JP2012015103A - 透明導電膜形成用塗布液及び透明導電膜 - Google Patents

透明導電膜形成用塗布液及び透明導電膜 Download PDF

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Abstract

【課題】 ガラス等の基板に透明性と導電性に優れる安価な透明導電膜を得ることができる透明導電膜形成用塗布液、及びこの塗布液を用いて形成された透明導電膜を提供する。
【解決手段】 本発明に係る透明導電膜形成用塗布液は、少なくとも有機亜鉛化合物、及び溶剤、必要に応じドーパント用有機金属化合物、を含有する透明導電膜形成用塗布液であって、前記有機亜鉛化合物の含有量、または有機亜鉛化合物とドーパント用有機金属化合物との合計含有量が1〜30重量%であり、かつ前記溶剤がγ−ブチロラクトン又はγ−ブチロラクトンとアセチルアセトン(2、4−ペンタンジオン)を含有することを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、透明導電膜形成用塗布液及び透明導電膜に関するものである。更に詳しくは、ガラス等の透明耐熱基板上に、優れた透明性と導電性を兼ね備える透明導電膜を安価に形成することができる塗布液、及び該塗布液を用いた透明導電膜に関するものである。
液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、電子ペーパー等の表示素子用透明電極、タッチパネル、太陽電池等の透明電極、熱線反射、電磁波シールド、帯電防止、防曇等の機能性コーティングに用いられる透明導電膜の形成材料として、錫ドープ酸化インジウム(Indium Tin Oxide、以下、「ITO」と表記する場合がある)が知られている。
ITO透明導電膜の製造方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着法等の物理的手法が広く用いられている。これらの方法は、透明性と導電性に優れた均一なITO透明導電膜を基板上に形成することができる。しかしながら、これに使用する膜形成装置は真空容器をベースとするため非常に高価であり、また基板成膜毎に製造装置内の成分ガス圧を精密に制御しなければならないため、製造コストと量産性に問題がある。
上記の問題を解決する製造方法として、インジウム化合物と錫化合物を溶剤に溶解させた透明導電膜形成用塗布液を用いて、基板上に塗布する方法(以下、「塗布法」と表記する場合がある)が検討されている。この方法では、透明導電膜形成用塗布液の基板上への塗布、乾燥、焼成(加熱処理)という簡単な製造工程でITO透明導電膜が形成される。塗布液の基板上への塗布法としては、例えば、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサ印刷法、スリットコート法、ダイコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法等が挙げられる。
上記した塗布法では、インジウム化合物及び錫化合物を含む塗布液として従来種々の塗布液が開発されており、例えば、アルコキシル基などを含む有機インジウム化合物と有機錫化合物の混合物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、アセチルアセトンを配位した有機インジウム錯体と錫錯体からなる上記と同様の有機化合物混合溶液が開示されている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
更に、種々の塗布方法が適用可能な塗布液としてアセチルアセトンインジウム(正式名称:トリス(アセチルアセトナト)インジウム、[In(C])、アセチルアセトン錫(正式名称:ジ−n−ブチル ビス(2,4−ペンタンジオナト)錫、[Sn(C(C])、ヒドロキシプロピルセルロース、アルキルフェノール及び/またはアルケニルフェノールと、二塩基酸エステル及び/または酢酸ベンジルを含有する透明導電膜形成用塗布液が開示されている(例えば、特許文献5参照)。この塗布液は、アセチルアセトンインジウム、アセチルアセトン錫の混合溶液にヒドロキシプロピルセルロースを含有させることによって塗布液の基板に対する濡れ性を改善すると同時に、粘性剤であるヒドロキシプロピルセルロースの含有量によって塗布液の粘度を調整し、スピンコート、スプレーコート、ディップコート、スクリーン印刷、ワイヤーバーコート等の各種塗布法の採用を可能にしている。
また、スピンコート用の改良塗布液として、アセチルアセトンインジウム、オクチル酸インジウム等の有機インジウム化合物と、アセチルアセトン錫、オクチル酸錫等の有機錫と、有機溶剤とを含み、その有機溶剤にアルキルフェノール及び/またはアルケニルフェノールを溶解したアセチルアセトン溶液、アルキルフェノール及び/またはアルケニルフェノールを溶解したアセチルアセトン溶液をアルコールで希釈した液を用いる透明導電膜形成用塗布液も開示されている(例えば、特許文献6参照)。
この塗布液は、低粘度であり、スピンコートのほかスプレーコート、ディップコートにも使用可能であるとされている。
ここで、ITO膜は、希少金属で高価なインジウムを含有しているため透明導電膜の材料コストがアップすることはもとより、希少金属であることに起因するインジウムメタルの価格変動(暴騰)によって透明導電膜の材料コストが大幅に変動するという問題も有していた。したがって、透明導電膜をタッチパネル、タッチセンサ、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、電子ペーパー等の素子の透明電極に適用する場合、低コスト化に自ずと限界があった。
したがって、これらの課題を解決して、前記各種素子に適した透明電極を形成するためには、優れた透明性と導電性を兼ね備え、かつ安価に透明導電膜を形成できるような透明導電膜形成用の塗布液が要望されていた。
特開昭61−26679号公報 特公昭63−25448号公報 特公平2−20706号公報 特公昭63−19046号公報 特開平6−203658号公報 特開平6−325637号公報
本発明は、低コストかつ簡便な透明導電膜の製造方法であるインク塗布法によって、優れた透明性と導電性を有する安価な透明導電膜を得ることができる透明導電膜形成用塗布液、及びこの塗布液を用いて形成された透明導電膜の提供を目的とする。
上記課題を達成するために、発明者らは有機亜鉛化合物、および必要に応じてドーパント用有機金属化合物を溶剤に溶解させた透明導電膜形成用塗布液について鋭意研究を重ねた結果、透明導電膜形成用塗布液を適切に配合すれば、目的とする、高い透明性と導電性を有する安価な透明導電膜が得られることを見出し、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明の第1の発明の透明導電膜形成用塗布液は、少なくとも有機亜鉛化合物、及び溶剤を含有する透明導電膜形成用塗布液であって、その有機亜鉛化合物を1〜30重量%含み、その溶剤が、γ−ブチロラクトン又はγ−ブチロラクトンとアセチルアセトン(2、4−ペンタンジオン)を含有することを特徴とするものである。
本発明の第2の発明の透明導電膜形成用塗布液は、少なくとも有機亜鉛化合物、ドーパント用有機金属化合物、及び溶剤を含有する透明導電膜形成用塗布液であって、その有機亜鉛化合物とドーパント用有機金属化合物とを合計で1〜30重量%含み、その溶剤が、γ−ブチロラクトン又はγ−ブチロラクトンとアセチルアセトン(2、4−ペンタンジオン)を含有することを特徴とするものである。
本発明の第3の発明の透明導電膜形成用塗布液は、第2の発明における有機亜鉛化合物とドーパント用有機金属化合物の含有割合が、有機亜鉛化合物:ドーパント用有機金属化合物のモル比で、99.9:0.1〜87:13であることを特徴とするものである。
本発明の第4の発明の透明導電膜形成用塗布液は、第2または第3の発明におけるドーパント用有機金属化合物が、有機アルミニウム化合物、有機ガリウム化合物、有機インジウム化合物、有機ホウ素化合物から選択する少なくとも1種類以上であることを特徴とするものである。
本発明の第5の発明の透明導電膜形成用塗布液は、第1〜4の発明のいずれかに記載の有機亜鉛化合物が、アセチルアセトン亜鉛であることを特徴とするものである。
