JP2013020942A - 有機el用透明導電性基材の製造方法、およびそれを用いた有機el用透明導電性基材、並びに有機el素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱性無機基板上に塗布法で形成された高い仕事関数を有する有機EL用透明導電性基材とその製造方法、有機EL素子を提供する。
【解決手段】基板1上に、主成分として有機インジウム化合物、または有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物を含有する透明導電膜形成用塗布液、あるいは、主成分として有機錫化合物、または有機錫化合物とドーパント用有機金属化合物を含有する透明導電膜形成用塗布液を塗布して塗布膜を形成する塗布工程、前記塗布膜を乾燥して乾燥塗布膜を形成する乾燥工程、前記乾燥塗布膜を無機化して、酸化インジウム、またはドーパント金属酸化物を含む酸化インジウムである導電性酸化物を主成分とする無機膜、あるいは酸化錫、またはドーパント金属酸化物を含む酸化錫を主成分とする無機膜を形成する無機化工程の各工程からなる塗布法により透明導電膜3を形成する有機EL用透明導電性基材の製造方法。
【選択図】図3

Description

本発明は、有機EL用透明導電膜に関するものである。
より詳しくは、透明耐熱基板としてのガラス基板、あるいは、そのガラス基板上に形成されたスパッタリングITO膜等の透明導電膜上に、塗布法で形成された、優れた透明性と高い仕事関数を兼ね備える有機EL透明導電膜に関するものである。
有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)は、液晶表示素子と違って自発光素子であり、低電圧駆動で高輝度が得られるためディスプレイ等の表示装置として期待されている。
従来、有機EL素子のアノード透明電極等に用いられる透明導電膜には、例えばインジウム錫酸化物膜(以下、「ITO膜」と呼ぶことがある)やAlをドープした酸化亜鉛膜(以下、「AZO膜」と呼ぶことがある)などが用いられている(特許文献1、2参照)。
ところで、有機EL素子では、一般にITO膜や半透明金属蒸着膜からなるアノード透明電極上に正孔輸送層(または正孔注入層とも称す)、発光層、電子注入層、金属陰極の順に形成されるが、スパッタリング法などで形成した従来のITO膜(スパッタITO膜)の仕事関数は、形成されたままの状態では通常4.5〜4.6eV程度(ITO膜の成膜方法やITO膜に対するUVオゾン表面処理等によって4.6〜5.0eV程度の範囲になる場合がある)であり、金属蒸着膜で最も仕事関数が大きい白金蒸着膜の仕事関数でも4.9eV程度である。
しかしながら、アノード透明電極から発光層への正孔注入効率を高めて有機EL素子の発光効率を向上させるには、正孔注入障壁を低下させる意味から、アノード透明電極には、発光層材料のイオン化ポテンシャルの値に近い4.9eV程度以上の仕事関数が望まれる。
そこで、上記アノード透明電極(陽極)として、仕事関数がITO膜(仕事関数=4.6eV程度)よりも大きな金属酸化物膜を用いる、または、ITO膜(厚み:50〜200nm)上に上記金属酸化物膜(厚さ=5〜30nm)を積層した2層膜(ITO膜/金属酸化物膜)を用いた有機EL素子が提案されている(特許文献3参照)。
この仕事関数が、インジウム錫酸化物よりも大きな金属酸化物としては、酸化バナジウム(VO;仕事関数=5.4eV)、酸化ルテニウム(RuO;仕事関数=4.9eV)、酸化モリブデン(MoO;仕事関数=5.4eV)が挙げられ、それらの金属酸化物の膜形成は、電子ビーム蒸着、直流スパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法、ICB蒸着法などが適用できると記載されている。
ここで、透明導電膜としての上記ITO膜やAZO膜の形成方法は、上記金属酸化物膜の形成方法と同様に、真空蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着法等の物理的成膜方法(気相成長方法)が広く用いられ、透明性と導電性に優れた均一な透明導電膜を基板上に形成することができる。しかしながら、使用する膜形成装置は、真空容器をベースとするため非常に高価であり、また基板成膜毎に製造装置内の成分ガス圧を精密に制御しなければならないため、製造コストと量産性に問題があった。
この問題を解決する製造方法として、例えばITO膜においては、インジウム化合物と錫化合物を溶剤に溶解させた透明導電膜形成用塗布液を用いて、基板上に塗布する方法(以下、「塗布法」と表記する場合がある)が検討されている。
この塗布方法では、透明導電膜形成用塗布液の基板上への塗布、乾燥、焼成という簡素な製造工程でITO膜を形成するもので、その塗布液の基板上への塗布法には、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサ印刷法、スリットコート法、ダイコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法等が知られている。
このような塗布法に用いられる塗布液として、インジウム化合物及び錫化合物を含む塗布液が、従来種々開発されている。例えば、ハロゲンイオンまたはカルボキシル基を含む硝酸インジウムとアルキル硝酸錫の混合液(例えば、特許文献4参照)、アルコキシル基などを含む有機インジウム化合物と有機錫化合物の混合物(例えば、特許文献5参照)、硝酸インジウムと有機錫化合物の混合物(例えば、特許文献6参照)、硝酸インジウム、硝酸錫等の無機化合物混合物(例えば、特許文献7参照)、ジカルボン酸硝酸インジウムなどの有機硝酸インジウムとアルキル硝酸錫などの有機硝酸錫の混合物(例えば、特許文献8参照)、アセチルアセトンを配位した有機インジウム錯体と錫錯体からなる有機化合物混合溶液(例えば、特許文献9、特許文献10、特許文献11参照)が開示されている。
これらの従来知られている塗布液の多くは、インジウムや錫の硝酸塩、ハロゲン化物からなる有機または無機化合物、あるいは金属アルコキシドなどの有機金属化合物等が用いられている。
しかし、硝酸塩やハロゲン化物を用いた塗布液は、焼成時に窒素酸化物や塩素などの腐食性ガスが発生するため、設備腐食や環境汚染を生ずるといった問題がある。また金属アルコキシドを用いた塗布液では、原料が加水分解し易いため、塗布液の安定性に問題がある。さらに、有機金属化合物を用いた塗布液の多くは、基板に対する濡れ性が悪く、不均一膜が形成され易いといった問題も出ている。
そこで、これらの問題点を改良した塗布液として、アセチルアセトンインジウム(正式名称:トリス(アセチルアセトナト)インジウム:In(C)、アセチルアセトン錫(正式名称:ジ−n−ブチル ビス(2,4−ペンタンジオナト)錫:[Sn(C(C])、ヒドロキシプロピルセルロース、アルキルフェノール及び/またはアルケニルフェノールと二塩基酸エステル及び/または酢酸ベンジルを含有する透明導電膜形成用塗布液(例えば、特許文献12参照)が開示されている。
この塗布液は、アセチルアセトンインジウム、アセチルアセトン錫の混合溶液にヒドロキシプロピルセルロースを含有させることによって塗布液の基板に対する濡れ性を改善すると同時に、粘性剤であるヒドロキシプロピルセルロースの含有量によって塗布液の粘度を調整し、スピンコート、スプレーコート、ディップコート、スクリーン印刷、ワイヤーバーコート等の各種塗布法の採用を可能にするものである。
また、スピンコート用の改良塗布液として、アセチルアセトンインジウム、オクチル酸インジウム等の有機インジウム化合物と、アセチルアセトン錫、オクチル酸錫等の有機錫と、有機溶剤とを含み、その有機溶剤にアルキルフェノール及び/またはアルケニルフェノールを溶解したアセチルアセトン溶液、アルキルフェノール及び/またはアルケニルフェノールを溶解したアセチルアセトン溶液をアルコールで希釈した液を用いる透明導電膜形成用塗布液(例えば、特許文献13参照)が提案されている。
この塗布液は、低粘度であり、スピンコートのほかスプレーコート、ディップコートにも使用可能である。
更に、高い導電性を得る目的で、熱分解によりインジウム錫酸化物(ITO)となるインジウム化合物と錫化合物に加えて、W、Cr、Moのうち少なくとも1種以上の元素を含む化合物とを含有する透明導電膜形成用塗布液が提案されている(例えば、特許文献14参照)。
この透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布・焼成して得られる透明導電膜は、W、Cr、Moのうち少なくとも1種以上の元素のドーパントの作用で、キャリア電子濃度を高めるとともに、熱分解時にITO粒子の粒成長、および結晶化が促進され、高い電気伝導性が得られると説明されている。
なお、有機EL素子のアノード透明電極としての透明導電膜には、有機EL素子でのショートやダークスポットの発生防止、リーク電流の低減のために、その表面粗さをできるだけ小さくする必要があり、具体的には、例えば、中心線平均粗さ(Ra:Roughness average)で2nm以下、最大高さ(Rmax:Roughness maximum)で30nm以下が一般に求められている。
ところで、前述のスパッタITO膜において、低抵抗膜(例えば比抵抗値=2×10−4Ω・cm程度)を得るには、スパッタリング成膜時の基板温度を高めて結晶化を促進させた結晶性ITO膜(結晶性スパッタITO膜)が考えられるが、結晶性ITO膜の場合、ITO結晶粒同士の間に凹凸(図1参照)が生じるため、スパッタITO膜の表面粗さ(表面平滑性)が悪化することが知られている。
そこで、スパッタリング成膜工程後に、その凹凸を研磨する工程を施して膜表面の平坦化が試みられているが、研磨工程の追加によるコスト増や研磨工程での膜欠陥発生などの課題を抱えている。
一方、アモルファススパッタITO膜では、膜表面の平坦性は良好となり、表面の凹凸問題は生じないものの、膜抵抗値が、例えば比抵抗値:5〜6×10−4Ω・cm程度と高くなってしまう欠点を抱えている。
特許第3849698号公報 特開2004−342618号公報 特開平9−63771号公報 特開昭57−138708号公報 特開昭61−26679号公報 特開平4−255768号公報 特開昭57−36714号公報 特開昭57−212268号公報 特公昭63−25448号公報 特公平2−20706号公報 特公昭63−19046号公報 特開平6−203658号公報 特開平6−325637号公報 特開平11−279438号公報
しかしながら、有機EL素子において、アノード透明電極から発光層への正孔注入効率を高めることができるような仕事関数が十分高い透明導電膜を、透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布、乾燥、焼成して形成する方法(塗布法)は開示されていない。従って、塗布法を用いて高い仕事関数、および優れた膜平坦性を兼ね備える透明導電膜やその製造方法が望まれている。
本発明は、基板としてのガラス基板等の耐熱性無機基板、あるいは、その耐熱性無機基板上に形成されたスパッタリングITO膜等の透明導電膜上に、低コストかつ簡便な透明導電膜の製造方法である塗布法を用いて優れた透明性と膜平坦性、および高い仕事関数を兼ね備える透明導電膜を形成して、基板と透明導電膜からなる有機EL透明導電性基材、およびその製造方法の提供を目的とする。
発明者らは、このような状況に鑑み、主成分として有機金属化合物を含有する透明導電膜形成用塗布液を、基板上に塗布、乾燥、無機化処理して得られる導電性酸化物を主成分とする透明導電膜について鋭意研究を重ねた結果、主成分として有機インジウム化合物、または有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物を含有する透明導電膜形成用塗布液、あるいは、主成分として有機錫化合物、または有機錫化合物とドーパント用有機金属化合物を含有する透明導電膜形成用塗布液を用いて得られる酸化インジウム、またはドーパント金属酸化物を含む酸化インジウムである導電性酸化物を主成分とする無機膜、あるいは酸化錫、またはドーパント金属酸化物を含む酸化錫である導電性酸化物を主成分とする無機膜からなる透明導電膜が、良好な導電性と高い仕事関数が得られ、かつ、表面平滑性も高い有機EL用透明導電膜が得られることを見出したものである。
即ち、本発明の第1の発明は、主成分として有機インジウム化合物、または有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物を含有する透明導電膜形成用塗布液、あるいは、主成分として有機錫化合物、または有機錫化合物とドーパント用有機金属化合物を含有する透明導電膜形成用塗布液を塗布して塗布膜を形成する塗布工程、前記塗布膜を乾燥して乾燥塗布膜を形成する乾燥工程、前記乾燥塗布膜を無機化して、酸化インジウム、またはドーパント金属酸化物を含む酸化インジウムである導電性酸化物を主成分とする無機膜、あるいは酸化錫、またはドーパント金属酸化物を含む酸化錫である導電性酸化物を主成分とする無機膜を形成する無機化工程の各工程からなる塗布法により透明導電膜を形成する有機EL用透明導電性基材の製造方法であって、透明導電膜が、1×10Ω・cm未満の比抵抗値を有し、かつ4.9eV以上の仕事関数を有する導電性酸化物であることを特徴とするものである。
本発明の第2の発明は、第1の発明におけるドーパント用有機金属化合物が、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物、有機バナジウム化合物、有機ゲルマニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、有機ニオブ化合物、有機モリブデン化合物、有機ハフニウム化合物、有機タンタル化合物、有機タングステン化合物、有機セリウム化合物のいずれか1種以上であり、前記ドーパント金属酸化物が、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化セリウムのいずれか1種以上であることを特徴とする有機EL用透明導電性基材の製造方法である。
本発明の第3の発明は、第1及び第2の発明における有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物の含有割合が、有機インジウム化合物/ドーパント用有機金属化合物のモル比で100/0〜87/13であることを特徴とする有機EL用透明導電性基材の製造方法である。
