JP2003201106A - 金属酸化物系粒子の製造方法および金属酸化物膜の形成方法 - Google Patents

金属酸化物系粒子の製造方法および金属酸化物膜の形成方法

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JP2003201106A
JP2003201106A JP2002319123A JP2002319123A JP2003201106A JP 2003201106 A JP2003201106 A JP 2003201106A JP 2002319123 A JP2002319123 A JP 2002319123A JP 2002319123 A JP2002319123 A JP 2002319123A JP 2003201106 A JP2003201106 A JP 2003201106A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 2種以上の金属原子を含有する複合酸化物も
しくは固溶体酸化物の金属酸化物系粒子または金属酸化
物膜を得る場合に、それら含有金属原子の均一性が良好
な状態で、容易に且つ安定して得ることのできる、新規
な金属酸化物系粒子の製造方法および金属酸化物膜の形
成方法を提供する。 【解決手段】 本発明の第1の金属酸化物系粒子の製造
方法は、含有金属原子の異なる2種以上の金属カルボン
酸塩とアルコールとを出発原料として金属酸化物系粒子
を生成させる方法であって、前記2種以上の金属カルボ
ン酸塩の反応速度が実質的に同じとなる温度下で前記生
成を行うことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属酸化物系粒子
の製造方法および金属酸化物膜の形成方法に関する。詳
しくは、含有金属原子の異なる2種以上の金属カルボン
酸塩や金属アルコキシ基含有化合物を出発原料の一部に
用い、生成する金属酸化物が複合酸化物や固溶体酸化物
である、金属酸化物系粒子の製造方法または金属酸化物
膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】金属酸化物系粒子は、例えば、ゴム用加
硫促進助剤、各種塗料、印刷インキ、絵の具、ガラス、
触媒、医薬品、顔料、フェライト等の原料等に用いられ
ており、粒子径が0.1μm以下で、高い分散性を有す
る粒子が要求されている。従来より、金属酸化物系粒子
を得るための方法としては、金属塩を水溶液中で中和加
水分解して得られた水酸化物や炭酸塩を乾燥後に焼成す
る方法や金属アルコキシ基含有化合物をアルコール中で
加水分解する方法などに代表されるいわゆる湿式法、お
よび、金属蒸気を酸素雰囲気下で高温処理する方法や金
属塩の熱分解を利用する方法などに代表されるいわゆる
乾式法が知られている。
【0003】しかし、上記湿式法では、前駆体を高温で
焼成する必要があるため、粒子径の小さい、特に0.1
μm以下のナノサイズレベルの超微粒子を得ることは困
難であった。また、上記乾式法では、粒度分布のシャー
プなものを得ることは困難であった。そこで、これら湿
式法、乾式法での問題を解決する金属酸化物系粒子の製
造方法として、例えば、アルコール存在下で金属酢酸
塩を加熱する(金属酢酸塩とアルコールとを含む混合物
を加熱する)方法(例えば、特許文献1参照。)などが
知られている。また、同様の問題を解決するための別の
製造方法として、本発明者らは、金属アルコキシ基含
有化合物とカルボキシル基含有化合物とを含む混合物を
加熱するという方法を提案した(例えば、特許文献2参
照。)。
【0004】一方、金属酸化物を、基材等の表面に膜と
なるようにして形成し、各種機能性用途に利用すること
も提案されてきている。基材表面に金属酸化物の膜を形
成させる方法としては、具体的には、スパッタや真空
蒸着等の気相法により形成する方法、金属カルボン酸
塩溶液を基材表面に塗布して熱分解する等の熱分解法に
より形成する方法、一旦生成し物性的に安定した金属
酸化物粒子を基材表面に塗布して乾燥することにより形
成する方法、が知られている(例えば、特許文献3、特
許文献4、特許文献5および特許文献6参照。)。とこ
ろで、上記金属酸化物系粒子や金属酸化物膜を構成する
金属酸化物としては、該金属酸化物に含有している金属
原子が単一種である単一酸化物や、含有している金属原
子が複数種である複合酸化物および固溶体酸化物などの
分類がある。なかでも、後者の複合酸化物や固溶体酸化
物は、単一酸化物に比べて、種々の機能に優れているこ
とが知られている。すなわち、複合酸化物としての金属
酸化物は、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸ストロ
ンチウム等のペロブスカイト型酸化物に代表される圧電
性、焦電性、(反)強誘電性などの誘電体機能;亜鉛フ
ェライト、マンガンフェライト、ニッケルフェライトな
どのフェライトや、ZnFe24、LaCoO3、La
MnO3などのペロブスカイト型酸化物などに代表され
る強磁性体機能;強磁性と強誘電性を併せ持つBiFe
3(ペロブスカイト型酸化物)などに代表される強磁
性および強誘電性機能;La1.9Ba0.1CuO4、Nd
1.84Ce0.16CuO4などの銅酸化物に代表される超伝
導機能;MgIn24、CdSnO3、CdIn24
ZnIn24、InGaZnO4、In 4Sn312、C
uIn24、CuAlO2、SrCu22等の金属的ま
たは半導体的な導電機能;LaTiO3、BaVO3、C
aCrO3、SrFeO3、SrCoO3等のペロブスカ
イト型酸化物などの金属的または半導体的な導電機能;
三酸化セリウムストロンチウムのYb一部置換体のよう
なプロトン伝導機能;などの各種機能に優れたものであ
り、また、固溶体酸化物や複合酸化物としての金属酸化
物は、例えば、電子伝導機能(導電性)、光選択吸収機
能(例えば、赤外線の吸収機能)、蛍光機能、磁性機
能、光電変換機能、熱電変換機能などの各種機能に優れ
たものであることが従来から知られており、現在におい
てもその必要性および利用性は非常に高い。
【0005】しかしながら、これら複合酸化物や固溶体
酸化物としての金属酸化物から構成される粒子や膜を、
上記各種製造方法または形成方法により得ようとする
と、固溶体酸化物に関しては、添加金属元素の固溶率が
低かったり、結晶子内の添加金属元素の含有率分布が不
均一(例えば、粒子や膜の表面付近にしか含有されてい
ない等)であったり、各添加金属元素の単一酸化物の偏
析物が別途生成し純度が低下する、などの問題が生じ
る。また、複合酸化物に関しても、各添加金属元素の単
一酸化物の偏析物が別途生成し純度が低下する、などの
問題が生じる。なかでも、上記偏析物は、分離すること
が困難であるばかりか、粒子や膜の表面に存在して粒子
同士の2次凝集を引き起こしたり、電子的、光学的な機
能や物性を阻害する要因になるため、特に問題となって
いる。このように、上記各種製造方法または形成方法で
は、例えば、超微粒子状にサイズ制御され分散性にも優
れる複合酸化物粒子や固溶体酸化物粒子が得られたとし
ても、あるいは、基材表面に非常に薄く制御されて形成
され均一性にも優れる複合酸化物膜や固溶体酸化物膜が
得られたとしても、前述した様々な問題を有するため、
現在または将来において(オプト)エレクトロニクス産
業、エネルギー産業などで有用とされる、電子、光およ
び磁気などの機能・物性に優れたものが得られないとい
う問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2000−185916号公報
【0007】
【特許文献2】特願2001−170134号公報
【0008】
【特許文献3】特公平3−72011号公報
【0009】
【特許文献4】特開平5−339742号公報
【0010】
【特許文献5】特公平7−115888号公報
【0011】
【特許文献6】特開平9−161561号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明が解決
しようとする課題は、2種以上の金属原子を含有する複
合酸化物もしくは固溶体酸化物の金属酸化物系粒子また
は金属酸化物膜を得る場合に、それら含有金属原子の均
一性が良好な状態で、容易に且つ安定して得ることので
きる、新規な金属酸化物系粒子の製造方法および金属酸
化物膜の形成方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
解決するために鋭意検討した。その結果、前述した各種
方法により複合酸化物や固溶体酸化物から構成される粒
子や膜を得る場合に出発原料として使用する、含有金属
原子の異なる2種以上の金属カルボン酸塩または金属ア
ルコキシ基含有化合物に着目し、これらは、通常、その
種類によって金属酸化物生成の反応速度が各々異なる
が、実はこの反応速度の違いが前述した偏析物生成等の
種々の問題の要因となっているのではないかと考えた。
【0014】かかる知見に基づき、試行錯誤および検討
を繰り返した結果、前述した各種方法において、金属酸
化物を生成させる際の反応温度条件に着目すればよいの
ではないかと考えた。出発原料となる金属化合物が2種
以上ある場合に、それぞれの反応速度を一度に調整・制
御する方法としては、生成反応時の温度をコントロール
することが、簡便性、再現性および作用効果等の種々の
面で最も優れていると判断したからである。そして、上
記2種以上の金属化合物それぞれの反応速度が実質的に
同じになるような温度下で反応させるようにすれば、上
記課題を一挙に解決できることを見出し、これを確認し
て本発明を完成した。
【0015】すなわち、本発明にかかる第1の金属酸化
物系粒子の製造方法は、含有金属原子の異なる2種以上
の金属カルボン酸塩とアルコールとを出発原料として金
属酸化物系粒子を生成させる方法であって、前記2種以
上の金属カルボン酸塩の反応速度が実質的に同じとなる
温度下で前記生成を行うことを特徴とする。また、本発
明にかかる第2の金属酸化物系粒子の製造方法は、含有
金属原子の異なる2種以上の金属アルコキシ基含有化合
物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料として金属
酸化物系粒子を生成させる方法であって、前記2種以上
の金属アルコキシ基含有化合物の反応速度が実質的に同
じとなる温度下で前記生成を行うことを特徴とする。
【0016】また、本発明にかかる第1の金属酸化物膜
の形成方法は、含有金属原子の異なる2種以上の金属カ
ルボン酸塩とアルコールとを出発原料として生成する金
属酸化物を基材の表面に膜として定着させる、金属酸化
物膜の形成方法であって、前記2種以上の金属カルボン
酸塩の反応速度が実質的に同じとなる温度下で前記生成
を行うことを特徴とする。また、本発明にかかる第2の
金属酸化物膜の形成方法は、含有金属原子の異なる2種
以上の金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含
有化合物とを出発原料として生成する金属酸化物を基材
の表面に膜として定着させる、金属酸化物膜の形成方法
であって、前記2種以上の金属アルコキシ基含有化合物
の反応速度が実質的に同じとなる温度下で前記生成を行
うことを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明にかかる金属酸化物
系粒子の製造方法および金属酸化物膜の形成方法につい
て詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘
束されることはなく、以下の例示以外についても、本発
明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。な
お、以下、特に言及しない限り、本発明でいう金属酸化
物系粒子および金属酸化物膜とは、これらを構成する金
属酸化物が複合酸化物または固溶体酸化物である粒子お
よび膜のことをいうとする。2つの反応系、すなわち、
2つの出発原料系(A:金属カルボン酸塩−アルコー
ル、B:金属アルコキシ基含有化合物−カルボキシル基
含有化合物)において、2種以上の金属化合物(金属カ
ルボン酸塩、金属アルコキシ基含有化合物)の反応速度
を実質的に同じとなる温度に供し、2種以上の金属成分
からなる金属酸化物(粒子、膜)を得るための条件パラ
メータは、 1)前記したように、温度の設定にあるが、 2)特定温度で2つの金属化合物の反応速度が実質的に
同じとなるよう、金属化合物の組み合わせの選定、 3)同様に、反応のもう一つの原料成分:組み合わせA
ではアルコール、組み合わせBではカルボキシル基含有
化合物の選定 がある。したがって、2種以上の金属化合物の反応速度
を実質的に同じとなるよう、これら1)〜3)の少なく
ともいずれかのパラメータを選択、設定して、所望の金
属酸化物を得る製法は、全て本発明に含まれる。
【0018】しかし、2)、3)は、金属の種類によっ
て、好ましいその化合物種の組み合わせや、該組み合わ
せを反応のもう一つの原料成分:組み合わせAではアル
コール、組み合わせBではカルボキシル基含有化合物に
よっても代わるなど、一義的な具体的説明を本発明書で
記述するのは困難であるため、本発明の具体的説明にお
いては、本発明を総括的に説明しやすい点で、1)の温
度に着目した説明を行うものとする。本発明にかかる第
1の金属酸化物系粒子の製造方法(以下、第1の製造方
法と称することがある。)は、含有金属原子の異なる2
種以上の金属カルボン酸塩とアルコールとを出発原料と
して金属酸化物系粒子を生成させる方法であり、また、
本発明にかかる第2の金属酸化物系粒子の製造方法(以
下、第2の製造方法と称することがある。)は、含有金
属原子の異なる2種以上の金属アルコキシ基含有化合物
とカルボキシル基含有化合物とを出発原料として金属酸
化物系粒子を生成させる方法である。そして、第1およ
び第2のいずれの方法においても、金属酸化物系粒子の
出発原料である2種以上の金属塩(第1の製造方法では
金属カルボン酸塩、第2の製造方法では金属アルコキシ
基含有化合物)の反応速度がそれぞれ実質的に同じとな
る温度下(以下、特定の温度下と称することがある。)
で金属酸化物系粒子の生成を行うようにしている。好ま
しくは、第1の製造方法においても、第2の製造方法に
おいても、上記出発原料を混合すると同時かまたはその
後に、該混合系を、上記2種以上の金属塩の反応速度が
それぞれ実質的に同じとなるような高温状態の温度下に
する方法であり、このような過程を経て生成する金属酸
化物を粒子として得るようにする。
【0019】本発明では、出発原料となる特定の組み合
わせとして、第1の製造法では金属カルボン酸塩とアル
コール(以下、組み合わせAと称することがある。)、
または、第2の製造方法では金属アルコキシ基含有化合
物とカルボキシル基含有化合物(以下、組み合わせBと
称することがある。)を用いるようにしている。組み合
わせAにおける金属カルボン酸塩としては、具体的に
は、分子内にカルボキシル基の水素原子が金属原子で置
換された結合を少なくとも1つ有する化合物であり、カ
ルボキシル基としては、例えば、飽和モノカルボン酸、
不飽和モノカルボン酸、飽和多価カルボン酸、不飽和多
価カルボン酸などの鎖式カルボン酸;環式飽和カルボン
酸;芳香族モノカルボン酸、芳香族不飽和多価カルボン
酸などの芳香族カルボン酸;さらに分子内にヒドロキシ
ル基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、スルホン
基、シアノ基、ハロゲン原子等の官能基または原子団を
有する化合物などの金属塩;などを好ましく用いること
ができるが、特にこれらに限定はされるわけではない。
なかでも、下記一般式(I): M(O)(m-x-y-z)/2(OCOR)x(OH)y(OR’)z (I) (但し、Mはm価の金属原子;Rは、水素原子、置換基
があってもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリー
ル基およびアラルキル基から選ばれた少なくとも1種;
R’は、置換基があってもよいアルキル基、シクロアル
キル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた少
なくとも1種;m、x、yおよびzは、x+y+z≦
m、0<x≦m、0≦y<m、0≦z<mを満たす。)
で表される化合物のように上記した金属カルボン酸塩ま
たはカルボン酸残基の一部が水酸基やアルコキシ基で置
換されたものや、後述のカルボキシル基含有化合物の金
属塩や、塩基性酢酸塩などを好ましく挙げることができ
る。より具体的には、後述のカルボキシル基含有化合物
の金属塩の中の金属飽和カルボン酸塩や金属不飽和カル
ボン酸塩が挙げられ、例えば、上記一般式(I)で表さ
れる金属カルボン酸塩(金属酢酸塩や金属プロピオン酸
塩など)であり、金属(M)がZnである場合は金属酢
酸塩が好ましい場合もある。なお、上記金属カルボン酸
塩は、結晶水を含む金属カルボン酸塩の水和物であって
もよいが、無水物であってもよい。
【0020】上記金属カルボン酸塩に含まれる金属
(M)としては(一般式(I)中の金属元素(M)も含
む)、特に限定はされないが、具体的には、例えば、1
A族、2A族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A
族、8族、ランタノイド元素、アクチノイド元素、1B
族、2B族、3B族、4B族、5B族、6B族に含まれ
る金属元素を挙げることができ、これらの中でも、例え
ば、Sr、Ce、Y、Ti、V、Nb、Ta、Cr、M
n、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、O
s、Ir、Pt、Cu、Zn、Cd、Al、Ga、I
n、Ge、Sn、SbおよびLa等の金属元素が、本発
明においては好適である。これらは1種のみでも2種以
上併存していてもよい。金属カルボン酸塩としては、上
記列挙した以外に、シュウ酸バリウムチタニル等の複合
金属カルボン酸塩等も好適である。なお、本明細書にお
いては、周期表は、改訂5版「化学便覧(日本化学会
編)」(丸善株式会社より出版)に掲載されている「元
素の周期表(1993年)」を用い、族番号は亜族方式
により表記する。
【0021】組み合わせAにおけるアルコールとして
は、特に限定はないが、例えば、脂肪族1価アルコール
(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、
n−ブタノール、t−ブチルアルコール、ステアリルア
ルコール等)、脂肪族不飽和1価アルコール(アリルア
ルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール
等)、脂環式1価アルコール(シクロペンタノール、シ
クロヘキサノール等)、芳香族1価アルコール(ベンジ
ルアルコール、シンナミルアルコール、メチルフェニル
カルビノール等)、フェノール類(エチルフェノール、
オクチルフェノール、カテコール、キシレノール、グア
ヤコール、p−クミルフェノール、クレゾール、m−ク
レゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、ドデシル
フェノール、ナフトール、ノニルフェノール、フェノー
ル、ベンジルフェノール、p−メトキシエチルフェノー
ル等)、複素環式1価アルコール(フルフリルアルコー
ル等)等の1価アルコール類;アルキレングリコール
(エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメ
チレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−
ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8
−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ピナ
コール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコー
ル等)、脂環式グリコール(シクロペンタン−1,2−
ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロ
ヘキサン−1,4−ジオール等)、および、ポリオキシ
アルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリ
プロピレングリコール等)等のグリコール類;プロピレ
ングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコー
ルモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメ
チルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエ
ーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、エチレ
ングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール
モノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチ
ルエーテル、エチレングリコールモノアセテート等の上
記グリコール類のモノエーテルまたはモノエステル等の
誘導体;グリセリンやトリメチロールエタン等の3価ア
ルコール、エリスリトールやペンタエリスリトール等の
4価アルコール、リピトールやキシリトール等の5価ア
ルコール、ソルビトール等の6価アルコール等の3価以
上の多価アルコール、ヒドロベンゾイン、ベンズピナコ
ール、フタリルアルコール等の多価芳香族アルコール、
カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等の2価フェノ
ールや、ピロガロール、フロログルシン等の3価フェノ
ール等の多価フェノール、および、これら多価アルコー
ル類におけるOH基の一部(1〜(n−1)個(ただ
し、nは分子当たりのOH基の数))がエステル結合
またはエーテル結合となった誘導体;等を挙げることが
できる。
【0022】上記アルコールとしては、例えば、後述す
る金属錯体モノマーやその誘導体をより低い温度状態で
得やすく且つ金属カルボン酸塩と反応して後述する予備
反応物さらには金属酸化物を生成し易いアルコールが挙
げられる。また、アルコール性水酸基に関しては、より
低い温度状態で金属酸化物を得るために、3級、さらに
は2級、特に1級の水酸基を有するアルコールが好まし
い場合がある。同様の理由で、脂肪族アルコールも好ま