また、本発明の第6の発明の透明導電膜形成用塗布液は、第1〜5の発明のいずれかに記載の透明導電膜形成用塗布液が、更にバインダーとしてセルロース誘導体、アクリル樹脂から選ばれる1種以上を5重量%以下含有することを特徴とするものである。
本発明の第7の発明の透明導電膜形成用塗布液は、第6の発明におけるセルロース誘導体が、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースから選ばれる1種以上であることを特徴とするものである。
本発明の第8の発明の透明導電膜は、第1〜7の発明のいずれかに記載の透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布、乾燥、加熱処理して得られる、主成分として酸化亜鉛からなることを特徴とするものである。
本発明に係る透明導電膜形成用塗布液は、少なくとも有機亜鉛化合物、及び溶剤、必要に応じてドーパント用有機金属化合物、を含有するものであり、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサ印刷法、スリットコート法、ダイコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法等の各種塗布方法に適した粘度と、優れた成膜性(印刷性)及び液安定性を有している。
さらに、本発明の透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布、乾燥、加熱処理して得られる透明導電膜は、安価で、優れた透明性と導電性を有する。そのため、タッチパネル、タッチセンサ、液晶素子、無機EL素子、有機EL素子、電子ペーパー等の透明電極等に好適である。
空気中の飽和水蒸気含有量(体積%)と露点温度(℃)の関係を示す図である。 本発明に係る塗布法による透明導電膜製造工程における加熱処理工程の一例を示す模式図である。 本発明に係る塗布法による透明導電膜製造工程における加熱エネルギー線照射工程の一例を示す模式図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明では、高価な有機インジウム化合物に替えて安価な有機亜鉛化合物を配合した透明導電膜形成用塗布液を用いて透明導電膜を得ている。すなわち、有機亜鉛化合物、溶剤、必要に応じてドーパント用有機金属化合物を含有する透明導電膜形成用塗布液の各構成成分を適切に配合することで、塗布、乾燥、加熱処理後に、高い透明性と導電性を有する安価な透明導電膜の形成を図ったものである。
ここで、上記ドーパント用有機金属化合物は、有機アルミニウム化合物、有機ガリウム化合物、有機インジウム化合物、有機ホウ素化合物から選択される少なくとも1種以上であり、有機亜鉛化合物とドーパント用有機金属化合物は、基板上に透明導電膜を形成させるための主たる化合物原料であり、有機亜鉛化合物の含有量、または有機亜鉛化合物とドーパント用有機金属化合物の合計含有量は1〜30重量%の範囲であることが好ましく、更に好ましくは5〜20重量%とするのが良い。含有量が1重量%未満であると透明導電膜の膜厚が薄くなり十分な導電性が得られず、30重量%より多いと膜に亀裂(クラック)が発生して導電性が損なわれる。
更に、有機亜鉛化合物と、上記ド−パント用有機金属化合物の含有割合は、有機亜鉛化合物:ドーパント用有機金属化合物のモル比で99.9:0.1〜87:13が良く、好ましくは99:1〜91:9、更に好ましくは98:2〜95:5である。
ここで、上記モル比は、有機亜鉛化合物とドーパント用有機金属化合物のそれぞれの金属成分のモル比を指している。したがって、例えばドーパント用有機金属化合物の1分子中に金属元素が2個含まれている場合は、ドーパント用有機金属化合物1モルに対しドーパント用の金属元素は2モルとして換算する。
このモル比範囲を外れてドーパント用有機金属化合物が、少なくても或いは多すぎても、透明導電膜のキャリア密度が減少して透明導電膜の導電性が急激に悪化する場合がある。上記モル比範囲を外れてドーパント用有機金属化合物が多い場合には、透明導電膜を最終的に構成する導電性酸化物微粒子の結晶成長が進み難くなって導電性が悪化する場合があるため好ましくない。
〔有機亜鉛化合物〕
本発明で用いる有機亜鉛化合物には、亜鉛アセチルアセトン錯体としてのアセチルアセトン亜鉛(正式名称:亜鉛−2,4−ペンタンジオネート)[Zn(C]、亜鉛−2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート[Zn(C1119]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、加熱処理時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機亜鉛化合物であれば良い。
これらの中でも、アセチルアセトン亜鉛は、安価で入手し易く、かつ有機溶剤への溶解性が高く、200〜250℃程度の温度で熱分解・燃焼(酸化)して酸化物となるため好ましい。
〔ドーパント用有機金属化合物〕
次に、導電性を向上させるドーパント用有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機ガリウム化合物、有機インジウム化合物、有機ホウ素化合物のいずれか1種以上が好ましい。
なお、透明導電膜を適用するデバイスによっては導電性がある程度低い(抵抗値が高い)ことが必要とされる場合もあるため、透明導電膜形成用塗布液へのドーパント用有機金属化合物の添加は、必要に応じて適宜実施すればよい。
1.有機アルミニウム化合物
ドーパント用有機金属化合物の有機アルミニウム化合物としては、アルミニウムアセチルアセトン錯体としてのアセチルアセトンアルミニウム(アルミニウム−2,4−ペンタンジオネート)[Al(C]、アルミニウムアルコキシドとしてのアルミニウムエトキシド[Al(CO)]、アルミニウム−n−ブトキシド[Al(CO)]、アルミニウム−tert−ブトキシド[Al(CO)]、アルミニウムイソプロポキシド[Al(CO)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、加熱処理時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機アルミニウム化合物であれば良い。これらの中でも、アセチルアセトンアルミニウム、アルミニウム−n−ブトキシドは、比較的安価で入手し易いので好ましい。
2.有機ガリウム化合物
ドーパント用有機金属化合物の有機ガリウム化合物としては、ガリウムアセチルアセトン錯体としてのアセチルアセトンガリウム(ガリウム−2,4−ペンタンジオネート)[Ga(C]、ガリウムアルコキシドとしてのガリウムエトキシド[Ga(CO)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、加熱処理時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機ガリウム化合物であれば良い。
3.有機インジウム化合物
ドーパント用有機金属化合物の有機インジウム化合物としては、アセチルアセトンインジウム(正式名称:トリス(アセチルアセトナト)インジウム)[In(C]、2−エチルヘキサン酸インジウム、蟻酸インジウム、インジウムアルコキシド等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、加熱処理時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機インジウム化合物であれば良い。これらの中でもアセチルアセトンインジウムは有機溶剤への溶解性が高く、200〜250℃程度の温度で熱分解・燃焼(酸化)して酸化物となるため好ましい。
4. 有機ホウ素化合物
ドーパント用有機金属化合物の有機ホウ素化合物としては、ホウ素アルコキシドとしてのトリエトキシボロン[B(CO)]、トリ−n−プロポキシボロン[B(CO)]、トリイソプロポキシボロン[B(CO)]、トリ−n−ブトキシボロン[B(CO)]、トリ−tert−ブトキボロン[B(CO)]、トリメトキシエトキシボロン[B(CHOCO)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、加熱処理時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機ホウ素化合物であれば良い。
