JP4248312B2 - 金属酸化物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属酸化物を製造する方法に関する。詳しくは、例えば、金属酸化物を粒子として生成させるか、または、生成する金属酸化物を基材の表面に膜として定着させる、金属酸化物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属酸化物は、その金属原子の種類や、単一であるか複合であるかなどによって、さまざまな優れた機能を有することが知られており、従来から、その特性を活かして種々の用途に利用されている。さらに、これら金属酸化物を基材の表面に付着させて膜として形成し、各種機能性用途に利用することも提案されてきている。基材表面に金属酸化物の膜を形成させる方法としては、具体的には、▲1▼スパッタや真空蒸着等の気相法により形成する方法、▲2▼金属カルボン酸塩溶液を基材表面に塗布して熱分解する等の熱分解法により形成する方法、▲3▼一旦生成し物性的に安定した金属酸化物粒子を基材表面に塗布して乾燥することにより形成する方法などが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4参照。)。
【0003】
しかしながら、上記▲1▼の方法においては、気相法を行うのに必要な装置等はコストが高く経済性に劣り、生産性も低く、例えば導電性の金属酸化物膜を形成しようとした場合、かなり高温での処理行う必要があるため基材の種類が制限されてしまううえ、結晶性に優れた良質な金属酸化物膜が得られにくい等の問題がある。上記▲2▼の方法においては、必然的に高温での処理をしなければならないため造膜したい基材の種類が制限されてしまううえ、結晶性に優れた良質な金属酸化物膜が得られにくいという問題がある。また、上記▲3▼の方法においては、通常、粒子間の結合が不十分な多孔質構造となるため、膜の基材表面への密着性や機械的強度が低いうえ、また、金属酸化物膜の連続性が重要となる導電性等の機能が得られにくいという問題がある。そこで、粒子どうしを結合させた緻密な連続性を有する膜とするために、例えば、塗布後に高温で処理することも考えられるが、結局のところ、上記同様、高温のために基材の種類が制限されてしまうことになり実用性に欠けるという問題がある。
【0004】
一方、金属酸化物粒子や、基材表面に金属酸化物膜を形成したものを、各種機能性用途に用いるにあたっては、近年の技術進歩および要求される機能・性能面でのレベルを考慮すると、機能・性能面において十分と言える金属酸化物粒子や金属酸化物膜はまだ得られておらず、また産業界からの要請もあって、より金属酸化物含有率の高い金属酸化物粒子や金属酸化物膜を得ることが強く望まれている。また、金属酸化物自体をより低温で生成させることができ、操作が容易で経済性にも優れる金属酸化物粒子の製造方法や金属酸化物膜の形成方法が強く望まれている。
【0005】
【特許文献1】
特公平3−72011号公報
【0006】
【特許文献2】
特開平5−339742号公報
【0007】
【特許文献3】
特公平7−115888号公報
【0008】
【特許文献4】
特開平9−161561号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、簡便な方法により得ることができ生産性や経済的に優れるとともに、金属酸化物含有率が高いものを、より低温で生成・形成することができる、金属酸化物の製造方法を提供することにある。なかでも、金属酸化物膜の形成方法については、加えて、広範囲な種類の基材に形成させることができ、造膜性や機械的強度および密着性に優れた膜を得ることができる方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。
その結果、金属酸化物を生成させるにあたり、出発原料として、アルコールと金属カルボン酸塩とを用いるか、あるいは、カルボキシル基含有化合物と金属アルコキシ基含有化合物とを用いる方法に着目し、この方法において、上記生成反応を特定の化合物の存在下で行うようにすれば、上記課題を一挙に解決できることを見出し、これを確認して本発明を完成した。
また、金属酸化物を生成させるにあたり、出発原料として、1級アミンおよび/または2級アミンと金属カルボン酸塩とを用いる方法にも着目し、この方法において、上記生成反応を特定の条件下で行うようにすれば、上記課題を一挙に解決できることを見出し、これを確認して本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明にかかる金属酸化物の製造方法のうち、第1の方法は、
金属カルボン酸塩とアルコールとを出発原料とするか、または、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料として、金属酸化物を生成させる方法であって、
鉱酸、有機酸、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、βジケトン金属錯体、金属アルコキシド、第1スズ化合物、有機スズ化合物、固体酸、アミノ基含有化合物、イオン交換樹脂および三フッ化ホウ素エーテラートからなる群より選ばれる少なくとも1種の存在下で前記生成を行う、ことを特徴とする。
【0012】
そして、第2の方法は、
1級アミンおよび/または2級アミンと金属カルボン酸塩とを出発原料とし、前記出発原料を酸アミド化合物が生成する条件下で反応させることにより金属酸化物を生成させる方法である。
上記第1の方法においては、金属カルボン酸塩とアルコールとを出発原料とする場合においては、前記出発原料を3級アミンの存在下で反応させるようにすることが好ましい。
上記第1および第2の方法においては、金属酸化物を粒子として生成させることができ、あるいは、生成する金属酸化物を基材の表面に膜として定着させることもできる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる金属酸化物の製造方法について詳しく説明し、引き続き、本発明にかかる金属酸化物の製造方法についても詳しく説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
−第1の方法、粒子製造方法を中心として−
本発明にかかる金属酸化物の製造方法のうち、第1の方法は、前述したように、金属カルボン酸塩とアルコールとを出発原料とするか、または、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料として、金属酸化物を生成させる方法であり、この生成を、特定の化合物、すなわち、鉱酸、有機酸、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、βジケトン金属錯体、金属アルコキシド、第1スズ化合物、有機スズ化合物、固体酸、アミノ基含有化合物、イオン交換樹脂および三フッ化ホウ素エーテラートからなる群より選ばれる少なくとも1種の存在下で行うようにしている。好ましくは、上記出発原料を混合すると同時かまたはその後に該混合系を高温状態にする方法であり、このような過程を経て金属酸化物を生成させるようにする。
【0014】
本発明にかかるこの第1の方法では、金属酸化物を粒子として生成させたり、基材表面に膜として生成させたりすることができるが、以下では、その全体を説明するにあたり、上記粒子として生成させる場合(以下、必要な場合は、これを粒子製造方法と称して説明することがある。)を中心にして、説明することとする。
本発明にかかる第1の方法においては、出発原料となる特定の組み合わせとして、金属カルボン酸塩とアルコール(以下、組み合わせAと称することがある。)、または、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物(以下、組み合わせBと称することがある。)を用いるようにしている。
【0015】
組み合わせAにおける金属カルボン酸塩としては、具体的には、分子内にカルボキシル基の水素原子が金属原子で置換された結合を少なくとも1つ有する化合物であり、カルボキシル基としては、例えば、飽和モノカルボン酸、不飽和モノカルボン酸、飽和多価カルボン酸、不飽和多価カルボン酸などの鎖式カルボン酸;環式飽和カルボン酸;芳香族モノカルボン酸、芳香族不飽和多価カルボン酸などの芳香族カルボン酸;さらに分子内にヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、スルホン基、シアノ基、ハロゲン原子等の官能基または原子団を有する化合物などの金属塩;などを好ましく用いることができるが、特にこれらに限定はされるわけではない。なかでも、下記一般式(I):
M(O)(m-x-y-z)/2(OCOR1)x(OH)y(OR2)z (I)
(但し、Mはm価の金属原子;R1は、水素原子、置換基があってもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた少なくとも1種;R2は、置換基があってもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた少なくとも1種;m、x、yおよびzは、x+y+z≦m、0<x≦m、0≦y<m、0≦z<mを満たす。)
で表される化合物のように上記した金属カルボン酸塩またはカルボン酸残基の一部が水酸基やアルコキシ基で置換されたものや、後述のカルボキシル基含有化合物の金属塩や、塩基性酢酸塩などを好ましく挙げることができる。なかでも、後述のカルボキシル基含有化合物の金属塩の中の金属飽和カルボン酸塩や金属不飽和カルボン酸塩がより好ましく、さらに好ましくは上記一般式(I)で表される金属カルボン酸塩であり、最も好ましくは金属酢酸塩や金属プロピオン酸塩であり、金属(M)がZnである場合は金属酢酸塩が特に好ましい。なお、上記金属カルボン酸塩は、結晶水を含む金属カルボン酸塩の水和物であってもよいが、無水物であることが好ましい。
【0016】
上記金属カルボン酸塩に含まれる金属(M)としては(一般式(I)中の金属元素(M)も含む)、特に限定はされないが、具体的には、例えば、1A族、2A族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、8族、ランタノイド元素、アクチノイド元素、1B族、2B族、3B族、4B族、5B族、6B族に含まれる金属元素を挙げることができ、これらの中でも、例えば、Sr、Ce、Y、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Zn、Cd、Al、Ga、In、Ge、Sn、SbおよびLa等の金属元素が、本発明においては好適である。これらは1種のみでも2種以上併存していてもよい。金属カルボン酸塩としては、上記列挙した以外に、シュウ酸バリウムチタニル等の複合金属カルボン酸塩等も好適である。なお、本明細書においては、周期表は、改訂5版「化学便覧(日本化学会編)」(丸善株式会社より出版)に掲載されている「元素の周期表(1993年)」を用い、族番号は亜族方式により表記する。
【0017】
組み合わせAにおけるアルコールとしては、特に限定はないが、例えば、脂肪族1価アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、ステアリルアルコール等)、脂肪族不飽和1価アルコール(アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール等)、脂環式1価アルコール(シクロペンタノール、シクロヘキサノール等)、芳香族1価アルコール(ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、メチルフェニルカルビノール等)、フェノール類(エチルフェノール、オクチルフェノール、カテコール、キシレノール、グアヤコール、p−クミルフェノール、クレゾール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、ドデシルフェノール、ナフトール、ノニルフェノール、フェノール、ベンジルフェノール、p−メトキシエチルフェノール等)、複素環式1価アルコール(フルフリルアルコール等)等の1価アルコール類;アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ピナコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等)、脂環式グリコール(シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール等)、および、ポリオキシアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)等のグリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート等の上記グリコール類のモノエーテルまたはモノエステル等の誘導体;グリセリンやトリメチロールエタン等の3価アルコール、エリスリトールやペンタエリスリトール等の4価アルコール、リピトールやキシリトール等の5価アルコール、ソルビトール等の6価アルコール等の3価以上の多価アルコール、ヒドロベンゾイン、ベンズピナコール、フタリルアルコール等の多価芳香族アルコール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等の2価フェノールや、ピロガロール、フロログルシン等の3価フェノール等の多価フェノール、および、これら多価アルコール類におけるOH基の一部(1〜(n−1)個(ただし、nは1分子当たりのOH基の数))がエステル結合またはエーテル結合となった誘導体;等を挙げることができる。
【0018】
上記アルコールとしては、なかでも、後述する金属錯体モノマーやその誘導体をより低い温度状態で得やすく且つ金属カルボン酸塩と反応して後述する予備反応物さらには金属酸化物を生成し易いアルコールが好ましく、アルコール性水酸基に関して3級、さらには2級、特に1級の水酸基を有するアルコールが、より低い温度状態で金属酸化物が得られるため、最も好ましい。同様の理由で、脂肪族アルコールも好ましい。
本発明にかかる第1の方法においては、上記出発原料となる金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系とは、該金属カルボン酸塩およびアルコールをそれぞれ少なくとも一部ずつ混ぜ合わせた段階以降の系を意味する。この混合系の内部状態としては、金属カルボン酸塩およびアルコールのいずれもが原料状態の化学構造を変化させずに存在している状態であることに限らず、例えば、金属カルボン酸塩およびアルコールの少なくとも1つが溶解状態下で特有の化学構造に変化して存在している状態であってもよいし、金属カルボン酸塩とアルコールとがこれらの予備反応物となって存在している状態であってもよく、すなわち、出発原料そのままの状態から何れの状態に変化して存在していてもよい。
【0019】
ここでいう予備反応物(以下、予備反応物aと称することがある。)は、金属カルボン酸塩とアルコールとから得られるものであって、金属カルボン酸塩とアルコールとの反応による反応物として金属酸化物(以下、金属酸化物Aと称することがある。)が生成されるまでの任意の段階の状態の反応中間体であり、生成される金属酸化物Aに対する前駆体(金属酸化物前駆体)である。すなわち、予備反応物aは、出発原料としての金属カルボン酸塩でもアルコールでもなく、両者の反応物ではあるが、生成される金属酸化物Aでもない金属酸化物前駆体である。なお、上述の金属酸化物Aが生成されるまでの任意の段階の状態とは、用いた金属カルボン酸塩のうちの50重量%以上が粒径5nm以上の粒子状の金属酸化物Aの生成が認められる前の状態をいうとする。
【0020】
上記予備反応物aは、例えば、アルコールまたはアルコールを含む溶媒に金属カルボン酸塩を溶解させるだけで直ちに得られる場合もあるが、好ましくは金属カルボン酸塩とアルコールとの混合と、緩やかな昇温(金属酸化物Aが得られる高温状態にするよりも緩やかな条件下での昇温)と、好ましくは加圧下の加熱とにより得られる。予備反応物aは溶液状態であることが好ましい。
予備反応物aとしては、特に限定はされないが、例えば、1)金属カルボン酸塩の金属原子に、アルコールまたはアルコキシ基が配位(吸着による配位も含む。)してなる金属錯体モノマー(この場合、カルボキシル基の一部がアルコールのアルコキシ基で置換された錯体も含まれる。)、2)金属カルボン酸塩が酸素原子を介して「金属−酸素−金属」の結合が形成されてなる縮合物に原料のカルボン酸基(−COO基)以外にさらにアルコールまたはアルコキシ基が配位(吸着による配位も含む。)してなる化合物(金属錯体モノマー誘導体)、などが好ましく挙げられる。なかでも、1)でいう金属錯体モノマーがより好ましく挙げられる。また、上記金属錯体モノマーは、上述のような方法以外によっても得ることができる。上述の方法以外によって得られた金属錯体モノマーを上記混合系にさらに加えて高温状態にすることにより金属酸化物を得ることもできる。
【0021】
出発原料となる上記金属カルボン酸塩とアルコールとの使用量に関しては、特に限定はないが、金属カルボン酸塩の金属換算原子数に対するアルコール中の(アルコール由来の)水酸基の数の比が、0.8〜1000となるようにすることが好ましい。また、上記使用量に関しては、金属カルボン酸塩の有するカルボキシル基の総数に対するアルコール中の(アルコール由来の)水酸基の総数の比が、0.8〜100となるようにすることも好ましく、より好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜20である。
金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系は、ペースト状、懸濁液状、溶液状などの流動性のある液状であることが好ましい。さらに、必要に応じて、後述する反応溶媒をも混合することによって、上記液状としてもよい。通常、金属カルボン酸塩は、特に限定はされないが、金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系においては、粒子状で分散した状態、溶解した状態、または、一部が溶解した状態で残りが粒子状で分散している状態、などの状態で存在する。
【0022】
組み合わせBにおける金属アルコキシ基含有化合物としては、特に限定はないが、例えば、下記一般式(II)で示される化合物、または該化合物が(部分)加水分解・縮合してなる縮合物を挙げることができる。
M’(OR3)n (II)
(但し、M’は、金属原子;R3は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アシル基、アラルキル基、アリール基から選ばれた少なくとも1種;nは金属原子Maの価数)
一般式(II)中、R3としては、水素原子および/またはアルコキシアルキル基の如く置換されていてもよいアルキル基が好ましい。
【0023】
一般式(II)中、金属(M’)としては、上記金属カルボン酸塩に含まれる金属(M)を挙げることができ、好ましいものについても同様である。
金属アルコキシ基含有化合物は、上記で説明したもの以外であってもよく、例えば、ヘテロ金属アルコキシド(ヘテロ金属オキソアルコキシ基含有化合物も含む)であってもよい。なお、ヘテロ金属アルコキシドとは、2個以上の異なる金属原子を有し、アルコキシ基や酸素原子を介したり、金属−金属結合等によって結ばれた金属アルコキシドのことである。ヘテロ金属アルコキシ基含有化合物を用いた場合は、複合酸化物からなる金属酸化物粒子を得ることができる。
【0024】
組み合わせBにおけるカルボキシル基含有化合物としては、分子内にカルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物であれば、特に限定はなく、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸(飽和モノカルボン酸)、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸(不飽和モノカルボン酸)、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、β,β−ジメチルグルタル酸等の飽和多価カルボン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和多価カルボン酸等の鎖式カルボン酸類、シクロヘキサンカルボン酸等の環式飽和カルボン酸類、安息香酸、フェニル酢酸、トルイル酸等の芳香族モノカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸等の不飽和多価カルボン酸等の芳香族カルボン酸類、無水酢酸、無水マレイン酸、ピロメリット酸無水物等のカルボン酸無水物、トリフルオロ酢酸、o−クロロ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、 アントラニル酸、p−アミノ安息香酸、アニス酸(p−メトキシ安息香酸)、トルイル酸、乳酸、サリチル酸(o−ヒドロキシ安息香酸)等の分子内にカルボキシル基以外のヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、スルホン酸基、シアノ基、ハロゲン原子等の官能基または原子団を有する化合物、アクリル酸ホモポリマー、アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体等、重合体原料として上記不飽和カルボン酸を少なくとも1つ有する重合体を挙げることができる。これらのカルボキシル基含有化合物のなかでも、後述する金属錯体モノマーやその誘導体を得やすく且つより低い温度状態で金属酸化物が得られ易いという点でアルコールと反応して後述する予備反応物さらには金属酸化物の形成をより低い温度で起こし易い化合物が好ましく、水中(25℃、0.1モル/L)での酸解離定数pKaが4.5〜5であるものがより好ましく、具体的には、飽和カルボン酸が好ましく、さらに、立体的にも反応性が高い点で酢酸が最も好ましい。また、カルボキシル基含有化合物が液体の場合は、後述の反応溶媒としても用いることもできる。
【0025】
本発明にかかる第1の方法においては、上記出発原料となる金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との混合系とは、該金属アルコキシ基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物をそれぞれ少なくとも一部ずつ混ぜ合わせた段階以降の系を意味する。この混合系の内部状態としては、金属アルコキシ基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物のいずれもが原料状態の化学構造を変化させずに存在している状態であることに限らず、例えば、金属アルコキシ基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物の少なくとも1つが溶解状態下で特有の化学構造に変化して存在している状態であってもよいし、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とがこれらの予備反応物となって存在している状態であってもよく、すなわち、出発原料そのままの状態から何れの状態に変化して存在していてもよい。
【0026】
ここでいう予備反応物(以下、予備反応物bと称することがある。)は、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とから得られるものであって、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との反応による反応物として金属酸化物(以下、金属酸化物Bと称することがある。)が生成されるまでの任意の段階の状態の反応中間体であり、生成される金属酸化物Bに対する前駆体(金属酸化物前駆体)である。すなわち、予備反応物bは、出発原料としての金属アルコキシ基含有化合物でもカルボキシル基含有化合物でもなく、両者の反応物ではあるが、生成される金属酸化物Bでもない金属酸化物前駆体である。なお、上述の金属酸化物Bが生成されるまでの任意の段階の状態とは、用いた金属アルコキシ基含有化合物のうちの50重量%以上が粒径5nm以上の粒子状の金属酸化物Bの生成が認められる前の状態をいうとする。
【0027】
また、上記予備反応物bは、例えば、カルボキシル基含有化合物またはカルボキシル基含有化合物を含む溶媒に金属アルコキシ基含有化合物を溶解させるだけで直ちに得られる場合もあるが、好ましくは金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との混合と、緩やかな昇温(金属酸化物Bが得られる高温状態にするよりも緩やかな条件下での昇温)と、好ましくは加圧下での加熱とにより得られる。予備反応物bは溶液状態であることが好ましい。
予備反応物bとしては、特に限定はされないが、例えば、1)金属アルコキシ基含有化合物の金属原子に、カルボキシル基含有化合物が−COOH基または−COO基を介して配位(吸着による配位も含む。)してなる金属錯体モノマー(この場合、アルコキシ基の一部がカルボキシ基で置換された錯体も含まれる。)、2)金属アルコキシ基含有化合物が酸素原子を介して「金属−酸素−金属」の結合が形成されてなる縮合物に原料のアルコキシ基以外にさらにカルボキシル基含有化合物が配位(吸着による配位も含む。)してなる化合物(金属錯体モノマー誘導体)、などが好ましく挙げられる。なかでも、1)でいう金属錯体モノマーがより好ましく挙げられる。また、上記金属錯体モノマーは、上述のような方法以外の方法によっても得ることができる。上述の方法以外によって得られた金属錯体モノマーをさらに加熱することにより金属酸化物を得ることもできる。
【0028】
出発原料となる金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との使用量に関しては、それらの配合割合(カルボキシル基含有化合物/金属アルコキシ基含有化合物)は、特に限定はされないが、金属アルコキシ基含有化合物に含有されている金属原子Mの平均原子価数Navを用いて、好ましくは下限が0.8Navを超える値、さらに好ましくは1.2Navを超える値であり、また、好ましくは上限が10Nav未満である。ここで、平均原子価数Navは、金属アルコキシ基含有化合物として、含有金属元素の異なるp種の金属アルコキシ基含有化合物(含有金属元素がそれぞれM1、M2、M3、・・・、Mpであるp種の金属アルコキシ基含有化合物(2≦p))を併せて用いる場合、下記数式:
【0029】
【数1】
【0030】
(数式中、Niは、金属Miの原子価(価数)を表す。また、Xiは、金属アルコキシ基含有化合物として用いた金属元素Miのモル数を表す。pは2以上の整数である。)
から算出することができる。また、出発原料として用いたカルボキシル基含有化合物の総量に含まれるカルボキシル基の数が、出発原料として用いた金属アルコキシ基含有化合物の総量に含まれるアルコキシ基の数N’に対して、0.8N’を超える数であることが好ましく、1N’〜10N’が特に好ましい。
