JP2009048986A - 透明導電膜形成用塗布液及び透明導電膜の製造方法並びに透明導電膜 - Google Patents

透明導電膜形成用塗布液及び透明導電膜の製造方法並びに透明導電膜 Download PDF

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雅也 行延
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【課題】 低コストかつ簡便なインク塗布法によって、優れた透明性と高い導電性を兼ね備え、かつ導電性の経時安定性に優れた透明導電膜を形成できる透明導電膜形成用塗布液を提供する。
【解決手段】 本発明に係る透明導電膜形成用塗布液は、少なくとも有機インジウム化合物、ドーパント用有機金属化合物として有機チタン化合物、有機ゲルマニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機タングステン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機タンタル化合物、有機ニオブ化合物、有機ハフニウム化合物、有機バナジウム化合物のいずれか一種以上、及び溶剤を含有する透明導電膜形成用塗布液であって、該有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物との合計含有量が1〜30重量%であることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、透明導電膜形成用塗布液及び透明導電膜に関するものである。さらに詳しくは、ガラスやセラミックス等の耐熱基板上に、透明性と導電性を兼ね備え、かつ導電性の経時安定性に優れた透明導電膜を形成することができる塗布液、及び該塗布液を用いた透明導電膜の製造方法、並びにそれにより形成された透明導電膜に関するものである。
液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンス、プラズマディスプレイ等の表示素子用透明電極、タッチパネル、太陽電池等の透明電極、熱線反射、電磁波シールド、帯電防止、防曇等の機能性コーティングに用いられる透明導電膜の形成材料として、錫ドープ酸化インジウム(Indium Tin Oxide、以下、「ITO」と表記する場合がある)が知られている。
ITO透明導電膜の製造方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着法等の物理的手法が広く用いられている。これらの方法は、透明性と導電性に優れた均一なITO透明導電膜を基板上に形成することができる。しかしながら、これに使用する膜形成装置は真空容器をベースとするため非常に高価であり、また基板成膜毎に製造装置内の成分ガス圧を精密に制御しなければならないため、製造コストと量産性に問題がある。
上記の問題を解決する製造方法として、インジウム化合物と錫化合物を溶剤に溶解させた透明導電膜形成用塗布液を用いて、基板上に塗布する方法(以下、「塗布法」と表記する場合がある)が検討されている。この方法では、透明導電膜形成用塗布液の基板上への塗布、乾燥、焼成という簡単な製造工程でITO透明導電膜が形成される。塗布液の基板上への塗布法としては、例えば、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサ印刷法、スリットコート法、ダイコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法等が挙げられる。
上記した塗布法では、インジウム化合物及び錫化合物を含む塗布液として従来種々の塗布液が開発されており、例えば、ハロゲンイオンまたはカルボキシル基を含む硝酸インジウムとアルキル硝酸錫の混合液が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、アルコキシル基などを含む有機インジウム化合物と有機錫化合物の混合物が知られている(例えば、特許文献2参照。)。また、硝酸インジウムと有機錫化合物の混合物が知られている(例えば、特許文献3参照。)。また、硝酸インジウム、硝酸錫等の無機化合物混合物が知られている(例えば、特許文献4参照。)。また、ジカルボン酸硝酸インジウムなどの有機硝酸インジウムとアルキル硝酸錫などの有機硝酸錫の混合物が知られている(例えば、特許文献5参照。)。また、アセチルアセトンを配位した有機インジウム錯体と錫錯体からなる上記と同様の有機化合物混合溶液が開示されている(例えば、特許文献6、特許文献7、特許文献8参照。)。これらの特許文献に見られるように、従来の塗布液の多くはインジウムや錫の硝酸塩、ハロゲン化物からなる有機または無機化合物、あるいは金属アルコキシドなどの有機金属化合物等が用いられている。
しかし、硝酸塩やハロゲン化物を用いた塗布液は、焼成時に窒素酸化物や塩素などの腐食性ガスが発生するため、設備腐食や環境汚染を生ずるといった問題がある。また金属アルコキシドを用いた塗布液では、原料が加水分解し易いため、塗布液の安定性に問題がある。また上記の特許文献に記載された有機金属化合物を用いた塗布液の多くは、基板に対する濡れ性が悪く、不均一膜が形成され易いといった問題もあった。
これらの問題点を改良した塗布液としてアセチルアセトンインジウム(正式名称:トリス(アセチルアセトナト)インジウム、[In(C])、アセチルアセトン錫(正式名称:ジ−n−ブトキシド ビス(2,4−ペンタンジオナト)錫、[Sn(C(C])、ヒドロキシプロピルセルロース、アルキルフェノール及び/又はアルケニルフェノールと二塩基酸エステル及び/又は酢酸ベンジルを含有する透明導電膜形成用塗布液が開示されている(例えば、特許文献9参照。)。この塗布液は、アセチルアセトンインジウム、アセチルアセトン錫の混合溶液にヒドロキシプロピルセルロースを含有させることによって塗布液の基板に対する濡れ性を改善すると同時に、粘性剤であるヒドロキシプロピルセルロースの含有量によって塗布液の粘度を調整し、スピンコート、スプレーコート、ディップコート、スクリーン印刷、ワイヤーバーコート等の各種塗布法の採用を可能にしている。
