JP4938985B2 - 金属酸化物粒子およびその用途 - Google Patents

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本発明は、優れた紫外線吸収性を発揮する金属酸化物粒子と、これを用いた組成物および膜に関する。
従来、紫外線遮蔽能を付与する目的で、例えば、繊維、板、フィルム等のプラスチック成形体、塗料、化粧料等に紫外線吸収性材料を内添したり、ガラス、プラスチックフィルム等に溶媒やバインダー樹脂とともに紫外線吸収性材料を含むコーティング剤をコーティングしたりすることが行われている。
例えば、化粧品、建材や自動車用あるいはディスプレイ用の窓ガラス、フラットパネルディスプレイなどの各種分野で用いられる紫外線吸収性材料には、近年、従来一般的に言われている380nm以下の紫外線(特に380nm付近の紫外線)に加え、より長波長領域の紫外線(短波長の可視光)に対しても優れた吸収性能を有することが求められている。これは、可視光のなかでも短波長領域の可視光は、高エネルギーであるためにプラスチックの劣化や人体への悪影響をもたらすことが懸念されるからである。また、前記紫外線吸収材料には、可視光を散乱させず高い可視光透過性を示し良好な透明性を有すること、黄色などの着色がなく基材の色相を変化させないこと、および、耐久性や耐熱性に優れること、が求められている。
紫外線遮蔽性を付与するための紫外線吸収材料としては、耐久性や耐熱性の点で無機系材料であることが望ましく、中でも、例えば波長370nm以下の紫外線を完全に遮蔽する物性を有する酸化亜鉛が有効であることが知られており、一般に粒子状で使用されていたが、これらは、前述した要望を満足させるものではなく、例えば、紫外線吸収性能が不充分であり、例えば380nm以下の紫外線を完全に遮蔽するには単位面積あたり多量の超微粒子を用いなければならず、膜厚が厚くなりすぎるなど、実用性に欠けるという問題もあった。
そこで、さらに紫外線吸収材料の紫外線吸収性能を改善する手法として、酸化亜鉛と異種金属等との複合化が提案されている。例えば、i)FeやCoを酸化亜鉛に含有(ドープ)させたもの(特許文献1、非特許文献1参照)、ii)Ce、Ti、Al、Fe、CrおよびZrからなる少なくとも1種と、Znとの複合酸化物(特許文献2参照)、iii)Ce、Ti、Al、Fe、Co、LaおよびNiからなる少なくとも1種を酸化亜鉛に含有させたもの(特許文献3参照)が提案されている。
特開平9−188517号公報 特開昭62−275182号公報 特開平5−222317号公報 大塚淳,「ZnOを主要成分とする無機顔料」,セラミックス,社団法人窯業協会,1983年,18,No.11,p.958−964
しかしながら、近年、より高い紫外線遮断能が要求される用途が増えつつあるなか、前記i)〜前記iii)のような金属酸化物では、その紫外線吸収能は未だ充分とは言えないものであった。詳しくは、380nmより長波長の光に対する吸収性能はやや高められるものの、紫外線吸収端の長波長側へのシフト効果はまだ十分ではなく、しかも、前記i)のようにFeやCoを含有させた場合には、最も遮蔽要求が高い380nmでの吸収性能は逆に低下することになり、しかも、可視光領域に吸収帯が存在するためにFeは黄色に、Coは青色に、それぞれ強く着色することになり、紫外線吸収性材料として基材に内添あるいはコーティングすると基材の透明性や色相を損なうと言った問題が生じていた。例えば、金属元素としてZnとCoとを含む従来の金属酸化物粒子は、膜やフィルム、塗料、化粧料等の前記各種用途に用いた場合に、乱反射等によるくすみやくもりが生じるなど透明性が十分であるとは言えず、しかも、可視光の透過性が低い(可視光領域の波長(550〜700nm)の光をも吸収しやすい)という問題もあったため、実用性に乏しいものであった。さらに、従来の技術では、これら金属をドープしてなるものであって単離性、分散性に優れる微粒子を製造することは実質的に困難でもあった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、より優れた紫外線吸収性を発揮することは勿論のこと、例えば、紫外線吸収端がより長波長側にシフトされており長波長領域の紫外線の吸収効率にも優れていたり、例えば基材に内添もしくはコーティングした場合に優れた透明性を発揮し、可視光は透過させ紫外線のみを選択的に吸収し得ることで基材の透明性や色相を損なうことがないという利点も兼ね備えた金属酸化物粒子と、これを用いた組成物および膜とを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく、金属元素(M)の酸化物に異種金属元素(M’)を含有させることについて鋭意検討を行った。その結果、前記金属元素(M)の酸化物として、Zn、Ti、Ce、In、Sn、AlおよびSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素からなる単一酸化物や複合酸化物を選択し、含有させる異種金属元素(M’)として紫外線遮蔽性(紫外線吸収性)の点で特に優れた効果を発揮し得るCo、FeおよびNiのうちの少なくとも1種を選択した場合に、これらCo、FeおよびNiのうちの少なくとも一部が2価であると、非常に有用な金属酸化物粒子となることを見出した。つまり、Feは、3価では粒子が黄色〜褐色に強く着色し、より無色透明であることが要求される用途には適さないことがあるが、2価の場合もしくは2価と3価が混在する場合には粒子が緑色もしくは緑色がかった色になるので、成膜したときに着色が目立たず、多少着色はあったとしても、より無色透明であることが要求される用途において十分に使用できるやわらかい色相に抑えることができる。Coは、3価のみである場合よりも2価もしくは2価を含む場合の方が、より優れた紫外線吸収性能を発揮する。Niは、2価であると、緑色系の粉末であり、前述したFeと同様の効果が期待できるとともに、紫外線吸収性能にも優れることになる。また、前記金属元素(M)の酸化物として、Znからなる単一酸化物や複合酸化物を選択し、含有させる異種金属元素(M’)としてCo、FeおよびNiのうちの少なくとも1種を選択した場合には、結晶子の特定方向の大きさが重要であることに気付き、その大きさが、従来のCo、FeまたはNiを含有する金属酸化物粒子においては見られなかったナノサイズレベルの範囲であることが好適であることを見出した。また、前記金属元素(M)の酸化物として、Zn、Ti、Ce、In、Sn、AlおよびSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素からなる単一酸化物や複合酸化物を選択し、含有させる異種金属元素(M’)としてCo、FeおよびNiのうちの少なくとも1種を選択した場合に、前記異種金属元素(M’)のほかに、アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素に由来する成分をも含有させることにより、紫外線吸収性能をさらに高めうることを見出した。
本発明はこれらの知見により完成したものである。
したがって、本発明にかかる金属酸化物粒子は、金属元素(M)の酸化物からなる粒子内に該金属元素(M)以外の金属元素(M’)に由来する成分が含有されている金属酸化物粒子において、前記金属元素(M’)は、Co、Fe、Niからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、i)前記金属元素(M)は、Zn、Ti、Ce、In、Sn、AlおよびSiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記金属元素(M’)とするCo、FeおよびNiの少なくとも一部は2価であるか、ii)前記金属元素(M)はZnであり、(002)面に垂直方向の結晶子径が30nm以下、(100)面に垂直方向の結晶子径が8nm以上であるか、iii)前記金属元素(M)は、Zn、Ti、Ce、In、Sn、AlおよびSiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記金属元素(M’)のほかに、アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素に由来する成分をも含有する、ことを特徴とする。
本発明にかかる組成物は、金属酸化物粒子が媒体中に分散してなり、前記金属酸化物粒子が前記本発明の金属酸化物粒子を必須とするものである。
本発明にかかる膜は、金属酸化物を必須構成成分としてなり、前記金属酸化物が、前記本発明の金属酸化物粒子および/または該粒子に由来する金属酸化物結晶を必須とするものである。
本発明によれば、より優れた紫外線吸収性能を発揮することは勿論のこと、例えば、紫外線吸収端がより長波長側にシフトされており長波長領域の紫外線の吸収効率にも優れていたり、例えば基材に内添もしくはコーティングした場合に優れた透明性を発揮し、可視光は透過させ紫外線のみを選択的に吸収し得ることで基材の透明性や色相を損なうことがないという利点も兼ね備えた金属酸化物粒子と、これを用いた組成物(例えば、膜形成用組成物)および膜とを提供することができる。
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔金属酸化物粒子〕
本発明の金属酸化物粒子は、前述したように、特定の金属元素(M)の酸化物からなる粒子内に該金属元素(M)以外の金属元素(M’)(以下「異種金属元素」と称することもある。)に由来する成分が含有されたものである。さらに詳しくは、本発明において、前記異種金属元素に由来する成分を含有するとは、本発明の金属酸化物粒子を構成する金属酸化物が前記異種金属元素を含む金属酸化物であればよく、前記異種金属元素がいかなる存在形態で含有されているかは問わない。
本発明の金属酸化物粒子を構成する金属酸化物において、前記異種金属元素(M’)の存在形態は、限定されないが、例えば、(I)異種金属元素(M’)が金属元素(M)の酸化物の結晶に固溶して存在している形態、(II)異種金属元素(M’)が金属元素(M)の酸化物の金属成分として含有された状態(好ましくは複合酸化物)で存在している形態、(III)異種金属元素(M’)が金属元素(M)の酸化物の結晶表面に吸着している形態、(IV)異種金属元素(M’)が金属または単体として粒子状または膜状で金属元素(M)の酸化物の表面に付着している形態、などが例示される。なかでも、金属元素(M)の酸化物の結晶中に原子状(イオン状態を含む)で均一に分散されている固溶の形態が、異種金属元素(M’)によりもたらされる効果、すなわち、紫外線吸収性に優れ、また、異種金属元素(M’)添加による着色の程度が小さい点や、良好な透明性を保持させうる点で、好ましい。
本発明の金属酸化物粒子においては、前記異種金属元素(M’)の分散状態としては、(i)粒子中に均一に分散して含有されていてもよく、あるいは、(ii)部分的に含有(偏析という意味ではなく、1個の粒子についてみたときに、局部的に高濃度で含有されているということ。)されていてもよい。上記(i)の場合としては、例えば、前記(I)の形態において、金属元素(M)の酸化物の結晶中に、均一に(表面層から結晶子内部まで)固溶している場合が挙げられる。上記(ii)の場合としては、金属元素(M)の酸化物の結晶の表面に表面層として、異種金属元素(M’)が固溶した金属酸化物固溶体相(前記(I)の形態)、あるいは、異種金属元素(M’)と金属元素(M)との複合酸化物相(前記(II)の形態)を形成している場合、が挙げられる。
なお、一般に、金属酸化物は、結晶性を示すもの(結晶体)と、結晶性を示さないもの(非結晶体)とに分類される。上記結晶体とは、規則的な原子配列が周期性をもって認められる結晶子からなる金属酸化物であると定義することができ、電子線回折学的および/またはX線回折学的に、格子定数および/または回折パターンから金属酸化物の同定ができるものを言い、そうでないものは非結晶体であると定義できる。紫外線吸収能などに優れる点では、結晶体であることが好ましく、本発明の金属酸化物粒子を構成する金属酸化物についても同様である。特に、前記金属元素(M)がZnである場合の金属酸化物粒子を構成する金属酸化物は結晶体である。
上記結晶体については、単結晶体であっても多結晶体であってもよく、これらを構成する結晶子の形状としては、例えば、球状、楕円球状、立方体状、直方体状、多面体状、ピラミッド状、柱状、チューブ状、りん片状、(六角)板状等の薄片状や、過飽和度の高い条件下で結晶の稜や角が優先的に伸びて生成した樹枝状、骸晶状などが挙げられる。結晶子の配向性については、限定はされず、全ての結晶子の配向性が揃っていても、ランダムであっても、一部が同じ配向性で残りがランダムであってもよく、限定はされない。
本発明の金属酸化物粒子の形状は、限定はされない。具体的には、本発明の金属酸化物粒子が金属酸化物の単結晶体からなる粒子である場合は、上述した結晶子形状と同じであるが、多結晶体からなる粒子であったり、結晶子同士が固着または凝集した粒子であったりする場合は、粒子の形状は、結晶子の形状と同じとは限らず、例えば、球状(真球状)、楕円球状、立方体状、直方体状、ピラミッド状、針状、柱状、棒状、筒状、りん片状、(六角)板状等の薄片状などが挙げられる。
本発明の金属酸化物粒子を構成する金属酸化物は、単一酸化物(具体的には、金属元素(M)の酸化物)または複合酸化物(2種以上の金属元素(M)からなる酸化物)に異種金属元素が固溶(ドープ)されてなる固溶体金属酸化物(固溶体酸化物)であることが好ましい。また、該金属酸化物は、金属元素と酸素とが定比組成であっても不定比組成であってもよく、限定はされない。
上記固溶体酸化物については、いわゆる侵入型固溶体酸化物であってもよいし、置換型固溶体酸化物であってもよいし、これらの組み合わせたものであってもよく、限定はされない。
本発明の金属酸化物粒子において、前記金属元素(M’)は、Co、Fe、Niからなる群より選ばれる少なくとも1種であって、i)前記金属元素(M)は、Zn、Ti、Ce、In、Sn、AlおよびSiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記金属元素(M’)とするCo、FeおよびNiの少なくとも一部は2価であることを特徴とする金属酸化物粒子(以下「第1の金属酸化物粒子」と称することもある)、または、ii)前記金属元素(M)はZnであり、(002)面に垂直方向の結晶子径が30nm以下、(100)面に垂直方向の結晶子径が8nm以上である、ことを特徴とする金属酸化物粒子(以下「第2の金属酸化物粒子」と称することもある)、または、iii)前記金属元素(M)は、Zn、Ti、Ce、In、Sn、AlおよびSiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記金属元素(M’)のほかに、アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素に由来する成分をも含有する、ことを特徴とする金属酸化物粒子(以下「第3の金属酸化物粒子」と称することもある)である。
前記金属元素(M)は、Zn(亜鉛)、Ti(チタン)、Ce(セリウム)、In(インジウム)、Sn(スズ)、Al(アルミニウム)およびSi(珪素)からなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらのなかでも、紫外線吸収性能に優れ、かつ半導体とするときに金属原子(M’)の含有効果が高い点で、Zn、Ti、Ce、In、Snが好ましい。特に、Zn、Ti、Ceは、その単独酸化物においても優れた紫外線吸収性能を発揮しうるものであるので、従来一般的に言われている380nm以下の紫外線に対する遮蔽効果が高く、しかも、異種金属元素(M’)による効果を格段に発揮させることができる点で好ましい。
前記金属元素(M)の酸化物は、単一酸化物であってもよいし、複合酸化物であってもよい。例えば、複合酸化物としては、ZnIn、ZnIn、ZnIn、GaInO、InSn12、ZnSnO、ZnSnO等のように、2種以上のMからなる複合酸化物や、金属元素(M)と該金属元素(M)以外の金属元素を金属成分とする複合酸化物が挙げられる。代表して金属元素(M)がZnである場合について詳しく示すと、ZnAl、Zn11、ZnFe、ZnMoO、ZnSeO、ZnSiO、ZnWO等が好ましく挙げられる。特に、金属元素(M)として、Znは、可視光に対する透明性にも優れる点で、より好ましく、酸化亜鉛系粒子が本発明の金属酸化物粒子の好ましい態様である。なお、本発明においては、金属酸化物の酸素の一部が異種非金属元素(例えば、N、S、および17族(7B族)元素から選ばれる1種)などで置換されているものも、前記金属元素(M)の酸化物に包含されるものとする。
前記金属元素(M’)として選択しうる群の中で、Coとしては、例えば、Co(II)およびCo(III)が挙げられる。Feとしては、例えば、Fe(II)およびFe(III)が挙げられる。Co、Feが固溶成分の場合、2価の方が3価に比べて優れた紫外線吸収性を示す。よって、3価のみよりは、2価単独もしくは2価と3価が共存して存在することが好ましい。特に、Feの場合、3価であると黄色の着色が強いが、2価であると緑味を帯びた色となる点から、Feは2価が好ましい。
前記金属元素(M’)として選択しうる群の中で、Niとしては、例えば、Ni(0)、Ni(II)、Ni(I)、Ni(III)が挙げられる。なお、Niは、Ni(0)として、すなわち金属として金属酸化物粒子の表面に付着(被着)して効果を発揮することもできる。これらのなかでも、Ni(II)が、紫外線遮蔽性などに優れる点で好ましい。