金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との混合系は、ペースト状、懸濁液状、溶液状などの流動性のある液状であることが好ましい。さらに、必要に応じて、後述する反応溶媒をも混合することによって、上記液状としてもよい。通常、金属アルコキシ基含有化合物は、特に限定はされないが、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との混合系においては、粒子状で分散した状態、溶解した状態、または、一部が溶解した状態で残りが粒子状で分散している状態、などの状態で存在する。
【0031】
金属カルボン酸塩とアルコールとを出発原料として金属酸化物Aを得るか、または、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料として金属酸化物Bを得るにあたっては、さらに反応溶媒を用いてもよい。具体的には、これら出発原料を混合するにあたり、あるいは、これら出発原料の混合系を高温状態にするにあたり、さらに反応溶媒を加えた上で行うようにすればよい。
反応溶媒をも用いる場合、その使用量については、特に限定はないが、金属酸化物Aを得る場合は、出発原料として用いた全ての金属カルボン酸塩およびアルコールと反応溶媒との合計使用量に対する、上記全ての金属カルボン酸塩の合計使用量の割合が0.1〜50重量%となるようにすることが好ましい。同様に、金属酸化物Bを得る場合は、出発原料として用いた全ての金属アルコキシ基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物と反応溶媒との合計使用量に対する、上記全ての金属アルコキシ基含有化合物の合計使用量の割合が0.1〜50重量%となるようにすることが好ましい。これによって、金属酸化物を経済的に得ることができる。
【0032】
上記反応溶媒としては、水以外の溶媒、すなわち、非水溶媒が好ましい。非水溶媒としては、例えば、エチルベンゼン、オクタン、キシレン類、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン、ジメチルナフタレン、スチレン、ソルベントナフサ、デカリン、デカン、テトラリン、ドデシルベンゼン、トルエン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、流動パラフィン等の炭化水素;各種ハロゲン化炭化水素;アルコール(フェノール類や、多価アルコールおよびその誘導体で水酸基を有する化合物なども含む);アニソール、エピクロロヒドリン、エポキシブタン、クラウンエーテル類、ジイソアミルエーテル、ジエチルアセタート、ジオキサン、ジグリシジルエーテル、ジフェニルエーテル、ジブチルエーテル、ジベンジルエーテル、ジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル等のエーテルおよびアセタール;アセチルアセトン、アセトアルデヒド、アセトフェノン、アセトン、イソホロン、エチル−n−ブチルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジ−n−プロピルケトン、ホロン、メシチルオキシド、メチル−n−アミルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノン、メチル−n−ヘプチルケトン等のケトンおよびアルデヒド;アジピン酸ジエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセト酢酸エチル、アビエチン酸メチル、安息香酸ベンジル、安息香酸メチル、イソ吉草酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、ギ酸プロピル、クエン酸トリブチル、ケイ皮酸メチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸n−ブチル、酢酸ベンジル、酢酸メチル、酢酸メチルシクロヘキシル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル、シュウ酸ジブチル、酒石酸ジエチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、炭酸ジフェニル、炭酸ジメチル、乳酸ブチル、乳酸メチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、γ−ブチロラクトン、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ベンジル、プロピオン酸メチル、ホウ酸エステル類、マレイン酸ジオクチル、マロン酸ジメチル、酪酸イソアミル、酪酸メチル、リン酸エステル類等のエステル;エチレンカーボナート、プロピレンカーボネート、エチレングリコールジアセタート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジアセタート、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸ジエステル、両末端に水酸基を有しないポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)誘導体等の多価アルコール類のすべての水酸基の水素がアルキル基やアシル基で置換された誘導体化合物;カルボン酸およびその無水物や、シリコーン油、鉱物油等を挙げることができる。反応溶媒としては、親水性溶媒が特に好ましい。具体的には、常温(25℃)において、水を5重量%以上含み溶液状態になり得る溶媒が好ましく、任意の量の水を含み溶液状態になり得る溶媒がより好ましい。
【0033】
上記アルコール(フェノールや、多価アルコールおよびその誘導体で水酸基を有する化合物を含む。以下、アルコールと示す場合は同様とする。)としては、金属酸化物Aを得る場合に用いるアルコールとして列挙したものと同様のものを好ましく挙げることができる。
金属酸化物Bを得る場合は、反応溶媒としては、特に、非水溶媒のうちでも、アルコール性またはフェノール性水酸基を有しない非水溶媒である非アルコール性有機溶媒が好ましく、これを用いた際の反応収率が高い。非アルコール性有機溶媒としては、例えば、炭化水素;ハロゲン化炭化水素; エーテルおよびアセタール;ケトンおよびアルデヒド;エステル;多価アルコール類のすべての水酸基の水素がアルキル基やアセトキシ基で置換された誘導体化合物;カルボン酸およびその無水物や、シリコーン油、鉱物油等を挙げることができる。これらの非アルコール性有機溶媒のなかでも、エーテルおよびアセタール;ケトンおよびアルデヒド;エステル;多価アルコール類のすべての水酸基の活性水素がアルキル基やアセトキシ基で置換された誘導体化合物等が好ましい。
【0034】
金属酸化物Aは、前述のごとく、出発原料を金属カルボン酸塩とアルコールとし、これらの混合系を高温状態にすることにより得られることが好ましいが、上記混合系を高温状態にするとは、上記混合系の温度を常温よりも高い温度であって金属酸化物Aが生成し得る温度、またはそれ以上の温度に昇温することである。上記高温状態の温度(金属酸化物Aが生成し得る温度)は、得ようとする金属酸化物の種類等によって異なるが、通常50℃以上であり、結晶性の高い金属酸化物を得るためには、80℃以上が好ましく、100〜300℃の範囲がより好ましく、100〜200℃の範囲がさらに好ましく、120〜200℃の範囲が特に好ましく、120〜150℃の範囲が最も好ましい。また、得られた金属酸化物について、残存する有機基を除去したり、あるいは、より結晶成長を促すことを目的とし、必要に応じて、当該金属酸化物を300〜800℃で加熱してもよい。
【0035】
上記混合系を高温状態にする際の具体的な昇温手段(予備反応物aを得る場合に緩やかな高温状態にする際の昇温手段も含む)としては、ヒーター、温風や熱風による加熱が一般的であるが、これに制限されるものではなく、例えば、紫外線照射などの手段を採用することもできる。混合系を高温状態にする際は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力下で行ってもよく、特に限定はされないが、加圧下で出発原料を加熱等により高温状態にすることがより好ましい。また、反応溶媒等の沸点が金属酸化物Aの生成される反応温度よりも低い場合は、耐圧反応装置を用いて行うことも好ましい。通常、反応温度、反応時の気相圧は、溶媒となる成分の臨界点以下で行うが、超臨界条件で行うこともできる。
【0036】
金属酸化物Aを生成させる場合においては、金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系に含まれる水分が少ない方が、得られる金属酸化物の欠陥が少なくなるため好ましい。具体的には、上記混合系中に、出発原料として使用した金属カルボン酸塩中の金属原子に対してモル比で4未満のわずかな水分しか含有しないことが好ましく、水分がモル比で1未満であるとさらに好ましく、0.5未満であると特に好ましく、0.1未満が最も好ましい。
本発明にかかる第1の方法では、金属酸化物Aは金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系を高温状態にすることにより得ることができるが、該高温状態は、金属カルボン酸塩とアルコールとを混合すると同時かまたは混合した後に得られていればよく、すなわち、上記混合系を得るための出発原料の混合と、該混合系を高温状態にするための昇温とは、別々となるようにしてもよいし、同時(一部同時も含む)となるようにしてもよく、特に限定はされない。より詳しくは、上記混合系の昇温のための具体的手段(例えば加熱等)は、上記出発原料の混合に関わらず任意の方法・タイミングで行うことができ、例えば、混合前の出発原料の少なくとも一方を加熱等しておくことで混合と同時に該混合系を昇温させるようにしてもよいし、混合して得られる混合系に対して、該混合をしながらか又は該混合を終了した後で、加熱等を施し該混合系を昇温させるようにしてもよく、特に限定はされない。したがって、この混合と、昇温のための加熱等とのタイミングとしては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、1)金属カルボン酸塩とアルコールとを混合しておいて、これを加熱等により昇温し高温状態にする、2)アルコールを所定温度に加熱等しておき、これに金属カルボン酸塩を混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、3)反応溶媒と金属カルボン酸塩とを混合して所定温度に加熱等しておき、これにアルコールを混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、4)各成分(金属カルボン酸塩およびアルコール、および必要に応じて反応溶媒)を別々に加熱等しておいた後、これらを混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、5)金属カルボン酸塩とアルコールとを混合(および、必要により、上記高温状態にするよりも緩やかな条件下で加熱等)して予備反応物aを得ておいて、これを加熱等により昇温し高温状態にする、等が好ましく挙げられる。
【0037】
なお、予備反応物aを、金属カルボン酸塩とアルコールとの、混合、および、上記高温状態にするよりも緩やかな条件下での加熱等により得る場合、該混合と該昇温のための加熱等とのタイミングとしては、上述した金属酸化物Aを得る際の混合と昇温のための加熱等とのタイミングと同様であることが好ましい。
金属酸化物Bは、上述のように、出発原料を金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とし、これらの混合系を高温状態にすることにより得られるものが好ましいが、上記混合系を高温状態にするとは、上記混合系の温度を常温よりも高い温度であって金属酸化物Bが生成し得る温度、またはそれ以上の温度に昇温することである。上記高温状態の温度(金属酸化物Bが生成し得る温度)は、得ようとする金属酸化物の種類等によって異なるが、通常50℃以上であり、結晶性の高い金属酸化物を得るためには、80℃以上が好ましく、100〜300℃の範囲がより好ましく、100〜200℃の範囲がさらに好ましく、120〜200℃の範囲が特に好ましく、120〜150℃の範囲が最も好ましい。
【0038】
得られた金属酸化物について、残存する有機基を除去したり、あるいは、より結晶成長を促すことを目的とし、必要に応じて、当該金属酸化物を300〜800℃で加熱してもよい。
上記混合系を高温状態にする際の具体的な昇温手段(予備反応物bを得る場合に緩やかな高温状態にする際の昇温手段も含む)としては、前述の金属酸化物Aを得る場合と同様の手段が採用できる。混合系を高温状態にする際は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力下で行ってもよく、特に限定はされないが、加圧下で出発原料を加熱等により高温状態にすることがより好ましい。また、反応溶媒等の沸点が金属酸化物Bの生成される反応温度よりも低い場合は、耐圧反応装置を用いて行うことも好ましい。通常、反応温度、反応時の気相圧は、溶媒の臨界点以下で行うが、超臨界状態で行うこともできる。
【0039】
金属酸化物Bを生成させる場合においては、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との混合系に含まれる水分が少ない方が、得られる金属酸化物の欠陥が少なくなるため好ましい。具体的には、上記混合系中に、出発原料として使用した金属アルコキシ基含有化合物中の金属原子に対してモル比で1未満のわずかな水分しか含有しないことが好ましく、水分がモル比で0.2未満であるとさらに好ましく、0.1未満であると特に好ましい。
本発明にかかる第1の方法では、金属酸化物Bは金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との混合系を高温状態にすることにより得ることができるが、該高温状態は、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを混合すると同時かまたは混合した後に得られていればよく、すなわち、上記混合系を得るための出発原料の混合と、該混合系を高温状態にするための昇温とは、別々となるようにしてもよいし、同時(一部同時も含む)となるようにしてもよく、特に限定はされない。より詳しくは、上記混合系の昇温のための具体的手段(例えば加熱等)は、上記出発原料の混合に関わらず任意の方法・タイミングで行うことができ、例えば、混合前の出発原料の少なくとも一方を加熱等しておくことで混合と同時に該混合系を昇温させるようにしてもよいし、混合して得られる混合系に対して、該混合をしながらか又は該混合を終了した後で、加熱等を施し該混合系を昇温させるようにしてもよく、特に限定はされない。したがって、この混合と、昇温のための加熱等とのタイミングとしては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、1)金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを混合しておいて、これを加熱等により昇温し高温状態にする、2)カルボキシル基含有化合物を所定温度に加熱等しておき、これに金属アルコキシ基含有化合物を混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、3)反応溶媒と金属アルコキシ基含有化合物とを混合して所定温度に加熱等しておき、これにカルボキシル基含有化合物を混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、4)各成分(金属アルコキシ基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物、および必要に応じて反応溶媒)を別々に加熱等しておいた後、これらを混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、5)金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを混合(および、必要により、上記高温状態にするよりも緩やかな条件下で加熱等)して予備反応物bを得ておいて、これを加熱等により昇温し高温状態にする、等が好ましく挙げられる。
【0040】
なお、予備反応物bを、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との、混合、および、上記高温状態にするよりも緩やかな条件下での加熱等により得る場合、該混合と該昇温のための加熱等とのタイミングとしては、上述した金属酸化物Bを得る際の混合と昇温のための加熱等とのタイミングと同様であることが好ましい。
本発明にかかる第1の方法においては、前述のごとく金属酸化物を生成させるにあたり、この生成を、特定の化合物、すなわち、鉱酸、有機酸、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、βジケトン金属錯体、金属アルコキシド、第1スズ化合物、有機スズ化合物、固体酸、アミノ基含有化合物、イオン交換樹脂および三フッ化ホウ素エーテラートからなる群より選ばれる少なくとも1種の存在下で行うようにしていることが重要である。具体的には、前記混合系に、さらに、上記特定の化合物を添加するようにしていることが重要である。ここで、前記混合系に上記特定の化合物を添加するようにするとは、前記混合系を高温状態とする際に該混合系に上記特定の化合物が添加されているようにすることであってもよいし、前記混合系を高温状態とすると同時または高温状態とした後に該混合系に添加することであってもよく、特に限定はされないが、前者の形態を必須とすることが好ましい。前者の形態にあっては、前記混合系を高温状態にするまでに添加されていればよいため、これを満たす範囲内であれば、例えば、特定の組み合わせの出発原料を混合して混合系を得る前に出発原料の少なくとも一方に予め添加しておいてもよいし、特定の組み合わせの出発原料を混合すると同時または混合した後にこれらの混合系に添加してもよく、これらを組み合わせた添加のタイミングであってもよい。
【0041】
以下、上記列挙した特定化合物について具体例を挙げて説明する。
鉱酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸などが挙げられる。
有機酸としては、例えば、P−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸に代表されるスルホン酸基含有化合物や、モノヨード酢酸、モノブロモ酢酸、モノクロロ酢酸、モノフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等のハロゲン酢酸や、ギ酸などの常温(25℃)の水中におけるpKaが4未満のカルボン酸などが好ましい。
アルカリ金属またはアルカリ土類金属としては、公知のアルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素からなる金属が挙げられ、なかでも、Li、Na、Kが安価である等の理由から好ましい。
【0042】
アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物としては、例えば、公知のアルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素の、水酸化物、アルコキシドおよび各種塩が好ましい。上記水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化ベリリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどが挙げられる。上記アルコキシドとしては、例えば、リチウムエトキシド、カリウムエトキシド、セシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド、ストロンチウムメトキシド等のアルコキシドなどが挙げられる。上記各種塩としては、例えば、炭酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩などが挙げられ、特に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カルシウムなとの炭酸塩や炭酸水素塩が好ましい。
【0043】
βジケトン金属錯体としては、例えば、置換基を有していても良い各種金属のアセチルアセトン錯体が好ましく、金属元素の種類によって、以下のように例示される。
1A族:リチウム2,4−ペンタンジオネート、リチウムテトラメチルヘプタンジオネート、マグネシウムヘキサフルオロペンタンジオネート2水和物等。
2A族:マグネシウム2,4−ペンタンジオネート2水和物、バリウム2,4−ペンタンジオネート水和物、バリウムヘキサフルオロペンタンジオネート等。
3A族:イットリウム2,4−ペンタンジオネート、イットリウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート等。
【0044】
4A族:ジルコニウムジイソプロポキサイドビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、ジルコニウムヘキサフルオロペンタンジオネート、ジルコニウムメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリn−ブロポキサイド、ジルコニウム2,4−ペンタンジオネート、ジルコニウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、ジルコニウムトリフルオロペンタンジオネート、チタンジ−n−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタンオキシドビス(ペンタンジオネート)、チタンオキシドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)等。
【0045】
5A族:バナジウム(III)2,4−ペンタンジオネート、タンタル(V)チトラエトキサイドペンタンジオネート等。
6A族:モリブデン(VI)オキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、2,4−ペンタンジオネート
7A族:マンガン(III)2,4−ベンタンジオネート、マンガン(II)2,4−ペンタンジオネート等。
8族:鉄(III)ベンゾイルアセトネート、鉄(III)2,4−ペンタンジオネート、鉄(III)トリフルオロペンタンジオネート、コバルト(II)2,4−ペンタンジオネート水和物、コバルト(III)2,4−ペンタンジオネート、ニッケル(II)2,4−ペンタンジオネート等。
【0046】
1B族:銅(II)2,4−ペンタンジオネート、銅(II)エチルアセトアセテート、銅(II)ベンゾイルアセトアセトネート、銅(II)ヘキサフルオロペンタンジオネート2水和物、銀(I)2,4−ペンタンジオネート等。
2B族:亜鉛2,4−ペンタンジオネート、亜鉛ヘキサフルオロペンタンジオネート等。
3B族:アルミニウム(III)ジイソプロポキサイドエチルアセトアセテート、アルミニウムヘキサフルオロペンタンジオネート、アルミニウム(III)3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロネート、アルミニウム(III)2,4−ペンタンジオネート、インジウムヘキサフルオロペンタンジオネート、インジウム2,4−ペンタンジオネート等。
【0047】
4B族:スズ(II)ヘキサフルオロペンタンジオネート、スズ(II)2,4−ペンタンジオネート等。
5B族:ビスマス(III)ヘキサフルオロペンタンジオネート、ビスマス(III)テトラメチルヘプタンジオネート
ランタノイド元素:ランタン(III)2,4−ペンタンジオネート水和物、ネオジウム(III)2,4−ペンタンジオネート、エルビウム(III)2,4−ペンタンジオネート、ユウロピウム(III)1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオネート、テルビウム(III)2,4−ペンタンジオネート、ホルミウム(III)2,4−ペンタンジオネート、イッテルビウム(III)2,4−ペンタンジオネート等。
【0048】
金属アルコキシドとしては、例えば、以下の各種金属元素を金属成分とする金属アルコキシドが挙げられ(1A族および2A族の金属元素については、上記アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の説明で例示しているため、以下の例示からは除く。)、具体的には、3A族のSc、Y、4A族のTi、Zr、Hf、5A族のV、Nb、Ta、6A族のCr、Mo、W、7A族のMn、Tc、Re、8族のFe、Ru、0s、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、1B族のCu、Ag、2B族のZn、Cd、3B族のB、Al、Ga、In、Tl、4B族のSi、Ge、Sn、Pb、5B族のP、As、Sb、Bi、6B族のSe、Te、Poなどの金属元素を金属成分とする金属アルコキシドが挙げられる。
【0049】
第1スズ化合物としては、例えば、スズオキサイド(SnO)、シュウ酸スズ(II)、2−エチルヘキサン酸スズ(II)、酢酸スズ(II)、二リン酸スズII)、トリフルオロメタンスルホン酸スズ(II)、ホウフッ化スズ(II)、塩化スズ(II)、ヨウ化スズ(II)、スズ(II)ヘキサフルオロペンタンジオネート、スズ(II)エトキシドなどが挙げられる。
有機スズ化合物(有機スズk(IV)化合物)としては、例えば、モノブチルスズトリオクチルエステル、モノ−n−ブチルスズオキサイド、ジブチルスズオキサイド、ジ−n−ブチルスズジラウレート、ジ−n−ブチルスズジアセテート、ジ−n−オクチルスズマレート、ジ−n−オクチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジ−n−オクチルスズジラウリン酸塩、ジ−n−オクチルスズビスアルキルマレートエステル、トリブチルスズラウレート、トリ−n−ブチルスズアセテート、トリ−n−ブチルスズエトキシト、ビス(トリブチルスズ)オキサイド、ジメチルスズビス(イソオクチルメルカプトアセテート)、ジ−n−ブチルスズビスオクチルチオグリコールエステル塩、ジ−n−オクチルスズビス(イソオクチルチオグリコール酸エステル)などの、テトラアルキルスズの1〜3個のアルキル基が酸素、水酸基、アルコキシ基、フェノキシ基等の他の置換基で置換された化合物が好ましく挙げられる。
【0050】
固体酸としては、例えば、シリカ−アルミナ、ゼオライト、層状粘土鉱物などが挙げられる。