本発明の第4の発明は、第1及び第2の発明における有機錫化合物とドーパント用有機金属化合物の含有割合が、有機錫化合物/ドーパント用有機金属化合物のモル比で100/0〜70/30であることを特徴とする有機EL用透明導電性基材の製造方法である。
本発明の第5の発明は、第1〜第3の発明における有機インジウム化合物が、アセチルアセトンインジウムであることを特徴とする有機EL用透明導電性基材の製造方法である。
本発明の第6の発明は、第1、第2、第4の発明における有機錫化合物が、ジメチルビス(2,4−ペンタンジオナト)錫、ジブチル錫オキシド、2−エチルヘキサン酸錫のいずれか1種以上であることを特徴とする有機EL用透明導電性基材の製造方法である。
本発明の第7の発明は、第1〜第6の発明における基板が、耐熱性無機基板であることを特徴とする有機EL用透明導電性基材の製造方法である。
本発明の第8の発明は、第1〜第7の発明における基板が、耐熱性無機基板上に気相成長方法により形成された透明導電膜を有する基板であって、その透明導電膜上に塗布法により透明導電膜を形成することを特徴とする有機EL用透明導電性基材の製造方法である。
本発明の第9の発明は、第7及び第8の発明における耐熱性無機基板がガラス基板であることを特徴とする有機EL用透明導電性基材の製造方法である。
本発明の第10の発明は、第1〜第9の発明における有機EL用透明導電性基材の製造方法で得られる有機EL用透明導電性基材であって、塗布法により形成される透明導電膜の表面平滑性が、中心線平均粗(Ra)が2nm以下、最大高さ(Rmax)が30nm以下であることを特徴とするものである。
本発明の第11の発明は、第10の発明における有機EL用透明導電性基材を用いることを特徴とする有機EL素子である。
本発明の有機EL用透明導電性基材の製造方法によれば、1×10Ω・cm未満の比抵抗値と、4.9eV以上の仕事関数を有する酸化インジウム、または酸化錫である導電性酸化物を主成分とする無機膜、あるいはドーパント金属酸化物を含む酸化インジウム、またはドーパント金属酸化物を含む酸化錫である導電性酸化物を主成分とする無機膜を塗布法という簡便な成膜方法で形成するため、得られる透明導電膜は、高い仕事関数を有し、表面平滑性にも優れ、かつ安価である。
本発明に係る有機EL用透明導電性基材は、塗布法による透明導電膜を、透明耐熱基板としてのガラス基板、あるいは、そのガラス基板上に形成されたスパッタリングITO膜等の透明導電膜上に形成するため、有機EL素子のアノード透明電極に適用されると、アノード透明電極から発光層への正孔注入効率を高めて有機EL素子の発光効率を向上させたり、有機EL素子でのショートやダークスポットの発生防止、リーク電流の低減を可能とするもので工業上顕著な効果を奏するものである。
従来の結晶性スパッタITO膜の表面の走査電子顕微鏡写真(SEM像)である。 従来の有機EL用透明導電性基材の構造の一例を示す模式図である。 本発明に係る有機EL用透明導電性基材の構造の一例を示す模式図である。 本発明に係る有機EL用透明導電性基材の別の構造の一例を示す模式図である。 空気中の飽和水蒸気含有量(体積%)と露点温度(℃)の関係を示す図である。 従来の結晶性スパッタITO膜(膜厚:約100nm、表面抵抗値:17Ω/□、Ra:2.1nm、Rmax:35.0nm)の表面を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した表面形状プロファイルを示す図である。 本発明に係る有機EL用透明導電性基材における透明導電膜表面を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した表面形状プロファイルを示す図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の有機EL用透明導電性基材の製造方法は、主成分として有機インジウム化合物、または有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物を含有する透明導電膜形成用塗布液、あるいは、主成分として有機錫化合物、または有機錫化合物とドーパント用有機金属化合物を含有する透明導電膜形成用塗布液を、基板上に塗布、乾燥、無機化処理するという塗布法により形成される酸化インジウム、またはドーパント金属酸化物を含む酸化インジウムである導電性酸化物を主成分とする無機膜、あるいは酸化錫、またはドーパント金属酸化物を含む酸化錫である導電性酸化物を主成分とする無機膜からなる透明導電膜を有する有機EL用透明導電性基材の製造方法である。
さらに、その塗布法で形成される透明導電膜は、1×10Ω・cm未満の比抵抗値と、4.9eV以上の仕事関数を有し、かつ、透明導電膜形成用塗布液が有する極めて平坦な液体表面を乾燥塗布膜の表面を経て最終的に無機膜の表面とするため、優れた膜平坦性を有する。この膜平坦性は、有機EL素子のアノード透明電極に本発明を適用すると、アノード透明電極から発光層への正孔注入効率を高めると同時に、素子のショートやダークスポットの発生防止、リーク電流の低減を図ることを可能とする。
すなわち、各種機能性膜に用いた場合、その膜が有する機能の向上が達成可能である。
[有機EL用透明導電性基材の構造]
先ず、本発明の有機EL用透明導電性基材の構造を説明する。
これまで述べたように、従来の有機EL透明導電性基材は、図2に示すように、ガラス基板等の耐熱性無機基板1の上にスパッタリング等の気相成長法を用いた透明導電膜(例えばスパッタITO膜)2を形成した構造であり、ITO膜の仕事関数が4.5〜4.8eV程度と十分には大きくないため、アノード透明電極(スパッタITO膜)から発光層への正孔注入効率が十分とは言えなかった。
一方、本発明の有機EL用透明導電性基材は、ガラス基板等の耐熱性無機基板1の上に塗布法を用いて仕事関数が4.9eV以上の透明導電膜3を形成した構造(図3)、または、従来のスパッタリング等の気相成長法を用いた透明導電膜2の上に更に塗布法を用いて仕事関数が4.9eV以上の透明導電膜3を形成した構造(図4)となっている。
この図4の構造では、気相成長法を用いて形成される透明導電膜2(例えば結晶性スパッタITO膜)の抵抗値(例えば、10〜50Ω/□[オーム・パー・スクエア])は通常十分低いため、塗布法を用いて形成する透明導電膜3には高い導電性は必要でなく、高い仕事関数で発光層への正孔注入効率を高める働きが求められる。
[塗布法で形成した透明導電膜の構造]
次に、塗布法を用いて形成した透明導電膜の構造を説明する。
例えば、スパッタリング法等の気相成長法を用いて透明導電膜を形成した場合、通常、導電性酸化物の結晶粒が粒界を介して配列した膜構造である多結晶の透明導電膜構造が形成され、膜構造において導電性酸化物微粒子はほとんど観察されない。
また、有機金属化合物を主成分とする透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布、乾燥、加熱処理する塗布法で形成した透明導電膜では、通常、導電性酸化物微粒子同士が結合した膜構造を有しており、導電性酸化物微粒子の粒子径や導電性酸化物微粒子間に存在する空隙の大きさは、加熱処理条件などで異なるが、少なからず開空隙(オープンポア)を有する導電性酸化物微粒子で構成される透明導電膜となることが知られている。
そして、この塗布法で形成された導電性酸化物微粒子同士が結合した透明導電膜を、透明導電膜に適用した場合、透明導電膜における導電機構が、導電性酸化物微粒子の接触部分(結合部分)を介在するものであることから、導電性酸化物微粒子同士が微小面積で接触するために起こると考えられる接触部分での導電性低下、開空隙を通して大気中の酸素や水蒸気が膜内に進入し導電性酸化物微粒子同士の接触を劣化させるために起こると考えられる大気曝露における導電性の経時劣化、導電性酸化物微粒子が粗に充填しているために起こると考えられる膜強度の低下などを生じる。
このような塗布法による透明導電膜において、導電性酸化物微粒子を緻密に充填させると同時に、導電性酸化物微粒子の結晶成長も促進させ、開空隙(オープンポア)が少なく、導電性酸化物微粒子同士の接触が強化された導電性酸化物微粒子層を有する膜構造を形成して、その導電性や膜強度の向上を図り、更には、導電性の経時劣化も大きく抑制することが望ましく、そのためには、塗布法における無機化工程において、水蒸気含有量の少ない、すなわち露点温度が低い酸素含有雰囲気を適用することが望ましい。さらに透明導電膜における、導電性酸化物微粒子層の緻密化は、膜の平坦性向上にもつながるため好ましい。
このような緻密な導電性酸化物微粒子層の形成機構については、いまだ明らかとはいえず、後でも詳細に説明(段落[0083]から[0084]、[0101]から[0103]参照)するが、要は酸素含有雰囲気中に水蒸気が存在すると、有機金属化合物等が熱分解・燃焼して生じる無機化による導電性酸化物の結晶化並びに結晶成長が、水蒸気で促進され、熱分解・燃焼を行なう無機化工程での初期段階で導電性酸化物微粒子同士を固着して動けなくしてしまうため、導電性酸化物微粒子の緻密化を阻害するためと推測される。
一方、無機化工程の初期段階において、水蒸気含有量の少ない、すなわち露点温度が低い酸素含有雰囲気を適用すれば、透明導電膜の導電性酸化物組成にもよるが、例えば、透明導電膜における導電性酸化物微粒子の充填密度は導電性酸化物の真比重の約90%程度まで高めることが可能であり、水蒸気を多く含む酸素含有雰囲気を適用した場合には、真比重の60〜70%程度に留まる。
[透明導電膜形成用塗布液]
次に、本発明で用いられる透明導電膜形成用塗布液について詳細する。
本発明では、主成分として有機インジウム化合物、または有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物を含有する透明導電膜形成用塗布液、あるいは、主成分として有機錫化合物、または有機錫化合物とドーパント用有機金属化合物を含有する透明導電膜形成用塗布液を用いて、酸化インジウム、またはドーパント金属酸化物を含む酸化インジウムである導電性酸化物を主成分とする無機膜、あるいは酸化錫、またはドーパント金属酸化物を含む酸化錫である導電性酸化物を主成分とする無機膜からなる透明導電膜を形成している。
まず、本発明の有機インジウム化合物について、以下に説明する。
有機インジウム化合物は、無機化により酸化インジウム(InO1.5)となり、この酸化インジウムは、塗布法で得られる透明導電膜の主成分を構成する。
本発明で用いることができる有機インジウム化合物としては、例えば、アセチルアセトンインジウム(正式名称:トリス(アセチルアセトナト)インジウム(III))[In(C]、2−エチルヘキサン酸インジウム(III)[In(C15COO]、蟻酸インジウム(III)[In(HCOO)]、酢酸インジウム(III)[In(CHCOO)]、インジウムアルコキシドとしてのインジウム(III)メトキシエトキシド[In(CHOCO)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、無機化工程において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機インジウム化合物であれば良い。これらの中でもアセチルアセトンインジウムは有機溶剤への溶解性が高く、無機化工程の加熱処理時において200〜250℃程度の温度で熱分解・燃焼(酸化)して酸化物となるため好ましい。
次に、本発明の有機錫化合物について、以下に説明する。
本発明で用いることができる有機錫化合物としては、例えば、有機錫化合物(化合物中の錫の価数は2価、4価にこだわらない)としては、アセチルアセトン錫(正式名称:ジ−n−ブチル ビス(2,4−ペンタンジオナト)錫(IV)[Sn(C(C])、ジメチルビス(2,4−ペンタンジオナト)錫(IV)[Sn(CH(C]、ジブチル錫オキシド(IV)[C18OSn]、ジ−n−ブチル錫(IV)ジアセテート[Sn(C(CHCOO)] 、2−エチルヘキサン酸錫(II)(別名:オクチル酸第一錫(II))[Sn(C15]、酢酸錫(II)[Sn(CHCOO)]、酢酸錫(IV)[Sn(CHCOO)]、蟻酸錫(II)[Sn(HCOO)]、錫アルコキシドとしての錫(IV)−tert−ブトキシド[Sn(CO)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、無機化工程において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機錫化合物であれば良い。
これらの中でもジメチルビス(2,4−ペンタンジオナト)錫(IV)、ジブチル錫(IV)オキシド、2−エチルヘキサン酸錫(II)は、比較的安価で入手し易く、形成される透明導電膜の膜平坦性が優れるので好ましい。
次に、ドーパント用有機金属化合物について、以下に説明する。
本発明で用いるドーパント用有機金属化合物は、そのドーパント用有機金属化合物を無機化して得られるドーパント金属酸化物における仕事関数が、5eV以上を有することが必要である。
このドーパント金属酸化物の仕事関数が、5eV未満だと、ドーパント金属酸化物を含む酸化インジウム、またはドーパント金属酸化物を含む酸化錫である導電性酸化物を主成分とする無機膜の仕事関数を4.9eV以上にできなくなるからである。
したがって、本発明で用いることができるドーパント用有機金属化合物は、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物、有機バナジウム化合物、有機ゲルマニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、有機ニオブ化合物、有機モリブデン化合物、有機ハフニウム化合物、有機タンタル化合物、有機タングステン化合物、有機セリウム化合物のいずれか一つ以上からなり、ドーパント金属酸化物は、酸化アルミニウム(AlO1.5;仕事関数=約5.7eV)、酸化チタン(TiO;仕事関数=5.3〜5.4eV)、酸化バナジウム(VO2.5;仕事関数=約5.4eV)、酸化ゲルマニウム(GeO;仕事関数=5.4〜5.6eV)、酸化ジルコニウム(ZrO;仕事関数=5.4〜5.5eV)、酸化ニオブ(NbO2.5;仕事関数=約5.3eV)、酸化モリブデン(MoO;仕事関数=5.4〜5.5eV)、酸化ハフニウム(HfO;仕事関数=5.6〜5.7eV)、酸化タンタル(TaO2.5;仕事関数=5.5〜5.6eV)、酸化タングステン(WO;仕事関数=5.3〜5.4eV)、酸化セリウム(CeO;仕事関数=約5.4eV)等のいずれか1種以上が好ましい。