前記第1の金属酸化物粒子においては、前記金属元素(M’)とするCo、FeおよびNiの少なくとも一部は2価である。すなわち、Co(II)を必須とするCo、Fe(II)を必須とするFe、Ni(II)を必須とするNiのうちの少なくとも1種を前記金属元素(M’)とするのである。
Co(II)を必須とするCoについては、Co(II)のみからなるものであってもよいし、Co(II)のほかに他の価数のCo(例えばCo(III))を含むものであってもよく、限定はされないが、紫外線遮蔽性(紫外線吸収性)に優れる点で、前者またはその組成により近いもの(具体的には、Co全体に対しCo(II)が50原子%以上、好ましくは70原子%以上、より好ましくは90原子%以上。)が好ましい。以下では、特に言及しない限り、単に「Co(II)」と示した場合は、「Co(II)を必須とするCo」を表すものとする。
Fe(II)を必須とするFe、および、Ni(II)を必須とするNi、についても同様に、Fe(II)のみやNi(II)のみからなるものであってもよいし、Fe(II)やNi(II)のほかに他の価数のFeやNi(例えばFe(III)やNi(III))を含むものであってもよく、限定はされないが、紫外線遮蔽性(紫外線吸収性)に優れる点で、前者またはその組成により近いもの(具体的には、Fe全体もしくはNi全体に対しFe (II)もしくはNi(II)が50原子%以上、好ましくは70原子%以上、より好ましくは90原子%以上。)が好ましい。以下では、特に言及しない限り、単に「Fe(II)」と示した場合は「Fe(II)を必須とするFe」を、単に「Ni(II)」と示した場合は「Ni(II)を必須とするNi」を、表すものとする。
前記第1の金属酸化物粒子における金属元素(M’)の好ましい態様としては、Co(II)のみ、Ni(II)のみ、Fe(II)のみ、Co(II)とNi(II)とFe(II)のうち2種以上の混在状態、Co(II)と2価以外の価数(好ましくは3価)のCoとの混在状態、Fe(II)と2価以外の価数(好ましくは3価)のFeとの混在状態、Ni(II)と2価以外の価数(好ましくは3価)のNiとの混在状態、Co(II)と他の金属元素(FeまたはNi)との混在状態、Fe(II)と他の金属元素(CoまたはNi)との混在状態、Ni(II)と他の金属元素(CoまたはFe)との混在状態、が挙げられる。
これらの中でも、Co(II)とFe(価数は特に限定しないが、好ましくは2価)との組み合わせは特に好ましい態様である。従来、Coを含有する金属酸化物粒子は、Coによる着色(青色)の度合いが強いため、より無色透明であることが要求される用途においては、使用し難く実用性に欠ける場合があり、また、前記従来の金属酸化物粒子は、酸化亜鉛粒子に比べて370nm以下の波長の紫外線の吸収性能が低いという実情もあり、より厳しい紫外線吸収性能を要求される用途においては、有用性に欠ける場合もあった。Co(II)とFeとを組み合わせることで、前記Coによる着色については、多少着色はあったとしても、より無色透明であることが要求される用途において十分に使用できるやわらかい色相に抑えることができ、また、370nm以下の波長の紫外線の吸収性能を付加的に高くできるのである。他方、従来、異種金属元素として例えば3価のFeのみを含有させた場合にも着色(濃褐色)の問題があったが、Co(II)と組み合わせて用いることで、Co(II)に起因する着色(青色)により、上記着色の問題が効果的に緩和でき、実用性の点でも十分に問題ないものとなる、という側面もある。
また、特に用途上、安全性が強く求められる分野では、金属元素(M’)としては、毒性の強いCoやNiを主成分とするよりも、Fe(II)やFe(III)を主成分とすることが好ましい。一方、Fe(III)の原料となる化合物は一般に安価であるが、Fe(II)の原料となる化合物として酢酸第一鉄(II)などのFe(II)化合物は高価であるという現状から、コスト的にはFeは3価の原料が好ましい。Fe(III)を含有する粒子は黄色に着色するという欠点があるが、着色が問題となる場合は、Fe(III)と、微量成分としてFe(II)、Co(II)、Ni(II)から選ばれる少なくとも1種を併用して含有させることで、Fe(III)含有による黄色の着色を減ずることができる。しかも、Fe(III)と前記微量成分の併用によって、紫外線遮蔽性能をも高めることができる。安全性が強く求められる分野では、金属酸化物粒子における金属元素(M’)の含有量は、金属元素(M)に対する原子比で、Feは、2価と3価の総量で1〜10原子%とし、Co、Niは、0.01〜1原子%の範囲とするのが好ましく、0.1原子%未満がより好ましい。
前記第1の金属酸化物粒子においては、金属元素(M’)の合計含有率が、金属元素(M)に対し0.1〜10原子%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜5原子%、さらに好ましくは0.5〜3原子%である。上記含有率が、0.1原子%未満であると、Co(II)やFe(II)やNi(II)の含有効果である紫外線長波長域の吸収性能が不十分となるおそれがあり、10原子%を超えると、金属元素(M)の酸化物が本来有する吸収波長域(370nm以下の紫外線)に対する吸収性能が顕著に低下する。
なお、第1の金属酸化物粒子においても、後述する第3の金属酸化物粒子のように、前記金属元素(M’)のほかに、アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素に由来する成分をも含有することが好ましく、その含有量についても同様である。
前記第2の金属酸化物粒子においては、前記金属元素(M)はZnであり、この金属酸化物粒子は、酸化亜鉛系の金属酸化物結晶からなる結晶体であるが、該結晶体を構成する結晶子の特定方向の大きさ(すなわち、(002)面に垂直方向の結晶子径の大きさ:Ds(002)、および、(100)面に垂直方向の結晶子径の大きさ:Ds(100))が、それぞれ、Ds(002)は30nm以下、Ds(100)は8nm以上である。上記Ds(100)は、好ましくは10nm以上である。上記Ds(100)が、8nm未満であると、紫外線吸収波長にブルーシフトが起こるおそれがあり、Ds(002)が30nmを超えると、透明性が低下するおそれがある。なお、上記結晶子径の大きさは、後述する実施例に記載の方法により測定される値であるとする。
なお、第2の金属酸化物粒子においても、前記金属元素(M’)とするCo、FeおよびNiの少なくとも一部は2価であることが好ましく、前記金属元素(M’)についての前述の説明が適宜適用できる。また、第2の金属酸化物粒子においても、後述する第3の金属酸化物粒子のように、前記金属元素(M’)のほかに、アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素に由来する成分をも含有することが好ましく、その含有量についても同様である。
前記第3の金属酸化物粒子においては、前記金属元素(M’)のほかに、アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素に由来する成分をも含有する。これにより、紫外線吸収性能をさらに高めることができる。アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素の含有量は、金属元素(M)に対して0.001〜5原子%の範囲が好ましく、0.001〜1原子%の範囲がより好ましい。
なお、第3の金属酸化物粒子においても、前記金属元素(M’)とするCo、FeおよびNiの少なくとも一部は2価であることが好ましく、前記金属元素(M’)についての前述の説明が適宜適用できる。
本発明の金属酸化物粒子、特に前記第2の金属酸化物粒子においては、その1次粒子が、単結晶体(1つの結晶子からなる結晶体)であることが好ましい。単結晶体であるか、多結晶体であるかは、TEMでの観察により確認できる。
本発明の金属酸化物粒子においては、本発明の効果を損なわない範囲で、前記金属元素(M)の酸化物に前記金属元素(M’)以外の金属元素を含有させることもできる。異種金属元素(M’)以外の金属元素としては、特に限定されないが、例えば、Al、In、Sn、Mn、Ce等の中から、前記金属元素(M)としていないものを選択することが好ましい。
本発明の金属酸化物粒子において、前記異種金属元素(M’)やこれ以外に金属元素(M)の酸化物に含有させる金属元素の存在は、金属酸化物粒子の1次粒子およびその集合体について、FE−TEM(電界放射型透過型電子顕微鏡)によりそれらの透過像を観察しながら、粒子のほかに金属の偏析物が認められないところを探し、高分解能XMAにより元素分析を行い、各金属元素に帰属するピークを検出することで確認できる。偏析物の確認は、FE−TEMで観察される透過像において、通常、透過像より直接、もしくはXMAを併用して、確認できないレベルであれば偏析物は無いものとする。
前記異種元素(すなわち、異種金属元素(M’)や、これ以外に金属元素(M)の酸化物に含有させる金属元素)の含有率の測定は、蛍光X線分析、原子吸光分析およびICP(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析)等の微量成分分析手法で行うこともできるが、上記高分解能XMAによる元素分析を所望の空間分解能(スポット径)で行い、各金属元素に帰属するピーク強度を測定し、その結果から算出するようにする手法で行うことが好ましい。上記スポット径は、プローブを絞ることにより下限を1nmφにまでできるとともに、任意に連続的に拡大することもできる。具体的には、FE−TEMによる透過像において、通常は偏析物の認められない約10個の金属酸化物粒子の集合体を選択し、これら約10個の粒子をすべて含むような空間分解能(スポット径)で元素分析を行うこととする。
なお、各粒子が異種元素(すなわち、異種金属元素(M’)や、これ以外に金属元素(M)の酸化物に含有させる金属元素)を含有しているか、あるいは、個々の粒子において粒子中に異種金属元素が均一に分散しているかについては、ビーム径を絞って(例えば1nmφ)の局所元素分析を行うことにより確認することができる。
前記FE−TEMとしては、例えば、日立製作所製の電界放射型透過型電子顕微鏡(HF−2000型、加速電圧200kV)等を用いることができる。前記高分解能XMAとしては、例えば、ケヴェックス(Kevex)社製のX線マイクロアナライザー(Sigma型、エネルギー分散型、ビーム径:空間分解能10Åφ)等を用いることができる。
本発明の金属酸化物粒子の大きさについては、超微粒子や微粒子と称されるものまですべて含むこととし、限定はされないが、通常、1次粒子の平均粒子径が1〜100nmであることが好ましい。特に、本発明の金属酸化物粒子における好ましい態様は、1次粒子径が3〜50nmであることである。より好ましくは5〜30nm、さらに好ましくは5〜20nm、特に好ましくは10〜20nmである。1次粒子の平均粒子径が大きすぎると、透明性が低下するおそれがある。前記1次粒子の平均粒子径が小さすぎると、量子効果により紫外線吸収端が短波長側にシフトする傾向があり紫外線吸収材料として好ましくなくなり、一方、大きすぎると、透明性が低下するおそれがある。
なお、本発明において、1次粒子の平均粒子径とは、結晶子径(Dw)または比表面積径(Ds)を意味するものであり、詳しくは、前記粒子が結晶体である場合には結晶子径(Dw)を、前記粒子が非結晶体である場合には比表面積径(Ds)を意味するものである。したがって、結晶子径(Dw)と比表面積径(Ds)のいずれか一方が前記範囲になることが好ましいのである。より詳しくは、結晶子径(Dw)とは、X線回折学的に結晶の場合に適用されるものであり、シェラーの式により求められた結晶子の大きさのことである。該結晶子径(Dw)は、通常、金属酸化物粒子の粉末X線回折パターンを測定し、3強線(ピークが最も大きい回折線(1)、2番目に大きい回折線(2)、3番目に大きい回折線(3))について、それぞれの半値巾または積分巾よりシェラーの式から回折線(1)〜(3)に帰属される回折面に垂直方向の結晶子径D1、D2、D3を求め、これらの平均値((D1+D2+D3)/3)を結晶子径(Dw)として算出することができる。他方、比表面積径(Ds)は、金属酸化物粒子の粉末の真比重と比表面積を測定し、下記式により算出することができる。
Ds(nm)=6000/(ρ×S)
但し、ρ:粒子の真比重(無次元)
S:B.E.T.法で測定される粒子の比表面積(m/g)
本発明の金属酸化物粒子においては、前記金属元素(M)の酸化物が結晶であり、結晶子径(Dw)(XRDピークの3強線についてシェラーの式に従って計算した各値の平均値)が30nm以下であることが好ましい。
特に、本発明の金属酸化物粒子において、前記金属元素(M)の酸化物が酸化亜鉛結晶である場合、透明性と紫外線吸収性の両方に優れる点で、X線回折測定による結晶子径のうち、格子面(002)に垂直方向の結晶子径が30nm以下であり、格子面(100)および/または格子面(110)に垂直方向の結晶子径が8nm以上であることが好ましい。より好ましくは、格子面(002)に垂直方向の結晶子径は20nm以下であり、格子面(100)および/または格子面(110)に垂直方向の結晶子径は10nm以上である。具体的には、格子面(002)に垂直方向(光軸方向)の結晶子径は、紫外線吸収性能にさほど大きな影響は及ぼさず、透明性を高める点では小さい方が好ましい。他方、格子面(002)の方向(光軸に対して垂直方向)の結晶子径、例えば、格子面(100)および/または格子面(110)に垂直方向の結晶子径は、小さすぎると紫外線吸収性能を低下させることになる。なお、各格子面に垂直方向の結晶子径は、粉末X線回折測定を行い、シェラー解析を行うことにより求めることができる。
本発明の金属酸化物粒子は、任意の溶媒や樹脂などに分散された状態での分散粒子径が、500nm以下となるものであることが、得られる塗膜や樹脂コンポジットの透明性を高めるうえで好ましい。より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下であり、特に、1次粒子が単分散もしくはそれに近い状態で分散されうることが望ましく、50nm以下が最も好ましい。なお、分散粒子径は、例えば、動的光散乱式粒径分布測定装置(例えば、堀場製作所製「LB−500」など)により測定することができる。
本発明の金属酸化物粒子の光学的性能は、紫外線領域(380nm以下における紫外線および450nm以下における可視光)における光の遮断性(紫外線遮断性)と、可視光(450nm〜780nm)における透過性(可視光透過性)を指標とすることができる。紫外線吸収機能材料としては、紫外線遮断性が高く、可視光透過性が高いことが好ましい。通常、紫外線遮断性や可視光透過性は、粒子のみの状態、後述する膜形成用組成物から得られる膜とした状態、あるいは溶媒等の分散媒体中に粒子が分散されてなる状態において、分光透過率特性を評価することによって、判定できる。詳しくは、紫外線遮断性は、紫外線領域の任意の波長(例えば、380nm、400nm、420nmなど)における透過率を代表値として評価するか、あるいは、450nm以下もしくは380nm以下の平均透過率を評価することによって判定される。一方、可視光透過性は、可視光領域の任意の波長(例えば、500nm、600nm、700nmなど)における透過率を代表値として評価するか、あるいは、450nm〜780nmもしくは380nm〜780nmにおける平均透過率を評価することによって判定される。これら透過率の値は、各波長における平行線透過光と拡散透過光を含めた透過率の測定により得ることができ、例えば、積分球を付帯した分光測光機により測定することができる。ただし、試料の透明感が高く、拡散透過光が実質的に無視できる場合(具体的には、試料のヘイズが5%未満である場合)には、平行線透過率のみを測定値として用いてもよい。
本発明の金属酸化物粒子の好ましい態様においては、例えば、有機溶媒中に粒子濃度0.1wt%で分散したとき、380nmにおける透過率が好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下であり、400nmにおける透過率が好ましくは50%以下、より好ましくは20%以下であり、600nmにおける透過率が好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。また、420nmにおける透過率は50%以下であるのが好ましい。
また、本発明の金属酸化物粒子は、紫外線遮断を目的とする用途に限らず使用されるものであり、膜としたときに透明性が高いことが好ましい。具体的には、ヘイズが10%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
なお、紫外線遮断性を含めた粒子の光吸収特性を測定する方法として、粒子粉末の拡散反射率を測定する方法を採用することもできる。その場合、反射率が低いということは吸収率が高いということであり、反射率が高いということは吸収率が低いということである。よって、本発明でいう紫外線領域における反射率が低く、450nm以上の可視光領域での反射率が高いことが好ましい。
