃に加熱することにより得られる金属酸化物の層を有する、金属酸化物被着体であって、
    該金属酸化物が、該金属カルボン酸塩と該アルコールとを反応させて得られ、
    該アルコールが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールおよび1,3−プロパンジオールからなる群から選択される少なくとも1つの炭素数1〜3の1級アルコールまたは多価アルコールを含み、
    該金属カルボン酸塩の有するカルボキシル基の総数に対する、該炭素数1〜3の1級アルコールまたは該多価アルコール中の水酸基の総数の比が、0.8〜100であり、
    該混合系に含まれる水分が、該金属カルボン酸塩中の金属原子に対してモル比で0.1未満である、
    金属酸化物被着体。
  2. 前記炭素数1〜3の1級アルコールまたは多価アルコールの含有量が、前記アルコールの全量に対して、50重量%以上である、請求項1に記載の金属酸化物被着体。
  3. 前記金属酸化物が、結晶性の金属酸化物である、請求項1または2に記載の金属酸化物被着体。
  4. 前記結晶性の金属酸化物が、カルボキシル基を有する、請求項3に記載の金属酸化物被着体。
  5. 前記基材が、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、アラミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー、(メタ)アクリル樹脂、PVC樹脂、PVDC樹脂、PVA樹脂、EVOH樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂およびポリオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂からなる、請求項1から4のいずれかに記載の金属酸化物被着体。
  6. 金属酸化物を基材の表面に膜として定着させて、金属酸化物層を有する金属酸化物被着体を製造する方法であって、
    該金属酸化物が、金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系を100〜300℃の温度に加熱し、該金属カルボン酸塩と該アルコールとを反応させることによって、生成され、
    該アルコールが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオールからなる群から選択される少なくとも1つの炭素数1〜3の1級アルコールまたは多価アルコールを含み、
    該炭素数1〜3の1級アルコールまたは多価アルコールの含有量が、該アルコール全量に対して、50重量%以上であり、
    該金属カルボン酸塩の有するカルボキシル基の総数に対する、該アルコール中の水酸基の総数の比が、0.8〜100であり、
    該混合系に含まれる水分が、該金属カルボン酸塩中の金属原子に対してモル比で0.1未満である、
    金属酸化物被着体の製造方法。
  7. 前記金属酸化物の生成は、前記出発原料の混合物、および/または、前記出発原料を混合するか、混合および加熱して得られた液を前記基材に接触させ、この接触系を100〜300℃の温度にすることにより行う、請求項に記載の金属酸化物被着体の製造方法。
  8. 前記接触系を前記温度にすることが、前記混合物および/または液を前記基材の表面に塗布しておいて前記基材を加熱するか、または、前記基材を前記混合物および/または液に漬けておいて加熱することである、請求項に記載の金属酸化物被着体の製造方法。
  9. 前記接触系を前記温度にすることが、前記基材を前記混合物および/または液に漬けておいて加熱することである、請求項に記載の金属酸化物被着体の製造方法。
  10. 前記金属酸化物の生成は、前記出発原料の混合物、および/または、前記出発原料を混合するか、混合および加熱して得られた液を加熱しながらかまたは加熱しておいて前記基材の表面に塗布することにより行う、請求項に記載の金属酸化物被着体の製造方法。
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