JP4313535B2 - 微粒子状酸化チタン複合体、同複合体の製造方法、同複合体組成物 - Google Patents
微粒子状酸化チタン複合体、同複合体の製造方法、同複合体組成物 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4313535B2 JP4313535B2 JP2002013349A JP2002013349A JP4313535B2 JP 4313535 B2 JP4313535 B2 JP 4313535B2 JP 2002013349 A JP2002013349 A JP 2002013349A JP 2002013349 A JP2002013349 A JP 2002013349A JP 4313535 B2 JP4313535 B2 JP 4313535B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- titanium oxide
- oxide composite
- producing
- particulate titanium
- particulate
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Inorganic Compounds Of Heavy Metals (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化チタン複合体、該製造方法及び該複合体を含む組成物に関し、さらに詳しくは気相法において四塩化チタンを含有する原料ガスと酸化性ガス、および非Ti系化合物とを反応させて得られる、微粒子状酸化チタン複合体、該製造方法及び該複合体を含む組成物、顔料、化粧料、研磨剤、光触媒等に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化チタンの工業的応用分野は、近年大きく拡大しつつある。例えば、高性能の誘電体原料や紫外線遮蔽材、シリコーンゴムヘの添加剤、光触媒性用途など多岐に亘って検討が進められている。
【0003】
ペロブスカイト型誘電体の原料としての酸化チタンの用途は、
次の反応式に示すように、酸化チタンを約1,200℃の温度下で炭酸バリウムと固相反応させて該誘電体のチタン酸バリウムが製造される。
反応式 BaCO3+TiO2→BaTiO3+CO2
この場合、炭酸バリウムが約700℃で分解してイオン性の高いBaOを生成し、これが共有結合性のあるTiO2粒子中へ拡散固溶してチタン酸バリウムが生成する。チタン酸バリウムの粒径は、反応時のTiO2の結晶子サイズによって決定されるので、原料としての酸化チタンの結晶性、粒径等が重要となる。
【0004】
また、セラミックコンデンサの高誘電率化や小型化の要求のためには、チタン酸バリウムの超微粒子化が求められており、原料の酸化チタンの超微粒子化が希求されてきた。超微粒子の定義はこれまで明確ではないが、一般には一次粒子径が約0.1μm以下の微粒子に対して呼ばれている。
しかしながら、粒径0.1μm以下の酸化チタンは、上記反応温度の700℃近辺では粒成長が著しく、チタン酸バリウムの超微粒子化には余り寄与しないという問題があり、このような課題に適した酸化チタンが望まれている。
また、光触媒性に注目して防汚、殺菌、消臭用途への展開や、紫外線遮蔽効果に注目して化粧料用途への展開が注目されている。この背景には、酸化チタンの安全性、加工性、機能性、耐久性が優れている点が挙げられる。
【0005】
以下、光触媒について説明する。
酸化チタンには約400nm以下の波長の紫外線を吸収して電子を励起させる性質がある。そこで、発生した電子とホールは粒子表面に到達すると、酸素や水と化合して様々なラジカル種を発生させる。このラジカル種が主として酸化作用を示し、表面に吸着した物質を酸化分解する。これが光触媒の基本原理である。
【0006】
ここで、その触媒能を高める例として次の方法がある。
(1)粒径を小さくする。
生成した電子とホールの再結合を抑制するために、非常に有効である。
(2)結晶性を高める。
生成した電子とホールの表面への拡散速度を上げるために、有効である。
(3)電荷分離を行う。
生成した電子とホールを電荷分離して、その表面に到達する歩留まりを向上する。
(4)バンドギャップを調整する。
微量不純物を添加してバンドギャップを小さく(最大吸収波長を大きく)すると、光、例えば太陽光の利用率を高めることができる。
このような手段の中で、近年(3)、(4)を目的とする各種添加物の検討がなされている。
【0007】
また、このような光触媒能を有する微粒子酸化チタンを担体に被着させる手段としては、バインダーと混合したスラリーを担体に塗布した後600℃以上で焼き付けるという方法がとられることがある。しかしながら、この時一次粒子が焼結により成長してしまい触媒能が低下するという問題点があった。
【0008】
従来、酸化チタンの微粒子状複合酸化物の製造法としては、液相法による表面処理が代表的なプロセスである。しかしながら、溶媒の除去、即ち濾過乾燥という工程が必要なうえに、溶媒が水の場合には乾燥時に水がバインダーとなって凝集が助長されるという難点があり、強く解砕したり、粉砕する工程を追加する必要がある。また、有機溶媒を採用するときには、その溶媒回収系が必要になるなど、煩雑な製造工程となっていた。
【0009】
