JP4938985B2 - 金属酸化物粒子およびその用途 - Google Patents
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Description
例えば、化粧品、建材や自動車用あるいはディスプレイ用の窓ガラス、フラットパネルディスプレイなどの各種分野で用いられる紫外線吸収性材料には、近年、従来一般的に言われている380nm以下の紫外線(特に380nm付近の紫外線)に加え、より長波長領域の紫外線(短波長の可視光)に対しても優れた吸収性能を有することが求められている。これは、可視光のなかでも短波長領域の可視光は、高エネルギーであるためにプラスチックの劣化や人体への悪影響をもたらすことが懸念されるからである。また、前記紫外線吸収材料には、可視光を散乱させず高い可視光透過性を示し良好な透明性を有すること、黄色などの着色がなく基材の色相を変化させないこと、および、耐久性や耐熱性に優れること、が求められている。
そこで、さらに紫外線吸収材料の紫外線吸収性能を改善する手法として、酸化亜鉛と異種金属等との複合化が提案されている。例えば、i)FeやCoを酸化亜鉛に含有(ドープ)させたもの(特許文献1、非特許文献1参照)、ii)Ce、Ti、Al、Fe、CrおよびZrからなる少なくとも1種と、Znとの複合酸化物(特許文献2参照)、iii)Ce、Ti、Al、Fe、Co、LaおよびNiからなる少なくとも1種を酸化亜鉛に含有させたもの(特許文献3参照)が提案されている。
したがって、本発明にかかる金属酸化物粒子は、金属元素(M)の酸化物からなる粒子内に該金属元素(M)以外の金属元素(M’)に由来する成分が含有されている金属酸化物粒子において、前記金属元素(M’)は、Co、Fe、Niからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、i)前記金属元素(M)は、Zn、Ti、Ce、In、Sn、AlおよびSiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記金属元素(M’)とするCo、FeおよびNiの少なくとも一部は2価であるか、ii)前記金属元素(M)はZnであり、(002)面に垂直方向の結晶子径が30nm以下、(100)面に垂直方向の結晶子径が8nm以上であるか、iii)前記金属元素(M)は、Zn、Ti、Ce、In、Sn、AlおよびSiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記金属元素(M’)のほかに、アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素に由来する成分をも含有する、ことを特徴とする。
本発明にかかる膜は、金属酸化物を必須構成成分としてなり、前記金属酸化物が、前記本発明の金属酸化物粒子および/または該粒子に由来する金属酸化物結晶を必須とするものである。
〔金属酸化物粒子〕
本発明の金属酸化物粒子は、前述したように、特定の金属元素(M)の酸化物からなる粒子内に該金属元素(M)以外の金属元素(M’)(以下「異種金属元素」と称することもある。)に由来する成分が含有されたものである。さらに詳しくは、本発明において、前記異種金属元素に由来する成分を含有するとは、本発明の金属酸化物粒子を構成する金属酸化物が前記異種金属元素を含む金属酸化物であればよく、前記異種金属元素がいかなる存在形態で含有されているかは問わない。
本発明の金属酸化物粒子の形状は、限定はされない。具体的には、本発明の金属酸化物粒子が金属酸化物の単結晶体からなる粒子である場合は、上述した結晶子形状と同じであるが、多結晶体からなる粒子であったり、結晶子同士が固着または凝集した粒子であったりする場合は、粒子の形状は、結晶子の形状と同じとは限らず、例えば、球状(真球状)、楕円球状、立方体状、直方体状、ピラミッド状、針状、柱状、棒状、筒状、りん片状、(六角)板状等の薄片状などが挙げられる。
上記固溶体酸化物については、いわゆる侵入型固溶体酸化物であってもよいし、置換型固溶体酸化物であってもよいし、これらの組み合わせたものであってもよく、限定はされない。
前記金属元素(M’)として選択しうる群の中で、Niとしては、例えば、Ni(0)、Ni(II)、Ni(I)、Ni(III)が挙げられる。なお、Niは、Ni(0)として、すなわち金属として金属酸化物粒子の表面に付着(被着)して効果を発揮することもできる。これらのなかでも、Ni(II)が、紫外線遮蔽性などに優れる点で好ましい。
Co(II)を必須とするCoについては、Co(II)のみからなるものであってもよいし、Co(II)のほかに他の価数のCo(例えばCo(III))を含むものであってもよく、限定はされないが、紫外線遮蔽性(紫外線吸収性)に優れる点で、前者またはその組成により近いもの(具体的には、Co全体に対しCo(II)が50原子%以上、好ましくは70原子%以上、より好ましくは90原子%以上。)が好ましい。以下では、特に言及しない限り、単に「Co(II)」と示した場合は、「Co(II)を必須とするCo」を表すものとする。
これらの中でも、Co(II)とFe(価数は特に限定しないが、好ましくは2価)との組み合わせは特に好ましい態様である。従来、Coを含有する金属酸化物粒子は、Coによる着色(青色)の度合いが強いため、より無色透明であることが要求される用途においては、使用し難く実用性に欠ける場合があり、また、前記従来の金属酸化物粒子は、酸化亜鉛粒子に比べて370nm以下の波長の紫外線の吸収性能が低いという実情もあり、より厳しい紫外線吸収性能を要求される用途においては、有用性に欠ける場合もあった。Co(II)とFeとを組み合わせることで、前記Coによる着色については、多少着色はあったとしても、より無色透明であることが要求される用途において十分に使用できるやわらかい色相に抑えることができ、また、370nm以下の波長の紫外線の吸収性能を付加的に高くできるのである。他方、従来、異種金属元素として例えば3価のFeのみを含有させた場合にも着色(濃褐色)の問題があったが、Co(II)と組み合わせて用いることで、Co(II)に起因する着色(青色)により、上記着色の問題が効果的に緩和でき、実用性の点でも十分に問題ないものとなる、という側面もある。
なお、第1の金属酸化物粒子においても、後述する第3の金属酸化物粒子のように、前記金属元素(M’)のほかに、アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素に由来する成分をも含有することが好ましく、その含有量についても同様である。
前記第3の金属酸化物粒子においては、前記金属元素(M’)のほかに、アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素に由来する成分をも含有する。これにより、紫外線吸収性能をさらに高めることができる。アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素の含有量は、金属元素(M)に対して0.001〜5原子%の範囲が好ましく、0.001〜1原子%の範囲がより好ましい。
本発明の金属酸化物粒子、特に前記第2の金属酸化物粒子においては、その1次粒子が、単結晶体(1つの結晶子からなる結晶体)であることが好ましい。単結晶体であるか、多結晶体であるかは、TEMでの観察により確認できる。
本発明の金属酸化物粒子においては、本発明の効果を損なわない範囲で、前記金属元素(M)の酸化物に前記金属元素(M’)以外の金属元素を含有させることもできる。異種金属元素(M’)以外の金属元素としては、特に限定されないが、例えば、Al、In、Sn、Mn、Ce等の中から、前記金属元素(M)としていないものを選択することが好ましい。
前記異種元素(すなわち、異種金属元素(M’)や、これ以外に金属元素(M)の酸化物に含有させる金属元素)の含有率の測定は、蛍光X線分析、原子吸光分析およびICP(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析)等の微量成分分析手法で行うこともできるが、上記高分解能XMAによる元素分析を所望の空間分解能(スポット径)で行い、各金属元素に帰属するピーク強度を測定し、その結果から算出するようにする手法で行うことが好ましい。上記スポット径は、プローブを絞ることにより下限を1nmφにまでできるとともに、任意に連続的に拡大することもできる。具体的には、FE−TEMによる透過像において、通常は偏析物の認められない約10個の金属酸化物粒子の集合体を選択し、これら約10個の粒子をすべて含むような空間分解能(スポット径)で元素分析を行うこととする。
前記FE−TEMとしては、例えば、日立製作所製の電界放射型透過型電子顕微鏡(HF−2000型、加速電圧200kV)等を用いることができる。前記高分解能XMAとしては、例えば、ケヴェックス(Kevex)社製のX線マイクロアナライザー(Sigma型、エネルギー分散型、ビーム径:空間分解能10Åφ)等を用いることができる。
但し、ρ:粒子の真比重(無次元)
S:B.E.T.法で測定される粒子の比表面積(m2/g)
本発明の金属酸化物粒子においては、前記金属元素(M)の酸化物が結晶であり、結晶子径(Dw)(XRDピークの3強線についてシェラーの式に従って計算した各値の平均値)が30nm以下であることが好ましい。