また、スピンコート用の改良塗布液として、アセチルアセトンインジウム、オクチル酸インジウム等の有機インジウム化合物と、アセチルアセトン錫、オクチル酸錫等の有機錫と、有機溶剤とを含み、その有機溶剤にアルキルフェノール及び/又はアルケニルフェノールを溶解したアセチルアセトン溶液、アルキルフェノール及び/又はアルケニルフェノールを溶解したアセチルアセトン溶液をアルコールで希釈した液を用いる透明導電膜形成用塗布液も開示されている(例えば、特許文献10参照。)。この塗布液は、低粘度であり、スピンコートのほかスプレーコート、ディップコートにも使用可能であるとされている。
しかしながら、上述した各種ITO透明導電膜形成用塗布液において、透明導電膜を形成した直後は表面抵抗値の低い膜が得られるものも多いが、例えば大気中に透明導電膜を放置すると次第に表面抵抗値が増大する問題が生じていた。特に、焼成温度が300〜350℃程度と低い場合に、この現象が顕著であった。この原因は必ずしも明らかではないが、得られる透明導電膜の膜構造が微細なITO微粒子からなる多孔質膜となり、そのITO微粒子同士の接点部分の抵抗値が増大していくものと推測される。したがって、前記したディスプレイ、タッチパネル、太陽電池等の透明電極として適用するためには、より導電性の経時安定性が良好な透明導電膜が形成できるような透明導電膜形成用の塗布液が要望されていた。
特開昭57−138708号公報 特開昭61−26679号公報 特開平4−255768号公報 特開昭57−36714号公報 特開昭57−212268号公報 特公昭63−25448号公報 特公平2−20706号公報 特公昭63−19046号公報 特開平6−203658号公報 特開平6−325637号公報
本発明の目的は、低コストかつ簡便な透明導電膜の製造方法であるインク塗布法によって、優れた透明性と高い導電性を兼ね備え、かつ導電性の経時安定性に優れた透明導電膜を得ることができる透明導電膜形成用塗布液、及びこの塗布液を用いて形成された透明導電膜を提供することにある。
上記の目的を達成するために、発明者らは有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物を溶剤に溶解させた透明導電膜形成用塗布液について鋭意研究を重ねた結果、ドーパント用有機金属化合物に少なくとも有機チタン化合物、有機ゲルマニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機タングステン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機タンタル化合物、有機ニオブ化合物、有機ハフニウム化合物、有機バナジウム化合物のいずれか一種以上を使用し、チタンドープ酸化インジウム(以下、「ITiO」と表記する場合がある)、ゲルマニウムドープ酸化インジウム(以下、「IGeO」と表記する場合がある)、亜鉛ドープ酸化インジウム(以下、「IZnO」と表記する場合がある)、タングステンドープ酸化インジウム(以下、「IWO」と表記する場合がある)、ジルコニウムドープ酸化インジウム(以下、「IZrO」と表記する場合がある)、タンタルドープ酸化インジウム(以下、「ITaO」と表記する場合がある)、ニオブドープ酸化インジウム(以下、「INbO」と表記する場合がある)、ハフニウムドープ酸化インジウム(以下、「IHfO」と表記する場合がある)、バナジウムドープ酸化インジウム(以下、「IVO」と表記する場合がある)を形成した場合に、目的とする、優れた透明性と高い導電性を兼ね備え、かつ導電性の経時安定性に優れた透明導電膜が得られることを見出し、本発明を完成したものである。
即ち、本発明に係る請求項1に記載の透明導電膜形成用塗布液は、少なくとも有機インジウム化合物、ドーパント用有機金属化合物として有機チタン化合物、有機ゲルマニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機タングステン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機タンタル化合物、有機ニオブ化合物、有機ハフニウム化合物、有機バナジウム化合物のいずれか一種以上、及び溶剤を含有する透明導電膜形成用塗布液であって、有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物との合計含有量が1〜30重量%であることを特徴とするものである。
また、本発明に係る請求項2に記載の透明導電膜形成用塗布液は、請求項1に記載の透明導電膜形成用塗布液を前提とし、前記有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物の合計含有量が5〜20重量%であることを特徴とし、更に、請求項3に記載の透明導電膜形成用塗布液は、請求項1又は2に記載の透明導電膜形成用塗布液を前提とし、前記有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物の含有割合が、有機インジウム化合物/ドーパント用有機金属化合物のモル比で100/0.1〜100/50であることを特徴とするものである。
また、本発明に係る請求項4に記載の透明導電膜形成用塗布液は、前記ドーパント用有機金属化合物としての有機チタン化合物、有機ゲルマニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機タングステン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機タンタル化合物、有機ニオブ化合物、有機ハフニウム化合物、有機バナジウム化合物が、それぞれの有機金属化合物中の金属元素からなる金属アセチルアセトン錯体及び/又は金属アルコキシドであることを特徴とし、更に、本発明に係る請求項5に記載の透明導電膜形成用塗布液は、請求項1〜3に記載の透明導電膜形成用塗布液を前提とし、前記有機インジウム化合物が、アセチルアセトンインジウムであることを特徴とするものである。
また、本発明に係る請求項6に記載の透明導電膜形成用塗布液は、請求項1〜5に記載の透明導電膜形成用塗布液を前提とし、前記透明導電膜形成用塗布液に、更にバインダーとしてセルロース誘導体及び/又はアクリル樹脂を5重量%以下含有することを特徴とし、更に、本発明に係る請求項7に記載の透明導電膜形成用塗布液は、請求項6に記載の透明導電膜形成用塗布液を前提とし、前記セルロース誘導体がエチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースであることを特徴とするものである。
また、本発明に係る請求項8に記載の透明導電膜形成用塗布液は、請求項1〜7に記載の透明導電膜形成用塗布液を前提とし、前記溶剤にアルキルフェノール及び/又はアルケニルフェノール、二塩基酸エステル及び/又は酢酸ベンジルを含有することを特徴とするものである。