本発明の金属酸化物粒子については、該粒子および/または該粒子に由来する金属元素(M)の酸化物の結晶を必須構成成分としてなる膜にしたときに、該膜の光学特性が下記の条件を満たす粒子であることが、可視光は透過させ紫外線のみを選択的に吸収する性能に優れる点で、好ましい。ここで、該膜の形態および成膜方法等については、後述する本発明の膜に関する説明が同様に適用できる。なお、以下に示す該膜の光学特性は、後述する実施例に記載の方法により測定・評価される値であるとし、また、膜部分のみ(基材除く)についての物性であって、膜付き基材の光学特性と基材のみの光学特性とを勘案して評価されるものとする。本発明の金属酸化物粒子が金属元素としてCo(II)を含有する場合には、さらに、該膜の光学特性のうち、紫外線吸収性能の指標となる波長380nmの光の透過率(%)をT380と定義するとともに、可視光透過性能の指標となる、波長500nmの光の透過率(%)をT500と、波長550nm〜700nmの光の透過率(%)の最小値をTと、TとT500との差の絶対値(|T−T500|)をΔTと、定義する。
本発明の金属酸化物粒子は、上述のように膜とする場合に、基材への単位面積あたりの塗布量(使用量)を変化させると、それに伴い、得られた膜のT380やT500やΔTの値も変化する。そこで、得られた膜の光学特性に関しては、T380の値を基準としたときの、T500およびΔTの値で評価することとし、該膜の好ましい態様を、Co(II)を含有する金属酸化物粒子の場合(a)と、それ以外の金属酸化物粒子の場合(b)とに分けて、以下に示す。
Co(II)を含有する金属酸化物粒子の場合(a);
(i) T380が40%以下となるように上記膜を形成したときに、ΔTが10%以下であることが好ましく、より好ましくはΔTが10%以下かつT500が90%以上であり、さらに好ましくはΔTが5%以下かつT500が95%以上である。
好ましくは、(ii) T380が30%以下となるように上記膜を形成したときに、ΔTが10%以下であることが好ましく、より好ましくはΔTが10%以下かつT500が90%以上であり、さらに好ましくはΔTが10%以下かつT500が95%以上であり、特に好ましくはΔTが5%以下かつT500が95%以上である。
さらに好ましくは、(iii) T380が20%以下となるように上記膜を形成したときに、ΔTが10%未満であることが好ましく、より好ましくはΔTが10%未満かつT500が80%以上であり、さらに好ましくはΔTが5%以下かつT500が85%以上であり、特に好ましくはΔTが5%以下かつT500が90%以上である。
特に好ましくは、(iv) T380が10%以下となるように上記膜を形成したときに、ΔTが10%未満であることが好ましく、より好ましくはΔTが10%未満かつT500が80%以上であり、さらに好ましくはΔTが5%以下かつT500が85%以上であり、特に好ましくはΔTが5%以下かつT500が90%以上である。
前記以外の金属酸化物粒子の場合(b);
(i) T380が20%以下となるように上記膜を形成したときに、T500が90%以上であることが好ましく、さらに好ましくはT500が90%以上である。
好ましくは、(ii) T380が10%以下(より好ましくはT380が5%以下)となるように上記膜を形成したときに、T500が70%以上であることが好ましく、さらに好ましくはT500が80%以上である。
本発明の金属酸化物粒子においては、前記金属元素(M)の酸化物からなる粒子は金属元素(M)に対するモル比で0.1〜14モル%のアシル基を含有していることが、分散性に優れ、透明性に優れる膜形成用組成物や膜が得られる点で、好ましい。特に、金属元素(M)がZn、Ti、Ce、In、Snである場合には、結晶の屈折率が高くなるため可視光の散乱が起こりやすく、樹脂等のバインダーに分散させたときにヘイズの高い膜となりやすいが、前述のようなアシル基を含有する粒子であると、ヘイズの低い透明性に優れる膜となるのである。前記アシル基としては、特に炭素数1〜3であることが好ましい。
本発明の金属酸化物粒子において、前記金属元素(M)の酸化物は、その表面に、該酸化物に含まれる金属元素(M’)とは異なる少なくとも1種の金属元素からなるアルコキシド類またはそれらの(部分)加水分解物が結合してなるものであることが、アシル基が含有されている粒子であることが好ましいのと同様の理由で、好ましい。つまり、このような粒子は、分散性に優れ、透明性に優れる膜形成用組成物や膜が得られる点で好ましいのである。特に、金属元素(M)がZn、Ti、Ce、In、Snである場合には、この態様が有効である。前記金属元素(M)の酸化物に含まれる金属元素(M’)とは異なる少なくとも1種の金属元素は、Si、Ti、Al、Zrからなる群より選ばれることが好ましい。前記金属元素(M)の酸化物の表面に、該酸化物に含まれる金属元素(M’)とは異なる少なくとも1種の金属元素(好ましくは、Si、Ti、Al、Zrからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素)からなるアルコキシド類またはそれらの(部分)加水分解物が結合してなる粒子とするには、以下の金属化合物(1)〜(3)の少なくとも1種で表面処理すればよい。
上記金属化合物(1)〜(3)について、以下に説明する。
金属化合物(1):テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン等の、前記金属元素(M)の酸化物に含まれる金属元素(M’)とは異なる少なくとも1種の金属元素からなる金属アルコキシド類。
金属化合物(2):下記一般式(a)で表される有機基含有金属化合物。なお、該金属化合物中の金属元素の種類は、限定はされない。
(a)
(ただし、Yは有機官能基、Mは金属原子、Xは加水分解性基である。iおよびjは1〜(s−1)の整数であってi+j=s(sはMの原子価)を満足する。)
一般式(a)で表される有機基含有金属化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。
がアルミニウムである有機基含有化合物としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムアルキルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノメタクリレート、アルミニウムステアレートオキサイドトリマー、イソプロポキシアルミニウムアルキルアセトアセテートモノ(ジオクチルホスフェート)等の各種アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。
がケイ素である有機基含有化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’−ビス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン等のアミノ系シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロル系シランカップリング剤;アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアクリロキシ系シランカップリング剤;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のケチミン系シランカップリング剤;N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩等のカチオン系シランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ヒドロキシエチルトリメトキシシラン等のアルキル系シランカップリング剤;(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン等のフッ素含有有機基を有するシリコン化合物;イソシアン酸プロピルトリメトキシシラン等のイソシアナト基含有有機基を有するシランカップリング剤;下記一般式(b):
R’O(CO)Si(OR”) (b)
(だだし、R’は、水素、または、メチル基等のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アシル基およびアラルキル基から選ばれる少なくとも1種の置換されていてもよい基である。R”は、メチル基等のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アシル基およびアラルキル基から選ばれる少なくとも1種の置換されていてもよい基である。nは1以上の整数である。)
で表されるシランカップリング剤;γ−ウレイドプロピルトリエトキシシランやヘキサメチルジシラザン等の各種シランカップリング剤などが挙げられる。
がジルコニウムである有機基含有化合物としては、例えば、ジルコニウムジn−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムトリn−ブトキシドペンタンジオネート、ジルコニウムジメタクリレートジブトキシド等の各種ジルコニウム化合物等が挙げられる。
金属化合物(3):金属アルコキシド(金属は任意)の(部分)加水分解物または縮合物や上記(2)の(部分)加水分解物または縮合物であり、例えば、下記一般式(c)で表される。
−(O−M(−R m1)(−R m2))−R (c)
(ただし、R、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基およびアシル基からなる群より選ばれるいずれか1種もしくは該1種が置換されていてもよい基であり、Rは加水分解性基(上記一般式(a)中のXと同じ)または水酸基であり、RはRまたはRであり、Mは金属原子である。m1およびm2は(Mの原子価−2)であり、nは2から10000までの整数である。なお、金属原子Mに結合するRおよびRの種類やその価数(m1およびm2)は、金属原子Mの相互間ですべて同じであってもよいし少なくとも一部が異なっていてもよい。)
例えば、上記金属化合物(2)の加水分解縮合物であれば、上記一般式(a)中の金属原子Mに結合している加水分解性基Xの一部あるいは全部が加水分解されて該XがOH基となった化合物や、さらにM−OH間での脱水縮合等の縮合反応によりM−O−M結合を形成してなる化合物等が挙げられ、具体的には、金属化合物(2)として列挙した有機基含有化合物を、加水分解縮合および/または部分加水分解縮合してなる、線状や環状の3量体をはじめとする、線状(分岐鎖を含むものを含む)や環状の加水分解縮合物が挙げられる。
金属化合物(3)としては、例えば、チタン(IV)テトラ−n−ブトキシドテトラマー(CO−〔Ti(OCO〕−C、和光純薬社製)や、シリコン(IV)テトラメトキシドテトラマー、メチルトリメトキシシランテトラマー、テトラメトキシシラン−メチルトリメトキシシラン共加水分解縮合物、アルミニウム(III)トリブトキシドトリマー等が挙げられる。
本発明の金属酸化物粒子の製造方法については、限定はされず、公知の、金属酸化物粒子に所望の異種金属元素を含有させた(ドープした)粒子を得ることのできる方法であれば、何れの方法も採用できる。例えば、金属元素(M)化合物および/またはその加水分解縮合物と、異種金属元素(M’)化合物と、アルコールとを出発原料とし、これらの混合系を高温状態にして、金属酸化物粒子を生成させる(析出させる)工程を備える製造方法(以下、製造方法(A)と称する。)が好ましい。詳しくは、製造方法(A)は、出発原料としての、金属元素(M)化合物および/またはその加水分解縮合物と、異種金属元素(M’)化合物と、アルコールとを、混合すると同時かまたはその後に、該混合系を高温状態にする工程を備える方法である。このように高温状態にすることにより、反応系中に金属酸化物粒子を生成させることができる。
製造方法(A)において用い得る金属元素(M)化合物としては、限定はされないが、金属元素(M)のカルボン酸塩が好ましい。また、金属元素(M)化合物の加水分解縮合物とは、該化合物を加水分解および/または縮合して得られる加水分解物および/または縮合物であり、モノマー化合物から高分子化合物までを含む(以下、「金属元素(M)化合物」は、「金属元素(M)化合物および/またはその加水分解縮合物」を意味することがある。)。
上記金属元素(M)のカルボン酸塩としては、カルボキシル基の水素原子が金属元素(M)の原子で置換された置換基を分子内に少なくとも1つ有する化合物が好ましい。具体的には、飽和モノカルボン酸、不飽和モノカルボン酸、飽和多価カルボン酸および不飽和多価カルボン酸などの鎖式カルボン酸;環式飽和カルボン酸;芳香族モノカルボン酸および芳香族不飽和多価カルボン酸などの芳香族カルボン酸;これらカルボン酸において、さらに分子内にヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、スルホン基、シアノ基およびハロゲン原子等の官能基または原子団を有する化合物;等のカルボン酸化合物中のカルボキシル基が、前記置換基となっている化合物が好ましく例示できる。
これら金属元素(M)のカルボン酸塩のなかでも、下記一般式(I):
M(O)(m−x−y−z)/2(OCOR(OH)(OR (I)
(但し、Mは金属元素(M)の原子(Zn、Ti、Ce、In、Sn、AlおよびSiからなる群より選ばれる少なくとも1種);Rは、水素原子、置換基があってもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた少なくとも1種;Rは、置換基があってもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた少なくとも1種;m、x、yおよびzは、x+y+z≦m、0<x≦m、0≦y<m、0≦z<mを満たす数(mはMの原子価)である。)
で表される化合物(例えば、前記例示した金属元素(M)のカルボン酸塩の一部が水酸基やアルコキシ基等で置換された化合物等)、飽和カルボン酸塩、不飽和カルボン酸塩および塩基性酢酸塩がより好ましく、さらに好ましくは上記一般式(I)で表される化合物であり、最も好ましくは金属元素(M)のギ酸塩、酢酸塩およびプロピオン酸塩ならびにこれらの塩基性塩である。
なお、金属元素(M)のカルボン酸塩は、結晶水を含むカルボン酸塩の水和物であってもよいが、無水物であることが好ましい。
上記一般式(I)で表される化合物について、さらに詳しく説明する。
一般式(I)中のRやRとしては、分散性の高い金属酸化物粒子が得られやすい点で、水素、メチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、水素、メチル基、エチル基が特に好ましい。また、同様の理由で、一般式(I)中のxは、1≦x≦mを満たすことが好ましく、yは0≦y<m/2を満たすことが好ましく、zは1≦z<m/2を満たすことが好ましい。
一般式(I)で表される化合物としては、分散性の高い金属酸化物粒子が得られやすい点で、溶解速度の速いものが好ましい。溶解速度とは、反応で直接測定することもできるが、25℃において、一般式(I)で表される化合物2重量部を、25±3℃のイオン交換水(pH5〜8)200重量部に混合して撹拌したとき、完全に溶解して透明な溶液が得られるまでの時間tで定義される。一般式(I)で表される化合物の溶解速度は、2分以下が好ましく、より好ましくは1分以下、さらに好ましくは30秒以下である。
一般式(I)で表される化合物の加水分解縮合物のうち、縮合物については、金属元素(M)と酸素(O)とがメタロキサン結合した結合鎖−(M−O)(ただし、nは1以上である。)を有する化合物であることが好ましい。上記縮合物の縮合度(平均)は、限定はされないが、結晶子の大きさや形態のそろった金属酸化物粒子が得られる点で、100以下であることが好ましく、より好ましくは10以下である。
金属元素(M)化合物は、上述したもののうち1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
製造方法(A)において用い得る異種金属元素(M’)の化合物としては、限定はされないが、例えば、金属カルボン酸塩類や金属アルコキシド類等が好ましく挙げられる。異種金属元素(M’)の化合物は、これらのうち1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
製造方法(A)において用い得るアルコールとしては、限定はされないが、例えば、脂肪族1価アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、ステアリルアルコール等)、脂肪族不飽和1価アルコール(アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール等)、脂環式1価アルコール(シクロペンタノール、シクロヘキサノール等)、芳香族1価アルコール(ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、メチルフェニルカルビノール等)、フェノール類(エチルフェノール、オクチルフェノール、カテコール、キシレノール、グアヤコール、p−クミルフェノール、クレゾール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、ドデシルフェノール、ナフトール、ノニルフェノール、フェノール、ベンジルフェノール、p−メトキシエチルフェノール等)、複素環式1価アルコール(フルフリルアルコール等)等の1価アルコール類;アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ピナコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等)、脂環式グリコール(シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール等)、および、ポリオキシアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)等のグリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート等の上記グリコール類のモノエーテルまたはモノエステル等の誘導体;グリセリンやトリメチロールエタン等の3価アルコール、エリスリトールやペンタエリスリトール等の4価アルコール、リピトールやキシリトール等の5価アルコール、ソルビトール等の6価アルコール等の3価以上の多価アルコール、ヒドロベンゾイン、ベンズピナコール、フタリルアルコール等の多価芳香族アルコール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等の2価フェノールや、ピロガロール、フロログルシン等の3価フェノール等の多価フェノール、および、これら多価アルコール類におけるOH基の一部(1〜(n−1)個(ただし、nは1分子当たりのOH基の数))がエステル結合またはエーテル結合となった誘導体;等を挙げることができる。アルコールは、これらのうち1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