有機アルミニウム化合物としては、アルミニウムアセチルアセトン錯体としてのアセチルアセトンアルミニウム(正式名称:アルミニウム(III)−2,4−ペンタンジオネート)[Al(C]、アルミニウムアルコキシドとしてのアルミニウム(III)エトキシド[Al(CO)]、アルミニウム(III)−n−ブトキシド[Al(CO)]、アルミニウム(III)−tert−ブトキシド[Al(CO)]、アルミニウム(III)イソプロポキシド[Al(CO)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、無機化工程において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機アルミニウム化合物であれば良い。これらの中でも、アセチルアセトンアルミニウム、アルミニウム(III)−n−ブトキシドは、比較的安価で入手し易いので好ましい。
有機金属化合物の有機チタン化合物としては、例えば、チタンアセチルアセトン錯体としてのアセチルアセトンチタン(正式名称:チタン(IV)ジ−n−ブトキシド ビス(2,4−ペンタンジオネート)[Ti(CO)(C] )、チタニル(IV)アセチルアセトネート[(CTiO]、チタン(IV)ジイソプロポキシド ビス(2,4−ペンタンジオネート)[Ti(CO)(C]等や、チタンアルコキシドとしてのチタン(IV)テトラエトキシド[Ti(CO)]、チタン(IV)−tert−ブトキシド[Ti(CO)]、チタン(IV)テトラ−n−ブトキシド[Ti(CO)]、チタン(IV)テトライソプロポキシド[Ti(CO)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、無機化工程において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機チタン化合物であれば良い。これらの中でも、アセチルアセトンチタン、チタン(IV)テトラ−n−ブトキシド、チタン(IV)テトライソプロポシドは、安価で入手し易いので好ましい。
有機金属化合物の有機バナジウム化合物としては、例えば、バナジウムアセチルアセトン錯体としてのバナジウム(IV)オキサイドビス−2,4−ペンタンジオネート[VO(C]、アセチルアセトンバナジウム(正式名称:バナジウム(III)−2,4−ペンタンジオネート)[V(C]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、無機化工程において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機バナジウム化合物であれば良い。
有機金属化合物の有機ゲルマニウム化合物としては、例えば、ゲルマニウムアルコキシドとしてのゲルマニウム(IV)テトラエトキシド[Ge(CO)]、ゲルマニウム(IV)テトラ−n−ブトキシド[Ge(CO)]、ゲルマニウム(IV)テトライソプロポキシド[Ge(CO)]等や、β−カルボキシエチルゲルマニウム(IV)オキシド[(GeCHCHCOOH)]、テトラエチルゲルマニウム(IV)[Ge(C]、テトラブチルゲルマニウム(IV)[Ge(C]、トリブチルゲルマニウム(IV)ハイドライド[Ge(CH]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、無機化工程において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機ゲルマニウム化合物であれば良い。これらの中でも、ゲルマニウム(IV)テトラエトキシド、ゲルマニウム(IV)テトラ−n−ブトキシド、ゲルマニウム(IV)テトライソプロポキシドは、比較的安価で入手し易いので好ましい。
有機金属化合物の有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムアセチルアセトン錯体としてのジルコニウム(IV)ジ−n−ブトキシド ビス(2,4−ペンタンジオネート)[Zr(CO)(C])、アセチルアセトンジルコニウム(正式名称:ジルコニウム(IV)−2,4−ペンタンジオネート)[Zr(C]、ジルコニウムアルコキシドとしてのジルコニウム(IV)エトキシド[Zr(CO)]、ジルコニウム(IV)−n−プロポキシド[Zr(CO)]、ジルコニウム(IV)イソプロポキシド[Zr(CO)]、ジルコニウム(IV)−n−ブトキシド[Zr(CO)]、ジルコニウム(IV)−tert−ブトキシド[Zr(CO)]、ジルコニウム(IV)−2−メチル−2−ブトキシド[Zr(C11O)]、ジルコニウム(IV)−2−メトキシメチル−2−プロポキシド[Zr(CHOCO)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、無機化工程において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機ジルコニウム化合物であれば良い。これらの中でも、ジルコニウム(IV)−n−プロポキシド、ジルコニウム(IV)−n−ブトキシドは、比較的安価で入手し易いので好ましい。
有機金属化合物の有機ニオブ化合物としては、例えば、ニオブアルコキシドとしてのニオブ(V)エトキシド[Nb(CO)]、ニオブ(V)−n−ブトキシド[Nb(CO)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、無機化工程において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機ニオブ化合物であれば良い。
有機金属化合物の有機モリブデン化合物としては、例えば、モリブデンアセチルアセトン錯体としてのモリブデン(VI)オキサイドビス−2,4−ペンタンジオネート[MoO(C]、モリブデンアルコキシドとしてのモリブデン(V)エトキシド[Mo(CO)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、無機化工程において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機モリブデン化合物であれば良い。
有機金属化合物の有機ハフニウム化合物としては、例えば、ハフニウムアセチルアセトン錯体としてのハフニウム(IV)ジ−n−ブトキシド ビス(2,4−ペンタンジオネート)[Hf(CO)(C] )、アセチルアセトンハフニウム(正式名称:ハフニウム(IV)−2,4−ペンタンジオネート)[Hf(C]、ハフニウムアルコキシドとしてのハフニウム(IV)エトキシド[Hf(CO)]、ハフニウム(IV)−n−ブトキシド[Hf(CO)]、ハフニウム(IV)−tert−ブトキシド[Hf(CO)]、ハフニウム(IV)イソプロポキシドモノイソプロピレート[Hf(CO)(COH)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、無機化工程において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機ハフニウム化合物であれば良い。これらの中でも、ハフニウム(IV)−n−ブトキシドは、比較的安価で入手し易いので好ましい。
有機金属化合物の有機タンタル化合物としては、例えば、タンタルアセチルアセトン錯体としてのタンタル(V)テトラエトキシド−ペンタンジオネート[Ta(C)(OC]、タンタルアルコキシドとしてのタンタル(V)メトキシド[Ta(CHO)]、タンタル(V)エトキシド[Ta(CO)]、タンタル(V)イソプロポキシド[Ta(CO)]、タンタル(V)−n−ブトキシド[Ta(CO)]、テトラエトキシアセチルアセトナトタンタル(V)[Ta(CO)(C)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、無機化工程において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機タンタル化合物であれば良い。
有機金属化合物の有機タングステン化合物としては、例えば、タングステンアルコキシドとしてのタングステン(V)エトキシド[W(CO)]、タングステン(VI)エトキシド[W(CO)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、無機化工程において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機タングステン化合物であれば良い。
有機金属化合物の有機セリウム化合物としては、例えば、セリウムアセチルアセトン錯体としてのアセチルアセトンセリウム(正式名称:セリウム(III)−2,4−ペンタンジオネート)[Ce(C]、セリウムアルコキシドとしてのセリウム(IV)メトキシエトキシド[Ce(CHOCO)]、セリウム(IV)−tert−ブトキシド[Ce(CO)]、セリウム(IV)イソプロポキシド[Ce(CO)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、無機化工程において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機セリウム化合物であれば良い。
透明導電膜形成用塗布液における上記有機インジウム化合物、または有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物からなる有機金属化合物、あるいは、有機錫化合物、または有機錫化合物とドーパント用有機金属化合物からなる有機金属化合物は、基板上に塗布法による透明導電膜を形成させるための主たる化合物原料であり、その含有量は1〜30質量%の範囲であることが好ましく、更に好ましくは5〜20質量%とするのが良い。
その合計含有量が1質量%未満であると膜厚の薄い透明導電膜しか得られなくなるため十分な導電性が得られない。また、30質量%より多いと透明導電膜形成用塗布液中の有機金属化合物が析出し易くなって塗布液の安定性の低下を招き、さらに得られる透明導電膜が厚くなり過ぎて亀裂(クラック)を発生させる場合がある。
必要に応じて、透明導電膜形成用塗布液には、少量の有機錫化合物、有機亜鉛化合物のいずれか1つ以上を添加しても良い。
有機亜鉛化合物としては、例えば、亜鉛アセチルアセトン錯体としてのアセチルアセトン亜鉛(正式名称:亜鉛(II)−2,4−ペンタンジオネート)[Zn(C]、亜鉛(II)−2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート[Zn(C1119]、亜鉛アルコキシドとしての亜鉛(II)メトキシエトキシド[Zn(CHOCO)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、無機化工程において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機亜鉛化合物であれば良く、これらの中でもアセチルアセトン亜鉛は、安価で入手し易いので好ましい。
さらに、透明導電膜形成用塗布液には、必要に応じて有機バインダーを添加しても良い。
有機バインダーを加えることで、基板に対する濡れ性が改善されると同時に、塗布液の粘度調整を行うことができる。添加する有機バインダーは、無機化工程において燃焼や熱分解する材料が好ましく、このような材料として、セルロース誘導体、アクリル樹脂等が有効である。
有機バインダーに用いられるセルロース誘導体としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース 、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース 、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース 、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース、ニトロセルロース等が挙げられるが、これらの中でもヒドロキシプロピルセルロース(以下、「HPC」と表記する場合がある)が好ましい。
このHPCを用いれば、5質量%以下の含有量で十分な濡れ性が得られると同時に、大幅な粘度調整を行うことができる。また、HPCの燃焼開始温度は300℃程度であり、無機化工程の加熱処理を300℃以上、好ましくは350℃以上の加熱温度で行えば燃焼するので、生成する導電性粒子の粒成長を阻害せず、導電性が良好な有機EL用透明導電膜を作製することができる。
HPCの含有量が5質量%より多くなると、ゲル状になって塗布液中に残留し易くなり、極めて多孔質の有機EL用透明導電膜を形成して透明性や導電性が著しく損なわれる。
ここで、セルロース誘導体として、例えばHPCの代わりにエチルセルロースを用いた場合には、HPCを用いた場合よりも塗布液の粘度が低く設定できるが、高粘度塗布液が好適であるスクリーン印刷法等ではパターン印刷性が若干低下する。
ところで、ニトロセルロースは、熱分解性は優れているが、無機化工程の加熱処理時において有害な窒素酸化物ガスの発生があり、加熱処理炉の劣化や排ガス処理に問題を生じる場合がある。以上のように、使用するセルロース誘導体は、状況に応じて適宜選択する必要がある。
また、アクリル樹脂としては、比較的低温で燃焼するアクリル樹脂が好ましい。
透明導電膜形成用塗布液に用いる溶剤としては、各種金属アセチルアセトン錯体化合物や各種金属アルコキシド化合物を高濃度で溶解できるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)やγ−ブチロラクトンが好ましい。
更に、別の好ましい溶剤として、アルキルフェノール、アルケニルフェノールのいずれか或いは両者と二塩基酸エステル、もしくはアルキルフェノール、アルケニルフェノールのいずれか或いは両者と酢酸ベンジル、またはこれらの混合溶液が挙げられる。
このアルキルフェノールあるいはアルケニルフェノールとしては、クレゾール類、キシレノール、エチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、カシューナット殻液[3ペンタデカデシールフェノール]等が挙げられ、二塩基酸エステル(例えば二塩基酸ジメチル、二塩基酸ジエチル等)としては、コハク酸エステル、グルタル酸エステル、アジピン酸エステル、マロン酸エステル、フタル酸エステル等が用いられる。