アミノ基含有化合物としては、例えば、1〜3級のアミノ基を含有する化合物や、4級アンモニウム基を含有する化合物などが挙げられ、具体的には、メチルアミン、イソブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、エチル−n−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、N−ドデシル−1−ドデカンアミン、N,N−ジオクチル−1−オクタンアミン、N,N−ジメチル−1−オクタデカンアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の1級、2級または3級の脂肪族アミン、エチレンジアミン、N−オクタデシル−1,3−プロパンジアミン等の脂肪族ジアミン、トリアミン、ポリエチレンイミン等のポリアミン、モルフォリン、ピペラジン等の脂肪族環状アミンなどの脂肪族アミン;N−フェニルヒドロキシルアミン、p−(ヒドロキシアミノ)フェノール、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の脂肪族または芳香族ヒドロキシルアミン;アニリン、N−メチルアニリン、N、N−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、N−エチル−N−フェニルベンジルアミン、o−トルイジン、p−トルイジン、2,3−キシリジン、o−アニシジン、ジアミノトルエン、4,4−メチレンジアニリン、フェニレンジアミン等の芳香族アミン;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハイドロゲンサルフェート、臭化トリメチルフェニルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、N−ベンジルピコリニウムクロライド、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、N−ラウリル4−ピコロニウムクロライド、塩化トリメチルベンジルアンモニウム、塩化N−ラウリルピリジニウム、塩化トリブチルベンジルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化トリエチルペンジルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩;などが挙げられる。
【0051】
イオン交換樹脂としては、例えば、各種公知のカチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂などが挙げられる。
三フッ化ホウ素エーテラートとしては、例えば、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体などが挙げられる。
上記特定化合物の含有量は、出発原料となる金属カルボン酸塩や金属アルコキシ基含有化合物の使用量に対して0.01〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%である。上記特定化合物の含有量が上記範囲内であると、前記組み合わせAやBの金属酸化物AやBへの転換反応が促進されるために金属酸化物含有率の高い酸化物がより低温かつ短時間で得られるといった優れた効果が発揮される。一方、上記特定化合物の含有量が0.01重量%未満であると、該特定の化合物を存在させたことによる効果が十分に発揮されないおそれがあり、10重量%を超える場合は、該特定の化合物が、粒子調製後の液に多く残存することとなり、粒子調製液やこれにより得られる塗料や塗膜等の特性劣化(分散性の阻害等)を誘発させるおそれがある。
【0052】
本発明にかかる第1の方法において、金属酸化物を粒子として生成させる場合は、出発原料を混合する時、出発原料の混合系を高温状態にする時や該高温状態にするための昇温を行う時、および、特定化合物の添加時などの、前述した全ての過程を撹拌下で行うことが好ましい。常に撹拌下で行うことによって、金属酸化物含有率が高く、金属酸化物結晶性に優れた金属酸化物粒子を容易に得ることができる。また、粒子径や粒子形状等が均一な金属酸化物粒子を容易に得ることができる。
以下では、金属酸化物を粒子として生成させた場合における以後の処理について、詳述する。
【0053】
本発明にかかる第1の方法により金属酸化物粒子を調製した後の調製液は、そのまま、あるいは濃縮して溶媒分散体や可塑剤分散体として使用することができるほか、バインダー成分(樹脂成分)を加えて成膜用組成物(塗料組成物)とし、これを基材に塗布して微粒子分散膜を形成したり、あるいは、同様にバインダー成分(樹脂成分)などに含有させて成形用樹脂組成物などとすることができる。また、濃縮乾固や遠心分離で溶媒を除去した後、加熱や乾燥をして微粒子粉体として取り扱うこともできる。
上記バインダー成分としては、例えば、シリコンアルコキシド系バインダー、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂など、熱可塑性または熱硬化性(熱硬化性、紫外線硬化性、電子線硬化性、湿気硬化性、これらの併用等も含む)の各種合成樹脂や天然樹脂等の有機系バインダーや、無機系バインダー等を挙げることができる。合成樹脂としては、たとえば、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、ケトン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、液状ポリブタジエン、クマロン樹脂等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。天然樹脂としては、たとえば、セラック、ロジン(松脂)、エステルガム、硬化ロジン、脱色セラック、白セラック等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。合成樹脂としては、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム等の天然または合成のゴム等を用いてもよい。合成樹脂と併用する成分として、硝酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等を挙げることができる。
【0054】
バインダー成分の形態については、特に限定はなく、溶剤可溶型、水溶性型、エマルション型、分散型(水/有機溶剤等の任意の溶剤)等を挙げることができる。
水溶性型のバインダー成分としては、たとえば、水溶性アルキド樹脂、水溶性アクリル変性アルキド樹脂、水溶性オイルフリーアルキド樹脂(水溶性ポリエステル樹脂)、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシエステル樹脂、水溶性メラミン樹脂等を挙げることができる。
エマルション型のバインダー成分としては、たとえば、(メタ)アクリル酸アルキル共重合ディスパージョン;酢酸ビニル樹脂エマルション、酢酸ビニル共重合樹脂エマルション、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルション、アクリル酸エステル(共)重合樹脂エマルション、スチレン−アクリル酸エステル(共)重合樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリル−シリコーンエマルション、フッ素樹脂エマルション等を挙げることができる。
【0055】
無機系バインダーとしては、シリカゲル、アルカリケイ酸、シリコンアルコキシド等の金属アルコキシド、これらの(加水分解)縮合物、リン酸塩等を挙げることができる。
上記成膜用組成物(塗料組成物)を塗布する場合の基材としては、例えば、ガラス板、アクリル板、ポリカーボネート板、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、ポリオレフィンフィルムなど、公知のシート、フィルムなどを用いることができる。すなわち、塗料組成物は、金属、ガラス、陶器等の無機物や、樹脂等の有機物等の基材の表面に塗布することができるのである。基板の形状については、特に限定はなく、フィルム状、シート状、板状、繊維状等の形状を挙げることができる。
【0056】
上記基材として用いられる樹脂の材質としては、特に限定はなく、たとえば、ポリオレフィン系;EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)系;ポリスチレン系;軟質又は硬質ポリ塩化ビニル;EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)系;PVA系(ビニロン系);PVDC系(ポリ塩化ビニリデン);ポリエステル系;ポリカーボネート系;ポリウレタン系;ポリアミド系;ポリイミド系;ポリアクリロニトリル系;ポリサルフォン系;ポリエーテルサルフォン系;ポリフェニレンサルファイド系;ポリアリレート系;ポリエーテルイミド系;アラミド系;(メタ)アクリル系;ポリエーテルエーテルケトン系;テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、フッ素樹脂系等、従来公知の樹脂を挙げることができる。
【0057】
本発明の粒子製造方法によれば、前述のように、金属酸化物含有率の高い金属酸化物粒子を得ることができる。また、より低温かつ短時間で金属酸化物粒子の生成反応を行うことができる。
得られた金属酸化物粒子の金属酸化物含有率の測定方法については、特に限定はされず、比較対象間で同一の方法を用いて測定するのであれば、いずれの方法を用いてもよいが、例えば以下▲1▼〜▲3▼の方法が挙げられる。なかでも▲1▼の方法が一般的である等の理由から好ましい。
すなわち、▲1▼の測定方法は、調製後の液から金属酸化物粒子を分離し、洗浄および乾燥した後、高温(例えば、500〜1000℃)で重量変化が無くなるまで加熱したときに、加熱後の灰分重量の、乾燥後の粒子重量に対する割合を、金属酸化物含有率とする方法である。この方法を用いた場合、金属酸化物粒子の金属酸化物含有率は、90重量%以上であることが好ましく、より好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは98重量%以上である。
【0058】
▲2▼の測定方法は、得られた金属酸化物粒子における有機基含有量をもって金属酸化物含有率の指標とする方法であり、具体的には、調製後の液から金属酸化物粒子を分離し、洗浄および乾燥した後、例えば、元素分析による炭素、水素、酸素、窒素および灰分の定量法や、イオンクロマト分析による定量法(特にカルボキシル基の定量に有効)や、GC−MS法による定量法(特にアルコキシ基の定量に有効)等を用いて有機基量を測定する方法である。この方法を用いた場合、金属酸化物粒子の有機基量が、10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下である。
【0059】
▲3▼の測定方法は、得られた金属酸化物粒子が結晶性である場合に、該粒子の結晶化度をもって金属酸化物含有率の指標とする方法であり、具体的には、調製後の液から金属酸化物粒子を分離し、洗浄および乾燥した後、粉末X線回折測定をする方法である。この方法を用いた場合、金属酸化物粒子の結晶化度が、90%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である。
金属酸化物粒子の金属酸化物含有率(またはその指標となる測定値(有機基含有量、結晶化度))が、上記範囲内であることによって、金属酸化物粒子の帯電性や光吸収機能等の性能が高くなるといった優れた効果が期待できる。一方、上記範囲外であると、帯電性の低下や光吸収波長のブルーシフト等の機能低下をもたらすおそれがある。
【0060】
本発明の粒子製造方法により得られる金属酸化物粒子の1次粒子径(結晶子径)は、特に限定はされないが、20nm以下が好ましく、より好ましくは10nm以下である。上記1次粒子径(結晶子径)が20nm以下であると、金属酸化物粒子を含有する膜や樹脂成形体等の透明性が保たれるため好ましい。なお、上記結晶子径は、X線回折測定を行い、ウィルソン法解析で求めた値Dwである。本発明の粒子製造方法により得られる金属酸化物粒子の分散粒径は、200nm以下が好ましく、より好ましくは100nm以下、さらにより好ましくは50nm以下である。上記分散粒径が200nm以下であると、金属酸化物粒子を含有する膜や樹脂成型体等の透明性、機械的特性等が低下するため好ましい。
【0061】
本発明の粒子製造方法により得られる金属酸化物粒子において、該粒子を構成する金属酸化物は、単一酸化物、複合酸化物および固溶体酸化物のいずれであってもよいが、導電性機能などに優れる点では2種以上の金属元素を含有する複合酸化物あるいは固溶体酸化物が好ましい。以下に、単一酸化物、複合酸化物および固溶体酸化物それぞれについての具体例を示す。
〔単一酸化物〕
3次元格子構造を有する酸化物として、M2O型酸化物(Li2O、Na2O、K2O、Rb2O;Cu2O、Ag2O);MO型酸化物(MgO、CaO、SrO、BaO;FeO、CoO、NiO、MnO;TiO、VO;BeO、ZnO;NbO;PdO、PtO、CuO、AgO);M2O3型酸化物(Al2O3、Ti2O3、V2O3、Fe2O3、Cr2O3、Rh2O3、Ga2O3;Mn2O3、Sc2O3、 Y2O3、In2O3、Tl2O3;α−Bi2O3、β−Bi2O3、γ−Bi2O3;B2O3;ランタノイド系金属酸化物);MO2型酸化物(ZrO2、HfO2、CeO2、ThO2、UO2;TiO2、SnO2、VO2、CrO2、MoO2、WO2、MnO2、GeO2;SiO2、GeO2);MO3型酸化物(ReO3、WO3)が挙げられる。
【0062】
低次元格子構造を有する酸化物として、層状格子構造酸化物(M2O型酸化物(Ca2O);MO型酸化物(PbO、SnO);M2O5型酸化物(V2O5);MO3型酸化物(MoO3)等);鎖状格子構造酸化物(HgO、SeO2、CrO3、Sb2O3);分子格子構造酸化物(RuO4、OsO4、Tc2O7、Sb4O6)が挙げられる。
〔複合酸化物〕
ABO2型複合酸化物(LiBO2;LiGaO2;γ−LiAlO2;LiFeO2、LiInO2、LiScO2、LiEuO2、LiNiO2、LiVO2、NaFeO2、NaInO2;CuCrO2、CuFeO2、PdCoO2、PdCrO2、PdRhO2、PtCoO2);ABO3型複合酸化物(ScTiO3、ScVO3;FeVO3、MnFeO3、FeCrO3、TiVO3、FeTiO3、CoMnO3、CoVO3、NiTiO3、CdTiO3、LiNbO3;LiSbO3;PbReO3、BiYO3、AO3の最密面を有するABO3型酸化物として、BaNiO3、ペロブスカイト酸化物(KTaO3、NaNbO3、BaMnO3、SrTiO3;BiAlO3、PbSnO3、BaTiO3、PbTiO3;LaAlO3、LiNiO3、BiFeO3、KNbO3;GdFeO3、YFeO3、NdGaO3、CaTiO3)、BaMnO3、SrTiO3、Sr4Re2SrO12、BaRuO3等);ABO4型複合酸化物(PBO4、BeSO4;CrVO4、ZnCrO4;α−MnMoO4;CaWO4、CaMoO4;Bi2(MoO4)3、Eu2(WO4)3;MNbO4、MTaO4(M:3価);CaCrO4、YVO4;CrVO4、AlAsO4;FeVO4、FeWO4、MnWO4、NiWO4;CuWO4;CoMoO4);AB2O4型複合酸化物(NiCr2O4、CoCr2O4、MnCr2O4、NiFe2O4、CoFe2O4、MnFe2O4、ZnFe2O4;Be2SiO4;CaFe2O4、CaTi2O4等)などが挙げられる。
【0063】
上記列挙した酸化物以外にも、ケイ酸塩やアルミノケイ酸塩;Mo、W、V、Nb、Ta等のポリ酸であって、異種原子を取り込んだヘテロポリ酸、さらに、Mo、W、V等の一部を異種金属で置換した混合ヘテロポリ酸や、これらの塩等も、複合酸化物として挙げられる。
〔固溶体酸化物〕
固溶体酸化物とは、単一酸化物または複合酸化物に、任意の異種金属を固溶した侵入型または置換型固溶体酸化物と定義される。
上記単一酸化物または複合酸化物が上記金属酸化物Aである場合、固溶させる異種金属は、金属カルボン酸塩や金属アルコキシ基含有化合物に由来するものであることが好ましいが、なかでも、金属カルボン酸塩由来のものが、固溶率の高い固溶体が得られるためより好ましい。
【0064】
また、上記単一酸化物または複合酸化物が上記金属酸化物Bである場合、固溶させる異種金属は、金属アルコキシ基含有化合物や金属カルボン酸塩に由来するものであることが好ましいが、なかでも、金属アルコキシ基含有化合物由来のものが、固溶率の高い固溶体が得られるためより好ましい。
以下、固溶体酸化物について具体的に例示するが、特にこれらに限定はされない。
(1)導電性酸化物
上記金属酸化物に、導電性を高める目的で、ドナーやアクセプターとなる異種金属元素やフッ素、水素などを含有または固溶させることがあるが、これらの酸化物も本発明でいう金属酸化物に含まれる。例えば、ZnOにAl、In、Ga、Si;TiO2にTa;Fe2O3にTi;BaTiO3にLa、Ta;In2O3にSn、Ti;SnO2にSb、P、F;MgIn2O4にH;というようなn型半導性酸化物にドナーとなる異種金属元素を含有させてなるn型導電性酸化物や、NiOにLi;CoOにLi;FeOにLi;MnOにLi;Bi2O3にBa;Cr2O3にMg;LaCrO3にSr;LaMnO3にSr;SrCu2O2にK;というようなp型半導性酸化物にアクセプターとなる異種元素を含有させてなるp型導電性酸化物が挙げられる。さらに、K2O−11Fe2O3にTiを添加してなるイオン−電子複合伝導体や、イオン伝導体として知られる酸化ジルコニウムにY、Sc等の金属をドープ(固溶)してなる酸化ジルコニウム系固溶体も含まれる。通常、固溶させるドナーあるいはアクセプターの濃度は、母体の金属酸化物の金属に対する原子数比で表して、0.01〜20%、好ましくは0.1〜5%である。これら導電性酸化物は、通常、熱線を含む赤外線吸収または反射機能を有するので、熱線遮蔽材料としても有用である。また、上述のLaMnO3にSrを含有させてなるp型導電性酸化物のように、前記したペロブスカイト型酸化物やスピネル型酸化物等の複合酸化物中の金属元素の一部を任意の異種金属元素で置換してなるものも含まれる。
【0065】
これらの導電性酸化物のうち、n型導電性酸化物は、熱線を含む赤外線吸収能に優れるので、赤外線遮断材料としても有用である。
(2)希薄磁性半導体酸化物
Y2O3、TiO2、Fe2O3、ZnO、In2O3、SnO2、BaTiO3、MgIn2O4などの酸化物や、これらに異種金属を固溶してなるか酸素欠陥を導入してなるn型又はp型半導体または導電性の酸化物に、Fe、Cr、Mn、Co、Ni等の磁性金属イオンを固溶させることによって得ることができる。
好ましい磁性金属イオンの濃度は、半導体または導電体の酸化物における金属に対する原子数比で、1%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、特に好ましくは10〜30%である。
(3)蛍光体酸化物
単一酸化物または複合酸化物などの母体結晶酸化物に、発光中心となる金属イオン又は非金属元素の1種または2種以上を固溶させてなる酸化物である。発光中心となる金属イオンとしては、例えば、Mn(II)、Cr(III)、Ag(I)、Cu(II)、Sb(III)、Sn(II)、Pb(II)、Tl(I)等の典型金属元素のイオンや遷移金属元素のイオンの他、Eu(II)、Eu(III)、Nd(III)、Tb(III)、Pr(III)、Yb(III)、Sm(III)、Ho(III)等のランタノイド金属元素のイオンなどを好ましく用いることができ、非金属元素としては、例えば、FおよびCl等のハロゲン原子などを好ましく用いることができる。また、母体結晶酸化物としては、可視光および/または近赤外線領域の光に対して実質的に吸収のない酸化物が好ましく、ZnO、Zn2SiO4、Y2O3、SnO2、In2O3等がより好ましい。
【0066】
ZnOにMn(II)、Sb(III)をZnに対する原子数比で0.1〜5%固溶させてなる蛍光体は、特に、金属イオンが均一分散した固溶体が得られる点で好ましい。
以下に、金属酸化物が有する各種機能・特性と、それを発揮し得る金属酸化物の具体例を列挙する。
本発明の粒子製造方法により得られた金属酸化物粒子が、これら列挙した金属酸化物からなる粒子であれば、各種機能分野において機能性塗料、膜あるいは成形体などの材料成分として、その機能・特性を十分に発揮させることができる。
【0067】
高屈折率機能:酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化クロム、アルミナ、および、これらの酸化物に異種金属をドープしてなるものなど。(これらは反射やぎらつきの防止もできる。)
紫外線吸収機能:酸化チタン、酸化第1鉄、酸化亜鉛、酸化セリウムなど。
赤外線吸収機能:酸化インジウムにTiやSn等の4価金属元素またはフッ素を固溶した酸化インジウム系固溶体、酸化第2スズにPやSb等の5価金属元素またはフッ素を固溶した酸化第2スズ系固溶体、および、酸化亜鉛にAlやIn等の3価金属元素を固溶した酸化亜鉛系固溶体など。
【0068】
電気伝導機能:上記の酸化インジウム、酸化第1スズ、酸化第2スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化銅などのn型、p型半導体として知られる酸化物およびこれらにドーパントまたはアクセプターとなる金属元素を固溶した固溶体、亜酸化銅、チタンブラック等の如く安定な酸化物を還元処理して得られるような低原子価金属の酸化物などの電子伝導性酸化物;酸化ジルコニウム等のイオン伝導性酸化物。
熱伝導機能;アルミナ、酸化亜鉛など。
磁気機能:マンガンフェライト(MnFe2O4)やニッケルフェライト(NiFe2O4)等のフェライト、マグネタイト(Fe3O4)などの強磁性酸化物など。
【0069】
光触媒機能:酸化チタン、酸化亜鉛など。
熱電変換機能:酸化亜鉛にインジウムをドープしてなるもの、酸化亜鉛にアルミニウムをドープしてなるもの、In2O5−ZnO系ホモロガス化合物など。
光電変換用半導体:酸化チタン、酸化亜鉛など。
圧電体:酸化亜鉛など。
表面弾性波素子用:酸化亜鉛など。
透明導電膜:赤外線吸収機能を有する金属酸化物と同様。
蛍光体、発光体:酸化亜鉛や酸化亜鉛にマンガンをドープしてなるもの等の酸化亜鉛系のものなど。(紫外線発光体またはグリーン発光体として用い得る。)
エレクトロルミネッセンス:WO3やNaxWO3等の酸化タングステン系のものなど。
【0070】
−第1の方法での膜形成方法−
本発明にかかる第1の方法について、以下では、金属酸化物膜の形成方法(以下では、これを膜形成方法と称することがある。)について説明する。
この膜形成方法は、前述した粒子製造の場合と同様に、金属カルボン酸塩とアルコールとを出発原料とするか、または、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料として用い、特定の化合物、すなわち、鉱酸、有機酸、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、βジケトン金属錯体、金属アルコキシド、第1スズ化合物、有機スズ化合物、固体酸、アミノ基含有化合物、イオン交換樹脂および三フッ化ホウ素エーテラートからなる群より選ばれる少なくとも1種の存在下で、金属酸化物を生成させるのであるが、その際に、生成する金属酸化物を膜として基材の表面に定着させるようにする方法である。
【0071】
本発明の膜形成方法においては、上記出発原料の混合系を基材に接触させ、この接触系を高温状態にすることにより、上記基材の表面に金属酸化物を膜として生成させ定着させるようにすることが好ましい。具体的には、例えば、上記接触系を高温状態にすることが、上記混合系を表面に塗布してなる基材を高温状態にするか、または、上記混合系に基材を漬けておいて高温状態にすることにより、基材の表面に金属酸化物を膜として生成させ定着させるようにすることがより好ましい。ここで具体的にいう金属酸化物の生成・定着の方法については、前者は、いわゆる塗布法に属し、後者は、いわゆる液中析出法(浸漬法)に属する方法である。
【0072】
本発明の膜形成方法においてはまた、上記混合系を、高温状態にしながらかまたは高温状態にしておいて、上記基材の表面に塗布することにより、基材の表面に金属酸化物を膜として生成させ定着させるようにすることがより好ましい。ここでいう金属酸化物の生成・定着の方法は、いわゆる塗布法に属する方法である。
上記液中析出法(浸漬法)や塗布法については、後に詳述する。
本発明の膜形成方法を実施するにあたり、出発原料、その混合系および上記特定の化合物等の詳細、ならびに、出発原料の混合およびその混合系を高温状態にすること等の操作条件や反応条件等の詳細については、基本的に、すべて前述した粒子製造方法と同様であることが好ましい。
【0073】
したがって、本発明の膜形成方法における上記特定の化合物の含有量についても、前述した粒子製造方法と同様であることが好ましいが、その範囲外、すなわち、上記含有量が0.1重量%未満である場合は、該特定の化合物を存在させたことによる効果が十分に発揮されないおそれがあり、10重量%を超える場合は、該特定の化合物が、得られた膜中に多く残存することとなり、膜の機械的耐久性が低下したり、金属酸化物に由来する各種機能が阻害され十分に発揮できなくなるおそれがある。
本発明の膜形成方法において用いることのできる基材、すなわち、金属酸化物膜の被覆対象となり得る基材としては、その材質等は、特に限定されず、例えば、酸化物、窒化物、炭化物等のセラミクス、ガラスなどの無機物;PET、PBT、PENなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、アラミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマーなどの耐熱性樹脂フィルムとして知れられる樹脂フィルム、シートのほか、従来公知の(メタ)アクリル樹脂、PVC樹脂、PVDC樹脂、PVA樹脂、EVOH樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PTFE、PVF、PGF、ETFE等のフッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂等の各種樹脂からなるフィルムやシート各種樹脂高分子、および、これら各種樹脂高分子にアルミ、アルミナ、シリカなどを蒸着したフィルム等の加工品、などの有機物;各種金属類などが好ましく挙げられる。
【0074】
上記基材の形状・形態としては、例えば、フィルム状、シート状、板状、繊維状、積層体状などが挙げられるが、用途・使用目的等に応じて選択すればよく、特に限定はされない。また、上記基材は、機能面においても、特に限定はされず、例えば、光学的には透明、不透明;電気的には絶縁体、導電体、p型またはn型の半導体あるいは誘電体;磁気的には磁性体、非磁性体;など、用途・使用目的等に応じて選択すればよい。
以下、液中析出法および塗布法について簡単に説明する。
液中析出法とは、前述した組み合わせAまたは組み合わせBの出発原料の混合系に基材を漬けておいて(浸けておいた状態で)高温状態にすることにより、基材の表面に金属酸化物を析出させ成長させて、基材表面に金属酸化物を定着させ金属酸化物膜を形成させる方法である。