しい場合がある。第1の製造方法においては、上記出発
原料となる金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系と
は、該金属カルボン酸塩およびアルコールをそれぞれ少
なくとも一部ずつ混ぜ合わせた段階以降の系を意味す
る。本発明では、含有金属元素の異なる2種以上の金属
カルボン酸塩を用いるので、上記混合系は、これら2種
以上の金属カルボン酸塩の全てがそれぞれ少なくとも一
部ずつ混ぜ合わされた段階以降の系を意味することが好
ましい。この混合系の内部状態としては、金属カルボン
酸塩およびアルコールのいずれもが原料状態の化学構造
を変化させずに存在している状態であることに限らず、
例えば、金属カルボン酸塩およびアルコールの少なくと
も1つが溶解状態下で特有の化学構造に変化して存在し
ている状態であってもよいし、金属カルボン酸塩とアル
コールとがこれらの予備反応物となって存在している状
態であってもよく、すなわち、出発原料そのままの状態
から何れの状態に変化して存在していてもよい。
【0023】ここでいう予備反応物(以下、予備反応物
aと称することがある。)は、金属カルボン酸塩とアル
コールとから得られるものであって、金属カルボン酸塩
とアルコールとの反応による反応物として金属酸化物
(以下、金属酸化物Aと称することがある。)が生成さ
れるまでの任意の段階の状態の反応中間体であり、生成
される金属酸化物Aに対する前駆体(金属酸化物前駆
体)である。すなわち、予備反応物aは、出発原料とし
ての金属カルボン酸塩でもアルコールでもなく、両者の
反応物ではあるが、生成される金属酸化物Aでもない金
属酸化物前駆体である。なお、上述の金属酸化物Aが生
成されるまでの任意の段階の状態とは、用いた金属カル
ボン酸塩のうちの50重量%以上が粒径5nm以上の粒
子状の金属酸化物Aの生成が認められる前の状態をいう
とする。
【0024】また、上記予備反応物aは、例えば、アル
コールまたはアルコールを含む溶媒に金属カルボン酸塩
を溶解させるだけで直ちに得られる場合もあるが、好ま
しくは金属カルボン酸塩とアルコールとの混合と、緩や
かな昇温(金属酸化物Aが得られる高温状態にするより
も緩やかな条件下での昇温)と、好ましくは加圧下の加
熱とにより得られる。予備反応物aは溶液状態であるこ
とが好ましい。予備反応物aとしては、特に限定はされ
ないが、例えば、1)金属カルボン酸塩の金属原子に、
アルコールまたはアルコキシ基が配位(吸着による配位
も含む。)してなる金属錯体モノマー(この場合、カル
ボキシル基の一部がアルコールのアルコキシ基で置換さ
れた錯体も含まれる。)、2)金属カルボン酸塩が酸素
原子を介して「金属−酸素−金属」の結合が形成されて
なる縮合物に原料のカルボン酸基(−COO基)以外に
さらにアルコールまたはアルコキシ基が配位(吸着によ
る配位も含む。)してなる化合物(金属錯体モノマー誘
導体)、などが好ましく挙げられる。なかでも、1)で
いう金属錯体モノマーがより好ましく挙げられる。ま
た、上記金属錯体モノマーは、上述のような方法以外に
よっても得ることができる。上述の方法以外によって得
られた金属錯体モノマーを上記混合系にさらに加えて高
温状態にすることにより金属酸化物を得ることもでき
る。
【0025】出発原料となる上記金属カルボン酸塩とア
ルコールとの使用量に関しては、特に限定はないが、金
属カルボン酸塩の金属換算原子数に対するアルコール中
の(アルコール由来の)水酸基の数の比が、0.8〜1
000となるようにすることが好ましい。また、上記使
用量に関しては、金属カルボン酸塩の有するカルボキシ
ル基の総数に対するアルコール中の(アルコール由来
の)水酸基の総数の比が、0.8〜100となるように
することも好ましく、より好ましくは1〜50、さらに
好ましくは1〜20である。上記金属カルボン酸塩とア
ルコールとの混合系は、例えば、ペースト状、懸濁液
状、溶液状などの流動性のある液状であることが好まし
い。さらに、必要に応じて、後述する反応溶媒をも混合
することによって、上記液状としてもよい。通常、金属
カルボン酸塩は、特に限定はされないが、金属カルボン
酸塩とアルコールとの混合系においては、粒子状で分散
した状態、溶解した状態、または、一部が溶解した状態
で残りが粒子状で分散している状態、などの状態で存在
する。組み合わせBにおける金属アルコキシ基含有化合
物としては、特に限定はないが、例えば、下記一般式
(II): M’(ORan-mb m (II) (但し、M’は、金属原子;Raは、水素原子、置換さ
れていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アシル
基、アラルキル基、アリール基から選ばれた少なくとも
1種;Rbは、水素原子、置換されていてもよいアルキ
ル基、シクロアルキル基、アシル基、アラルキル基、ア
リール基、不飽和脂肪族残基、および、ORa基以外の
官能基を含む有機基から選ばれた少なくとも1種;nは
金属原子M’の価数;mは0〜n−1の範囲の整数であ
る。)で示される化合物、またはこの化合物を(部分)
加水分解・縮合してなる縮合物を挙げることができる。
【0026】一般式(II)中、Raとしては、水素原子
および/またはアルコキシアルキル基などの置換されて
いてもよいアルキル基が好ましく、より好ましくは置換
されていてもよいアルキル基である。また、Rbとして
は、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル
基、アシル基、アラルキル基、アリール基、不飽和脂肪
族残基、および、β−ジケトン化合物等のORa基以外
の官能基を含む有機基から選ばれた少なくとも1種であ
るものが好ましい。一般式(II)中、M’としては、上
記金属カルボン酸塩に含まれる金属元素(M)と同様の
ものを挙げることができ、好ましいものについても同様
であるが、その他、W、Mo、Siも好ましい。
【0027】一般式(II)中、m=1、2または3であ
る金属アルコキシ基含有化合物としては、例えば、各種
の有機ケイ素化合物(m=1、2または3)、チタネー
ト系カップリング剤(m=1、2または3)、アルミネ
ート系カップリング剤(m=1または2)等が例示され
る。有機ケイ素化合物としては、例えば、ビニルトリメ
トキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ
ス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセト
キシシラン等のビニル系シランカップリング剤;N−
(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメ
トキシシラン、3−N−フェニル−γ−アミノプロピル
トリメトキシシラン、N,N’−ビス〔3−(トリメト
キシシリル)プロピル〕エチレンジアミン等のアミノ系
シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリ
メトキシシラン、β−(3,4−エボキシシクロヘキシ
ル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ系シランカ
ップリング剤;3−クロロプロピルトリメトキシシラン
等のクロル系シランカップリング剤;3−メタクリロキ
シプロピルトリメトキシシラン等のメタクリロキシ系シ
ランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメト
キシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;N
−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキ
シシリル)−1−プロパンアミン等のケチミン系シラン
カップリング剤;N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)
エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩
酸塩等のカチオン系シランカップリング剤;メチルトリ
メトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、デシルト
リエトキシシラン、ヒドロキシエチルトリメトキシシラ
ン等のアルキル系シランカップリング剤;γ−ユレイド
プロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0028】チタネート系カップリング剤としては、例
えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、
イソプロピルトリオクタロイルチタネート、テトラオク
チルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テ
トライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタ
ネート、テトライソプロピルトリス(ジオクチルパイロ
ホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホ
スフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオ
クチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソ
プロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、
イソプロピトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チ
タネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1
−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネー
ト、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネ
ート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチ
タネート、および、イソプロピルトリクミルフェニルチ
タネート等を挙げることができる。
【0029】アルミネート系カップリング剤としては、
例えば、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトア
セテート、ジイソプロポキシアルミニウムアルキルアセ
トアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノメタ
クリレート、イソプロポキシアルミニウムアルキルアセ
アセテートモノ(ジオクチルホスフェート)、および、
環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート等を挙げ
ることができる。金属アルコキシ基含有化合物は、上記
で説明したもの以外であってもよく、単一金属のアルコ
キシ基含有化合物の他、例えば、バリウムチタンダブル
アルコキシド等のヘテロ金属アルコキシ基含有化合物で
あってもよい。なお、ヘテロ金属アルコキシ基含有化合
物とは、2個以上の異なる金属原子を有し、アルコキシ
基や酸素原子を介したり、金属−金属結合等によって結
ばれた金属アルコキシ基含有化合物のことである。ヘテ
ロ金属アルコキシ基含有化合物を用いた場合は、複合酸
化物からなる金属酸化物の粒子等を得ることができる。
【0030】結晶性の金属酸化物の粒子等を得る場合に
は、一般式(II)中、mが0である化合物を主成分とす
ることが最も好ましく、単一金属のアルコキシ基含有化
合物やヘテロ金属アルコキシ基含有化合物が挙げられ
る。また、第2の製造方法においては、出発原料となる
含有金属原子の異なる2種以上の金属アルコキシ基含有
化合物としては、上記ヘテロ金属アルコキシ基含有化合
物であってもよい。ヘテロ金属アルコキシ基含有化合物
の場合、アルコキシ基や酸素原子を介したり、金属−金
属結合等によって結ばれた、2種以上の金属アルコキシ
基含有化合物の組み合わせは、上に列挙した組み合わせ
と同様であることが好ましい。
【0031】組み合わせBにおけるカルボキシル基含有
化合物としては、分子内にカルボキシル基を少なくとも
1つ有する化合物であれば、特に限定はなく、例えば、
ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、カプロン酸、カ
プリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、
ステアリン酸等の飽和脂肪酸(飽和モノカルボン酸)、
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、
リノレン酸等の不飽和脂肪酸(不飽和モノカルボン
酸)、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、ス
ベリン酸、β,β−ジメチルグルタル酸等の飽和多価カ
ルボン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和多価カルボ
ン酸等の鎖式カルボン酸類、シクロヘキサンカルボン酸
等の環式飽和カルボン酸類、安息香酸、フェニル酢酸、
トルイル酸等の芳香族モノカルボン酸、フタル酸、イソ
フタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリッ
ト酸等の不飽和多価カルボン酸等の芳香族カルボン酸
類、無水酢酸、無水マレイン酸、ピロメリット酸無水物
等のカルボン酸無水物、トリフルオロ酢酸、o−クロロ
安息香酸、o−ニトロ安息香酸、 アントラニル酸、p
−アミノ安息香酸、アニス酸(p−メトキシ安息香
酸)、トルイル酸、乳酸、サリチル酸(o−ヒドロキシ
安息香酸)等の分子内にカルボキシル基以外のヒドロキ
シル基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、スルホン
酸基、シアノ基、ハロゲン原子等の官能基または原子団
を有する化合物、アクリル酸ホモポリマー、アクリル酸
−メタクリル酸メチル共重合体等、重合体原料として上
記不飽和カルボン酸を少なくとも1つ有する重合体を挙
げることができる。これらのカルボキシル基含有化合物
のなかでも、後述する金属錯体モノマーやその誘導体を
得やすく且つより低い温度状態で金属酸化物が得られ易
いという点でアルコールと反応して後述する予備反応物
さらには金属酸化物の形成をより低い温度で起こし易い
化合物が好ましく、水中(25℃、0.1モル/L)で
の酸解離定数pKaが4.5〜5であるものがより好ま
しく、具体的には、飽和カルボン酸が好ましく、さら
に、立体的にも反応性が高い点で酢酸が最も好ましい。
また、カルボキシル基含有化合物が液体の場合は、後述
の反応溶媒としても用いることもできる。
【0032】第2の製造方法においては、上記出発原料
となる金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含
有化合物との混合系とは、該金属アルコキシ基含有化合
物およびカルボキシル基含有化合物をそれぞれ少なくと
も一部ずつ混ぜ合わせた段階以降の系を意味する。本発
明では、含有金属元素の異なる2種以上の金属アルコキ
シ基含有化合物を用いるので、上記混合系は、これら2
種以上の金属アルコキシ基含有化合物の全てがそれぞれ
少なくとも一部ずつ混ぜ合わされた段階以降の系を意味
することが好ましい。この混合系の内部状態としては、
金属アルコキシ基含有化合物およびカルボキシル基含有
化合物のいずれもが原料状態の化学構造を変化させずに
存在している状態であることに限らず、例えば、金属ア
ルコキシ基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物
の少なくとも1つが溶解状態下で特有の化学構造に変化
して存在している状態であってもよいし、金属アルコキ
シ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とがこれら
の予備反応物となって存在している状態であってもよ
く、すなわち、出発原料そのままの状態から何れの状態
に変化して存在していてもよい。
【0033】ここでいう予備反応物(以下、予備反応物
bと称することがある。)は、金属アルコキシ基含有化
合物とカルボキシル基含有化合物とから得られるもので
あって、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基
含有化合物との反応による反応物として金属酸化物(以
下、金属酸化物Bと称することがある。)が生成される
までの任意の段階の状態の反応中間体であり、生成され
る金属酸化物Bに対する前駆体(金属酸化物前駆体)で
ある。すなわち、予備反応物bは、出発原料としての金
属アルコキシ基含有化合物でもカルボキシル基含有化合
物でもなく、両者の反応物ではあるが、生成される金属
酸化物Bでもない金属酸化物前駆体である。なお、上述
の金属酸化物Bが生成されるまでの任意の段階の状態と
は、用いた金属アルコキシ基含有化合物のうちの50重
量%以上が粒径5nm以上の粒子状の金属酸化物Bの生
成が認められる前の状態をいうとする。
【0034】また、上記予備反応物bは、例えば、カル
ボキシル基含有化合物またはカルボキシル基含有化合物
を含む溶媒に金属アルコキシ基含有化合物を溶解させる
だけで直ちに得られる場合もあるが、好ましくは金属ア
ルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との
混合と、緩やかな昇温(金属酸化物Bが得られる高温状
態にするよりも緩やかな条件下での昇温)と、好ましく
は加圧下での加熱とにより得られる。予備反応物bは溶
液状態であることが好ましい。予備反応物bとしては、
特に限定はされないが、例えば、1)金属アルコキシ基
含有化合物の金属原子に、カルボキシル基含有化合物が
−COOH基または−COO基を介して配位(吸着によ
る配位も含む。)してなる金属錯体モノマー(この場
合、アルコキシ基の一部がカルボキシ基で置換された錯
体も含まれる。)、2)金属アルコキシ基含有化合物が
酸素原子を介して「金属−酸素−金属」の結合が形成さ
れてなる縮合物に原料のアルコキシ基以外にさらにカル
ボキシル基含有化合物が配位(吸着による配位も含
む。)してなる化合物(金属錯体モノマー誘導体)、な
どが好ましく挙げられる。なかでも、1)でいう金属錯
体モノマーがより好ましく挙げられる。また、上記金属
錯体モノマーは、上述のような方法以外の方法によって
も得ることができる。上述の方法以外によって得られた
金属錯体モノマーをさらに加熱することにより金属酸化
物を得ることもできる。
【0035】出発原料となる金属アルコキシ基含有化合
物とカルボキシル基含有化合物との使用量に関しては、
それらの配合割合(カルボキシル基含有化合物/金属ア
ルコキシ基含有化合物)が、特に限定はされないが、金
属アルコキシ基含有化合物に含有されている金属原子M
の平均原子価数Navを用いて、好ましくは下限が0.
8Nav超、さらに好ましくは1.2Nav超であり、
また、好ましくは上限が10Nav未満である。ここ
で、平均原子価数Navは、金属アルコキシ基含有化合
物として、含有金属元素の異なるp種の金属アルコキシ
基含有化合物(含有金属元素がそれぞれM1、M2、M
3、・・・、Mpであるp種の金属アルコキシ基含有化
合物(2≦p))を併せて用いる場合、下記数式:
【0036】
【数1】
【0037】(数式中、Niは、金属Miの原子価(価
数)を表す。また、Xiは、金属アルコキシ基含有化合
物として用いた金属元素Miのモル数を表す。pは2以
上の整数である。)から算出することができる。また、
出発原料として用いたカルボキシル基含有化合物の総量
に含まれるカルボキシル基の数が、出発原料として用い
た金属アルコキシ基含有化合物の総量に含まれるアルコ
キシ基の数N’に対して、0.8N’超であることが好
ましく、1N’〜10N’が特に好ましい。なお、数値
範囲を表す際に、数値の後ろに「超」と付した場合は、
その数値を含まずそれより大きい数値範囲を示すものと
する。
【0038】金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシ
ル基含有化合物との混合系は、ペースト状、懸濁液状、
溶液状などの流動性のある液状であることが好ましい。
さらに、必要に応じて、後述する反応溶媒をも混合する
ことによって、上記液状としてもよい。通常、金属アル
コキシ基含有化合物は、特に限定はされないが、金属ア
ルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との
混合系においては、粒子状で分散した状態、溶解した状
態、または、一部が溶解した状態で残りが粒子状で分散
している状態、などの状態で存在する。第1の製造方法
により2種以上の金属カルボン酸塩とアルコールとを出
発原料として金属酸化物Aを得るか、または、第2の製
造方法により2種以上の金属アルコキシ基含有化合物と
カルボキシル基含有化合物とを出発原料として金属酸化
物Bを得るにあたっては、さらに反応溶媒を用いてもよ
い。具体的には、これら出発原料を混合するにあたり、
あるいは、これら出発原料の混合系を特定の高温状態に
するにあたり、さらに反応溶媒を加えた上で行うように
すればよい。
【0039】反応溶媒をも用いる場合、その使用量につ
いては、特に限定はないが、第1の製造方法により金属
酸化物Aを得る場合は、出発原料として用いた2種以上
の全ての金属カルボン酸塩とアルコールと反応溶媒との
合計使用量に対する、上記全ての金属カルボン酸塩の合
計使用量の割合が0.1〜50重量%となるようにする
ことが好ましい。同様に、第2の製造方法により金属酸
化物Bを得る場合は、出発原料として用いた2種以上の
全ての金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含
有化合物と反応溶媒との合計使用量に対する、上記全て
の金属アルコキシ基含有化合物の合計使用量の割合が
0.1〜50重量%となるようにすることが好ましい。
これによって、金属酸化物を経済的に得ることができ
る。
【0040】上記反応溶媒としては、水以外の溶媒、す
なわち、非水溶媒が好ましい。非水溶媒としては、例え
ば、エチルベンゼン、オクタン、キシレン類、シクロヘ
キサン、シクロヘキシルベンゼン、ジメチルナフタレ
ン、スチレン、ソルベントナフサ、デカリン、デカン、
テトラリン、ドデシルベンゼン、トルエン、メチルシク
ロヘキサン、メチルシクロペンタン、流動パラフィン等
の炭化水素;各種ハロゲン化炭化水素;アルコール(フ
ェノール類や、多価アルコールおよびその誘導体で水酸
基を有する化合物なども含む);アニソール、エピクロ
ロヒドリン、エポキシブタン、クラウンエーテル類、ジ
イソアミルエーテル、ジエチルアセタート、ジオキサ
ン、ジグリシジルエーテル、ジフェニルエーテル、ジブ
チルエーテル、ジベンジルエーテル、ジメチルエーテ
ル、メチル−t−ブチルエーテル等のエーテルおよびア
セタール;アセチルアセトン、アセトアルデヒド、アセ
トフェノン、アセトン、イソホロン、エチル−n−ブチ
ルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケト
ン、シクロヘキサノン、ジ−n−プロピルケトン、ホロ
ン、メシチルオキシド、メチル−n−アミルケトン、メ
チルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルシ
クロヘキサノン、メチル−n−ヘプチルケトン等のケト
ンおよびアルデヒド;アジピン酸ジエチル、アセチルク
エン酸トリエチル、アセト酢酸エチル、アビエチン酸メ
チル、安息香酸ベンジル、安息香酸メチル、イソ吉草酸
イソアミル、イソ吉草酸エチル、ギ酸プロピル、クエン
酸トリブチル、ケイ皮酸メチル、酢酸2−エチルヘキシ
ル、酢酸シクロヘキシル、酢酸n−ブチル、酢酸ベンジ
ル、酢酸メチル、酢酸メチルシクロヘキシル、サリチル
酸ベンジル、サリチル酸メチル、シュウ酸ジブチル、酒
石酸ジエチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチ
ル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、炭酸
ジフェニル、炭酸ジメチル、乳酸ブチル、乳酸メチル、
フタル酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、γ−ブチロラ
クトン、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ベンジル、
プロピオン酸メチル、ホウ酸エステル類、マレイン酸ジ
オクチル、マロン酸ジメチル、酪酸イソアミル、酪酸メ
チル、リン酸エステル類等のエステル;エチレンカーボ
ナート、プロピレンカーボネート、エチレングリコール
ジアセタート、エチレングリコールジエチルエーテル、
エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレング
リコールジブチルエーテル、エチレングリコールジメチ
ルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル
アセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルア
セタート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテ
ル、ジエチレングリコールジアセタート、ジプロピレン
グリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ
ブチルエーテル、ジエチレングリコールジベンゾエー
ト、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレ
ングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレ
ングリコールモノブチルエーテルアセタート、トリエチ
レングリコールジ−2−エチルブチラート、トリエチレ
ングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコー
ル脂肪酸ジエステル、両末端に水酸基を有しないポリ
(オキシエチレン−オキシプロピレン)誘導体等の多価
アルコール類のすべての水酸基の水素がアルキル基やア
シル基で置換された誘導体化合物;カルボン酸およびそ
の無水物や、シリコーン油、鉱物油等を挙げることがで
きる。反応溶媒としては、親水性溶媒が特に好ましい。
具体的には、常温(25℃)において、水を5重量%以
上含み溶液状態になり得る溶媒が好ましく、任意の量の
水を含み溶液状態になり得る溶媒がより好ましい。
【0041】上記アルコール(フェノールや、多価アル
コールおよびその誘導体で水酸基を有する化合物を含
む。以下、アルコールと示す場合は同様とする。)とし
ては、金属酸化物Aを得る場合に用いるアルコールとし
て列挙したものと同様のものを好ましく挙げることがで
きる。金属酸化物Bを得る場合は、反応溶媒としては、
特に、非水溶媒のうちでも、アルコール性またはフェノ
ール性水酸基を有しない非水溶媒である非アルコール性
有機溶媒が好ましく、これを用いた際の反応収率が高
い。非アルコール性有機溶媒としては、例えば、炭化水
素;ハロゲン化炭化水素; エーテルおよびアセター
ル;ケトンおよびアルデヒド;エステル;多価アルコー
ル類のすべての水酸基の水素がアルキル基やアセトキシ
基で置換された誘導体化合物;カルボン酸およびその無
水物や、シリコーン油、鉱物油等を挙げることができ
る。これらの非アルコール性有機溶媒のなかでも、エー
テルおよびアセタール;ケトンおよびアルデヒド;エス
テル;多価アルコール類のすべての水酸基の活性水素が
アルキル基やアセトキシ基で置換された誘導体化合物等
が好ましい。
【0042】以下、本発明の第1の製造方法について、
詳しく説明する。第1の製造方法は、上述したように、
含有金属原子の異なる2種以上の金属カルボン酸塩とア
ルコールとを出発原料として、これらの混合系を高温状
態にすることにより金属酸化物Aの粒子を生成させる方
法である。上記混合系を高温状態にするとは、上記混合
系の温度を常温よりも高い温度であって金属酸化物Aが
生成し得る温度、またはそれ以上の温度に昇温すること
である。これら出発原料の混合系は、非水溶媒等の反応
溶媒(但し、アルコールは除く)をさらに含むものであ
ってもよい。上記生成の際は、上記高温状態として、上
記2種以上の金属カルボン酸塩それぞれの反応速度が実
質的に同じとなる温度Thとなるようにすることが必要
であるが、金属酸化物の結晶が生成する時点での温度が
Thとなるようにすることが好ましく、さらに好ましく
は、金属酸化物の結晶核が析出し始める時点から結晶が
生成する時点までの間の温度をThにすることである。
【0043】ここで、上述の結晶核が析出し始める時点
とは、出発原料となる金属カルボン酸塩とアルコールと
の混合系を高温状態にした後(例えば、上記金属カルボ
ン酸塩とアルコールとを混合して加熱した後)に、目視
により析出による濁りが認められた時点をいうとする。
なお、混合後の時点で既に濁りが認められる場合であっ
ても、通常加熱により一旦透明化または半透明化するた
め、再度濁りが認められる時点または増す時点とすれば
よい。さらに、上述の結晶が生成する時点に関しては、
以下、のとおりである。 結晶の生成は、X線回折(XRD)学的または電子線
回折学的に結晶性の認められる粒子が存在することを条
件とする。具体的にいうと、金属酸化物系粒子の生成プ
ロセス中に(または生成プロセスを介した後に)サンプ
リングした反応液から遠心分離等によって生成させた粒
子を分離し、この分離した粒子をアセトンで洗浄して5
0℃で真空乾燥し、XRD(または電子線回折)で測定
したとき、含有金属元素がMaの金属酸化物結晶の回折
ピークのうち少なくとも1つのピークが観測されること
によって確認することができる。結晶の生成する時点
とは、生成プロセスの進行とともに随時サンプリングを
行い、上記で示した結晶の生成が最初に見られるサン
プリング時のことをいい、つまり、結晶が生成していな
い状態から生成した状態が確認された時点を結晶が生成
する時点とする。
【0044】加熱等により上記高温状態にした時の温度
が、温度Thでない場合、固溶体酸化物を得るにあたっ
ては、添加金属元素の固溶率の低い固溶体しか得られ
ず、偏析物として添加金属元素の単一酸化物が生成して
しまうこととなるおそれがあり、複合酸化物を得るにあ
たっては、含有金属元素が目的の組成となっている複合
酸化物が得られなかったり、たとえ得られても、少なく
とも1種以上の添加金属元素の単一酸化物との混合物と
して得られたりすることとなるおそれがある。上記温度
Thは、原料によって様々であり、特に限定されない
が、具体的には、例えば、金属酢酸塩とn−ブタノール
の場合、結晶性の高い粒子を得るためには、150℃以
上であることが好ましく、より好ましくは180℃以
上、さらに好ましくは200℃以上、特に好ましくは2
00〜300℃である。
【0045】上記温度Thの定義としては、使用する各
種金属カルボン酸塩をそれぞれ別々にアルコールとの混
合系を高温状態にした時に、いずれの金属カルボン酸塩
とアルコールとの混合系についての反応系であっても、
10分以内で結晶生成を起こし得る温度範囲内の温度で
あることが好ましく、この温度範囲は、用いる金属カル
ボン酸塩の種類や、用いるアルコールの種類に依存す
る。ここで、温度Thを判定するための手順を説明する
と、まず反応に使用する各種金属カルボン酸塩の中の1
種を、反応に使用するアルコールと混合し、この混合系
を加熱等により様々な温度に昇温した場合の、各温度下
における結晶生成の有無を確認する。結晶生成の有無
は、上述のように反応開始後(加熱開始後)10分以内
で結晶が生成されるか否かにより判断する。このような
操作により、上記1種の金属カルボン酸塩とアルコール
との反応について、結晶生成の温度依存性に関するデー
タが得られ、結晶生成し得る温度範囲が分かる。この操
作を他の金属カルボン酸塩各々についても行う。そし
て、各々の金属カルボン酸塩について結晶生成の温度依
存性に関するデータを得た後、結晶生成し得る温度範囲
を対比し、その結果、反応に使用する全ての金属カルボ
ン酸塩について結晶生成することのできる温度範囲が存
在すれば、その温度範囲を満たす温度が温度Thとな
る。
【0046】次に、温度Thを判定するためのより具体
的な方法として、任意の温度下において結晶生成を確認
する方法を以下に示す。すなわち、含有金属元素がMa
の金属カルボン酸塩を該金属カルボン酸塩の濃度が無水
物換算で50重量%となるようにアルコール(1)に懸
濁または溶解してなる混合系(常温)を得る。この混合
系をさらに温度T1のアルコール(2)と混合する。ア
ルコール(2)と混合する際は、得られる混合系におけ
る金属カルボン酸塩の濃度が金属酸化物換算で1重量%
となるようにする。その後、加熱等により混合系を温度
T2に昇温してから10分経過した後、50℃以下に冷
却する。冷却後の反応液について上述した方法により結
晶生成を確認する。なお、ここでは、アルコール(1)
およびアルコール(2)は同一であることが好ましく、
共に本発明の製造方法に使用するアルコールであること
がより好ましいが、特に限定はされない。また、温度T
1およびT2は、用いる金属カルボン酸塩やアルコール
の種類により適宜任意に設定すればよいが、温度T1は
温度T2以上であることが好ましい。
【0047】第1の製造方法においては、金属酸化物A
は、金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系を昇温し
て高温状態にすることにより得ることができるが、該高
温状態は、金属カルボン酸塩とアルコールとを混合する
と同時かまたは混合した後に得られていればよく、すな
わち、上記混合系を得るための出発原料の混合と、該混
合系を高温状態にするための昇温とは、別々となるよう
にしてもよいし、同時(一部同時も含む)となるように
してもよく、特に限定はされない。より詳しくは、上記
混合系の昇温のための具体的手段(例えば加熱等)は、
上記出発原料の混合に関わらず任意の方法・タイミング
で行うことができ、例えば、混合前の出発原料の少なく
とも一方を加熱等しておくことで混合と同時に該混合系
を昇温させるようにしてもよいし、混合して得られる混
合系に対して、該混合をしながらか又は該混合を終了し
た後で、加熱等を施し該混合系を昇温させるようにして
もよく、特に限定はされない。したがって、この混合
と、昇温のための加熱等とのタイミングや具体的な操作
手順としては、特に限定はされないが、例えば、1)加
熱等により温度Th以上に昇温したアルコールに、含有
金属原子の異なる2種以上の金属カルボン酸塩(および
必要に応じて反応溶媒)を添加し混合して温度Thで反
応させる方法、2)加熱等により温度Th以上に昇温し
た金属カルボン酸塩(および必要に応じて反応溶媒)
に、アルコールを添加し混合して温度Thで反応させる
方法、3)金属カルボン酸塩(および必要に応じて反応
溶媒)とアルコールとを、予めそれぞれ加熱等により温
度Thに昇温しておき混合して温度Thで反応させる方
法、4)アルコールと少なくとも1種の金属カルボン酸
塩とを加熱等により昇温し、温度Thまたはその付近
(温度Th以上)の温度に達した時点で他種の金属カル
ボン酸塩を添加し混合して温度Thで反応させる方法、
などの予備加熱法を好ましく挙げることができる。
【0048】第1の製造方法においては、アルコールと
金属カルボン酸塩とを混合した後、速やかに温度Thと
なるよう加熱等により該混合系を昇温させることが好ま
しいが、より好ましくは混合した時点で温度Thとなる
ようにすることである。混合した時点での温度が温度T
h未満である場合に、速やかに該混合系を温度Thに昇
温させる方法としては、特に限定はされないが、具体的
には、例えば、非常に高い加熱速度が得られる加熱装置
を用いる方法などが採用できる。このような加熱装置と
しては、例えば、伝熱係数の大きい管状反応炉などが好
ましく挙げられる。この管状反応炉では、金属カルボン
酸塩とアルコールとの混合系を加熱された管状管内に流
すことによって急速に昇温させることができ、好ましく
は10分以内、より好ましくは5分以内で温度Thまで
昇温できることである。
【0049】また、例えば、上記1)や2)の方法の場
合は、金属カルボン酸塩の添加による顕熱効果(方法
1))やアルコールの添加による顕熱効果(方法2))
によって、添加後の混合系の温度が低下することを予め
考慮したうえで、添加される方のアルコール(方法
1))や金属カルボン酸塩(方法2))の温度を設定し
たり、または、添加する方の金属カルボン酸塩(方法
1))やアルコール(方法2))を予熱しておくことが
好ましい。なお、前述した予備反応物aを、金属カルボ
ン酸塩とアルコールとの、混合、および、上記高温状態
にするよりも緩やかな条件下での加熱等により得る場
合、該混合と該昇温のための加熱等とのタイミングとし
ては、上述した金属酸化物Aを得る際の混合と昇温のた
めの加熱等とのタイミングと同様であることが好まし
い。
【0050】上記1)や2)の方法のように、添加して
混合する場合、添加の方法は、特に限定されるわけでは
なく、一時に一括添加する方法であっても、連続的な添
加方法(連続フィード)であっても、断続的な添加方法
(パルス添加、分割添加)であってもよく、さらにこれ
らのいずれかを組み合わせた添加方法であってもよい
が、なかでも、一括添加する方法が、1次粒子(結晶
子)分散性の高い反応液が得られるため、より好まし
い。上記1)〜3)の方法においては、金属カルボン酸
塩は、固体粉末状であっても、スラリーや溶液であって
もよい。スラリーや溶液とする場合に用いる溶媒は、反
応に用いるアルコールと同様であることが好ましく、混
合後の均一な拡散性や、高い伝熱性が得られ、高い固溶
率の固溶体の生成、選択的な複合酸化物の生成が達成さ
れるため好ましい。
【0051】加熱等による上記昇温により高温状態にす
ることについては、一旦温度Thまで昇温させるという
処理だけでもよく、温度Thに達すると速やかに反応が
開始するが、反応させる為の手順がすべて終了するま
で、および、金属酸化物系粒子を得るための反応が終了
するまでの期間は、温度Thを維持するように加熱等を
施しておくことが、より好ましい。第1の製造方法で
は、出発原料である金属カルボン酸塩とアルコールとの
混合系に含まれる水分が少ない方が、得られる金属酸化
物の欠陥が少なくなるため好ましい。具体的には、上記
混合系中に、出発原料として使用した金属カルボン酸塩
中の金属原子に対してモル比で4未満のわずかな水分し
か含有しないことが好ましく、水分がモル比で1未満で
あるとさらに好ましく、0.5未満であると特に好まし
く、0.1未満が最も好ましい。また、反応で副生する
水分がある場合、加熱中に留去するなどの方法で反応系
から除去すると分散性に優れた粒子が得られるため好ま
しく、特に好ましくは混合物を温度Thとしている間に
除去することである。上記含有量であれば、粒子径が小
さく分散性の高い金属酸化物系粒子、たとえば、100
nm以下の微細な粒子径を有し、2次凝集の少ない金属
酸化物系粒子を得ることができる。また、上記混合系中
に前記反応溶媒を含むようにする場合は、反応溶媒を前
述の非水溶媒にすると、混合系が水分を実質的に含有し
ないようにすること、または、混合系の含有水分量を上
記範囲に調整することが容易になるため好ましい。さら
に、前述した「混合系が水分を実質的に含有しないこ
と」とは、混合系に含まれる水分が上記含有量の範囲内
にあることである、としてもよく、好ましい。
【0052】上記加熱反応は、常圧下、加圧下、減圧下
のいずれの圧力下で行ってもよく、特に限定はされない
が、加圧下で出発原料を加熱等により高温状態にするこ
とがより好ましい。また、反応溶媒等の沸点が反応温度
よりも低い場合は、耐圧反応装置を用いて行えばよい。
通常、反応温度、反応時の気相圧は、溶媒の臨界点以下
で行うが、超臨界状態で行うこともできる。次に、本発
明の第2の製造方法について、詳しく説明する。本発明
の第2の製造方法は、上述したように、含有金属原子の
異なる2種以上の金属アルコキシ基含有化合物とカルボ
キシル基含有化合物ととを出発原料として、これらの混
合系を高温状態にすることにより金属酸化物Bの粒子を
生成させる方法である。上記混合系を高温状態にすると
は、上記混合系の温度を常温よりも高い温度であって金
属酸化物Bが生成し得る温度、またはそれ以上の温度に
昇温することである。これら出発原料の混合系は、反応
溶媒等をさらに含むものであってもよい。上記生成の際
は、上記高温状態として、上記2種以上の金属アルコキ
シ基含有化合物それぞれの反応速度が実質的に同じとな
る温度Th’となるようにすることが必要であるが、金
属酸化物の結晶が生成する時点での温度がTh’となる
ようにすることが好ましく、さらに好ましくは、金属酸
化物の結晶核が析出し始めた時点から結晶が生成する時
点までの間の温度をTh’にすることである。
【0053】ここで、上述の結晶核が析出し始める時点
とは、出発原料となる金属アルコキシ基含有化合物とカ
ルボキシル基含有化合物との混合系を高温状態にした後
(例えば、上記金属カルボン酸塩とアルコールとを混合
して加熱した後)に、目視により析出による濁りが認め
られた時点をいうとする。なお、混合後の時点で既に濁
りが認められる場合であっても、通常加熱により一旦透
明化または半透明化するため、再度濁りが認められる時
点または増す時点とすればよい。さらに、上述の結晶が
生成する時点に関しては、下記、のとおりである。
結晶の生成は、X線回折(XRD)学的または電子線
回折学的に結晶性の認められる粒子が存在することを条
件とする。具体的にいうと、金属酸化物粒子の生成プロ
セス中に(または生成プロセスを介した後に)サンプリ
ングした反応液から遠心分離等によって生成させた粒子
を分離し、この分離した粒子をアセトンで洗浄して50
℃で真空乾燥し、XRD(または電子線回折)で測定し
たとき、含有金属元素がMaの金属酸化物結晶の回折ピ
ークのうち少なくとも1つのピークが観測されることに
よって確認することができる。結晶の生成する時点と
は、生成プロセスの進行とともに随時サンプリングを行
い、上記で示した結晶の生成が最初に見られるサンプ
リング時のことをいい、つまり、結晶が生成していない
状態から生成した状態が確認された時点を結晶が生成す
る時点とする。
【0054】加熱等により上記高温状態にした時の温度
が、温度Th’でない場合、固溶体酸化物を得るにあた
っては、添加金属元素の固溶率の低い固溶体しか得られ
ず、偏析物として添加金属元素の単一酸化物が生成して
しまうこととなるおそれがあり、複合酸化物を得るにあ
たっては、含有金属元素が目的の組成となっている複合
酸化物が得られなかったり、たとえ得られても、少なく
とも1種以上の添加金属元素の単一酸化物との混合物と
して得られたりすることとなるおそれがある。上記温度
Th’は、原料によって様々であり、特に限定されない
が、具体的には、例えば、金属n−ブトキシド−酢酸系
の場合は、結晶性の高い粒子を得るためには、150℃
以上であることが好ましく、より好ましくは180℃以
上、さらに好ましくは200℃以上、特に好ましくは2
00〜300℃である。
【0055】上記温度Th’の定義としては、使用する
各種金属アルコキシ基含有化合物をそれぞれ別々にカル
ボキシル基含有化合物との混合系を高温状態にした時
に、いずれの金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシ
ル基含有化合物(必要に応じて反応溶媒を含む)との混
合系についての反応系であっても、10分以内で結晶生
成を起こし得る温度範囲内の温度であることが好まし
く、この温度範囲は、用いる金属アルコキシ基含有化合
物の種類や、用いるカルボキシル基含有化合物の種類に
依存する。ここで、温度Th’を判定するための手順を
説明すると、まず反応に使用する各種金属アルコキシ基
含有化合物の中の1種を、反応に使用するカルボキシル
基含有化合物(必要に応じて反応溶媒を含む)と混合
し、この混合系を加熱等により様々な温度に昇温した場
合の、各温度下における結晶生成の有無を確認する。結
晶生成の有無は、上述のように反応開始後(加熱開始
後)10分以内で結晶が生成されるか否かにより判断す
る。このような操作により、上記1種の金属アルコキシ
基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との反応につ
いて、結晶生成の温度依存性に関するデータが得られ、
結晶生成し得る温度範囲が分かる。この操作を他の金属
アルコキシ基含有化合物各々についても行う。そして、
各々の金属アルコキシ基含有化合物について結晶生成の
温度依存性に関するデータを得た後、結晶生成し得る温
度範囲を対比し、その結果、反応に使用する全ての金属
アルコキシ基含有化合物について結晶生成することので
きる温度範囲が存在すれば、その温度範囲を満たす温度
が温度Th’となる。
【0056】次に、温度Th’を判定するためのより具
体的な方法として、任意の温度下において結晶生成を確
認する方法を以下に示す。すなわち、含有金属元素がM
aの金属アルコキシル基含有化合物およびカルボキシル
基含有化合物の混合系を、出発原料として用いた該アル
コキシル基含有化合物の濃度が好ましくは50重量%、
かつ、金属アルコキシ基含有化合物およびカルボキシル
基含有化合物のモル比(カルボキシル基含有化合物/金
属アルコキシ基含有化合物)が1.2n(ただし、nは
含有金属元素Maの価数を表す。)となるようにし、ア
ルコキシ基含有化合物の濃度が50重量%を超える場合
は溶媒(1)で希釈する。この混合系をさらに温度T
1’の溶媒(2)と混合する。溶媒(2)と混合する際
は、得られる混合系における金属アルコキシル基含有化
合物の濃度が金属酸化物換算で1重量%となるようにす
る。その後、加熱等により混合系を温度T2’に昇温し
てから10分経過した後、50℃以下に冷却する。冷却
後の反応液について上述した方法により結晶生成を確認
する。なお、ここでは、溶媒(1)および溶媒(2)は
同一であることが好ましく、共に本発明の製造方法に使
用する溶媒であることがより好ましいが、特に限定はさ
れない。反応に溶媒を用いない場合は、溶媒(1)およ
び溶媒(2)にはプロピレングリコールモノメチルエー
テルアセテートを標準溶液として用いることができる。
また、温度T1’およびT2’は用いる金属カルボン酸
塩やアルコールの種類により適宜任意に設定すればよい
が、温度T1’は温度T2’以上であることが好まし
い。
【0057】第2の製造方法においては、金属酸化物B
は、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有
化合物との混合系を昇温して高温状態にすることにより
得ることができるが、該高温状態は、金属アルコキシ基
含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを混合すると
同時かまたは混合した後に得られていればよく、すなわ
ち、上記混合系を得るための出発原料の混合と、該混合
系を高温状態にするための昇温とは、別々となるように
してもよいし、同時(一部同時も含む)となるようにし
てもよく、特に限定はされない。より詳しくは、上記混
合系の昇温のための具体的手段(例えば加熱等)は、上
記出発原料の混合に関わらず任意の方法・タイミングで
行うことができ、例えば、混合前の出発原料の少なくと
も一方を加熱等しておくことで混合と同時に該混合系を
昇温させるようにしてもよいし、混合して得られる混合
系に対して、該混合をしながらか又は該混合を終了した
後で、加熱等を施し該混合系を昇温させるようにしても
よく、特に限定はされない。したがって、この混合と、
昇温のための加熱等とのタイミングや具体的な操作手順
としては、特に限定はされないが、例えば、1)加熱等
により温度Th’以上に昇温したカルボキシル基含有化
合物(および必要に応じて反応溶媒)に、含有金属原子
の異なる2種以上の金属アルコキシ基含有化合物(およ
び必要に応じて反応溶媒)を添加し混合して温度Th’
で反応させる方法、2)加熱等により温度Th’以上に
昇温した金属アルコキシ基含有化合物(および必要に応
じて反応溶媒)に、カルボキシル基含有化合物(および
必要に応じて反応溶媒)を添加し混合して温度Th’で
反応させる方法、3)2種以上の金属アルコキシ基含有
化合物とカルボキシル基含有化合物(と必要に応じて反
応溶媒)との混合系を温度Th’以上に昇温した溶媒に
添加し混合して温度Th’で反応させる方法、4)金属
アルコキシ基含有化合物(および必要に応じて反応溶
媒)と、カルボキシル基含有化合物(および必要に応じ
て反応溶媒)とを、予めそれぞれ加熱等により温度T
h’に昇温しておき混合して温度Th’で反応させる方
法、5)カルボキシル基含有化合物(および必要に応じ
て反応溶媒)と少なくとも1種の金属アルコキシ基含有
化合物とを加熱等により昇温し、温度Th’またはその
付近(温度Th’以上)の温度に達した時点で他種の金
属アルコキシ基含有化合物を添加し混合して温度Th’
で反応させる方法、などの予備加熱法を好ましく挙げる
ことができる。なかでも、3)の方法が特に好ましい。
【0058】第2の製造方法においては、カルボキシル
基含有化合物と金属アルコキシ基含有化合物とを混合し
た後、速やかに温度Th’となるよう加熱等により該混
合系を昇温させることが好ましいが、より好ましくは混
合した時点で温度Th’となるようにすることである。
混合した時点での温度が温度Th’未満である場合に、
速やかに該混合系を温度Th’に昇温する方法として
は、特に限定はされないが、具体的には、例えば、非常
に高い加熱速度が得られる加熱装置を用いた方法などが
採用できる。このような加熱装置としては、例えば、伝
熱係数の大きい管状反応炉などが好ましく挙げられる。
この管状反応炉では、金属アルコキシ基含有化合物とカ
ルボキシル基含有化合物との混合系を加熱された管状管
内に流すことによって急速に昇温させることができ、好
ましくは10分以内、より好ましくは5分以内で温度T
h’まで昇温できることである。
【0059】また、例えば、上記1)や2)や3)の方
法の場合は、金属アルコキシ基含有化合物の添加による
顕熱効果(方法1))や、カルボキシル基含有化合物の
添加による顕熱効果(方法2))や、金属アルコキシ基
含有化合物とカルボキシル基含有化合物(と必要に応じ
て反応溶媒)との添加による顕熱効果(方法3))によ
って、添加後の混合系の温度が低下することを予め考慮
したうえで、添加される方のカルボキシル基含有化合物
(方法1))や金属アルコキシ基含有化合物(方法
2))の温度を設定したり、または、添加する方の金属
アルコキシ基含有化合物(方法1))やカルボキシル基
含有化合物(方法2))を予熱しておくことが好まし
い。
【0060】なお、前述した予備反応物bを、金属アル
コキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との、
混合、および、上記高温状態にするよりも緩やかな条件
下での加熱等により得る場合、該混合と該昇温のための
加熱等とのタイミングとしては、上述した金属酸化物B
を得る際の混合と昇温のための加熱等とのタイミングと
同様であることが好ましい。上記1)〜3)の方法のよ
うに、添加して混合する場合、添加の方法は、特に限定
されるわけではなく、一時に一括添加する方法であって
も、連続的な添加方法(連続フィード)であっても、断
続的な添加方法(パルス添加、分割添加)であってもよ
く、さらにこれらのいずれかを組み合わせた添加方法で
あってもよいが、なかでも、一括添加する方法が、1次
粒子(結晶子)分散性の高い反応液が得られるため、よ
り好ましい。
【0061】上記1)〜4)の方法においては、金属ア
ルコキシ基含有化合物やカルボキシル基含有化合物は、
固体粉末状であっても、スラリーや溶液であってもよ
い。共にスラリーや溶液とする場合に用いる反応溶媒
は、同一であることが好ましく、混合後の均一な拡散性
や、高い伝熱性が得られ、高い固溶率の固溶体の生成、
選択的な複合酸化物の生成が達成されるため好ましい。
加熱等による上記昇温により高温状態にすることについ
ては、一旦温度Th’まで昇温させるという処理だけで
もよく、温度Th’に達すると速やかに反応が開始する
が、反応させる為の手順がすべて終了するまで、およ
び、金属酸化物系粒子を得るための反応が終了するまで
の期間は、温度Th’を維持するように加熱等を施して
おくことが、より好ましい。
【0062】第2の製造方法では、第1の製造方法と同
様に、出発原料である金属アルコキシ基含有化合物とカ
ルボキシル基含有化合物との混合系に含まれる水分が少
ない方が、得られる金属酸化物の欠陥が少なくなるため
好ましい。具体的には、上記混合系中に、出発原料とし
て使用した金属アルコキシ基含有化合物中の金属原子に
対してモル比で1未満のわずかな水分しか含有しないこ
とが好ましく、水分がモル比で0.2未満であるとさら
に好ましく、0.1未満であると特に好ましい。また、
反応で副生する水分がある場合、加熱中に留去するなど
の方法で反応系から除去すると分散性に優れた粒子が得
られるため好ましく、特に好ましくは混合物を温度T
h’としている間に除去することである。上記含有量で
あれば、粒子径が小さく分散性の高い金属酸化物系粒
子、たとえば、100nm以下の微細な粒子径を有し、
2次凝集の少ない金属酸化物系粒子を得ることができ
る。また、上記混合系中に前記反応溶媒を含むようにす
る場合は、反応溶媒を前述の非水溶媒にすると、混合系
が水分を実質的に含有しないようにすること、または、
混合系の含有水分量を上記範囲に調整することが容易に
なるため好ましい。さらに、前述した「混合系が水分を
実質的に含有しないこと」とは、混合系に含まれる水分
が上記含有量の範囲内にあることである、としてもよ
く、好ましい。
【0063】第2の製造方法の加熱反応は、第1の製造
方法と同様に、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力
下で行ってもよく、特に限定はされないが、加圧下で出
発原料を加熱等により高温状態にすることがより好まし
い。また、反応溶媒等の沸点が反応温度よりも低い場合
は、耐圧反応装置を用いて行えばよい。通常、反応温
度、反応時の気相圧は、溶媒の臨界点以下で行うが、超
臨界状態で行うこともできる。本発明の製造方法である
上記第1および第2の製造方法により得られる金属酸化
物系粒子について、以下に詳しく説明する。
【0064】本発明の製造方法によって得られる金属酸
化物系粒子は、複合酸化物および固溶体酸化物のいずれ
の金属酸化物の粒子であってもよい。なお、場合によっ
ては、確率論的に、単一酸化物である金属酸化物の粒子
を含むこともある。本発明の製造方法によって得られる
金属酸化物系粒子は、複合酸化物または固溶体酸化物で
あり、2種以上の金属原子を含有しているものである
が、これら含有金属原子については酸化物中での分布が
非常に均一性に優れた状態で得られる。金属酸化物系粒
子中の含有金属原子の均一性の評価方法(測定方法)と
しては、任意の1次粒子中の任意の部分における金属元
素の含有率を求め、その含有率が各粒子および各部分に
おいて所望の含有率となっているかどうかを測定、評価
する方法等が挙げられる。具体的には、任意の1次粒子
についてFE−TEM(透過型電子顕微鏡)によりその
透過像を観察しながら、粒子の任意の部分について、高
分解能XMAにより1nmφの空間分解能(スポット
径)で元素分析を行い、各金属元素に帰属するピーク強
度から、各含有金属元素の含有率を求め、その測定値
が、任意の1次粒子および粒子中の任意の部分について
同等であれば、上記均一性に優れた粒子であるとする。
【0065】上記測定においては、FE−TEMとして
は、特に限定はされないが、例えば、日立製作所社製の
電界放射型透過型電子顕微鏡(HF−2000型、加速
電圧200kV)が、また、XMAとしては、特に限定
はされないが、例えば、ケヴェックス(Kevex)社
製のX線マイクロアナライザー(Sigma型、エネル
ギー分散型、ビーム径:空間分解能10Åφ)が好まし
く挙げられる。本発明の製造方法によって得られる金属
酸化物系粒子は、X線回折法または電子線回折法によ
り、金属酸化物に基づく結晶性を示すものが好ましい。
通常、1次粒子径が5nm以上の場合はX線回折法によ
り、また、1次粒子径が5nm以下の場合は電子線回折
法により、結晶性か否かの確認並びに結晶性の場合には
結晶構造、物性の同定を行うことができる。また、金属
酸化物系粒子は、その1次粒子径が1〜100nmであ
ることが好ましい。1次粒子径は、例えば、以下〜
のいずれかの方法により確認することができる。
【0066】X線回折法におけるウィルソン解析法あ
るいは電子線回折法を用いて求めた、結晶子の大きさD
w。 透過型電子顕微鏡で粒子像を観察し、その結晶格子
像、大きさの観測から求められる1次粒子径De。 下記数式で算出される比表面積径Ds。 Ds=6/(ρ×s) (式中、ρは、金属酸化物系粒子の真比重を表す。S
は、B.E.T.法で測定される金属酸化物系粒子の比
表面積(m2/g)を表す。) 上記Dwは、より好ましくは1nm≦Dw≦50nmで
あり、電子物性に優れるためには1nm≦Dw≦30n
mであると好ましく、また、量子サイズ効果を機能的に
発現させる場合は、1nm≦Dw≦10nmであると好
ましい。Dwが小さすぎると紫外線遮蔽性や導電性等が
低下する。他方、大きすぎると可視光に対する透明性が
低下する。
【0067】上記Deは、より好ましくは1nm≦De
≦50nmであり、電子物性に優れるためには1nm≦
De≦30nmであると好ましく、また、量子サイズ効
果を機能的に発現させる場合は、1nm≦De≦10n
mであると好ましい。Deが小さすぎると紫外線遮蔽性
や導電性等が低下する。他方、大きすぎると可視光に対
する透明性が低下する。上記Dsは、より好ましくは1
nm≦Ds≦50nmであり、電子物性に優れるために
は1nm≦Ds≦30nmであると好ましく、また、量
子サイズ効果を機能的に発現させる場合は、1nm≦D
s≦10nmであると好ましい。Dsが小さすぎると紫
外線遮蔽性や導電性等が低下する。他方、大きすぎると
可視光に対する透明性が低下する。
【0068】金属酸化物系粒子の粒子形状は特に限定さ
れない。形状の具体例としては、球状、楕円球状、立方
体状、直方体状、多面体状、ピラミッド状、針状、柱
状、棒状、筒状、りん片状、(六角)板状等の薄片状
や、過飽和度の高い条件下で結晶の稜や角が優先的に伸
びて生成した樹枝状、骸晶状などが例示される。金属酸
化物系粒子が、アルコキシ基やカルボキシル基が結合し
てなるものであると、分散性に優れるため、好ましい。
金属酸化物系粒子は、絶縁体材料、半導体材料、イオン
伝導体材料、熱伝導体材料、導電体(電子伝導体)材
料、光吸収体材料、発光体材料、蛍光体材料、(光)磁
気記録材料、非線形光学材料、強誘電体材料、光電変換
材料、熱電変換材料等の各種機能性の超微粒子として、
使用することができる。
【0069】以下、本発明の製造方法で得られる金属酸
化物系粒子について、該粒子を構成する金属酸化物に含
まれる金属原子Mの原子価別の分類例を、金属酸化物が
複合酸化物である場合と固溶体酸化物である場合に分け
て示すが、結晶構造、価数等は、これらに限定されず、
不定比性の酸化物や、Fe34等の混合原子価酸化物も
含まれる。(2成分以上の金属成分からなる酸化物とし
ては、複合酸化物、固溶体酸化物、金属酸素酸(イオ
ン、塩)を挙げることができる。なお、金属酸素酸
(塩)は、複合酸化物に含めて以下に例示する。) ≪複合酸化物≫ABO2型複合酸化物(LiBO2等のセ
ン亜鉛鉱型超構造の結晶構造を有する酸化物;LiGa
2等のウルツ鉱型超構造の結晶構造を有する酸化物;
γ−LiAlO2等のβ−BeO型結晶構造を有する酸
化物;LiFeO2、LiInO 2、LiScO2、Li
EuO2、LiNiO2、LiVO2、NaFeO2、Na
InO2等の岩塩型超構造の結晶構造を有する酸化物;
CuCrO2、CuFeO2等の、Ma=Cu、Ag、M
b=Al、Cr、Co、Fe、Ga、Rh等の組み合わ
せからなる半導性酸化物や、PdCoO2、PdCr
2、PdRhO2、PtCoO2等のMa=Pd、Pt
からなる金属伝導性に優れる酸化物等のHNaFO2
結晶構造を有する酸化物);ABO3型複合酸化物(S
cTiO3、ScVO3等のc−M23型結晶構造を有す
る酸化物;FeVO3、MnFeO3、FeCrO3、T
iVO3や、FeTiO3、CoMnO3、CoVO3、N
iTiO3、CdTiO3等のイルメナイト型構造や、L
iNbO3に代表されるLiNbO 3型構造等のコランダ
ム型結晶構造を有する酸化物;LiSbO3に代表され
るLiSbO3型結晶構造を有する酸化物;PbRe
3、BiYO3等の欠陥パイロクロア型結晶構造を有す
る酸化物、AO3の最密面を有するABO3型酸化物とし
て、BaNiO3、ペロブスカイト酸化物(ペロブスカ
イト酸化物としては、KTaO3、NaNbO3、BaM
nO3、SrTiO3等の立方晶ペロブスカイト;BiA
lO3、PbSnO3、BaTiO3、PbTiO3等の正
方晶ペロブスカイト;LaAlO3、LiNiO3、Bi
FeO3、KNbO3等のLaAlO3型構造を有する酸
化物;GdFeO3、YFeO3、NdGaO3、CaT
iO3型構造を有する酸化物等)、BaMnO3、SrT
iO3、Sr4Re2SrO12、BaRuO3等);ABO
4型複合酸化物(PBO4、BeSO4等のシリカ類似構
造を有する酸化物;CrVO4、ZnCrO4等のCrV
4型結晶構造を有する酸化物;α−MnMoO4等のα
−MnMoO4型結晶構造を有する酸化物;CaWO4
CaMoO4等のシーライト(CaWO4)型結晶構造を
有する酸化物;Bi2(MoO43、Eu2(WO43
の欠陥シーライト型結晶構造を有する酸化物;MNbO
4、MTaO4(M:3価)等のフェルグソナイト型結晶
構造を有する酸化物;CaCrO4、YVO4等のジルコ
ン(ZrSiO4)型結晶構造を有する酸化物;CrV
4、AlAsO4等のルチル型結晶構造を有する酸化
物;FeVO4、FeWO4、MnWO4、NiWO4等の
ウォルフラマイト型結晶構造を有する酸化物;CuWO
4等の歪ウォルフラマイト型結晶構造を有する酸化物;
CoMoO4等のCoMoO4型結晶構造を有する酸化
物);AB24型複合酸化物(NiCr24、CoCr
24、MnCr24、NiFe24、CoFe24、M
nFe24、ZnFe24等のスピネル型結晶構造を有
する酸化物や、Be2SiO4等のフェナサイト型結晶構
造を有する酸化物のほか、CaFe24、CaTi24
等)などが挙げられる。
【0070】上記で挙げた酸化物以外にも、ケイ酸塩や
アルミノケイ酸塩;Mo、W、V、Nb、Ta等のポリ
酸であって、異種原子を取り込んだヘテロポリ酸、さら
に、Mo、W、V等の一部を異種金属で置換した混合ヘ
テロポリ酸や、これらの塩等も、本発明で得られる金属
酸化物系粒子を構成する酸化物に含まれる。 ≪固溶体酸化物≫固溶体酸化物とは、単一酸化物または
複合酸化物に、任意の異種金属を固溶した侵入型または
置換型固溶体酸化物と定義される。なお、複合酸化物と
しては、特に限定はされないが、上記列挙したものと同
様のものが好ましく挙げられ、また、単一酸化物につい
ては、特に限定はされないが、以下に示すものが好まし
く挙げられる。
【0071】なお、上記単一酸化物または複合酸化物が
上記金属酸化物Aである場合、固溶させる異種金属は、
金属カルボン酸塩や金属アルコキシ基含有化合物に由来
するものであることが好ましいが、なかでも、金属カル
ボン酸塩由来のものが、固溶率の高い固溶体が得られる
ためより好ましい。また、上記単一酸化物または複合酸
化物が上記金属酸化物Bである場合、固溶させる異種金
属は、金属アルコキシ基含有化合物や金属カルボン酸塩
に由来するものであることが好ましいが、なかでも、金
属アルコキシ基含有化合物由来のものが、固溶率の高い
固溶体が得られるためより好ましい。 〔単一酸化物〕3次元格子構造を有する酸化物として、
2O型酸化物(Li2O、Na2O、K2O、Rb2Oな
どのアンチホタル石型結晶構造を有する酸化物;Cu2
O、Ag2O等のCu2O型結晶構造を有する酸化物);
MO型酸化物(MgO、CaO、SrO、BaO等のア
ルカリ土類金属酸化物;FeO、CoO、NiO、Mn
O等の2価の第1遷移金属酸化物;TiO、VO等の岩
塩型結晶構造を有する酸化物;BeO、ZnO等のウル
ツ鉱型結晶構造を有する酸化物;NbO等の欠陥岩塩型
結晶構造を有する酸化物;PdO、PtO、CuO、A
gO等のPdO型結晶構造を有する酸化物);M23
酸化物(Al23、Ti23、V23、Fe23、Cr
23、Rh23、Ga23等のコランダム型結晶構造を
有する酸化物;Mn23、Sc23、 Y23、In2
3、Tl23等のc−M23型結晶構造を有する酸化
物;α−Bi23、β−Bi23、γ−Bi23等の複
雑c−M23型結晶構造を有する酸化物;B23等のB
23型結晶構造を有する酸化物;ランタノイド系金属酸
化物等の4fおよび5f酸化物を有する酸化物);MO
2型酸化物(ZrO2、HfO2、CeO2、ThO2、U
2等のホタル石型結晶構造を有する酸化物;TiO2
SnO2、VO2、CrO2、MoO2、WO2、MnO2
GeO2、等のルチル型結晶構造を有する酸化物;Si
2、GeO2等のシリカ型結晶構造を有する酸化物);
MO3型酸化物(ReO3、WO3等のReO3型結晶構造
を有する酸化物)が挙げられる。
【0072】低次元格子構造を有する酸化物として、層
状格子構造酸化物(M2O型酸化物(Ca2O等のアンチ
ヨウ化カドミウム型結晶構造を有する酸化物);MO型
酸化物(PbO、SnO等のPbO型結晶構造を有する
酸化物);M25型酸化物(V25);MO3型酸化物
(MoO3));鎖状格子構造酸化物(HgO、Se
2、CrO3、Sb23);分子格子構造酸化物(Ru
4、OsO4、Tc27、Sb46)が挙げられる。以
下、固溶体酸化物について、特に限定はされないが、以
下の固溶体酸化物は本発明の製造方法によって優れた性
能の粒子が得られるため、特に重要である。 (1)導電性酸化物 上記金属酸化物に、導電性を高める目的で、ドナーやア
クセプターとなる異種金属元素やフッ素、水素などを含
有または固溶させることがあるが、これらの酸化物も本
発明でいう金属酸化物に含まれる。例えば、ZnOにA
l、In、Ga、Si;TiO2にTa;Fe23にT
i;BaTiO3にLa、Ta;In23にSn、T
i;SnO2にSb、P、F;MgIn24にH;とい
うようなn型半導性酸化物にドナーとなる異種金属元素
を含有させてなるn型導電性酸化物や、NiOにLi;
CoOにLi;FeOにLi;MnOにLi;Bi23
にBa;Cr23にMg;LaCrO3にSr;LaM
nO3にSr;SrCu22にK;というようなp型半
導性酸化物にアクセプターとなる異種元素を含有させて
なるp型導電性酸化物が挙げられる。さらに、K2O−
11Fe23にTiを添加してなるイオン−電子複合伝
導体や、イオン伝導体として知られる酸化ジルコニウム
にY、Sc等の金属をドープ(固溶)してなる酸化ジル
コニウム系固溶体も含まれる。通常、固溶させるドナー
あるいはアクセプターの濃度は、母体の金属酸化物の金
属に対する原子数比で表して、0.01〜20%、好ま
しくは0.1〜5%である。これら導電性酸化物は、通
常、熱線を含む赤外線吸収または反射機能を有するの
で、熱線遮蔽材料としても有用である。また、上述のL
aMnO 3にSrを含有させてなるp型導電性酸化物の
ように、前記したペロブスカイト型酸化物やスピネル型
酸化物等の複合酸化物中の金属元素の一部を任意の異種
金属元素で置換してなるものも含まれる。
【0073】上記各種導電性酸化物のなかでも、特に好
ましい導電性酸化物としては、800kg/cm2の加
圧状態で測定した体積抵抗値が107Ωcm以下である
ことが好ましく、より好ましくは104Ωcm以下、さ
らにより好ましくは10Ωcm以下である。これらの導
電性酸化物のうち、n型導電性酸化物は、熱線を含む赤
外線吸収能に優れるので、赤外線遮断材料としても有用
である。 (2)希薄磁性半導体酸化物 Y23、TiO2、Fe23、ZnO、In23、Sn
2、BaTiO3、MgIn24などのn型又はp型半
導体酸化物、またはこれらに異種金属を固溶あるいは酸
素欠陥を導入させることによって導電性を付与してなる
酸化物に、Fe、Cr、Mn、Co、Ni等の磁性金属
イオンを固溶させることによって得ることができる。
【0074】好ましい磁性金属イオンの濃度は、半導体
または導電体の酸化物における金属に対する原子数比
で、1%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、特
に好ましくは10〜30%である。 (3)蛍光体酸化物 単一酸化物または複合酸化物などの母体結晶酸化物に、
発光中心となる金属イオン又は非金属元素の1種または
2種以上を固溶させてなる酸化物である。発光中心とな
る金属イオンとしては、例えば、Mn(II)、Cr(II
I)、Ag(I)、Cu(II)、Sb(III)、Sn(I
I)、Pb(II)、Tl(I)等の典型金属元素のイオ
ンや遷移金属元素のイオンの他、Eu(II)、Eu(II
I)、Nd(III)、Tb(III)、Pr(III)、Yb
(III)、Sm(III)、Ho(III)等のランタノイド
金属元素のイオンなどを好ましく用いることができ、非
金属元素としては、例えば、FおよびCl等のハロゲン
原子などを好ましく用いることができる。また、母体結
晶酸化物としては、可視光および/または近赤外線領域
の光に対して実質的に吸収のない酸化物が好ましく、Z
nO、Zn2SiO4、Y23、SnO2、In23等が
より好ましい。
【0075】ZnOにMn(II)、Sb(III)をZn
に対する原子数比で0.1〜5%固溶させてなる蛍光体
は、特に、金属イオンが均一分散した固溶体が得られる
点で好ましい。上述した、(1)導電性酸化物、(2)
希薄磁性半導体酸化物、(3)蛍光体酸化物は、使用時
に透明性が高いことも重要である。従って、これら酸化
物の粒子の1次粒子径は、100nm以下であることが
好ましく、特に1〜30nmの範囲内であることが好ま
しい。本発明にかかる第1の金属酸化物膜の形成方法
(以下、第1の形成方法と称することがある。)は、含
有金属原子の異なる2種以上の金属カルボン酸塩とアル
コールとを出発原料として生成する金属酸化物を基材の
表面に膜として定着させる金属酸化物膜の形成方法であ
り、また、本発明にかかる第2の金属酸化物系粒子の製
造方法(以下、第2の形成方法と称することがある。)
は、含有金属原子の異なる2種以上の金属アルコキシ基
含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料と
して生成する金属酸化物を基材の表面に膜として定着さ
せる金属酸化物膜の形成方法である。そして、第1およ
び第2のいずれの方法においても、金属酸化物膜の出発
原料である2種以上の金属塩(第1の形成方法では金属
カルボン酸塩、第2の形成方法では金属アルコキシ基含
有化合物)の反応速度がそれぞれ実質的に同じとなる温
度下(以下、特定の温度下と称することがある。)で金
属酸化物膜の生成を行うようにしている。好ましくは、
第1の形成方法においても、第2の形成方法において
も、上記出発原料を混合すると同時かまたはその後に、
該混合系を、上記2種以上の金属塩の反応速度がそれぞ
れ実質的に同じとなるような高温状態の温度下にする方
法であり、このような過程を経て生成する金属酸化物を
膜として基材の表面に定着させるようにする。
【0076】第1および第2の形成方法(以下、本発明
の形成方法と称することがある。)においては、さらに
上記混合系を上記基材に接触させ、この接触系を高温状
態にすることにより、基材の表面に金属酸化物を膜とし
て生成させ定着させるようにすることが好ましい。具体
的には、例えば、上記接触系を高温状態にすることが、
上記混合系を表面に塗布してなる基材を高温状態にする
か、上記混合系に基材を漬けておいて高温状態にするこ
とにより、基材の表面に金属酸化物を膜として生成させ
定着させるようにすることがより好ましい。ここでいう
金属酸化物の生成・定着の方法については、前者は、い
わゆる塗布法に属し、後者は、いわゆる液中析出法(浸
漬法)に属する方法である。
【0077】また、本発明の形成方法においては、さら
に上記混合系を、高温状態にしながらか高温状態にして
おいて、上記基材の表面に塗布することにより、基材の
表面に金属酸化物を膜として生成させ定着させるように
することがより好ましい。ここでいう金属酸化物の生成
・定着の方法は、いわゆる塗布法に属し、後者は、いわ
ゆる液中析出法(浸漬法)に属する方法である。上記液
中析出法(浸漬法)や塗布法については、後に詳述す
る。本発明の形成方法を実施するにあたり、上記出発原
料(組み合わせA、組み合わせB)やその混合系の詳
細、あるいは、上記出発原料の混合、上記特定の温度下
での金属酸化物の生成、および、上記出発原料の混合系
を高温状態(上記特定の温度下となるような高温状態)
にして反応させること等の、具体的な操作条件や反応条
件等の詳細については、基本的にすべて上記本発明の金
属酸化物系粒子の製造方法について記載した内容と同様
であることが好ましい。また、本発明の形成方法により
得られる金属酸化物膜を構成する金属酸化物の詳細につ
いても、上記本発明の製造方法により得られる金属酸化
物系粒子を構成する金属酸化物の説明として記載した内
容と同様であることが好ましい。
【0078】本発明の形成方法において用いることので
きる基材、すなわち、金属酸化物膜の被覆対象となり得
る基材としては、その材質等は、特に限定されず、例え
ば、酸化物、窒化物、炭化物等のセラミクス、ガラスな
どの無機物;PET、PBT、PENなどのポリエステ
ル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルフ
ァイド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテ
ルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、アモルファスポリオレ
フィン樹脂、ポリアリレート樹脂、アラミド樹脂、ポリ
エーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマーなどの耐熱
性樹脂フィルムとして知れられる樹脂フィルム、シート
のほか、従来公知の(メタ)アクリル樹脂、PVC樹
脂、PVDC樹脂、PVA樹脂、EVOH樹脂、ポリイ
ミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PTFE、PVF、
PGF、ETFE等のフッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリ
オレフィン樹脂等の各種樹脂からなるフィルムやシート
各種樹脂高分子、および、これら各種樹脂高分子にアル
ミ、アルミナ、シリカなどを蒸着したフィルム等の加工
品、などの有機物;各種金属類などが好ましく挙げられ
る。
【0079】上記基材の形状・形態としては、例えば、
フィルム状、シート状、板状、繊維状、積層体状などが
挙げられるが、用途・使用目的等に応じて選択すればよ
く、特に限定はされない。また、上記基材は、機能面に
おいても、特に限定はされず、例えば、光学的には透
明、不透明;電気的には絶縁体、導電体、p型またはn
型の半導体あるいは誘電体;磁気的には磁性体、非磁性
体;など、用途・使用目的等に応じて選択すればよい。
以下、前記液中析出法および塗布法について簡単に説明
する。液中析出法とは、前述した組み合わせAまたは組
み合わせBの出発原料の混合系に基材を漬けておいて
(浸けておいた状態で)高温状態にすることにより、基
材の表面に金属酸化物を析出させ成長させて、基材表面
に金属酸化物を定着させ金属酸化物膜を形成させる方法
である。
【0080】塗布法とは、例えば、前記混合系を表面に
塗布してなる基材を高温状態にすることにより、その基
材の表面に金属酸化物を定着させ金属酸化物膜を形成さ
せる方法が挙げられ、通常、基材表面への金属酸化物膜
の形成過程で同時に揮発性の溶媒成分や反応により生成
した水、エステル等を蒸発除去する過程を伴う。もちろ
ん、塗布した後、金属酸化物を形成しない温度で乾燥
(蒸発除去)した後、金属酸化物を形成する温度以上で
加熱することによっても金属酸化物膜を形成させること
ができる。特に、予備反応物a、bはこの方法を使って
も問題ない。上記液中析出法および塗布法において、前
記混合系として予備反応物(予備反応物aや予備反応物
b)を必須とする液を用いる場合、予備反応物は、常温
で長時間、溶解状態で存在し難い場合があるため、予備
反応物を含む混合系を得たあとは、例えば、速やかに該
混合系に基材を漬けて高温状態にする、もしくは、速や
かに該混合系を基材に塗布して高温状態にすることが好
ましい。前記混合系として予備反応物(予備反応物aや
予備反応物b)を必須とする液を用いる場合は、該混合
系を緩やかに加温しながら予備反応物の溶液状態を保持
しておき、該混合系に基材を漬けて高温状態にする、も
しくは、該混合系を基材に塗布して高温状態にするのが
好ましい。
【0081】以下、液中析出法について詳細に説明す
る。上記液中析出法においては、金属酸化物の生成が完
全に終わるまでに、好ましくは金属酸化物の生成反応を
開始させるまでに、基材を前記混合系に漬けておけばよ
く、出発原料の混合や高温状態にするための加熱と、基
材の浸漬とのタイミングについては、特に限定はされな
い。具体的には、例えば、基材を、前記混合系に漬けて
おいてから加熱する形態、加熱したアルコール中に基材
を漬けておいて加熱した金属カルボン酸塩を添加する形
態、加熱した反応溶媒と金属カルボン酸塩に基材を漬け
ておいて加熱したアルコールを添加する形態、加熱した
カルボキシル基含有化合物中に基材を漬けておいて加熱
した金属アルコキシ基含有化合物を添加する形態、加熱
した反応溶媒と金属アルコキシ基含有化合物に基材を漬
けておいて加熱したカルボキシル基含有化合物を添加す
る形態、予備反応物aやbに漬けてから加熱する形態な
どを挙げることができる。
【0082】なお、液中析出法においては、前記混合系
は、流動性のある液状であれば、例えば、溶液状、懸濁
液状、ペースト状、スラリー状(詳しくは、例えば、金
属カルボン酸塩がアルコール中に懸濁したスラリー状、
金属アルコキシ基含有化合物がカルボキシル基含有化合
物中に懸濁したスラリー状)でもよく、特に限定はされ
ないが、溶液状であることが好ましい。溶液状であるほ
うが、厚みが均一な金属酸化物膜が得られやすく、さら
に、複合酸化物や固溶体酸化物を得ようとする場合に
は、偏析のない金属組成の均一な金属酸化物膜が得られ
やすいため好ましい。該混合系は、上記本発明の製造方
法と同様に、必要に応じて、反応溶媒をも混合すること
によって、上記液状としてもよい。
【0083】液中析出法を、組み合わせAの混合系を用
いて行う場合であって、該混合系を均一透明な塗布溶液
となるようにする際は、用いるアルコールとして、前述
した各種アルコールのなかでも、炭素数1〜3の1級ア
ルコールまたは多価アルコールを含有させることが好ま
しい。これにより、均一透明な塗布液としての該混合系
がより低温で得られ、また、より低い加熱温度で金属酸
化物膜を形成することができるため、経済的に優れ、耐
熱性の低い高分子フィルムにも容易に金属酸化物膜を形
成することができる等といった点で有効である。上記炭
素数1〜3の1級アルコールまたは多価アルコールとし
ては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノ
ール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピ
レングリコール、1,3−プロパンジオールなどを挙げ
ることができ、なかでもメタノールが好ましい。この場
合、該混合系を得る際に出発原料として用いるアルコー
ル全量中、上記炭素数1〜3の1級アルコールを、20
重量%以上含有させることが好ましく、より好ましくは
50重量%以上である。上記炭素数1〜3の1級アルコ
ールが、20重量%未満の場合は、前述した効果が十分
に得られないおそれがある。
【0084】液中析出法では、前述したように、基材を
前記混合系に漬けておいて高温状態にすることで、基材
と前記混合系との接触系を高温状態となるようにする
が、上記接触系を高温状態にするとは、上記接触系の温
度を常温よりも高い温度であって金属酸化物が生成し得
る温度、またはそれ以上の温度に昇温することである。
本発明の形成方法においては、該高温状態は、前述した
特定の温度下となるような高温状態を意味する。上記高
温状態の温度(金属酸化物が生成し得る温度)は、得よ
うとする金属酸化物の種類等によって異なるが、通常、
上記本発明の製造方法でいう温度Th(出発原料が組み
合わせAの場合)や温度Th’(出発原料が組み合わせ
Bの場合)と同様であることが好ましく、例えば、結晶
性の高い膜を得るためには、150℃以上であることが
好ましく、より好ましくは180℃以上、さらに好まし
くは200℃以上、特に好ましくは200〜300℃で
あるが、特に限定はされない。液中析出法において上記
接触系を高温状態にする際は、常圧下、加圧下、減圧下
のいずれの圧力下で行ってもよく、特に限定はされない
が、加圧下で出発原料を加熱等により高温状態にするこ
とがより好ましい。また、前記混合系の出発原料となる
アルコールやカルボキシル基含有化合物や反応溶媒等の
沸点より高い温度で反応させる場合は、耐圧反応装置を
用いて行えばよい。通常は、常圧または加圧下で行われ
る。
【0085】金属酸化物を経済的な時間で生成させるた
めの温度は、金属カルボン酸塩の種類やアルコールの種
類、金属アルコキシ基含有化合物の種類やカルボキシル
基含有化合物の種類、または、予備反応物の種類によ
り、適宜設定すればよい。金属酸化物の構造、結晶子や
粒状金属酸化物の大きさおよび形状などに関して所望の
金属酸化物膜を得ようとした場合、金属カルボン酸塩の
種類やアルコールの種類、金属アルコキシ基含有化合物
の種類やカルボキシル基含有化合物の種類、または、予
備反応物の種類によって、適宜適切な反応温度を設定す
ることが好ましい。
【0086】液中析出法においては、通常、金属酸化物
を製造する場合に用いられている装置を好ましく使用す
ることができるが、基材を固定する機能を備えたものが
より好ましい。例えば、基板(基材)ホルダーを設置し
てなる回分式反応装置を使用することができる。撹拌の
有無や、撹拌条件は特に限定されず、適宜選択すればよ
い。液中析出法において、基材と前記混合系との接触系
を高温状態にする方法としては、基材を漬けている状態
で前記混合系全体を加熱する方法以外に、基材を前記混
合系に漬けている状態で基材のみを選択的に加熱する方
法などが好ましく挙げられる。なかでも後者の方法は、
基材表面での反応が選択的に起こりやすく、基材表面に
密着性の高い金属酸化物膜が形成されやすいため好まし
い。
【0087】液中析出法において、上記加熱を行う方法
としては、特に限定はされないが、具体的には、例え
ば、ヒーターによる加熱、温風や熱風による加熱、マイ
クロウェーブによる加熱、電子線による加熱、紫外線照
射による加熱などを好ましく挙げることができる。以
下、塗布法について詳細に説明する。塗布法において
は、具体的には、例えば、前記混合系を基材の表面に
塗布しておいて該基材を加熱することにより、基材と前
記混合系との接触系を高温状態にする方法、前記混合
系を加熱して高温状態にしながら基材に塗布する方法、
前記混合系を加熱して高温状態にしておいて基材に塗
布する方法、基材を高温状態にしておいて、前記混合
系を塗布する方法、などを好ましく挙げることができ
る。なかでも、結晶性の高い金属酸化物膜を得るために
は、上記のように基材表面に前記混合系を塗布してな
るものを高温状態にすることが好ましい。
【0088】上記の方法の具体例としては、例えば、
混合系を、基材の塗布部分に直結する加熱されたパイプ
に通して高温状態にし、塗布する方法や、混合系を、ロ
ールコーターのパン中で加熱して高温状態にし、該高温
状態のまま基材に塗布する方法、などが挙げられるが、
特にこれらに限定はされない。上記の方法の具体例と
しては、例えば、混合系を、(耐圧)回分式反応装置な
どを用いて加熱して高温状態にしておき、基材に塗布す
る方法、などが挙げられるが、特に限定されるわけでは
ない。また、上記、およびの方法では、塗布した
後、上記の方法を組み合わせることが好ましい。
【0089】なお、塗布法においても、上述した液中析
出法と同様に、塗布液として用いる前記混合系は、流動
性のある液状であれば、例えば、溶液状、懸濁液状、ペ
ースト状、スラリー状(詳しくは、例えば、金属カルボ
ン酸塩がアルコール中に懸濁したスラリー状、金属アル
コキシ基含有化合物がカルボキシル基含有化合物中に懸
濁したスラリー状)でもよく、特に限定はされないが、
溶液状であることが好ましい。溶液状であるほうが、厚
みが均一な金属酸化物膜が得られやすく、さらに、複合
酸化物や固溶体酸化物を得ようとする場合には、偏析の
ない金属組成の均一な金属酸化物膜が得られやすいため
好ましい。該混合系は、上記本発明の製造方法と同様
に、必要に応じて、反応溶媒をも混合することによっ
て、上記液状としてもよい。
【0090】塗布法としては、上記〜などの方法を
取り得るが、この〜の方法において、前記接触系ま
たは混合系を高温状態にするとは、前記接触系または混
合系の温度を常温よりも高い温度であって金属酸化物が
生成し得る温度、またはそれ以上の温度に昇温すること
である。本発明の形成方法においては、液中析出法と同
様、該高温状態は、前述した特定の温度下となるような
高温状態を意味する。上記高温状態の温度(金属酸化物
が生成し得る温度)は、得ようとする金属酸化物の種類
等によって異なるが、通常は液中析出法と同様に、上記
本発明の製造方法でいう温度Th(出発原料が組み合わ
せAの場合)や温度Th’(出発原料が組み合わせBの
場合)と同様であることが好ましく、原料によって様々
であり、特に限定されないが、例えば、金属酢酸塩とn
−ブタノールの場合や金属n−ブトキシド−酢酸系の場
合は、結晶性の高い膜を得るためには、150℃以上で
あることが好ましく、より好ましくは180℃以上、さ
らに好ましくは200℃以上、特に好ましくは200〜
300℃である。塗布法において前記接触系または混合
系を高温状態にする際は、常圧下、加圧下、減圧下のい
ずれの圧力下で行ってもよく、特に限定はされないが、
加圧下で出発原料を加熱等により高温状態にすることが
より好ましい。また、前記混合系の出発原料となる前記
混合系の出発原料となるアルコールやカルボキシル基含
有化合物や反応溶媒等の沸点より高い温度で反応させる
場合は、耐圧反応装置を用いて行えばよい。通常は、常
圧または加圧下で行われる。
【0091】さらに、塗布法における塗布液としては、
予備反応物(予備反応物aや予備反応物b)を含むもの
を用いることがより好ましい。特に、開放系で塗布およ
び加熱をする場合であって、塗布液が、金属カルボン酸
塩とアルコールとが単に混合されてなる混合系であると
きは、高温状態にするための昇温の際、反応が十分に進
む前にアルコールが蒸散してしまい、金属酸化物膜中の
金属酸化物含有率が低下したり、結晶性の低いものしか
得られない場合があるからである。塗布法を、前記混合
系を用いて行う場合、常圧における沸点が成膜温度(上
記〜の方法でいう高温状態の温度)よりも高い溶媒
成分を、前記混合系に含有させておくことが好ましい。
これにより、透明性に優れた金属酸化物膜や、酸化物含
有量高い金属酸化物膜が容易に得られる。上記溶媒成分
としては、例えば、沸点が100℃以上の、アルコール
およびその誘導体(多価アルコールおよびその誘導体も
含む)、ケトン、エステル、カルボン酸、カルボン酸無
水物等を挙げることができるが、なかでもアルコール類
(アルコールおよびその誘導体)が、前記混合系中での
他の成分(特に予備反応物)との相溶性が高いため、好
ましい。この場合、上記溶媒成分の含有量は、前記混合
系中の金属に対するモル比で、等モル以上であることが
好ましく、より好ましくは2倍モル以上である。上記溶
媒成分の含有量が、等モル未満であると、上述した効果
が十分に得られないおそれがある。
【0092】同様に、塗布法を、前記混合系を用いて行
う場合、水と共沸し得る非水成分を、前記混合系に含有
させておくことが好ましい。これにより、緻密な金属酸
化物膜を、より低温で容易に形成することができ、透明
導電膜などの電子伝導性膜や、イオン伝導性膜、熱伝導
性膜などの各種機能性膜に関して当該機能により優れた
ものを経済的に得ることができるため有効である。上記
非水成分としては、水と共沸する有機溶媒であればいず
れも使用できるが、例えば、イソプロピルアルコール、
n−ブタノール、フルアリルアルコール、t−ブタノー
ル、2−エチルヘキサノール、エチレングリコールモノ
メチルエーテル等を挙げることができ、共沸温度におけ
る共沸組成が上記非水成分濃度が60重量%以下であ
る、水と共存し得る非水成分を用いることが好ましい。
この場合、上記非水成分の含有量は、前記混合系中の金
属に対するモル比で、等モル以上であること好ましく、
より好ましくは2倍モル以上、さらに好ましくは5倍以
上である。上記非水成分が、等モル未満であると、緻密
でない部分を有する金属酸化物膜が形成されるおそれが
ある。
【0093】塗布法を、組み合わせAの混合系を用いて
行う場合であって、該混合系を均一透明な塗布液として
調製する際は、上述した液中析出法と同様に、出発原料
として用いるアルコールとして、前述した各種アルコー
ルのなかでも、炭素数1〜3の1級アルコールまたは多
価アルコールを含有させることが好ましい。こうするこ
とによって、均一透明な塗布液として該混合系をより低
温で調製することができ、また、より低い加熱温度で金
属酸化物膜を形成することができるため、経済的に優
れ、耐熱性の低い高分子フィルムにも容易に金属酸化物
膜を形成することができる等といった点で有効である。
上記炭素数1〜3の1級アルコールまたは多価アルコー
ルとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プ
ロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、
プロピレングリコール、1,3−プロパンジオールなど
を挙げることができ、なかでもメタノールが好ましい。
この場合、該混合系に出発原料として用いるアルコール
全量中、上記炭素数1〜3の1級アルコールを、20重
量%以上含有させることが好ましく、より好ましくは5
0重量%以上である。上記炭素数1〜3の1級アルコー
ルが、20重量%未満の場合は、前述した効果が十分に
得られないおそれがある。
【0094】塗布法においては、基材への塗布の方法と
しては、具体的には、例えば、前記混合系を、基材表面
にバーコーター法、ロールコーター法、ナイフコーター
法、ダイコーター法、スピンコート法などの従来公知の
成膜方法を用いた方法を好ましく挙げることができる
が、特にこれらに限定されるわけではなく、加熱してお
いてもよい前記混合系に基材の一部または全部を漬けた
後取り出して得られた塗布物を加熱する、いわゆるディ
ッピング法を用いることもできる。塗布法において、塗
布後に高温状態にする(接触系を高温状態にする)場
合、その方法は、特に限定されるわけではないが、具体
的には、ヒーターによる加熱、温風や熱風による加熱、
熱線(特に、近赤外線)により加熱、マイクロウェーブ
による加熱、電子線による加熱、紫外線照射(特に、波
長0.3〜0.4μmの紫外線(例えば、高水銀圧ラン
プにより照射される紫外線))による加熱などを好まし
く挙げることができる。また、金属酸化物の層形成に有
効な点で、波長0.3μm以下(特に0.2〜0.3μ
m)の紫外線と波長0.2μm以下の紫外線とを同時に
照射することによる加熱も好ましく採用でき、例えば、
低水銀ランプやエキシマレーザーを用いればよい。上記
加熱により、金属酸化物膜が形成されるとともに、反応
溶媒等を揮発させ除去させることができる。また、上記
加熱時の雰囲気としては、具体的には、例えば、空気雰
囲気、窒素やヘリウムなどの不活性ガス雰囲気、水素な
どの還元雰囲気など、特に限定されるわけではないが、
通常、空気または窒素雰囲気で行うことが好ましい。上
記加熱は、基材のみを加熱しても、塗布面のみを加熱し
ても、基材および塗布面の両方を加熱してもよく、特に
限定はされない。
【0095】塗布法では、高温状態の温度は、前述のよ
うに、上記液中析出法と同様であることが好ましいが、
前記およびの方法であって、前記の方法をさらに
組み合わせる場合は、このおよびの方法でいう高温
状態の温度は、予備反応物aや予備反応物bを生成させ
る程度の温度が好ましく、具体的には、50℃以上かつ
塗布後に高温状態とする際の温度以下であることが好ま
しい。塗布法においては、高温状態にする際の加熱等に
よる昇温時間は、特に限定されるわけではなく、具体的
には、10秒〜1時間が好ましいが、結晶性を高めたり
基材との密着性を高めるなどといった目的で、上記高温
状態の温度またはこれとは異なる温度で、さらに熟成を
行ってもよい。熟成の温度および時間は、特に限定はな
く、適宜選択すればよい。また、熟成の方法は、加熱以
外の方法でもよい。
【0096】本発明の形成方法においては、膜を構成す
る金属酸化物(金属酸化物部分)が有機基を有する場
合、さらに以下のような処理をすることにより、該有機
基を除去することができる。すなわち、気相中(空気中
などの酸化性雰囲気下、還元性雰囲気下、不活性雰囲気
下など)での加熱により有機基を分解する処理、液相中
での加熱により有機基を分解する処理、酸性または塩基
性の水溶液を用いて化学的方法により分解する処理、有
機基がカルボキシル基の場合はアルコール存在下での加
熱処理、有機基がアルコキシ基の場合は酢酸存在下での
加熱処理、有機鎖の切断に有効な波長300nm以下
(特に、波長200nm以下)の紫外線による高エネル
ギー紫外線照射処理、コロナ放電による処理、プラズマ
処理などを挙げることができるが、特に限定されるわけ
ではない。上記高エネルギー紫外線照射処理を施す場合
は、高圧水銀ランプよりも短波長(高エネルギー)の紫
外線を多く含む低圧水銀ランプを用いることが好まし
い。
【0097】本発明の形成方法においては、得られる金
属酸化物膜に微粒子を含むようにすることもできる。金
属酸化物膜に含有させる微粒子としては、特に限定はさ
れないが、例えば、無機系微粒子、有機系微粒子、有機
質無機質複合体微粒子、金属微粒子等を好ましく挙げる
ことができる。上記無機系微粒子としては、特に限定は
されないが、具体的には、例えば、金属の酸化物、窒化
物、炭化物、酸窒化物や硫化物、セレン化物由来の微粒
子を挙げることができる。微粒子の酸化物としては、例
えば、本発明の微粒子含有金属酸化物膜のマトリクス成
分である金属酸化物に関し後述する単一酸化物、複合酸
化物、固溶体酸化物等を好ましく用いることができる。
【0098】上記有機系微粒子としては、特に限定はさ
れないが、具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、
ポリイミド、ポリエステル、シリコーン等の各種高分子
由来の微粒子を挙げることができる。上記金属微粒子と
しては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、
Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Co、Fe、F
e−Co合金、Fe−Pt合金、Fe−Si合金等の金
属由来の微粒子を挙げることができる。これら各種微粒
子の中でも、金属酸化物膜において微粒子が偏在しにく
く高分散させることができる点で、無機系微粒子や金属
微粒子がより好ましい。
【0099】金属酸化物膜に含有させる微粒子の粒子径
は、特に限定はされないが、具体的には、100nm以
下であることが表面平坦性に優れる膜が得られやすい、
膜の透明性が高いなどの理由で好ましく、より好ましく
は一次平均粒子径が50nm以下、さらに好ましくは2
0nm以下、特に好ましくは10nm以下である。ま
た、微粒子が結晶性微粒子である場合は、XRD測定の
ウィルソン解析により得られた結晶子径が、50nm以
下であることが好ましく、より好ましくは20nm以
下、さらに好ましくは10nm以下である。微粒子の粒
子径が上記範囲より大きい場合、膜厚の不均一な膜にな
りやすい、透明性の低い膜になりやすい、微粒子複合効
果が不十分となる等のおそれがある。
【0100】金属酸化物膜に含有させる微粒子として
は、各種機能性微粒子を用いることが好ましく、所望の
機能を発揮させることにより前述した課題を達成でき
る。具体的には、導電体、半導体、絶縁体、誘電体、発
光体、蛍光体、光吸収体、高屈折率体、低屈折率体、磁
性体などとしての機能を有する機能性微粒子が好ましく
挙げられる。金属酸化物膜に含有させる微粒子の形状
は、特に限定はされないが、例えば、球状、楕円球状、
立方体状、直方体状、多面体状、ピラミッド状、柱状、
チューブ状、りん片状、(六角)板状等の薄片状、樹枝
状、骸晶状などが挙げられるが、一般に、非球状のもの
が好ましい。
【0101】金属酸化物膜に微粒子を含むようにする場
合、該微粒子の含有割合は、特に限定はされず、膜の用
途・使用目的に応じて適宜設定すればよいが、具体的に
は、0.1〜99重量%となるようにすることが好まし
く、より好ましくは1〜90重量%であり、さらに好ま
しくは10〜50重量%である。上記微粒子の含有割合
が、0.1重量%未満の場合は、微粒子含有効果が不十
分となるおそれがあり、99重量%を超える場合は、微
粒子とマトリクス成分である金属酸化物との複合効果が
十分に発揮されなかったり、金属酸化物のバインダーと
しての機能が十分に発揮されず微粒子が膜から脱落しや
すいなどの問題が発生するおそれがある。
【0102】上記微粒子を含有する金属酸化物膜を得る
方法としては、特に限定はされない。例えば、本発明の
形成方法において微粒子を含有させるタイミング等は、
特に限定はされず、適宜設定したタイミングで前記混合
系に含有させておき、塗布法や液中析出法等を用いて微
粒子含有金属酸化物膜を得るようにすればよい。また、
得られる金属酸化物膜において微粒子がなるべく均一に
分散した状態で含まれるよう、前記混合系に微粒子を含
有させておく場合はできるだけ均一に分散させておくこ
とが好ましい。本発明の形成方法により得られる金属酸
化物膜は、基材の表面等に形成され得る金属酸化物の膜
であるが、例えば、基材表面上の所望の面積部分に切れ
目なく連続的に広がって存在している形態(以下、連続
膜と称することがある。)であってもよいし、基材表面
上の所望の面積部分に不連続的に存在している形態(以
下、不連続膜と称することがある。)であってもよい。
不連続膜では、金属酸化物が、基材表面に部分的に存在
しているが、それら各部分の大きさ、面積、厚みおよび
形状等については特に限定されない。具体的には、例え
ば、金属酸化物が、基材表面に微細なドット状で存在し
ている形態や、いわゆる海島構造のように存在している
形態(上記ドット状ほど微細ではない)や、縞模様状に
存在している形態や、これら形態を合わせた形態等が挙
げられる。
【0103】上記連続膜および不連続膜において、膜を
構成する金属酸化物の構造としては、特に限定はされな
いが、具体的には、例えば、所望の大きさの空間を有す
る多孔質構造や、マクロ的に見てこのような多孔質構造
ではない一体的な密実構造(すなわち実質的に緻密な構
造)を挙げることができる。また、上記いずれの構造に
おいても、マクロ的に見て、1次粒子としての金属酸化
物が集合してなる構造であっても、2次粒子化した金属
酸化物が集合してなる構造であっても、さらに大きく凝
集粒子化した金属酸化物が集合してなる構造であって
も、これら形態が混在してなる構造であってもよく、特
に限定はされるわけではない。なお、このような金属酸
化物の各種構造は、上記不連続膜においては、部分的に
存在している個々の膜のすべてが備えている必要は無
く、一部の膜のみが備えるものであってもよい。
【0104】上記1次粒子としての金属酸化物、2次粒
子化した金属酸化物、および、さらに大きく凝集粒子化
した金属酸化物の形状としては、特に限定はされない
が、具体的には、例えば、球状、楕円球状、立方体状、
直方体状、多面体状、ピラミッド状、柱状、チューブ
状、りん片状、(六角)板状等の薄片状などが挙げられ
る。金属酸化物膜を構成する金属酸化物は、結晶性の金
属酸化物であっても、非結晶性の金属酸化物であっても
よく、特に限定はされない。結晶性の金属酸化物とは、
規則的な原子配列が周期性をもって認められる結晶子か
らなる金属酸化物であると定義することができ、電子線
回折学的および/またはX線回折学的に、格子定数およ
び/または回折パターンから金属酸化物の同定ができる
ものをいい、そうでないものは非結晶性の金属酸化物で
あるとする。導電性、半導体特性、熱伝導性、(光)磁
気特性、誘電特性、発光特性、光の吸収、反射特性など
の電気機能、磁気機能、半導体機能、光機能などの各種
機能に優れる点では、結晶性であることが好ましい。ま
た、上記結晶性の金属酸化物は、単結晶からなるもので
あっても、多結晶体からなるものであってもよく、特に
限定はされない。
【0105】金属酸化物膜を構成する金属酸化物が結晶
性である場合は、電気伝導性、熱伝導性、音波伝搬性、
光伝送性などの伝導、伝搬、伝送機能膜、高屈折率膜、
紫外線吸収や熱線反射等の光選択吸収、反射、透過膜、
エレクトロクロミズム膜などとしての機能を発揮させよ
うとするには、本発明の微粒子含有金属酸化物膜が連続
膜であることが好ましい。(光)触媒機能膜、色素増感
型太陽電池用半導体膜などの大きい表面積が必要とされ
る膜や、低屈折率膜などとしての機能を発揮させようと
するには、金属酸化物が多孔質構造であり、かつ、金属
酸化物膜が連続膜であることが好ましい。また、紫外線
発光体や蛍光体などの発光機能膜などとしての機能を発
揮させようとする場合は、金属酸化物膜が連続膜である
ことが好ましい。
【0106】金属酸化物膜を構成する金属酸化物が結晶
性である場合、その結晶子の配向性については、特に限
定はされないが、具体的には、結晶子の結晶軸方向が被
覆対象となる基材等の表面に垂直に配向していても特定
の角度をもって配向していても、あるいは、基材表面に
沿うように該表面と平行に配向していてもよい。また、
全ての結晶子の配向性が揃っていても、ランダムであっ
ても、一部が同じ配向性で残りがランダムであってもよ
く、特に限定はされないが、結晶子の配向性が揃ってい
る方が、電気や熱の伝導特性;(光)磁気的性質;スピ
ン半導体性質;強誘電性、焦電性、圧電性等の誘電特
性;発光特性;電子線放出特性等において優れたものと
なるため好ましい。
【0107】金属酸化物膜を構成する金属酸化物が結晶
性である場合、その結晶子の形状は、特に限定はされな
いが、具体的には、例えば、球状、楕円球状、立方体
状、直方体状、多面体状、ピラミッド状、柱状、チュー
ブ状、りん片状、(六角)板状等の薄片状や、過飽和度
の高い条件下で結晶の稜や角が優先的に伸びて生成した
樹枝状、骸晶状などが挙げられる。金属酸化物膜を構成
する金属酸化物が結晶性である場合、その結晶子の大き
さについては、特に限定はされないが、具体的には、結
晶子の結晶軸方向の大きさは以下の範囲が好ましい。
【0108】すなわち、金属酸化物膜が連続層である場
合、各結晶子の結晶軸方向の大きさは、通常、1nm〜
1μmであることが好ましい。また、金属酸化物膜が不
連続層である場合は、膜中に存在する金属酸化物が単結
晶からなるものであれば、各単結晶(各結晶子)の結晶
軸方向の大きさは、通常、1nm〜10μmであること
が好ましく、存在する金属酸化物が多結晶体からなるも
のであれば、各結晶子の結晶軸方向の大きさは、通常、
1nm〜100nmであることが好ましい。さらに、金
属酸化物膜が不連続膜であり、かつ、存在する金属酸化
物が単結晶からなるものである場合であって、発光素子
や電子線放出素子として使用する場合は、各結晶子の形
状が量子ドット状であり、大きさが10nm以下である
こと、あるいは、各結晶子の形状が柱状であり、大きさ
については長径と短径の比(長径/短径)が2〜100
であって短径(太さ)が100nm以下(好ましくは5
0nm以下、より好ましくは20nm以下)であるこ
と、が好ましい。さらに、先鋭性を有する結晶子形状で
あると、電子線放出特性に優れる点でより好ましい。
【0109】また、金属酸化物膜を構成する金属酸化物
は、可視光に対して透過性が高いことが好ましく、具体
的には、金属酸化物膜のバンドギャップが3.1eV以
上のエネルギー帯域にあるものが好ましい。このように
可視光に対する透過性が高い金属酸化物を用いると、金
属酸化物膜として優れた透明導電膜、発光体膜等を設計
しやすい。本発明の形成方法により得られる金属酸化物
膜は、特定の組み合わせの出発原料から得られる金属酸
化物を必須とする膜であるが、膜を構成する金属酸化物
が結晶性であるか非結晶性であるかに関わらず、金属酸
化物膜は、有機基(金属酸化物に直接結合した有機基な
ど)を含むものであってもよいし、有機基が除去されて
なるものであってもよい。該有機基は、金属酸化物の原
料化合物として用いられる金属カルボン酸塩、金属アル
コキシ基含有化合物、アルコールあるいはカルボキシル
基含有化合物由来のアルコキシル基やカルボキシル基、
および/または、他の原料化合物由来の有機基、の一部
であることが好ましい。金属酸化物膜が有機基を含む場
合、有機基は、金属酸化物膜全体中、炭素/金属(原子
%)で4%未満であることが好ましい。一方、有機基が
除去されてなる金属酸化物膜としては、気相中(空気中
などの酸化性雰囲気下、還元性雰囲気下、不活性雰囲気
下など)での加熱により有機基が分解されたものや、液
相中での加熱により有機基が分解されたものや、酸性ま
たは塩基性の水溶液による処理や、カルボキシル基であ
ればアルコール処理、アルコキシ基であれば酢酸処理な
どの化学的方法により除去されたもの、および、コロナ
放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理などの物理的
により除去されたものが挙げられる。
【0110】本発明の形成方法により得られる金属酸化
物膜の厚み(被覆対象となる基材等の表面に対して垂直
な方向の厚み)は、特に限定はされないが、通常、1n
m〜1000μmであることが好ましく、より好ましく
は1nm〜10μmである。特に、得られる金属酸化物
膜が多孔質状構造の連続層または不連続層である場合
は、10nm〜100μmがより好ましい。上記厚みが
1nm未満であると、所望の金属酸化物の機能が発揮さ
れないおそれがあり、1000μmを超えると、機能面
においてさらなる向上は見られず、却ってコスト高とな
ったり、厚くなり過ぎて使用しにくくなるおそれがあ
る。
【0111】本発明の形成方法により得られる金属酸化
物膜においては、上記本発明の製造方法により得られる
金属酸化物系粒子と同様に、該膜を構成する金属酸化物
は、単一酸化物、複合酸化物および固溶体酸化物のいず
れであってもよく、特に限定はされない。単一酸化物、
複合酸化物および固溶体酸化物の例示等についても同様
である。本発明の形成方法により得られる金属酸化物膜
は、上記本発明の製造方法により得られる金属酸化物系
粒子と同様に、金属酸化物の有する各種優れた機能・特
性により、各種機能性分野における用途に用いることが
できる。例えば、透明導電、帯電防止、面状発熱体、熱
伝導、導電体、半導体、光吸収体、磁性体、電波吸収、
電磁波遮断、希薄磁性半導体、紫外線吸収、熱線反射、
高屈折率、低屈折率、反射防止、発光・蛍光体、電子線
放出素子、(光)触媒、太陽電池用半導体、電極、光電
変換素子、熱電変換素子、表面弾性波素子、(強)誘電
体、圧電体、バリスターおよびエレクトロルミネッセン
ス等の機能・特性を有する膜として、フィルム、ガラ
ス、セラミックスあるいは金属等の基材表面に形成し
て、機能性フィルム等とし、窓材(自動車用、建築用
等)、農業用資材、メモリー素子、光源、表示デバイ
ス、情報通信・伝送の各種デバイス、太陽電池などの各
種用途分野で有用な材料として好適に用いることができ
る。
【0112】また、前述のように、本発明の形成方法に
おいて微粒子を含有するようにして得られた金属酸化物
膜は、金属酸化物の種類と微粒子の種類との組み合わせ
によっては、加算的効果により若しくは相乗的効果によ
り優れた機能を有する膜にすることができる。例えば、
膜の透明性がより高くなる点で、金属酸化物と微粒子
との屈折率の差が小さくなる組み合わせが好ましく、具
体的にはその差が0.2以下であることが好ましい。ま
た、機械的強度に優れ透明性の高い膜が得られる点
で、膜を構成する金属酸化物の主たる含有金属元素と、
微粒子が金属微粒子や金属酸化物等の金属含有微粒子の
場合の含有金属元素とが同種であることが好ましく、さ
らには、非常に導電性に優れた導電膜が得られる点
で、膜を構成する金属酸化物として電子移動度の高い半
導体(例えば、酸化亜鉛、チタニアなど)を用い、微粒
子としてキャリア濃度の高い導電性微粒子(例えば、I
TO、InをドープしたZnO、SbをドープしたSn
2、金属など)を用いることが好ましく、ZnS
系、MnをドープしたZnOなどの蛍光体微粒子を、該
蛍光体微粒子よりもバンドギャップの大きいZnOやI
23、SiO2等の金属酸化物からなる膜中に分散さ
せて得られる膜は発光効率の高い膜として好ましく、
Fe、Co、Fe34など強磁性体微粒子を、ZnO、
TiO2、In23等の半導体酸化物からなる膜中に分散
させて得られる膜は、電子スピンと電子の電荷との相互
作用を利用する膜として従来にはない機能性を発現しう
る点で好ましく、高分子ポリマー微粒子やシリカ系微
粒子などの屈折率の低い(n<1.5)微粒子を、屈折
率の高い(n>1.8)ZnO、ZrO2、In23
TiO2などの金属酸化物からなる膜中に分散して得ら
れる膜は、光の透過性、特に直線透過性に優れる膜とし
て好ましい。
【0113】
【実施例】以下、実施例により、本発明をさらに具体的
に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるも
のではない。なお、以下では、便宜上、「重量部」を単
に「部」と記すことがある。実施例、比較例における評
価等は次の手法により行った。 <粉末試料の調製方法>得られた分散体中の微粒子を遠
心分離操作によって分離した後、メタノールによる洗
浄、さらにアセトンによる洗浄を充分行った後、30℃
で1日真空乾燥し、さらに80℃にて1日真空乾燥し、
揮発成分を完全に除去して微粒子の粉末を得、これを粉
末試料とした。 <粉末試料の結晶性の評価>粉末試料を、粉末X線回折
により測定し、回折パターンを解析することにより評価
した。 <粉末試料の偏析物の有無>粉末試料について、FE−
TEM(電界放射型透過型電子顕微鏡、日立製、HF−
2000型、加速電圧200kV)により、透過像を観
察しながら、各結晶子の組成分析を行った。組成分析で
は、FE−TEMに付帯した高分解能XMA(最大分解
能:1nmφ、スポット径は下限が1nmφで任意に連
続的にスポット径を拡大できる)(X線マイクロアナラ
イザー、Kevex製、Sigma型、エネルギー分散
型、ビーム径(空間分解能)10Åφ)により、各結晶
子の金属組成を分析し、単一酸化物の偏析物の有無を調
べた。100個の結晶子に関して調べ、その中に、偏析
物が存在した場合を「有り」、存在しなかった場合を
「無し」と評価した。 <粉末試料の結晶子径>粉末試料の粉末X線回折測定を
行い、Wilson解析(ウィルソン法)により結晶子
径を求めた。 <粉末試料の固溶率>上記偏析物の有無の評価で用いた
装置と同様の装置により、各結晶子中のInのZnに対
する濃度(以下、In濃度と称することがある。)を解
析した。任意の結晶子10個を選び、その10個の結晶
子におけるIn濃度の平均値を、その粉末試料のIn固
溶率とした。結晶子1つ当たりのIn濃度は、スポット
径1nmφの分解能で結晶子の任意の5箇所について測
定したIn濃度の平均値とした。 <膜の結晶性の評価>基材等の表面に形成された金属酸
化物膜について、薄膜X線回折測定法により測定し、得
られた回折パターンから金属酸化物膜の結晶性(金属酸
化物膜を構成する金属酸化物の結晶性)について評価し
た。測定装置および測定条件(走査条件)は以下の通り
である。
【0114】測定装置:RAD−rX(薄膜測定用アタ
ッチメント使用)(リガク社製) 出力:55kV、180mA X線入射角:通常は0.5°に固定(必要に応じて0.
2〜0.5°の範囲内で適宜設定して固定) 2θ:3〜100° 走査速度:2θとして2°/minで走査 <膜の組成分析(局所分析)>基材等の表面に形成され
た金属酸化物膜について、局所的に分析することにより
元素分析を行った。
【0115】具体的には、表面に金属酸化物膜が形成さ
れた基板等を樹脂に包埋した後、薄片状にスライス(通
常は、基材の厚み方向にスライスする)し、必要に応じ
てさらにイオンミリング処理を施して、電界放射型電子
顕微鏡用の薄膜試料を作成した。この薄膜試料における
金属酸化物膜の断面部分について、電界放射型電子顕微
鏡で観察しながら、最高分解能1nmφでスポットを絞
り込めるXMAを用いて元素分析を行った。 <膜厚>表面に金属酸化物膜が形成された基板等を、基
板の厚み方向に(ガラス)カッター等で切断し、金属酸
化物膜の断面をSEMにより観察してSEM像より膜厚
を測定した。
【0116】−実施例1− まず、以下<1>、<2>のようにして、実施例1の反
応加熱温度Thを確認した。 <1> 酢酸亜鉛3部をn−ブタノール3部に混合し、
これを添加液Aとして添加槽に入れ、常温で撹拌してお
いた。次に、反応装置内を窒素ガスでパージした後、n
−ブタノール127部を仕込み、撹拌しながらT1℃に
昇温した。加圧下、T1℃に加熱された反応装置内のn
−ブタノールを撹拌所要動力0.1kw/m3で撹拌し
ながら、添加槽から添加液Aを全量添加した。
【0117】添加終了後の温度を計測したところT2
であり、その後、T2±2℃に維持した。そして、添加
終了から反応液が(一旦透明化して再び)濁り始めた時
点までの時間t1を計測しておき、さらに、添加終了か
ら10分後の反応液を、冷却ラインを通しながら30℃
以下に冷却した。この冷却した反応液から、遠心分離に
よって生成した粒子を分離し、分離した粒子をアセトン
で洗浄し、50℃で真空乾燥した。このようにして得ら
れた粒子粉末のXRDを測定することで、ZnO結晶の
回折ピーク有無を観測し、結晶が生成しているかどうか
確認した。
【0118】以下表1に、温度T2を変化させたときの
結晶生成の有無等を調べた結果を示す。
【0119】
【表1】
【0120】<2> 上記<1>において、酢酸亜鉛3
部を塩基性酢酸鉄(III)3部にし、反応装置に仕込む
n−ブタノールを119部にする以外は<1>と同様の
操作を行い、粒子粉末を得た。<1>と同様に得られた
粒子粉末のXRDを測定し、温度T2を変化させたとき
の結晶生成の有無等を調べたところ、温度T2が180
℃以上では、酸化鉄の結晶が生成していることが分かっ
た。 以上<1>、<2>より、反応加熱温度Thは180℃
以上であると判定できた。そこで、撹拌機、添加口、温
度計、留出ガス出口、窒素ガス導入口を備えた、外部よ
り加熱することのできる耐圧性の容器を用意した。添加
口は、ボールバルブおよび配管を介してスラリーポン
プ、添加槽に順次つながっている。
【0121】上記反応装置内を窒素ガスでパージした
後、n−ブタノール46部を仕込み、280℃に昇温し
た。一方、添加槽には、酢酸亜鉛4.0部、塩基性酢酸
鉄(III)8.32部およびn−ブタノール12部の添
加液スラリー(1)を仕込み、撹拌しながら40℃に昇
温した。加圧下、280℃で加熱された反応装置内のn
−ブタノールを撹拌所要動力0.1kw/m3で撹拌し
ながら、添加液スラリー(1)の全量をスラリーポンプ
で連続添加した。添加した時間は1分であった。
【0122】添加終了後の混合物(1)の温度は200
℃であり、その後200℃±2℃に維持しながら3時間
保持した後、30℃に冷却することによって、反応液
(1)70部を得た。得られた反応液(1)は、金属酸
化物系粒子(以下、金属酸化物系粒子(1)と称するこ
とがある。)が7.5重量%で分散した分散体であっ
た。 −比較例1− 実施例1と同様の反応容器を用い、この反応装置内を窒
素ガスでパージした後、n−ブタノール58部、酢酸亜
鉛4.0部および塩基性酢酸鉄(III)8.32部を順
次添加、混合し、混合物(1c)を得た。混合物(1
c)の温度は25℃であった。この混合物(1c)を撹
拌所要動力0.1kw/m3で撹拌しながら、約3時間
かけて(平均昇温速度1.4℃/min)、280℃に
向けて昇温し、280℃±2℃で1時間保持した後、3
0℃に冷却することによって、反応液(1c)70部を
得た。
【0123】得られた反応液(1c)は、金属酸化物系
粒子(以下、金属酸化物系粒子(1c)と称することが
ある。)が7.5重量%で分散した分散体であった。こ
のようにして得られた金属酸化物系粒子(1)および金
属酸化物系粒子(1c)について、XRD解析を行い、
結晶解析結果、偏析物の有無、結晶子径について、その
結果を表2に示す。また、実施例1で得られた金属酸化
物系粒子(1)の粉末を蛍光X線で元素分析したとこ
ろ、ZnとFeとの原子数比が1:1であることを確認
した。
【0124】
【表2】
【0125】−実施例2− まず、以下<3>、<4>のようにして、実施例2の反
応加熱温度Thを確認した。 <3> 酢酸亜鉛3部を2−ブトキシエタノール3部に
混合し、これを添加液Bとして添加槽に入れ、常温で撹
拌しておいた。次に、反応装置内を窒素ガスでパージし
た後、2−ブトキシエタノール127部を仕込み、撹拌
しながらT3℃に昇温した。加圧下、T3℃に加熱された
反応装置内の2−ブトキシエタノールを撹拌所要動力
0.1kw/m3で撹拌しながら、添加槽から添加液B
を全量添加した。
【0126】添加終了後の温度を計測したところT4
であり、その後、T4±2℃に維持した。そして、添加
終了から反応液が(一旦透明化して再び)濁り始めた時
点までの時間t2を計測しておき、さらに、添加終了か
ら10分後の反応液を、冷却ラインを通しながら30℃
以下に冷却した。この冷却した反応液から、遠心分離に
よって生成した粒子を分離し、分離した粒子をアセトン
で洗浄し、50℃で真空乾燥した。このようにして得ら
れた粒子粉末のXRDを測定することで、ZnO結晶の
回折ピーク有無を観測し、結晶が生成しているかどうか
確認した。
【0127】以下表3に、温度T4を変化させたときの
結晶生成の有無等を調べた結果を示す。
【0128】
【表3】
【0129】<4> 上記<3>において、酢酸亜鉛3
部を酢酸インジウム3部にし、反応装置に仕込む2−ブ
トキシエタノールを136部にする以外は<3>と同様
の操作を行い、粒子粉末を得た。<3>と同様に得られ
た粒子粉末のXRDを測定し、温度T4を変化させたと
きの結晶生成の有無等を調べたところ、温度T4が18
0℃以上では、酸化インジウムの結晶が生成しているこ
とが分かった。 以上<3>、<4>より、反応加熱温度Thは180℃
以上であると判定できた。そこで、実施例1と同様の反
応容器を用い、この反応装置内を窒素ガスでパージした
後、2−ブトキシエタノール45部を仕込み、260℃
に昇温した。
【0130】一方、添加槽には、酢酸亜鉛13部、酢酸
インジウム1.03部、2−ブトキシエタノール12部
の添加液スラリー(2)を仕込み、撹拌しながら80℃
に昇温した。加圧下、260℃で加熱された反応装置内
の2−ブトキシエタノールを撹拌所要動力0.1kw/
3で撹拌しながら、添加液スラリー(2)の全量をス
ラリーポンプで連続添加した。添加した時間は1分であ
った。添加終了後の混合物(2)の温度は200℃であ
り、その後210℃±2℃に維持しながら2時間保持し
た後、溶媒を21部留去し(留分中の水分濃度:6重量
%)、デシルアミン0.4部を窒素ガスで圧入添加し
た。添加後、210℃±2℃で5時間維持した後、25
℃に冷却することによって、反応液(2)50部を得
た。
【0131】得られた反応液(2)は、ZnO結晶性の
金属酸化物系粒子(以下、金属酸化物系粒子(2)と称
することがある。)が8.5重量%で分散した分散体で
あった。 −比較例2− 実施例1と同様の反応容器を用い、この反応装置内を窒
素ガスでパージした後、2−ブトキシエタノール45部
を仕込み、200℃に昇温した。一方、添加槽には、実
施例2と同様に、酢酸亜鉛13部、酢酸インジウム1.
03部、2−ブトキシエタノール12部の添加液スラリ
ー(2)を仕込み、撹拌しながら80℃に昇温した。
【0132】加圧下、200℃で加熱された反応装置内
の2−ブトキシエタノールを撹拌所要動力0.1kw/
3で撹拌しながら、添加液スラリー(2)の全量をス
ラリーポンプで連続添加した。添加した時間は1分であ
った。添加終了後の混合物(2c)の温度は160℃で
あり、その後160℃±2℃に維持しながら2時間保持
した後、溶媒を21部留去し(留分中の水分濃度:6重
量%)、デシルアミン0.4部を窒素ガスで圧入添加し
た。添加後、160℃±2℃で5時間維持した後、25
℃に冷却することによって、反応液(2c)50部を得
た。
【0133】得られた反応液(2c)は、ZnO結晶性
の金属酸化物系粒子(以下、金属酸化物系粒子(2c)
と称することがある。)が8.5重量%で分散した分散
体であった。このようにして得られた金属酸化物系粒子
(2)および金属酸化物系粒子(2c)について、固溶
率、結晶子径について解析し、その結果を表4に示す。
【0134】
【表4】
【0135】−実施例3− まず、以下<5>、<6>のようにして、実施例3の反
応加熱温度Thを確認した。 <5> 実施例1の<1>と同様に、酢酸亜鉛3部をn
−ブタノール3部に混合し、これを添加液Cとして添加
槽に入れ、常温で撹拌しておいた。次に、反応装置内を
窒素ガスでパージした後、n−ブタノール127部を仕
込み、撹拌しながらT5℃に昇温した。加圧下、T5℃に
加熱された反応装置内のn−ブタノールを撹拌所要動力
0.1kw/m3で撹拌しながら、添加槽から添加液C
を全量添加した。
【0136】添加終了後の温度を計測したところT6
であり、その後、T6±2℃に維持した。そして、添加
終了から反応液が(一旦透明化して再び)濁り始めた時
点までの時間t3を計測しておき、さらに、添加終了か
ら10分後の反応液を、冷却ラインを通しながら30℃
以下に冷却した。この冷却した反応液から、遠心分離に
よって生成した粒子を分離し、分離した粒子をアセトン
で洗浄し、50℃で真空乾燥した。このようにして得ら
れた粒子粉末のXRDを測定することで、ZnO結晶の
回折ピーク有無を観測し、結晶が生成しているかどうか
確認した。
【0137】以下表5に、温度T6を変化させたときの
結晶生成の有無等を調べた結果を示す。
【0138】
【表5】
【0139】<6> 上記<5>において、酢酸亜鉛3
部を酢酸マンガン(II)4水和物4.25部(無水物換
算3部)にし、反応装置に仕込むn−ブタノールを11
6部にする以外は<5>と同様の操作を行い、粒子粉末
を得た。<5>と同様に得られた粒子粉末のXRDを測
定し、温度T6を変化させたときの結晶生成の有無等を
調べたところ、温度T6が180℃以上では、酸化マン
ガンの結晶が生成していることが分かった。 以上<5>、<6>より、反応加熱温度Thは180℃
以上であると判定できた。
【0140】そこで、実施例1と同様の反応容器を用
い、この反応装置内を窒素ガスでパージした後、n−ブ
タノール64部を仕込み、215℃に昇温した。一方、
添加槽には、酢酸マンガン(II)4水和物0.214
部、酢酸亜鉛無水物8部、n−ブタノール8部の添加液
スラリー(3)を仕込み、撹拌しながら80℃に昇温し
た。加圧下、215℃で加熱された反応装置内のn−ブ
タノールを撹拌所要動力0.1kw/m3で撹拌しなが
ら、添加液スラリー(3)の全量をスラリーポンプで連
続添加した。添加した時間は30秒であった。
【0141】添加終了後の混合物(3)の温度は190
℃であり、その後192℃±2℃に維持しながら、溶媒
を20部留去し(留分中の水分濃度:4重量%)、ラウ
リン酸0.4部を窒素ガスで圧入添加した。添加後、1
92℃±2℃で5時間維持した後、25℃に冷却するこ
とによって、反応液(3)60部を得た。得られた反応
液(3)は、ZnO結晶性の金属酸化物系粒子(以下、
金属酸化物系粒子(3)と称することがある。)が6.