〔バインダー〕
バインダーには、基板に対する濡れ性が改善されると同時に、塗布液の粘度調整を行うことができ、かつ加熱処理時において燃焼する材料であれば良い。このような材料として、セルロース誘導体、アクリル樹脂から選ばれる1種以上が有効である。
セルロース誘導体としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース 、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース 、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース 、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース、ニトロセルロース等が挙げられるが、これらの中でもヒドロキシプロピルセルロース(以下、HPCと表記する場合がある)が好ましい。
このHPCを用いれば、5重量%以下の含有量で十分な濡れ性が得られると同時に、大幅な粘度調整を行うことができる。またHPCの燃焼開始温度は300℃程度であり、加熱処理を300℃以上、好ましくは350℃以上の温度で行えば燃焼するので、生成する導電性酸化物微粒子の粒成長を阻害せず、導電性が良好な透明導電膜を作製することができる。
HPCの含有量が5重量%より多くなると、ゲル状になって塗布液中に残留し易くなり、多孔質の透明導電膜を形成して透明性や導電性、並びに膜強度が損なわれる。
また、セルロース誘導体として、例えばHPCの代わりにエチルセルロースを用いた場合は、HPCを用いた場合よりも塗布液の粘度が低く設定できるが、高粘度塗布液が好適であるスクリーン印刷法等ではパターン印刷性が若干低下する。
ところで、ニトロセルロースは、熱分解性は優れているが、加熱処理時において有害な窒素酸化物ガスの発生があり、加熱処理炉(焼成炉)の劣化や排ガス処理に問題を生じる場合がある。
以上のように、使用するセルロース誘導体は、状況に応じて適宜選択する必要がある。また、アクリル樹脂としては、比較的低温で燃焼するアクリル樹脂が好ましい。
〔溶剤〕
溶剤としては、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンアルミニウム、アセチルアセトンインジウム等のアセチルアセトン錯体化合物を高濃度で溶解するγ−ブチロラクトン又はγ−ブチロラクトンとアセチルアセトン(2、4−ペンタンジオン)を含有する溶剤を用いるのが好ましい。
γ−ブチロラクトンは、特にアセチルアセトン亜鉛の溶解性に優れており、また、ドーパント用有機金属化合物であるアセチルアセトンアルミニウムやアセチルアセトンインジウム、あるいは、バインダーとしての上記HPCの溶解性についても比較的良好である。
一方、アセチルアセトンは、特にドーパント用有機金属化合物であるアセチルアセトンガリウムの溶解性に優れており、また、アセチルアセトン亜鉛やドーパント用有機金属化合物であるアセチルアセトンアルミニウムやアセチルアセトンインジウム、あるいは、バインダーとしての上記HPCの溶解性についても問題ない。
γ−ブチロラクトンとアセチルアセトン(2、4−ペンタンジオン)の混合割合は、用いる有機亜鉛化合物やドーパント用有機金属化合物の種類などにもよるが、例えば有機亜鉛化合物としてアセチルアセトン亜鉛を用いる場合には、γ−ブチロラクトン:アセチルアセトン(2、4−ペンタンジオン)の重量比は、40:60〜100:0、好ましくは、50:50〜100:0が良い。γ−ブチロラクトンの配合割合が、γ−ブチロラクトン:アセチルアセトン(2、4−ペンタンジオン)の重量比で40:60よりも少なくなると、透明導電膜形成用塗布液におけるアセチルアセトン亜鉛の溶解性が低下するため好ましいとはいえない。
なお、ドーパント用有機金属化合物としてアセチルアセトンガリウムを用いる場合には、透明導電膜形成用塗布液からのアセチルアセトンガリウムの析出を抑制する観点から、γ−ブチロラクトン:アセチルアセトン(2、4−ペンタンジオン)の重量比は、40:60〜90:10、好ましくは、40:60〜70:30が良い。
〔透明導電膜形成用塗布液の調製〕
次に塗布液の粘度や塗布性を調整するために、透明導電膜形成用塗布液に少量配合する溶剤は、前記の有機亜鉛化合物、ドーパント用有機金属化合物である有機アルミニウム化合物、有機ガリウム化合物、有機インジウム化合物、有機ホウ素化合物から選択される有機金属化合物、バインダーとしてのセルロース誘導体、アクリル樹脂から選ばれる1種以上を溶解させた溶液と相溶性があれば良い。
例えば、メタノール(MA)、エタノール(EA)、1−プロパノール(NPA)、イソプロパノール(IPA)、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール(DAA)等のアルコール系溶剤、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル(MCS)、エチレングリコールモノエチルエーテル(ECS)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(IPC)、エチレングリコールモノブチルエーテル(BCS)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールエチルエーテル(PE)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGM−AC)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート(PE−AC)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール誘導体、トルエン、キシレン、メシチレン、ドデシルベンゼン等のベンゼン誘導体、トルエン、キシレン、メシチレン、ドデシルベンゼン等のベンゼン誘導体、ホルムアミド(FA)、N−メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、エチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、ミネラルスピリッツ、ターピネオール等、及びこれらのいくつかの混合液が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
塗布液の安定性や成膜性を考慮すると、使用する粘度調整用の溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が好ましい。
本発明の透明導電膜形成用塗布液は、前記の有機亜鉛化合物と、必要に応じてドーパント用有機金属化合物としての有機アルミニウム化合物、有機ガリウム化合物、有機インジウム化合物、有機ホウ素化合物から選択される1種以上の有機金属化合物やバインダーを加えた混合物を溶剤に加熱溶解することによって製造することができる。
この加熱溶解は、加熱温度を60〜200℃とし、0.5〜12時間攪拌することにより行われる。加熱温度が60℃よりも低いと十分に溶解せず、有機亜鉛化合物(例えば、アセチルアセトン亜鉛)の析出分離が起って塗布液の安定性が低下してしまう。200℃よりも高いと溶剤の蒸発が顕著となり塗布液の組成が変化してしまうので好ましくない。
本発明の透明導電膜形成用塗布液の粘度は、前記したバインダーの分子量や含有量、溶剤の種類によって調整することができるので、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサ印刷法、スリットコート法、ダイコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、スプレーコート法等の各種塗布法のそれぞれに適した粘度に調整して対応することができる。
例えば、高粘度(5000〜50000mPa・s程度)の塗布液は、高分子量のバインダーを5重量%以下、好ましくは2〜4重量%含有させることで作製でき、低粘度(5〜500mPa・s程度)は、低分子量のバインダーを5重量%以下、好ましくは0.1〜2重量%含有させ、かつ低粘度の希釈用溶剤で希釈することで作製できる。また、中粘度(500〜5000mPa・s)の塗布液は、高粘度の塗布液と低粘度の塗布液を混合することで作製できる。
〔透明導電膜〕
本発明の透明導電膜ついて詳細に説明する。
本発明の透明導電膜は、上記した透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布して塗布膜を形成する塗布工程、その塗布膜を乾燥して乾燥塗布膜を形成する乾燥工程、その乾燥塗布膜を加熱処理して無機膜を形成する加熱処理工程の各工程を経て形成される。
(a)塗布工程
基板上への透明導電膜形成用塗布液の塗布は、前述のインクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサ印刷法、スリットコート法、ダイコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、スプレーコート法等の各種塗布法を用いて塗布される。
これらの塗布は、クリーンルーム等のように清浄でかつ温度や湿度が管理された雰囲気下で行うことが好ましい。温度は室温(25℃程度)、湿度は40〜60%RHが一般的である。
また、これに用いる耐熱基板としては、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等の無機基板や、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリエーテルスルホン(PES)、ウレタン、シクロオレフィン樹脂(ゼオノア[日本ゼオン株式会社製]やアートン[JSR株式会社製]等)、フッ素系樹脂、ポリイミド(PI)等の樹脂基板(耐熱性プラスチックフィルム)が挙げられる。
(b)乾燥工程
次の乾燥工程では、上記透明導電膜形成用塗布液を塗布した基板を、通常大気中80〜180℃の温度で1〜30分間、好ましくは2〜10分間保持して塗布膜の乾燥を行い、乾燥塗布膜を作製する。
この乾燥条件(乾燥温度、乾燥時間)は、用いる基板の種類や透明導電膜形成用塗布液の塗布厚み等によって、適宜選択すればよく、上記乾燥条件に限定される訳ではない。ただし、生産性を考慮すれば、乾燥時間は、得られる乾燥塗布膜の膜質が悪化しない必要最低限度に短縮することが望ましい。
また、乾燥温度は、用いる基板の耐熱温度以下であることが必要であり、例えば、上記PENフィルムであれば(乾燥時間にもよるが)200℃程度以下に設定する必要がある。なお、必要に応じて大気中乾燥に代えて、減圧乾燥(到達圧力:通常1kPa以下)を適用することも可能である。この減圧乾燥では、塗布された透明導電膜形成用塗布液中の溶剤が、減圧下で強制的に除去されて乾燥が進行することから、大気中乾燥に比べてより低温での乾燥が可能となるため、耐熱性や耐溶剤性に乏しい素材からなる基板を用いる場合に有用である。
この作製した乾燥塗布膜は、透明導電膜形成用塗布液から前述の有機溶剤が揮発除去されたものであって、上記有機亜鉛化合物、(必要に応じて添加される、ドーパント用有機金属化合物)、有機バインダー等の有機系成分で構成されている。
(c)加熱処理工程
次の加熱処理工程では、乾燥工程で作製した乾燥塗布膜を加熱処理して乾燥塗布膜中の上記有機亜鉛化合物、必要に応じて添加されるドーパント用有機金属化合物、および有機バインダー等の有機系成分を熱分解・燃焼(酸化)により無機化させて無機成分(導電性酸化物が主成分)からなる無機膜(導電性酸化物微粒子が緻密に充填した導電性酸化物微粒子層としての透明導電膜)を形成するものである。
すなわち、加熱処理工程の昇温過程で加熱温度が高くなってくると、乾燥塗布膜中の上記有機亜鉛化合物(少量のドーパント用有機金属化合物を含有する物も含む)は徐々に熱分解・燃焼(酸化)されて、まずアモルファス状態(ここでは、X線回折で求めた結晶子サイズ=3nm未満の非常に微細な粒子の状態を称する)の導電性酸化物への変換、所謂無機化が生じる。その後加熱温度が一層上昇して通常300〜330℃の範囲を越えるか、あるいは300〜330℃の範囲のままであっても加熱時間が長くなると、上記導電性酸化物の結晶化が起こり、更に結晶成長して導電性酸化物微粒子となり最終的な導電性酸化物膜の構成要素となる。
なお、この300〜330℃の温度は、上記無機化や結晶化が生じやすい一般的な温度範囲を示すものであって、例えば、加熱時間が長い場合には、270℃程度でも上記記導電性酸化物の無機化、結晶化、結晶成長が生じる場合もあるため、本発明の加熱処理工程の加熱温度が300℃以上に限定されるものではない。
一方、有機バインダーも同様に、加熱処理工程の昇温過程で徐々に熱分解・燃焼(酸化)するが、主に二酸化炭素(CO)に転化されて雰囲気中に揮散して膜中から消失(有機バインダーの種類にもよるが、例えば前述のHPCであれば約300〜350℃でほぼ消失)していくため、最終的には導電性酸化物膜中にはほとんど残留しない。なお、加熱処理工程の初期段階(昇温過程のある段階で、例えば室温から加熱して300℃まで到達した段階)までは有機バインダーが多く残留し、上記アモルファス状態の導電性酸化物間に有機バインダーが均一に介在して結晶化を抑制しているが、更に加熱処理を進めると有機バインダー成分が徐々に消失していき、上記導電性酸化物の結晶化が起こるものと考えられる。
以下、加熱処理工程を更に詳しく説明する。
本発明の乾燥塗布膜の加熱処理工程において、先ず露点温度の低い、即ち水蒸気含有量の少ない酸素含有雰囲気(参考として、図1に空気中の飽和水蒸気含有量(体積%)と露点温度(℃)の関係を示す)を昇温過程の雰囲気に適用することで、上記の通り加熱処理工程の初期段階に生じる無機化による導電性酸化物の結晶化、並びに結晶成長が抑制されて、導電性酸化物微粒子が緻密に充填した本発明の導電性酸化物微粒子層の膜構造を得ることができる。なお、導電性酸化物微粒子が緻密に充填するメカニズムに関しては、必ずしも明らかではないが、例えば、以下のように考えることができる。
すなわち、少なくとも加熱処理工程の昇温過程で生じた無機化による導電性酸化物の結晶化が起こる時点(加熱処理工程の初期段階;本発明では通常300〜330℃程度)までは上記アモルファス状態の導電性酸化物間に有機バインダーが均一に介在した膜構造が維持され、この膜構造が有機物質である有機バインダーの作用で柔軟性を有して基板と垂直方向への膜の収縮(緻密化)を可能とするため、露点温度の低い空気雰囲気下で昇温して加熱処理した場合は、有機バインダーが消失するぎりぎりの加熱温度まで(約300〜350℃程度まで)導電性酸化物の結晶化が抑制されて上記収縮可能な膜構造を取ることができ、膜の緻密化につながるものと推測される。
なお、上述した露点温度の低い、即ち水蒸気含有量の少ない空気雰囲気下において導電性酸化物の結晶化、並びに結晶成長が抑制される理由は明らかではないが、例えば、空気雰囲気中の水蒸気が、(1)導電性酸化物間に介在している有機バインダー成分の熱分解・燃焼(酸化)の促進作用を有すること、
(2)導電性酸化物自体の結晶化、並びに結晶成長を促進する作用を有すること、
等が考えられる。
具体的には、先ず露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気ガスを供給しながら導電性酸化物の結晶化が起こる温度以上(通常300〜330℃以上)に昇温して加熱処理を行い、膜の緻密化を図る。
以上のような単純な加熱処理でも緻密な透明導電膜を得ることはできるが、以下に述べる加熱エネルギー線照射を併用すれば、上記露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気下での加熱処理の加熱温度を大幅に低下させることができると同時に、膜の緻密化をより促進することが可能となる。
すなわち、乾燥工程で得られた乾燥塗布膜を、露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気下で、加熱しながらエネルギー線照射を施す方法である。この方法によって乾燥塗布膜の有機成分が徐々に分解・燃焼(酸化)して、膜の無機化が進行し、かつ緻密化も促進されるため、膜の厚みも徐々に低下していく。例えば、厚み560nmの乾燥塗布膜を、上記酸素含有雰囲気下での150〜200℃という低温の加熱エネルギー線照射によって、最終的に厚み180nm程度の無機膜に変化させることができる。