【0075】
塗布法とは、例えば、前記混合系を表面に塗布してなる基材を高温状態にすることにより、その基材の表面に金属酸化物を定着させ金属酸化物膜を形成させる方法が挙げられ、通常、基材表面への金属酸化物膜の形成過程で同時に揮発性の溶媒成分や反応により生成した水、エステル等を蒸発除去する過程を伴う。もちろん、塗布した後、金属酸化物を形成しない温度で乾燥(蒸発除去)した後、金属酸化物を形成する温度以上で加熱することによっても金属酸化物膜を形成させることができる。特に、予備反応物a、bはこの方法を使っても問題ない。
上記液中析出法および塗布法において、前記混合系として予備反応物(予備反応物aや予備反応物b)を必須とする液を用いる場合、予備反応物は、常温で長時間、溶解状態で存在し難い場合があるため、予備反応物を含む混合系を得たあとは、例えば、速やかに該混合系に基材を漬けて高温状態にする、もしくは、速やかに該混合系を基材に塗布して高温状態にすることが好ましい。前記混合系として予備反応物(予備反応物aや予備反応物b)を必須とする液を用いる場合は、該混合系を緩やかに加温しながら予備反応物の溶液状態を保持しておき、該混合系に基材を漬けて高温状態にする、もしくは、該混合系を基材に塗布して高温状態にするのが好ましい。
【0076】
以下、液中析出法について詳細に説明する。
上記液中析出法においては、金属酸化物の生成が完全に終わるまでに、好ましくは金属酸化物の生成反応を開始させるまでに、基材を前記混合系に漬けておけばよく、出発原料の混合や高温状態にするための加熱と、基材の浸漬とのタイミングについては、特に限定はされない。具体的には、例えば、基材を、前記混合系に漬けておいてから加熱する形態、加熱したアルコール中に基材を漬けておいて加熱した金属カルボン酸塩を添加する形態、加熱した反応溶媒と金属カルボン酸塩に基材を漬けておいて加熱したアルコールを添加する形態、加熱したカルボキシル基含有化合物中に基材を漬けておいて加熱した金属アルコキシ基含有化合物を添加する形態、加熱した反応溶媒と金属アルコキシ基含有化合物に基材を漬けておいて加熱したカルボキシル基含有化合物を添加する形態、予備反応物aやbに漬けてから加熱する形態などを挙げることができる。
【0077】
なお、液中析出法においては、前記混合系は、流動性のある液状であれば、例えば、溶液状、懸濁液状、ペースト状、スラリー状(詳しくは、例えば、金属カルボン酸塩がアルコール中に懸濁したスラリー状、金属アルコキシ基含有化合物がカルボキシル基含有化合物中に懸濁したスラリー状)でもよく、特に限定はされないが、溶液状であることが好ましい。溶液状であるほうが、厚みが均一な金属酸化物膜が得られやすく、さらに、複合酸化物や固溶体酸化物を得ようとする場合には、偏析のない金属組成の均一な金属酸化物膜が得られやすいため好ましい。該混合系は、前述した粒子製造方法と同様に、必要に応じて、反応溶媒をも混合することによって、上記液状としてもよい。
【0078】
液中析出法を、組み合わせAの混合系を用いて行う場合であって、該混合系を均一透明な塗布溶液となるようにする際は、用いるアルコールとして、前述した各種アルコールのなかでも、炭素数1〜3の1級アルコールまたは多価アルコールを含有させることが好ましく、前記特定の化合物を併用した場合が特に有効である。これにより、均一透明な塗布液としての該混合系がより低温で得られ、また、より低い加熱温度で金属酸化物膜を形成することができるため、経済的に優れ、耐熱性の低い高分子フィルムにも容易に金属酸化物膜を形成することができる等といった点で有効である。上記炭素数1〜3の1級アルコールまたは多価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオールなどを挙げることができ、なかでもメタノールが好ましい。この場合、該混合系を得る際に出発原料として用いるアルコール全量中、上記炭素数1〜3の1級アルコールを、20重量%以上含有させることが好ましく、より好ましくは50重量%以上である。上記炭素数1〜3の1級アルコールが、20重量%未満の場合は、前述した効果が十分に得られないおそれがある。
【0079】
液中析出法では、前述したように、基材を前記混合系に漬けておいて高温状態にすることで、基材と前記混合系との接触系を高温状態となるようにするが、上記接触系を高温状態にするとは、上記接触系の温度を常温よりも高い温度であって金属酸化物が生成し得る温度、またはそれ以上の温度に昇温することである。上記高温状態の温度(金属酸化物が生成し得る温度)は、得ようとする金属酸化物の種類等によって異なるが、通常、50〜300℃にすることが好ましく、結晶性の金属酸化物膜を得るためには、80〜300℃がより好ましく、100〜200℃の温度範囲がさらにより好ましく、120〜200℃が特に好ましく、120〜150℃が最も好ましい。また、得られた金属酸化物について、残存する有機基を除去したり、あるいは、より結晶成長を促すことを目的とし、必要に応じて、当該金属酸化物を300〜800℃で加熱してもよい。液中析出法において上記接触系を高温状態にする際は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力下で行ってもよく、特に限定はされないが、加圧下で出発原料を加熱等により高温状態にすることがより好ましい。また、前記混合系の出発原料となるアルコールやカルボキシル基含有化合物や反応溶媒等の沸点より高い温度で反応させる場合は、耐圧反応装置を用いて行えばよい。通常は、常圧または加圧下で行われる。
【0080】
金属酸化物を経済的な時間で生成させるための温度は、金属カルボン酸塩の種類やアルコールの種類、金属アルコキシ基含有化合物の種類やカルボキシル基含有化合物の種類、または、予備反応物の種類により、適宜設定すればよい。
金属酸化物の構造、結晶子や粒状金属酸化物の大きさおよび形状などに関して所望の金属酸化物膜を得ようとした場合、金属カルボン酸塩の種類やアルコールの種類、金属アルコキシ基含有化合物の種類やカルボキシル基含有化合物の種類、または、予備反応物の種類によって、適宜適切な反応温度を設定することが好ましい。
【0081】
液中析出法においては、通常、金属酸化物を製造する場合に用いられている装置を好ましく使用することができるが、基材を固定する機能を備えたものがより好ましい。例えば、基板(基材)ホルダーを設置してなる回分式反応装置を使用することができる。撹拌の有無や、撹拌条件は特に限定されず、適宜選択すればよい。
液中析出法において、基材と前記混合系との接触系を高温状態にする方法としては、基材を漬けている状態で前記混合系全体を加熱する方法以外に、基材を前記混合系に漬けている状態で基材のみを選択的に加熱する方法などが好ましく挙げられる。なかでも後者の方法は、基材表面での反応が選択的に起こりやすく、基材表面に密着性の高い金属酸化物膜が形成されやすいため好ましい。
【0082】
液中析出法において、上記加熱を行う方法としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、ヒーターによる加熱、温風や熱風による加熱、マイクロウェーブによる加熱、電子線による加熱、紫外線照射による加熱などを好ましく挙げることができる。
以下、塗布法について詳細に説明する。
塗布法においては、具体的には、例えば、▲1▼前記混合系を基材の表面に塗布しておいて該基材を加熱することにより、基材と前記混合系との接触系を高温状態にする方法、▲2▼前記混合系を加熱して高温状態にしながら基材に塗布する方法、▲3▼前記混合系を加熱して高温状態にしておいて基材に塗布する方法、▲4▼基材を高温状態にしておいて、前記混合系を塗布する方法、などを好ましく挙げることができる。なかでも、結晶性の高い金属酸化物膜を得るためには、上記▲1▼のように基材表面に前記混合系を塗布してなるものを高温状態にすることが好ましい。
【0083】
上記▲2▼の方法の具体例としては、例えば、混合系を、基材の塗布部分に直結する加熱されたパイプに通して高温状態にし、塗布する方法や、混合系を、ロールコーターのパン中で加熱して高温状態にし、該高温状態のまま基材に塗布する方法、などが挙げられるが、特にこれらに限定はされない。
上記▲3▼の方法の具体例としては、例えば、混合系を、(耐圧)回分式反応装置などを用いて加熱して高温状態にしておき、基材に塗布する方法、などが挙げられるが、特に限定されるわけではない。
また、上記▲2▼、▲3▼および▲4▼の方法では、塗布した後、上記▲1▼の方法を組み合わせることが好ましい。
【0084】
なお、塗布法においても、上述した液中析出法と同様に、塗布液として用いる前記混合系は、流動性のある液状であれば、例えば、溶液状、懸濁液状、ペースト状、スラリー状(詳しくは、例えば、金属カルボン酸塩がアルコール中に懸濁したスラリー状、金属アルコキシ基含有化合物がカルボキシル基含有化合物中に懸濁したスラリー状)でもよく、特に限定はされないが、溶液状であることが好ましい。溶液状であるほうが、厚みが均一な金属酸化物膜が得られやすく、さらに、複合酸化物や固溶体酸化物を得ようとする場合には、偏析のない金属組成の均一な金属酸化物膜が得られやすいため好ましい。該混合系は、前述した粒子製造方法と同様に、必要に応じて、反応溶媒をも混合することによって、上記液状としてもよい。
【0085】
塗布法としては、上記▲1▼〜▲4▼などの方法を取り得るが、この▲1▼〜▲4▼の方法において、前記接触系または混合系を高温状態にするとは、前記接触系または混合系の温度を常温よりも高い温度であって金属酸化物が生成し得る温度、またはそれ以上の温度に昇温することである。上記高温状態の温度(金属酸化物が生成し得る温度)は、得ようとする金属酸化物の種類等によって異なるが、通常は液中析出法と同様に、50〜300℃にすることが好ましく、結晶性の金属酸化物膜を得るためには、80〜300℃がより好ましく、100〜200℃がさらにより好ましく、120〜200℃が特に好ましく、120〜150℃が最も好ましい。また、得られた金属酸化物について、残存する有機基を除去したり、あるいは、より結晶成長を促すことを目的とし、必要に応じて、当該金属酸化物を300〜800℃で加熱してもよい。塗布法において前記接触系または混合系を高温状態にする際は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力下で行ってもよく、特に限定はされないが、加圧下で出発原料を加熱等により高温状態にすることがより好ましい。また、前記混合系の出発原料となる前記混合系の出発原料となるアルコールやカルボキシル基含有化合物や反応溶媒等の沸点より高い温度で反応させる場合は、耐圧反応装置を用いて行えばよい。通常は、常圧または加圧下で行われる。
【0086】
さらに、塗布法における塗布液としては、予備反応物(予備反応物aや予備反応物b)を含むものを用いることがより好ましい。特に、開放系で塗布および加熱をする場合であって、塗布液が、金属カルボン酸塩とアルコールとが単に混合されてなる混合系であるときは、高温状態にするための昇温の際、反応が十分に進む前にアルコールが蒸散してしまい、金属酸化物膜中の金属酸化物含有率が低下したり、結晶性の低いものしか得られない場合があるからである。
塗布法を、前記混合系を用いて行う場合、常圧における沸点が成膜温度(上記▲1▼〜▲4▼の方法でいう高温状態の温度)よりも高い溶媒成分を、前記混合系に含有させておくことが好ましい。これにより、透明性に優れた金属酸化物膜や、酸化物含有量高い金属酸化物膜が容易に得られる。上記溶媒成分としては、例えば、沸点が100℃以上の、アルコールおよびその誘導体(多価アルコールおよびその誘導体も含む)、ケトン、エステル、カルボン酸、カルボン酸無水物等を挙げることができるが、なかでもアルコール類(アルコールおよびその誘導体)が、前記混合系中での他の成分(特に予備反応物)との相溶性が高いため、好ましい。この場合、上記溶媒成分の含有量は、前記混合系中の金属に対するモル比で、等モル以上であることが好ましく、より好ましくは2倍モル以上である。上記溶媒成分の含有量が、等モル未満であると、上述した効果が十分に得られないおそれがある。
【0087】
同様に、塗布法を、前記混合系を用いて行う場合、水と共沸し得る非水成分を、前記混合系に含有させておくことが好ましい。これにより、緻密な金属酸化物膜を、より低温で容易に形成することができ、透明導電膜などの電子伝導性膜や、イオン伝導性膜、熱伝導性膜などの各種機能性膜に関して当該機能により優れたものを経済的に得ることができるため有効である。上記非水成分としては、水と共沸する有機溶媒であればいずれも使用できるが、例えば、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、フルアリルアルコール、t−ブタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができ、共沸温度における共沸組成が上記非水成分濃度が60重量%以下である、水と共存し得る非水成分を用いることが好ましい。この場合、上記非水成分の含有量は、前記混合系中の金属に対するモル比で、等モル以上であること好ましく、より好ましくは2倍モル以上、さらに好ましくは5倍以上である。上記非水成分が、等モル未満であると、緻密でない部分を有する金属酸化物膜が形成されるおそれがある。
【0088】
塗布法を、組み合わせAの混合系を用いて行う場合であって、該混合系を均一透明な塗布液として調製する際は、上述した液中析出法と同様に、出発原料として用いるアルコールとして、前述した各種アルコールのなかでも、炭素数1〜3の1級アルコールまたは多価アルコールを含有させることが好ましい。こうすることによって、均一透明な塗布液として該混合系をより低温で調製することができ、また、より低い加熱温度で金属酸化物膜を形成することができるため、経済的に優れ、耐熱性の低い高分子フィルムにも容易に金属酸化物膜を形成することができる等といった点で有効である。上記炭素数1〜3の1級アルコールまたは多価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオールなどを挙げることができ、なかでもメタノールが好ましい。この場合、該混合系に出発原料として用いるアルコール全量中、上記炭素数1〜3の1級アルコールを、20重量%以上含有させることが好ましく、より好ましくは50重量%以上である。上記炭素数1〜3の1級アルコールが、20重量%未満の場合は、前述した効果が十分に得られないおそれがある。
【0089】
塗布法においては、基材への塗布の方法としては、具体的には、例えば、前記混合系を、基材表面にバーコーター法、ロールコーター法、ナイフコーター法、ダイコーター法、スピンコート法などの従来公知の成膜方法を用いた方法を好ましく挙げることができるが、特にこれらに限定されるわけではなく、加熱しておいてもよい前記混合系に基材の一部または全部を漬けた後取り出して得られた塗布物を加熱する、いわゆるディッピング法を用いることもできる。
塗布法において、塗布後に高温状態にする(接触系を高温状態にする)場合、その方法は、特に限定されるわけではないが、具体的には、ヒーターによる加熱、温風や熱風による加熱、熱線(特に、近赤外線)により加熱、マイクロウェーブによる加熱、電子線による加熱、紫外線照射(特に、波長0.3〜0.4μmの紫外線(例えば、高水銀圧ランプにより照射される紫外線))による加熱などを特に好ましいものとして挙げることができる。また、金属酸化物の層形成に有効な点で、波長0.3μm以下(特に0.2〜0.3μm)の紫外線と波長0.2μm以下の紫外線とを同時に照射することによる加熱も特に好ましく採用でき、例えば、低水銀ランプやエキシマレーザーを用いればよい。上記加熱により、金属酸化物膜が形成されるとともに、反応溶媒等を揮発させ除去させることができる。また、上記加熱時の雰囲気としては、具体的には、例えば、空気雰囲気、窒素やヘリウムなどの不活性ガス雰囲気、水素などの還元雰囲気など、特に限定されるわけではないが、通常、空気または窒素雰囲気で行うことが好ましい。上記加熱は、基材のみを加熱しても、塗布面のみを加熱しても、基材および塗布面の両方を加熱してもよく、特に限定はされない。
【0090】
塗布法では、高温状態の温度は、前述のように、上記液中析出法と同様であることが好ましいが、前記▲2▼および▲3▼の方法であって、前記▲1▼の方法をさらに組み合わせる場合は、この▲2▼および▲3▼の方法でいう高温状態の温度は、予備反応物aや予備反応物bを生成させる程度の温度が好ましく、具体的には、50℃以上かつ塗布後に高温状態とする際の温度以下であることが好ましい。
塗布法においては、高温状態にする際の加熱等による昇温時間は、特に限定されるわけではなく、具体的には、10秒〜1時間が好ましいが、結晶性を高めたり基材との密着性を高めるなどといった目的で、上記高温状態の温度またはこれとは異なる温度で、さらに熟成を行ってもよい。熟成の温度および時間は、特に限定はなく、適宜選択すればよい。また、熟成の方法は、加熱以外の方法でもよい。
【0091】
本発明の膜形成方法においては、膜を構成する金属酸化物(金属酸化物部分)が有機基を有する場合、さらに以下のような処理をすることにより、該有機基を除去することができる。すなわち、気相中(空気中などの酸化性雰囲気下、還元性雰囲気下、不活性雰囲気下など)での加熱により有機基を分解する処理、液相中での加熱により有機基を分解する処理、酸性または塩基性の水溶液を用いて化学的方法により分解する処理、有機基がカルボキシル基の場合はアルコール存在下での加熱処理、有機基がアルコキシ基の場合は酢酸存在下での加熱処理、有機鎖の切断に有効な波長300nm以下(特に、波長200nm以下)の紫外線による高エネルギー紫外線照射処理、コロナ放電による処理、プラズマ処理などを挙げることができるが、特に限定されるわけではない。上記高エネルギー紫外線照射処理を施す場合は、高圧水銀ランプよりも短波長(高エネルギー)の紫外線を多く含む低圧水銀ランプを用いることが好ましい。
【0092】
本発明の膜形成方法においては、得られる金属酸化物膜に微粒子を含むようにすることもできる。
金属酸化物膜に含有させる微粒子としては、特に限定はされないが、例えば、無機系微粒子、有機系微粒子、有機質無機質複合体微粒子、金属微粒子等を好ましく挙げることができる。
上記無機系微粒子としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物や硫化物、セレン化物由来の微粒子を挙げることができる。微粒子の酸化物としては、例えば、本発明の微粒子含有金属酸化物膜のマトリクス成分である金属酸化物に関し後述する単一酸化物、複合酸化物、固溶体酸化物等を好ましく用いることができる。
【0093】
上記有機系微粒子としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、ポリイミド、ポリエステル、シリコーン等の各種高分子由来の微粒子を挙げることができる。
上記金属微粒子としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Co、Fe、Fe−Co合金、Fe−Pt合金、Fe−Si合金等の金属由来の微粒子を挙げることができる。
これら各種微粒子の中でも、金属酸化物膜において微粒子が偏在しにくく高分散させることができる点で、無機系微粒子や金属微粒子がより好ましい。
【0094】
金属酸化物膜に含有させる微粒子の粒子径は、特に限定はされないが、具体的には、100nm以下であることが表面平坦性に優れる膜が得られやすい、膜の透明性が高いなどの理由で好ましく、より好ましくは一次平均粒子径が50nm以下、さらに好ましくは20nm以下、特に好ましくは10nm以下である。また、微粒子が結晶性微粒子である場合は、XRD測定のウィルソン解析により得られた結晶子径が、50nm以下であることが好ましく、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは10nm以下である。微粒子の粒子径が上記範囲より大きい場合、膜厚の不均一な膜になりやすい、透明性の低い膜になりやすい、微粒子複合効果が不十分となる等のおそれがある。
【0095】
金属酸化物膜に含有させる微粒子としては、各種機能性微粒子を用いることが好ましく、所望の機能を発揮させることにより前述した課題を達成できる。具体的には、導電体、半導体、絶縁体、誘電体、発光体、蛍光体、光吸収体、高屈折率体、低屈折率体、磁性体などとしての機能を有する機能性微粒子が好ましく挙げられる。
金属酸化物膜に含有させる微粒子の形状は、特に限定はされないが、例えば、球状、楕円球状、立方体状、直方体状、多面体状、ピラミッド状、柱状、チューブ状、りん片状、(六角)板状等の薄片状、樹枝状、骸晶状などが挙げられるが、一般に、非球状のものが好ましい。
【0096】
金属酸化物膜に微粒子を含むようにする場合、該微粒子の含有割合は、特に限定はされず、膜の用途・使用目的に応じて適宜設定すればよいが、具体的には、0.1〜99重量%となるようにすることが好ましく、より好ましくは1〜90重量%であり、さらに好ましくは10〜50重量%である。上記微粒子の含有割合が、0.1重量%未満の場合は、微粒子含有効果が不十分となるおそれがあり、99重量%を超える場合は、微粒子とマトリクス成分である金属酸化物との複合効果が十分に発揮されなかったり、金属酸化物のバインダーとしての機能が十分に発揮されず微粒子が膜から脱落しやすいなどの問題が発生するおそれがある。
【0097】
上記微粒子を含有する金属酸化物膜を得る方法としては、特に限定はされず、本発明の膜形成方法において微粒子を含有させるタイミング等は適宜設定すればよいが、例えば、前述した特定の化合物と同様の方法およびタイミングで、前記混合系に含有させておき、塗布法や液中析出法等を用いて微粒子含有金属酸化物膜を得るようにすることが好ましい。また、得られる金属酸化物膜において微粒子がなるべく均一に分散した状態で含まれるよう、前記混合系に微粒子を含有させておく場合はできるだけ均一に分散させておくことが好ましい。
本発明の膜形成方法によれば、前述のように金属酸化物含有率の高い金属酸化物膜を得ることができる。また、より低温かつ短時間で金属酸化物膜の生成反応を行うことができる。
【0098】
得られた金属酸化物膜の金属酸化物含有率の測定方法については、特に限定はされず、比較対象間で同一の方法を用いて測定するのであれば、いずれの方法を用いてもよいが、例えば以下▲1▼または▲2▼の方法が挙げられる。なかでも▲1▼の方法が一般的である等の理由から好ましい。
すなわち、▲1▼の測定方法は、得られた金属酸化物膜における炭素原子含有率をもって金属酸化物含有率の指標とする方法であり、該膜について、ESCA装置により金属原子と炭素原子とのピーク強度を測定し、これらから換算して金属酸化物膜における炭素原子含有量(炭素/金属(原子%))を求める。この方法を行う場合、膜の前処理として、i)膜形成の温度によっては塗布液中の溶媒がわずかに残留する場合もあるので、十分真空乾燥したものを試料とし、ii)膜表面には、空気中からの汚染物質が吸着しているので、アルゴンエッチングし、各種エッチング時間における定量を行い、一定となったところの定量値を用いるようにする(通常は、シリカのエッチング速度換算で、膜表面から30nmの深さまでエッチングした後の定量値を用いるようにすればよい。)。この方法を用いた場合、金属酸化物膜の炭素原子含有量(炭素/金属(原子%))が、5%未満であることが好ましく、より好ましくは2%未満、さらに好ましくは1%未満である。本発明の金属酸化物の製法では、上記炭素原子含有率と金属酸化物含有率との関係については、炭素原子含有率の値が小さいほど、金属酸化物含有率の値が大きくなり、炭素原子含有率の値が大きいほど、金属酸化物含有率の値は小さくなる。
【0099】
▲2▼の測定方法は、得られた金属酸化物膜が結晶性である場合に、該膜について、薄膜X線回折測定をして得られた回折パターンの回折ピーク強度を比較する方法である。ただし、金属酸化物の種類が同じで、単位面積当たりの膜重量が同じであるものの間での相対比較に限られる。また、金属酸化物の種類が同じの場合であって、膜重量が異なる場合は、回折強度を同一膜重量あたりの値に換算して比較することもできる。なお、塗布法を用いた場合は、膜重量の代わりに、単位面積あたりに塗布した液の金属酸化物換算量を基準としてもよい。
金属酸化物膜の金属酸化物含有率が、上記範囲内であることによって、導電性能が光吸収性能が高くなるといった優れた効果が期待できる。一方、上記範囲外であると、導電率の低下や光吸収性能の低下、さらには、膜の機械的特性や耐久性の低下をもたらすおそれがある。
【0100】
本発明の膜形成方法により得られる金属酸化物膜は、基材の表面等に形成され得る金属酸化物の膜であるが、例えば、基材表面上の所望の面積部分に切れ目なく連続的に広がって存在している形態(連続膜)であってもよいし、基材表面上の所望の面積部分に不連続的に存在している形態(不連続膜)であってもよい。不連続膜では、金属酸化物が、基材表面に部分的に存在しているが、それら各部分の大きさ、面積、厚みおよび形状等については特に限定されない。具体的には、例えば、金属酸化物が、基材表面に微細なドット状で存在している形態や、いわゆる海島構造のように存在している形態(上記ドット状ほど微細ではない)や、縞模様状に存在している形態や、これら形態を合わせた形態等が挙げられる。
【0101】
上記連続膜および不連続膜において、膜を構成する金属酸化物の構造としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、所望の大きさの空間を有する多孔質構造や、マクロ的に見てこのような多孔質構造ではない一体的な密実構造(すなわち実質的に緻密な構造)を挙げることができる。また、上記いずれの構造においても、マクロ的に見て、1次粒子としての金属酸化物が集合してなる構造であっても、2次粒子化した金属酸化物が集合してなる構造であっても、さらに大きく凝集粒子化した金属酸化物が集合してなる構造であっても、これら形態が混在してなる構造であってもよく、特に限定はされるわけではない。なお、このような金属酸化物の各種構造は、上記不連続膜においては、部分的に存在している個々の膜のすべてが備えている必要は無く、一部の膜のみが備えるものであってもよい。
【0102】
上記1次粒子としての金属酸化物、2次粒子化した金属酸化物、および、さらに大きく凝集粒子化した金属酸化物の形状としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、球状、楕円球状、立方体状、直方体状、多面体状、ピラミッド状、柱状、チューブ状、りん片状、(六角)板状等の薄片状などが挙げられる。
金属酸化物膜を構成する金属酸化物は、結晶性の金属酸化物であっても、非結晶性の金属酸化物であってもよく、特に限定はされない。結晶性の金属酸化物とは、規則的な原子配列が周期性をもって認められる結晶子からなる金属酸化物であると定義することができ、電子線回折学的および/またはX線回折学的に、格子定数および/または回折パターンから金属酸化物の同定ができるものをいい、そうでないものは非結晶性の金属酸化物であるとする。導電性、半導体特性、熱伝導性、(光)磁気特性、誘電特性、発光特性、光の吸収、反射特性などの電気機能、磁気機能、半導体機能、光機能などの各種機能に優れる点では、結晶性であることが好ましい。また、上記結晶性の金属酸化物は、単結晶からなるものであっても、多結晶体からなるものであってもよく、特に限定はされない。