更に、塗布液を低粘度に調整する場合や、塗布性を改善させるために透明導電膜形成用塗布液に配合する溶剤には、各種有機金属化合物とセルロース誘導体やアクリル樹脂を溶解させた溶液と相溶性があれば良く、上記以外の溶剤として、水、メタノール(MA)、エタノール(EA)、1−プロパノール(NPA)、イソプロパノール(IPA)、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール(DAA)等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等のエステル系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル(MCS)、エチレングリコールモノエチルエーテル(ECS)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(IPC)、エチレングリコールモノブチルエーテル(BCS)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールエチルエーテル(PE)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGM−AC)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート(PE−AC)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール誘導体、トルエン、キシレン、メシチレン、ドデシルベンゼン等のベンゼン誘導体、ホルムアミド(FA)、N−メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1、3−ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、1、3−オクチレングリコール、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、ミネラルスピリッツ、ターピネオール等、及びこれらのいくつかの混合液が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
塗布液の安定性や成膜性を考慮すると、使用する溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン等が好ましい。
本発明で用いる透明導電膜形成用塗布液は、以上の有機インジウム化合物、または有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物としての有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物、有機バナジウム化合物、有機ゲルマニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、有機ニオブ化合物、有機モリブデン化合物、有機ハフニウム化合物、有機タンタル化合物、有機タングステン化合物、有機セリウム化合物のいずれか1種以上、あるいは、有機錫化合物、または有機錫化合物とドーパント用有機金属化合物としての有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物、有機バナジウム化合物、有機ゲルマニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、有機ニオブ化合物、有機モリブデン化合物、有機ハフニウム化合物、有機タンタル化合物、有機タングステン化合物、有機セリウム化合物のいずれか1種以上、必要に応じてこれら以外の有機錫化合物や有機亜鉛化合物等の各種有機金属化合物のいずれか1種以上、更に、必要に応じて有機バインダーを加えた混合物を溶剤に加熱溶解させることによって製造する。
その加熱溶解は、通常、加熱温度を60〜200℃とし、0.5〜12時間攪拌することにより行われる。
加熱温度が60℃よりも低いと十分に溶解せず、200℃よりも高いと溶剤の蒸発が顕著となり塗布液の組成が変化してしまうので好ましくない。
透明導電膜形成用塗布液の粘度は、有機バインダーの分子量や含有量、溶剤の種類によって調整することができるので、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサ印刷法、スリットコート法、ダイコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、スプレーコート法等の各種塗布法のそれぞれに適した粘度に調整して対応することができる。
高粘度(5000〜50000mPa・s程度)の塗布液は、高分子量の有機バインダーを5質量%以下、好ましくは2〜4質量%含有させることで作製でき、低粘度(5〜500mPa・s程度)は、低分子量の有機バインダーを5質量%以下、好ましくは0.1〜2質量%含有させ、かつ低粘度の希釈用溶剤で希釈することで作製できる。また、中粘度(500〜5000mPa・s)の塗布液は、高粘度の塗布液と低粘度の塗布液を混合して作製できる。
[有機EL用透明導電性基材の製造方法]
本発明の有機EL用透明導電性基材の製造方法について詳細する。
本発明の有機EL用透明導電性基材は、基板上に、透明導電膜形成用塗布液を塗布して塗布膜を形成する塗布工程、その塗布膜を乾燥して乾燥塗布膜を形成する乾燥工程、その乾燥塗布膜を無機化して無機膜を形成する無機化工程の各工程を経て形成される。
(a)塗布工程
基板上への透明導電膜形成用塗布液の塗布は、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサ印刷法、スリットコート法、ダイコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、スプレーコート法等の各種塗布法を用いて行われる。
基板上への塗布は、クリーンルーム等のように清浄でかつ温度や湿度が管理された雰囲気下で行うことが好ましい。その温度は室温(25℃程度)、湿度は40〜60%RHが一般的である。
使用する基板としては、耐熱性無機基板がよく、中でもソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等のガラス基板が好ましい。場合によっては、ポリイミド(PI)等の樹脂基板(耐熱性プラスチックフィルム)を用いてもよい。
(b)乾燥工程
次の乾燥工程では、透明導電膜形成用塗布液を塗布した基板を、通常大気中80〜180℃で1〜30分間、好ましくは2〜10分間保持して塗布膜の乾燥を行い、乾燥塗布膜を作製する。
その乾燥条件(乾燥温度、乾燥時間)は、用いる基板の種類や透明導電膜形成用塗布液の塗布厚み等によって、適宜選択すればよく、上記乾燥条件に限定される訳ではない。ただし、生産性を考慮すれば、乾燥時間は、得られる乾燥塗布膜の膜質が悪化しない必要最低限度に短縮することが望ましい。
また、乾燥温度は、用いる基板の耐熱温度以下であることも必要である。なお、必要に応じて大気中乾燥に代えて、減圧乾燥(到達圧力:通常1kPa以下)を適用することも可能である。この減圧乾燥では、塗布された透明導電膜形成用塗布液中の溶剤が、減圧下で強制的に除去されて乾燥が進行するため、大気中乾燥に比べてより低温での乾燥が可能となる。
この作製した乾燥塗布膜は、透明導電膜形成用塗布液から前述の有機溶剤が揮発除去されたものであって、上記有機インジウム化合物、ドーパント用有機金属化合物、(必要に応じて少量添加される、有機錫化合物、有機亜鉛化合物)、有機バインダー等の有機系成分で構成されている。
(c)無機化工程
次の無機化工程では、乾燥工程で作製した乾燥塗布膜を加熱処理、またはエネルギー線照射処理して乾燥塗布膜中の有機インジウム化合物、有機錫化合物、ドーパント用有機金属化合物、あるいは少量添加の有機金属化合物、および有機バインダー等の有機系成分を熱分解・燃焼(酸化)により無機化させて酸化インジウム、またはドーパント金属酸化物を含む酸化インジウムである導電性酸化物、あるいは酸化錫、またはドーパント金属酸化物を含む酸化錫である導電性酸化物を主成分とする緻密かつ表面平滑性の高い無機膜(導電性酸化物微粒子が緻密に充填した導電性酸化物微粒子層としての透明導電膜)を形成するものである。
すなわち、無機化工程の加熱処理では、昇温過程で加熱温度が高くなってくると、乾燥塗布膜中の有機インジウム化合物、または有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物(少量有機金属化合物を含有する物も含む)、あるいは有機錫化合物、または有機錫化合物とドーパント用有機金属化合物は徐々に熱分解・燃焼(酸化)されて、まずアモルファス状態(ここでは、X線回折で求めた結晶子サイズ:3nm未満の非常に微細な粒子の状態を称する)の導電性酸化物への変換、所謂無機化が生じる。その後加熱温度が一層上昇して通常300〜330℃の範囲を越えるか、あるいは300〜330℃の範囲のままであっても加熱時間が長くなると、導電性酸化物の結晶化が起き、更に結晶成長して導電性酸化物微粒子となり最終的な透明導電膜の構成要素となる。
なお、この300〜330℃の温度は、上記無機化や結晶化が生じやすい一般的な温度範囲を示すものであって、例えば、加熱時間が長い場合には、270℃程度でも上記記導電性酸化物の無機化、結晶化、結晶成長が生じる場合もあるため、本発明の無機化工程の加熱処理温度が300℃以上に限定されるものではない。
一方、有機バインダーも同様に、無機化工程の加熱処理では、昇温過程で徐々に熱分解・燃焼(酸化)するが、主に二酸化炭素(CO)に転化されて雰囲気中に揮散して膜中から消失(有機バインダーの種類にもよるが、例えばHPCであれば約300〜350℃でほぼ消失)していくため、最終的には有機EL用透明導電膜中にはほとんど残留しない。
なお、加熱処理の初期段階(昇温過程のある段階で、例えば室温から加熱して300℃まで到達した段階)までは有機バインダーが多く残留し、上記アモルファス状態の導電性酸化物間に有機バインダーが均一に介在して結晶化を抑制しているが、更に加熱処理を進めると有機バインダー成分が徐々に消失していって上記導電性酸化物の結晶化が起こるものと考えられる。
以下、無機化工程をより詳細に説明する。
本発明の乾燥塗布膜の無機化工程においては、露点温度の低い、即ち水蒸気含有量の少ない酸素含有雰囲気(参考として、図5に、空気中の飽和水蒸気含有量(体積%)と露点温度(℃)の関係を示す)を加熱処理の昇温過程、またはエネルギー線照射処理の雰囲気に適用することが望ましい。
露点温度の低い酸素含有雰囲気を加熱処理の昇温過程、またはエネルギー線照射処理の雰囲気に適用することで、上記の通り無機化工程の初期段階に生じる無機化による導電性酸化物の結晶化、並びに結晶成長が抑制されて、導電性酸化物微粒子が緻密に充填した本発明の導電性酸化物微粒子層の膜構造を得ることができる。
なお、導電性酸化物微粒子が緻密に充填するメカニズムに関しては、必ずしも明らかではないが、例えば、以下のように考えることができる。
すなわち、少なくとも無機化工程の加熱処理では、昇温過程で生じた無機化による導電性酸化物の結晶化が起こる時点(加熱処理の初期段階;本発明では通常300〜330℃程度)までは上記アモルファス状態の導電性酸化物間に有機バインダーが均一に介在した膜構造が維持され、この膜構造が有機物質である有機バインダーの作用で柔軟性を有して基板と垂直方向への膜の収縮(緻密化)を可能とするため、露点温度の低い空気雰囲気下で昇温して加熱処理した場合は、有機バインダーが消失するぎりぎりの加熱温度まで(約300〜350℃程度まで)導電性酸化物の結晶化が抑制されて上記収縮可能な膜構造を取ることができ、膜の緻密化につながるものと推測される。
また、上述した露点温度の低い、即ち水蒸気含有量の少ない空気雰囲気下において導電性酸化物の結晶化、並びに結晶成長が抑制される理由は明らかではないが、例えば、空気雰囲気中の水蒸気が、
(1)導電性酸化物間に介在している有機バインダー成分の熱分解・燃焼(酸化)の促進作用を有する、
(2)導電性酸化物自体の結晶化、並びに結晶成長を促進する作用を有する、
等が考えられる。
具体的には、無機化工程の加熱処理では、先ず露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気ガスを供給しながら導電性酸化物の結晶化が起こる温度以上(通常300〜330℃以上)に昇温して膜の緻密化を図る。
以上のような単純な加熱処理でも緻密な透明導電膜を得ることはできるが、以下に述べるエネルギー線照射処理を併用すれば、上記露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気下での加熱処理の加熱温度を大幅に低下させることができる。
すなわち、乾燥工程で得られた乾燥塗布膜を、露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気下で、加熱しながらエネルギー線照射処理を施す方法である。
この方法によって乾燥塗布膜の有機成分が徐々に分解・燃焼(酸化)して、膜の無機化が進行し、膜の厚みも徐々に低下していき緻密化がより一層促進される。例えば、厚み300〜500nmの乾燥塗布膜を、上記酸素含有雰囲気下での40〜200℃という低温の加熱エネルギー線照射によって、最終的に厚み80〜100nm程度の無機膜に変化させることができる。
なお、エネルギー線照射処理における加熱温度は、300℃未満が良く、好ましくは40〜250℃、より好ましくは、40〜200℃、更に好ましくは40〜150℃の範囲である。300℃以上だと、エネルギー線照射前に乾燥塗布膜の熱分解が始まるため、膜の緻密化が阻害されるため好ましくない。また、40℃未満は、全く実用的でないとは言えないが、エネルギー線照射による乾燥塗布膜の無機化や緻密化の速度が低下することに十分注意する必要がある。
ここで、このエネルギー線照射処理に用いるエネルギー線照射は、少なくとも200nm以下の波長を主要成分の一つとして含む紫外線の照射であることが望ましく、より具体的には、低圧水銀ランプ、アマルガムランプ、エキシマランプのいずれかから放射される紫外線の照射が好ましい。
紫外線の照射量は、波長200nm以下の光の照度:2mW/cm以上、好ましくは4mW/cm以上で、照射時間は、1分間以上、好ましくは2分間以上、好ましくは4分間以上が良い。照射時間が短すぎると、エネルギー線照射の効果(無機化、緻密化)が不十分となり、また、逆に長くなり過ぎると(例えば60分間を超える長時間)、生産性(処理効率)が著しく低下する一方で、エネルギー線照射の効果(無機化、緻密化)は途中でほぼ飽和してしまうため好ましいとは言えない。
この紫外線の照射量は、基板とランプとの距離(照射距離)、照射時間、またはランプの出力によって適宜調整できる。このランプを用いた基板全面へのエネルギー線照射では、例えば直管状のランプを並行に配列させて照射しても良いし、グリッド型ランプの面光源を用いても良い。
ところで、このエネルギー線照射用のランプからは、通常、紫外線等のエネルギー線以外に熱線も放出されるため、例えば加熱エネルギー線照射での加熱温度が40〜50℃程度と低い場合には、必ずしも基板を加熱装置(ホットプレートなど)で加熱するは必要ない。言い換えれば、加熱装置で加熱しなくても、エネルギー線照射ランプからの熱線照射によって、基板は少なくとも40〜50℃程度まで加熱されることになる。
ここで、エネルギー線照射処理におけるエネルギー線照射は、乾燥塗布膜の全面に施しても良いし、乾燥塗布膜のある特定部分だけにパターン形状に施しても良い。この場合、エネルギー線照射を施した部分だけで上述した膜の無機化や緻密化が進行するため、パターン形状を有する金属酸化物微粒子層を形成することができる。
なお、金属酸化物微粒子層が形成されなかった乾燥塗布膜部分(エネルギー線が照射されなかった乾燥塗布膜部分)の除去が必要な場合は、その部分は無機化していないため、乾燥塗布膜を溶解可能な有機溶剤やアルカリ水溶液で溶解して除去することができる。一方で、無機化した金属酸化物微粒子層部分は有機溶剤に全く溶解せず、アルカリ水溶液にもほとんど溶解しないため、金属酸化物微粒子層部分だけを基板上に残すことが可能となる。
用いる乾燥塗布膜の溶解性に優れる有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、アセチルアセトン(2、4−ペンタンジオン)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
また、用いる乾燥塗布膜の溶解性に優れるアルカリ水溶液には、例えば、炭酸ナトリウム、苛性ソーダ、苛性カリ、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液(濃度=0.1〜5質量%)等が挙げられる。
以下、波長200nm以下の光を放射可能な低圧水銀ランプとエキシマランプについて詳細に説明するが、加熱エネルギー線照射では、使用上の制約が少なく、加熱処理と併用した場合にはランプへの加熱の影響を小さくできる低圧水銀ランプを用いることがより好ましい。
アマルガムランプは、低圧水銀ランプが一般に石英ガラス管内にアルゴンガスと水銀を封入するのに対し、水銀と特殊希少金属の合金であるアマルガム合金を封入することで、低圧水銀ランプと比べて、2〜3倍程度の高出力化を可能としたもので、出力波長特性はほぼ低圧水銀ランプと同じなため、詳細説明は省略する。当然のことながら、アマルガムランプも、低圧水銀ランプと同様に、加熱エネルギー線照射では、使用上の制約が少なく、加熱処理と併用した場合にランプへの加熱の影響を小さくできるため好ましい。
ただし、紫外線の吸収を伴わない窒素ガス等を冷却ガスとしてランプを冷却する特殊な装置を用いる事も可能で、そのような場合はこの限りでない。
低圧水銀ランプは、185nmと254nmの波長の紫外線を放射し、例えば空気中では、下記反応式(1)〜(3)のように185nmの光は酸素を分解してオゾンを生成し、更に、そのオゾンを254nmの光がms(ミリ秒)単位の速さで分解して、高エネルギーの活性原子状酸素O(D)を生成する。これと同時に185nmの光(フォトンエネルギー:647kJ/mol)、及び254nmの光は有機物の化学結合を切断し、その化学結合が切断された有機物にオゾンや活性原子状酸素が作用して、最終的に有機物を水や炭酸ガスに酸化分解・揮発させると考えられる。その有効照射距離は0〜20mm(臨界照射距離は200mm)と比較的長い照射距離が確保できる。
一方、エキシマランプ(キセノンエキシマランプ)は、172nmの波長の紫外線を放射し、例えば空気中では、低圧水銀ランプと異なり、下記反応式(4)に示す高エネルギーの活性原子状酸素O(D)を直接生成できるという特徴がある(反応式(4)の解離には波長175nm以下が必要なので、低圧水銀ランプの185nmの光ではこの解離は起きない)。また、反応式(5)によりオゾンを生成し、反応式(6)によっても活性原子状酸素を生成できる(反応式(6)は2次反応であり、主たる活性原子状酸素の生成は反応式(4)によると考えられる)。
更に、フォトンのエネルギーが696kJ/molと大きいので有機物の結合を切る能力が高いという利点もある(ほとんどの有機物の分子結合エネルギーより高いため分子結合が切れる確率が高くなる)。ただし、172nmの光は、低圧水銀ランプの185nmの光に比べて酸素の吸収係数が約100倍も大きく、酸素に強く吸収されるため、上記オゾンや高エネルギーの活性原子状酸素は、ランプ表面近傍でしか酸化反応が起こせず、大気中での有効照射距離が0〜3mm(臨界照射距離は8mm)と極端に短くなる欠点がある。
以上のようにして、乾燥塗布膜中の有機成分を熱分解・燃焼(酸化)により無機化させながら緻密化させて、緻密な無機膜を得ることができる。
ところで、この露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気下での加熱処理による膜緻密化後に、必要に応じて、次に露点温度0℃以上の酸素含有雰囲気ガスを供給しながら加熱処理し、導電性酸化物微粒子同士の結晶成長を促進させることもできる。
更には、膜の緻密化(露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気ガス中での加熱処理)を図った後、あるいは上記緻密化後の結晶成長の促進化(露点温度0℃以上の酸素含有雰囲気ガス中での加熱処理)を図った後に、特に、透明導電膜の導電性を高めたい場合は、中性雰囲気または還元性雰囲気ガスを供給しながら加熱処理を行うことが好ましい。
本発明で使用する酸素含有雰囲気ガスは、空気、または酸素ガス、あるいは、酸素ガスと中性雰囲気ガス(窒素)・不活性ガス(アルゴン、ヘリウム等)の混合ガスが挙げられるが、安価で入手しやすい空気が好ましい。
無機化工程の加熱処理、またはエネルギー線照射処理における酸素含有雰囲気ガスの露点温度は、好ましくは−15℃以下、より好ましくは−20℃以下、更に好ましくは−30℃以下、最も好ましくは−40℃以下である。
なお、無機化工程の酸素含有雰囲気下で導電性酸化物の結晶化が起こる温度以上(本発明では通常300〜330℃以上)に昇温する加熱処理において、その露点温度が−10℃を越えると、導電性酸化物微粒子からなる導電性酸化物微粒子層の形成過程において、加熱処理の初期段階での有機バインダーがまだ多く残留している段階で水蒸気が導電性酸化物の結晶化、並びに結晶成長を促進して前述のアモルファス状態の導電性酸化物間に有機バインダーが均一に介在した膜垂直方向に収縮可能な膜構造が破壊されて、導電性酸化物微粒子同士が固着し動けなくなるため、膜の緻密化が阻害され、透明導電膜の導電性や膜強度が低下するため、好ましいとは言えない。
無機化工程の酸素含有雰囲気下での導電性酸化物の結晶化が起こる温度以上(本発明では通常300〜330℃以上)に昇温する加熱処理は、その昇温で到達する加熱温度(ピーク温度)が300℃以上、より好ましくは350℃以上、更に好ましくは400℃以上の加熱温度で5〜120分間、より好ましくは15〜60分間である。
300℃よりも低い加熱温度(特に270℃未満の加熱温度)では、通常、乾燥塗布膜に含まれる有機成分(有機金属化合物、有機バインダー等に含まれる有機成分)の熱分解或いは燃焼が不十分となり易く、それら有機成分が透明導電膜に残留して導電性酸化物の結晶化が起こらず、膜の緻密化も不十分となって、膜の透明性や導電性を悪化させる恐れがあるため好ましいとは言えない。
ただし、加熱処理時間を例えば60分間程度以上と長くした場合や、最終的な有機EL用透明導電膜の膜厚が130nm程度以下と薄い場合等では、例えば270℃程度でも上記有機成分の熱分解或いは燃焼が進行するため、膜の透明性や導電性が悪化しない場合もある。
したがって、一般的には300℃以上の加熱温度が好ましいが、各工程の条件(膜厚、加熱処理時間等)によっては、270℃程度の加熱温度も適用可能である。
また、加熱温度の上限は特に限定されないが、加熱処理で用いる加熱処理装置の種類や基板の耐熱性等の影響を受ける。例えば、安価で最も一般的に用いられるソーダライムガラス基板では、歪点が約510℃であるので、この温度よりも低い温度で加熱処理することが好ましい。ただし、ソーダライムガラス基板をより耐熱性の高い耐熱性基材上で加熱処理すれば、基板の歪みを比較的少なくできるため、約600℃程度での加熱処理も可能である。もちろん、石英ガラス基板、無アルカリガラス基板、高歪点ガラス基板等のより耐熱性が高いガラス基板を用いる場合は、更に高い加熱温度が適用できる。
なお、基板として耐熱性プラスチックであるポリイミド(PI)フィルムを用いた場合は、ポリイミドの種類にもよるが、400℃程度までの加熱処理が可能である。
無機化工程の加熱処理で用いる加熱処理装置には、ホットプレート、熱風循環加熱処理炉、遠赤外線加熱装置等が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。ただし、本発明を実施するためには露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気を用いることが好ましいため、その場合には、上記加熱処理装置には加熱処理雰囲気の制御が可能であることが求められる。
なお、加熱処理の昇温過程における導電性酸化物の結晶化が起こる温度以上までの昇温速度については特に制約はないが、5〜40℃/分の範囲、より一般的には10〜30℃/分である。
5℃/分より昇温速度が遅いと昇温に時間がかかりすぎて効率が悪くなり、一方40℃/分を越える昇温速度を上記加熱処理装置で実現しようとすると、ヒーター容量が大きくなりすぎて現実的でない。
透明導電膜の導電性を高めたい場合には、上記酸素含有雰囲気下での加熱処理に引き続き、中性雰囲気または還元性雰囲気下での加熱処理を行うと、導電性酸化物の種類によっては、導電性酸化物微粒子に酸素空孔が形成されてキャリア濃度が増加し、透明導電膜の導電性が向上するため好ましい。
なお、この中性雰囲気または還元性雰囲気下での加熱処理は、膜中に形成された酸素空孔が導電性酸化物微粒子の成分元素(金属元素、酸素等)を拡散しやすくするため、上記露点温度0℃以上の酸素含有雰囲気ガス中の加熱処理による導電性酸化物微粒子同士の結晶成長促進よりも、より強い促進効果を有しており、上記透明導電膜の導電性向上だけでなく、導電性の安定化(経時変化抑制)にも有効である点からも好ましい。
この中性雰囲気は、窒素ガス、不活性ガス(アルゴン、ヘリウム等)のいずれか1種以上からなり、還元性雰囲気は、水素ガスまたは該中性雰囲気に水素または有機溶剤蒸気(メタノール等の有機ガス)の少なくとも1種以上が含まれる雰囲気などが挙げられるが、緻密に充填した導電性酸化物微粒子から酸素原子を奪い酸素空孔を形成して導電キャリア濃度を高めることができれば良く、これらに限定されない。
加熱温度が250〜600℃程度であれば、1〜2%水素−99〜98%窒素の混合ガスは、大気に漏洩しても爆発の恐れがないため好ましい雰囲気である。
中性雰囲気または還元性雰囲気下での加熱処理の処理条件は、加熱温度が250℃以上、より好ましくは350℃以上の加熱温度で5〜120分間、より好ましくは15〜60分間である。なお、前述の導電性酸化物微粒子同士の結晶成長をより促進させるという観点からすると、加熱温度は350℃以上、更に好ましくは450℃以上が望ましい。
250℃よりも低い加熱温度では、導電性酸化物微粒子に酸素空孔が十分に形成できず、キャリア濃度の増加による透明導電膜の十分な導電性の向上は期待できない。
また、この加熱温度の上限は特に限定されないが、加熱処理で用いる加熱処理装置の種類や基板の耐熱性に影響受ける点は、酸素含有雰囲気下での加熱処理と同様である。
更に、還元性雰囲気下の加熱処理では、加熱温度が高くなり過ぎると、透明導電膜を構成する酸化インジウムが過度に還元される場合があり注意を要する。例えば600℃を越える加熱温度の場合には、水素ガス等のように強い還元性を有する還元性雰囲気を用いると、酸化インジウムが金属インジウムにまで短時間で還元されてしまう場合があるため、適切な還元性雰囲気の選定や還元時間の設定が必要となる。
なお、加熱処理における、露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気下での加熱処理、露点温度0℃以上の酸素含有雰囲気下での加熱処理、及び中性雰囲気または還元性雰囲気下の加熱処理は、連続して行うことができる。即ち、乾燥塗布膜が形成された基板の加熱処理において、例えば、基板の温度を300℃以上の加熱温度に昇温した後、その温度を保ったまま、雰囲気だけを露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気から露点温度0℃以上の酸素含有雰囲気、あるいは、中性雰囲気または還元性雰囲気に切替えればよい。
中性雰囲気または還元性雰囲気下での加熱処理は、導電性酸化物に酸素空孔を形成してキャリア濃度を増加させる働きに加え、酸素空孔の存在により有機EL用透明導電膜の構成元素を移動し易くして結晶成長を促進する働きも有しており、塗布法による透明導電膜の強度や導電性の一層の向上に寄与している。
本発明に係る有機EL用透明導電性基材は、有機EL素子のアノード透明電極に適用することで、発光効率等の基本特性を一層向上できるため、例えば有機EL素子の省エネ化や小型化等にも大きく貢献することができるものである。
以下、実施例を用いて本発明を詳細するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本文中の水素−窒素混合ガスの「%」は、「体積%」を示している。
[溶解液A液の作製]
アセチルアセトンインジウム:In(C(分子量=412.15)40g、p−tert−ブチルフェノール42g、二塩基酸エステル(デュポン株式会社製)14g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)4gを混合し、130℃に加温して180分間攪拌して溶解させ、次に、得られた溶解液25gに、シクロヘキサノン25g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)10g、メチルエチルケトン(MEK)40gを混合して均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとヒドロキシプロピルセルロースを含有する溶解液(A液)を作製した。
[溶解液B液の作製]
ゲルマニウム(IV)テトライソプロポキシド(室温で液体)[Ge(CO)](分子量=308.94)10g、アセチルアセトン89g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)1gを混合し、120℃に加温して120分間攪拌して溶解させて、ゲルマニウム(IV)テトライソプロポキシドとヒドロキシプロピルセルロースを含有する溶解液(B液)を作製した。
[塗布液の作製]
作製したA液9.5gとB液0.5gを均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとゲルマニウム(IV)テトライソプロポキシドを合計で10質量%、ヒドロキシプロピルセルロースを1質量%含有する透明導電膜形成用塗布液(アセチルアセトンインジウム:ゲルマニウム(IV)テトライソプロポキシド=93.4:6.6[モル比])を作製した。
この透明導電膜形成用塗布液の粘度(25℃)は、約7mPa・s程度であった。
[有機EL用透明導電性基材の作製]
作製した透明導電膜形成用塗布液を、25℃の無アルカリガラス基板(10cm×10cm×0.7mm厚さ;可視光線透過率:91.2%、ヘイズ値:0.26%、屈折率:1.52)上の全面にスピンコーティング(1000rpm×60sec)した後、熱風乾燥機を用いて150℃で10分間乾燥し、更にホットプレートを用いて露点温度が−60℃の空気雰囲気(3リッター/分供給;基板上の雰囲気ガスの平均流速:約0.045m/秒)において、300℃まで30分かけて昇温(昇温速度:10℃/分)し、300℃で30分間加熱処理し、そのまま雰囲気を1%水素−99%窒素(3リッター/分供給;基板上の雰囲気ガスの平均流速:約0.045m/秒)に切替えて300℃で更に30分間加熱処理してドーパント酸化ゲルマニウム(GeO)を含む酸化インジウム(InO1.5)を主成分とする透明導電膜を形成して、ガラス基板とその上に塗布法により形成された透明導電膜からなる実施例1に係る有機EL用透明導電性基材を作製した。
以上の実施例1に係る塗布液と有機EL用透明導電性基材の作製条件を表1に纏めて示す。
[特性評価]
次に作製した有機EL用透明導電性基材における塗布法により形成された透明導電膜の表面抵抗、ヘイズ値及び可視光透過率、膜厚、仕事関数、表面粗さ(平坦性)、結晶子サイズ、鉛筆硬度の諸特性を測定し、その結果を表2に示す。
X線回折測定の結果から上記塗布法により形成された透明導電膜はアモルファス膜であり、更に、実施例1の透明導電膜の断面を透過電子顕微鏡で観察したところ、主に3nm未満の導電性酸化物微粒子(アモルファス状微結晶)が緻密に充填した導電性酸化物微粒子層が観察されている。
塗布法により形成された上記透明導電膜の表面抵抗は、三菱化学株式会社製の表面抵抗計ロレスタAP(MCP−T400)を用い測定した。
ヘイズ値と可視光透過率は、日本電色株式会社製のヘイズメーター(NDH5000)を用いJIS K7136(ヘイズ値)、JISK7361−1(透過率)に基づいて測定した。
膜厚は、KLA−TencorCorporation製触針式膜厚計(Alpha−StepIQ)を用いて測定した。
結晶子サイズは、X線回折測定を行い、Scherrer法により求めた。
鉛筆硬度は、JIS K5400に基づいて測定した。
仕事関数は、理研計器株式会社製大気中光電子分光装置(AC−2)を用いて測定した。
表面粗さ(平坦性)は、中心線平均粗さ(Ra)と最大高さ(Rmax)をDI社製原子間力顕微鏡(AFM)(NS−III、D5000システム)を用いて測定した。
なお、可視光透過率及びヘイズ値は、塗布法により形成された透明導電膜だけの値であり、それぞれ下記式(7)、(8)により求めた。
[溶解液C液の作製]
アセチルアセトンモリブデン(室温で固体)(正式名称:モリブデン(VI)オキサイドビス−2,4−ペンタンジオネート[MoO(C](分子量=326.17)10g、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)14g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)1gを混合し、130℃に加温して180分間攪拌して溶解させ、次に、得られた溶解液25gに、シクロヘキサノン25g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)10g、メチルエチルケトン(MEK)40gを混合して均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンモリブデンとヒドロキシプロピルセルロースを含有する溶解液(C液)を作製した。
[塗布液の作製]
実施例1のA液9.75gと、作製したC液0.25gを均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとアセチルアセトンモリブデンを合計で10質量%、ヒドロキシプロピルセルロースを1質量%含有する透明導電膜形成用塗布液(アセチルアセトンインジウム:アセチルアセトンモリブデン=96.9:3.1[モル比])を作製した。
この透明導電膜形成用塗布液の粘度(25℃)は、約7mPa・s程度であった。
[有機EL用透明導電性基材の作製]
作製した透明導電膜形成用塗布液を、25℃の無アルカリガラス基板(10cm×10cm×0.7mm厚さ;可視光線透過率:91.2%、ヘイズ値:0.26%、屈折率:1.52)上の全面にスピンコーティング(1000rpm×60sec)した後、熱風乾燥機を用いて150℃で10分間乾燥し、更にホットプレートを用いて露点温度が−50℃の空気雰囲気(3リッター/分供給;基板上の雰囲気ガスの平均流速:約0.045m/秒)において、300℃まで30分かけて昇温(昇温速度:10℃/分)し、300℃で30分間加熱処理し、そのまま雰囲気を1%水素−99%窒素(3リッター/分供給;基板上の雰囲気ガスの平均流速:約0.045m/秒)に切替えて300℃で更に30分間加熱処理してドーパント酸化モリブデン(MoO)を含む酸化インジウム(InO1.5)を主成分とする透明導電膜を形成して、ガラス基板とその上に塗布法により形成された透明導電膜からなる実施例2に係る有機EL用透明導電性基材を作製した。
以上の実施例2に係る塗布液と有機EL用透明導電性基材の作製条件を表1に纏めて示す。
[特性評価]
次に作製した有機EL用透明導電性基材における塗布法により形成された透明導電膜の表面抵抗、ヘイズ値及び可視光透過率、膜厚、仕事関数、表面粗さ(平坦性)、結晶子サイズ、鉛筆硬度の諸特性を測定し、その結果を表2に示す。
X線回折測定の結果から上記塗布法により形成された透明導電膜はアモルファス膜であり、更に、実施例2の透明導電膜の断面を透過電子顕微鏡で観察したところ、主に3nm未満の導電性酸化物微粒子(アモルファス状微結晶)が緻密に充填した導電性酸化物微粒子層が観察されている。
[塗布液の作製]
実施例1のA液9.5gとB液0.5gに、シクロヘキサノン4.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)2.0g、メチルエチルケトン(MEK)4.0gを混合して均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとゲルマニウム(IV)テトライソプロポキシドを合計で5.0質量%、ヒドロキシプロピルセルロースを0.5質量%含有する透明導電膜形成用塗布液(アセチルアセトンインジウム:ゲルマニウム(IV)テトライソプロポキシド=93.4:6.6[モル比])を作製した。この透明導電膜形成用塗布液の粘度(25℃)は、約5mPa・s程度であった。
[有機EL用透明導電性基材の作製]
作製した透明導電膜形成用塗布液を、25℃のスパッタITO膜付ガラス基板(10cm×10cm×3mm厚さ;結晶性ITO、スパッタITO膜厚:約100nm、スパッタITO膜の表面抵抗値:17Ω/□、スパッタITO膜の表面粗さ(中心線平均粗さRa:2.1nm、最大高さRmax:35.0nm;図6は原子間力顕微鏡(AFM)で観察したスパッタITO膜の表面形状プロファイル)、可視光線透過率:86.4%、ヘイズ値:0.4%)上の全面にスピンコーティング(1000rpm×60sec)した後、熱風乾燥機を用いて150℃で5分間乾燥し、更にホットプレートを用いて露点温度が−60℃の空気雰囲気(3リッター/分供給;基板上の雰囲気ガスの平均流速:約0.045m/秒)において、300℃まで30分かけて昇温(昇温速度:10℃/分)し、300℃で30分間加熱処理し、そのまま雰囲気を1%水素−99%窒素(3リッター/分供給;基板上の雰囲気ガスの平均流速:約0.045m/秒)に切替えて、300℃で更に30分間加熱処理してドーパント酸化ゲルマニウム(GeO)を含む酸化インジウム(InO1.5)を主成分とする透明導電膜を形成して、スパッタITO膜付ガラス基板とその上に塗布法により形成された透明導電膜からなる実施例3に係る有機EL用透明導電性基材を作製した。
以上の実施例3に係る塗布液と有機EL用透明導電性基材の作製条件を表1に纏めて示す。
[特性評価]
次に作製した有機EL用透明導電性基材における塗布法により形成された透明導電膜の表面抵抗、ヘイズ値及び可視光透過率、膜厚、仕事関数、表面粗さ(平坦性)、結晶子サイズ、鉛筆硬度の諸特性を測定し、その結果を表2に示す。また、得られた実施例3に係る有機EL用透明導電性基材における透明導電膜表面を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した表面形状プロファイルを図7に示す。
なお、可視光透過率及びヘイズ値は、塗布法により形成された透明導電膜だけの値であり、それぞれ下記式(9)、(10)により求めた。
X線回折測定の結果から上記塗布法により形成された透明導電膜はアモルファス膜であり、更に、実施例3の透明導電膜の断面を透過電子顕微鏡で観察したところ、主に3nm未満の導電性酸化物微粒子(アモルファス状微結晶)が緻密に充填した導電性酸化物微粒子層が観察されている。
[塗布液の作製]
実施例1のA液9.75gと実施例2のC液0.25gに、シクロヘキサノン1.33g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)0.67g、メチルエチルケトン(MEK)1.33gを混合して均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとアセチルアセトンモリブデンを合計で7.5質量%、ヒドロキシプロピルセルロースを0.75質量%含有する透明導電膜形成用塗布液(アセチルアセトンインジウム:アセチルアセトンモリブデン=96.9:3.1[モル比])を作製した。この透明導電膜形成用塗布液の粘度(25℃)は、約5mPa・s程度であった。
[有機EL用透明導電性基材の作製]
作製した透明導電膜形成用塗布液を、25℃のスパッタITO膜付ガラス基板(10cm×10cm×厚み3mm;結晶性ITO膜、スパッタITO膜厚:約100nm、スパッタITO膜の表面抵抗値:17Ω/□、スパッタITO膜の表面粗さ(中心線平均粗さRa:2.1nm、最大高さRmax:35.0nm;図6は原子間力顕微鏡(AFM)で観察したスパッタITO膜の表面形状プロファイル)、可視光線透過率:86.4%、ヘイズ値:0.4%)上の全面にスピンコーティング(1000rpm×60sec)した後、熱風乾燥機を用いて150℃で10分間乾燥し、更にホットプレートを用いて露点温度が−50℃の空気雰囲気(3リッター/分供給;基板上の雰囲気ガスの平均流速:約0.045m/秒)において、300℃まで30分かけて昇温(昇温速度:10℃/分)し、300℃で30分間加熱処理し、そのまま雰囲気を1%水素−99%窒素(3リッター/分供給;基板上の雰囲気ガスの平均流速:約0.045m/秒)に切替えて、300℃で更に30分間加熱処理してドーパント酸化モリブデン(MoO)を含む酸化インジウム(InO1.5)を主成分とする透明導電膜を形成して、スパッタITO膜付ガラス基板とその上に塗布法により形成された透明導電膜からなる実施例4に係る有機EL用透明導電性基材を作製した。
以上の実施例4に係る塗布液と有機EL用透明導電性基材の作製条件を表1に纏めて示す。
[特性評価]
次に作製した有機EL用透明導電性基材における塗布法により形成された透明導電膜の表面抵抗、ヘイズ値及び可視光透過率、膜厚、仕事関数、表面粗さ(平坦性)、結晶子サイズ、鉛筆硬度の諸特性を測定し、その結果を表2に示す。
X線回折測定の結果から上記塗布法により形成された透明導電膜はアモルファス膜であり、更に、実施例4の透明導電膜の断面を透過電子顕微鏡で観察したところ、主に3nm未満の導電性酸化物微粒子(アモルファス状微結晶)が緻密に充填した導電性酸化物微粒子層が観察されている。
[塗布液D液の作製]
2−エチルヘキサン酸錫(II)(別名:オクチル酸第一錫(II))[Sn(C15](分子量=405.12)40g、p−tert−ブチルフェノール28g、二塩基酸エステル(デュポン株式会社製)28g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)4gを混合し、130℃に加温して180分間攪拌して溶解させ、次に、得られた溶解液7.5gに、シクロヘキサノン35.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)16.8g、メチルエチルケトン(MEK)39.5g、シリコーン界面活性剤FZ−2164(東レダウコーニング製)を1質量%含むシクロヘキサノン溶液1.2gを混合して均一になるまで良く攪拌し、2−エチルヘキサン酸錫を3.0質量%、ヒドロキシプロピルセルロースを0.3質量%含有する塗布液(D液)を作製した。
[有機EL用透明導電性基材の作製]
作製した透明導電膜形成用塗布液を、25℃の無アルカリガラス基板(5cm×5cm×厚み0.7mm、可視光線透過率:91.2%、ヘイズ値:0.26%)上の全面にスピンコーティング(1000rpm×60sec)した後、熱風乾燥機を用いて100℃で5分間乾燥し、更に紫外線照射装置を用いて露点温度が−50℃の空気雰囲気(基板上の雰囲気ガスの平均流速:約0.57m/秒)において、低圧水銀ランプと基材の間隔を1cmとし、室温で20分間の紫外線(254nmの光の照度=約20mW/cm、185nmの光の推定照度:約5mW/cm)を照射するエネルギー線照射処理を施して酸化錫(SnO)を主成分とする透明導電膜を形成して、無アルカリガラス基板とその上に塗布法により形成された透明導電膜からなる実施例5に係る有機EL用透明導電性基材を作製した。
なお、エネルギー線照射処理後の無アルカリガラス基板の温度は低圧水銀ランプから放射される熱線によって加熱されて45℃であった。
以上の実施例5に係る塗布液と有機EL用透明導電性基材の作製条件を表1に纏めて示す。
[特性評価]
次に作製した有機EL用透明導電性基材における塗布法により形成された透明導電膜の表面抵抗、ヘイズ値及び可視光透過率、膜厚、仕事関数、表面粗さ(平坦性)、結晶子サイズ、鉛筆硬度の諸特性を測定し、その結果を表2に示す。
[塗布液の作製]
ジブチル錫オキシド[C18OSn](分子量=248.94)20g、p−tert−ブチルフェノール14g、ニ塩基酸エステル(デュポン株式会社製)14g、シクロヘキサノン50g、ヒドロキシプロピルセルロース2gを混合し、130℃に加温して180分間攪拌して溶解させ、次に、得られた溶解液15gに、シクロヘキサノン28.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)17.0g、メチルエチルケトン(MEK)38.8g、シリコーン界面活性剤FZ−2164(東レダウコーニング製)を1質量%含むシクロヘキサノン溶液1.2gを混合して均一になるまで良く攪拌し、ジブチル錫オキシドを3.0質量%、ヒドロキシプロピルセルロースを0.3質量%含有する塗布液を作製した。
[有機EL用透明導電性基材の作製]
作製した透明導電膜形成用塗布液を、25℃の無アルカリガラス基板(5cm×5cm×厚み0.7mm、可視光線透過率:91.2%、ヘイズ値:0.26%)上の全面にスピンコーティング(1000rpm×60sec)した後、熱風乾燥機を用いて100℃で5分間乾燥し、更に紫外線照射装置を用いて露点温度が−50℃の空気雰囲気(基板上の雰囲気ガスの平均流速:約0.57m/秒)において、低圧水銀ランプと基材の間隔を1cmとし、室温で20分間の紫外線(254nmの光の照度=約20mW/cm、185nmの光の推定照度:約5mW/cm)を照射するエネルギー線照射処理を施して、酸化錫(SnO)を主成分とする透明導電膜を形成して、ガラス基板とその上に塗布法により形成された透明導電膜からなる実施例6に係る有機EL用透明導電性基材を作製した。
以上の実施例6に係る塗布液と有機EL用透明導電性基材の作製条件を表1に纏めて示す。
[特性評価]
次に作製した有機EL用透明導電性基材における塗布法により形成された透明導電膜の表面抵抗、ヘイズ値及び可視光透過率、膜厚、仕事関数、表面粗さ(平坦性)、結晶子サイズ、鉛筆硬度の諸特性を測定し、その結果を表2に示す。
[塗布液の作製]
ジメチルビス(2,4−ペンタンジオナト)錫[Sn(CH(C(分子量=346.98)30g,p−tert−ブチルフェノール33.5g、ニ塩基酸エステル(デュポン株式会社製)33.5g、ヒドロキシプロピルセルロース3gを混合し、130℃に加温して180分間攪拌して溶解させ、次に、得られた溶解液10gに、シクロヘキサノン28.8g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)20.0g、メチルエチルケトン(MEK)40.0g、シリコーン界面活性剤FZ−2164(東レダウコーニング製)を1質量%含むシクロヘキサノン溶液1.2gを混合して均一になるまで良く攪拌し、ジメチルビス(2,4−ペンタンジオナト)錫を3.0質量%、ヒドロキシプロピルセルロースを0.3質量%含有する塗布液を作製した。
[有機EL用透明導電性基材の作製]
作製した透明導電膜形成用塗布液を、25℃の無アルカリガラス基板(5cm×5cm×厚み0.7mm、可視光線透過率:91.2%、ヘイズ値:0.26%)上の全面にスピンコーティング(1000rpm×60sec)した後、熱風乾燥機を用いて100℃で5分間乾燥し、更に紫外線照射装置を用いて露点温度が−50℃の空気雰囲気(基板上の雰囲気ガスの平均流速:約0.57m/秒)において、低圧水銀ランプと基材の間隔を1cmとし、室温で20分間の紫外線(254nmの光の照度=約20mW/cm、185nmの光の推定照度:約5mW/cm)を照射するエネルギー線照射処理を施して、酸化錫(SnO)を主成分とする透明導電膜を形成して、ガラス基板とその上に塗布法により形成された透明導電膜からなる実施例7に係る有機EL用透明導電性基材を作製した。
以上の実施例7に係る塗布液と有機EL用透明導電性基材の作製条件を表1に纏めて示す。
[特性評価]
次に作製した有機EL用透明導電性基材における塗布法により形成された透明導電膜の表面抵抗、ヘイズ値及び可視光透過率、膜厚、仕事関数、表面粗さ(平坦性)、結晶子サイズ、鉛筆硬度の諸特性を測定し、その結果を表2に示す。
[溶解液E液の作製]
アセチルアセトンバナジウム(正式名称:バナジウム(III)−2,4−ペンタンジオネート)[V(C](分子量=348.26)40g,N−メチル−2−ピロリドン(NMP)28g、アセチルアセトン28g、ヒドロキシプロピルセルロース4gを混合し、130℃に加温して180分間攪拌して溶解させ、次に、得られた溶解液7.5gに、シクロヘキサノン35.5g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)17.0g、メチルエチルケトン(MEK)40.0gを混合して均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンバナジウムとヒドロキシプロピルセルロースを含有する溶解液(E液)を作製した。
[塗布液の作製]
実施例5のD液9.0gとE液1.0gを混合して均一になるまで良く攪拌し、2−エチルヘキサン酸錫とアセチルアセトンバナジウムを合計で3.0質量%、ヒドロキシプロピルセルロースを0.27質量%含有する透明導電膜形成用塗布液(2−エチルヘキサン酸錫:アセチルアセトンバナジウム=88.6:11.4[モル比])を作製した。
[有機EL用透明導電性基材の作製]
作製した透明導電膜形成用塗布液を、25℃の無アルカリガラス基板(5cm×5cm×厚み0.7mm、可視光線透過率:91.2%、ヘイズ値:0.26%)上の全面にスピンコーティング(1000rpm×60sec)した後、熱風乾燥機を用いて100℃で5分間乾燥し、更に紫外線照射装置を用いて露点温度が−50℃の空気雰囲気(基板上の雰囲気ガスの平均流速:約0.57m/秒)において、低圧水銀ランプと基材の間隔を1cmとし、室温で20分間の紫外線(254nmの光の照度=約20mW/cm、185nmの光の推定照度:約5mW/cm)を照射するエネルギー線照射処理を施して、ドーパント酸化バナジウム(V)を含む酸化錫(SnO)を主成分とする透明導電膜を形成して、ガラス基板とその上に塗布法により形成された透明導電膜からなる実施例8に係る有機EL用透明導電性基材を作製した。
以上の実施例8に係る塗布液と有機EL用透明導電性基材の作製条件を表1に纏めて示す。
[特性評価]
次に作製した有機EL用透明導電性基材における塗布法により形成された透明導電膜の表面抵抗、ヘイズ値及び可視光透過率、膜厚、仕事関数、表面粗さ(平坦性)、結晶子サイズ、鉛筆硬度の諸特性を測定し、その結果を表2に示す。
[溶解液F液の作製]
アセチルアセトンモリブデン(室温で固体)(正式名称:モリブデン(VI)オキサイドビス−2,4−ペンタンジオネート[MoO(C](分子量=326.17)40g,N−メチル−2−ピロリドン(NMP)28g、アセチルアセトン28g、ヒドロキシプロピルセルロース4gを混合し、130℃に加温して180分間攪拌して溶解させ、次に、得られた溶解液7.5gに、シクロヘキサノン35.5g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)17.0g、メチルエチルケトン(MEK)40.0gを混合して均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンモリブデンとヒドロキシプロピルセルロースを含有する溶解液(F液)を作製した。
[塗布液の作製]
実施例5のD液9.0gとF液1.0gを混合して均一になるまで良く攪拌し、2−エチルヘキサン酸錫とモリブデン(VI)オキサイドビス−2,4−ペンタンジオネートを合計で3.0質量%、ヒドロキシプロピルセルロースを0.27質量%含有する透明導電膜形成用塗布液(2−エチルヘキサン酸錫:アセチルアセトンモリブデン=87.9:12.1[モル比])を作製した。
[有機EL用透明導電性基材の作製]
作製した透明導電膜形成用塗布液を、25℃の無アルカリガラス基板(5cm×5cm×厚み0.7mm、可視光線透過率:91.2%、ヘイズ値:0.26%)上の全面にスピンコーティング(1000rpm×60sec)した後、熱風乾燥機を用いて100℃で5分間乾燥し、更に紫外線照射装置を用いて露点温度が−50℃の空気雰囲気(基板上の雰囲気ガスの平均流速:約0.57m/秒)において、低圧水銀ランプと基材の間隔を1cmとし、室温で20分間の紫外線(254nmの光の照度=約20mW/cm、185nmの光の推定照度:約5mW/cm)を照射するエネルギー線照射処理を施して、ドーパント酸化モリブデン(MoO)を含む酸化錫(SnO)を主成分とする透明導電膜を形成して、ガラス基板とその上に塗布法により形成された透明導電膜からなる実施例9に係る有機EL用透明導電性基材を作製した。
以上の実施例9に係る塗布液と有機EL用透明導電性基材の作製条件を表1に纏めて示す。
[特性評価]
次に作製した有機EL用透明導電性基材における塗布法により形成された透明導電膜の表面抵抗、ヘイズ値及び可視光透過率、膜厚、仕事関数、表面粗さ(平坦性)、結晶子サイズ、鉛筆硬度の諸特性を測定し、その結果を表2に示す。
[塗布液の作製]
実施例5のD液8.0gと実施例9のF液2.0gを混合して均一になるまで良く攪拌し、2−エチルヘキサン酸錫とモリブデン(VI)オキサイドビス−2,4−ペンタンジオネートを合計で3.0質量%、ヒドロキシプロピルセルロースを0.24質量%含有する透明導電膜形成用塗布液(2−エチルヘキサン酸錫:アセチルアセトンモリブデン=76.3:23.7[モル比])を作製した。
[有機EL用透明導電性基材の作製]
作製した透明導電膜形成用塗布液を、25℃の無アルカリガラス基板(5cm×5cm×厚み0.7mm、可視光線透過率:91.2%、ヘイズ値:0.26%)上の全面にスピンコーティング(1000rpm×60sec)した後、熱風乾燥機を用いて100℃で5分間乾燥し、更に紫外線照射装置を用いて露点温度が−50℃の空気雰囲気(基板上の雰囲気ガスの平均流速:約0.57m/秒)において、低圧水銀ランプと基材の間隔を1cmとし、室温で20分間の紫外線(254nmの光の照度=約20mW/cm、185nmの光の推定照度:約5mW/cm)を照射するエネルギー線照射処理を施して、ドーパント酸化モリブデン(MoO)を含む酸化錫(SnO)を主成分とする透明導電膜を形成して、ガラス基板とその上に塗布法により形成された透明導電膜からなる実施例10に係る有機EL用透明導電性基材を作製した。
以上の実施例10に係る塗布液と有機EL用透明導電性基材の作製条件を表1に纏めて示す。
[特性評価]
次に作製した有機EL用透明導電性基材における塗布法により形成された透明導電膜の表面抵抗、ヘイズ値及び可視光透過率、膜厚、仕事関数、表面粗さ(平坦性)、結晶子サイズ、鉛筆硬度の諸特性を測定し、その結果を表2に示す。
[塗布液の作製]
実施例1のA液7.5g、シクロヘキサノン=1.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)0.5g、メチルエチルケトン(MEK)1.0gを混合して均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムを7.5質量%、ヒドロキシプロピルセルロースを0.75質量%含有する透明導電膜形成用塗布液を作製した。
[有機EL用透明導電性基材の作製]
作製した透明導電膜形成用塗布液を、25℃の無アルカリガラス基板(5cm×5cm×厚み0.7mm、可視光線透過率:92.30%、ヘイズ値:0.23%)上の全面にスピンコーティング(1000rpm×40sec)した後、熱風乾燥機を用いて100℃で2分間乾燥し、更にホットプレートを用いて露点温度が−50℃の空気雰囲気(3リッター/分供給;基板上の雰囲気ガスの平均流速:約0.045m/秒)において、275℃まで25分かけて昇温(昇温速度:10℃/分)し、275℃で60分間加熱処理して酸化インジウム(InO1.5)を主成分とする透明導電膜を形成して、無アルカリガラス基板とその上に塗布法により形成された透明導電膜からなる実施例11に係る有機EL用透明導電性基材を作製した。
以上の実施例11に係る塗布液と有機EL用透明導電性基材の作製条件を表1に纏めて示す。
[特性評価]
次に作製した有機EL用透明導電性基材における塗布法により形成された透明導電膜の表面抵抗、ヘイズ値及び可視光透過率、膜厚、仕事関数、表面粗さ(平坦性)、結晶子サイズ、鉛筆硬度の諸特性を測定し、その結果を表2に示す。
[有機EL用透明導電性基材の作製]
実施例2と同じ透明導電膜形成用塗布液を使用し、25℃の無アルカリガラス基板(5cm×5cm×厚み0.7mm、可視光線透過率:92.30%、ヘイズ値:0.23%)上の全面にスピンコーティング(1000rpm×40sec)した後、熱風乾燥機を用いて100℃で5分間乾燥し、更にホットプレートを用いて露点温度が−50℃の空気雰囲気(3リッター/分供給;基板上の雰囲気ガスの平均流速:約0.045m/秒)において、275℃まで25分かけて昇温(昇温速度:10℃/分)し、275℃で60分間加熱処理してドーパント酸化モリブデン(MoO)を含む酸化インジウム(InO1.5)を主成分とする透明導電膜を形成して、無アルカリガラス基板とその上に塗布法により形成された透明導電膜からなる実施例12に係る有機EL用透明導電性基材を作製した。
以上の実施例12に係る塗布液と有機EL用透明導電性基材の作製条件を表1に纏めて示す。
[特性評価]
次に作製した有機EL用透明導電性基材における塗布法により形成された透明導電膜の表面抵抗、ヘイズ値及び可視光透過率、膜厚、仕事関数、表面粗さ(平坦性)、結晶子サイズ、鉛筆硬度の諸特性を測定し、その結果を表2に示す。
[溶解液G液の作製]