特に、本発明の金属酸化物粒子において、前記金属元素(M)の酸化物が酸化亜鉛結晶である場合、透明性と紫外線吸収性の両方に優れる点で、X線回折測定による結晶子径のうち、格子面(002)に垂直方向の結晶子径が30nm以下であり、格子面(100)および/または格子面(110)に垂直方向の結晶子径が8nm以上であることが好ましい。より好ましくは、格子面(002)に垂直方向の結晶子径は20nm以下であり、格子面(100)および/または格子面(110)に垂直方向の結晶子径は10nm以上である。具体的には、格子面(002)に垂直方向(光軸方向)の結晶子径は、紫外線吸収性能にさほど大きな影響は及ぼさず、透明性を高める点では小さい方が好ましい。他方、格子面(002)の方向(光軸に対して垂直方向)の結晶子径、例えば、格子面(100)および/または格子面(110)に垂直方向の結晶子径は、小さすぎると紫外線吸収性能を低下させることになる。なお、各格子面に垂直方向の結晶子径は、粉末X線回折測定を行い、シェラー解析を行うことにより求めることができる。
本発明の金属酸化物粒子の光学的性能は、紫外線領域(380nm以下における紫外線および450nm以下における可視光)における光の遮断性(紫外線遮断性)と、可視光(450nm〜780nm)における透過性(可視光透過性)を指標とすることができる。紫外線吸収機能材料としては、紫外線遮断性が高く、可視光透過性が高いことが好ましい。通常、紫外線遮断性や可視光透過性は、粒子のみの状態、後述する膜形成用組成物から得られる膜とした状態、あるいは溶媒等の分散媒体中に粒子が分散されてなる状態において、分光透過率特性を評価することによって、判定できる。詳しくは、紫外線遮断性は、紫外線領域の任意の波長(例えば、380nm、400nm、420nmなど)における透過率を代表値として評価するか、あるいは、450nm以下もしくは380nm以下の平均透過率を評価することによって判定される。一方、可視光透過性は、可視光領域の任意の波長(例えば、500nm、600nm、700nmなど)における透過率を代表値として評価するか、あるいは、450nm〜780nmもしくは380nm〜780nmにおける平均透過率を評価することによって判定される。これら透過率の値は、各波長における平行線透過光と拡散透過光を含めた透過率の測定により得ることができ、例えば、積分球を付帯した分光測光機により測定することができる。ただし、試料の透明感が高く、拡散透過光が実質的に無視できる場合(具体的には、試料のヘイズが5%未満である場合)には、平行線透過率のみを測定値として用いてもよい。
また、本発明の金属酸化物粒子は、紫外線遮断を目的とする用途に限らず使用されるものであり、膜としたときに透明性が高いことが好ましい。具体的には、ヘイズが10%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
本発明の金属酸化物粒子については、該粒子および/または該粒子に由来する金属元素(M)の酸化物の結晶を必須構成成分としてなる膜にしたときに、該膜の光学特性が下記の条件を満たす粒子であることが、可視光は透過させ紫外線のみを選択的に吸収する性能に優れる点で、好ましい。ここで、該膜の形態および成膜方法等については、後述する本発明の膜に関する説明が同様に適用できる。なお、以下に示す該膜の光学特性は、後述する実施例に記載の方法により測定・評価される値であるとし、また、膜部分のみ(基材除く)についての物性であって、膜付き基材の光学特性と基材のみの光学特性とを勘案して評価されるものとする。本発明の金属酸化物粒子が金属元素としてCo(II)を含有する場合には、さらに、該膜の光学特性のうち、紫外線吸収性能の指標となる波長380nmの光の透過率(%)をT380と定義するとともに、可視光透過性能の指標となる、波長500nmの光の透過率(%)をT500と、波長550nm〜700nmの光の透過率(%)の最小値をT1と、T1とT500との差の絶対値(|T1−T500|)をΔTと、定義する。
Co(II)を含有する金属酸化物粒子の場合(a);
(i) T380が40%以下となるように上記膜を形成したときに、ΔTが10%以下であることが好ましく、より好ましくはΔTが10%以下かつT500が90%以上であり、さらに好ましくはΔTが5%以下かつT500が95%以上である。
さらに好ましくは、(iii) T380が20%以下となるように上記膜を形成したときに、ΔTが10%未満であることが好ましく、より好ましくはΔTが10%未満かつT500が80%以上であり、さらに好ましくはΔTが5%以下かつT500が85%以上であり、特に好ましくはΔTが5%以下かつT500が90%以上である。
前記以外の金属酸化物粒子の場合(b);
(i) T380が20%以下となるように上記膜を形成したときに、T500が90%以上であることが好ましく、さらに好ましくはT500が90%以上である。
好ましくは、(ii) T380が10%以下(より好ましくはT380が5%以下)となるように上記膜を形成したときに、T500が70%以上であることが好ましく、さらに好ましくはT500が80%以上である。
金属化合物(1):テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン等の、前記金属元素(M)の酸化物に含まれる金属元素(M’)とは異なる少なくとも1種の金属元素からなる金属アルコキシド類。
金属化合物(2):下記一般式(a)で表される有機基含有金属化合物。なお、該金属化合物中の金属元素の種類は、限定はされない。
Y1 iM1X1 j (a)
(ただし、Y1は有機官能基、M1は金属原子、X1は加水分解性基である。iおよびjは1〜(s−1)の整数であってi+j=s(sはM1の原子価)を満足する。)
一般式(a)で表される有機基含有金属化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。
M1がケイ素である有機基含有化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’−ビス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン等のアミノ系シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロル系シランカップリング剤;アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアクリロキシ系シランカップリング剤;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のケチミン系シランカップリング剤;N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩等のカチオン系シランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ヒドロキシエチルトリメトキシシラン等のアルキル系シランカップリング剤;(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン等のフッ素含有有機基を有するシリコン化合物;イソシアン酸プロピルトリメトキシシラン等のイソシアナト基含有有機基を有するシランカップリング剤;下記一般式(b):
R’O(C2H4O)nC3H6Si(OR”)3 (b)
(だだし、R’は、水素、または、メチル基等のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アシル基およびアラルキル基から選ばれる少なくとも1種の置換されていてもよい基である。R”は、メチル基等のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アシル基およびアラルキル基から選ばれる少なくとも1種の置換されていてもよい基である。nは1以上の整数である。)
で表されるシランカップリング剤;γ−ウレイドプロピルトリエトキシシランやヘキサメチルジシラザン等の各種シランカップリング剤などが挙げられる。
金属化合物(3):金属アルコキシド(金属は任意)の(部分)加水分解物または縮合物や上記(2)の(部分)加水分解物または縮合物であり、例えば、下記一般式(c)で表される。
R1−(O−M(−R2 m1)(−R3 m2))n−R4 (c)
(ただし、R1、R2は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基およびアシル基からなる群より選ばれるいずれか1種もしくは該1種が置換されていてもよい基であり、R3は加水分解性基(上記一般式(a)中のX1と同じ)または水酸基であり、R4はR2またはR3であり、Mは金属原子である。m1およびm2は(Mの原子価−2)であり、nは2から10000までの整数である。なお、金属原子Mに結合するR2およびR3の種類やその価数(m1およびm2)は、金属原子Mの相互間ですべて同じであってもよいし少なくとも一部が異なっていてもよい。)
例えば、上記金属化合物(2)の加水分解縮合物であれば、上記一般式(a)中の金属原子M1に結合している加水分解性基X1の一部あるいは全部が加水分解されて該X1がOH基となった化合物や、さらにM1−OH間での脱水縮合等の縮合反応によりM1−O−M1結合を形成してなる化合物等が挙げられ、具体的には、金属化合物(2)として列挙した有機基含有化合物を、加水分解縮合および/または部分加水分解縮合してなる、線状や環状の3量体をはじめとする、線状(分岐鎖を含むものを含む)や環状の加水分解縮合物が挙げられる。
本発明の金属酸化物粒子の製造方法については、限定はされず、公知の、金属酸化物粒子に所望の異種金属元素を含有させた(ドープした)粒子を得ることのできる方法であれば、何れの方法も採用できる。例えば、金属元素(M)化合物および/またはその加水分解縮合物と、異種金属元素(M’)化合物と、アルコールとを出発原料とし、これらの混合系を高温状態にして、金属酸化物粒子を生成させる(析出させる)工程を備える製造方法(以下、製造方法(A)と称する。)が好ましい。詳しくは、製造方法(A)は、出発原料としての、金属元素(M)化合物および/またはその加水分解縮合物と、異種金属元素(M’)化合物と、アルコールとを、混合すると同時かまたはその後に、該混合系を高温状態にする工程を備える方法である。このように高温状態にすることにより、反応系中に金属酸化物粒子を生成させることができる。
上記金属元素(M)のカルボン酸塩としては、カルボキシル基の水素原子が金属元素(M)の原子で置換された置換基を分子内に少なくとも1つ有する化合物が好ましい。具体的には、飽和モノカルボン酸、不飽和モノカルボン酸、飽和多価カルボン酸および不飽和多価カルボン酸などの鎖式カルボン酸;環式飽和カルボン酸;芳香族モノカルボン酸および芳香族不飽和多価カルボン酸などの芳香族カルボン酸;これらカルボン酸において、さらに分子内にヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、スルホン基、シアノ基およびハロゲン原子等の官能基または原子団を有する化合物;等のカルボン酸化合物中のカルボキシル基が、前記置換基となっている化合物が好ましく例示できる。
M(O)(m−x−y−z)/2(OCOR1)x(OH)y(OR2)z (I)
(但し、Mは金属元素(M)の原子(Zn、Ti、Ce、In、Sn、AlおよびSiからなる群より選ばれる少なくとも1種);R1は、水素原子、置換基があってもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた少なくとも1種;R2は、置換基があってもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた少なくとも1種;m、x、yおよびzは、x+y+z≦m、0<x≦m、0≦y<m、0≦z<mを満たす数(mはMの原子価)である。)
で表される化合物(例えば、前記例示した金属元素(M)のカルボン酸塩の一部が水酸基やアルコキシ基等で置換された化合物等)、飽和カルボン酸塩、不飽和カルボン酸塩および塩基性酢酸塩がより好ましく、さらに好ましくは上記一般式(I)で表される化合物であり、最も好ましくは金属元素(M)のギ酸塩、酢酸塩およびプロピオン酸塩ならびにこれらの塩基性塩である。
上記一般式(I)で表される化合物について、さらに詳しく説明する。
一般式(I)中のR1やR2としては、分散性の高い金属酸化物粒子が得られやすい点で、水素、メチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、水素、メチル基、エチル基が特に好ましい。また、同様の理由で、一般式(I)中のxは、1≦x≦mを満たすことが好ましく、yは0≦y<m/2を満たすことが好ましく、zは1≦z<m/2を満たすことが好ましい。
一般式(I)で表される化合物の加水分解縮合物のうち、縮合物については、金属元素(M)と酸素(O)とがメタロキサン結合した結合鎖−(M−O)n(ただし、nは1以上である。)を有する化合物であることが好ましい。上記縮合物の縮合度(平均)は、限定はされないが、結晶子の大きさや形態のそろった金属酸化物粒子が得られる点で、100以下であることが好ましく、より好ましくは10以下である。
製造方法(A)において用い得る異種金属元素(M’)の化合物としては、限定はされないが、例えば、金属カルボン酸塩類や金属アルコキシド類等が好ましく挙げられる。異種金属元素(M’)の化合物は、これらのうち1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
製造方法(A)において用い得るアルコールとしては、限定はされないが、例えば、脂肪族1価アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、ステアリルアルコール等)、脂肪族不飽和1価アルコール(アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール等)、脂環式1価アルコール(シクロペンタノール、シクロヘキサノール等)、芳香族1価アルコール(ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、メチルフェニルカルビノール等)、フェノール類(エチルフェノール、オクチルフェノール、カテコール、キシレノール、グアヤコール、p−クミルフェノール、クレゾール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、ドデシルフェノール、ナフトール、ノニルフェノール、フェノール、ベンジルフェノール、p−メトキシエチルフェノール等)、複素環式1価アルコール(フルフリルアルコール等)等の1価アルコール類;アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ピナコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等)、脂環式グリコール(シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール等)、および、ポリオキシアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)等のグリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート等の上記グリコール類のモノエーテルまたはモノエステル等の誘導体;グリセリンやトリメチロールエタン等の3価アルコール、エリスリトールやペンタエリスリトール等の4価アルコール、リピトールやキシリトール等の5価アルコール、ソルビトール等の6価アルコール等の3価以上の多価アルコール、ヒドロベンゾイン、ベンズピナコール、フタリルアルコール等の多価芳香族アルコール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等の2価フェノールや、ピロガロール、フロログルシン等の3価フェノール等の多価フェノール、および、これら多価アルコール類におけるOH基の一部(1〜(n−1)個(ただし、nは1分子当たりのOH基の数))がエステル結合またはエーテル結合となった誘導体;等を挙げることができる。アルコールは、これらのうち1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
出発原料としての、金属元素(M)化合物とアルコールとの相互の使用割合(配合割合)については、限定はされないが、金属元素(M)化合物の金属換算原子数に対する、アルコール中の(アルコール由来の)水酸基の数の比が、0.8〜1000であることが好ましく、より好ましくは0.8〜100、さらに好ましくは1〜50、特に好ましくは1〜20である。
前記出発原料の混合系は、ペースト状、乳濁液状、懸濁液状および溶液状などの流動性のある液状であることが好ましい。必要に応じて、後述する反応溶媒をも混合することにより、上記液状となるようにしてもよい。通常、金属元素(M)化合物および異種金属元素(M’)の化合物は、該混合系においては、粒子状で分散した状態、溶解した状態、あるいは、一部が溶解した状態で残りが粒子状で分散している状態、などの状態で存在する。
反応溶媒の使用量については、限定はないが、前記出発原料と反応溶媒との合計使用量に対する、前記金属元素(M)化合物の使用量の割合が、0.1〜50重量%であることが好ましく、金属酸化物粒子を経済的に得ることができる。
上記反応溶媒としては、水以外の溶媒、すなわち、非水溶媒が好ましい。非水溶媒としては、例えば、炭化水素、各種ハロゲン化炭化水素、アルコール(フェノール類や、多価アルコールおよびその誘導体で水酸基を有する化合物なども含む)、エーテルおよびアセタール、ケトンおよびアルデヒド、カルボン酸エステルおよびリン酸エステル類等のエステル、アミド類、多価アルコール類のすべての水酸基の水素がアルキル基やアシル基で置換された誘導体化合物、カルボン酸およびその無水物、シリコーン油ならびに鉱物油などを挙げることができる。反応溶媒としては、親水性溶媒が特に好ましい。具体的には、常温(25℃)において、水を5重量%以上含み溶液状態になり得る溶媒が好ましく、任意の量の水を含み均一な溶液状態になり得る溶媒がより好ましい。反応溶媒としてのアルコールとしては、出発原料となるアルコールとして先に列挙したものと同様のものが好ましく挙げられる。反応溶媒は、これらのうち1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
製造方法(A)において、前記出発原料の混合系を高温状態にするとは、該混合系の温度を常温よりも高い温度であって金属酸化物粒子が生成し得る温度、またはそれ以上の温度に昇温させることである。具体的には、得ようとする金属酸化物粒子の種類(金属元素(M)や異種金属元素(M’)の種類等)等によっても異なるが、一般には、50℃以上であり、結晶性の高い金属酸化物粒子を得るためには、80℃以上が好ましく、100〜300℃がより好ましく、100〜200℃がさらに好ましく、120〜200℃が特に好ましい。なお、上記混合系の温度とは、反応容器のボトム温度であるとする。
生成させた金属酸化物粒子について、残存有機基の除去や、より一層の結晶成長の促進等を目的とする場合、必要に応じて、該金属酸化物粒子を300〜800℃で加熱してもよい。
上記混合系を高温状態にする際の具体的な昇温手段としては、ヒーター、温風や熱風による加熱が一般的であるが、これらに限定はされず、例えば、紫外線照射などの手段を採用することもできる。
加圧下で出発原料を高温状態にする場合、加熱時の圧力(気相部の圧力)は、限定はされないが、常圧(大気圧)を1kg/cm2とする絶対圧Pで示したときに、P>1kg/cm2を満たすことが好ましく、より好ましくは1.5kg/cm2≦P≦100kg/cm2である。さらに、加圧効果が高く、かつ経済的な設備で行うことができる点で、3kg/cm2≦P≦20kg/cm2を満たすことが特に好ましい。加圧の方法としては、限定はされないが、例えば、アルコールの沸点より高い温度に加熱する方法や、気相部を窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスで加圧にする方法などが採用できる。
製造方法(A)においては、少なくとも前記出発原料の混合系を高温状態にしている間は、該混合系を、撹拌所要動力0.0001kw/m3以上で撹拌しておくことが好ましく、より好ましくは0.001kw/m3以上であり、さらに好ましくは0.01〜10kw/m3である。
本発明の金属酸化物粒子は、例えば、化粧品、紫外線遮断を目的とする電子材料、包装材料用等の各種フィルムやビル、家等の建築物用窓、自動車窓、サンルーフ、鉄道や飛行機の窓等に用いられるガラスやポリカーボネート等の透明プラスチックシートに含有させる粒子としてあるいは成膜し得る紫外線吸収塗料用原料粒子として有用である。
本発明の金属酸化物粒子における金属元素(M)が、Ti、Zn、Ce、In、Snの場合には、高屈折率である粒子となるため、バインダー成分となる樹脂やシリケートなどとの配合比を制御することにより、任意の屈折率を有する膜を得ることが可能となるため、反射防止性を兼ね備えた紫外線吸収膜の原料として、有用である。
また、本発明の金属酸化物粒子における金属元素(M)が、Zn、In、Sn、Tiの場合には、赤外線(近赤外線〜遠赤外線)の吸収材料としても有用である。特に、金属元素(M)がZnであって、異種金属元素(M’)としてFe、Co、Niの3価の金属元素を含有する粒子は、赤外線吸収材料として有用である。
また、本発明の金属酸化物粒子における金属元素(M)が、Zn、Ti、In、Snの場合には、電子伝導性に優れる粒子となるため、半導体もしくは導電体として有用である。特に、本発明の金属酸化物粒子が超微粒子である場合、塗料化することにより、フィルム等の透明帯電防止膜や透明導電膜として好ましく用いることができる。
また、本発明の金属酸化物粒子において、前記金属元素(M)が、Zn、Ti、In、Snのいずれかであって、前記金属元素(M’)としてFe、Co、Niからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する場合、または、前記金属元素(M’)としてFe、Co、Niからなる群から選ばれる少なくとも1種と金属元素(M)の価数よりも高い金属元素(例えば、MがZnの場合は、In、Al、B、Ga、Snなどの3価または4価の金属元素)とを含有する場合には、(フェロ)磁性(透明)半導体特性を示す粒子としても有用である。
〔組成物〕
本発明の組成物は、金属酸化物粒子が媒体中に分散してなり、前記金属酸化物粒子が前述した本発明の金属酸化物粒子を必須とするものである。
本発明にかかる組成物が膜形成用組成物である場合は、前記本発明にかかる金属酸化物粒子と、分散溶媒および/またはバインダーとを必須構成成分とする組成物であることが好ましい。なお、本発明の組成物の必須構成成分である本発明の金属酸化物粒子については、前述した説明が同様に適用できる。
上記分散溶媒としては、例えば、水、(各種ハロゲン化)炭化水素、アルコール、エーテル、アセタール、ケトン、アルデヒド、カルボン酸エステル、アミド類およびカルボン酸(無水物)等の有機溶剤や、シリコーン油、鉱物油などが挙げられる。これらは、1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
水溶性型のバインダー成分としては、例えば、水溶性アルキド樹脂、水溶性アクリル変性アルキド樹脂、水溶性オイルフリーアルキド樹脂(水溶性ポリエステル樹脂)、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシエステル樹脂、水溶性メラミン樹脂等を挙げることができる。
エマルション型のバインダー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル共重合ディスパージョン;酢酸ビニル樹脂エマルション、酢酸ビニル共重合樹脂エマルション、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルション、アクリル酸エステル(共)重合樹脂エマルション、スチレン−アクリル酸エステル(共)重合樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリル−シリコーンエマルション、フッ素樹脂エマルション等を挙げることができる。
これら無機系バインダーは、塗布した後で熱および/または湿気によって金属酸化物や金属水酸化物となるが、これら無機系バインダーのなかでも、上記金属酸化物や金属水酸化物が紫外線吸収性に優れる点では、Ti、Ce、Znを金属元素として含む無機系バインダーが好ましく、得られる膜の化学的耐久性に優れる点では、Si、Zr、Ti、Alを金属元素として含む無機系バインダーが好ましく、金属酸化物粒子の分散性に優れる点では、金属アルコキシド類の無機系バインダーが好ましく、特に、Si、Ti、Alを金属元素として含む金属アルコキシドおよびこれらの(加水分解)縮合物が好ましい。
添加金属酸化物粒子のうち、Cuを金属元素とする金属酸化物粒子としては、例えば、酸化第一銅(Cu2O)、酸化第二銅(CuO)、銅フェライト(CuFe2O4)、モリブデン酸銅(CuMoO4)、タングステン酸銅(CuWO4)、チタン酸銅(CuTiO3)、セレン酸銅(CuSeO4)、亜クロム酸銅(CuCr2O4)等の単一酸化物、複合酸化物、単一酸化物や複合酸化物の金属元素の一部が異種金属元素で一部置換された固溶体酸化物、単一酸化物や複合酸化物の酸素の一部が他の元素(例えば、窒素、硫黄、ハロゲン元素など)で一部置換された固溶体酸化物からなる粒子が挙げられる。なお、前記酸化物においては、例えば、Cu1−δOのように、化学両論組成からずれた化合物も含まれるものである。なかでも、酸化銅粒子もしくは該粒子の粒子表面にエタノイル基等のアシル基やエトキシ基等のアルコキシ基などの有機基が結合した粒子は好ましく、酸化第一銅粒子もしくは該粒子表面にエタノイル基等のアシル基やエトキシ基等のアルコキシ基などの有機基が結合した粒子は特に好ましい。
添加金属酸化物粒子の大きさは、特に制限されないが、優れた透明性を発現させるうえでは、1次粒子の平均粒子径が1〜100nmであることが好ましく、5〜30nmであることがより好ましく、5〜20nmであることがさらに好ましい。
添加金属超微粒子は、Cu、Ag、Au、および白金族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする金属超微粒子である。また、前記したように該粒子の一部または全部が酸化されて酸化物として存在する場合も含める。該添加金属超微粒子としては、単一金属または合金用粒子からなるものが好ましく、1次粒子径が1〜100nm、好ましくは1〜20nmのものがよい。450nm以下にプラズモン吸収による吸収が強いものが好ましく、例えば、Cu,Agを金属元素として含むものがあげられる。
本発明の組成物の必須構成成分である金属酸化物粒子と、分散溶媒および/またはバインダーとの使用量については、限定はされないが、具体的には、全ての金属酸化物粒子の使用量割合が、該組成物中の全固形分量に対して、10〜90重量%であることが好ましく、より好ましくは20〜80重量%である。上記使用量割合が、10重量%未満であると、例えば該組成物を紫外線遮断膜の形成に用いる場合に、十分なUV遮断性を得るために厚い膜にする必要があり、特に該粒子以外に無機バインダーや硬化性樹脂を膜成分として用いた場合等では、得られた膜にクラックが入りやすくなるおそれがあり、90重量%を超えると、例えば該組成物を膜の形成に用いた場合に、膜の機械的強度が不十分となるおそれがある。ただし、本発明の組成物が、分散溶媒を必須構成成分とする組成物であって、これを基材に塗布し、高温に加熱して焼成(焼結)することにより膜形成を行う場合は、該組成物における金属酸化物粒子の割合は、該組成物中の全固形分量に対して90重量%を超えていてもよいし、特に100重量%であってもよい。
分散剤としては、例えば、前述した金属化合物(1)〜(3)が好ましく、なかでも、金属化合物(3)が特に好ましい。これら金属化合物(1)〜(3)の添加量(合計添加量)は、該金属化合物中の金属元素の、金属元素(M)化合物中の金属元素(M)に対する原子比で、0.1〜10原子%であることが好ましい。
本発明の組成物の用途は、限定はされず、例えば、紫外線遮断膜形成用の塗布液や紫外線カット塗料として取り扱うことができる。具体的には、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイ)、白色LED、水銀ランプ、蛍光灯などの表示デバイスや照明において励起源や光源に由来する紫外線を遮断するためのフィルムやガラスに紫外線遮断膜を形成する際に用いる塗布液として、また、建築物、車両(自動車、電車など)、空輸機(飛行機、ヘリコプターなど)などの各種窓材やディスプレイ等に用いられる各種ガラス(単板ガラス、複層ガラス、合わせガラス等の無機系ガラス、およびポリカーボネート樹脂等の有機系ガラス)に紫外線遮断膜を形成する際に用いる塗布液として、また、農業用フィルムや各種包装用フィルムなどの紫外線遮蔽性を要する各種フィルムに紫外線遮断膜を形成する際に用いる塗布液として、さらに、前記窓材などに用いられる合わせガラスの中間膜として紫外線遮断膜を形成する際に用いる塗布液として、有用である。また、本発明の組成物は、〔金属酸化物粒子〕の項で前述したように、該組成物に含まれる金属酸化物粒子の金属元素の種類によって、赤外線吸収膜、高屈折率膜、低屈折率膜、反射防止膜、熱伝導性膜、帯電防止膜、透明導電膜、光触媒膜、蛍光体膜、磁性体膜などの各種機能膜の形成に用いる塗布液として、あるいはインクジェットインクとしても、有用である。特に、Znを主たる金属元素(前記金属元素(M))とする金属酸化物粒子を含む本発明の組成物は、前述した各種用途においてとりわけ良好な特性を示しうるものであり、好適である。
本発明にかかる膜は、前述したように、前記本発明にかかる金属酸化物粒子および/または該金属酸化物粒子に由来する金属酸化物結晶を必須構成成分として得られてなる膜である。すなわち本発明の膜は、(1)本発明にかかる金属酸化物粒子がバインダー中に分散した膜、(2)該粒子のみからなる膜、(3)該粒子を焼結して得られた膜、および、(4)これらの膜形態を組み合わせてなる膜(特に、上記(2)の膜と上記(3)の膜とを組み合わせてなる膜)など、本発明の金属酸化物粒子を含む組成物(中間組成物など)または本発明の組成物(膜形成用組成物)を原料成分として用いて得られた膜を全て包含する。
本発明の膜に用い得る上記基材としては、その材質等は限定されず、例えば、酸化物、窒化物、炭化物等のセラミクス、ガラスなどの無機物;PET、PBT、PENなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、アラミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマーなどの耐熱性樹脂フィルムとして知れられる樹脂フィルム、シートのほか、従来公知の(メタ)アクリル樹脂、PVC樹脂、PVDC樹脂、PVA樹脂、EVOH樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PTFE、PVF、PGF、ETFE等のフッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂等の各種樹脂からなるフィルムやシート各種樹脂高分子、および、これら各種樹脂高分子にアルミ、アルミナ、シリカなどを蒸着したフィルム等の加工品、などの有機物;各種金属類などが好ましく挙げられる。
本発明の膜は、紫外線遮断を目的とする用途に限らず使用されるものであり、透明性が高いことが好ましい。具体的には、ヘイズが10%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
本発明の膜の光学的性能は、紫外線領域(380nm以下における紫外線および450nm以下における可視光)における光の遮断性(紫外線遮断性)と、可視光(450nm〜780nm)における透過性(可視光透過性)を指標とすることができる。紫外線吸収機能材料としては、紫外線遮断性が高く、可視光透過性が高いことが好ましい。前述したように、通常、膜の紫外線遮断性や可視光透過性は、膜とした状態において分光透過率特性を評価することによって判定できる。紫外線遮断性および可視光透過性の判定の仕方の詳細については、前述した通りである。
(i) T380が40%以下、ΔTが5%以下、T500が95%以上の膜。
(ii) T380が20%以下、ΔTが10%以下、T500が90%以上の膜。
(iii) T380が10%以下、ΔTが10%以下、T500が80%以上の膜。
本発明の膜を形成する方法としては、限定はされないが、例えば、前記本発明の組成物(膜形成用組成物)を用いて形成する方法が好ましい。なお、この形成方法に用い得る、本発明の組成物については、前述した説明が同様に適用できる。
本発明の組成物を用いて膜を形成する方法としては、限定はされないが、該組成物を、基材表面に、バーコーター法、ロールコーター法、ナイフコーター法、ダイコーター法およびスピンコート法等の塗布法ならびにスプレー法などの従来公知の成膜方法を用いて塗布し膜形成する方法や、本発明の組成物に、基材の一部または全部を漬けた後取り出すことで塗布し膜形成する、いわゆるディッピング法が採用できる。また、本発明の組成物の必須構成成分として分散溶媒を用いた場合等では、塗布した後に高温で焼成することにより成膜することもでき、例えば、金属酸化物粒子の少なくとも一部が融合した結晶性の膜を得ることができる。
〔その他〕
本発明の金属酸化物粒子の好ましい利用態様として、以下のような金属酸化物物品が挙げられる。
本発明の金属酸化物粒子の好ましい利用態様として、以下のような紫外線吸収体が挙げられる。
また、前記紫外線吸収体は、Cu、Ag、FeおよびBiからなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする金属酸化物粒子、および/または、Ag、Cu、Auおよび白金族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする金属超微粒子、をも含むことが好ましい。これにより、短波長領域の可視光の遮断効果をより高めることができるのである。なお、Cu、Ag、FeおよびBiからなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする金属酸化物粒子、および、Ag、Cu、Auおよび白金族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする金属超微粒子については、それぞれ、前述した〔組成物〕の項で説明した添加金属酸化物粒子および添加金属超微粒子と同様である。
実施例および比較例における、測定方法および評価方法を以下に示す。
<金属酸化物粒子の評価>
(1)粉末試料の調製
金属酸化物粒子の生成反応により得られた反応液を遠心分離した後、沈降物の反応溶媒による洗浄(沈降物を反応溶媒に再分散させ、遠心分離すること)を3回繰り返し、その後、得られた沈降物を真空乾燥機により60℃で12時間真空乾燥することにより、金属酸化物粒子の粉末試料を得た。
上記粉末試料に関し、粉末X線回折装置(理学電気株式会社製、製品名:RINT2400)を用いた粉末X線回折により、金属酸化物粒子の結晶系・結晶構造を評価した。以下に測定条件を示す。
X線:CuKα1線(波長:1.54056Å)/40kV/200mA
走査範囲:2θ=20〜80°
スキャンスピード:5°/min
金属酸化物粒子がZnOと同等の結晶系・結晶構造を有するか否かは、六方晶系ZnOに特有の3強線のピークが認められるか否かで判定した。具体的には、以下の3つの回折角(a)〜(c)の位置のすべてに回折ピークが存在する場合、ZnOと同等の結晶系・結晶構造を有すると判定した。
(b) 2θ=34.30〜34.60°
(c) 2θ=36.10〜36.40°
なお、(a)の位置に存在する回折ピークは、ZnO結晶の(100)面に対する回折線に基づくものと判定し、(b)の位置に存在する回折ピークは、ZnO結晶の(002)面に対する回折線に基づくものと判定し、(c)の位置に存在する回折ピークは、ZnO結晶の(101)面に対する回折線に基づくものと判定する。
他の金属酸化物についても、同様に、3強線のピークの位置が一致するか否かにより判定した。
(3−1)結晶子径(Ds)
上記粉末試料に関し、粉末X線回折装置(理学電気株式会社製、製品名:RINT2400)を用いた粉末X線回折により、金属酸化物粒子の結晶子径(Ds)を評価した。具体的には、得られたX線回折パターンにおける各回折線の回折線幅より、シェラーの式(解析)により結晶子径Ds(hkl)(ここで、hklはミラー指数を表す。Ds(hkl)はミラー指数(hkl)の格子面に垂直な方向の結晶子の大きさである。)を求めた。
金属酸化物粒子の結晶子径(Dw)を測定し、1次粒子径として評価した。
結晶子径(Dw)は、上記粉末試料に関し、粉末X線回折装置(理学電気株式会社製、製品名:RINT2400)を用いた粉末X線回折により、金属酸化物粒子の結晶子径(Dw)を評価した。具体的には、得られたX線回折パターンにおける各回折線の回折線幅より、シェラーの式(解析)により結晶子径Ds(hkl)(ここで、hklはミラー指数を表す。Ds(hkl)はミラー指数(hkl)の格子面に垂直な方向の結晶子の大きさである。)を求め、3強腺の各Dsの平均値をDwとした。つまり、特に断らない限り、結晶子径(Dw)は、通常、金属酸化物粒子の粉末X線回折パターンを測定し、3強線(ピークが最も大きい回折線(1)、2番目に大きい回折線(2)、3番目に大きい回折線(3))について、それぞれの半値巾または積分巾より、シェラーの式に基づき、回折線(1)〜(3)に帰属される回折面に垂直方向の結晶子径Ds1、Ds2、Ds3を求め、これらの平均値((Ds1+Ds2+Ds3)/3)を結晶子径(Dw)として算出する。
得られた反応液もしくは該反応液から溶媒置換して得られた溶媒分散体を試料とし、動的光散乱式粒径分布測定装置(堀場製作所製「LB−500」)にて測定したメジアン径を分散粒子径とした。
(4)金属酸化物粒子の組成
(4−1)金属元素の平均組成
上記粉末試料に関し、蛍光X線分析またはICP分析により各金属元素の定量分析を行い、主たる金属元素(M)(例えばZn等)に対する異種金属元素(Co、Fe、Ni)の含有率、および、粒子生成の際に金属化合物を添加剤として用いた場合は、主たる金属元素(M)(例えばZn等)に対する該金属化合物の金属元素(Ms)の含有率、を求めた。
×:主たる金属元素(M)以外の金属元素(Co、Fe、Ni、Ms)が均一に含有されていないか、および/または、それらの金属または化合物の偏析物が確認された。
(4−2)アシル基結合量
上記粉末試料1gを0.1N水酸化ナトリウム水溶液に添加し、24時間攪拌したのち、イオンクロマトによりアシル基の同定と結合量の定量を行った。
(5)金属酸化物粒子に含有される異種金属元素(Co、Fe、Ni)の価数の評価
上記粉末試料に関し、光電子分光装置(日本電子株式会社製、製品名:JPS−90型)を用いたX線光電子分光法(XPS)により、異種金属元素(Co、Fe、Ni)の2p3/2スペクトルを測定し、そのピーク位置より結合エネルギー値を求め、異種金属元素(Co、Fe、Ni)の価数を判定した。
また、比較するための既知のデータとして、日本電子株式会社発行の「Handbook of X-ray Photoelectron Spectroscopy」(1991年)における異種金属元素(Co、Fe、Ni)の化合物の2p3/2スペクトルのピーク位置を参考とした。
(6)金属酸化物粒子の光学特性
(6−1)分散膜での評価
金属酸化物粒子の生成反応により得られた反応液を、加熱溶媒置換することにより、金属酸化物粒子が粒子濃度20wt%で1−ブタノールに分散してなる分散体を得た。得られた分散体100部に、シリケートバインダー(SiO2換算の固形分:51wt%)20部および触媒(n−ブチルアミン)0.5部を配合し、超音波ホモジナイザーで10分間分散処理した後、3時間撹拌して、塗料を調製した。なお、上記粒子濃度に関しては、得られた分散体を、真空乾燥機により120℃で1時間真空乾燥したときの固形分を、粒子重量として計算した。
−(i)の評価について−
(i-a)
この評価は、分散膜付きガラスの膜部分のみを対象にして行った。
得られた分光透過率曲線より、分散膜付きガラスおよび無アルカリガラスの各々について、可視光透過特性としては、可視光の透過率(波長500nmの光の透過率(500nmにおける透過率。以下、これに類似する表現部分についても同様の解釈とする。)(%))を評価し、紫外線吸収特性としては、380nmにおける透過率(%)を評価した。また、可視長波長吸収特性としては、550〜700nmにおける異種金属元素(Co、Fe、Ni)のイオン含有により発現しうる吸収帯の有無や程度に関して、下記式:
Δ(%)=〔|T500−T1|/T500〕×100
(ただし、T1は550〜700nmにおける透過率(%)の最小値であり、T500は500nmにおける透過率(%)である。)
によりΔ(%)を求め、その値について以下の基準により評価した。
B: 5%≦Δ(%)<10%
C: 10%≦Δ(%)
なお、膜部分のみについての上記各波長での透過率は、下記式により求められる。
膜部分のみについての各波長での透過率(%)
=〔分散膜付きガラスの各波長での透過率(%)/無アルカリガラスの各波長での透過率(%)〕×100
(ただし、上記評価方法により求められる無アルカリガラスの各波長での透過率(%)は、500nmにおける透過率、380nmにおける透過率、および、550〜700nmにおける透過率のいずれについても91%である。)
(i-b)
上記(i-a)の評価方法において、バーコ−ターによる塗料のウエット膜厚が66μmとなるようにして分散膜付きガラスを得た以外は、上記(i-a)と同様にして、同様の評価を行った。なお、この評価は、実施例中に明示した金属酸化物粒子についてのみ行った。
濁度計(日本電色工業社製、製品名:NDH−1001 DP)を用いて、分散膜付きガラスの、全光線透過率、拡散光線透過率、平行線透過率、ヘイズ値(H(%))を測定した。
分散膜付きガラスの透明性を、以下の基準により評価した。
A: H(%)<1%
B: 1%≦H(%)<3%
C: 3%≦H(%)
−(iii)の評価について−
得られた分散膜付きガラスに関して、外観を目視することにより、以下の基準で評価した。
△:若干、着色が認められる。
○:無色か、または、着色が気にならない。
(6−2)溶媒分散状態での評価
得られた反応液を希釈溶媒として1−ブタノールを用いて微粒子濃度0.1wt%となるように希釈したものを試料として用い、積分球付き自記分光光度計(島津製作所製「UV−3100」)を用いて、紫外および可視領域における分光透過率曲線を測定した。
紫外線遮断性:380nm、400nm、420nmにおける透過率で評価した。
なお、成膜品における分光透過曲線についても、上記と同様、積分球付き自記分光光度計(島津製作所製「UV−3100」)を用いて、紫外および可視領域における分光透過率曲線を測定した。
(7)金属酸化物粒子の色相
粉末試料の外観を目視にて観察して評価した。
<膜(または膜付き基材)の評価>
(1)分光透過率曲線に基づく可視光透過特性、紫外線吸収特性および可視長波長吸収特性
この評価は、膜付き基材を対象にして行った。
得られた分光透過率曲線より、膜付き基材について、可視光透過特性としては、可視光の透過率(500nmにおける透過率(%))を評価し、紫外線吸収特性としては、380nmにおける透過率(%)を評価した。また、可視長波長吸収特性としては、550〜700nmにおける異種金属元素(Co、Fe、Ni)イオン含有により発現しうる吸収帯の有無や程度に関して、下記式:
Δ(%)=〔|T500−T1|/T500〕×100
(ただし、T1は550〜700nmにおける透過率(%)の最小値であり、T500は500nmにおける透過率(%)である。)
によりΔ(%)を求め、その値について以下の基準により評価した。
B: 5%≦Δ(%)<10%
C: 10%≦Δ(%)
なお、膜付き基材に用いた基材のみについても、上記と同様の方法により各種透過率を求めておいた。
(2)可視光に対する透明性
濁度計(日本電色工業社製、製品名:NDH−1001 DP)を用いて、膜付き基材および基材のみの各々について、全光線透過率、拡散光線透過率、平行線透過率、ヘイズ値(H(%))を測定し、膜の透明性をそのヘイズ値から以下の基準により評価した。なお、膜のへイズ値は、膜付き基材のヘイズ値から基材のみのヘイズ値を差し引いたものである。
B: 1%≦H(%)<3%
C: 3%≦H(%)
(3)着色の度合い
得られた膜(膜付き基材)に関して、外観を目視することにより、以下の基準で評価した。
×:着色が顕著である。
△:若干、着色が認められる。
〔実施例1−1〕
撹拌機、添加槽に直結した添加口、温度計、留出ガス出口および窒素ガス導入口を備えた、外部より加熱し得る耐圧ガラス製反応器と、上記添加口につながった添加槽と、上記留出ガス出口につながった冷却器(トラップに直結)と、を備えた反応装置を用意した。
上記反応器内に、酢酸亜鉛無水物粉末183部、酢酸コバルト(II)無水物粉末3.5部、メチルトリメトキシシラン2部、および、メタノール1700部とからなる混合物を仕込み、気相部を窒素ガスでパージした後、撹拌しながら(20℃から)160℃まで昇温し、160℃±1℃で5時間加熱保持して、金属酸化物粒子の生成反応を行った後、冷却することにより、青色の微粒子(金属酸化物粒子)を含む反応液(11)を得た。
反応液(11)中の金属酸化物粒子については、前述した金属酸化物粒子の評価のうち、(6−1)(i-b)の評価も行った。その結果、380nmにおける透過率は1%未満、500nmにおける透過率は80%、Δ(%)についてはランクAであった。
実施例1−1において、仕込み原料の種類や使用量を、表1に示したように変更した以外は、実施例1−1と同様にして、青色の微粒子(金属酸化物粒子)を含む反応液(12)〜(14)を得た。
反応液(12)〜(14)中の金属酸化物粒子それぞれについて、前述の各種測定・評価を行い、それらの結果を表2に示した。なお、反応液(12)〜(14)中の金属酸化物粒子に含有されるCoの価数に関しては、前述のようにCoの2p3/2スペクトルを測定することで評価した結果、ピーク位置からみて、実施例1−1と同様に2価のCo(Co(II))が含有されていると判定した。
実施例1−1と同様の反応装置を用意し、該装置に備えられている耐圧ガラス製反応器内に、酢酸亜鉛無水物粉末183部、酢酸コバルト(II)無水物粉末1.8部、水酸化酢酸鉄(III)粉末1.9部、テトラメトキシシラン3部、および、1−プロパノール1700部とからなる混合物を仕込み、気相部を窒素ガスでパージした後、撹拌しながら(20℃から)160℃まで昇温し、160℃±1℃で2時間加熱保持して、金属酸化物粒子の生成反応を行った後、冷却することにより、青色の微粒子(金属酸化物粒子)を含む反応液(15)を得た。なお、上記金属酸化物粒子の色は、実施例1−1〜1−4で得られた金属酸化物粒子に比べ、より緩和されたものであり、より無色透明に近いことが要求される用途に好適なものであった。
〔比較例1−1〕
実施例1−1において、仕込み原料として酢酸コバルト(II)無水物粉末を用いなかった以外は、実施例1−1と同様にして、白色の微粒子(金属酸化物粒子)を含む反応液(c11)を得た。
〔実施例1−6〜1−8〕
実施例1−1において、仕込み原料の種類や使用量を、表1に示したように変更した以外は、実施例1−1と同様にして、青色の微粒子(金属酸化物粒子)を含む反応液(16)〜(18)を得た。
反応液(16)〜(18)中の金属酸化物粒子それぞれについて、前述の各種測定・評価を行い、それらの結果を表2に示した。なお、反応液(16)〜(18)中の金属酸化物粒子に含有されるCoの価数に関しては、前述のようにCoの2p3/2スペクトルを測定することで評価した結果、ピーク位置からみて、実施例1−1と同様に2価のCo(Co(II))が含有されていると判定した。
実施例1−1と同様の反応装置を用意し、該装置に備えられている耐圧ガラス製反応器内に、硝酸亜鉛6水和物粉末300部、酢酸コバルト(II)無水物粉末3部、イオン交換水2000部からなる混合物を仕込み、撹拌しながら20℃に保持した。これに、炭酸ナトリウム200部を溶解したイオン交換水1000部を滴下した後、2時間攪拌を行うことにより、スラリーを得た。該スラリーを遠心分離して得られた沈降物をイオン交換水で洗浄・ろ過し、得られたケーキを100℃で乾燥後、焼成炉中、空気雰囲気下で500℃で2時間焼成したのち、冷却した。得られた粉末を粉砕し、サンドミルを用いて1−ブタノールに20wt%の割合で分散させて、分散体(c12)を得た。
上記評価方法(4)に記載の個々の粒子におけるCo含有量は不均一であり測定できなかったが、金属酸化物粒子における粉末の元素分析で求めたCoの平均含有量はZnに対する原子比で1.3原子%であった。粒子に含まれるCoの価数は、実施例1−1と同様にして判定した結果、3価であった。(002)面に垂直方向の結晶子径は38nmであった。上記評価方法(6−1)に準じて金属酸化物粒子の光学性能を評価した結果、透明性はランクC、可視光透過性は500nmにおける透過率が78%であった。
実施例1−1において、仕込み原料の種類や使用量を、表3に示したように変更した以外は、実施例1−1と同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(19)〜(116)、(c13)、(c14)を得た。
反応液(19)〜(116)、(c13)、(c14)中の金属酸化物粒子それぞれについて、前述の各種測定・評価を行い、それらの結果を表4に示した。なお、比較として、比較例1−1についての同様の評価結果も併せて示す。
実施例1−10において、酢酸リチウム2水和物粉末0.18部をさらに原料として用いた以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(117)を得た。
反応液(117)について、実施例1−10と同様の評価を行った結果、紫外線吸収性(380nmにおける透過率)は32%と、実施例1−10で得られた反応液(110)に比べて向上しており、また、リチウムイオンをZnに対して0.18原子%含有するものであった。他の評価結果については、反応液(110)と同様であった。
〔実施例1−18〕
実施例1−10において、酢酸カルシウム1水和物粉末0.14部をさらに原料として用いた以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(118)を得た。
〔実施例1−19〕
実施例1−9において、酢酸マグネシウム4水和物粉末0.05部をさらに原料として用いた以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(119)を得た。
反応液(119)について、実施例1−9と同様の評価を行った結果、紫外線吸収性(380nmにおける透過率)は43%と、実施例1−9で得られた反応液(19)に比べて向上しており、また、マグネシウムイオンをZnに対して0.02原子%含有するものであった。他の評価結果については、反応液(19)と同様であった。
実施例1−9において、酢酸セシウム無水物粉末0.78部をさらに原料として用いた以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(120)を得た。
反応液(120)について、実施例1−9と同様の評価を行った結果、紫外線吸収性(380nmにおける透過率)は44%と、実施例1−9で得られた反応液(19)に比べて向上しており、また、セシウムイオンをZnに対して0.4原子%含有するものであった。他の評価結果については、反応液(19)と同様であった。
〔実施例1−21〕
実施例1−14において、酢酸ナトリウム無水物粉末0.4部をさらに原料として用いた以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(121)を得た。
〔実施例1−22〕
実施例1−1において、酢酸バリウム無水物粉末0.51部をさらに原料として用いた以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(122)を得た。
反応液(122)について、実施例1−1と同様の評価を行った結果、紫外線吸収性(380nmにおける透過率)は34%と、実施例1−1で得られた反応液(11)に比べて向上しており、また、バリウムイオンをZnに対して0.2原子%含有するものであった。他の評価結果については、反応液(11)と同様であった。
実施例1−1と同様の反応器に、反応溶媒としてのエチレングリコールジメチルエーテル2400部、チタニウムメトキシプロポキシド303部、酢酸第一鉄(II)粉末2.8部、添加剤としての酢酸270部からなる混合物を仕込み、気相部を窒素ガスでパージした後、攪拌しながら、20℃より160℃まで昇温し、160±1℃にて5時間加熱した後、冷却することにより、微粒子濃度2wt%の反応液(123)を得た。
反応液(123)中の微粒子は、粉末X線回折測定の結果、X線回折学的にアナタース形酸化チタン同等と判定された。
〔実施例1−24〕
実施例1−23において、酢酸第一鉄(II)粉末2.8部の代わりに酢酸コバルト(II)無水物粉末8部を用いた以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(124)を得た。
反応液(124)中の微粒子について、実施例1−23と同様の評価を行った結果を表5に示す。
〔実施例1−25〕
実施例1−23において、酢酸第一鉄(II)粉末2.8部の代わりに酢酸ニッケル(II)4水和物粉末1部を用いた以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(125)を得た。
反応液(125)中の微粒子について、実施例1−23と同様の評価を行った結果を表5に示す。
〔実施例1−26〕
実施例1−23において、酢酸第一鉄(II)粉末2.8部の代わりに酢酸第一鉄(II)粉末0.65部と水酸化酢酸鉄(III)粉末3部を用いた以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(126)を得た。
反応液(126)中の微粒子について、実施例1−23と同様の評価を行った結果を表5に示す。
〔実施例1−27〕
実施例1−23において、酢酸第一鉄(II)粉末2.8部の代わりに酢酸コバルト(II)無水物粉末0.1部と水酸化酢酸鉄(III)粉末1.5部を用いた以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(127)を得た。
反応液(127)中の微粒子について、実施例1−23と同様の評価を行った結果を表5に示す。
〔比較例1−5〕
実施例1−23において、酢酸第一鉄(II)粉末2.8部を用いない以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(c15)を得た。
反応液(c15)中の微粒子は、粉末X線回折測定の結果、X線回折学的にアナタース形酸化チタン同等と判定された。
〔比較例1−6〕
実施例1−23において、酢酸第一鉄(II)粉末2.8部の代わりに水酸化酢酸鉄(III)粉末3部を用いた以外は、同様にして、反応液(c16)を得た。
反応液(c16)中の微粒子は、粉末X線回折測定の結果、X線回折学的にアナタース形酸化チタン同等と判定された。
反応液(c16)中の微粒子について、実施例1−23と同様の評価を行った結果を表5に示す。
実施例1−1と同様の反応器に、純水3000部、酢酸第一セリウム(III)1水和物粉末50部、水酸化酢酸鉄(III)粉末1.5部、酢酸ニッケル(II)4水和物粉末0.19部からなる混合物を仕込み、室温で攪拌しながら、30%過酸化水素水50部を加えた。攪拌しながら、室温より90℃まで昇温し、90±2℃にて5時間加熱した後、30%過酸化水素水10部を加えた。さらに、1時間加熱保持した後、冷却することにより、微黄色を呈する透明感の高い、微粒子濃度0.8wt%の反応液を得た。得られた反応液を限外ろ過膜を用いたろ過に供することにより、不純物イオン類および残存過酸化水素の除去とともに濃縮を行い、微粒子濃度7wt%の水分散体(128)を得た。
実施例1−28において、酢酸ニッケル(II)4水和物粉末0.19部を用いない以外は、同様にして、微粒子濃度7wt%の水分散体(c17)を得た。
水分散体(c17)中の微粒子について、実施例1−28と同様の評価を行った結果を表6に示す。
〔比較例1−8〕
実施例1−28において、水酸化酢酸鉄(III)粉末1.5部、および酢酸ニッケル(II)4水和物粉末0.19部を用いない以外は、同様にして、微粒子濃度7wt%の水分散体(c18)を得た。
実施例1−1と同様の反応器に、酢酸インジウム無水物粉末146部、水酸化酢酸鉄(III)粉末1.72部、酢酸第一鉄(II)粉末0.18部、メタノール3322部からなる混合物を仕込み、気相部を窒素ガスでパージした後、攪拌しながら、室温より180℃まで昇温し、180±1℃にて5時間加熱して、金属酸化物粒子の生成反応を行った後、冷却することにより、微粒子濃度2wt%で微粒子を含む反応液(129)を得た。
反応液(129)中の微粒子について、各種評価を行った結果を表7に示す。なお、分散粒子径の評価は、得られた反応液を加熱溶媒置換することにより、金属酸化物粒子を粒子濃度20wt%で1−ブタノールに分散してなる分散体を試料として行い、着色の度合いについては、上記評価方法(6−1)に準じて1−ブタノール分散体を試料とし分散膜において行った。
実施例1−29において、2価のFeと3価のFeの比率が表7に示す金属組成のようになるように、水酸化酢酸鉄(III)粉末と酢酸第一鉄(II)粉末の仕込み比を変えたこと以外は、同様にして、反応液(130)〜(132)を得た。
反応液(130)〜(132)中の微粒子について、実施例1−29と同様の評価を行った結果を表7に示す。
〔比較例1−9〕
実施例1−29において、酢酸第一鉄(II)粉末0.18部を用いず、水酸化酢酸鉄(III)粉末を1.9部用いた以外は、同様にして、反応液(c19)を得た。
実施例1−1で得られた反応液(11)1000部(粒子濃度:4.4wt%)を、常圧下で加熱し、メタノール等の溶媒成分を710部留去することにより、反応液(11)を濃縮した。この濃縮反応液をさらに加熱しながら、1−ブタノールを連続的に滴下することで、反応液中の残存溶媒成分の留去と同時に1−ブタノールへの溶媒置換を行い、1−ブタノール中に金属酸化物粒子が粒子濃度20wt%で分散してなる、膜形成用組成物としての分散体(21)を得た。
得られた分散体(21)の分散粒径を、動的光散乱式粒径分布測定装置(堀場製作所製、製品名:LB−500)により測定した結果、平均分散粒径は100nm以下であった。
実施例2−1において、使用する反応液、溶媒置換に用いる溶媒および粒子濃度を、表8に示したように変更した以外は、実施例2−1と同様にして、膜形成用組成物としての分散体(22)〜(25)を得た。
得られた分散体(22)〜(25)それぞれの分散粒径を、実施例2−1と同様の装置により測定した結果、いずれも平均分散粒径は100nm以下であった。
〔比較例2−1〕
実施例2−1において、使用する反応液、溶媒置換に用いる溶媒および粒子濃度を、表8に示したように変更した以外は、実施例2−1と同様にして、膜形成用組成物としての分散体(c21)を得た。
実施例2−1で得られた分散体(21)100部に、シリケートバインダー(SiO2換算の固形分:51wt%)20部および触媒(n−ブチルアミン)0.2部を配合し、塗料を調製した。
得られた塗料を、無アルカリガラス(コーニングインターナショナル株式会社製、バリウムホウケイ酸ガラス、ガラスコード番号:7059、厚み:0.6mm)に、バーコ−ターで、ウエット膜厚が45μmとなるよう塗布し、25℃で常乾した後、250℃で加熱処理することにより、表面に金属酸化物粒子分散膜の形成されたガラスを得た。
実施例2−1で得られた分散体(21)を、実施例3−1と同様の無アルカリガラスに、バーコ−ターで塗布し、焼成炉中で常温より昇温し、500℃で1時間保持した後、冷却することによって、表面にCoドープZnO粒子からなる薄膜が形成されたガラスを得た。
得られた薄膜付きガラスは、450nm付近から紫外線領域(短波長側)における吸収を示し、370nm以下の光をほぼ完全に吸収し遮断し得るものであった。また、この薄膜付きガラスについて、前述の評価を行った結果、可視光に対する透明性は「A」であり、着色の度合いは「○」であった。可視光透過特性については500nmにおける透過率が88%であった。可視長波長吸収特性は「A」であった。
実施例3−1において、分散体(21)100部の代わりに、実施例2−5で得られた分散体(25)100部を用いた以外は、実施例3−1と同様にして、塗料を調製した。
得られた塗料を、実施例3−1と同様の無アルカリガラスに、バーコ−ターで、ウエット膜厚が42μmとなるよう塗布し、25℃で常乾した後、250℃で加熱処理することにより、表面に金属酸化物粒子分散膜の形成されたガラスを得た。
得られた分散膜付きガラスについて、前述の評価を行った結果、可視光に対する透明性は「A」であり、着色の度合いは「○」であった。可視光透過特性については500nmにおける透過率が78%であった。紫外線吸収特性については380nmにおける透過率が1%未満であり、380nm以下の光をほぼ完全に吸収し得るものであった。可視長波長吸収特性は「A」であった。なお、着色の度合いは、実施例3−1の分散膜付きガラスや実施例3−2の薄膜付きガラスに比べ、より緩和されたものであり、より無色透明に近いことが要求される用途に好適なものであった。
実施例1−10で得られた反応液(110)を、基材としての実施例3−1と同様の無アルカリガラス上にバーコーターで塗布し、常温乾燥したのち、加熱炉中、窒素雰囲気下で400℃で1時間加熱することにより、膜厚0.6μmの膜が表面に形成された膜付き基材を得た。
得られた膜付き基材について、評価した結果、該膜付き基材は、Znに対してFe(II)を2原子%含有するZnO結晶膜を備えたものであり、紫外線吸収性は380nmにおける透過率が30%であり、可視光透過性は500nmにおける透過率が90%であり、透明性はヘイズが0.3%である、僅かに緑味を帯びた無色性に優れる紫外線遮断ガラスであった。
実施例3−4において、反応液(110)の代わりに、比較例1−3で得られた反応液(c13)を用いた以外は、同様にして、膜厚0.6μmの膜が表面に形成された膜付き基材を得た。
得られた膜付き基材について、評価した結果、該膜付き基材は、Znに対してFe(III)を2原子%含有するZnO結晶膜を備えたものであり、紫外線吸収性は380nmにおける透過率が50%であり、可視光透過性は500nmにおける透過率が88%であり、透明性はヘイズが0.6%である、黄色の着色が目立つ紫外線遮断ガラスであった。
本発明の組成物は、例えば、紫外線遮断膜形成用の塗布液や紫外線カット塗料として好適であるほか、上記本発明の膜の形成材料として好適である。
本発明の金属酸化物粒子は、例えば、膜やフィルム、塗料、化粧料等の各種用途において、紫外線遮蔽性を付与するための成分として好適であるほか、上記本発明の膜および上記本発明の組成物の構成成分として好適である。
Claims (4)
- 金属元素(M)の酸化物からなる粒子内に該金属元素(M)以外の金属元素(M’)に由来する成分が含有されている金属酸化物粒子において、
前記金属元素(M’)が前記金属元素(M)の酸化物の結晶に固溶して存在しており、
前記金属元素(M)は、Znであり、
前記金属元素(M’)は、Co、Fe、Niからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、これらCo、FeおよびNiの少なくとも一部は2価であり、
前記金属元素(M’)の合計含有率が、金属元素(M)に対し、0.1〜10原子%であり、かつ、(002)面に垂直方向の結晶子径が30nm以下、(100)面に垂直方向の結晶子径が8nm以上であり、
金属酸化物粒子自体の一次粒子の平均粒子径が1〜100nmであることを特徴とする紫外線吸収性材料用金属酸化物粒子。 - 金属元素(M)の酸化物からなる粒子内に該金属元素(M)以外の金属元素(M’)に由来する成分が含有されている金属酸化物粒子において、
前記金属元素(M)は、Znであり、
前記金属元素(M’)は、Co、Fe、Niからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
かつ、前記金属元素(M’)のほかに、アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素に由来する成分をも含有する請求項1に記載の紫外線吸収性材料用金属酸化物粒子。 - 金属酸化物粒子が媒体中に分散してなり、前記金属酸化物粒子が請求項1または2に記載の紫外線吸収性材料用金属酸化物粒子を必須とする、組成物。
- 金属酸化物を必須構成成分としてなり、前記金属酸化物が、請求項1または2に記載の紫外線吸収性材料用金属酸化物粒子および/または該粒子に由来する金属酸化物結晶を必須とする、膜。
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