次に、本発明に係る請求項9に記載の透明導電膜の製造方法は、請求項1〜8に記載の透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布、乾燥した後、300℃以上の温度で焼成することを特徴とするものである。
また、本発明に係る請求項10に記載の透明導電膜の製造方法は、請求項9に記載の透明導電膜形成用塗布液の基板上への塗布を、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサ印刷法、スリットコート法、ダイコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法のいずれかの方法で行うことを特徴とするものである。
更に、本発明に係る請求項11に記載の透明導電膜は、請求項9、10に記載の透明導電膜の製造方法で得られたことを特徴とするものである。
本発明に係る透明導電膜形成用塗布液は、少なくとも有機インジウム化合物、ドーパント用有機金属化合物としての有機チタン化合物、有機ゲルマニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機タングステン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機タンタル化合物、有機ニオブ化合物、有機ハフニウム化合物、有機バナジウム化合物のいずれか一種以上、及び溶剤を含有するものであり、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサ印刷法、スリットコート法、ダイコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法等の各種塗布方法に適した粘度と、優れた成膜性(印刷性)及び液安定性を有している。また、この塗布液を基板上に塗布、乾燥、焼成して得られる透明導電膜は優れた透明性と高い導電性を兼ね備え、かつ導電性の経時安定性に優れているため、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンス、プラズマディスプレイなどの各種ディスプレイ、タッチパネル、太陽電池等の透明電極等に適用することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明では、有機インジウム化合物、ドーパント用有機金属化合物、溶剤を含有する透明導電膜形成用塗布液において、ドーパント用有機金属化合物に有機チタン化合物、有機ゲルマニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機タングステン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機タンタル化合物、有機ニオブ化合物、有機ハフニウム化合物、有機バナジウム化合物のいずれか一種以上を適用することで、塗布、乾燥、焼成後に得られる透明導電膜の導電性の経時安定性の向上を図ったものである。
有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物の有機チタン化合物、有機ゲルマニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機タングステン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機タンタル化合物、有機ニオブ化合物、有機ハフニウム化合物、有機バナジウム化合物は、基板上に透明導電膜を形成させるための主たる化合物原料であり、その合計含有量は1〜30重量%の範囲であることが好ましく、更に好ましくは5〜20重量%とするのが良い。合計含有量が1重量%未満であると透明導電膜の膜厚が薄くなり十分な導電性が得られず、30重量%より多いと膜に亀裂(クラック)が発生して導電性が損なわれる。また、有機インジウム化合物とド−パント用有機金属化合物の有機チタン化合物、有機ゲルマニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機タングステン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機タンタル化合物、有機ニオブ化合物、有機ハフニウム化合物、有機バナジウム化合物の含有割合は、有機亜鉛化合物を除いて、有機インジウム化合物/ドーパント用有機金属化合物のモル比で100/0.1〜100/15が良く、好ましくは100/0.5〜100/5である。有機亜鉛化合物の場合は、有機インジウム化合物/ドーパント用有機金属化合物のモル比で100/5〜100/50が良く、好ましくは100/10〜100/40である。上記モル比外であるとキャリア密度が減少して透明導電膜の導電性が急激に悪化したり、大気放置した場合等に表面抵抗値の経時変化が大きくなったりするので好ましくない。
ドーパント用有機金属化合物の有機チタン化合物としては、例えば、チタンアセチルアセトン錯体としてのアセチルアセトンチタン(正式名称:チタンジ−n−ブトキシド ビス(2,4−ペンタンジオネート)[Ti(CO)(C] )、チタニル(IV)アセチルアセトネート[(C)4TiO]、チタンジイソプロポキシド ビス(2,4−ペンタンジオネート)[C1636Ti]等や、チタンアルコキシドとしてのチタンテトラエトキシド[Ti(CO)]、チタン(IV)−tert−ブトキシド[Ti(CO)]、チタンテトラ−n−ブトキシド[Ti(CO)]、チタンテトライソプロポキシド[Ti(CO)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、焼成時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機チタン化合物であれば良い。これらの中でも、アセチルアセトンチタン、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトライソプロポシドは、安価で入手し易いので好ましい。
ドーパント用有機金属化合物の有機ゲルマニウム化合物としては、例えば、ゲルマニウムアルコキシドとしてのゲルマニウムテトラエトキシド[Ge(CO)]、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド[Ge(CO)]、ゲルマニウムテトライソプロポキシド[Ge(CO)]等や、β−カルボキシエチルゲルマニウムオキシド[(GeCHCHCOOH)]、テトラエチルゲルマニウム[Ge(C]、テトラブチルゲルマニウム[Ge(C]、トリブチルゲルマニウム[Ge(C]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、焼成時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機ゲルマニウム化合物であれば良い。これらの中でも、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、ゲルマニウムテトライソプロポキシドは、比較的安価で入手し易いので好ましい。
ドーパント用有機金属化合物の有機亜鉛化合物としては、例えば、亜鉛アセチルアセトン錯体としてのアセチルアセトン亜鉛(正式名称:亜鉛−2,4−ペンタンジオネート)[Zn(C]、亜鉛−2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート[Zn(C1119]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、焼成時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機亜鉛化合物であれば良い。これらの中でも、アセチルアセトン亜鉛は、安価で入手し易いので好ましい。
ドーパント用有機金属化合物の有機タングステン化合物としては、例えば、タングステンアルコキシドとしてのタングステン(V)エトキシド[W(CO)]、タングステン(VI)エトキシド[W(CO)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、焼成時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機タングステン化合物であれば良い。
ドーパント用有機金属化合物の有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムアルコキシドとしてのジルコニウムエトキシド[Zr(CO)]、ジルコニウム−n−プロポキシド[Zr(CO)]、ジルコニウムイソプロポキシド[Zr(CO)]、ジルコニウム−n−ブトキシド[Zr(CO)]、ジルコニウム−tert−ブトキシド[Zr(CO)]、ジルコニウム−2−メチル−2−ブトキシド[Zr(C11O)]、ジルコニウム−2−メトキシメチル−2−プロポキシド[Zr(C11]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、焼成時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機ジルコニウム化合物であれば良い。これらの中でも、ジルコニウム−n−プロポキシド、ジルコニウム−n−ブトキシドは、比較的安価で入手し易いので好ましい。
ドーパント用有機金属化合物の有機タンタル化合物としては、例えば、タンタルアルコキシドとしてのタンタルメトキシド[Ta(CHO)]、タンタルエトキシド[Ta(CO)]、タンタルイソプロポキシド[Ta(CO)]、タンタル−n−ブトキシド[Ta(CO)]、テトラエトキシアセチルアセトナトタンタル[Ta(CO)(C)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、焼成時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機タンタル化合物であれば良い。
ドーパント用有機金属化合物の有機ニオブ化合物としては、例えば、ニオブアルコキシドとしてのニオブエトキシド[Nb(CO)]、ニオブ−n−ブトキシド[Nb(CO)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、焼成時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機ニオブ化合物であれば良い。
ドーパント用有機金属化合物の有機ハフニウム化合物としては、例えば、ハフニウムアルコキシドとしてのハフニウムエトキシド[Hf(CO)]、ハフニウム−n−ブトキシド[Hf(CO)]、ハフニウム−tert−ブトキシド[Hf(CO)]、ハフニウム(VI)イソプロポキドモノイソプロピレート[Hf(CO)(COH)]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、焼成時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機ハフニウム化合物であれば良い。これらの中でも、ハフニウム−n−ブトキシドは、比較的安価で入手し易いので好ましい。
ドーパント用有機金属化合物の有機バナジウム化合物としては、例えば、バナジウムアセチルアセトン錯体としてのバナジウムオキサイドビス−2,4−ペンタンジオネート[VO(C]、アセチルアセトンバナジウム(正式名称:バナジウム−2,4−ペンタンジオネート)[V(C]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、焼成時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機バナジウム化合物であれば良い
有機インジウム化合物としては、例えば、アセチルアセトンインジウム(正式名称:トリス(アセチルアセトナト)インジウム)[In(C]、2−エチルヘキサン酸インジウム、蟻酸インジウム、インジウムアルコキシド等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、焼成時において塩素ガスや窒素酸化物ガスなどの有害ガスが発生せずに酸化物に分解する有機インジウム化合物であれば良い。これらの中でもアセチルアセトンインジウムは有機溶剤への溶解性が高く、200〜250℃程度の温度で熱分解して酸化物となるため好ましい。
バインダーとしては、基板に対する濡れ性が改善されると同時に、塗布液の粘度調整を行うことができ、かつ焼成時において燃焼する材料であれば良い。このような材料として、セルロース誘導体、アクリル樹脂が有効である。
セルロース誘導体としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース 、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース 、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース 、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース、ニトロセルロース等が挙げられるが、これらの中でもヒドロキシプロピルセルロース(以下、「HPC」と表記する場合がある)が好ましい。HPCを用いれば、5重量%以下の含有量で十分な濡れ性が得られると同時に、大幅な粘度調整を行うことができる。またHPCの燃焼開始温度は300℃程度であり、焼成を300℃以上、好ましくは350℃以上の温度で行えば燃焼するので、生成する導電性粒子の粒成長を阻害せず、導電性が良好な透明導電膜を作製することができる。HPCの含有量が5重量%より多くなると、ゲル状になって塗布液中に残留し易くなり、多孔質の透明導電膜を形成して透明性や導電性が損なわれる。また、セルロース誘導体として、例えばHPCの代わりにエチルセルロースを用いた場合は、HPCを用いた場合よりも塗布液の粘度が低く設定できるが、高粘度塗布液が好適であるスクリーン印刷法等ではパターン印刷性が若干低下する。また、ニトロセルロースは、熱分解性は優れているが、焼成時において有害な窒素酸化物ガスの発生があり、焼成炉の劣化や排ガス処理に問題を生じる場合があるため、状況に応じて適宜選択する必要がある。
また、アクリル樹脂としては、比較的低温で燃焼するアクリル樹脂が好ましい。
溶剤としては、アセチルアセトンインジウム、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンバナジウム等のアセチルアセトン錯体を高濃度で溶解できるアルキルフェノール及び/又はアルケニルフェノールと二塩基酸エステル、あるいはアルキルフェノール及び/又はアルケニルフェノールと酢酸ベンジル、又はこれらの混合溶液を用いるのが好ましい。アルキルフェノール及びアルケニルフェノールとしては、クレゾール類、キシレノール、エチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、カシューナット殻液[3ペンタデカデシールフェノール]等が挙げられ、二塩基酸エステル(例えば二塩基酸ジメチル、二塩基酸ジエチル等)としては、コハク酸エステル、グルタル酸エステル、アジピン酸エステル、マロン酸エステル、フタル酸エステル等が挙げられる。
塗布液の粘度を低下させるために用いる溶剤としては、前記の有機インジウム化合物、有機チタン化合物、有機ゲルマニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機タングステン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機タンタル化合物、有機ニオブ化合物、有機ハフニウム化合物、有機バナジウム化合物、セルロース誘導体及び/又はアクリル樹脂を溶解させた溶液と相溶性があれば良く、例えば、メタノール(MA)、エタノール(EA)、1−プロパノール(NPA)、イソプロパノール(IPA)、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール(DAA)等のアルコール系溶剤、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル(MCS)、エチレングリコールモノエチルエーテル(ECS)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(IPC)、エチレングリコールモノブチルエーテル(BCS)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールエチルエーテル(PE)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGM−AC)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート(PE−AC)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール誘導体、トルエン、キシレン、メシチレン、ドデシルベンゼン等のベンゼン誘導体、トルエン、キシレン、メシチレン、ドデシルベンゼン等のベンゼン誘導体、ホルムアミド(FA)、N−メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、ミネラルスピリッツ、ターピネオール等の中から適宜選択できるが、これらの中でも、塗布液の安定性や成膜性を考慮すると、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)等が好ましい。
本発明の透明導電膜形成用塗布液は、前記の有機インジウム化合物、ドーパント用有機金属化合物の有機チタン化合物、有機ゲルマニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機タングステン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機タンタル化合物、有機ニオブ化合物、有機ハフニウム化合物、有機バナジウム化合物のいずれか一種以上、必要に応じてバインダーを加えた混合物を溶剤に加熱溶解させることによって製造することができる。加熱溶解は、加熱温度を60〜200℃とし、0.5〜12時間攪拌することにより行われる。加熱温度が60℃よりも低いと十分に溶解せず、アセチルアセトンインジウムの析出分離が起って塗布液の安定性が低下してしまい、200℃よりも高いと溶剤の蒸発が顕著となり塗布液の組成が変化してしまうので好ましくない。
本発明の透明導電膜形成用塗布液の粘度は、前記したバインダーの分子量や含有量、溶剤の種類によって調整することができるので、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサ印刷法、スリットコート法、ダイコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、スプレーコート法等の各種塗布法に対応することができる。
例えば、高粘度(5000〜50000mPa・s程度)の塗布液は、高分子量のバインダーを5重量%以下、好ましくは2〜4重量%含有させることで作製でき、低粘度(5〜500mPa・s程度)は、低分子量のバインダーを5重量%以下、好ましくは0.1〜2重量%含有させ、かつ低粘度の希釈用溶剤で希釈することで作製できる。また、中粘度(500〜5000mPa・s)の塗布液は、高粘度の塗布液と低粘度の塗布液を混合することで作製できる。
本発明の透明導電膜は、透明導電膜形成用塗布液を各種塗布方法で基板上に塗布した後、乾燥、焼成することにより製造される。乾燥は、塗布基板を80〜180℃の温度で10〜60分間保持して行われる。焼成は、乾燥させた塗布基板を300℃以上、好ましくは350℃以上の温度で15〜60分間保持して行われる。
得られる透明導電膜の導電性は、焼成温度が高いほど導電性微粒子の粒成長が促進されるので向上する。また、焼成時において、雰囲気を大気から窒素又は水素−窒素などの還元性雰囲気に途中で切り替えて焼成を行うと、導電性微粒子のキャリア密度が増加するので導電性の向上を図ることができる。
本発明は、従来のITO系に替えてITiO系、IGeO系、IZnO系、IWO系、IZrO系、ITaO系、INbO系、IHfO系、IVO系の透明導電膜形成用塗布液を用いることで、これを使用して形成される透明導電膜の導電性の経時安定性の向上を図ることに成功したものであり、低コストかつ簡便なインク塗布法によって優れた透明性と高い導電性を兼ね備え、かつ導電性の経時安定性に優れた透明導電膜を製造することができる。
[実施例]
以下、本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
アセチルアセトンインジウム [In(C](分子量=412.15)39.34g、アセチルアセトンチタン(正式名称:チタンジ−n−ブトキシド ビス(2,4−ペンタンジオネート)[Ti(CO)(C](分子量=320.29)0.66g、p−tert−ブチルフェノール28.00g、二塩基酸エステル(デュポンジャパン製)28.00g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)4.00gを混合し、130℃に加温して90分間攪拌して溶解させた。次に、得られた溶解液2.5g、シクロヘキサノン3.5g、メチルエチルケトン(MEK)4.0gを混合して均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとアセチルアセトンチタンを合計で10重量%、ヒドロキシプロピルセルロースを1重量%含有する実施例1に係る透明導電膜形成用塗布液を得た。
上記透明導電膜形成用塗布液を、予め37℃に加熱したソーダライムガラス基板(10cm×10cm×3mm厚さ)上の全面にスピンコーティング(200rpm×120sec)した後、180℃で20分間乾燥し、更に大気中350℃で30分間焼成し、そのまま雰囲気を2%水素−98%窒素に切替えて350℃で更に30分間焼成して実施例1に係る透明導電膜を得た。
大気中350℃で40分間焼成し、そのまま雰囲気を2%水素−98%窒素に切替えて350℃で更に20分間焼成した以外は実施例1と同様に行い、実施例2に係る透明導電膜を得た。
アセチルアセトンインジウム[In(C](分子量=412.15)40.00g、p−tert−ブチルフェノール28.00g、二塩基酸エステル(デュポンジャパン製)28.00g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)4.00gを混合し、130℃に加温して90分間攪拌して溶解させた。次に、得られた溶解液25g、シクロヘキサノン35g、メチルエチルケトン(MEK)40gを混合して均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとヒドロキシプロピルセルロースを含有する溶解液(A液)を得た。
チタンテトライソプロポキシド[Ti(CO)](分子量=284.26)10.00g、シクロヘキサノン89.00g、アクリル樹脂(三菱レイヨン製EMB−002)1.00gを混合し、80℃に加温して90分間攪拌し、チタンテトライソプロポキシドとアクリル樹脂を含有する溶解液(B液)を得た。
A液9.8gとB液0.2gを均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとチタンテトライソプロポキシドを合計で10重量%、ヒドロキシプロピルセルロースとアクリル樹脂を合計で1重量%含有する実施例3に係る透明導電膜形成用塗布液を得た。
上記透明導電膜形成用塗布液を、ソーダライムガラス基板(10cm×10cm×3mm厚さ)上の全面にスピンコーティング(250rpm×60sec)した後、180℃で20分間乾燥し、更に大気中400℃で30分間焼成し、そのまま雰囲気を2%水素−98%窒素に切替えて400℃で更に30分間焼成して実施例3に係る透明導電膜を得た。
ゲルマニウムテトライソプロポキシド[Ge(CO)](分子量=308.95)10.00g、シクロヘキサノン89.00g、アクリル樹脂(三菱レイヨン製EMB−002)1.00gを混合し、80℃に加温して90分間攪拌し、ゲルマニウムテトライソプロポキシドとアクリル樹脂を含有する溶解液(C液)を得た。
A液9.7gとC液0.3gを均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとゲルマニウムテトライソプロポキシドを合計で10重量%、ヒドロキシプロピルセルロースとアクリル樹脂を合計で1重量%含有する実施例4に係る透明導電膜形成用塗布液を得た。
上記透明導電膜形成用塗布液を用いた以外は実施例3と同様にして成膜を行い、実施例4に係る透明導電膜を得た。
アセチルアセトン亜鉛(正式名称:亜鉛−2,4−ペンタンジオネート)[Zn(C](分子量=263.59)10g、ブチルセロソルブ80g、p−tert−ブチルフェノール4.5g、二塩基酸エステル(デュポンジャパン製)4.5g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)1gを混合し、130℃に加温して90分間攪拌して溶解させ、アセチルアセトン亜鉛とヒドロキシプロピルセルロース含有する溶解液(D液)を得た。
A液8gとD液2gを混合して均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとアセチルアセトン亜鉛を合計で10重量%、ヒドロキシプロピルセルロースを1重量%含有する実施例5に係る透明導電膜形成用塗布液を得た。
上記透明導電膜形成用塗布液を、ソーダライムガラス基板(10cm×10cm×3mm厚さ)上の全面にスピンコーティング(250rpm×60sec)した後、180℃で20分間乾燥し、更に大気中350℃で30分間焼成し、そのまま雰囲気を2%水素−98%窒素に切替えて350℃で更に30分間焼成して実施例5に係る透明導電膜を得た。
タングステン(V)エトキシド[W(CO)](分子量=409.15)10g、シクロヘキサノン89g、アクリル樹脂(三菱レイヨン製EMB−002)1gを混合し、80℃に加温して90分間攪拌して溶解させ、タングステン(V)エトキシドとアクリル樹脂を含有する溶解液(E液)を得た。
A液9gとE液1gを混合して均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとタングステン(V)エトキシドを合計で10重量%、ヒドロキシプロピルセルロースとアクリル樹脂を合計で1重量%含有する実施例6に係る透明導電膜形成用塗布液を得た。
上記透明導電膜形成用塗布液を用いた以外は実施例5と同様にして成膜を行い、実施例6に係る透明導電膜を得た。
ジルコニウム−n−ブトキシド[Zr(CO)](分子量=383.68)10g、シクロヘキサノン89g、アクリル樹脂(三菱レイヨン製EMB−002)1gを混合し、80℃に加温して90分間攪拌して溶解させ、ジルコニウム−n−ブトキシドとアクリル樹脂を含有する溶解液(F液)を得た。
A液9.5gとF液0.5gを混合して均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとジルコニウム−n−ブトキシドを合計で10重量%、ヒドロキシプロピルセルロースとアクリル樹脂を合計で1重量%含有する実施例7に係る透明導電膜形成用塗布液を得た。
上記透明導電膜形成用塗布液を用いた以外は実施例5と同様にして成膜を行い、実施例7に係る透明導電膜を得た。
タンタル−n−ブトキシド[Ta(CO)](分子量=546.53)10g、シクロヘキサノン89g、アクリル樹脂(三菱レイヨン製EMB−002)1gを混合し、80℃に加温して90分間攪拌して溶解させ、タンタル−n−ブトキシドとアクリル樹脂を含有する溶解液(G液)を得た。
A液9.5gとG液0.5gを混合して均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとタンタル−n−ブトキシドを合計で10重量%、ヒドロキシプロピルセルロースとアクリル樹脂を合計で1重量%含有する実施例8に係る透明導電膜形成用塗布液を得た。
上記透明導電膜形成用塗布液を用いた以外は実施例5と同様にして成膜を行い、実施例8に係る透明導電膜を得た。
ニオブ−n−ブトキシド[Nb(CO)](分子量=458.12)10g、シクロヘキサノン89g、アクリル樹脂(三菱レイヨン製EMB−002)1gを混合し、80℃に加温して90分間攪拌して溶解させ、ニオブ−n−ブトキシドとアクリル樹脂を含有する溶解液(H液)を得た。
A液9.5gとH液0.5gを混合して均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとニオブ−n−ブトキシドを合計で10重量%、ヒドロキシプロピルセルロースとアクリル樹脂を合計で1重量%含有する実施例9に係る透明導電膜形成用塗布液を得た。
上記透明導電膜形成用塗布液を用いた以外は実施例5と同様にして成膜を行い、実施例9に係る透明導電膜を得た。
ハフニウム−n−ブトキシド[Hf(CO)](分子量=470.95)10g、シクロヘキサノン89g、アクリル樹脂(三菱レイヨン製EMB−002)1gを混合し、80℃に加温して90分間攪拌して溶解させ、ハフニウム−n−ブトキシドとアクリル樹脂を含有する溶解液(I液)を得た。
A液9.5gとI液0.5gを混合して均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとハフニウム−n−ブトキシドを合計で10重量%、ヒドロキシプロピルセルロースとアクリル樹脂を合計で1重量%含有する実施例10に係る透明導電膜形成用塗布液を得た。
上記透明導電膜形成用塗布液を用いた以外は実施例5と同様にして成膜を行い、実施例10に係る透明導電膜を得た。
アセチルアセトンバナジウム(正式名称:バナジウム−2,4−ペンタンジオネート)[V(C](分子量=348.26)10g、シクロヘキサノン89g、アクリル樹脂(三菱レイヨン製EMB−002)1gを混合し、80℃に加温して90分間攪拌して溶解させ、アセチルアセトンバナジウムとアクリル樹脂を含有する溶解液(J液)を得た。
A液9.95gとJ液0.05gを混合して均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとアセチルアセトンバナジウムを合計で10重量%、ヒドロキシプロピルセルロースとアクリル樹脂を合計で1重量%含有する実施例11に係る透明導電膜形成用塗布液を得た。
上記透明導電膜形成用塗布液を用いた以外は実施例5と同様にして成膜を行い、実施例11に係る透明導電膜を得た。
(比較例1)
アセチルアセトンインジウム[In(C](分子量=412.15)36.40g、アセチルアセトン錫(正式名称:ジ−n−ブトキシド ビス(2,4−ペンタンジオナト)錫[Sn(C(C](分子量=431.14)3.60g、p−tert−ブチルフェノール28.00g、二塩基酸エステル(デュポンジャパン製)28.00g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)4.00gを混合し、130℃に加温して90分間攪拌して溶解させた。次に、得られた溶解液25g、シクロヘキサノン35g、メチルエチルケトン(MEK)40gを混合して均一になるまで良く攪拌し、アセチルアセトンインジウムとアセチルアセトン錫を合計で10重量%、ヒドロキシプロピルセルロースを1重量%含有する比較例1に係る透明導電膜形成用塗布液を得た。
上記透明導電膜形成用塗布液を実施例1と同様にして成膜を行い、比較例1に係る透明導電膜を得た。
これら実施例1〜11及び比較例1の透明導電膜形成用塗布液中の含有量、ドーパント用有機金属化合物の配合割合を表1に示す。
[特性評価試験]
このようにして得られた実施例及び比較例に係る各透明導電膜について、その膜厚をKLA−TencorCorporation製触針式膜厚計(Alpha−StepIQ)により、表面抵抗値を三菱化学(株)製表面抵抗計ロレスタAP(MCP−T350)により、可視光線透過率とヘイズ値を村上色彩技術研究所製ヘイズメーター(HR−200)により測定した。
その結果を表面抵抗値の変化率((約14日間室内[温度:23〜25℃、相対湿度:50〜70%]に放置後の表面抵抗値)/(初期の表面抵抗値)の値である。14日間放置したところでの表面抵抗測定値がない場合はそこに一番近い時点の表面抵抗値を採用している(図1参照)。)と併せて表2に示す。
膜強度は、得られた透明導電膜をツメで擦って傷の具合を目視により観察し、ほとんど傷のないものを「○」、傷が多いものを「×」と評価した。
尚、上述の透明導電膜の透過率は透明導電膜だけの(可視光線)透過率であって、以下の様にして求められている。すなわち、

透明導電膜の透過率(%)
=[(透明導電膜付ガラス基板ごと測定した透過率 )/(ガラス基板の透過率)]×100

また、図1には、実施例及び比較例に係る各透明導電膜を温度23〜25℃、相対湿度50〜70%の室内に約2ヶ月放置した場合の表面抵抗値の経時変化を示す。

以上各実施例と各比較例を比べると明らかなように、各実施例の有機インジウム化合物としてアセチルアセトンインジウム、ドーパント用有機金属化合物としてチタンアセチルアセトン錯体、チタンアルコキシド、ゲルマニウムアルコキシド、亜鉛アセチルアセトン錯体、タングステンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、タンタルアルコキシド、ニオブアルコキシド、ハフニウムアルコキシド、バナジウムアセチルアセトン錯体のいずれか一種以上を含有する透明導電膜形成用塗布液を用いれば、350〜400℃という比較的低温の焼成温度でありながら、優れた透明性と高い導電性を兼ね備え、かつ導電性の経時安定性に優れた透明導電膜を形成することができるのに対して、比較例のアセチルアセトンインジウムとアセチルアセトン錫を含有する透明導電膜形成用塗布液を用いた場合には、優れた透明性と高い導電性を兼ね備えるものの、導電性の経時安定性が著しく悪いことがわかる。
本発明による透明導電膜形成用塗布液は、基板上への膜形成に際して安価な各種塗布方法を使用することが可能であり、得られる透明導電膜は、透明度を損なわずして導電性が向上し、かつ導電性の経時安定性に優れているので、各種ディスプレイにおける表示素子透明電極、タッチパネル、太陽電池の透明電極等への利用が期待できる。
本発明の実施例及び比較例における表面抵抗値の経時変化を示す図である。

Claims (11)

  1. 少なくとも有機インジウム化合物、ドーパント用有機金属化合物として有機チタン化合物、有機ゲルマニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機タングステン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機タンタル化合物、有機ニオブ化合物、有機ハフニウム化合物、有機バナジウム化合物のいずれか一種以上、及び溶剤を含有する透明導電膜形成用塗布液であって、該有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物との合計含有量が1〜30重量%であることを特徴とする透明導電膜形成用塗布液。
  2. 前記有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物の合計含有量が5〜20重量%であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜形成用塗布液。
  3. 前記有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物の含有割合が、有機インジウム化合物/ドーパント用有機金属化合物のモル比で100/0.1〜100/50であることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明導電膜形成用塗布液。
  4. 前記ドーパント用有機金属化合物としての有機チタン化合物、有機ゲルマニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機タングステン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機タンタル化合物、有機ニオブ化合物、有機ハフニウム化合物、有機バナジウム化合物が、それぞれの有機金属化合物中の金属元素からなる金属アセチルアセトン錯体及び/又は金属アルコキシドであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用塗布液。
  5. 前記有機インジウム化合物が、アセチルアセトンインジウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用塗布液。
  6. 前記透明導電膜形成用塗布液に、更にバインダーとしてセルロース誘導体及び/又はアクリル樹脂を5重量%以下含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用塗布液。
  7. 前記セルロース誘導体が、エチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースであることを特徴とする請求項6に記載の透明導電膜形成用塗布液。
  8. 前記溶剤に、アルキルフェノール及び/又はアルケニルフェノール、二塩基酸エステル及び/又は酢酸ベンジルを含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用塗布液。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布、乾燥した後、300℃以上の温度で焼成することを特徴とする透明導電膜の製造方法。
  10. 前記透明導電膜形成用塗布液の基板上への塗布を、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサ印刷法、スリットコート法、ダイコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法のいずれかの方法で行うことを特徴とする請求項9に記載の透明導電膜の製造方法。
  11. 請求項9又は10に記載の透明導電膜の製造方法で得られたことを特徴とする透明導電膜。
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