これらのなかでも、上記アルコールとしては、金属元素(M)化合物や異種金属元素(M’)の化合物と反応して金属酸化物粒子を生成し易いアルコールが好ましく、アルコール性水酸基に関して3級、さらには2級、特に1級の水酸基を有するアルコールが、より低い温度で金属酸化物粒子が得られるため、最も好ましい。同様の理由で、脂肪族アルコールも好ましい。また、上記アルコールとしては、水溶性の高いアルコールが好ましく、具体的には、水に対する溶解度1重量%以上のアルコールが好ましく、水に対する溶解度10重量%以上のアルコールがより好ましい。
出発原料としての、金属元素(M)化合物とアルコールとの相互の使用割合(配合割合)については、限定はされないが、金属元素(M)化合物の金属換算原子数に対する、アルコール中の(アルコール由来の)水酸基の数の比が、0.8〜1000であることが好ましく、より好ましくは0.8〜100、さらに好ましくは1〜50、特に好ましくは1〜20である。
また、金属元素(M)化合物と、異種金属元素(M’)の化合物との相互の使用割合(配合割合)については、限定はされないが、金属元素(M)化合物の金属換算原子数と異種金属元素(M’)の化合物の金属換算原子数との比が、前述した異種金属元素(M’)の含有率の好ましい範囲を満たすように、適宜設定すればよい。さらに、異種金属元素(M’)の化合物を2種以上用いる場合(例えば、Co(II)およびFeを共に含有させる場合など)、これら異種金属元素(M’)の化合物の相互の使用割合(配合割合)についても、上記同様に、前述した好ましい範囲を満たすよう、適宜調整すればよい。
前記出発原料の混合系は、ペースト状、乳濁液状、懸濁液状および溶液状などの流動性のある液状であることが好ましい。必要に応じて、後述する反応溶媒をも混合することにより、上記液状となるようにしてもよい。通常、金属元素(M)化合物および異種金属元素(M’)の化合物は、該混合系においては、粒子状で分散した状態、溶解した状態、あるいは、一部が溶解した状態で残りが粒子状で分散している状態、などの状態で存在する。
製造方法(A)においては、さらに反応溶媒を用いてもよい。具体的には、前記出発原料を混合するにあたり、あるいは、前記出発原料の混合系を高温状態にするにあたり、さらに反応溶媒を加えた上で行うようにしてもよい。
反応溶媒の使用量については、限定はないが、前記出発原料と反応溶媒との合計使用量に対する、前記金属元素(M)化合物の使用量の割合が、0.1〜50重量%であることが好ましく、金属酸化物粒子を経済的に得ることができる。
上記反応溶媒としては、水以外の溶媒、すなわち、非水溶媒が好ましい。非水溶媒としては、例えば、炭化水素、各種ハロゲン化炭化水素、アルコール(フェノール類や、多価アルコールおよびその誘導体で水酸基を有する化合物なども含む)、エーテルおよびアセタール、ケトンおよびアルデヒド、カルボン酸エステルおよびリン酸エステル類等のエステル、アミド類、多価アルコール類のすべての水酸基の水素がアルキル基やアシル基で置換された誘導体化合物、カルボン酸およびその無水物、シリコーン油ならびに鉱物油などを挙げることができる。反応溶媒としては、親水性溶媒が特に好ましい。具体的には、常温(25℃)において、水を5重量%以上含み溶液状態になり得る溶媒が好ましく、任意の量の水を含み均一な溶液状態になり得る溶媒がより好ましい。反応溶媒としてのアルコールとしては、出発原料となるアルコールとして先に列挙したものと同様のものが好ましく挙げられる。反応溶媒は、これらのうち1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
製造方法(A)においては、前記出発原料等(必要に応じて用いる、反応溶媒も含む。)の混合系に含まれる水分が少ない方が、得られる金属酸化物粒子の欠陥が少なくなるため好ましい。具体的には、該混合系中に、出発原料として用いた金属元素(M)化合物中の金属原子に対してモル比で4未満のわずかな水分しか含有しないことが好ましく、水分がモル比で1未満であるとさらに好ましく、0.5未満であると特に好ましく、0.1未満が最も好ましい。上記水分量が多すぎると、金属酸化物の結晶子中に異種金属元素(M’)が含有されにくくなり、前述した本発明の効果を十分に発揮できる金属酸化物粒子が得られないおそれがある。上記水分量は、例えば、カールフィッシャー法により測定することができる。
なお、上記水分量は、一般には、遊離の水分量を意味するが、金属元素(M)化合物や異種金属元素(M’)の化合物が結晶水を有する場合、その結晶水の水分量も含まれる。また、上記水分量は、出発原料等に含まれる水分(使用するアルコールおよびその他の反応溶媒成分中の遊離の水、ならびに、金属元素(M)化合物や異種金属元素(M’)の化合物中の結晶水等の水の総和)に関する値であり、前記混合系を高温状態にすることによる反応において副生する水分については、考慮しないものとする。
製造方法(A)において、前記出発原料の混合系を高温状態にするとは、該混合系の温度を常温よりも高い温度であって金属酸化物粒子が生成し得る温度、またはそれ以上の温度に昇温させることである。具体的には、得ようとする金属酸化物粒子の種類(金属元素(M)や異種金属元素(M’)の種類等)等によっても異なるが、一般には、50℃以上であり、結晶性の高い金属酸化物粒子を得るためには、80℃以上が好ましく、100〜300℃がより好ましく、100〜200℃がさらに好ましく、120〜200℃が特に好ましい。なお、上記混合系の温度とは、反応容器のボトム温度であるとする。
上記混合系の高温状態は、金属酸化物粒子の結晶性を高め、紫外線遮蔽性等の物性に優れたものが得られる点で、所定温度を30分以上保持することが好ましく、より好ましくは2時間以上である。
生成させた金属酸化物粒子について、残存有機基の除去や、より一層の結晶成長の促進等を目的とする場合、必要に応じて、該金属酸化物粒子を300〜800℃で加熱してもよい。
上記混合系を高温状態にする際の具体的な昇温手段としては、ヒーター、温風や熱風による加熱が一般的であるが、これらに限定はされず、例えば、紫外線照射などの手段を採用することもできる。
上記混合系を高温状態にする際は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力下で行ってもよく、限定はされないが、加圧下で出発原料を加熱等により高温状態にすることがより好ましい。また、出発原料や併用する反応溶媒等の沸点が、金属酸化物粒子が生成される反応温度よりも低い場合は、耐圧反応装置を用いて行うことも好ましい。通常、反応温度、反応時の気相圧は、溶媒となる成分の臨界点以下で行うが、超臨界条件で行うこともできる。
加圧下で出発原料を高温状態にする場合、加熱時の圧力(気相部の圧力)は、限定はされないが、常圧(大気圧)を1kg/cmとする絶対圧Pで示したときに、P>1kg/cmを満たすことが好ましく、より好ましくは1.5kg/cm≦P≦100kg/cmである。さらに、加圧効果が高く、かつ経済的な設備で行うことができる点で、3kg/cm≦P≦20kg/cmを満たすことが特に好ましい。加圧の方法としては、限定はされないが、例えば、アルコールの沸点より高い温度に加熱する方法や、気相部を窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスで加圧にする方法などが採用できる。
製造方法(A)においては、上記混合系の高温状態は、前述したように、出発原料等を混合すると同時かまたは混合した後に得られていればよく、すなわち、上記混合系を得るための出発原料等の混合と、該混合系を高温状態にするための昇温とは、別々に行ってもよいし、同時(一部同時も含む)に行ってもよく、限定はされない。詳しくは、上記混合系の昇温のための具体的手段(例えば加熱等)は、上記出発原料等の混合に関わらず任意の方法・タイミングで行うことができ、例えば、混合前の出発原料等の少なくとも一つを加熱等しておくことで混合と同時に該混合系を昇温させるようにしてもよいし、混合して得られる混合系に対して、該混合をしながらか又は該混合を終了した後で、加熱等を施し該混合系を昇温させるようにしてもよく、限定はされない。したがって、この混合と、昇温のための加熱等とのタイミングに関する実施態様としては、例えば、(i) 金属元素(M)化合物と異種金属元素(M’)化合物とアルコールとを混合しておいて、これを加熱等により昇温し高温状態にする、(ii)アルコールを所定温度に加熱等しておき、これに金属元素(M)化合物と異種金属元素(M’)化合物とを混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、(iii)反応溶媒と、金属元素(M)化合物と異種金属元素(M’)化合物とを混合して所定温度に加熱等しておき、これにアルコールを混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、(iv)各成分(金属元素(M)化合物、異種金属元素(M’)化合物、およびアルコール、ならびに、必要に応じて用いる反応溶媒)を別々に加熱等しておいた後、これらを混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、等が好ましく挙げられる。
上記実施態様(特に(ii)〜(iv)の実施態様)においては、出発原料等の混合方法は、限定はされないが、添加する方の出発原料等を、一括添加(例えば1分以内に)してもよいし、逐次添加(例えば1分間を超える時間をかけて)してもよい。逐次添加としては、連続添加(連続フィード)であってもよいし、断続添加(パルス添加)であってもよいし、これらの組み合わせであってもよく、限定はされない。断続添加(パルス添加)においては、各パルスは、連続添加でもよいし、一括添加でもよく、限定はされない。なお、上記混合方法については、添加によって生じる混合系の温度変化がより小さい方が、1次粒子径の揃った金属酸化物粒子が得られやすい点で好ましく、具体的には、混合系の温度変化が10℃以内に納まるように添加速度等を制御することが好ましい。
上記実施態様(特に(ii)の実施態様)においては、金属元素(M)化合物をアルコールに添加して混合する場合の添加速度(添加されるアルコールのモル数に対する、1分あたりの金属元素(M)化合物の添加モル数の比)が、0.0001〜2であることが好ましく、より好ましくは0.0005〜1.0である。上記添加速度が0.0001未満であると、平均1次粒子径が0.1μm以下のものを得ることが困難になるおそれがあり、2を超えると、前述した高温状態の温度制御が困難(特に反応スケールが大きい場合)となり、粒子径の揃った粒子を得ることが困難になるおそれがある。
製造方法(A)においては、少なくとも前記出発原料の混合系を高温状態にしている間は、該混合系を、撹拌所要動力0.0001kw/m以上で撹拌しておくことが好ましく、より好ましくは0.001kw/m以上であり、さらに好ましくは0.01〜10kw/mである。
製造方法(A)においては、生成させた金属酸化物粒子の分散性を高める目的で、出発原料からなる混合系を高温状態にし金属酸化物粒子を生成させるまでの過程あるいは生成させた後の任意の段階で、前記混合系または反応系に、脂肪族カルボン酸や脂肪族アミン、あるいは、前述した金属化合物(1)〜(3)を添加することが好ましい。該添加により、金属酸化物粒子が2次凝集することを効果的に抑制でき、分散性に優れた粒子が得られる。なかでも、上記金属化合物を添加することが、金属酸化物粒子の結晶子径(Ds(100)やDs(002)、特にDs(100))を、前述した所望の範囲に制御できる等の点で、特に好ましい。上記脂肪族カルボン酸や脂肪族アミンの添加量(合計添加量)は、金属元素(M)化合物中の金属元素(M)に対し0.1〜10モル%であることが好ましい。上記金属化合物(1)〜(3)の添加量(合計添加量)は、該金属化合物中の金属元素の、金属元素(M)化合物中の金属元素(M)に対する原子比で、0.1〜10原子%であることが好ましい。
本発明の金属酸化物粒子は、前述したように、より優れた紫外線吸収性を発揮することは勿論のこと、例えば、紫外線吸収端がより長波長側にシフトされており長波長領域の紫外線の吸収効率にも優れていたり、優れた透明性を発揮し、可視光は透過させ紫外線のみを選択的に遮断し得ることで、例えば基材に内添もしくはコーティングした場合にも基材の透明性や色相を損なうことがなかったりするという利点も兼ね備えた金属酸化物粒子である。
本発明の金属酸化物粒子は、例えば、化粧品、紫外線遮断を目的とする電子材料、包装材料用等の各種フィルムやビル、家等の建築物用窓、自動車窓、サンルーフ、鉄道や飛行機の窓等に用いられるガラスやポリカーボネート等の透明プラスチックシートに含有させる粒子としてあるいは成膜し得る紫外線吸収塗料用原料粒子として有用である。
詳しくは、本発明の金属酸化物粒子における金属元素(M)が、Zn、Ti、Ceの場合には、これらの酸化物粒子もしくはこれらの酸化物に本発明で規定する以外の異種金属元素を含有させた粒子では得られなかった、優れた紫外線吸収性能や無色性や可視光透過性能を同時に満足させることができるため、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイ)、白色LED、水銀ランプ、蛍光灯などの表示デバイスや照明において励起源や光源に由来する紫外線を遮断する紫外線吸収材料として、また、建築物、車両(自動車、電車など)、空輸機(飛行機、ヘリコプターなど)などの各種窓材やディスプレイ等に用いられる各種ガラス(単板ガラス、複層ガラス、合わせガラス等の無機系ガラス、およびポリカーボネート樹脂等の有機系ガラス)の紫外線吸収材料として、また、農業用フィルムや各種包装用フィルムなどの紫外線遮蔽性を要する各種フィルムの紫外線吸収材料として、有用である。
本発明の金属酸化物粒子における金属元素(M)が、Zn、Si、Alの場合には、従来から化粧品用紫外線吸収剤として主に汎用されていた酸化チタンに比べて白色度が低く透明感が高くなるため、より優れた透明感を与えうる化粧品用紫外線吸収剤として、有用である。特に、本発明の金属酸化物粒子における金属元素(M)が、Si、Alの場合には、とりわけ低い屈折率を有する粒子となるため、従来にはない低屈折率の紫外線遮断材料として、前記表示デバイス材料や電子材料などとしても有用である。
本発明の金属酸化物粒子における金属元素(M)が、Ti、Zn、Ce、In、Snの場合には、高屈折率である粒子となるため、バインダー成分となる樹脂やシリケートなどとの配合比を制御することにより、任意の屈折率を有する膜を得ることが可能となるため、反射防止性を兼ね備えた紫外線吸収膜の原料として、有用である。
さらに、本発明の金属酸化物粒子は、紫外線遮断を目的とした用途以外にも適用可能であり、例えば、本発明の金属酸化物粒子における金属元素(M)が、Ti、Zn、Ce、In、Snの場合には、高屈折率である粒子となるため、樹脂、フィルム、膜などの屈折率を高めるための高屈折率フィラーとしても好適に用いることができ、特に、本発明の金属酸化物粒子が超微粒子である場合、反射防止膜として好適な透明で高屈折率を有する膜やフィルムを得ることができる。
また、本発明の金属酸化物粒子における金属元素(M)が、Zn、In、Sn、Tiの場合には、赤外線(近赤外線〜遠赤外線)の吸収材料としても有用である。特に、金属元素(M)がZnであって、異種金属元素(M’)としてFe、Co、Niの3価の金属元素を含有する粒子は、赤外線吸収材料として有用である。
また、本発明の金属酸化物粒子における金属元素(M)が、Zn、Alの場合には、熱伝導性に優れる粒子となるため、熱伝導性フィラーとして有用であり、例えば、放熱性が求められる白色LED用途や電子回路基板用途などにおいて、熱伝導性の高いシート、フィルム、膜を得る際に好適に用いることができる。
また、本発明の金属酸化物粒子における金属元素(M)が、Zn、Ti、In、Snの場合には、電子伝導性に優れる粒子となるため、半導体もしくは導電体として有用である。特に、本発明の金属酸化物粒子が超微粒子である場合、塗料化することにより、フィルム等の透明帯電防止膜や透明導電膜として好ましく用いることができる。
また、本発明の金属酸化物粒子は、1種以上の異種金属元素(M’)を含有するものであり、金属元素(M)の酸化物のバンドギャップ中に新たな電子準位が形成されたものとなるため、光触媒材料や蛍光体材料としても有用である。例えば、近年、太陽光利用効率の高い光触媒、いわゆる可視光作動型光触媒が求められているが、本発明の金属酸化物粒子における金属元素(M)が、Zn、Tiの場合には、該光触媒の原料としても有用である。