また、特開平11−228139号公報には、BET15m2/g以上の酸化チタンと金属元素を含む塩を溶解した水溶液及び有機溶剤・分散剤を原料としたエマルジョンを噴霧燃焼させて複合粉末を得ることが開示されている。しかしながら、これは工程が長い上に、燃焼のための多くの可燃性溶剤を必要とするという不都合な点があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記微粒子状酸化チタンの用途に鑑み、酸化チタン構造を有する微粒子状複合酸化物(複合酸化物を酸化物複合体ともいう)の簡便な製造法、該物質及び該物質を含む組成物を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来技術を鑑み鋭意検討した結果、酸化チタン複合体の気相製造法において、それぞれ700℃以上に予熱された四塩化チタンを含有する原料ガスと酸化性ガス、及び非Ti系化合物の溶液、スラリーまたはガスを、反応させて、特に好ましくはBET比表面積5〜200m2/gを有する微粒子状酸化物複合体を一段の反応工程で製造することで、前記課題を解決した。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の発明からなる。
(1)四塩化チタンを含有する原料ガスと酸化性ガスをそれぞれ700℃以上に予熱し、硝酸塩を除く窒素含有化合物、硫酸塩を除く硫黄含有化合物より選ばれた少なくとも1種の化合物(以下、特に断りの無い限り「非Ti系化合物」と記載する)を反応させることを特徴とする微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
(2)上記微粒子状酸化チタン複合体の一次粒子内に、−O−Ti−X−結合(式中、Xは、窒素(N)、硫黄(S)より選ばれた少なくとも1種の元素を表す)が存在し、一次粒子の平均粒子径が、0.008μm〜0.3μmの範囲内にあることを特徴とする前項1に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
(3)上記微粒子状酸化チタン複合体は、波長550nmの光の反射率が95%以下である前項1または2に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
(4)上記微粒子状酸化チタン複合体は、BET比表面積が5〜200m2/gである前項1乃至3のいずれかに記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
(5)上記微粒子状酸化チタン複合体は、700℃、1時間加熱後のBET比表面積減少率が20%以下である前項1乃至4のいずれか1項に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
(6)上記微粒子状酸化チタン複合体は、異種金属構造体によってコア(核)/シェル(殻)構造をとっている前項1乃至5のいずれか1項に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
(7)非Ti系化合物が、アンモニア、ヒドラジン、炭素数1乃至20を有する第1級アミン,第2級アミン,第3級アミンおよび第4級アミン、硫化水素、および炭素数1乃至20を有する有機硫化物からなる群より選ばれた少なくとも1種である、前項1乃至6のいずれか1項に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
(8)非Ti系化合物が、ガスの状態で反応管に供給される前項1乃至7のいずれか1項に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
(9)非Ti系化合物が、溶液またはスラリーの状態で反応管に供給される前項1乃至7のいずれか1項に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
(10)溶液またはスラリーを、噴霧することにより供給する前項9に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
(11)溶液またはスラリーの溶媒が、大気圧において沸点40℃以上を有するものである前項9または10に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
(12)非Ti系化合物の反応管への供給が、四塩化チタンを含有する原料ガスと酸化性ガスの反応開始点より上流部で行われることを特徴とする前項1乃至11のいずれか1項に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
(13)反応が、四塩化チタンを含有する原料ガスと酸化性ガスを、それぞれ流速10m/秒以上で反応管に供給することにより行われる前項1乃至12のいずれか1項に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
(14)反応管内におけるガスの平均流速が5m/秒以上である前項1乃至13のいずれか1項に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
(15)四塩化チタンを含有する原料ガスが、四塩化チタンを10〜100体積%含有することを特徴とする前項1乃至14のいずれか1項に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、主として四塩化チタンを酸化性ガスで高温酸化することにより微粒子状酸化チタンを製造する気相法に関して、それぞれ700℃以上に予熱された四塩化チタンを含有する原料ガス及び酸化性ガスと、非Ti系化合物の溶液、スラリーまたはガスを反応させて特に好ましくはBET比表面積5〜200m2/gを有する微粒子状酸化チタン複合体を一段の反応工程で製造することを特徴とする酸化チタン複合体の製造方法に関する。