【0103】
金属酸化物膜を構成する金属酸化物が結晶性である場合は、電気伝導性、熱伝導性、音波伝搬性、光伝送性などの伝導、伝搬、伝送機能膜、高屈折率膜、紫外線吸収や熱線反射等の光選択吸収、反射、透過膜、エレクトロクロミズム膜などとしての機能を発揮させようとするには、本発明の微粒子含有金属酸化物膜が連続膜であることが好ましい。(光)触媒機能膜、色素増感型太陽電池用半導体膜などの大きい表面積が必要とされる膜や、低屈折率膜などとしての機能を発揮させようとするには、金属酸化物が多孔質構造であり、かつ、金属酸化物膜が連続膜であることが好ましい。また、紫外線発光体や蛍光体などの発光機能膜などとしての機能を発揮させようとする場合は、金属酸化物膜が連続膜であることが好ましい。
【0104】
金属酸化物膜を構成する金属酸化物が結晶性である場合、その結晶子の配向性については、特に限定はされないが、具体的には、結晶子の結晶軸方向が被覆対象となる基材等の表面に垂直に配向していても特定の角度をもって配向していても、あるいは、基材表面に沿うように該表面と平行に配向していてもよい。また、全ての結晶子の配向性が揃っていても、ランダムであっても、一部が同じ配向性で残りがランダムであってもよく、特に限定はされないが、結晶子の配向性が揃っている方が、電気や熱の伝導特性;(光)磁気的性質;スピン半導体性質;強誘電性、焦電性、圧電性等の誘電特性;発光特性;電子線放出特性等において優れたものとなるため好ましい。
【0105】
金属酸化物膜を構成する金属酸化物が結晶性である場合、その結晶子の形状は、特に限定はされないが、具体的には、例えば、球状、楕円球状、立方体状、直方体状、多面体状、ピラミッド状、柱状、チューブ状、りん片状、(六角)板状等の薄片状や、過飽和度の高い条件下で結晶の稜や角が優先的に伸びて生成した樹枝状、骸晶状などが挙げられる。
金属酸化物膜を構成する金属酸化物が結晶性である場合、その結晶子の大きさについては、特に限定はされないが、具体的には、結晶子の結晶軸方向の大きさは以下の範囲が好ましい。
【0106】
すなわち、金属酸化物膜が連続層である場合、各結晶子の結晶軸方向の大きさは、通常、1nm〜1μmであることが好ましい。
金属酸化物膜が不連続層である場合は、膜中に存在する金属酸化物が単結晶からなるものであれば、各単結晶(各結晶子)の結晶軸方向の大きさは、通常、1nm〜10μmであることが好ましく、存在する金属酸化物が多結晶体からなるものであれば、各結晶子の結晶軸方向の大きさは、通常、1nm〜100nmであることが好ましい。
金属酸化物膜が不連続膜であり、かつ、存在する金属酸化物が単結晶からなるものである場合であって、発光素子や電子線放出素子として使用する場合は、各結晶子の形状が量子ドット状であり、大きさが10nm以下であること、あるいは、各結晶子の形状が柱状であり、大きさについては長径と短径の比(長径/短径)が2〜100であって短径(太さ)が100nm以下(好ましくは50nm以下、より好ましくは20nm以下)であること、が好ましい。さらに、先鋭性を有する結晶子形状であると、電子線放出特性に優れる点でより好ましい。
【0107】
また、金属酸化物膜を構成する金属酸化物は、可視光に対して透過性が高いことが好ましく、具体的には、金属酸化物膜のバンドギャップが3.1eV以上のエネルギー帯域にあるものが好ましい。このように可視光に対する透過性が高い金属酸化物を用いると、金属酸化物膜として優れた透明導電膜、発光体膜等を設計しやすい。
本発明の膜形成方法により得られる金属酸化物膜は、特定の組み合わせの出発原料から得られる金属酸化物を必須とする膜であるが、膜を構成する金属酸化物が結晶性であるか非結晶性であるかに関わらず、金属酸化物膜は、有機基(金属酸化物に直接結合した有機基など)を含むものであってもよいし、有機基が除去されてなるものであってもよい。該有機基は、金属酸化物の原料化合物として用いられる金属カルボン酸塩、金属アルコキシ基含有化合物、アルコールあるいはカルボキシル基含有化合物由来のアルコキシル基やカルボキシル基、および/または、他の原料化合物由来の有機基、の一部であることが好ましい。金属酸化物膜が有機基を含む場合、有機基は、金属酸化物膜全体中、炭素/金属(原子%)で5%未満であることが好ましく、さらに2%未満であることが好ましく、特に1%未満であることが好ましい。一方、有機基が除去されてなる金属酸化物膜としては、気相中(空気中などの酸化性雰囲気下、還元性雰囲気下、不活性雰囲気下など)での加熱により有機基が分解されたものや、液相中での加熱により有機基が分解されたものや、酸性または塩基性の水溶液による処理や、カルボキシル基であればアルコール処理、アルコキシ基であれば酢酸処理などの化学的方法により除去されたもの、および、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理などの物理的により除去されたものが挙げられる。
【0108】
本発明の膜形成方法により得られる金属酸化物膜の厚み(被覆対象となる基材等の表面に対して垂直な方向の厚み)は、特に限定はされないが、通常、1nm〜1000μmであることが好ましく、より好ましくは1nm〜10μmである。特に、得られる金属酸化物膜が多孔質状構造の連続層または不連続層である場合は、10nm〜100μmがより好ましい。上記厚みが1nm未満であると、所望の金属酸化物の機能が発揮されないおそれがあり、1000μmを超えると、機能面においてさらなる向上は見られず、却ってコスト高となったり、厚くなり過ぎて使用しにくくなるおそれがある。
【0109】
本発明の膜形成方法により得られる金属酸化物膜においては、前述した粒子製造方法により得られる金属酸化物粒子と同様に、該膜を構成する金属酸化物は、単一酸化物、複合酸化物および固溶体酸化物のいずれであってもよく、特に限定はされない。単一酸化物、複合酸化物および固溶体酸化物の例示等についても同様である。
本発明の膜形成方法により得られる金属酸化物膜は、前述した粒子製造方法により得られる金属酸化物粒子と同様に、金属酸化物の有する各種優れた機能・特性により、各種機能性分野における用途に用いることができる。例えば、透明導電、帯電防止、面状発熱体、熱伝導、導電体、半導体、光吸収体、磁性体、電波吸収、電磁波遮断、希薄磁性半導体、紫外線吸収、熱線反射、高屈折率、低屈折率、反射防止、発光・蛍光体、電子線放出素子、(光)触媒、太陽電池用半導体、電極、光電変換素子、熱電変換素子、表面弾性波素子、(強)誘電体、圧電体、バリスターおよびエレクトロルミネッセンス等の機能・特性を有する膜として、フィルム、ガラス、セラミックスあるいは金属等の基材表面に形成して、機能性フィルム等とし、窓材(自動車用、建築用等)、農業用資材、メモリー素子、光源、表示デバイス、情報通信・伝送の各種デバイス、太陽電池などの各種用途分野で有用な材料として好適に用いることができる。
【0110】
本発明の膜形成方法を用い、前述のごとく、微粒子を含有するようにして得られた金属酸化物膜は、金属酸化物の種類と微粒子の種類との組み合わせを適宜考慮することにより、加算的効果あるいは相乗的効果によって、より一層優れた機能を有する膜にすることができる。例えば、▲1▼膜の透明性がより高くなる点で、金属酸化物と微粒子との屈折率の差が小さくなる組み合わせが好ましく、具体的にはその差が0.2以下であることが好ましい。また、▲2▼機械的強度に優れ透明性の高い膜が得られる点で、膜を構成する金属酸化物の主たる含有金属元素と、微粒子が金属微粒子や金属酸化物等の金属含有微粒子の場合の含有金属元素とが同種であることが好ましく、さらには、▲3▼非常に導電性に優れた導電膜が得られる点で、膜を構成する金属酸化物として電子移動度の高い半導体(例えば、酸化亜鉛、チタニアなど)を用い、微粒子としてキャリア濃度の高い導電性微粒子(例えば、ITO、InをドープしたZnO、SbをドープしたSnO2、金属など)を用いることが好ましく、▲4▼ZnS系、MnをドープしたZnOなどの蛍光体微粒子を、該蛍光体微粒子よりもバンドギャップの大きいZnOやIn2O3、SiO2等の金属酸化物からなる膜中に分散させて得られる膜は発光効率の高い膜として好ましく、▲5▼Fe、Co、Fe3O4など強磁性体微粒子を、ZnO、TiO2、In2O3等の半導体酸化物からなる膜中に分散させて得られる膜は、電子スピンと電子の電荷との相互作用を利用する膜として従来にはない機能性を発現しうる点で好ましく、▲6▼高分子ポリマー微粒子やシリカ系微粒子などの屈折率の低い(n<1.5)微粒子を、屈折率の高い(n>1.8)ZnO、ZrO2、In2O3、TiO2などの金属酸化物からなる膜中に分散して得られる膜は、光の透過性、特に直線透過性に優れる膜として好ましい。
【0111】
−第1の方法、特に好適な実施形態−
本発明にかかる第1の方法における、特に好適な実施形態(以下、特に好適な実施形態と称することがある。)は、前述したように、金属カルボン酸塩とアルコールとを出発原料とし、前記出発原料を反応させることにより金属酸化物を生成させる際に、前記反応を3級アミンの存在下で行うことを特徴とする。好ましくは、上記出発原料を混合すると同時かまたはその後に該混合系を3級アミンの存在下で高温状態にする方法であり、このような過程を経て生成する金属酸化物を、例えば、粒子として得るようにしたり、膜として基材の表面に定着させるようにする。
【0112】
特に好適な実施形態において、出発原料となる特定の組み合わせとしては、前述した組み合わせAと同様に、金属カルボン酸塩とアルコール(以下、便宜上、組み合わせCと称する。)を用いるようにする。
特に好適な実施形態においては、アルコールと金属カルボン酸塩を用い、この出発原料の反応により金属酸化物を生成させる際に、3級アミンという特定の化合物の存在下で行うようにすれば、種々の飛躍的効果が得られるのである。具体的には、比較的低温での反応による金属酸化物の結晶化が可能であり、経済性、生産性、安全性および操作の簡便性等の点において優れた効果が得られるとともに、特定の化合物として添加した3級アミンにより、金属カルボン酸塩の溶解性が飛躍的に向上し、金属酸化物含有率が高いだけでなく、結晶性の非常に高い金属酸化物を得ることができる。さらに、3級アミンを用いた場合は、同様に上述の効果を示し得る1級アミンや2級アミンを用いた場合とは異なり、副生物としての酸アミド化合物を生成しないため、安全面や環境面においてより一層好ましいことは言うまでもなく、その除去等を考慮するとコスト面や操作性ひいては生産性等においても大きな効果が得られる。
【0113】
組み合わせCにおける金属カルボン酸塩およびアルコールとしては、具体的には、前述の組み合わせAに用いた金属カルボン酸塩およびアルコールと同様のものが好ましく挙げられる。
特に好適な実施形態においては、上記出発原料となる金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系とは、該金属カルボン酸塩およびアルコールをそれぞれ少なくとも一部ずつ混ぜ合わせた段階以降の系を意味する。この混合系の内部状態としては、金属カルボン酸塩およびアルコールのいずれもが原料状態の化学構造を変化させずに存在している状態であることに限らず、例えば、金属カルボン酸塩およびアルコールの少なくとも1つが溶解状態下で特有の化学構造に変化して存在している状態であってもよいし、金属カルボン酸塩とアルコールとがこれらの予備反応物となって存在している状態であってもよく、すなわち、出発原料そのままの状態から何れの状態に変化して存在していてもよい。
【0114】
ここでいう予備反応物(以下、予備反応物cと称することがある。)は、金属カルボン酸塩とアルコールとから得られるものであって、金属カルボン酸塩とアルコールとの反応による反応物として金属酸化物(以下、金属酸化物Cと称することがある。)が生成されるまでの任意の段階の状態の反応中間体であり、生成される金属酸化物Cに対する前駆体(金属酸化物前駆体)である。その他、予備反応物cの具体的態様については、前述した粒子製造方法における予備反応物aについての説明が好ましく適用できるが、当該説明中、アルコールまたはアルコキシ基が配位してなることに加え、さらに3級アミンまたはそのアミノ基が配位してなるものであってもよい。
【0115】
出発原料となる金属カルボン酸塩とアルコールとの使用量についても、前述した粒子製造方法における説明が好ましく適用できる。
特に好適な実施形態において、金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系は、ペースト状、懸濁液状、溶液状などの流動性のある液状であることが好ましい。さらに、必要に応じて、後述する反応溶媒をも混合することによって液状としてもよい。上記混合系における金属カルボン酸塩の存在状態としては、通常、粒子状で分散した状態や、一部が溶解し残りが粒子状で分散した状態などが考えられるが、特に好適な実施形態においては、出発原料の反応の際に存在させる3級アミンが、金属カルボン酸塩の溶解性を飛躍的に向上させるため、より一層多くの金属カルボン酸塩が溶解した状態となる。
【0116】
金属カルボン酸塩とアルコールとを出発原料として金属酸化物Cを得るにあたっては、さらに反応溶媒を用いることができる。具体的には、これら出発原料を混合するにあたり、あるいは、これら出発原料の混合系を高温状態にするにあたり、さらに反応溶媒を加えて行うようにすればよい。
反応溶媒をも用いる場合、その使用量、および、反応溶媒の具体的な例示については、前述した粒子製造方法における説明が好ましく適用できる。
金属酸化物Cは、前述のごとく、出発原料を金属カルボン酸塩とアルコールとし、これらの混合系を高温状態にすることにより得られることが好ましいが、上記混合系を高温状態にするとは、上記混合系の温度を常温よりも高い温度であって金属酸化物Cが生成し得る温度、またはそれ以上の温度に昇温することである。上記高温状態の温度(金属酸化物Cが生成し得る温度)は、得ようとする金属酸化物の種類等によって異なるが、通常50℃以上であり、より一層結晶性の高い金属酸化物を得るためには、80℃以上が好ましく、より好ましくは100〜300℃の範囲、さらに好ましくは120〜250℃の範囲、さらにより好ましくは120〜200℃の範囲、特に好ましくは130〜190℃の範囲、最も好ましくは140〜190℃である。混合系の温度が上記範囲を下回ると、金属酸化物が十分に生成されないおそれがあり、目的とする前記反応以外に熱分解も生じて金属酸化物結晶が必要以上に微細化し、所望の酸化物特性が得られないおそれがある。また、得られた金属酸化物について、残存する有機基を除去したり、あるいは、より結晶成長を促すことを目的とし、必要に応じて、当該金属酸化物を300〜800℃で加熱してもよい。
【0117】
上記混合系を高温状態にする際の具体的な昇温手段(予備反応物cを得る場合に緩やかな高温状態にする際の昇温手段も含む)や、圧力条件、温度条件としては、前述した粒子製造方法における説明が好ましく適用できる。
金属酸化物Cを生成させる場合においては、金属カルボン酸塩と3級アミンとの混合系に含まれる水分が少ない方が、得られる金属酸化物の欠陥が少なくなるため好ましく、その具体的態様としては、前述した粒子製造方法における説明が好ましく適用できる。
特に好適な実施形態においては、前記混合系の高温状態は、金属カルボン酸塩とアルコールとを混合すると同時か、または、混合した後に得られていればよく、すなわち、混合系を得るための出発原料の混合と、混合系を高温状態にするための昇温とは、別々となるようにしてもよいし、同時(一部同時も含む)となるようにしてもよく、特に限定はされない。これらのより詳細な態様については、前述した粒子製造方法における説明が好ましく適用できる。
【0118】
特に好適な実施形態においては、前述のごとく金属酸化物を生成させるにあたり、この生成を3級アミンの存在下で行うようにすることが重要である。具体的には、前記混合系に、さらに3級アミンを添加するようにしていることが重要である。ここで、前記混合系に3級アミンを添加するようにするとは、前記混合系を高温状態とする際に該混合系に3級アミンが添加されているようにすることであってもよいし、前記混合系を高温状態とすると同時または高温状態とした後に3級アミン該混合系に添加することであってもよく、特に限定はされないが、前者の形態を必須とすることが好ましい。前者の形態にあっては、前記混合系を高温状態にするまでに3級アミンが添加されていればよいため、これを満たす範囲内であれば、例えば、特定の組み合わせの出発原料を混合して混合系を得る前に出発原料の少なくとも一方に予め3級アミンを添加しておいてもよいし、特定の組み合わせの出発原料を混合すると同時または混合した後にこれらの混合系に3級アミンを添加してもよく、これらを組み合わせた添加のタイミングであってもよい。
【0119】
特に好適な実施形態において用いる3級アミンとしては、特に限定はされないが、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリス(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)アミン、N,N−ビス(2,2−ジエトキシエチル)メチルアミン、1,1−ジメトキシトリメチルアミン、N,N−ジエチルメチルアミン、N,N−ジメチルエチルアミン、N,N−ジメチルブチルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン、N,N−ジメチルベンジルァミン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチル−N−メチルアニリンおよびN,N−ジエチルアニリン等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0120】
特に好適な実施形態において、出発原料の反応の際に前記混合系に存在させる3級アミンの使用量としては、特に限定はされないが、使用する金属カルボン酸塩中の金属原子に対する3級アミンのモル比で、0.1倍モル以上であることが好ましく、より好ましくは0.5〜50倍モル、さらに好ましくは0.5〜10倍モルである。3級アミンを上記使用量範囲内で混合系に添加すれば、前述した3級アミンの効果を容易に達成することができる。上記モル比が0.1倍モル未満であると、3級アミンを存在させたことによる前述の効果が十分に発揮されないおそれがある。上記モル比が大きすぎると、3級アミンが粒子調製後の液に多く残存することとなり、粒子調製液やこれにより得られる塗料や塗膜等の特性劣化(分散性の阻害等)を誘発させるおそれがある。
【0121】
特に好適な実施形態においては、上述した出発原料の反応を液相で行うことにより、前記金属酸化物を粒子として生成させて得ることができる。具体的には、出発原料である金属カルボン酸塩とアルコールとを含む反応系(好ましくは、前記出発原料の混合系)を、前述した3級アミンの存在下、液のままで加熱等して前記反応を行い、金属酸化物粒子の生成を行うようにする。
特に好適な実施形態において、金属酸化物を粒子として生成する場合は、出発原料を混合する時、出発原料の混合系を高温状態にする時や該高温状態にするための昇温を行う時、および、3級アミンの添加時などの、前述した全ての過程は撹拌下で行うことが好ましい。常に撹拌下で行うことによって、金属酸化物含有率が高く、金属酸化物結晶性に優れた金属酸化物粒子を容易に得ることができる。また、粒子径や粒子形状等が均一な金属酸化物粒子を容易に得ることができる。
【0122】
特に好適な実施形態により得られる金属酸化物粒子の1次粒子径(結晶子径)は、特に限定はされないが、20nm以下が好ましく、より好ましくは10nm以下である。上記1次粒子径(結晶子径)が20nm以下であると、金属酸化物粒子を含有する膜や樹脂成形体等の透明性が保たれるため好ましい。なお、上記結晶子径は、X線回折測定を行い、ウィルソン法解析で求めた値Dwである。
特に好適な実施形態により得られる金属酸化物粒子の分散粒径は、200nm以下が好ましく、より好ましくは100nm以下、さらにより好ましくは50nm以下である。上記分散粒径が200nm以下であると、金属酸化物粒子を含有する膜や樹脂成型体等の透明性、機械的特性等が保たれるため好ましい。
【0123】
特に好適な実施形態により得られる金属酸化物粒子を構成する金属酸化物は、単一酸化物、複合酸化物および固溶体酸化物のいずれであってもよいが、導電性機能などに優れる点では2種以上の金属元素を含有する複合酸化物あるいは固溶体酸化物が好ましい。単一酸化物、複合酸化物および固溶体酸化物それぞれについての具体例としては、前述した粒子製造方法での説明において列挙したものと同様のものが好ましく挙げられる。
特に好適な実施形態により金属酸化物粒子を調製した後の調製液は、そのまま、あるいは濃縮して溶媒分散体や可塑剤分散体として使用することができるほか、バインダー成分(樹脂成分)を加えて成膜用組成物(塗料組成物)とし、これを基材に塗布して微粒子分散膜を形成したり、あるいは、同様にバインダー成分(樹脂成分)などに含有させて成形用樹脂組成物などとすることができる。また、濃縮乾固や遠心分離で溶媒を除去した後、加熱や乾燥をして微粒子粉体として取り扱うこともできる。上記バインダーとしては、前述した粒子製造方法における例示が好ましく適用できる。
【0124】
特に好適な実施形態においてはまた、前記金属酸化物を基材の表面に膜として定着させ、金属酸化物膜を得ることができる。
特に好適な実施形態により金属酸化物膜を得る場合は、前記出発原料の混合系を基材に接触させ、この接触系を高温状態にすることにより、上記基材の表面に金属酸化物を膜として生成させ定着させるようにすることが好ましい。具体的には、例えば、上記接触系を高温状態にすることが、上記混合系を表面に塗布してなる基材を高温状態にするか、または、上記混合系に基材を漬けておいて高温状態にすることにより、基材の表面に金属酸化物を膜として生成させ定着させるようにすることがより好ましい。ここで具体的にいう金属酸化物の生成・定着の方法については、前者は、いわゆる塗布法に属し、後者は、いわゆる液中析出法(浸漬法)に属する方法である。
【0125】
特に好適な実施形態により金属酸化物膜を得る場合はまた、前記出発原料の混合系を、高温状態にしながらかまたは高温状態にしておいて、上記基材の表面に塗布することにより、基材の表面に金属酸化物を膜として生成させ定着させるようにすることがより好ましい。ここでいう金属酸化物の生成・定着の方法は、いわゆる塗布法に属する方法である。
特に好適な実施形態により金属酸化物膜を得るにあたり、出発原料、その混合系および3級アミン等の詳細、ならびに、出発原料の混合およびその混合系を高温状態にすること等の操作条件や反応条件等の詳細については、基本的に、すべて先に説明した、前述した膜形成方法と同様であることが好ましい。
【0126】
特に好適な実施形態により金属酸化物膜を得る場合において、用い得る基材(すなわち、金属酸化物膜の被覆対象となり得る基材)としては、その材質や形状・形態等は、特に限定されない。具体的には、前述した膜形成方法での説明における記載と同様である。
特に好適な実施形態により金属酸化物膜を得る場合において、液中析出法および塗布法についての簡単な説明としては、組み合わせA、Bを組み合わせCとし、予備反応物a、bを予備反応物cとする以外は、前述した膜形成方法と同様の説明が適用できる。
【0127】
以下、特に好適な実施形態により金属酸化物膜を得る場合における液中析出法および塗布法について詳細に説明するが、特に以下に述べる点以外は、基本的には、すべて前述した膜形成方法と同様の説明が適用できる。
すなわち、液中析出法においては、接触系を高温状態にする場合の温度(金属酸化物が生成し得る温度)は、具体的には、得ようとする金属酸化物の種類等によって異なるが、通常、50〜300℃にすることが好ましく、より一層結晶性の高い金属酸化物を得るためには、80℃以上が好ましく、より好ましくは100〜300℃の範囲、さらに好ましくは120〜250℃の範囲、さらにより好ましくは120〜200℃の範囲、特に好ましくは130〜190℃の範囲、最も好ましくは140〜190℃である。接触系を高温状態にする場合の温度が上記範囲を下回ると、金属酸化物が十分に生成されないおそれがあり、目的とする前記反応以外に熱分解も生じて金属酸化物結晶が必要以上に微細化し、所望の酸化物特性が得られないおそれがある。また、得られた金属酸化物について、残存する有機基を除去したり、あるいは、より結晶成長を促すことを目的とし、必要に応じて、当該金属酸化物を300〜800℃で加熱してもよい。
【0128】
一方、塗布法においては、接触系または混合系を高温状態にする場合の温度(金属酸化物が生成し得る温度)は、具体的には、得ようとする金属酸化物の種類等によって異なるが、通常は液中析出法と同様に、50〜300℃にすることが好ましく、より一層結晶性の高い金属酸化物を得るためには、80℃以上が好ましく、より好ましくは100〜300℃の範囲、さらに好ましくは120〜250℃の範囲、さらにより好ましくは120〜200℃の範囲、特に好ましくは130〜190℃の範囲、最も好ましくは140〜190℃である。接触系または混合系を高温状態にする場合の温度が上記範囲を下回ると、金属酸化物が十分に生成されないおそれがあり、目的とする前記反応以外に熱分解も生じて金属酸化物結晶が必要以上に微細化し、所望の酸化物特性が得られないおそれがある。また、得られた金属酸化物について、残存する有機基を除去したり、あるいは、より結晶成長を促すことを目的とし、必要に応じて、当該金属酸化物を300〜800℃で加熱してもよい。
【0129】
塗布法においてはまた、塗布液として、予備反応物cを含むものを用いることがより好ましく、より金属酸化物含有率が高く、結晶性の高い金属酸化物の膜を得ることができる。
特に好適な実施形態により得られる金属酸化物膜において、膜を構成する金属酸化物(金属酸化物部分)が有機基を有する場合、所定の処理方法により、該有機基を除去することができる。この処理方法としては、具体的には、前述した膜形成方法において説明した処理方法を好ましく適用できる。
特に好適な実施形態により金属酸化物膜を得る場合においては、得られる金属酸化物膜に微粒子を含むようにすることもできる。該微粒子の種類、形状および含有率、ならびに、該微粒子を膜に含有させる方法等については、前述した膜形成方法での説明が好ましく適用できる。
【0130】
特に好適な実施形態により金属酸化物膜を得るようにすれば、金属酸化物含有率が高く配向性も非常に高い膜を、より低温かつ短時間で、各種基材表面に形成することができる。
特に好適な実施形態により得られた金属酸化物膜の、金属酸化物含有率の測定方法および該含有率の範囲については、前述した膜形成方法での説明が好ましく適用できる。
特に好適な実施形態により得られる金属酸化物膜の形態は、例えば、基材表面上の所望の面積部分に切れ目なく連続的に広がって存在している形態(連続膜)であってもよいし、基材表面上の所望の面積部分に不連続的に存在している形態(不連続膜)であってもよく、これらの具体的態様については、前述した膜形成方法での説明が好ましく適用できる。
【0131】
特に好適な実施形態により得られる金属酸化物膜を構成する金属酸化物は、結晶性の金属酸化物であってもよいし、非結晶性の金属酸化物であってもよく、これらの具体的態様については、前述した膜形成方法での説明が好ましく適用できる。
特に好適な実施形態により得られる金属酸化物膜は、有機基(金属酸化物に直接結合した有機基など)を含むものであってもよいし、有機基が除去されてなるものであってもよく、これらの具体的態様については、前述した膜形成方法での説明が好ましく適用できる。
【0132】
特に好適な実施形態により得られる金属酸化物膜の厚み(被覆対象となる基材等の表面に対して垂直な方向の厚み)は、特に限定はされないが、通常、1nm〜1000μmであることが好ましく、より好ましくは1nm〜10μmである。特に、得られる金属酸化物膜が多孔質状構造の連続層または不連続層である場合は、10nm〜100μmがより好ましい。上記厚みが1nm未満であると、所望の金属酸化物の機能が発揮されないおそれがあり、1000μmを超えると、機能面においてさらなる向上は見られず、却ってコスト高となったり、厚くなり過ぎて使用しにくくなるおそれがある。
【0133】
特に好適な実施形態により得られる金属酸化物膜においては、前述した粒子製造方法により得られる金属酸化物粒子と同様に、該膜を構成する金属酸化物は、単一酸化物、複合酸化物および固溶体酸化物のいずれであってもよく、特に限定はされない。単一酸化物、複合酸化物および固溶体酸化物の例示等についても同様である。
特に好適な実施形態により得られる金属酸化物膜は、前述した金属酸化物粒子と同様に、金属酸化物の有する各種優れた機能・特性により、各種機能性分野における用途に用いることができる。具体的には、前述した膜形成方法での説明が好ましく適用できる。
【0134】
特に好適な実施形態を用い、前述のごとく、微粒子を含有するようにして得られた金属酸化物膜は、金属酸化物の種類と微粒子の種類との組み合わせを適宜考慮することにより、加算的効果あるいは相乗的効果によって、より一層優れた機能を有する膜となる。具体的態様としては、前述した膜形成方法での説明が好ましく適用できる。
−第2の方法−
本発明にかかる金属酸化物の製造方法のうち、第2の方法は、前述したように、1級アミンおよび/または2級アミンと金属カルボン酸塩とを出発原料とし、前記出発原料を酸アミド化合物が生成する条件下で反応させることにより金属酸化物を生成させることを特徴とする。好ましくは、上記出発原料を混合すると同時かまたはその後に該混合系を高温状態にする方法であり、このような過程を経て生成する金属酸化物を、例えば、粒子として得るようにしたり、膜として基材の表面に定着させるようにする。
【0135】
本発明にかかる第2の方法においては、出発原料となる特定の組み合わせとして、金属カルボン酸塩と、1級アミンおよび/または2級アミンと(以下、組み合わせDと称することがある。)を用いるようにする。なお、以下においては「1級アミンおよび/または2級アミン」を、「1級/2級アミン」と示すことがある。
上述のごとく、1級/2級アミンを出発原料の一つとして用いれば、高温で熱分解して金属酸化物を得る従来の手法とは異なり、前述の金属カルボン酸とアルコールとを出発原料とする反応系と同様に、比較的低温での反応による金属酸化物の結晶化が可能であり、経済性、生産性、安全性および操作の簡便性等の点において優れた効果が得られる。また、出発原料として用いた1級/2級アミンは、金属カルボン酸塩の溶解性を飛躍的に向上させ得るため、金属酸化物含有率が高いだけでなく、結晶性の非常に高い金属酸化物が得られる。さらに、1級/2級アミンが金属カルボン酸との反応に直接関与していることを要因として、金属酸化物の結晶成長が飛躍的に促進されていると考えられ、結果として、金属酸化物の粒子を得る場合においては、比較的粒径の大きいものであっても容易に得ることができ、金属酸化物を膜として得る場合においても、同様の理由で、配向性が非常に高い金属酸化物膜を得ることができる。
【0136】
組み合わせDにおける金属カルボン酸塩としては、具体的には、前述の組み合わせAに用いた金属カルボン酸塩と同様のものが好ましく挙げられる。
組み合わせDにおける1級アミンや2級アミンとしては、特に限定はないが、1級アミンとしては、例えば、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、t−ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2−メトキシエチルアミン、アリルアミン、ベンジルアミン、アニリン、2,5−ジメトキシアニリン、3,5−ジメトキシアニリン、p−ブチルアニリン、p−ブロモアニリン、p−クロロアニリン、m−クロロアニリンおよび3,5−ジメチルアニリン等を挙げることができ、2級アミンとしては、例えば、ジアリルアミン、ジイソプロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ビス−2−エチルヘキシルアミン、N−メチルヘキシルアミン、N−エチル−n−ブチルアミン、N−t−ブチルイソプロピルアミン、ビス−2−メトキシエチルアミン、ジベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−n−ブチルアニリンおよびN−n−プロピルアニリン等を挙げることができる。なかでも、得られた金属酸化物への残存が少なくできる点で、炭素数9以下の1級アミンや2級アミンが好ましい。これら1級アミンや2級アミンは、いずれか1種のみ用いてもよいし、2種以上をどのように組み合わせて用いてもよく、特に限定はされない。
【0137】
本発明にかかる第2の方法においては、上記出発原料となる金属カルボン酸塩と1級/2級アミンとの混合系とは、該金属カルボン酸塩および1級/2級アミンをそれぞれ少なくとも一部ずつ混ぜ合わせた段階以降の系を意味する。この混合系の内部状態としては、金属カルボン酸塩および1級/2級アミンのいずれもが原料状態の化学構造を変化させずに存在している状態であることに限らず、例えば、金属カルボン酸塩および1級/2級アミンの少なくとも1つが溶解状態下で特有の化学構造に変化して存在している状態であってもよいし、金属カルボン酸塩と1級/2級アミンとがこれらの予備反応物となって存在している状態であってもよく、すなわち、出発原料そのままの状態から何れの状態に変化して存在していてもよい。
【0138】
ここでいう予備反応物(以下、予備反応物dと称することがある。)は、金属カルボン酸塩と1級/2級アミンとから得られるものであって、金属カルボン酸塩と1級/2級アミンとの反応による反応物として金属酸化物(以下、金属酸化物Dと称することがある。)が生成されるまでの任意の段階の状態の反応中間体であり、生成される金属酸化物Dに対する前駆体(金属酸化物前駆体)である。すなわち、予備反応物dは、出発原料としての金属カルボン酸塩でも1級/2級アミンでもなく、両者の反応物ではあるが、生成される金属酸化物Dでもない金属酸化物前駆体である。なお、上述の金属酸化物Dが生成されるまでの任意の段階の状態とは、用いた金属カルボン酸塩のうちの50重量%以上が粒径5nm以上の粒子状の金属酸化物Dの生成が認められる前の状態をいうとする。
【0139】
上記予備反応物dは、例えば、1級/2級アミンまたはこれらを含む溶媒に、金属カルボン酸塩を溶解させるだけで直ちに得られる場合もあるが、好ましくは金属カルボン酸塩と1級/2級アミンとの混合と、緩やかな昇温(金属酸化物Dが得られる高温状態にするよりも緩やかな条件下での昇温)と、好ましくは加圧下の加熱とにより得られる。予備反応物dは溶液状態であることが好ましい。
予備反応物dとしては、特に限定はされないが、例えば、1)金属カルボン酸塩の金属原子に、アミンまたはアミノ基が配位(吸着による配位も含む。)してなる金属錯体モノマー(この場合、カルボキシル基の一部がアミンのアミノ基で置換された錯体も含まれる。)、2)金属カルボン酸塩が酸素原子を介して「金属−酸素−金属」の結合が形成されてなる縮合物に原料のカルボン酸基(−COO基)以外にさらにアミンまたはアミノ基が配位(吸着による配位も含む。)してなる化合物(金属錯体モノマー誘導体)、などが好ましく挙げられる。なかでも、1)でいう金属錯体モノマーがより好ましく挙げられる。また、上記金属錯体モノマーは、上述のような方法以外によっても得ることができる。上述の方法以外によって得られた金属錯体モノマーを上記混合系にさらに加えて高温状態にすることにより金属酸化物を得ることもできる。
【0140】
出発原料となる上記金属カルボン酸塩と1級/2級アミンとの使用量に関しては、特に限定はされないが、使用する金属カルボン酸塩中の金属原子に対する1級/2級アミンのモル比で、1〜50倍モルであることが好ましく、より好ましくは1〜10倍モルである。上記モル比が1倍モル未満であると、1級/2級アミンを出発原料として用いることによる前述した効果が十分に発揮されないおそれがあり、50倍モルを超えると、得られた金属酸化物における1級/2級アミンの残存量が多くなり過ぎ、当該金属酸化物の特性を低下させるおそれがある。後述するように、用いる反応溶媒にアルコールを含む場合(アルコールの存在下で反応を行う場合)においては、使用する金属カルボン酸塩中の金属原子に対して、アルコール中の水酸基と1級/2級アミンとの総量のモル比が上記と同様の範囲であるとともに、1級/2級アミンのみのモル比については0.1倍モル以上であることが好ましく、より好ましくは0.3倍モル以上であり、さらに好ましくは0.5倍モル以上である。また、1級/2級アミンのみの金属カルボン酸塩の使用量に対する含有割合についても、特に限定はされないが、10重量%を超える割合であることが好ましく、より好ましくは10重量%を超え、1000重量%以下、さらに好ましくは15重量%以上、250重量%以下である。さらに、必要に応じ、1級/2級アミンの使用量は、上記モル比と上記含有割合とを共に満たす範囲であることが特に好ましい。上記モル比や含有割合については、上記範囲に満たない場合、1級/2級アミンを出発原料として用いることによる前述した効果が十分に発揮されないおそれがあり、上記範囲を超える場合、得られた金属酸化物における1級/2級アミンの残存量が多くなり過ぎ、当該金属酸化物の特性を低下させるおそれがある。
【0141】
本発明にかかる第2の方法において、金属カルボン酸塩と1級/2級アミンとの混合系は、ペースト状、懸濁液状および溶液状などの流動性のある液状であることが好ましい。さらに、必要に応じて、後述する反応溶媒をも混合することによって液状としてもよい。上記混合系における金属カルボン酸塩の存在状態としては、通常、粒子状で分散した状態や、一部が溶解し残りが粒子状で分散した状態などが考えられるが、第1の製造方法においては、1級/2級アミンが金属カルボン酸塩の溶解性を飛躍的に向上させるため、より一層多くの金属カルボン酸塩が溶解した状態となる。
【0142】
金属カルボン酸塩と1級/2級アミンとを出発原料として金属酸化物Dを得るにあたっては、さらに反応溶媒を用いることができる。具体的には、これら出発原料を混合するにあたり、あるいは、これら出発原料の混合系を高温状態にするにあたり、さらに反応溶媒を加えて行うようにすればよい。
反応溶媒をも用いる場合、その使用量については特に限定はないが、出発原料として用いた全ての金属カルボン酸塩および1級/2級アミンと反応溶媒との合計使用量に対する、上記全ての金属カルボン酸塩の合計使用量の割合が0.1〜50重量%となるようにすることが好ましい。これによって、金属酸化物を経済的に得ることができる。
【0143】
上記反応溶媒としては、水以外の溶媒、すなわち、非水溶媒が好ましい。非水溶媒としては、例えば、エチルベンゼン、オクタン、キシレン類、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン、ジメチルナフタレン、スチレン、ソルベントナフサ、デカリン、デカン、テトラリン、ドデシルベンゼン、トルエン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、流動パラフィン等の炭化水素;各種ハロゲン化炭化水素;アルコール(フェノール類や、多価アルコールおよびその誘導体で水酸基を有する化合物なども含む);アニソール、エピクロロヒドリン、エポキシブタン、クラウンエーテル類、ジイソアミルエーテル、ジエチルアセタート、ジオキサン、ジグリシジルエーテル、ジフェニルエーテル、ジブチルエーテル、ジベンジルエーテル、ジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル等のエーテルおよびアセタール;アセチルアセトン、アセトアルデヒド、アセトフェノン、アセトン、イソホロン、エチル−n−ブチルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジ−n−プロピルケトン、ホロン、メシチルオキシド、メチル−n−アミルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノン、メチル−n−ヘプチルケトン等のケトンおよびアルデヒド;アジピン酸ジエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセト酢酸エチル、アビエチン酸メチル、安息香酸ベンジル、安息香酸メチル、イソ吉草酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、ギ酸プロピル、クエン酸トリブチル、ケイ皮酸メチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸n−ブチル、酢酸ベンジル、酢酸メチル、酢酸メチルシクロヘキシル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル、シュウ酸ジブチル、酒石酸ジエチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、炭酸ジフェニル、炭酸ジメチル、乳酸ブチル、乳酸メチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、γ−ブチロラクトン、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ベンジル、プロピオン酸メチル、ホウ酸エステル類、マレイン酸ジオクチル、マロン酸ジメチル、酪酸イソアミル、酪酸メチル、リン酸エステル類等のエステル;エチレンカーボナート、プロピレンカーボネート、エチレングリコールジアセタート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジアセタート、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸ジエステル、両末端に水酸基を有しないポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)誘導体等の多価アルコール類のすべての水酸基の水素がアルキル基やアシル基で置換された誘導体化合物;カルボン酸およびその無水物や、シリコーン油、鉱物油等を挙げることができる。前記アルコール(フェノールや、多価アルコールおよびその誘導体で水酸基を有する化合物を含む。以下、アルコールと示す場合は同様とする。)としては、先述した金属酸化物Aを得る場合に用いるアルコールとして列挙したものと同様のものが好ましく挙げられる。
【0144】
反応溶媒としては、親水性溶媒が特に好ましい。具体的には、常温(25℃)において、水を5重量%以上含み溶液状態になり得る溶媒が好ましく、任意の量の水を含み溶液状態になり得る溶媒がより好ましい。
第1の製造方法においては、前述のごとく、金属酸化物Dは、出発原料とする金属カルボン酸塩と1級/2級アミンとを、酸アミド化合物が生成する条件下で反応させることにより得るようにする。
前述したように、本発明にかかる第2の方法では、金属カルボン酸塩と1級/2級アミンとの反応を、酸アミド化合物が生成し得る条件下で行うようにすることにより、前述した種々の効果が容易に得られる。なお、生成される酸アミド化合物としては、前記出発原料の種類に依存するため、特に限定はされないが、例えば、プロピルホルムアミド、ブチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、プロピルアセトアミド、ブチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、ジブチルアセトアミドなどが挙げられる。
【0145】
上記酸アミド化合物が生成し得る条件としては、特に限定はされないが、例えば、1級/2級アミンの使用量や、前記出発原料を反応させる際の反応温度条件等が挙げられる。これらのうち、反応温度条件について以下に具体的に説明する。
金属酸化物Dは、通常、前記出発原料の混合系を高温状態にすることにより得られることが好ましい。混合系を高温状態にするとは、上記混合系の温度、すなわち反応温度を、常温よりも高い温度であって金属酸化物Dが生成し得る温度、またはそれ以上の温度に昇温することである。上記高温状態の温度(金属酸化物Dが生成し得る温度)は、得ようとする金属酸化物の種類等によって異なるが、通常50℃以上であり、より一層結晶性の高い金属酸化物を得るためには、80℃以上が好ましく、より好ましくは100〜300℃の範囲、さらに好ましくは120〜250℃の範囲、さらにより好ましくは120〜200℃の範囲、特に好ましくは130〜190℃の範囲、最も好ましくは140〜190℃である。混合系の温度が上記範囲を下回ると、金属酸化物が十分に生成されないおそれがあり、目的とする前記反応以外に熱分解も生じて金属酸化物結晶が必要以上に微細化し、所望の酸化物特性が得られないおそれがある。また、得られた金属酸化物について、残存する有機基を除去したり、あるいは、より結晶成長を促すことを目的とし、必要に応じて、当該金属酸化物を300〜800℃で加熱してもよい。
【0146】
上記混合系を高温状態にする際の具体的な昇温手段(予備反応物dを得る場合に緩やかな高温状態にする際の昇温手段も含む)としては、ヒーター、温風や熱風による加熱が一般的であるが、これに制限されるものではなく、例えば、紫外線照射などの手段を採用することもできる。混合系を高温状態にする際は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力下で行ってもよく、特に限定はされないが、加圧下で出発原料を加熱等により高温状態にすることがより好ましい。また、反応溶媒等の沸点が金属酸化物Dの生成される反応温度よりも低い場合は、耐圧反応装置を用いて行うことも好ましい。通常、反応温度、反応時の気相圧は、溶媒となる成分の臨界点以下で行うが、超臨界条件で行うこともできる。
【0147】
金属酸化物Dを生成させる場合においては、金属カルボン酸塩と1級/2級アミンとの混合系に含まれる水分が少ない方が、得られる金属酸化物の欠陥が少なくなるため好ましい。具体的には、上記混合系中に、出発原料として使用した金属カルボン酸塩中の金属原子に対してモル比で4未満のわずかな水分しか含有しないことが好ましく、水分がモル比で1未満であるとさらに好ましく、0.5未満であると特に好ましく、0.1未満が最も好ましい。
第1の製造方法においては、前記混合系の高温状態は、金属カルボン酸塩と1級/2級アミンとを混合すると同時か、または、混合した後に得られていればよく、すなわち、混合系を得るための出発原料の混合と、混合系を高温状態にするための昇温とは、別々となるようにしてもよいし、同時(一部同時も含む)となるようにしてもよく、特に限定はされない。より詳しくは、前記混合系の昇温のための具体的手段(例えば加熱等)は、出発原料の混合に関わらず任意の方法やタイミングで行うことができ、例えば、混合前の出発原料の少なくとも一方を加熱等しておくことで混合と同時に該混合系を昇温させるようにしてもよいし、混合して得られる混合系に対して、該混合をしながらか又は該混合を終了した後で、加熱等を施し該混合系を昇温させるようにしてもよく、特に限定はされない。したがって、この混合と、昇温のための加熱等とのタイミングとしては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、1)金属カルボン酸塩と1級/2級アミンとを混合しておいて、これを加熱等により昇温し高温状態にする、2)1級/2級アミンを所定温度に加熱等しておき、これに金属カルボン酸塩を混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、3)反応溶媒と金属カルボン酸塩とを混合して所定温度に加熱等しておき、これに1級/2級アミンを混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、4)各成分(金属カルボン酸塩および1級/2級アミン、ならびに必要に応じて反応溶媒)を別々に加熱等しておいた後、これらを混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、5)金属カルボン酸塩と1級/2級アミンとを混合(および、必要により、上記高温状態にするよりも緩やかな条件下で加熱等)して予備反応物dを得ておいて、これを加熱等により昇温し高温状態にする、等が好ましく挙げられる。
【0148】
なお、予備反応物dを、金属カルボン酸塩と1級/2級アミンとの、混合、および、上記高温状態にするよりも緩やかな条件下での加熱等により得る場合、該混合と該昇温のための加熱等とのタイミングとしては、上述した金属酸化物Dを得る際の混合と昇温のための加熱等とのタイミングと同様であることが好ましい。
本発明にかかる第2の方法においては、上述した出発原料の反応を液相で行うことにより、前記金属酸化物を粒子として生成させて得ることができる。具体的には、出発原料である金属カルボン酸塩と1級/2級アミンとを含む反応系(好ましくは、前記出発原料の混合系)を、液のままで加熱等して前記反応を行い、金属酸化物粒子の生成を行うようにする。
【0149】
本発明にかかる第2の方法において、金属酸化物を粒子として生成する場合は、出発原料を混合する時、および、出発原料の混合系を高温状態にする時や該高温状態にするための昇温を行う時などの、前述した全ての過程は撹拌下で行うことが好ましい。常に撹拌下で行うことによって、金属酸化物含有率が高く、金属酸化物結晶性に優れた金属酸化物粒子を容易に得ることができる。また、粒子径や粒子形状等が均一な金属酸化物粒子を容易に得ることができる。
本発明にかかる第2の方法によれば、比較的1次粒子径(結晶子径)の大きい金属酸化物粒子を容易に得ることができる。特に、柱状や繊維状に成長した金属酸化物粒子は、電気伝導性、熱伝導性、音波伝搬性および光伝送製などの伝導、伝搬および伝送等の機能性フィラーとして非常に有用である。具体的には、上記粒子の長軸方向の結晶子径は、上限については50μm以下が好ましく、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。また下限については、特に限定はされないが、10nm以上が好ましく、より好ましくは20nm以上である。上記1次粒子径が大きすぎると、上記機能性フィラー等として用いた場合に、バインダー等における粒子の分散性が低下するおそれがある。なお、上記結晶子径は、X線回折測定を行い、ウィルソン法解析で求めた値Dwである。
【0150】
本発明にかかる第2の方法により得られる金属酸化物粒子を構成する金属酸化物は、単一酸化物、複合酸化物および固溶体酸化物のいずれであってもよいが、導電性機能などに優れる点では2種以上の金属元素を含有する複合酸化物あるいは固溶体酸化物が好ましい。単一酸化物、複合酸化物および固溶体酸化物それぞれについての具体例としては、前述した第1の方法における粒子製造方法での説明において列挙したものと同様のものが好ましく挙げられる。
本発明にかかる第2の方法により金属酸化物粒子を調製した後の調製液は、そのまま、あるいは濃縮して溶媒分散体や可塑剤分散体として使用することができるほか、バインダー成分(樹脂成分)を加えて成膜用組成物(塗料組成物)とし、これを基材に塗布して微粒子分散膜を形成したり、あるいは、同様にバインダー成分(樹脂成分)などに含有させて成形用樹脂組成物などとすることができる。また、濃縮乾固や遠心分離で溶媒を除去した後、加熱や乾燥をして微粒子粉体として取り扱うこともできる。上記バインダーとしては、前述した第1の方法における粒子製造方法における例示が好ましく適用できる。
【0151】
本発明にかかる第2の方法においてはまた、前記金属酸化物を基材の表面に膜として定着させ、金属酸化物膜を得ることができる。
本発明にかかる第2の方法により金属酸化物膜を得る場合は、前記出発原料の混合系を基材に接触させ、この接触系を高温状態にすることにより、上記基材の表面に金属酸化物を膜として生成させ定着させるようにすることが好ましい。具体的には、例えば、上記接触系を高温状態にすることが、上記混合系を表面に塗布してなる基材を高温状態にするか、または、上記混合系に基材を漬けておいて高温状態にすることにより、基材の表面に金属酸化物を膜として生成させ定着させるようにすることがより好ましい。ここで具体的にいう金属酸化物の生成・定着の方法については、前者は、いわゆる塗布法に属し、後者は、いわゆる液中析出法(浸漬法)に属する方法である。
【0152】
本発明にかかる第2の方法により金属酸化物膜を得る場合はまた、前記出発原料の混合系を、高温状態にしながらかまたは高温状態にしておいて、上記基材の表面に塗布することにより、基材の表面に金属酸化物を膜として生成させ定着させるようにすることがより好ましい。ここでいう金属酸化物の生成・定着の方法は、いわゆる塗布法に属する方法である。
本発明にかかる第2の方法により金属酸化物膜を得るにあたり、出発原料およびその混合系等の詳細、ならびに、出発原料の混合およびその混合系を高温状態にすること等の操作条件や反応条件等の詳細については、基本的に、すべて先に説明した、第2の方法により金属酸化物粒子を生成する場合と同様であることが好ましい。
【0153】
本発明にかかる第2の方法により金属酸化物膜を得る場合において、用い得る基材(すなわち、金属酸化物膜の被覆対象となり得る基材)としては、その材質や形状・形態等は、特に限定されない。具体的には、前述した第1の方法における膜形成方法での説明における記載と同様である。
本発明にかかる第2の方法により金属酸化物膜を得る場合において、液中析出法および塗布法についての簡単な説明としては、組み合わせA、Bを組み合わせDとし、予備反応物a、bを予備反応物dとする以外は、前述した第1の方法における膜形成方法と同様の説明が適用できる。
【0154】
以下、本発明にかかる第2の方法により金属酸化物膜を得る場合における液中析出法および塗布法について詳細に説明するが、特に以下に述べる点以外は、基本的には、すべて前述した第1の方法における膜形成方法と同様の説明が適用できる。
すなわち、液中析出法においては、出発原料の混合や加熱と基材の浸漬とのタイミングについては、例えば、上記基材を、前記混合系に漬けておいてから加熱する形態、加熱した1級/2級アミン中に基材を漬けておいて加熱した金属カルボン酸塩を添加する形態、加熱した反応溶媒と金属カルボン酸塩に基材を漬けておいて加熱した1級/2級アミンを添加する形態、予備反応物dに漬けてから加熱する形態、などを挙げることができる。
【0155】