また、本発明の金属酸化物粒子において、前記金属元素(M)が、Zn、Ti、In、Snのいずれかであって、前記金属元素(M’)としてFe、Co、Niからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する場合、または、前記金属元素(M’)としてFe、Co、Niからなる群から選ばれる少なくとも1種と金属元素(M)の価数よりも高い金属元素(例えば、MがZnの場合は、In、Al、B、Ga、Snなどの3価または4価の金属元素)とを含有する場合には、(フェロ)磁性(透明)半導体特性を示す粒子としても有用である。
本発明の金属酸化物粒子は、含有させる異種金属元素(M’)の種類や組み合わせにより、各種の調色が可能であり、例えば着色顔料としても有用である。例えば、金属元素(M’)がFe(III)である場合には黄色、金属元素(M’)がFe(II)、Ni(II)である場合には緑、金属元素(M’)がCoである場合には青〜緑、等となる傾向がある。これらに他の金属元素(M’)を共存させることで、色が微妙にあるいはドラスチックに調色された粒子とすることができる。
〔組成物〕
本発明の組成物は、金属酸化物粒子が媒体中に分散してなり、前記金属酸化物粒子が前述した本発明の金属酸化物粒子を必須とするものである。
本発明の金属酸化物粒子は、液状または固体状の各種組成物として、前述した種々の用途に適用することができる。例えば、液状組成物としては、分散溶媒に粒子が分散した溶媒分散体、塗膜形成性バインダーに粒子が分散した塗料組成物、合わせガラスの中間膜や樹脂成形品の原料となる可塑剤に粒子が分散した分散体、液状樹脂に粒子が分散した分散体、アクリルモノマーなどの重合性化合物に粒子が分散した重合性組成物等が挙げられ、固体状組成物としては、前記液状組成物を原料として得られる、膜、膜つき基材、繊維状、フィルム状もしくはシート状の樹脂成形品等が挙げられる。例えば、前記液状組成物は、粉末状で得た本発明の金属酸化物粒子もしくは該金属酸化物粒子を製造した際の反応液を、各種分散媒体に従来公知の方法にて分散させることにより容易に得ることができる。以下、実用上、特に有用な膜形成用組成物(前記分類では、溶媒分散体または塗料組成物に該当する)について説明する。
本発明の組成物(後述する膜形成用組成物も含む)においては、前記金属酸化物粒子は、1μm以下の分散粒径で分散していることが、組成物および該組成物により得られる膜における透明性に優れる点で、好ましい。より好ましくは0.2μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下、特に好ましくは0.07μm以下である。
本発明にかかる組成物が膜形成用組成物である場合は、前記本発明にかかる金属酸化物粒子と、分散溶媒および/またはバインダーとを必須構成成分とする組成物であることが好ましい。なお、本発明の組成物の必須構成成分である本発明の金属酸化物粒子については、前述した説明が同様に適用できる。
本発明の組成物の必須構成成分である、分散溶媒および/またはバインダーについては、これら(分散溶媒とバインダー)の使用量の相互割合(配合割合)については、限定はされず、必須構成成分である金属酸化物粒子の種類(組成)や使用量や、形成させる膜の形態に応じて、適宜設定することができる。
上記分散溶媒としては、例えば、水、(各種ハロゲン化)炭化水素、アルコール、エーテル、アセタール、ケトン、アルデヒド、カルボン酸エステル、アミド類およびカルボン酸(無水物)等の有機溶剤や、シリコーン油、鉱物油などが挙げられる。これらは、1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
上記バインダーとしては、例えば、熱可塑性または熱硬化性(熱硬化性、紫外線硬化性、電子線硬化性、湿気硬化性、これらの併用等も含む)の各種合成樹脂や天然樹脂等の有機系バインダーや、無機系バインダー等を挙げることができる。合成樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、ケトン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、液状ポリブタジエン、クマロン樹脂等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。天然樹脂としては、例えば、セラック、ロジン(松脂)、エステルガム、硬化ロジン、脱色セラック、白セラック等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。合成樹脂としては、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム等の天然または合成のゴム等を用いてもよい。合成樹脂と併用する成分として、硝酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等を挙げることができる。
バインダー成分の形態については、限定はなく、溶剤可溶型、水溶性型、エマルション型、分散型(水/有機溶剤等の任意の溶剤)等を挙げることができる。
水溶性型のバインダー成分としては、例えば、水溶性アルキド樹脂、水溶性アクリル変性アルキド樹脂、水溶性オイルフリーアルキド樹脂(水溶性ポリエステル樹脂)、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシエステル樹脂、水溶性メラミン樹脂等を挙げることができる。
エマルション型のバインダー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル共重合ディスパージョン;酢酸ビニル樹脂エマルション、酢酸ビニル共重合樹脂エマルション、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルション、アクリル酸エステル(共)重合樹脂エマルション、スチレン−アクリル酸エステル(共)重合樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリル−シリコーンエマルション、フッ素樹脂エマルション等を挙げることができる。
無機系バインダーとしては、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾルおよびセリアゾル等の金属酸化物ゾル;アルカリケイ酸;シリコンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドおよびチタンアルコキシド等の金属アルコキシドならびにこれらの(加水分解)縮合物;(ポリ)シラザン;リン酸塩等を挙げることができる。また、金属ギ酸塩、金属酢酸塩および金属シュウ酸塩等の金属カルボン酸塩ならびにこれらの塩基性塩や、金属アセチルアセトナート等のβ−ジケトン錯体といった有機金属錯体等のように、熱分解によって金属酸化物となり得る金属化合物も挙げることができる。
これら無機系バインダーは、塗布した後で熱および/または湿気によって金属酸化物や金属水酸化物となるが、これら無機系バインダーのなかでも、上記金属酸化物や金属水酸化物が紫外線吸収性に優れる点では、Ti、Ce、Znを金属元素として含む無機系バインダーが好ましく、得られる膜の化学的耐久性に優れる点では、Si、Zr、Ti、Alを金属元素として含む無機系バインダーが好ましく、金属酸化物粒子の分散性に優れる点では、金属アルコキシド類の無機系バインダーが好ましく、特に、Si、Ti、Alを金属元素として含む金属アルコキシドおよびこれらの(加水分解)縮合物が好ましい。
本発明の組成物は、Cu、Ag、FeおよびBiからなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする金属酸化物粒子(該金属酸化物粒子は第二成分として添加されるものであり、以下、「添加金属酸化物粒子」と称することもある)、および/または、Ag、Cu、Auおよび白金族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする金属超微粒子(該金属超微粒子は第二成分として添加されるものであり、以下「添加金属超微粒子」と称することもある。)、をも含むことが好ましい。これにより、短波長領域の可視光の遮断効果をより高めることができるのである。
添加金属酸化物粒子のうち、Cuを金属元素とする金属酸化物粒子としては、例えば、酸化第一銅(CuO)、酸化第二銅(CuO)、銅フェライト(CuFe)、モリブデン酸銅(CuMoO)、タングステン酸銅(CuWO)、チタン酸銅(CuTiO)、セレン酸銅(CuSeO)、亜クロム酸銅(CuCr)等の単一酸化物、複合酸化物、単一酸化物や複合酸化物の金属元素の一部が異種金属元素で一部置換された固溶体酸化物、単一酸化物や複合酸化物の酸素の一部が他の元素(例えば、窒素、硫黄、ハロゲン元素など)で一部置換された固溶体酸化物からなる粒子が挙げられる。なお、前記酸化物においては、例えば、Cu1−δOのように、化学両論組成からずれた化合物も含まれるものである。なかでも、酸化銅粒子もしくは該粒子の粒子表面にエタノイル基等のアシル基やエトキシ基等のアルコキシ基などの有機基が結合した粒子は好ましく、酸化第一銅粒子もしくは該粒子表面にエタノイル基等のアシル基やエトキシ基等のアルコキシ基などの有機基が結合した粒子は特に好ましい。
添加金属酸化物粒子のうち、Feを金属元素とする金属酸化物粒子としては、例えば、酸化鉄(酸化第一鉄(FeO)、酸化第二鉄(α−Fe、γ−Fe)、四三酸化鉄(Fe)など)、水酸化鉄(III)(α−FeO(OH)、γ−FeO(OH)など)、一般式M(II)Fe(但し、該式中のMは1種または2種以上の任意の金属元素である)で表される各種フェライト化合物(例えば、マンガンフェライト、亜鉛フェライト、コバルトフェライト、ニッケルフェライト、バリウムフェライト、亜鉛ニッケルフェライトなど)、チタン酸鉄(FeTiO)、モリブデン酸鉄(FeMoO)、タングステン酸鉄(FeWO4)等の単一(水)酸化物、複合酸化物、単一(水)酸化物や複合酸化物の金属元素の一部が異種金属元素で一部置換された固溶体酸化物、単一(水)酸化物や複合酸化物の酸素の一部が他の元素(例えば、窒素、硫黄、ハロゲン元素など)で一部置換された固溶体酸化物からなる粒子が挙げられる。なお、前記(水)酸化物においては、例えば、Fe1−δOのように、化学両論組成からずれた化合物も含まれるものである。なかでも、(水)酸化鉄粒子もしくは該粒子の粒子表面にエタノイル基等のアシル基やエトキシ基等のアルコキシ基などの有機基が結合した粒子は好ましく、α−Fe粒子もしくは該粒子表面にエタノイル基等のアシル基やエトキシ基等のアルコキシ基などの有機基が結合した粒子は特に好ましい。
添加金属酸化物粒子のうち、Biを金属元素とする金属酸化物粒子としては、例えば、三酸化ビスマス(III)((Bi)、チタン酸ビスマス(BiTi12)、モリブデン酸ビスマス(BiMoO)、タングステン酸ビスマス(BiWO)、スズ酸ビスマス(BiSn)、ジルコン酸ビスマス(2Bi・3ZrO)等の単一酸化物、複合酸化物、単一酸化物や複合酸化物の金属元素の一部が異種金属元素で一部置換された固溶体酸化物、単一酸化物や複合酸化物の酸素の一部が他の元素(例えば、窒素、硫黄、ハロゲン元素など)で一部置換された固溶体酸化物からなる粒子が挙げられる。なお、前記酸化物においては、例えば、Bi2−δのように、化学両論組成からずれた化合物も含まれるものである。なかでも、酸化物粒子もしくは該粒子の粒子表面にエタノイル基等のアシル基やエトキシ基等のアルコキシ基などの有機基が結合した粒子は好ましく、三酸化ビスマスやチタン酸ビスマスからなる粒子もしくは該粒子表面にエタノイル基等のアシル基やエトキシ基等のアルコキシ基などの有機基が結合した粒子は特に好ましい。
添加金属酸化物粒子のうち、Agを金属元素とする金属酸化物粒子としては、例えば、酸化銀(AgO)等の単一酸化物、複合酸化物、単一酸化物や複合酸化物の金属元素の一部が異種金属元素で一部置換された固溶体酸化物、単一酸化物や複合酸化物の酸素の一部が他の元素(例えば、窒素、硫黄、ハロゲン元素など)で一部置換された固溶体酸化物からなる粒子が挙げられる。なお、前記酸化物においては、例えば、Ag2−δOのように、化学両論組成からずれた化合物も含まれるものである。なかでも、酸化物粒子もしくは該粒子の粒子表面にエタノイル基等のアシル基やエトキシ基等のアルコキシ基などの有機基が結合した粒子は好ましく、酸化銀(AgO)からなる粒子もしくは該粒子表面にエタノイル基等のアシル基やエトキシ基等のアルコキシ基などの有機基が結合した粒子は特に好ましい。
なお、添加金属酸化物粒子は、Cu、Fe、AgおよびBiからなる群より選ばれる2種以上を金属元素とするものであってもよいし、Cu、Fe、AgおよびBi以外の金属元素をさらに含むものであってもよい。
添加金属酸化物粒子の大きさは、特に制限されないが、優れた透明性を発現させるうえでは、1次粒子の平均粒子径が1〜100nmであることが好ましく、5〜30nmであることがより好ましく、5〜20nmであることがさらに好ましい。
添加金属超微粒子は、Cu、Ag、Au、および白金族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする金属超微粒子である。また、前記したように該粒子の一部または全部が酸化されて酸化物として存在する場合も含める。該添加金属超微粒子としては、単一金属または合金用粒子からなるものが好ましく、1次粒子径が1〜100nm、好ましくは1〜20nmのものがよい。450nm以下にプラズモン吸収による吸収が強いものが好ましく、例えば、Cu,Agを金属元素として含むものがあげられる。
前記本発明の金属酸化物粒子と、前記添加金属酸化物粒子および/または前記添加金属超微粒子との割合は、限定はされないが、本発明の金属酸化物粒子100重量部に対し、0.1〜50重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましい。前記添加金属酸化物粒子および/または前記添加金属超微粒子が前記範囲よりも少ないと、組み合わせによる効果が不充分となり、一方、前記範囲よりも多いと、可視光透過性の低減や着色の程度が高くなる等の問題が生じることがある。
本発明の組成物の必須構成成分である金属酸化物粒子と、分散溶媒および/またはバインダーとの使用量については、限定はされないが、具体的には、全ての金属酸化物粒子の使用量割合が、該組成物中の全固形分量に対して、10〜90重量%であることが好ましく、より好ましくは20〜80重量%である。上記使用量割合が、10重量%未満であると、例えば該組成物を紫外線遮断膜の形成に用いる場合に、十分なUV遮断性を得るために厚い膜にする必要があり、特に該粒子以外に無機バインダーや硬化性樹脂を膜成分として用いた場合等では、得られた膜にクラックが入りやすくなるおそれがあり、90重量%を超えると、例えば該組成物を膜の形成に用いた場合に、膜の機械的強度が不十分となるおそれがある。ただし、本発明の組成物が、分散溶媒を必須構成成分とする組成物であって、これを基材に塗布し、高温に加熱して焼成(焼結)することにより膜形成を行う場合は、該組成物における金属酸化物粒子の割合は、該組成物中の全固形分量に対して90重量%を超えていてもよいし、特に100重量%であってもよい。
本発明の組成物は、さらに他の構成成分を含むものであってもよく、例えば、分散剤や、無機バインダーおよび硬化性樹脂等を含んでいてもよい。
分散剤としては、例えば、前述した金属化合物(1)〜(3)が好ましく、なかでも、金属化合物(3)が特に好ましい。これら金属化合物(1)〜(3)の添加量(合計添加量)は、該金属化合物中の金属元素の、金属元素(M)化合物中の金属元素(M)に対する原子比で、0.1〜10原子%であることが好ましい。
本発明の組成物の用途は、限定はされず、例えば、紫外線遮断膜形成用の塗布液や紫外線カット塗料として取り扱うことができる。具体的には、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイ)、白色LED、水銀ランプ、蛍光灯などの表示デバイスや照明において励起源や光源に由来する紫外線を遮断するためのフィルムやガラスに紫外線遮断膜を形成する際に用いる塗布液として、また、建築物、車両(自動車、電車など)、空輸機(飛行機、ヘリコプターなど)などの各種窓材やディスプレイ等に用いられる各種ガラス(単板ガラス、複層ガラス、合わせガラス等の無機系ガラス、およびポリカーボネート樹脂等の有機系ガラス)に紫外線遮断膜を形成する際に用いる塗布液として、また、農業用フィルムや各種包装用フィルムなどの紫外線遮蔽性を要する各種フィルムに紫外線遮断膜を形成する際に用いる塗布液として、さらに、前記窓材などに用いられる合わせガラスの中間膜として紫外線遮断膜を形成する際に用いる塗布液として、有用である。また、本発明の組成物は、〔金属酸化物粒子〕の項で前述したように、該組成物に含まれる金属酸化物粒子の金属元素の種類によって、赤外線吸収膜、高屈折率膜、低屈折率膜、反射防止膜、熱伝導性膜、帯電防止膜、透明導電膜、光触媒膜、蛍光体膜、磁性体膜などの各種機能膜の形成に用いる塗布液として、あるいはインクジェットインクとしても、有用である。特に、Znを主たる金属元素(前記金属元素(M))とする金属酸化物粒子を含む本発明の組成物は、前述した各種用途においてとりわけ良好な特性を示しうるものであり、好適である。
〔膜〕
本発明にかかる膜は、前述したように、前記本発明にかかる金属酸化物粒子および/または該金属酸化物粒子に由来する金属酸化物結晶を必須構成成分として得られてなる膜である。すなわち本発明の膜は、(1)本発明にかかる金属酸化物粒子がバインダー中に分散した膜、(2)該粒子のみからなる膜、(3)該粒子を焼結して得られた膜、および、(4)これらの膜形態を組み合わせてなる膜(特に、上記(2)の膜と上記(3)の膜とを組み合わせてなる膜)など、本発明の金属酸化物粒子を含む組成物(中間組成物など)または本発明の組成物(膜形成用組成物)を原料成分として用いて得られた膜を全て包含する。
上記(1)の膜は、バインダーを含む前記組成物を塗布または成形して得られる。上記(2)の膜は、溶媒分散型の前記組成物を塗布して得られる。上記(3)の膜は、上記(1)または上記(2)の膜を高温で焼成等することにより金属酸化物粒子を焼結させてなる金属酸化物結晶の膜として得られる。上記(4)の膜は、例えば、上記(2)の膜を高温で焼成等することにより一部の金属酸化物粒子を焼結させてなる、金属酸化物粒子と該粒子に由来する金属酸化物結晶との複合膜として得られる。通常、上記(1)および(2)の膜では、本発明の金属酸化物粒子が実質的にその形態を維持して存在することになるが、上記(3)の膜や、上記(4)の膜のうち上記(3)の膜の形態を取り得る部分では、粒子の結晶子径の変化等といった構造変化を伴うため、得られる膜は、もとの粒子の結晶形態とは異なる多結晶膜あるいは単結晶膜となる場合もある。なお、本発明の膜の必須構成成分(または必須原料成分)である、本発明の金属酸化物粒子については、前述した説明が同様に適用できる。
本発明の膜の好ましい態様は、該膜が、Cu、Fe、AgおよびBiからなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする金属酸化物粒子および/または該粒子に由来する金属酸化物結晶、および/または、Ag、Cu、Auおよび白金族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする金属超微粒子(Ag、Cu、Auおよび白金族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする金属が膜形成過程において又はその後工程において酸化されてなる金属酸化物超微粒子を含む)および/または該粒子に由来する金属からなる結晶および/または該粒子に由来する金属酸化物からなる結晶、をも含むことである。これにより、短波長領域の可視光の遮断効果をより高めることができるのである。なお、Cu、Fe、AgおよびBiからなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする金属酸化物粒子、および、Ag、Cu、Auおよび白金族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする金属超微粒子については、それぞれ、前述した〔組成物〕の項で説明した添加金属酸化物粒子および添加金属超微粒子と同様である。
本発明の膜は、限定はされないが、一般には、所望の基材表面に形成され得る膜であり、その形態は、基材表面上の所望の面積部分に切れ目なく連続的に広がって存在している形態(以下、連続膜と言うことがある。)であってもよいし、基材表面上の所望の面積部分に不連続的に存在している形態(以下、不連続膜と言うことがある。)であってもよく、限定はされない。不連続膜では、膜の構成成分が基材表面に部分的に存在(点在)しているが、それらの大きさ、面積、厚みおよび形状等は、限定はされない。不連続膜の具体的な形態としては、例えば、膜の構成成分が、基材表面に微細なドット状で存在している形態や、いわゆる海島構造のように存在している形態や、縞模様状に存在している形態や、これら形態を合わせた形態等が挙げられる。
上記連続膜および不連続膜が金属酸化物粒子のみを構成成分としてなる(金属酸化物粒子が集合してなる)場合、これら膜の構造としては、限定はされないが、具体的には、所望の大きさの空間を有する多孔質構造であってもよいし、マクロ的に見てこのような多孔質構造ではない一体的な密実構造(すなわち実質的に緻密な構造)であってもよいが、より緻密な構造である方が、UV遮断性に優れ且つ散乱による可視光に対する透明性の低下がない膜が得られる点で好ましい。なお、不連続膜においては、上述したような膜の構造は、部分的に存在している個々の膜部分のうちの、全てが備えていてもよいし、一部のみが備えていてもよい。
本発明の膜の実施態様としては、基材表面上に形成された膜そのものを意味する態様と、基材上に形成された膜と該基材とから構成されるものを意味する態様、とのいずれをも含むとする。
本発明の膜に用い得る上記基材としては、その材質等は限定されず、例えば、酸化物、窒化物、炭化物等のセラミクス、ガラスなどの無機物;PET、PBT、PENなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、アラミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマーなどの耐熱性樹脂フィルムとして知れられる樹脂フィルム、シートのほか、従来公知の(メタ)アクリル樹脂、PVC樹脂、PVDC樹脂、PVA樹脂、EVOH樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PTFE、PVF、PGF、ETFE等のフッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂等の各種樹脂からなるフィルムやシート各種樹脂高分子、および、これら各種樹脂高分子にアルミ、アルミナ、シリカなどを蒸着したフィルム等の加工品、などの有機物;各種金属類などが好ましく挙げられる。
上記基材の形状・形態としては、例えば、フィルム状、シート状、板状、繊維状、積層体状などが挙げられるが、用途・使用目的等に応じて選択すればよく、限定はされない。また、上記基材は、機能面においても、限定はされず、例えば、光学的に透明であってもよいし、不透明であってもよく、用途・使用目的等に応じて選択すればよい。
本発明の膜は、紫外線遮断を目的とする用途に限らず使用されるものであり、透明性が高いことが好ましい。具体的には、ヘイズが10%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
本発明の膜の光学的性能は、紫外線領域(380nm以下における紫外線および450nm以下における可視光)における光の遮断性(紫外線遮断性)と、可視光(450nm〜780nm)における透過性(可視光透過性)を指標とすることができる。紫外線吸収機能材料としては、紫外線遮断性が高く、可視光透過性が高いことが好ましい。前述したように、通常、膜の紫外線遮断性や可視光透過性は、膜とした状態において分光透過率特性を評価することによって判定できる。紫外線遮断性および可視光透過性の判定の仕方の詳細については、前述した通りである。
本発明の膜については、その光学特性が以下の条件を満たすことが、可視光は透過させ紫外線のみを選択的に吸収する性能に優れる点で、好ましい。なお、本発明の膜の光学的性能のうち、以下に示す膜の光学特性は、後述する実施例に記載の方法により測定・評価される値であるとし、また、膜部分のみ(基材除く)についての物性であって、膜付き基材の光学特性と基材のみの光学特性とを勘案して評価されるものとする。また、本発明の膜の光学特性のうち、紫外線吸収性能の指標となる波長380nmの光の透過率(%)をT380と定義するとともに、可視光透過性能の指標となる、波長500nmの光の透過率(%)をT500と、波長550nm〜700nmの光の透過率(%)の最小値をTと、TとT500との差の絶対値(|T−T500|)をΔTと、定義する。
特に、本発明の金属酸化物粒子を紫外線吸収体として用いる場合の本発明の膜の光学特性に関しては、T380が、40%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下である。同様に、ΔTが、10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下である。同様に、T500が、80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。同様に、可視光に対する透明性の指標であるヘイズ値(基材のヘイズ値を差し引いた値)が、3%未満であることが好ましく、より好ましくは1%未満、さらに好ましくは0.5%未満である。
さらに、本発明の膜は、上記各種光学特性の2種以上について、上記範囲を同時に満たすものであってもよく、使用用途等による要望に応じて選択できる。例えば、以下のような膜が例示される(なお、いずれの膜においてもヘイズ値は1%以下である。)
(i) T380が40%以下、ΔTが5%以下、T500が95%以上の膜。
(ii) T380が20%以下、ΔTが10%以下、T500が90%以上の膜。
(iii) T380が10%以下、ΔTが10%以下、T500が80%以上の膜。
本発明の膜を形成する方法としては、限定はされないが、例えば、前記本発明の組成物(膜形成用組成物)を用いて形成する方法が好ましい。なお、この形成方法に用い得る、本発明の組成物については、前述した説明が同様に適用できる。
以下では、本発明の組成物を用いた膜の形成方法について説明する。
本発明の組成物を用いて膜を形成する方法としては、限定はされないが、該組成物を、基材表面に、バーコーター法、ロールコーター法、ナイフコーター法、ダイコーター法およびスピンコート法等の塗布法ならびにスプレー法などの従来公知の成膜方法を用いて塗布し膜形成する方法や、本発明の組成物に、基材の一部または全部を漬けた後取り出すことで塗布し膜形成する、いわゆるディッピング法が採用できる。また、本発明の組成物の必須構成成分として分散溶媒を用いた場合等では、塗布した後に高温で焼成することにより成膜することもでき、例えば、金属酸化物粒子の少なくとも一部が融合した結晶性の膜を得ることができる。
本発明の膜は、例えば、〔金属酸化物粒子〕や〔組成物〕の項で前述したような各種用途において用いられる紫外線遮断膜として、また、赤外線吸収膜、高屈折率膜、低屈折率膜、反射防止膜、熱伝導性膜、帯電防止膜、透明導電膜、光触媒膜、蛍光体膜などの各種機能膜として、有用である。さらに、紫外線遮蔽膜と前記各種機能膜のいずれかとを兼ねる2種以上の機能を備えた膜(例えば、高屈折率を有する紫外線遮蔽膜、透明導電性を有する紫外線遮蔽膜など)としても有用である。
〔その他〕
本発明の金属酸化物粒子の好ましい利用態様として、以下のような金属酸化物物品が挙げられる。
すなわち、前記金属酸化物含有物品は、金属酸化物粒子および/または該粒子に由来する金属酸化物結晶を含む物品であって、前記物品が、前記本発明の金属酸化物粒子と、Cu、Ag、FeおよびBiからなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする金属酸化物粒子、および/または、Cu、Ag、Au、および白金族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする金属超微粒子との組み合わせを必須とするものである。このような組み合わせによる金属酸化物含有物品は、紫外線のみならず、短波長領域の可視光の遮断効果にも優れたものとなるのである。なお、Cu、Ag、FeおよびBiからなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする金属酸化物粒子、および、Ag、Cu、Auおよび白金族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする金属超微粒子については、それぞれ、前述した〔組成物〕の項で説明した添加金属酸化物粒子および添加金属超微粒子と同様である。
前記金属酸化物含有物品において、前記本発明の金属酸化物粒子と、前記添加金属酸化物粒子および/または前記添加金属超微粒子との割合は、限定はされないが、本発明の金属酸化物粒子100重量部に対し、0.1〜50重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましい。前記添加金属酸化物粒子および/または前記添加金属超微粒子が前記範囲よりも少ないと、組み合わせによる効果が不充分となり、一方、前記範囲よりも多いと、可視光透過性の低減や着色の程度が高くなる等の問題が生じることがある。
本発明の金属酸化物粒子の好ましい利用態様として、以下のような紫外線吸収体が挙げられる。
すなわち、前記紫外線吸収体は、本発明の金属酸化物粒子を含有してなるものである。なお、前記紫外線吸収体の必須構成成分である本発明の金属酸化物粒子については、前述した説明が同様に適用できる。
また、前記紫外線吸収体は、Cu、Ag、FeおよびBiからなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする金属酸化物粒子、および/または、Ag、Cu、Auおよび白金族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする金属超微粒子、をも含むことが好ましい。これにより、短波長領域の可視光の遮断効果をより高めることができるのである。なお、Cu、Ag、FeおよびBiからなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする金属酸化物粒子、および、Ag、Cu、Auおよび白金族金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする金属超微粒子については、それぞれ、前述した〔組成物〕の項で説明した添加金属酸化物粒子および添加金属超微粒子と同様である。
前記紫外線吸収体において、前記添加金属酸化物粒子および/または前記添加金属超微粒子をも含む場合、前記本発明の金属酸化物粒子と前記添加金属酸化物粒子および/または前記添加金属超微粒子との割合は、限定はされないが、本発明の金属酸化物粒子100重量部に対し、0.1〜50重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましい。前記添加金属酸化物粒子および/または前記添加金属超微粒子が前記範囲よりも少ないと、組み合わせによる効果が不充分となり、一方、前記範囲よりも多いと、可視光透過性の低減や着色の程度が高くなる等の問題が生じることがある。
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と、「重量%」を「wt%」と記すことがある。
実施例および比較例における、測定方法および評価方法を以下に示す。
<金属酸化物粒子の評価>
(1)粉末試料の調製
金属酸化物粒子の生成反応により得られた反応液を遠心分離した後、沈降物の反応溶媒による洗浄(沈降物を反応溶媒に再分散させ、遠心分離すること)を3回繰り返し、その後、得られた沈降物を真空乾燥機により60℃で12時間真空乾燥することにより、金属酸化物粒子の粉末試料を得た。
(2)金属酸化物粒子の結晶同定
上記粉末試料に関し、粉末X線回折装置(理学電気株式会社製、製品名:RINT2400)を用いた粉末X線回折により、金属酸化物粒子の結晶系・結晶構造を評価した。以下に測定条件を示す。
X線:CuKα1線(波長:1.54056Å)/40kV/200mA
走査範囲:2θ=20〜80°
スキャンスピード:5°/min
金属酸化物粒子がZnOと同等の結晶系・結晶構造を有するか否かは、六方晶系ZnOに特有の3強線のピークが認められるか否かで判定した。具体的には、以下の3つの回折角(a)〜(c)の位置のすべてに回折ピークが存在する場合、ZnOと同等の結晶系・結晶構造を有すると判定した。
(a) 2θ=31.65〜31.95°
(b) 2θ=34.30〜34.60°
(c) 2θ=36.10〜36.40°
なお、(a)の位置に存在する回折ピークは、ZnO結晶の(100)面に対する回折線に基づくものと判定し、(b)の位置に存在する回折ピークは、ZnO結晶の(002)面に対する回折線に基づくものと判定し、(c)の位置に存在する回折ピークは、ZnO結晶の(101)面に対する回折線に基づくものと判定する。
他の金属酸化物についても、同様に、3強線のピークの位置が一致するか否かにより判定した。
(3)金属酸化物粒子の粒子径
(3−1)結晶子径(Ds)
上記粉末試料に関し、粉末X線回折装置(理学電気株式会社製、製品名:RINT2400)を用いた粉末X線回折により、金属酸化物粒子の結晶子径(Ds)を評価した。具体的には、得られたX線回折パターンにおける各回折線の回折線幅より、シェラーの式(解析)により結晶子径Ds(hkl)(ここで、hklはミラー指数を表す。Ds(hkl)はミラー指数(hkl)の格子面に垂直な方向の結晶子の大きさである。)を求めた。
(3−2)1次粒子径:結晶子径(Dw)
金属酸化物粒子の結晶子径(Dw)を測定し、1次粒子径として評価した。
結晶子径(Dw)は、上記粉末試料に関し、粉末X線回折装置(理学電気株式会社製、製品名:RINT2400)を用いた粉末X線回折により、金属酸化物粒子の結晶子径(Dw)を評価した。具体的には、得られたX線回折パターンにおける各回折線の回折線幅より、シェラーの式(解析)により結晶子径Ds(hkl)(ここで、hklはミラー指数を表す。Ds(hkl)はミラー指数(hkl)の格子面に垂直な方向の結晶子の大きさである。)を求め、3強腺の各Dsの平均値をDwとした。つまり、特に断らない限り、結晶子径(Dw)は、通常、金属酸化物粒子の粉末X線回折パターンを測定し、3強線(ピークが最も大きい回折線(1)、2番目に大きい回折線(2)、3番目に大きい回折線(3))について、それぞれの半値巾または積分巾より、シェラーの式に基づき、回折線(1)〜(3)に帰属される回折面に垂直方向の結晶子径Ds1、Ds2、Ds3を求め、これらの平均値((Ds1+Ds2+Ds3)/3)を結晶子径(Dw)として算出する。
(3−3)分散粒子径
得られた反応液もしくは該反応液から溶媒置換して得られた溶媒分散体を試料とし、動的光散乱式粒径分布測定装置(堀場製作所製「LB−500」)にて測定したメジアン径を分散粒子径とした。
(4)金属酸化物粒子の組成
(4−1)金属元素の平均組成
上記粉末試料に関し、蛍光X線分析またはICP分析により各金属元素の定量分析を行い、主たる金属元素(M)(例えばZn等)に対する異種金属元素(Co、Fe、Ni)の含有率、および、粒子生成の際に金属化合物を添加剤として用いた場合は、主たる金属元素(M)(例えばZn等)に対する該金属化合物の金属元素(Ms)の含有率、を求めた。
また、上記粉末試料中の個々の粒子に関し、分解能1nmφのXMA装置(X線マイクロアナライザー)を附帯してなるFE−TEM(電界放射型透過型電子顕微鏡)により観察しながら、粒子の表層部から中心部にかけての任意の各部分における局所元素分析を行い、各金属元素に帰属されるピーク強度の主たる金属元素(M)(例えばZn等)に帰属されるピーク強度に対する強度比の振れを評価し、粒子中に含有されている各金属元素が均一に分布しているか否か(分布の均一性)を判定した。また、各粒子の局所元素分析を行う際、異種金属元素(Co、Fe、Ni)や金属化合物の金属元素(Ms)の偏析物の有無も評価した。
○:主たる金属元素(M)以外の金属元素(Co、Fe、Ni、Ms)が均一に含有されている。
×:主たる金属元素(M)以外の金属元素(Co、Fe、Ni、Ms)が均一に含有されていないか、および/または、それらの金属または化合物の偏析物が確認された。
(4−2)アシル基結合量
上記粉末試料1gを0.1N水酸化ナトリウム水溶液に添加し、24時間攪拌したのち、イオンクロマトによりアシル基の同定と結合量の定量を行った。
(5)金属酸化物粒子に含有される異種金属元素(Co、Fe、Ni)の価数の評価
上記粉末試料に関し、光電子分光装置(日本電子株式会社製、製品名:JPS−90型)を用いたX線光電子分光法(XPS)により、異種金属元素(Co、Fe、Ni)の2p3/2スペクトルを測定し、そのピーク位置より結合エネルギー値を求め、異種金属元素(Co、Fe、Ni)の価数を判定した。
なお、結合エネルギー値は、帯電性によるエネルギーシフト等による測定値の誤差を低減するために、表面炭化水素のC1sピークの位置を基準にして補正して求めた。
また、比較するための既知のデータとして、日本電子株式会社発行の「Handbook of X-ray Photoelectron Spectroscopy」(1991年)における異種金属元素(Co、Fe、Ni)の化合物の2p3/2スペクトルのピーク位置を参考とした。
(6)金属酸化物粒子の光学特性
(6−1)分散膜での評価
金属酸化物粒子の生成反応により得られた反応液を、加熱溶媒置換することにより、金属酸化物粒子が粒子濃度20wt%で1−ブタノールに分散してなる分散体を得た。得られた分散体100部に、シリケートバインダー(SiO換算の固形分:51wt%)20部および触媒(n−ブチルアミン)0.5部を配合し、超音波ホモジナイザーで10分間分散処理した後、3時間撹拌して、塗料を調製した。なお、上記粒子濃度に関しては、得られた分散体を、真空乾燥機により120℃で1時間真空乾燥したときの固形分を、粒子重量として計算した。
得られた塗料を、無アルカリガラス(コーニングインターナショナル株式会社製、バリウムホウケイ酸ガラス、ガラスコード番号:7059、厚み:0.6mm)に、バーコ−ターでウエット膜厚が24μmとなるように塗布した。その後、25℃で常乾することにより、表面に金属酸化物粒子分散膜の形成されたガラスを得、この分散膜付きガラスに関して、(i)分光透過率曲線に基づく可視光透過特性、紫外線吸収特性および可視長波長吸収特性、(ii)可視光に対する透明性、ならびに、(iii)着色の度合い、について評価した。
−(i)の評価について−
(i-a)
この評価は、分散膜付きガラスの膜部分のみを対象にして行った。
分散膜付きガラスおよび上記無アルカリガラス(基材のみ)の各々の分光透過率曲線を、積分球付き自記分光光度計((株)島津製作所製、製品名:UV−3100)を用いて測定した。
得られた分光透過率曲線より、分散膜付きガラスおよび無アルカリガラスの各々について、可視光透過特性としては、可視光の透過率(波長500nmの光の透過率(500nmにおける透過率。以下、これに類似する表現部分についても同様の解釈とする。)(%))を評価し、紫外線吸収特性としては、380nmにおける透過率(%)を評価した。また、可視長波長吸収特性としては、550〜700nmにおける異種金属元素(Co、Fe、Ni)のイオン含有により発現しうる吸収帯の有無や程度に関して、下記式:
Δ(%)=〔|T500−T|/T500〕×100
(ただし、Tは550〜700nmにおける透過率(%)の最小値であり、T500は500nmにおける透過率(%)である。)
によりΔ(%)を求め、その値について以下の基準により評価した。
A: Δ(%)<5%
B: 5%≦Δ(%)<10%
C: 10%≦Δ(%)
なお、膜部分のみについての上記各波長での透過率は、下記式により求められる。
膜部分のみについての各波長での透過率(%)
=〔分散膜付きガラスの各波長での透過率(%)/無アルカリガラスの各波長での透過率(%)〕×100
(ただし、上記評価方法により求められる無アルカリガラスの各波長での透過率(%)は、500nmにおける透過率、380nmにおける透過率、および、550〜700nmにおける透過率のいずれについても91%である。)
(i-b)
上記(i-a)の評価方法において、バーコ−ターによる塗料のウエット膜厚が66μmとなるようにして分散膜付きガラスを得た以外は、上記(i-a)と同様にして、同様の評価を行った。なお、この評価は、実施例中に明示した金属酸化物粒子についてのみ行った。
−(ii)の評価について−
濁度計(日本電色工業社製、製品名:NDH−1001 DP)を用いて、分散膜付きガラスの、全光線透過率、拡散光線透過率、平行線透過率、ヘイズ値(H(%))を測定した。
分散膜付きガラスの透明性を、以下の基準により評価した。
A: H(%)<1%
B: 1%≦H(%)<3%
C: 3%≦H(%)
−(iii)の評価について−
得られた分散膜付きガラスに関して、外観を目視することにより、以下の基準で評価した。
×:着色が顕著である。
△:若干、着色が認められる。
○:無色か、または、着色が気にならない。
(6−2)溶媒分散状態での評価
得られた反応液を希釈溶媒として1−ブタノールを用いて微粒子濃度0.1wt%となるように希釈したものを試料として用い、積分球付き自記分光光度計(島津製作所製「UV−3100」)を用いて、紫外および可視領域における分光透過率曲線を測定した。
紫外線遮断性:380nm、400nm、420nmにおける透過率で評価した。
可視光透過性:600nmにおける透過率で評価した。
なお、成膜品における分光透過曲線についても、上記と同様、積分球付き自記分光光度計(島津製作所製「UV−3100」)を用いて、紫外および可視領域における分光透過率曲線を測定した。
(7)金属酸化物粒子の色相
粉末試料の外観を目視にて観察して評価した。
<膜(または膜付き基材)の評価>
(1)分光透過率曲線に基づく可視光透過特性、紫外線吸収特性および可視長波長吸収特性
この評価は、膜付き基材を対象にして行った。
膜付き基材の分光透過率曲線を、積分球付き自記分光光度計((株)島津製作所製、製品名:UV−3100)を用いて測定した。
得られた分光透過率曲線より、膜付き基材について、可視光透過特性としては、可視光の透過率(500nmにおける透過率(%))を評価し、紫外線吸収特性としては、380nmにおける透過率(%)を評価した。また、可視長波長吸収特性としては、550〜700nmにおける異種金属元素(Co、Fe、Ni)イオン含有により発現しうる吸収帯の有無や程度に関して、下記式:
Δ(%)=〔|T500−T|/T500〕×100
(ただし、Tは550〜700nmにおける透過率(%)の最小値であり、T500は500nmにおける透過率(%)である。)
によりΔ(%)を求め、その値について以下の基準により評価した。
A: Δ(%)<5%
B: 5%≦Δ(%)<10%
C: 10%≦Δ(%)
なお、膜付き基材に用いた基材のみについても、上記と同様の方法により各種透過率を求めておいた。
(2)可視光に対する透明性
濁度計(日本電色工業社製、製品名:NDH−1001 DP)を用いて、膜付き基材および基材のみの各々について、全光線透過率、拡散光線透過率、平行線透過率、ヘイズ値(H(%))を測定し、膜の透明性をそのヘイズ値から以下の基準により評価した。なお、膜のへイズ値は、膜付き基材のヘイズ値から基材のみのヘイズ値を差し引いたものである。
A: H(%)<1%
B: 1%≦H(%)<3%
C: 3%≦H(%)
(3)着色の度合い
得られた膜(膜付き基材)に関して、外観を目視することにより、以下の基準で評価した。
×:着色が顕著である。
△:若干、着色が認められる。
○:無色か、または、着色が気にならない。
〔実施例1−1〕
撹拌機、添加槽に直結した添加口、温度計、留出ガス出口および窒素ガス導入口を備えた、外部より加熱し得る耐圧ガラス製反応器と、上記添加口につながった添加槽と、上記留出ガス出口につながった冷却器(トラップに直結)と、を備えた反応装置を用意した。
上記反応器内に、酢酸亜鉛無水物粉末183部、酢酸コバルト(II)無水物粉末3.5部、メチルトリメトキシシラン2部、および、メタノール1700部とからなる混合物を仕込み、気相部を窒素ガスでパージした後、撹拌しながら(20℃から)160℃まで昇温し、160℃±1℃で5時間加熱保持して、金属酸化物粒子の生成反応を行った後、冷却することにより、青色の微粒子(金属酸化物粒子)を含む反応液(11)を得た。
反応液(11)中の金属酸化物粒子について、前述の各種測定・評価を行い、その結果を表2に示した。なお、反応液(11)中の金属酸化物粒子に含有されるCoの価数に関しては、前述のようにCoの2p3/2スペクトルを測定することで評価した結果、ピーク位置が780.3eVであったことから、2価のCo(Co(II))が含有されていると判定した。
反応液(11)中の金属酸化物粒子については、前述した金属酸化物粒子の評価のうち、(6−1)(i-b)の評価も行った。その結果、380nmにおける透過率は1%未満、500nmにおける透過率は80%、Δ(%)についてはランクAであった。
〔実施例1−2〜1−4〕
実施例1−1において、仕込み原料の種類や使用量を、表1に示したように変更した以外は、実施例1−1と同様にして、青色の微粒子(金属酸化物粒子)を含む反応液(12)〜(14)を得た。
反応液(12)〜(14)中の金属酸化物粒子それぞれについて、前述の各種測定・評価を行い、それらの結果を表2に示した。なお、反応液(12)〜(14)中の金属酸化物粒子に含有されるCoの価数に関しては、前述のようにCoの2p3/2スペクトルを測定することで評価した結果、ピーク位置からみて、実施例1−1と同様に2価のCo(Co(II))が含有されていると判定した。
〔実施例1−5〕
実施例1−1と同様の反応装置を用意し、該装置に備えられている耐圧ガラス製反応器内に、酢酸亜鉛無水物粉末183部、酢酸コバルト(II)無水物粉末1.8部、水酸化酢酸鉄(III)粉末1.9部、テトラメトキシシラン3部、および、1−プロパノール1700部とからなる混合物を仕込み、気相部を窒素ガスでパージした後、撹拌しながら(20℃から)160℃まで昇温し、160℃±1℃で2時間加熱保持して、金属酸化物粒子の生成反応を行った後、冷却することにより、青色の微粒子(金属酸化物粒子)を含む反応液(15)を得た。なお、上記金属酸化物粒子の色は、実施例1−1〜1−4で得られた金属酸化物粒子に比べ、より緩和されたものであり、より無色透明に近いことが要求される用途に好適なものであった。
反応液(15)中の金属酸化物粒子について、前述の各種測定・評価を行い、その結果を表2に示した。なお、反応液(15)中の金属酸化物粒子に含有されるCoの価数に関しては、前述のようにCoの2p3/2スペクトルを測定することで評価した結果、ピーク位置からみて、実施例1−1と同様に2価のCo(Co(II))が含有されていると判定した。
〔比較例1−1〕
実施例1−1において、仕込み原料として酢酸コバルト(II)無水物粉末を用いなかった以外は、実施例1−1と同様にして、白色の微粒子(金属酸化物粒子)を含む反応液(c11)を得た。
反応液(c11)中の金属酸化物粒子について、前述の各種測定・評価を行い、その結果を表2に示した。
〔実施例1−6〜1−8〕
実施例1−1において、仕込み原料の種類や使用量を、表1に示したように変更した以外は、実施例1−1と同様にして、青色の微粒子(金属酸化物粒子)を含む反応液(16)〜(18)を得た。
反応液(16)〜(18)中の金属酸化物粒子それぞれについて、前述の各種測定・評価を行い、それらの結果を表2に示した。なお、反応液(16)〜(18)中の金属酸化物粒子に含有されるCoの価数に関しては、前述のようにCoの2p3/2スペクトルを測定することで評価した結果、ピーク位置からみて、実施例1−1と同様に2価のCo(Co(II))が含有されていると判定した。
Figure 0004938985
Figure 0004938985
〔比較例1−2〕
実施例1−1と同様の反応装置を用意し、該装置に備えられている耐圧ガラス製反応器内に、硝酸亜鉛6水和物粉末300部、酢酸コバルト(II)無水物粉末3部、イオン交換水2000部からなる混合物を仕込み、撹拌しながら20℃に保持した。これに、炭酸ナトリウム200部を溶解したイオン交換水1000部を滴下した後、2時間攪拌を行うことにより、スラリーを得た。該スラリーを遠心分離して得られた沈降物をイオン交換水で洗浄・ろ過し、得られたケーキを100℃で乾燥後、焼成炉中、空気雰囲気下で500℃で2時間焼成したのち、冷却した。得られた粉末を粉砕し、サンドミルを用いて1−ブタノールに20wt%の割合で分散させて、分散体(c12)を得た。
得られた分散体(c12)中の金属酸化物粒子について、評価した結果は以下の通りであった。
上記評価方法(4)に記載の個々の粒子におけるCo含有量は不均一であり測定できなかったが、金属酸化物粒子における粉末の元素分析で求めたCoの平均含有量はZnに対する原子比で1.3原子%であった。粒子に含まれるCoの価数は、実施例1−1と同様にして判定した結果、3価であった。(002)面に垂直方向の結晶子径は38nmであった。上記評価方法(6−1)に準じて金属酸化物粒子の光学性能を評価した結果、透明性はランクC、可視光透過性は500nmにおける透過率が78%であった。
〔実施例1−9〜1−16および比較例1−3〜1−4〕
実施例1−1において、仕込み原料の種類や使用量を、表3に示したように変更した以外は、実施例1−1と同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(19)〜(116)、(c13)、(c14)を得た。
反応液(19)〜(116)、(c13)、(c14)中の金属酸化物粒子それぞれについて、前述の各種測定・評価を行い、それらの結果を表4に示した。なお、比較として、比較例1−1についての同様の評価結果も併せて示す。
Figure 0004938985
Figure 0004938985
〔実施例1−17〕
実施例1−10において、酢酸リチウム2水和物粉末0.18部をさらに原料として用いた以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(117)を得た。
反応液(117)について、実施例1−10と同様の評価を行った結果、紫外線吸収性(380nmにおける透過率)は32%と、実施例1−10で得られた反応液(110)に比べて向上しており、また、リチウムイオンをZnに対して0.18原子%含有するものであった。他の評価結果については、反応液(110)と同様であった。
〔実施例1−18〕
実施例1−10において、酢酸カルシウム1水和物粉末0.14部をさらに原料として用いた以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(118)を得た。
反応液(118)について、実施例1−10と同様の評価を行った結果、紫外線吸収性(380nmにおける透過率)は33%と、実施例1−10で得られた反応液(110)に比べて向上しており、また、カルシウムイオンをZnに対して0.08原子%含有するものであった。他の評価結果については、反応液(110)と同様であった。
〔実施例1−19〕
実施例1−9において、酢酸マグネシウム4水和物粉末0.05部をさらに原料として用いた以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(119)を得た。
反応液(119)について、実施例1−9と同様の評価を行った結果、紫外線吸収性(380nmにおける透過率)は43%と、実施例1−9で得られた反応液(19)に比べて向上しており、また、マグネシウムイオンをZnに対して0.02原子%含有するものであった。他の評価結果については、反応液(19)と同様であった。
〔実施例1−20〕
実施例1−9において、酢酸セシウム無水物粉末0.78部をさらに原料として用いた以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(120)を得た。
反応液(120)について、実施例1−9と同様の評価を行った結果、紫外線吸収性(380nmにおける透過率)は44%と、実施例1−9で得られた反応液(19)に比べて向上しており、また、セシウムイオンをZnに対して0.4原子%含有するものであった。他の評価結果については、反応液(19)と同様であった。
〔実施例1−21〕
実施例1−14において、酢酸ナトリウム無水物粉末0.4部をさらに原料として用いた以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(121)を得た。
反応液(121)について、実施例1−14と同様の評価を行った結果、紫外線吸収性(380nmにおける透過率)は35%と、実施例1−14で得られた反応液(114)に比べて向上しており、また、ナトリウムイオンをZnに対して0.4原子%含有するものであった。他の評価結果については、反応液(114)と同様であった。
〔実施例1−22〕
実施例1−1において、酢酸バリウム無水物粉末0.51部をさらに原料として用いた以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(122)を得た。
反応液(122)について、実施例1−1と同様の評価を行った結果、紫外線吸収性(380nmにおける透過率)は34%と、実施例1−1で得られた反応液(11)に比べて向上しており、また、バリウムイオンをZnに対して0.2原子%含有するものであった。他の評価結果については、反応液(11)と同様であった。
〔実施例1−23〕
実施例1−1と同様の反応器に、反応溶媒としてのエチレングリコールジメチルエーテル2400部、チタニウムメトキシプロポキシド303部、酢酸第一鉄(II)粉末2.8部、添加剤としての酢酸270部からなる混合物を仕込み、気相部を窒素ガスでパージした後、攪拌しながら、20℃より160℃まで昇温し、160±1℃にて5時間加熱した後、冷却することにより、微粒子濃度2wt%の反応液(123)を得た。
反応液(123)中の微粒子は、粉末X線回折測定の結果、X線回折学的にアナタース形酸化チタン同等と判定された。
反応液(123)中の微粒子について、各種評価を行った結果を表5に示す。なお、光学性能の評価は、可視光透過性および紫外線吸収性については、反応液を試料として上記評価方法(6−2)に準じて(ただし、紫外線吸収性は400nmにおける透過率で評価した。)行い、着色の度合いについては、上記評価方法(6−1)に準じて1−ブタノール分散体を試料とし分散膜において行った。
〔実施例1−24〕
実施例1−23において、酢酸第一鉄(II)粉末2.8部の代わりに酢酸コバルト(II)無水物粉末8部を用いた以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(124)を得た。
反応液(124)中の微粒子は、粉末X線回折測定の結果、X線回折学的にアナタース形酸化チタン同等と判定された。
反応液(124)中の微粒子について、実施例1−23と同様の評価を行った結果を表5に示す。
〔実施例1−25〕
実施例1−23において、酢酸第一鉄(II)粉末2.8部の代わりに酢酸ニッケル(II)4水和物粉末1部を用いた以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(125)を得た。
反応液(125)中の微粒子は、粉末X線回折測定の結果、X線回折学的にアナタース形酸化チタン同等と判定された。
反応液(125)中の微粒子について、実施例1−23と同様の評価を行った結果を表5に示す。
〔実施例1−26〕
実施例1−23において、酢酸第一鉄(II)粉末2.8部の代わりに酢酸第一鉄(II)粉末0.65部と水酸化酢酸鉄(III)粉末3部を用いた以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(126)を得た。
反応液(126)中の微粒子は、粉末X線回折測定の結果、X線回折学的にアナタース形酸化チタン同等と判定された。
反応液(126)中の微粒子について、実施例1−23と同様の評価を行った結果を表5に示す。
〔実施例1−27〕
実施例1−23において、酢酸第一鉄(II)粉末2.8部の代わりに酢酸コバルト(II)無水物粉末0.1部と水酸化酢酸鉄(III)粉末1.5部を用いた以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(127)を得た。
反応液(127)中の微粒子は、粉末X線回折測定の結果、X線回折学的にアナタース形酸化チタン同等と判定された。
反応液(127)中の微粒子について、実施例1−23と同様の評価を行った結果を表5に示す。
〔比較例1−5〕
実施例1−23において、酢酸第一鉄(II)粉末2.8部を用いない以外は、同様にして、金属酸化物粒子を含む反応液(c15)を得た。
反応液(c15)中の微粒子は、粉末X線回折測定の結果、X線回折学的にアナタース形酸化チタン同等と判定された。
反応液(c15)中の微粒子について、実施例1−23と同様の評価を行った結果を表5に示す。
〔比較例1−6〕
実施例1−23において、酢酸第一鉄(II)粉末2.8部の代わりに水酸化酢酸鉄(III)粉末3部を用いた以外は、同様にして、反応液(c16)を得た。
反応液(c16)中の微粒子は、粉末X線回折測定の結果、X線回折学的にアナタース形酸化チタン同等と判定された。
反応液(c16)中の微粒子について、実施例1−23と同様の評価を行った結果を表5に示す。
Figure 0004938985
〔実施例1−28〕
実施例1−1と同様の反応器に、純水3000部、酢酸第一セリウム(III)1水和物粉末50部、水酸化酢酸鉄(III)粉末1.5部、酢酸ニッケル(II)4水和物粉末0.19部からなる混合物を仕込み、室温で攪拌しながら、30%過酸化水素水50部を加えた。攪拌しながら、室温より90℃まで昇温し、90±2℃にて5時間加熱した後、30%過酸化水素水10部を加えた。さらに、1時間加熱保持した後、冷却することにより、微黄色を呈する透明感の高い、微粒子濃度0.8wt%の反応液を得た。得られた反応液を限外ろ過膜を用いたろ過に供することにより、不純物イオン類および残存過酸化水素の除去とともに濃縮を行い、微粒子濃度7wt%の水分散体(128)を得た。
水分散体(128)中の微粒子について、各種評価を行った結果を表6に示す。なお、光学性能の評価は、可視光透過性および紫外線吸収性については、水分散体を試料として上記評価方法(6−2)に準じて(ただし、紫外線吸収性は380nmおよび400nmにおける透過率で評価した。)行い、着色の度合いについては、上記評価方法(6−1)に準じて分散膜において行った。結晶系・結晶構造については、粒子が微細であったことから粉末X線回折測定ではピークがブロードになったため、電子線回折測定により、格子定数の測定を行い標準粉末のデータと比較することで判定した。1次粒子径については、透過型電子顕微鏡により判定した。
〔比較例1−7〕
実施例1−28において、酢酸ニッケル(II)4水和物粉末0.19部を用いない以外は、同様にして、微粒子濃度7wt%の水分散体(c17)を得た。
水分散体(c17)中の微粒子について、実施例1−28と同様の評価を行った結果を表6に示す。
〔比較例1−8〕
実施例1−28において、水酸化酢酸鉄(III)粉末1.5部、および酢酸ニッケル(II)4水和物粉末0.19部を用いない以外は、同様にして、微粒子濃度7wt%の水分散体(c18)を得た。
水分散体(c18)中の微粒子について、実施例1−28と同様の評価を行った結果を表6に示す。
Figure 0004938985
〔実施例1−29〕
実施例1−1と同様の反応器に、酢酸インジウム無水物粉末146部、水酸化酢酸鉄(III)粉末1.72部、酢酸第一鉄(II)粉末0.18部、メタノール3322部からなる混合物を仕込み、気相部を窒素ガスでパージした後、攪拌しながら、室温より180℃まで昇温し、180±1℃にて5時間加熱して、金属酸化物粒子の生成反応を行った後、冷却することにより、微粒子濃度2wt%で微粒子を含む反応液(129)を得た。
反応液(129)中の微粒子について、各種評価を行った結果を表7に示す。なお、分散粒子径の評価は、得られた反応液を加熱溶媒置換することにより、金属酸化物粒子を粒子濃度20wt%で1−ブタノールに分散してなる分散体を試料として行い、着色の度合いについては、上記評価方法(6−1)に準じて1−ブタノール分散体を試料とし分散膜において行った。
〔実施例1−30〜1−32〕
実施例1−29において、2価のFeと3価のFeの比率が表7に示す金属組成のようになるように、水酸化酢酸鉄(III)粉末と酢酸第一鉄(II)粉末の仕込み比を変えたこと以外は、同様にして、反応液(130)〜(132)を得た。
反応液(130)〜(132)中の微粒子について、実施例1−29と同様の評価を行った結果を表7に示す。
〔比較例1−9〕
実施例1−29において、酢酸第一鉄(II)粉末0.18部を用いず、水酸化酢酸鉄(III)粉末を1.9部用いた以外は、同様にして、反応液(c19)を得た。
反応液(c19)中の微粒子について、実施例1−29と同様の評価を行った結果を表7に示す。
Figure 0004938985
〔実施例2−1〕
実施例1−1で得られた反応液(11)1000部(粒子濃度:4.4wt%)を、常圧下で加熱し、メタノール等の溶媒成分を710部留去することにより、反応液(11)を濃縮した。この濃縮反応液をさらに加熱しながら、1−ブタノールを連続的に滴下することで、反応液中の残存溶媒成分の留去と同時に1−ブタノールへの溶媒置換を行い、1−ブタノール中に金属酸化物粒子が粒子濃度20wt%で分散してなる、膜形成用組成物としての分散体(21)を得た。
得られた分散体(21)の分散粒径を、動的光散乱式粒径分布測定装置(堀場製作所製、製品名:LB−500)により測定した結果、平均分散粒径は100nm以下であった。
〔実施例2−2〜2−5〕
実施例2−1において、使用する反応液、溶媒置換に用いる溶媒および粒子濃度を、表8に示したように変更した以外は、実施例2−1と同様にして、膜形成用組成物としての分散体(22)〜(25)を得た。
得られた分散体(22)〜(25)それぞれの分散粒径を、実施例2−1と同様の装置により測定した結果、いずれも平均分散粒径は100nm以下であった。
〔比較例2−1〕
実施例2−1において、使用する反応液、溶媒置換に用いる溶媒および粒子濃度を、表8に示したように変更した以外は、実施例2−1と同様にして、膜形成用組成物としての分散体(c21)を得た。
得られた分散体(c21)の分散粒径を、実施例2−1と同様の装置により測定した結果、平均分散粒径は100nm以下であった。
Figure 0004938985
〔実施例3−1〕
実施例2−1で得られた分散体(21)100部に、シリケートバインダー(SiO換算の固形分:51wt%)20部および触媒(n−ブチルアミン)0.2部を配合し、塗料を調製した。
得られた塗料を、無アルカリガラス(コーニングインターナショナル株式会社製、バリウムホウケイ酸ガラス、ガラスコード番号:7059、厚み:0.6mm)に、バーコ−ターで、ウエット膜厚が45μmとなるよう塗布し、25℃で常乾した後、250℃で加熱処理することにより、表面に金属酸化物粒子分散膜の形成されたガラスを得た。
得られた分散膜付きガラスについて、前述の評価を行った結果、可視光に対する透明性は「A」であり、着色の度合いは「○」であった。可視光透過特性については500nmにおける透過率が76%であった。紫外線吸収特性については380nmにおける透過率が2%未満であり、380nm以下の光をほぼ完全に吸収し得るものであった。可視長波長吸収特性は「A」であった。なお、基材として用いた無アルカリガラスのみの各波長での透過率(%)は、500nmにおける透過率、380nmにおける透過率、および、550〜700nmにおける透過率のいずれについても91%であった(以下の実施例においても同様である。)。
〔実施例3−2〕
実施例2−1で得られた分散体(21)を、実施例3−1と同様の無アルカリガラスに、バーコ−ターで塗布し、焼成炉中で常温より昇温し、500℃で1時間保持した後、冷却することによって、表面にCoドープZnO粒子からなる薄膜が形成されたガラスを得た。
得られた薄膜付きガラスは、450nm付近から紫外線領域(短波長側)における吸収を示し、370nm以下の光をほぼ完全に吸収し遮断し得るものであった。また、この薄膜付きガラスについて、前述の評価を行った結果、可視光に対する透明性は「A」であり、着色の度合いは「○」であった。可視光透過特性については500nmにおける透過率が88%であった。可視長波長吸収特性は「A」であった。
〔実施例3−3〕
実施例3−1において、分散体(21)100部の代わりに、実施例2−5で得られた分散体(25)100部を用いた以外は、実施例3−1と同様にして、塗料を調製した。
得られた塗料を、実施例3−1と同様の無アルカリガラスに、バーコ−ターで、ウエット膜厚が42μmとなるよう塗布し、25℃で常乾した後、250℃で加熱処理することにより、表面に金属酸化物粒子分散膜の形成されたガラスを得た。
得られた分散膜付きガラスについて、前述の評価を行った結果、可視光に対する透明性は「A」であり、着色の度合いは「○」であった。可視光透過特性については500nmにおける透過率が78%であった。紫外線吸収特性については380nmにおける透過率が1%未満であり、380nm以下の光をほぼ完全に吸収し得るものであった。可視長波長吸収特性は「A」であった。なお、着色の度合いは、実施例3−1の分散膜付きガラスや実施例3−2の薄膜付きガラスに比べ、より緩和されたものであり、より無色透明に近いことが要求される用途に好適なものであった。
〔実施例3−4〕
実施例1−10で得られた反応液(110)を、基材としての実施例3−1と同様の無アルカリガラス上にバーコーターで塗布し、常温乾燥したのち、加熱炉中、窒素雰囲気下で400℃で1時間加熱することにより、膜厚0.6μmの膜が表面に形成された膜付き基材を得た。
得られた膜付き基材について、評価した結果、該膜付き基材は、Znに対してFe(II)を2原子%含有するZnO結晶膜を備えたものであり、紫外線吸収性は380nmにおける透過率が30%であり、可視光透過性は500nmにおける透過率が90%であり、透明性はヘイズが0.3%である、僅かに緑味を帯びた無色性に優れる紫外線遮断ガラスであった。
〔比較例3−1〕
実施例3−4において、反応液(110)の代わりに、比較例1−3で得られた反応液(c13)を用いた以外は、同様にして、膜厚0.6μmの膜が表面に形成された膜付き基材を得た。
得られた膜付き基材について、評価した結果、該膜付き基材は、Znに対してFe(III)を2原子%含有するZnO結晶膜を備えたものであり、紫外線吸収性は380nmにおける透過率が50%であり、可視光透過性は500nmにおける透過率が88%であり、透明性はヘイズが0.6%である、黄色の着色が目立つ紫外線遮断ガラスであった。
本発明の膜は、例えば、建物用窓ガラス、自動車および電車等の車両用窓ガラス、飛行機およびヘリコプター等の空輸機用窓ガラス、農業用フィルム、各種包装用フィルムなどに好適であるが、用途はこれらに限定されず、各種機能性フィルムへの紫外線遮機能の付与のほか、赤外線遮蔽機能や導電機能等を付与する目的でも、各種用途に好適に用いることができる。
本発明の組成物は、例えば、紫外線遮断膜形成用の塗布液や紫外線カット塗料として好適であるほか、上記本発明の膜の形成材料として好適である。
本発明の金属酸化物粒子は、例えば、膜やフィルム、塗料、化粧料等の各種用途において、紫外線遮蔽性を付与するための成分として好適であるほか、上記本発明の膜および上記本発明の組成物の構成成分として好適である。

Claims (4)

  1. 金属元素(M)の酸化物からなる粒子内に該金属元素(M)以外の金属元素(M’)に由来する成分が含有されている金属酸化物粒子において、
    前記金属元素(M’)が前記金属元素(M)の酸化物の結晶に固溶して存在しており、
    前記金属元素(M)は、Znであり、
    前記金属元素(M’)は、Co、Fe、Niからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、これらCo、FeおよびNiの少なくとも一部は2価であり、
    前記金属元素(M’)の合計含有率が、金属元素(M)に対し、0.1〜10原子%であり、かつ、(002)面に垂直方向の結晶子径が30nm以下、(100)面に垂直方向の結晶子径が8nm以上であり、
    金属酸化物粒子自体の一次粒子の平均粒子径が1〜100nmであることを特徴とする紫外線吸収性材料用金属酸化物粒子。
  2. 金属元素(M)の酸化物からなる粒子内に該金属元素(M)以外の金属元素(M’)に由来する成分が含有されている金属酸化物粒子において、
    前記金属元素(M)は、Znであり、
    前記金属元素(M’)は、Co、Fe、Niからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
    かつ、前記金属元素(M’)のほかに、アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素に由来する成分をも含有する請求項1に記載の紫外線吸収性材料用金属酸化物粒子。
  3. 金属酸化物粒子が媒体中に分散してなり、前記金属酸化物粒子が請求項1または2に記載の紫外線吸収性材料用金属酸化物粒子を必須とする、組成物。
  4. 金属酸化物を必須構成成分としてなり、前記金属酸化物が、請求項1または2に記載の紫外線吸収性材料用金属酸化物粒子および/または該粒子に由来する金属酸化物結晶を必須とする、膜。
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