前記微粒子状酸化チタン複合体の製造方法において、酸化性ガスには、酸素もしくは水蒸気またはこれらを含有する混合気体が使用される。
本発明においては、前記四塩化チタンを含有する原料ガスと酸化性ガスをそれぞれ少なくとも700℃以上、好ましくは900℃以上に予熱してから反応させる必要がある。混合四塩化チタンを含有する原料ガスと酸化性ガスの予熱温度が700℃より低いと、非Ti系化合物との反応において反応性が悪くなり、超微粒子にはなりにくく、かつ、脱塩素後の残存塩素も多くなる。
【0013】
本発明では、四塩化チタンを含有する原料ガス及び酸化性ガスのそれぞれを反応管に10m/秒以上の流速、好ましくは30m/秒以上の流速で供給することが望ましく、また、反応管内においては700℃を越える高温度条件下でガスが滞留し反応する時間(以下「高温滞留時間」ということもある。)が1秒以内となるように、これらのガスを反応させることが好ましい。
【0014】
特に、本発明者らは、気相法における粒子の成長機構に関して鋭意検討した結果、粒子の成長に作用する因子としてCVD(化学的気相成長)機構、粒子衝突による合体・焼結成長機構を制御(いずれの成長時間も短くする)することで、超微粒子状酸化物を好ましく得ることができる。すなわち、前者の成長に関しては、予熱温度を高めておいて化学的反応性(反応速度)を高める結果、酸化物の成長を抑えることができる。後者の成長に関しては、CVDが完結した後速やかに冷却、希釈等を行い、高温滞留時間を極力小さくすることにより、焼結等による成長を抑えることができる。このように製造条件を設定することにより、BET比表面積が5m2/g〜200m2/g、好ましくは10m2/g〜100m2/gの微粒子状酸化チタン複合体が得られる。
【0015】
四塩化チタンを含有する原料ガスと酸化性ガスを反応管に導入する際の流速は、10m/秒以上であることが反応上好ましい。流速を大きくすることによって、両者のガスの混合が促進されるからである。反応管へのガスの導入温度が700℃以上であれば、混合と同時に反応は完結するので均一核の発生が増進され、かつ、CVD支配による成長した粒子が形成されるゾーンを短くすることができる。
【0016】
本発明においては、反応管に導入されたガス等が十分に混合されるように、原料ガスが反応管へ導入されることが好ましい。ガスが十分に混合されれば、反応管内におけるガスの流体状態については特に制限はないが、好ましくは、例えば、乱流が生じる流体状態である。また、渦巻き流が存在していてもよい。
【0017】
本発明においては、反応管内に供給されたガスの反応管内における流速は、ガスの混合を完全に行うためには大きいことが好ましく、特に、平均流速で5m/秒以上であることが好ましい。反応管内のガスの流速が5m/秒以上であれば、反応管内における混合を十分に行うことができる。
【0018】
原料ガスを反応管に導入する導入ノズルとしては、同軸平行流、斜交流、十字流等を与えるノズルが採用されるが、これらに限定されない。一般に同軸平行流ノズルは、斜交流や十字流を与えるノズルに比べて混合の程度は劣るが、構造が簡単なので設計上好ましく用いられる。例えば、同軸平行流ノズルの場合は、内管に四塩化チタンを含有する原料ガスを導入し、外管に酸化性ガスを導入する。ただし、内管径は50mm以下、好ましく50mm〜10mmであることが、ガスの混合の観点から好ましい。
【0019】
非Ti系化合物としては、例えば、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、エチレンジアミン、アニリン、ピペラジン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、塩化テトラメチルアンモニウム 、硫化水素、エタンチオール等が挙げられる。特に好ましくは、アンモニア、硫化水素、が挙げられる。
これらの非Ti系化合物を、溶液状態、スラリーまたはガス状態で反応器に供給することができる。
【0020】
溶媒としては、前記非Ti化合物の内または他の化合物を用いてもよく、大気圧における沸点が40℃以上のものが好ましい。
具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、アセトン、メチエチルケトン、ジブチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ギ酸、酢酸、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、オクタン等が挙げられる。中でも、極性や取扱いの観点から、水がさらに好ましい。沸点が低すぎると、溶媒が供給ノズル内で蒸発してしまう恐れがあり、好ましくない。
また、ガス化しやすい非Ti系化合物(例えば、アンモニア、ヒドラジン、有機アミン類等)は、ガス状態での供給が推奨される。中でもアンモニアはガス状態での供給が好ましい。これらに、キャリアーガスとしてアルゴン、窒素等を同時に用いてもよい。
【0021】
非Ti系化合物の供給は、四塩化チタンを含有する原料ガスと酸化性ガスの反応開始点より上流部から行うことができる。もしくは、四塩化チタンを含有する原料ガスと酸化性ガスの反応開始点から流れ方向に関して200mm下流部までの間に行うことができる。供給地点がそれより下流だと、生成酸化物中の添加物分布が不均一となり、好ましくない。
溶液またはスラリーの供給は、四塩化チタンを含有する原料ガスと酸化性ガスの反応混合物に対して滴下状態でもいいし、噴霧状態でもいい。均一混合の観点から、噴霧状態での供給が好ましい。
【0022】