なお、加熱エネルギー線照射工程における加熱温度は、300℃未満が良く、好ましくは100〜250℃、より好ましくは、120〜200℃、更に好ましくは150〜200℃の範囲である。300℃以上だと、エネルギー線照射前にエネルギー線照射を施す乾燥塗布膜の熱分解が始まるため、膜の緻密化が阻害されるため好ましくない。また、100℃未満は、全く実用的でないとは言えないが、加熱エネルギー線照射による乾燥塗布膜の無機化や緻密化の速度が低下することに十分注意する必要がある。
ここで、上記加熱エネルギー線照射工程に用いるエネルギー線照射は、少なくとも200nm以下の波長を主要成分の一つとして含む紫外線の照射であることが望ましく、より具体的には、低圧水銀ランプ、アマルガムランプ、エキシマランプのいずれかから放射される紫外線の照射が好ましい。紫外線の照射量は、波長200nm以下の光の照度:2mW/cm以上、好ましくは4mW/cm以上で、照射時間は、2分以上、好ましくは4分以上が良い。
この紫外線の照射量は、基板とランプとの距離(照射距離)、照射時間、またはランプの出力によって適宜調整できる。このランプを用いた基板全面へのエネルギー線照射では、例えば直管状のランプを並行に配列させて照射しても良いし、グリッド型ランプの面光源を用いても良い。
以下、波長200nm以下の光を放射可能な低圧水銀ランプとエキシマランプについて詳細に説明するが、本発明の加熱エネルギー線照射工程では、使用上の制約が少なく、加熱処理と併用した場合にランプへの加熱の影響を小さくできる低圧水銀ランプを用いることがより好ましい。
なお、アマルガムランプは、低圧水銀ランプが一般に石英ガラス管内にアルゴンガスと水銀を封入するのに対し、水銀と特殊希少金属の合金であるアマルガム合金を封入することで、低圧水銀ランプと比べて、2〜3倍程度の高出力化を可能としたもので、出力波長特性はほぼ低圧水銀ランプと同じであるため、詳細説明は省略する。当然のことながら、アマルガムランプも、低圧水銀ランプと同様に、本発明の加熱エネルギー線照射工程では、使用上の制約が少なく、加熱処理と併用した場合にランプへの加熱の影響を小さくできるため好ましい。
ただし、紫外線の吸収を伴わない窒素ガス等を冷却ガスとしてランプを冷却する特殊な装置を用いる事も可能で、そのような場合はこの限りでない。
低圧水銀ランプは、185nmと254nmの波長の紫外線を放射し、例えば空気中では、下記化1に示す反応式(1)〜(3)のように185nmの光は酸素を分解してオゾンを生成し、更に、そのオゾンを254nmの光がms(ミリ秒)単位の速さで分解して、高エネルギーの活性原子状酸素O(D)を生成する。これと同時に185nmの光(フォトンエネルギー:647kJ/mol)、及び254nmの光は有機物の化学結合を切断し、その化学結合が切断された有機物にオゾンや活性原子状酸素が作用して、最終的に有機物を水や炭酸ガスに酸化分解・揮発させると考えられる。その有効照射距離は0〜20mm(臨界照射距離は200mm)と比較的長い照射距離が確保できる。
Figure 2012015103
一方、エキシマランプ(キセノンエキシマランプ)は、172nmの波長の紫外線を放射し、例えば空気中では、低圧水銀ランプと異なり、下記化2の反応式(4)に示す高エネルギーの活性原子状酸素O(D)を直接生成できるという特徴がある(反応式(4)の解離には波長175nm以下が必要なので、低圧水銀ランプの185nmの光ではこの解離は起きない)。また、反応式(5)によりオゾンを生成し、反応式(6)によっても活性原子状酸素を生成できる(反応式(6)は2次反応であり、主たる活性原子状酸素の生成は反応式(4)によると考えられる)。
更に、フォトンのエネルギーが696kJ/molと大きいので有機物の結合を切る能力が高いという利点もある(ほとんどの有機物の分子結合エネルギーより高いため分子結合が切れる確率が高くなる)。ただし、172nmの光は、低圧水銀ランプの185nmの光に比べて酸素の吸収係数が約100倍も大きく、酸素に強く吸収されるため、上記オゾンや高エネルギーの活性原子状酸素は、ランプ表面近傍でしか酸化反応が起こせず、大気中での有効照射距離が0〜3mm(臨界照射距離は8mm)と極端に短くなる欠点がある。
以上のようにして、乾燥塗布膜中の有機成分を熱分解・燃焼(酸化)により無機化させながら緻密化させて、緻密な無機膜を得ることができる。
Figure 2012015103
ところで、上記露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気下での加熱処理による膜緻密化後に、必要に応じて、次に露点温度0℃以上の酸素含有雰囲気ガスを供給しながら加熱処理し、導電性酸化物微粒子同士の結晶成長を促進させることもできる。
更には、膜の緻密化(露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気ガス中での加熱処理)を図った後、あるいは上記緻密化後の結晶成長の促進化(露点温度0℃以上の酸素含有雰囲気ガス中での加熱処理)を図った後に、特に、導電性酸化物膜を透明導電膜として適用する場合は、中性雰囲気または還元性雰囲気ガスを供給しながら加熱処理を行うことが好ましい。
本発明で使用する酸素含有雰囲気ガスは、空気、または酸素ガス、あるいは、酸素ガスと中性雰囲気ガス(窒素)・不活性ガス(アルゴン、ヘリウム等)の混合ガスが挙げられるが、安価で入手しやすい空気が好ましい。
露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気ガスの露点温度は、好ましくは−15℃以下、より好ましくは−20℃以下、更に好ましくは−30℃以下、最も好ましくは−40℃以下である。
また、露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気下で導電性酸化物の結晶化が起こる温度以上(本発明では通常300〜330℃以上)に昇温する加熱処理において、その露点温度が−10℃を越えると、導電性酸化物微粒子からなる導電性酸化物微粒子層の形成過程において、加熱処理の初期段階での有機バインダーがまだ多く残留している段階で水蒸気が導電性酸化物の結晶化、並びに結晶成長を促進して前述のアモルファス状態の導電性酸化物間に有機バインダーが均一に介在した膜垂直方向に収縮可能な膜構造が破壊されて、導電性酸化物微粒子同士が固着し動けなくなるため、膜の緻密化が阻害され、導電性酸化物膜の導電性や膜強度が低下するため、好ましくない。
さらに、膜緻密化後に必要に応じて行なう、結晶化促進のための露点温度0℃以上の酸素含有雰囲気ガス中での加熱処理において、露点温度0℃以上の酸素含有雰囲気ガスの露点温度は、好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上である。この露点温度が0℃以上だと、水蒸気が緻密化した膜の導電性酸化物微粒子同士の結晶成長を促進するため、膜の緻密化と結晶成長を両立できて、導電性酸化物膜の導電性や膜強度を高めることができるからである。
露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気下での導電性酸化物の結晶化が起こる温度以上(本発明では通常300〜330℃以上)に昇温する加熱処理は、その昇温で到達する加熱温度(ピーク温度)が300℃以上、より好ましくは350℃以上、更に好ましくは400℃以上の加熱温度で5〜120分間、より好ましくは15〜60分間である。
300℃よりも低い加熱温度(特に270℃未満の加熱温度)では、通常、乾燥塗布膜に含まれる有機成分(有機金属化合物、有機バインダー等に含まれる有機成分)の熱分解或いは燃焼が不十分となり易く、それら有機成分が導電性酸化物膜に残留して導電性酸化物の結晶化が起こらず、膜の緻密化も不十分となって、膜の透明性や導電性を悪化させる恐れがあるため好ましいとは言えない。ただし、加熱処理時間を例えば60分間程度以上と長くした場合や、最終的な導電性酸化物膜の膜厚が130nm程度以下と薄い場合等では、例えば270℃程度でも上記有機成分の熱分解或いは燃焼が進行するため、膜の透明性や導電性が悪化しない場合もある。したがって、一般的には300℃以上の加熱温度が好ましいが、各工程の条件(膜厚、加熱処理時間等)によっては、270℃程度の加熱温度も適用可能である。
また、加熱温度の上限は特に限定されないが、加熱処理工程で用いる加熱処理装置の種類や基板の耐熱性に影響を受け、安価で最も一般的に用いられるソーダライムガラス基板では、歪点が約510℃であるので、この温度よりも低い温度で加熱処理することが好ましい。ただし、ソーダライムガラス基板をより耐熱性の高い耐熱性基材上で加熱処理すれば、基板の歪みを比較的少なくできるため、約600℃程度での加熱処理も可能である。もちろん、石英ガラス基板、無アルカリガラス基板、高歪点ガラス基板等のより耐熱性が高いガラス基板を用いる場合は、更に高い加熱温度が適用できる。
なお、基板として耐熱性プラスチックであるポリイミド(PI)フィルムを用いた場合は、ポリイミドの種類にもよるが、400℃程度までの加熱処理が可能である。
加熱処理工程で用いる加熱処理装置には、ホットプレート、熱風循環加熱処理炉、遠赤外線加熱装置等が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。ただし、本発明を実施するためには露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気を用いる必要があるため、上記加熱処理装置には加熱処理雰囲気の制御が可能であることが求められる。
なお、加熱処理工程の昇温過程における導電性酸化物の結晶化が起こる温度以上までの昇温速度については特に制約はないが、5〜40℃/分の範囲、より一般的には10〜30℃/分である。5℃/分より昇温速度が遅いと昇温に時間がかかりすぎて効率が悪くなり、一方40℃/分を越える昇温速度を上記加熱処理装置で実現しようとすると、ヒーター容量が大きくなりすぎて現実的でない。
また、上記露点温度0℃以上の酸素含有雰囲気下での加熱処理の処理条件も、上記露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気下で、導電性酸化物の結晶化が起こる温度以上に昇温する加熱処理の通常の処理条件(通常300〜330℃以上)と同様に、加熱温度は300℃以上、より好ましくは350℃以上、更に好ましくは400℃以上の加熱温度で5〜120分間、より好ましくは15〜60分間である。
300℃よりも低い加熱温度(特に270℃未満の加熱温度)では、前述と同様に、通常、導電性酸化物微粒子同士の結晶化促進効果が不十分となり易く、導電性や膜強度の大幅な向上が期待しにくいため好ましいとは言えない。
導電性酸化物膜を透明導電膜に適用する場合には、上記酸素含有雰囲気下での加熱処理に引き続き、中性雰囲気または還元性雰囲気下での加熱処理を行うと、導電性酸化物の種類によっては、導電性酸化物微粒子に酸素空孔が形成されてキャリア濃度が増加し、導電性酸化物膜の導電性が向上するため好ましい。
なお、この中性雰囲気または還元性雰囲気下での加熱処理は、膜中に形成された酸素空孔が導電性酸化物微粒子の成分元素(金属元素、酸素等)を拡散しやすくするため、上記露点温度0℃以上の酸素含有雰囲気ガス中の加熱処理による導電性酸化物微粒子同士の結晶成長促進よりも、より強い促進効果を有しており、上記導電性酸化物膜の導電性向上だけでなく、導電性の安定化(経時変化抑制)にも有効である点からも好ましい。
この中性雰囲気は、窒素ガス、不活性ガス(アルゴン、ヘリウム等)のいずれか1種以上からなり、また、還元性雰囲気は、水素ガスまたは該中性雰囲気に水素または有機溶剤蒸気(メタノール等の有機ガス)の少なくとも1種以上が含まれる雰囲気などが挙げられるが、緻密に充填した導電性酸化物微粒子から酸素原子を奪い酸素空孔を形成して導電キャリア濃度を高めることができれば良く、これらに限定されない。
加熱温度が250〜600℃程度であれば、1〜3%水素−99〜97%窒素の混合ガスは、大気に漏洩しても爆発の恐れがないため好ましい雰囲気である。
中性雰囲気または還元性雰囲気下での加熱処理の処理条件は、加熱温度が250℃以上、より好ましくは350℃以上の加熱温度で5〜120分間、より好ましくは15〜60分間である。なお、前述の導電性酸化物微粒子同士の結晶成長をより促進させるという観点からすると、加熱温度は350℃以上、更に好ましくは450℃以上が望ましい。
250℃よりも低い加熱温度では、導電性酸化物微粒子に酸素空孔が十分に形成できず、キャリア濃度の増加による導電性酸化物膜の導電性向上が期待できないため、導電性酸化物膜を透明導電膜に適用した場合には、好ましくない。
また、この加熱温度の上限は特に限定されないが、加熱処理工程で用いる加熱処理装置の種類や基板の耐熱性に影響受ける点は、酸素含有雰囲気下での加熱処理と同様である。
なお、露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気下で、導電性酸化物の結晶化が起こる温度以上に昇温する加熱処理、露点温度0℃以上の酸素含有雰囲気下の加熱処理、及び中性雰囲気または還元性雰囲気下の加熱処理は、連続して行うことができる。即ち、乾燥塗布膜が形成された基板の加熱処理において、例えば、基板の温度を300℃以上の加熱温度に昇温した後、その温度を保ったまま、雰囲気だけを露点温度−10℃以下の酸素含有雰囲気から露点温度0℃以上の酸素含有雰囲気、あるいは、中性雰囲気または還元性雰囲気に切替えればよい。
前述のように、中性雰囲気または還元性雰囲気下での加熱処理は、前述の導電性酸化物に酸素空孔を形成してキャリア濃度を増加させる働きに加え、酸素空孔の存在により導電性酸化物膜の構成元素を移動し易くして結晶成長を促進する働きも有しており、導電性酸化物膜の強度や導電性の一層の向上に寄与している。
本発明の透明導電膜は、有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物を主成分とする従来の透明導電膜形成用塗布液に対し、有機亜鉛化合物とドーパント用有機金属化合物を主成分とした透明導電膜形成用塗布液を用いることで、形成される透明導電膜の成膜コストを低下させることに成功したものであり、低コストかつ簡便なインク塗布法によって、優れた透明性と高い導電性とを兼ね備える安価な透明導電膜を製造することができる。
以下、本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、本文中の水素−窒素混合ガスの「%」は、「体積%」を示している。
[溶解液A液の作製]
アセチルアセトン亜鉛(正式名称:亜鉛−2,4−ペンタンジオネート)[Zn(C](分子量=263.59)10g、γ−ブチロラクトン49.99g、アセチルアセトン38g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)2g、界面活性剤0.01gを混合し、120℃に加温しながら90分間攪拌して均一になるまで良く溶解し、アセチルアセトン亜鉛とヒドロキシプロピルセルロースを含有する溶解液(A液)を作製した。
[溶解液B液の作製]
アセチルアセトンアルミニウム(正式名称:アルミニウム−2,4−ペンタンジオネート)[Al(C](分子量=324.29)10g、p−tert−ブチルフェノール28.5g、二塩基酸エステル(デュポンジャパン製)9.5g、アセチルアセトン49.99g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)2g、界面活性剤0.01gを混合し、120℃に加温しながら90分間攪拌して均一になるまで良く溶解し、アセチルアセトンアルミニウムとヒドロキシプロピルセルロースを含有する溶解液(B液)を作製した。
[塗布液の作製]
作製したA液9.5gとB液0.5gを均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトン亜鉛とアセチルアセトンアルミニウムを合計で10重量%、ヒドロキシプロピルセルロースを2重量%含有する透明導電膜形成用塗布液(アセチルアセトン亜鉛:アセチルアセトンアルミニウム=95.9:4.1[モル比])を作製した。
[透明導電膜の作製]