アセチルアセトンチタン(正式名称:チタン(IV)ジ−n−ブトキシド ビス(2,4−ペンタンジオネート)[Ti(CO)(C] )(分子量=392.32)40g、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)56g、ヒドロキシプロピルセルロース4gを混合し、130℃に加温して180分間攪拌して溶解させ、次に、得られた溶解液25.0gに、シクロヘキサノン25.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)10.0g、メチルエチルケトン(MEK)40.0gを混合して均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンチタンとヒドロキシプロピルセルロースを含有する溶解液(G液)を作製した。
[塗布液の作製]
実施例1のA液9.75gとG液0.25gを混合して均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとアセチルアセトンチタンを合計で10.0質量%、ヒドロキシプロピルセルロースを1.0質量%含有する透明導電膜形成用塗布液(アセチルアセトンインジウム:アセチルアセトンチタン=97.4:2.6[モル比])を作製した。
[有機EL用透明導電性基材の作製]
作製した透明導電膜形成用塗布液を、25℃の無アルカリガラス基板(5cm×5cm×厚み0.7mm、可視光線透過率:92.30%、ヘイズ値:0.23%)上の全面にスピンコーティング(1000rpm×40sec)した後、熱風乾燥機を用いて100℃で5分間乾燥し、更にホットプレートを用いて露点温度が−50℃の空気雰囲気(3リッター/分供給;基板上の雰囲気ガスの平均流速:約0.045m/秒)において、275℃まで25分かけて昇温(昇温速度:10℃/分)し、275℃で60分間加熱処理してドーパント酸化チタン(TiO)を含む酸化インジウム(InO1.5)を主成分とする透明導電膜を形成して、無アルカリガラス基板とその上に塗布法により形成された透明導電膜からなる実施例13に係る有機EL用透明導電性基材を作製した。
以上の実施例13に係る塗布液と有機EL用透明導電性基材の作製条件を表1に纏めて示す。
[特性評価]
次に作製した有機EL用透明導電性基材における塗布法により形成された透明導電膜の表面抵抗、ヘイズ値及び可視光透過率、膜厚、仕事関数、表面粗さ(平坦性)、結晶子サイズ、鉛筆硬度の諸特性を測定し、その結果を表2に示す。
(比較例1)
[溶解液H液の作製]
アセチルアセトン錫(正式名称:ジ−n−ブチル ビス(2,4−ペンタンジオナト)錫[Sn(C(C](分子量=431.14)40g、p−tert−ブチルフェノール42g、二塩基酸エステル(デュポン株式会社製)14g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)4gを混合し、130℃に加温して180分間攪拌して溶解させ、次に、得られた溶解液25gに、シクロヘキサノン25g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)10g、メチルエチルケトン(MEK)40gを混合して均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトン錫とヒドロキシプロピルセルロースを含有する溶解液(H液)を作製した。
[塗布液の作製]
実施例1のA液9.1gと作製したH液0.9gを均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとアセチルアセトン錫を合計で10質量%、ヒドロキシプロピルセルロースを1質量%含有する透明導電膜形成用塗布液(アセチルアセトンインジウム:アセチルアセトン錫=91.4:8.6[モル比])を作製した。この透明導電膜形成用塗布液の粘度(25℃)は、約7mPa・s程度であった。
上記透明導電膜形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして成膜を行い、ドーパント酸化錫(SnO)を含む酸化インジウム(InO1.5)を主成分とする透明導電膜を形成して、ガラス基板とその上に塗布法により形成された透明導電膜からなる比較例1に係る有機EL用透明導電性基材を作製した。
以上の比較例1に係る塗布液と有機EL用透明導電性基材の作製条件を表1に纏めて示す。
[特性評価]
次に作製した有機EL用透明導電性基材における塗布法により形成された透明導電膜の表面抵抗、ヘイズ値及び可視光透過率、膜厚、仕事関数、表面粗さ(平坦性)、結晶子サイズ、鉛筆硬度の諸特性を測定し、その結果を表2に示す。
X線回折測定の結果から上記塗布法により形成された透明導電膜はアモルファス膜であり、更に、比較例1の透明導電膜の断面を透過電子顕微鏡で観察したところ、主に3nm未満の導電性酸化物微粒子(アモルファス状微結晶)が緻密に充填した導電性酸化物微粒子層が観察されている。
(比較例2)
[塗布液の作製]
実施例1のA液9.1g、比較例1のH液0.9g、シクロヘキサノン9.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)4.7g、メチルエチルケトン(MEK)9.3gを均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとアセチルアセトン錫を合計で3質量%、ヒドロキシプロピルセルロースを0.3質量%含有する透明導電膜形成用塗布液(アセチルアセトンインジウム:アセチルアセトン錫=91.4:8.6[モル比])を作製した。
上記透明導電膜形成用塗布液を用いた以外は実施例5〜10と同様にして成膜を行い、ドーパント酸化錫(SnO)を含む酸化インジウム(InO1.5)を主成分とする透明導電膜を形成して、ガラス基板とその上に塗布法により形成された透明導電膜からなる比較例2に係る有機EL用透明導電性基材を作製した。
以上の比較例2に係る塗布液と有機EL用透明導電性基材の作製条件を表1に纏めて示す。
[特性評価]
次に作製した有機EL用透明導電性基材における塗布法により形成された透明導電膜の表面抵抗、ヘイズ値及び可視光透過率、膜厚、仕事関数、表面粗さ(平坦性)、結晶子サイズ、鉛筆硬度の諸特性を測定し、その結果を表2に示す。
(比較例3)
[塗布液の作製]
実施例1のA液9.1g、比較例1のH液0.9g、シクロヘキサノン1.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)0.7g、メチルエチルケトン(MEK)1.3gを均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとアセチルアセトン錫を合計で7.5質量%、ヒドロキシプロピルセルロースを0.75質量%含有する透明導電膜形成用塗布液(アセチルアセトンインジウム:アセチルアセトン錫=91.4:8.6[モル比])を作製した。
上記透明導電膜形成用塗布液を用いた以外は実施例11〜13と同様にして成膜を行い、ドーパント酸化錫(SnO)を含む酸化インジウム(InO1.5)を主成分とする透明導電膜を形成して、ガラス基板とその上に塗布法により形成された透明導電膜からなる比較例3に係る有機EL用透明導電性基材を作製した。
以上の比較例3に係る塗布液と有機EL用透明導電性基材の作製条件を表1に纏めて示す。
[特性評価]
次に作製した有機EL用透明導電性基材における塗布法により形成された透明導電膜の表面抵抗、ヘイズ値及び可視光透過率、膜厚、仕事関数、表面粗さ(平坦性)、結晶子サイズ、鉛筆硬度の諸特性を測定し、その結果を表2に示す。
実施例1〜4と比較例1を比べると、いずれも300℃の加熱処理(空気雰囲気、及び1体積%水素−99体積%窒素雰囲気)で得られた透明導電膜であるが、実施例1、実施例2では、透明導電膜の比抵抗値が1×10Ω・cm未満であり、かつ仕事関数が4.96〜5.05eVと高いのに対して、比較例1では、透明導電膜の仕事関数が4.56eVと低いことがわかる。
また、実施例3、実施例4の透明導電膜も実施例1、実施例2と同様に比抵抗値が1×10Ω・cm未満であり、かつ仕事関数も4.95〜5.06eVと高いのがわかる。
実施例5〜10と比較例2を比べると、いずれも40℃のエネルギー線照射処理(空気雰囲気)で得られた透明導電膜であるが、実施例5〜10では比抵抗値が1×10Ω・cm未満であり、かつ仕事関数が5.65〜5.81eVと高いのに対して、比較例2では、透明導電膜の比抵抗値が1×10Ω・cm以上と高いことがわかる。
実施例11〜13と比較例3を比べると、いずれも275℃の加熱処理(空気処理)で得られた透明導電膜であるが、実施例11〜13では、比抵抗値が1×10Ω・cm未満であり、かつ仕事関数が4.91〜5.29eVと高いのに対して、比較例3では、透明導電膜の仕事関数が4.86eVと低いことがわかる。
実施例1から実施例13では、得られた透明導電膜は優れた平坦性(Ra=0.5〜1.8nm、Rmax=5.9〜17.6nm)を示している。このことから本発明の透明導電膜の平坦性は結晶性スパッタITO膜の平坦性(Ra=2.1nm、Rmax=35.0nm)よりも優れており、結晶性スパッタITO膜の上に塗布法により透明導電膜を形成することで膜の平坦性を大幅に改善できることがわかる。
さらにこのことは、従来の結晶性スパッタITO膜の図6と本発明に係る有機EL用透明導電性基材における透明導電膜の図7に示す原子間力顕微鏡(AFM)により観察したそれぞれの表面形状プロファイルの比較からも、結晶性スパッタITO膜の上に塗布法により透明導電膜を形成することで膜の平坦性を大幅に改善できることが確認できる。
以上から、各実施例の有機EL透明導電性基材は、その透明導電膜が高い仕事関数を有し、かつ膜の平坦性にも優れているため、有機EL素子のアノード透明電極に好適であることがわかる。
本発明による有機EL用透明導電性基材の製造方法によれば、ガラス基板やスパッタITO膜付ガラス基板等の耐熱性無機基板上に、塗布法を用いることで、より高い仕事関数と優れた平坦性を有する透明導電膜を具備する有機EL用透明導電性基材を簡便かつ安価に製造することが可能であり、得られる有機EL用透明導電性基材は、より高い仕事関数と優れた平坦性を有する透明導電膜を具備しているため、有機EL素子のアノード透明電極への利用が期待できる。
1 基板(耐熱性無機基板)
2 気相成長方法により形成された透明導電膜
3 塗布法により形成された透明導電膜(仕事関数:4.9eV以上)

Claims (11)

  1. 基板上に、
    主成分として有機インジウム化合物、または有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物を含有する透明導電膜形成用塗布液、あるいは、主成分として有機錫化合物、または有機錫化合物とドーパント用有機金属化合物を含有する透明導電膜形成用塗布液を塗布して塗布膜を形成する塗布工程、
    前記塗布膜を乾燥して乾燥塗布膜を形成する乾燥工程、
    前記乾燥塗布膜を無機化して、酸化インジウム、またはドーパント金属酸化物を含む酸化インジウムである導電性酸化物を主成分とする無機膜、あるいは酸化錫、またはドーパント金属酸化物を含む酸化錫である導電性酸化物を主成分とする無機膜を形成する無機化工程
    の各工程からなる塗布法により透明導電膜を形成する有機EL用透明導電性基材の製造方法であって、
    前記透明導電膜が、1×10Ω・cm未満の比抵抗値を有し、かつ4.9eV以上の仕事関数を有する導電性酸化物であることを特徴とする有機EL用透明導電性基材の製造方法。
  2. 前記ドーパント用有機金属化合物が、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物、有機バナジウム化合物、有機ゲルマニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、有機ニオブ化合物、有機モリブデン化合物、有機ハフニウム化合物、有機タンタル化合物、有機タングステン化合物、有機セリウム化合物のいずれか1種以上であり、
    前記ドーパント金属酸化物が、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化セリウムのいずれか1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL用透明導電性基材の製造方法。
  3. 前記有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物の含有割合が、有機インジウム化合物/ドーパント用有機金属化合物のモル比で100/0〜87/13であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL用透明導電性基材の製造方法。
  4. 前記有機錫化合物とドーパント用有機金属化合物の含有割合が、有機錫化合物/ドーパント用有機金属化合物のモル比で100/0〜70/30であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL用透明導電性基材の製造方法。
  5. 前記有機インジウム化合物が、アセチルアセトンインジウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機EL用透明導電性基材の製造方法。
  6. 前記有機錫化合物が、2−エチルヘキサン酸錫、ジブチル錫オキシド、ジメチルビス(2,4−ペンタンジオナト)錫のいずれか1種以上であることを特徴とする請求項1、2、4のいずれか1項に記載の有機EL用透明導電性基材の製造方法。
  7. 前記基板が、耐熱性無機基板であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機EL用透明導電性基材の製造方法。
  8. 前記基板が、耐熱性無機基板上に気相成長方法により形成された透明導電膜を有する基板であって、その透明導電膜上に塗布法により透明導電膜を形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機EL用透明導電性基材の製造方法。
  9. 前記耐熱性無機基板がガラス基板であることを特徴とする請求項7または8に記載の有機EL用透明導電性基材の製造方法。
  10. 請求項1〜9に記載の有機EL用透明導電性基材の製造方法で得られる有機EL用透明導電性基材であって、
    塗布法により形成される透明導電膜の表面平滑性が、中心線平均粗(Ra)が2nm以下、最大高さ(Rmax)が30nm以下であることを特徴とする有機EL用透明導電性基材。
  11. 請求項10に記載の有機EL用透明導電性基材を用いることを特徴とする有機EL素子。
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