反応管内におけるこの反応は発熱反応である。反応温度が製造された微粒子状酸化チタン複合体の焼結温度より高温である場合は、急冷しないかぎり製造された微粒子は焼結が進行し、成長した粒子になってしまう。また、反応温度は700℃以上が好ましい。これより低いと反応性が悪く、金属の添加歩留まりが低く、かつ、微粒子状になりにくい。本発明においては、原料ガスの予熱温度と添加金属の溶液,スラリーまたはガス量を調整して、反応温度を700℃以上とし、かつ、反応管内の700℃を越える高温滞留時間は1秒以下とし、その後急冷することが好ましい。
【0023】
反応後の粒子を急冷させる手段としては、反応後の混合物に多量の冷却空気や窒素等のガスを導入したり、水を噴霧したりすること等が採用される。
図1に本発明の微粒子状酸化物複合体の製造に用いられる、同軸平行流ノズルを備えた反応管の概略模式図を例示する。四塩化チタンを含有する原料ガスは予熱器2で所定温度まで予熱されて、同軸平行流ノズル部1の内管から反応管4へ導入される。酸化性ガスは予熱器2で所定温度まで予熱されて、同軸平行流ノズル部1の外管から反応管4へ導入される。非Ti系化合物を含む溶液またはスラリーは、導入ノズル3によって前記ノズルの外側から、四塩化チタンおよび酸化性ガスの反応混合物に向けて導入される。反応管内に導入されたガス及び非Ti系化合物を含む塩溶液またはスラリーは混合されて反応した後、冷却ガスで急冷され、その後、バグフィルター5に送られて微粒子状酸化物複合体が捕集される。
【0024】
また、原料となる四塩化チタンを含有する原料ガスは、100体積%の四塩化チタンガスで用いるか、または好ましくは不活性ガスで希釈して10体積%以上100%未満、さらに好ましくは20体積%以上100体積%未満、で投入することができる。10体積%以上のガスを原料として用いると、均一核の発生が多くなり、または反応性が高くなる。前記不活性ガスとしては、四塩化チタンと反応せずかつ酸化されないものを選択すべきである。具体的には、好ましい希釈ガスとして、窒素、アルゴン等が挙げられる。
【0025】
次に、本発明の製造方法により得られる微粒子状酸化チタン複合体について以下に説明する。本発明の微粒子状酸化チタン複合体の平均一次粒子径は、0.008μm〜0.3μm、好ましくは0.015μm〜0.15μmの範囲を有するものがよい。
微粒子状酸化チタン複合体の耐焼結性の指標(測定法は後記する。)として、加熱後のBET比表面積減少率で評価したところ、−O−Ti−X−(式中、Xは、窒素(N)、硫黄(S)より選ばれた少なくとも1種の元素を表す)結合を含む微粒子状酸化チタン複合体は、700℃、1時間加熱後のBET比表面積減少率が20%以下である特徴を有するものがよい。
また、光触媒の観点で、微粒子状酸化物の太陽光利用の指標(測定は後記する)として、粉の反射率を可視光(波長550nm)で評価すると、微粒子状酸化チタン複合体は反射率が95%以下である特徴を有するものがよい。
【0026】
本発明の製造方法により得られる微粒子状酸化チタン複合体は、好ましくは異種金属酸化結晶構造体によってコア(核)/シェル(殻)構造をとっている複合体であってもよい。
【0027】
本発明の微粒子状酸化チタン複合体は、顔料や誘電体原料、あるいは添加剤として化粧料、衣料、紫外線遮蔽剤、研磨剤又はシリコーンゴム・紙等の各種組成物製品に利用できる。また、光触媒効果を調整した光触媒粉体としても利用できる。具体的には、窒素元素やイオウ元素等を複合体中に添加することにより光触媒としての可視光応答性を高めたりすることができる。
【0028】
【実施例】
以下、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
(耐焼結性の評価)
本発明の微粒子状酸化チタン複合体の耐焼結性の評価として、加熱後のBET比表面積減少率を指標として採用する。
原粉1gをアルミナ製坩堝に入れ、シリコニットオーブン中、700℃にて1時間加熱する。室温まで冷却後そのBET比表面積を測定する。原粉のBET比表面積をB1(m2/g)、加熱後のBET比表面積をB2(m2/g)とする時、
BET比表面積減少率={1−(B2/B1)}×100(%)
と定義できる。BET比表面積減少率の小さいものほど、耐焼結性に優れると判断される。
【0029】
(反射率の評価)
反射率の評価には、積分球ISR−240A型((株)島津製作所製)を取付けた分光光度計UV−2400PC((株)島津製作所製)を用い、JIS Z 8722(1994年) 4.3項の方法を採用した。ただし、測定は、波長550nm、JIS Z 8722記載の条件d(試料面を法線方向から照明し、拡散した反射光を測定する),方法a(2光路の分光測光器を用いる)でおこなう。
<実施例1>
濃度100体積%のガス状四塩化チタン11.8Nm3/時間を1,000℃に、8Nm3/時間の酸素及び20Nm3/時間の水蒸気の混合ガスを900℃にそれぞれ予熱して、同軸平行流ノズルを用いて、それぞれ流速49m/秒、50m/秒で反応管に導入した。ただし、反応は図1に示すような反応管を用い、同軸平行流ノズルの内管径は20mmとし、内管に四塩化チタンを含有するガスを導入した。
また、アンモニアガス 1.7Nm3/時間と窒素6.0Nm3/時間の混合ガスを同軸平行流ノズルの外周部からノズル中心部へ向けて供給した。
反応管内の反応温度1、000℃における管内流速は計算値で10m/秒であった。反応管内の高温滞留時間が0.8秒以下となるように、反応後冷却空気を反応管に導入し、その後、ゴアテックス(登録商標)を濾過基材とするバグフィルターを用いて製造された微粒子粉末を捕集した。その後、オーブンにて空気雰囲気下、500℃×1時間加熱し、脱塩素処理を実施した。