液中析出法においてはまた、接触系を高温状態にする場合の温度(金属酸化物が生成し得る温度)は、具体的には、得ようとする金属酸化物の種類等によって異なるが、通常、50〜300℃にすることが好ましく、より一層結晶性の高い金属酸化物を得るためには、80℃以上が好ましく、より好ましくは100〜300℃の範囲、さらに好ましくは120〜250℃の範囲、さらにより好ましくは120〜200℃の範囲、特に好ましくは130〜190℃の範囲、最も好ましくは140〜190℃である。接触系を高温状態にする場合の温度が、上記範囲を下回ると、金属酸化物が十分に生成されないおそれがあり、上記範囲を超えると、目的とする前記反応以外に熱分解も生じて金属酸化物結晶が必要以上に微細化し、所望の酸化物特性が得られないおそれがある。また、得られた金属酸化物について、残存する有機基を除去したり、あるいは、より結晶成長を促すことを目的とし、必要に応じて、当該金属酸化物を300〜800℃で加熱してもよい。
【0156】
液中析出法においてはさらに、金属酸化物を経済的な時間で生成させるための温度は、金属カルボン酸塩の種類や1級/2級アミンの種類、または、予備反応物の種類により、適宜設定すればよい。金属酸化物の構造、結晶子や粒状金属酸化物の大きさおよび形状などに関して所望の金属酸化物膜を得ようとした場合、金属カルボン酸塩の種類や1級/2級アミンの種類、または、予備反応物の種類によって、適宜適切な反応温度を設定することが好ましい。
一方、塗布法においては、接触系または混合系を高温状態にする場合の温度(金属酸化物が生成し得る温度)は、具体的には、得ようとする金属酸化物の種類等によって異なるが、通常は液中析出法と同様に、50〜300℃にすることが好ましく、より一層結晶性の高い金属酸化物を得るためには、80℃以上が好ましく、より好ましくは100〜300℃の範囲、さらに好ましくは120〜250℃の範囲、さらにより好ましくは120〜200℃の範囲、特に好ましくは130〜190℃の範囲、最も好ましくは140〜190℃である。接触系または混合系を高温状態にする場合の温度が、上記範囲を下回ると、金属酸化物が十分に生成されないおそれがあり、上記範囲を超えると、目的とする前記反応以外に熱分解も生じて金属酸化物結晶が必要以上に微細化し、所望の酸化物特性が得られないおそれがある。また、得られた金属酸化物について、残存する有機基を除去したり、あるいは、より結晶成長を促すことを目的とし、必要に応じて、当該金属酸化物を300〜800℃で加熱してもよい。
【0157】
塗布法においてはまた、塗布液として、予備反応物dを含むものを用いることがより好ましく、より金属酸化物含有率が高く、結晶性の高い金属酸化物の膜を得ることができる。
本発明にかかる第2の方法により得られる金属酸化物膜において、膜を構成する金属酸化物(金属酸化物部分)が有機基を有する場合、所定の処理方法により、該有機基を除去することができる。この処理方法としては、具体的には、前述の第1の方法における膜形成方法において説明した処理方法を好ましく適用できる。
【0158】
本発明にかかる第2の方法により金属酸化物膜を得る場合においては、得られる金属酸化物膜に微粒子を含むようにすることもできる。該微粒子の種類、形状および含有率、ならびに、該微粒子を膜に含有させる方法等については、前述した第1の方法における膜形成方法での説明が好ましく適用できる。
本発明にかかる第2の方法により金属酸化物膜を得るようにすれば、金属酸化物含有率が高く配向性も非常に高い膜を、より低温かつ短時間で、各種基材表面に形成することができる。
本発明にかかる第2の方法により得られた金属酸化物膜の、金属酸化物含有率の測定方法および該含有率の範囲については、前述した第1の方法における膜形成方法での説明が好ましく適用できる。
【0159】
本発明にかかる第2の方法により得られる金属酸化物膜の形態は、例えば、基材表面上の所望の面積部分に切れ目なく連続的に広がって存在している形態(連続膜)であってもよいし、基材表面上の所望の面積部分に不連続的に存在している形態(不連続膜)であってもよく、これらの具体的態様については、前述した第1の方法における膜形成方法での説明が好ましく適用できる。
本発明にかかる第2の方法により得られる金属酸化物膜を構成する金属酸化物は、結晶性の金属酸化物であってもよいし、非結晶性の金属酸化物であってもよく、これらの具体的態様については、前述した第1の方法における膜形成方法での説明が好ましく適用できる。
【0160】
本発明にかかる第2の方法により得られる金属酸化物膜は、有機基(金属酸化物に直接結合した有機基など)を含むものであってもよいし、有機基が除去されてなるものであってもよく、これらの具体的態様については、前述した第1の方法における膜形成方法での説明が好ましく適用できる。詳しくは、該有機基は、金属酸化物の原料化合物として用いられる金属カルボン酸塩や1級/2級アミン由来のカルボキシル基やアミノ基、および/または、他の原料化合物由来の有機基、の一部であることが好ましい。
本発明にかかる第2の方法により得られる金属酸化物膜の厚み(被覆対象となる基材等の表面に対して垂直な方向の厚み)は、特に限定はされないが、通常、1nm〜1000μmであることが好ましく、より好ましくは1nm〜10μmである。特に、得られる金属酸化物膜が多孔質状構造の連続層または不連続層である場合は、10nm〜100μmがより好ましい。上記厚みが1nm未満であると、所望の金属酸化物の機能が発揮されないおそれがあり、1000μmを超えると、機能面においてさらなる向上は見られず、却ってコスト高となったり、厚くなり過ぎて使用しにくくなるおそれがある。
【0161】
本発明にかかる第2の方法により得られる金属酸化物膜においては、前述した第1の製造方法により得られる金属酸化物粒子と同様に、該膜を構成する金属酸化物は、単一酸化物、複合酸化物および固溶体酸化物のいずれであってもよく、特に限定はされない。単一酸化物、複合酸化物および固溶体酸化物の例示等についても同様である。
本発明にかかる第2の方法により得られる金属酸化物膜は、前述した第1の方法により得られる金属酸化物粒子と同様に、金属酸化物の有する各種優れた機能・特性により、各種機能性分野における用途に用いることができる。具体的には、前述した第1の方法における膜形成方法での説明が好ましく適用できる。
【0162】
本発明にかかる第2の方法を用い、前述のごとく、微粒子を含有するようにして得られた金属酸化物膜は、金属酸化物の種類と微粒子の種類との組み合わせを適宜考慮することにより、加算的効果あるいは相乗的効果によって、より一層優れた機能を有する膜となる。具体的態様としては、前述した第1の方法における膜形成方法での説明が好ましく適用できる。
【0163】
【実施例】
以下に、実施例と比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と記すことがある。
下記実施例および比較例における評価・測定方法等について、具体的に説明する。
<金属酸化物粒子の結晶性>
得られた金属酸化物粒子の調製液を遠心分離し、得られた沈殿物をアセトンで洗浄(アセトンに沈殿物を粒子濃度10重量%となるように分散し、再度遠心分離し、この操作をさらに1回繰り返すことによって、洗浄された沈殿物を得る。)した後、洗浄後の沈殿物に含有される遊離成分(アセトン、調製液中の溶媒等の揮発成分)を除去するために、加熱真空乾燥(10Torr以下で80℃で12時間)し、乾燥粉末を得、これを試料粒子とする。
【0164】
試料粒子を、粉末X線回折測定することにより、以下の基準で評価した。
○:金属酸化物結晶に帰属されるピーク(少なくとも3つのピーク)が確認され、それ以外の回折ピークは認められなかった。
△:金属酸化物結晶に帰属されるピーク(少なくとも3つのピーク)とともに、それ以外の回折ピークも確認された。
×:金属酸化物結晶に帰属されるピーク(少なくとも3つのピーク)が認められなかった。
<金属酸化物粒子における金属酸化物含有率>
上記試料粒子を、加熱炉で、空気雰囲気下、常温より昇温し600℃で1時間処理することにより得られた灰分を金属酸化物量とし、上記加熱に供した試料粒子の全重量に対する割合を金属酸化物含有率r(重量%)として算出した。算出した金属酸化物含有率rについて、以下の基準により示した。
【0165】
A:r≧98
B:95≦r<98
C:90≦r<95
D:r<90
<金属酸化物粒子の分散性>
得られた反応液(金属酸化物粒子を含む反応液)を透過型電子顕微鏡(TEM)(製品名:JEM−2000FX、日本電子(株)社製)で観察し、反応液中の金属酸化物粒子の分散性について、以下の基準により評価した。
【0166】
A:微粒子が単分散している。
B:微粒子のうち、若干、2次凝集している微粒子がある。
C:微粒子全体が2次凝集している。
<金属酸化物膜の結晶性>
基材等の表面に形成された金属酸化物膜について、薄膜X線回折測定法により測定し、得られた回折パターンから金属酸化物膜の結晶性(金属酸化物膜を構成する金属酸化物の結晶性)について評価した。測定装置および測定条件(走査条件)は以下の通りである。
【0167】
測定装置:RAD−rX(薄膜測定用アタッチメント使用)(リガク社製)
出力:55kV、180mA
X線入射角:通常は0.5°に固定(必要に応じて0.2〜0.5°の範囲内で適宜設定して固定)
2θ:3〜100°
走査速度:2θとして2°/minで走査
<金属酸化物膜の透明性>
表面に金属酸化物膜が形成された基板を目視で観察することにより、以下の基準により、金属酸化物膜の透明性を評価した。
【0168】
A:膜が透明である。
B:膜は若干白濁しているが、半透明である。
C:膜は白濁し、不透明である。
<金属酸化物膜における炭素含有率(金属酸化物含有率の指標)>
表面に金属酸化物膜が形成された基板を、ESCA装置内において、一晩真空排気したものを試料基板とした。この試料基板をアルゴンエッチングし、各種エッチング時間における炭素原子および金属原子の定量を行い、それぞれ一定となったところの定量値を用いて、金属原子に対する炭素原子の原子数比R(炭素/金属(原子%))を求め、以下の基準で評価した。
【0169】
C: R≧5
B: 2≦R<5
A: R<2
<酸アミド化合物の生成確認>
液相において金属酸化物の生成反応を行った場合は、その上澄み液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(製品名:GC−14A、島津製作所社製)で測定した。
基材に塗布した塗膜を加熱炉中で加熱乾燥して金属酸化物の生成反応を行った場合は、加熱乾燥時の蒸気を捕集し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(製品名:GC−14A、島津製作所社製)で測定した。
【0170】
−実施例1−1−
撹拌機、温度計、窒素ガスパージ口(入口と出口)を備えた、外部より加熱し得る耐圧ガラス製反応器を用意した。
この反応器に、酢酸亜鉛50部、メタノール200部、2−ブトキシエタノール50部、亜鉛ヘキサフルオロペンタンジオネート0.22部からなる混合物を仕込み、反応器内を窒素パージした後、仕込んだ混合物を常温(19℃)より2℃/minで昇温した。
反応器内の混合物は、昇温過程で一旦透明化したのち、100℃に達した時点で白濁した。100℃で1時間保持した後、冷却することにより、微粒子を含む反応液を得た。なお、上記の昇温し保持した温度を、以下、反応温度とも言う。
【0171】
得られた反応液中の微粒子をXRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶からなる微粒子が生成していることが確認された。
−実施例1−2−
実施例1−1において、亜鉛ヘキサフルオロペンタンジオネートの代わりにカチオン交換樹脂1.1部を用いた以外は、実施例1−1と同様の操作により、微粒子を含む反応液を得た。
得られた反応液中の微粒子をXRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶からなる微粒子が生成していることが確認された。
【0172】
−実施例1−3−
実施例1−1において、亜鉛ヘキサフルオロペンタンジオネートの代わりにシリカ−アルミナ粉体2.2部を用いた以外は、実施例1−1と同様の操作により、微粒子を含む反応液を得た。
得られた反応液中の微粒子をXRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶からなる微粒子が生成していることが確認された。
−実施例1−4−
実施例1−1において、仕込んだ混合物を、チタニウムテトラn−ブトキシド50部、酢酸35部、n−ブタノール150部、プロピレングリコールモノメチルエーテル150部および特定化合物としてn−ブチルアミン0.25部からなる混合物とし、さらに、100℃まで昇温させ保持したところを180℃まで昇温させ同様に保持した以外は、実施例1−1と同様の操作により、微粒子を含む反応液を得た。
【0173】
得られた反応液中の微粒子をXRD解析した結果、アナタース型酸化チタンに帰属される回折ピークが確認され、アナタース型酸化チタン結晶からなる微粒子が生成していることが確認された。
−実施例1−5〜1−10−
実施例1−4において、チタニウムテトラn−ブトキシドに代えて表1に示す金属アルコキシ基含有化合物を用い、特定化合物としてn−ブチルアミン0.25部に代えて表1に示す特定化合物およびその仕込み量とし、さらに、180℃まで昇温させ保持したところを表1に示す反応温度まで昇温させ同様に保持した以外は、実施例1−4と同様の操作により、微粒子を含む反応液を得た。
【0174】
得られた反応液中の微粒子をXRD解析し、微粒子の結晶性等について表2に示した。
−実施例1−11〜1−12−
実施例1−4において、180℃まで昇温させ保持したところを表1に示す反応温度まで昇温させ同様に保持した以外は、実施例1−4と同様の操作により、微粒子を含む反応液を得た。
得られた反応液中の微粒子をXRD解析し、微粒子の結晶性等について表2に示した。
【0175】
−比較例1−1−
実施例1−1において、亜鉛ヘキサフルオロペンタンジオネートを用なかった以外は、実施例1−1と同様の操作により、微粒子を含む反応液を得た。
得られた反応液中の微粒子をXRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される明確な回折ピークは確認されなかった。
−比較例1−2−
比較例1−1において、100℃まで昇温させ保持したところを、110℃まで昇温させ同様に保持した以外は、比較例1−1と同様の操作により、微粒子を含む反応液を得た。
【0176】
得られた反応液中の微粒子をXRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが認められた。
−比較例1−3−
比較例1−1において、100℃まで昇温させ保持したところを、120℃まで昇温させ同様に保持した以外は、比較例1−1と同様の操作により、微粒子を含む反応液を得た。
得られた反応液中の微粒子をXRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが認められた。
【0177】
−比較例1−4〜1−10−
実施例1−4〜1−10において、特定化合物を用いなかった以外は、実施例1−4〜1−10と同様の操作により、微粒子を含む反応液を得た。
得られた反応液中の微粒子をXRD解析し、微粒子の結晶性等について表2に示した。
−比較例1−11−
比較例1−4において、180℃まで昇温させ保持したところを170℃まで昇温させ同様に保持した以外は、実施例1−4と同様の操作により、微粒子を含む反応液を得た。
【0178】
得られた反応液中の微粒子をXRD解析し、微粒子の結晶性等について表2に示した。
−比較例1−12−
比較例1−4において、180℃まで昇温させ保持したところを200℃まで昇温させ同様に保持した以外は、実施例1−4と同様の操作により、微粒子を含む反応液を得た。
得られた反応液中の微粒子をXRD解析し、微粒子の結晶性等について表2に示した。
【0179】
【表1】
【0180】
なお、得られた反応液の微粒子に関し、微粒子の結晶性および金属酸化物含有率を、表2にまとめて示した。
【0181】
【表2】
【0182】
−実施例1−13〜1−16−
実施例1−1において、反応温度を表3に示すように変更した以外は、実施例1−1と同様の操作により、微粒子を含む反応液を得た。
得られた反応液中の微粒子をXRD解析し、微粒子の結晶性等について表3に示した。また、得られた反応液中の微粒子の分散性についても評価し、その結果を表3に示した。
【0183】
【表3】
【0184】
−実施例1−17〜1−19−
実施例1−5において、反応温度を表4に示すように変更した以外は、実施例1−5と同様の操作により、微粒子を含む反応液を得た。
得られた反応液中の微粒子をXRD解析し、微粒子の結晶性等について表4に示した。また、得られた反応液中の微粒子の分散性についても評価し、その結果を表4に示した。
【0185】
【表4】
【0186】
−実施例2−1−
実施例1−1と同様の反応器を用意した。
この反応器に、酢酸亜鉛15部、メタノール150部、n−ブタノール30部、2−ブトキシエタノール70部、n−ブチルアミン0.07部からなる混合物を仕込み、反応器内を窒素パージした後、仕込んだ混合物を常温(19℃)より110℃に昇温し、冷却することにより、均一透明溶液を得た。
この均一透明溶液を、ガラス板に、バーコーターで塗布し、塗布したガラス板を、120℃に加熱された乾燥機中において120℃で10分間加熱することにより、ガラス板の表面に薄膜が形成されている基板(1)を得た。なお、上記の塗布後の加熱温度を、以下、反応温度とも言う。
【0187】
得られた基板(1)の表面に形成された膜は、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。
−実施例2−2−
実施例2−1において、n−ブチルアミンの代わりにトリフルオロ酢酸0.007部を用いた以外は、実施例2−1と同様の操作により、ガラス板の表面に薄膜が形成されている基板(2)を得た。
得られた基板(2)の表面に形成された膜は、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。
【0188】
−実施例2−3−
実施例2−1において、n−ブチルアミンの代わりにp−トルエンスルホン酸0.03部を用いた以外は、実施例2−1と同様の操作により、ガラス板の表面に薄膜が形成されている基板(3)を得た。
得られた基板(3)の表面に形成された膜は、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。
−実施例2−4−
実施例2−1において、n−ブチルアミンの代わりに三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.03部を用いた以外は、実施例2−1と同様の操作により、ガラス板の表面に薄膜が形成されている基板(4)を得た。
【0189】
得られた基板(4)の表面に形成された膜は、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。
−実施例2−5−
実施例2−1において、n−ブチルアミンの代わりに0.1N硫酸0.13部を用いた以外は、実施例2−1と同様の操作により、ガラス板の表面に薄膜が形成されている基板(5)を得た。
得られた基板(5)の表面に形成された膜は、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。
【0190】
−実施例2−6−
実施例2−1において、n−ブチルアミンの代わりに水酸化トリメチルベンジルアンモニウム(分子量167.25)40%含有メタノール溶液0.07部を用いた以外は、実施例2−1と同様の操作により、ガラス板の表面に薄膜が形成されている基板(6)を得た。
得られた基板(6)の表面に形成された膜は、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。
【0191】
−実施例2−7−
実施例2−1において、n−ブチルアミンの代わりにジブチルスズジラウレート0.13部を用いた以外は、実施例2−1と同様の操作により、ガラス板の表面に薄膜が形成されている基板(7)を得た。
得られた基板(7)の表面に形成された膜は、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。
−実施例2−8−
実施例2−1において、n−ブチルアミンの代わりに水酸化バリウム0.07部を用いた以外は、実施例2−1と同様の操作により、ガラス板の表面に薄膜が形成されている基板(8)を得た。
【0192】
得られた基板(8)の表面に形成された膜は、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。
−実施例2−9−
実施例2−1において、n−ブチルアミンの代わりにジルコニウム2,4−ペンタンジオネート0.07部を用いた以外は、実施例2−1と同様の操作により、ガラス板の表面に薄膜が形成されている基板(9)を得た。
得られた基板(9)の表面に形成された膜は、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。
【0193】
−実施例2−10−
実施例2−1において、n−ブチルアミンの代わりにチタンn−ブトキサイド0.07部を用いた以外は、実施例2−1と同様の操作により、ガラス板の表面に薄膜が形成されている基板(10)を得た。
得られた基板(10)の表面に形成された膜は、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。
−実施例2−11−
実施例2−1において、n−ブチルアミンの代わりにスズ(II)オキサイド0.15部を用いた以外は、実施例2−1と同様の操作により、ガラス板の表面に薄膜が形成されている基板(11)を得た。
【0194】
得られた基板(11)の表面に形成された膜は、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。
−実施例2−12−
実施例2−1において、基材としてガラス基板の代わりにシリカ蒸着PENフィルムを用いた以外は、実施例2−1と同様の操作により、上記PENフィルムの表面に薄膜が形成されている基板(12)を得た。
得られた基板(12)の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析し、結晶性等について表6に示した。
【0195】
−実施例2−13−
実施例2−2において、基材としてガラス基板の代わりに低圧水銀ランプで紫外線照射処理したETFEフィルム(エチレンテトラフルオロエチレン共重合体フィルム)を用い、塗布後の加熱温度を120℃から110℃にした以外は、実施例2−2と同様の操作により、上記ETFEフィルムの表面に薄膜が形成されている基板(13)を得た。
得られた基板(13)の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析し、結晶性等について表6に示した。
【0196】
−実施例2−14−
実施例2−3において、基材としてガラス基板の代わりにコロナ放電処理PETフィルムを用い、塗布後の加熱温度を120℃から100℃にした以外は、実施例2−3と同様の操作により、上記PETフィルムの表面に薄膜が形成されている基板(14)を得た。
得られた基板(14)の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析し、結晶性等について表6に示した。
−実施例2−15−
実施例1−1と同様の反応器を用意した。
【0197】
この反応器に、チタニウムテトラn−ブトキシド10部、酢酸10部、n−ブタノール50部、ジエチレングリコールモノメチルエーテル50部、1,3−ブタンジオール10部および特定化合物としてp−トルエンスルホン酸0.1部からなる混合物を仕込み、反応器内を窒素パージした後、反応器を密閉状態にして仕込んだ混合物を常温(19℃)より昇温し、加圧下110℃で1時間保持した後、冷却することにより、均一透明溶液を得た。
この均一透明溶液にガラス板を浸漬し、浸漬したままで溶液を昇温し、180℃で10分間保持した後、冷却し、基板を取り出した。取り出した基板をアセトンで洗浄し、常温で乾燥させることにより、ガラス板の表面に薄膜が形成されている基板(15)を得た。
【0198】
得られた基板(15)の表面に形成された膜は、薄膜XRD解析した結果、アナタース型酸化チタンに帰属される回折ピークが確認され、アナタース型酸化チタン結晶が生成していることが確認された。
−実施例2−16−
実施例2−15で得られた均一透明溶液を、ガラス板に、バーコーターで塗布し、塗布したガラス板を、200℃に加熱された乾燥機中で200℃で10分間加熱することにより、ガラス板の表面に薄膜が形成されている基板(16)を得た。
【0199】
得られた基板(16)の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析し、結晶性等について表6に示した。
−実施例2−17−
実施例2−16において、1,3−ブタンジオール10部の代わりに1,2−ブタンジオール7部用いた以外は、実施例2−16と同様の操作により、ガラス板の表面に薄膜が形成されている基板(17)を得た。
得られた基板(17)の表面に形成された膜は、薄膜XRD解析した結果、アナタース型酸化チタンに帰属される回折ピークが確認され、アナタース型酸化チタン結晶が生成していることが確認された。
【0200】
−実施例2−18〜2−23−
実施例2−16において、チタニウムテトラn−ブトキシドに代えて表3に示す金属アルコキシ基含有化合物を用い、特定化合物としてp−トルエンスルホン酸0.1部に代えて表5に示す特定化合物およびその仕込み量とした以外は、実施例2−16と同様の操作により、ガラス板の表面に薄膜が形成されている基板(18)〜(23)を得た。
得られた基板(18)〜(23)の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析し、結晶性等について表6に示した。
【0201】
−比較例2−1−
実施例2−1において、n−ブチルアミンを用いず、塗布後の加熱温度を120℃から130℃にした以外は、実施例2−1と同様の操作により、ガラス板の表面に薄膜が形成されている基板(c1)を得た。
得られた基板(c1)の表面に形成された膜は、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶が生成していることが確認された。
−比較例2−2−
比較例2−1において、塗布後の加熱温度を120℃から100℃にした以外は、比較例2−1と同様の操作により、ガラス板の表面に薄膜が形成されている基板(c2)を得た。
【0202】
得られた基板(c2)の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析し、結晶性等について表6に示した。
−比較例2−3−
実施例2−15において、p−トルエンスルホン酸を用いなかった以外は、実施例2−15と同様の操作により、ガラス板の表面に薄膜が形成されている基板(c3)を得た。
得られた基板(c3)の表面に形成された膜は、薄膜XRD解析した結果、アナタース型酸化チタンに帰属される回折ピークが確認され、アナタース型酸化チタン結晶が生成していることが確認された。
【0203】
−比較例2−4〜2−10−
実施例2−16および2−18〜2−23において、特定化合物を用いなかった以外は、実施例2−16および2−18〜2−23と同様の操作により、ガラス板の表面に薄膜が形成されている基板(c4)〜(c10)を得た。
得られた基板(c4)〜(c10)の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析し、結晶性等について表6に示した。
【0204】
【表5】
【0205】
なお、得られた基板(1)〜(23)および基板(c1)〜(c10)に関し、形成された膜の結晶性および炭素含有率を、表6にまとめて示した。
【0206】
【表6】
【0207】
−実施例2−24〜2−27−
実施例2−2、2−7、2−4および2−6において、塗布後の加熱温度を表7に示すようにそれぞれ変更した以外は、実施例2−2、2−7、2−4および2−6と同様の操作により、ガラス板の表面に薄膜が形成されている基板(24)〜(27)を得た。
得られた基板(2)、(7)、(4)および(6)ならびに基板(24)〜(27)の表面に形成された膜の透明性について評価し、その結果を表7に示した。なお、得られた基板(2)、(7)、(4)および(6)ならびに基板(24)〜(27)は、加熱乾燥前における塗膜がすべて同じ厚みになるように、各均一透明溶液をガラス板に塗布したあと加熱乾燥して得られたものである。これらに使用したガラス板の厚みは全て同じである。
【0208】
得られた基板(2)、(7)、(4)および(6)ならびに基板(24)〜(27)の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析により結晶性等についても評価し、その結果を表7に示した。
【0209】
【表7】
【0210】
−実施例2−28〜2−30−
実施例2−16において、塗布後の加熱温度を表8に示すように変更した以外は、実施例2―16と同様にして、ガラス板の表面に薄膜が形成されている基板(28)〜(30)を得た。
得られた基板(16)および基板(28)〜(30)の表面に形成された膜の透明性を評価し、その結果を表8に示した。なお、得られた基板(16)および基板(28)〜(30)は、加熱乾燥前における塗膜が全てすべて同じ厚みになるように、各均一透明溶液をガラス板に塗布したのち加熱乾燥して得られたものである。これらに使用したガラス板の厚みは全て同じである。
【0211】
得られた基板(16)および基板(28)〜(30)の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析により結晶性等についても評価し、その結果を表8に示した。
【0212】
【表8】
【0213】
−実施例3−1−
撹拌機、添加口、温度計、窒素ガス導入口および留出ガス出口を備えた、外部より加熱し得る耐圧ガラス製反応器に、酢酸亜鉛5部、トリエチルアミン5.5部、エチレングリコールモノブチルエーテル50部およびメタノール32部を仕込み、反応器内を窒素パージした後、密閉状態で、反応器内の混合物を常温より5℃/分の昇温速度で昇温し、110℃まで昇温して10分間保持した後、冷却することにより、透明な溶液(前駆体溶液)を得た。
得られた透明溶液を、無アルカリガラス基板に塗布し、150℃の加熱炉にて30分間加熱乾燥することにより、無アルカリガラス基板の表面に膜が形成されている基板を得た。
【0214】
得られた基板の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶からなる金属酸化物膜が生成していることが確認された。
−実施例3−2−
撹拌機、添加口、温度計、窒素ガス導入口および留出ガス出口を備えた、外部より加熱し得る耐圧ガラス製反応器に、酢酸亜鉛5部、トリエチルアミン5.5部およびエチレングリコールモノブチルエーテル82部を仕込み、反応器内を窒素パージした後、密閉状態で、反応器内の混合物を常温より10℃/分の昇温速度で昇温したところ、60℃で透明な溶液となった。さらに昇温を続け、170℃で180分間保持することにより粒子を含む反応液を得た。
【0215】
得られた反応液中の粒子についてXRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶からなる金属酸化物粒子が生成していることが確認された。
ZnO粒子を生成させた際の反応液中には、アセトアミド誘導体の生成は認められなかった。
−実施例3−3−
撹拌機、添加口、温度計、窒素ガス導入口および留出ガス出口を備えた、外部より加熱し得るガラス製反応器に、酢酸亜鉛10部、トリエチルアミン12.2部、エチレングリコールモノブチルエーテル84部およびベンジルアルコール42部を仕込み、反応器内を窒素パージした後、反応器内の混合物を常温より5℃/分の昇温速度で昇温し、100℃まで昇温して20分間保持した後、冷却することにより、透明な溶液(前駆体溶液)を得た。
【0216】
得られた透明溶液を、表面をコロナ放電処理したPETフィルムに塗布し、130℃の加熱炉にて30分間加熱乾燥することにより、PETフィルムの表面に膜が形成されているフィルムを得た。
得られたフィルムの表面に形成された膜について、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶からなる金属酸化物膜が生成していることが確認された。
膜形成時の加熱炉での発生蒸気中には、アセトアミド誘導体が検出されなかった。
【0217】
−実施例3−4−
実施例3−2と同様の反応器に、酢酸亜鉛10部、N,N−ジメチルエチルアミン7.2部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル46.2部およびメタノール32部を仕込み、反応器内を窒素パージした後、密閉状態で、反応器内の混合物を常温より5℃/分の昇温速度で昇温し、110℃まで昇温して10分間保持した後、冷却することにより、透明な溶液(前駆体溶液)を得た。
得られた透明溶液を、アルミナ基板に塗布し、180℃の加熱炉にて10分間加熱乾燥することにより、アルミナ基板の表面に膜が形成されている基板を得た。
【0218】
得られた基板の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶からなる金属酸化物膜が生成していることが確認された。
膜形成時の加熱炉での発生蒸気中には、アセトアミド誘導体が検出されなかった。
−実施例3−5−
実施例3−2と同様の反応器に、酢酸セリウム(III)1水和物5部、N,N−ジエチルメチルアミン2.7部およびメタノール128部を仕込み、反応器内を窒素パージした後、密閉状態で、反応器内の混合物を常温より10℃/分の昇温速度で昇温したところ、80℃で透明な溶液となった。さらに昇温を続け、190℃で60分間保持することにより粒子を含む反応液を得た。
【0219】
得られた反応液中の粒子についてXRD解析した結果、CeO2に帰属される回折ピークが確認され、CeO2結晶からなる金属酸化物粒子が生成していることが確認された。
酸化セリウム粒子を生成させた際の反応液中には、アセトアミド誘導体の生成は認められなかった。
−実施例3−6−
実施例3−3と同様の反応器に、酢酸亜鉛10部、酢酸インジウム0.32部、トリエチルアミン11部および2−ブトキシエタノール274部を仕込み、反応器内を窒素パージした後、反応器内の混合物を常温より10℃/分の昇温速度で昇温し、140℃まで昇温して30分間保持した後、冷却することにより、透明な溶液(前駆体溶液)を得た。
【0220】
得られた透明溶液を、ホットプレート上で190℃に加熱した無アルカリガラス基板に塗布し、30分間加熱乾燥することにより、無アルカリガラス基板の表面に膜が形成されている基板を得た。
得られた基板の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶からなる金属酸化物膜が生成していることが確認された。このZnO膜は、インジウムが亜鉛に対して2原子%含有されてなるものであった。
膜形成時の発生蒸気中には、アセトアミド誘導体が検出されなかった。
【0221】
−比較例3−1−
実施例3−1において、反応器にトリエチルアミンを仕込まずに、実施例3−1と同様の操作を行ったところ、無アルカリガラス基板の表面に膜が形成されている基板を得た。
得られた基板の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶からなる金属酸化物膜が生成していることが確認された。
しかしながら、薄膜XRDの解析結果によると、実施例3−1で形成されたZnO膜に比べ、配向性および結晶性に劣るものであった。
【0222】
−比較例3−2−
実施例3−1において、トリエチルアミン5.5部の代わりにエタノールアミン5.5部を仕込んだ以外は、実施例3−1と同様にして、無アルカリガラス基板の表面に膜が形成されている基板を得た。
得られた基板の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークはほとんど認められなかった。
−比較例3−3−
実施例3−1において、酢酸亜鉛5部の代わりに亜鉛2,4−ペンタンジオネート2水和物8.1部を仕込んだ以外は、実施例3−1と同様にして、無アルカリガラス基板の表面に膜が形成されている基板を得た。
【0223】
得られた基板の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される明確な回折ピークは観測されなかった。
−比較例3−4−
実施例3−1において、エチレングリコールモノブチルエーテル50部の代わりにエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート50部を仕込んだ以外は、実施例3−1と同様にして、無アルカリガラス基板の表面に膜が形成されている基板を得た。
得られた基板の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される明確な回折ピークは観測されなかった。
【0224】
−実施例3−7〜3−10−
撹拌機、添加口、温度計、還流冷却機、窒素ガス導入口および留出ガス出口を備えた、外部より加熱し得るガラス製反応器に、酢酸亜鉛5部、トリエチルアミン2.9部およびエチレングリコールモノブチルエーテル61.5部を仕込み、反応器内を窒素パージした後、反応器内の混合物を常温より5℃/分の昇温速度で昇温し、110℃まで昇温して10分間保持した後、冷却することにより、透明な溶液(前駆体溶液)を得た。
得られた透明溶液を、無アルカリガラス基板4枚に均一に塗布し、それぞれ、150℃、190℃、230℃、270℃の加熱炉にて30分間加熱乾燥することにより、無アルカリガラス基板の表面に酸化亜鉛塗膜を得た。
【0225】
得られた塗膜の透明性を評価し、その結果を表9に示した。
【0226】
【表9】
【0227】
−実施例4−1−
撹拌機、添加口、温度計、窒素ガス導入口および留出ガス出口を備えた、外部より加熱し得る耐圧ガラス製反応器に、酢酸亜鉛50部、n−プロピルアミン35部およびジエチレングリコールジメチルエーテル135部を仕込み、反応器内を窒素パージした後、密閉状態で、反応器内の混合物を常温より10℃/分の昇温速度で昇温したところ、55℃で透明な溶液となった。さらに昇温を続け、180℃で180分間保持することにより粒子を含む反応液を得た。
得られた反応液中の粒子についてXRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶からなる金属酸化物粒子が生成していることが確認された。
【0228】
得られたZnO粒子をXRDおよびSEMで観察したところ、C軸方向に成長した長径1〜2μmの柱状の粒子の結晶であった。
ZnO粒子を生成させた際の反応液中には、プロピルアセトアミドが定量的に生成していた。
−実施例4−2−
撹拌機、添加口、温度計、還流冷却機、窒素ガス導入口および留出ガス出口を備えた、外部より加熱し得るガラス製反応器に、酢酸亜鉛50部、n−プロピルアミン35部およびジエチレングリコールジメチルエーテル135部を仕込み、反応器内を窒素パージした後、反応器内の混合物を常温より10℃/分の昇温速度で昇温し、110℃まで昇温して10分間保持した後、冷却することにより、透明な溶液(前駆体溶液)を得た。
【0229】
得られた透明溶液を、無アルカリガラス基板に塗布し、180℃の加熱炉にて30分間加熱乾燥することにより、無アルカリガラス基板の表面に膜が形成されている基板を得た。
得られた基板の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶からなる金属酸化物膜が生成していることが確認された。
膜形成時の加熱炉での発生蒸気中には、プロピルアセトアミドが検出された。
−実施例4−3−
撹拌機、添加口、温度計、窒素ガス導入口および留出ガス出口を備えた、外部より加熱し得る耐圧ガラス製反応器に、酢酸亜鉛6部、n−プロピルアミン4.5部、エチレングリコールモノブチルエーテル70部およびメタノール30部を仕込み、反応器内を窒素パージした後、密閉状態で、反応器内の混合物を常温より10℃/分の昇温速度で昇温し、110℃まで昇温して10分間保持した後、冷却することにより、透明な溶液(前駆体溶液)を得た。
【0230】
得られた透明溶液を、無アルカリガラス基板に塗布し、150℃の加熱炉にて30分間加熱乾燥することにより、無アルカリガラス基板の表面に膜が形成されている基板を得た。
得られた基板の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶からなる金属酸化物膜が生成していることが確認された。
膜形成時の加熱炉での発生蒸気中には、プロピルアセトアミドが検出された。
−実施例4−4−
実施例4−3において、n−プロピルアミンの代わりにジn−ブチルアミン12部を用いた以外は、実施例4−3と同様にして、無アルカリガラス基板の表面に膜が形成されている基板を得た。
【0231】
得られた基板の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶からなる金属酸化物膜が生成していることが確認された。
膜形成時の加熱炉での発生蒸気中には、ジn−ブチルアセトアミドが検出された。
−実施例4−5−
実施例4−3において、反応器に仕込んだ酢酸亜鉛、n−プロピルアミン、エチレングリコールモノブチルエーテルおよびメタノールを、酢酸亜鉛5部、3−メトキシプロピルアミン4.9部およびエチレングリコールモノブチルエーテル25部とした以外は、実施例4−3と同様にして、透明な溶液(前駆体溶液)を得た。
【0232】
得られた透明溶液を、表面をコロナ放電処理したPETフィルムに塗布し、140℃の加熱炉にて20分間加熱乾燥することにより、PETフィルムの表面に膜が形成されているフィルムを得た。
得られたフィルムの表面に形成された膜について、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶からなる金属酸化物膜が生成していることが確認された。
膜形成時の加熱炉での発生蒸気中には、3−メトキシプロピルアセトアミドが検出された。
【0233】
−実施例4−6−
前駆体溶液調製装置(A−1)と金属酸化物化装置(A−4)とからなる、反応装置(A)を用意した。以下に具体的に示す。
前駆体溶液調製装置(A−1)は、金属カルボン酸塩と1級/2級アミンとから、前駆体溶液を調製する「反応器」(A−2)と、基板上への「液の供給・塗布部」(A−3)とを備えている。詳しくは、前駆体溶液調製装置(A−1)の本体は、撹拌機、添加口、温度計、窒素ガス入口、リーク口を備えた外部より加熱できる耐圧ガラス製反応器(A−2)と、その反応器の底部よりニードルバルブ、ガラス管、扇状部からなる「液の塗布・供給部」(A−3)とからなる。
【0234】
前駆体溶液調製装置(A−1)の本体における添加口は、ボールバルブを介して添加槽に直結している。
「液の供給・塗布部」(A−3)は、「金属酸化物化装置」(A−4)の基板面に扇状部により接触しており、前駆体溶液が基板面に流されるよう工夫されている。扇状部の先端(基板面への接触部である先端部分)は、フレキシブルな耐熱ゴム製となっている。また、「液の供給・塗布部」(A−3)は、所定温度で加熱可能なようになっている。
「金属酸化物化装置」(A−4)は、基板を保持し、且つ、「液の供給・塗布部」(A−3)から「加熱炉」に所定速度で移動できるよう、移動式の架台と加熱炉ならびに加熱炉に直結する冷却部よりなる。加熱炉は、加熱により蒸発した溶媒成分等のガス成分が加熱炉内から放出されるよう、窒素ガスが一定速度で流れている。加熱炉内の温度は、常温より300℃まで可変であり、その温度はサーミスタにより検知できるようになっている。
【0235】
また、基板は、該基板と架台の間に、面上ヒーターを設置することによって、前駆体溶液を塗布するに先立ち、予備加熱しておくことが可能である。
冷却部は、加熱炉に直結しており、常温の窒素ガスを流すことによって、冷却する装置である。
「液の供給・塗布部」(A−3)は、120℃に加熱保持した。
また、「金属酸化物化装置」(A−4)の加熱炉は、180℃に設定し、加熱炉内に窒素を流しながら、加熱保持した。冷却部には窒素ガスを50mL/分で流しておいた。
【0236】
また、ガラス基板は、面上ヒーターにより予め120℃に加熱しておいた。
上に説明した反応装置(A)を用い、以下の操作を行った。
酢酸スズ(II)5部、n−ブチルアミン1.5部およびジエチレングリコールモノブチルエーテル28部を混合して混合スラリーを調製した。
前駆体溶液調製装置の反応器(A−2)にジエチレングリコールモノブチルエーテル132部を仕込み、添加槽には上記混合スラリーを全量仕込み、各系内を窒素パージした。
反応器(A−2)内のジエチレングリコールモノブチルエーテルを160℃に昇温し、添加槽内の混合スラリーの全量を、窒素圧で圧入した。その後、160℃で30分間撹拌し、透明な溶液(前駆体溶液)を得た。
【0237】
速やかに、得られた透明溶液を、「液の供給・塗布部」(A−3)のニードルバルブを開けることにより、「液の供給・塗布部」(A−3)を介して、ホットプレートにより190℃に加熱したアルミナ基板に塗布し、その後30分間加熱乾燥した後、冷却することで、アルミナ基板の表面に膜が形成されている基板を得た。
得られた基板の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析した結果、SnOに帰属される回折ピークが確認され、SnO結晶からなる金属酸化物膜が生成していることが確認された。
【0238】
膜形成時の発生蒸気中には、アセトアミド誘導体が検出された。
−実施例4−7−
実施例4−6における反応装置(A)を用い、以下の操作を行った。
酢酸亜鉛25部、酢酸コバルト(II)4水和物3.4部、ベンジルアミン32.1部、ベンジルアルコール112部を混合して混合スラリーを調製した。
前駆体溶液調製装置の反応器(A−2)にベンジルアルコール332部を仕込み、添加槽には上記混合スラリーを全量仕込み、各系内を窒素パージした。
反応器(A−2)内のジベンジルアルコールを150℃に昇温し、添加槽内の混合スラリーの全量を、窒素圧で圧入した。その後、150℃で30分間撹拌し、透明な溶液(前駆体溶液)を得た。
【0239】
速やかに、得られた透明溶液を、「液の供給・塗布部」(A−3)のニードルバルブを開けることにより、「液の供給・塗布部」(A−3)を介して、ポリイミドフィルムに塗布し、190℃に加熱した加熱炉内で30分間加熱乾燥した後、冷却することで、ポリイミドフィルムの表面に膜が形成されている基板を得た。
得られたフィルムの表面に形成された膜について、薄膜XRD解析した結果、ZnOに帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶からなる金属酸化物膜が生成していることが確認された。この膜は、コバルトが亜鉛に対して10原子%含有されてなるものであった。
【0240】
膜形成時の加熱炉での発生蒸気中には、アセトアミド誘導体が検出された。
−実施例4−8−
撹拌機、添加口、温度計、窒素ガス導入口および留出ガス出口を備えた、外部より加熱し得る耐圧ガラス製反応器に、酢酸亜鉛10部、n−プロピルアミン7部およびキシレン400部を仕込み、反応器内を窒素パージした後、密閉状態で、反応器内の混合物を常温より10℃/分の昇温速度で昇温したところ、60℃で透明な溶液となった。さらに昇温を続け、180℃で180分間保持することにより粒子を含む反応液を得た。
【0241】
得られた反応液中の粒子についてXRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶からなる金属酸化物粒子が生成していることが確認された。
ZnO粒子を生成させた際の反応液中には、プロピルアセトアミドが定量的に生成していた。
−比較例4−1−
実施例4−2において、反応器にn−プロピルアミンを仕込まずに、実施例4−2と同様の操作を行ったところ、酸化亜鉛は溶解せず、前駆体溶液が得られなかった。
【0242】
−比較例4−2−
実施例4−3において、150℃の加熱炉にて30分間加熱乾燥する代わりに、500℃の電気炉において10分間加熱乾燥した以外は、実施例4−3と同様の操作を行ったところ、基板表面に形成された膜は、その表面状態が悪く、クラックの多いものであった。
−比較例4−3−
実施例4−3において、反応器にn−プロピルアミンを仕込まずに、実施例4−3と同様の操作を行ったところ、無アルカリガラス基板の表面に膜が形成されている基板を得た。
【0243】
得られた基板の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される回折ピークが確認され、ZnO結晶からなる金属酸化物膜が生成していることが確認された。
しかしながら、薄膜XRDの解析結果によると、実施例4−3で形成されたZnO膜に比べ、配向性および結晶性に劣るものであった。
−比較例4−4−
実施例4−3において、酢酸亜鉛6部の代わりに亜鉛メトキシエトキシド7部を反応器に仕込んだ以外は、実施例4−3と同様の操作を行い、無アルカリガラス基板の表面に膜が形成されている基板を得た。
【0244】
得られた基板の表面に形成された膜について、薄膜XRD解析した結果、ZnO(Zincite)に帰属される明確な回折ピークが確認されず、ZnO結晶からなる金属酸化物膜が生成していることは確認できなかった。
−実施例4−9〜4−12−
撹拌機、添加口、温度計、還流冷却機、窒素ガス導入口および留出ガス出口を備えた、外部より加熱し得るガラス製反応器に、酢酸亜鉛5部、n−プロピルアミン3.2部およびエチレングリコールモノブチルエーテル22.2部を仕込み、反応器内を窒素パージした後、反応器内の混合物を常温より5℃/分の昇温速度で昇温し、110℃まで昇温して10分間保持した後、冷却することにより、透明な溶液(前駆体溶液)を得た。
【0245】
得られた透明溶液を、無アルカリガラス基板4枚に均一に塗布し、それぞれ、150℃、190℃、230℃、270℃の加熱炉にて30分間加熱乾燥することにより、無アルカリガラス基板の表面に酸化亜鉛塗膜を得た。
得られた塗膜の透明性を評価し、その結果を表10に示した。
【0246】
【表10】
【0247】
【発明の効果】
本発明によれば、簡便な方法により得ることができ生産性や経済的に優れるとともに、金属酸化物含有率が高いものを、より低温で生成・形成することができる、金属酸化物の製造方法を提供することができる。なかでも、金属酸化物膜の形成については、加えて、広範囲な種類の基材に形成させることができ、造膜性や機械的強度および密着性に優れた膜を得ることができる。
Claims (7)
- n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、t−ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2−メトキシエチルアミン、アリルアミン、ベンジルアミン、アニリン、2,5−ジメトキシアニリン、3,5−ジメトキシアニリン、p−ブチルアニリン、p−ブロモアニリン、p−クロロアニリン、m−クロロアニリン、3,5−ジメチルアニリン、ジアリルアミン、ジイソプロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ビス−2−エチルヘキシルアミン、N−メチルヘキシルアミン、N−エチル−n−ブチルアミン、N−t−ブチルイソプロピルアミン、ビス−2−メトキシエチルアミン、ジベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−n−ブチルアニリンおよびN−n−プロピルアニリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の1級アミンおよび/または2級アミンと金属カルボン酸塩とを出発原料とし、
該1級アミンおよび/または2級アミンの使用量が、該金属カルボン酸塩中の金属原子に対して1〜50倍モルであり、
該出発原料を酸アミド化合物が生成する条件下で反応させる、
金属酸化物の製造方法。 - 前記反応時の温度が、100〜300℃である、請求項1に記載の金属酸化物の製造方法。
- 前記金属酸化物を粒子として生成させる、請求項1に記載の金属酸化物の製造方法。
- 前記金属酸化物を基材の表面に膜として定着させる、請求項1に記載の金属酸化物の製造方法。
- 金属カルボン酸塩とアルコールとの混合物を含み、
さらにトリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリス(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)アミン、N,N−ビス(2,2−ジエトキシエチル)メチルアミン、1,1−ジメトキシトリメチルアミン、N,N−ジエチルメチルアミン、N,N−ジメチルエチルアミン、N,N−ジメチルブチルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチル−N−メチルアニリンおよびN,N−ジエチルアニリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の3級アミンが添加され、
該3級アミンの使用量が、該金属カルボン酸塩中の金属原子に対して、0.5〜10倍モルである、
金属酸化物膜形成用塗布液。 - 請求項5に記載の金属酸化物膜形成用塗布液を、基材に接触させ、該接触系を高温状態にすることにより、該基材の表面に金属酸化物を膜として生成させ定着させる、金属酸化物膜の製造方法であって、
前記金属カルボン酸塩とアルコールとの混合物を出発原料とし、該出発原料を前記3級アミンの存在下で反応させる、
金属酸化物膜の製造方法。 - 前記反応時の温度が、100〜300℃である、請求項6に記載の金属酸化物膜の製造方法。
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