0重量%で分散した分散体であった。 −比較例3− 実施例1と同様の反応容器を用い、この反応装置内を窒
素ガスでパージした後、n−ブタノール64部を仕込
み、165℃に昇温した。
【0142】一方、添加槽には、実施例3と同様に、酢
酸マンガン(II)4水和物0.214部、酢酸亜鉛無水
物8部、n−ブタノール8部の添加液スラリー(3)を
仕込み、撹拌しながら80℃に昇温した。加圧下、16
5℃で加熱された反応装置内のn−ブタノールを撹拌所
要動力0.1kw/m3で撹拌しながら、添加液スラリ
ー(3)の全量をスラリーポンプで連続添加した。添加
した時間は30秒であった。添加終了後の混合物(3
c)の温度は140℃であり、その後140℃±2℃に
維持しながら溶媒を20部留去し(留分中の水分濃度:
4重量%)、ラウリン酸0.4部を窒素ガスで圧入添加
した。添加後、192℃±2℃で5時間維持した後、2
5℃に冷却することによって、反応液(3c)60部を
得た。
【0143】得られた反応液(3c)は、ZnO結晶性
の金属酸化物系粒子(以下、金属酸化物系粒子(3c)
と称することがある。)が6.0重量%で分散した分散
体であった。このようにして得られた金属酸化物系粒子
(3)および金属酸化物系粒子(3c)について、固溶
率、結晶子径について解析し、その結果を表6に示す。
【0144】
【表6】
【0145】実施例3で得られた金属酸化物系粒子
(3)は蛍光体として有用である。 −実施例4− まず、以下<7>、<8>のようにして、実施例4の反
応加熱温度Th’を確認した。 <7> チタニウムテトラn−ブトキシド3部、酢酸
2.54部、プロピレングリコールモノメチルエーテル
アセテート0.46部を混合し、これを添加液Dとして
添加槽に入れ、常温で撹拌しておいた。次に、反応装置
内を窒素ガスでパージした後、プロピレングリコールモ
ノメチルエーテルアセテート64.5部を仕込み、撹拌
しながらT7℃に昇温した。加圧下、T7℃に加熱された
反応装置内のプロピレングリコールモノメチルエーテル
アセテートを撹拌所要動力0.1kw/m3で撹拌しな
がら、添加槽から添加液Dを全量添加した。
【0146】添加終了後の温度を計測したところT8
であり、その後、T8±2℃に維持した。そして、添加
終了から反応液が(一旦透明化して再び)濁り始めた時
点までの時間t4を計測しておき、さらに、添加終了か
ら10分後の反応液を、冷却ラインを通しながら30℃
以下に冷却した。この冷却した反応液から、遠心分離に
よって生成した粒子を分離し、分離した粒子をアセトン
で洗浄し、50℃で真空乾燥した。このようにして得ら
れた粒子粉末のXRDを測定することで、酸化チタン結
晶の回折ピーク有無を観測し、結晶が生成しているかど
うか確認した。
【0147】以下表7に、温度T8を変化させたときの
結晶生成の有無等を調べた結果を示す。
【0148】
【表7】
【0149】<8> 上記<7>において、チタニウム
テトラn−ブトキシド3部を鉄(III)トリエトキシド
3部にし、酢酸2.54部を酢酸3.4部にし、反応装
置に仕込むプロピレングリコールモノメチルエーテルア
セテートを119.3部にする以外は<7>と同様の操
作を行い、粒子粉末を得た。<7>と同様に得られた粒
子粉末のXRDを測定し、温度T8を変化させたときの
結晶生成の有無等を調べたところ、温度T8が180℃
以上では、酸化鉄の結晶が生成していることが分かっ
た。 以上<7>、<8>より、反応加熱温度Th’は180
℃以上であると判定できた。
【0150】そこで、実施例1と同様の反応容器を用
い、この反応装置内を窒素ガスでパージした後、プロピ
レングリコールモノメチルエーテルアセテート55部お
よび酢酸14部を仕込み、225℃に昇温した。一方、
添加槽には、チタニウムn−テトラブトキシド15部、
鉄(III)トリエトキシド0.93部、酢酸14部、プ
ロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート15
部の添加液スラリー(4)を仕込み、撹拌しながら22
5℃に昇温した。加圧下、225℃で加熱された反応装
置内のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテ
ートを撹拌所要動力0.1kw/m3で撹拌しながら、
添加液スラリー(4)の全量をスラリーポンプで連続添
加した。添加した時間は30秒であった。
【0151】添加終了後の混合物(4)の温度は225
℃であり、その後225℃±2℃に維持しながら、5時
間加熱保持した後、25℃に冷却することによって、反
応液(4)100部を得た。得られた反応液(4)は、
アナタース型酸化チタンの金属酸化物系粒子(以下、金
属酸化物系粒子(4)と称することがある。)が4.0
重量%で分散した分散体であった。 −比較例4− 実施例1と同様の反応容器を用い、この反応装置内を窒
素ガスでパージした後、プロピレングリコールモノメチ
ルエーテルアセテート55部および酢酸14部を仕込
み、160℃に昇温した。
【0152】一方、添加槽には、実施例4と同様に、チ
タニウムn−テトラブトキシド15部、鉄(III)トリ
エトキシド0.93部、プロピレングリコールモノメチ
ルエーテルアセテート15部の添加液スラリー(4)を
仕込み、撹拌しながら160℃に昇温した。加圧下、1
60℃で加熱された反応装置内のプロピレングリコール
モノメチルエーテルアセテートを撹拌所要動力0.1k
w/m3で撹拌しながら、添加液スラリー(4)の全量
をスラリーポンプで連続添加した。添加した時間は30
秒であった。
【0153】添加終了後の混合物(4c)の温度は16
0℃であり、その後160℃±2℃に維持しながら5時
間加熱保持した後、25℃に冷却することによって、反
応液(4c)100部を得た。得られた反応液(4c)
は、アナタース型酸化チタンの金属酸化物系粒子(以
下、金属酸化物系粒子(4c)と称することがある。)
が4.0重量%で分散した分散体であった。このように
して得られた金属酸化物系粒子(4)および金属酸化物
系粒子(4c)について、固溶率、偏析物の有無、結晶
子径について解析し、その結果を表8に示す。
【0154】
【表8】
【0155】−実施例5− 撹拌機、温度計、窒素ガスパージ口(入口と出口)を備
えた、外部より加熱し得る耐圧ガラス製反応器を用意し
た。 <亜鉛含有溶液の調製>反応器に、酢酸亜鉛無水物4
部、n−ブタノール150部、メタノール50部からな
る混合物を仕込み、反応器内を窒素パージした後、混合
物を常温(19℃)より、100℃に昇温した後、冷却
し、エバポレーターによりメタノールおよびn−ブタノ
ールの一部を留去し、n−ブタノールで濃度調整するこ
とにより、透明溶液(5a)100部を得た。 <鉄含有溶液の調製>反応器に、塩基性酢酸鉄(III)
8.32部、n−ブタノール150部、メタノール50
部からなる混合物を仕込み、反応器内を窒素パージした
後、混合物を常温(19℃)より、100℃に昇温した
後、冷却し、エバポレーターによりメタノールおよびn
−ブタノールの一部を留去し、n−ブタノールで濃度調
整することにより、透明溶液(5b)100部を得た。 <塗布液の調製>透明溶液(5a)100部と、透明溶
液(5b)100部とを混合することにより、亜鉛・鉄
含有溶液を得、これに高沸点溶媒として、酢酸ベンジル
50部を加え、塗布液(5)とした。 <薄膜の製造>塗布液(5)を、ガラス板にバーコータ
ーで塗布し、200℃で加熱された加熱炉に入れ、10
分間加熱した。
【0156】得られたガラス板の表面に形成された膜
は、膜厚0.1μmであり、薄膜XRDで解析した結
果、フェライトの回折パターンを示し、ZnO、Fe2
3の回折ピークは観測されなかった。また、膜の蛍光
X線分析、局所組成分析いずれにおいても、Zn/Fe
=1/1(原子%)であることが確認された。従って、
得られた膜は、ZnFe24と判断された。 −比較例5− 実施例5で得られた塗布液(5)を、ガラス板にバーコ
ーターで塗布し、140℃加熱炉に入れて10分間保持
後、10℃/分で昇温し、200℃で10分間加熱し
た。
【0157】得られたガラス板の表面に形成された膜
は、膜厚0.1μmであり、薄膜XRDで解析した結
果、ZnOの回折ピークが観察され、ヘマタイトに帰属
される回折ピークは観測されなかった。 −実施例6− <亜鉛含有溶液の調製>実施例5と同様の反応容器を用
意した。この反応器に、酢酸亜鉛無水物13部、2−ブ
トキシエタノール200部、メタノール50部からなる
混合物を仕込み、反応器内を窒素パージした後、混合物
を常温(19℃)より、100℃に昇温した後、冷却
し、エバポレーターによりメタノールおよび2−ブトキ
シエタノールの一部を留去し、2−ブトキシエタノール
で濃度調整することにより、透明溶液(6a)150部
を得た。 <In含有溶液の調製>反応器に、酢酸インジウム1
0.3部、2−ブトキシエタノール200部、メタノー
ル50部からなる混合物を仕込み、反応器内を窒素パー
ジした後、混合物を常温(19℃)より、100℃に昇
温した後、冷却し、エバポレーターによりメタノールお
よび2−ブトキシエタノールの一部を留去し、2−ブト
キシエタノールで濃度調整することにより、透明溶液
(6a)150部を得た。 <塗布液の調製>透明溶液(6a)100部と、透明溶
液(6b)10部とを混合することにより、亜鉛・In
含有溶液を得、これを塗布液(6)とした。 <薄膜の製造>塗布液(6)を、ガラス板にバーコータ
ーで塗布し、200℃で加熱された加熱炉に入れ、10
分間加熱した。
【0158】得られたガラス板の表面に形成された膜
は、膜厚0.1μmであり、薄膜XRDで解析した結
果、ZnOの回折パターンを示し、ZnO結晶からなる
膜であることが確認された。また膜の局所分析を10箇
所に関して行った結果、ZnO結晶は、In/Zn=
4.3〜4.7(原子%)からなる固溶体ZnOである
ことが確認された。 −比較例6− 実施例6と同様にして、塗布液(6)を得た。塗布液
(6)を、ガラス板にバーコーターで塗布し、160℃
の加熱炉に入れ10分間保持後、10℃/分で昇温し、
200℃で10分間加熱した。
【0159】得られたガラス板の表面に形成された膜
は、膜厚0.1μmであり、薄膜XRDで解析した結
果、ZnOの回折パターンを示し、ZnO結晶からなる
膜であることが確認された。また膜の局所分析を行った
結果、該膜におけるIn含有率は、10箇所測定した
が、いずれの部分も検出限界以下(In/Zn<0.5
%(原子%))であり、得られた膜は、Inが固溶して
いないか、固溶していてもIn/Zn<0.5%(原子
%)の固溶体からなる膜であり、添加したInの多くは
酸化インジウムまたは非酸化物として偏在していると判
断された。
【0160】−実施例7− <亜鉛含有溶液の調製>実施例5と同様の反応器を用意
した。この反応器に、酢酸亜鉛無水物8部、n−ブタノ
ール150部、メタノール50部からなる混合物を仕込
み、反応器内を窒素パージした後、混合物を常温(19
℃)より、100℃に昇温した後、冷却し、エバポレー
ターによりメタノールおよびn−ブタノールの一部を留
去し、n−ブタノールで濃度調整することにより、透明
溶液(7a)100部を得た。 <Mn含有溶液の調製>反応器に、酢酸マンガン(II)
4水和物2.14部、n−ブタノール150部、メタノ
ール50部からなる混合物を仕込み、反応器内を窒素パ
ージした後、混合物を、常温(19℃)より、100℃
に昇温した後、冷却し、エパポレーターによりメタノー
ルおよびn−ブタノールの一部を留去し、n−ブタノー
ルで濃度調整することにより、透明溶液(7b)100
部を得た。 <塗布液の調製>透明溶液(7a)100部と、透明溶
液(7b)10部とを混合することにより、亜鉛・Mn
含有溶液を得、これを塗布液(7)とした。 <薄膜の製造>塗布液(7)を、ガラス板にバーコータ
ーで塗布し、200℃で加熱された加熱炉に入れ、10
分間加熱した。
【0161】得られたガラス板の表面に形成された膜
は、膜厚0.1μmであり、薄膜XRDで解析した結
果、ZnOの回折パターンを示し、ZnO結晶からなる
膜であることが確認された。また膜の局所分析を10箇
所の関して行った結果、ZnO結晶は、Mn/Zn=
1.8〜2.2(原子%)からなる固溶体ZnOである
ことが確認された。 −比較例7− 実施例7と同様にして、塗布液(7)を得た。塗布液
(7)を、ガラス板にバーコーターで塗布し、160℃
の加熱炉に入れ10分間保持後、10℃/分で昇温し、
200℃で10分間加熱した。
【0162】得られたガラス板の表面に形成された膜
は、膜厚0.1μmであり、薄膜XRDで解析した結
果、ZnOの回折パターンを示し、ZnO結晶からなる
膜であることが確認された。また、膜の局所分析を行っ
た結果、該膜におけるMn含有率は、比較例6の場合と
同様に、場所によって大きく異なり、Mn固溶率は、M
n/Zn<0.2(原子%)と判断された。 −実施例8− <Ti含有溶液の調製>実施例5と同様の反応器を用意
した。
【0163】この反応器に、チタニウムテトラn−テト
ラブトキシド15部、酢酸13部、プロビレングリコー
ルメチルエーテルアセテート73部からなる混合物を仕
込み、反応器内を窒素パージした後、混合物を常温(1
9℃)より100℃に昇温した後、冷却することによ
り、透明溶液(8a)100部を得た。 <Fe(III)含有溶液の調製>反応器に、鉄(III)ト
リエトキシド4.3部、酢酸5部、プロピレングリコー
ルメチルエーテルアセテート90.7部からなる混合物
を仕込み、反応器内を窒素パージした後、混合物を常温
(19℃)より100℃に昇温した後、冷却することに
より、透明溶液(8b)100部を得た。 <塗布液の調製>透明溶液(8a)100部と、透明溶
液(8b)10部とを混合することにより、Ti・Fe
含有溶液を得、これを塗布液(8)とした。 <薄膜の製造>塗布液(8)を、ガラス板にバーコータ
ーで塗布し、200℃で加熱された加熱炉に入れ、10
分間加熱した。
【0164】得られたガラス板の表面に形成された膜
は、膜厚0.1μmであり、薄膜XRDで解析した結
果、アナタース型酸化チタンの回折パターンを示し、ア
ナタース型酸化チタン結晶からなる膜であることが確認
された。また、膜の局所分析を行った結果、該結晶は、
Fe/Ti=3.3〜3.6(原子%)からなる酸化チ
タン系固溶体であることが確認された。 −比較例8− 実施例8と同様にして、塗布液(8)を得た。塗布液
(8)を、ガラス板にバーコーターで塗布し、160℃
の加熱炉に入れ10分間保持後、10℃/分で昇温し、
200℃で10分間加熱した。
【0165】得られたガラス板の表面に形成された膜
は、膜厚0・1μmであり、薄膜XRDで解析した結
果、アナタース型酸化チタンの回折パターンを示し、ア
ナタース型酸化チタン結晶からなる膜であることが確認
された。また、膜の局所分析を行った結果、該結晶は、
Feが固溶していたとしてもFe/Ti<0.5(原子
%)である、酸化チタンからなると判定された。 −実施例9− 以下、<9>、<10>、<11>のようにして、実施
例9の反応加熱温度Thを確認した。
【0166】<9> 酢酸亜鉛3部を、メタノールとジ
プロピレングリコールモノエチルエーテルと(1:2)
の混合溶媒3部に混合し、これを添加液Eとして添加槽
に入れ、常温で撹拌しておいた。次に、反応装置内を窒
素ガスでパージした後、メタノールとジプロピレングリ
コールモノエチルエーテルと(1:2)の混合溶媒12
7部を仕込み、撹拌しながらT9℃に昇温した。加圧
下、T9℃に加熱された反応装置内のメタノールとジプ
ロピレングリコールモノエチルエーテルと(1:2)の
混合溶媒を撹拌所要動力0.1kw/m3で撹拌しなが
ら、添加槽から添加液Eを全量添加した。
【0167】添加終了後の温度を計測したところT10
であり、その後、T10±2℃に維持した。そして、添加
終了から反応液が(一旦透明化して再び)濁り始めた時
点までの時間t5を計測しておき、さらに、添加終了か
ら10分後の反応液を、冷却ラインを通しながら30℃
以下に冷却した。この冷却した反応液から、遠心分離に
よって生成した粒子を分離し、分離した粒子をアセトン
で洗浄し、50℃で真空乾燥した。このようにして得ら
れた粒子粉末のXRDを測定することで、ZnO結晶の
回折ピーク有無を観測し、結晶が生成しているかどうか
確認した。
【0168】以下表9に、温度T10を変化させたときの
結晶生成の有無等を調べた結果を示す。
【0169】
【表9】
【0170】<10> 上記<9>において、酢酸亜鉛
3部をプロピオン酸インジウム3部にし、反応装置に仕
込むメタノールとジプロピレングリコールモノエチルエ
ーテルと(1:2)の混合溶媒を119部にする以外は
<9>と同様の操作を行い、粒子粉末を得た。<9>と
同様に得られた粒子粉末のXRDを測定し、温度T10
変化させたときの結晶生成の有無等を調べたところ、温
度T10が140℃以上では、酸化インジウムの結晶が生
成していることが分かった。以下、表10に、温度T10
を変化させたときの酸化インジウム結晶生成の有無等を
調べた結果を示す。
【0171】
【表10】
【0172】<11> 上記<9>において、酢酸亜鉛
3部を酢酸インジウム3部にし、反応装置に仕込むメタ
ノールとジプロピレングリコールモノエチルエーテルと
(1:2)の混合溶媒を144部にする以外は<9>と
同様の操作を行い、粒子粉末を得た。<9>と同様に得
られた粒子粉末のXRDを測定し、温度T10を変化させ
たときの結晶生成の有無等を調べたところ、温度T10
140以下では、酸化インジウムの結晶は生成しないこ
とが分かった。以下、表11に、温度T10を変化させた
ときの酸化インジウム結晶生成の有無等を調べた結果を
示す。
【0173】
【表11】
【0174】以上<9>、<10>、<11>より、よ
り低温で、In固溶ZnO結晶を生成するためには、酢
酸インジウムよりプロピオン酸インジウムを用いた方が
有利であり、その場合の反応加熱温度Thは140℃以
上であると判定できた。 <亜鉛含有溶液の調製>実施例5と同様の反応器を用意
した。この反応器に、酢酸亜鉛無水物10部、ジプロピ
レングリコールモエチルエーテル50部、メタノール1
00部からなる混合物を仕込み、反応器内を窒素パージ
した後、混合物を常温(190C)より100℃に昇温
した後、冷却することにより、透明溶液(9a)160
部を得た。 <In含有溶液の調製>反応器に、プロビオン酸インジ
ウム10部、ジプロピレングリコールモノエチルエーテ
ル50部、メタノール100部からなる混合物を仕込
み、反応器内を窒素パージした後、混合物を常温(19
℃)より120℃に昇温した後、冷却することにより、
透明溶液(9b)160部を得た。 <塗布液の調製>透明溶液(9a)100部と、透明溶
液(9b)3.64部とを混合することにより、亜鉛・
インジウム含有溶液を得、これを塗布液(9)とした。 <薄膜の製造>塗布液(9)を、シリカ蒸着したポリエ
チレンナフタレートフィルムに、バーコーターで塗布
し、140℃で加熱された加熱炉に入れ、10分間加熱
した。
【0175】得られたポリエチレンナフタレートフィル
ムの表面に形成された膜は、膜厚0.1μmであり、薄
膜XRDで解析した結果、ZnOの回折パターンを示
し、ZnO結晶からなる膜であることが確認された。ま
た、膜の局所分析を行った結果、ZnO結晶は、In/
Zn=1.5〜2(原子%)からなる固溶体ZnOであ
ることが確認された。 −比較例9− 実施例9と同様にして、塗布液(9)を得た。塗布液
(9)を、シリカ蒸着したポリエチレンナフタレートフ
ィルムにバーコーターで塗布し、120℃加熱された加
熱炉に入れ、10分間加熱した。
【0176】得られたポリエチレンナフタレートフィル
ムの表面に形成された膜は、膜厚0.1μmであり、薄
膜XRDで解析した結果、ZnOの回折パターンを示
し、ZnO結晶からなる膜であることが確認された。ま
た、膜の局所分析を行った結果、該膜におけるIn含有
率は、場所によって大きく異なり、10個所測定した
が、いずれも検出限界以下(In/Zn<0.5(原子
%))であった。従って、生成した膜は、Inが固溶し
ていないか、固溶していてもIn/Zn<0.5(原子
%)の固溶体からなるZnOであり、添加したInの多
くはインジウム化合物として偏在していると判断され
た。
【0177】−比較例10− <亜鉛含有溶液の調製>実施例5と同様の反応器を用意
した。この反応器に、酢酸亜鉛無水物10部、ジプロピ
レングリコールモノエチルエーテル50部、メタノール
100部からなる混合物を仕込み、反応器内を窒素パー
ジした後、混合物を常温(19℃)より100℃に昇温
した後、冷却することにより、透明溶液(10a)16
0部を得た。 <In含有溶液の調製>反応器に、酢酸インジウム10
部、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル50
部、メタノール100部からなる混合物を仕込み、反応
器内を窒素パージした後、混合物を常温(19℃)より
120℃に昇温した後、冷却することにより、透明溶液
(10b)160部を得た。 <塗布液の調製>透明溶液(10a)100部と、透明
溶液(10b)3.18部とを混合することにより、亜
鉛・In含有溶液を得、これを塗布液(10)とした。 <薄膜の製造>塗布液(10)を、シリカ蒸着したポリ
エチレンナフタレートフィルムにバーコーターで塗布
し、140℃で加熱された加熱炉に入れ、10分間加熱
した。
【0178】得られたポリエチレンナフタレートフィル
ムの表面に形成された膜は、膜厚0.1μmであり、薄
膜XRDで解析した結果、ZnOの回折パターンを示
し、ZnO結晶からなる膜であることが確認された。ま
た、膜の局所分析を行った結果、該膜におけるIn含有
率は、10個所測定したが、いずれも検出限界以下(I
n/Zn<0.5(原子%))であった。従って、生成
した膜は、Inが固溶していないか、固溶していてもI
n/Zn<0.5(原子%)の固溶体からなるZnOで
あり、添加したInの多くはインジウム化合物として偏
在していると判断された。
【0179】
【発明の効果】本発明によれば、2種以上の金属原子を
含有する複合酸化物もしくは固溶体酸化物の金属酸化物
系粒子または金属酸化物膜を得る場合に、それら含有金
属原子の均一性が良好な状態で、容易に且つ安定して得
ることのできる、新規な金属酸化物系粒子の製造方法お
よび金属酸化物膜の形成方法を提供することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C01G 49/00 C01G 49/00 A Fターム(参考) 4G002 AA06 AB02 AD04 AE01 AE05 4G042 DA02 DB11 DB12 DC03 DD02 DD04 DE07 DE08 DE14 4G048 AA03 AB02 AC05 AC08 AD02 AD04 AD06 AE08

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】含有金属原子の異なる2種以上の金属カル
    ボン酸塩とアルコールとを出発原料として金属酸化物系
    粒子を生成させる方法であって、 前記2種以上の金属カルボン酸塩の反応速度が実質的に
    同じとなる温度下で前記生成を行う、ことを特徴とす
    る、金属酸化物系粒子の製造方法。
  2. 【請求項2】含有金属原子の異なる2種以上の金属アル
    コキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出
    発原料として金属酸化物系粒子を生成させる方法であっ
    て、 前記2種以上の金属アルコキシ基含有化合物の反応速度
    が実質的に同じとなる温度下で前記生成を行う、ことを
    特徴とする、金属酸化物系粒子の製造方法。
  3. 【請求項3】含有金属原子の異なる2種以上の金属カル
    ボン酸塩とアルコールとを出発原料として生成する金属
    酸化物を基材の表面に膜として定着させる、金属酸化物
    膜の形成方法であって、 前記2種以上の金属カルボン酸塩の反応速度が実質的に
    同じとなる温度下で前記生成を行う、ことを特徴とす
    る、金属酸化物膜の形成方法。
  4. 【請求項4】含有金属原子の異なる2種以上の金属アル
    コキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出
    発原料として生成する金属酸化物を基材の表面に膜とし
    て定着させる、金属酸化物膜の形成方法であって、 前記2種以上の金属アルコキシ基含有化合物の反応速度
    が実質的に同じとなる温度下で前記生成を行う、ことを
    特徴とする、金属酸化物膜の形成方法。
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