得られた酸化チタンは、BET比表面積が20m2/g、平均一次粒子径0.08μmであり、窒素が0.5%検出された。XPS(X線光電子分光法)によって −酸素−チタン−窒素− 結合が認められた。また、700℃×1時間後のBET比表面積減少率(以下、ΔBと記す)は16%、550nm における粉の反射率(以下、H550と記す)は61%であった。得られた酸化チタン複合体は、黄色を帯びた粉体で、可視光域に吸収があった。
<比較例1>
濃度100体積%のガス状四塩化チタン11.8Nm3/時間を1,000℃に、8Nm3/時間の酸素及び20Nm3/時間の水蒸気の混合ガスを900℃にそれぞれ予熱して、同軸平行流ノズルを用いて、それぞれ流速49m/秒、50m/秒で反応管に導入した。ただし、反応は図1に示すような反応管を用い、同軸平行流ノズルの内管径は20mmとし、内管に四塩化チタンを含有する原料ガスを導入した。
【0030】
反応管内の反応温度1、000℃における管内流速は計算値で10m/秒であった。反応管内の高温滞留時間が0.8秒以下となるように、反応後冷却空気を反応管に導入し、その後、ゴアテックス(登録商標)を濾過基材とするバグフィルターを用いて製造された微粒子粉末を捕集した。その後、オーブンにて空気雰囲気下、500℃×1時間加熱し、脱塩素処理を実施した。
得られた酸化チタンは、BET比表面積が20m2/g、平均一次粒子径0.08μmであった。また、ΔBは35%,H550は99%であった。これは同様の比表面積と粒径を与えた実施例1と比べ、焼結しやすく、可視光の吸収が少なくなっている。
【発明の効果】
以上、詳しく説明したように、本発明によれば、四塩化チタンを酸化性ガスで高温酸化することにより酸化チタンを製造する気相法において、四塩化チタンを含有する原料ガス及び酸化性ガスをそれぞれ700℃以上に予熱し、非Ti系化合物の溶液、スラリーまたはガスと反応させることで、微粒子状で耐焼結性に優れ、特に好ましくは、BET比表面積が5〜200m2/gである一次粒子を含む微粒子状酸化チタン複合体を一段の反応工程で得ることができた。
【0031】
さらに、本発明の微粒子状酸化チタン複合体は、例えば焼結性や光活性を抑制もしくは調整することができるものである。また、解砕工程等が不要もしくは極めて軽微な設備で済み、非常に簡便に製造することができ、工業的に大きな実用的価値を有するものである。
【0032】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に好適に用いられる同軸平行流ノズルを備えた反応管の一例の概略模式図である。
【符号の説明】
1 同軸平行流ノズル部
2 予熱器
3 非Ti系化合物の導入ノズル部
4 反応管
5 バグフィルター
Claims (15)
- 四塩化チタンを含有する原料ガスと酸化性ガスをそれぞれ700℃以上に予熱し、硝酸塩を除く窒素含有化合物、硫酸塩を除く硫黄含有化合物より選ばれた少なくとも1種の化合物(以下、特に断りの無い限り「非Ti系化合物」と記載する)を反応させることを特徴とする微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
- 上記微粒子状酸化チタン複合体の一次粒子内に、−O−Ti−X−結合(式中、Xは、窒素(N)、硫黄(S)より選ばれた少なくとも1種の元素を表す)が存在し、一次粒子の平均粒子径が、0.008μm〜0.3μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
- 上記微粒子状酸化チタン複合体は、波長550nmの光の反射率が95%以下である請求項1または2に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
- 上記微粒子状酸化チタン複合体は、BET比表面積が5〜200m 2 /gである請求項1乃至3のいずれかに記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
- 上記微粒子状酸化チタン複合体は、700℃、1時間加熱後のBET比表面積減少率が20%以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
- 上記微粒子状酸化チタン複合体は、異種金属構造体によってコア(核)/シェル(殻)構造をとっている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
- 非Ti系化合物が、アンモニア、ヒドラジン、炭素数1乃至20を有する第1級アミン,第2級アミン,第3級アミンおよび第4級アミン、硫化水素、および炭素数1乃至20を有する有機硫化物からなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
- 非Ti系化合物が、ガスの状態で反応管に供給される請求項1乃至7のいずれか1項に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
- 非Ti系化合物が、溶液またはスラリーの状態で反応管に供給される請求項1乃至7のいずれか1項に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
- 溶液またはスラリーを、噴霧することにより供給する請求項9に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
- 溶液またはスラリーの溶媒が、大気圧において沸点40℃以上を有するものである請求項9または10に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
- 非Ti系化合物の反応管への供給が、四塩化チタンを含有する原料ガスと酸化性ガスの反応開始点より上流部で行われることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