この透明導電膜形成用塗布液を、25℃のソーダライムガラス基板(10cm×10cm×厚み3mm;ヘイズ値=0.26%、可視光透過率=91.1%)上の全面にスピンコーティング(250rpm×60sec)した後、熱風乾燥機を用いて180℃で10分間乾燥して乾燥塗布膜3(膜厚:約560nm、表面抵抗値:>1×1013Ω/□(絶縁)(オーム・パー・スクエアと読む))を得た。この乾燥塗布膜を有する基板を、図2の模式図に示すように、更にホットプレートを用いて、露点温度が−60℃の低湿度空気雰囲気(1リッター/分供給;基板2上のガスの平均流速:約0.015m/秒)において、500℃まで50分かけて昇温(昇温速度:10℃/分)し、露点温度−60℃の空気中で500℃で15分間加熱処理し、引き続いて、還元性雰囲気下での加熱処理として、そのまま雰囲気を1%水素−99%窒素(1リッター/分供給;基板2上のガスの平均流速:約0.015m/秒)に切り替えて500℃で更に15分間加熱処理を行なって、ドーパント用の酸化アルミニウム(AlO1.5)を含んだ酸化亜鉛(ZnO)(すなわちAZO)を主成分とする実施例1に係る透明導電膜を作製した。
次に、作製した透明導電膜の可視光線透過率は92.7%、ヘイズ値は1.0%、表面抵抗値は20kΩ/□(キロオーム・パー・スクエアと読む)、膜厚は約240nmで、結晶子サイズは28nm、鉛筆硬度は3Hであった。
なお、実施例1の透明導電膜の断面を透過電子顕微鏡で観察したところ、導電性酸化物微粒子が緻密に充填した導電性酸化物微粒子層が観察されている。
透明導電膜の表面抵抗は、三菱化学株式会社製の表面抵抗計:ロレスタAP(MCP−T400)を用い測定した。
ヘイズ値と可視光透過率は、日本電色株式会社製のヘイズメーター:(NDH5000)を用い、ヘイズ値をJIS K7136、透過率をJIS K7361−1に基づいて測定した。
膜厚は、KLA−TencorCorporation製触針式膜厚計(Alpha−StepIQ)を用いて測定した。
結晶子サイズは、X線回折測定を行い、酸化亜鉛(ZnO)の(101)ピークについて、Scherrer法により求めた。
鉛筆硬度は、JIS K5400に基づいて測定した。
なお、可視光透過率及びヘイズ値は、透明導電膜だけの値であり、それぞれ下記数1及び数2により求めた。
Figure 2012015103
Figure 2012015103
[透明導電膜の作製]
透明導電膜の作製は、まず、実施例1の透明導電膜形成用塗布液を、25℃のソーダライムガラス基板(10cm×10cm×厚み3mm;ヘイズ値=0.26%、可視光透過率=91.1%)上の全面にスピンコーティング(500rpm×60sec)した後、大気中180℃で10分間乾燥して乾燥塗布膜3(膜厚:約560nm、表面抵抗値:>1×1013Ω/□(絶縁)(オーム・パー・スクエアと読む))を得た。この乾燥塗布膜を有する基板を、図3の模式図に示すように、露点温度−40℃の空気中150℃に昇温(昇温速度:30℃/分)し、露点温度−40℃の低湿度空気を紫外線照射窓5(合成石英板;厚さ2mm)と基板2との間に供給しながら150℃に加熱したままで低圧水銀ランプ4を10分間照射する加熱エネルギー線照射を施して乾燥塗布膜3の無機化(有機成分の分解または燃焼)と緻密化を促進(この段階での膜厚:約180nm)した。なお、低圧水銀ランプ4と基板2との距離(照射距離)は10.5mmで、254nmの光の照度:約20mW/cm、185nmの光の推定照度:約5mW/cmであった。更に、基板2と紫外線照射窓5の間隔は3.5mmでその間を流れる雰囲気ガス(露点温度−40℃の低湿度空気)の平均流速は約0.29m/秒)であった。
次に、図2の模式図に示すように、エネルギー線照射を行なわずに露点温度−40℃の低湿度空気中での加熱処理として、500℃で15分間(3リッター/分供給;基板2上のガスの平均流速:約0.045m/秒)、引き続いて、還元性雰囲気下での加熱処理として、1%水素−99%窒素(3リッター/分供給;基板2上のガスの平均流速:約0.045m/秒)下で500℃で15分間加熱処理を行なってドーパントの酸化アルミニウム(AlO1.5)を含んだ酸化亜鉛(ZnO)(すなわちAZO)を主成分とする実施例2に係る透明導電膜を作製した。
次に、作製した透明導電膜の可視光線透過率は96.3%、ヘイズ値は0.53%、表面抵抗値は9.8kΩ/□(キロオーム・パー・スクエアと読む)、膜厚は約140nmで、結晶子サイズは59nm、鉛筆硬度は5H以上であった。
なお、実施例2の透明導電膜の断面を透過電子顕微鏡で観察したところ、導電性酸化物微粒子が緻密に充填した導電性酸化物微粒子層が観察されている。
[塗布液の作製]
アセチルアセトン亜鉛(正式名称:亜鉛−2,4−ペンタンジオネート)[Zn(C](分子量=263.59)9.7g、アセチルアセトンガリウム(正式名称:ガリウム−2,4−ペンタンジオネート)[Ga(C](分子量=367.05)0.3g、γ−ブチロラクトン49.99g、アセチルアセトン39g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)1g、界面活性剤0.01gを混合し、120℃に加温しながら180分間攪拌して均一になるまで良く溶解し、アセチルアセトン亜鉛とアセチルアセトンガリウムを合計で10重量%、ヒドロキシプロピルセルロースを1重量%含有する透明導電膜形成用塗布液(アセチルアセトン亜鉛:アセチルアセトンガリウム=97.8:2.2[モル比])を作製した。
[透明導電膜の作製]
透明導電膜の作製は、この透明導電膜形成用塗布液を、25℃の無アルカリガラス基板(5cm×5cm×厚み0.7mm;ヘイズ値=0.26%、可視光透過率=91.2%)上の全面にスピンコーティング(500rpm×30sec)した後、大気中100℃で5分間乾燥して乾燥塗布膜3(膜厚:約370nm、表面抵抗値:>1×1013Ω/□(絶縁)(オーム・パー・スクエアと読む))を得た。この乾燥塗布膜を有する基板を、図3の模式図に示すように、露点温度−55℃の空気中120℃に昇温(昇温速度:40℃/分)し、露点温度−55℃の低湿度空気を紫外線照射窓5(合成石英板;厚さ2mm)と基板2との間に供給しながら120℃に加熱したままで低圧水銀ランプ4を10分間照射する加熱エネルギー線照射を施して乾燥塗布膜3の無機化(有機成分の分解または燃焼)と緻密化を促進(この段階での膜厚:約125nm、表面抵抗値:5×10Ω/□)した。なお、低圧水銀ランプ4と基板2との距離(照射距離)は10.5mmで、254nmの光の照度:約20mW/cm、185nmの光の推定照度:約5mW/cmであった。更に、基板2と紫外線照射窓5の間隔は3.5mmでその間を流れる雰囲気ガス(露点温度−55℃の低湿度空気)の平均流速は約0.29m/秒)であった。
次に、図2の模式図に示すように、エネルギー線照射を行なわずに露点温度−55℃の低湿度空気中での加熱処理として、500℃で15分間(5リッター/分供給;基板2上のガスの平均流速:約0.075m/秒)、引き続いて、還元性雰囲気下での加熱処理として、3%水素−97%窒素(5 リッター/分供給;基板2上のガスの平均流速:約0.075m/秒)下で500℃で15分間加熱処理を行なってドーパントの酸化ガリウム(GaO1.5)を含んだ酸化亜鉛(ZnO)(すなわちGZO)を主成分とする実施例3に係る透明導電膜を作製した。
次に、作製した透明導電膜の可視光線透過率は96.5%、ヘイズ値は0.24%、表面抵抗値は13kΩ/□(キロオーム・パー・スクエアと読む)、膜厚は約115nmで、結晶子サイズは62nm、鉛筆硬度は5H以上であった。
なお、実施例3の透明導電膜の断面を透過電子顕微鏡で観察したところ、導電性酸化物微粒子が緻密に充填した導電性酸化物微粒子層が観察されている。
[塗布液の作製]
アセチルアセトン亜鉛(正式名称:亜鉛−2,4−ペンタンジオネート)[Zn(C](分子量=263.59)9.5g、アセチルアセトンインジウム(正式名称:トリス(アセチルアセトナト)インジウム)[In(C](分子量=412.15)0.5g、γ−ブチロラクトン49.99g、アセチルアセトン39g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)1g、界面活性剤0.01gを混合し、120℃に加温しながら180分間攪拌して均一になるまで良く溶解し、アセチルアセトン亜鉛とアセチルアセトンインジウムを合計で10重量%、ヒドロキシプロピルセルロースを1重量%含有する透明導電膜形成用塗布液(アセチルアセトン亜鉛:アセチルアセトンインジウム=96.7:3.3[モル比])を作製した。
[透明導電膜の作製]
透明導電膜の作製は、この透明導電膜形成用塗布液を、25℃の無アルカリガラス基板(5cm×5cm×厚み0.7mm;ヘイズ値=0.26%、可視光透過率=91.2%)上の全面にスピンコーティング(500rpm×30sec)した後、大気中100℃で5分間乾燥して乾燥塗布膜3(膜厚:約340nm、表面抵抗値:>1×1013Ω/□(絶縁)(オーム・パー・スクエアと読む))を得た。この乾燥塗布膜を有する基板を、図3の模式図に示すように、露点温度−55℃の空気中120℃に昇温(昇温速度:40℃/分)し、露点温度−55℃の低湿度空気を紫外線照射窓5(合成石英板;厚さ2mm)と基板2との間に供給しながら120℃に加熱したままで低圧水銀ランプ4を10分間照射する加熱エネルギー線照射を施して乾燥塗布膜3の無機化(有機成分の分解または燃焼)と緻密化を促進(この段階での膜厚:約120nm、表面抵抗値:6×10Ω/□)した。なお、低圧水銀ランプ4と基板2との距離(照射距離)は10.5mmで、254nmの光の照度:約20mW/cm、185nmの光の推定照度:約5mW/cmであった。更に、基板2と紫外線照射窓5の間隔は3.5mmでその間を流れる雰囲気ガス(露点温度−55℃の低湿度空気)の平均流速は約0.29m/秒)であった。
次に、図2の模式図に示すように、エネルギー線照射を行なわずに露点温度−55℃の低湿度空気中での加熱処理として、500℃で15分間(5リッター/分供給;基板2上のガスの平均流速:約0.075m/秒)、引き続いて、還元性雰囲気下での加熱処理として、3%水素−97%窒素(5リッター/分供給;基板2上のガスの平均流速:約0.075m/秒)下で500℃で15分間加熱処理を行なってドーパントの酸化インジウム(InO1.5)を含んだ酸化亜鉛(ZnO)を主成分とする実施例4に係る透明導電膜を作製した。
次に、作製した透明導電膜の可視光線透過率は96.8%、ヘイズ値は0.24%、表面抵抗値は15kΩ/□(キロオーム・パー・スクエアと読む)、膜厚は約110μmで、結晶子サイズは55nm、鉛筆硬度は5H以上であった。
なお、実施例4の透明導電膜の断面を透過電子顕微鏡で観察したところ、導電性酸化物微粒子が緻密に充填した導電性酸化物微粒子層が観察されている。
[塗布液の作製]
アセチルアセトン亜鉛(正式名称:亜鉛−2,4−ペンタンジオネート)[Zn(C](分子量=263.59)9.5g、アセチルアセトンインジウム(正式名称:トリス(アセチルアセトナト)インジウム)[In(C](分子量=412.15)0.5g、γ−ブチロラクトン88.98g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)1g、界面活性剤0.02gを混合し、120℃に加温しながら180分間攪拌して均一になるまで良く溶解し、アセチルアセトン亜鉛とアセチルアセトンインジウムを合計で10重量%、ヒドロキシプロピルセルロースを1重量%含有する透明導電膜形成用塗布液(アセチルアセトン亜鉛:アセチルアセトンインジウム=96.7:3.3[モル比])を作製した。
[透明導電膜の作製]
透明導電膜の作製は、この透明導電膜形成用塗布液を、25℃の無アルカリガラス基板(5cm×5cm×厚み0.7mm;ヘイズ値=0.26%、可視光透過率=91.2%)上の全面にスピンコーティング(500rpm×30sec)した後、大気中100℃で5分間乾燥して乾燥塗布膜3(膜厚:約320nm、表面抵抗値:>1×1013Ω/□(絶縁)(オーム・パー・スクエアと読む))を得た。この乾燥塗布膜を有する基板を、図3の模式図に示すように、露点温度−55℃の空気中120℃に昇温(昇温速度:40℃/分)し、露点温度−55℃の低湿度空気を紫外線照射窓5(合成石英板;厚さ2mm)と基板2との間に供給しながら120℃に加熱したままで低圧水銀ランプ4を10分間照射する加熱エネルギー線照射を施して乾燥塗布膜3の無機化(有機成分の分解または燃焼)と緻密化を促進(この段階での膜厚:約115nm、表面抵抗値:6×10Ω/□)した。なお、低圧水銀ランプ4と基板2との距離(照射距離)は10.5mmで、254nmの光の照度:約20mW/cm、185nmの光の推定照度:約5mW/cmであった。更に、基板2と紫外線照射窓5の間隔は3.5mmでその間を流れる雰囲気ガス(露点温度−55℃の低湿度空気)の平均流速は約0.29m/秒)であった。
次に、図2の模式図に示すように、エネルギー線照射を行なわずに露点温度−55℃の低湿度空気中での加熱処理として、500℃で15分間(5リッター/分供給;基板2上のガスの平均流速:約0.075m/秒)、引き続いて、還元性雰囲気下での加熱処理として、3%水素−97%窒素(5 リッター/分供給;基板2上のガスの平均流速:約0.075m/秒)下で500℃で15分間加熱処理を行なってドーパントの酸化インジウム(InO1.5)を含んだ酸化亜鉛(ZnO)を主成分とする実施例5に係る透明導電膜を作製した。
次に、作製した透明導電膜の可視光線透過率は95.8%、ヘイズ値は0.22%、表面抵抗値は16kΩ/□(キロオーム・パー・スクエアと読む)、膜厚は約105μmで、結晶子サイズは52nm、鉛筆硬度は5H以上であった。
なお、実施例5の透明導電膜の断面を透過電子顕微鏡で観察したところ、導電性酸化物微粒子が緻密に充填した導電性酸化物微粒子層が観察されている。
本発明による透明導電膜形成用塗布液は、基板上への膜形成に際して安価な各種塗布方法を使用することが可能であり、得られる酸化亜鉛を主成分とする安価な透明導電膜は、優れた透明性と高い導電性を有するため、タッチパネル、タッチセンサ、液晶素子、無機EL素子、有機EL素子、電子ペーパー等の透明電極等への利用が期待できる。
1 加熱装置(ホットプレート等)
2 基板
3 塗布法により形成された透明導電膜形成用塗布液の乾燥塗布膜
4 低圧水銀ランプ(エネルギー線照射ランプ、紫外線照射ランプ)
5 紫外線照射窓(合成石英板等)

Claims (8)

  1. 少なくとも有機亜鉛化合物及び溶剤を含有する透明導電膜形成用塗布液であって、
    前記有機亜鉛化合物を1〜30重量%含み、
    前記溶剤は、γ−ブチロラクトン又はγ−ブチロラクトンとアセチルアセトン(2、4−ペンタンジオン)を含有することを特徴とする透明導電膜形成用塗布液。
  2. 少なくとも有機亜鉛化合物、ドーパント用有機金属化合物、及び溶剤を含有する透明導電膜形成用塗布液であって、
    前記有機亜鉛化合物とドーパント用有機金属化合物を合計で1〜30重量%含み、
    前記溶剤は、γ−ブチロラクトン又はγ−ブチロラクトンとアセチルアセトン(2、4−ペンタンジオン)を含有することを特徴とする透明導電膜形成用塗布液。
  3. 前記有機亜鉛化合物とドーパント用有機金属化合物の含有割合が、有機亜鉛化合物:ドーパント用有機金属化合物のモル比で、99.9:0.1〜87:13であることを特徴とする請求項2に記載の透明導電膜形成用塗布液。
  4. 前記ドーパント用有機金属化合物が、有機アルミニウム化合物、有機ガリウム化合物、有機インジウム化合物、有機ホウ素化合物から選択する少なくとも1種類以上であることを特徴とする請求項2または3に記載の透明導電膜形成用塗布液。
  5. 前記有機亜鉛化合物が、アセチルアセトン亜鉛であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用塗布液。
  6. 前記透明導電膜形成用塗布液が、更にバインダーにセルロース誘導体、アクリル樹脂から選ばれる1種以上を5重量%以下含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用塗布液。
  7. 前記セルロース誘導体が、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項6に記載の透明導電膜形成用塗布液。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布、乾燥、加熱処理して得られる、主成分として酸化亜鉛からなることを特徴とする透明導電膜。
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