- 反応が、四塩化チタンを含有する原料ガスと酸化性ガスを、それぞれ流速10m/秒以上で反応管に供給することにより行われる請求項1乃至12のいずれか1項に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
- 反応管内におけるガスの平均流速が5m/秒以上である請求項1乃至13のいずれか1項に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
- 四塩化チタンを含有する原料ガスが、四塩化チタンを10〜100体積%含有することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の微粒子状酸化チタン複合体の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002013349A JP4313535B2 (ja) | 2001-01-26 | 2002-01-22 | 微粒子状酸化チタン複合体、同複合体の製造方法、同複合体組成物 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001-19127 | 2001-01-26 | ||
JP2001019127 | 2001-01-26 | ||
JP2002013349A JP4313535B2 (ja) | 2001-01-26 | 2002-01-22 | 微粒子状酸化チタン複合体、同複合体の製造方法、同複合体組成物 |
Publications (3)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002293540A JP2002293540A (ja) | 2002-10-09 |
JP2002293540A5 JP2002293540A5 (ja) | 2005-07-07 |
JP4313535B2 true JP4313535B2 (ja) | 2009-08-12 |
Family
ID=26608381
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002013349A Expired - Fee Related JP4313535B2 (ja) | 2001-01-26 | 2002-01-22 | 微粒子状酸化チタン複合体、同複合体の製造方法、同複合体組成物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4313535B2 (ja) |
Families Citing this family (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005064493A (ja) * | 2003-07-31 | 2005-03-10 | Kyocera Corp | 光電変換装置およびそれを用いた光発電装置 |
GB2427860B (en) * | 2003-12-31 | 2009-03-25 | Council Scient Ind Res | Synthesis of ultrafine rutile phase titanium dioxide particles at low temperature |
JP4526273B2 (ja) * | 2004-01-30 | 2010-08-18 | ダイセル化学工業株式会社 | 炭素ドープ酸化チタンとその製造法、光触媒、及び該触媒を用いた有機化合物の酸化方法 |
KR20060122963A (ko) * | 2004-02-18 | 2006-11-30 | 가부시키가이샤 닛폰 쇼쿠바이 | 금속 산화물 입자 및 그것의 용도 |
JP5016193B2 (ja) * | 2005-01-05 | 2012-09-05 | 株式会社日本触媒 | 微粒子状金属酸化物とその用途 |
JP4938985B2 (ja) * | 2004-02-18 | 2012-05-23 | 株式会社日本触媒 | 金属酸化物粒子およびその用途 |
CN101189367B (zh) | 2005-05-31 | 2012-01-04 | 京瓷株式会社 | 含有针状结晶的排列体的复合体及其制造方法、以及光电转换元件、发光元件及电容器 |
CN117088408B (zh) * | 2023-10-20 | 2023-12-26 | 西南石油大学 | 一种纳米二氧化钛及其制备方法与应用 |
-
2002
- 2002-01-22 JP JP2002013349A patent/JP4313535B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2002293540A (ja) | 2002-10-09 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US6548169B2 (en) | Production process for ultrafine particulate complex oxide containing titanium oxide | |
CA2383334C (en) | Ultrafine particulate titanium oxide and production process therefor | |
Hirano et al. | Synthesis of highly crystalline hexagonal cesium tungsten bronze nanoparticles by flame-assisted spray pyrolysis | |
JP2002194327A (ja) | 酸化鉄−二酸化ケイ素−二酸化チタン混合酸化物、その製法、その使用、および前記混合酸化物含有の皮膚用化粧品 | |
EP2217532B1 (en) | Process for the manufacture of rutile titanium dioxide powders | |
CN101784342A (zh) | 具有可调节涂层的SiO2涂覆的二氧化钛颗粒的制备 | |
JP4313535B2 (ja) | 微粒子状酸化チタン複合体、同複合体の製造方法、同複合体組成物 | |
JP4739187B2 (ja) | アナターゼ型酸化チタン粉末およびその製造方法 | |
JP4979174B2 (ja) | 酸化チタン含有微粒子状酸化物複合体の製造方法 | |
WO2001023305A1 (fr) | Oxyde de titane a particules fines et procede pour le produire | |
JP3993956B2 (ja) | 球状酸化チタン微粒子の製造方法 | |
JP3743715B2 (ja) | 超微粒子混晶酸化物、その製造方法及び用途 | |
JP4234298B2 (ja) | 酸化チタン微粒子の製造方法 | |
JP2001220141A (ja) | 酸化チタン分散体 | |
US8071070B2 (en) | Titanium dioxide having a variable sintering stability | |
US7449166B2 (en) | Particulate titanium oxide and production process therefor | |
JP3787254B2 (ja) | 酸化チタン微粒子の製造方法 | |
JP2001287997A (ja) | アナターゼ型酸化チタン単結晶の製造方法 | |
JP2008273832A (ja) | 高純度酸化チタンおよびその製造方法 | |
KR20190073623A (ko) | 스펙트럼 확장형 광촉매 및 그 제조방법 | |
JP2005272298A (ja) | 超微粒子混晶酸化物及びその用途 | |
US20240199438A1 (en) | Composite microparticle manufacturing method and composite microparticles | |
KR101519563B1 (ko) | 가시광 감응성 바나디아-티타니아 광촉매의 제조방법 | |
KR102044380B1 (ko) | 티타니아 나노입자의 제조방법 | |
JP4812213B2 (ja) | 微粒子状酸化チタン及びその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20041108 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20041108 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20071005 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20071113 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20080111 |
|
RD02 | Notification of acceptance of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422 Effective date: 20080111 |
|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 Effective date: 20080130 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080715 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20080911 |
|
RD02 | Notification of acceptance of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422 Effective date: 20080911 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20090210 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20090406 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20090512 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20090515 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120522 Year of fee payment: 3 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120522 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150522 Year of fee payment: 6 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |